JP6596800B2 - 熱対流生成システムおよびコンベクションpcr法 - Google Patents

熱対流生成システムおよびコンベクションpcr法 Download PDF

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Description

本発明は、例えばPCR法を行うための熱対流生成システムおよび該熱対流生成システムを使用したコンベクションPCR法に関する。
遺伝子増幅方法として、ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction、以下「PCR」と称する。)が知られている。PCRは、極めて微量のDNAサンプルから特定のDNA断片を短時間に大量に増幅できる方法であり、その走査の簡便さから、現在では基礎研究のみならず、臨床遺伝子診断から食品衛生検査、犯罪捜査に至るまで、幅広い分野に応用されている。
特許文献1には、直立したシリンダ状の容器内で、容器底部側から供給する熱により熱対流を生成させてPCRを行うPCR用の熱対流生成装置が開示されている。この熱対流生成装置は、対流による溶液駆動を行うものであり、外部ポンプを使用せずにPCR溶液の送液が可能という利点がある。しかしながら、PCR溶液に対する熱供給の位置の僅かなズレやPCR溶液を含む容器の傾きの僅かな違いで対流の状態が大きく変わるため、安定した熱対流が得られず再現性に乏しいという問題がある。
特許文献2にはPCR用の熱対流生成装置が開示されており、隙間(Gap)を有して積層された複数の直方体状の第1〜第3熱源(1st〜3rd Heat Source)に反応管を収容するための孔(channel)を形成し、該孔にPCRの反応管(ReactionVessel)を差し込んで固定して、下層から順に第1〜第3熱源を積層した積層体を、鉛直軸の径方向の線に対して前記積層体の上面が所定角度をなすように傾斜させた状態で、前記積層体を鉛直軸周りに回転させることにより反応管内の液体に遠心力を付与して熱対流を促進するように構成されている。なお、熱源温度は、第1熱源>第2熱源>第3熱源に設定されている。
しかしながら、このPCR用の熱対流生成装置では、上述したように鉛直軸周りに回転させる熱源の積層体が所定角度傾斜しているため、遠心力を受けて反応管(ReactionVessel)の底部に移動した反応液が底部から上下2方向に分流した際、上向きに流れる場合と下向きに流れる場合とでは反応管内の液体に作用する回転軸方向の合力が異なるので、液体がスムーズに流れにくく、再現性の良い熱対流が得られないという問題があった。
特許文献3は、回転軸方向に対して垂直な面に沿って設けられた熱対流生成用チップの環状流路内に液体を導入して該液体を熱源により加熱しつつ、回転軸周りに熱対流生成用チップを回転させることで前記液体に遠心力を付与するPCR用の熱対流生成装置が開示されている。この熱対流生成装置は、特許文献1,2と比べて再現性に優れる熱対流を実現することができる。しかしながら、特許文献3の装置よりもロバスト性(外的要因の変化を内部機構で阻止する性能)、熱対流の再現性が高くPCRのサーマルサイクルをより効率良く迅速に行うことができる熱対流生成装置や熱対流生成システムが求められている。
国際公開2002/072267号公報 国際公開2011/086497号公報 特開2014−39498号公報
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、ロバスト性に優れ、熱対流の再現性が高く、例えばPCRのサーマルサイクル等の熱対流をより効率良く迅速に行うことができる熱対流生成システムおよび該熱対流生成システムを使用したコンベクションPCR法を提供することを課題とする。
上述した目的のうち少なくとも一つを実現するために、本発明の一側面を反映した熱対流生成システムは、
液体を循環させるための環状流路を有する熱対流生成用チップを回転可能に固定することができる回転軸と、
前記環状流路内の液体を加熱又は冷却する第1熱源部を有する第1温度調節部と、
前記環状流路内の液体を加熱又は冷却する第2熱源部を有する第2温度調節部と、
前記回転軸を回転駆動することにより前記環状流路全体を前記回転軸の軸線回りに回転させる回転駆動手段と、を備え、前記液体が前記環状流路を流通する方向と直交する方向(環状流路より呈される円と一致する平面)で前記環状流路を平面視したとき、該平面上にある前記環状流路の重心(環状流路の中心)と、前記軸線と前記平面との交点である前記回転軸の回転中心とが一致しない熱対流生成装置と、
液体を循環させるための環状流路を有する熱対流生成用チップと
を含む熱対流生成システムであって、
前記回転中心と前記重心(環状流路の中心)とをつなげた直線に対して、前記重心(環状流路の中心)を中心として、30°以上〜150°以下または210°以上〜330°以下となる範囲のうち、いずれか一方の範囲のみに、前記第2熱源部が少なくとも1つ位置して該範囲内で前記環状流路の流路エリアを加熱又は冷却し、
前記第1熱源部は、第2熱源部によって加熱又は冷却される前記環状流路の流路エリア以外の流路エリアを加熱または冷却し、
前記熱対流生成用チップは、前記環状流路に連通した液体供給路を有し、前記回転駆動により熱対流生成用チップに加わる遠心力により前記液体供給路中の液体が前記環状流路に供給され、
前記液体供給路は、
前記液体を受け入れる受入部と、
前記受入部と前記環状流路とを連通させるとともに、前記受入部内の液体を毛細管現象により吸引する吸引通路と、
を有し、
前記吸引通路は、前記吸引通路の中間部と前記環状流路との間に位置する第1領域と、前記吸引通路と前記受入部との間に位置する第2領域とを有し、
前記回転をさせることにより、前記第1領域内の液体が前記第2領域内の液体から分離して前記環状流路へ供給される、熱対流生成システムである。
上述した目的のうち少なくとも一つを実現するために、本発明の一側面を反映したコンベクションPCR法は、上記の熱対流生成システムを使用したコンベクションPCR法であって、
PCR反応溶液を構成する検体液、反応試薬溶液、その他PCR反応に必要な液体を個別に又は一体に環状流路内に導入する液導入工程、
環状流路内で前記PCR反応溶液を所定速度で還流させてコンベクションPCRを行うPCR反応工程、を含み、
PCR反応中に、第1温度調節手段の熱源部と第2温度調節手段の熱源部との温度差を10℃以上に維持する、コンベクションPCR法。
本発明によれば、従来よりロバスト性に優れ、熱対流の再現性が高く、例えばPCRのサーマルサイクル等の熱対流をより効率良く迅速に行うことができる熱対流生成システムおよび該熱対流生成システムを使用したコンベクションPCR法を提供することできる。
図1は、第1実施形態の熱対流生成システムの外観を示した図である。 図1Aは、図1の熱対流生成システムの熱対流生成装置の分解斜視図である。 図2(A)は、図1に示す熱対流生成用チップの一部(裏面)を示し、熱対流生成用チップの環状流路と、熱対流生成装置の第1ヒータおよび第2ヒータとの位置関係を説明した図である。図2(B)は、(A)のA−A線に沿った断面を矢視方向に見た図である。 図3は、第1実施形態の熱対流生成用チップに代替可能な別の熱対流生成用チップの例を示した図である。 図4は、第1実施形態の熱対流生成システムの制御系のブロック図である。 図5は、第1実施形態の熱対流生成システムにより環状流路から発した蛍光を検出している状態を示した図である。 図6は、第2実施形態の熱対流生成システムの熱対流生成用チップを示した図である。 図7は、図6の熱対流生成用チップの分解斜視図である。 図8(A)は、図6の熱対流生成用チップの一部を拡大した図である。図8(B)は、(A)の熱対流生成用チップの基板(積層された板の一番上のもの)の裏面を拡大した図である。 図9は、図6のB−B線に沿った熱対流生成用チップの部分断面を矢視方向に見た図である。 図10は、図6に示される熱対流生成用チップのカバー部の拡大斜視図である。 図11は、図6に示される熱対流生成用チップの案内通路を模式的に示した図である。 図12は、第3実施形態の熱対流生成システムの熱対流生成用チップを示した図である。 図13は、図12に示される熱対流生成用チップの分解斜視図である。 図14は、図12に示される熱対流生成用チップの液体供給路の構造および第1ヒータ,第2ヒータと環状流路との位置関係を示した図である。 図15は、図12に示される熱対流生成用チップの第1基板の一部拡大斜視図である。 図16は、図12に示される熱対流生成用チップの第2基板の一部拡大斜視図である。 図17は、図12に示される熱対流生成用チップの第3基板の一部拡大斜視図である。 図18は、図12に示される熱対流生成用チップのC−C線に沿った断面を矢視方向に見た図である。 図19は、図12に示される熱対流生成用チップのカバー部の拡大斜視図である。 図20は第1実施形態で用いたモータの電源の電圧と該モータの回転数との関係を示すグラフであり、速度と遠心力との関係(F=mv2/r、g=(2πN)2r)より相対重力加速度と第1実施形態で用いたモータの回転数との関係を求め、さらに電圧と相対重力加速度との関係を求めることにより作成したものである。 図21は、相対重力加速度と上記モータの電源の電圧との関係を示すグラフである。 図22(A)は実施例1の結果を示すグラフである。図22(B)は比較例1の結果を示すグラフである。図22(C)は実施例2の結果を示すグラフである。図22(D)は比較例2の結果を示すグラフである。図22(E)は実施例3の結果を示すグラフである。図22(F)は比較例3の結果を示すグラフである。
以下、本発明に係る熱対流生成装置および熱対流生成システムについて、図面を参照しながら説明する。
[第1実施形態]
図1に本発明に係る第1実施形態の熱対流生成システム100の外観(前面)を示し、図1Aに図1の熱対流生成装置1等の分解斜視図を示す。
第1実施形態の熱対流生成システム100は、液体を循環させるための環状流路14を有する熱対流生成用チップ10と、該熱対流生成チップ10を回転可能に着脱固定することができる熱対流生成装置1とを含む(図1A参照)。
熱対流生成装置1は、熱対流生成用チップ10を回転可能に固定するためのシャフト41と、熱対流生成用チップ10の環状流路14の液体を加熱又は冷却する第1ヒータ(第1温度調節部)31および第2ヒータ(第2温度調節部)32と、前記シャフト41を回転駆動することにより環状流路14全体をシャフト41周りに回転させるモータ(回転駆動手段)40と、を少なくとも有する。
後述するように、本発明に係るコンベクションPCRを実施している間は、第2温度調節部32の温度(変性温度)の方が第1温度調節部31の温度(アニーリング温度)よりも高くなり、相対的に見れば、第2温度調節部32により高温になった環状流路14の液体は第1温度調節部31によって"冷却"されるが、第2温度調節部32の温度も第1温度調節部31の温度も、常温(室温)よりは高いため、それぞれ変性温度およびアニーリング温度にするためには"加熱"する機能が必要となる。その意味で、第1温度調節部31および第2温度調節部32はいずれも"加熱"するための部材、すなわち"ヒータ"と称することができるため、本明細書では「第1温度調節部」を「第1ヒータ」に、「第2温度調節部」を「第2ヒータ」に置き換えて、発明の詳細な説明や具体的な実施形態を記載することとする。
図1および図1Aに示したように、モータ40から突出したシャフト41に対し、熱対流生成用チップ10、ステージ20、第1ヒータ31,及び第2ヒータ32等が一体となって回転可能に設けられている。ステージ20は、環状流路14の特定の部分を第1ヒータ(第1温度調節部)31および第2ヒータ(第2温度調節部)32に当接させた状態で、熱対流生成用チップ10を載置することのできる部材である。シャフト41の中心軸AXが上記回転の回転軸となる。
≪熱対流生成用チップ≫
図2(A)に熱対流生成用チップ10の基板11の裏面を示す。図2(B)に(A)のA―A線に沿った熱対流生成用チップ10の断面を矢視方向に見た図を示す。
図2(A)および(B)に示すように、熱対流生成用チップ10は、液体を循環させるための環状流路14を少なくとも有する。熱対流生成用チップ10では、環状流路14の一部をなす溝が形成されたディスク状の基板11と、溝が形成された基板11の面に接合される蓋体13とを有する。この基板11と蓋体13との接合により環状流路14が形成される。
基板11には、該基板11を前記シャフト41に固定するための中心孔17と、ステージ20に固定するために形成された固定部(ネジ孔)(不図示)等が形成されている。蓋体13は、基板11と略同径であり、かつ、基板11よりも薄い円盤状に形成されている。蓋体13は、基板11の下面に積層(接合)された状態で適宜固定手段により基板11に対して着脱可能に固定される。
熱対流生成用チップ10の材質は、第1ヒータ31および第2ヒータ32の温度に耐えうる材質である必要がある。また、熱対流生成用チップ10の環状流路14等に内在する液体を視認できる観点から透明の材質が好ましい。このような材質としては、例えば、環状オレフィン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサンとガラスとの複合体、又はアクリルが好ましい。上記の材質のうち、脱ガス性と耐熱性に優れ、ガス透過性、吸水性、及び自家蛍光性が低い点において、環状オレフィンが最も好ましく、次いで、ポリプロピレン又はポリカーボネートが好ましい。また、第1ヒータ31、第2ヒータ32からの熱伝導を考慮して、熱伝導率が0.1〜1.0W/(m・K)の材料を選択するのが好ましい。基板11及び底板12は、好適には合成樹脂によって形成される。
熱対流生成用チップ10の基板11は、ディスク状に限らず、矩形の板状等の他の形状であってもよい。回転しやすさの観点からディスク状(円盤状)の基板11および蓋体13が好ましい。なお、基板11と蓋体13との間に気密性及び液密性を有する薄い粘着性のある樹脂製シート(例;上記材質のシート)を挟みこんで、環状流路14、後述する液体供給路15およびガス排出路16を封閉するようにしてもよい。
《環状流路》
環状流路14は、検体液と反応試薬溶液との混合液(詳細は後述)等の液体を導入して環状流路14内で熱対流させるためのものである。環状流路14は、熱対流生成用チップ10が回転駆動された際に環状流路14内の液体が環状流路14を循環するようにシャフト41の回転軸AXと所定の位置関係を有して設けられている。
本発明において、環状流路14の回転軸AXからの距離に特に制限はないが、実際の作業を考慮したときの熱対流生成装置1のコンパクト性と、本装置を用いて行う熱対流の効率性との関係で、上記距離を1cm以上10cm以下に設定することが好ましい。
また、図1の第1実施形態で例示されるように、環状流路14は、熱対流生成用チップ10が回転軸AX周りに回転駆動された際に描かれる円の平面(図2の例では基板の下面等が該当する。)と平行となるように設けられていることが好ましい。換言すれば、図2(B)に示したように、環状流路14と回転軸AXとなす角度θ'が90°となるように設けられていることが好ましい。角度θ'は、90°に限らず、上記液体が環状流路14を循環するのであれば、80°以上〜100°以下の範囲で任意の角度に設定してもよい。
(環状流路の表面粗さ)
環状流路14の壁面の表面粗さを所定以下に抑えることより環状流路14のぬれ残り(環状流路等の壁面の濡れ性が撥水的であることにより液体が付着しない部分)の発生を抑制することができる観点から、環状流路14の壁面の表面粗さRaは、好ましくは100nm以下であり、より好ましくは50nm以下であり、さらに好ましくは30nm以下である。
環状流路14内の液体中に気泡が発生する原因の1つとして、例えば環状流路14内に液体を満たす際に生じるぬれ残りがそのまま気体となることが挙げられる。環状流路14内の液体に気泡が発生すると、環状流路14内の液体の熱対流が阻害されるため、ぬれ残りを極力減らすことが望ましい。
ぬれ残りを極力減らすことで、環状流路14内における液体の流通がスムーズとなり、第1温度調節と第2温度調節との切り替えが好適に行われるとともに、環状流路14内で液体が対流しやすくなるという利点がある。
環状流路14の表面粗さRaを上記範囲とするには、上記表面粗さの要件を満たす熱対流生成用チップ10の基材11および蓋体13(場合によっては上記樹脂製シート)の材質を選択する方法の他に、環状流路の壁面を構成する基材11、蓋体13(または樹脂製シート部分)を所定の方法で研磨する方法が挙げられる。研磨する方法としては、例えば、厚さ25〜75μm程度のポリエステルフィルムの上に、サブミクロンから数十μmの粒径の砥粒が接着剤で均一に塗布されたテープ状の研磨工具(研磨テープ)を用いて行うフィルム研磨を挙げることができる。
環状流路14の壁面の表面粗さが上記範囲内である場合と上記範囲外である場合とで実際にぬれ残りの有無を確認する試験(ポリエチレングリコールを環状流路14の表面を塗布し、食紅を含む水を環状流路14内に充填して95℃で加熱した場合に気泡発生の有無を確認する試験)を行うと、前者の場合では気泡が発生し、後者の場合では気泡が発生しない結果となる。
(環状流路の形状)
環状流路の形状は、典型的には、図1および図1Aの第1実施形態で例示されるように、前記液体が環状流路14を流通する方向(環状流路14により呈される円と一致する平面)と直交する方向で環状流路14を平面視したとき(平面として見たとき)に真円状の帯状であることが好ましい。環状流路14を真円状とすることにより、流路長を最短にでき、コンベクションPCRを短時間で効率よく行うことができる。しかしながら、熱対流が生じるのであれば環状流路の形状は真円状に限定されず、上記平面視した状態で流路内の液が循環可能なその他の形状、例えば、長円状、楕円状、多角形状(例;三角形状、四角形状、それ以上の多角形状)の環状に形成されていてもよい。
なお、環状流路により呈される円とは、例えば、環状流路14のエッジ部分(環状流路14の横断面形状に表れる多角形が有する頂点部分(図2(B)参照)により呈される円、または、環状流路14の断面が多角形でない場合には、上記エッジ部分に相当する部分をさす(例えば、環状流路14の断面が円形の場合は円の頂点などを指す)。
第1実施形態では、図1および図2に示すように、基板11の下面周縁部には複数の環状流路14が設けられている。これらの環状流路14は、ディスク状の基板11の軸線周りに所定の等角度間隔をおいて設けられ、軸線AXに対して対称的に配置されている。なお、上記基板11の軸線は、熱対流生成装置1を組み立てて熱対流生成用チップ10を取り付けた状態でシャフト41の回転軸AXと一致する。また、環状流路14は、等角度間隔に設けることが好ましいが、等角度間隔に設けなくともよい。
環状流路14の数、加工方法、各部寸法等は特に限定されず、例えば、外径(D)は30〜70mm、環状流路の深さ(S)を300〜500μm、環状流路の幅(W)を400〜600μmの範囲に設定して形成する例が挙げられる(図2(B)参照)。典型例としては第1実施形態(図1)のように、直径(D)40mmの基板に微細加工技術により4つの同じ形状、同じ大きさの環状流路を形成、すなわち、基板に対して直径(D)5mmの真円状の溝(深さ:300μm,幅:500μm)を形成する例が挙げられる。
《液体供給路》
熱対流生成用チップには、任意に、環状流路に液体を供給するための、環状流路に連通した液体供給路を設けてもよい。第1実施形態の熱対流生成システム100(図2(A)参照)では、前記液体が前記環状流路を流通する方向(環状流路14により呈される円と一致する平面)と直交する方向で前記環状流路14を平面視したとき(平面として見たとき)、回転中心AXと重心(環状流路の中心)Qとをつなげた径方向の線Zと交わる環状流路14の部位に連通するように液体供給路15が設けられている。なお、「流路エリア」とは、環状流路14を上記平面視したときの環状流路14の領域を意味する。
この液体供給路15は、図2(A)の上側から順に、基板11に形成された液体供給孔15dに連通した細長い伸延部15aと、その一端に連通接続された涙滴状の液溜り部15bと、その先端部と環状流路14とを連通接続する幅狭の連通部15cとを有している。なお、液溜り部15bの容量は、環状流路14の容量よりも大きく設定されている。
液体供給路15は、熱対流生成用チップ10を回転駆動させた際に熱対流生成用チップに加わる遠心力により液体供給路15中の液体が環状流路14に供給されるように構成されている。第1実施形態の熱対流生成システムでは、マイクロピペット等により液体供給路15の伸延部15aを介して液溜り部15b内に液体を導入および貯留させた状態で、上述したように熱対流生成用チップ10を回転軸AX周りに回転駆動すると、熱対流生成用チップ10に加わる遠心力によって液体供給路14(伸延部15a,液溜り部15b)中の液体が連通部15cを介して環状流路14内に供給されるように構成されている(図2(A)参照)。
《ガス排出路》
熱対流生成用チップには、任意に、環状流路の液体に含まれるガスを抜くための、環状流路に連通したガス排出路を設けてもよい。第1実施形態の熱対流生成システムでは、ガス排出路16は、環状流路14から図2(A)の上側から順に、ガスを外部へ排出するための孔16dと、該孔16dに連通したディスク状の基板11の径方向の線Zに沿って延びる細長い伸延部16aと、その一端に連通接続された涙滴状のガス溜り部16bと、その先端部と環状流路14とを連通接続する幅狭の連通部16cとを有している(図2(A)参照)。
ガス排出路16を設けたことで、環状流路14内の液体が熱対流する際に生じるガスや液体供給路15液体を注入する際に生じるガス(気泡など)が遠心力によりガス排出路16に侵入し、伸延部16aおよび孔16dを介して排出され、液体からガスを除去できるので、液体の熱対流をスムーズに行うことができる。
《ステージ》
ステージ20は、熱源30(第1ヒータ31および第2ヒータ32)を支持するとともに、ステージ20の上に配置される熱対流生成用チップ10にモータ40の回転力を伝達するためのものである。ステージ20の材質としては、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート等の合成樹脂または金属を使用することができる。ステージ20は、回転しやすさを考慮して、図2の第1実施形態で例示したように円盤状に形成されることが好ましいが、回転可能であれば特に限定されない。
(ステージと熱対流生成用チップとの連結)
第1実施形態で用いられるステージ20は、図1Aに示すように、熱対流生成用チップ10をステージ20に対して同心状に位置決めするとともに、ステージ20と熱対流生成用チップ10とを相対回転不能に連結手段により連結されている。この連結手段の構造は特に限定されないが、例えば、熱対流生成用チップ10の中心軸に対して偏心した熱対流生成用チップの下面の位置に凹部または凸部を形成し、ステージの中心軸に対して偏心したステージの上面の位置に凸部又は凹部と形成し、ステージの凹部または凸部と熱対流生成用チップの凸部または凹部とを嵌合させる構造でもよい。なお、熱対流生成用チップ10の中心軸は、中心孔17の中心を通る軸で熱対流生成装置を組み立てた状態で軸線AXと一致する。
(ヒータ装着孔)
ステージ20には、図1Aに示すように、第1ヒータ31と第2ヒータ32とを挿入装着するためのヒータ装着孔21が設けられている。ヒータ装着孔21は、第1ヒータ31と第2ヒータ32とのセット数に応じて複数設けてもよく、軸線AX周りに等角度間隔に配置されていることが好ましい。図1Aに示すように、円弧状のヒータ装着孔21がシャフト41の軸線AX周りに90°の角度間隔をおいて4箇所設けられており、軸線AXに対して対象に配置されている。
《熱源》
第1実施形態の熱対流生成システム100の例では、熱源30は、図1Aに示したように、リング状の第2ヒータ32と、その内側に同心状に配置される別のリング状の第1ヒータ31とからなる。なお、第1ヒータ31と第2ヒータ32とは個別に温度制御・維持される。
(第1ヒータ)
第1ヒータは、環状流路の所定の流路エリアにある液体を加熱または冷却するものである。ここでの「加熱」とは、第1ヒータ31の熱源部31bにより、その上方に位置する環状流路14内の液体の温度を上昇させることを意味し、ここでの「冷却」とは、第1ヒータ31の熱源部31bにより、その上方に位置する環状流路14内の液体の温度を低下させることを意味する。
第1実施形態の熱対流生成システム100の例(図1及び図1A参照)では、第1ヒータ31は、リング状の連結部31aと、その周方向に等間隔をおいて設けられた横断面コ字状の柱状の熱源部31bを有している。第1ヒータ31の連結部31aには、貫通孔である一対のネジ穴31c,31cが軸線AX周りに180°の角度間隔をおいて設けられている。一対のネジ穴31c,31cにはステージ20の第2ねじ挿通孔22,22を貫通したネジの軸部が羅合し、該羅合により第1ヒータ31がステージ20に固定・支持されるように構成されている。
第1ヒータ31がステージ20に固定・支持された状態で、第1ヒータ31の各熱源部31bの上端部がステージ20の上面から突出して、環状流路14を平面視(後述)したときに該環状流路14の一部と重なる熱対流生成用チップ10の下面の位置に当接する(図1参照)。このように当接した状態で、第1ヒータ31が給電されて温熱または冷熱を生成することにより、第1ヒータ31の熱源部の上端部が当接している環状流路14の流路エリア部分の液体が所定温度に調節されるようになっている。固定・支持は上記の態様に限定されず、他の固定・支持の態様であってもよい。
(第2ヒータ)
第2ヒータは、環状流路の所定の流路エリアにある液体を加熱または冷却するものである。ここでの「加熱」とは、第2ヒータ32の熱源部32bにより、その上方に位置する環状流路14内の液体の温度を上昇させることを意味し、ここでの「冷却」とは、第1ヒータ32の熱源部32bにより、その上方に位置する環状流路14内の液体の温度を低下させることを意味する。第1実施形態の熱対流生成装置の例(図1及び図1A参照)では、第2ヒータ32は、リング状の連結部32aと、その周方向に等間隔を置いて設けられた(4つの)L字状の柱状の熱源部32bとを有している。
第2ヒータ32の連結部32aには、一対のネジ穴32c,32cが軸線AX周りに190°の角度間隔をおいて設けられている。一対のネジ穴32c,32cにはステージ20の第1ねじ挿通孔23を貫通したネジの軸部が羅合し、該羅合により第2ヒータ32がステージ20に固定および支持されるように構成されている。
第2ヒータ32がステージ20に固定・支持された状態で、第2ヒータ32の各熱源部32bの上端部がステージの上面から突出して、環状流路14を平面視(後述)したときに該環状流路14の一部と重なる熱対流生成用チップの下面の位置に当接する(図1参照)。このように当接した状態で、第2ヒータ32が給電されて温熱または冷熱を生成することにより、第2ヒータ32の熱源部32bの上端部が当接している環状流路14の流路エリア部分の液体が所定温度に調節されるようになっている。
(第1,第2ヒータと環状流路との位置関係)
図2(A)及び図3を参照しながら、環状流路14と第1ヒータ31および第2ヒータ32との位置関係について説明する。
第1ヒータ31および第2ヒータ32は、図2(A)に示したように、液体が環状流路14を流通する方向(環状流路14により呈される円と一致する平面)と直交する方向で環状流路14を平面視したとき、該平面上にある前記環状流路14の重心(環状流路の中心)Qと、軸線AXと前記平面との交点である前記回転軸の回転中心とが一致せず、回転中心AXと重心(環状流路の中心)Qとをつなげた直線(図2(A),図3において上下方向の一点鎖線Z(一部不図示))に対して、環状流路14の重心(環状流路の中心)Qを中心として、角度(θ)=30°以上〜150°以下または210°以上〜330°以下となる範囲のうち、いずれか一方の範囲のみに、第2熱源部32bが少なくとも1つ位置して該範囲内で環状流路14の流路エリアを加熱又は冷却し、第1熱源部31bは、第2熱源部32bによって加熱又は冷却される環状流路14の流路エリア以外の流路エリアを加熱または冷却する(図2(A)または図3参照、以下「ヒータの設置条件」という)。ここで、第1熱源部31bと第2熱源部32bとの間に隙間(以下、「クリアランス」という)を設けてもよい。
第1ヒータ31と第2ヒータ32との隙間であるクリアランスCLが第2ヒータ32の熱源部32bを囲うように各ヒータの熱源部が形成および配置されていること(第1ヒータおよび第2ヒータの各熱源部が形成および配置されていること)が好ましい(図2(A)および図3参照)。例えば、上記平面視した状態で、第1ヒータがコの字型、Cの字型を呈して、クリアランスCLを隔てて第2ヒータの周りを囲う例が挙げられる。
(第1ヒータの面積割合)
環状流路14を上述したように平面視したとき(図2(A)または図3に示すように平面視したとき)に、第1ヒータ31の熱源部31bの上面と重なる流路エリアの面積が流路エリア全体に対して占める割合は、前述の条件(ヒータの設置条件)を満たせば特に限定されず、PCRの反応条件(特にアニーリング時間、アニーリング温度および環状流路内での液体の流速)を考慮して適宜変更することができる。詳細は、後述の「第1ヒータと第2ヒータとの面積比」で説明する。具体例としては、図2(A)及び図3に示した第1実施形態のように、環状流路14の流路エリアと一致する第1ヒータ31の面積を流路エリア全体に対して70〜75%程度に設定する例が挙げられる。
(第2ヒータの流路エリア面積)
環状流路14を平面視したとき(図2(A)または図3に示すように平面視したとき)に、第2ヒータ32の熱源部32bの上面と重なる流路エリアの面積が流路エリア全体の面積に対して占める割合は、前述の条件(ヒータの設置条件)を満たせば特に限定されず、PCRの反応条件(特にPCRにおける変性時間、変性温度および環状流路内での液体の流速)を考慮して適宜変更することができる。詳細は、後述の「第1ヒータと第2ヒータとの面積比」で説明する。具体例としては、図2(A)及び図3に示した第1実施形態のように、環状流路14の流路エリアと一致する第2ヒータ32の面積を流路エリア全体の面積に対して15〜20%程度とする例が挙られる。
(第1ヒータと第2ヒータとの面積比)
第2ヒータ32の熱源部が環状流路14の流路エリアと重なる面積と、第1ヒータ31が環状流路の流路エリアと重なる面積との比は、1:11〜1:2であることが好ましい。クリアランスCLが環状流路14と平面視で重なる流路エリアを除いた流路エリア内で上記の比率の面積比となるように第1ヒータ31と第2ヒータ32が設けられることが好ましい。
(クリアランスの面積割合)
クリアランスCLは、熱対流生成システム100の環状流路14を上記平面視したときに、クリアランスCLと重なる環状流路14の流路エリアの面積が流路エリア全体の面積に対して0.1〜15%の範囲を占めるように設定することが好ましい。
第1ヒータ31と第2ヒータ32との間の隙間と重なる環状流路14の流路エリアを通過する液体は、その下方に熱源30等が存在しない代わりに空気が存在するため空冷されることとなる。この空冷による上記液体の冷却は、当該空気より高温であり且つ前記液体より低温の熱媒体(第1ヒータ等)による冷却と比べると一見して冷却効率が高いとも考えられるが、空気の熱伝導率は低いため、実際は空気よりも熱伝導率の高い素材で形成されている上記熱媒体による冷却の方が高い冷却効率が得られる。
したがって、熱対流生成システム100の環状流路14を上記平面視したときにクリアランスCLと重なる環状流路の流路エリア14の面積が流路エリア全体の面積に対して占める割合は、第1ヒータ31と第2ヒータ32の空気(クリアランス部分の空気)を介した相互の熱伝導が防止または抑制される程度の小さなもので十分であり、且つ、クリアランスCL部分の空冷による冷却効率の低下があっても許容される範囲に設定すればよいので、上記割合が0.1〜15%の範囲内で極力小さくなるように設定することが好ましい。第1実施形態の熱対流生成システム100では、図2(A)及び図3に示すクリアランスCLが流路エリア全体に対して10〜15%程度に設定されている。
(第1ヒータの温度)
熱対流生成システム100によりコンベクションPCRを行う場合、第1ヒータ31の温度は、PCR法におけるアニーリング温度に設定される。アニーリング温度はプライマーの変性温度(Tm値)に基づいて決定される温度であり、一般的には(Tm値−5℃)が適切とされる。ここで、Tm値は設計したPCR用のプライマーの塩基配列に基づいて、例えば下式(1)から算出することができる。
Tm値(℃)=2(nA+nT)+4(nC+nG)+35−2(nA+nT+nC+nG)・・・(1)
(計算式において、nA、nT、nCおよびnGはそれぞれ、プライマーに含まれるアデニン、チミン、シトシンおよびグアニンの塩基数を表す。)
フォワードとリバースのプライマーのTm値はなるべく近くなるように設計されているが、離れている場合は低い方のTm値に基づいてアニーリング温度を設定すればよい。RT−PCRの場合、Tm値は逆転写反応温度より低くならないよう、例えば50℃以上に設定される。典型的には、アニーリング温度としてよく使用されている55℃〜65℃の温度に第1ヒータ31の温度が設定される。
(第2ヒータの温度)
熱対流生成システム100によりコンベクションPCRを行う場合、熱対流生成システム100の第2ヒータ32の温度は、2本鎖の核酸部分に熱を加えて1本鎖の核酸を形成するために必要な温度、一般的には約95℃に設定される。第2ヒータ32は、少なくともコンベクションPCRを行っている間は上記温度で維持される。
熱源30の第1ヒータ,第2ヒータの設置温度として、次の条件(1)〜(3)を満たすように温度制御することが望ましい。(1)の条件は、熱対流を効率よく促進するためである。
(1)第2ヒータの温度−第1ヒータの温度≧10℃、
(2)第1ヒータの温度−クリアランス部分の気温)≧10℃、
(3)第2ヒータの温度−クリアランス部分の気温)≧10℃。
《回転駆動手段》
回転駆動手段は、回転軸を回転させて該回転軸に固定した熱対流生成用チップを所定の態様で回転させる手段である。第1実施形態では、前述したように、回転軸としてのシャフト41を有し、制御手段により動作制御されて所望の態様で回転軸を回転するモータ40等が回転駆動手段に該当する。モータに限らず、所望の態様で回転駆動ができる手段であればよい。
《ヒートシンク》
図1Aに示すように、第1ヒータ31で発生する熱を放熱して、第1ヒータ31を冷却するヒートシンク60を設けてもよい。ヒートシンク60により、安価な製造コストで余分な熱を除去することができ、熱対流PCRの精度を向上することができる。
[組み立て]
図1及び図1Aを参照しながら組み立てについて説明する。ステージ20に対して前述したように第1ヒータ31および第2ヒータ32を固定・支持させた状態で、熱対流生成用チップ10と、ステージ20とを前述した連結手段により相互に固定する。そして、熱対流生成用チップ10、ステージ20、第1ヒータ31及び第2ヒータ32を積層させた状態で、図1および図1Aに示すように、モータ40のシャフト41をステージ20の中心孔24および熱対流生成用チップ10の中心孔17へそれぞれ挿通する。この状態でモータ40のシャフト41とステージ20とは適宜の手段(嵌合等)により固定され、組み立てが完了する。なお、このような組み立ては、液導入工程(詳細は後述)の前に行ってもよいし、後に行ってもよい。
≪制御手段≫
熱対流生成システム100の制御手段50は、図4に示すように、演算制御部51、表示部52、入力部53を有し、第1ヒータ31、第2ヒータ32、モータ40、(場合により、励起光光源91、蛍光検出器92、検知光光源93、検知光検出器94)等とそれぞれ電気的に接続されている。演算制御部51は、CPU、ROM及びRAM等を含むマイクロコンピュータにより構成されている。CPUは、入力部から入力される情報とROMに格納されたプログラムに従って、第1ヒータ31、第2ヒータ32及びモータ40に給電したり、その動作を制御する。なお、前記プログラムにはPCR用の動作プログラムが含まれる。表示部52は液晶表示装置を有し、入力部53はキーボードやマウス等の入力デバイスを有する。第1ヒータ31および第2ヒータ32の温度及びモータ40による熱対流生成用チップ10の回転駆動速度は、制御手段50の入力部53を介して調節可能となっている。
≪光学検出系≫
熱対流生成システム100は、図5に例示するように、任意に、環状流路14内から発した蛍光を受光して定量する光学検出系90を有する。上記光学検出系90は、励起光光源91と、蛍光検出器92と、検知光光源93と、検知光検出器94とを有する。光学検出系90は、制御手段50に動作制御されて各種動作を行い、各種データを制御手段50の演算制御部へ伝送する。環状流路14の近傍には、検知光光源93が射出する検知光を反射または散乱させる被検知部P1が設けられている。
励起光光源91は、熱対流生成用チップ10の環状流路14内の液体に含まれる蛍光色素を励起する光を発する光源であり、LED、所望の波長光のみを取り出す蛍光フィルタが設けられた白色光源などが励起光光源として用いられる。
蛍光検出器92は、環状流路から発する蛍光L1'を検出するものであり、例えば、フォトマル検出器、集光レンズ及び蛍光フィルタ等を含んで構成される。
検知光光源93は、熱対流生成用チップ10上の検知部P1に向けて、検知光L2を照射するものであり、例えばレーザー光を発する光源(LED等)が検出光光源として用いられる。検知部P1とは、熱対流生成用チップ10が回転することにより被検知部によって形成される回転軌跡上に設定された固定点である。被検知部は、検知光光源93からの検知光L2が照射されると、その検知光L2を反射または散乱させるように構成されている。検知光検出器93は、例えば、フォトマル検出器、集光レンズ及びバンドパスフィルター等を含んで構成され、反射または散乱させられた検知光L2'を検出する。
≪PCR≫
以下、上記第1実施形態の熱対流生成システムを用いたコンベクション(熱対流)PCR法について説明する。本発明に係るコンベクションPCR法は、液導入工程、PCR反応工程、検出工程をこの順に含む。なお、上記「PCR」には、逆転写PCR(RT−PCR)や、定量的PCRであるリアルタイムPCR等の各種PCRが含まれる。
(PCR反応溶液)
本発明で使用されるPCR反応溶液は、検体液および反応試薬溶液から構成される。なお、PCRを行う前の時点で検体液と反応試薬溶液とを混合しておく必要はない。
(検体液)
検体液とは、PCRで増幅すべき核酸を含む液を意味する。検体液には、対象のDNA,RNA,疑似核酸等を含む溶液、検体を含む液体が含まれる。例えば、RT−PCRを行う場合には、インフルエンザウィルスやノロウィルス、その他の感染症ウィルス全般、細胞からの発現RNAの抽出液等が検体液として用いられる。ワンステップで検体から増幅対象の核酸を溶出させてPCRを行う場合には、インフルエンザウィルスやノロウィルス、その他の感染症ウィルス全般、細胞を緩衝液や水等の適切な溶液に懸濁したものを検体液として用いることができる。
(反応試薬溶液)
反応試薬溶液とは、検体液に含まれる増幅対象の核酸をPCR法により増幅するのに必要な試薬、酵素を含む溶液を意味する。検体液が核酸を含む溶液である場合には、反応試薬溶液は、dNTP,MgCl2、各種ポリメラーゼ等を含む溶液を意味する。
検体液がRNAウィルスの懸濁液であり、検体から増幅対象のRNAを溶出させることも含めてワンステップで逆転写PCRを行う場合には、反応試薬溶液としては、例えば、製品名「SuperScriptIII OneStep RT-PCR System」(製品番号12574-018、ライフテクノロジー社製)を使用することができる。なお、「SuperScript」は、ライフテクノロジー社の登録商標である。さらに、例えば、製品名「GeneAmp Ez rTth RNA PCR Kit」(製品番号N8080179、アプライドバイオシステム社製)、製品名「PrimeScriptII High Fidelity One Step RT-PCR kit」(製品コードR026AまたはR026B、タカラバイオ株式会社製)、製品名「Platinum(登録商標) Quantitative RT-PCR ThermoScript(出願商標)One-Step System」 (製品コード11731-015、lifetechnologies社製)、製品名「SpeedSTAR(出願商標)HS DNA Polymerase」(製品コードRR070A、タカラバイオ(株)製)、製品名「Ampdirect(登録商標) Plus(製品コード241-08800-98、(株)島津製作所製)等を用いることができる。
《液導入工程》
液導入工程は、PCR反応溶液を構成する検体液、反応試薬溶液、その他PCR反応に必要な液体を個別に又は一体に環状流路内に導入する工程である。
第1実施形態の熱対流生成システム100によりPCRを行う場合、先ず熱対流生成用チップ10の基板11における蓋体13と反対側の面に形成された液体供給孔15dに反応試薬溶液を注入させる。注入した反応試薬溶液は毛細管現象により液体供給路15の伸延部15aを通過して液溜り部15bに流入する。次に、前記液体供給孔15dに検体液を注入する。注入された検体液は毛細管現象により液体供給路15の伸延部15aを通過して液溜り部15bに流入する。液溜り部15bに流入した反応試薬溶液と検体液は、熱対流生成用チップ10を回転させていない停止状態では液溜り部15b内で混合しながら滞留する。最後に、任意に反応試薬溶液の蒸発を防止するためのオイルを上記同様に導入する。なお、反応試薬溶液、検体液、オイル等は、毛細管現象によらず、ピペッター等を使用して液溜り部15bに押し込むようにしてもよい。
ユーザが制御手段50の入力部53を操作してモータ40を駆動して、シャフト41の軸線AX周りにステージ20およびその上に載置された熱対流生成用チップ10を回転させると、遠心力により検体液および反応試薬溶液が環状流路14に導入される。一方で、比重が軽いオイルは液溜り部15bに滞留し、環状流路14内の液体が連通部15cから液溜り部15bに逆流するのを防ぐ蓋として機能するとともに、後述するPCR反応工程においては環状流路14内の液体が蒸発するのを防止する。
《PCR反応工程》
PCR反応工程は、環状流路内でPCR反応溶液を所定速度で還流させてコンベクションPCRを行う工程である。液導入工程の前に、第2ヒータ32を前述した所定のPCRの変性温度に設定しておき、第1ヒータ31を所定のPCRのアニーリング温度に設定しておくことが望ましい。
液導入工程に引き続き、モータ40を駆動してステージ20および熱対流生成用チップ10をシャフト41の軸線AX周りに回転させると、その回転による遠心力と第2ヒータおよび第1ヒータの温度差とによってもたらされる熱対流により、PCR反応溶液が環状流路14内を循環する。PCR反応溶液中の2本鎖の核酸は、第2ヒータ32の上方の流路エリアを通過する際に第2ヒータ32の熱源部32bと熱交換して高温(例;90〜98℃)に加熱されて変性し、1本鎖の核酸を形成する。その後、該PCR反応液が第1ヒータ31の上方の流路エリアに侵入すると、今度は第1ヒータ31の熱源部31bと熱交換して、空冷より早い速度で液温が低下していき中温(例;55℃〜60℃)に調節され、アニーリングおよびエクステンション(ポリメラーゼによる核酸分子の伸長)が起こる。
なお、環状流路14内のPCR反応溶液にガスが含まれている場合には、そのガスは前述の遠心力により移動してガス排出路16内に流入するので、PCR反応溶液中のガスを除去することができる。これによって、PCR反応溶液がスムーズに熱対流することができる。
なお、本発明に係る熱対流生成装置1及び熱対流生成用チップ10を用いて逆転写PCRを行う場合、例えば、以下の(a)、(b)の2つの方法により行うことができる。以下、図1〜図4を参照して(a)、(b)の2つの方法を説明する。
(a)あらかじめ反応試薬溶液と検体液とを混合し、混合溶液を生成する。次に、熱対流生成用チップ10の液体供給路15内に混合溶液を注入し、熱対流生成用チップ10を回転させて混合溶液を環状流路14内に進入させる。その後、熱対流生成用チップ10の回転を停止させ、第1ヒータ31と第2ヒータ32とを同じ温度(例えば、40〜60℃)にして、環状流路14内の混合溶液を一定時間(例えば、60秒)加熱して逆転写反応させる。
(b)先ず、熱対流生成用チップ10の環状流路14内に反応試薬溶液を充填しておき、その後に液体供給路15に検体液を注入し、熱対流生成用チップ10を回転させて液体供給路15内の検体液を環状流路14に進入させる。そして、第1ヒータ31の温度と第2ヒータ32の温度とを異なる温度にして環状流路14内の液体を熱対流させて反応試薬溶液と検体液とを混合し、混合溶液を生成する。その後、熱対流生成用チップ10の回転を停止させ、第1ヒータ31と第2ヒータ32とを同じ温度(例えば、40〜60℃)にして、環状流路14内の混合溶液を一定時間(例えば、60秒)加熱して逆転写反応させる。
上記の(a)および(b)のいずれかの方法により、RNAから逆転写反応により鋳型DNA(cDNA)を合成する。そして、第1ヒータ31と第2ヒータ32とをPCRに適した温度(例えば、第1ヒータ31の温度を60℃、第2ヒータ32の温度を95℃)に設定して熱対流PCR反応を生じさせる。
(熱対流生成用チップの回転速度)
熱対流生成用チップ10の回転速度は、環状流路14内のPCR反応溶液に含まれる2本鎖DNA(核酸分子)が変性して1本鎖DNAになるのに必要な時間をかけて第2ヒータ32の上方の流路エリアを通過し、且つ、プライマーのアニーリング及び核酸分子の伸長にとって必要な時間をかけて第1ヒータ31の上方の流路エリアを通過するように設定される。
具体的には、環状流路14内のPCR反応溶液が第2ヒータ32の上方の流路エリアを通過する時間:変性時間(A)が一般的には5〜60秒、好ましくは10〜20秒であり、第1ヒータ31の上方の流路エリアを通過する時間:アニーリング時間+伸長時間(B)が一般的には(5〜30)秒+(核酸塩基数÷60塩基)秒であり、クリアランス部分を通過する時間:空冷時間(C)が0.001<(C)/(A)+(B)+(C)<0.15の関係式を満たすものであることが好ましい。したがって熱対流生成用チップ10の回転速度は、PCR反応液が上記時間(A)〜(C)で各流路エリアを通過するように設定することが好ましい。この場合、前述した第1ヒータと第2ヒータ32の各熱源部31bと32bが環状流路14と重なる流路エリアの面積を調節することも考慮すべきである。また、ポリメラーゼ(Taq)の種類によって核酸を伸長させる速度が異なるので、上記のアニーリング時間+伸長時間(B)の計算式で用いられている伸長速度(60b/秒)を60b/秒〜500b/秒の範囲で変更してもよい。なお、単位「b/秒」における「b」は、DNA等の塩基(base)の略である。
(液体速度の測定)
図20は第1実施形態で用いたモータの電源の電圧と該モータの回転数との関係を示すグラフであり、速度と遠心力との関係(F=mv2/r、g=(2πN)2r)より相対重力加速度と第1実施形態で用いたモータの回転数との関係を求め、さらに電圧と相対重力加速度との関係を求めることにより作成したものである。図21は相対重力加速度とモータ40の電源の電圧との関係を示すグラフである。
予め水を液体供給孔15dよりマイクロピペットで供給し、その後モータ40を回転させて環状流路14に水を充填しておいた状態で、食紅液を同じ液体供給孔15dよりマイクロピペットで供給し、第2ヒータ32と第1ヒータ31とに通電した状態で1G相当の電圧(図20より2.12V)でモータ40を回転させたところ、環状流路14内の赤く呈色した液体が30秒間でおよそ半周した。このように食紅と水とを用いた方法により、環状流路14内を液体が移動する速度を測定することができる。また、このように熱対流生成装置の試運転をすることで、熱対流生成用チップ10の回転数とモータ40の回転数との関係も決定することができる。さらに、上述したように、モータ40の電源の電圧とモータ40の回転数との関係が分かっているので、モータ40にどの程度の電源電圧を印加すれば環状流路14内の液体がどの程度の速度で移動するか分かり、また、該速度を決定することができる。熱対流生成用チップ10の回転数を制御して熱対流速度を制御することで、液体の熱源部32bおよび熱源部31bの上方を通過する時間を調節することができる。
(回転駆動時間)
熱対流生成用チップ10を回転させるモータ40の駆動時間は、第2ヒータ32による加熱と第1ヒータ31による冷却とがそれぞれPCRのサーマルサイクル数と同数となるように設定される。
《検出工程》
検出工程は、環状流路内の液体に含まれる物質を検出および定量する工程である。例えば、PCR法では、増殖する2本鎖の核酸分子内に蛍光物質がインターカレートされるため、この蛍光を検出することでPCR反応液中の核酸を検出および定量することができる。また、例えば、リアルタイムPCRの場合では、所定の蛍光物質を含むキメラププローブが鋳型の核酸に結合した後に、ポリメラーゼによる核酸伸長の際にRNaseHによりキメラププローブが切断され、該切断によりPCR反応液中に蛍光を発する物質が増加するため、該蛍光を検出および定量することができる。
図5に示すように、励起光光源91は、回転する熱対流生成用チップ10の環状流路14に向けて前記蛍光を励起する光(励起光)L1を照射する。この励起光L1が環状流路14内の蛍光物質に照射され、蛍光物質が励起されると所定の波長の蛍光L1'を発し、この蛍光L1'は蛍光検出器92により検出・定量される。また、検知光光源93から検知光L2を被検知部95に対して出射し、検知光検出器93が該被検知部P1で反射・散乱された光L2'を検出することで、熱対流生成用チップ10の回転駆動中における環状流路14の位置を検知する。
以下、本発明に係る第1実施形態の熱対流生成装置1および熱対流生成システム100による作用・効果について説明する。
(1)第1実施形態の熱対流生成装置100は、
液体を循環させるための環状流路14を有する熱対流生成用チップ10を回転可能に固定することができるシャフト41と、環状流路14内の液体を加熱又は冷却する第1熱源部31bを有する第1ヒータ31と、環状流路14内の液体を加熱又は冷却する第2熱源部32bを有する第2ヒータ32と、シャフト41を回転駆動することにより環状流路14の全体をシャフト41の軸線AX回りに回転させるモータ40(回転駆動手段)と、を備え、前記液体が環状流路14を流通する方向(環状流路により呈される円)と直交する方向で環状流路14を平面視したとき、該平面上にある環状流路14の重心(環状流路14の中心)Qと、軸線AXと前記平面との交点である前記回転軸AXの回転中心(図2(A)ではシャフト41の中心)とが一致しない熱対流装置であって、上記回転中心と重心(環状流路14の中心)Qとをつなげた直線Zに対して、重心(環状流路14の中心)Qを中心として、30°以上〜150°以下または210°以上〜330°以下となる範囲のうち、図2(A)または図3に示すように、いずれか一方の範囲のみに、第2熱源部32bが少なくとも1つ位置して該範囲内で前記環状流路の流路エリアを加熱または冷却し、前記第1熱源部31bは、第2熱源部32bによって加熱または冷却される環状流路14の流路エリア以外の流路エリア(平面視でクリアランスCLと環状流路14とが重なるエリアを除いた流路エリア)を加熱または冷却する熱対流生成装置であるので、熱対流生成用チップ10を回転させて環状流路14内でPCR反応液等の液体を循環させた際に、該液体が環状流路14内の2つの温度領域(第1ヒータ31上方の環状流路14の流路エリア、第2ヒータ32上方の環状流路14の流路エリア(図2(A)または図3参照))以外の温度になっている時間が殆ど無い状態で、何度も反復される安定した熱対流生成が得られる。また、熱対流生成装置を運転する環境の温度が変化しても安定して同じ熱対流が得られる。
なお、ここでのクリアランスCLとは、第1熱源部31bと第2熱源部32bとの間で熱伝導させないまたは熱伝導してもPCR反応に悪影響が及ばない程度の最小限のクリアランスを意味する。
ここで、上記クリアランスCLを有しない場合(例;第1熱源部31bと第2熱源部32bとが接触している場合)であっても、別の温度制御手段等により第1熱源部31bと第2熱源部32bとが所定の温度で(強制的にでも)維持されていればよいことから、その場合には、第1熱源部31bによって加熱または冷却される流路エリアは、上記と異なり、第2熱源部32bによって加熱または冷却される環状流路14の流路エリア以外の流路エリアの全部となる。
また、前述したように、空冷により環状流路14内の液体の温度を調節するよりも、熱媒体により環状流路14内の液体を冷却または加温をする方が液体の温度を調節する効率が高い。例えば、第2ヒータ32の上方の流路エリアを通過して高温(例;90℃〜95℃)となった液体に対しては、該液体より低温(例;50℃〜60℃)の熱媒体である第1ヒータ31により前記液体を冷却した方が空冷するよりも多くの場合で温度調節の効率が高くなる。そのため、第1熱源部31bと第2熱源部32bとの間にクリアランスCLを設ける場合に、必要最小限の上記クリアランスCLを超える隙間を設けないようにすることで、上記液体を空冷してしまう流路エリアを極力減らすことができ、この結果、環状流路を循環する液体の温度調節の効率を高めることができ、迅速な温度調節が実現される。
さらに、環状流路内の液体の温度調節は空冷によらないため、空冷する場合のように前記液体の温度調節が外気温に左右されにくく、ロバスト性・熱対流の再現性に優れる。
また、図2(A)または図3に示すように、前記線Zの左右で第1ヒータ31と第2ヒータ32とが設置され、第2ヒータ32の方が第1ヒータ31より高温であれば、上記線Zの左右で環状流路内の液体に温度差が生じ、密度も相違する。すなわち、第1ヒータ31上方の流路エリアを通過する液体の密度は、第2ヒータ32上方の流路エリアを通過する液体より高密度となり、前記液体の遠心力の受け方が左右で異なり、遠心力の合力として液体が環状流路を循環するのを促進する力が働くこととなる。第1ヒータ31と第2ヒータ32との温度設定が逆である場合も同様の理由から液体が環状流路14を循環するのを促進させることができる。
(2)前記平面視をしたときのクリアランスCL部分の面積が環状流路14の流路エリア全体の面積に対して0.1〜15%の範囲にあれば、前記液体がクリアランスCLの上方に位置する環状流路内の流路エリアを通過する時間が、前記液体の温度制御に悪影響を及ぼさない範囲となり、前記液体の温度を好適に調節することができる。
(3)第1ヒータ31の熱源部31bと第2ヒータ32の熱源部32bとが面一の平板部を有し、前記平面視をした状態で、前記クリアランス部分が、第2熱源部32を囲うように各熱源部31b,32bが形成および配置されているため、前記平面視したときに(図2(A)または図3参照)、円環流路14と重ならない熱対流生成用チップ10の部分にも第1ヒータ31,第2ヒータ32が当接する。その結果、円環流路14の周囲や内側(リングの内側)も空冷されず、液体の温度調節をより好適に行うことができる。なお、前記平面視をした状態で、前記クリアランスが、第2ヒータの熱源部32bを囲うように各熱源部が形成および配置されていればよいため、コの字型やc字型でも同様の効果が得られる。
(4)前記平面視をしたとき、第2ヒータ32の第2熱源部32bと接触する環状流路14の流路エリアが、第1ヒータ31の第1熱源部31bと接触する環状流路14の流路エリアよりも面積が小さいことにより、第2ヒータ32で加熱された液体を効率よく冷却して所定温度に調節し、該温度にて安定的に維持することができる。
例えば熱対流生成装置100を使用してPCR反応を行う場合、第2ヒータ32により変性温度に達したPCR反応溶液が第1ヒータ31により変性温度から効率よく所定のアニーリング・エクステンション温度まで冷却されて該温度にて安定的に維持されることとなり、PCR反応(アニーリング・エクステンション)が安定する。
(5)熱対流生成装置1と、液体を循環させるための環状流路14を有する熱対流生成用チップ10とを含み、前記熱対流生成用チップ10は、環状流路14に連通した液の液体供給路15を有し、前記回転駆動により熱対流生成用チップ10に加わる遠心力により前記液体供給路15中の液体が前記環状流路14に供給される熱対流生成システムであれば、熱対流生成用チップ10のみを交換して別のPCR反応を即座に行うことができる。また、PCR反応を行う場合には、遠心力の付加と同時に液体としてのPCR反応溶液が環状流路14内に供給され反応を開始するため、PCR反応の開始時点と熱対流の開始時点とを一致させることができる。
(6)第2ヒータ32上方の環状流路14の流路エリアからみて回転軸(軸線AX)側であって該流路エリアの近傍で前記環状流路14に連通したガス排出路16が形成されていることにより、回転駆動して液体が第2ヒータにより高温となった際に発生する気泡等のガスが、ガス排出路に移行しやすくなる。
(7)前記回転軸の軸線AXに対して前記環状流路14が対称となるように複数配置されていることにより、熱対流生成用チップ10を回転駆動した際にバランスがとれて、環状流路14内での液体の循環および熱対流が安定する。
(8)前記環状流路14の壁面の表面粗さRaが100nm以下であることより、環状流路内での液体のぬれ残りが軽減される。
(9)前記環状流路が前記平面視をしたときに真円状であることにより、環状流路内で液体がスムーズに循環し、熱対流が好適に行われる。
(10)前記環状流路の壁面の材質が、環状オレフィン、ポリプロピレン、及びポリカーボネートのうちのいずれかであることにより、樹脂であるために環状流路の壁面の表面粗さを調節しやすく、また、環状流路内の蛍光物質を光学的に検出するために必要な熱対流生成用チップ10の透明性を確保しやすい。
(11)熱対流生成システム100は、前記環状流路14A内の液体に含まれる蛍光色素を励起する励起光を前記環状流路14A内の前記液体に照射する励起光光源と、前記蛍光色素に前記励起光を照射することにより前記蛍光色素によって放出される蛍光を検出する蛍光検出器と、前記蛍光検出器によって検出された蛍光に基づいて核酸の複製量を算出する演算制御部と、を含むものである。
例えば熱対流生成システム100によりPCR反応を行う場合、上記(1)で説明したように効率的な温度制御が可能となることから、PCR反応溶液がPCR反応上で意図しない温度(具体的には70℃〜90℃の範囲)となる時間が短縮されるとともに、時間短縮によりPCR反応に寄与しない時間帯におけるTaqポリメラーゼ等のPCR反応用の酵素の不必要な失活を軽減することができる。この結果、本来増幅されるべき核酸が再現性よく増幅され、PCR自体の再現性が向上し、このようなPCR反応の産物(核酸)に標識された蛍光物質からの蛍光を検出するので、リアルタイムPCR等における精度が高まる。
(17)(1)〜(16)のいずれか一項に記載の熱対流生成装置または熱対流生成システムを使用したコンベクションPCR法であって、PCR反応中に、第2ヒータ32の第2熱源部32bと第1ヒータ31の第1熱源部31bとの温度差を10℃以上に維持することにより、熱対流をより一層効率よく促進させることができる。
[第2実施形態]
第2に実施形態の熱対流生成システム200について説明する。第2実施形態の熱対流生成システム200は、熱対流生成用チップ(図6,図7参照)10Aと、第1実施形態の熱対流生成装置1とを少なくとも有する。熱対流生成装置1は、前述したように、シャフト41と、第1ヒータ31および第2ヒータ32と、モータ40等を有する。なお、熱対流生成装置1自体の構成については、第1実施形態と同様であるのでその説明を省略する。
《熱対流生成用チップ》
図6に示すように、熱対流生成用チップは、基板11Aと、基板11Aに積層された蓋体13Aとを有し、各部材の中心に中心孔17を有する。図8(A)に基板11Aの表面を示し、図8(B)に基板11Aの裏面を示す。図8(A)および(B)に示すように、基板11Aは、環状流路14Aと、第1〜第3液体供給路15A,15B,15Cとを備える。これらの複数の液体供給路は、以下に述べるように、それぞれが異なる液体を収納し、環状流路14Aに供給するよう設けることができる。なお、基板11A等の各部材の材質については第1実施形態について説明した通りである。
第1液体供給路15Aは、図8に示したように、第1受入部16Aと第1吸引通路17Aとを含む。第2液体供給路15Bは、第2受入部16Bと第2吸引通路17Bとを含む。第3液体供給路15Cは、第3受入部16Cと第3吸引通路17Cとを含む。これら第1〜第3受入部16A〜16Cは液体を受け入れるためのものである。
第1〜第3吸引通路17A〜17Cは、それぞれ、第1〜第3受入部16A〜16Cと環状流路14とを連通させるとともに、第1〜第3受入部16A〜16Cの液体をそれぞれ毛細管現象により吸引する。
各吸引通路は、第1領域Tと第2領域Sとを有する。第1領域Tは、各吸引通路17A〜17Cの中間部と環状流路14Aとの間に位置する。第2領域Sは、各吸引通路17A〜17Cの中間部と各受入部16A〜16Cとの間に位置する。熱対流生成用チップ10を回転させることにより、第1領域T内の液体が第2領域S内の液体から分離して環状流路14Aに供給される。
環状流路14Aは、検体液と反応試薬溶液との混合液(詳細は後述)を熱対流させるために用いられる。環状流路14Aは、前述の平面視で円環状の帯状の流路である(図8(A)および(B)参照)。環状流路14Aは、基板11Aの下面に形成された溝(図8(B)参照)および蓋体13Aの上面の一部によって構成されている(図7参照)。環状流路14Aの各部寸法は特に限定されないが、例えば、環状流路14Aの外側の直径は60mm、深さは400μm、幅は500μmであるが、第1実施形態で述べたような寸法に設定することができる。この第2実施形態では、複数の環状流路14Aが、基板11Aの中心軸の周りに所定の角度の間隔をおいて設けられている(図6および図8参照)。なお、この中心軸は、熱対流生成用チップ10Aを熱対流生成装置1に装着した状態でシャフト41の軸線AXに一致する。
図8(A)に示すように、第1受入部16Aは孔によって構成されている。第1吸引通路17Aは、その中間部で鋭角状に屈曲しており、第1領域Tは、基板11Aの径方向に延伸し、第2領域Sは、第1領域Tとの間の角度θ"が鋭角となる方向に延伸している(図8(B)参照)。第1領域T及び第2領域Sでは第1吸引通路17Aの一部を構成する溝が形成されており、該溝は基板10の下面に形成されている(図8(B)参照)。なお、第2〜第3受入部16B,16Cは第1受入部16Aと同様に構成されている。また、第2〜第3吸引通路17B,17Cは第1吸引通路17Aと同様に構成されている。
熱対流生成用チップ10Aをその中心軸周りに回転させることにより、各第1領域T内の液体は遠心力によって環状流路14Aの方向に移動し、各第2領域S内の液体は遠心力によって各受入部の方向に移動する。なお、角度θ"は、例えば、5°以上85°以下である。
各吸引通路17A〜17Cは、空気孔18A〜18Cをさらに有する。この空気孔は、各吸引通路17A〜17Cの中間部に空気を導入する。空気孔18A〜18Cは孔によって構成され、各第1領域T及び第2領域Sを基板11Aの上面側の空間と連通させる。空気孔18A〜18Cは、各第1領域T内の液体と第2領域S内の液体との分離を促進する。
すなわち、第1領域T内の液体と第2領域S内の液体との間に形成される空隙が真空状態であると、両液体の各々が当該空隙の方向に吸引されるため、第1領域T内の液体と第2領域S内の液体とが分離しづらくなる。空気孔18A〜18Cを設けることによって、当該空隙に空気が導入されるため、第1領域T内の液体と第2領域S内の液体とがスムーズに分離する。なお、各吸引通路17A〜17Cの中間部に空気を導入しなくても第1領域T内の液体と第2領域S内の液体とがスムーズに分離できる場合には、空気孔18A〜18Cを省略することもできる。
熱対流生成用チップ10Aは、導入室19と導入通路19aとをさらに備える。導入室19と導入通路19aは、第1領域Tと環状流路14Aとの間に設けられている。各供給路15A〜15Cの第1領域Tから排出される液体は導入室19に流入する。導入室19の詳細については、図9を参照して後述する。導入室19内の液体は、導入通路19aを介して環状流路14Aに流入する。なお、この導入通路19は基板11Aの下面に形成した溝と蓋体13Aの上面とによって構成されている(図8(B)および図6参照)。
第1液体供給路15Aは、検体液を環状流路14に供給する。検体液としては、第1実施形態のものと同一のものを使用することができる。
第1液体供給路15Aの第1領域Tの寸法(深さ,幅,長さ)は、例えば、以下の表1の通りである。第1液体供給路15Aの第2領域Sの寸法(深さ,幅,長さ)は、例えば、以下の表1の通りである。
第1液体供給路15Aの第1領域Tに充填される検体液の量は、環状流路14Aに供給すべき検体液の量と等しい。また、第1液体供給路の第1受入部16Aの容積は、第1吸引通路17Aの容積よりも大きい。
第2液体供給路15Bは、PCRを行うための反応試薬溶液を環状流路14Aに供給する。反応試薬溶液については、第1実施形態の反応試薬溶液と同一のものを用いることができる。
第2液体供給路15Bの第1領域Tの寸法(深さ,幅,長さ)は、例えば、以下の表2の通りである。第2液体供給路15Bの第2領域Sの寸法(深さ,幅,長さ)は、例えば、以下の表2の通りである。
第2液体供給路15Bの第1領域Tに充填される反応試薬溶液の量は、環状流路14Aに供給すべき反応試薬溶液の量と等しい。また、第2液体供給路の第2受入部16Bの容積は、第2液体供給路の吸引通路17Bの容積よりも大きい。なお、第1液体供給路15Aの第1領域Tの容積と、第2液体供給路15Bの第1領域Tの容積とを併せた容積は環状流路14Aの容積と等しい。
第3液体供給路15Cは、蒸発抑制用液体(例;PCR用のミネラルオイル等)を熱対流用流路11に供給するためのものである。蒸発抑制用液体は、環状流路14A内の液体(例;検体液と反応試薬溶液)の蒸発を抑制する液体であり、環状流路14内に導入する熱源30(第2ヒータ)の最高温度より高い沸点を有するものが用いられる。ミネラルオイルの沸点が、環状流路14A内の液体(例;検体液と反応試薬溶液)を加熱する第2ヒータ32の最高温度よりも高いことから、環状流路14A内の液体の蒸発を抑制する。また、ミネラルオイルの比重は、環状流路14A内の液体の比重よりも小さいため、導入通路19aを塞ぐ蓋として機能する。なお、ミネラルオイル以外の液体であっても、比重が環状流路14A内の液体(例;検体液及び反応試薬溶液)の比重よりも小さい、及び/又は沸点が第2ヒータ32の最高温度よりも高ければ、蒸発抑制用液体として用いることができる。
熱対流生成用チップ10Aがその中心軸周りに回転すると、環状流路14A内は、ミネラルオイルよりも比重が大きい検体液と反応試薬溶液とで満たされ、ミネラルオイルは導入通路19aに滞留して導入通路19aを塞ぐ。その結果、環状流路14A内の検体液及び反応試薬溶液の蒸発と導入室19への逆流とを抑制することができる。
第3液体供給路15Cの第1領域Tの寸法(深さ,幅,長さ)は、例えば、以下の表3の通りである。第3液体供給路15Bの第2領域Sの寸法(深さ,幅,長さ)は、例えば、以下の表3の通りである。なお、第1液体供給路15A、第2液体供給路15B、及び第3液体供給路15Cの各々の位置及び各部寸法(表1〜3参照)は、第1〜第3液体供給路15A〜15Cが互いに干渉しないように設定される。
第3液体供給路15Cの第1領域Tに充填されるミネラルオイルの量は、導入通路19aを防ぐことができる量である。また、第3液体供給路の第3受入部16Cの容積は、第3液体供給路の第3吸引通路17Cの容積よりも大きい。
熱対流生成用チップ10Aは、カバー部25(図6,図7,図9および図10参照)をさらに備える。熱対流生成用チップ10Aの上面に導入室19の開口が形成されている。カバー部25は、熱対流生成用チップ10Aの基板11Aに設けられており、前記開口を覆う(図6および図7参照)。導入室19及びカバー部25の詳細は、図9及び図10を参照して後述する。
各液体供給路15A〜15Cは、案内通路26をさらに含む(図8(A)参照)。すなわち、図11に示したように、各受入部16A〜16C内に半月板状の案内通路形成部26Aが設けられており、案内通路26が形成されている。案内通路26は、各受入部16A〜16C内の液体を各々の第2領域Sに案内する。
図9及び図10を参照して、導入室19とカバー部25の構成を詳細に説明する。図9は図6のB-B線断面図であり、図10はカバー部25の斜視図である。図9に示すように、基板11Aには溝27及び孔28が形成されている。
導入室19は、溝27及び孔28によって形成されている。溝27は平面視半長円状で、基板11Aの下面に形成されている。孔28は縦断面台形状で、溝27の上方に設けられている。孔28と溝27は連通している。
導入室19は、各供給路15A〜15Cの第1領域Tの一方の端部(図8(A)において第1領域Tの右下の端部)と連通するとともに、開口19Bを介して熱対流生成用チップ10Aの外側の空間と連通している。また、導入室19は、導入通路19a(図8参照)を介して環状流路14Aと連通している。
図10に示すように、カバー部25は略直方体状の部材であって、合成樹脂等により形成される。カバー部25は凹部25aを有しており、凹部25aは熱対流生成用チップ10Aの外側の空間と導入室19とを連通している。
凹部25aは、第1内壁面25bと第2内壁面25cと境界部25dとを含む。第1内壁面25bは導入室19の開口と対向している。第2内壁面25cは第1内壁面25bと交差し、第1内壁面25bに対して傾斜している。第1内壁面25bと第2内壁面25cとが成す角度は鈍角である(図9参照).境界部25dは、第1内壁面25bと第2内壁面25cとの間に位置する。
カバー部25は、導入室19内の液体が開口から外部へ飛び出すことを抑制する。第1内壁面25bと第2内壁面25cとが成す角度は鈍角であるため、境界部25dに付着する液体が滞留しにくい。したがって、環状流路14Aに流入させる液体の量が減ることを抑制できるという効果を得ることができる。なお、境界部25dが断面円弧状の曲面である場合にも、ほぼ同様の効果を得ることができる。
図11を参照して、案内通路26の構成を詳細に説明する。図11は案内通路26を模式的に示した図である。案内通路26は、第2領域Sの入口Saを取り囲む。すなわち、各受入部16A〜16Cの円弧状の内周壁面、案内通路形成部25Aの略半月状の底壁面、及び底板13A(図6参照)の頂壁面によって案内通路26が形成されている。案内通路26は矩形の開口29を有する。開口29は第2領域の入口Saと対向し、開口29の面積は入口Saの開口面積より大きい。
各受入部16A〜16C内の液体は、各第2領域Sの入口Saの周辺の壁面を濡らしながら入口Saに流入する。各入口Saは3つの壁面で取り囲まれているため、液体が入口Saに流入しやすい。
また、案内通路26の開口29の面積は入口Saの開口面積よりも大きいため、開口29の面積が入口Saの開口面積以下の場合と比べて、毛細管現象による入口122baへの液体の流入が促進されるため、液体が入口Saに流入しやすくなる。
特に、各入口Saの周縁部にバリが形成されている場合において、各受入部16A〜16Cが案内通路26を備えていると液体が入口Saへと導入させる観点から有効である。すなわち、各受入部16A〜16Cに案内通路26が設けられていることにより、バリがある場合でも入口Saへの液体の流入が阻害されにくくなる。
なお、熱対流生成用チップ10Aは、複数の環状流路14Aと、複数の第1〜第3液体供給路15A〜15Cとを備えているが、第1〜第3液体供給路15A〜15Cは、1つの環状流路14Aにのみ液体を供給する。各環状流路14Aは、他の環状流路14Aと連通していないため、複数の環状流路14Aの各々に個別に液体を供給することで、別箇のサンプルを含む液体を導入して個別に反応(例;PCR反応等)を行うことができる、
次に図6〜図11を参照して熱対流生成用チップ10Aの使用方法を説明する。まず、第1液体供給路の第1受入部16Aに検体液を注入する(図8参照)。第1液体供給路の第1受入部16Aに注入する検体液の量は、第1液体供給路の第1吸引通路17Aに充填される検体液の量よりも多いが、後述する理由から検体液の量を正確に秤量する必要はない。
注入された検体液は、毛細管現象によって第1吸引通路17Aの第2領域Sに流入し、さらに第1領域Tに流入する。そして、検体液が第1吸引通路17Aの最も奥に位置する第1領域Tの一方の端部(図8(A)の第1領域Tの右下端部)に達すると、毛細管現象による液体の流動が停止する。その結果、第1吸引通路17Aの全長に亘って検体液が充填される。
同様に、第2受入部16Bに反応試薬溶液を注入して第2吸引通路17Bに反応試薬溶液を充填する。さらに、第3受入部16Cにミネラルオイルを注入して第3吸引通路17Cにミネラルオイルを充填する。
次に、熱対流生成装置1(図1および図2参照)のモータ40のシャフト41に熱対流生成用チップ10Aを装着し、熱対流生成用チップ10Aをシャフト41の軸線AX周りに回転させると、吸引通路17A〜17C内の液体に遠心力が付与される。その結果、各供給路15A〜15Cにおいて、第1領域T内の液体と第2領域S内の液体とが互いに離反する方向へ移動して、第1領域T内の液体は導入室19に流入し、第2領域S内の液体は各受入部16A〜16Cに戻る。なお、受入部16A〜16Cに戻った液体が飛散しないような構造(例えば、吸液部材)を設けておくことが好ましい。
導入室19に流入した液体(検体液、反応試薬溶液、及びミネラルオイル)のうち、検体液及び反応試薬溶液は導入通路19aを介して環状流路14Aに流入し、ミネラルオイルは導入通路19aの位置に滞留する。環状流路14A内の検体液及び反応試薬溶液が第2ヒータ32や第1ヒータ31によって加熱されることで、熱対流が生じて検体液と反応試薬溶液とが混合する。その際、ミネラルオイルが導入通路19Bを塞ぐため、環状流路14A内の液体の蒸発と導入室19への逆流とが抑制される。
<熱対流生成用チップと熱源との位置関係>
前述の熱対流生成用チップ10Aの使用方法で説明した通り、熱対流生成装置1に熱対流生成用チップ10Aを取り付けて組み立てを完了した状態において、第1ヒータ31および第2ヒータ32が熱対流生成用チップ10Aの下面に当接し、図8(A)に示したように、第1実施形態の環状流路14と第1ヒータ31および第2ヒータ32と同様の配置関係となる。なお、この配置関係は、図3に示したように変更してもよい。第2実施形態においても上記構成により第1実施形態で説明した作用および効果が得られる。
以下、第2実施形態の熱対流生成システム200の作用、効果について説明する。
(12)液体供給路14Aは、液体を受け入れる各受入部16A〜16Cを有し、また、各受入部16A〜16Cと環状流路14Aとを連通させるとともに受入部16A〜16C内の液体を毛細管現象により吸引する各吸引通路17A〜17Cとを有し、各吸引通路17A〜17Cは、該吸引通路17A〜17Cの中間部と環状流路14Aとの間に位置する第1領域Tと、各吸引通路17A〜17Cと各受入部16A〜16Cとの間に位置する第2領域Sとを有し、
熱対流生成用チップ10Aをその中心軸周りに回転をさせることにより、前記第1領域T内の液体が前記第2領域S内の液体から分離して前記環状流路14へ供給されるので、ユーザは環状流路14内へ導入する液体を秤量しなくとも、所定量の液体を環状流路14Aに供給することができる。したがって、ユーザが液体を秤量する手間を省くことができる。このように手間を省いて精度よく液体の秤量ができること、および、第2実施形態の熱対流生成装置200が第1実施形態の熱対流生成装置100と同様の熱源構成を有するために第1実施形態と同様に環状流路14Aを流れる液体の温度制御を効率良く行うことができることとから、作業者の手技に依らず、極めて再現性、安定性の高い熱対流、これを利用した熱対流PCRを実現することできる。
(13)各吸引通路17A〜17Cは、前記中間部で鋭角状に屈曲していることから、第1領域Tにおける液体の分離がしやすくなり、秤量する観点から好ましい。
(14)前記吸引通路17A〜17Cは、各中間部に空気を導入する空気孔18A〜18Cをさらに有するので、熱対流生成用チップ10Aの前記回転による遠心力により、各中間部付近の液体が各受入部16A〜16Cと環状流路14Aの2方向へ移動しようとすると、中間部付近に引圧が生じて空気孔18A〜18Cから前記中間部に空気が導入され、各第1領域T内の液体と第2領域S内の液体との分離が促進される。
(15)複数の液体供給路15A〜15Cを設け、該複数の液体供給路15A〜15Cは、液体供給路ごとに異なる液体(例;反応試薬溶液,検体液)を前記環状流路に供給するものであれば、成分が異なる複数種類の液体の熱対流PCRを同時に行うことができる。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態の熱対流生成システム300について説明する。第2実施形態の熱対流生成システム300は、熱対流生成用チップ(図8)10Bと、第1実施形態の熱対流生成装置1とを少なくとも有する。熱対流生成装置1は、シャフト41と、第1ヒータ31および第2ヒータ32と、モータ40等を有する。なお、熱対流生成装置1自体の構成については、第1実施形態と同様であるのでその説明を省略する。
《熱対流生成用チップ》
図12は、本発明の第2実施形態の熱対流生成用チップ10Bの斜視図であり、図13は、熱対流生成用チップ10Bの分解斜視図である。なお、本実施形態において、第2実施形態と対応する部分には同一の符号を使用し、第1実施形態と重複する説明を省略する。
図12に示すように、熱対流生成用チップ10Bは多層構造となっている。すなわち、図13に示すように、熱対流生成用チップ10Bは、第1基板10Baと、第2基板10Bbと、第3基板10Bcと、蓋体13Bとを含む。第1基板10Ba、第2基板10Bb、第3基板10Bc、及び底板13Bは積層されている。
図14を参照して、熱対流生成用チップ10Bの供給路15Aa〜15Caの構造を説明する。図14は、熱対流生成用チップ10Bの供給路15Aa〜15Caの構造を模式的に示す図である。
図14において、薄いグレー色の部分が第1基板10Baに形成されており、濃いグレー色の部分が第2基板10Bbに形成されており、無色の部分が第3基板10Bcに形成されている。
熱対流生成用チップ10Bは、複数の環状流路14Bと、複数の供給路15Aa〜15Caとを有する。第1液体供給路15Aaは、第1受入部101Aと、複数の第1吸引通路102Aを含む。第2液体供給路15Baは、第2受入部101Bと、複数の第2吸引通路102Bを含む。第3液体供給路15Caは、第3受入部101Cと、複数の第3吸引通路102Cを含む。複数の環状流路14Bの各々と供給路15Aa〜15Caの受入部101A〜101Cとの間に、それぞれ吸引通路102A〜102Cが設けられている。供給路15Aa〜15Caは立体的に交差しており、ラビリンス状の流体通路を形成している。
図13および図14に示されるように、第1液体供給路15Aaは、第1基板10Baに形成されている。第1液体供給路15Baは、第1基板10Baと第2基板10Bbにわたって形成されている。第3液体供給路15Caは、第1基板10Baと第2基板10Bbと第3基板10Bcにわたって形成されている。第1〜第3吸引通路102A〜102Cの各々は、それぞれ第1領域T'と、第2領域S'とを有する(図14参照)。
(第1基板)
図15に第1基板の斜視図を示す。図15に示すように、第1基板10Baは、第1受入部101Aと、第1吸引通路102Aと、空気孔103Aと、孔104U,105Uと、導気用孔103Bu,103Cuと、矩形孔106Uとを有する。
図18に示すように、第1基板10Baの下面には第1吸引通路102Aの一部をなす溝109Uが形成されており、該溝109Uと第2基板10Bbの上面とによって第1吸引通路102Aが構成される(図13および図14参照)。
(第2基板)
図16に第2基板の斜視図を示す。第2基板10Bbは、1つの穴104Mと、該穴104Mから延びる第2吸引通路102Bと、1つの孔105Mと、導気用孔103Bmと、導気用穴103Cmと、矩形孔106Mとを有する。穴104Mと第1基板の孔104Uとによって第2液体供給路15Baの第2受入部101Bが形成される(図14参照)。導気用孔103Bmと、第1基板の導気用孔103Buとによって第2液体供給路15Caの空気孔103Bが形成される(図14参照)。
図18に示すように、第2基板10Bbの下面には第2吸引通路102Bの一部をなす溝109Mが形成されており、該溝109Mと第3基板15Bcの上面とによって第2吸引通路102C(図14参照)が構成される。
(第3基板)
図17に第3基板の斜視図を示す。第3基板10Bcは、1つの孔105Bと、第3吸引通路102Cと、導気用孔103Cbと、矩形孔106Bと、溝107と、導入通路18とを有する。
孔105Bと、第2基板の孔105Mと、第1基板の孔105Uとによって第3液体供給路15Caの第3受入部101Cが形成される。導気用孔103Cbと、第2基板の導気用孔103Cmと、第1基板の導気用孔103Cuとによって第3液体供給路15Caの空気孔103C(図14参照)が形成される。矩形孔106B及び溝107によって導入室19Aの一部が形成される。
図18に示すように、第3基板10Bcの下面には第3吸引通路102Cの一部をなす溝109Bが形成されており、該溝109Bと蓋体13Bの上面とによって第3吸引通路102C(図14参照)が構成される。また、第3基板10Bcの下面には溝107が形成されており、該溝107と蓋体13Bの上面とによって導入通路が構成される(図18参照)。
また、第3基板10Bcには、第3基板10Bcの中心孔17Bの中心の周りに所定の角度間隔をおいて環状流路14Bが複数設けられている(図17参照)。なお、第3基板の中心孔17Bの中心は、熱対流生成用チップ10Bを熱対流生成装置1に装着した状態でモータ40のシャフト41の軸線AXに一致する。
図18を参照して、導入室19Bの詳細な構成を説明する。図18は図12のC−C線に沿った熱対流生成用チップ10Bの断面を矢視方向にみた図である。矩形孔106Bは縦断面台形状で、溝107の上方に位置する。第3基板の矩形孔106Bは溝107及び第2基板の矩形孔106Mと連通し、該矩形孔106Mは第1基板の矩形孔106Uと連通している。矩形孔106Uはカバー部25Aの開口を介して外側の空間と連通している。
次に、図19を参照してカバー部25Aについて説明する。図19はカバー部25Aの斜視図である。カバー部25Aは平面図C字形の帯状の部材であって、複数の凹部25aを有する。複数の凹部25aは、カバー部25Aの周方向に所定の間隔をおいて設けられている。
《熱対流生成用チップと熱源との位置関係》
熱対流生成装置1に熱対流生成用チップ10Bを取り付けて組み立てを完了した状態において、第1ヒータ31および第2ヒータ32が熱対流生成用チップ10Bの下面に当接し、図14に示したように、第1実施形態の環状流路14と第1ヒータ31および第2ヒータ32と同様の配置関係となる。なお、この配置関係は、図3に示したように変更してもよい。第3実施形態においても上記構成により第1実施形態で説明した作用および効果が得られる。
次に、図14を参照して熱対流生成用チップ10Bの使用方法を説明する。
まず、第1液体供給路15Aaの第1受入部101Aに検体液を注入する。第1受入部101Aに注入する検体液の量は、第1液体供給路の第1吸引通路102Aの全体に充填される検体液の量よりも多いが、検体液の量を正確に秤量する必要はない。第1受入部101Aに注入された検体液は、毛細管現象によって第1吸引通路102Aの全てに充填される。
同様にして、第2液体供給路15Baの第2受入部101Bに反応試薬溶液を注入して、吸引通路102Bの全てに反応試薬溶液を充填する。さらに、第3液体供給路15Caの第3受入部101Cにミネラルオイルを注入して、毛細管現象によって、吸引通路102Cの全てに充填する。
次に、熱対流生成装置1(図1,図2参照)のモータ40のシャフト41に熱対流生成用チップ10Bを装着し、モータを駆動して熱対流生成用チップ10Bをシャフト41の軸線AX周りに回転させると、吸引通路102A〜102C内の液体に遠心力が付与される。その結果、吸引通路102A〜102C内において、第1領域T'内の液体と第2領域S'の液体とが互いに離反する方向に移動して、第1領域T'の液体は導入室19Bへ流入し、第2領域S'内の液体は各受入部101A〜101Cに戻る。
導入室19Bに流入した液体(検体液、反応試薬溶液、及びミネラルオイル)のうち、検体液及び反応試薬溶液は導入通路108(図17参照)を介して環状流路14Bに流入し、ミネラルオイルは導入通路108の位置に滞留する。環状流路14B内の検体液及び反応試薬溶液が第2ヒータ32または第1ヒータ31によって加熱されることで、熱対流が生じて検体液と反応試薬溶液とが混合する。その際、ミネラルオイルが導入通路108を塞ぐため、環状流路14B内の液体の蒸発と導入室19Bへの逆流とが抑制される。
以下、第3実施形態の熱対流生成システム300の作用、効果について説明する。
(16)液体供給路として、検体液を前記環状流路に供給する第1液体供給路15Aaと、PCRを行うための反応試薬溶液を前記環状流路に供給する第2液体供給路15Baを含み、
前記検体液を環状流路14Bに供給する第1液体供給路15Aaの第1領域T'の容積と、前記反応試薬溶液を環状流路14Bに供給する第2液体供給路15Baの前記第1領域T'の溶液とを合わせた容積が、環状流路14Bの容積に等しいものであるので、環状流路14Bの各々に対してPCR反応溶液の各液体を同時に供給することができ、また前述のように遠心により液体供給路の中間部で液体が分離して、所定量の液体だけが環状流路へと流入するのでユーザが各液体を秤量する手間を省くことができる。
以上のように、熱対流生成用チップ51によれば、複数の熱対流用流路11の各々に対して同時に液体を供給できる。したがって、同じ成分の複数の液体の熱対流PCRを同時に行う場合において、ユーザが液体を秤量する手間を削減することができる。
以上、本発明の具体的な実施形態を説明したが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。なお、本実施形態の図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、本実施形態で示した具体的な材質や形状、及びその他の構成は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、第1〜3実施形態の熱対流生成用チップの環状流路の個数は限定されず、1つでもよい。また、第2,3実施形態の熱対流生成用チップの供給路,基板の数は限定されず、1つまたは4つ以上であってもよい。反応試薬溶液を供給する供給路を複数設けることで試薬成分を分けて導入することができる。
第3実施形態では、第1液体供給路の第1領域と第2領域Sとの合計容量が環状流路14Bと等しいが、全ての供給路の第1領域の容積を併せた容積と、熱対流用流路の容積とが等しくてもよいし、又は、熱対流用流路に連通する1つの第1領域の容積と、熱対流用流路の容積とが等しくてもよい。
また、本発明によれば、熱対流させる液体だけでなく、その他の液体を秤量する液体秤量具も提供される。当該液体秤量具は、図6〜図8に示す構成のうち、受入部16Aと、該受入部16Aに連通するとともに、受入部16A内の液体を毛細管現象により吸引する吸引通路17Aとを有するものとして構成することができる。前述したように熱対流生成用チップ10Aを回転させることにより、第1領域T内の液体が第2領域S内の液体から分離して吸引通路17Aの先端部から排出され、所定容量の液体が環状流路14A内へ秤量される。その他にも、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で本実施形態に種々の変更を行うことができる。
以下、第1実施形態の熱対流生成システム100を用いた実施例について説明する。
[実施例1]
以下の内容で熱対流生成システム100により液体温度の変化について温度シミュレーションを行った。
《熱対流生成用チップの寸法》
熱対流生成用チップ10を構成する基板11と蓋体13のうち、基板11については厚さ2.0mm、直径40mm、蓋体13については、厚さ0.19mm、直径40mmに設定した。
《環状流路の寸法》
環状流路14は、流路高さ(S):0.3mm、流路の幅(W):0.5mm、環状流路の直径(外径)(D):6mmに設定した(図2(B)参照)。
《装置周辺の環境温度》
熱対流生成装置1の周囲の環境温度を10℃に設定し、後述の熱対流を行っている間、この温度を維持することとした。
《クリアランスの占める割合》
第1ヒータ31と第2ヒータ32との間にあるクリアランスCLは0.5mmに設定した。このクリアランスCLの面積(平面視した場合:図2(A)参照)は環状流路14全体の流路エリアの約7%である。
《モータ回転速度の決定》
図20,図21を参考にしてモータ40のシャフト41の回転速度(熱対流生成用チップ10の回転速度)を5G相当の電圧、すなわち、4.0Vをモータに印加した際に得られるシャフトの回転数(約520rpm)に決定した。すなわち、熱対流生成用チップ10を520rpmで回転させることを意味する。
《熱対流処理》
第2ヒータ32の温度を102℃に設定し、第1ヒータ31の温度を60℃に設定した。そして、モータ40を駆動して速度520rpmで熱対流生成用チップ10を回転させて上記液体を遠心力かけた場合について調べたところ、環状流路14内で前記液体が約8秒間で1周する結果となった。環状流14路内において液体が環状流路を1周する際に変化する温度のプロファイルを図22(A)に示す。
[比較例1]
比較例1では、特開2014−39498号公報(特許文献3)の図4に示すような熱源(図2(A)のように平面視したときの、2つのヒータ間のクリアランスの合計面積が環状流路14全体の流路エリアの約38%)を使用して実施例1と同様に環状流路内を移動する液体の温度シミュレーションを行った。この結果を図22(B)に示す。
[実施例2]
実施例2では、熱対流生成装置の周囲の環境温度を25℃に変更したこと以外は実施例1と同様に環状流路内を移動する液体の温度シミュレーションを行った。この結果を図22(C)に示す。
[比較例2]
比較例2では、特開2014−39498号公報(特許文献3)の図4に示すような熱源(図2(A)のように平面視したときの、2つのヒータ間のクリアランスの合計面積が環状流路14全体の流路エリアの約38%)を使用して実施例2と同様に環状流路内を移動する液体の温度シミュレーションを行った。この結果を図22(D)に示す。
[実施例3]
実施例3では、熱対流生成装置の周囲の環境温度を40℃に変更したこと以外は実施例2と同様に環状流路内を移動する液体の温度シミュレーションを行った。この結果を図22(E)に示す。
[比較例3]
比較例3では、特開2014−39498号公報(特許文献3)の図4に示すような熱源(図2(A)のように平面視したときの、2つのヒータ間のクリアランスの合計面積が環状流路14全体の流路エリアの約38%)を使用して実施例3と同様に環状流路内を移動する液体の温度シミュレーションを行った。この結果を図22(F)に示す。
(結果・考察)
比較例1〜3の結果を図22(B),(D),(F)に示す。ここで、明るいグレー色の帯は環状流路14内の液体が第1ヒータ31の上方の環状流路の流路エリアを通過していることを表す。また、暗いグレーの帯の部分は、環状流路14内の液体が第2ヒータ32の上方の環状流路14の流路エリアを通過していることを意味する。さらに白色の帯の部分は、環状流路14内の液体がヒータ等が存在しない空気の上方の環状流路14の流路エリアを通過していることを意味する。
比較例1〜3(図22(B),(D)および(F)参照)では、第1ヒータ31と第2ヒータ32とが特開2014−39498号公報(特許文献3)の図4に示したように配置され、第1,第2ヒータ間の隙間の割合を環状流路15%超に設定されている。すなわち、図22(B),(D)および(E)から白帯部分の横軸の長さから分かるように、少なくとも2ラジアンに相当する流路エリアで空冷している。環状流路14は真円であることから、環状流路14で液体が空冷される部分の割合を算出すると、環状流路14の流路エリア全体に対して31.8%以上になる。この空冷されている液体温度のプロットから流路エリアでは液体の温度がなだらかに低下していることが示されている(山状の黒線参照)。
また、図22(B)(比較例1)と(F)(比較例3)とを比較すれば分かるように、外気温度が10℃の場合と40℃の場合では、当然に外気温度が10℃の方が液体の温度が下がる速度が速く、すなわち、比較例では外的要因による影響を受けやすく熱対流の再現性、ロバスト性に問題があるといえる。
一方、実施例1〜3(図22(A),(C),(E))では、第1ヒータ31と第2ヒータ32とが図2(A)に示した通りに配置され、これら第1ヒータと第2ヒータと間には、環状流路を空冷するための隙間は設けていない(第1ヒータと第2ヒータとの温度が維持できるように相互に最小限必要なクリアランスを設けているだけである。該クリアランスの環状流路全体の流路エリアに対して約7%に設定されている(図2(A)参照))。
そのため、第1ヒータの上方の流路エリアで空冷よりも早い速度で冷却され、急峻な勾配を形成し、比較例1〜3と比較すると短時間で第1ヒータの温度(60℃)付近に到達していることが分かる。すなわち、実施例では比較例と比べて効率よく迅速に液体の温度を調節していることが分かる。また、外気温度が40℃(図22(E))と10℃(図22(A))の場合とで、環状流路内の液体の冷却プロファイルに差がなく比較例よりも熱対流の再現性、ロバスト性に優れているといえる。
以上、本発明について第1〜第3実施形態、実施例を通じて説明してきたが、本発明はこれらに限定されず、請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しないかぎり、設計変更は許容される。
1・・・熱対流生成装置
10,10A,10B・・・熱対流生成用チップ
10Ba・・・第1基板
10Bb・・・第2基板
10Bc・・・第3基板
11,11A・・・基板
13,13A,13B・・・蓋体
14,14A,14B・・・環状流路
15・・・液体供給路
15a・・・伸延部
15b・・・液溜り部
15c・・・連通部
15A,15Aa・・・第1液体供給路
15B,15Ba・・・第2液体供給路
15C,15Ca・・・第3液体供給路
15D・・・液体供給孔
16・・・ガス排出路
16a・・・伸延部
16b・・・ガス溜り部
16c・・・連通部
16A,101A・・・第1受入部
16B,101B・・・第2受入部
16C,101C・・・第3受入部
17・・・中心孔
17A,102A・・・第1吸引通路
17B,102B・・・第2吸引通路
17C,102C・・・第3吸引通路
18A,18B,18C,103A・・・空気孔
19・・・導入室
19a・・・導入通路
19A・・・導入室
20・・・ステージ
21・・・ヒータ装着孔
22・・・第1ねじ挿通孔
23・・・第2ねじ挿通孔
24・・・中心孔
25a・・・凹部
25b・・・第1内壁面
25c・・・第2内壁面
25d・・・境界部
25,25A・・・カバー部
26・・・案内通路
26A・・・案内通路形成部
27・・・溝
28・・・孔
29・・・開口
30・・・熱源
31・・・第1ヒータ
31a・・・連結部
31b・・・熱源部
31c・・・孔
32・・・第2ヒータ
32a・・・連結部
32b・・・熱源部
32c・・・貫通孔
32a・・・リング状の連結部
40・・・モータ
41・・・シャフト
50・・・制御手段
51・・・演算制御部
52・・・表示部
53・・・入力部
60・・・ヒートシンク
81・・・熱対流生成装置
90・・・光学検出系
91・・・励起光光源
92・・・蛍光検出器
93・・・検知光光源
94・・・検知光検出器
95・・・被検知部
96・・・演算制御部
97・・・制御手段
103Bu,103Bm,103Cu,103Cm,103Cb・・・導気用孔
104U,104M・・・穴
105U,105M,105B・・・孔
106U,106B,106M・・・矩形孔
107・・・溝
108・・・導入通路
109U,109M,109B・・・溝
110・・・孔
100,200,300・・・熱対流生成システム
AX・・・軸線
L1・・・光
L2・・・検知光
P1・・・検知ポイント
Sa・・・入口
S,S'・・・第2領域
T,T'・・・第1領域

Claims (14)

  1. 液体を循環させるための環状流路を有する熱対流生成用チップを回転可能に固定することができる回転軸と、
    前記環状流路内の液体を加熱又は冷却する第1熱源部を有する第1温度調節部と、
    前記環状流路内の液体を加熱又は冷却する第2熱源部を有する第2温度調節部と、
    前記回転軸を回転駆動することにより前記環状流路全体を前記回転軸の軸線回りに回転させる回転駆動手段と、を備え、前記液体が前記環状流路を流通する方向と直交する方向(環状流路より呈される円と一致する平面)で前記環状流路を平面視したとき、該平面上にある前記環状流路の重心(環状流路の中心)と、前記軸線と前記平面との交点である前記回転軸の回転中心とが一致しない熱対流生成装置と、
    液体を循環させるための環状流路を有する熱対流生成用チップと
    を含む熱対流生成システムであって、
    前記回転中心と前記重心(環状流路の中心)とをつなげた直線に対して、前記重心(環状流路の中心)を中心として、30°以上〜150°以下または210°以上〜330°以下となる範囲のうち、いずれか一方の範囲のみに、前記第2熱源部が少なくとも1つ位置して該範囲内で前記環状流路の流路エリアを加熱又は冷却し、
    前記第1熱源部は、第2熱源部によって加熱又は冷却される前記環状流路の流路エリア以外の流路エリアを加熱または冷却し、
    前記熱対流生成用チップは、前記環状流路に連通した液体供給路を有し、前記回転駆動により熱対流生成用チップに加わる遠心力により前記液体供給路中の液体が前記環状流路に供給され、
    前記液体供給路は、
    前記液体を受け入れる受入部と、
    前記受入部と前記環状流路とを連通させるとともに、前記受入部内の液体を毛細管現象により吸引する吸引通路と、
    を有し、
    前記吸引通路は、前記吸引通路の中間部と前記環状流路との間に位置する第1領域と、前記吸引通路と前記受入部との間に位置する第2領域とを有し、
    前記回転をさせることにより、前記第1領域内の液体が前記第2領域内の液体から分離して前記環状流路へ供給される、熱対流生成システム。
  2. 前記吸引通路は、前記中間部で鋭角状に屈曲している、請求項に記載の熱対流生成システム。
  3. 前記吸引通路は、前記中間部に空気を導入する空気孔をさらに有する、請求項又は請求項に記載の熱対流生成システム。
  4. 前記液体供給路を複数設け、
    該複数の液体供給路は、液体供給路ごとに異なる液体を前記環状流路に供給する請求項のいずれか一項に記載の熱対流生成システム。
  5. 前記複数の液体供給路は、検体液を前記環状流路に供給する液体供給路と、PCRを行うための反応試薬溶液を前記環状流路に供給する液体供給路を含み、
    前記検体液を前記環状流路に供給する液体供給路の前記第1領域の容積と、前記反応試薬溶液を前記環状流路に供給する液体供給路の前記第1領域の容積とを合わせた容積は、前記環状流路の容積に等しい、請求項に記載の熱対流生成システム。
  6. 第1熱源部と第2熱源部との間にクリアランスを有し、
    前記平面視をしたときの該クリアランスの面積が流路エリア全体の面積に対して0.1〜15%の範囲にある、請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱対流生成システム
  7. 第1温度調節部の第1熱源部と第2温度調節部の第2熱源部とが面一の平板部を有し、
    前記平面視をした状態で、前記クリアランス部分が、第2熱源部を囲うように各熱源部が形成および配置されている、請求項に記載の熱対流生成システム
  8. 前記平面視をしたときに、第2温度調節部の第2熱源部と重なる前記環状流路の流路エリアが、第1温度調節部の第1熱源部と重なる前記環状流路の流路エリアよりも面積が小さい、請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱対流生成システム
  9. 前記回転軸の軸線に対して前記環状流路が対称となるように複数配置されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱対流生成システム。
  10. 前記環状流路の壁面の表面粗さRaが100nm以下である、請求項のいずれか一項に記載の熱対流生成システム。
  11. 前記環状流路が前記平面視をしたときに真円状である、請求項10のいずれか一項に記載の熱対流生成システム。
  12. 前記環状流路の壁面の材質が、環状オレフィン、ポリプロピレン、及びポリカーボネートのうちのいずれかである、請求項11のいずれか一項に記載の熱対流生成システム。
  13. 前記環状流路内の液体に含まれる蛍光色素を励起する励起光を前記環状流路内の前記液体に照射する励起光光源と、
    前記蛍光色素に前記励起光を照射することにより前記蛍光色素によって放出される蛍光を検出する蛍光検出器と、
    前記蛍光検出器によって検出された蛍光に基づいて核酸の複製量を算出する演算制御部と、
    を含む請求項12のいずれか一項に記載の熱対流生成システム。
  14. 請求項1〜13のいずれか一項に記載の熱対流生成システムを使用したコンベクションPCR法であって、
    PCR反応溶液を構成する検体液、反応試薬溶液、その他PCR反応に必要な液体を個別に又は一体に環状流路内に導入する液導入工程、
    環状流路内で前記PCR反応溶液を所定速度で還流させてコンベクションPCRを行うPCR反応工程、を含み、
    PCR反応中に、第1温度調節手段の熱源部と第2温度調節手段の熱源部との温度差を10℃以上に維持する、コンベクションPCR法。
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