JP6597011B2 - 太陽電池モジュール用の封止材一体型裏面保護シート及びそれを用いてなる太陽電池モジュール - Google Patents
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Description
(TMA試験:TMA装置にφ10mmの封止材一体型裏面保護シートをセットし、温度100℃定温とし、φ1mmの針に押込みその時の押込み深さ(μm)を測定する。押込み圧力は、試験開始0分から2分までは50kPa/分として昇圧し、2分から3分までは100kPaとして一定圧とし、3分から5分までは−50kPa/分として降圧し、5分から6分までは0kPaとし、6分経過した時点を1サイクルとする。)
先ず、本実施形態の封止材一体型裏面保護シートを含んで構成される太陽電池モジュール10の基本構成について、図3を用いて説明する。太陽電池モジュール10は、非受光面側から、本実施形態の封止材一体型裏面保護シート1、太陽電池素子2、受光面側封止材シート3、受光面側の最外層に配置される透明前面基板4が順に積層された構成である。
図2に示す通り、封止材一体型裏面保護シート1は、封止材シート11と裏面保護シート12とを一体形成してなる多層の樹脂シートである。封止材一体型裏面保護シート1の厚さは、特に限定されないが、300μm以上600μm以下程度の範囲の厚さを一般的な例として、又、350μm以上480μm以下の範囲の厚さである例をより好ましい実施形態の具体的な例として挙げることができる。そして、封止材一体型裏面保護シート1は、封止材シート11が太陽電池素子2の非受光面側と対面する態様で太陽電池モジュール10内に配置されて用いられる。以下、本実施形態の封止材一体型裏面保護シートに関するTMA試験について説明する。
本実施形態の封止材一体型裏面保護シート1は、熱機械分析試験(以下、TMA試験と表記することがある。)を5サイクル行い、各サイクル終了時の封止材シートへの針の押込み深さ(μm)を所定の範囲とする。具体的には、TMA試験から、所定の時間(分)と封止材一体型裏面保護シートの封止材シート11からの針の押込深さ(μm)との関係を示すTMA曲線を求める。そして、TMA試験の各サイクル終了時の封止材シート11への針の押込み深さ(μm)からDa(N、N−1)(μm)を求める。ここで本明細書において、Da(N、N−1)とは、上記TMA曲線において、Nサイクル終了時とN−1サイクル終了時との封止材シート11への針の押込み深さの差の絶対値を意味し、ある1つのサイクル数(Nサイクル)の針の押込み深さとそのサイクル数の1つ前のサイクル数(N−1サイクル)の針の押込み深さの差の絶対値(μm)を意味する。
本実施形態に関する封止材シート11は、コア層111とスキン層112を有する多層シートである。封止材シート11は、コア層111における一方の面にのみスキン層112が積層される層構成であってもよいが、図1に示す通り、封止材シート11がスキン層/コア層/スキン層の3層構造を有する多層シートであることが好ましい。上記いずれの構成においても、封止材シート11は、各層毎に以下に説明する樹脂組成物成分を、それぞれ最適な組成で配合することにより、太陽電池モジュール用の封止材シート11に求められる耐熱性、熱加工適性や、柔軟性、基材密着性等の各種要求物性を保持したまま、太陽電池モジュールの薄型化の要請にも十分に対応することができる。
コア層111は、封止材シート11に、主として、耐熱性や適度な剛性を付与する機能を有する。コア層111には、密度0.880g/cm3以上0.940g/cm3以下の低密度ポリエチレンがコア層組成物の全樹脂成分中60質量%以上含有するが、ラミネート加工時の封止材由来の樹脂の溶融に起因するラミネータ汚染を防止する観点から、低密度ポリエチレンよりも耐熱性の高い耐熱性樹脂(以下、単に耐熱性樹脂と表記することがある)を更に含有することが好ましい。このような耐熱性樹脂としては、例えば密度0.940g/cm3以上の高密度ポリエチレンやポリプロピレン等を挙げることができる。
コア層111には、密度0.880g/cm3以上0.940g/cm3以下の低密度ポリエチレンがコア層組成物の全樹脂成分中60質量%以上含有されていれば特に制限はされない。コア層111に含有される低密度ポリエチレンは、密度0.910g/cm3以上0.940g/cm3以下の低密度ポリエチレンを用いることが好ましい。又、低密度ポリエチレンは、コア層組成物の全樹脂成分中60質量%以上95質量%以下であることが好ましく、より好ましくは75質量%以上85質量%以下である。そして、コア層組成物には、更に耐熱性樹脂が含有されることが好ましく、耐熱性樹脂の中でもポリプロピレンが含有されることが好ましい。ポリプロピレンは、コア層組成物の全樹脂成分中5質量%以上40質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以上30質量%以下、更に好ましくは10質量%以上25質量%以下である。コア層111が、低密度ポリエチレンとポリプロピレンの混合樹脂からなる層であり、主として封止材11に耐熱性及び寸法安定性を付与する層として機能する層である。
スキン層112は、主に封止材一体型裏面保護シート1の最外層に配置される層である。スキン層112は、太陽電池モジュール10において、太陽電池素子2の非受光面側の表面及び受光面側封止材シート3との密着面、又は、必要に応じて裏面保護シート12との密着面となる。特に前者の場合において、封止材シート11の密着性や、太陽電池モジュールとしての一体化のためのラミネート加工時における他部材の凹凸への追従性(以下「モールディング特性」と言う)の向上に寄与する。
スキン層112には、密度0.880g/cm3以上0.940g/cm3以下の低密度ポリエチレンがスキン層組成物の全樹脂成分中60質量%以上含有されていれば特に制限はされない。スキン層112に含有される低密度ポリエチレンは、密度0.880g/cm3以上0.910g/cm3未満の低密度ポリエチレンを用いることが好ましい。又、低密度ポリエチレンは、スキン層組成物の全樹脂成分中80質量%以上100質量%以下であることが好ましく、より好ましくは98質量%以上100質量%以下である。そして、スキン層組成物は、コア層組成物と異なり、ポリプロピレン等の耐熱性樹脂を含有しないことが好ましい。この通り、スキン層112は、コア層組成物のベース樹脂よりも密度が低い低密度ポリエチレンを主たる成分とする層とすることが、スキン層にモールディング特性や密着性を付与する観点から好ましい。
スキン層組成物及びコア層組成物には、更にその他の成分を含有させることができる。例えば、封止材シート11に、耐候性を付与するための各種の耐候性マスターバッチ、各種フィラー、光安定化剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等の成分が例示される。これらの含有量は、その粒子形状、密度等により異なるものではあるが、それぞれ封止材シート11の全樹脂組成物中に0.001質量%以上5質量%以下の範囲内であることが好ましい。これらの添加剤を含むことにより、封止材一体型裏面保護シート1の封止材シート11に、長期に亘る安定した機械強度の向上や、黄変やひび割れ等の防止効果等を付与することができる。
封止材一体型裏面保護シート1を構成する裏面保護シート12としては、従来、太陽電池モジュール用の裏面保護シートとして用いられてきた各種の樹脂シートを用いることができる。裏面保護シート12を形成する樹脂シートとしては、例えば、ポリエチレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂等、各種の樹脂シートを用いることができる。これらの中でも、絶縁性能、機械強度、コスト、透明性等の物性及び経済性の観点からポリエチレンテレフタレート(PET)を好ましく用いることができる。又、機械強度や水蒸気バリア性向上の更なる向上の観点から、上記PETの他に更に耐加水分解性PETを最外層に積層した多層シートを、裏面保護シート12として、特に好ましく用いることができる。
本実施形態の封止材一体型裏面保護シート1の製造方法について説明する。封止材一体型裏面保護シート1は、裏面保護シート12を形成する「裏面保護シート形成工程」と、封止材シート11を形成する「封止材シート形成工程」と、裏面保護シート12に封止材シート11を積層して一体化する「一体化工程」と、を経ることによって製造することができる。
裏面保護シート12は、上記において説明したPET等の樹脂材料を、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法、その他の成膜化法等により成膜することにより形成することができる。尚、裏面保護シート12は、本発明の効果を害さない範囲で、上記樹脂材料の他に顔料等のその他の添加物を含むものであってもよい。
封止材シート11は、上述のスキン層組成物とコア層組成物とを、公知の共押出し法により一体成形して多層シート化することにより得ることができる。
封止材シート11と、裏面保護シート12と、及び必要に応じて同様の方法によって形成したその他の層を形成するシートとを適宜積層して、更に一体化することにより、本実施形態の封止材一体型裏面保護シート1を得ることができる。各シートの一体化は従来公知のドライラミネート法によることができる。ラミネート接着剤は従来公知のものが利用でき特に限定されず、ウレタン系、エポキシ系等の主剤と硬化剤とからなる2液硬化型のドライラミネート接着剤等が適宜使用可能である。尚、この一体化工程は、押出しコートラミネート法や、その応用形態であるサンドイッチラミネート法によることもできる。
太陽電池モジュール10は、例えば、上記の透明前面基板4、受光面側封止材シート3、太陽電池素子2、及び封止材一体型裏面保護シート1からなる部材を順次積層してから真空吸引等により一体化し、その後、ラミネーション法等の成形法により、上記の部材を一体成形体として加熱圧着成形して製造することができる。例えば真空熱ラミネート加工による場合、ラミネート温度は、130℃〜180℃の範囲内とすることが好ましい。又、ラミネート時間は、5〜20分の範囲内が好ましく、特に8〜15分の範囲内が好ましい。このようにして、上記各層を一体成形体として加熱圧着成形して、太陽電池モジュール10を製造することができる。
下記の材料を用いて、上記記載の「封止材シートの製造方法」により、各封止材シートを作成した。
低密度ポリエチレン(LDPE、表中「LD」と表記):密度0.920g/cm3、融点123℃。
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE、表中「LLD」と表記):密度0.898g/cm3、融点97℃。
ポリプロピレン(PP、表中「PP」と表記):ホモポリプロピレン。密度0.900g/cm3、融点155℃、MFR8.5g/10分(230℃)。
EVA高速架橋タイプ(表中「EVA」と表記)
白色顔料:平均粒径0.2μmの酸化チタン。全ての実施例及び比較例の封止材シートのコア層のみに、樹脂成分100質量部当り7質量部添加。
紫外線吸収剤:ケミプロ化成株式会社製、商品名KEMISORB12。全ての実施例、比較例のコア層及びスキン層用の各封止材組成物に、いずれも0.3質量部添加。
耐候安定剤:BASF株式会社製、商品名Tinuvin622SF。全ての実施例、比較例のコア層及びスキン層用の各封止材組成物に、いずれも0.2質量部添加。
酸化防止剤:チバ・ジャパン株式会社製、商品名Irganox1076。全ての実施例、比較例のコア層及びスキン層又は単層用の各封止材組成物に、いずれも0.05質量部添加。
上記各封止材シートと、表面にコロナ処理を施したPETフィルム(帝人デュポン社製、「Melinex S」、厚さ125μm)と、を、従来公知のドライラミネート法で積層して各実施例、比較例の封止材一体型裏面保護シートを得た。
各実施例、比較例の封止材一体型裏面保護シートについてTMA試験を行った。具体的には、封止材一体型裏面保護シートをφ10mmに切り出し、TMA装置(SIIナノテクノロジー製TMA/SS7100)にセットし封止材一体型裏面保護シートを100℃の定温とし、φ1mmの針に押込みその時の押込み深さ(μm)を測定した。押込み圧力は、試験開始0分から2分までは50kPa/分として昇圧し、2分から3分までは100kPaとして一定圧とし、3分から5分までは−50kPa/分として降圧し、5分から6分までは0kPaとし、6分経過した時点を1サイクルとして、5サイクル(18分)行った。図5、図6に各実施例、比較例の封止材一体型裏面保護シートのTMA試験における時間(分)と封止材シートへの針の押し込み深さ(μm)との関係を表したTMA曲線を示す。なお、図5、図6は、時間(分)は1サイクル終了時を0分として5サイクル終了時(図5、6中、24分経過時)までのTMA曲線を示している。又、当該TMA曲線から1〜5サイクル終了時(図5、6中、0分、6分、12分、18分、24分経過時)の封止材シートへの針の押し込み深さ(μm)をそれぞれ求め、2サイクル終了時と1サイクル終了時との封止材シートへの針の押込み深さの差(表1中、「Da(2,1)」と表記)及び、Da(5、4)とDa(4、3)とDa(3、2)とDa(2、1)との平均値を表1(表1中、「Da平均」と表記)に示す。
白板半強化ガラス、幅1.5mmの集電用の配線(厚さ250μm)を3本接続した太陽電池素子(Q−CELLS社製、セルQ6LTT−200/152 156mm)(2×2個)を、受光面側用の封止材シート、及び実施例、比較例の各「封止材一体型裏面保護シート」を、それぞれガラスシート/受光面側用の封止材シート/太陽電池素子/封止材一体型裏面保護シート/ガラスシートの順で積層し、下記のラミネート条件で、真空加熱ラミネート処理を行い、それぞれの実施例、比較例について太陽電池モジュール評価用サンプルを得た。
加圧(0kPa〜100kPa):1.0分
圧力保持(100kPa):10.0分
温度150℃
A:樹脂汚れなし。
B:ラミネータ付属の刷毛で1往復、撫でることにより除去可能な程度の樹脂汚れがある。
C:上記刷毛による除去が不可能な程度の樹脂汚れがある。
上記の各太陽電池モジュール評価用サンプルについて、サーマルサイクル試験前後のPmax値をそれぞれ測定し、発電効率の維持率を算出し、発電効率長期維持率を評価した。尚、Pmax値とは、太陽電池の出力が最高となる動作点での最高出力値であり、JIS−C8935−1995に基づき、下記サーマルサイクル試験前後のモジュールの発電出力を測定した。サーマルサイクルは、上記の評価用サンプルを、温度が下記所定サイクルで変化するオーブンに投入して、前記サンプルのオーブンへの投入し、500サイクル経過前後での発電効率を測定しその比率を算出した。オーブンのサイクル条件は、−20℃と90度の温度を往復し、前期温度の変更にかかる時間を5時間、前記温度を維持する時間を1時間とし、−20℃からスタートして90℃を経由し−20℃に戻るプロセスを1サイクルとした。結果を表1に示す。又、500サイクル経過後での太陽電池モジュール評価用サンプルの集電用の配線の寸法の差の絶対値を表1に示す(表1中、「タブ線寸法変化」と表記)。なお、後述するように、表1中のタブ線寸法変化はいずれも伸び量を表している。
A:発電効率維持率98%以上である。
B:発電効率維持率96%以上である。
C:発電効率維持率96%未満である。
11 封止材シート
111 コア層
112 スキン層
12 裏面保護シート
2 太陽電池素子
3 受光面側封止材シート
4 透明前面基板
5 非受光面側封止材シート
6 裏面保護シート
10 太陽電池モジュール
10A 太陽電池モジュール
Claims (5)
- コア層とスキン層とを有する多層シートである封止材シートと、
裏面保護シートと、が前記封止材シートの前記スキン層が最外層側に露出する態様で積層されてなる太陽電池モジュール用の封止材一体型裏面保護シートであって、
前記封止材シートのコア層及びスキン層には、密度0.880g/cm3以上0.940g/cm3以下の低密度ポリエチレンが各層組成物の全樹脂成分中60質量%以上含有されていて、
前記封止材シートの膜厚が200μm以上400μm以下であり、
下記条件の熱機械分析(TMA)試験を5サイクル行うことによって得られ、所定の時間(分)と前記封止材一体型裏面保護シートを構成する前記封止材シートの側の表面からの針の押込深さ(μm)との関係を示すTMA曲線において、
下記条件の熱機械分析(TMA)試験の各サイクル終了時の前記針の押込み深さ(μm)から、Nサイクル終了時とN−1サイクル終了時との前記針の押込み深さ(μm)の差の絶対値をDa(N、N−1)(μm)と定義した場合に、
前記Da(N、N−1)におけるDa(2、1)が10μm以下であり、Da(5、4)とDa(4、3)とDa(3、2)とDa(2、1)との平均値が8.0μm以下である封止材一体型裏面保護シート。
(TMA試験:TMA装置にφ10mmの封止材一体型裏面保護シートをセットし、温度100℃定温とし、φ1mmの針を押込み、その時の押込み深さ(μm)を測定する。押込み圧力は、試験開始0分から2分までは50kPa/分として昇圧し、2分から3分までは100kPaとして一定圧とし、3分から5分までは−50kPa/分として降圧し、5分から6分までは0kPaとし、6分経過した時点を1サイクルとする。) - 前記封止材シートがスキン層/コア層/スキン層の3層構造を有する多層シートである請求項1に記載の封止材一体型裏面保護シート。
- 前記封止材シートのコア層には、ポリプロピレンがコア層組成物の全樹脂成分中5質量%以上40質量%以下含有する請求項1又は2に記載の封止材一体型裏面保護シート。
- 前記裏面保護シートがポリエチレンテレフタレート樹脂及び/又は耐加水分解ポリエチレンテレフタレート樹脂を含んで構成されている請求項1から3のいずれかに記載の封止材一体型裏面保護シート。
- 請求項1から4のいずれかに記載の封止材一体型裏面保護シートが太陽電池素子の非受光面側に、前記封止材シートの前記スキン層が対面する態様で、積層されている太陽電池モジュール。
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