JP6596768B2 - 血液性状検査用マイクロチップおよび血液性状検査用装置 - Google Patents
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Description
内部に血液試料を流すための第一と第二の流路を有する血液性状検査用マイクロチップであって、第一の流路は、コラーゲンと組織トロンボプラスチンが塗布された第一反応部を有し、第二の流路は、コラーゲンが塗布され、第一反応部と同等またはそれ以下の量の組織トロンボプラスチンが塗布されるか、組織トロンボプラスチンが塗布されない第二反応部を有する、血液性状検査用マイクロチップを提供する。なお、組織トロンボプラスチンは組織因子を含む組織からの抽出成分であることから、組織トロンボプラスチンの代わりに、同等の凝固活性を有する精製された組織因子を塗布することも可能である。
ここで、第一反応部では、コラーゲンと、コラーゲンに対して1重量%以上の組織トロンボプラスチンとの混合溶液が塗布されており、第二反応部では、コラーゲンと、コラーゲンに対する重量比が第一の反応部と同等又はそれ以下の組織トロンボプラスチンとの混合溶液が塗布されていることが好ましい。
また、血液性状検査用マイクロチップにおいては、第一反応部および第二反応部には、血液の流れる方向に沿って流路分割壁が設置されていることが好ましい。
また、血液性状検査用マイクロチップは、第一反応部および第二反応部の下流側にそれぞれ廃液貯留部を有することが好ましい。この廃液貯留部は、抗凝固剤を含んだ吸収材を有することが好ましい。
本発明はまた、上記血液性状検査用マイクロチップと、血液性状検査用マイクロチップの第一の流路および第二の流路へ血液を導入するための第一の血液収容容器および第二の血液収容容器とを含む、血液性状検査用装置を提供する。
ここで、該第一の血液収容容器および第二の血液収容容器は一体成型されていることが好ましい。
また、血液性状検査用装置は、第一の血液収容容器に連結されて第一の血液収容容器から第一の流路に血液試料を流入させるための第一のポンプと、該ポンプにかかる圧力を測定するための第一の圧力センサー、ならびに第二の血液収容容器に連結されて第二の血液収容容器から第二の流路に血液試料を流入させるための第二のポンプと、該ポンプにかかる圧力を測定するための第二の圧力センサーを含むことが好ましい。
本発明はまた、前記血液性状検査用装置を用い、第一と第二の流路に血液試料を流して血液の血栓形成能および血小板機能を解析し、一次止血能と二次止血能の比を測定することを特徴とする、血液性状測定方法を提供する。
第一の反応部がコラーゲンと組織トロンボプラスチンがコートされており、フィブリンと血小板からなる血栓形成がなされ、第二の反応部がコラーゲンのみがコートされ血小板特異的な血栓が形成される場合は、第一の流路、第二の流路の流速は同程度でも、血栓の組成の違いが明確であり、第一の反応部、第二の反応部における血栓形成の対比によって、一次止血能と二次止血能の評価解析が可能である。その場合には、第一の反応部、第二の反応部における血液の壁ズリ速度は、ともに1000〜3000 s-1の範囲である事が望ましい。
一方、第一の反応部、第二の反応部ともにコラーゲンと組織トロンボプラスチンがコートされている場合には、両反応部において血小板とフィブリンよりなる混合血栓が形成される。よって第一の反応部よりも第二の反応部の壁ズリ速度を大きく(流速を速く)することで、第二の反応部ではより血小板を多く含む、一次止血能に依存した血栓が形成され、第一の反応部ではフィブリンを多く含み血液凝固反応系が相対的に優位な血栓が形成され、両者の血栓組成が、大きく異なるため、両者の比をとることで一次止血と二次止血能の評価が可能となる。
その場合には両反応部の壁ズリ速度は300 s-1〜3000 s-1の間であり、第一の反応部における壁ズリ速度が1200 s-1未満であり、第二の反応部における壁ズリ速度が1200 s-1以上であることが好ましく、第一に比べ第二の反応部の壁ズリ速度は、1.5倍以上、さらに好ましくは2倍以上であることが望ましい。
また、前記血液試料は、XII因子阻害剤と、血漿カリクレイン阻害剤、低分子へパリン、ヘパラン硫酸および合成ペンタサッカライドから選択される抗凝固剤とで処理された血液試料であることが好ましい。
さらに、本発明では第一の流路と第二の流路に同等量のコラーゲンと組織トロンボプラスチンがコートされており、第一の流路には血液試料を、第二の流路には該血液試料に、P2Y12阻害剤、PCC(プロトロンビンコンプレックス)、VWF(von Willebrand factor)、等の試薬(抗血小板薬または止血用血液製剤)を添加した試料を加え、第一と第二の流路の血栓形成能を対比することで、血液試料の血栓形成能の亢進または欠如の原因を解析する事が可能となる。
組織トロンボプラスチンを含まず、コラーゲンのみをコートした第2反応部を用いた場合には、血液凝固系の影響を殆ど受けない、より血小板凝集特異的な血栓が形成される。
この血小板凝集特異的な血栓はアスピリン、クロピドグレルといった抗血小板薬により効果的に抑制される。一方、アスピリン、クロピドグレルは、コラーゲンと組織トロンボプラスチンを反応部に用いた場合に形成されるフィブリンと血小板を主成分とする血栓に対しての抑制効果が低くなる為、両反応部に起こる血栓形成の比を解析することで、抗血小板薬の効きの程度 または 抗血小板剤の休薬による薬剤効果からの離脱による一次止血の回復の度合いを定量的に解析する事が可能である。
また、血液性状検査用マイクロチップが第一反応部および第二反応部の下流側にそれぞれ廃液貯留部を有するものであり、この廃液貯留部がクエン酸、EDTA、へパリン等の抗凝固剤溶液を含んだ吸収材を有することにより、廃液をマイクロチップ外に排出する手間が省け、かつ、廃液による測定結果への悪影響も防ぐことができる。
本発明のマイクロチップを含む血液性状検査用装置が、第一の血液収容容器に連結されて第一の血液収容容器から第一の流路に血液試料を流入させるための第一のポンプと、該ポンプにかかる圧力を測定するための第一の圧力センサー、ならびに第二の血液収容容器に連結されて第二の血液収容容器から第二の流路に血液試料を流入させるための第二のポンプと、該ポンプにかかる圧力を測定するための第二の圧力センサーを含むものであれば、フィブリンによる血液凝固と血小板凝集をそれぞれ定量的に測定できるので好ましい。
また、第一の血液収容容器および第二の血液収容容器が一体成型されていると、一度のオートピペットの操作で測定開始することが出来るので好ましい。
本発明の血液性状検査用装置を用いた血液性状測定方法においては、第一の流路における流速が1200 s-1未満であり、第二の流路における流速が1200 s-1以上であることが好ましく、第一に比べ第二の反応部の壁ズリ速度は、1.5倍以上、さらに好ましくは2倍以上であることがより好ましいが、このように、第2の流路のズリ速度を第一の流路に比べ高くすることで、第一の流路内に比べ、相対的に血小板優位な血栓が形成される為、両流路内の血栓形成能の比をとる事によって、血液試料の一次止血能と二次止血能の違いをより明確に解析する事が可能である。
また、血液試料が接触因子阻害剤と、低分子へパリン、ヘパラン硫酸および合成ペンタサッカライドから選択される抗凝固剤で処理された血液試料であることがのぞましい。低分子へパリン、ヘパラン硫酸、合成ペンタサッカライドは静置状態の血液のクロット形成を良く抑制する一方、血流下の血栓形成に対する抑制効果は低いので、接触因子阻害剤と混合することで、血液収容容器内での血液凝固が抑制されるのに対し、マイクロチップの流路内での血栓形成や血小板凝集は殆ど抑制されないので、より正確な反応部における血栓形成の測定が可能になり、好ましい。接触因子は血液凝固XII因子阻害剤が好ましい。
更に好ましくは、XII阻害剤と血漿カリクレイン阻害剤の両方と低分子へパリン、ヘパラン硫酸、合成ペンタサッカライドから選択される抗凝固剤の混合物を用いると、マイクロチップ内の血栓形成には影響を殆ど与えることなく、血液収容容器内での血液凝固は非常に強く抑制される。
採血管は、例えばクエン酸ナトリウムを含む採血管に、XII因子阻害剤と、血漿カリクレイン阻害剤、低分子へパリン、へパラン硫酸、合成ペンタサッカライドからなる抗凝固薬と塩化カルシウムを添加しクエン酸の抗凝固能を解除後に測定することも可能であるし、へパリンを含む採血管に、XII因子阻害剤とへパリナーゼを添加することも可能である。この場合にはへパリナーゼによってへパリンが低分子量のへパリンに分解され、XII因子阻害剤の効果との組合わせによって、リザーバー内における凝固を強く抑える。
ただし、第二の流路に組織トロンボプラスチンや組織トロンボプラスチンを含まず、血小板特異的な血栓形成を解析する場合には、ヒルジン、アルガトロバン等の抗トロン剤を用いることが可能である。その場合は、へパリン採血管で採血した後に、へパリナーゼと抗トロンビン剤を添加することで、簡便に抗トロンビン処理された、第二の流路の解析用の血液サンプルが調整できる。
さらに、本発明は第一の反応部と第二の反応部に同等量のコラーゲンと組織トロンボプラスチンがコートされた流路を用い、第一の流路には血液試料を、第二の流路には、該血液試料に、凝固因子などの止血用血液製剤、抗血小板薬等を添加し、第一と第二の反応部での血栓形成を対比することで、血液試料の血栓形成能の亢進または欠如の原因を解析する事が可能となる。
例えば、クロピドグレル内服患者の血液試料にAR-C66096等のP2Y12阻害剤を添加することで、血栓形成能の亢進とクロピドグレルによるP2Y12の阻害度合いの解析が可能となる。
また、止血機能の低下した血液試料にVWFやPCCを添加した場合には、止血機能の低下の原因にVWFや凝固因子レベルの低下が含まれるのかの解析が出来き、また、VWF、PCC製剤の投与によって止血機能が回復するのか、という治療効果の予測に役立つ。
例えば、VWD(von Willebrand病)患者の血液試料を第一の流路で解析しつつ、第二の流路でVWFを添加して解析することで、VWDに対する治療効果の予測が出来る。
図1は、本発明のマイクロチップの第1の形態例を示す概念図である。以下、図1に基づいて説明する。
そして、第一の溝および第二の溝には、第一の反応部102、第二の反応部112と重なる位置にそれぞれ後述する流路分割壁109,119が設けられている。
一方、廃液貯留部に該当する溝の深さは廃液を多く貯留するため流路に該当する溝の深さより深いことが好ましく、例えば、0.5〜10mmである。
空気穴105、115となる貫通孔の位置は、第1の基板1aと積層されたときに、それぞれ、第1の基板1aの廃液貯留部103,113に相当する溝の上部の一部に相当する位置となっている。
第二の流路111の下流側の一部と重なる位置のそれぞれに、コラーゲンと組織トロンボプラスチンまたは組織因子がコートされており、これらコート部位が第一の基板と積層されたときに第一の反応部102、第二の反応部112となる。
疎水性の樹脂等にコートする場合には、樹脂表面を親水化処理した後、所望の領域にコラーゲン溶液を塗布し、自然乾燥ないしは減圧下にて乾燥することでコーティングすることが出来る。
基材としてプラスチックを用いた場合は、表面を親水化処理し、所望の領域にコラーゲン溶液をピペットやシリンジ等のディスペンサーで塗布し、自然乾燥または減圧下で乾燥することでコラーゲンまたは組織トロンボプラスチンを含むコラーゲンを容易にコーティングすることが可能である。
流路分割壁の間隔は200μm以下であることが望ましい。また、流路分割部において、
流路の幅は流路分割壁によって5つ以上に分割されていることが望ましい。流路分割壁の形状は、流路の幅を複数に分割できさえすれば特に制限されない。また、特許文献4に記載されたように、流路分割壁は表面粗さ(Ra)が10〜200nmになるような処理が施されていてもよい。
このような流路分割壁を有するマイクロチップは、第一の基板の第一反応部及び第二反応部に相当する位置に複数の流路分割壁を設置し、第二の基板と積層することにより作成することができる。
その他の抗凝固処理剤としては、へパリン、ヒルジン、トロンビンアプタマー、コーン由来トリプシンインヒビター(1977.J.Biol.Chem 252.8105)等の利用が可能である。なお、抗凝固処理剤は、複数用いられてもよい。
。
血漿カリクレイン阻害剤、低分子へパリン、ヘパラン硫酸および合成ペンタサッカライドから選択される抗凝固剤に加えて、血液凝固XII因子阻害剤を添加することが特に好ま
しい。血液凝固XII因子阻害剤はより静置下の血液凝固を強く抑えることができる。さら
に血漿、好ましくはカリクレイン阻害剤を加えるとより強力に静置下の血栓形成を抑制する事が可能である。
図2は、マイクロチップ1を透明な基板で構成して組み込んだ本発明の血液性状検査装置の第1の形態例である血液性状検査装置Aの模式図である。以下、図2に基づいて第1の形態例を説明する。
この場合、血液試料はヒルジン又はベンジルスルホニル-D-Arg-Pro-4-アミジノベンジルアミド(BAPA)などのトロンビン阻害剤で抗凝固処理された血液試料であることが好ましい。
なお、評価試料が、コントロール(抗血小板薬、止血用血液製剤を加えない試料)も含めて三種類以上ある場合、複数のマイクロチップを使用することができ、その場合は、いずれか一つのマイクロチップの第一の流路にコントロールの血液試料を流せばよく、他のマイクロチップでは、二種類の評価試料(抗血小板薬または止血用血液製剤を加えた試料)を第一および第二の流路に流してもよい。
図1(A)に示す第1の基板1aおよび図1(B)に示す第2の基板1bの2枚の透明な基板(株式会社リッチェル製射出成型品)を用意した。 第1の基板1aにおいては、流路101,111の長さは20mm、深さは40μm、幅は2mmとし、廃液貯留部の長さは30mm、深さは1.3mm、幅は8.5mmとした。
また、基板1aには第一の流路および第二の流路の第一の反応部、第二の反応部に相当する位置に、高さ40μm、幅40μm、長さ1.5mmの分割壁を25本均等間隔で設置し、それぞれ流路分割壁109、119とした。
基板1bの第一の反応部102に相当する位置には3mg/mlのコラーゲンと0.4mg/mlの組織トロンボプラスチン溶液を1:1で混和した溶液を,第二の反応部112に相当する位置には、0.75 mg/mlのコラーゲン溶液のみを、それぞれ6mm×6 mmの領域に塗布した。
第1の基板1aと第二の基板1bとを、第1の基板1aの溝が開口する面と第2の基板1bのコラーゲンおよび組織トロンボプラスチン塗布面が内側になるように、シランカップリング剤及び60℃、3時間の熱圧着により貼り合せ、図1(C)に示すマイクロチップ1とした。
第一の流路には、クエン酸血液に終濃度12mM塩化カルシウムと50μg/mlのコーントリプシンインヒビター(CTI)を添加した血液を、第二の流路には、ヒルジン処理血液を添加し、図2の解析装置を用い第一の流路と第二の流路ともに、18μl/minの流速で10分間血液をかん流し、圧力を解析した。圧力波形を図3に示す。60 kPa以下の面積の積分値は、それぞれ457と372であった。
クエン酸血液およびヒルジン血液にそれぞれ、アスピリン10mMとP2Y12阻害剤であるAR-C66096(Tocris Bioscience社)を100μM添加した以外は実施例1同様の測定を行った。圧力波形を図3に示す。60kPa以下の面積の積分値は、それぞれ450、65であった。
クエン酸血液およびヒルジン血液にそれぞれ、abciximab を3μg/mlまたは OS-1(GPIb阻害ペプチド)200 nMを添加した以外は実施例1同様の測定を行った。60kPa以下の面積の積分値は、第一の流路はそれぞれ27.0、47.9であり、第二の流路はそれぞれ5.4,15.0であった。
べクトンデッキンソン社のへパリン採血管(3ml)を用い健常人より採血した血液を用いて実験を行った。
第一の流路に、0.1単位/mlのへパリナーゼとXII因子阻害剤として終濃度50μg/mlのCTIを添加し、10分室温で反応させた血液を、第二の流路には、0.1単位のへパリナーゼと終濃度25μg/mlのヒルジンを添加し、10分室温で反応させた血液を、図2の解析装置を用い、24μl/minの流速(初期壁ズリ速度:約2000s−1)で10分間血液をかん流し、圧力を解析した。
圧力波形を図4に示す。60 kPa以下の面積の積分値は、それぞれ285と258であった。
へパリン血にへパリナーゼとFXII阻害剤及びヒルジンを添加することで、第二の流路における血栓形成を解析する事が可能であった。
第2の基板1bにおいて、第一の反応部102と第二の反応部112に相当する位置に、3mg/mlのコラーゲンと0.4mg/ml の組織トロンボプラスチン溶液を1:1で混和した溶液を、それぞれ6mm×6mmの領域に塗布した以外は、実施例1〜3で用いたのと同じ形状のマイクロチップを作製して以下の実験に用いた。
テルモ社の3.2%クエン酸ナトリウムを含む採血管を用い採血した後に、終濃度50μg/mlのCTIと終濃度12mMの塩化カルシウムを添加した血液を、第一の流路には8μl/min(初期壁ズリ速度:約660s−1),第二の流路には24μl/min(初期壁ズリ速度:約2000s−1)の流速で、それぞれ10分間かん流し、圧力を解析した。
実施例4−1同様の実験を、(1)クエン酸血液を生食で50%希釈した血液、(2)(1)の50%希釈血液に0.5U VWF(von Willebrand factor)製剤(CSL-Behring社)を添加した血液、(3)(1)の50%希釈血液に0.5U PCC製剤(CSL−ベーリング社)を添加した血液、(4)1Uへパリンを添加した血液、(5)3μg/mlのAbciximab (イーライリリー社) を添加した血液を用い実施した。
10分間の圧力の積分値と第一の流路と第二の流路の比を以下の表1に示す。
テルモ社の3.2%クエン酸ナトリウムを含む採血管を用い採血した後に、12mM塩化カルシウム、12mM塩化カルシウムと50μg/ml CTI, 12mM塩化カルシウムと50μg/ml CTIと1μg/ml アリクストラ(合成ペンタサッカライド、グラクソ・スミスクライン社)を添加した血液をROTEM(Tem international社)で解析した。結果を図5に示す。
CTIに合成ペンタサッカライドを添加することで、非血流下における血液凝固が強く抑制される事が示された。
イヌ血液を3.2%クエン酸ナトリウムで抗凝固処理した。その後、終濃度50μg/mlのCTIと終濃度12mMの塩化カルシウムを添加した血液を、第一の流路には24 μl/min, 第二の流路には8 μl/minの流速で、それぞれ10分間かん流し、圧力を解析した。
実施例5と同様に実験をイヌクエン酸ナトリウム血液に0.5Uのダナパロイドナトリウムを加えて行った。
イヌ血液を3.2%クエン酸ナトリウムで抗凝固処理した。その後、12mM塩化カルシウム、または、終濃度50μg/mlのCTIと終濃度12mMの塩化カルシウム または終濃度0.5U/mlのダナパロイドナトリウムと50μg/mlのCTIと終濃度12mMの塩化カルシウム塩化カルシウムを添加し、非血流下における血液凝固をROTEM(Tem International社)を用い解析した。
比較例2ではダナパロイドナトリウム(0.5U/ml)の添加で非血流下の血液凝固は顕著に延長されるのに対し、実施例5,6では血流下の白色血栓は殆ど抑制されない事が示された。
第2の基板1bにおいて、第一の反応部102と第二の反応部112に相当する位置に、3mg/mlのコラーゲンと0.4mg/ml の組織トロンボプラスチン溶液を1:1で混和した溶液を、それぞれ6mm×6mmの領域に塗布した以外は、実施例1〜3で用いたのと同じ形状のマイクロチップを作成して以下の実験に用いた。
テルモ社の3.2%クエン酸ナトリウムを含む採血管を用い採血した後に、第一の流路には終濃度50μg/mlのCTIと終濃度12mMの塩化カルシウムを添加した血液を、第2の流路には、クエン酸血液をラクテック注(大塚製薬)によって50%希釈した後に50μg/mlのCTIと終濃度12mMの塩化カルシウムを添加した血液を、それぞれ24μl/minの流速で、それぞれ10分間かん流し、流路内の圧力を連続的に解析した。
次いで、上記と同じ条件で、第一の流路には、ラクテック注によって50%希釈した後に終濃度0.5U/ml PCCを添加した血液を、第二の流路にはラクテック注によって50%希釈した後に終濃度0.5U/ml VWFを添加した以外は、7−1と同じ測定をおこなった。
次いで、上記と同じ条件で、第一の流路には、ラクテック注によって50%希釈した後に終濃度0.25U/ml へパリンを添加した血液を、第二の流路にはラクテック注によって50%希釈した後に終濃度2μg/ml のabciximabを添加した以外は、7−1と同じ測定をおこなった。
実施例7−1、7−2、7−3の測定を流速8μl/minに変更して測定を行った。
圧力波形パターンを図9に示す。
これにより、特に血液希釈時に、どのような薬剤を投与すると止血機能が回復するかを予測する上で、役立つことになる。
第2の基板1bにおいて、第一の反応部102と第二の反応部112に相当する位置に、それぞれ、3mg/mlのコラーゲンと0.4mg/ml の組織トロンボプラスチン溶液を1:1で混和した溶液、3mg/mlのコラーゲンと0.2mg/ml の組織トロンボプラスチン溶液を1:1で混和した溶液を、6mm×6mmの領域に塗布した以外は、実施例1〜3で用いたのと同じ形状のマイクロチップを作成して以下の実験に用いた。
テルモ社の3.2%クエン酸ナトリウムを含む採血管を用い採血した後に、終濃度50μg/mlのCTIと終濃度12mMの塩化カルシウムを添加した血液を、第一の流路には8μl/min、第二の流路には24μl/minの流速で、それぞれ10分間かん流し、圧力を解析した。
血液に生食(大塚製薬)による50%希釈、生食による50%希釈+0.5U/ml VWF(CSL−ベーリング社), 50%希釈+0.5U/ml PCC (CSL−ベーリング社),1U/mlへパリン、2μg/ml abciximabを添加した血液を用いた事以外は実施例9の実験を再現した。圧力下面積を以下の表2に示す。
これらの結果より、図10(A,B)の事が分かる。Aは第一の流路と第二の流路ともにコラーゲンと組織トロンボプラスチンを塗布した場合、Bは第一の流路にのみコラーゲンと組織トロンボプラスチンを塗布し、第二の流路にはコラーゲンのみを塗布した場合である。
Claims (16)
- 内部に血液試料を流すための第一と第二の流路を有する血液性状検査用マイクロチップであって、
第一の流路はコラーゲンと組織トロンボプラスチンが塗布された第一反応部を有し、
第二の流路は、コラーゲンが塗布され、かつ、第一反応部の2/3以下の量の組織トロンボプラスチンが塗布されるか、組織トロンボプラスチンが塗布されない第二反応部を有する、
血液性状検査用マイクロチップ。 - 前記第一反応部および第二反応部には、血液の流れる方向に沿って流路分割壁が設置されている、請求項1に記載の血液性状検査用マイクロチップ。
- 第一反応部および第二反応部の下流側にそれぞれ廃液貯留部を有する、請求項1または2に記載の血液性状検査用マイクロチップ。
- 廃液貯留部は、抗凝固剤溶液を含んだ吸収材を有する、請求項3に記載の血液性状検査用マイクロチップ。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の血液性状検査用マイクロチップと、血液性状検査用マイクロチップの第一の流路および第二の流路へ血液を導入するための第一の血液収容容器および第二の血液収容容器とを含む、血液性状検査用装置。
- 該第一の血液収容容器および第二の血液収容容器は一体成型されている、請求項5に記載の血液性状検査用装置。
- 第一の血液収容容器および第二の血液収容容器に連結されて、第一の血液収容容器および第二の血液収容容器から第一の流路および第二の流路に血液試料を流入させるためのポンプと、該ポンプにかかる圧力を測定するための圧力センサーを含む、請求項5または6に記載の血液性状検査用装置。
- 請求項5〜7のいずれか一項に記載の血液性状検査用装置を用い、第一と第二の流路に血
液試料を流して血液の血栓形成能および血小板機能を測定することを特徴とする、血液性状測定方法。 - 内部に血液試料を流すための第一と第二の流路を有する血液性状検査用マイクロチップであって、第一の流路はコラーゲンと組織トロンボプラスチンが塗布された第一反応部を有し、第二の流路は、コラーゲンが塗布され、かつ、第一反応部と同等量の組織トロンボプラスチンが塗布された第二反応部を有する、血液性状検査用マイクロチップと、当該血液性状検査用マイクロチップの第一の流路および第二の流路へ血液を導入するための第一の血液収容容器および第二の血液収容容器とを含む、血液性状検査用装置を用い、第一と第二の流路に血液試料を流して血液の血栓形成能および血小板機能を測定することを特徴とする、血液性状測定方法であって、第一の反応部における壁ズリ速度が1200 s -1 未満であり、第二の反応部における壁ズリ速度が1200 s -1 以上であり、かつ、第二の反応部の壁ズリ速度が第一の反応部の壁ズリ速度の1.5倍以上である、血液性状測定方法。
- 前記血液性状検査用装置において、第一の血液収容容器および第二の血液収容容器は一体成型されている、請求項9に記載の血液性状測定方法。
- 前記血液性状検査用装置は、第一の血液収容容器および第二の血液収容容器に連結されて、第一の血液収容容器および第二の血液収容容器から第一の流路および第二の流路に血液試料を流入させるためのポンプと、該ポンプにかかる圧力を測定するための圧力センサーを含む、請求項9または10に記載の血液性状測定方法。
- 第一の流路には血液試料を流し、第二の流路には該血液試料に、抗血小板薬または止血用血液製剤を添加した試料を流して、第一と第二の流路における血栓形成を対比することで血液試料の性状を解析する、請求項9〜11のいずれか一項に記載の血液性状測定方法。
- 前記抗血小板薬または止血用血液製剤が、P2Y12阻害剤、VWF(von Willebrand factor)
、PCC(プロトロンビンコンプレックス)から選ばれる、請求項12に記載の血液性状測
定方法。 - 前記血液試料は、トロンビン阻害剤で抗凝固処理された血液試料である、請求項12または13に記載の血液性状測定方法。
- トロンビン阻害剤がヒルジン又はベンジルスルホニル-D-Arg-Pro-4-アミジノベンジルア
ミド(BAPA)である、請求項14に記載の血液性状測定方法。 - 前記血液試料は、XII因子阻害剤と、血漿カリクレイン阻害剤、低分子へパリン、ヘパラ
ン硫酸および合成ペンタサッカライドから選択される抗凝固剤で処理された血液試料である、請求項8〜15のいずれか一項に記載の血液性状測定方法。
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