JP2004004002A - 血栓形成能測定装置 - Google Patents

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Manabu Sakakibara
榊原 学
Naoaki Kanai
金井 直明
Kunimasa Koga
古賀 邦正
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Abstract

【課題】血液中における血小板の粘着能および凝集能を介した血栓形成能を簡便に測定し得る装置、および当該装置を用いた血栓形成能を測定する方法を提供すること。
【解決手段】試料血液を流すための流路となる細管内部に擬似障害血管を設けるものであり、当該擬似障害部として、細管壁に血小板凝集性および/または粘着性を誘引する物質を固定化させるか、あるいは血管の一部の径、若しくは一部の形状、或いは流路の形状を制御することにより、血流の乱流形成を促進せしめ、血栓を形成させる装置であり、また、当該装置を使用して血栓形成能を測定する方法である。
【選択図】     図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、血液中の血栓形成能を測定する装置、およびそれを用いた血栓形成能の測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
癌、心臓病、脳卒中、糖尿病、歯周病等の生活習慣病は、日常の生活習慣を見直すことにより相当程度予防できる。しかし、痛みなどの自覚症状がないまま発症・進行し、結果として死亡や要介護状態につながる重篤な症状発作にいたる場合が多い。したがって、生活習慣病に対しては、健康的な食生活の実践など、生活習慣を見直すことを通じて、疾病の発症そのものを予防する一次予防の推進が重要となってきており、本人の無自覚を自覚に変え、生活習慣を見直す機会が得られるようとすることが課題となっている。
【0003】
生活習慣病の中で、血管性の疾患である脳血管疾患と虚血性心疾患を含む循環器疾患は、日本人の主要な死因の一つであるが、多くの場合、血小板の凝集による血栓の生成に起因している。
【0004】
これらの血栓性疾患の治療には、血小板凝集阻止作用や凝固因子活性の抑制作用を持つ薬剤、あるいは血栓溶解作用を示す生理活性物質が使用されている。一方、疾病の発症そのものを予防する一次予防として、健康診断等における各種の血液検査がある。これは血栓性疾患を誘発しやすい因子である総コレステロール量、HDLコレステロール量、中性脂肪量を測定するものであり、また血小板自体の機能検査もある。
【0005】
現在、一般的な臨床検査として行われている血小板の機能検査としては、粘着、凝集能についての測定である。血小板粘着能検査の方法としては、ガラスビーズ法、すなわち採決した血液を、ガラスビーズを満たした管内を一定速度で通過させ、通過する前後の血小板数の差を測定し粘着能とする方法であり、粘着能亢進(Saizman法)と粘着能低下(Hellem II法)の2つの方法が知られている。また血小板凝集能測定方法としては、抗凝固した多血小板血漿に、種々の血小板凝集惹起物質を添加し、凝集による濁度の変化を分光光度計にて測定し、凝集能とするBornの比濁法(光透過法)などがある。
【0006】
更に、血液の総体的流動特性を測定する「細胞マイクロレオロジー測定装置」(Micro Channel array Flow Analyzer;以下、MC−FANという)と呼ばれる装置がある。これはシリコン単結晶基盤表面に、加工した毛細血管の太さと同様の微細な溝を並列に作成し、これを毛細血管モデルとして用い、流路を流れる血液細部の挙動を顕微鏡観察しながら、一定圧力差の下で全流路を通過する血液の通過時間を測定する装置である(非特許文献1)。
【0007】
この方法は、赤血球の径より平均の毛細血管の径が小さく、赤血球は毛細血管内を変形して通過することに着目し、血液がシリコンチップで成型された毛細血管モデルを通過する流速を測定するものである(特許文献1および特許文献2)。血液の流動特性には、赤血球変形能、白血球粘着能、血小板凝集能といった血液細胞の特性が大きく係わるが、これ以外の要因としても、液体成分の血漿の量、赤血球の連鎖状配列、脱水症状による血球の密度の増加等も係わっている。したがって、MC−FANは、血液の総体的流動特性を測定するものであり、血栓の形成に関する血液の測定はできなかった。
【0008】
【特許文献1】
特許第2685544号公報
【特許文献2】
特許第2954113号公報
【非特許文献1】
「細胞」,第30巻、第7号、1998年、281−284頁
【0009】
また、血栓症を発症した患者には、その治療のために血栓溶解療法、PTCA(percutaneous transluminal coronary angioplasty;経皮的冠血管形成術)、血管内金属ステント留置術、あるいは人工血管置換術・バイパス術、冠動脈バイパス術等が行われるが、治療実施後に再狭窄を発症する可能性が非常に高いこと、また血管内に留置した金属ステント内血栓症の併発や、人工弁置換術後の機械人工弁による血栓塞栓症の併発などが予想されるため、治療後は抗血小板薬(血小板凝集抑制剤)アスピリンや抗凝血薬ワーファリン、あるいはその併用などの強力な抗凝固剤の長期連用投与が実施されている。
【0010】
これらの薬剤は、血液凝固能を低下させて血栓形成を十分に予防するとともに、かつ出血を起こさない範囲の血液凝固能レベルとして、多くは経験的にその投与量が決められている。しかしながら、抗凝固剤が効きすぎると出血傾向となり、脳出血や血尿、関節内の出血など重篤な副作用もあるため、初回量およびその後の維持量を、投与する患者の血液凝固能検査を頻繁に行い、確認の上で決定して投与していく必要がある。特に、ワーファリンは他の医薬品による影響(効果の増強または減弱)や、抗凝血作用を減弱する飲食物もあり、その投与の量のコントロールは非常に難しかった。
また、投与する患者の状態、血栓症の発症部位などにより、好ましい抗凝固剤を選択できることも望まれていたが、現実は担当医の経験則により選択され、経過を見て薬剤を変更する等が行われていた。
【0011】
通常の血栓形成のメカニズムは、出血した場合には、血小板が損傷血管の内壁下に露出したコラーゲンにより活性化され、損傷部位に粘着し、さらに血小板同士が凝集して、血小板が血栓を形成するものであり、これにより一次止血が行われる。
【0012】
病的な血栓形成のメカニズムも上記とほぼ同様であり、血管の内皮細胞が、動脈硬化など何らかの機序によって損傷を受け、内皮細胞下のコラーゲンが血液に接触することにより血小板の活性化がおこり、凝集塊を形成して、血栓症を発症する。血液内で血小板の粘着能と凝集能は相互に作用し、血管の損傷部分に粘着した血小板が他の血小板の凝集能を誘引し、血栓の形成を進行させる場合もあるし、凝集した血小板が他の血小板の粘着能を誘引して血栓の形成を進行される場合もある。したがって、血栓症の発生予防・予測には、この血液中における血小板の粘着能および凝集能を介した血栓形成能を測定することが必要である。
【0013】
また、血管の狭窄部位や血管内膜に形成されたアテローム(粥状)では、血液の流れに変化や乱れが生じ、血小板にずり応力が加わり、血小板を活性化する。その結果、血小板の過度の粘着や凝集を惹起することとなり、結果として一層の狭窄を進行させ、その下流の細い血管には血小板血栓による塞栓症をおこす原因にもなっている。
【0014】
したがって、血液の流れに変化や乱れが生じた中での血小板の粘着能および凝集能を介した血栓形成能も測定することが望まれている。また、狭窄部位で形成された血栓が、下流の細動脈あるいは毛細血管を閉塞し、微少梗塞を起こす危険性があるかどうかも測定できる必要がある。
【0015】
さらに現在は、例えば血栓症治療後の抗凝血薬ワーファリンの長期連用投与に際して、患者にとって安全で適切な投与量(維持量)を決定していくための検査としては、血液凝固能をプロトロンビン時間(PT)またはトロンボテスト(TT)で測定することによって行われている。これらのテストはワーファリンの作用機序に基づくものであり、凝固系の阻害程度を調べるもので、血小板血栓阻害の指標としては適切ではなかった。また、投与する患者の状況に適した薬剤の選択や、ワーファリンと抗血小板薬(血小板凝集抑制剤)との併用する場合の投与量の決定や、抗凝固剤の投与中止を決定する場合などには、適切な検査測定方法とはいえなかった。したがって、患者の血液の血栓形成能そのものを知りえる検査方法が必要とされていた。
また、血栓症治療のために用いられる金属ステント、人工血管および人工弁などの材質や、形状の開発の際に、あるいは個々の患者に適した療法の検討のために、金属ステントが血管内に配置した状態での血液の状態を観測できることが望まれていた。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の現状を鑑み、血液中における血小板の粘着能および凝集能を介した血栓形成能を簡便に測定することができる装置、および該装置を使用した血栓形成能の測定方法を提供することを課題とする。
【0017】
かかる課題を解決するために、本発明者らは、試料血液を流すための流路となる細管内部に擬似障害血管を作成し、擬似障害血管に試料血液を流すことにより、当該擬似障害部位で血栓形成能が測定できること、また、疑似障害部位で形成された血栓が、下流の疑似細動脈、疑似毛細血管を閉塞し微少梗塞を起こす危険性があるかどうかも測定できることを見出し、本発明を完成させた。
【0018】
【課題を解決するための手段】
したがって本発明は、擬似障害血管に試料血液を流すことを特徴とする血液中の血栓形成能測定装置であり、より詳細には擬似障害血管がいわゆる正常部位と障害部位からなることを特徴とする血栓形成能を測定する装置、ならびに該装置を使用する血栓形成能の測定方法に関するものである。
【0019】
詳細には、本発明は、(1)試料血液を流すための流路となる細管内部に血流障害部位となる擬似障害血管を設けたことを特徴とする血液中の血栓形成能測定装置;(2)擬似障害血管の径が、5μmから10mmの範囲のものであることを特徴とする前記1に記載の血栓形成能測定装置;(3)擬似障害血管の障害部位が、細管内壁に血小板凝集性および/または粘着性を誘引する物質を固定化することにより設けられたことを特徴とする前記1または2に記載の血栓形成能測定装置;(4)血小板凝集性および/または粘着性を誘引する物質がコラーゲン、あるいは固層化フォンビルブラント因子であることを特徴とする前記3に記載の血栓形成能測定装置;(5)擬似障害血管の障害部位が、擬似障害血管の一部の径、一部の形状あるいは流路の形状の制御により、血流の乱流形成を促進させるものであることを特徴とする前記1ないし4のいずれかに記載の血栓形成能測定装置;(6)擬似障害血管の一部の径あるいは形状の制御が、擬似障害血管の一部を狭小することにより行われることを特徴とする前記5に記載の血栓形成能測定装置;(7)擬似障害血管の一部の径あるいは形状の狭小が、正常部位の径に対し25〜99%の範囲に狭小されていることを特徴とする前記6に記載の血栓形成能測定装置;(8)擬似障害血管の流路の形状の制御が、流路に分岐を形成する、または流路を曲線とすることにより行われることを特徴とする前記6に記載の血栓形成能測定装置に関する。
【0020】
さらに本発明は、より詳細には、(9)擬似障害血管の障害部位が、管内壁に血小板凝集性および/または粘着性を誘引する物質の固定化により形成され、かつ、擬似障害血管の一部の径、一部の形状あるいは流路の形状が制御されていることにより乱流形成を促進せしめるよう構成したことを特徴とする前記1ないし8のいずれかに記載の血栓形成能測定装置;ならびに(10)擬似障害血管の障害部位の下流に細動脈、毛細血管の径を模した分岐、スリットなどを配置し、疑似障害部位で形成された血栓が、下流の疑似細動脈、毛細血管を閉塞することを観察、測定する前記1ないし9のいずれかに記載の血栓形成能測定装置であり;また、(11)擬似障害血管が、血小板刺激性の低い材質から構成されていることを特徴とする前記1ないし10のいずれかに記載の血栓形成能測定装置;(12)血小板刺激性の低い材質がエチレンビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、再生セルロース、セルロースポリアセテート、ポリウレタン、ポリスルフォン、ポリスチレン、ポリプロピレンの群の中から選ばれるものであることを特徴とする前記11に記載の血栓形成能測定装置;(13)血小板刺激性の低い材質からなる擬似障害血管が、血小板刺激性の低い材質で細管内壁が表層加工されたものであることを特徴とする前記11に記載の血栓形成能測定装置;(14)表層加工に使用される血小板刺激性の低い材質が、MPCポリマーまたはヘパリンであることを特徴とする前記13に記載の血栓形成能測定装置;(15)血液中の血栓形成能測定装置において、擬似障害血管内を流れる試料血液の挙動状態を示す画像手段を設けたことを特徴とする前記1ないし14のいずれかに記載の血栓形成能測定装置である。
【0021】
さらにまた本発明は、血栓形成能を測定する方法に関するものであり、詳細には、(16)前記1ないし15のいずれかに記載の血栓形成能測定装置を用い、傷害部位で形成される血栓、ならびに擬似傷害血管内を流れる試料血液の挙動状態を観測することからなる血液の血栓形成能測定方法である。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明は、試料血液を流すための流路となる細管内部に擬似障害血管を設け、当該擬似傷害血管内を被験者の血液試料を流し、擬似障害部位における血栓形成能を測定するものであり、被験者の体内における血液中の血栓形成性と相同性のある測定を目的としたものである。
【0023】
本発明においては、擬似障害血管を設けることにより、体内において病変が発生した場合を想定した環境、あるいは現在の体内の血管状態を想定した環境を提供することにより、体内の血液中における血小板の状態を測定できるようにしたものである。
【0024】
この場合の擬似障害血管は、基本的には、試料血液を流すための流路となる細管内部に設けたものであり、細管内部自体が、血管の正常部位に該当することとなる。
【0025】
本発明が提供する血栓形成能測定装置である擬似障害血管の径としては、毛細血管から心臓の冠動脈血管、脳血管など主要血管が有する径の範囲内であれば良く、したがって、その径は5μmから20mmの範囲である。
【0026】
擬似障害血管の正常部位、すなわち細管の材質としては、血小板刺激性の少ない材質を用いるか、血小板刺激性の少ない材質を細管の内壁表層にコーティングすることにより、測定に際して血小板の活性化、血栓の形成能に対する影響を極力抑制することができる。
【0027】
かかる細管に使用する血小板刺激性の少ない材質としては、エチレンビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、再生セルロース、セルロースポリアセテート、ポリウレタン、ポリスルフォン、ポリスチレン、ポリプロピレン、MPCポリマー、ヘパリンなどが挙げられるが、これらのいずれも使用することもできる。
【0028】
また、細管内壁表層に血小板刺激性の少ない材質をコーティングする場合は、MPCポリマーあるいはヘパリンが好ましく使用できる。コーティングの方法としては、例えば、ヘパリンを表層コーティングする場合、擬似血管を形成したチップをエタノールでリンスし、続いてエタノールで溶解したMPCポリマー溶液に1分間程度浸漬させ、次いで減圧下に乾燥させる。この操作を最低2回繰り返し、コーティング完了後、生理食塩水に数時間浸漬させ、リン脂質極性基を平衡化して親水性にする。
【0029】
これらの材質は、βTG(β―トロンボグロブリン)血中濃度、血小板表面へのPセレクチンの発現、血漿中の可溶型Pセレクチン濃度、PMP(血小板由来のマイクロパーティクル)の血中放出、コールターカウンター、レーザーカウンターなどによる血小板の数と大きさ(凝集の程度)の変化の測定などを指標として選択することができる。
【0030】
本発明が提供する装置においては、擬似障害血管の障害部位が、細管内壁に血小板凝集性および/または粘着性を誘引する物質を固定化することにより設けられた擬似障害血管であることを特徴とする。
【0031】
血小板凝集性および/または粘着性を誘引する物質としては、生体内での血小板活性化物質として知られるコラーゲン、あるいは固層化フォンビルブラント因子などが挙げられ、かかる血小板活性化物資を用いることにより、生体内での障害血管により近い環境を形成することができる。なお、細管内壁に血小板凝集性および/または粘着性を誘引する物質を固定化する方法としては、管壁内部へのコーティングなど既存の方法を用いて行えばよい。例えば可溶化したコラーゲン液に浸漬させ、乾燥させるなどの方法で行うことも可能である。かかる方法により、擬似障害血管全体を障害部位とすることもで、またコーティングする部分を選択し、擬似障害血管の所望の範囲を障害部位とすることもできる
【0032】
また、本発明が提供する装置においては、擬似障害血管中の障害部位が、擬似障害血管の一部の径、一部の形状あるいは流路の形状の制御により、血流の乱流形成を促進させるものであることを特徴とする。
【0033】
血管内における血液の流れは、血管へのシアーストレス、血管壁の弾力性、血栓やアテローム形成による血管自体の変化に大きく影響を受ける。したがって、血流に乱流が形成されると、血小板の粘着能および凝集能を介した血栓形成能が大きく影響を受けることとなる。すなわち、障害部位として、血流の乱流形成を促進せしめるよう形成することにより、体内での障害(血栓発症)発生時の測定あるいは負荷を大きくかけた状況でも正常に作用するか否かのストレステストを可能とすることができる。
【0034】
血流に乱流形成を促進せしめるよう擬似障害血管を形成するには、擬似障害血管の一部の径、あるいは形状を制御することにより、または、流路の形状を制御することにより行うことができる。管の一部の径、あるいは形状の制御としては、管の一部を狭小することで行うことができる。本発明にあっては、この一部の径、あるいは形状の狭小が、正常部位の径に対して25〜99%の範囲に狭小されていることを特徴とする。すなわち、血管の狭窄は、狭窄率25%からが危険範囲であり、最大の狭窄率として99%の範囲とされる。
【0035】
例えば狭心症を例に採ってみると、明確な基準はないものの、症状があって、冠動脈が90%以上狭窄している場合、臨床的には経皮的冠動脈拡張術を行うことが多い。また、冠動脈起始部の最も太いところの経は通常5−10mm程度であり、それが毛細血管の5μmまで枝別れしながら細くなっていく。したがって、管径1mmの動脈血管の一部に100μm(90%狭窄)の径の狭窄部位が存在するものなどが、例として挙げられる。
【0036】
現実に、特に血栓症を起こしやすい血管の部位としては、ずり応力のかかる狭窄部、分岐部などである。したがって、本発明が提供する血栓形成能測定装置である擬似障害血管における流路の形状の制御としては、流路に狭窄部を付与するか、流路に分岐部を付与することにより擬似障害部を形成することができる。
【0037】
擬似障害血管における具体的な狭窄部の付与の形態を、図1に示した。すなわち、例えば、擬似正常部として管径1000μmの細管内壁に、狭窄部(2)として、擬似動脈硬化部を想定し、例えばコラーゲンコーティングを行い、血管内皮細胞が剥がれた状態のモデルとして、管径をほぼ100μmの狭窄部を付与することができる。
【0038】
なお、図1に示した擬似障害血管における試料血液は、図中矢印方向(1)に流れ、狭窄部(2)でずり応力がかかり、血小板血栓が形成されることとなる。
【0039】
また、本発明の擬似障害血管における具体的な流路に分岐部付与の形態を、図2に示した。すなわち、流路の分岐は、1本の擬似障害血管を2本以上に分岐することで行うことができる。なお、分岐支流の本流に対する角度を種々変化させることで、さまざまな乱流形成を想定し、血液中の血栓形成能を測定することが可能となる。また、曲線形状にあっては、その曲線率を種々変化させることで、さまざまな乱流形成を想定し測定することができる。
【0040】
この図2に示した擬似障害血管(分岐部を有する血管)における試料血液にあっても、図中矢印方向(1)に流れ、分岐部でずり応力がかかり、血小板血栓が形成されることとなる。
【0041】
また、本発明においては、本発明の装置である擬似障害血管内を流れる試料血液の挙動状態を示す、画像手段を有することができる。そのような画像手段としては、試料血液の挙動を撮影する検出カメラ、およびそのカメラによる映像を表示するモニターからなり、またその画像を処理させて表示される、あるいはその画像を記録する装置を有するものであってもよい。かかる画像手段を有することにより、血液中の血栓形成能の測定内容を迅速に、かつ被験者に理解しやすい状態で提供することができ、被験者への血栓性疾患の第一次予防としての、自覚の促進に非常に効果的なものとなる。
【0042】
さらに本発明の装置における血中の血栓形成能の測定においては、擬似障害血管内の血液の流れを観察するばかりでなく、疑似障害部位で発生した血栓が疑似毛細血管を閉塞することによって影響を受ける一定量の血液が通過する時間の測定、擬似障害血管を通過することによるβTG血中濃度の変化、コールターカウンターによる血小板の数と大きさ(凝集の程度)の変化の測定等を行うことも可能である。また、既存の赤血球変形能測定装置、血液流路を用いた血液測定装置、あるいは「MC−FAN」のような血液の流れ特性測定装置に本発明の擬似障害血管を用いて測定することも可能である。
【0043】
【実施例】
以下に、本発明を実施例により本発明を説明する。
【0044】
実施例1:疑似動脈硬化狭窄血管モデル
深さ:35μm、疑似正常血管部幅:1mm、疑似血管狭窄部幅:0.1mmからなる擬似障害血管の血液流路を直線の形状に設け、全体をコラーゲンでコーティング処理した。試料血液は、試験の内容を説明し同意を得られた36歳男性より採取したものを使用した。この擬似障害血管に試料血液100mlを流し、試料血液が流れるところを観察した。試料血液には5%のヘパリンが添加し、凝固蛋白系のみ阻害してある。狭窄部で血小板血栓が形成され下流に向かい流れていくことが確認された。
【0045】
この擬似障害血管が生体内に存在する血管であれば、障害部(狭窄部)で形成された血小板血栓は、その下流の細動脈や毛細血管を閉塞し、微少梗塞を起こす危険があると考えられた。
なお、血小板機能を抑制するクエン酸を試料加えると、血栓の形成は全く認められなかった。
【0046】
【発明の効果】
以上記載のように、本発明は、体内の病変部に近い擬似障害血管環境を想定して、当該擬似血管内の血液の流れに変化や乱れが生じた場合の血小板の粘着能および凝集能を介した血栓形成能を測定ができる。したがって、その血栓形成能の測定により、心筋梗塞や狭心症患者に対する血栓形成抑制剤の投与に関しての定量的評価、生活習慣病予備軍の血栓形成能の評価による疾患発生の予防、血栓形成抑制能を有する医療用材質や、薬剤開発などに貢献することができる利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の装置である擬似障害血管として、狭窄部を設けた障害血管を模式的に示した図である。
【図2】本発明の装置である擬似障害血管として、分岐部を設けた障害血管を模式的に示した図である。
【符号の説明】
1・・・血液の流れ
2・・・血流障害部

Claims (16)

  1. 試料血液を流すための流路となる細管内部に擬似障害血管を設けたことを特徴とする血液中の血栓形成能測定装置。
  2. 擬似障害血管の径が、5μmから10mmの範囲のものであることを特徴とする請求項1に記載の血栓形成能測定装置。
  3. 擬似障害血管の障害部位が、細管内壁に血小板凝集性および/または粘着性を誘引する物質を固定化することにより設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の血栓形成能測定装置。
  4. 血小板凝集性および/または粘着性を誘引する物質がコラーゲン、あるいは固層化フォンビルブラント因子であることを特徴とする請求項3に記載の血栓形成能測定装置。
  5. 擬似障害血管の障害部位が、擬似障害血管の一部の径、一部の形状あるいは流路の形状の制御により、血流の乱流形成を促進させるものであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の血栓形成能測定装置。
  6. 擬似障害血管の一部の径あるいは形状の制御が、擬似障害血管の一部を狭小することにより行われることを特徴とする請求項5に記載の血栓形成能測定装置。
  7. 擬似障害血管の一部の径あるいは形状の狭小が、正常部位の径に対し25〜99%の範囲に狭小されていることを特徴とする請求項6に記載の血栓形成能測定装置。
  8. 擬似障害血管の流路の形状の制御が、流路に分岐を形成する、または流路を曲線とすることにより行われることを特徴とする請求項6に記載の血栓形成能測定装置。
  9. 擬似障害血管の障害部位が、管内壁に血小板凝集性および/または粘着性を誘引する物質の固定化により形成され、かつ、擬似障害血管の一部の径、一部の形状あるいは流路の形状が制御されていることにより乱流形成を促進せしめるよう構成したことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の血栓形成能測定装置。
  10. 擬似障害血管の障害部位の下流に細動脈、毛細血管の径を模した分岐、スリットなどを配置し、疑似障害部位で形成された血栓が、下流の疑似細動脈、毛細血管を閉塞することを観察、測定する請求項1ないし9のいずれかに記載の血栓形成能測定装置。
  11. 擬似障害血管が、血小板刺激性の低い材質から構成されていることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の血栓形成能測定装置。
  12. 血小板刺激性の低い材質がエチレンビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、再生セルロース、セルロースポリアセテート、ポリウレタン、ポリスルフォン、ポリスチレン、ポリプロピレンの群の中から選ばれるものであることを特徴とする請求項11に記載の血栓形成能測定装置。
  13. 血小板刺激性の低い材質からなる擬似障害血管が、血小板刺激性の低い材質で細管内壁が表層加工されたものであることを特徴とする請求項11に記載の血栓形成能測定装置。
  14. 表層加工に使用される血小板刺激性の低い材質が、MPCポリマーまたはヘパリンであることを特徴とする請求項13に記載の血栓形成能測定装置。
  15. 血液中の血栓形成能測定装置において、擬似障害血管内を流れる試料血液の挙動状態を示す画像手段を設けたことを特徴とする請求項1ないし14のいずれかに記載の血栓形成能測定装置。
  16. 請求項1ないし15のいずれかに記載の血栓形成能測定装置を用い、障害部位で形成される血栓、ならびに擬似障害血管内を流れる試料血液の挙動状態を観測することからなる血液の血栓形成能測定方法。
JP2003081713A 2002-04-01 2003-03-25 血栓形成能測定装置 Pending JP2004004002A (ja)

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