JP6596408B2 - 車両用動力伝達装置 - Google Patents
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Description
本発明は、入力軸および変速軸を変速アクチュエータで相対回転させて変速比を変更するクランク式の伝達ユニットを備える車両用動力伝達装置に関する。
クランク式の伝達ユニットを備える無段変速機は、入力軸に支持された偏心ディスクに設けたリングギヤに変速軸に設けたピニオンを噛合させ、変速アクチュエータで変速軸を入力軸に対して相対回転させることで、ピニオンでリングギヤを回転させて偏心ディスクの偏心量を変更するようになっている。
無段変速機の運転中に変速アクチュエータを駆動すると、変速軸に作用する負荷トルクの方向が反転するときに、ピニオンおよびリングギヤの噛合部に歯打ちによる騒音が発生する問題がある。これを解決するために、下記特許文献1に記載された発明は、変速軸にピニオンを軸線方向に摺動可能にスプライン嵌合するとともに、一対の皿バネでピニオンを変速軸の軸線方向の中立位置に向けて付勢することで、歯打ちによる騒音の発生を抑制している。
しかしながら、上記特許文献1に記載されたものは、各ピニオンに対して2個の皿バネを必要とするために部品点数が大幅に増加するだけでなく、それらの皿バネの組み付け工数も増加するためにコストアップの要因となる問題があった。
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、クランク式の伝達ユニットのピニオンおよびリングギヤの歯打ちによる騒音を簡単な構造で低減することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、駆動源に接続された入力軸の回転を変速して出力軸に伝達する複数の伝達ユニットを入力軸の軸線方向に並置し、前記伝達ユニットの各々は、前記入力軸と一体に回転する偏心カムと、前記偏心カムの外周に相対回転自在に嵌合するリングギヤが形成された偏心部材と、前記入力軸と同軸に配置された変速軸と、前記変速軸に設けられて前記リングギヤに噛合するピニオンと、前記変速軸を前記入力軸に対して相対回転させる変速アクチュエータと、前記出力軸に設けられたワンウェイクラッチと、前記偏心部材および前記ワンウェイクラッチのアウター部材に接続されて往復運動するコネクティングロッドとを備え、前記変速アクチュエータで前記変速軸を前記入力軸に対して相対回転させて前記偏心カムに対する前記偏心部材の位相を変化させることで、前記軸線からの前記偏心部材の偏心量を変化させて変速比を変更する車両用動力伝達装置であって、前記変速軸の軸端は前記変速アクチュエータのアクチュエータ出力軸の軸端にスプライン嵌合部により連結され、前記変速軸は最も前記変速アクチュエータ寄りの前記ピニオンと前記スプライン嵌合部との間に環状の縮径部を備えることを特徴とする車両用動力伝達装置が提案される。
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記縮径部は円弧状断面の溝で構成されることを特徴とする車両用動力伝達装置が提案される。
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記縮径部は前記軸線方向の長さが径方向の深さよりも大きい浅底状断面の溝で構成されることを特徴とする車両用動力伝達装置が提案される。
なお、実施の形態の偏心ディスク19は本発明の偏心部材に対応し、実施の形態の筒状部54aは本発明のアクチュエータ出力軸に対応し、実施の形態のエンジンEは本発明の駆動源に対応する。
請求項1の構成によれば、偏心部材が入力軸と一体に偏心回転すると、偏心部材に一端を接続されたコネクティングロッドが往復運動し、コネクティングロッドの他端が接続されたアウター部材が往復揺動する。アウター部材が一方向に揺動したときにワンウェイクラッチが係合し、アウター部材が他方向に揺動したときにワンウェイクラッチが係合解除することで、入力軸の回転が変速されて出力軸に伝達される。変速アクチュエータで偏心部材の偏心量を変化させると、コネクティングロッドの往復ストロークが変化して動力伝達装置の変速比が変更される。
変速軸の軸端は変速アクチュエータのアクチュエータ出力軸の軸端にスプライン嵌合部により連結され、変速軸は最も変速アクチュエータ寄りのピニオンとスプライン嵌合部との間に環状の縮径部を備えるので、縮径部により変速軸の捩じり剛性を低下させることで、変速軸に設けられたピニオンと偏心部材に設けられたリングギヤとの噛合部に発生する歯打ち音を低減することができる。
また請求項2の構成によれば、縮径部は円弧状断面の溝で構成されるので、丸みをおびた断面形状の縮径部で応力が集中するのを防止することで、変速軸の強度を確保することができる。
また請求項3の構成によれば、縮径部は軸線方向の長さが径方向の深さよりも大きい浅底状断面の溝で構成されるので、縮径部の軸線方向の長さにより変速軸の捩じり剛性を任意に調整できるだけでなく、縮径部が形成された範囲に捩じり荷重を分散して変速軸の強度を確保することができる。
以下、図1〜図9に基づいて本発明の第1の実施の形態を説明する。
図1および図2に示すように、自動車用のクランク式の無段変速機Tの支持フレーム11に入力軸12および出力軸13が相互に平行に支持されており、エンジンEに接続された入力軸12の回転が8個の伝達ユニット14…、出力軸13および図示せぬディファレンシャルギヤを介して図示せぬ駆動輪に伝達される。
8個の伝達ユニット14…の構造は実質的に同一構造であるため、以下、一つの伝達ユニット14を代表として構造を説明する。
中空に形成された入力軸12の内部に軸線Lを共有する変速軸15が配置されており、この変速軸15の外周に10個のニードルベアリング16…を介して軸線L方向に9分割された偏心カム17…が回転自在に支持される。8個の伝達ユニット14…の合計9個の偏心カム17…は図示せぬ複数本のボルトで一体に結合されており、それら9個の偏心カム17…の内周部分が実質的に入力軸12を構成する。
隣接する一対の偏心カム17,17は、入力軸12の軸線Lに対して距離dだけ偏心した中心O1を有する一対の円形のカム部17a,17aと、カム部17a,17aの径方向内側に形成された断面三日月状のガイド部17bとを備える。入力軸12と軸線Lを共有する変速軸15の外周には8個のピニオン18…が一体に形成されており、各ピニオン18は偏心カム17,17の断面三日月状のガイド部17bの切欠き部17cに収納される。各伝達ユニット14の偏心カム17,17のカム部17a,17aの位相は相互に45゜ずつずれている。
図2および図3に示すように、偏心カム17,17のカム部17a,17aの外周面には、円板状の偏心ディスク19の軸線L方向両端面に形成された一対の偏心凹部19a,19aが、一対のニードルベアリング20,20を介して回転自在に支持される。偏心ディスク19の中心O2に対して偏心凹部19a,19aの中心O1(つまり偏心カム17,17のカム部17a,17aの中心O1)は距離dだけずれている。すなわち、入力軸12の軸線Lおよび偏心カム17,17のカム部17a,17aの中心O1間の距離dと、偏心カム17,17のカム部17a,17aの中心O1および偏心ディスク19の中心O2間の距離dとは同一である。
偏心ディスク19の一対の偏心凹部19a,19aの底部間を連通させるように形成されたリングギヤ19bの歯先が、偏心カム17,17のガイド部17bの外周面に摺動可能に当接する。そして偏心カム17,17の切欠き部17cから露出する変速軸15のピニオン18が、偏心ディスク19のリングギヤ19bに噛合する。偏心ディスク19の外周には、その偏心方向と逆方向に突出するカウンタウエイト19cが設けられる。そして偏心ディスク19の外周にはコネクティングロッド21の大端部21aがボールベアリング22を介して支持される。
図1および図2に示すように、出力軸13の外周に設けられたワンウェイクラッチ23は、コネクティングロッド21の小端部21bにピン24を介して連結されたリング状の揺動リンク25と、揺動リンク25の内周に固定されたリング状のアウター部材26と、アウター部材26の内部に配置されて出力軸13に固定されたリング状のインナー部材27と、アウター部材26の内周面とインナー部材27の外周面との間に形成された楔状の空間に配置されて複数個のスプリング28…で付勢された複数個のローラ29…とを備える。
そして入力軸12のエンジンEと反対側の軸端には、入力軸12に対して変速軸15を相対回転させることで、偏心ディスク19の偏心量εを増減して無段変速機Tの変速比を変更する変速アクチュエータ30が設けられる。
図1に示すように、8個の伝達ユニット14…を支持する支持フレーム11は、軸線L方向中央に位置する中央フレーム31と、軸線L方向両側に位置する一対の側方フレーム32,33とからなり、中央フレーム31とエンジンE側に位置する一方の側方フレーム32との間に4個の伝達ユニット14…が配置され、中央フレーム31と反エンジンE側に位置する他方の側方フレーム33との間に4個の伝達ユニット14…が配置される。
中央フレーム31は鉄製の板状部材であり、その長手方向両側の入力軸12側および出力軸13側に形成された2個のベアリング支持孔31a,31bを備える。
エンジンE側に位置する側方フレーム32は基本的にアルミニウム合金で籠状に形成された鋳造部材であり、中央部に鉄製の板状部材であるベアリングホルダ38が鋳込みにより埋設される。ベアリングホルダ38の入力軸12側および出力軸13側には、それぞれベアリング支持孔38a,38bが形成される。
反エンジンE側に位置する側方フレーム33も基本的にアルミニウム合金で籠状に形成された鋳造部材であり、その中央に鉄製の板状部材であるベアリングホルダ39が鋳込みにより埋設される。反エンジンE側に位置する側方フレーム33およびベアリングホルダ39の構造は、上述したエンジンE側に位置する側方フレーム32側およびベアリングホルダ38に対して面対称な構造であるため、その重複する説明は省略する。
入力軸12の軸線L方向中央部に固定された偏心カム17は、中央フレーム31のベアリング支持孔31aに中央部支持ベアリング34を介して支持されるとともに、入力軸12の軸線L方向両端部は、一対の側方フレーム32,33のベアリングホルダ38,39のベアリング支持孔38a,39aにそれぞれ軸端部支持ベアリング36,36を介して支持される。同様に、出力軸13の軸線L方向中央部は、中央フレーム31のベアリング支持孔31bに中央部支持ベアリング35を介して支持されるとともに、出力軸13の軸線L方向両端部は、一対の側方フレーム32,33のベアリングホルダ38,39のベアリング支持孔38b,39bにそれぞれ軸端部支持ベアリング37,37を介して支持される。
そして中央フレーム31および一対の側方フレーム32,33をボルト40…で一体に締結してサブアセンブリが組み立てられ、このサブアセンブリが中央フレーム31を貫通するボルト41…でミッションケース42の内部に締結される。
次に、図5および図6に基づいて変速アクチュエータ30の構造を説明する。
入力軸12に対して変速軸15を相対回転させて無段変速機Tの変速比を変更するための変速アクチュエータ30は、入力軸12の軸線L上に配置された第1遊星歯車機構PGS1、第2遊星歯車機構PGS2および偏心遊星歯車機構PGS3を備える。
シングルピニオン型の第1遊星歯車機構PGS1は、サンギヤSaと、リングギヤRaと、キャリヤCaと、キャリヤCaに回転自在に支持されてサンギヤSaおよびリングギヤRaに同時に噛合する複数のピニオンPa…とを備える。シングルピニオン型の第2遊星歯車機構PGS2は、サンギヤSbと、リングギヤRbと、キャリヤCbと、キャリヤCbに回転自在に支持されてサンギヤSbおよびリングギヤRbに同時に噛合する複数のピニオンPb…とを備える。第1遊星歯車機構PGS1のキャリヤCaおよび第2遊星歯車機構PGS2のキャリヤCbは一体に形成される。本実施の形態では、両サンギヤSa,Sbの歯数は同一であり、両リングギヤRa,Rbの歯数は同一であり、両ピニオンPa,Pbの歯数は同一である。第1遊星歯車機構PGS1および第2遊星歯車機構PGS2は切り離し機構を構成する。
変速アクチュエータ30の電動モータ61の回転軸に設けた駆動ギヤ62に歯合する中間ギヤ63は、ミッションケース42の一部である変速アクチュエータケース42aに一端を固定した固定軸43に回転自在に支持された従動ギヤ64に噛合する。一方、第2遊星歯車機構PGS2のサンギヤSbは固定軸43の他端に回転不能に固定される。
減速機構を構成する偏心遊星歯車機構PGS3は、第1遊星歯車機構PGS1のサンギヤSaと一体のサンギヤScと、変速アクチュエータケース42aに固定されたリングギヤRcと、固定軸43の外周に従動ギヤ64を回転自在に支持する軸部の一部を入力軸12の軸線Lに対して偏心させた偏心部64aと、偏心部64aに回転自在に支持されたキャリヤCcと、キャリヤCcに設けられてリングギヤRcに噛合するキャリヤ外歯ギヤCc1と、キャリヤCcに設けられてサンギヤScに噛合するキャリヤ内歯ギヤCc2とを備える。
偏心部64aの軸線L´は固定軸43の軸線Lに対して距離αだけ偏心するため(図6参照)、偏心部64aに支持されたキャリヤCcはサンギヤScおよびリングギヤRcに対して距離αだけ偏心する。その結果、キャリヤ外歯ギヤCc1およびリングギヤRcの噛合部と、キャリヤ内歯ギヤCc2およびサンギヤScの噛合部とは、入力軸12の軸線Lを挟んで位相が相互に180°ずれている。
固定軸43の外径は変速アクチュエータケース42aに固定される一端側から変速軸15に嵌合する他端側に向かって複数段に縮径しており、その内部には一端側から他端側に向かって複数段に縮径する軸方向油路43aが形成される。固定軸43の軸方向油路43aは変速軸15の内部に形成された軸方向油路15aにシール部材53を介して連通し、変速軸15の軸方向油路15aから複数の径方向油路15b…が分岐する。
また固定軸43の軸方向油路43aにおける軸線L方向に離間した三つの位置から、第1径方向油路43b、第2径方向油路43cおよび第3径方向油路43dが径方向に分岐しており、第1径方向油路43bは第1遊星歯車機構PGS1の内周部に開口し、第2径方向油路43cは第2遊星歯車機構PGS2の内周部に開口し、第3径方向油路43dは第3遊星歯車機構PGS3の内周部に開口する。第1〜第3径方向油路43b,43c,43dは、この無段変速機Tを車両に搭載した状態で固定軸43の下面に下向きに開放する。
固定軸43の外周には一端側から他端側に向けて6個のボールベアリング44〜49が配置されており、ボールベアリング44,45の外周には従動ギヤ64が支持され、ボールベアリング46の外周には第3遊星歯車機構PGS3のサンギヤScが支持され、ボールベアリング47の外周には第1遊星歯車機構PGS1のサンギヤSaが支持され、ボールベアリング48の外周には第2遊星歯車機構PGS2のキャリヤCbが支持され、ボールベアリング49の外周には第2遊星歯車機構PGS2のリングギヤRbを変速軸15に連結するドラム状の連結部材54が支持される。また従動ギヤ64の外周にはボールベアリング50を介して第3遊星歯車機構PGS3のキャリヤ内歯ギヤCc2が支持され、入力軸12の軸端、すなわち左端に位置する偏心カム17に第1遊星歯車機構PGS1のリングギヤRaを連結するドラム状の連結部材55は、ボールベアリング51を介して第3遊星歯車機構PGS3のサンギヤScの外周に支持され、連結部材55の内周にボールベアリング52を介して第1遊星歯車機構PGS1のキャリヤCaの外周が支持される。
第2遊星歯車機構PGS2のリングギヤRbと一体の連結部材54の内周の筒状部54aは、変速軸15の軸端部外周にスプライン嵌合部56で嵌合して一体に結合される。そして連結部材54の筒状部54aの先端と、最も変速アクチュエータ30側に位置するピニオン18に隣接するニードルベアリング16とに挟まれた変速軸15の外周面に、弧状断面を有する環状の縮径部15cが形成される。
次に、無段変速機Tの一つの伝達ユニット14の作用を説明する。
図2および図4(A)〜図4(D)から明らかなように、入力軸12の軸線Lに対して偏心ディスク19の中心O2が偏心しているとき、エンジンEによって入力軸12が回転するとコネクティングロッド21の大端部21aが軸線Lまわりに偏心回転することで、コネクティングロッド21が往復運動する。
その結果、コネクティングロッド21が往復運動する過程で図中左側に引かれると、揺動リンク25と共にアウター部材26が図2において反時計方向に揺動し、スプリング28…に付勢されたローラ29…がアウター部材26およびインナー部材27間の楔状の空間に噛み込み、アウター部材26およびインナー部材27がローラ29…を介して結合されることで、ワンウェイクラッチ23が係合してコネクティングロッド21の動きが出力軸13に伝達される。逆にコネクティングロッド21が往復運動する過程で図中右側に押されると、揺動リンク25と共にアウター部材26が図2において時計方向に揺動し、ローラ29…がスプリング28…を圧縮しながらアウター部材26およびインナー部材27間の楔状の空間から押し出され、アウター部材26およびインナー部材27が相互にスリップすることで、ワンウェイクラッチ23が係合解除してコネクティングロッド21の動きが出力軸13に伝達されなくなる。
このようにして、入力軸12が1回転する間に、入力軸12の回転が所定時間だけ出力軸13に伝達されるため、入力軸12が連続回転すると出力軸13は間欠回転する。8個の伝達ユニット14…の偏心ディスク19…の偏心量εは全て同一であるが、偏心方向の位相が相互に45°ずつずれているため、8個の伝達ユニット14…が入力軸12の回転を交互に出力軸13に伝達することで、出力軸13は連続的に回転する。
このとき、偏心ディスク19の偏心量εが大きいほど、コネクティングロッド21の往復ストロークが大きくなって出力軸13の1回の回転角が増加し、無段変速機Tの変速比が小さくなる。逆に、偏心ディスク19の偏心量εが小さいほど、コネクティングロッド21の往復ストロークが小さくなって出力軸13の1回の回転角が減少し、無段変速機Tの変速比が大きくなる。そして偏心ディスク19の偏心量εがゼロになると、入力軸12が回転してもコネクティングロッド21が移動を停止するために出力軸13は回転せず、無段変速機Tの変速比が最大(無限大)になる。
入力軸12に対して変速軸15が相対回転しないとき、つまり入力軸12および変速軸15が同一速度で回転するとき、無段変速機Tの変速比は一定に維持される。変速アクチュエータ30により入力軸12に対して変速軸15を相対回転させると、各伝達ユニット14のピニオン18にリングギヤ19bを噛合させた偏心ディスク19の偏心凹部19a,19aが、入力軸12と一体の偏心カム17,17のカム17a,17aに案内されて回転し、入力軸12の軸線Lに対する偏心ディスク19の中心O2の偏心量εが変化する。
図4(A)は変速比が最小の状態(変速比:TD)を示すもので、このとき入力軸12の軸線Lに対する偏心ディスク19の中心O2の偏心量εは、入力軸12の軸線Lから偏心カム17,17の中心O1までの距離dと、偏心カム17,17の中心O1から偏心ディスク19の中心O2までの距離dとの和である2dに等しい最大値になる。入力軸12に対して変速軸15が相対回転すると、入力軸12と一体の偏心カム17,17に対して偏心ディスク19が相対回転することで、図4(B)および図4(C)に示すように、入力軸12の軸線Lに対する偏心ディスク19の中心O2の偏心量εは最大値の2dから次第に減少して変速比が増加する。入力軸12に対して変速軸15が更に相対回転すると、入力軸12と一体の偏心カム17,17に対して偏心ディスク19が更に相対回転することで、図4(D)に示すように、ついには入力軸12の軸線Lに偏心ディスク19の中心O2が重なり合って偏心量εがゼロになり、変速比が最大(無限大)の状態(変速比:UD)になって出力軸13に対する動力伝達が遮断される。
次に、変速アクチュエータ30の作用を説明する。
図5および図6において、電動モータ61を駆動すると、その回転が駆動ギヤ62、中間ギヤ63および従動ギヤ64を介して第3遊星歯車機構PGS3の偏心部64aに入力され、偏心部64aの外周に支持されたキャリヤCcが偏心回転する。固定されたリングギヤRcにキャリヤ外歯ギヤCc1が歯合するキャリヤCcは自転しながらゆっくりと公転し、キャリヤCcのキャリヤ内歯ギヤCc2に歯合する第1遊星歯車機構PGS1のサンギヤSaが、偏心部64aの回転に対して大きく減速されて回転する。このように、第3遊星歯車機構PGS3は、電動モータ61の回転を減速して第1遊星歯車機構PGS1のサンギヤSaに伝達する減速機構として機能する。
電動モータ61が停止した状態では第1遊星歯車機構PGS1のサンギヤSaが停止し、また第2遊星歯車機構PGS2のサンギヤSbも変速アクチュエータケース42aに固定されて停止している。この状態で入力軸12に連結部材55を介して連結された第1遊星歯車機構PGS1のリングギヤRaが入力軸12の回転数であるN1で回転すると、第1遊星歯車機構PGS1のキャリヤCaおよび第2遊星歯車機構PGS2のキャリヤCbが一体に形成されているため、第2遊星歯車機構PGS2のリングギヤRbもN1で回転する。その結果、変速軸15は入力軸12と同じ回転数N1で回転し、偏心ディスク19…の偏心量は一定に維持される。このように、電動モータ61が停止した状態では、入力軸12および変速軸15は共にN1で回転して相対回転が発生しないため、偏心ディスク18の偏心量εは変化せず、変速比は一定に維持される。
入力軸12および変速軸15が共にN1で回転している状態で電動モータ61を駆動すると、第3遊星歯車機構PGS3を介して第1遊星歯車機構PGS1のサンギヤSaが回転し、変速アクチュエータケース42aに固定された第2遊星歯車機構PGS2のサンギヤSbとの間に差回転が発生する。第1遊星歯車機構PGS1のキャリヤCaおよび第2遊星歯車機構PGS2のキャリヤCbは一体に形成されているため、第1遊星歯車機構PGS1のリングギヤRaおよび第2遊星歯車機構PGS2のリングギヤRbには、二つのサンギヤSa,Sb間の差回転に応じた差回転が発生し、変速軸15の回転数は電動モータ61が停止していたときのN1から変化する。このように、入力軸12および変速軸15が共に回転数N1で回転している状態で電動モータ61を駆動すると、その回転方向および回転数に応じた差回転が変速軸15に発生し、変速軸15の回転数がN1からずれることで、偏心ディスク18の偏心量εが変化して無段変速機Tの変速比が変更される。
次に、変速軸15のピニオン18…および偏心ディスク19…のリングギヤ19b…間に発生する歯打ち音の低減について説明する。
図7は入力軸12が1回転する間に変速軸15のピニオン18に作用する反力トルクの変化を示すものである。同図から明らかなように、入力軸12が1回転する間に、入力軸12の軸線L、偏心カム17の中心O1および偏心ディスク19の中心O2を結ぶく字状に折れ曲がったリンク(図4参照)と、コネクティングロッド21とが成す角度が刻々と変化するため、ピニオン18に作用する反力トルクの方向は反転する。変速軸15のピニオン18および偏心ディスク19のリングギヤ19bの歯合部にはバックラッシュが存在するため、ピニオン18に作用する反力トルクの方向が反転するときに、ピニオン18およびリングギヤ19bが相対回転して前記バックラッシュが詰まることで、ピニオン18の歯先とリングギヤ19bの歯先とが衝突して歯打ち音が発生し、これが無段変速機Tの騒音の原因となる問題がある。
歯打ち音を低減するには、変速軸15の捩じり剛性を低減し、ピニオン18の歯先とリングギヤ19bの歯先とが衝突したときに変速軸15が容易に捩じれて衝撃を吸収するようにすれば良い。しかしながら、変速軸15全体の捩じり剛性を低減してしまうと、変速軸15の捩じれ角は変速アクチュエータ30に近い側から遠い側(エンジンE側)に向かって次第に増加するため、変速軸15の捩じれによって変速アクチュエータ30に近いピニオン18の位相は僅かしか変化しなくても、変速アクチュエータ30から遠いピニオン18の位相は大きく変化してしまい、各伝達ユニット14の偏心ディスク19の偏心量εが不均一になってしまう。
その結果、図8に示すように、変速軸15の捩じり剛性が高い場合には均一であった♯〜♯8の8個の伝達ユニット14…の出力トルクが、変速軸15の捩じり剛性を低くしたことにより不均一に低下してしまう問題がある。
しかしながら、本実施の形態によれば、変速アクチュエータ30に接続される変速軸15の軸端、つまり8個のピニオン18…よりも軸線L方向外側に縮径部15cを形成し、変速軸15の捩じり剛性を局部的に低下させたので、何れの伝達ユニット14のピニオン18およびリングギヤ19bが衝突しても変速軸15が縮径部15cにおいて捩じれることで衝撃を吸収して歯打ち音を低減しながら、8個のピニオン18…の間に位相差が発生するのを防止して8個の伝達ユニット14…の出力トルクを均一化することができる。
図9の比較例1は、変速軸15全体を高剛性にした場合であり、変速アクチュエータ30に近い♯8伝達ユニット14からエンジンEに近い♯1伝達ユニット14に向かって8個のピニオン18…の位相のバラツキは僅かに増加するだけである。一方、比較例2は、変速軸15全体を低剛性にした場合であり、変速アクチュエータ30に近い♯8伝達ユニット14からエンジンEに近い♯1伝達ユニット14に向かってピニオン18…の位相のバラツキは大きく増加してしまうため、歯打ち音は低減できるものの、8個の伝達ユニット14…の出力トルクが不均一になってしまう。そして本実施の形態は、変速軸15の縮径部15cで歯打ち音を低減しながら、縮径部15cを8個のピニオン18…の軸線L方向外側に形成したことで、8個のピニオン18…の位相のバラツキは比較例1と同等に低く抑えられている。
しかも本実施の形態によれば、変速軸15の縮径部15cの断面形状が角部を持たない円弧状であるため、縮径部15cに応力が集中して変速軸15の強度を低下させることが防止される。
次に、図10に基づいて本発明の第2の実施の形態を説明する。
第1の実施の形態の変速軸15の縮径部15cは断面円弧状の溝で構成されていたが(図6参照)、第2の実施の形態の縮径部15cは、軸線L方向の長さが径方向の深さよりも大きい浅底状断面の溝で構成されている。その結果、縮径部15cの軸線L方向の長さの調整により変速軸15の捩じり剛性を任意に調整できるだけでなく、縮径部15cが形成された範囲に捩じり荷重を分散して応力集中を回避し、変速軸15の強度を確保することができる。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
例えば、変速アクチュエータ30の構造は実施の形態に限定されるものではない。
また本発明の駆動源は実施の形態のエンジンEに限定されず、電動モータ等の他の駆動源であっても良い。
12 入力軸
13 出力軸
14 伝達ユニット
15 変速軸
15c 縮径部
17 偏心カム
18 ピニオン
19 偏心ディスク(偏心部材)
19b リングギヤ
21 コネクティングロッド
23 ワンウェイクラッチ
26 アウター部材
30 変速アクチュエータ
54a 筒状部(アクチュエータ出力軸)
56 スプライン嵌合部
E エンジン(駆動源)
L 入力軸の軸線
ε 偏心部材の偏心量
13 出力軸
14 伝達ユニット
15 変速軸
15c 縮径部
17 偏心カム
18 ピニオン
19 偏心ディスク(偏心部材)
19b リングギヤ
21 コネクティングロッド
23 ワンウェイクラッチ
26 アウター部材
30 変速アクチュエータ
54a 筒状部(アクチュエータ出力軸)
56 スプライン嵌合部
E エンジン(駆動源)
L 入力軸の軸線
ε 偏心部材の偏心量
Claims (3)
- 駆動源(E)に接続された入力軸(12)の回転を変速して出力軸(13)に伝達する複数の伝達ユニット(14)を前記入力軸(12)の軸線(L)方向に並置し、
前記伝達ユニット(14)の各々は、
前記入力軸(12)と一体に回転する偏心カム(17)と、
前記偏心カム(17)の外周に相対回転自在に嵌合するリングギヤ(19b)が形成された偏心部材(19)と、
前記入力軸(12)と同軸に配置された変速軸(15)と、
前記変速軸(15)に設けられて前記リングギヤ(19b)に噛合するピニオン(18)と、
前記変速軸(15)を前記入力軸(12)に対して相対回転させる変速アクチュエータ(30)と、
前記出力軸(13)に設けられたワンウェイクラッチ(23)と、
前記偏心部材(19)および前記ワンウェイクラッチ(23)のアウター部材(26)に接続されて往復運動するコネクティングロッド(21)とを備え、
前記変速アクチュエータ(30)で前記変速軸(15)を前記入力軸(12)に対して相対回転させて前記偏心カム(17)に対する前記偏心部材(19)の位相を変化させることで、前記軸線(L)からの前記偏心部材(19)の偏心量(ε)を変化させて変速比を変更する車両用動力伝達装置であって、
前記変速軸(15)の軸端は前記変速アクチュエータ(30)のアクチュエータ出力軸(54a)の軸端にスプライン嵌合部(56)により連結され、前記変速軸(15)は最も前記変速アクチュエータ(30)寄りの前記ピニオン(18)と前記スプライン嵌合部(56)との間に環状の縮径部(15c)を備えることを特徴とする車両用動力伝達装置。 - 前記縮径部(15c)は円弧状断面の溝で構成されることを特徴とする、請求項1に記載の車両用動力伝達装置。
- 前記縮径部(15c)は前記軸線(L)方向の長さが径方向の深さよりも大きい浅底状断面の溝で構成されることを特徴とする、請求項1に記載の車両用動力伝達装置。
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