以下、添付図面を参照しながら本発明の一実施形態に係る撮像装置10について説明する。撮像装置10は、被写体画像を得るための撮像手段として、撮像光学系Lとイメージセンサユニット(撮像手段)19を有する。図中の「O」は撮像光学系Lの光軸であり、以下の説明では、光軸Oに沿う方向(光軸Oとその延長線が延びる方向、または光軸Oと平行な直線が延びる方向)を光軸方向とし、光軸方向における被写体(物体)側を前方、像側を後方とする。また、光軸Oを中心とする放射方向(光軸Oと垂直で光軸Oと交差する直線が延びる方向)を径方向とし、径方向において光軸Oに接近する方向を内径方向、光軸Oから離れる方向を外径方向とする。また、光軸Oを中心とする円周方向を周方向とする。なお、特に断りがない場合、光軸Oとは、後述する可動ユニット17及び鏡筒11の傾動を行っていない設計上の初期状態での光軸を意味するものとする。
図1ないし図4、図6ないし図8に撮像装置10の外観を示す。図9ないし図11に示すように、撮像装置10は、鏡筒11を挿入支持するバレルホルダ(可動部材)12を備え、鏡筒11とバレルホルダ12の結合体がコイルホルダ(固定部材)13とボールホルダ(支持手段、保持部材)14からなるハウジング内に可動に支持されるという基本構造を有している。
図9、図12ないし図17、図22、図34に示すように、バレルホルダ12は、光軸Oを囲む筒部12aの内部に光軸方向に貫通する穴である軸方向貫通部12bを有している。軸方向貫通部12bの後端付近には内径方向へ突出して軸方向貫通部12bの内径サイズ(開口径)を小さくさせる環状の挿入規制フランジ12cが形成されている。
図5、図9、図12ないし図18、図20、図22ないし図24に示すように、バレルホルダ12の筒部12aの外面には3つの揺動案内面(支持手段、被支持面)20が形成されている。3つの揺動案内面20は周方向に位置を異ならせて設けられており、それぞれを符号20A,20B,20Cで区別する。各揺動案内面20A,20B,20Cは光軸O上の所定の点を中心とする同一の球面の一部であり、この球面の中心を球心揺動中心Q(図9、図22)とする。揺動案内面20A,20B,20Cは周方向に略同じ幅を有しており、かつ周方向に略等間隔(120度間隔)で配されている。
図9、図11、図14、図15、図17ないし図22、図24に示すように、バレルホルダ12の後端面には、光軸方向後方へ突出する複数の傾動制限突起30が設けられている。傾動制限突起30は、揺動案内面20Aの両側の周方向位置に設けられた一対の傾動制限突起30A,30Bと、揺動案内面20Bの両側の周方向位置に設けられた一対の傾動制限突起30C,30Dと、揺動案内面20Cの両側の周方向位置に設けられた一対の傾動制限突起30E,30Fの計6つからなる。各傾動制限突起30は先端(光軸方向後方の端部)が半球面状の突起であり、バレルホルダ12の後端面からのそれぞれの突出量が略等しい(図18ないし図22参照)。
図10ないし図18、図21ないし図24、図34に示すように、バレルホルダ12の揺動案内面20A上には、周方向に離間する一対のロール範囲制限突起31が設けられている。球心揺動中心Q(図9、図22)を中心とする球面の一部である揺動案内面20Aは、光軸方向における前端と後端から中央に進むにつれて光軸Oからの距離が大きくなり、一対のロール範囲制限突起31は、光軸Oからの揺動案内面20Aの距離が最も大きくなる光軸方向の中央付近(光軸Oに対して略垂直で球心揺動中心Qを通る平面上)に設けられている。すなわち、揺動案内面20Aのうち最も外径方向に突出している箇所にロール範囲制限突起31が設けられている。
図12ないし図17、図34に示すように、バレルホルダ12は、3つの揺動案内面20A,20B,20Cの間の周方向位置に3つの支持座21,22,23を有している。支持座21は揺動案内面20Aと揺動案内面20Cの間に位置し、支持座22は揺動案内面20Aと揺動案内面20Bの間に位置し、支持座23は揺動案内面20Bと揺動案内面20Cの間に位置している。支持座21,22,23はそれぞれ、光軸Oを中心とする同一の円筒面の一部である支持面21a,22a,23aと、支持面21a,22a,23aよりも外径方向に突出する磁石支持突起21b,22b,23bを有している。支持面21a,22a,23aはそれぞれ支持座21,22,23の周方向の両端部分に一対が設けられており、各一対の支持面21a,22a,23aの間は凹状になっている。
図10ないし図15、図18、図20、図21、図23、図24、図34に示すように、磁石支持突起21bと磁石支持突起22bは、光軸方向の厚みが小さく周方向に長手方向を向けた板状の突起であり、互いの形状は略共通である。磁石支持突起21bと磁石支持突起22bのそれぞれの光軸方向の前面と後面は、互いに略平行で光軸Oに対して略垂直な平面となっている。磁石支持突起21bと磁石支持突起22bはそれぞれ、支持座21と支持座22の光軸方向の略中央に位置している。図5、図9、図12ないし図17、図19、図22、図33、図34に示すように、磁石支持突起23bは周方向の厚みが小さく光軸方向に長手方向を向けた板状の突起である。磁石支持突起23bの周方向の両側面は、互いに略平行で光軸方向に延びる平面となっている。磁石支持突起23bは支持座23の周方向の略中央に位置している。
3つの支持座21,22,23は、磁石支持突起21b,22b,23bを除く基礎部分(支持面21a,22a,23a)の形状が略共通であり、この基礎部分が周方向に略等間隔(120度間隔)で配されている。図12ないし図24、図34に示すように、支持座21上にヨーク24が支持され、支持座22上にヨーク25が支持され、支持座23上にヨーク26が支持される。各ヨーク24,25,26は金属製の磁性体で形成されており、支持面21a,22a,23aに沿う湾曲形状の底壁24a,25a,26aと、底壁24a,25a,26aの周方向の両端から外径方向に突出する各一対の立壁24b,25b,26bを有する。ヨーク24の底壁24aとヨーク25の底壁25aには周方向に長手方向を向けた長穴24c,25cが貫通形成されており、ヨーク26の底壁26aには光軸方向に長手方向を向けた長穴26cが貫通形成されている。長穴24cと長穴25cはそれぞれ磁石支持突起21bと磁石支持突起22bを挿入可能な形状であり、長穴26cは磁石支持突起23bを挿入可能な形状である。各磁石支持突起21b,22b,23bは対応する長穴24c,25c,26cに対してガタつきなく挿入される断面形状を有しており、この挿入状態でバレルホルダ12に対する各ヨーク24,25,26の光軸方向及び周方向の位置が決まる。3つのヨーク24,25,26は、底壁24a,25a,26aと立壁24b,25b,26bについては略共通の形状を有しており、長穴24c及び長穴25cに対する長穴26cの形状のみが異なっている。
図16、図17、図34に示すように、ヨーク24,25,26はそれぞれ、湾曲形状の底壁24a,25a,26aの内周面を支持面21a,22a,23a上に載せて支持座21,22,23上に支持される。このとき磁石支持突起21b,22b,23bがそれぞれ長穴24c,25c,26cを通して外径方向に突出する。ヨーク24,25,26が支持座21,22,23上に支持された状態で、光軸Oを中心とする同一の円筒面上に底壁24a,25a,26aが位置する。図18ないし図24に示すように、ヨーク24,25,26の光軸方向の長さはバレルホルダ12の光軸方向の長さと略一致しており、各磁石支持突起21b,22b,23bと各長穴24c,25c,26cの係合によって位置を定めた状態で、ヨーク24,25,26の前縁部とバレルホルダ12の前端面の光軸方向位置が重なり、ヨーク24,25,26の後縁部とバレルホルダ12の後端面の光軸方向位置が重なる。
図10ないし図18、図20、図21、図23、図24、図34に示すように、ヨーク24上に第1磁石ユニット27が支持され、ヨーク25上に第2磁石ユニット28が支持される。第1磁石ユニット27は周方向に長手方向を向けた円弧形状をなす一組の永久磁石27-1と永久磁石27-2からなり、第2磁石ユニット28も同様に周方向に長手方向を向けた円弧形状をなす一組の永久磁石28-1と永久磁石28-2からなる。永久磁石27-1と永久磁石27-2は同形状であり、光軸Oを中心とする円筒面の一部である内周面27aと、内周面27aを含む円筒面よりも径の大きい同心状の円筒面の一部である外周面27bを有している。また、永久磁石27-1と永久磁石27-2はそれぞれ、長手方向の両端に位置して内周面27aと外周面27bを径方向に接続する一対の長手方向端面27cと、一対の長手方向端面27cの間を長手方向に延びて内周面27aと外周面27bを径方向に接続する一対の側面27d,27eを有している。永久磁石28-1と永久磁石28-2はいずれも永久磁石27-1及び永久磁石27-2と同形状の磁石であり、永久磁石27-1,27-2と同様の内周面28a、外周面28b、一対の長手方向端面28c、一対の側面28d,28eを有している。
第1磁石ユニット27は、永久磁石27-1が前方、永久磁石27-2が後方となる関係で光軸方向(永久磁石27-1と永久磁石27-2の短手方向)に並列してヨーク24上に配置される。図16ないし図18、図21、図23、図24、図34に示すように、永久磁石27-1と永久磁石27-2のそれぞれの内周面27aが底壁24a上に載置され、一対の長手方向端面27cが一対の立壁24bに対向する。内周面27aは底壁24aに沿う湾曲面であり、内周面27aと底壁24aの当接によって永久磁石27-1と永久磁石27-2が径方向に安定して支持される。また、一対の長手方向端面27cを一対の立壁24bで挟むことによって永久磁石27-1と永久磁石27-2の周方向の位置が定められる。さらに、長穴24cを通して突出する磁石支持突起21bを永久磁石27-1の側面27eと永久磁石27-2の側面27dの間に挟むことによって、永久磁石27-1と永久磁石27-2は光軸方向に所定の間隔をもって離間して並列する。磁石支持突起21bは永久磁石27-1と永久磁石27-2よりも周方向に短く、永久磁石27-1と永久磁石27-2の長手方向の中央付近に磁石支持突起21bが挟まれることにより、永久磁石27-1の側面27eと永久磁石27-2の側面27dの間に接着剤注入空間M1が形成される(図18、図21)。以上のヨーク24と磁石支持突起21bによる支持状態で、永久磁石27-1の側面27dはバレルホルダ12の前端面(ヨーク24の前縁部)と略同じ光軸方向位置にあり、永久磁石27-2の側面27eはバレルホルダ12の後端面(ヨーク24の後縁部)と略同じ光軸方向位置にある(図18、図21、図23、図24)。つまり、永久磁石27-1と磁石支持突起21bと永久磁石27-2のそれぞれの光軸方向の幅の和が、バレルホルダ12やヨーク24の光軸方向長と略一致しており、第1磁石ユニット27はバレルホルダ12の前後に突出せずに支持される。
第2磁石ユニット28は、永久磁石28-1が前方、永久磁石28-2が後方となる関係で光軸方向(永久磁石28-1と永久磁石28-2の短手方向)に並列してヨーク25上に配置される。図16ないし図18、図20、図23、図24、図34に示すように、永久磁石28-1と永久磁石28-2のそれぞれの内周面28aが底壁25a上に載置され、一対の長手方向端面28cが一対の立壁25bに対向する。内周面28aは底壁25aに沿う湾曲面であり、内周面28aと底壁25aの当接によって永久磁石28-1と永久磁石28-2が径方向に安定して支持される。また、一対の長手方向端面28cを一対の立壁25bで挟むことによって永久磁石28-1と永久磁石28-2の周方向の位置が定められる。さらに、長穴25cを通して突出する磁石支持突起22bを永久磁石28-1の側面28eと永久磁石28-2の側面28dの間に挟むことによって、永久磁石28-1と永久磁石28-2は光軸方向に所定の間隔をもって離間して並列する。磁石支持突起22bは永久磁石28-1と永久磁石28-2よりも周方向に短く、永久磁石28-1と永久磁石28-2の長手方向の中央付近に磁石支持突起22bが挟まれることにより、永久磁石28-1の側面28eと永久磁石28-2の側面28dの間に接着剤注入空間M2が形成される(図18、図20、図23、図24)。以上のヨーク25と磁石支持突起22bによる支持状態で、永久磁石28-1の側面28dはバレルホルダ12の前端面(ヨーク25の前縁部)と略同じ光軸方向位置にあり、永久磁石28-2の側面28eはバレルホルダ12の後端面(ヨーク25の後縁部)と略同じ光軸方向位置にある(図18、図20、図23、図24)。つまり、永久磁石28-1と磁石支持突起22bと永久磁石28-2のそれぞれの光軸方向の幅の和が、バレルホルダ12やヨーク25の光軸方向長と略一致しており、第2磁石ユニット28はバレルホルダ12の前後に突出せずに支持される。
図9ないし図17、図19、図20、図22ないし図24、図34に示すように、ヨーク26上に第3磁石ユニット29が支持される。第3磁石ユニット29は、光軸方向に長手方向を向けた一組の永久磁石29-1と永久磁石29-2からなる。永久磁石29-1と永久磁石29-2は同形状であり、光軸Oを中心とする円筒面の一部である内周面29aと、内周面29aを含む円筒面よりも径の大きい同心状の円筒面の一部である外周面29bを有している。また、永久磁石29-1と永久磁石29-2はそれぞれ、長手方向の両端に位置して内周面29aと外周面29bを径方向に接続する一対の長手方向端面29cと、一対の長手方向端面29cの間を長手方向に延びて内周面29aと外周面29bを径方向に接続する一対の側面29d,29eを有している。
第1磁石ユニット27や第2磁石ユニット28と異なり、第3磁石ユニット29は、永久磁石29-1と永久磁石29-2を周方向(永久磁石29-1と永久磁石29-2の短手方向)に並列させてヨーク26上に配置される。図9、図16、図17、図19、図22ないし図24、図34に示すように、永久磁石29-1と永久磁石29-2のそれぞれの内周面29aが底壁26a上に載置され、永久磁石29-1の側面29dが一対の立壁26bの一方に対向し、永久磁石29-2の側面29eが一対の立壁26bの他方に対向する。内周面29aは底壁26aに沿う湾曲面であり、内周面29aと底壁26aの当接によって永久磁石29-1と永久磁石29-2が径方向に安定して支持される。長穴26cを通して突出する磁石支持突起23bを永久磁石29-1の側面29eと永久磁石29-2の側面29dの間に挟むことによって、永久磁石29-1と永久磁石29-2は周方向に所定の間隔をもって離間して並列する。磁石支持突起23bは永久磁石29-1と永久磁石29-2よりも光軸方向に短く、永久磁石29-1と永久磁石29-2の長手方向の中央付近に磁石支持突起23bが挟まれることにより、永久磁石29-1の側面29eと永久磁石29-2の側面29dの間に接着剤注入空間M3が形成される(図19、図22)。磁石支持突起23bを挟んだ状態の永久磁石29-1と永久磁石29-2が一対の立壁26bで両側から挟まれて第3磁石ユニット29の周方向の位置が定められる。別言すれば、永久磁石29-1と磁石支持突起23bと永久磁石29-2のそれぞれの周方向の幅の和が、周方向におけるヨーク26の一対の立壁26bの間隔と略一致している。また、永久磁石29-1と永久磁石29-2のそれぞれの光軸方向の長さ(一対の長手方向端面29cの間隔)はバレルホルダ12やヨーク26の光軸方向の長さと略一致しており、永久磁石29-1と永久磁石29-2はそれぞれ、一対の長手方向端面29cがバレルホルダ12の前後の端面(ヨーク26の前後の縁部)と重なり、その前後に突出せずに支持される(図19、図22)。
接着剤注入空間M1,M2,M3のそれぞれに接着剤を注入する。接着剤注入空間M1に注入した接着剤によってヨーク24と第1磁石ユニット27がバレルホルダ12(磁石支持突起21b)に対して固定され、接着剤注入空間M2に注入した接着剤によって、ヨーク25と第2磁石ユニット28がバレルホルダ12(磁石支持突起22b)に対して固定され、接着剤注入空間M3に注入した接着剤によって、ヨーク26と第3磁石ユニット29がバレルホルダ12(磁石支持突起23b)に対して固定される。つまり、接着剤注入空間M1,M2,M3内に、各接着剤注入空間27,28,29を構成する各磁石をそれぞれ磁石支持突起21b,22b,23bとヨーク24,25,26に対して接着固定する接着固定部が形成される。
以上のようにしてヨーク24,25,26と磁石ユニット27,28,29をバレルホルダ12に組み付けることで、図16ないし図22に示すサブアッセンブリである可動ユニット17になる。可動ユニット17では、ヨーク24と第1磁石ユニット27(磁石支持突起21bを含む)のセットと、ヨーク25と第2磁石ユニット28(磁石支持突起22bを含む)のセットと、ヨーク26と第3磁石ユニット29(磁石支持突起23bを含む)のセットは、それぞれが周方向と光軸方向に略同じサイズとなり、これら3つのセットが周方向に略等間隔(120度間隔)で配置される。
図5、図16、図17、図34に示すように、可動ユニット17における各磁石ユニット27,28,29は、それぞれの外周面27b,28b,29bが光軸Oを中心とする同一の円筒面上に位置し、外周面27b,28b,29bを含む円筒面よりも径が小さく光軸Oを中心とする別の同一の円筒面上にそれぞれの内周面27a,28a,29aが位置する。
可動ユニット17で第1磁石ユニット27,第2磁石ユニット28,第3磁石ユニット29を構成する各永久磁石のN極とS極を図13、図15ないし図17に符号「N」と「S」で概念的に表した。各永久磁石は径方向にN極とS極が並ぶように着磁されており、永久磁石27-1と永久磁石28-2と永久磁石29-1はそれぞれ内径側がS極で外径側がN極であり、永久磁石27-2と永久磁石28-1と永久磁石29-2はそれぞれ内径側がN極で外径側がS極となっている。各磁石ユニット27,28,29を短手方向に並列する2つの永久磁石に分割した構成にすることで、各磁石ユニット27,28,29を一つの大型の永久磁石で構成する場合よりも着磁を行いやすく、軽量化の面でも有利となる。
図9、図25ないし図28、図30ないし図32に示すように、コイルホルダ13は、光軸Oを囲む筒部13aの内部に光軸方向に貫通する軸方向貫通部13bを有している。コイルホルダ13の前端には内径方向に突出する前壁13cが形成されており、前壁13cの内縁部として形成された円形の中央開口13dは、軸方向貫通部13bよりも開口径が小さい。
図5、図9ないし図11、図25ないし図28、図30ないし図32、図34に示すように、コイルホルダ13の軸方向貫通部13b内には、筒部13aの内周面から内径方向へ突出する3つの支持座(支持手段)40が設けられている。3つの支持座40は周方向に略等間隔(120度間隔)で設けられており、それぞれを符号40A,40B,40Cで区別する。各支持座40は内径方向に進むにつれて周方向の幅を狭くする楔状の断面形状を有しており、その内径側の先端部にボール保持溝41が形成されている。ボール保持溝41は光軸方向に長手方向が向く有底の長溝であり、外径方向に底面が位置して内径方向に開口されている。ボール保持溝41の光軸方向の後端部は開放されており、ボール保持溝41の前端部は前壁13cに隣接する前方規制壁41aによって閉じられている。図9や図30に示すように、前方規制壁41aが設けられているボール保持溝41の前端付近の領域は、その後方部分よりも各支持座40の内径方向への突出量が大きく、ボール保持溝41の深さが大きくなっている。各支持座40の後端面には、内部にネジ溝を有するビス穴42が形成されている。各ビス穴42の周囲の環状の領域に当付面43が形成されている。各当付面43は光軸Oに対して略垂直で後方を向く平面である。
図9、図11、図25、図27、図28、図30、図32、図34に示すように、コイルホルダ13の筒部13aには、径方向に貫通する3つの貫通穴45,46,47が形成されている。貫通穴45,46,47は3つの支持座40の間の周方向位置にあり、支持座40Aと支持座40Cの間に貫通穴45が位置し、支持座40Aと支持座40Bの間に貫通穴46が位置し、支持座40Bと支持座40Cの間に貫通穴47が位置する。貫通穴45,46はそれぞれ周方向に長手方向を向けた長穴であり、筒部13aを平面状に展開した場合に略矩形となる展開形状を有している。貫通穴45と貫通穴46の周方向長は略等しく、貫通穴45と貫通穴46の光軸方向長も略等しい。貫通穴47も筒部13aを平面状に展開した場合に略矩形となる展開形状を有しているが、周方向長と光軸方向長の比率が貫通穴45及び貫通穴46とは異なっており、貫通穴47の周方向長は貫通穴45及び貫通穴46の周方向長よりも小さく、貫通穴47の光軸方向長は貫通穴45及び貫通穴46の光軸方向長よりも大きい。周方向における貫通穴45,46,47の長さの中央をそれぞれ周方向の基準位置とした場合、3つの貫通穴45,46,47の基準位置は周方向に略等間隔(120度間隔)の関係である。
コイルホルダ13の筒部13aの外周面上には、貫通穴45,46,47の周囲に有底の支持凹部48,49,50が形成されている。支持凹部48,49は周方向に長手方向が向く凹部であり、互いの周方向長と光軸方向長が略等しい。支持凹部50は、支持凹部48,49よりも周方向には短く光軸方向には長い凹部である(図33参照)。
図1、図2、図6ないし図11、図25ないし図29、図31、図32に示すように、支持凹部48,49,50上にそれぞれコイル支持板51,52,53が支持される。コイル支持板51,52,53は筒部13aの外周面に沿う湾曲形状の板状部材であり、支持凹部48,49,50上に支持される状態でコイル支持板51,52,53の外面が筒部13aの外周面と略面一になる。すなわち、コイル支持板51,52,53が光軸Oを中心とする同一の円筒面上に位置する。コイル支持板51とコイル支持板52は略共通の形状であり、それぞれの周方向及び光軸方向の中央付近に、内径方向へ突出するコイル支持突起51a,52aが形成され、各コイル支持突起51a,52aの裏側にセンサ支持凹部51b,52bが形成されている。コイル支持板53は、コイル支持板51及びコイル支持板52よりも周方向には短く光軸方向には長い。コイル支持板53の周方向及び光軸方向の中央付近に、内径方向へ突出するコイル支持突起53aが形成され、コイル支持突起53aの裏側にセンサ支持凹部53bが形成されている。コイル支持板51,52,53にはさらに径方向に貫通する貫通穴51c,52c,53cが形成されている。
コイル支持板51に第1コイル54が支持され、コイル支持板52に第2コイル55が支持され、コイル支持板53に第3コイル56が支持される。第1コイル54と第2コイル55はそれぞれ、周方向に延びる各一対の長辺部54a,55aの周方向端部を光軸方向に延びる各一対の短辺部54b,55bで接続した空芯コイルである。第3コイル56は、光軸方向に延びる一対の長辺部56aの光軸方向端部を周方向に延びる一対の短辺部56bで接続した空芯コイルである。第1コイル54と第2コイル55は略同じ形状であり、互いの長辺部54a,55aの周方向長が略等しく、かつ互いの短辺部54b,55bの光軸方向長が略等しい。第3コイル56の長辺部56aの光軸方向長は第1コイル54及び第2コイル55の短辺部54b,55bの光軸方向長よりも大きく、第3コイル56の短辺部56bの周方向長は第1コイル54及び第2コイル55の長辺部54a,55aの周方向長よりも小さい。各コイル54,55,56は、コイル支持板51,52,53の内周面に沿う円筒面の一部である湾曲した外周面54c,55c,56cと、外周面54c,55c,56cを含む円筒面よりも小径の円筒面上に位置する湾曲した内周面54d,55d,56dを有している。
第1コイル54は、一対の長辺部54aと一対の短辺部54bで囲まれる中空部にコイル支持突起51aを挿入し、外周面54cをコイル支持板51の内周面に当接させてコイル支持板51に取り付けられる。コイル支持板51と第1コイル54は接着などで固定される。この状態でコイル支持板51をコイルホルダ13の支持凹部48上に支持させると、第1コイル54が貫通穴45内に挿入されて内周面54dがコイルホルダ13の内径側に向く(図5、図32、図34)。
第2コイル55は、一対の長辺部55aと一対の短辺部55bで囲まれる中空部にコイル支持突起52aを挿入し、外周面55cをコイル支持板52の内周面に当接させてコイル支持板52に取り付けられる。コイル支持板52と第2コイル55は接着などで固定される。この状態でコイル支持板52をコイルホルダ13の支持凹部49上に支持させると、第2コイル55が貫通穴46内に挿入されて内周面55dがコイルホルダ13の内径側に向く(図5、図34)。
第3コイル56は、各一対の長辺部56aと短辺部56bで囲まれる中空部にコイル支持突起53aを挿入し、外周面56cをコイル支持板53の内周面に当接させてコイル支持板53に取り付けられる。コイル支持板53と第3コイル56は接着などで固定される。この状態でコイル支持板53をコイルホルダ13の支持凹部50上に支持させると、第3コイル56が貫通穴47内に挿入されて内周面56dがコイルホルダ13の内径側に向く(図5、図9、図32、図34)。
コイル支持板51,52,53を介してコイルホルダ13に取り付けられた状態の各コイル54,55,56の位置関係を図34に示す。図34から分かるように、各コイル54,55,56は、それぞれの外周面54c,55c,56cが光軸Oを中心とする同一の円筒面上に位置し、外周面54c,55c,56cを含む円筒面よりも径が小さく光軸Oを中心とする別の同一の円筒面上にそれぞれの内周面54d,55d,56dが位置する。
図1、図2、図6ないし図11、図25ないし図29、図31、図32に示すように、コイル支持板51,52,53のセンサ支持凹部51b,52b,53b内にホールセンサ(磁気センサ)57,58,59が取り付けられる。センサ支持凹部51b,52b,53bはそれぞれ、内径方向に突出するコイル支持突起51a,52a,53aの内部空間を利用して凹設されており、外径方向に向けて開放された凹部となっている。そのため、センサ支持凹部51b,52b,53b内に取り付けられたホールセンサ57,58,59は、各コイル54,55,56の中空部分の内側に収まる状態で保持される(図9、図34参照)。図34に示すように、この保持状態における各ホールセンサ57,58,59は、周方向に略等間隔(120度間隔)で位置し、かつ光軸Oを中心とする同一の円筒面上に位置する(光軸Oからの径方向距離が略等しい)。
以上のようにしてコイル支持板51,52,53を介して第1コイル54,第2コイル55,第3コイル56とホールセンサ57,58,59をコイルホルダ13に組み付けることで、図29、図31、図32に示すサブアッセンブリである固定ユニット18が構成される。
固定ユニット18(コイルホルダ13)の軸方向貫通部13b内に、3つの定位置ボール(支持手段、定位置支点部材、定位置支点部)61と3つの調整ボール(支持手段、調整支点部材)62(図5、図9ないし図11)を介して可動ユニット17(バレルホルダ12)が支持される。各定位置ボール61と各調整ボール62は略同径の金属製の球状体である。コイルホルダ13に設けた3つの支持座40A,40B,40Cの各ボール保持溝41内に定位置ボール61と調整ボール62が1つずつ挿入され、計6つの定位置ボール61と調整ボール62でバレルホルダ12を支持する。3つの定位置ボール61はそれぞれ、前方規制壁41aが形成されるボール保持溝41の前端部分に保持され、3つの調整ボール62はそれぞれ、ボール保持溝41の後端付近に保持される。各定位置ボール61と各調整ボール62の径とボール保持溝41の溝幅が略一致しており、定位置ボール61と調整ボール62はボール保持溝41に対する周方向の移動が規制される。
可動ユニット17は、バレルホルダ12に形成した揺動案内面20A,20B,20Cの周方向位置をそれぞれ支持座40A,40B,40Cに対応させて(径方向に対向させて)、軸方向貫通部13b内に挿入される。すると、揺動案内面20Aが支持座40Aのボール保持溝41上に支持された定位置ボール61と調整ボール62に当接し、揺動案内面20Bが支持座40Bのボール保持溝41上に支持された定位置ボール61と調整ボール62に当接し、揺動案内面20Cが支持座40Cのボール保持溝41上に支持された定位置ボール61と調整ボール62に当接する。
この状態で3つの定位置ボール61は、対応する揺動案内面20A,20B,20Cとボール保持溝41の底面の間に挟まれ、さらに前方規制壁41aに当接することによって、光軸方向と径方向の移動が規制される(位置が定まる)。より詳しくは、図9から分かるように、定位置ボール61は、ボール保持溝41の底面によって外径方向への移動が規制され、前方規制壁41aによって光軸方向前方への移動が規制される。揺動案内面20A,20B,20Cは、ボール保持溝41の光軸方向の前半分に対向する領域では、光軸方向前方から後方に進むにつれて内径側から外径側に進む傾斜を有している(図9、図22参照)。そのため定位置ボール61は、揺動案内面20A,20B,20Cによって内径方向と光軸方向後方への移動が規制される。言い換えれば、揺動案内面20A,20B,20Cと前方規制壁41aとボール保持溝41の底面によって、光軸方向前方から後方に進むにつれて径方向の幅が定位置ボール61の直径よりも小さくなる楔状の空間が形成されており、この楔状の空間内に定位置ボール61が移動を規制されて嵌った状態になる。このように定位置ボール61は、可動ユニット17を組み付けることによって、光軸方向と周方向と径方向のいずれの方向にも移動制限された一定位置で保持される。なお、定位置ボール61は、この一定位置における転動(自身の中心位置を一定に保った転がり動作)は可能となっている。
揺動案内面20A,20B,20Cは、ボール保持溝41の光軸方向の後半分に対向する領域では、光軸方向後方から前方に進むにつれて内径側から外径側に進む傾斜を有している(図9、図22参照)。つまり、揺動案内面20A,20B,20Cは、定位置ボール61に当接する部分と調整ボール62に当接する部分では、傾斜方向が逆になっている。そのため調整ボール62は、対応する揺動案内面20A,20B,20Cとボール保持溝41の底面の間に挟まれると、ボール保持溝41の底面によって外径方向への移動が規制されることに加えて、揺動案内面20A,20B,20Cによって内径方向と光軸方向前方への移動が規制される。但し、調整ボール62はボール保持溝41の後端の開口部付近に位置するため、固定ユニット18にボールホルダ14を取り付けない段階では各調整ボール62が露出し(図5参照)、光軸方向後方への各調整ボール62の移動は規制されない。
コイルホルダ13の軸方向貫通部13b内にボールホルダ14が組み付けられる。図9ないし図11に示すように、ボールホルダ14は軸方向貫通部13bの内周部に嵌る径の円盤状部材であり、径方向の中央に位置する円形の中央開口14aと、中央開口14aの外径側を囲む板状の蓋部14bと、蓋部14bの外縁部から光軸方向前方に向けて突出する環状の外周フランジ14cを有している。蓋部14bの前面側には周方向に略等間隔(120度間隔)で3つの前方突出部65が設けられている。各前方突出部65には、光軸方向に貫通するビス挿通穴66が形成され、ビス挿通穴66よりも内径側には前方へ向くボール保持面(当接部)67が形成されている。さらに蓋部14bの前面側には、中央開口14aを囲む環状の領域に傾動規制面68が形成されている。ボール保持面67と傾動規制面68はそれぞれ光軸Oに対して略垂直な平面である。図9に示すように、ビス挿通穴66は内径の大きさを3段階に異ならせており、内径サイズが最も大きい大径部66aと最も小さい小径部66bが光軸方向の最後部と最前部に位置し、その間の光軸方向位置に中間の内径サイズの中間部66cが形成されている。
ボールホルダ14は、コイルホルダ13の3つの支持座40A,40B,40Cの後面に対して3つの前方突出部65が光軸方向に対向するように周方向位置を定めて、軸方向貫通部13b内へ光軸方向後方から挿入される。支持座40A,40B,40Cに対向する3つの前方突出部65をそれぞれ前方突出部65A,65B,65Cとする。軸方向貫通部13b内に挿入されたボールホルダ14は、3つの保持ビス69を用いてコイルホルダ13に固定される。
図9ないし図11に示すように、3つの保持ビス69はそれぞれ、ネジ溝を外周面に有する螺合部69aを一端に有し、頭部69bを他端に有し、螺合部69aと頭部69bを軸部69cで接続した構成である。頭部69bの径は、ボールホルダ14におけるビス挿通穴66の中間部66cの内径よりも大きく、大径部66aの内径よりも小さい。軸部69cの径は、ビス挿通穴66の小径部66bの内径と略同じ大きさである。各保持ビス69は螺合部69aを前方に向けて光軸方向後方からビス挿通穴66内に挿入され、螺合部69aがビス穴42内のネジ溝に螺合する。図9に示すように、ビス挿通穴66の中間部66c内には軸部69cを囲む筒状のコイルバネ(支持手段、付勢部材)70が挿入され、コイルバネ70の前端部が小径部66bと中間部66cの間の段部に当接し、コイルバネ70の後端部が保持ビス69の頭部69bに当接する。ビス穴42への螺合部69aの螺合量が大きくなるにつれて、頭部69bの押し込みによってコイルバネ70が圧縮され、圧縮されたコイルバネ70によってボールホルダ14に対して光軸方向前方への付勢力が働く。
各保持ビス69は、軸部69cの前端部がコイルホルダ13の当付面43に当接する図9の位置がビス穴42への締め込みの限界となる。この状態で、ボールホルダ14に形成した各前方突出部65A,65B,65Cのボール保持面67が調整ボール62に対して後方から当接し、コイルバネ70からボールホルダ14に加わる光軸方向前方への付勢力を各調整ボール62が受ける。図9に示すように、調整ボール62が挿入されているボール保持溝41の後端付近では、光軸方向前方に進むにつれてボール保持溝41の底面と揺動案内面20A,20B,20Cの径方向間隔が調整ボール62の直径よりも小さくなる楔状の空間になっており、ボール保持面67から付勢力を受ける調整ボール62はこの楔状空間が狭くなる方向へ押し込まれるため、光軸方向と径方向のいずれにも安定した状態で調整ボール62が支持される。また、ボール保持溝41から後方への調整ボール62の脱落がボール保持面67によって防止される。なお、調整ボール62とボール保持面67を確実に当接させるために、図9の状態で各前方突出部65A,65B,65Cの前面と当付面43の間には僅かに光軸方向の隙間が確保されている。また、ビス挿通穴66における中間部66cと大径部66aの間の段部と、保持ビス69の頭部69bとの間には、光軸方向へ僅かな隙間がある。そのため、当付面43と頭部69bによって規制される前後範囲の間でボールホルダ14の光軸方向位置や傾きを僅かに変化させることが可能であり、これによって3つの調整ボール62の位置のばらつきなどを吸収して安定した保持を行うことができる。
以上のように3つの定位置ボール61と3つの調整ボール62を介して固定ユニット18(コイルホルダ13)の軸方向貫通部13b内に支持された可動ユニット17(バレルホルダ12)は、各定位置ボール61及び各調整ボール62に対する3つの揺動案内面20A,20B,20Cの接触位置を変化させながら、揺動案内面20A,20B,20Cを含む球面の中心である球心揺動中心Qを中心とする方向自在な回転動作を行うことが可能である。この可動ユニット17(バレルホルダ12)の回転動作に際しては、揺動案内面20A,20B,20Cの位置変化に伴って定位置ボール61や調整ボール62が転動してもよいし、定位置ボール61や調整ボール62を転動させずに揺動案内面20A,20B,20Cが摺動してもよい。揺動案内面20A,20B,20Cと定位置ボール61及び調整ボール62は点接触の関係であるため、いずれの態様でも少ない抵抗でスムーズに可動ユニット17を動作させることができる。
可動ユニット17を構成するバレルホルダ12内に鏡筒11が支持される。鏡筒11は複数のレンズで構成される撮像光学系L(図9参照)を内部に保持した筒状体である。図9ないし図11に示すように、鏡筒11は光軸方向に進むにつれて段階的に径の大きさを変化させており、光軸方向の最前部に最も径が大きい大径部11aを有し、その後方に大径部11aよりも小径の中間部11bを有し、光軸方向の最後部に最も径が小さい小径部11cを有する。
鏡筒11は、小径部11cを後方に向けて前方からバレルホルダ12の軸方向貫通部12bに挿入され、中間部11bと小径部11cの間の段部が挿入規制フランジ12cの前面に当接することで光軸方向へのそれ以上の挿入が規制される(図9)。図1、図2、図6ないし図9、図23、図24に示すように、この状態で小径部11cは挿入規制フランジ12cの内側を通ってバレルホルダ12の後方に突出し、大径部11aは軸方向貫通部12bに挿入されずにバレルホルダ12の前方に位置する。バレルホルダ12から後方に突出した小径部11cの外周面には周面ネジ11d(図9ないし図11)が形成されており、周面ネジ11dに対して押え環15が取り付けられる。押え環15は周面ネジ11dに螺合するネジ溝を内周面に有する環状体であり、挿入規制フランジ12cの後面に当て付くまで押え環15を締め付けることで、バレルホルダ12に対して鏡筒11が固定される。図9に示すように、ボールホルダ14の中央開口14aの開口径は押え環15の径よりも大きく、コイルホルダ13にボールホルダ14を取り付けた後に、中央開口14aを通して押え環15の着脱が可能である。
鏡筒11の大径部11aとバレルホルダ12はそれぞれ、コイルホルダ13の前壁13cの中央開口13dを通過しない径方向の大きさを有しているため、鏡筒11はコイルホルダ13の軸方向貫通部13bに対して光軸方向前方から挿入可能で、バレルホルダ12はコイルホルダ13の軸方向貫通部13bに対して光軸方向後方から挿入可能となる。撮像装置10の組み立ての手順として、コイルホルダ13の軸方向貫通部13bに対してバレルホルダ12を含む可動ユニット17を後方から挿入した上でボールホルダ14を取り付け、続いてバレルホルダ12の軸方向貫通部12bに対して前方から鏡筒11を挿入し、ボールホルダ14の中央開口14aを通して押え環15を組み付けてバレルホルダ12に鏡筒11を固定させるとよい。可動ユニット17の取り付けに際しては、一対のロール範囲制限突起31の間に支持座40Aが位置するように周方向位置を定める。また、コイルホルダ13の軸方向貫通部13bに可動ユニット17を挿入する前に各ボール保持溝41に定位置ボール61を収めておき、可動ユニット17の挿入後に調整ボール62をボール保持溝41の後端部分に収め、さらにボールホルダ14の取り付けを行う。
バレルホルダ12の軸方向貫通部12bに挿入した状態の鏡筒11は、大径部11aがコイルホルダ13の前方に突出し、小径部11bの後端部分がコイルホルダ13の後方に突出しており、大径部11aの外周部に環状のバランサ16を取り付け、小径部11bの後端部分にイメージセンサユニット19を取り付ける。鏡筒11と可動ユニット17は、先に述べた球心揺動中心Qを中心とする方向自在な回転動作を一体的に行う。鏡筒11の後端部分に設けたイメージセンサユニット19に対して、鏡筒11の前端部分にバランサ16を設けることで、鏡筒11と可動ユニット17からなる可動部分の重心が球心揺動中心Qと略一致するように重量バランスをとっている。
イメージセンサユニット19は光軸O上に受光面が位置するイメージセンサ19a(図9)を有しており、撮像光学系Lを通して得られる被写体像がイメージセンサ19aにより光電変換され、その画像信号がフレキシブル基板19bを通して伝送される。フレキシブル基板19bは撮像装置10を制御する制御回路71(図9に概念的に示す)に接続し、制御回路71において画像信号の処理を行い、表示デバイスへの画像表示や記録媒体への画像データの記録を行う。制御回路71にはさらに、撮像装置10の姿勢を検知する姿勢検知センサ72(図9)からの信号が入力される。
コイルホルダ13に対する各コイル54,55,56と各ホールセンサ57,58,59の組み付けは、コイルホルダ13に可動ユニット17や鏡筒11を取り付ける前と取り付けた後の任意の段階で行うことができる。前述のように、各コイル54,55,56を取り付けた状態のコイル支持板51,52,53をコイルホルダ13の支持凹部48,49,50上に載せて接着などで固定することで、各コイル54,55,56が貫通穴45,46,47内に挿入される。貫通穴45を通してコイルホルダ13の軸方向貫通部13b内に露出した第1コイル54の内周面54dが、可動ユニット17を構成する第1磁石ユニット27の各永久磁石27-1,27-2の外周面27bに対向して位置する。同様に、貫通穴46を通してコイルホルダ13の軸方向貫通部13b内に露出した第2コイル55の内周面55dが、第2磁石ユニット28の各永久磁石28-1,28-2の外周面28bに対向して位置し、貫通穴47を通してコイルホルダ13の軸方向貫通部13b内に露出した第3コイル56の内周面56dが、第3磁石ユニット29の各永久磁石29-1,29-2の外周面29bに対向して位置する。径方向に対向する第1コイル54と第1磁石ユニット27が第1のアクチュエータ(駆動手段)を構成し、径方向に対向する第2コイル55と第2磁石ユニット28が第2のアクチュエータ(駆動手段)を構成し、径方向に対向する第3コイル56と第3磁石ユニット29が第3のアクチュエータ(駆動手段)を構成する。
第1のアクチュエータでは第1磁石ユニット27と共にヨーク24が磁気回路を形成し、第2のアクチュエータでは第2磁石ユニット28と共にヨーク25が磁気回路を形成し、第3のアクチュエータでは第3磁石ユニット29と共にヨーク26が磁気回路を形成する。ヨーク24,25,26は、底壁24a,25a,26aと立壁24b,25b,26bで各磁石ユニット27,28,29を囲み、立壁24b,25b,26bの先端を外径方向に位置するコイル54,55,56に向けることによって、各磁石ユニット27,28,29の磁力線をコイル54,55,56側(外周面27b,28b,29bと立壁24b,25b,26bの先端の間)に集中させて、コイル54,55,56に作用する磁力を増幅させる。先に述べたように、ヨーク24,25,26はさらに、対応する磁石ユニット27,28,29を保持する機能を有する。
各ホールセンサ57,58,59は、コイル支持板51,52,53のセンサ支持凹部51b,52b,53b内に組み付けられることで、各磁石ユニット27,28,29の外周面27b,28b,29bに対して径方向に若干の隙間を有する状態で位置する(図9、図34参照)。各ホールセンサ57,58,59は、対応する各コイル54,55,56の長手方向及び短手方向の略中心(径方向に延びる直線に沿って各コイル54,55,56を平面視したときの各コイル54,55,56の外形中心)に位置している(図6ないし図8、図29、図31ないし図34参照)。ホールセンサ57によって第1のアクチュエータ(第1磁石ユニット27)における磁界の変化を検出し、ホールセンサ58によって第2のアクチュエータ(第2磁石ユニット28)における磁界の変化を検出し、ホールセンサ59によって第3のアクチュエータ(第3磁石ユニット29)における磁界の変化を検出する。センサ支持凹部51b,52b,53bは内径方向に突出するコイル支持突起51a,52a,53aの内部空間を利用して凹設されているので、優れたスペース効率でホールセンサ57,58,59を配置することができる。また、ホールセンサ57,58,59を磁石ユニット27,28,29に近づけて位置させて、検出の精度を高めることができる。
コイル支持板51,52,53の外周面上に図示を省略するフレキシブル基板が配設される。フレキシブル基板は、センサ支持凹部51b,52b,53b内のホールセンサ57,58,59に接続するセンサ接続部と、貫通穴51c,52c,53cを通して第1コイル54と第2コイル55と第3コイル56のそれぞれに接続するコイル接続部を有している。フレキシブル基板は制御回路71(図9)に接続し、ホールセンサ57,58,59で得られる磁界の情報がフレキシブル基板を介して制御回路71に送られ、このセンサ情報に基づいて可動ユニット17と鏡筒11の姿勢が検出される。また、制御回路71によって第1コイル54,第2コイル55,第3コイル56への通電制御が行われる。なお、図9では制御回路71と第3コイル56及びホールセンサ59の接続関係のみを示しているが、第1コイル54、第2コイル55、ホールセンサ57,58についても同様に制御回路71と電気的に接続される。
第1のアクチュエータでは、第1コイル54の一対の長辺部54aと第1磁石ユニット27の各永久磁石27-1,27-2のそれぞれの長手方向が周方向を向き、前側の長辺部54aと永久磁石27-1が径方向に対向し、後側の長辺部54aと永久磁石27-2が径方向に対向している。永久磁石27-1と永久磁石27-2はそれぞれ図13、図15ないし図17に示すように着磁されているため、第1コイル54に通電すると、フレミングの左手の法則により、第1コイル54の長辺部54aに沿って電流の流れる方向と、永久磁石27-1,27-2による長辺部54a周りの磁界の向きに対して略垂直な方向の推力が働く。この第1のアクチュエータによる推力を図6、図18、図21、図29に矢印F11と矢印F12で概念的に示した。第1コイル54の電流の方向によって推力の作用方向がF11とF12に切り替わる。第1のアクチュエータでは、第1磁石ユニット27の長手方向と第1コイル54の長辺部54aがそれぞれ周方向に長く延びている。これによって推力F11,F12を効率良く生じさせることができる。
第2のアクチュエータでは、第2コイル55の一対の長辺部55aと第2磁石ユニット28の各永久磁石28-1,28-2のそれぞれの長手方向が周方向を向き、前側の長辺部55aと永久磁石28-1が径方向に対向し、後側の長辺部55aと永久磁石28-2が径方向に対向している。永久磁石28-1と永久磁石28-2はそれぞれ図13、図15ないし図17に示すように着磁されているため、第2コイル55に通電すると、フレミングの左手の法則により、第2コイル55の長辺部55aに沿って電流の流れる方向と、永久磁石28-1,28-2による長辺部55a周りの磁界の向きに対して略垂直な方向の推力が働く。この第2のアクチュエータによる推力を図6、図8、図18、図20に矢印F21と矢印F22で概念的に示した。第2コイル55の電流の方向によって推力の作用方向がF21とF22に切り替わる。第2のアクチュエータでは、第2磁石ユニット28の長手方向と第2コイル55の長辺部55aがそれぞれ周方向に長く延びている。これによって推力F21,F22を効率良く生じさせることができる。
第3のアクチュエータでは、第3コイル56の一対の長辺部56aと第3磁石ユニット29の各永久磁石29-1,29-2のそれぞれの長手方向が光軸方向に延び、一方の長辺部56aと永久磁石29-1が径方向に対向し、他方の長辺部56aと永久磁石29-2が径方向に対向している。永久磁石29-1と永久磁石29-2はそれぞれ図13、図15ないし図17に示すように着磁されているため、第3コイル56に通電すると、フレミングの左手の法則により、第3コイル56の長辺部56aに沿って電流の流れる方向と、永久磁石29-1,29-2による長辺部56a周りの磁界の向きに対して略垂直な方向の推力が働く。この第3のアクチュエータによる推力を図7、図8、図19、図20、図33に矢印F31と矢印F32で概念的に示した。第3コイル56の電流の方向によって推力の作用方向がF31とF32に切り替わる。第1及び第2のアクチュエータと異なり、第3のアクチュエータでは、第3磁石ユニット29の長手方向と第3コイル56の長辺部56aが延びる方向がそれぞれ、周方向ではなく光軸方向になっている。これによってローリング方向の推力F31,F32を効率良く生じさせることができる。
各コイル54,55,56はコイルホルダ13に固定的に支持されているので、各アクチュエータの推力は、各磁石ユニット27,28,29を有する可動ユニット17を動作させる力として働く。前述の通り、可動ユニット17は球心揺動中心Qを中心として回転自在に支持されており、第1のアクチュエータと第2のアクチュエータの推力F11,F12,F21,F22によって、可動ユニット17と鏡筒11は球心揺動中心Qを中心として光軸Oを傾けるチルト動作を行う。例えば、第1のアクチュエータと第2のアクチュエータの中間の周方向位置を通りチルト前の光軸Oを含む仮想平面P1(図3)と、仮想平面P1に垂直でチルト前の光軸Oを含む仮想平面P2(図3)を設定し、仮想平面P1に沿う可動ユニット17と鏡筒11の傾動をピッチング方向の動作、仮想平面P2に沿う可動ユニット17と鏡筒11の傾動をヨーイング方向の動作とすると、第1のアクチュエータと第2のアクチュエータの推力F11,F12,F21,F22によって、ピッチング方向の成分とヨーイング方向の成分を含むあらゆる方向のチルト動作を可動ユニット17と鏡筒11に行わせることができる。
また、第3のアクチュエータの推力F31,F32によって、可動ユニット17と鏡筒11は光軸Oを中心とするローリング方向の回転動作(周方向の角度変化)を行う。可動ユニット17と鏡筒11が第1と第2のアクチュエータの駆動によって初期状態からチルトした状態にあるときには、第3アクチュエータV3の推力F31,F32のうち、チルトした状態の光軸を中心とする回転方向の推力成分により回転動作を行う。
ピッチング方向やヨーイング方向の成分を含む可動ユニット17のチルト動作が所定量まで達すると、バレルホルダ12に計6つ設けた傾動制限突起30A,30B, 30C,30D,30E,30Fのいずれかが、ボールホルダ14の傾動規制面68に当接し、それ以上の可動ユニット17の傾動が機械的に制限される。6つの傾動制限突起30A,30B, 30C,30D,30E,30Fは、光軸Oからの径方向距離が略同じで、光軸方向の位置も同じであり、かつ隣り合う2つの傾動制限突起30の周方向間隔が全て略一致している。別言すれば、図15や図17のように光軸Oに沿って見た状態で、周方向に隣り合う傾動制限突起30A,30B, 30C,30D,30E,30Fの中心を順に直線で接続すると正六角形となる。このように配置したことで、可動ユニット17のチルト動作量を、特定の方向に偏りを持たずに概ね均等に制限することができる。特に、光軸Oを含む平面のうち、隣接する2つの傾動制限突起30から等距離を通る平面に沿って可動ユニット17が傾動した場合には、該2つの傾動制限突起30が共に傾動規制面68に当接する。例えば、第1コイル54の周方向の中央を通り光軸Oを含む平面に沿って可動ユニット17が傾動した場合、傾動制限突起30A,30Fのペアまたは傾動制限突起30C,30Dのペアが傾動規制面68に当接する。第2コイル55の周方向の中央を通りと光軸Oを含む平面に沿って可動ユニット17が傾動した場合、傾動制限突起30B,30Cのペアまたは傾動制限突起30E,30Fのペアが傾動規制面68に当接する。第3コイル56の周方向の中央を通り光軸Oを含む平面(仮想平面P1)に沿って可動ユニット17が傾動した場合、傾動制限突起30A,30Bのペアまたは傾動制限突起30D,30Eのペアが傾動規制面68に当接する。2つの傾動制限突起30が傾動規制面68に当接するこれらの状態では、1つの傾動制限突起30が傾動規制面68に当接する状態よりも可動ユニット17の高い安定性と精度を得ることができ、撮像装置10の起動時や防振機能が無効状態から有効状態に切り替わったときなどに、これらの傾動の機械的移動端を基準位置として参照して、チルト動作に関するホールセンサ57,58,59(特にホールセンサ57,58)による検出のイニシャライズ(初期化)を行う。特に、第1コイル54の周方向の中央を通り光軸Oを含む平面に沿って可動ユニット17が傾動する場合(傾動制限突起30A,30Fのペアまたは傾動制限突起30C,30Dのペアが傾動規制面68に当接する場合)と、第2コイル55の周方向の中央を通り光軸Oを含む平面に沿って可動ユニット17が傾動する場合(傾動制限突起30B,30Cのペアまたは傾動制限突起30E,30Fのペアが傾動規制面68に当接する場合)が、ホールセンサ57,58で検出される磁束密度変化量が大きいため、この2つの平面に沿う傾動方向でイニシャライズを行うと効果的である。
6つの傾動制限突起30A,30B, 30C,30D,30E,30Fの光軸方向の突出量を等しくすることで、イニシャライズ時の移動量計算や部品管理が容易になるという利点がある。但し、各傾動制限突起30の突出量を異なるものにすることも可能である。
ローリング方向に可動ユニット17が回転動作すると、その動作方向に応じて、バレルホルダ12の揺動案内面20A上に設けた一対のロール範囲制限突起31の一方と他方が支持座40Aの一方と他方の側面に当接することで、動作範囲が制限される。図5に示すように、一対のロール範囲制限突起31の周方向間隔は支持座40Aの周方向幅よりも大きく、各ロール範囲制限突起31と支持座40Aの間の周方向の隙間が、ローリング方向への可動ユニット17(バレルホルダ12)の可動量となる。撮像装置10の起動時や防振機能が無効状態から有効状態に切り替わったときなどに、各ロール範囲制限突起31が支持座40Aに当接する機械的移動端を基準位置として参照して、ロール動作に関するホールセンサ57,58,59(特にホールセンサ59)による検出のイニシャライズを行う。
以上のように、第1から第3のアクチュエータを用いて、可動ユニット17と鏡筒11にピッチング、ヨーイング、ローリングの各動作成分を含む自在な方向の動作(球心揺動中心Qを中心とする回転)を行わせることができる。この動作によって、光軸Oの向き(イメージセンサ19aの受光面の傾き)や、光軸Oを中心とするイメージセンサ19aの回転方向位置を変化させることができる。例えば、撮像装置10に手振れによる振動などが作用した場合に、その姿勢変化に伴うイメージセンサ19a上での画像の振れを軽減させる方向及び大きさに可動ユニット17と鏡筒11を動作させて撮影画像品質の低下を軽減する防振(像振れ補正)制御を行うことができる。防振制御は、姿勢検知センサ72(図9)による撮像装置10の姿勢情報と、ホールセンサ57,58,59による可動ユニット17及び鏡筒11の位置情報に基づいて、制御回路71が各コイル54,55,56の通電を制御することで実行される。特に本実施形態の撮像装置10では、撮像光学系Lとイメージセンサユニット19を支持する鏡筒11を方向自在に回転可能に支持することで、光軸Oと垂直な平面に沿って光学系を動作させるタイプの撮像装置に比して、コンパクトな構成でありながら対応可能な像振れ補正角を大きくすることが可能になっている。そのため、手持ちで撮影することを前提としたカメラのみならず、身体の任意の位置に取り付けられるウエアラブルカメラや、自動車などの移動機械に搭載されるカメラのような、大きな像振れが生じやすい条件の撮像装置においても、優れた防振補正効果を得ることができる。
また、可動ユニット17と鏡筒11を含む可動部分の重心と球心揺動中心Qが略一致するため、可動ユニット17と鏡筒11を駆動する際の負荷変動が少なく、小型軽量な第1,第2及び第3のアクチュエータでレスポンス良く高精度に可動ユニット17と鏡筒11の動作を制御することができる。
以上の撮像装置10では、固定ユニット18に対して可動ユニット17を球心揺動可能に支持させる構成として、球心揺動中心Qを中心とする凸状の球面の一部からなる揺動案内面20A,20B,20Cをバレルホルダ12に形成し、各揺動案内面20A,20B,20Cに対してそれぞれ定位置ボール61と調整ボール62を外径側から当接させている。このように構成した球心揺動用の支持手段は、光軸方向と周方向に位置を異ならせて配置した複数の球体によって球面を支持するため、円滑で安定した球心揺動を実現できる。また、撮像光学系Lの周りにスペース効率良く支持手段が配置されているため、撮像光学系Lの光軸方向の延長上(例えばイメージセンサユニット19の後方)に球心揺動用のピボット等を設ける形態などに比して小型に構成することができる。一方、撮像装置10において球心揺動中心Qに近い奥まった部分に支持手段が位置することから、支持手段を構成する部品の生産性及び部品同士の組立作業性の向上についても考慮した構造になっている。
具体的には、定位置ボール61については、3つの支持座40A,40B,40Cの各ボール保持溝41内に挿入(仮保持)した状態で、コイルホルダ13内に光軸方向後方からバレルホルダ12を挿入することによって、各ボール保持溝41と揺動案内面20A,20B,20Cに挟まれる定位置(図9参照)に保持させることができる。この状態で、各ボール保持溝41の後端部と揺動案内面20A,20B,20Cの間に光軸方向後方へ向けて開放されたスペースが形成され、このスペースに調整ボール62を挿入することができる。さらにコイルホルダ13に対して光軸方向後方からボールホルダ14を取り付けることによって、調整ボール62の保持(抜け止め)が行われて、バレルホルダ12が安定して支持される状態になる。このように、コイルホルダ13とは別部材として設けたボールホルダ14によって調整ボール62の最終的な保持を行う構成とすることで、球心揺動用の支持手段の各構成要素を容易に光軸方向へ順次組み付け可能となり、効率的に組立作業を行うことができる。また、撮像装置10の完成後の分解や調整等のメンテナンス作業も容易に行うことができる。
また、コイルホルダ13は内径側に3つのボール保持溝41を有しているが、ボール保持溝41の後端側を塞ぐ壁部を、コイルホルダ13とは別部材のボールホルダ14に設けたことにより、個々の部品の生産性が向上する。ボール保持溝41の後端側を開放した形態のコイルホルダ13は、全てのボール保持溝41を光軸方向へ移動する型によってまとめて成形することができる。図30から分かるように、コイルホルダ13は全体として光軸Oを囲む筒状をなしており、各ボール保持溝41を含むコイルホルダ13の基本形状を、光軸方向へ移動する型によって成形可能とすることで、簡単かつ安価に得ることができる。また、コイルホルダ13と同様にボールホルダ14やバレルホルダ12についても、光軸方向へ移動する型によってシンプルに成形可能な構成を有しており、簡単かつ安価に得ることができる。
本実施形態とは異なる比較例として、ボール保持溝41’において前端側の前方規制壁41aだけでなく、ボールホルダ14のボール保持面67に相当する後端側の壁面もコイルホルダ13’の一部として一体に形成した(すなわち別体のボールホルダ14を備えない)構成を想定する。この比較例の構成では、各ボール保持溝41’に対して内径側から定位置ボール61と調整ボール62を組み込んだ上で、さらにコイルホルダ13’内にバレルホルダ12を挿入する必要があるが、図9から分かるように揺動案内面20A,20B,20Cの頂部が定位置ボール61と調整ボール62の内径側の頂部を結んだ仮想線よりも外径側に突出した位置にあるため、この両者の干渉によってコイルホルダ13’に対してバレルホルダ12を光軸方向に挿入することができず、組み立てが困難となってしまう。また、それぞれが有底溝でありかつ前後が塞がれた形態の3つのボール保持溝41’をコイルホルダ13’の内径側に形成するためには成形用の型構造が複雑になってしまい、部品の生産性や製造コストにおいても本実施形態に比して不利となる。
ボールホルダ14は、コイルホルダ13に対する組み付け方向(光軸方向)の位置に応じて、各揺動案内面20A,20B,20Cと各ボール保持面67の間の距離が変化するため、各揺動案内面20A,20B,20Cと各ボール保持面67によって挟まれる調整ボール62に対して適切な保持力(フリクション)が得られる位置にボールホルダ14を組み付けることによって安定した支持状態が得られる。特に本実施形態のバレルホルダ14は、コイルバネ70の付勢力によって調整ボール62の保持状態を維持するので、部品間の精度誤差を吸収しながら、容易かつ確実に理想的な支持状態を実現しやすくなっている。
なお、本実施形態とは異なり、コイルバネ70のような付勢部材を用いずに調整ボール62の保持を行う構成を選択することも可能である。この場合、調整ボール62を適切に保持できる光軸方向位置でボールホルダ14をコイルホルダ13に対して固定させる。ボールホルダ14の固定は、固定用のビス(保持ビス69とは異なりボールホルダ14を厳密に位置決めするタイプのビス)や接着剤を用いて行うことができる。
図5や図34に示すように、撮像装置10における球心揺動用の支持手段を構成する揺動案内面20A,20B,20Cや支持座40A,40B,40C(ボール保持溝41)や定位置ボール61や調整ボール62は周方向に所定の間隔(120度間隔)で配置されており、この支持手段の間に大きく分けて3つの周方向スペースが形成される。このスペースを利用して、可動ユニット17に対して球心揺動用の推力を与える3つのアクチュエータ(ヨーク24,25,26、磁石ユニット27,28,29、コイル54,55,56)が設けられている。これにより、可動ユニット17の支持と駆動をスペース効率良く実現することができ、撮像装置10の小型化に寄与している。また、この構成によって可動部分の重量バランスが取りやすく、重心を球心揺動中心Qに近づけやすくなっている。
第2の実施形態に係る撮像装置110を図35ないし図38に示す。撮像装置110において第1の実施形態の撮像装置10と共通する構成要素については、撮像装置10と共通する符号で示している。なお、図35ないし図38では省略しているが、撮像装置110は、第1の実施形態の撮像装置10のボールホルダ14とイメージセンサユニット19に相当する部位を備えている。つまり、調整ボール62の保持に関する構造については第1の実施形態と共通である。
撮像装置10と同様に撮像装置110では、固定ユニット18を構成するコイルホルダ(固定部材)113に対して可動ユニット17を構成するバレルホルダ(可動部材)112が、球心揺動中心Qを中心として球心揺動可能に支持されているが、撮像装置10と異なり撮像装置110では光軸Oを中心とするローリング方向のバレルホルダ112の回転を規制している。具体的には、撮像装置10における第3のアクチュエータ(第3磁石ユニット29、第3コイル56、ヨーク26)が撮像装置110には設けられておらず、その代わりにバレルホルダ112に回転規制ピン32が設けられ、コイルホルダ113には回転規制ピン32が挿入される回転規制穴33が設けられている。回転規制穴33からコイルホルダ113の外周面まで連通する貫通部34が形成されている。
回転規制ピン32は光軸Oを中心とする径方向に軸線が向く円柱状の突出部であり、回転規制ピン32の軸線の延長上に球心揺動中心Qが位置している。磁石支持突起21b,22bの各々の周方向の中心と回転規制ピン32の軸線が周方向に略等間隔(120度間隔)で設けられている。回転規制穴33は光軸方向に長手方向を向けた長穴であり、図37に示すように、回転規制穴33内には周方向に離間して対向する一対の略平行な対向面33aが形成される。回転規制穴33の一対の対向面33aの間隔は、円柱状の回転規制ピン32の直径と略同じ大きさであり、一対の対向面33aによって回転規制ピン32が挟まれることによって、バレルホルダ112は固定ユニット18に対して光軸Oを中心とするローリング方向の回転(ロール動作)が規制される。回転規制穴33は光軸方向には回転規制ピン32の直径に対して余裕のある長さを有しており、仮想平面P1(図35)に沿う可動ユニット17のピッチング方向のチルト動作を制限しない。また、回転規制穴33に対して、円柱状の回転規制ピン32は自身の軸線を中心とする回転が可能であり、仮想平面P2(図35)に沿う可動ユニット17のヨーイング方向のチルト動作を制限しない。そのためバレルホルダ112(可動ユニット17)は、球心揺動中心Qを中心として光軸Oを傾動させるチルト動作を、回転規制ピン32と回転規制穴33によって妨げられずに行うことができる。
撮像装置110においてバレルホルダ112を球心揺動可能に支持する支持手段は、撮像装置10における支持手段と共通の構成である。前述のように図35ないし図38ではボールホルダ14の図示を省略しているが、3つの保持ビス69(図35、図36)を用いてコイルホルダ113の後部にボールホルダ14が取り付けられる。ボールホルダ14はコイルバネ70の付勢力によって3つの調整ボール62に押し付けられ、各調整ボール62が図35及び図36に示す位置に保持される。
第3の実施形態に係る撮像装置210とその構成要素を図39ないし図57に示す。撮像装置210において第1の実施形態の撮像装置10と共通する構成要素については、撮像装置10と共通する符号で示している。なお、図面では省略しているが、撮像装置210は、第1の実施形態の撮像装置10のイメージセンサユニット19に相当する部位を備えている。
コイルホルダ(固定部材)213には、第1の実施形態の3つの支持座40A,40B,40Cに代えて、内径方向へ突出する3つの突出部80A,80B,80Cが周方向に略等間隔(120度間隔)で形成されている。各突出部80A,80B,80C内には径方向に貫通する貫通穴(ガイド穴)81,82,83が形成されている。図49に示すように、貫通穴81内には互いに開口の大きさが異なる大開口部81aと中開口部81bと小開口部81cが形成される。最も大きい開口サイズの大開口部81aが外径側に位置し、最も小さい開口サイズの小開口部81cが内径側に位置し、中間の開口サイズの中開口部81bが大開口部81aと小開口部81cの間に位置する。図47と図49に示すように、貫通穴82と貫通穴83もそれぞれ貫通穴81と同様の大開口部82a,83aと中開口部82b,83bと小開口部82c,83cを有している。突出部80A,80B,80Cのそれぞれの内径側の端部には、小開口部81c,82c,83cの一部を前方に向けて凹設した形状の定位置ボール保持凹部84,85,86が形成されている。図42、図46、図48に示すように、定位置ボール保持凹部84,85,86はそれぞれ、光軸方向の前方と周方向の両側と外径側に壁面を有し、光軸方向の後方と内径側が開放された凹部である。
貫通穴81,82,83にはそれぞれ、外径側から内径方向に向けてボールホルダ(支持手段、保持部材)87,88,89が挿入される。ボールホルダ87,88,89は互いの形状が同じであり、図50ないし図57に示す単品形状では、ボールホルダ87に対応するボールホルダ88,89の部位を括弧書きの符号で示している。ボールホルダ87,88,89の内径側を向く端部に逃げ凹部87a,88a,89aと調整ボール保持凹部87b,88b,89bが光軸方向(前後方向)に位置を異ならせて形成されている。図50ないし図53、図56及び図57に示すように、逃げ凹部87a,88a,89aはそれぞれボールホルダ87,88,89の内径部と前端部の間の角部を切り欠いて形成されており、光軸方向後方と外径側に壁面を有し、光軸方向前方と内径側が開放された凹部である。図51、図53、図56、図57に示すように、調整ボール保持凹部87b,88b,89bはそれぞれ、光軸方向の前後と周方向の両側と外径側に壁面を有し、内径側のみが開放された凹部である。ボールホルダ87,88,89の内径側の端部には湾曲面87c,88c,89cが形成されている。湾曲面87c,88c,89cはそれぞれバレルホルダ(可動部材)212の揺動案内面20A,20B,20Cに沿う形状の湾曲面であり、湾曲面87c,88c,89cの前端側に逃げ凹部87a,88a,89aが位置し、湾曲面87c,88c,89cの後端付近に調整ボール保持凹部87b,88b,89bが位置する。
ボールホルダ87,88,89の外径側の端部には、ボールホルダ87,88,89の本体部分に対して光軸方向(前後方向)と周方向へ突出する薄板状のフランジ87d,88d,89dが形成されている。図50、図55、図57に示すように、ボールホルダ87,88,89にはさらにバネ挿入穴87e,88e,89eが形成されている。バネ挿入穴87e,88e,89eは、径方向に軸線を向けて形成された円筒状の有底穴であり、外径側の端部がフランジ87d,88d,89d上に開口し、内径側の端部が底部として塞がれている。図57に示すように、各バネ挿入穴87e,88e,89eは、調整ボール保持凹部87b,88b,89bの径方向の延長上に位置している。
ボールホルダ87,88,89のバネ挿入穴87e,88e,89eにはそれぞれコイルバネ(支持手段、付勢部材)90,91,92を挿入可能である(図42参照)。各コイルバネ90,91,92は自由状態でバネ挿入穴87e,88e,89eの深さよりも長く、コイルバネ90,91,92の一端がバネ挿入穴87e,88e,89eの底部(内径側の端部)に当接した状態で、コイルバネ90,91,92の他端がバネ挿入穴87e,88e,89eから外径方向に突出する。
ボールホルダ87,88,89の本体部は、対応する貫通穴81,82,83のうち小開口部81c,82c,83cに挿入可能な大きさ(断面形状)であり、フランジ87d,88d,89dは中開口部81b,82b,83bに挿入可能な大きさ(断面形状)である(図42参照)。この挿入状態で、ボールホルダ87,88,89はそれぞれコイルホルダ213に対する周方向と光軸方向の移動が規制される。
貫通穴81,82,83にはさらにバネ押さえ部材(支持手段、押さえ部材)93,94,95が挿入される。バネ押さえ部材93,94,95はそれぞれ対応する貫通穴81,82,83のうち大開口部81a,82a,83aにのみ挿入可能な大きさである(図42参照)。バネ押さえ部材93,94,95には、ボールホルダ87,88,89のバネ挿入穴87e,88e,89eに対向する位置にバネ保持突起93a,94a,95aが設けられている。図42、図43、図45に示すように、バネ保持突起93a,94a,95aにはコイルバネ90,91,92の端部が嵌る円形状の凹部が形成されている。
図42に示すように、貫通穴81内にボールホルダ87を挿入した状態では、定位置ボール保持凹部84と逃げ凹部87aによって、内径方向に向けて開口する凹部が形成され、この凹部内に定位置ボール(支持手段、定位置支点部材、定位置支点部)96が挿入される。定位置ボール96は、光軸方向前方と周方向の両側と外径側には定位置ボール保持凹部84の壁面に当接して位置が定まり、光軸方向後方と内径側には揺動案内面20Aに当接して位置が定まる。なお、図42では定位置ボール96の後方に逃げ凹部87aの壁面が対向して示されているが、この壁面は定位置ボール96の光軸方向の位置決めには積極的に関与せず(当接せず)、定位置ボール96の光軸方向後方への移動は、揺動案内面20Aの傾斜形状によって規制される。
また、ボールホルダ87の調整ボール保持凹部87b内に調整ボール(支持手段、調整支点部材)97が挿入される。調整ボール97は、光軸方向前後と周方向の両側と外径側には調整ボール保持凹部87bの壁面に当接して位置が定まり、内径側には揺動案内面20Aに当接して位置が定まる。調整ボール保持凹部87bの径方向の深さは、図42のように定位置ボール96と調整ボール97が揺動案内面20Aに当接している状態で、ボールホルダ87の内径側の端部(湾曲面87c)が揺動案内面20Aから離間するように設定されている。つまり、ボールホルダ87を貫通穴81の内径方向に向けて挿入したときに、ボールホルダ87よりも先に調整ボール97が揺動案内面20Aに当接する寸法関係になっている。
ボールホルダ87のバネ挿入穴87e内にはコイルバネ90が挿入される。そして、ボールホルダ87に続いてバネ押さえ部材93が貫通穴81の大開口部81a内に挿入される。図42に示すように、貫通穴81にバネ押さえ部材93を挿入するとバネ保持突起93aがコイルバネ90の端部に当接する。貫通穴81内へのバネ押さえ部材93の挿入量を大きくすると、バネ挿入穴87eの底面とバネ保持突起93aとの間でコイルバネ90が圧縮され、コイルバネ90の反発力によってボールホルダ87を内径方向に押し込む力が作用する。このコイルバネ90からボールホルダ87に働く付勢力によって調整ボール97が揺動案内面20Aに押し付けられる。調整ボール97への付勢力は貫通穴81へのバネ押さえ部材93の挿入量に応じて変化し、適切な付勢力が得られる位置でバネ押さえ部材93を貫通穴81(大開口部81a)内に固定する。バネ押さえ部材93の固定は接着などで行う。前述のように、貫通穴81内に挿入したボールホルダ87は、貫通穴81の内面によって光軸方向と周方向の移動が規制されるため、定位置ボール96と調整ボール97は図42に示す位置でガタつきなく保持される。また、外径方向や光軸方向後方への調整ボール97の脱落がボール保持凹部87bの壁面によって防止される。
なお、定位置ボール96については、ボールホルダ87の逃げ凹部87aの壁面ではなく、コイルホルダ213側の定位置ボール保持凹部84の壁面によって外径側の位置が定められるので、コイルバネ90による内径方向への付勢力は定位置ボール96に対して作用しない。つまり、径方向でのボールホルダ87の位置は調整ボール97に対する保持力にのみ影響を及ぼし、定位置ボール96には影響しない。このように構成することで、定位置ボール96と調整ボール97が精度誤差等で相互干渉することなく、定位置ボール96と調整ボール97のそれぞれを適切に揺動案内面20Aに当接させることができる。
図43ないし図47に示すように、定位置ボール96と調整ボール97はそれぞれ周方向に略等間隔(120度間隔)で3つ設けられる。以上では図42を参照してボールホルダ87とコイルバネ90とバネ押さえ部材93を用いた1つの定位置ボール96と1つの調整ボール97の保持について説明したが、他の2つの定位置ボール96と他の2つの調整ボール97についても同様にして保持される。
具体的には、貫通穴82内に外径側から内径方向へボールホルダ88を挿入し、コイルホルダ213の定位置ボール保持凹部85とボールホルダ88の逃げ凹部88aによって形成される凹部内に定位置ボール96を保持し、ボールホルダ88の調整ボール保持凹部88b内に調整ボール97を保持する。この定位置ボール96と調整ボール97はそれぞれ揺動案内面20Bに当接し、ボールホルダ88の内径側の端部(湾曲面88c)は揺動案内面20Bに当接せず外径方向に離間する。バネ挿入穴88e内にコイルバネ91が挿入され、貫通穴82(大開口部82a)内に挿入したバネ押さえ部材94のバネ保持突起94aとバネ挿入穴88eの底面との間でコイルバネ91を圧縮させた状態でバネ押さえ部材94を接着などで固定する。これにより、調整ボール97に対して内径方向への付勢力を付与しながら、定位置ボール96と調整ボール97がそれぞれ揺動案内面20Bに当接した状態で保持される。
また、貫通穴83内に外径側から内径方向へボールホルダ89を挿入し、コイルホルダ213の定位置ボール保持凹部86とボールホルダ89の逃げ凹部89aによって形成される凹部内に定位置ボール96を保持し、ボールホルダ89の調整ボール保持凹部89b内に調整ボール97を保持する。この定位置ボール96と調整ボール97はそれぞれ揺動案内面20Cに当接し、ボールホルダ89の内径側の端部(湾曲面89c)は揺動案内面20Cに当接せず外径方向に離間する。バネ挿入穴89e内にコイルバネ92が挿入され、貫通穴83(大開口部83a)内に挿入したバネ押さえ部材95のバネ保持突起95aとバネ挿入穴89eの底面との間でコイルバネ92を圧縮させた状態でバネ押さえ部材95を接着などで固定する。これにより、調整ボール97に対して内径方向への付勢力を付与しながら、定位置ボール96と調整ボール97がそれぞれ揺動案内面20Cに当接した状態で保持される。
第1の実施形態の撮像装置10と同様に第3の実施形態の撮像装置210では、揺動案内面20A,20B,20Cに当接する計3つの定位置ボール96と計3つの調整ボール97を介して、バレルホルダ212(可動ユニット17)がコイルホルダ213(固定ユニット18)に対して球心揺動中心Qを中心として球心揺動(光軸Oを傾動させるチルト動作と、光軸Oを中心とするロール動作の両方)可能に支持される。このバレルホルダ212(可動ユニット17)球心揺動に際しては、揺動案内面20A,20B,20Cの位置変化に伴って定位置ボール96や調整ボール97が転動してもよいし、定位置ボール96や調整ボール97を転動させずに揺動案内面20A,20B,20Cが摺動してもよい。揺動案内面20A,20B,20Cと定位置ボール96及び調整ボール97は点接触の関係であるため、いずれの態様でも少ない抵抗でスムーズに可動ユニット17を動作させることができる。
撮像装置210では、一対のロール範囲制限突起31がボールホルダ87の側面に当接することによってロール動作の範囲が制限される。あるいは一対のロール範囲制限突起31が突出部80Aの側面に当接してロール動作の範囲を制限するように構成を変更することもできる。また、バレルホルダ212の後方に位置させてコイルホルダ213内に後方カバー(図示略)が設けられており、この後方カバーに設けた傾動規制面(第1の実施形態のボールホルダ14の傾動規制面68と同様の部位)に対して、バレルホルダ212に設けた傾動制限突起30(30A,30B,30C,30F)が当接することにより、チルト動作の範囲を制限する。
以上の撮像装置210では、コイルホルダ213とは別部材のボールホルダ87,88,89を備え、揺動案内面20A,20B,20Cとの距離が変化する方向(光軸Oに対して略垂直な径方向)に各ボールホルダ87,88,89を移動させることで調整ボール97の保持を行う。そのため、第1の実施形態の撮像装置10と同様に、各ボール96,97とバレルホルダ212を互いに干渉させずに簡単にコイルホルダ213内に組み付け可能であり、効率的に組立作業を行うことができる。具体的な組付手順としては、コイルホルダ213内の定位置ボール保持凹部84,85,86にそれぞれ定位置ボール96を仮保持させた状態で、コイルホルダ213に対してバレルホルダ212を光軸方向後方から挿入する。バレルホルダ212は揺動案内面20A,20B,20Cがそれぞれ定位置ボール96に当接するまで挿入させる。これにより、各揺動案内面20A,20B,20Cと各定位置ボール保持凹部84,85,86の底面に挟まれる定位置に定位置ボール96が保持される(図42参照)。続いて、調整ボール保持凹部87b,88b,89b内に調整ボール97を仮保持させた各ボールホルダ87,88,89を貫通穴81,82,83に挿入する。すると、第27ボール97が各揺動案内面20A,20B,20Cと各ボールホルダ87,88,89(調整ボール保持凹部87b,88b,89b)の間に保持される。最後に、ボールホルダ87,88,89との間にコイルバネ90.91,92を挟んだ状態でバネ押さえ部材93,94,95を貫通穴81,82,83内に固定することで、ボールホルダ87,88,89の径方向位置が定まって調整ボール97が安定的に保持される。
コイルホルダ213は、ボールの支持手段としては突出部80A,80B,80Cの内径側端部に定位置ボール保持凹部84,85,86を有するのみのシンプルな構造であるため、製造しやすく安価に得ることができる。各突出部80A,80B,80Cにはボールホルダ87,88,89を挿入する貫通穴81,82,83が形成されるが、貫通穴81,82,83は外径方向に進むにつれて段階的に開口を大きくする形状であるため、外径方向に移動(離型)する型によって容易に成形することが可能である。また、ボールホルダ87,88,89やバネ押さえ部材93,94,95もそれぞれ簡単に製造できるシンプルな構成の部材である。よって、撮像装置210における球心揺動用の支持手段を、簡単かつ安価に得ることができる。
撮像装置210では、コイルバネ90.91,92によってボールホルダ87,88,89を付勢することで、部品間の精度誤差を吸収しながら、容易かつ確実に調整ボール97を揺動案内面20A,20B,20Cに当接させることができる。これと異なる変形例として、コイルバネ90.91,92のような付勢部材を用いずに調整ボール97の保持を行う構成を選択することも可能である。具体的には、調整ボール97を適切に保持できる径方向位置で、ボールホルダ87,88,89を貫通穴81,82,83内に接着などで固定させる。この場合、バネ押さえ部材93,94,95は不要となる。
図41、図45、図46に示すように、突出部80A,80B,80Cの貫通穴81,82,83内にボールホルダ87,88,89を収めた構造の球心揺動用の支持手段は、第1の実施形態における球心揺動用の支持手段(支持座40A,40B,40C)と同程度のスペースに配置可能であり、第1の実施形態と同様のスペース効率を得ることができる。
第4の実施形態に係る撮像装置310を図58に示す。この撮像装置310は、第3の実施形態の撮像装置210に似た構成を有しており、共通する構成要素については図39ないし図57における撮像装置210と共通する符号で示している。
図58に示すように、撮像装置310は、第3の実施形態の撮像装置210におけるボールホルダ87と調整ボール97に代えて可動支持部材(支持手段)187を有している。可動支持部材187は、概略の形状はボールホルダ87と共通しているが、調整ボール97のような別部材を介さずにバレルホルダ212の揺動案内面20Aに対して直接に当接する調整球状突起(支持手段、調整支点部)197を備えている点が異なる。調整ボール97と同様に、調整球状突起197は揺動案内面20Aに対して点接触する球面状の外面を有している。図58には表れていないが、撮像装置310は、第3の実施形態の撮像装置210のボールホルダ88,89とこれに対応する2つの調整ボール97に代えて、可動支持部材187と同じ構成の別の2つの可動支持部材を有している。可動支持部材187と同様に、これら2つの可動支持部材はそれぞれ、バレルホルダ212の揺動案内面20Bと揺動案内面20Cに対して点接触する調整球状突起を有している。可動支持部材187を含む3つの可動支持部材は、周方向に略等間隔(120度間隔)で配置され、かつ光軸方向の略同じ位置に設けられている。そして、この3つの可動支持部材の3つの調整球状突起(その一つが図58に示す調整球状突起197)は、第1及び第2の実施形態の3つの調整ボール62や第3の実施形態の3つの調整ボール97と同様に、可動ユニット17(バレルホルダ212)を球心揺動可能に支持する手段として機能する。
第5の実施形態に係る撮像装置410を図59に示す。この撮像装置410は、第4の実施形態の撮像装置310(図58)に似た構成を有しており、共通する構成要素については図58における撮像装置310と共通する符号で示している。
図59に示すように、撮像装置410は、第4の実施形態の撮像装置310における定位置ボール96に代えて、固定球状突起(支持手段、定位置支点部)196がコイルホルダ213の一部として一体的に形成されている。調整ボール96と同様に、固定球状突起196はバレルホルダ212の揺動案内面20Aに対して点接触する球面状の外面を有している。図59には表れていないが、撮像装置410のコイルホルダ213は、固定球状突起196と同じ構成の別の2つの固定球状突起を有しており、固定球状突起196を含む3つの固定球状突起は、コイルホルダ213において周方向に略等間隔(120度間隔)で配置され、かつ光軸方向の略同じ位置に設けられている。そして、この3つの固定球状突起(その一つが図59に示す固定球状突起196)は、第1及び第2の実施形態の3つの調整ボール61や第3及び第4の実施形態の3つの調整ボール96と同様に、可動ユニット17(バレルホルダ212)を球心揺動可能に支持する手段として機能する。
第4の実施形態の撮像装置310や第5の実施形態の撮像装置410から分かるように、可動ユニット17を球心揺動可能に調整する手段として、独立した球状体である定位置ボール61,96や調整ボール62,97に代えて、固定球状突起196や調整球状突起197のように他の部材に一体的に形成した支点部(球状突起)を用いることが可能である。コイルホルダ13,113,213のような固定部材に形成した支点部(固定球状突起196)は、定位置ボール61,96と同様に固定部材に対する位置が変化しない定位置支点部として機能する。一方、可動支持部材187のように固定部材に対して所定の方向に可動に形成した支点部(調整球状突起197)は、調整ボール62,97と同様に、部品間の精度誤差などを吸収可能な調整支点部として機能する。第4及び第5の実施形態では、径方向(光軸Oに垂直な方向)に移動する可動支持部材187に調整球状突起197を設けているが、第1の実施形態のボールホルダ14のように光軸方向に可動の部材に調整球状突起を設けることも可能である。
なお、可動ユニット17を球心揺動可能に調整する手段として、独立した球状体である定位置ボール61,96や調整ボール62,97を用いる場合、これらのボールが転動しない構成にすることも可能である。例えば、第1と第2の実施形態の定位置ボール61や調整ボール62は、コイルホルダ13,113のボール保持溝41内への圧入によって転動しない状態にすることができる。第3と第4の実施形態の定位置ボール96は、コイルホルダ213の定位置ボール保持凹部84への圧入によって転動しない状態にすることができる。第3の実施形態の調整ボール97は、ボールホルダ87,88,89の調整ボール保持凹部87b,88b,89b内への圧入によって転動しない状態にすることができる。このようにして転動しない状態で保持されたボールは、第5の実施形態の固定球状突起196や、第4及び第5の実施形態の調整球状突起197と同様に、バレルホルダ12,112,212の揺動案内面20A,20B,20Cに対して点接触して可動ユニット17を球心揺動可能に支持することができる。
以上、図示実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は要旨の範囲内において図示実施形態とは異なる形態にすることが可能である。例えば、第1の実施形態ではコイルホルダ13に対して光軸方向に移動するボールホルダ14によって調整ボール62を保持し、第3の実施形態ではコイルホルダ213に対して径方向(光軸Oに垂直な方向)に移動するボールホルダ87,88,89によって調整ボール97を保持しているが、これらと異なる方向に移動する保持部材を用いることもできる。調整ボール62や調整ボール97が当接する揺動案内面20A,20B,20Cは球面であるため、この球面に対して交差する成分を含む方向の移動であれば、揺動案内面20A,20B,20Cに対する距離を変化させて調整ボール62や調整ボール97の保持を実現することができる。一例として、光軸Oに対して斜めに移動する保持部材を採用してもよい。また、第4及び第5の実施形態の可動支持部材187についても、コイルホルダ213に対して径方向(光軸Oに垂直な方向)ではなく、光軸Oに対して斜めに移動するような構成を採用することができる。
図示実施形態では、光軸方向に並ぶ関係にある定位置ボール61及び調整ボール62が共通の揺動案内面20A(または20B,20C)に当接し、光軸方向に並ぶ関係にある定位置ボール96及び調整ボール97が共通の揺動案内面20A(または20B,20C)に当接し、光軸方向に並ぶ関係にある固定球状突起196(または定位置ボール96)及び調整球状突起197が共通の揺動案内面20A(または20B,20C)に当接している。この構成は揺動案内面20A,20B,20Cを有するバレルホルダ12,112,212の形状を簡略にできるという利点があるが、変形例として、定位置ボール61が当接する球面と調整ボール62が当接する球面の径を異ならせたり、定位置ボール96が当接する球面と調整ボール97が当接する球面の径を異ならせたり、固定球状突起196(または定位置ボール96)が当接する球面と調整球状突起197が当接する球面の径を異ならせたりすることも可能である。この場合、径の異なる各球面は互いの中心が球心揺動中心Qに一致するように位置を設定する。
また、図示実施形態では、対をなす定位置ボール61と調整ボール62が光軸方向の前後に並び(同じ周方向位置にあり)、対をなす定位置ボール96と調整ボール97が光軸方向の前後に並び(同じ周方向位置にあり)、対をなす固定球状突起196(または定位置ボール96)と調整球状突起197が光軸方向の前後に並ぶ(同じ周方向位置にある)配置になっている。この構成は、多数のボールや球状突起を設ける際の周方向におけるスペース効率の向上に寄与すると共に、各ボールや球状突起の支持手段を一部共通化させて構成の簡略化を実現できる(例えば、共通のボール保持溝41内に定位置ボール61と調整ボール62を収めている)という点で優れている。しかし、定位置ボール61と調整ボール62の互いの周方向位置が異なる変形例や、定位置ボール96と調整ボール97の互いの周方向位置が異なる変形例や、固定球状突起196(または定位置ボール96)と調整球状突起197の互いの周方向位置が異なる変形例を採用することも可能である。
図示実施形態では、球心揺動用の支持手段として、3つの定位置ボール61(または3つの定位置ボール96、3つの固定球状突起196)と、3つの調整ボール62(または3つの調整ボール97、3つの調整球状突起197)を備えている。固定部材であるコイルホルダ13,113,213に対して予め位置が定められる定位置支点部である定位置ボールや固定球状突起については、周方向に位置を異ならせて3つ設けることでバレルホルダ12,112,212の安定した支持を実現できる。定位置支点部(定位置ボールや固定球状突起)が2つ以下では、光軸直交面内でのバレルホルダ12,112,212の位置が定まらないので支持手段として成立しない。また、定位置支点部が4つ以上あると、互いの精度誤差によってバレルホルダ12,112,212の位置が不安定になるおそれがある。従って定位置支点部については図示実施形態のように3点支持が好適となる。可動の調整支点部である調整ボールや調整球状突起についても同様の観点から3点支持が好適であるが、ボールホルダ14やボールホルダ87,88,89のような保持部材や可動支持部材187の位置調整によって誤差吸収できる余地があるため、調整支点部(調整ボールや調整球状突起)は4つ以上設けることも可能である。なお、定位置支点部や調整支点部を3つ備える場合は、図示実施形態のように周方向に略間隔で配置することが、安定性や支持精度の点で有利である。
図示の各実施形態は、防振用の駆動手段としてボイスコイルモータを用いているが、防振用の駆動手段としてボイスコイルモータ以外を採用してもよい。また、図示実施形態は防振動作時に移動する可動部材(バレルホルダ12,112,212)に磁石とヨークを支持し、防振動作時に移動しない固定部材(コイルホルダ13,113,213)にコイルを支持した、いわゆるムービングマグネットタイプのボイスコイルモータであるが、この配置関係を逆にしたムービングコイルタイプのボイスコイルモータを用いることもできる。
各実施形態の撮像装置では、撮像光学系Lとイメージセンサユニット19を含む撮像手段の全体にチルト動作やローリング動作を行わせているが、撮像光学系Lの一部のレンズ(レンズ群)やイメージセンサ19aのみを動作させて像振れ補正を行うタイプの撮像装置にも本発明を適用可能である。