(用語及び図面等についての留意点)
以下の説明において、「穴」又は「穴部」は、凹部(有底穴)及び貫通孔(無底穴)のいずれであってもよいものとする。また、「穴部」は、個々の穴だけでなく、複数の穴全体を指すことがあるものとする。穴部の一種である「長穴部」は、溝及びスリットのいずれであってもよいものとする。「溝」は、凹部の一種であるものとする。「スリット」は、貫通孔の一種であるものとする。
以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。また、水晶片の形状等の説明においては、基本的に、エッチングの誤差等の加工誤差については無視する。ただし、一部の実施形態においては、その誤差も含めて形状を説明することがある。
図面には、便宜上、D1軸、D2軸及びD3軸からなる直交座標系を付すことがある。また、以下で説明する水晶振動子等は、いずれの方向が上下方向又は水平方向とされてもよいが、便宜上、D1軸方向を前後方向、D2軸方向を左右方向、D3軸方向を上下方向等ということがある。また、単に平面視という場合は、D3軸方向に見ることをいうものとする。
第2の実施形態に以降において、既に説明した構成と同一又は類似する構成については、既に説明した構成と同一の符号を付すことがあり、また、説明を省略することがある。
互いに同一又は類似する構成については、「第1振動腕23A」及び「第2振動腕23B」のように、互いに共通する名称(振動腕)に互いに異なる番号(第1、第2)を付すとともに、符号に互いに異なる大文字のアルファベット(A、B)を用いることがある。また、この場合において、単に「振動腕23」というなど、番号と大文字のアルファベットとを省略して、両者を区別しないことがある。
<第1実施形態>
(水晶振動子の概略構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係る水晶振動子1(以下、「水晶」は省略することがある。)の概略構成を示す分解斜視図である。図2(a)は、振動子1の内部を示す平面図である。図2(b)は,図2(a)のIIb−IIb線における断面図である。図2(c)は、図2(a)のIIc−IIc線における断面図である。
振動子1は、例えば、図1に特に示すように、主として3つの部材からなる。すなわち、振動子1は、電圧が印加されて振動する水晶振動素子3(以下、「水晶」は省略することがある。)と、振動素子3をパッケージングするための素子搭載部材5及び蓋部材7とを有している。
箱状の素子搭載部材5に振動素子3が収容され、素子搭載部材5に蓋部材7が被せられると、振動子1は、例えば、全体として、概略、薄型の直方体状となる。素子搭載部材5の内部は、例えば、蓋部材7により封止される。また、当該内部は、例えば、真空とされ、又は、適宜なガス(例えば窒素)が封入されている。
振動子1の寸法は適宜に設定されてよい。例えば、比較的小さいものでは、幅(D1軸方向)は、0.40mm以上3.20mm以下、長さ(D2軸方向)は0.65mm以上5.00mm以下、厚さ(D3軸方向)は0.2mm以上1.2mm以下である。
振動子1は、例えば、不図示の回路基板等の実装面に対して下面(D3軸方向の負側の面)を対向させて配置され、半田等からなるバンプによって実装面に表面実装される。そして、振動子1は、その回路基板に設けられている発振回路によって電圧が印加され、発振信号の生成に寄与する。
(パッケージの構成)
素子搭載部材5は、例えば、素子搭載部材5の主体となる基体9と、振動素子3を実装するためのパッド11と、振動子1を不図示の回路基板等に実装するための外部端子13とを有している。
基体9は、絶縁材料からなり、振動素子3を収容する凹部5aを有している。基体9を構成する絶縁材料は、例えば、セラミック又は樹脂である。なお、基体9は、複数部材から構成されていてもよい。振動素子3の実装面となる凹部5aの底面は、例えば、平面状である。
パッド11は、例えば、凹部5aの底面に設けられた導電層により構成されている。パッド11は、例えば、2つ(1対)設けられている。2つのパッド11は、例えば、互いに同一の厚さで、同一平面上(凹部5aの底面)に位置している。パッド11の平面形状及び面積は適宜に設定されてよい。
1対のパッド11の位置は、振動素子3の構成に応じて適宜に設定される。本実施形態では、1対のパッド11は、凹部5aの底面のうち、長手方向(D2軸方向)の一方側の2つの隅部に位置している。
なお、パッド11を構成する導電層、又は、後述する他の導電層(外部端子13、励振電極17及び素子端子19等)は、例えば、金属層である。導電層は、1層(1種類の材料)からなるものであってもよいし、複数層からなるものであってもよい。
外部端子13は、例えば、基体9の下面(凹部5aが開口する側とは反対側の面)に設けられた導電層により構成されている。外部端子13の数、位置、平面形状及び面積は、適宜に設定されてよい。例えば、外部端子13は、基体9の下面の4隅に設けられている。なお、本実施形態では、パッド11が2つであることに対応して、外部端子13は、少なくとも2つ(1対)設けられればよい。
特に図示しないが、1対のパッド11と、4つの外部端子13のうちの2つとは、基体9に設けられた配線導体によって互いに接続されている。配線導体は、例えば、基体9の内部に設けられた層状導体及び/又はビア導体によって構成されている。
蓋部材7は、例えば、金属から構成され、素子搭載部材5の上面にシーム溶接等により接合されている。
(振動素子の概略構成)
図3(a)は、振動素子3を上方から見た斜視図である。図3(b)は、振動素子3を下方から見た斜視図である。
振動素子3は、例えば、水晶片15と、水晶片15に電圧を印加するための第1励振電極17V及び第2励振電極17Hと、振動素子3をパッド11に実装するための第1素子端子19A及び第2素子端子19Bとを有している。
なお、後に図示するように、振動素子3は、適宜な配線を有している。また、特に図示しないが、振動素子3は、上記の他、周波数調整用(後述する振動腕の重量調整用)の金属膜を有していてもよい。
(水晶片の基本的構成:基部及び振動腕)
水晶片15は、全体として概ね一定の厚さ(D3軸方向)に形成されており、また、適宜な平面形状を有している。具体的には、水晶片15は、いわゆる音叉型のものであり、基本的な構成として、基部21と、基部21から並列に延びる第1振動腕23A及び第2振動腕23Bとを有している。1対の振動腕23は、励振電極17によって電圧が印加されて振動する部分であり、基部21は、その振動腕23を支持する部分である。
基部21は、例えば、概略、薄型の直方体状である。すなわち、基部21は、互いに対向する第1主面25A及び第2主面25Bと、この1対の主面25をつなぐ4つの面(前面27、後面29、第1側面31A及び第2側面31B)とを有している。
基部21の各面は、例えば、平面状である。ただし、前面27、後面29及び側面31は、適宜に湾曲したりしていてもよい。互いに対向する面同士は、例えば、互いに平行である。ただし、互いに対向する前面27及び後面29、及び/又は、互いに対向する側面31は、一方が他方に対して傾斜していてもよい。
基部21のD1軸方向、D2軸方向及びD3軸方向の相対的な大きさは、適宜に設定されてよい。図示の例では、基部21は、D1軸方向の大きさと、D2軸方向の大きさとが概ね同じであるが、一方が他方よりも大きくてもよい。また、図示の例では、D3軸方向の大きさが他の軸方向の大きさよりも小さいが、他の軸方向の大きさよりも大きくてもよい。
振動腕23は、基部21の前面27から前方へ直線状に延びている。1対の振動腕23は、平面視において互いに並列(例えば平行)である。振動腕23の根元は、例えば、前面27のうちのD2軸方向の両側端部に位置している。1対の振動腕23の形状は、例えば、互いに同一(線対称)である。振動腕23の断面形状は、例えば、概略矩形であり、また、当該断面形状及びその面積は、振動腕23の長手方向において一定である。ただし、適宜な位置乃至は範囲において、振動腕23の表面に凹部又は凸部が設けられるなどしてもよい。
振動腕23の長さ(D2軸方向)及び幅(D1軸方向)の寸法は、公知のように、振動素子3に要求される周波数に応じて設定される。振動腕23の厚み(D3軸方向)は、強度確保及びスプリアス抑制等の観点から適宜に設定されてよい。
水晶片15は、例えば、Y軸(機械軸)からX軸(電気軸)回りにZ軸(光軸)側へ約−5°〜5°回転させた軸をY′軸としたときに、X軸が1対の振動腕23の並び方向(D1軸方向)となり、Y′軸が振動腕23の延在方向(D2軸方向)となるように切り出されている。
(水晶片の実装のための構成:支持腕及び突出部)
水晶片15は、上記の基部21及び振動腕23に加えて、支持腕33及び突出部35を有している。この支持腕33及び突出部35は、例えば、素子端子19が設けられることなどにより、水晶片15の素子搭載部材5に対する実装に寄与する部分である。
支持腕33は、例えば、第1側面31Aから延び出てから曲がって前方へ延びている。より具体的には、例えば、支持腕33は、第1側面31Aのうち最も後面29側の領域から延び出ている。支持腕33の、第1側面31Aから延び出る部分は、例えば、振動腕23に直交する方向(D1軸方向)に直線状に延びている。支持腕33の曲がる部分は、例えば、90°の角度で屈曲している。支持腕33の、前方に延びる部分は、例えば、基部21の前面27を超えて振動腕23と並列に延びており、また、振動腕23に平行に直線状に延びている。
支持腕33の、第1側面31Aから延び出る部分の長さ(D1軸方向への長さ)は、適宜に設定されてよい。当該長さは、例えば、水晶片15の小型化の観点からは短い方が好ましく、後述の説明から理解されるように、実装の平行度を向上させる観点からは長い方が好ましい。また、本実施形態のように、支持腕33が振動腕23に並列に延びる場合においては、振動腕23が振動したときに振動腕23が支持腕33に当接しないように、両者の間にある程度のクリアランスが必要であり、第1側面31Aから延び出る部分の長さは、このクリアランスを確保するのに十分な長さとされる。
支持腕33の先端位置は、適宜な位置とされてよい。別の観点では、支持腕33のD2軸方向の長さは、適宜な長さとされてよい。当該長さは、例えば、水晶片15の小型化の観点からは短い方が好ましく、後述の説明から理解されるように、実装の平行度を向上させる観点からは長い方が好ましい。ただし、支持腕33の先端が振動腕23の先端を超えなければ、支持腕33の長さが振動子1全体としての大きさに及ぼす影響は比較的低い。図示の例では、支持腕33の先端は、振動腕23の先端位置と同等である。
支持腕33の断面形状は、例えば、概略矩形であり、また、当該断面形状及びその面積は、支持腕33の長さに亘って一定である。ただし、適宜な位置乃至は範囲において、振動腕23の表面に凹部又は凸部が設けられるなどしてもよいし、支持腕33の根元側と先端側とで断面積が異なっていてもよい。支持腕33の幅等の寸法は適宜に設定されてよい。図示の例では、支持腕33の幅は、振動腕23の幅と同等とされているが、振動腕23の幅よりも小さくてもよいし、大きくてもよい。
突出部35は、例えば、第2側面31Bから突出している。より具体的には、例えば、突出部35は、第2側面31Bのうち最も後面29側の領域から突出している。また、例えば、突出部35は、第2側面31Bから、振動腕23に直交する方向(D1軸方向)に直線状に突出しており、突出部35の先端は、突出部35の突出方向に向いている。突出部35の先端面は、例えば、突出方向(本実施形態ではD1軸方向)に直交している。
突出部35の突出量(長さ)は、適宜な大きさとされてよい。当該突出量は、例えば、水晶片15の小型化の観点からは短い方が好ましく、後述の説明から理解されるように、実装の平行度を向上させる観点からは長い方が好ましい。また、突出部35の突出量は、支持腕33のD1軸方向に延び出る部分の長さ(D1軸方向の負側に面する面までの長さ)に対して、大きくてもよいし、小さくてもよいし、同等でもよい。ただし、突出部35は、少なくとも支持腕33全体の長さ(根元から先端までの経路に沿った長さ)よりも短いことが好ましい。このようにすることで、突出部35が、支持部33のように第2側面31bから曲がって前方へ延びている場合と比較して、突出部35に生じる屈曲振動を低減させることができ、振動腕23の振動への影響を低減させることが可能となる。
突出部35の断面形状は、例えば、概略矩形であり、また、当該断面形状及びその面積は、突出部35の長さに亘って一定である。すなわち、突出部35の形状は直方体状である。ただし、適宜な位置乃至は範囲において、突出部35の表面に凹部又は凸部が設けられるなどしてもよいし、突出部35の根元側と先端側とで断面積が異なっていてもよい。突出部35の幅等の寸法は適宜に設定されてよい。図示の例では、突出部35の幅は、支持腕33や振動腕23の幅と同等とされているが、これらの幅よりも小さくてもよいし、大きくてもよい。
(水晶片の振動特性向上のための構成:穴部)
基部21の少なくとも一方の主面25(本実施形態では双方の主面25)には、いずれかの側面31側から1対の側面31間の中央側へ延びる第1溝37A及び第2溝37Bが設けられている。この溝37によって、振動腕23から支持腕33又は突出部35への振動の漏れが低減され、及び/又は、支持腕33又は突出部35が振動腕23の振動に及ぼす影響が低減される。
なお、以下において、溝37の、平面視における位置、形状及び面積等について説明する場合、特に断りがない限り、これらは、基本的には、開口面についてのものであるものとする。後述する実施形態及び変形例の穴部についても同様である。
第1溝37Aは、例えば、第1側面31A側から1対の側面31間の中央側に延びている。また、例えば、第1溝37Aは、前面27(第1振動腕23A)と、支持腕33の根元との間に位置している。すなわち、第1溝37Aは、少なくとも第1側面31A側の端部が、支持腕33の根元よりも前面27側に位置している。また、例えば、第1溝37Aの少なくとも一部は、D2軸方向に見て第1振動腕23Aの幅の少なくとも一部と重なっている。
第2溝37Bは、例えば、第2側面31B側から1対の側面31間の中央側に延びている。また、例えば、第2溝37Bは、前面27(第2振動腕23B)と、突出部35との間に位置している。すなわち、第2溝37Bは、少なくとも第2側面31B側の端部が、突出部35の根元よりも前面27側に位置している。また、例えば、第2溝37Bの少なくとも一部は、D2軸方向に見て第2振動腕23Bの幅の少なくとも一部と重なっている。
第1溝37A及び第2溝37Bは、例えば、平面視における位置、形状及び大きさが基部21の中心(例えば重心)を通りD2軸方向に延びる不図示の対称軸に関して線対称とされている。また、第1主面25Aと第2主面25Bとの間で、第1溝37A同士、又は、第2溝37B同士は、例えば、平面視において、その位置、形状及び大きさが同一とされている。
溝37は、例えば、その全体が支持腕33の根元又は突出部35の根元よりも前面27側に位置している。また、溝37の側面31側の端部は、例えば、1対の側面31間の中央位置との距離よりも側面31との距離が近い位置にあり、図示の例では、側面31に到達している。また、溝37は、例えば、D2軸方向に見て振動腕23の幅全体に亘る長さを有している。なお、図示の例では、溝37は、D2軸方向に見て、側面31から振動腕23の内側の側面の位置まで延びているが、当該位置を超えて延びていてもよいし、当該位置の手前まで延びていてもよい。
溝37は、例えば、平面視において、1対の側面31間の中央側に、側面31側の部分よりも幅が広い部分を有している。例えば、溝37は、1対の側面31の中央側ほど徐々に幅が広くなるように形成されている。より具体的には、例えば、溝37は、側面31側に一の頂点を向けた三角形に形成されている。当該三角形は、例えば、直角三角形であり(図2(a)も参照)、直角を構成する2辺は、振動腕23に平行な方向と直交する方向とに延び、斜辺は振動腕23に対して傾斜している。
溝37の深さは、例えば、幅が広い位置ほど深くなっている。なお、本実施形態の説明では、凹状のものを溝として定義しているように、溝37の最も深い位置においても、第1主面25A側の溝37と第2主面25B側の溝37とは通じていない。ただし、本実施形態とは異なり、両者は、1対の側面31間の中央側において通じていてもよい。すなわち、溝と当該溝に連続するスリットとからなる穴部が構成されていてもよい。
(励振電極の構成)
励振電極17は、例えば、振動腕23の表面に設けられた導電層により構成されている。具体的には、第1励振電極17Vは、各振動腕23において、上下面(D3軸方向の正側の面及びD3軸方向の負側の面)に設けられている。また、第2励振電極17Hは、各振動腕23において、両側の側面(D1軸方向の正側の面及びD1軸方向の負側の面)に設けられている。すなわち、各振動腕23においては、上下面及び両側の側面の合計4面に、合計4つの励振電極17が設けられている。
励振電極17の平面形状は、例えば、振動腕23が延びる方向を長手方向とする概ね長方形である。各励振電極17の幅は、例えば、概ね、各励振電極17が設けられた振動腕23の各面(上下面又は側面)の幅に亘る広さとされている。ただし、第1励振電極17Vと第2励振電極17Hとが互いに短絡しないように、これらの少なくとも一方の励振電極17(本実施形態では第1励振電極17V)の幅は、その励振電極17が設けられた面の幅よりも若干小さくされている。励振電極17の長さ(D2軸方向)は、例えば、振動腕23の長さよりも短い適宜な長さとされている。励振電極17のD2軸方向の位置は、例えば、振動腕23の根元側とされている。
(素子端子の構成)
素子端子19は、例えば、支持腕33又は突出部35の表面に設けられた導電層により構成されている。具体的には、例えば、第1素子端子19Aは、支持腕33の屈曲部の下面(D3軸方向の負側の面)に設けられている。第2素子端子19Bは、突出部35の下面(D3軸方向の負側の面)に設けられている。
素子端子19の平面形状及び面積は適宜に設定されよい。図示の例では、第1素子端子19Aは、支持腕33の幅全体に亘って形成されており、概ね矩形乃至はL字に形成されている。また、図示の例では、第2素子端子19Bは、突出部35の幅全体に亘って形成されており、さらには、突出部35の全体に亘って形成されている。素子端子19は、図示の例よりも広くてもよいし、狭くてもよいし、基部21側へはみ出していてもよい。また、素子端子19は、支持腕33及び突出部35等の下面だけでなく、外周面や上面に広がっていてもよい。
(励振電極の電位)
各振動腕23においては、例えば、2つの第1励振電極17Vが互いに同電位とされ、2つの第2励振電極17Hが互いに同電位とされ、かつ第1励振電極17Vと第2励振電極17Hとの間に交流電圧が印加される。これにより、各振動腕23は、D1軸方向に振動する。
また、1対の振動腕23においては、例えば、第1振動腕23Aの第1励振電極17Vと第2振動腕23Bの第2励振電極17Hとが同電位とされ、かつ第1振動腕23Aの第2励振電極17Hと第2振動腕23Bの第1励振電極17Vとが同電位とされる。これにより、1対の振動腕23は、平面視において互いに線対称に振動する。
(振動素子の配線構造)
上記のような励振電極17同士の電位の関係及び励振電極17に対する電圧の印加は、例えば、水晶片15の表面に設けられた導電層からなる配線によって、励振電極17同士の接続、及び、励振電極17と素子端子19との接続がなされることにより実現されている。例えば、以下のとおりである。
図4は、振動素子3の配線39の一例を示す、図3(b)をより模式的にした斜視図である。
図示の例では、各振動腕23の2つの第2励振電極17Hは、振動腕23の先端側に設けられた先端側配線39aによって互いに接続されている。各振動腕23の2つの第1励振電極17Vは、基部21の側面31を経由する外側配線39bによって互いに接続されている。各振動腕23の内側の側面(1対の振動腕23間)に位置する第2励振電極17Hと、他方の振動腕23の上面又は下面の第1励振電極17Vとは、基部21の前面27を経由する内側配線39cによって互いに接続されている。なお、先端側配線39a、外側配線39b及び内側配線39cは、例えば、溝37よりも前面27側に位置している。
また、図示の例では、内側配線39c又は外側配線39bから延びる端子用配線39dが素子端子19に接続されている。端子用配線39dは、例えば、第2主面25Bにおいて、前面27側から第1溝37A及び第2溝37Bとの間を経由して後面29側へ延び、その後、支持腕33又は突出部35の方向へ延びて素子端子19に至っている。
なお、図示の例はあくまで一例であり、この他にも種々の配線が可能である。
(振動素子の実装構造)
図2(a)〜図2(c)に示すように、振動素子3は、例えば、素子搭載部材5の凹部5aの底面に対向配置され、1対の素子端子19と1対のパッド11とが接合されることによって、素子搭載部材5に電気的に接続されるとともに固定される(すなわち実装される)。接合は、例えば、素子端子19とパッド11との間に介在する接合用バンプ41によってなされる。接合用バンプ41は、例えば、導電性接着剤又は半田からなる。導電性接着剤は、例えば、導電性フィラーが混入された樹脂からなる。半田は、鉛フリー半田であってもよい。
さらに、本実施形態では、振動素子3は、支持腕33の屈曲部よりも先端側において、凹部5aの底面に支持される。具体的には、例えば、凹部5aの底面には、支持用バンプ43が設けられており、支持腕33の先端部の下面が支持用バンプ43に当接して支持されている。なお、便宜上、支持用バンプ43は素子搭載部材5の一部であるものとして説明することがある。支持用バンプ43は、例えば、導電性接着剤又は半田によって構成されてよく、接合用バンプ41と同一材料とされてよい。また、支持用バンプ43は、支持腕33に当接するだけでなく、支持腕33と凹部5aの底面とを接合していてもよい。
特に図示しないが、支持腕33の下面又は凹部5aの底面には、導電性接着剤又は半田からなる支持用バンプ43が接合されるパッドが形成されていてもよい。ただし、このパッドは、パッド11とは異なり、励振電極17に対する電圧印加には寄与しない。当該パッドは、電気的に浮遊状態とされてもよいし、基準電位が付与されてもよい。
このように、振動素子3は、支持腕33の屈曲部、支持腕33の先端側部分及び突出部35の3つの部分において、素子搭載部材5に支持される。これにより、振動素子3の凹部5aの底面に対する意図しない傾斜等が抑制される。
(振動子の製造方法)
振動子1の製造方法は、溝37及び支持用バンプ43の形成、並びに、各部の具体的な形状を除けば、概略、公知の振動子の製造方法と同様でよい。
例えば、振動素子3の製造方法では、まず、振動素子3が多数個取りされるウェハが水晶から切り出される。そのウェハの上下面(D3軸に直交する面)に対して、レジストからなるエッチングマスクを介してエッチング(例えばウェットエッチング)を行うことによって、基部21、振動腕23、支持腕33及び突出部35を有する水晶片15が形成される。また、水晶片15に対してマスクを介して導電層を成膜することによって、励振電極17、素子端子19及び配線39が形成される。なお、導電層の成膜は、ウェハ状態でなされてもよいし、個片化の後であってもよい。
溝37は、例えば、上記の基部21、振動腕23、支持腕33及び突出部35を形成するためのエッチングによって、又はこれとは別のエッチングによって形成される。ここで、溝37が、基部21、振動腕23、支持腕33及び突出部35を形成するエッチングと同時に行われても、1対の振動腕23間の隙間のように貫通孔とならずに、凹部となるのは、水晶がエッチングに対して異方性を示すこと、及びエッチングマスクの溝37を形成するための開口部の径が比較的小さいことからである。具体的には、以下のとおりである。
図12(d)の模式的な断面図に示すように、エッチングマスク101の開口103を介して水晶ウェハ105のエッチングが進むと、水晶のエッチングに対する異方性によって、例えば、第1結晶面105s及び第2結晶面105tが現れる。第1結晶面105s及び第2結晶面105tは、結晶格子の幾何学的規則性に起因して光軸、電気軸及び機械軸に対して水晶に固有の角度で形成される面である。なお、便宜上、単純な形状で説明しているが、実際には、適宜な方向に面する3以上の結晶面が現われてよい。
図12(d)において実線で示すように、エッチングの初期においては、例えば、断面視において、第1結晶面105s及び第2結晶面105tを脚とする台形状に凹部が形成される。その後、エッチングが更に進むと、点線及び矢印で示すように、台形の脚が延びるようにエッチングが進む。そして、脚同士が互いに接すると、エッチングの速度は急激に低下する(別の観点では、基本的にエッチングは停止する。)。従って、開口103の径が小さいほど、早期に台形の脚同士が接してエッチングが停止する。なお、ここで、「エッチングが停止する」とは、エッチングの速度が急激に低下するため、見かけ上エッチングが停止しているように見える状態のことをいう。
ここで、溝37に対応する開口103は、その径(幅)が小さいことから、当該開口103の直下では、穴が貫通する前にエッチングの進行が停止し、凹部が形成される。また、溝37(これに対応する開口103)は、1対の側面31間の中央側ほど幅が広いから、中央側ほど深く形成されることになる。一方、例えば、1対の振動腕23間の隙間は、その幅が比較的大きく、また、振動腕23の先端側からもエッチングされることなどから、貫通孔となる。
また、例えば、素子搭載部材5は、基体9を構成する複数のセラミックグリーンシートに、打ち抜き加工を施すとともに導電層(例えばパッド11及び外部端子13)又はビア導体となる導電ペーストを塗布し、焼成することによって形成される。ただし、支持用バンプ43は、例えば、焼成後、振動素子3を素子搭載部材5に実装する前までに、ディスペンサ等によって導電性接着剤又は半田を供給することによって形成される。
上記のように素子搭載部材5及び水晶振動素子3が作製されると、例えば、ディスペンサ等により、溶融状態の導電性樹脂からなる接合用バンプ41が素子搭載部材5のパッド11に供給される。その上に、水晶振動素子3が載置される。そして、接合用バンプ41が加熱硬化されて、パッド11と素子端子19とが接合用バンプ41によって接合される。なお、支持用バンプ43は、接合用バンプ41と同時に供給され、かつ加熱硬化されてもよい。
以上のとおり、本実施形態では、音叉型の水晶片15は、基部21、1対の振動腕23、支持腕33及び突出部35を有している。基部21は、互いに対向する1対の主面25並びに当該1対の主面25をつなぐ前面27、後面29及び1対の側面31を有している。1対の振動腕23は、前面27から前方へ延びており、主面25の平面視において互いに並列である。支持腕33は、1対の側面31のうちの一方の側面(第1側面31A)から延び出てから曲がって前方へ延びている。突出部35は、1対の側面31のうちの他方の側面(第2側面31B)から突出しており、支持腕33よりも短い、及び/又はその突出方向に先端が向いている。また、主面25及び突出部35の、主面25に続く面(上面及び/又は下面)の少なくともいずれかに穴部(溝37)が形成されている。
また、別の観点では、音叉型の振動素子3は、上記の水晶片15と、1対の振動腕23それぞれに設けられている1対の励振電極17(17V及び17H)と、支持腕33及び突出部35からなる部分の、1対の主面25の(少なくとも)一方の主面25(第2主面25B)側の面(下面)に設けられており、1対の励振電極17に接続されている1対の素子端子19(19A及び19B)と、を有している。
また、別の観点では、音叉型の振動子1は、上記の振動素子3と、振動素子3が実装されている素子搭載部材5と、を有している。振動素子3は、支持腕33の前方に曲がる部分、支持腕33の前方に延びている部分及び突出部35の3つの部分のうち、2つ(本実施形態では支持腕33の前方に曲がる部分及び突出部35)に1対の素子端子19を有している。素子搭載部材5は、1対の素子端子19と対向するとともに接合用バンプ41を介して接合されている1対のパッド11と、前記の3つの部分のうち残りの1つ(本実施形態では支持腕33の前方に延びる部分)の、第2主面25B側の面を支持している支持用バンプ43(枕部)と、を有している。
従って、水晶片15(振動素子3)は、支持腕33の2箇所及び突出部35の1箇所の合計3箇所にて支持されることになり、実装面(凹部5aの底面)に対する傾斜の調整が容易化される。例えば、平行度を向上させることが容易化される。すなわち、実装性が向上する。その一方で、支持腕33及び突出部35は、基部21の側面31から延び出ていることから、基部21の後面29から延び出る場合に比較して、水晶片15のD2軸方向における小型化が容易化される。さらに、基部21に穴部(溝37)が設けられていることから、例えば、振動腕23から支持腕33及び/又は突出部35への振動の漏れを低減するとともに、支持腕33及び/又は突出部35による振動腕23の振動阻害を抑制することができる。すなわち、振動特性が向上する。その結果、例えば、クリスタルインピーダンスを小さくして、電気特性を向上させることができる。
また、本実施形態では、穴部は、第1溝37A及び第2溝37Bを含んでいる(ここでいう穴部は、個々の溝37ではなく、第1溝37A及び第2溝37Bの全体を指している)。第1溝37Aは、主面25において第1側面31A側から1対の側面31間の中央側に延びており、前面27と支持腕33の根元との間に位置している。第2溝37Bは、主面25において第2側面31B側から1対の側面31間の中央側へ延びており、前面27と突出部35の根元との間に位置している。
従って、例えば、振動腕23(前面27)から支持腕33及び突出部35へ漏れる振動をより確実に減衰させることができる。また、穴部がスリット(この態様も本願発明に含まれる)でなく、溝であることから、例えば、基部21の、振動腕23を支持するために必要な強度が確保されやすい。
また、本実施形態では、第1溝37A及び第2溝37Bは、1対の側面31間の中央側に、1対の側面31側の部分よりも幅が広い部分を有している。
従って、例えば、溝の幅が側面31側において大きい態様(この態様も本願発明に含まれる)に比較して、基部21は、側面31側の強度が確保される。その結果、例えば、D1軸方向等への意図しない衝撃に対する強度が確保される。その一方で、溝37の幅を一部とは言え広くしていることから、振動の漏れの低減の効果が向上する。また、上述したように、水晶のエッチングに対する異方性を利用して溝37を形成する態様においては、溝37は、幅が広いほど深くなるから、深さ方向においても振動の漏れの低減の効果が向上する。また、溝37を形成しようとしたにも関わらず、側面31側からのエッチングが進むことによってスリットが形成されてしまう事態が避けられる。
また、本実施形態では、1対の素子端子19の一方(第1素子端子19A)は、支持腕33の前方に曲がる部分に設けられており、1対の素子端子19の他方(第2素子端子19B)は、突出部35に設けられている。
従って、例えば、1対の振動腕23に対してD1軸方向の両側に接合箇所が位置することになり、1対の振動腕23の姿勢を互いに同様にしたり、接合箇所が1対の振動腕23に及ぼす影響を互いに同様にしたりすることが容易である。その結果、例えば、意図しない振動が生じるおそれが低減される。
<第2実施形態>
図5(a)〜図5(c)は、第2実施形態に係る振動子201の構成を示す、図2(a)〜図2(c)に対応する図である。
振動子201は、振動素子203の素子搭載部材205に対する接合位置及びこれに付随する部分のみが第1実施形態と相違する。
具体的には、本実施形態では、支持腕33の前方へ曲がる部分と、支持腕33の前方へ延びる部分との2箇所において、接合用バンプ41によって1対の素子端子19と1対のパッド11とが接合されている。また、突出部35は、支持用バンプ43を介して素子搭載部材205の凹部205aの底面に支持されている。
なお、上記から理解されるように、第2素子端子19Bは、突出部35ではなく、支持腕33の前方に延びる部分に設けられている。同様に、2つのパッド11のうち1つは、凹部205aの底面のうち、突出部35に対向する位置ではなく、支持腕33の前方に延びる部分に対向する位置に設けられている。突出部35及び凹部205aの底面のうち突出部35に対向する領域は、第1実施形態における支持腕33の前方に延びる部分及び当該部分に対向する領域と同様に、支持用バンプ43に直接に当接してもよいし、適宜なパッドを介して支持されてもよいし、当接するだけでなく接合されてもよい。
配線39は、特に図示しないが、図4に示したものと、概ね同様でよい。ただし、図4で第2素子端子19Bに接続されている端子用配線39dは、1対の溝37間を後面29側へ通過した後、支持腕33側へ延びる。なお、当該端子用配線39dは、第1素子端子19Aを避けるために、支持腕33の外側の側面を経由してよい。なお、図4で第2素子端子19Bに接続されている端子用配線39dが支持腕33の下面を経由して第1素子端子19Aに接続され、図4で第1素子端子19Aに接続されている端子用配線39dが支持腕33の内側の側面を経由して第2素子端子19Bに接続されてもよい。
以上の第2実施形態においても、水晶片15は、基部21、1対の振動腕23、支持腕33及び突出部35を有しており、主面25及び突出部35の、主面25に続く面の少なくともいずれかに穴部(溝37)が形成されていることから、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、実装性の向上、小型化の容易化及び振動特性(ひいては電気特性)の向上が図られる。
また、本実施形態では、1対の素子端子19の一方(第1素子端子19A)は、支持腕33の前方に曲がる部分に設けられており、1対の素子端子19の他方(第2素子端子19B)は、支持腕33の前方に延びている部分に設けられている。そして、枕部(支持用バンプ43)は、突出部35を支持している。
従って、例えば、接合用バンプ41の収縮等によって、水晶片15に2つの接合位置間で応力が生じたとしても、その応力は主として支持腕33内に生じることとなり、かつこの応力は支持腕33から基部21への方向とは異なる方向のものとなるから、当該応力が振動に及ぼす影響が低減される。また、一般的に音叉型の振動素子203は、振動腕23の延びる方向(D2軸方向)において相対的に大きいことから、この方向において振動素子203が傾斜すると、振動素子203が凹部205aの底面又は蓋部材7に接するおそれがある。しかし、D2軸方向に2つの接合位置が配置されることによって、そのような不都合のおそれを低減できる。
(溝の変形例)
図6(a)及び図6(b)は、それぞれ、溝37の平面形状の変形例を示す平面図である。
図6(a)の変形例では、第1溝37A及び第2溝37Bに相当する第1溝51A及び第2溝51Bは、溝37と同様に、側面31側から1対の側面31間の中央側へ延びており、また、中央側ほど幅が広くなるように、その平面形状は三角形である。
ただし、溝51は、前面27側の縁部が振動腕23に対して直交せず、振動腕23に直交する方向(D1軸方向)に対して傾斜している。より具体的には、溝51の前面27側の縁部は、1対の側面31間の中央側ほど振動腕23側に位置するように傾斜している。なお、図示の例とは逆に、溝51の前面27側の縁部は、1対の側面31間の中央側ほど振動腕23とは反対側に位置するように傾斜してもよい。傾斜角は、適宜に設定されてよい。
このように、溝51の前面27側の縁部が振動腕23に直交する方向(D1軸方向)に対して傾斜していると、例えば、振動腕23から漏れてきた振動が溝51の前面27側の縁部においてD2軸方向に平行に反射されるおそれが低減される。その結果、例えば、漏れて反射された振動が振動腕23に到達して、振動腕23の本来意図した振動を阻害するおそれが低減される。
図6(b)の変形例では、第1溝37A及び第2溝37Bに相当する第1溝53A及び第2溝53Bは、溝37と同様に、側面31側から1対の側面31間の中央側へ延びており、また、中央側ほど幅が広くなる形状である。また、溝53の前面27側の縁部は、図6(a)の変形例と同様に、振動腕23に直交する方向(D2軸方向)に対して傾斜している。なお、傾斜は、図6(a)と同様に、前方及び後方のいずれへの傾斜であってもよい。
ただし、溝53(その縁部。特に前面27側の縁部)は、直線ではなく、曲線状になっている。より具体的には、溝53の縁部は、振動腕23側に膨らむ曲線状(例えば弧状)となっている。なお、溝53の縁部は、振動腕23とは反対側に膨らむ曲線状であってもよいし、振動腕23側とその反対側に交互に膨らむ曲線状であってもよい。曲線の曲率は適宜に設定されてよい。
このように、溝53の前面27側の縁部が曲線状であると、例えば、振動腕23から漏れてきた振動は、溝53の前面27側の縁部によって種々の方向へ反射されて分散される。その結果、例えば、反射された振動が振動腕23等に集中して、本来意図した振動が阻害されるおそれが低減される。
<第3実施形態>
図7は、第3実施形態に係る振動素子303を示す平面図である。
振動素子303(水晶片315)は、穴部336の位置及び平面形状及びこれに付随する部分のみが第1又は第2実施形態と相違する。なお、本実施形態以降の実施形態又は変形例において、支持腕33及び突出部35における接合又は支持の態様は、第1及び第2実施形態のいずれのものであってもよい。
穴部336は、第1又は第2実施形態と同様に、基部21の主面25に形成されている。穴部336は、1対の主面25の一方又は双方において形成された凹部であってもよいし、一方の主面25から他方の主面25へ基部21を貫通する貫通孔であってもよい。
穴部336は、例えば、平面視において1対の側面31及び後面29に沿って延びており、概略U字状に形成されている。また、穴部336は、D1軸方向に見て、支持腕33の根元の少なくとも一部及び突出部35の根元の少なくとも一部に重なる。
別の観点では、穴部336は、支持腕33の根元の少なくとも一部に対して第1側面31Aの内側に位置している第1側方穴部337Aと、突出部35の根元に対して第2側面31Bの内側に位置している第2側方穴部337Bと、を含んでいる。第1側方穴部337A及び第2側方穴部337Bは、例えば、基部21の中心を通りD2軸に平行な不図示の対称軸に関して線対称の形状である。
第1側方穴部337Aは、例えば、第1側面31Aに沿って延びている第1側方長穴部351Aと、第1側方長穴部351Aから後面29に沿って中央側へ延びている第1後方長穴部353Aとを有している。同様に、第2側方穴部337Bは、例えば、第2側面31Bに沿って延びている第2側方長穴部351Bと、第2側方長穴部351Bから後面29に沿って中央側へ延びている第2後方長穴部353Bとを有している。
なお、図示の例では、第1後方長穴部353Aと第2後方長穴部353Bとはつながっているから、穴部336は、第1側方長穴部351Aと第2側方長穴部351Bとを接続する1つの後方長穴部を有していると捉えられてもよい。
側方長穴部351は、例えば、側面31に平行に直線状に延びている。側方長穴部351の側面31側の縁部は、例えば、側面31から若干離れている。側方長穴部351の幅は、例えば、側方長穴部351の長さ方向において一定であり、その大きさは適宜に設定されてよい。第1側方長穴部351Aは、少なくとも一部が支持腕33の根元の少なくとも一部に対して第1側面31Aの内側に位置している。同様に、第2側方長穴部351Bは、少なくとも一部が突出部35の根元の少なくとも一部に対して第2側面31Bの内側に位置している。なお、側方長穴部351は支持腕33又は突出部35まではみ出していてもよい。側方長穴部351の後面29側の端部は、例えば、後面29から若干離れている。側方長穴部351の前面27側の端部は、例えば、支持腕33の根元又は突出部35の根元よりも前面27側に位置している。側方長穴部351の長さは、適宜に設定されてよい。
後方長穴部353は、例えば、後面29に平行に直線状に延びている。後方長穴部353の後面29側の縁部は、例えば、後面29から若干離れている。また、後方長穴部353は、例えば、側方長穴部351の後面29側の端部と接続されている。後方長穴部353の幅は、例えば、後方長穴部353の長さ方向において一定であり、その大きさは適宜に設定されてよく、側方長穴部351の幅と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
なお、配線39は、特に図示しないが、図4に示したものと、概ね同様でよい。ただし、図4で1対の素子端子19に接続されている2本の端子用配線39dは、1対の溝37間を後面29側へ通過する代わりに、例えば、基部21の側面31を経由して、1対の素子端子19に到達する。例えば、第1実施形態のように1対の素子端子19が支持腕33及び突出部35に設けられる態様では、2本の端子用配線39dの一方は、第1側面31Aを経由して支持腕33へ延び、他方は、第2側面31Bを経由して突出部35へ延びる。また、第2実施形態のように1対の素子端子19がいずれも支持腕33に設けられる態様では、2本の端子用配線39dは、いずれも第1側面31Aを経由して支持腕33へ延びる。そして、例えば、第2実施形態で説明したように、一方の端子用配線39dは、支持腕33の内側又は外側の側面を経由することにより、支持腕33の屈曲部に位置する第1素子端子19Aを避けて第2素子端子19Bへ延びる。
以上の第3実施形態においても、水晶片315は、基部21、1対の振動腕23、支持腕33及び突出部35を有しており、主面25及び突出部35の、主面25に続く面の少なくともいずれかに穴部336が形成されていることから、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、実装性の向上、小型化の容易化及び振動特性(ひいては電気特性)の向上が図られる。
また、本実施形態では、穴部336は、基部21の主面25において、支持腕33の根元に対して第1側面31Aの内側に位置している第1側方穴部337Aと、基部21の主面25において、突出部35の根元に対して第2側面31Bの内側に位置している第2側方穴部337Bと、を含んでいる。
従って、穴部336が支持腕33及び突出部35の根元に隣接することになり、支持腕33及び突出部35が振動腕23の振動に及ぼす影響をより確実に低減することができる。また、例えば、第1実施形態の溝37に比較すると、基部21の前後方向において、支持腕33及び突出部35の根元と、前面27との間に、穴部を設けるためのスペースを確保する必要はなく、基部21を前後方向において小さくすることが可能である。
また、本実施形態では、第1側方穴部337Aは、第1側面31Aに沿って延びている第1側方長穴部351Aを含んでおり、第2側方穴部337Bは、第2側面31Bに沿って延びている第2側方長穴部351Bを含んでいる。
従って、例えば、支持腕33及び突出部35から基部21へ伝わるD1軸方向の応力又はD2軸回りのモーメント等が遮断されやすくなる。また、振動腕23に対してその根元側に直列的に位置する長穴部が形成されることになるから、振動腕23からの振動の漏れの低減も効果的になされることが期待される。
また、本実施形態では、第1側方穴部337Aは、第1側方長穴部351Aから後面29に沿って中央側へ延びている第1後方長穴部353Aを含んでおり、第2側方穴部337Bは、第2側方長穴部351Bから後面29に沿って中央側へ延びている第2後方長穴部353Bを含んでいる。
従って、例えば、後面29を介して支持腕33及び突出部35に漏れる振動が低減される。また、例えば、側方穴部337と組み合わせられ、U字状となっていることから、効果的に振動を閉じ込めることができる。特に1対の後方長穴部353が互いにつながっている場合においては、より効果的に振動の漏れが低減される。
(側方穴部の変形例)
図8(a)は、側方穴部の変形例を示す平面図である。
図7に示した穴部336では、1対の側方穴部337(1対の後方長穴部353)は互いにつながっていた。これに対して、図8(a)の変形例では、図7の側方穴部337に相当する第1側方穴部355A及び第2側方穴部355Bは互いにつながっていない。すなわち、図7の第1後方長穴部353A及び第2後方長穴部353Bに比較して、これらに相当する第1後方長穴部357A及び第2後方長穴部357Bは、前者よりも短く、互いにつながっていない。このような態様では、例えば、図7に示した態様に比較して、後面29を介して支持腕33及び突出部35に振動が漏れるおそれがあるものの、基部21の強度を確保することができる。
図8(b)は、側方穴部の他の変形例を示す平面図である。
図7及び図8(a)では、側方穴部は、後方長穴部を有していた。これに対して、図8(b)の変形例では、側方穴部は、側方長穴部351のみから構成されている。このような態様では、例えば、後方長穴部が設けられる態様に比較して、後面29を介して支持腕33及び突出部35に振動が漏れるおそれがあるものの、基部21の強度を確保することができる。
(分散穴を用いた変形例)
図9(a)は、側方穴部の更に他の変形例を示す平面図である。図9(b)は、図9(a)のIXb−IXb線における断面図である。
第1側方穴部359A及び第2側方穴部359Bは、例えば、図7に示した側方穴部337と同様に、全体としてU字状に構成されている。ただし、各側方穴部359は、径が比較的小さい複数の分散穴361が分散されて構成されている。
分散穴361の平面形状及び面積(既述のように開口面におけるもの)は、適宜に設定されてよい。図示の例では、複数の分散穴361の平面形状及び面積は互いに同一とされており、また、各分散穴361の平面形状は矩形とされている。
分散穴361の平面形状は、矩形の他に、例えば、円形、楕円形、三角形又は八角形であってもよい。また、特に、円形、楕円形又は八角形のように、輪郭線が種々の方向を向いている(少なくとも4方向よりも多い方向)を向いていることが好ましい。別の観点では、分散穴361の平面形状は、曲線状の輪郭線を有する形状(円形、楕円形など)又は5角形以上の多角形であることが好ましい。また、分散穴361は、長穴(溝又はスリット)であってもよいが、複数の分散穴361を1列ではなく平面的に(2方向以上に)分散させる観点からは、最大径と最小径との差が比較的小さいものが好ましい。例えば、最大径が最小径の2倍以下であることが好ましい。また、複数の分散穴361の平面形状及び面積は互いに異なっていてもよい。
分散穴361は、1対の主面25の一方又は双方に形成された凹部であってもよいし、一方の主面25から他方の主面25へ貫通する貫通孔であってもよい。ただし、分散穴361は、その開口面積が比較的小さいことから、凹部となることが多いと考えられる。
また、分散穴361が両主面25に凹部として設けられる場合、分散穴361の位置は、平面視において両主面25間で互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。図9(b)では、分散穴361が両主面25間で互いに同一の位置に配置されている場合を例示している。
複数の分散穴361は、(各主面25において)規則的に配列されていてもよいし、ランダムに配置されていてもよい。図示の例では、複数の分散穴361は、D1軸方向及びD2軸方向(別の観点では長穴部の長さ方向及び幅方向)に行列状に配列されている。なお、このように複数の穴部361が行列状に配列される場合、その行数乃至は列数は適宜に設定されてよい。また、行列状でなく、複数の穴部361は、1列に配列されていてもよい。
複数の分散穴361同士の間隔は適宜に設定されてよい。例えば、複数の分散穴361同士の間隔は、分散穴361の開口面における径よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。複数の分散穴361同士の間隔が比較的小さいと、例えば、複数の穴部361間を介して振動が漏れるおそれが低減される。
以上のように、この変形例では、側方穴部359それぞれは、分散配置されている複数の分散穴361を含んでいる。
従って、例えば、複数の分散穴361間の部分によって基部21の強度を確保しつつ、複数の分散穴361全体としての面積を広くして、振動の漏れを抑制することができる。また、例えば、側方穴部359の縁部が擬似的に変化していることになるから、漏れた振動が側方穴部359の縁部で反射する際に種々の方向に反射されることになり、漏れた振動が分散されることが期待される。
また、この変形例では、好適には、複数の分散穴361それぞれの平面形状は、曲線状の輪郭線を有する形状又は5角形状以上の多角形である。
従って、漏れた振動は、分散穴361の縁部(輪郭線)で反射される際に、種々の方向に分散される。その結果、例えば、反射された振動が振動腕23の本来意図した振動に悪影響を及ぼすおそれが低減される。
図10(a)は、分散穴を用いた側方穴部の他の変形例を示す平面図である。図10(b)は、図10(a)のXb−Xb線における断面図である。
第1側方穴部363A及び第2側方穴部363Bは、図9(a)及び図9(b)に示した側方穴部359と同様に、複数の分散穴361からなるものである。ただし、複数の分散穴361の配列が側方穴部359と相違する。
具体的には、この変形例においては、複数の分散穴361は、格子状に配列されている。例えば、D2軸方向に配列された列について見ると、D1軸方向において互いに隣接する列同士間において、一方の列の分散穴361は他方の列の分散穴361間に位置している。
この変形例の側方穴部363も、先に述べた変形例の側方穴部359と同様に、1対の主面25の一方及び双方に凹状に形成されてもよいし、一方の主面25から他方の主面25へ貫通孔として形成されてもよい。また、複数の分散穴361は、両主面25間で、互いに同一の位置に設けられてもよいし、互いに異なる位置に設けられてもよい。
図10(b)では、複数の分散穴361が両主面25間で互いに異なる位置に設けられている場合を例示している。このような場合、例えば、同図に示すように、各分散穴361の深さを基部21(水晶片)の厚さの半分以上としつつ、当該穴部を凹部にすることができる。これにより、例えば、基部21の強度を保ちつつ基部21の厚さ方向中央を伝搬する振動を減衰できる。また、このような形状は、複数の分散穴361が格子状に配列されるなど、複数の分散穴361間の隙間が比較的大きい(例えば分散穴361の最大径以上)の場合に容易に実現できる。
<第4実施形態>
図11は、第4実施形態に係る振動素子403を示す平面図である。
振動素子403(水晶片415)は、穴部の位置及び平面形状及びこれに付随する部分のみが第1〜第3実施形態と相違する。具体的には、以下のとおりである。
穴部は、第1〜第3実施形態と同様に、基部21の主面25に形成されている。ただし、穴部は、平面視において後面29を切り欠く第1切り欠き部437A及び第2切り欠き部437Bを含んでいる。すなわち、各切り欠き部437は、一方の主面25から他方の主面25へ貫通する貫通孔であり、その内周面の一部は、後面29の外部に通じている。
各切り欠き部437の位置、平面形状及び面積は適宜に設定されてよい。例えば、各切り欠き部437は、後面29から前面27側へD2軸方向に平行に一定の幅で延びる長穴(スリット)状である。また、2つの切り欠き部437は、例えば、D2軸方向に見て2つの振動腕23と重なる位置にあり、より具体的には、例えば、1点鎖線で示すように、切り欠き部437の中心線は振動腕23の中心線に一致している。2つの切り欠き部437は、互いに異なる形状及び面積でもよいが、図示の例では、互いに線対称の形状である。
別の観点では、切り欠き部437は、例えば、第3実施形態の側方穴部乃至は側方長穴部(図7参照)であると捉えられてもよい。すなわち、切り欠き部437は、支持腕33の根元に対して第1側面31Aの内側、又は、突出部35の根元に対して第2側面31Bの内側に位置している。ただし、切り欠き部437は、第3実施形態の側方長穴部351とは異なり、後面29に到達している側方長穴部である。
なお、配線39は、特に図示しないが、第3実施形態と同様に構成されてよい。
以上の第4実施形態においても、水晶片415は、基部21、1対の振動腕23、支持腕33及び突出部35を有しており、主面25及び突出部35の、主面25に続く面の少なくともいずれかに穴部(2つの切り欠き部437)が形成されていることから、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、実装性の向上、小型化の容易化及び振動特性(ひいては電気特性)の向上が図られる。
また、本実施形態では、穴部は、主面25の平面視において後面29を切り欠く切り欠き部437を含んでいる。
従って、例えば、後面29付近における応力の伝達を遮断して、支持腕33及び突出部35が振動腕23の振動に及ぼす影響を低減できる。特に、後面29を切り欠いていることから、例えば、第3実施形態の側方長穴部351(図7)よりも確実に後面29付近における応力を遮断できる。また、D2軸方向に見て振動腕23と重なっていれば、振動腕23からD2軸方向に漏れた振動を好適に逃がすことができる。
<第5実施形態>
図12(a)は、第5実施形態に係る振動素子503を示す平面図である。
振動素子503(水晶片515)は、穴部の位置及び平面形状及びこれに付随する部分のみが第1〜第4実施形態と相違する。具体的には、以下のとおりである。
穴部536は、基部21ではなく、突出部35に設けられている。穴部536は、凹部であってもよいし、貫通孔であってもよい。ただし、例えば、突出部35の強度を確保する観点からは凹部であることが好ましい。以下では、穴部536が凹部である場合を例にとって説明する。
穴部536は、突出部35の上下面の一方に形成されてもよいし、上下面の双方に形成されてもよい。ただし、突出部35の下面に素子端子19が設けられる場合において、突出部35の下面に穴部536を設ける場合は、穴部536と素子端子19とが重ならないことが好ましい。
穴部536の位置、平面形状及び面積は、適宜に設定されてよい。ただし、穴部536の位置は、突出部35の先端側過ぎては、振動腕23と突出部35との相互影響を低減する効果が弱くなることから、突出部35の根元側であることが好ましい。図12(a)では、概ね矩形の穴部536が、突出部35の突出方向の中央位置よりも根元側に位置している場合を例示している。
図12(b)は、水晶片515をエッチングするためのエッチングマスク101について、図12(a)の領域VIIc付近を示す平面図である。また、図12(c)は、領域VIIcの拡大図である。
図12(d)を参照して説明したように、水晶はエッチングに対して異方性を示す。従って、図12(b)に示すような形状のエッチングマスク101を用いてエッチングを行うと、図12(c)に示すように、穴部536は、凹状(底があることをハッチングして示す)となり、また、第2側面31Bと突出部35との間には残渣111(ハッチングして示す)が生じる。なお、図12(d)の説明から理解されるように、残渣111の表面は主面25に対して傾斜する傾斜面(例えば結晶面)である。残渣111は、通常は好ましくないものであるが、本実施形態においては、例えば、穴部536を形成したことによる突出部35の強度低下を補償する補強部として機能する。
以上の第5実施形態においても、水晶片515は、基部21、1対の振動腕23、支持腕33及び突出部35を有しており、主面25及び突出部35の、主面25に続く面の少なくともいずれかに穴部536が形成されていることから、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、実装性の向上、小型化の容易化及び振動特性(ひいては電気特性)の向上が図られる。
また、本実施形態では、穴部は、突出部35に位置する穴部536(突出用穴部)を含んでいる。
従って、突出部35が振動腕23の振動に及ぼす影響を直接的に抑制することができる。また、例えば、穴部536が突出部35のみに形成され、基部21に形成されない場合においては、穴部が基部21の挙動に直接的に及ぼす影響が低減されるから、振動腕23の振動が意図したものからずれるおそれが低減される。また、素子搭載部材205から振動素子3へ伝わる音叉型振動デバイスの外部から振動を受けた場合や、音叉型振動デバイスの外部から熱が加わり素子搭載部材205が変形した場合に対しても、穴部536を形成することで振動腕23の振動に及ぼす影響を抑制することができ、振動特性を向上させることがえきる。
(突出部の穴部の変形例)
図13(a)〜図13(j)は、突出部35に設けられる穴部536の変形例を示す、図12(c)に相当する平面図である。
図13(a)に示すように、穴部536は、基部21と突出部35との境界(第2側面31B)に隣接していてもよい。この場合、例えば、突出部35の接合位置又は被支持位置に対して基部21側に穴部536を位置させやすい。その結果、例えば、接合又は支持が振動腕23の振動に及ぼす影響を効果的に低減できる。
図13(b)に示すように、穴部536は、複数設けられていてもよい。この場合、穴部536の配置は適宜に設定されてよい。例えば、同図に例示するように、突出部35の突出方向に配列されていてもよい。この場合、穴部536は、突出方向に交差(例えば直交)する溝状であることが好ましい。また、特に図示しないが、図9(a)又は図9(b)に示した変形例のように、穴部536として、比較的小径の分散穴361が平面的に分散配置されてもよい。
このように、複数の穴部536が設けられることによって、例えば、突出部35の強度を確保しつつ、穴部536全体としての面積を大きくして、振動乃至は応力の伝達を抑制することができる。
図13(c)〜図13(e)に示すように、穴部536は、突出部35の前方の面に到達していてもよい。この場合において、穴部536は、図13(a)と同様に基部21と突出部35との境界に隣接していてもよいし(図13(c))、図12(c)と同様に基部21から離れていてもよいし(図13(d))、図13(e)と同様に複数設けられていてもよい(図13(e))。
このように、穴部536を突出部35の前方の面に到達させると、例えば、突出部35と振動腕23との最短経路に穴部536が位置することになるから、突出部35の接合又は支持が振動腕23の振動に及ぼす影響をより確実に低減できる。なお、穴部536は、残渣111に近いことから、エッチングマスク101の開口103が切り欠き状であっても、穴部536が貫通孔(切り欠き)になってしまうことは抑制され、突出部35の強度は確保される。
上記とは逆に、図13(f)〜図13(h)に示すように、穴部536は、突出部35の後方の面に到達していてもよい。この場合において、穴部536は、上記と同様に、基部21と突出部35との境界に隣接していてもよいし(図13(f))、基部21から離れていてもよいし(図13(g))、複数設けられていてもよい(図13(h))。
このように、穴部536を突出部35の後方の面に到達させると、例えば、後面29側を経由して突出部35と振動腕23との間で伝達される応力が低減される。なお、穴部536は、後面29側の端部が貫通孔(切り欠き)になるものの、穴部536の径(幅)が小さいので、全体としては凹部(溝)となる。逆の観点で捉えれば、穴部536は、幅が小さくても、一部を貫通孔にして、より確実に応力の伝達を遮断できる。
さらに、上記を組み合わせて、図13(i)及び図13(j)に示すように、穴部536として、突出部35の前方の面と後方の面との双方に到達するものが設けられてもよい。この場合において、前方側の穴部536と後方側の穴部536とは、突出部35の突出方向において互いに同一の位置とされてもよいし(図13(i))、互いに異なる位置とされてもよい(図13(j))。
このように、穴部536を前方及び後方の双方に設けることにより、例えば、上述した前方に穴部を形成する効果と、後方に穴部を形成する効果との双方を得ることができる。なお、この変形例とは逆に、図12(c)、図13(a)及び図13(b)のように穴部536が前後面から離れている場合においては、例えば、捩りや前後方向の曲げに対する突出部35の強度を確保しやすい。
図13(i)のように前後の穴部536を同一位置にした場合においては、例えば、穴部536の幅(突出部35の突出方向)を確保しやすいことから、前面側又は後面側を経由する振動が大きいときに有利である。
図13(j)のように前後の穴部536を互いに異なる位置にした場合においては、例えば、穴部536の長さ(前後方向)を突出部35の幅の半分以上にすることが可能である。すなわち、複数の穴部536全体として、突出部35を横切ることができる。その結果、例えば、突出部35が振動腕23の振動に及ぼす影響を確実に低減できる。
なお、以上の実施形態において、水晶片15、315及び515は音叉型圧電片の一例である。水晶振動素子3、203、303、403及び503は音叉型振動素子の一例である。水晶振動子1及び201は音叉型振動デバイスの一例である。第1側面31Aは一方の側面の一例である。第2側面31Bは他方の側面の一例である。穴部536は突出用穴部の一例である。素子搭載部材5は実装基体の一例である。素子端子19は端子の一例である。支持用バンプ43は枕部の一例である。
本発明は、上述した実施形態又は変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
上述した実施形態又は変形例は、適宜に組み合わされてよい。例えば、第1実施形態の溝(37等)、第3実施形態の側方穴部(337等)、第4実施形態の切り欠き部437及び第5実施形態の穴部356(突出用穴部)のいずれか2つ以上が組み合わされて、一の圧電片に適用されてもよい。また、例えば、図9(a)及び図9(b)に例示した分散穴は、第3実施形態の側方穴部に限らず、第1実施形態の溝37のように左右方向に延びる長穴部及び第5実施形態の突出用穴部(356)に適用されてもよい。
圧電片、圧電振動素子及び圧電振動子は、水晶片、水晶振動素子及び水晶振動子に限定されない。例えば、圧電片は、水晶ではなく、セラミックからなるものであってもよい。圧電デバイスは、振動子に限定されない。例えば、圧電デバイスは、振動子となる部分と、発振回路とを備えた発振器であってもよい。また、振動子は、振動素子の他に、サーミスタなどの他の電子部品を備えていてもよい。
圧電片の基部は矩形でなくてもよい。上下に対向する1対の主面と、前後に対向する1対の面(前面及び後面)と、左右に対向する1対の側面とを有していればよい。例えば、実施形態の説明でも言及したように、側面が外側に膨らむ形状とされ、基部は、全体として長円とされてもよい。また、側面が互いに傾斜して、基部は台形状とされてもよい。また、例えば、基部は、側面の前面側の端部から側方へ突出する突起を有していてもよい。このような突起は、各振動腕の根元側の強度を左右対称として振動を均等化することに寄与する。
振動腕は、基部の前面から延び出れば、基部の前面における両端に位置していなくてもよい。換言すれば、基部の側面の位置と、振動腕の外側の側面の位置とは一致していなくてもよい。
支持腕及び突出部は、基部の側面における後端から延び出ていなくてもよく、後端よりも前方から延び出ていてもよい。ただし、これらの部位が振動腕に及ぼす影響を低減する観点からは、振動腕から最も離れた位置である、側面の後端から延び出ることが好ましい。支持腕及び突出部は、側面から振動腕又は側面に直交する方向に延び出ていなくてもよく、振動腕又は側面に対して傾斜する方向に延び出ていてもよい。
支持腕の、基部の側面から延び出る部分及び前方へ延びる部分は、全体が直線状である必要はなく、一部又は全部が曲線状であってもよい。ただし、前方へ延びる部分を長く形成する場合においては、直線状部分があることが好ましい。振動腕の前方へ曲がる部分は、屈曲に限定されず、湾曲であってもよい。振動腕の前方へ延びる部分は、振動腕に対して傾斜していてもよい。ただし、小型化の観点からは平行が好ましい。支持腕の前方に延びる部分は、基部の前面を超えていなくてもよい。ただし、実施形態においても述べたように、支持腕は、振動腕の長さを超えない範囲で長い方が好ましい。支持腕の幅は長さ方向に一定でなくてもよく、適宜に変化してもよい。
突出部の形状は、一定の幅で直線状に突出する形状(矩形乃至は長方形)に限定されない。例えば、先端側に幅が広い部分を有していてもよいし、先端側ほど幅広になる逆テーパ状であってもよい。また、突出部は、屈曲又は湾曲していてもよい。ただし、屈曲又は湾曲しても、突出部は支持腕よりは短い。
穴部は、実施形態及び変形例に示したもの以外に、種々可能である。例えば、基部の主面の中央に穴部を設けてもよい。この場合であっても、多少なりとも支持腕及び突出部が振動腕の振動に及ぼす影響が低減される。また、例えば、穴部は、基部の全面に亘って設けられた一つの大きなものからなってもよいし、基部の全面に亘って設けられた複数の分散穴を含んでいてもよい。また、例えば、穴部は、基部及び突出部に跨って設けられた1つの穴を含んでいてもよい。また、実施形態のように溝(37等)や側方穴部(337等)が基部に設けられる場合において、支持腕側及び突出部側の一方のみに穴部が設けられてもよいし、支持腕側と突出部側とで穴部の構成が異なっていてもよい。
第1実施形態のような基部の側面側から中央側へ延びる溝(37等)は、中央側で互いにつながっていてもよい。なお、この場合、配線は、例えば、基部の側面を介して支持腕又は突出部へ延ばせばよい。また、溝は、基部の側面に到達していなくてもよい。また、溝は、中央側に延びる部分が後方へ延びて、左右方向(D1軸方向)に見て支持腕又は突出部と重なっていてもよい。溝は、長さ方向に亘って同じ幅であってもよい。
第2実施形態のような側方穴部は、長穴部からなるものに限定されない。例えば、矩形状に形成された1つの穴、又は全体として矩形に配置された複数の分散穴から構成されてもよい。また、側方穴部が側方長穴部(351等)を含む場合、側方長穴部は、側面に傾斜していてもよいし、曲線状に延びてもよい。
振動素子は、いずれの主面が実装側とされてもよいように、両主面にパッドが設けられていてもよい。
枕部は、バンプからなるものに限定されない。例えば、実装基体(素子搭載部材5)が複数のグリーンシートを焼成したセラミックから構成される場合において、枠状部分(壁部)を構成する、底面の直ぐ上に重ねられるグリーンシートに、内壁面から突出する部分を形成して枕部としてもよい。また、例えば、セラミック、樹脂又は金属からなる部材を実装基体の実装面(凹部5aの底面)に接着剤等により固定して、枕部としてもよい。