JP6323274B2 - 試料分析チップ - Google Patents
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Description
上記のような反応装置を用いれば、複数種の検体を同じ試薬で同時に処理をしたり、また逆に一種類の検体に同時に複数の処理を施したりすることが出来、従来かかっていた時間や手間を大幅に減らすことが可能である。
特許文献2には、遠心力を作用させる際、自転と公転とを織り交ぜることで各ウェルへの送液量にばらつきを低減する技術が記載されている。
特許文献3には、液体貯留部と遠心方向に伸びる流路を有するウェルを複数連結させた分析用媒体が記載されているが、液の配液性などには注視しておらず、逆にウェルに詰まった空気との押し合いで流体を制御している。
特許文献4には、マイクロチャネル内に予め充填しておいた熱溶融性物質を、ヒーターで粘度制御しつつ、入り口からの空圧により移動させて、マイクロチャネル内での流体制御を行なう、という方法が記載されている。
特許文献1に記載の技術では、流路を押しつぶす機構が必要であり、自動化が困難である。また、従来の遠心送液チップのように中央の液溜りから周囲のウェルに遠心送液を行うと、各ウェルへの送液量にばらつきが生じてしまう。
特許文献2に記載の技術では、チップが自転と公転とを行うための複雑な機構とスペースが必要となり、またサンプル液に複数の処理を加えようとした場合、図2の様に分配を行った後に複数の処理を行ってしまうと、反応ウェル毎のバラつきが重なっていって安定した処理が行えない。
特許文献3に記載の技術では、液体貯留部と液体貯留部の間流路の液体は送液されない上、各ウェルに送液される液量は大きくバラつき、反応のたびに結果に差異が生じてしまう。
特許文献4に記載の技術では、空圧制御機構が必要であり、一度に多くの反応を行なう溶液処理チップにおいては、熱溶融性物質の移動を制御するための形状や機構が複雑になってしまう。
さらに、生化学反応をチップ上で行う際、試料溶液分配後、反応チャンバ内を加熱して反応を行なう場合が多く、試料溶液の蒸発を防ぐために、さらにミネラルオイルなどの蒸発防止材を注入したり、チップの物理的な封止を行なったりしなければならないことがあり、作業工程が多くなるという問題がある。
本発明の第1の実施形態の試料分析チップについて説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態の試料分析チップの構成を示す模式的な正面図である。図2(a)、(b)は、図1におけるA視図およびB視図である。図3は、本発明の第1の実施形態の試料分析チップに用いる基材の模式的な裏面図である。図4は、本発明の第1の実施形態の試料分析チップに用いる基材の模式的な平面図である。図5は、本発明の第1の実施形態の試料分析チップの注入口近傍の模式的な断面図である。図6は、本発明の第1の実施形態の試料分析チップの第1反応室と計量室との接続部における模式的な断面図である。図7は、本発明の第1の実施形態の試料分析チップに用いる基材の裏面図の部分拡大図である。図8は、図7におけるC−C断面図である。図9は、本発明の第1の実施形態の試料分析チップの通気孔近傍の模式的な断面図である。図10は、本発明の第1の実施形態の試料分析チップに用いる基材の平面図の部分拡大図である。図11は、本発明の第1の実施形態の試料分析チップの計量室と第2反応室との接続部における模式的な断面図である。
試料分析チップ1を用いた分析では、サンプル液の移動に関して、圧送と遠心力を利用した移動とを用いることが可能である。このため、試料分析チップ1は、図示略の分析装置において、外形の中心と分析装置の回転中心とが一致するように配置される。
図1に示すように、試料分析チップ1は、チップ本体2(基材、板状部)、上蓋3(蓋材)、および下蓋4(蓋材)からなる。
チップ本体2の表面および内部には、サンプル液を導入したり、移動したりするため、互いに連通する溝、凹部、孔部などによる流路構造が形成されている。
チップ本体2の材質としては、例えば、樹脂材料や金属材料を採用することができる。
チップ本体2の製造方法としては、樹脂材料の場合には、射出成形、真空成形等の各種樹脂成形法や、機械切削などを用いることができる。安価に製造するには、成形型を用いた樹脂成形品を用いることが好ましい。また、流路構造の断面寸法が、サブミリオーダー程度以上の大きさであれば、押し出し成形なども採用することができる。
金属材料の場合には、厚手の基材を用いた研削加工やエッチング、薄手の金属シートにプレス加工や絞り加工を施すことで形成することができる。
なお、本明細書では、「透明」及び「光透過性」とは、検出光の波長領域での平均透過率が70%以上であることを意味する。
検出光の波長範囲は、可視光領域(波長350〜780nm)には限定されない。チップ本体2として、可視光領域で光透過性を有する材料を用いれば、チップ内の試料状態の視認が容易となるが、検出器として、可視光領域以外の検出光に感度を有する検知器を用いる場合には、その検出光の波長領域のみの透過率が良好であればよい。
また、アクリル樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル、または、メタクリル酸メチルとその他のメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、スチレンなどのモノマーとの共重合体を使用することができる。
また、これらの樹脂材料を使用する場合、チップの耐熱性や強度を確保することもできる。
チップ本体2の材質として、金属材料を用いる場合、熱伝導率が良好となり、封止性能もより向上することができる。
ただし、図2(a)に示すように、上蓋3の中心部には、チップ本体2にサンプル液を注入するための円孔からなる注入口3a(サンプル注入口)と、チップ本体2内の流路構造に導入された空気などの流体を排出するための円孔からなる通気孔3bと、が厚さ方向に貫通して設けられている。
例えば、上蓋3、下蓋4として、例えば、アルミニウム、ステンレスなどの金属シートを採用することができる。チップ本体2への貼り付け方法は、例えば、接着、溶着などを採用することができる。
この場合、上蓋3、下蓋4の樹脂材料などに比べて熱伝導性が良好になるため、流路構造内のサンプル液の反応を制御するため、加熱や冷却を行う場合に、迅速かつ高精度の加熱、冷却を行うことができる。
この場合、樹脂フィルムの材料として、チップ本体2の材料の融点が近い樹脂材料を選択することにより、樹脂フィルムをチップ本体2に密着させて熱伝導性の良い金属の側から熱を加えて熱溶着するなどして、上蓋3、下蓋4を簡単に貼り付けることができる。
また、金属シートと樹脂フィルムの間に、カーボンの粉や、赤外線吸収剤の様な任意の光波長を吸収する材料(光吸収性材料)を塗布して貼り付けてから、レーザ照射を行うレーザ溶着によって固定することも可能である。
この場合、光吸収性材料の波長を適宜選択することにより、生化学反応の分析時に観察すべき波長光以外の波長光を吸収させることができる。このようにすれば、分析時の測定感度を向上させることができる。
例えば、本実施形態では、後述するように、下蓋4が覆う部分において、加熱が必要な反応が行われる。このため、下蓋4は、金属シートまたは金属を含む材質を採用することが好ましい。この場合、金属シートまたは金属を含む材質は、下蓋4の全面に設けることは必須ではなく、加熱を行う部分のみに設けることが可能である。
一方、上蓋3で覆う部分では、加熱は必要とされないため、より安価な樹脂フィルムのみからなる構成を採用することができる。
生化学反応を促進するため、試料分析チップ1の一部が加熱されると、試料分析チップ1に反りや歪みが発生する可能性がある。しかし、本実施形態では、チップ本体2の第1表面2f、第2表面2gにそれぞれ上蓋3、下蓋4を貼り付けるため、それぞれの剛性や熱変形特性を適宜設定することで、試料分析チップ1としての反りや歪みを低減することができる。
また、本実施形態では、下蓋4を介して加熱を行うため、下蓋4からの熱が必要な範囲のみに伝わるように、下蓋4の外径は上蓋3よりも小径としている。
図3〜5に示すように、チップ本体2の外形の中心には、上蓋3の注入口3aと連通するように、注入孔2aが板厚方向に貫通されている。注入孔2aの内径は、注入口3aの内径と異なっていてもよいが、本実施形態では、一例として、注入口3aの内径と同一である。
図2に示すように、第2表面2g上には、第1反応室10、第2反応室12、および通気路11が形成されている。
図3に示すように、第1表面2f上には、計量室13が形成されている。
第1反応室10の形状は、特に限定されないが、本実施形態では、単位面積当たりの貯留量を大きくすることができるように、注入孔2aを中心とする仮想的な同心円である円C1と、円C1よりも大径の円C2とで挟まれた円環状の領域でその周方向に対して蛇行する形状を採用している。以下では、円C1は、第1反応室10が形成された領域の内接円になっており、円C2は、第1反応室10が形成された領域の外接円になっているものとする。
なお、説明を簡素化するため、誤解のおそれがない場合には径方向を規定する円の記載を省略する場合がある。
図5に示すように、始端部10aおよび導入路2hの深さは、深さh10で共通である。深さh10は、例えば、チップ本体2の板厚をh2とすると、h10<h2である。
図3に示すように、第1反応室10の終端部10bは、始端部10aと周方向に隣り合う位置に形成され、円C1の内側においてチップ本体2の板厚方向に貫通された縦孔2cから円C2までの間で、縦孔2cの中心を通る円C2の直径に対して傾斜して延ばされた直線状の溝部である。
図6に示すように、終端部10bは、縦孔2cに連通しており、第2表面2gからの深さは、始端部10aと同様、深さh10である。
なお、これら、折り返し流路10A、第1直線流路10B、折り返し流路10C、および第2直線流路10Dの溝深さは、いずれも深さh10である。
第1直線流路10Bは、折り返し流路10Aと接続され、円C2の径方向に対して傾斜する方向(円C2の中心からずれた位置に向かう方向)に沿って径方向内側に向かう流路である。第1直線流路10Bの溝幅は、径方向内側に向かうにつれて縮幅されている。
第1直線流路10Bの傾斜方向は、一定の方向に傾斜していれば、傾斜方向は特に限定されない。本実施形態では一例として、径方向外側から径方向内側に向かうにつれて、図3における図示時計回りに進むように傾斜している。
折り返し流路10Cの溝幅は、第1直線流路10Bとの接続部における溝幅と略同じであり、折り返し流路10Aの溝幅よりも細い。
第2直線流路10Dは、折り返し流路10Cで折り返される第1直線流路10Bと略同方向に傾斜して並行し、円C2に向かう直線状の流路である。第2直線流路10Dの溝幅は、径方向外側に向かうにつれて拡幅されている。
第2直線流路10Dの径方向外側の端部は、隣り合う他の折り返し流路10Aに接続されている。
凸部2j、2iの壁厚は、第1反応室10内で、サンプル液を圧送する際に必要な強度、凸部2j、2i上における下蓋4の貼り付け強度、第1反応室10の加工性を考慮して、適宜の寸法に設定することができる。
これらの条件の範囲内で、凸部2j、2iの壁厚を薄くしていけば、円C1、C2の領域における第1反応室10の面積を極大化することができる。
本実施形態では、凸部2j、2iを径方向に対して斜め方向に延ばしている。これにより、第1直線流路10Bと第2直線流路10Dの面積を大きくしつつ、流路幅の変化を抑制することができる。流路幅の変化が抑制されることで、蛇行する第1反応室10におけるサンプル液の流れが良好になる。
凸部2j、2iを径方向に沿って延ばして、第1直線流路10Bと第2直線流路10Dの面積を同様の大きさにすると、それぞれの流路における径方向内側の流路幅と外側の流路幅の差がより大きくなる。このため、蛇行する第1反応室10におけるサンプル液の流れが悪くなり、サンプル液を良好に充填できなくなるおそれがある。
第2反応室12は、第1反応室10が設けられた領域の外側(円C2よりも外側)の第2表面2g上において、円C2の周方向に沿って複数個が等ピッチで設けられている。
各第2反応室12の構造はいずれも共通であり、図7に示すように、平面視の形状が、円C2の径方向に沿って長手軸を有する延びる長円状の溝部である。
図8に示すように、第2反応室12の深さはh12(ただし、h12<h2)であり、移送路2kの深さはh2k(ただし、h2k<h12)である。
第2反応室12の平面視の面積および深さh12は、第2反応を行うために必要なサンプル液の体積に基づいて適宜設定する。
分岐路2mは、円C2の周方向に略沿って延ばされ、第2反応室12と周方向に隣り合って配置された余剰液体収容室14と連通されている。
余剰の液体としては、例えば、サンプル液と、後述する蓋溶液等のサンプル液以外に第2反応室12に導入される液体とを挙げることができる。
余剰液体収容室14の形状は、計量室13から移送されるサンプル液等の液体の量のバラツキを考慮して、余剰の液体をすべて収容できる容積が得られる形状とする。
本実施形態では、一例として、平面視の形状が、円C2の径方向に沿って延ばされ、周方向の幅が径方向内側から外側に向かって拡径する扇状あるいは洋梨状とされた溝部からなる。余剰液体収容室14の深さは、一例として、h12である。
通気路11において、円C1の近傍に設けられた端部は、チップ本体2の板厚方向に貫通する縦孔2dと連通されている。
通気路11の他端部は、上蓋3の通気孔3bと重なる位置に開口し、チップ本体2の板厚方向に貫通する縦孔2bと連通されている。
通気路11の平面視の形状は、縦孔2d、2bの間に独立した流路を形成できれば、特に限定されない。本実施形態では、通気路11は、導入路2hの側方において平面視S字状に形成されている。
図9に示すように、通気路11の深さは、h11(ただし、h11<h2)である。通気路11の深さh11は、計量室13内の流体を円滑に排出できる深さを有していればよい。
計量室13は、サンプル液を貯留して計量を行うための計量流路13bと、計量流路13bに貯留されたサンプル液を遠心力によって径方向外側に取り出すための複数の分岐路13Fとを備える。
計量室13の溝深さは、いずれも深さh13(ただし、h13<h2)で一定である。
本実施形態では、円C3の直径は、円C1の直径よりも小さく、円C4の直径は、円C3の直径より大きく円C2の直径よりも小さい。
計量流路13bの始端部13aは、縦孔2cと連通している。
計量流路13bの終端部13cは、始端部13aと周方向に隣り合う位置に配置され、縦孔2dと連通している。
このため、図4に示すように、計量流路13bは、円C3、C4で挟まれた円環状の領域にて、始端部13aから図示反時計回りに略一周して終端部13cに到る流路を形成している。
このような配置により計量流路13bは、その一部が第1反応室10と、チップ本体2の板厚方向において重なる領域に位置する。
なお、計量流路13bの始端部13aは、第1直線流路13Aであり、終端部13cは内周側屈曲流路13Dである。
後述するように、第1直線流路13A、外周側屈曲流路13B、および第2直線流路13Cに貯留されたサンプル液は、まとまって一つの第2反応室12に移動される。このため、これらの容積は、サンプル液の計量量に応じて適宜設定する。
第1直線流路13Aと第2直線流路13Cとは、外周側屈曲流路13Bの屈曲中心を通る円C4の直径Lと、それぞれ角度θ1、θ2(ただし、θ1、θ2は鋭角)をなして交差している。角度θ1、θ2は、互いの大きさおよび傾斜方向は異なっていてもよい。
角度θ1、θ2はそれぞれ、0°以上60°以下であることが好ましい。
また、円C3、C4で挟まれる円環状の領域の面積に対する計量量の比率を大きくして、計量室13をコンパクトな大きさに収めるには、角度θ1、θ2の大きさを互いに一致させるとともに、傾斜方向をそろえることが好ましい。この場合、角度θ1、θ2は、上記の好ましい範囲内で大きくするほど、円環状の領域を狭くすることができる。
本実施形態では、一例として、θ1=θ2=25(°)としている。傾斜方向は、第1直線流路13Aに沿って、径方向内側から径方向外側に向かうにつれて、注入孔2aを中心として、図示反時計回りに移動する方向である。
第2直線流路13Cの溝幅は、一定とされ、例えば、第1直線流路13Aの最小の溝幅と同程度である。
外周側屈曲流路13Bは、このように、径方向外側で溝幅が異なる第1直線流路13Aと第2直線流路13Cとを滑らかにつなぐ円弧状の流路である。
外周側屈曲流路13Bは、径方向の最外周部において、溝幅が最大になっている。
内周側屈曲流路13Dの溝幅は、第2直線流路13Cと同程度としている。
分岐路13Fの溝幅は、例えば、移送路2kと同程度の溝幅とすることが好ましい。
本実施形態では、外周側屈曲流路13Bから略径方向に沿って延出されてから、第1直線流路13Aの傾斜方向と反対方向に傾斜して延ばされている。
図11に示すように、各分岐路13Fの延出方向の端部は、それぞれ一つの移送路2kが接続された縦孔2eと連通されている。このため、分岐路13Fは、移送路2kおよび縦孔2eを介して、第2反応室12と一対一に連通されている。
縦孔2eを介して連通された分岐路13Fと移送路2kとは、互いの延在方向が異なっていてもよいが、本実施形態では、一例として、同一の延在方向を採用している。このため、分岐路13Fと移送路2kとは、平面視で同一直線状に整列している。
例えば、注入口3aから流体を注入していくと、流体は、注入孔2aを通って第2表面2g側に下降し、導入路2hを経由して、第1反応室10の始端部10aに入り、第1反応室10の中間部を経て、終端部10bに達する。
終端部10bに達した流体は、縦孔2cを通って第1表面2f側に上昇し、計量室13の始端部13aに達する。
各分岐路13Fに続く流路は、縦孔2eを通って第2表面2g側に下降し、移送路2kを通って第2反応室12に向かう流路と、移送路2kの途中から分岐路2mに分岐して余剰液体収容室14に向かう流路とに分かれる。
第2反応室12および余剰液体収容室14には、いずれも外部に連通する流路が接続されていないため、未使用の状態では、空気が閉じ込められている。このため、流体を分岐路13Fから移送路2kに移動するには、少なくともこの空気圧に抵抗する相応の外力を流体に作用させる必要がある。
通気路11に達した流体は、空気等の気体の場合、順次、通気孔3bを通して上方に排出される。また、通気路11に達した流体が、液体の場合には、通気孔3bから通気路11内の空気を排出しつつ、通気路11の内部に侵入し、通気路11の容積の範囲を限度として、通気路11内に貯留される。
このように、通気孔3bが試料分析チップ1の上部に設けられていることにより、液体の進入による通気孔3bの詰まりを防ぎ、かつ液体が外部に漏れ出しにくい構成になっている。
この貼り合わせを行う前には、各第2反応室12に第2反応を行うための反応用の試薬を固定する。
各第2反応室12では、同一の試薬を用いてもよいが、分析の目的によっては、複数種類の第2反応を行うため、異なる試薬を用いることもできる。
各第2反応室12に異なる試薬を固定する場合、1種類の検体(試料)に対して複数の処理を施すことができる。
また、反応を行うための試薬の一部を各第2反応室12に固定し、残りの試薬はサンプル液と一緒に導入するようにしてもよい。
同様に、第1反応室10において第1反応を起こすために使用する試薬は第1反応室10に固定してもよいし、サンプル液と一緒に導入してもよい。
この場合、回転による遠心力の作用により適量の液体試薬が液面を平坦な状態で残存するようにして、これを乾燥させることで、第1反応室10、第2反応室12に層厚が一定の試薬を固定することができる。
例えば、チップ本体2の第1反応室10、第2反応室12に配置した試薬上に、溶融した熱溶融性物質を滴下することで、試薬を覆うように熱溶融性物質を配置する。熱溶融製物質が固化すると、試薬が固定される。
例えば、PCR(polymerase chain reaction、ポリメラーゼ連鎖反応)などの生化学反応を行う場合、生化学反応専用のワックスを利用することができる。
また、例えば、パラフィンワックスを使用することができる。この場合、溶融温度を変えるため、融点の異なる複数のワックスを混合して使用することもできる。
樹脂コーティング層を設ける場合は、熱伝導率の高い部材の方に樹脂コーティング層を設けて溶融接着することが好ましい。例えば、貼り合わせる部材が金属材料を含む部材と樹脂材料からなる部材であれば、金属材料を含む部材に樹脂コーティング層を設けることが好ましい。
樹脂コーティング層の材料としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂等の合成樹脂の例を挙げることができる。
アンカー層には、例えば、レーザ波長光を吸収するカーボンブラック(光吸収性材料)が練り込まれており、レーザ光を照射することにより発熱して樹脂コーティング層を溶融接着することができる。
あるいは、アンカー層にカーボンブラックを添加することに代えて、樹脂コーティング層にカーボンブラックを添加したり、樹脂コーティング層の表面を黒色に塗装したりしてもよい。例えば波長900nm程度の赤外レーザ光を照射することによっても樹脂コーティング層を効率良く溶融することができる。
レーザ溶着は、熱溶着と異なり、チップ本体2を広範囲に加熱する必要がないことから、チップ本体2や、チップ本体2に固定されている試薬に、加熱による影響を与えずに基材の貼り合わせることができる。
本実施形態の試料分析チップ1は、例えば、DNA、たんぱく質等の試料において生化学物質の検出や分析に用いることができる。
試料分析チップ1によって、これらの検出や分析を行うには、サンプル液の蒸発やコンタミネーション(以下、コンタミ)を防止するために注入口3aから蓋溶液を流し込む。このとき、蓋溶液としては、例えば、ミネラルオイル、シリコンオイルの様な安定した物質であり、後述する第1反応を阻害せず、かつ比重がサンプル液よりも小さい溶液が好ましい。
検出機構あるいは測定機構は、生化学反応の検出、測定を行うことができれば、試料分析チップ1の周囲または表面のどこに配置されていてもよい。例えば、試料分析チップ1の下蓋4を介して各第2反応室12と対向する位置や、チップ本体2の側面などに配置することができる。
また検出機構あるいは測定機構を用いる際は、回転機構によって、試料分析チップ1の位置を回転させることにより、検出機構あるいは測定機構に対して、検出、測定を行う対象部位を移動して検出、測定を行うことが可能である。
これらの試料分析のための機構は、1つの装置にすべてが含まれていてもよいし、1以上の機構が、別の装置や別の器具で構成されていてもよい。
第1反応室10に、分析に必要な量のサンプル液が注入されたら、再度サンプル液の蒸発やコンタミを防止するための蓋溶液を、注入口3aから流し込む。
この熱処理を行うための加熱機構、加熱器具としては、例えば、カートリッジヒーター、電熱線、ペルチェ素子等を用いた機構、器具が挙げられる。
例えば、カートリッジヒーターによって、下蓋4を加熱することで、下蓋4が覆っている第1反応室10のサンプル液が熱処理される。これにより、第1反応室10内で、例えば、PCR反応のような熱処理を必要とする第1反応が起こる。
例えば、PCR反応では、試料のDNAが充分に増加したら、加熱を停止し、第1反応を終了させる。
このように、本実施形態における第1反応は、サンプル液の全体に対して行う生化学反応である。
本実施形態では、第1反応室10のサンプル液を、縦孔2cを経由して、第1表面2f側に上昇させ、計量室13の計量流路13b内に移動する。
この移動は、例えば、ピペットやシリンジ等を用いて、注入口3aから、空気、もしくはオイル等を注入することで、第1反応室10内のサンプル液を縦孔2cから押し上げることによって行う。
すなわち、注入口3aから、第1反応室10の容積に対応する空気、もしくはオイル等を注入していくことで、第1反応室10内のサンプル液を計量室13内に順次移動させることができる。
このとき、空気、もしくはオイル等を注入する圧力は、サンプル液が分岐路13Fに流入しない圧力で行う。すなわち、分岐路13F、移送路2k、第2反応室12、分岐路2m、および余剰液体収容室14の空間(以下、「計量流路側方空間」と称する)に保持された空気圧とサンプル液の表面張力とに由来する抵抗圧力を上回る圧力にならないようにする。
このため、例えば、通気孔3bの大きさを適宜の大きさに設定するなどして、計量室13の排出用流路における排出流体の抵抗が、上記抵抗圧力より充分に低くなるようにしておく。
サンプル液の導入前に計量流路13b内に存在した流体は、サンプル液によって、順次計量流路13b側に押し出され、排出用流路を通じて、通気路11に移動し、通気孔3bから外部に排出される。
このようにして、第1反応室10のサンプル液を必要量だけ計量室13に移動したら、空気、もしくはオイル等の注入を終了する。
試料分析チップ1の回転は、試料分析チップ1を保持して、注入口3aの中心軸線回りに、試料分析チップ1を回転する回転機構を有する遠心装置等を用いて行うことができる。
回転機構の回転速度としては、計量流路13bにおけるサンプル液に作用する遠心力が、計量流路側方空間の空気圧とサンプル液自身の表面張力とを上回って、少なくとも第2反応室12に流入する回転速度が必要である。
このような回転速度は、流路構造の形状や寸法にもよるが、例えば、計量流路13bの平均半径が、15mmの場合には、1000rpm程度以上であれば、充分な遠心力が得られる。
各内周側屈曲流路13Dを満たすサンプル液は、円C3に接する内周側屈曲流路13Dの屈曲の頂部を境として、隣接する第1直線流路13Aおよび内周側屈曲流路13Dのいずれかに分かれて径方向外側に移動する。
このため、分岐路13Fには、分岐路13Fと連通された第1直線流路13A、外周側屈曲流路13B、および第2直線流路13CからなるU字状の空間の範囲のサンプル液が流れ込む。これにより、サンプル液がこのU字状の空間の容積に応じて量り取られた状態で、第2反応室12に向かう。
移送路2kは、分岐路2mに分岐しているが、遠心力は、径方向に沿って作用するため、サンプル液は、周方向に沿う分岐路2mに流入することなく、移送路2k内を進んで第2反応室12に移動する。
第2反応室12の容積を上回るサンプル液が流入しようとすると、第2反応室12から溢れたサンプル液が、分岐路2mに分岐して、余剰液体収容室14に移動する。
このため、第2反応室12の容積に等しいサンプル液が第2反応室12に残る。
これにより、本実施形態では、計量流路13bの各U字状の空間で量り取られたサンプル液の体積にバラツキが生じたとしても、余剰のサンプル液を余剰液体収容室14に排出することで、第2反応室12の容積に応じてより正確に計量を行うことができる。
このようにして、計量流路13bのサンプル液がすべて計量流路側方空間に移動したら、試料分析チップ1の回転を停止する。
すなわち、各第2反応室12に配置された試薬と送液されたサンプル液とが混合することでそれぞれの試薬に応じた第2反応が行われる。
第2反応の反応状態は、第2反応の種類に応じた検出機構あるいは測定機構によって、反応を検出、測定することができる。例えば、蛍光検出等の手法によって反応を検出することができる。
これにより、検出あるいは測定された反応状態に基づいてサンプルを分析することができる。
その際、第1反応室10と第2反応室12との間に計量室13を有し、計量室13に移動されたサンプル液を、遠心力を利用して計量することができる。このため、計量されたサンプル液をただちに第2反応室12に移動して第2反応を行うことができるため、反応を行うサンプル液量のムラを低減され、高精度かつ迅速な試料分析を行うことができる。
また、本実施形態では、第1反応室10、第2反応室12は第2表面2g側に、計量室13は第1表面2f側にそれぞれチップ本体2の厚さ方向に離間して配置されており、第1反応室10と計量室13とは、チップ本体2の板厚方向において一部が重なっている。
このため、省スペースが可能となり、サンプル液の収容量に比べて、試料分析チップ1の外径を低減したコンパクトな構成が可能である。
このため、第2反応室12において加熱反応時や化学反応時に生じる気泡を第2反応室12から上方に向けて逃がし易くしたり、蒸発、コンタミ防止用に送液されるオイル等の蓋溶液と反応液とを、板厚方向において分離し易くしたりすることが可能である。
すなわち、第1反応室10、計量室13、および第2反応室12の流路よりも遠心軸の中心点に近い位置に外気との開放口である注入口3a、通気孔3bが存在する。このため、試料分析チップ1が遠心回転された場合に、オイルやサンプル液の流路内から注入口3a、通気孔3bへの逆流を防ぎ、また余剰空気や気泡を基材から抜け易くすることができる。
例えば、1種類の検体に対して全体への処理と分割した状態への処理を段階的に施すことが出来るため、サンプル液に含まれる貴重なDNA試料の増幅・保存・測定等を最初に行って後に計量室によって分配したサンプル液に異なる処理を行うこともできる。
また、試料分析チップ1によれば、サンプル液に対して第1段階目の処理(第1反応)を行う際に、蒸発やコンタミを防止する事が出来る蓋代わりとなる溶液を入れることができる。この場合、蓋溶液の比重をサンプル液の比重より軽くなるように溶液を調整すれば、第1反応を実施した後、遠心力を作用させると、比重差により、下層にサンプル液、上層に蓋溶液が分離する。この結果、第2反応以降でも蓋溶液が蓋の役割をし続け、サンプル液同士のコンタミや蒸発を防ぐことができる。
遺伝子解析における試料分析の一例としては、例えば体細胞変異の検出や、生殖細胞変異の検出が挙げられる。遺伝子型の違いによって、発現するタンパク質の種類等が異なるため、例えば薬の代謝酵素の働きの違いを生み、結果として薬の最適投与量や副作用の出やすさ等に個人差が生じる。この事を医療現場で利用し、各患者の「遺伝子型」を調べる事で、オーダーメイド医療を行うことが出来る。
ヒトゲノムの中には、その約0.1%に個人特有の塩基配列の違いが存在し、SNP(Single Nucleotide Polymorphism)と呼ばれおり、生殖細胞変異のひとつである。SNPの特定方法の一つとして、例えば蛍光を用いたPCR‐PHFA(PCR−Preferential Homoduplex Formation Assay)法が利用されている。PCR‐PHFA法は検出変異部位を増幅するPCR工程と、増幅断片と対応プローブによる競合的鎖置換反応工程から成り立っている。
当該方法によれば、第2反応においては、蛍光試薬の発光差によって変異を検出するが、本実施形態の試料分析チップ1を用いることで、各第2反応室12の配液バラツキが少ないため、正確なSNPs検出を行うことが出来る。
また上記以外のSNP検出方法としてインベーダー(登録商標)法、Taqman PCR法等についても同様に本実施形態の試料分析チップ1を用いることが可能である。
なお、ワルファリンに関与するSNPの検出にはVKORC1やCYP2C9内のSNPが議論されることが多く、CYP2C9*2やCYP2C9*3などが有名である。検体からこれらのSNPを含む遺伝子断片をマルチプレックスPCRにて増幅する。
一つのSNPに対し2つの第2反応室12のうち一つのみ陽性反応ならばホモ、二つ陽性ならヘテロと判定することができる。
上がん細胞に特徴的な変異、また分子標的薬に抵抗性を示す変異はそのほとんどが体細胞変異である。生殖細胞変異(SNPなど)の場合、どの細胞でも共通の変異が見られるのに対し、体細胞変異では変異を起こした細胞でのみ変異がみられ、変異を起こしていない細胞(通常は正常細胞)では変異は見られない。
本発明の第2の実施形態の試料分析チップについて説明する。
図12(a)、(b)は、本発明の第2の実施形態の試料分析チップの構成を示す模式的な平面図および正面図である。図13は、図12におけるD視図である。図14は、本発明の第2の実施形態の試料分析チップに用いる基材の模式的な裏面図である。図15は、本発明の第2の実施形態の試料分析チップに用いる基材の模式的な平面図である。図16は、本発明の第2の実施形態の試料分析チップの通気孔における模式的な断面図である。図17は、図12(a)におけるE−E断面図である。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
チップ本体22は、その表面および内部に形成された流路構造のみがチップ本体2と異なる。
図14に示すように、チップ本体22の第2表面2gにおける流路構造は、上記第1の実施形態の通気路11、余剰液体収容室14が削除され、上記第1の実施形態の第1反応室10、第2反応室12に代えて、第1反応室30、第2反応室32を備える。
図15に示すように、チップ本体22の第1表面2f上には、上記第1の実施形態の計量室13に代えて、計量室33を備える。
また、チップ本体22の板厚方向に貫通する流路としては、上記第1の実施形態の縦孔2bが削除され、試料混合室34が追加されている。
第1反応室30が配置される円環状の領域は、注入孔2aを中心とする仮想的な同心円である円C11と、円C11よりも大径の円C12とで挟まれた領域である。円C11は、上記第1の実施形態の円C1と略同様であるが、円C12は、上記第1の実施形態の円C2よりは大径である。
以下では、円C11は、第1反応室30が形成された領域の内接円になっており、円C12は、第1反応室30が形成された領域の外接円になっているものとする。
屈曲流路30Aは、その中心軸線が、円C11、C12の直径上に整列する線対称な形状を有する。このため、各屈曲流路30Aの2つの直線状の流路は、中心軸線O30に対して異なる方向に傾斜している。
第1反応室30の終端部30bの径方向内側の端部は、始端部30aと終端部30bとの間に配置された試料混合室34の端部34aと、円C11の近傍で連通されている。
第1反応室30の溝深さは、図5に示すように、上記第1の実施形態と同様のh10である。
また、第1反応室30の溝幅は、部位によって異なる溝幅も可能であるが、本実施形態では、一例として、すべて同一の溝幅にしている。
各第2反応室32の構造はいずれも共通であり、平面視の形状が円形の溝部である。
本実施形態では、移送路22kは、第2反応室32と円C12との間に形成された縦孔2eから円12の径方向に沿って延ばされている。
第2反応室32、移送路22kの溝深さは、それぞれ適宜設定することができるが、本実施形態では、一例として、上記第1の実施形態における第2反応室12、移送路2kと同様の深さh12、h2kとしている。
計量室33の溝深さは、上記第1の実施形態の計量室13と同様、いずれも深さh13で一定である。
計量流路33bが配置される円環状の領域は、注入孔2aを中心とする仮想的な同心円である円C13と、円C13よりも大径の円C14とで挟まれた領域である。円C13、C14は、それぞれ円C11、C12と同径である。
以下では、円C13は、計量流路33bが形成された領域の内接円になっており、円C14は、計量流路33bが形成された領域の外接円になっているものとする。
計量流路33bの終端部33cは、図16に示すように、第1表面2f上で上蓋3の通気孔3bの直下の位置まで延ばされた通気路35と連通されている。
このため、図15に示すように、計量流路33bは、円C13、C14で挟まれた円環状の領域にて、始端部33aから図示時計回りに略一周して、終端部33cに到る流路を形成している。
このような配置により計量流路33bは、その一部が第1反応室30と、チップ本体22の板厚方向において重なる領域に位置する。
なお、計量流路33bの始端部13aは、第1直線流路33Aであり、終端部33cは内周側屈曲流路33Dである。
第1直線流路33A、外周側屈曲流路33B、および第2直線流路33Cに貯留されたサンプル液は、まとまって一つの第2反応室32に移動されるため、これらの容積は、サンプル液の計量量に応じて適宜設定する。
第1直線流路33Aと第2直線流路33Cとは、外周側屈曲流路33Bの屈曲中心と注入孔2aの中心とを通る中心軸線O33に関して線対称であり、中心軸線O33とのなす角度は、それぞれφである。角度φは、0°以上60°以下であることが好ましい。
外周側屈曲流路33Bは、第1直線流路33Aと第2直線流路33Cとを滑らかにつなぐ円弧状の流路である。
外周側屈曲流路13Bは、径方向の最外周部において、溝幅が最大になっている。
分岐路33Fの溝幅は、例えば、移送路22kと同程度の溝幅とすることが好ましい。
図11に示すように、各分岐路33Fの延出方向の端部は、移送路22kが接続された縦孔2eと連通されている。
縦孔2eを介して連通された分岐路33Fと移送路22kとは、互いの延在方向が異なっていてもよいが、本実施形態では、一例として、径方向に沿う同一の延在方向を採用している。このため、分岐路33Fと移送路22kとは、平面視で径方向に沿う同一直線状に整列している。
図17に示すように、試料混合室34の端部34aには、第2表面2gにおいて第1反応室30の終端部30bが接続されている。試料混合室34の端部34bには、第1表面2fにおいて計量室33の始端部33aが接続されている。
試料混合室34は、第1反応室30と計量室33との間のバッファ空間として設けられている。このため、試料混合室34の容積は、少なくとも、第1反応室30に貯留されたサンプル液をすべて貯留できる大きさとする。
このような試料混合室34を設けることにより、第1反応室30から送液されたサンプル液を計量室33に送液する前に、試料混合室34に導入されると、終端部30bよりも格段に広い試料混合室34内の空間で、順次送液されるサンプル液が混ざり合う。
これにより、第1反応室30内の第1反応にムラが生じていたとしても、試料混合室34にサンプル液を貯留することでサンプル液の混合が促進されるため、サンプル液の均一化が可能である。
例えば、注入口3aから流体を注入していくと、流体は、注入孔2aを通って第2表面2g側に下降し、導入路2hを経由して、第1反応室30の始端部30aに入り、第1反応室30の中間部を経て、終端部30bに達する。
終端部30bに達した流体は、試料混合室34に導入され、流体の量が試料混合室34を超えると、試料混合室34から溢れて、計量室33の始端部13aに達する。
各分岐路33Fに続く流路は、縦孔2eを通って第2表面2g側に下降し、移送路22kを通って第2反応室32に向かう流路である。
第2反応室32には、外部に連通する流路が接続されていないため、未使用の状態では、空気が閉じ込められている。このため、流体を分岐路33Fから移送路22kに移動するには、少なくともこの空気圧に抵抗する相応の外力を流体に作用させる必要がある。
すなわち、試料分析チップ21によれば、板状部の第1表面と第2表面と分けて、第1反応室、計量室、および第2反応室を備えるため、分析対象のサンプル液の送液、計量が容易であり、コンパクトな構成であっても複数種類の生化学反応を行うことができる。
本発明の第3の実施形態の試料分析チップについて説明する。
図18は、本発明の第3の実施形態の試料分析チップの構成を示す模式的な正面図である。図19は、図18におけるF視図である。図20は、本発明の第3の実施形態の試料分析チップの模式的な分解斜視図である。図21(a)、(b)は、本発明の第3の実施形態の試料分析チップに用いる基材の模式的な平面図および裏面図である。図22は、図21(a)におけるG−G断面図である。
また、流路構造に関しては、外形の変更に応じて流路構造の一部が変更されている点と、同様の流路構造に関しても平面視の形状が、上記第1の実施形態の形状と、鏡像の関係にある点とが異なる。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。特に、上記第1の実施形態の流路構造と鏡像の関係にある点のみが異なる流路構造は、上記第1の実施形態の符号に、「’」をつけて表し、詳細の形状の説明を省略する。また、このような鏡像の関係にある流路構造に連通する上記第1の実施形態と同様の形状を有する流路構造は、上記第1の実施形態と同様の符号を付して説明を省略する。
平板部52の第1表面2fにおいては、外周部に、第1表面2fから突出された円筒状の側壁部51が形成され、中心部に、第1表面2fから突出された円錐台状の凸部である分注器具保持台部54が形成されている。
分注器具保持台部54の円錐台状の外形の中心軸線O54は、側壁部51の内周面51aの中心軸線と同軸になっている。
また、平板部52の第1表面2fにおいて、内周面51aと分注器具保持台部54との間には、中心軸線O54を中心とする円環状の領域に、上記第1の実施形態の計量室13と鏡像の関係にある計量室13’およびこれに連通する上記第1の実施形態と同様の流路構造が形成されている。
つば部53には、チップ本体42の保持、位置決め、位置検出などに用いることが可能であり、このために、適宜の切り欠き、貫通孔、凹部、凸部、着色面、粗面などを形成することが可能である。
本実施形態では、図21(a)、(b)に示すように、一例として、つば部53の周方向を3等分する位置に外周側から半円状に切り欠かれた円弧状切り欠き部53aが形成されている。また、2箇所の円弧状切り欠き部53aの間に、チップ本体42の周方向の位置を検知するための外周側から矩形状に切り欠かれた矩形状切り欠き部53bが形成されている。
また、つば部53と側壁部51の外周面との間には、周方向を三等分する三箇所にリブ53cが設けられている。
分注器具保持台部54の中心部には、上記第1の実施形態の注入孔2aと同様にサンプル液を注入するための注入孔54A(サンプル注入口)が貫通して設けられている。
注入孔54Aは、上面部54b側から第2表面2gに向って、第1テーパ部54d(テーパ孔部)と、第2テーパ部54e(テーパ孔部)とがこの順に形成されている。
第2テーパ部54eは、第1テーパ部54dの第2表面2g側の端部に接続され、第2表面2g側に向かうにつれて、第1テーパ部54dよりも小さいテーパ角で縮径するテーパ状の孔部である。
例えば、試料分析チップ41へのサンプル液またはその他の流体の注入に用いる図示略の分注器具の先端部を安定して保持しやすい適宜形状を採用することができる。
また、分注器具の挿入量も必要に応じて設定する。注入孔54Aにおいて、分注器具の挿入位置よりも移送路2k側は、注入される流体の流路を構成する。
本実施形態では、上面部54bの第1表面2fからの高さは、注入孔54Aの長さを充分に確保できるように、つば部53の高さを上回る高さとしている。
第2テーパ部54eは、少なくとも第1テーパ部54d側の一部については、分注器具の側面に密着して保持できるように、分注器具の先端部の外形状に合わせることが好ましい。
第1テーパ部54dは、分注器具を挿入しやすいように、分注器具の先端部の外形よりも充分大きく開口する形状としたり、分注器具の側面が係止、あるいは密着できる形状としたりすることが可能である。
第2テーパ部54eおよび第1テーパ部54dのいずれかの形状を、分注器具の側面に密着する形状とする場合、分注器具によって注入する流体の外部への漏れを防止することができる。
また、第2テーパ部54eは、チップ本体42の第2表面2gにおいて、中心軸線O54から径方向に沿って形成された上記第1の実施形態と同様の導入路2hと連通されている。
余剰液体収容室54fは、注入孔54Aを囲う範囲および導入路2hの裏側に、上面部54bの裏面から延びる壁状部54gが形成されている点を除けば、第2表面2gから略円錐台状にくりぬかれた形状を有する凹所になっている。
図22に示すように、注入孔54Aの近傍には、上面部54bを貫通して余剰液体収容室54fと連通する孔部からなる通気孔54cが形成されている。
突条部55は、後述する下蓋44の外周部を位置決めできる適宜形状を採用することができる。例えば、平面視形状が円形でもよいし、円弧状のものが複数設けられていてもよい。本実施形態では、一例として、径方向に対向する2箇所で離間された、略半円状のものが一対設けられている。
また、導入路2hの側方には、上記第1の実施形態の通気路11と鏡像の関係にある通気路11’が形成されている。通気路11’において、第2表面2gにおける外周寄りの端部は、平板部52に貫通して終端部13c’に連通する縦孔2dと連通している。
通気路11’の第2表面2gにおける内周寄りの端部は、上記第1の実施形態とは異なり、余剰液体収容室54fに連通している。
上蓋43の外周部43bの外径は、側壁部51の内周面51aよりも小径とされている。上蓋43の中心に貫通された孔部43aは、分注器具保持台部54よりも大径の円孔である。
上蓋43は、上記第1の実施形態の上蓋3と同様にして第1表面2fに貼り付けられている。
このように、上蓋43を円環状に形成して、分注器具保持台部54が孔部43aを貫通する構造とすることにより、上蓋43に上記第1の実施形態のような注入孔2a、縦孔2bを省略できるため、各孔位置を合わせることなく容易に第1表面2fに貼り付けることができる。
下蓋44の外周部44bの外径は、突条部55の内側に挿入可能な内径を有する。
下蓋44は、上記第1の実施形態の下蓋4と同様にして第1表面2fに貼り付けられている。
このため、第1テーパ部54dおよび第2テーパ部54eの形状を、分注器具が安定して保持できる形状に形成しておくことで、分注が容易となり、流体の漏れ、空気漏れなどを抑制することができる。
特に、本実施形態では、分注器具保持台部54が、上面部54bの外周部を径方向外方に向かって傾斜するテーパ面54aによって支持された円錐台状の形状を有するため、頑強な支持構造が得られる。
例えば、注入孔54Aに挿入された図示略の分注器具から流体を注入すると、流体は、導入路2hを経由して、第1反応室10’の始端部10a’に入り、第1反応室10の中間部を経て、終端部10b’に達する。その際、第1反応室10’は上記第1の実施形態の第1反応室10と鏡像の関係にあるため、流体の移動方向が鏡像になっている点のみが上記第1の実施形態と異なる。
終端部10b’に達した流体は、縦孔2cを上昇して、計量室13’の始端部13a’に達する。
計量室13’の内部では、計量室13’が上記第1の実施形態の計量室13と鏡像の関係にあるため、流体の移動方向が鏡像になっている点のみが上記第1の実施形態と異なる。
このため、終端部13c’に達した流体は、さらに圧力が加わると、通気路11’を通して、余剰液体収容室54fに排出される。
余剰液体収容室54fに排出された空気は、通気孔54cを通して、分注器具保持台部54の上方に排出される。
また、余剰液体収容室54fには、余剰のサンプル液等の液体を排出することも可能である。この場合、余剰液体収容室54f内に排出されたサンプル液等の液体は、余剰液体収容室54fの容積を限度として、余剰液体収容室54f内に貯留される。
このため、予め、余剰液体収容室54fの容積を排出すべき液体の体積以上にしておくことで、余剰の液体をすべて貯留することが可能である。
このように、余剰液体収容室54fには、計量室13’から排出される液体が下方から貯留されていくため、通気孔54cの詰まりを防ぎ、かつ液体が外部に漏れ出しにくい構成になっている。
このため、分注器具保持台部54の突出量や外径を適宜の大きさに設定することで、試料分析チップ41の外径を拡張することなく、余剰液体収容室54fの容積を種々の大きさに形成することができる。
これにより、試料分析装置への取り付け形状を試料分析チップ41の外周部に設けることで、分析に用いるサンプル液や薬液が異なり、排出量も異なる場合であっても、試料分析チップ41の外径を共通化することが容易となる。
このため、上記第1の実施形態と同様に、第1反応室10’、計量室13’、および第2反応室12’の流路よりも遠心軸の中心点に近しい位置に外気との開放口である注入口3a、通気孔3bが存在する。このため、試料分析チップ41が遠心回転された場合に、オイルやサンプル液の流路内から注入口3a、通気孔3bへの逆流を防ぎ、また余剰空気や気泡を基材から抜け易くすることができる。
すなわち、試料分析チップ41によれば、板状部の第1表面と第2表面と分けて、第1反応室、計量室、および第2反応室を備えるため、分析対象のサンプル液の送液、計量が容易であり、コンパクトな構成であっても複数種類の生化学反応を行うことができる。
例えば、第1表面に第1反応室を、第2表面に計量室および第2反応室を形成することが可能である。また、第1表面に第2反応室を、第2表面に第1反応室および計量室を形成することが可能である。
また、蓋材に関しても、平面視形状が、円形または円環形であることは必須ではない。例えば、板状部の形状と同一あるいは相似の形状が可能である。
また、蓋材は、第1表面または第2表面に形成された溝部や孔部などからなる流路構造を覆うことができる形状であれば、板状部の形状とは無関係な形状も可能である。
しかし、余剰液体収容室は、第1反応室から溢れた余剰の流体を貯留するようにしてもよい。
例えば、基材を樹脂材料と金属材料との複合材料で構成すれば、金属材料からなる部位と樹脂材料からなる部位との熱伝導率が異なるため、基材の部位ごとに温度特性を変えることが可能である。例えば、放熱や加熱を行う部位には、金属材料を採用し、温度変化を低減したり、断熱したりすることが好ましい部位に樹脂材料を採用することが可能である。
材質が異なる部位は、板状部内に設けてもよいし、板状部と板状部以外の部位とで材質を変えてもよい。
例えば、上記第3の実施形態のチップ本体42において、側壁部51、つば部53、および分注器具保持台部54のうちの1以上の部位と、平板部52の部位との材質を変えた構成が可能である。
また、材質の選択は、強度や剛性などの相違に基づいて行うことも可能である。
例えば、第1の実施形態に例示したすべての試料分析においては、上記第2、第3の実施形態の試料分析チップを使用することが可能である。
例えば、上記第1および第3の実施形態において、上記第2の実施形態同様、余剰液体収容室14、分岐路2mを削除した構成が可能である。
2、22 チップ本体(板状部、基材)
2a 注入孔
2b、2c、2d、2e 縦孔
2f 第1表面
2g 第2表面
2k、2k’、22k 移送路
3、43 上蓋(蓋材)
3a 注入口(サンプル注入口)
3b、54c 通気孔
4、24、44 下蓋(蓋材)
10、10’、30 第1反応室
10a、10a’、30a 始端部
10b、10b’、30b 終端部
11、11’、35 通気路
12、12’、32 第2反応室
13、13’、33 計量室
13F、33F 分岐路
13a、13a’、33a 始端部
13b、33b 計量流路
13c、13c’、33c 終端部
14、14’ 余剰液体収容室
34 試料混合室
42 チップ本体(基材)
52 平板部(板状部)
54 分注器具保持台部(凸部)
54a テーパ面
54A 注入孔(サンプル注入口)
54d 第1テーパ部(テーパ孔部)
54e 第2テーパ部(テーパ孔部)
54f 余剰液体収容室
Claims (15)
- 生化学分析の分析対象のサンプル液を注入し、該サンプル液に対して第1反応および第2反応を行うために用いる試料分析チップであって、
第1表面と第2表面とに挟まれた板状部を有する基材と、
前記サンプル液を貯留し、該サンプル液の全体に対して前記第1反応を生じさせるため前記板状部に形成された第1反応室と、
該第1反応室と連通され、前記第1反応が生じた前記サンプル液を量り取るため複数の分岐路を有し、前記板状部に形成された計量室と、
前記分岐路に連通され、該分岐路を通して移動された前記サンプル液に対して個別に前記第2反応を生じさせるために前記板状部に形成された複数の第2反応室と、
を備え、
前記第1反応室、前記計量室、および前記第2反応室のうち、いずれか一つが前記第1表面に、その他が前記第2表面に、形成されている、
試料分析チップ。 - 前記第1反応室、前記計量室、および前記第2反応室のうち、前記第1表面に形成されたものと、前記第2表面に形成されたものとは、少なくとも一部が前記板状部の板厚方向において重なり合うように配置されている
ことを特徴とする、請求項1に記載の試料分析チップ。 - 前記計量室は、前記第1表面に形成され、
前記第1反応室は、前記第2表面に形成されている
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の試料分析チップ。 - 前記複数の第2反応室は、前記第2表面に形成されている
ことを特徴とする、請求項3に記載の試料分析チップ。 - 前記計量室の前記複数の分岐路は、前記板状部の板厚方向に延びる複数の縦孔によって、前記複数の第2反応室とそれぞれ一対一に連通されている
ことを特徴とする、請求項4に記載の試料分析チップ。 - 前記第1反応室は、
円環状の領域内でその周方向に対して蛇行する細長い溝部を備える
ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の試料分析チップ。 - 前記第1反応室および前記計量室と連通され、前記第1反応室から送液された前記サンプル液を前記計量室に送液する前に貯留して、該サンプル液の成分のムラを低減するための試料混合室を備える
ことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の試料分析チップ。 - 前記第1反応室、前記計量室、および前記第2反応室に取り囲まれた中心領域を有し、
該中心領域に、前記サンプル液を前記第1反応室に送液するためのサンプル注入口と、
前記第1反応室、前記計量室、および前記第2反応室のうちのいずれかから溢れた余剰の液体を収容する余剰液体収容室と、
が設けられた
ことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の試料分析チップ。 - 前記中心領域において前記板状部から突出して形成され、突出方向に沿って縮径する円錐台状の外形を有する凸部を備え、
該凸部の中心部に、前記凸部の突出方向と反対側に縮径し、分注器具が支持可能とされたテーパ孔部を有する前記サンプル注入口が設けられ、
前記凸部の突出方向と反対側の前記凸部内に形成された凹所によって、前記余剰液体収容室が形成されている
ことを特徴とする、請求項8に記載の試料分析チップ。 - 前記余剰液体収容室は、外部に開口する通気路を備える
ことを特徴とする、請求項8または9に記載の試料分析チップ。 - 前記第1反応室、前記計量室、および前記第2反応室をそれぞれ覆うように、前記板状部の表面に貼り付けられた複数の蓋材を備える
ことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の試料分析チップ。 - 前記複数の蓋材は、
金属製のシート状部材からなる金属蓋材を含む
ことを特徴とする、請求項11に記載の試料分析チップ。 - 前記複数の蓋材は、
金属と樹脂フィルムとの複合材料からなる複合蓋材を含む
ことを特徴とする、請求項11または12に記載の試料分析チップ。 - 金属シートと樹脂フィルムとの間に光吸収性材料を挟んだ状態で、前記金属シートと前記樹脂フィルムとを接合して形成された
ことを特徴とする、請求項13に記載の試料分析チップ。 - 前記板状部は、樹脂材料によって形成されている
ことを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載の試料分析チップ。
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