まず、本発明の課題について図7を用いて説明する。図7は、波長可変型の面発光レーザの一例であるMEMS−VCSELの模式図を示す。図7(a)は、MEMS−VCSELの断面模式図を表している。図7(b)は、MEMS−VCSELの上面模式図を表しており、図7(a)は、図7(b)のB−B’断面の模式図を表している。図7(c)は、図7(a)の酸化狭窄層の平面模式図を表している。
図7(a)のMEMS−VCSELは、基板701上に、下部反射鏡702、活性層703、スペーサ層704、酸化狭窄層705、コンタクト層706、支持層707、上部反射鏡を含む梁部708が積層されて構成されている。コンタクト層706と梁部708との間は離間しており、間隙712が形成されている。また、基板701の下には第1電極709が形成され、梁部708の上には第2電極710が形成されている。そして、コンタクト層706の上に第3電極711が形成されている。なお、図7(b)で明らかなように、第3電極711は、梁部708の直下には形成されていない。このため、図7(b)のB−B’断面図である図7(a)では、第3電極711は本来見えないが、理解を助けるためにB−B’断面への射影部分を図示している。
第1電極709と第3電極711の間に電圧を印加することで、第3電極711から、コンタクト層706、酸化狭窄層705の非酸化領域713、スペーサ層704を介して活性層703に電子とホールの一方のキャリアが供給される。また、電子とホールの他方のキャリアは、第1電極709から、基板701、下部反射鏡702を介して活性層703に流れる。そして、活性層703内で電子とホールが再結合することで、発光が生じる。
また、梁部708は、導電性を有している。そして、第2電極710と第3電極711との間に交流電圧を印加することによって、梁部708が活性層703の厚さ方向に振動する。この結果、上部反射鏡も活性層703の厚さ方向に振動し、下部反射鏡702と上部反射鏡からなる共振器の共振器長が変動し、発光領域で発光した光のうち共振器長に応じた特定の波長の光が外部に射出される。このようにして、面発光レーザの発振波長が可変となる。
ところで、支持領域717にある酸化狭窄層705にも非酸化領域714が形成されている。これは、このMEMS−VCSELが、図7(b)のような構成であるからである。すなわち、領域716よりも支持領域717の方が大きい。この構成になるのは、支持領域717を大きくして梁部708の強度を高めているためであり、結果として、領域716よりも支持領域717の方が大きくなっている。領域716及び支持領域717の側面から、酸化狭窄層を形成する場合、図7(c)に示すように、支持領域717にある酸化狭窄層705では、酸化が内部まで十分に進まずに、非酸化領域714が残ってしまう。
そして、コンタクト層706は、第3電極711からのキャリアの注入障壁を低くするために、ドーパントを多く含み、電気伝導率が高くなっている。このため、第3電極711からのキャリアが、コンタクト層706の面内方向に拡散しやすくなる。そして、拡散されたキャリアが非酸化領域714を介して活性層703に流れてしまう。その結果、非酸化領域713に対応する活性層703の領域に注入されるキャリア量が減少し、レーザ発振するための閾値電圧、閾値電流が高くなり、発光効率が低下してしまう。特に、非酸化領域713と非酸化領域714との間のX方向の距離Lが、以下の式を満たす場合には、上記の課題が顕著となる。
L≦20wtr/ρ ・・・式1
ここで、wは、非酸化領域713と非酸化領域714との間にある領域の酸化狭窄層705の幅である。なお、この酸化狭窄層705の幅は、非酸化領域713と非酸化領域714との間にある領域に対応する位置にあるコンタクト層の幅とほぼ同等である。tは、非酸化領域713の上にあるコンタクト層706の厚さ、すなわちコンタクト層706のZ方向の長さである。rは、非酸化領域713の抵抗である。ρはコンタクト層706を構成する材料の体積抵抗率である。
式1は、以下のように導かれる。非酸化領域713を通る電流Iに対する非酸化領域714を通る電流iの比の値i/Iは、以下の式で近似される。
i/I≒(2r)/R ・・・式2
なお、Rは、コンタクト層706の非酸化領域713と非酸化領域714の間の抵抗の値であり、以下の式で表される。
R=ρL/(wt) ・・・式3
i/Iが0.1、つまり、非酸化領域714を通る電流iが非酸化領域713を通る電流Iに対して1割以上になると、レーザ発振するための閾値電圧、閾値電流の上昇が顕著になる。つまり、i/I≧0.1であると、上記の課題が顕著になる。このため式2、3より、式1となる。
例えば、w=20μm、t=0.15μm、r=200Ω、ρ=1×10−2[cm・Ω]とすると、Lは120μm以下となると課題が顕著に表れる。
これに対して、本発明では、以下のような構成のいずれかを採っている。一つの態様は、非酸化領域の間の領域の上の少なくとも一部のコンタクト層の、梁部の長手方向の単位長さ当たりの抵抗が、非酸化領域の上の、梁部の長手方向の単位長さ当たりの抵抗よりも大きくしている。別の態様は、非酸化領域の間の領域の上のコンタクト層を厚さ方向(Z方向)において完全にあるいは一部を除去している。いずれの態様でも、支持領域に形成された非酸化領域へのキャリアパスの抵抗を大きくし、発光部の領域に形成された非酸化領域を通過するキャリア数の低減を抑制している。なお、以下では、酸化狭窄層において、間隙に対応する領域の一部に形成された非酸化領域を第1非酸化領域、支持層に対応する領域の一部に形成された非酸化領域を第2非酸化領域という。
一つ目の態様は、以下の構成が挙げられる。例えば、コンタクト層はドーパントを含有しており、コンタクト層の梁部の長手方向において、そのドーパント濃度が均一でない構成が挙げられる。具体的には、コンタクト層の第1非酸化領域と第2非酸化領域との間の領域に対応する領域の少なくとも一部に含まれる濃度が、第1非酸化領域の上のコンタクト層に含まれる濃度よりも小さくなる濃度分布が形成されている構成である。なお、このドーパントは、コンタクト層の第1非酸化領域と第2非酸化領域との間の領域に対応する領域の少なくとも一部と、第1非酸化領域の上のコンタクト層には、導電性を高める同じ種類のドーパントが含有されている。同じ種類とは、ドナーあるいはアクセプターとして機能する元素が同じ種類であることをいう。また、コンタクト層の第1非酸化領域と第2非酸化領域との間の領域に対応する領域の少なくとも一部には、ドーパントが含まれないように構成してもよい。
また、一つ目の態様の別の構成としては、コンタクト層が導電性を高めるドーパントを有し、第1非酸化領域と第2非酸化領域との間の領域に対応する領域において、そのドーパントの働きを打ち消すドーパントが注入された構成を採ることができる。例えば、コンタクト層がMgをドーパントとして含む場合、第1非酸化領域と第2非酸化領域との間の領域に対応する領域にだけ水素を注入させて、高抵抗化処理する方法がある。
また、一つ目の態様の別の構成としては、第1非酸化領域と第2非酸化領域との間の領域に対応する領域において、コンタクト層に溝を設けることが挙げられる。ただし、溝には、一部コンタクト層が残っている。つまり、溝にあるコンタクト層の厚さは、他の領域のコンタクト層の厚さよりも薄くなっている。このため、第1非酸化領域と第2非酸化領域との間の領域に対応する領域においては、梁部の長手方向の単位長さ当たりのコンタクト層の抵抗が他の領域のそれよりも小さくなっているため、キャリアが梁部の長手方向に流れにくくなっている。
第1非酸化領域と第2非酸化領域との間の領域に対応する領域の少なくとも一部のコンタクト層の、梁部の長手方向の単位長さ当たりの抵抗をR1とする。一方、第1非酸化領域の上のコンタクト層の、梁部の長手方向の単位長さ当たりの抵抗をR2とする。抵抗の比の値R1/R2は、10以上であることが好ましい。
また、コンタクト層はドーパントを含有している場合、第1非酸化領域と第2非酸化領域との間の領域に対応する領域の少なくとも一部のコンタクト層のドーパント濃度をC1、第1非酸化領域の上のコンタクト層のドーパント濃度をC2とする。ドーパント濃度の比の値C1/C2は、0.0以上0.1以下が好ましい。
また、二つ目の態様として、第1非酸化領域と第2非酸化領域との間の領域に対応する領域のコンタクト層に溝を設けている。溝は、1つでもよいし複数でもよい。また、完全にコンタクト層が除去されていてもよいし、一部が除去されていてもよい。なお、一部が除去される形態は、1つの目の形態でもある。また、複数の溝が形成される場合、完全にコンタクト層が除去された溝と一部が除去された溝とが混合されていてもよい。
また、一つ目の態様と二つ目の態様とがどちらか一方で合ってもよいし、併用されていてもよい。
以下に、本発明の垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)について説明するが、はじめに、本明細書中で使用する用語等について定義する。本明細書中でVCSEL構造の上下方向について言及する場合は、基板側を下側、基板と反対側を上側と定義する。また、本明細書中では、DBRの高屈折率層とは、DBRを構成している2つの層のうち相対的に屈折率が高い層のことをいう。DBRの高屈折率層とは、同様に、DBRを構成している2つの層のうち相対的に屈折率が低い層のことをいう。
(実施形態1)
以下に、本発明の実施形態1に係る波長可変型の面発光レーザの一例であるMEMS−VCSELの構成および製造方法について説明する。図1(a)は本実施形態におけるMEMS−VCSELの断面模式図、図1(b)は、本実施形態におけるMEMS−VCSELの上面模式図を示している。なお、図1(a)は、図1(b)のA−A’断面の模式図に対応する。図1(c)は、コンタクト層106の平面模式図である。
このMEMS−VCSELは、図1(a)で示すように、基板101上に、下部反射鏡(第1反射鏡)102、活性層103、酸化狭窄層105、コンタクト層106、支持層107、上部反射鏡(第2反射鏡)を有する梁部108が積層されて構成されている。また、下部反射鏡102と活性層103の間には下部スペーサ層120、活性層103と酸化狭窄層105の間には上部スペーサ層104が配置されている。また、コンタクト層106と支持層107の間には、第1の層121がコンタクト層106と直接接して配置されている。ここでは、酸化狭窄層105とコンタクト層106が接して積層されているが、この間に別の層を有していてもよい。
また、コンタクト層106と梁部108との間は離間しており、間隙112が形成されている。梁部108は支持層107の第1支持領域117によって支持されている。基板101の下には第1電極109、梁部108の上には第2電極110、コンタクト層106の上に第3電極111が配置されている。なお、図1(b)で明らかなように、第3電極111は、梁部108の直下には形成されていない。このため、図1(b)のA−A’断面図である図7(a)では、第3電極111は本来見えないが、理解を助けるためにA−A’断面への射影部分を図示している。
酸化狭窄層105は酸化領域115と非酸化領域(第1非酸化領域)113で構成されており、酸化領域115よりも低い抵抗率を有する非酸化領域113をキャリアが通過することができる。これにより、第1電極109と第3電極111の間に電圧を印加することで、第3電極111から、コンタクト層、酸化狭窄層105の非酸化領域113、上部スペーサ層104を介して活性層103に電子とホールの一方のキャリアが供給される。また、電子とホールの他方のキャリアは、第1電極109から、基板101、下部反射鏡102を介して活性層103に流れる。そして、活性層103内で電子とホールが再結合することで、発光が生じる。
また、梁部108は、導電性を有している。そして、第2電極110と第3電極111との間に交流電圧を印加することによって、梁部108が活性層103の厚さ方向に振動する。この結果、上部反射鏡も活性層103の厚さ方向に振動し、下部反射鏡102と上部反射鏡からなる共振器の共振器長が変動し、発光領域で発光した光のうち共振器長に応じた特定の波長の光が外部に射出される。このようにして、面発光レーザの発振波長が可変となる。
また、本実施形態のMEMS−VCSELの俯瞰模式図は、図1(b)で示されている。2つの第1支持領域117の間には可動領域118がある。第1支持領域117には、図1(a)で示すように支持層107が形成されている。また、可動領域118には、図1(a)で示すように、梁部108の可動部分が対応している。また、図1(b)で示すように、発光部が形成される発光部領域116と第2支持領域130との間に、発光部領域116と第2支持領域130とを接続する接続領域119がある。発光部領域116と第2支持領域130と接続領域119のパターンで、コンタクト層106、酸化狭窄層105、上部スペーサ層104、活性層103、下部スペーサ層120が形成されている。
第1支持領域117は、支持層107が梁部108を支持している領域である。一方、第2支持領域130は、コンタクト層106や活性層103を有する構造体によって、第1支持領域117に形成される支持層107を支持する領域である。図1(b)のように、第2支持領域130は第1支持領域117より大きくてもよいが、第1支持領域117と第2支持領域130は同じ大きさでもよい。
以下で、発光部領域116にあるコンタクト層106という場合があるが、それは、コンタクト層106のうち発光部領域116に対応する部分を指す。なお、コンタクト層106を例に出して説明したが、他の層でも同様である。
図1(b)で示すように、可動領域118の短手方向と平行な方向(Y方向)において、接続領域119の幅よりも発光部領域116の幅及び支持領域(第1支持領域117、第2支持領域130)の幅の方が大きい。また、Y方向において、発光部領域116の幅よりも支持領域(第1支持領域117、第2支持領域130)の幅の方が大きい。さらに、可動領域118の長手方向と平行な方向(X方向)においても、発光部領域116の幅よりも支持領域(第1支持領域117、第2支持領域130)の幅の方が大きい。このため、酸化狭窄層105には、図7の構成と同様に、支持領域に対応する部分に非酸化領域(第2非酸化領域)114が形成される。
しかし、本実施形態では以下の構成を採っているために、漏れ電流を抑制することができる。すなわち、図1(c)で示すように、コンタクト層106の接続領域119の一部が除去され、溝150が形成されている。言い換えると、第3電極111と電気的に接続された、発光部領域116にあるコンタクト層106は、溝150を介して、第2支持領域130にあるコンタクト層106と分離されている。そのため、発光部領域116にあるコンタクト層106と第2支持領域130にあるコンタクト層106は電気的に接続されず、第3電極111のキャリアが非酸化領域114を通過して漏れ電流が生じることを抑制することができる。そのため、非酸化領域113を介して活性層103に供給されるキャリアが減らないため、活性層103の非酸化領域113に対応する部分での発光の低減が抑制される。
なお、溝150は、コンタクト層106の厚さ方向(Z方向)において完全に除去されていなくてもよく、厚さ方向の一部が除去されていてもよい。後者の構成であれば、溝150が設けられた領域のコンタクト層の厚さが薄くなる。そのため、溝150が設けられた領域のコンタクト層の、梁部108の長手方向(X方向)の単位長さ当たりの抵抗が、非酸化領域に対応する領域のコンタクト層の、X方向の単位長さ当たりの抵抗よりも大きくなる。このため上述したように、漏れ電流を低減することが可能となる。同様に、コンタクト層106に溝150を設けることによって、幅方向(X方向)の長さを短くするようにしてもよい。また、溝150は1つでなくても、複数設けられていてもよい。
また、溝150は、絶縁体で埋められていてもよい。このように、溝150によって、非酸化領域113の上にあるコンタクト層106と非酸化領域114の上にあるコンタクト層106とが電気的に分離される構成であってもよい。
また、溝150を設ける代わりに、コンタクト層106の一部の領域が、漏れ電流を低減するように高抵抗化されていてもよい。具体的には、キャリア濃度を一部の領域だけ他の領域よりも小さくする。これは、その領域の体積抵抗率を低減することに相当する。そして、結果としては、高抵抗化された領域のコンタクト層の、梁部108の長手方向(X方向)の単位長さ当たりの抵抗が、非酸化領域に対応する領域のコンタクト層の、X方向の単位長さ当たりの抵抗よりも大きくなっている。高抵抗化の手段としては、以下の方法が挙げられる。例えば、コンタクト層106を形成する際に、X方向のキャリア濃度の分布として、高抵抗とすべき領域のキャリア濃度をそれ以外の領域よりも小さくする。また、キャリア注入を高めるためのドーパントを有するコンタクト層106を形成した後、一部の領域が高抵抗化するように、キャリア注入を高めるためのドーパントを非活性するドーパントを所定の領域に注入する方法が挙げられる。
(上部反射鏡および下部反射鏡)
上部反射鏡および下部反射鏡は、例えば、高屈折率の層と低屈折率の層とが光学厚さ1/4波長で交互に積層された分布ブラッグ反射鏡(Distributed Bragg Reflector:以下DBRという)で構成されている。反射鏡は、波長可変範囲を広くするためには、出来る限り広帯域において高反射率を有することが好ましい。上部反射鏡および下部反射鏡には、半導体で構成されたDBR、誘電体で構成されたDBRのどちらを用いることもできる。一般的に、誘電体で構成されたDBRの方が半導体で構成されたDBRよりも、高屈折率の層と低屈折率の層の屈折率差を大きくしやすいため、少ない積層数で高い反射率を実現できる。一方、半導体で構成されたDBRはペア数が多くなってしまうが、結晶成長中に同時に成膜でき、ドーピングにより電流を流すことができる等のプロセス上の利点がある。また、半導体で構成されたDBRは、梁部と兼用することができる。
エピタキシャル成長で一括形成するためには、下部反射鏡に半導体DBR、上部反射鏡にも半導体DBRを用いることができるが、より広帯域で高反射率を得るために誘電体DBRを上部反射鏡に用いてもよい。なお、誘電体DBRを上部反射鏡として用いる際に、半導体層の上に誘電体DBRを形成する構成とすることができる。上記の上部反射鏡の材料の例として、半導体DBRではAl0.4Ga0.6AsとAl0.9Ga0.1As、誘電体DBRでは酸化シリコンと酸化チタンを用いることができる。下部反射鏡としてはGaAsとAlAsを用いることができる。
また、反射鏡として、高屈折率差サブ波長回折格子(High IndexContrast Subwavelength Grating:以下HCGという)を用いてもよい。HCGは高屈折率の材料と低屈折率の材料とが面内方向に交互に周期的に並んだ構成である。HCGの例として、AlGaAs層のような半導体層を加工して周期的な間隙を設けた、高屈折率領域(AlGaAs部)と低屈折領域(間隙部)の周期構造体が挙げられる。高速な波長可変を行う観点から、可動鏡である上部反射鏡を軽量な反射鏡とすることが求められており、HCGを用いることが好ましい。なお、HCGとして、特許文献1及び2に記載されているものを用いることができる。
(梁部)
梁部は、2箇所の支持領域で支持されていてもよいし、3箇所以上の支持領域で支持されていてもよい。また、梁部は、シリコンカンチレバーのような1箇所で支持する構成も構わない。また、梁部には、結晶成長時の歪みや、動作環境温度に由来する応力などを緩和するための構造が形成されていてもよい。
梁部は、共振器長を変化させることができるものであれば特に限定されない。例えば、本実施形態のように静電気力で駆動するものでもよいし、ピエゾ等の圧電材料を用いて機械的に駆動するものでもよい。
また、梁部は、本実施形態のように、上部反射鏡を兼ねる構成であってもよいし、上部反射鏡とは別に構成されていてもよい。後者の場合、梁部の発光部領域と対応する位置、つまり発光領域と対応する位置に、上部反射鏡が配置されていればよく、上部反射鏡は梁部の上でも下でもどちらにでも配置されていてもよい。また梁部の発光領域と対応する位置に貫通孔が形成され、その貫通孔に上部反射鏡が配置されている構成でもよい。梁部と上部反射鏡とが別体で構成される場合には、後述する製造方法において、梁部前駆体層のパターニングの前に、上部反射鏡をパターニング形成すればよい。
(コンタクト層)
コンタクト層は、第3電極と直接接する層であり、第3電極からキャリアが注入されやすい構成あれば特に限定されない。例えば、コンタクト層は、ドーパントを含有する半導体層が挙げられる。この場合、例えば、ドーパントのドーピング濃度が1×1018cm−3以上であることが好ましい。さらに、電極とのコンタクト抵抗をより低減するために、ドーピング濃度が3×1018cm−3以上であることが好ましい。また、活性層で発光された光の吸収を抑えるために、ドーピング濃度は2×1019cm−3以下であることが好ましい。さらには、ドーピング濃度が5×1018cm−3以下であることが好ましい。
キャリア移動度を高めるために、コンタクト層以外の例えばスペーサ層などの半導体層にもドーパントが含まれていてもよいが、第1電極と第3電極の間にある半導体層の中では、コンタクト層のドーピング濃度が最も高いことが好ましい。
(活性層)
活性層は電流を注入することで光を発生する材料であれば特に限定されない。850nm付近の波長帯域の光を出射させる場合、AlnGa1−nAs(0≦n≦1)からなる量子井戸構造を有する材料を用いることができる。また、1060nm付近の波長帯域の光を出射させる場合、InnGa1−nAs(0≦n≦1)からなる材料などを用いることができる。
また、活性層は十分に広い利得を有するものであることが好ましく、具体的には上部反射鏡および下部反射鏡の反射帯域より広い波長領域において利得を有することが好ましい。そのような活性層としては、例えば、少なくとも2つ以上の異なるエネルギー準位で発光が可能な量子井戸構造、いわゆる非対称量子井戸構造を有する活性層が挙げられる。また、量子井戸構造は、単量子井戸または多重量子井戸を有するように複数の層で構成されたものであってもよい。本実施形態における活性層の材料・構造は、発振波長させたい波長に応じて適宜選択できる。
(酸化狭窄層)
酸化狭窄層は、選択酸化プロセスにより、選択的に酸化される酸化領域を高抵抗部、酸化されない非酸化領域を低抵抗部として電流狭窄構造を形成している。選択酸化プロセスにより酸化狭窄層となる被酸化層は、AlAs層またはAl組成比の高い、例えばAl0.98Ga0.02As層が好ましい。高温水蒸気雰囲気中で酸化狭窄層を選択酸化することで、AlxOyが形成され、電流狭窄構造が形成される。非酸化領域の形状を制御することによって発光形状を制御できる。発光部内部に形成される非酸化領域、すなわち発光領域の大きさは5μm乃至15μm程度である。また、発光部と支持領域の間の領域では、酸化狭窄層は漏れ電流が生じないように選択酸化された酸化領域である。非酸化領域は酸化された酸化領域により囲まれている。
また、酸化狭窄層の位置は、コンタクト層と下部反射鏡の間であれば、活性層の上側でもよいし、下側でもよい。また酸化狭窄層は複数あってもよい。その場合には、複数の酸化狭窄層は、活性層の上側、下側のいずれか一方にあってもよいし、両方にあってもよい。
(間隙)
間隙には、通常固体が存在しない。よって、その雰囲気により間隙は真空であってもよいし、空気、不活性ガス、水のような液体といった流体が存在してもよい。なお、間隙の構造体の厚さ方向の長さは、波長可変帯域幅や可動反射鏡のプルインを考慮して決定することができる。例えば、間隙を空気とした1060nmを中心として波長可変帯域幅100nmで可変する際には、間隙の長さは2μm程度となる。
(第1電極、第2電極及び第3電極)
第1電極、第2電極及び第3電極は、チタンや金などの単体の金属や合金、または金属膜の積層体を用いることができる。例えば、Ti/Au、AuGe/Ni/Auを電極材料として用いることができる。また、第1電極は、キャリアが注入できれば、下部反射鏡の下側ではなく、下部反射鏡の上側であってもよい。また、梁部と第3電極との間に静電引力を働かせて梁部を駆動する場合、第2電極は、梁部の支持領域に配置されていなくても、可動部分に配置されていてもよい。
(製造方法)
次に、図2乃至5を用いて、本実施形態に係るMEMS−VCSELの製造方法の一例を説明する。各図内では俯瞰図およびその俯瞰図のa−a’、b−b’断面に対応する模式図、図3以降では、それに加えてc−c’断面に対応する模式図を示している。
まず、図2(a)で示すように、下部反射鏡102と、活性層103と、被酸化層205と、コンタクト層106と、犠牲層207と、第2の反射鏡を備える梁部前駆層208と、を有する構造体を準備する。構造体は、より具体的には、基板101の上に、基板101側から順に、下部反射鏡102、下部スペーサ層120、活性層103、上部スペーサ層104、被酸化層205、コンタクト層106、第1の層121を有する。さらに、構造体は、第1の層121の上に、犠牲層207、上部反射鏡を含む梁部前駆層208を有する。構造体を準備するには、基板101の上に各層を形成してもよいし、購入してきてもよい。各層の形成は、例えば、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法やMBE(Molecular Beam Epitaxy)法などを用いて結晶成長を行う方法が挙げられる。
次に、図2(b)に示すように、第1支持領域117と可動領域118を形成するため、エッチングマスクを形成する。例えば、エッチングマスクとして第1の誘電体膜210を構造体の全面に形成する。そして、この第1の誘電体膜210をフォトリソグラフィーとウェットエッチングすることにより、第1の誘電体膜210を第1支持領域117と可動領域118に対応する第1のマスクパターンに形成する。なお、第1の誘電体膜210のパターン形成は、ウェットエッチングに限らず、ドライエッチングで形成してもよい。第1の誘電体膜210には例えば酸化シリコン、窒化ケイ素を用いる。可動領域118の短手方向と平行な方向(Y方向)において、第1支持領域117のパターン幅は、可動領域118のそれよりも大きい。
次に、図2(c)に示すように、第1の誘電体膜210に形成された第1のマスクパターンを用いて、梁部前駆層208と犠牲層207と第1の層121までをエッチングし、第1の誘電体膜210を除去する。このとき、エッチングは、ドライエッチング、ウェットエッチング、あるいはその組み合わせを用いてもよい。ドライエッチングとウェットエッチングを組み合わせる場合、犠牲層207の途中までドライエッチングを行った後に、残りの犠牲層207と第1の層121をそれぞれ別々のエッチャントによりウェットエッチングを行ってもよい。また、第1の層121の途中までドライエッチングを行った後に、残りの第1の層121をウェットエッチングする方法でもよい。第1の層121をウェットエッチングにより除去する際には第1の層121とコンタクト層106とでエッチングの選択比が大きくなるようなエッチャントを用いて、コンタクト層106をエッチングストップ層とすることが好ましい。ここでは第1の誘電体膜210を除去したが、この段階では除去せずに、後述する発光部を形成するための第2の誘電体膜を付けて、発光部を形成した後に、第1の誘電体膜210と第2の誘電体膜を同時に除去してもよい。
次に、図3(a)に示すように、発光部を形成するためのエッチングマスクを形成する。例えば、エッチングマスクとして第1のマスクパターンに形成された梁部前駆層208の上と、図2(c)の工程で露出したコンタクト層106の上に第2の誘電体膜220を形成する。そして、フォトリソグラフィーとウェットエッチングすることにより、第2の誘電体膜220を、第2支持領域130と、発光部領域116と、発光部領域116と第2支持領域130とを接続する接続領域119と、に対応する第2のマスクパターンに形成する。なお、第2の誘電体膜220のパターン形成は、ウェットエッチングに限らず、ドライエッチングで形成してもよい。第2の誘電体膜220には例えば酸化シリコン、窒化ケイ素を用いる。
第2のマスクパターンは、接続領域119のY方向のパターン幅が、発光部領域116、第2支持領域130のそれよりも小さくなるパターンである。このパターンは、後の工程において、被酸化層205の側面を露出させて酸化させる際に、被酸化層205の発光部領域116は電流注入のために非酸化領域を残し、被酸化層205の接続領域119は全て選択酸化するためである。この結果、さらに後の工程で発光部領域116と第2支持領域130の間の接続領域119でコンタクト層106をウェットエッチングで除去した際に、キャリアパスを切断することができる。
続いて、図3(b)に示すように、第2の誘電体膜220に形成された第2のマスクパターンを用いて、ドライエッチングにより、活性層103の側面が露出するまでをエッチングする。具体的には、コンタクト層106、被酸化層205、上部スペーサ層104、活性層103、下部スペーサ層120がパターニングされる。
この工程では、後の工程で被酸化層205を側面から酸化させるために、少なくとも被酸化層205の側面が露出するまでエッチングすればよい。また、下部反射鏡102の側面の一部あるいは全部が露出するまでエッチングしてもよい。ただし、下部反射鏡102に被酸化層205よりもAl組成の高い層を用いる場合には、エッチングが下部反射鏡102にまで達しないようにする。例えば被酸化層205としてAl0.98Ga0.02Asを、下部反射鏡102としてAlAs層を用いている場合である。この場合には、エッチングが下部反射鏡102にまで達すると、下部反射鏡102のAlAs層まで酸化されてしまう。そうなると、ペアとなる高屈折率層と低屈折率層の屈折率差が所望の値を得られず、高い反射率、広い反射帯域を有する多層膜反射鏡を得ることができなくなるからである。
また、図2(c)の工程と図3(b)の工程により、本発明のMEMS−VCSELは、下部反射鏡102と下部スペーサ層120の間の段差とコンタクト層106と第1の層121との間の段差の2段の段差が形成される。なお、後の工程のコンタクト層106の除去の際に、コンタクト層106が露出している必要があるため、本工程でコンタクト層106と第1の層121との間の段差を形成している。
次に、図3(c)で示すように、高温水蒸気雰囲気中で被酸化層205を側壁から、発光部領域116にある被酸化層205の一部と第2支持領域130にある被酸化層205の一部を残して、被酸化層205を酸化する。これにより、酸化領域115、非酸化領域113、114を有する酸化狭窄層105を形成する。その後、第2の誘電体膜220を除去する。非酸化領域113,114は、図7(c)と同様に、酸化領域115により囲まれている。なお、第2の誘電体膜220を除去する際には、発光部の側面をエッチャントによるダメージから保護するために、エッチング面以外にレジスト等の保護膜を設けた後に第2の誘電体膜220を除去することが好ましい。
発光部領域116にある酸化狭窄層105には、非酸化領域113が形成される。また、上述したように、Y方向において、接続領域119のパターン幅は発光部領域116、第2支持領域130のそれよりも狭くなっているため、酸化狭窄層105の接続領域119は酸化される。さらに、X方向、Y方向の両方向において、発光部領域116のパターン幅よりも第2支持領域130のパターン幅の方が大きい。そのため、第2支持領域130にある酸化狭窄層105には、酸化が内部まで届かず、非酸化領域114が形成される。なお、接続領域119のパターン幅が大きくなるにつれ、発光部領域116の非酸化領域113の形状が円形からずれるため、接続領域119のパターン幅は大きくしないことが好ましい。非酸化領域113の形状は発光分布の形状にかかわる。
次に、図4(a)に示すように、上記までの工程でできた構造物の全面を絶縁膜230で覆った後に、絶縁膜230をフォトリソグラフィーとウェットエッチングで所定のパターンに形成する。絶縁膜230には例えば酸化シリコン、窒化シリコンを用いる。所定のパターンとは、梁部前駆層208の所定の位置、犠牲層207の側面、コンタクト層106の所定の位置を露出させるパターンである。
そして、図4(b)に示すように、コンタクト層106の発光部領域116の露出面の上に第3電極111を形成する(b−b’断面参照)。また、第1支持領域117にある梁部前駆層208の露出面の上に第2電極110を形成する(a−a’断面参照)。ここでは、第2電極110を2箇所に形成しているが、どちらか一方のみでもよい。第2電極110、第3電極111の材料としては例えばTi/Auを用いる。なお、図4(b)では、第2電極110が絶縁膜230に重なっていないが、絶縁膜230の一部に第2電極110の一部が重なるように形成されてもよい。
次に、図4(c)に示すように、接続領域119にあるコンタクト層106を除去するためのマスク層を形成する。そのために、まず、レジスト(マスク層)240を全面に塗布した後に、発光部領域116にある犠牲層207の側面の一部が露出し、かつ、発光部領域116にあるコンタクト層106が露出しないようにアッシングする(b−b’断面参照)。さらに、接続領域119にあるコンタクト層106が露出するように、その領域にあるコンタクト層106の上のレジスト240を除去する(c−c’断面参照)。なお、図4(c)の俯瞰図ではレジスト塗布エリア(色付)とレジスト除去エリア(白抜)を示している。
そして、図5(a)に示すように、可動領域118にある犠牲層207および接続領域119にあるコンタクト層106をウェットエッチングにて除去する。図4(c)の工程により、発光部領域116にある犠牲層207の側面の一部が露出しているため、犠牲層207は除去される。しかし、発光部領域116にあるコンタクト層106は、レジスト240とエッチングストップ層である第1の層121で覆われているため、除去されずに残ったままである(b−b’断面参照)。
一方で、接続領域119にある犠牲層207、接続領域119にあるコンタクト層106は露出しているため、その領域の犠牲層207およびコンタクト層106は除去され、第1の層121のみが残る(c−c’断面参照)。この工程により、支持層107と梁部108が形成される。また、梁部108と第1の層121の間に間隙112が形成されて、波長可変機構が形成される。また、接続領域119にあったコンタクト層106が除去されて、溝150が形成されることで、コンタクト層106、非酸化領域114を介した漏れ電流パスを切断することができる。
ここで、犠牲層207およびコンタクト層106をエッチングする際には、犠牲層207およびコンタクト層106と、第1の層121とでエッチャントの選択比を大きくする必要がある。具体的には、犠牲層207およびコンタクト層106は、可動領域118をサイドエッチングにて数μm乃至数十μmエッチングするのに対し、第1の層121は層厚方向に数十nm乃至数百nmエッチングされてはいけない。例えば、犠牲層207およびコンタクト層106と、第1の層121とで選択比が100以上であることが好ましい。なお、図では犠牲層207の層さ(Z方向の長さ)が梁部108のY方向の幅よりも大きく記載しているが、犠牲層207の層厚方向は2μm程度、梁部108の幅方向は20μm程度であり、犠牲層207の層さの方が梁部108のY方向の幅よりも小さい。
本工程のエッチングは、犠牲層207を第1のエッチャントにおいてエッチングした後にコンタクト層106を第2のエッチャントにおいてエッチングをしてもよい。プロセスを容易にするためには、第1のエッチャントによって犠牲層207とコンタクト層106を同時にエッチングすることが好ましい。そのために犠牲層207とコンタクト層106が同一材料であるとより好ましい。AlGaAs系で結晶成長を行う際には、コンタクト抵抗を小さくするためにはコンタクト層106はGaAs層とすることが好ましく、また、エッチャントの選択性から犠牲層207をGaAs層とすることが好ましい。すなわち、コンタクト層106および犠牲層207をGaAs層で構成することが好ましい。
このような関係の層構成およびエッチャントの例として、以下のような構成を用いる。上部反射鏡を兼ねた梁部108はAl0.9Ga0.1As/Al0.4Ga0.6As、犠牲層207はGaAs、第1の層121はAl0.9Ga0.1As、コンタクト層106はGaAsを用いる。さらに、被酸化層205はAl0.98Ga0.02As、上部スペーサ層104はAl0.4Ga0.6Asを用いる。なお、酸化狭窄層105の酸化領域115は、AlxOyとなっている。特に、梁部のコンタクト層106の下ではAlxOyである。犠牲層207およびコンタクト層106のエッチャントとしてクエン酸系のエッチャントを用いる。クエン酸系のエッチャントとして、例えば、クエン酸1水和物と水を重量費で1:1で混合したものをAとし、A:過酸化水素水(30%)=4:1の体積比で混合した水溶液をエッチャントとして用いることができる。当エッチャントではAlxGa1−xAsのxが大きくなる、すなわちAl組成が多くなるとエッチングレートが低くなる。GaAsの犠牲層207のエッチングのために10分以上エッチングを行っても、Al0.9Ga0.1As第1の層121はエッチングストップ層として残る。なお、クエン酸系のエッチャントとして上記混合比に限らず、例えば、過酸化水素水の割合を増やしたり、水をさらに加えたりする等してもよい。
また、犠牲層207と第1の層121とコンタクト層106の材料の別の例として、犠牲層207とコンタクト層106にGaAs、第1の層121にGaInPを用いてもよい。この場合、犠牲層207とコンタクト層106のエッチングには前述のクエン酸系エッチャントと用い、第1の層121のエッチングには塩酸を用いることができる。
その後、図5(b)で示すように、可動領域118に残っている第1の層121をウェットエッチングで除去し、レジスト240を剥離する。第1の層121を除去すると、間隙112の厚さ方向の距離を長くすることができ、共振器部の実効共振器長を短くすることができる。ただし、第1の層121は除去せずに残しておいてもよい。ここで、第1の層121をエッチングする際には、コンタクト層106に対してエッチャントの選択比を大きくする必要がある。例えば、第1の層121にAl0.9Ga0.1As、コンタクト層106にGaAsを用い、第1の層121のエッチャントとしてバッファードフッ酸を用いる。なお、のコンタクト層106の接続領域119の下の酸化狭窄層105の酸化領域115はAlxOyであり、バッファードフッ酸によりエッチングされる。しかし、例えば、その下部の上部スペーサ層104をAl0.4Ga0.6Asで形成すると、バッファードフッ酸によりエッチングされないエッチングストップ層として機能し、活性層103にダメージを与えることがない。
また、コンタクト層106と酸化狭窄層105の間に第2の層(不図示)を設けてもよい。この第2の層は、コンタクト層106および第1の層121のエッチャントに対し、選択比が大きい材料を用いることで、エッチングストップ層として利用できる。ただし、第2の層は、発光部領域116、接続領域119、第2支持領域130にわたって残るため、電流パスとならないように、抵抗を大きくする必要がある。具体的には、第2の層の抵抗は、コンタクト層106のそれに比べて大きい必要がある。例えば、第2の層は、コンタクト層106のドーピング濃度よりも小さいドーピング濃度を有する構成とすればよい。また、第2の層は、コンタクト層106の厚さより厚くすればよい。
また、各エッチングに対して、エッチャントと接する部分として梁部108や絶縁膜230なども選択比を大きく取ることが好ましいが、特性に影響を与えない程度であれば、一部エッチングされてもよい。
最後に、図5(c)で示すように、第1電極109を形成する。電極材料としては例えばAuGe/Ni/Auを用いることができる。なお、絶縁膜230は、図1(a)のように除去してもよいし、除去しなくてもよい。ただし、絶縁膜230を除去する場合には、図5(c)のb−b’断面図で示されている第3電極111の下部は残るように、それ以外を除去する。
このような製造方法を用いることで、コンタクト層106の一部を除去することができ、漏れ電流を抑制する波長可変VCSELが形成される。なお、本実施形態に関して、構成および製造方法は示したものに限らない。
例えば、上記の製造方法の一例では、図2(c)の工程において、梁部前駆層208と犠牲層207と第1の層121までをエッチングした。しかし、少なくとも梁部前駆層208までをエッチングすればよく、犠牲層207と第1の層121は発光部を形成する工程(図3(b)の工程)の後で第3電極111を形成する工程(図4(b)の工程)の前までにエッチングを実施してもよい。
また、第2電極110と第3電極111を形成後に犠牲層207をエッチングし、第1電極109を形成した。しかし、犠牲層207のエッチングの前に第1電極109を形成してもよいし、第2電極110と第3電極111の形成前に犠牲層207をエッチングしてもよく、この順番に限らない。
また、コンタクト層106の一部を除去する工程は、第2電極110や第3電極111を形成する前に行ってもよい。
(実施形態2)
本実施形態では、実施形態1の面発光レーザを光源装置として用いた情報取得装置の例について説明する。波長可変型の光源装置は、光通信用光源や光計測用光源として利用することができる。さらに、波長可変型の光源装置は、非侵襲、非破壊で測定対象物の内部の情報を取得する情報取得装置の光源装置として利用することができる。以下では、本実施形態の光源装置を用いた情報取得装置の一例として、光干渉断層撮像装置(以下、OCT装置という)について図6を用いて説明する。
図6は、本実施形態に係るOCT装置を示す模式図である。OCT装置は、光源装置601、干渉光学系602、光検出部603、測定対象物の内部情報を取得する情報取得部604、を少なくとも有する。光源装置601として、実施形態1の面発光レーザを用いることができる。また、図示していないが、情報取得部604はフーリエ変換器を有する。ここで、情報取得部604がフーリエ変換器を有するとは、情報取得部604が入力されたデータに対してフーリエ変換する機能を有していれば形態は特に限定されない。一例は、情報取得部604が演算部を有し、この演算部がフーリエ変換する機能を有する場合である。具体的には、演算部がCPUを有するコンピュータであり、このコンピュータが、フーリエ変換機能を有するアプリケーションを実行する場合である。他の例は、情報取得部604がフーリエ変換機能を有するフーリエ変換回路を有する場合である。
光源装置601から出た光は干渉光学系602を経て測定対象の物体612の情報を有する干渉光となって出力される。干渉光は光検出部603において受光される。なお光検出部603は差動検出型でも良いし単純な強度モニタ型でも良い。受光された干渉光の強度の時間波形の情報は光検出部603から情報取得部604に送られる。情報取得部604では、受光された干渉光の強度の時間波形のピーク値を取得してフーリエ変換をし、物体612の情報(例えば断層像の情報)を取得する。なお、ここで挙げた光源装置601、干渉光学系602、光検出部603、情報取得部604を任意に設けることができる。
以下、光源装置601から光が照射されてから、測定対象の物体の内部の情報を得るまでについて詳細に説明する。光源装置601から出た光は、ファイバ605を通って、カップラ606に入り、照射光用のファイバ607を通る照射光と、参照光用のファイバ608を通る参照光とに分岐される。カップラ606は、光源の波長帯域でシングルモード動作のもので構成し、各種ファイバカップラは3dBカップラで構成することができる。照射光はコリメーター609を通って平行光になり、ミラー610で反射される。ミラー610で反射された光はレンズ611を通って物体612に照射され、物体612の奥行き方向の各層から反射される。
一方、参照光はコリメーター613を通ってミラー614で反射される。カップラ606では、物体612からの反射光とミラー614からの反射光による干渉光が発生する。干渉した光はファイバ615を通り、コリメーター616を通って集光され、光検出部603で受光される。光検出部603で受光された干渉光の強度の情報は電圧などの電気的な情報に変換されて、情報取得部604に送られる。情報取得部604では、干渉光の強度のデータを処理、具体的にはフーリエ変換し断層像の情報を得る。このフーリエ変換する干渉光の強度のデータは通常、等波数間隔にサンプリングされたデータであるが、等波長間隔にサンプリングされたデータを用いることも可能である。
得られた断層像の情報は、情報取得部604から画像表示部617に送って画像として表示させてもよい。なお、ミラー610を照射光の入射する方向と垂直な平面内で走査することで、測定対象の物体612の3次元の断層像を得ることができる。また、光源装置601の制御は、情報取得部604が電気回路618を介して行ってもよい。また図示しないが、光源装置601から出る光の強度を逐次モニタリングし、そのデータを干渉光の強度の信号の振幅補正に用いてもよい。
OCT装置は、眼科、歯科、皮膚科等の分野において、動物や人のような生体内の断層像を取得する際に有用である。生体の断層像に関する情報とは、生体の断層像のみならず、断層像を得るために必要な数値データをも含む。特に、測定対象を人体の眼底や歯、血管とし、それらの断層像に関する情報を取得することに用いられることが好適である。
以下に本発明の実施例を示す。本実施例では、図1乃至5に基づいて、MEMS−VCSELの製造方法及び構成について説明する。まず、図2(a)で示すように、n−GaAs基板101上に、AlAs/GaAs下部反射鏡102、Al0.25Ga0.75As下部スペーサ層120、多重量子井戸構造を有するInGaAs活性層103を順に形成する。そして、その上に、Al0.25Ga0.75As上部スペーサ層104、Al0.98Ga0.02As被酸化層205、Al0.4Ga0.6As第2の層(不図示)、GaAsコンタクト層106を順に形成する。そして、その上に、Al0.9Ga0.1As第1の層121、GaAs犠牲層207、Al0.4Ga0.6As/Al0.9Ga0.1As梁部前駆層208を順に形成する。これらの層はMOCVD法を用いて形成される。活性層103は中心波長を1060nmである。下部反射鏡102は、AlAs層とGaAs層が35ペア、梁部前駆層208は、Al0.4Ga0.6As層とAl0.9Ga0.1As層が35ペアである。コンタクト層106のドーピング濃度は3×1018cm−3、第2の層121のドーピング濃度は1×1018cm−3である。
次に、図2(b)で示すように、プラズマCVDにより酸化シリコン膜210を全面に成膜する。フォトリソグラフィーとウェットエッチングによって第1支持領域117と可動領域118の第1マスクパターンとなるように酸化シリコン膜210をパターニングする。可動領域118の幅は20μm、第1支持領域117は100μm×100μmとする。ウェットエッチングにはバッファードフッ酸を用いる。
次に、図2(c)で示すように、第1マスクパターンに対して、梁部前駆層208と犠牲層207の途中までをドライエッチングする。残りの犠牲層207をクエン酸1水和物と水を重量費で1:1で混合したものをAとし、A:過酸化水素水(30%)=4:1の体積比で混合したクエン酸系エッチャントにより、ウェットエッチングする。次に第1の層121をバッファードフッ酸によりウェットエッチングする。第1の層121は30nmであるため、10秒程度で十分にエッチングされるが、引き続き、同じエッチャントで酸化シリコン膜210も除去する。なお、梁部前駆層208のAl0.9Ga0.1Asも一部エッチングされるが、可動領域118の幅は20μmとしており、そこの一部がサイドエッチングされるだけであり、特性上に問題は及ぼさない。
次に、図3(a)で示すように、酸化シリコン膜220を用いて、発光部領域116と第2支持領域130と接続領域119とのパターンの第2マスクパターンを形成する。パターン形成された梁部前駆層208の幅20μmに対し、接続領域119のY方向のパターン幅は25μmである。また、発光部領域116の直径は50μmであり、第2支持領域130は105μm×105μmである。このように、Y方向において、接続領域119の幅は、発光部領域116の幅、支持領域(第1支持領域117、第2支持領域130)の幅よりも小さい。さらに、X方向、Y方向の両方向において、発光部領域116の幅は、支持領域(第1支持領域117、第2支持領域130)の幅よりも小さい。
そして、図3(b)に示すように、第2マスクパターンに対し、下部反射鏡102の上までドライエッチングする。この結果、被酸化層205の側壁が露出する。
次に、図3(c)で示すように、高温水蒸気雰囲気中で被酸化層205を選択酸化する。この結果、接続領域119にAlxOyの酸化領域115、発光部領域116と第2支持領域130に非酸化領域113、114が形成され、酸化狭窄層105が形成される。その後、酸化シリコン膜220を除去する際のバッファードフッ酸による発光部の側壁へのダメージから保護するために、エッチング面以外を保護膜(不図示)で保護した後に酸化シリコン膜220を除去し、保護膜剥離する。
次に、図4(a)で示すように、ウエハ全面を酸化シリコン膜230で覆う。そして、第2電極、第3電極を形成するため、および犠牲層207をエッチングをするために、酸化シリコン膜230の一部をフォトリソグラフィーとウェットエッチングにより除去する。
続いて、図4(b)で示すように、Ti/Au膜により、第1支持領域117にある梁部前駆層208の上に第2電極110と、発光部領域116にあるコンタクト層106の上に第3電極111と、を形成する。このときの電極パターンはリフトオフにより形成する。
次に、図4(c)で示すように、レジスト240を全面に塗布する。そして、酸素プラズマにより、可動領域118にある犠牲層207の側面の一部が露出し、かつ、発光部領域116にあるコンタクト層106が露出しない状態までレジスト240をアッシングする。露出する犠牲層207の側面は、犠牲層207の厚さ2μmに対して、その半分の1μmほど露出させる。また、接続領域119にあるコンタクト層106が露出するようにレジスト240を露光することにより除去する。
そして、図5(a)で示すように、可動領域118にある犠牲層207と接続領域119にあるコンタクト層106を前述のクエン酸系エッチャントにて同時にウェットエッチングする。このエッチングでは発光部領域116にある犠牲層207をサイドエッチングにより10μmずつエッチングされる。その一方で、このエッチャントに曝されている、第1の層121、第2の層(不図示)、梁部前駆層208は30nm乃至数百nm程度の厚さであるが、選択比が大きいために、何れの層もエッチングされずに残る。
その後、図5(b)で示すように、第1の層121をウェットエッチングで除去し、レジスト240を剥離する。この際にコンタクト層106および第2の層(不図示)はバッファードフッ酸によりエッチングされずに残っている。なお、第2の層(不図示)は、コンタクト層106よりも抵抗が大きいため、漏れ電流のパスとはなりにくい。
最後に、図5(c)のように、AuGe/Ni/Au膜により第1電極109を形成する。このようにして、本発明のMEMS−VCSELを得ることができる。
このように、接続領域119にあるコンタクト層106を除去することにより、発光部領域116にあるコンタクト層106と第2支持領域130にあるコンタクト層106とを分離することができる。このため、第3電極111からコンタクト層106、第2支持領域130の非酸化領域114を介してのキャリアの流れを抑制することができる。それにより、漏れ電流を抑制することが可能となる。また、第1電極109と第3電極111の間に電圧を印加することで、酸化狭窄層105の非酸化領域113に対応する領域から発光が生じる。第2電極110と第3電極111との間に交流電圧を印加することによって、上部反射鏡を有する梁部108が活性層103の厚さ方向に振動し、発光領域で発光した光のうち共振器長に応じた特定の波長の光が外部に射出される。このようにして、面発光レーザの発振波長が可変となる。