本明細書は、ファイル名「H0498.70443WO00 - Sequence Listing」、作成日2013年7月23日、及びサイズ2.34MBの別個のASCIIテキストファイルとして本明細書と共に提出された配列表を、全体として参照によりさらに援用する。
発明の詳細な説明
本発明は、その最も広義の意味において、予め決められた、従って制御された形状、サイズ及び複雑さの核酸構造を作成する方法、そのように作成された構造、及びこの方法で使用されるオリゴヌクレオチド複数個に関する。本発明は、一部には、選ばれた複数個の一本鎖オリゴヌクレオチドを自己集合させて制御された形状、サイズ、複雑さ及び修飾の3D核酸構造を形成し得るという予想外の知見に基づいている。とりわけ、複数個の比較的短い(例えば、DNA折り紙技法に必要な足場鎖と比べて)一本鎖オリゴヌクレオチドのみを使用して様々な予め決められた形状及び制御されたサイズの安定した3D核酸構造を形成し得ることは、意外であると考えられた。
より詳細には、本発明の様々な態様は、一本鎖2ドメイン又は4ドメインオリゴヌクレオチド(本明細書では「核酸ブリック」又は「DNAブリック」とも称される)を使用して、核酸ナノ構造のモジュール式自己集合を三次元にまで広げる方法に関する。この方法の普遍性は、2個の8MDa直方体、共通の直方体「3Dキャンバス」から構築された102個の入り組んだ三次元(3D)形状、及び交互に充填する幾何学的配置に従うモジュール式核酸モチーフから組み立てられた19個の三次元ナノ構造を含む123個のナノ構造の設計及び特徴付けに成功したことにより実証された。また、本明細書には、様々な態様において、単純な三次元モデルを所望の対応する核酸構造の生成に必要な一組の核酸鎖に変換するコンピュータプログラムも提供される。
本発明の核酸構造は、予め決められた又は既知の方法で三次元形状に(配列特異的アニーリングによって)配置された複数のオリゴヌクレオチドを含む。結果として、構造中の各オリゴヌクレオチドの位置は既知となる。このようにして、構造は、特定の位置で例えばオリゴヌクレオチドを加え、取り除き又は置き換えることにより、修飾することができる。この構造はまた、特定の位置に例えば部分を取り付けて修飾することもできる。これは、出発物質として修飾オリゴヌクレオチドを使用することによるか、又は構造が形成された後に特定のオリゴヌクレオチドを修飾することにより達成され得る。従って、得られる構造における出発オリゴヌクレオチドの各々の位置が既知であることにより、構造にアドレサビリティが付与される。
本発明の核酸構造は、場合によっては、一本鎖オリゴヌクレオチドの自己集合プロセスを介して作成され得る。こうした自己集合方法では、一本鎖オリゴヌクレオチドを単一の容器内に組み合わせ、配列相補性に基づき互いにアニーリングさせる。場合によっては、このアニーリングプロセスは、オリゴヌクレオチドを高温に置くことと、次に配列特異的結合に有利となるように温度を徐々に下げることとを含む。本明細書で使用されるとき、用語「自己集合」は、オリゴヌクレオチド(及び場合によっては核酸構造)が、配列特異的な形で、予測された形で且つ外部制御(例えば、オリゴヌクレオチド又は核酸構造を逐次的に加えることによる)なしに互いにアニーリングする能力を指す。
従って本発明は、とりわけ、本発明の一本鎖オリゴヌクレオチドを含む組成物、様々な予め決められた又は既知のサイズ、形状、複雑さ及び修飾の核酸構造を作成する方法、様々な予め決められた又は既知のサイズ、形状、複雑さ及び修飾の核酸構造、核酸の複数個であって、自己集合して三次元核酸構造を形成し得るかかる複数個、2個以上の核酸構造を含む複合構造、及びかかる複合構造を作成する方法を提供する。本発明はまた、本発明の核酸構造及び複合構造を使用する方法も提供する。本発明のこれらの態様及び実施形態は、本明細書にさらに詳細に記載される。
核酸構造
本発明の核酸構造は、配列特異的な形で互いに結合して3D形状を形成する複数個のオリゴヌクレオチドで構成される。本発明のオリゴヌクレオチドは4つのドメインを有し得るが、一部の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個、又はそれ以上のドメインを有し得る。ドメインの数は、少なくとも一部には、オリゴヌクレオチドの長さに依存する。従って、例えば200ヌクレオチドを超える大きさの長いオリゴヌクレオチドは、20個より多いドメインを有することができる。図1A及び図5Aは4ドメインオリゴヌクレオチドの概略図を提供し、各ドメインが8ヌクレオチドを有する。核酸構造を生じさせるアニーリングプロセスの前は、オリゴヌクレオチドは一本鎖形態である。ドメイン及び/又はオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列はランダムであってよい(但し、ドメイン間で必要なハイブリダイゼーションが起こるものとする)。本明細書にさらに詳細に記載されるとおり、一部のドメインはポリT配列を有する。従って、一部の構造は、ランダム配列ドメインとポリTドメインとで構成される。
オリゴヌクレオチドは、例えば4つの隣接する8ヌクレオチドドメインを有し、合計32ヌクレオチドの長さの「ブリック(brick)」(LEGO(登録商標)ブロック(brick)と同様、以下参照)として概念化することができる。これらのドメインは、それぞれ1、2、3、4と称され得る(図1A)(明確にするため、場合によってこれらの図は、「X」ブリックの4つのドメインを指示してX1、X2、X3及びX4ドメインを参照し、「Y」ブリックの4つのドメインを指示してY1、Y2、Y3及びY4ドメインを参照し得る)。各DNAブリックは、場合によっては互いに異なるヌクレオチド配列を担持する。全てのDNAブリックが、目的の構造に組み込まれたときに同一の全体形状、即ち単一のリン酸結合によってつなぎ合わされた2個の16塩基対(16mer)逆平行ヘリックスをとる。結合に隣接するこの2つのドメインは「ヘッド」ドメインと称され、他の2つは「テイル」ドメインと称される。配列「a」を担持するテイルドメインを含むDNAブリックは、立体特異的な形で相補的な「a*」ヘッドドメインを含む隣接ブリックと生産的に相互作用することができる。ブリック間で対が形成される毎に、90°の二面角を作り出すように充填された3つの平行なヘリックスが画定される(図1B上);この角度は、8塩基対のDNAの4分の3右巻きらせん状のねじれに由来する。
LEGO(登録商標)様モデルは、本明細書では、設計を単純な方法で描くために用いられ得る(図1B下及び図5)。このモデルは詳細ならせん構造及び鎖の極性には目をつぶるが、アスペクト比及びDNAブリック間の相互作用に対する一部の向きの制約に関する情報は保持する:ヘリックス軸と同じ方向を指し示す、2つの突出する丸い差込み部が、2つのテイルドメインに相当し;凹んだ丸い穴を有する2つの連結された立方体が、2つのヘッドドメインに相当する。ブリックは、2種類の向き、水平又は垂直のうちの一方をとらなければならない(図1B)。これらの2つのブリックが、差込み部を穴に挿入することとして表されるハイブリダイゼーションによって連結すると、90°の角度を形成する。挿入は、適合する極性(説明を簡潔にするため、本モデルではこれは図式的には描かれない)の相補配列を持つ差込み部と穴との間のみで可能である。鎖の極性及びブリック間の相互作用に対する立体特異的な制約を特定するさらなる詳細なLEGO(登録商標)様モデルを、図5に示す。
図5は、本明細書で北、西、南、及び東と称される向きを有する連続的な8塩基対の層に沿った核酸ブリックを示す。北向き及び南向きのブリックは、各ダブルヘリックスから1つのヘリックスを含むサブセットに限定され得る。同様に、西向き及び東向きのブリックは、相補的なサブセットのヘリックスに限定され得る(図6も参照のこと)。従って、北及び南に向くブリックを併せてYブリックとしてまとめ、西及び東に向くブリックを併せてXブリックとしてまとめることが好都合であり得る。ドメイン間ハイブリダイゼーションの点で、図5では、あるオリゴヌクレオチド上のテイルドメインと別のオリゴヌクレオチドのヘッドドメインの間に連結があり得る。ここで、異なる突起形状(テイルドメイン1及び4について)及び適合する空洞(ヘッドドメイン2及び3について)を使用するLEGO(登録商標)モデルを示す。テイルドメインY4及びヘッドドメインX2の連結が示される(図5B)。加えて、これらの形状及び空洞は、ブリックの対に強制的に90°の二面角を形成させるように設計される。
6H(ヘリックス)×6H(ヘリックス)×48B(塩基対)直方体ナノ構造(図1C、図1D)において、この設計の構造周期性を説明することができる。ブリックは、そのヘッドドメインを含む8塩基対層にまとめることができる。ブリックは、連続する8塩基対層に沿って90°の時計回りの回転を伴い、従ってブリックの向き及び配置の点で4層毎に繰り返し単位となる。例えば、図1Dにおける1番目及び5番目の8塩基対層が同じ配置のブリックを共有し得る。8塩基対層の中では、全てのブリックが同じ向きを共有し、それらの穴の対がラインを画定する連結鎖を形成し得る。これらの連結鎖を横方向に互い違いの配置で充填すると、この層によって画定される平面が敷かれる。各層の境界上では、一部の核酸ブリックが半分のブリックに二等分される必要があり(即ち、2ドメインオリゴヌクレオチド)、これは2つのドメインを含む単一のヘリックスに相当する。直方体は核酸ブリックから一段階反応で自己集合することができる。場合によっては、各ブリックが、その予め設計された位置にのみ嵌まるように仕向けられるユニーク配列を有し得る。そのモジュール性により、予め設計された核酸ブリックナノ構造を使用して、ブリックのサブセットから組み立てられる、より小さいカスタムの任意形状を構築することができる(図1E)。
Lego様モデルは、各8bp二重鎖の位置情報のみを含む3Dモデルにさらに抽象化することができる。10H×10H×80B直方体が10×10×10ボクセルを含む3Dキャンバスとして概念化され、各ボクセルが8bp二重鎖に対応する(図1E)。この3Dキャンバスに基づき、初めにコンピュータプログラムが、完全体のブリック及び半分のブリックを含む、任意のカスタム形状の構築に使用することのできる完全な一組のDNAブリックを生成する。次に設計者は、3Dモデリングソフトウェアを使用して、3Dキャンバスから不要なボクセルを取り除くことにより(3Dスカルプティングに似たプロセス)目標の形状を定義するだけでよい。続いてコンピュータプログラムが形状を解析し、その形状を自己集合させるのに的確なオリゴヌクレオチド(ブリック)のサブセットを自動で選択し得る。
核酸構造は合成の前に設計されてもよく、合成過程で特定の選択オリゴヌクレオチドを使用することにより、そのサイズ、形状、複雑さ及び修飾が指定され、且つ制御され得る。構造における各ドメイン及び各オリゴヌクレオチドの位置は既知であり、特定の形状のナノ構造を合成する前に提供される。
典型的には、オリゴヌクレオチドの各ドメインはユニーク配列を有する。一対の隣接するオリゴヌクレオチドが、それらのオリゴヌクレオチドの一方に各々位置する2つの相補ドメイン(例えば、ヘッドドメイン1とテイルドメイン3)のハイブリダイゼーションによって二重鎖を形成する(図1B上)。しかしながら、場合によっては、オリゴヌクレオチドの特定のドメインが核酸構造における別のドメインと結合しないこともある。そのような例では、構造中にポリTドメインを有するオリゴヌクレオチドが、好ましくは境界に、且つ一本鎖であるポリTドメインをもたらす構成で存在する。従って、一部の実施形態では、4ドメイン(又はそれ以上の)オリゴヌクレオチドの少なくとも1つ又は少なくとも2つのドメインが、ポリTドメイン(例えばTヌクレオチドからなる)であり得る。
場合によっては、核酸構造中の少なくとも1つのドメインがユニークであり、これは、そのドメインが当該の構造に1回のみ現れることを意味する。構造は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000個又はそれ以上のユニークドメインを含めた、1つ以上のユニークドメインを含み得る。一部の実施形態では、構造中のドメインの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、80%、又は90%がユニークである。例として、構造は、各々がその構造中に1回のみ現れる第1の複数個のドメインを含むことができ、これらのユニークドメインは構造中の全ドメインの75%に存在し得るとともに、各々がその構造中に2回以上現れる第2の複数個のドメインを含むことができ、これらの繰り返しドメインは構造中の全ドメインの25%に相当し得る。他の割合もまた可能であることは明らかであろう。一部の実施形態では、構造中のあらゆるドメインがユニークである。一部の実施形態では、ポリTドメインを除く構造中のあらゆるドメインがユニークである。複合構造(即ち、スペーサー−リンカーで互いに連結された2個以上の核酸構造を含む構造)中のあらゆるドメインがユニークであっても、又はユニークでなくてもよい。
場合によっては、構造中のダブルヘリックスにおける少なくとも1つのドメインがユニークであり、これは、そのドメインが当該のダブルヘリックスに1回のみ現れることを意味する。ドメインは同じ構造内の他のヘリックスに存在してもよく、従って場合によっては、核酸構造全体の文脈ではユニークでないこともある。ヘリックスに、当該のヘリックスの文脈でユニークなドメインが、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個又はそれ以上あり得る。ヘリックス中のユニークドメインは、当該のヘリックス中のドメインの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、80%、90%、又は100%に相当し得る。ヘリックス中のユニークドメインは、構造の末端又はその近傍に位置し得る。ヘリックス中のユニークドメインは互いに隣接していてもよく、又は互いに離間されていてもよい。それらは繰り返しドメイン(即ち、ヘリックスに2回以上現れるドメイン)によって互いに離されていてもよい。
構造は、ユニークドメインを有する1つ以上のヘリックスを含み得る。この種類のヘリックスは、構造中に存在するヘリックスの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%又は100%に相当し得る。この種類のヘリックスが構造中に2つ以上存在する場合、それらは互いに隣接していてもよく、又はユニークドメインを含まないヘリックスを含め、他のヘリックスによって離されていてもよい。例として、ユニークドメインを有するヘリックスが、構造において、ユニークドメインを含まないヘリックスと交互に並び得る。
従って、場合によっては、核酸構造は、1つ以上のユニークドメインを各々有する2つ以上のヘリックスを含むことができ、ここでドメインは個々のヘリックスそれ自体の文脈でユニークであり、且つ場合により、構造全体としての文脈の中でユニークである。個々のヘリックスにおけるユニークドメインが構造中の他のヘリックスに存在し得る。個々のヘリックスにおけるユニークドメインが、構造中の他のヘリックスにおけるユニークドメインであり得る。
場合によっては、構造中の1つ以上のヘリックスが、各々、完全にユニークドメインで構成されてもよく、これは、それらのドメインの各々が各ヘリックスにつき1回のみ現れるか又は各構造につき1回のみ現れることを意味する。
従って、場合によっては、本発明の核酸構造は少なくとも1つのユニークダブルヘリックスを含む。ユニークダブルヘリックスは、構造中のいかなる他のヘリックスとも異なるドメイン組成を有するヘリックスである。従ってユニークダブルヘリックスは、構造中のいかなる他のヘリックスとも異なるヌクレオチド配列もまた有し得る。
さらに他の例では、本発明の核酸構造は、ユニークドメインで構成されるある領域と、ユニークでない又は繰り返しドメインで構成される別の領域とを含むように設計され得る。
記載される構造は、少なくとも一部には、X方向に形成される複数のヘリックスと、Y方向に形成される複数のヘリックスと、かかるヘリックスの奥行き(かかるヘリックスの塩基対の数によって指示される)とに基づき定義され得る。そのように形成される(及び参照される)ヘリックスは、別個のオリゴヌクレオチドからハイブリダイズする複数個のドメインで構成されるため、不連続なヘリックスであり得る(即ち、ヘリックスにおいてその長さに沿って二本鎖ニックがあり得る)ことが理解されるべきである。本発明の方法は、直方体、例えば3H×3H(×32b、×64b、×128b、×256b、×512b、×1024b)、4H×4H(×32b、×64b、×128b、×256b、×512b)、6H×6H(×32b、×64b、×128b、×256b)、12H×12H×48b、円柱、例えば6H×10H(×32b、×64b、×128b)、鎖、例えば30H×1H×126b、ハニカム格子、例えば6H×6H×84b−HC、及び六方格子、例えば6H×7H×108b−HLを含めた、種々のサイズの3Dキャンバス(それから様々な任意の形状の核酸構造を形成し得る)の生成に使用されている。
構造は、少なくとも一部には、複数個の既知のオリゴヌクレオチドを単一の容器においてアニーリングすることにより形成される。図2Aは、オリゴヌクレオチドブロックナノ構造を自己集合させるための一段階熱的アニーリングの概略図を示す。この図は、予想される直方体構造の概略図を示す。図2Dは、アニーリングプロセス後の精製した6H×10H×128B構造の透過電子顕微鏡(TEM)画像を示す。高倍率画像は、6H×10H×128BのそれぞれX−Y平面、X−Z平面及びY−Z平面投影に対応する3つの完全なナノ構造像を示す。拡大TEM画像の右側にコンピュータ生成投影図が示される。アニーリングプロセス後のゲル電気泳動分析は、最適条件でアニーリングした未精製の6H×10H×128B構造(レーン1)及び精製した6H×10H×128B構造(レーン2)を示す。灰色の矢印は6H×10H×128B産物バンドを指す。特定のサイズの三次元形状を生成するのに用い得る既知のオリゴヌクレオチドプールから出発して、異なる形状及び/又はサイズの構造を形成するため、選択のオリゴヌクレオチドがプールから除外され得る。
これらの方法を使用して作成し得る様々な構造を図3Eに示す。また、かかる方法によって得られるアニーリング後産物も示す。本発明は、構造の内部にあるオリゴヌクレオチドの除外を企図する。例として、図3Bは、内部が空洞のパターン(即ち、任意のオリゴヌクレオチドを欠く予め決められた領域)を有する構造を例示する。
従って、場合によってはエンドユーザーは、構造の各位置に存在する特定のオリゴヌクレオチドを知ったうえで、核酸構造、例えば特定の長さ、幅及び奥行き寸法を有する直方体を設計する。実際には、エンドユーザーは、構造内の各オリゴヌクレオチドの正確な位置を示す物理的マップを有する。マップ内の(従って核酸構造内の)位置毎の各オリゴヌクレオチドのアイデンティティが分かっていることにより、エンドユーザーは、出発点として特定の構造を用いて特定のパターン又は形状を操作することが可能になる。かかる操作は、組み合わされて核酸構造を形成するオリゴヌクレオチドの混合物から1つ以上の既知のオリゴヌクレオチドを除外することにより、及び/又は追加的な既知のオリゴヌクレオチドを取り入れることにより行うことができる。
従って、例として及び本明細書において実証されるとおり、エンドユーザーは、特定の長さ(Y軸)、幅(X軸)及び奥行き(Z軸)を有し、且つ複数個のユニークオリゴヌクレオチドで構成される三次元立方体を設計し得る。エンドユーザーは、格子の各位置におけるオリゴヌクレオチドのアイデンティティを知っている。立方体それ自体を合成できることに加え、エンドユーザーは、その立方体を出発点として使用して1つ以上の他の核酸構造を設計し、合成することもできる。本明細書において実証されるとおり、立方体全体を作り上げるために用いられるであろうプールから1個及び通常はそれ以上のオリゴヌクレオチドを除外することにより、様々な形状の核酸構造が合成され得る。これらの形状には、限定なしに、図3Eに示される形状の任意のものが含まれる。
従って本発明は、数多くの異なる核酸構造を、各構造をデノボで設計する必要なしに合成する方法を提供する。むしろ、立方体などの最初の核酸構造から出発して、単純に、予め選択したオリゴヌクレオチドを除外し、及び/又は予め選択したオリゴヌクレオチドを取り入れるだけで、様々な他の核酸構造を形成し得る。このように、エンドユーザーは一本鎖オリゴヌクレオチドをモジュール式に使用し、所望の核酸構造の最終的な形状及びサイズに応じて複数個のうちのメンバーを取り入れ又は除外する。複数個のオリゴヌクレオチドメンバー間の相互作用は、認め得るほどの変化を及ぼさないものと考えられ、従ってエンドユーザーが新しい核酸構造毎に本質的にゼロから設計する必要はない。代わりに、エンドユーザーは所望の形状、サイズ及び複雑さの核酸構造を形成するため、各オリゴヌクレオチドのストックを調製し、様々なストックを、構造におけるその相対頻度に対応する相対濃度で、且つ単一の容器において互いに組み合わせる。
所望の形状及びサイズの核酸構造における一本鎖オリゴヌクレオチドの選択及び配置は、手動で、又はコンピュータアルゴリズムにより行うことができる。かかるコンピュータアルゴリズムの例はUniquimerであり、これは一般に公開されていて利用可能である。
本明細書の図の一部に示されるとおり、本発明の核酸構造のサイズはアニーリングプロセスの間に制御し得る。このサイズ制御は、1つ以上のユニークドメイン、又は1つ以上のユニークヘリックスを有する構造を設計し、従ってアニーリングプロセスにおいて選択のオリゴヌクレオチド集合を使用することにより達成される。従って核酸構造のサイズもまた、典型的には予め決められている。
核酸構造のサイズは、その寸法の1つ、2つ又は3つの距離によって表され得る。かかる寸法は、各々独立して、ナノメートル又はマイクロメートル長さ、又はそれ以上であり得る。例として、構造は、5〜100ナノメートル、5〜500ナノメートル、5〜1000ナノメートル、例えば10〜100ナノメートル、10〜500ナノメートル、又は10〜1000ナノメートルの範囲の長さ、幅及び/又は奥行きを各々有する1つ、2つ又は3つの寸法を含み得る。一部の実施形態では、構造は、約5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、300、400、500、600、700、800、900nm又はそれ以上の1つ以上の寸法を有し得る。
核酸構造のサイズはまた、ダブルヘリックスの数並びにそれらのダブルヘリックスの長さによっても提示され得る。ダブルヘリックスの長さは、ヘリックス中のヘリックスターンの数として表され得る。本発明は、ナノメートル及びマイクロメートルスケール、及びそれ以上の構造の作成を企図することが理解されるべきである。
一部の実施形態では、核酸構造は、2、4、8、12、16、20、24、28、32、36、40、44、48、52、56、60、64、68、72、76、80、120、160、200、240、280、320、又は360個のヘリックスを含み得る。例えば、核酸構造は、6ヘリックス(H)×6H×64塩基対(bp)構造(即ち、6H×6H×64B)として提示され得る。構造の他の例には、限定なしに、3H×3H×64B構造、3H×3H×128B構造、3H×3H×256B構造、3H×3H×512B構造、3H×3H×1024B構造、4H×4H×64B構造、4H×4H×128B構造、4H×4H×256B構造、4H×4H×512B構造、4H×4H×1024B構造、6H×6H×64B構造、6H×6H×128B構造、6H×6H×256B構造、6H×6H×512B構造、6H×6H×1024B構造、8H×8H×64B構造、8H×8H×128B構造、8H×8H×256B構造、8H×8H×512B構造、8H×8H×1024B構造、12H×12H×64B構造、12H×12H×128B構造、12H×12H×256B構造、12H×12H×512B構造、又は12H×12H×1024B構造が含まれる。さらなる例には、限定なしに、6H×10H×64B、6H×10H×128B、4H×12H×120B、8H×12H×32B、8H×12H×64B、8H×12H×120B、4H×24H×120B、30H×1H×126B、6H×7H×108Bの構造が含まれる。
本発明の核酸構造は任意の形状又は形態をとり得る。本発明の方法を使用して作り出され得る様々な形状及び形態の例を、図3A〜図3E、図21A〜図21C、図22A〜図22E及び図23A〜図23Dに示す。重要なことに、本発明の方法を使用すると、核酸構造の形状、形態及びサイズを、構造における全ての位置のオリゴヌクレオチドのアイデンティティ(従って配列)の情報に基づき厳密に制御して予め決めるとともに、従って予め設計することが可能になる。
本明細書において考察されるとおり、核酸構造は、複数個の一本鎖オリゴヌクレオチドを単一のアニーリング反応で組み合わせてアニーリングし、所望の形状、サイズ、複雑さ及び修飾の核酸構造を生じさせることにより合成し得る。本発明はまた、別個の小さい核酸構造を互いにアニーリングすることによるモジュール方式の核酸構造の合成も企図する。
一部の実施形態では、核酸及び/又は構造は、それらを高温に供し、次に徐冷プロセスに供することによりアニーリングされる。高温は、約50℃、約45℃、又は約40℃であってもよく、冷却プロセスは、溶液を略室温(例えば約25℃)に冷却することを意図する。冷却時間は数分間、数時間、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、又は10時間、又はそれ以上、例えば24、36、48、60、72、84、96、108、120、132、144、156又は168時間であってもよい。
一部の実施形態では、核酸構造は結晶様の構造(本明細書では「結晶」と称される)である。結晶は、個別の三次元DNAブリック構造間に「連結」ブリックを使用することにより組み立てられ得る。一部の実施形態では、結晶の組立て(「成長」とも称される)は非階層的であってもよく、一方、他の実施形態では、結晶の組立ては階層的であってもよい。本明細書におけるDNAブリック結晶の非階層的成長とは、初めに繰り返し機能単位を形成しない、個々のDNAブリックからの結晶の組立てを指す。従って、結晶が成長するに伴い個々のDNAブリックが結晶に個々に組み込まれる。かかる実施形態では、DNAブリック結晶は、連結ブリックがサイズ及び機能の点で他のブリックと同じである繰り返し単位に基づき設計され得る。対照的に、本明細書におけるDNAブリック結晶の階層的成長とは、「予め形成された」繰り返し機能単位(例えば、DNAブリックから予め形成されたより大きい構造)からの結晶の組立てを指す。一部の実施形態では、個別のDNAブリック設計の表面上にあるDNAブリックが、個々の構造を連結し、且つX軸、Y軸及びZ軸に沿った結晶の成長を個々に伸ばして一次元成長結晶を生じるように修飾され得る。一部の実施形態では、個別のDNAブリック設計の表面上にあるDNAブリックが、個々の構造を連結し、且つX軸、Y軸及びZ軸に沿った結晶の成長を組み合わせで伸ばして二次元成長結晶又は三次元成長結晶を生じるように修飾され得る。
Z軸に沿った多量体化を達成するため、第1のドメイン層の配列が、一部の実施形態では最後のドメイン層の配列と相補的であるように修飾されてもよい。X軸又はY軸に沿った多量体化は、X軸又はY軸に沿った境界上のブリックを新しい32ntブリックに置換することにより達成され得る。これらの新しい32ntブリックの各々は、直方体のある側面と相補的な2つのドメインと、直方体の反対側の側面と相補的な別の2つのドメインとを含み得る。従って、これらの32ntブリックは、直方体単量体を連結して継続的成長を達成し得る。
本明細書で使用されるとき、「Z結晶」は、Z軸に沿って延在する一次元結晶を指す。同様に、「X結晶」又は「Y結晶」は、それぞれX軸又はY軸に沿って延在する一次元結晶を指す。「ZX結晶」は、Z軸及びX軸に沿って延在する二次元結晶を指す。「XY結晶」は、X軸及びY軸に沿って延在する二次元結晶を指す。図20Fは、三次元空間における複雑なDNA結晶を示す。異なる設計の繰り返し単位を使用して、規定の寸法及びパターンのDNAブリック結晶を作成することができる。従って、結晶設計は、「[成長方向]−[繰り返し単位のサイズ]−[その形状の基本的特徴]」のように命名される。例えば、XY−4H×4H×64B−直方体結晶は、4H×4H×64B直方体の繰り返し単位に基づき設計される二次元結晶(XY結晶)である。個別のDNAブリック構造と同様に、DNAブリック結晶の配列は、本明細書に提供される教示に従い、ランダムに生成され得る。
結晶は、DNAブリック(精製した又は未精製の)をほぼ等しい比率(例えば、各鎖につき100nm)で緩衝液(例えば、TE/MgCl2)中に組み合わせ、次に一段階熱的アニーリングを72、84、96、108、120、132、144、156、168時間、又はそれ以上実施することにより組み立てられ得る。
他の実施形態では、本発明は、全ての構造の同時的な混合及びアニーリングと比較したときの、構造の時差的又は逐次的添加(及びアニーリング)を企図する。逐次的添加は、より複雑性の高い構造の合成に特に有用であり得る。場合によっては、これらの及び他のアニーリング方法を静的環境で又はフロー下で行うことができる。フロー環境では、後続の成分の添加前に、アニーリングされていないオリゴヌクレオチド又は核酸構造を取り除くことが可能である。
本発明はまた、核酸構造の複数個も提供する。本明細書で使用されるとき、用語の複数個は2つ以上を意味し、用語の集合と同義的に使用され得る。かかる複数個には、10、50、100、500、1000個又はそれ以上の構造が含まれ得る。かかる複数個は様々な程度の均一性を有してもよく、これは、サイズ、形状、複雑さ及び/又は修飾に関して複数個中における核酸構造の割合が互いに同じであることを意味する。従って複数個の構造は、ある種の特徴を有する構造において少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%均一であり得る。例として、複数個の直方体形状構造は少なくとも50%均一であってよく、これは、当該の複数個におけるその構造の少なくとも50%が直方体形状であることを意味する。
かかる複数個は単分散であってもよく、これは、それらのメンバーが、サイズ、形状、複雑さ及び/又は修飾を含む1つ以上の特徴の点で同じであってもよいことを意味する。複数個は、これらの特徴の全てについて単分散であってもよい。
複数個における均一性(及び逆に不均一性)の程度は、限定はされないが、原子間力顕微鏡法(AFM)又は透過電子顕微鏡法(TEM)、及びゲル電気泳動を含むいくつかの技法を用いて決定され得る。これらの技法は、実施例で考察するとおり、調製された構造集合における均一性の程度の決定に用いられている。重要なことに、本明細書に提供されるアニーリング方法は、優勢な核酸構造種を有する集合を、再現性をもって生じることが分かっている。さらに、当該の優勢種は、本発明の設計及びマッピング手法を用いて意図された種と同じであるものと思われる。
複数の図に示されるとおり、場合によっては、核酸構造が形成された後にもなお、一本鎖のドメインがあり得る。これは、例えば境界に存在し得る。かかる境界は、図に提供される構造の左右の境界によって表される。本発明では、かかるドメインの性質がアニーリングプロセスの効率及び収率に影響を及ぼし得ることが見出されている。より具体的には、これらの一本鎖領域が混合ヌクレオチド配列である場合、構造が凝集し易くなり、収率が低下する。かかる凝集は、こうした一本鎖領域のヌクレオチド配列を操作することにより低減できる。具体的には、配列中のポリTである一本鎖領域は凝集を起こし難く、構造の収率が良くなる。ポリA及びポリC配列もまた用いられ得る。従って、一部の実施形態では、構造に特定の一本鎖ドメインが存在し得るとともに、かかるドメインは配列が互いに同じであり得る。
特定の実施形態において、境界領域は、ポリTドメインと混合配列の他のドメインとの混合物で構成されてもよく、但し、その構造が実質的に凝集しないものとする。このような例では、混合配列ドメインを使用して2つ以上の構造を互いにアニーリングすることができる。かかるドメインの数は、6、8、10個又はそれ以上であり得る。
本発明の構造は、合成中又は合成後に修飾され得る。構造は、合成中に、修飾されたオリゴヌクレオチドを使用して修飾されてもよい。例えば、構造の生成に使用される1つ以上のオリゴヌクレオチドを目的の部分とコンジュゲートしてもよい。修飾オリゴヌクレオチドは、本発明の構造を生成するために使用することができ、但し、オリゴヌクレオチドが所望の構造を形成するために必要とされるとおりの他のオリゴヌクレオチドと結合する能力が、かかる修飾によって妨げられないものとする。それに加えて又は代えて、構造は合成後に修飾されてもよい。
任意の修飾が企図され、但し、その修飾によって別段意図される場合を除き、それがオリゴヌクレオチドの互いのアニーリングを妨げず、且つそれが構造の安定性を低下させないものとする。修飾は、限定はされないが、本質的に化学的又は酵素的であってよい。修飾には、核酸コンジュゲート部分の使用が関わり得る。この部分は、限定なしに、本質的に金属性、有機的及び無機的であってよい。この部分は、構造中のオリゴヌクレオチドを認識して結合することが可能な核酸とコンジュゲートされ得る。かかる核酸は、例として、三重鎖を形成するオリゴヌクレオチドであってもよい。他の場合には、1つ以上の非核酸部分が構造に永久に又は一過性に、共有結合的に又は非共有結合的に、結合され得る。本発明は、ユニーク及び/又は非ユニークオリゴヌクレオチドが修飾され得ることを企図する。構造中のオリゴヌクレオチドは、それ自体が、構造に寄与しない、むしろ部分と構造の結合に使用される1つ以上のドメインとコンジュゲートされ得る。構造中の各オリゴヌクレオチド及び各ドメインの位置を予め決定し得るため、最終的に得られる構造に対する各修飾の位置もまた予め決定し得ることが理解されるべきである。換言すれば、構造における各オリゴヌクレオチドの位置情報が、構造のアドレサビリティを促進する。
加えて、本明細書は、2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号と共に提出された付属書類を全体としてさらに援用し、これは本発明の一部のナノ構造の作製に使用される様々なオリゴヌクレオチド配列を提供する。本発明の6H×6H×64B−S核酸構造の作製に使用されるオリゴヌクレオチド配列は配列番号1〜78、157〜225及び295〜336で示され、対応する5’末端の座標をそれぞれ表3Aに示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表1も参照のこと)。
本発明の6H×6H×64B核酸構造の作製に使用されるオリゴヌクレオチド配列は配列番号79〜156及び226〜294で示され、対応する5’末端の座標をそれぞれ表3Bに示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表1も参照のこと)。
本発明の6H×10H×64B−M核酸構造の作製に使用されるオリゴヌクレオチド配列は配列番号337〜590で示され、対応する5’末端の座標をそれぞれ表4に示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表2も参照のこと)。
本発明の6H×6H×64B核酸構造の作製に使用されるランダムオリゴヌクレオチド配列は配列番号591〜737で示され、対応する5’末端の座標をそれぞれ表5Aに示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表3も参照のこと)。
本発明の6H×6H×64B核酸構造の作製に使用される設計されたオリゴヌクレオチド配列は配列番号738〜884で示され、対応する5’末端の座標をそれぞれ表5Bに示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表3も参照のこと)。
本発明の4H×12H×120B核酸構造の作製に使用される一組のオリゴヌクレオチド配列は配列番号885〜1220で示され、対応する5’末端の座標をそれぞれ表6Aに示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表4も参照のこと)。
本発明の4H×12H×120B核酸構造の作製に使用される別の一組のオリゴヌクレオチド配列は配列番号1221〜1556で示され、対応する5’末端の座標をそれぞれ表6Bに示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表4も参照のこと)。
本発明の4H×12H×120B核酸構造の作製に使用されるさらに別の一組のオリゴヌクレオチド配列は配列番号1557〜1892で示され、対応する5’末端の座標をそれぞれ表6Cに示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表4も参照のこと)。
本発明の6H×10H×128B核酸構造の作製に使用されるオリゴヌクレオチド配列は配列番号1893〜2351で示され、対応する5’末端の座標をそれぞれ表7に示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表5も参照のこと)。
本発明の6H×10H×128B−M核酸構造の作製に使用されるオリゴヌクレオチド配列は配列番号2352〜2810で示され、対応する5’末端の座標をそれぞれ表8に示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表6も参照のこと)。
本発明の3H×3H×32B核酸構造の作製に使用されるコアオリゴヌクレオチド配列は配列番号2811〜2822で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表9Aに示す。本発明の3H×3H×32B核酸構造の作製に使用される末端オリゴヌクレオチド配列は配列番号3195〜3203で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表9Bに示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表7も参照のこと)。
本発明の3H×3H×64B核酸構造の作製に使用されるコアオリゴヌクレオチド配列は配列番号2811〜2834で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表10Aに示す。本発明の3H×3H×64B核酸構造の作製に使用される末端オリゴヌクレオチド配列は配列番号3203〜3212で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表10Bに示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表7も参照のこと)。
本発明の3H×3H×128B核酸構造の作製に使用されるコアオリゴヌクレオチド配列は配列番号2811〜2858で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表11Aに示す。本発明の3H×3H×128B核酸構造の作製に使用される末端オリゴヌクレオチド配列は配列番号3213〜3221で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表11Bに示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表7も参照のこと)。
本発明の3H×3H×256B核酸構造の作製に使用されるコアオリゴヌクレオチド配列は配列番号2811〜2906で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表12Aに示す。本発明の3H×3H×256B核酸構造の作製に使用される末端オリゴヌクレオチド配列は配列番号3222〜3230で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表12Bに示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表7も参照のこと)。
本発明の3H×3H×512B核酸構造の作製に使用されるコアオリゴヌクレオチド配列は配列番号2811〜3002で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表13Aに示す。本発明の3H×3H×512B核酸構造の作製に使用される末端オリゴヌクレオチド配列は配列番号3231〜3239で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表13Bに示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表7も参照のこと)。
本発明の3H×3H×1024B核酸構造の作製に使用されるコアオリゴヌクレオチド配列は配列番号2811〜3194で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表14Aに示す。本発明の3H×3H×1024B核酸構造の作製に使用される末端オリゴヌクレオチド配列は配列番号3240〜3248で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表14Bに示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表7も参照のこと)。
本発明の4H×4H×32B核酸構造の作製に使用されるコアオリゴヌクレオチド配列は配列番号3249〜3272で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表15Aに示す。本発明の4H×4H×32B核酸構造の作製に使用される末端オリゴヌクレオチド配列は配列番号3633〜3646で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表15Bに示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表8も参照のこと)。
本発明の4H×4H×64B核酸構造の作製に使用されるコアオリゴヌクレオチド配列は配列番号3249〜3296で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表16Aに示す。本発明の4H×4H×64B核酸構造の作製に使用される末端オリゴヌクレオチド配列は配列番号3647〜3660で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表16Bに示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表8も参照のこと)。
本発明の4H×4H×128B核酸構造の作製に使用されるコアオリゴヌクレオチド配列は配列番号3249〜3344で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表17Aに示す。本発明の4H×4H×128B核酸構造の作製に使用される末端オリゴヌクレオチド配列は配列番号3661〜3674で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表17Bに示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表8も参照のこと)。
本発明の4H×4H×256B核酸構造の作製に使用されるコアオリゴヌクレオチド配列は配列番号3249〜3440で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表18Aに示す。本発明の4H×4H×256B核酸構造の作製に使用される末端オリゴヌクレオチド配列は配列番号3675〜3688で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表18Bに示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表8も参照のこと)。
本発明の4H×4H×512B核酸構造の作製に使用されるコアオリゴヌクレオチド配列は配列番号3249〜3632で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表19Aに示す。本発明の4H×4H×512B核酸構造の作製に使用される末端オリゴヌクレオチド配列は配列番号3689〜3702で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表19Bに示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表8も参照のこと)。
本発明の6H×6H×32B核酸構造の作製に使用されるコアオリゴヌクレオチド配列は配列番号3703〜3762で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表20Aに示す。本発明の6H×6H×32B核酸構造の作製に使用される末端オリゴヌクレオチド配列は配列番号4183〜4209で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表20Bに示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表9も参照のこと)。
本発明の6H×6H×64B核酸構造の作製に使用されるコアオリゴヌクレオチド配列は配列番号3703〜3822で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表21Aに示す。本発明の6H×6H×64B核酸構造の作製に使用される末端オリゴヌクレオチド配列は配列番号4210〜4236で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表21Bに示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表9も参照のこと)。
本発明の6H×6H×128B核酸構造の作製に使用されるコアオリゴヌクレオチド配列は配列番号3703〜3942で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表22Aに示す。本発明の6H×6H×128B核酸構造の作製に使用される末端オリゴヌクレオチド配列は配列番号4237〜4263で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表22Bに示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表9も参照のこと)。
本発明の6H×6H×256B核酸構造の作製に使用されるコアオリゴヌクレオチド配列は配列番号3703〜4182で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表23Aに示す。本発明の6H×6H×256B核酸構造の作製に使用される末端オリゴヌクレオチド配列は配列番号4264〜4290で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表23Bに示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表9も参照のこと)。
本発明の6H×10H×32B核酸構造の作製に使用されるコアオリゴヌクレオチド配列は配列番号4291〜4394で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表24Aに示す。本発明の6H×10H×32B核酸構造の作製に使用される末端オリゴヌクレオチド配列は配列番号4707〜4749で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表24Bに示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表10も参照のこと)。
本発明の6H×10H×64B核酸構造の作製に使用されるコアオリゴヌクレオチド配列は配列番号4291〜4498で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表25Aに示す。本発明の6H×10H×64B核酸構造の作製に使用される末端オリゴヌクレオチド配列は配列番号4750〜4792で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表25Bに示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表10も参照のこと)。
本発明の6H×10H×128B核酸構造の作製に使用されるコアオリゴヌクレオチド配列は配列番号4291〜4706で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表26Aに示す。本発明の6H×10H×128B核酸構造の作製に使用される末端オリゴヌクレオチド配列は配列番号4793〜4835で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表26Bに示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表10も参照のこと)。
本発明の8H×12H×32B核酸構造の作製に使用されるコアオリゴヌクレオチド配列は配列番号4836〜5007で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表27Aに示す。本発明の8H×12H×32B核酸構造の作製に使用される末端オリゴヌクレオチド配列は配列番号5482〜5545で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表27Bに示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表11も参照のこと)。
本発明の8H×12H×64B核酸構造の作製に使用されるコアオリゴヌクレオチド配列は配列番号4836〜5179で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表28Aに示す。本発明の8H×12H×64B核酸構造の作製に使用される末端オリゴヌクレオチド配列は配列番号5546〜5609で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表28Bに示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表11も参照のこと)。
本発明の8H×12H×128B核酸構造の作製に使用されるコアオリゴヌクレオチド配列は配列番号4836〜5481で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表29Aに示す。本発明の8H×12H×128B核酸構造の作製に使用される末端オリゴヌクレオチド配列は配列番号5610〜5671で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表29Bに示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表11も参照のこと)。
本発明の4H×24H×120B核酸構造の作製に使用されるオリゴヌクレオチド配列は配列番号5672〜6355で示され、対応する5’末端の座標をそれぞれ表30に示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表12も参照のこと)。
本発明の12H×12H×48B核酸構造の作製に使用されるオリゴヌクレオチド配列は配列番号6356〜6841で示され、対応する5’末端の座標をそれぞれ表31に示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表13も参照のこと)。
10×10×10ボクセル3Dキャンバスからの図3Eの形状の作製に使用されるオリゴヌクレオチド配列は配列番号6842〜11296(それぞれ鎖0〜4454)で示され、対応するボクセル座標をそれぞれ表32に示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表14も参照のこと)。
本発明の30H×1H×126B核酸構造の作製に使用されるオリゴヌクレオチド配列は配列番号11297〜11502で示され、対応する5’末端の座標をそれぞれ表33に示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表16も参照のこと)。
本発明の6H×6H×84B−HC核酸構造の作製に使用されるオリゴヌクレオチド配列は配列番号11503〜11667で示され、対応する5’末端の座標をそれぞれ表34に示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表17も参照のこと)。
本発明の6H×7H×108B−HL核酸構造の作製に使用されるオリゴヌクレオチド配列は配列番号11668〜11935で示され、対応する5’末端の座標をそれぞれ表35に示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表18も参照のこと)。
本発明の6H×6H×64B(バージョン1)核酸構造の作製に使用されるオリゴヌクレオチド配列は配列番号11936〜12041で示され、対応する5’末端の座標をそれぞれ表36に示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表19も参照のこと)。
本発明の6H×6H×64B(バージョン2)核酸構造の作製に使用されるオリゴヌクレオチド配列は配列番号12042〜12203で示され、対応する5’末端の座標をそれぞれ表37に示す(参照によって本明細書に援用される2012年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/675,309号の付属書類、表20も参照のこと)。
一本鎖オリゴヌクレオチド
本発明の核酸構造は、配列特異的な形で互いにアニーリングする複数個の一本鎖オリゴヌクレオチドを使用して設計及び作成される。オリゴヌクレオチドは、その長さ、その配列、及びそのドメイン組成によって特徴付けられ得る。そのドメインの数及び配列が、各オリゴヌクレオチドの結合活性及び位置を左右する。そのドメイン数が、典型的には、構造において各オリゴヌクレオチドが結合するオリゴヌクレオチドの数を左右する。
場合によっては、構造の作成に使用されるオリゴヌクレオチドは偶数個のドメインを含む。各オリゴヌクレオチドは、典型的には少なくとも2つのドメインを含む。一部の実施形態では、構造の作成に使用されるオリゴヌクレオチドは2ドメイン及び4ドメインオリゴヌクレオチドであってもよい。また、限定なしに2ドメイン及び6ドメインオリゴヌクレオチド、3ドメイン及び6ドメインオリゴヌクレオチド、2ドメイン及び8ドメインオリゴヌクレオチド、4ドメイン及び8ドメインオリゴヌクレオチドなどを含め、他の組み合わせのオリゴヌクレオチドを使用して構造を形成することも可能である。
ドメインは、本明細書で使用されるとき、ヌクレオチド配列(即ち、その相補体に配列特異的な形で結合する能力を有する複数の隣接するヌクレオチド又はヌクレオチド類似体)を指す。複数個のオリゴヌクレオチド又は核酸構造におけるドメインは、別のオリゴヌクレオチドのドメインにアニーリングするように設計される。オリゴヌクレオチドの全てのドメインの集合的な相補性が、かかるオリゴヌクレオチドの自己集合による核酸構造の形成を促進する。
ドメイン長さは様々であり得る。同じオリゴヌクレオチドからの2つの隣接するドメインが同じヘリックスに寄与する状況では、2つのドメインの長さは相互に関連し得る。例として、あるドメインが長さxを有し、且つ他のドメインが長さyを有し、但しx+yは約16である(但し、x及びyの各々は1以上であるものとする)。
一部の実施形態では、同じヘリックスに寄与する同じオリゴヌクレオチドからの2つの隣接するドメインが約16±2ヌクレオチドの長さの合計長さを有し得る。従って、単一のドメインは、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16又は17ヌクレオチドの長さを有し得る。2つの隣接するドメインは、例えば、14、15、16、17又は18ヌクレオチドの総合計長さを有し得る。2ドメインオリゴヌクレオチドは、例えば16±2ヌクレオチドの長さを有し得る。4ドメインオリゴヌクレオチドは、例えば32±4ヌクレオチドの長さを有し得る。
一部の重要な実施形態では、ドメインが8ヌクレオチドの長さを有し、2つの隣接するドメインが16ヌクレオチドの長さを有し、及び4ドメインオリゴヌクレオチドが32ヌクレオチドの長さを有する。本発明は、16ヌクレオチドの倍数である長さを有する2つの隣接するドメイン(両方が単一のヘリックスに寄与する)を有するオリゴヌクレオチドを企図することが理解されるべきである。
典型的には所与の合成方法又は得られる構造において、同じ数のドメインを有するオリゴヌクレオチドは長さも同じであり得る。例として、一実施形態において、全ての4ドメインオリゴヌクレオチドが同じ長さであり、全ての2ドメインオリゴヌクレオチドが同じ長さ(しかしながらこの長さは、4ドメインオリゴヌクレオチドの長さとは異なり得る)であり得る。より具体的には、一部の実施形態は、ある長さ(例えば、nヌクレオチド)の4ドメインオリゴヌクレオチドと、その長さの半分(例えば、n/2ヌクレオチド)である2ドメインオリゴヌクレオチドとを使用する。
本発明は、任意の数の一本鎖オリゴヌクレオチドを含む核酸構造を企図する。例として、核酸構造は、限定なしに、4個程の少なさの及び1000個(又はそれ以上)もの多さのオリゴヌクレオチドを含み得る。同様に、核酸構造の生成に使用される複数個のオリゴヌクレオチドは、限定なしに、4種類程の少なさの異なるオリゴヌクレオチド(ヌクレオチド配列により定義されるとき)及び1000種(又はそれ以上)もの多さの異なるオリゴヌクレオチド(ヌクレオチド配列により定義されるとき)を含み得る。従って、実施形態に応じて、核酸構造は、4、5、6、7、8、9、10、15、10、25、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500個、又はそれ以上のオリゴヌクレオチドを含み得る。同様に、実施形態に応じて、核酸構造の生成に使用される複数個のオリゴヌクレオチドは、4、5、6、7、8、9、10、15、10、25、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500種、又はそれ以上の異なるオリゴヌクレオチドを含み得る。
様々なオリゴヌクレオチド配列が本明細書によって添付の援用される付属書類に提供される。付属書類は、本明細書に記載されるとおりの、様々な形状及びサイズの3Dキャンバスを形成するために必要なオリゴヌクレオチドを示す。
本発明の文脈においてオリゴヌクレオチドは、DNA、例えばD型DNA及びL型DNA及びRNA、並びにその様々な修飾を含む。修飾は塩基修飾、糖修飾、及び骨格修飾を含む。これらの非限定的な例を以下に提供する。
本発明において用いられ得るDNA変種の非限定的な例は、L−DNA(文献で公知の、DNAの骨格鏡像異性体)、ペプチド核酸(PNA)、ビスPNAクランプ、擬相補的PNA、ロックド核酸(LNA)、又は上記の共核酸、例えばDNA−LNA共核酸である。本発明の産物及び方法において使用されるオリゴヌクレオチドは、本質的に均一であっても又は不均一であってもよいことが理解されるべきである。例として、それらは本質的に完全にDNAであってもよく、又はDNA及び非DNA(例えばLNA)単量体又は配列で構成されてもよい。従って、核酸エレメントの任意の組み合わせが用いられ得る。オリゴヌクレオチド修飾によりオリゴヌクレオチドは一定の条件下でより安定化し、及び/又は分解を受け難くなり得る。例えば、場合によっては、オリゴヌクレオチドはヌクレアーゼ耐性である。
オリゴヌクレオチドは、均一な骨格(例えば、全てがリン酸ジエステル又は全てがホスホロチオエート)又は不均一な(又はキメラの)骨格を有し得る。ホスホロチオエート骨格修飾により、オリゴヌクレオチドは一定の条件下で(天然のリン酸ジエステル骨格核酸と比較したとき)ヌクレアーゼの影響を受け難くなり、従ってより安定する。オリゴヌクレオチドにより高い安定性を提供し得る他の結合には、限定なしに、ホスホロジチオエート結合、メチルホスホネート結合、メチルホスホロチオエート結合、ボラノホスホネート結合、ペプチド結合、アルキル結合、デホスホ型結合などが含まれる。従って、場合によっては、オリゴヌクレオチドは天然に存在しない骨格を有する。
オリゴヌクレオチドはインビトロで合成され得る。核酸の合成方法もまた、自動核酸合成を含め、当該技術分野において公知である。ホスホロチオエート結合を含む骨格など、及びキメラ修飾骨格を含むものを含め、修飾骨格を有するオリゴヌクレオチドは、ホスホルアミデート又はH−ホスホン酸ケミストリーのいずれかを用いる自動化技術を使用して合成され得る(F. E. Eckstein, “Oligonucleotides and Analogues - A Practical Approach” IRL Press, Oxford, UK, 1991、及びM. D. Matteucci and M. H. Caruthers, Tetrahedron Lett. 21, 719 (1980))。例えば米国特許第4,469,863号に記載されるとおり、アリール−及びアルキル−ホスホン酸結合を作ることができ;及び例えば米国特許第5,023,243号及び欧州特許第092,574号に記載されるとおり、アルキルホスホトリエステル結合(ここでは荷電酸素部分がアルキル化される)を、市販の試薬を使用して自動固相合成により調製することができる。他のDNA骨格修飾及び置換を作る方法が記載されている。Uhlmann E et al. (1990) Chem Rev 90:544;Goodchild J (1990) Bioconjugate Chem 1:165;Crooke ST et al. (1996) Annu Rev Pharmacol Toxicol 36:107-129;及びHunziker J et al. (1995) Mod Synth Methods 7:331-417。
それに加えて又は代えて、オリゴヌクレオチドはその糖に修飾を含み得る。例えば、β−リボース単位又はβ−D−2’−デオキシリボース単位を修飾糖単位に置き換えることができ、ここで修飾糖単位は、例えば、β−D−リボース、α−D−2’−デオキシリボース、L−2’−デオキシリボース、2’−F−2’−デオキシリボース、アラビノース、2’−F−アラビノース、2’−O−(C1〜C6)アルキルリボースから選択され、好ましくは2’−O−(C1〜C6)アルキルリボースは、2’−O−メチルリボース、2’−O−(C2〜C6)アルケニルリボース、2’−[O−(C1〜C6)アルキル−O−(C1〜C6)アルキル]−リボース、2’−NH2−2’−デオキシリボース、β−D−キシロフラノース、α−アラビノフラノース、2,4−ジデオキシ−β−D−エリスロヘキソピラノース、及び炭素環式(例えば、Froehler J (1992) Am Chem Soc 114:8320に記載される)及び/又は開鎖糖類似体(例えば、Vandendriessche et al. (1993) Tetrahedron 49:7223に記載される)及び/又はビシクロ糖類似体(例えば、Tarkov M et al. (1993) Helv Chim Acta 76:481に記載される)である。
オリゴヌクレオチドは、その塩基に修飾を含み得る。修飾塩基としては、修飾シトシン(5−置換シトシン(例えば、5−メチルシトシン、5−フルオロシトシン、5−クロロシトシン、5−ブロモシトシン、5−ヨードシトシン、5−ヒドロキシシトシン、5−ヒドロキシメチルシトシン、5−ジフルオロメチルシトシン、及び非置換又は置換5−アルキニルシトシンなど)、6−置換シトシン、N4−置換シトシン(例えば、N4−エチルシトシン)、5−アザシトシン、2−メルカプトシトシン、イソシトシン、擬イソシトシン、縮合環系を有するシトシン類似体(例えば、N,N’−プロピレンシトシン又はフェノキサジン)、並びにウラシル及びその誘導体(例えば、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−ブロモビニルウラシル、4−チオウラシル、5−ヒドロキシウラシル、5−プロピニルウラシル)、修飾グアニン、例えば、7−デアザグアニン、7−デアザ−7−置換グアニン(7−デアザ−7−(C2〜C6)アルキニルグアニンなど)、7−デアザ−8−置換グアニン、ヒポキサンチン、N2−置換グアニン(例えばN2−メチルグアニン)、5−アミノ−3−メチル−3H,6H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2,7−ジオン、2,6−ジアミノプリン、2−アミノプリン、プリン、インドール、アデニン、置換アデニン(例えばN6−メチルアデニン、8−オキソアデニン)、8−置換グアニン(例えば8−ヒドロキシグアニン及び8−ブロモグアニン)、及び6−チオグアニンが挙げられる。核酸は、ユニバーサル塩基(例えば3−ニトロピロール、P−塩基、4−メチルインドール、5−ニトロインドール、及びK−塩基)及び/又は芳香環系(例えばフルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ベンズイミダゾール又はジクロロベンズイミダゾール、1−メチル−1H−[1,2,4]トリアゾール−3−カルボン酸アミド)を含み得る。本発明のオリゴヌクレオチドに組み込まれ得る特定の塩基対は、Yang et al. NAR, 2006, 34(21):6095-6101によって報告されるdZ及びdP非標準核酸塩基対である。ピリミジン類似体であるdZは、6−アミノ−5−ニトロ−3−(1’−β−D−2’−デオキシリボフラノシル)−2(1H)−ピリドンであり、及びプリン類似体であるそのワトソン・クリック相補体dPは、2−アミノ−8−(1’−β−D−1’−デオキシリボフラノシル)−イミダゾ[1,2−a]−1,3,5−トリアジン−4(8H)−オンである。
合成方法
本発明は、核酸構造をアニーリングプロセスによって合成することを企図する。一つの手法では、一本鎖オリゴヌクレオチドは、特定され、且つ(例えばBioneerなどの市販業者を使用して)合成された後、限定はされないがチューブ、ウェル、バイアルなどの単一の容器に組み合わされる。使用されるオリゴヌクレオチドのモル量は、所望の構造における各オリゴヌクレオチドの頻度及び所望の構造の量に依存し得る。一部の実施形態では、オリゴヌクレオチドは等しいモル濃度で存在し得る。一部の実施形態では、各オリゴヌクレオチドが約200nMの濃度で存在し得る。オリゴヌクレオチドは溶液中に置かれる。好ましくは、溶液は緩衝されるが、アニーリング反応は緩衝剤がなくても起こり得る。溶液は、限定はされないがMg2+などの、二価陽イオンをさらに含み得る。陽イオン又は塩濃度は様々であり得る。例示的濃度は約490mMである。溶液はまた、オリゴヌクレオチドの分解を防ぐため、EDTA又は他のヌクレアーゼ阻害薬も含み得る。
アニーリング反応は、溶液を加熱し、次にその溶液をゆっくりと放冷することにより行われる。反応の温度は、ヘアピン構造などの任意の望ましくない二次構造を融解し、且つオリゴヌクレオチド種が他の非相補的なオリゴヌクレオチドと誤って結合しないことを確実にするのに十分な高さでなければならない。従って温度は、一部の実施形態では初めに約100℃、約95℃、約90℃、約85℃、80℃、75℃、70℃、65℃又は60℃に上昇させ得る。温度は、容器を湯浴中又は加熱ブロックに置くか、又はPCR機械などの温度制御が可能なデバイスに置くことにより上昇させ得る。容器はその環境に数秒間又は数分間保たれ得る。典型的には、約1〜10分間のインキュベーションで十分である。
高温でのインキュベーションが完了した後、いくつかの方法で温度を降下させ得る。温度は、温度を特定の大きさだけ降下させて、特定の時間にわたりその温度を維持した後に再び温度を降下させるコンピュータアルゴリズムを使用する自動化された方法で降下させ得る。かかる自動化された方法は、温度をステップ毎に1度ずつ又はステップ毎に数度ずつ降下させることを含み得る。従って容器は同じデバイスで加熱及び冷却が行われ得る。
例示的プロセスを提供する。約80℃から約24℃への温度降下を生じさせるためには、温度を1度ずつ増加させて1度につき3分の速度で(即ち、80℃で3分間、79℃で3分間等)80℃から61℃に変化させる。次に温度を1度ずつ増加させて且つ1度につき約120分の速度で(即ち、60℃で120分間、59℃で210分間等)60℃から24℃に変化させる。このプロセスの総アニーリング時間は約17時間である。本発明において、これらの条件下で、オリゴヌクレオチドは予め決められた所望の形状及びサイズの核酸構造に自己集合する。
具体的なアニーリングプロセスの例は、5mM トリス−1mM EDTA(TE)、40mM MgCl2溶液中の100個の200nMオリゴヌクレオチドを用い、及びこの溶液を約90℃に加熱し、次に溶液を約24℃まで、上記に記載したとおり80℃〜61℃の間は1度の降下につき3分及び60℃〜24℃の間は1度の降下につき120分で約73時間にわたり冷却する。
複合構造
本発明は、本明細書に記載される核酸構造それ自体を、高次構造又は複合構造の形成のため本質的に単量体又は構成単位として使用し得ることをさらに企図する。本発明の複合構造は、スペーサー−リンカーを使用して互いにつなぎ合わされた核酸構造で構成される。リンカーは、典型的には核酸構造の一体部分ではないが、それらは好適な官能基を介して構造に結合し得る。2個以上の核酸構造を一体に結合するこの能力により、より大きいサイズ及び高い複雑さの構造を作成することが可能となる。
これらの複合構造の寸法は、限定なしに、500nm〜100ミクロン、又は1〜1000ミクロンの範囲であり得る。
応用
本発明の核酸構造は、ナノメートル又はミクロンスケールで1つ以上の部分を正確に位置決めし、且つ重要なことには配置する能力によって利益を受け得る適用を含め、様々な適用に用いられ得る。
例として、構造を、エレクトロニクス、プラズモニクス、及び量子コンピューティング適用で有用なものなどの、無機材料の配列又はパターンニング用鋳型として使用することができる。核酸構造に結合させ得る部分としては、金属粒子、例えば金ナノ粒子、量子ドット、カーボンナノチューブなどが挙げられる。このようにして、本発明により提供される核酸構造が、ナノメートル精度及び制御でその上に他の部分を配列し得る及び/又は他の構造を合成し得る足場として働く。例えば、カーボンナノチューブを機能分子エレクトロニクスシステムに組織化することができ;調節可能な幾何学的配列の金ナノ粒子を使用して、機能分子エレクトロニクス回路及び新規プラズモニクス回路を作製することができ;組織化された、予め決められた配列の磁性粒子を使用して、ナノインダクタ又は記憶デバイスを作製することができ;及び組織化された、予め決められた配列の量子ドットを使用して、新規量子コンピュータを作製することができる。
一部の実施形態では、部分(例えば金ナノ粒子)は、例えば実施例5に記載するとおり、部分及び核酸構造に連結した相補一本鎖オリゴヌクレオチドのヌクレオチド塩基対合によって本発明の核酸構造に結合させてもよい。従って、一部の実施形態では、金ナノ粒子などの部分は、以下のとおり個別のパターンで配列され得る。特定の位置(例えば、ポア及び/又はチャネルの内部)に一本鎖ポリNオリゴヌクレオチド(例えば、一本鎖ポリAオリゴヌクレオチド、又は隣接アデニンヌクレオチドを含む一本鎖オリゴヌクレオチド)を含む本発明の核酸構造を、その核酸構造の一本鎖ポリNオリゴヌクレオチドと相補的な一本鎖ポリNオリゴヌクレオチド(例えば、一本鎖ポリTオリゴヌクレオチド、又は隣接チミジンヌクレオチドを含む一本鎖オリゴヌクレオチド)に連結した(例えば、それと共有結合的に、又は非共有結合的に結合した)部分と接触させる。一部の実施形態では、一本鎖ポリNオリゴヌクレオチドは約2〜約15ヌクレオチドである。一部の実施形態では、一本鎖ポリNオリゴヌクレオチドは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15ヌクレオチドである。一部の実施形態では、一本鎖ポリNオリゴヌクレオチドは、約10ヌクレオチドの一本鎖ポリA、一本鎖ポリTオリゴヌクレオチド、一本鎖ポリGオリゴヌクレオチド、又は一本鎖ポリCオリゴヌクレオチドである。
他の態様において、本発明は、本発明の核酸構造を金属化してエレクトロニクス構成部品を作製し得ることを企図する。DNAチューブがナノワイヤに金属化されている。本発明の核酸構造の制御された金属化を用いて、とりわけ、制御された直径、ひいては制御された電子特性を有するナノワイヤを作製することができる。さらに、本発明により提供されるストラットベースの核酸構造の制御された金属化によって、新規分子エレクトロニクス部品及び回路を作製することができる。
核酸構造はまた、生体分子又は有機分子の鋳型としても使用することができる。かかる鋳型化された分子及びシステムは、例えば診断及び研究適用において有用であり得る。生体分子又は有機分子としては、限定なしに、タンパク質及びペプチド、例えば、抗体及び抗体断片、酵素及び酵素ドメイン、受容体及び受容体ドメイン、生体リガンド、例えばホルモン及び他のシグナル伝達部分、多糖、細胞、細胞凝集体などが挙げられる。DNA格子上にタンパク質を鋳型化する様々な戦略が実証されている。タンパク質をプログラム可能なナノメートル精度で規定の幾何学的パターンに組織化することを用いて、例えば、生体モータータンパク質の協調的挙動を研究することができる。特定の核酸構造はまた、細胞又は組織培養においても用いられ得る。これらの実施形態では、例として、成長因子及び細胞外マトリックス成分などの生物学的部分で構造が機能化され得る。このようにして、機能化された構造が培養下で配列され、二次元又は三次元インビボ環境を模倣し得る。さらなる例として、任意の特定の生物学的部分に関する濃度勾配を呈する高次元機能化構造を作成し得ることが企図される。次にこれらのシステムを使用して、あらゆる細胞型の細胞の発生、分化及び/又は挙動を研究することができる。さらに他の例では、本発明の高次構造を、インビトロ又はインビボでの細胞の成長及び分化の足場として使用することができる。
これらの様々な応用において、本発明は、本発明の構造で構成される核酸足場が鋳型でなくなった後、それが保持されてもよく、又は(例えば消化又は分解によって)取り除かれてもよいことをさらに企図する。例えば、目標が予め決められた配列の金粒子を作り出すことであり、且つかかる粒子が核酸足場とは無関係に所望のとおりに互いに連結されている場合、足場は取り除かれてもよく、後に金ナノ粒子網のみが残り得る。
アルゴリズム、プログラム及びコンピュータシステム
本発明は、特定の形状及びサイズの3D核酸構造を生成するアルゴリズムを企図する。こうしたアルゴリズムは十分なサイズの3Dキャンバスの出発点を含み、ここではキャンバスのいずれの位置に寄与するオリゴヌクレオチド及びドメインも既知である。次にエンドユーザーがキャンバス内に所望の構造を定義し、アルゴリズムが、かかる構造の生成においてどのオリゴヌクレオチドが取り入れられるべきか、どれが除外されるべきか、及びどれが置き換えられるべきかを特定する。例示的アルゴリズムステップを図17のプログラム1、2及び3に示す。本発明は、かかるアルゴリズムが手動で又はコンピュータ手段により実行され得ることを企図する。
本発明の一部の実施形態との関連で用いられ得るコンピュータシステムの例示的実装は、1つ以上のプロセッサ及び1つ以上のコンピュータ可読非一時的記憶媒体(例えば、メモリ及び1つ以上の不揮発性記憶媒体)を含み得る。プロセッサは、メモリ及び不揮発性記憶デバイスへの書込みデータ及びそこからの読取りデータを任意の好適な方式で制御するものであってよく、本明細書に記載される本発明の態様がこの点で限定されることはない。本明細書に記載される任意の機能を実施するため、プロセッサは、1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体(例えばメモリ)(これが、プロセッサによって実行される命令を記憶する非一時的コンピュータ可読記憶媒体として働く)に記憶された1つ以上の命令を実行し得る。
本発明の特定の上述の実施形態は、数多くの方法のいずれで実装されてもよい。例えば、実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア又はそれらの組み合わせを使用して実装され得る。ソフトウェアに実装される場合、ソフトウェアコードは、単一のコンピュータに提供されるものであれ、又は複数のコンピュータ間に分散するものであれ、任意の好適なプロセッサ又は一群のプロセッサ上で実行することができる。上記に記載する機能を実施する任意の構成要素又は一群の構成要素は、総称的に、上記で考察した機能を制御する1つ以上の制御器と見なされ得ることが理解されなければならない。この1つ以上の制御器は、マイクロコード又はソフトウェアを使用して上記に記載した機能を実施するようにプログラムされる専用ハードウェア、又は汎用ハードウェア(例えば1つ以上のプロセッサ)によるなど、数多くの方法で実装することができる。
この点で、本発明の実施形態の1つの実装が、プロセッサ上で実行されると本発明の実施形態の上記で考察した機能を実施するコンピュータプログラム(例えば、複数個の命令)がコード化された少なくとも1つの非一時的コンピュータ可読記憶媒体(例えば、コンピュータメモリ、フロッピーディスク、コンパクトディスク、テープ等)を含むことが理解されなければならない。コンピュータ可読記憶媒体は、そこに記憶されたプログラムを任意のコンピュータリソースにロードして本明細書で考察される本発明の態様を実装することができるような可搬型であってもよい。加えて、実行時に上記で考察した機能を実施するコンピュータプログラムに関する言及は、ホストコンピュータ上で動くアプリケーションプログラムに限定されないことが理解されなければならない。むしろ、用語のコンピュータプログラムは、本明細書では、プロセッサをプログラムして本発明の上記で考察した態様を実装するために用いることのできる任意の種類のコンピュータコード(例えば、ソフトウェア又はマイクロコード)を指して総称的な意味で用いられる。
以下の実施例は例示を目的として含められ、本発明の範囲を限定する意図はない。
実施例
実施例1.全スケールにわたる3D DNAブロックナノ構造の自己集合
本発明者らの方法をより良く理解し、且つその能力を実証するため、様々なサイズ及びアスペクト比の3D DNAブロックナノ構造を設計し、試験した(図2)。
ランダム配列設計。オリゴヌクレオチドの配列(「DNAブリック」とも称される)は、塩基対(A−T、G−C)を3Dナノ構造にランダムに割り当てることにより設計した。本発明者らは、初めにランダム配列又は特別に設計した配列のいずれかを含む2つのバージョンの6H×6H×64Bを試験し、同等な自己集合結果を観察した(図8)。本発明者らはまた、4H×12H×120Bで3組のランダム配列も試験し、同様に同程度の自己集合収率を観察した(データは示さず)。これらの結果に基づき、本発明者らはランダム配列を使用してさらなるナノ構造を設計した。配列は、カスタムプログラム及びmfold, rna, Albanyウェブサイトで利用可能なプログラムであるUNAfoldを併用することにより生成した。初めに、以下の3つの基準を考慮することにより、第1のオリゴヌクレオチドセットの配列(Xブリック)を生成した:(1)鎖の結合エネルギーを平滑化する(各鎖が同程度のGC含量を有する);(2)各鎖の二次構造を最小限に抑える;及び(3)配列対称性を低下させる。次に、第1のセットとのその相補性に従い、第2のオリゴヌクレオチドセット(Yブリック)を生成した。ランダム配列及び特別に設計した配列を使用して組み立てた構造の産物収率は同程度であった。本明細書では、ほとんどのナノ構造の合成にランダム配列設計戦略が用いられるが、この配列設計戦略がまた用いられてもよく、進行中の研究で探索しているところである。
保護体DNAブリック。対をなしていない一本鎖をDNA二重鎖の末端に含めることは、平滑末端スタッキングを軽減するのに有効であることが分かっている(P. W. K. Rothemund (2006))。対をなしていない一本鎖8ntドメインが、3Dナノ構造中の全てのDNA二重鎖のあらゆる5’末端又は3’末端から突き出る(図1C及び図1D)。これらの8ntドメインの配列を、望ましくない相互作用を防ぐため、8つの隣接チミンに置き換えることができる。修飾されたヘッド又はテイルドメインを有するDNAブロックは、それぞれ「ヘッド保護体」又は「テイル保護体」と称される。
境界DNAブリック。16ntの半分のブリックを、そのヘリックスの方向に沿って先行する32ntの完全なブリックと合体させ、48nt長の境界鎖を形成することができる(図9及び図10)。本発明者らは、長い境界設計を実施したとき、恐らくは目的のナノ構造形成のヌクリエーションが加速したことに起因して、6H×6H×64Bの自己集合が大幅に改善されたことを観察した。従って、この合体戦略を全ての3Dナノ構造に適用した。
6H×10H×128Bの特徴付け。本発明者らは、初めに、459個の鎖(7680bp、M13ベースのDNA折り紙と同程度のサイズ、設計詳細については図S11、図S12を参照のこと)からなる6H×10H×128B直方体を構築した。未精製のDNA鎖を、細かい化学量論的調節は行うことなしに、公称上等しい比率で共に混合した。最適なアニーリング条件を決定するため、本発明者らは、6H×10H×128B自己集合に関して2つのアニーリング勾配(24時間アニーリング及び72時間アニーリング)、2つの鎖濃度(各鎖につき100nM及び200nM)、及び8つのMgCl
2濃度(10、20、30、40、50、60、70、80mM)を試験した。次に等量の各サンプル(各鎖につき2pmol)を臭化エチジウム(EtBr)染色2%アガロースゲル電気泳動に供した(図2B、図2C)。3Dナノ構造の収率を、アガロースゲル電気泳動を使用して推定した。図11は、かかるアッセイの一例を示す。アニーリングしたサンプルをアガロースゲル電気泳動に供して産物を遊離鎖及び不要な凝集物から分離した。産物バンドの蛍光強度(黒色の囲み線で示される)を3k bpラダーバンドの蛍光強度(灰色の囲み線で示される)と比較することにより、産物の収率を推定した。両方の蛍光強度とも、初めにバックグラウンドノイズで減算し、次に計算に使用した。ImageJソフトウェアを使用して強度を計測した:
次にパーセンテージ収率を以下のとおり計算する。
二本鎖3kbpラダーと本発明者らの3D構造とでは、EtBr染色の効率が異なり得る。従って収率の絶対数が異なり得る。それでもなお、このアッセイは、ナノ構造間における自己集合結果の比較及び3D構造の最適なアニーリング条件のスクリーニングに特に有用である。以下の条件で最大収率(370ng、又は約4%)が達成された:各鎖につき200nM、72時間アニーリング、40mM MgCl2。この収率は、同程度のサイズ及びアスペクト比(10H×6H、8H×8H、6H×10H、及び4H×16H)の3D DNA折り紙に関する既報告の4%〜14%収率と同等である(S. Douglas, et al., Nucleic Acids Research 37, 5001 (2009))。折り紙ことは注目に値する。
折り紙の収率は、
として推定される。過剰なステープル鎖の損失(通常足場鎖より5〜10倍多い)は考慮しない。本明細書で使用される最適40mM MgCl
2は、3D折り紙の折り畳みに最適な30mM(又はそれ以下)のMgCl
2濃度(S. M. Douglas, et al., Nature 459, 414 (2009))より高い。カラム精製した産物(約50%の回収効率(図2D))は、アガロースゲル電気泳動により単一のバンドとして泳動し、透過電子顕微鏡(TEM)下に予想された形態で見られ、計測された寸法は各塩基対高さにつき0.34nm(±0.01nmSD)及び各ヘリックス幅につき2.5nm(±0.2nmSD)であった。6H×10H128Bのアガロースゲル精製後、TEM画像において構造をカウントして収率もまた計算した。この「TEM収率」は、精製した構造の安定性に関係する。TEM画像中の粒子を、存在する欠陥の量及び程度に応じて「良好」、「軽微な欠陥」、又は「重大な欠陥」として分類した。全粒子のうちの良好な粒子の割合をカウントして最終的な収率を決定した。ほとんどの軽微な欠陥は構造のヘリックス末端に近い位置に生じ、鎖がこれらの位置で解離を受け易いことを示している可能性がある。加えて、これらの収率は、概して粒子の安定性の指標となる。イメージングバイアスが計測精度に影響を与え得ることは注目に値する。TEM画像においてインタクトな粒子の割合をカウントすることにより、予想された55%のTEM収率が得られた(図12)。このTEM収率は、3D正方格子DNA折り紙に関する既報告の収率(6H×12H×80Bについて27%収率、8H×8H×96Bについて59%)(Y. Ke, et al., J.Am.Chem.Soc 131, 15903 (2009))と同等である。
DNA二重鎖の両末端に位置する鎖は、1つのみ又は2つの8ntランダム配列セグメントを有し、これが他の鎖との塩基対合に使用される(図13B)。従って合理的な仮定は、これらの「ヘッド」鎖又は「テイル」鎖が、構造内部のより深くに位置する鎖と比較してアニーリング中に組み込まれ難く、アニーリング後に3D構造からの解離を受け易いというものである。これらの「ヘッド」鎖又は「テイル」鎖の組込み効率を高める設計戦略が3D構造の全体的な自己集合の質に有利となることが考えられる。本発明者らは、この仮説を、「ヘッド」鎖の組込み効率が向上するように修飾した設計(図13C)で試験した。同様の修飾を「テイル」鎖にも同様に適用することができる。この設計方法は二段階を含む。(1)クロスオーバーの削除:矢印により指示されるとおり(図13B)、クロスオーバーの第1列及び第2列が取り除かれる。(2)鎖の連結:図13Cに示されるとおり、同じ二重鎖にある鎖の各対が共に合体され、より長い一本鎖を形成する。これらの新しい鎖は、3つのランダム配列ドメインを含む32nt長であるか、或いは5つのランダム配列ドメインを含む48nt長(境界鎖)である。6H×10H×128Bの「ヘッド保護体」を設計し直してそれらをその隣接する鎖と合体させることにより(図13)、修飾されたバージョンの6H×10H×128B−Mは、6H×10H×128Bと比べて190%の収率向上及び17%のTEM収率向上を示した(図14)。「ヘッド」鎖の修飾はSSD 3D構造の自己集合を向上させることが予想されるが、削除はクロスオーバー密度の低下をもたらし、それが、特に短いヘリックスの構造について、局所的な変形を生じさせ得る。従って、本発明者らはあくまでもこの修飾されたバージョンを、特別な設計規則を実施することにより3D構造を安定化させることができるという概念実証として試行するにとどめた。本明細書で使用される他の3D構造は、当初の戦略を用いて設計した。他の手法、例えば架橋結合(A. Rajendran, et al. J. Am. Chem. Soc. 133, 14488 (2011))が、設計の柔軟性を犠牲にすることなく3D DNAナノ構造を安定化させるのにより一般的な方法であることが判明し得る。
種々のサイズのナノ構造。9個のヘリックス、16個のヘリックス、36個のヘリックス、60個のヘリックス、96個のヘリックス、及び144個のヘリックスを含む6つのグループのナノ構造を設計し、次に先に6H×10H×128B自己集合について特定した最適条件を使用してアニーリングした(データは示さず)。本発明者らは、32bp長であるもの(従って隣接するヘリックスの各対の間に1つのクロスオーバーを含むもの)を除く全ての設計について正しい産物バンドを観察した(図2G及び図15)。収率は1%未満から約80%まで異なる(図15)。32bp長であるものを除き、各グループ内で設計が小さい程、より高いパーセンテージ収率を呈する。全ての設計のなかで最も高い収率(80%)は、最も小さいオブジェクト3H×3H×64B(1,296nt又は約0.43MDa)について観察された。最も低い収率は、8H×12H×120B、4H×24H×120B、及び12H×12H×48Bについて観察され、これらの収率は低過ぎたため(1%未満)正確に計測できなかった。各ナノ構造のインタクトな粒子の計測寸法は本発明者らの設計と一致し、種々のサイズの3D自己集合の成功が示唆される(表1)。組み立てられた最も大きい(larget)DNA構造は、8H×12H×120B(728個の鎖によって形成される)及び4H×24H×120B(710個の鎖によって形成される)であり、これらは分子量が同じであった(24,576nt、又は約8MDa、M13ベースのDNA折り紙と比べて60%大型である)。
実施例2.10×10×10ボクセルキャンバスから作成される入り組んだ形状
本明細書に提供される教示に基づき、本明細書に記載される方法を用いて様々なキャンバス(及び次に構造)を生成し得ることが理解されるべきである。従ってある特定のキャンバスのこの例示は、非限定的なものである。
本発明者らの手法のモジュール性は、10H×10H×80B直方体(10×10×10ボクセル)3Dキャンバスから作成した102個の形状の構築及び特徴付けの成功によって実証される(図3A及び図16)。各ボクセルが、X及びYブロックの対の相互作用により形成された8bp(2.5nm×2.5nm×2.7nm)に対応する。
DNAブリック及び誘導体。3Dキャンバスの任意のDNAブリックが、カスタム形状設計において境界ブリック(即ち層の縁部に露出している)又は保護体ブリック(即ち最初又は最後の層にある)のいずれにもなることができ、さらには両方同時にもなり得る。従って、各ブリックの修飾されたバージョンを、ドメイン削除(例えば、半分のブリックに二等分する)、ポリチミジン配列置換(例えば、保護体ブリックに変える)、及び境界ブリック合体(例えば、48nt境界ブリックに変える)のあらゆる組み合わせで生成し、あらゆる可能性に対応した(図16)。全部で4455個の鎖(合計138,240nt)がコンピュータプログラムにより生成され、任意の形状をヘッド/テイル保護体及びブリック長い境界ブリックと共に組み立て得ることが保証された。本明細書と共に提出される、本開示の一部と見なされるべき添付の付属書類に、例示的配列が提供される。
設計プロセス。本発明者らは、初めに10×10×10ボクセル3Dキャンバスを構築した。ここでは各XYZボクセル(Zがヘリックス方向にある)が8bp二重鎖(2.5nm×2.5nm×2.7nm)に対応する。形状設計は、特定のボクセルセットを選択し、及び取り除くことを介して行われた。3D視覚化ソフトウェアを使用して3Dキャンバスをレンダリングすることにより、グラフィックインタフェース上でボクセルを編集し、単一ボクセル分解能で形状を設計及び視覚化することが可能であった(図3B及び図17)。次に複数の形状のボクセル情報をカスタムプログラムにより解釈し、各形状の形成に関わる鎖のリストを生成した。続いてこのリストを加工することにより、自動液体ハンドリングロボットがソースプレートからDNA鎖を選択し、それらをピペットで産物プレートのウェルに移すように指図し、ハイスループット方式で多くの形状用の鎖を混合した。完全な設計ワークフローは図17及び図18に示す。
3D形状の設計。図16は、任意の3D形状の作成に使用される4ドメイン鎖及びその誘導体を示す。個別のDNA構造の自己集合は、往々にして望ましくない凝集によって損なわれ、この凝集は、構造が、(1)対をなさない一本鎖ドメイン、又は(2)DNA二重鎖の保護されていない平滑末端を含むときに起こる。C〜Eに示す異なる種類の鎖は、任意の対をなさない一本鎖ドメインのDNA配列を8個の連続するTに変えることによってこれらの2つの状況を回避するように設計される。この戦略により、合計14種類の鎖誘導体が存在するようになり、任意の形状設計について1個、2個、又は3個のボクセルが存在しない場合のあらゆる可能性が網羅される。全15種類の鎖(A〜E)を取り入れる場合、いかなる任意の形状も8bp(1ボクセル)分解能で設計することができる。
14種の鎖誘導体のうち、本発明者らの設計及び実験においては、それらの8種のみが実際に実施された。残る6種の誘導体(図16D及び図16Eで*が付される)のタイプの鎖は除外される。図16Dにおける2つの取り除かれた誘導体は、本発明者らによる任意の形状の設計に生じる頻度が低いと考えられる。図16Eにおける4つの取り除かれた誘導体は、僅か1個のみの8ntランダム配列ドメインからなり、従ってDNA構造へのその組込みは安定性が低いと考えられる。本発明者らは、各形状について100個より多い「1ボクセル」誘導体を組み込むことにより、2つの形状(形状45及び形状55、元の形状は図3Eを参照)を設計し直した。いずれの修飾形状も、アガロースゲル上に産物バンドがなかったことにより確認されるとおり(データは示さず)、任意の目標の構造を生じることができなかった。しかしながら、この単純な実験からは、個々の「1ボクセル」誘導体の組込み効率に関する何ら明確な示唆を得られない。これらの鎖誘導体が形状の境界にのみ存在することは注目に値する。上述の6種類の誘導体の除外は、実際には、形状の全体的な見掛けにほとんど影響を及ぼさないものと見られる。
本発明者らはまた、2種類の48nt「境界鎖」(図10)を取り入れて形状の自己集合を向上させた。直前の節に記載したとおり、各48nt「境界」鎖は32nt鎖及び16nt鎖の置換に使用される。本発明者らの設計には、全体で各鎖につき合計(9+2)=11個のオリジナル及び誘導体が作り出された。3Dキャンバスの表面に位置する鎖は誘導体が少ないことに留意されたい。
各鎖は、それが充当されるボクセルの位置で呼ばれる(図16G)。数字の各対が1ボクセルを表す。最初の数字がヘリックスを指示し、2番目の数字がヘリックス上のボクセル位置を指示する。数字(0,0)は、8個の連続するTを有するドメイン又は空のドメインを意味する。鎖のボクセル情報を使用して、形状を形成し得る鎖が特定される(図17)。
以下は、3D形状の設計方法の例である。
全てのDNA鎖の生成:(1)カスタムプログラムを使用して3Dキャンバスを構築する(図6)。本発明者らは、本明細書では例として10×10×10ボクセルキャンバスを使用した。(2)カスタムプログラムが、10×10×10ボクセル3Dキャンバスで作成することのできる任意の形状を自己集合させるための鎖及びその誘導体を生成する(S6.1.1節)。次に、全ての配列及びその対応するボクセル情報が、単一のテキストファイルALL-strand.txtに保存される。任意の形状を作成するための合計4455鎖(138,240nt)が生成された。
3Dモデルの構築及び形状の編集:(3)市販の3Dモデリングソフトウェアを使用して(本発明者らはStrata(商標)3D(Strataウェブサイトにある)を使用した)、全ての10×10×10ボクセルを含む3Dモデルを構築する。各ボクセルが小さい球体で表される(図18A)。市販のモデリングソフトウェアは、ボクセルを取り除き/追加し、且つ形状を様々な角度から視覚化するための利便性の高いツールを提供する。(4)図18Bに示されるとおり、10×10×10ボクセル3Dキャンバスからボクセルを取り除くことにより形状を設計する。この工程では、形状は単一ボクセル(8bp)分解能で設計される。各形状が単一のファイルにそのボクセル情報と共に保存される。
ボクセル情報に基づく各形状の鎖の特定:(5)本発明者らのカスタムプログラムがボクセルファイルを読み出す。形状のボクセル情報に基づき、プログラムが配列ファイルALL-strand.txtを検索し、設計した形状を自己集合させるための鎖のリストを生成する。プログラムは、初めに、32nt鎖及び16nt鎖のみを検索して形状を生成する。次にプログラムは、48nt「境界」鎖を形成するため32nt鎖及び16nt鎖の任意の対を一体に合わせることができるかどうかを決定する(図16F)。そのようにできる場合、プログラムは32nt鎖及び16nt鎖を48nt「境界」鎖に置換する。(6)上記に記載する本発明者らの鎖設計が理由で、一部のボクセルに、ALL-strand.txtにおける本発明者らの鎖が充当されないこともある。この検索プロセスの間、プログラムは、充当を受けられないボクセルを自動的に取り除き、鎖検索プロセスに戻る。ごく少数のボクセル(形状の境界上にある)のみが形状から取り除かれ、従って削除は形状の全体的な見掛けを変えないことに留意されたい。注記:コンピュータプログラムは複数の形状を操作することができる。そのためユーザは、初めにあらゆる形状を設計し、コンピュータプログラムを使用して全形状用の鎖のリストを同時に生成することができる。(7)プログラムが鎖の検索を終了し、全形状の鎖リストを生成する。また、各形状から削除されたボクセルも報告される。ユーザは、誤りがないか、又はボクセルが多く取り除かれ過ぎていないかを確認することができる。例えば、以下の出力は、形状23(形状については図3Eを参照)から取り除かれた21個のボクセルを示す:[[0, 1], [0, 10], [1, 10], [2, 1], [3, 10], [4, 1], [5, 10], [6, 1], [7, 10], [8, 1], [9, 10], [18, 10], [22, 10], [36, 10], [44, 10], [54, 10], [66, 10], [72, 10], [88, 10], [90, 9], [90, 10]]。
この手順を実施して、102個の互いに異なる3D形状の組立てに成功した(図3E)。形状を同じアニーリング条件(0.5×TE、40mM MgCl2緩衝液中72時間アニーリング)でアニーリングし、アガロースゲル電気泳動及びTEMイメージングにより(未精製のサンプルに関して)特徴付けた。
形状1〜形状17。中間の2層「連結ブロック」によって連結された2個の4H×10H×80Bブロックを各々が含む一群の形状(形状2〜17)を使用して、基本的な設計制約を調べた。連結ブロックは、Y軸(形状2〜9)又はZ軸(形状10〜17)に沿って数が漸減するボクセルを有するように系統的に設計される。形状の対称性から、X軸に沿ったボクセルの除去は、Y軸に沿ったボクセルの除去と同じ影響を有するはずである。アガロースゲル電気泳動の結果から、いずれの系も連結ブロックが小さくなるにつれ形状の安定性が低くなることが明らかになり(データは示さず)、しかしZ軸連結の数を減らすと、Y軸連結の数を減らすより安定性に大きい影響が及ぶように見えた。Y軸に沿った2ボクセル連結のみを有する形状9は、壊れているナノ構造が50%未満となった。対照的に、形状17(Z軸に沿った2ボクセル)の粒子の大多数が壊れており、もっともアガロースゲル及びTEM結果は、良好な粒子がごく一部形成されたことを確かに示している。総じて、これらの観察は、少なくとも2個の連続するX軸又はY軸ボクセル(2個のヘリックス)及び3個の連続するZ軸ボクセル(24bp)という、より安定性の高い特徴のための安全設計基準を示唆している。しかしながら、以下の実験で実証されるとおり、ある種の形状では、より小さい特徴(例えば、2個の連続するZ軸ボクセル、形状33〜37)が安定的に存在し、ここでこれらの特徴は恐らく近接したボクセルによって強化されている)。
中実形状18〜31。単純な幾何学的形状及びより入り組んだオブジェクトのZ方向の突出を含むいくつかの中実形状を設計した。これらのオブジェクトの形成収率及び画像が、本発明者らの方法論の構造的完全性に関するさらなる情報を提供する。詳細には、いずれも1つの縁部のみに固定された3個のヘリックス厚さのアペンデージを含む形状26及び27は、時にこれらの突起部を含まずに又は突起部が欠損を含む形で見られることもある。従って、かかる薄い特徴は、本発明者らの設計基準の範囲内にあるにも関わらず、より支持された又はより厚い特徴と比べて安定性が低い。
閉じた空洞形状32〜42。これまでに、箱(E.S. Andersen (2009))、四面体(Y. Ke (2009))、並びに球体及び楕円体(D. Han (2011))を含め、閉じた空洞を備える3D DNA折り紙のいくつかの例が実証されている。ここで、種々のサイズの直方体の空洞を備える一連の「空の箱」(形状32〜37)を作り出した。本明細書の結果は、より複雑な空洞設計(例えば、角リング、十字形、及び三角形)を実現可能であることも実証する(形状38〜42)。
開いた空洞形状43〜62。様々な幅、奥行き及び幾何形状の単一の空洞(形状43〜53)並びに複数の平行な空洞(形状54〜56)を備える形状を構築した。交差しない垂直トンネル(形状57)、曲がったトンネル(形状58)、及び交差するトンネル(形状59〜60)を備える形状もまた構築した。さらに、結果から、形状60〜62により実証されるとおり、異なる角度から様々な外観図が作り出されるように直方体の外表面を修飾し得ることが示された。これらの形状は、本明細書に提示されるモジュール式自己集合によって実現可能な複雑さの好見本である。
中実基体上に特徴が載った形状63〜100。10×10×6ボクセルの中実基体上にある4ボクセル厚さの細密な特徴又は個別の特徴を設計した。これらには、完全な一組の数字(形状65〜74)及びラテン文字(形状75〜100)が含まれた。同心円構造(形状63及び64)は、1ボクセル程の小ささの特徴を作成できることを示した。かかる観察は、さらに、2ヘリックス束×24bpの設計基準が、大まかに構造の周囲環境に依存することを示す。2D特徴と中実基体の厚さとの間のボクセル数の差が小さいため、TEM画像は2つの表面間で低いコントラストを示す。それでもなお、この方法は、これらの3D特徴を使用して、本来2D平面では達成し得ない複数の部分が突出した特徴を作り出せる可能性を際立たせる。
本明細書に記載されるほとんどの形状について、収率は数パーセント乃至30パーセントであった(5個の3D DNA折り紙ナノ構造の収率は7%〜44%と報告された(15))。僅か5個の形状のみが30パーセントより高い収率であり、3個の形状は1パーセントより低い収率であった。様々な複雑な形状の作成が成功したにも関わらず、一部の形状は望ましくない特性を呈した。例えば、形状60〜62などの複雑な形状は、TEM画像で示されるインタクトな粒子の割合が低かった(1%未満)。形状の一部の細密な特徴(例えば形状27の2つのウィング)は損傷を受け得るか、又はさらには、アガロースゲルバンドから形状が抜き出された場合には完全に取り除かれ得る。4個の失敗した設計は、アガロースゲル上に明確な産物バンドを生じなかった(図S55)。中実基体上に細密な特徴を有した2個の他の設計は、アガロースゲル上に強力なバンドを示した。しかしこれらの特徴はTEM画像において確認できなかった。最後の2つの形状については自己集合を成功であるとすることが可能であるが、特徴が小さ過ぎるため画像化できない。
実施例3.3D DNAモジュール式自己集合の普遍性
モジュール式DNA自己集合の汎用性についてさらに調べるため、以下の実験を行った:(1)DNA折り紙によって実証されている、異なる格子ジオメトリを備える形状を設計する(P. W. K. Rothemund (2006);S. M. Douglas (2009);Y. Ke, et al. J.Am.Chem.Soc (2012))、及び(2)他の種類のモジュール式DNAモチーフを使用して3D自己集合を試験する。
単層(2D)ナノ構造。概念的に、単層(2D)DNAナノ構造は、3D DNAブロックナノ構造から層を「抽出」することにより構築できる(図4A)。30H×1H×126Bを試験した(データは示さず)。これは10.67bp/ターン(3D設計用)ではなく10.5bp/ターンとなるように意図的に(intensionally)修飾し、それにより比較的平坦なナノ構造を得た。収率は、アガロースゲル電気泳動の結果に基づき18%と推定された(データは示さず)。30H×1H×126Bの寸法は、AFM画像を基準として各bpにつき0.31nm(±0.01nmSD)、各ヘリックスにつき2.6nm(±0.3nmSD)であると計測された。
3Dハニカム格子ナノ構造。次に本発明者らは、10.8bp/ターン(bp当たり33.3°のねじれ)の3Dハニカム格子及び六方格子DNAナノ構造を作った。3Dハニカム格子DNAナノ構造用に4種類の4ドメインDNA鎖を設計した(図4D、図4E)。6H×6H×84B−HCナノ構造を構築し、特徴付けることに成功した(図4D、及びデータは示さず)。TEM画像の粒子は、13nm(±0.9nmSD)×22nm(±1.0nmSD)×29nm(±1.2nmSD)であると計測された。収率は30%であると推定された(データは示さず)。
3D六方格子DNAナノ構造。3D六方格子DNAナノ構造を構築するように2種類の鎖を実現する:クロスオーバーによって連結された複数の9ntドメインを有する直鎖及び2つの9ntドメインを有する18nt鎖(図4G、図4H)。6H×7H×108B−HLナノ構造を構築し、特徴付けた(図4I、及びデータは示さず)。TEM画像の粒子は、13nm(±0.8nmSD)×18nm(±1.1nmSD)×35nm(±2.2nmSD)であると計測された。収率は26%であると推定された(図S64)。
他のモチーフ設計。「一方向性」の設計とは対照的に、鎖はまた、3Dナノ構造において反対方向を向くように設計することもできる。ここで本発明者らは、奇数の層にある鎖がZ−方向に向き、且つ偶数の層にある鎖がZ+方向に向く設計戦略を実証する(図19B)。本発明者らは、6H×6H×64B−A(交互設計)、及び2つの他のDNAモチーフ設計を実施する2つの6H×6H×64Bナノ構造の自己集合を設計し、試験した(データは示さず)。アガロースゲル電気泳動及びTEMイメージングによって6H×6H×64B−Aの自己集合の成功が確認された。本発明者らの結果はまた、この鎖設計が他の2つのモチーフ設計と比べて大幅に高い収率であったことも実証した。ナノ構造のサイズに関わらず、かかる交互設計ではクロスオーバーは対称に配置される。これらの設計の成功から、汎用的なモジュール式DNA自己集合方法が描き出された。
実施例4.DNAブリック結晶
DNAブリック結晶の設計。全ての結晶を、天然のB型DNAの10.5bp/ターンのねじれ密度から僅かに逸脱する10.67塩基対(bp)/ターンのねじれ密度を使用して設計した。組み立てられた構造において、DNAブリックは、4つの8nt結合ドメインを含む単純なLEGO(登録商標)様ブリックモデル(図20A上)で表され得る32ヌクレオチド(nt)鎖である。多くのブリック−各々が異なる配列を有する−が一段階アニーリング反応で規定の三次元構造に組み立てられる(図20A下)。
個別の三次元DNAブリック構造間に「連結」ブリックを使用して、DNAブリック結晶を得た。この設計戦略は、小さい6H(ヘリックス)×6H(ヘリックス)×24B(塩基対)直方体構造で実証された。個別のDNAブリック設計の表面上のDNAブリックは、個々の構造を連結し、且つX軸、Y軸及びZ軸に沿った結晶の成長を、一次元成長結晶が生じるように個々に伸ばすか、又は二次元成長結晶が生じるように組み合わせで伸ばすように修飾した(図20D及び図24A〜図24C)。Z軸に沿った多量体化を達成するため、第1のドメイン層の配列を、最後のドメイン層と相補的になるように修飾した。X軸又はY軸に沿った多量体化は、X軸又はY軸に沿った境界上のブリックを新しい32ntブリックに置換することにより達成された。これらの新しい32ntブリックの各々は、直方体の一方の側に相補的な2つのドメインと、直方体の他方の側に相補的な別の2つのドメインとを含んだ。従って、これらの32ntブリックは直方体単量体を連結し、連続的な成長を達成する。
DNAブリック結晶は繰り返し単位から設計したが、連結ブリックは他のブリックとサイズ及び機能が同じであった。従って、DNA折り紙結晶の階層的成長とは異なり、本発明(inventoin)のDNAブリック結晶の成長は非階層的であり得る(図20C上)。初めに繰り返し基本単位を形成することなく、結晶の成長中、ブリックを個々に結晶に組み込んだ。情報階層−繰り返し単位におけるブリックの配列のユニークさ−は最終的な結晶構造において維持された。対照的に、DNA折り紙結晶化は階層的プロセスであり、折り紙構造を完全に形成してから結晶に組み込まなければならない(図20C下)。
この設計戦略を使用して、本発明者らは、3つのグループの結晶を構築し、試験した:(1)Z軸に沿って延在する一次元「DNAバンドル」結晶(Z結晶と称される);(2)Z軸及びX軸に沿って延在する二次元「DNAマルチレイヤー」結晶(ZX結晶と称される);及び(3)X軸及びY軸に沿って延在する二次元「DNAフォレスト」結晶(XY結晶と称される)(図20D及び図20E)。異なる設計の繰り返し単位を使用して、規定の寸法及びパターンを有するDNAブリック結晶を作成することができる(図20F)。従って、結晶設計は、「[成長方向]−[繰り返し単位のサイズ]−[その形状の基本的特徴]」のようにして命名される。個別のDNAブリック構造と同様に、全てのDNAブリック結晶の配列は、本明細書に記載されるとおり、ランダムに生成した。
全ての未精製DNAブリックを等モル比(各鎖100nM)で1×TE/MgCl2(5mMトリス、pH7.9、1mM EDTA、40mM MgCl2)緩衝液中に、細かい化学量論的調節は行うことなしに一緒に混合して結晶を組み立てた。次に混合物を一段階72時間又は168時間熱的アニーリングに供し、続いて精製することなくTEMイメージングを行った。各DNAヘリックスの有効直径は、全ての3D結晶において2.5nmであると計測された。
一次元成長DNAバンドル結晶(Z結晶)。本発明者らは、初めに2つのグループのZ結晶を作成した:(1)種々の断面形状を備える中実Z結晶、これにはZ−6H×6H×32B、Z−8H×8H×32B、及びZ−10H×10H×32B、Z−8H×8H×128B−らせん、Z−43H×32B−三角形、及びZ−44H×32B−六角形が含まれる(図21A);及び(2)チューブ形状のZ結晶、Z−56H×32B−トンネル、Z−60H×64B−トンネル、及びZ−108H×32B−トンネル(図21B)。
全てのZ結晶が、TEM画像において大域的な右巻きのねじれを呈した。大域的なねじれとは、10.67bp/ターンのアンダーワインディング設計により生成される応力に対する応答と理解される。ねじれの大きさは、Z結晶の断面形状の影響を受けた。Z結晶は容易に形成された。ほとんどのZ結晶は、24時間アニーリングプロトコルを使用して数マイクロメートルの長さに成長することができる。しかしながら、長いアニーリングプロトコル程、典型的にはより長いZ結晶が得られる。従って、本発明者らは全てのZ結晶について72時間アニーリングプロトコルを使用した。
32bp繰り返し単位を使用して3つの中実Z結晶を設計した。Z結晶の正方形形状の断面は、それぞれ6H×6H、8H×8H、及び10H×10H直方体を含む。次に本発明者らは、より複雑な断面形状を備える結晶を作製した。Z軸に沿ってらせんチャネルを示すZ−8H×8H×128B−らせん結晶を構築することに成功した。チャネルはTEM画像で明確に見ることができる。次に本発明者らは、2つのより単純な設計を構築した:Z−43H×32B−三角形及びZ−44H×32B−六角形。いずれも、3つの正方形断面Z結晶と同等の高い組立て品質を示した。
次に3つのチューブ形状のZ結晶を試験した。Z−56H×32B−トンネルの断面は、2H×4H長方形が中心から取り除かれた8H×8H正方形である。Z−108H×32B−トンネルの断面は、6H×6H正方形が中心から取り除かれた12H×12H正方形である。Z−60H×64B−トンネルは、このグループのなかで最も複雑な設計である。これは、Z軸に沿った中心にある2H×2H正方形トンネルを含む。加えて、8H×2H×24Bポアが、Z軸に沿って64bp毎に2H×2H正方形トンネルと交差する。TEM画像は、設計されたDNAヘリックスの半分のみを含むように見える多くの構造を示す。これは、周期的な8H×2H×24BポアがY軸に沿った上半分と下半分との間の連結を弱めることに起因し得る。
Z結晶のさらなるTEM画像を図25A〜図25Hに示す。
二次元成長DNAマルチレイヤー結晶(ZX結晶)。次に2つのグループのZX結晶を構築した:(1)中実ZX結晶−それぞれ4、6、10、及び20層のDNAヘリックスを含むZX−4H×4H×32B−直方体、ZX−4H×6H×32B−直方体、ZX−4H×10H×32B−直方体及びZX−4H×20H×32B−直方体(図22A〜図22C);及び(2)チャネル又はポアを備えるZX結晶−ZX−32H×64B−チャネル、ZX−32H×64B−交差チャネル、ZX−6H×6H×64B−ポア及びZX−96H×64B−交差チャネル(図22D及び図22E)。
本発明者らは、全てのZX結晶が、X軸と比べてZ軸に沿ってより速く成長したことを観察した。ある場合には(例えば、X−6H×6H×64B−ポア結晶)、Z軸に沿った成長が大幅に速く、TEM画像に現れるリボン様のZX結晶が生じた。この現象は、Z軸(ヘリックス軸)に沿った結晶成長がX軸又はY軸に沿った結晶成長より実現し易いことを示唆している。これは恐らく、(1)Z軸の成長がより多くのπ−π塩基スタッキングをもたらすこと;及び/又は(2)X軸又はY軸の成長が負電荷を有するDNA骨格を互いに最密に充填するために余分なエネルギーペナルティを克服しなければならないことが理由と思われる。最も複雑なZX結晶設計である、イメージング前に168時間アニーリングしたZX−96H×64B−交差トンネルを除き、多くのZX結晶を72時間アニーリングプロトコルを使用して作製した。全てのZX結晶が小さい右巻きねじれを示したが、これは10.67bp/ターンのアンダーワインディング設計によって生じるものである。結果として、本発明者らは、TEM画像において結晶が時に屈曲し、それ自体に折り重なることを観察した。しかしながら、ZX結晶のねじれの大きさは、屈曲位置が典型的にはZX結晶上で数マイクロメートル離れて観察されたため、Z結晶より大幅に小さいものと見られた。
4層、6層、10層、又は20層のヘリックスを含んだ4H×4H×32B単位から4つの中実ZX結晶を設計した。ZX結晶の厚さは、TEM画像において結晶が折れる位置で直接計測した(図22C)。4層、6層、10層、及び20層のZX結晶の厚さは、それぞれ約10nm、15nm、25nm及び50nmと計測され、結晶が完全に形成されたことが示され、各DNAヘリックスは直径約2.5nmであった。本発明者らは、初めに、6H×6H×32B−直方体単位から3つのZX結晶を設計した。直方体から4個のヘリックスを取り除いてZX−32H×64Bチャネル設計を生成した。第2のZX−32H×64B−交差チャネル設計は、ZX−32H×64B−チャネルから2H×32Bチャネルを取り除くことにより生成した。第3のZX−6H×6H×64Bポア設計は、各直方体単位にY軸に沿った2H×4H×32B垂直ポアを含んだ。この設計は、恐らくはX軸に沿った連結が少ないことに起因して、細くて長い結晶を生じた。最も複雑なZX結晶設計は、ZX−96H×64B−交差トンネル結晶であった。その繰り返し単位は、Z軸に沿って2H×2H×64Bポアを有し、且つX軸に沿って10H×2H×24Bポアを有する10H×10H×64B(6400bp)直方体と考えることができる。互いに垂直に延在する2つのグループの接触のないトンネルが実現された。これらの2つのグループのトンネルは、2つのDNAヘリックス中実層によって隔てられた。かかる合理的に設計された3D多孔質特徴は、従来の折り紙法を用いては実現が困難であった。
ZX結晶のさらなるTEM画像を図26A〜図26Hに掲載する。
二次元成長DNAフォレスト結晶(XY結晶)。最後に、本発明者らは、2つのグループのXY結晶を作成した:(1)中実XY結晶−XY−4H×4H×64B−直方体、XY−4H×4H×128B−直方体、XY−4H×4H×192B−直方体、及びXY−4H×4H×256B−直方体(図23A及び図23B);及び(2)複雑なXY結晶−XY−32H×64B−ポア、XY−32H×128B−ポア、XY−4H×8H×96B−チャネル、及びXY−4H×4H×32Bチューブ(図23C及び図23D)。
XY結晶は、DNAヘリックス軸に沿った成長を省く二次元成長結晶である。対照的に、前出の二次元DNA結晶はいずれも、DNAヘリックス軸成長を実施する。X軸又はY軸に沿った結晶成長はZ軸に沿った成長より難しいため、72時間アニーリングプロトコルは多くの場合にXY結晶を生じないか、又はX軸若しくはY軸に沿って数百ナノメートルより小さいXY結晶を生じる。従って、本発明者らは、図23における全てのXY結晶について168時間アニーリングプロトコルを使用した。XY結晶の成長は等方性で、2つの成長方向(X軸及びY軸)が両方ともDNAヘリックス軸と垂直であったため、明らかな方向選択性を示さなかった。
XY結晶は、本発明者らの画像ではいかなる大域的な右巻きねじれも示さなかった。解析を単純化するため、本発明者らは、XY結晶がn個のヘリックスを含む完全な円柱を形成すると仮定した。円柱のラジアン単位の全体的なねじれθ=TL/JG(式中、Tはアンダーワインディング設計がもたらす印加トルクであり、Lはヘリックスの長さであり、Gはヘリックスの剛性率であり、及びJはねじれ係数である)。最初の3つのパラメータは一定と見なし得る。断面半径(XY面)の関数としての円のねじれ係数Jは、以下の式により近似することができる:J=πr4/2(式中、rは円断面半径である)。従って、θはr4、又はn2に反比例する。XY結晶が成長し、nが1に近付くと、大域的ねじれは速やかに軽減され、それ以上観察することができなくなる。
XY結晶の表面の平坦性は、溶液中であってもゲスト分子の位置及び向きを正確に制御することができるため、一部の適用にとって望ましい特性である。対照的に、ねじれのある構造(例えばZX結晶)又は柔軟性のある構造(例えば、単層DNA折り紙結晶)の溶液中におけるコンホメーションは、正確に予測することが困難である。加えて、結晶が極めて多数のDNAヘリックスを表面上に露出させているため、XY結晶は、物質を配置するのに容易なプラットフォームを提供する。機能化された材料は、各寸法において2.5nmの分解能で最密に充填されたDNAヘリックスの末端に簡便に連結することができる。
4H×4H直方体単位から様々な厚さの中実XY結晶を設計した。異なる長さの4H×4H直方体単位を使用して、厚さ64bp、128bp、192bp及び256bpの4つのXY結晶を生成した。これらの中実XY結晶の厚さは、それらが完全に平坦であったため、TEMイメージングから直接計測することができなかった。各塩基対がB型DNAにおける標準的な0.33nm長さに対応する場合、これらの4つの結晶の厚さはそれぞれ約21nm、42nm、63nm及び84nmとなるはずである。
XY−32H×64B−ポア及びXY−32H×128B−ポア結晶を構築した。両方の設計とも、各寸法において4個のヘリックス(10nm)により隔てられた周期的な2H×2H(5nm×5nm)ポアを含んだ。2つの結晶構造は、21nm及び42nm厚さの多孔質膜構造に似ていた。表面特徴を有する非多孔質構造を構築し得ることを実証するため、本発明者らは、XY−4H×8H×96Bチャネル結晶を作成した。これは、中実64bp(42nm)高さの基体と平行チャネルとを含んだ。チャネルは幅が4個のヘリックス(10nm)、高さが32bp(21nm)で、4層のヘリックスにより隔てられていた。
XY結晶のさらなるTEM画像を図27A〜図27Iに示す。
特に興味深いXY結晶はXY−4H×4H×32B−チューブ結晶であった。これは、他のXY結晶と同じ設計戦略を使用して設計した。この薄いXY結晶(32bp、又は10.6nm)は、平坦な2D結晶ではなく、チューブ構造を形成した。理論によって拘束されるものではないが、本発明者らは、このチューブ形成がヘリックス間における連結の不均等な分布に起因すると仮定する(図28A〜図28C)。XY−4H×4H×32B−チューブにおけるヘリックスは比較的短いため、隣接するヘリックスの各対の間にある連結は1つのみである。この連結はY軸に沿って均等に分布している。X軸に沿っては、連結の半分が構造の中央に位置し、残る半分が構造の片側に位置する。従って、理論によって拘束されるものではないが、本発明者らは、結晶が反対側で拡張し、チューブを形成すると仮定する。これらのチューブは細く、数マイクロメートルの長さに成長することができる(図29)。チューブの直径は、僅かな変動はあるものの、約14〜20nmである。より高いMgCl2濃度の存在下でXY−4H×4H×32B−チューブをアニーリングすると、Mg2+が負に荷電したDNAヘリックス間の斥力を低減し得るため、より大きい直径のチューブを作製することができる。60mM MgCl2では、本発明者らは、140nm〜300nmの直径を有する多くのチューブを観察した(図30)。我々の仮説をさらに試験するため、本発明者らは、DNAブリックが層間で交互に並ぶように配置されたXY−4H×4H×32B−直方体結晶を設計した。この設計におけるヘリックス間の連結は、X軸及びY軸の両方に沿って対称に分布した。TEM画像から、平坦な結晶構造が実証された(図31)。より厚い64bp、128bp、192bp及び256bpのXY結晶設計は、隣接するヘリックスの各対の間に2、4、6、及び8個の連結を有した。これらの設計について、TEM画像に認識できる湾曲は観察されなかった。
その他のDNAブリック結晶。本発明者らは、(1)X軸に沿って延在する2つの一次元成長結晶及び(2)「オフセット」連結スキームを実現する二次元成長結晶を含め、DNAブリックから他のタイプのDNAブリック結晶を組み立て得ることをさらに実証した。
1D X結晶。X軸又はY軸に沿った繰り返し単位の成長により、別種の一次元成長結晶が生成された。本発明者らは、2つのX結晶を設計し、試験した(DNAブリック構造の対称性から、X結晶とY結晶とは極めて類似しているはずであることに留意されたい):X−6H×6H×64B−直方体結晶(図32A)及びX−32H×64B−ポア結晶(図32B)。X−6H×6H×64B−直方体結晶は、中実6H×6H×64B直方体単位に基づき設計した。X−32H×64B−ポア結晶は、4個のヘリックスを中心から取り除いた6H×6H×64B直方体単位を使用した。両方の結晶とも、数百ナノメートルの長さに成長し、TEM画像において良好に形成されているように見えた。2つのX結晶の平均長さは、多数の短いDNAヘリックスが最密に充填されることに起因して、Z結晶と比べて大幅に短かった。
オフセット2D ZX結晶。前述の結晶は全て、図20Bの連結スキームを使用して設計した:構造の伸長は、軸に沿って繰り返し単位を「完全一致」方式で連結することにより達成した。例えば、6H×6H×32B−直方体Z軸結晶を作成するため、繰り返し単位中のあらゆる二重鎖が次の繰り返し単位中の同じ二重鎖と連結するように設計した。しかしながら、各軸に沿った連結は、「オフセット」結晶を生成するようにシフトさせることができる。かかる戦略により、同じ基本の繰り返し単位からのより多くの結晶設計が可能となる。本発明者らは、オフセットスキームを使用して、Z軸及びX軸に沿って6H×6H×64B−直方体繰り返し単位を伸長する二次元成長結晶を構築した(図33A〜図33C)。この設計では、結晶のZ軸延在範囲が、X軸に沿って4個の二重鎖だけずれている;結晶のX軸延在範囲が、Z軸に沿って32bpずれている。オフセット連結は、DNAブリック構造の周期性に起因して、以下の規則に従った:X軸又はY軸に沿ったずれは2個の二重鎖間隔毎に生じ;及びZ軸に沿ったずれは32bp間隔毎に生じる。
実施例5.金ナノ粒子のパターニング
DNA構造を鋳型として使用して、金ナノ粒子が個別のパターン(Kuzyk, A. et al. Nature 483, 311-314 (2012);Acuna, G P et al. Science 338, 506-510 (2012);Aldaye, F A & Sleiman, H F. Angew. Chem. Int. Ed. 45, 2204-2209 (2006))及び単層の周期的パターン(Sharma, J. et al. Science 323, 112-116 (2009))に配列されている。しかしながら、金ナノ粒子の最密充填周期パターン、特に多層パターンを形成することは、依然として難題である。DNAブリック結晶を使用した材料の配列を実証するため、本発明者らは、最密充填金ナノ粒子構造を設計し、構築した:(1)ZX−4H×6H×96−チャネル結晶上における平行金粒子ラインの2D配列(図34A及び図34B)及び(2)XY−4H×4H×64−直方体結晶の2つの表面上における平行金ナノ粒子単層の単純3D配列(図34C〜図34E)。
ZX−4H×6H×96−チャネル結晶の設計及びTEM画像を、図35A〜図35Cに示す。チャネルは奥行き2ヘリックス(5ナノメートル)及び幅32bp(10.6ナノメートル)である。隣接する平行チャネルは、Z軸に沿って64bp(21.2nm)の距離だけ隔てられている。ポリA(10個の連続するアデニン塩基)DNA鎖で機能化された金ナノ粒子をDNA結晶上に配列した。チャネル内では、あらゆるヘリックス末端が、金ナノ粒子を捕捉するためのポリT一本鎖DNAを呈する。金ナノ粒子を、本発明者らの設計と一致する平行線状に配列することに成功した。各ライン内で、最密充填金ナノ粒子の単鎖が観察された。ライン状の金ナノ粒子間の平均距離は、明らかな欠陥がある一部の位置を除き、約2ナノメートルである(図34B)。図23Cに示されるとおり、2つの平行な金ナノ粒子単層をXY−4H×4H×64−直方体結晶上に組み立てた。結晶は両方の表面上の各ヘリックス末端に、ポリA鎖で機能化された10ナノメートル金ナノ粒子を捕捉するためのポリT配列を呈する。粒子間の平均距離は約1〜2ナノメートルであるものと見られた(図34D)。構造は時に縁部が湾曲した(図34E)。金ナノ粒子の2つの単層間の縁部間距離は、約25nmであると計測され、設計した結晶厚さと一致した。
金ナノ粒子をミクロンスケールの秩序立った低次元アレイに並べることは、多様なプラスモン適用において必要とされる(Melosh, N. A. et al. Science 300, 112-115 (2003);Qi, M. H. et al. Nature 429, 538-542 (2004))。詳細には、2nm未満の面間間隔のナノ粒子アレイが、強力なプラズモンカップリングを呈するものと見込まれる(Qi, M. H. et al., 2004)。DNAナノ構造を鋳型として、金ナノ粒子がキラル(Qi, M. H. et al., 2004)、線状(Liu, N., et al. Science 332, 1407-1410 (2011);Tang, C. B., et al. Science 322, 429-432 (2008);Tavakkoli K. G., A. et al. Science 336, 1294-1298 (2012))、及び分枝状パターン(Seeman, N.C. J. Theor. Biol. 99, 237-247 (1982); Chen, J. & Seeman, N. C. Nature 350, 631-633 (1991))に配列されている。しかしながら、これらの構造のほとんどは個別の100nm未満の構造であり、ミクロンスケールでの長い範囲に及ぶ秩序化を欠いている。加えて、粒子間の間隔を2nmを切るまでに減らすこともまた難題である。本発明のDNA結晶の作製方法は、これらの難題に対処するユニークな方法を提供する。ポリT結合部位の表面分布を変化させることにより、金ナノ粒子をミクロンスケールの異なる2Dパターンで、最密充填パターンから20nm鎖間間隔の金ナノ粒子鎖のアレイに至るまでプログラムした。ポリT結合部位の周期性はDNA結晶上で2.5nmであり、これにより粒子間間隔は約2nmに減少した。
本発明者らの研究は、短い合成DNAから3D正方格子、ハニカム格子、及び六方格子DNAナノ構造を構築するための普遍化された手法を提供する。さらに、本発明者らはまた、多様な形状並びにチャネル及びポアなどの入り組んだ特徴を備える102個の入り組んだ3D形状も実証した。本発明者らのモジュール式の手法は、本発明者らの単純化したLEGO(登録商標)様モデル及びコンピュータ支援設計プロセスを伴い、入り組んだ3Dナノ構造を設計する単純な方法を提供する。長い足場鎖がないため、3Dキャンバスにおける任意のボクセルを独立して追加し又は取り除くことができ、8bp分解能での形状設計が可能となる。DNAブリックのコンパクトさ及びモジュール性を利用して、本発明者らは入り組んだ特徴(細い空洞及び通路など)を有するナノ構造を組み立てることができたが、これを、各ステープル鎖成分が典型的には大幅にコンパクトさに欠け、且つ足場が全くモジュール式でないDNA折り紙を使用して達成するのは、困難であり得る。1000ボクセル3D DNAキャンバスは、最大21000〜10300の潜在的可能性を提供する。しかしながら、完全な形状に自己集合するためには、各ボクセルがその隣接するボクセルの少なくとも1つと物質的に連結されなければならない。そのため構築することのできる実際の形状はそれより少ない。
本発明者らは、ある種の大きい又は入り組んだ設計が脆弱性を呈し得ることを注記した。一例は3H×3H×1024Bであり、これはアガロースゲル精製後のTEMイメージングの間にほとんどが壊れて断片となった。この問題に対処する一つの方法は、ナノ構造の一部の位置、特に「ウィークポイント」に対するより長い合成DNA鎖の組込みを用いることである。これらの長い鎖は、足場鎖と同様、形状を強化し得る。
入り組んだ3D形状を構築する能力により、DNAナノテクノロジーが対処し得る難題及び適用の範囲が広がり、例えば生合成機構を模倣する高度なDNAデバイスを作成し、又は3D空間にゲスト分子を配列して様々な機能性ナノ材料を生成し得る。加えて、合成DNAから作成される3Dナノ構造により、研究者がその用途に応じたカスタム配列を設計することが可能になる。さらに、L−DNA、化学修飾骨格を有するDNA、人工塩基を有するDNA、及びRNAを含めた他の合成情報高分子を使用するモジュール式自己集合は、薬物デリバリー及び治療適用などの様々な適用に決定的に重要であることが判明し得る。
本発明者らはまた、カスタム設計された寸法及びナノスケール特徴を有する複雑な3D DNA結晶を構築するための普遍的方法論も提供している。これは、真のミクロンスケール3D周期構造を作成することが可能な初めてのボトムアップ式自己集合戦略であり、構造は、数ナノメートルの分解能で合理的に設計され得る繰り返し単位を使用して、メガダルトンのサイズに達し得る。様々な設計の周期的単位−数百塩基対から数千塩基対に至る−を使用して、本発明者らは、(1)最大108個の平行ヘリックスを含む1D成長DNAバンドル結晶;(2)最大20層(50nm)の厚さの2D成長DNAマルチレイヤー結晶;及び(3)最大256bp(84nm)の高さの2D成長DNAフォレスト結晶を構築した。さらに、本発明者らは、複雑なナノメートルスケールの表面特徴、チャネル、及び多孔質パターンを本明細書に提供される3D結晶で実現できることを実証した。
この組立て戦略は、DNA折り紙及びDNAタイルの結晶化に関する理解に基づく。本明細書におけるDNA折り紙結晶の組立ては、一段階アニーリング反応又は二段階アニーリング反応を用いて実施され得る。1回のアニーリング反応では、足場、5〜10倍のステープル、及び連結鎖が共にアニーリングされる。理論によって拘束されるものではないが、DNA折り紙単量体はアニーリングの早い段階で(高い温度で)正しく形成され、次にアニーリングの遅い段階で(低い温度で)互いにつなぎ合わされることで結晶が形成される必要があると考えられる。二段階アニーリング反応は、連結鎖を除く折り紙単量体の最初のアニーリングから始まり、続いて精製ステップがあることにより、折り紙単量体が得られる。精製された単量体は、次に連結鎖と混合され、その混合物が、最初のアニーリングステップより低い開始温度による第2のアニーリングに供される。いずれの場合にも、DNA折り紙結晶の組立ては、2つの別個の段階、即ち単量体形成と単量体の結晶化とを経る階層的プロセスである。
かかる階層的結晶化は、いくつかの潜在的難題をもたらし得る。第一に、単量体の形成と結晶化とが、2つの十分に離れたアニーリング段階で起こる必要があり得る。単量体が完全に形成される前に結晶化が始まると、欠陥のある単量体がある種の良く秩序立った結晶の成長を損なう可能性があり得る。第二に、DNA折り紙単量体を結晶に組み込む動力学が、単量体の純然たる大きさ及び単量体の大量の負電荷のために緩徐であり得る。これらの要因は、結晶が妥当なアニーリング時間内に大きいサイズに達することを妨げ得る。第三に、結晶化の成功には、最終的にその系を最低エネルギー状態に至らせ得る単量体の組込み及び解離の繰り返しが関わる何らかのエラー修正が必要であり得る。大きい折り紙単量体では解離速度が遅くなり得るが、これは一部の結晶の欠陥を引き起こし得るか、又は結晶成長を妨げ得るかのいずれかである。
本明細書に提供されるDNAブリック結晶は、三次元空間において複雑なDNA結晶を作成するための新しい展望を明らかにする:結晶化中の高速の動力学を、繰り返し単位の情報の複雑さを損なうことなく達成することができる。標準化された構成要素−DNAブリックのような−を利用するモジュール式戦略を用いると、繰り返し単位が何千個もの塩基対を含むことができ、3D空間における複雑な設計が可能となる。結晶は、初めに複数の鎖からなる単位を形成する必要なしに、DNAブリックが結晶化する間の個々のブリックの組込みを通じて成長する。従って、本発明のモジュール式DNAブリック結晶では、情報の複雑性及び高速の結晶化動力学の両方が実現される。
本発明の合理的に設計された自己集合DNA結晶は、機能部分、例えば限定はされないが、タンパク質、核酸、金属粒子、量子ドット等の鋳型化に用いられ得る。かかるボトムアップ方式を用いると、ナノスケール特徴を有するミクロンスケールの周期的材料を製作することができる。この技術はトップダウンパターニングを用いたDNA結晶の配列を促進し、従ってナノテクノロジーの重要な目標の一つ、即ち効率的なナノスケールDNA自己集合を、例えばナノフォトニクス及びナノエレクトロニクスなどの適用の強力なトップダウン方式と組み合わせることが達成される。
方法及び材料
サンプル調製。Integrated DNA Technology, Inc.又はBioneer CorporationによってDNA鎖が合成された。構造を組み立てるため、未精製のDNA鎖を、10〜80mM MgCl2を補足した0.5×TE緩衝液(5mM トリス、pH7.9、1mM EDTA)中に、終濃度が各鎖につき100nM又は200nMとなるように混合した(500個より多い鎖を含むナノ構造に関しては、所望の200nM濃度を達成するため蒸発ステップを実施した)。
アニーリング勾配。次にPCRサーモサイクラーにおいて、80℃から60℃への1時間にわたる高速線形冷却ステップ、次に60℃から24℃への24時間又は72時間線形冷却勾配により、鎖混合物をアニーリングした。これらのアニーリング勾配は、第2の冷却ステップの長さにちなみ、24時間アニーリング又は72時間アニーリングと命名した。
アガロースゲル電気泳動及びサンプル精製。次にアニーリングしたサンプルを、氷水浴中、2パーセント天然アガロースゲル電気泳動(11mM MgCl2及び0.005%(v/v)EtBrを補足した0.5×TBE緩衝液に調製したゲル)に2時間供した。次に、目標のゲルバンドを切り出し、Freeze ’N Squeezeカラム(Bio-Rad Laboratories, Inc.)に置いた。カラムにおいてマイクロチューブ用乳棒でゲル断片を細かく粉砕し、次にカラムを7000gで5分間遠心した。カラムに通して抽出したサンプルを、TEM又はAFMイメージング用に収集した。
サンプル調製のロボットオートメーション。複雑な形状の設計を支援し、且つ液体ハンドリングロボット(Bravo、Agilent)を使用して鎖の混合を自動化するように、Python(http://www.python.org/)プログラムを設計した。各形状について、水溶液中10μMの各鎖のうち4μLをピペットで取り、2mL未満の最終容量となるように混合した(正確な容量は目標形状の構成鎖の数により決定した)。次に混合物を真空遠心乾燥し(Savant Speedvac sc110)、40mM MgCl2を含む200μLの0.5×TE緩衝液中に再懸濁した。ロボットピペッティングのラウンド毎に48個の形状を受け入れ、完了するまでに3〜4日間かかった。
TEMイメージング。イメージングのため、3.5μLアガロースゲル精製又は未精製サンプルをグロー放電炭素被覆TEMグリッドに4分間吸着させ、25mM NaOHを含有する2%ギ酸ウラニル水溶液を使用して1分間染色した。80kVで動作させたJEOL JEM-1400を使用して、イメージングを実施した。
AFMイメージング。Digital Instruments Nanoscope V制御器(Veeco)でSPM Multimodeを使用してAFM画像を取得した。40μLの0.5×TE(10mM MgCl2)を伴う精製による5μLの精製し、アニーリングしたサンプルを、新しく劈開したマイカの表面に加え、約2分間放置して吸収させた。時にサンプルの希釈を行い、所望のマイカ表面劈開を達成した。使用したAFMティップは、SNL-10窒化ケイ素カンチレバーチップ(Veeco Probes)における短くて細いカンチレバーであった。
結晶成長実験用の方法及び材料
サンプル調製。Integrated DNA Technology, Inc.又はBioneer CorporationによってDNA鎖が合成された。構造を組み立てるため、40mM MgCl2又は60mM MgCl2を補足した0.5×TE緩衝液(5mM トリス、pH7.9、1mM EDTA)中100μMストックから、未精製のDNA鎖を等モル化学量論比で可能な限り高い濃度に混合した。
アニーリング勾配。次にPCRサーモサイクラーにおいて、80℃から60℃への1時間にわたる高速線形冷却ステップ、次に60℃から24℃への72時間又は168時間線形冷却勾配により、鎖混合物をアニーリングした。アニーリング勾配は、第2の冷却ステップの長さにちなみ、72時間アニーリング又は168時間アニーリングと命名した。
TEMイメージング。イメージングのため、2.5μLのアニーリングしたサンプルをグロー放電炭素被覆TEMグリッド上に2分間吸着させた。次に25mM NaOHを含有する2%ギ酸ウラニル水溶液を使用して、グリッドを10秒間染色した。80kVで動作させたJEOL JEM-1400 TEMを使用して、イメージングを実施した。
10nm金ナノ粒子上へのDNAデコレーション。10nm金ナノ粒子上へのチオール化したDNAのコンジュゲーションを、以前記載されたとおり(Sharma, J. et al. J. Am. Chem. Soc. 130, 7820-7821, (2008))達成した。典型的な実験では、20μLの2.5μMホスフィン被覆10nm金ナノ粒子を、0.25×TBE緩衝液中の0.5μLの2M NaNO3及び0.65μLの100μMチオール化DNAと混合した。反応液を暗所において室温で36時間インキュベートした。この後、反応液を1%アガロースゲル含有0.5×TBE緩衝液に加えた。電気泳動を氷水浴上のゲルボックスにおいて95Vで1時間実行した。乳棒で砕き、続いて「Freeze ’N Squeeze」DNAゲル抽出スピンカラム(Bio-Rad)を使用して室温で3分間、10,000rpmで遠心することにより、紫色のバンドが回収された。回収されたDNAモールドを、後に使用するため4℃で暗所に保存した。チオール化DNAの配列は、5’−AAAAAAAAAA−/3ThioMC3−D/であった。
金ナノ粒子デコレーション。15μLの400mM NaCl溶液に、0.8μL(ZX−4H×6H×96B−チャネル結晶)又は0.6μL(XY−4H×4H×64B−直方体結晶)DNA試料を添加した。次に、0.2uLの95nM 10nm金ナノ粒子を導入した。50回ピペッティングした後、反応混合物を暗所に室温で3時間放置した。
均等物
いくつかの本発明の実施形態が本明細書に記載及び例示されているが、当業者は、本明細書に記載される機能を実施し及び/又はその結果及び/又は利点の1つ以上を達成するための様々な他の手段及び/又は構造を容易に想定するであろうとともに、かかる変形例及び/又は改良例の各々は、本明細書に記載される発明の実施形態の範囲内にあると見なされる。より一般的には、当業者は、本明細書に記載される全てのパラメータ、寸法、材料、及び構成が例示的であるように意図されること、及び実際のパラメータ、寸法、材料、及び/又は構成が、本発明の教示が使用される具体的な1つ又は複数の適用に依存することを、容易に理解するであろう。当業者は、本明細書に記載される具体的な本発明の実施形態の多くの均等物を認識し、又は通常と同じ程度の実験を用いて確認することができるであろう。従って、前述の実施形態が単に例として提供されること、及び添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内で、具体的に記載され且つ特許請求されるものとは別様に本発明の実施形態が実施され得ることが理解されるべきである。本開示の発明の実施形態は、本明細書に記載される個々の特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法それぞれに関する。加えて、2つ以上のかかる特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法の任意の組み合わせが、かかる特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法が互いに矛盾し合わない限り、本開示の発明の範囲内に含まれ得る。
本明細書において定義及び使用されるとおりの全ての定義が、辞書的定義、参照によって援用される文献中の定義、及び/又は定義される用語の通常の意味に優先することが理解されるべきである。
本明細書に開示される全ての参考文献、特許及び特許出願は、各々の引用の主題に関して参照によって援用され、これは場合によっては、文献の全体を包含し得る。
不定冠詞「a」及び「an」は、ここで本明細書及び特許請求の範囲において使用されるとき、明確にそれに反する旨が示されない限り、「少なくとも1つ」を意味するものと理解されなければならない。
語句「及び/又は」は、ここで本明細書及び特許請求の範囲において使用されるとき、そのように結合された要素、即ち、ある場合には連言的に存在し、且つ別の場合には選言的に存在する要素の「一方又は両方」を意味するものと理解されなければならない。「及び/又は」で列挙される複数の要素は、同じように、即ちそのように結合された要素の「1つ以上」と解釈されなければならない。「及び/又は」の節により具体的に特定される要素以外に、具体的に特定されるそれらの要素と関係するか、それとも無関係かに関わらず、他の要素が場合により存在し得る。従って、非限定的な例として、「A及び/又はB」に対する言及は、「〜を含んでいる(comprising)」などのオープンエンド型の用語と併せて使用されるとき、一実施形態ではAのみを指し(場合によりB以外の要素を含む);別の実施形態ではBのみを指し(場合によりA以外の要素を含む);さらに別の実施形態ではA及びBの両方を指す(場合により他の要素を含む)等となり得る。
ここで本明細書及び特許請求の範囲において使用されるとき、「又は」は、上記に定義するとおりの「及び/又は」と同じ意味を有するものと理解されなければならない。例えば、リスト中で項目を分ける際、「又は」又は「及び/又は」は、包含的である、即ち、複数の要素又は要素のリストのうちの少なくとも1つ(しかしまた2つ以上も含む)、及び場合により、さらなるリストに載っていない項目を含むものと解釈されなければならない。「〜のうち1つのみ」又は「〜のうち正確に1つ」など、反する旨が明示的に示される用語に限り、又は特許請求の範囲において「からなる(consisting of)」が用いられる場合にのみ、複数の要素又は要素のリストのうちの正確に1つの要素の包含を指し得る。一般に、本明細書で使用されるとおりの用語「又は」は、排他性の用語、例えば「いずれか」、「〜のうち1つ」、「〜のうち1つのみ」、又は「〜のうち正確に1つ」が前に付くとき、排他的な選択肢(即ち「一方又は他方で、しかし両方ではない」)を指示するものとのみ解釈されなければならない。「〜から本質的になる(consisting essentially of)」は、特許請求の範囲で使用されるとき、特許法の分野で使用されるとおりのその通常の意味を有するものとする。
ここで本明細書及び特許請求の範囲において使用されるとき、1つ以上の要素のリストに関連して語句「少なくとも1つ」は、要素のリスト中にある要素の任意の1つ以上から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、要素のリスト内に具体的に列挙される一つ一つの要素の少なくとも1つを必ずしも含むものではなく、且つ要素のリスト中にある要素の任意の組み合わせを排除するものでないと理解されなければならない。この定義はまた、語句「少なくとも1つ」が言及する要素のリスト内で具体的に特定される要素以外の要素が、具体的に特定されるそれらの要素と関係するか、それとも無関係かに関わらず、場合により存在し得ることも許容する。従って、非限定的な例として、「A及びBの少なくとも1つ」(又は等価に、「A又はBの少なくとも1つ」、又は等価に、「A及び/又はBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、少なくとも1つの(場合により2つ以上を含む)Aであり、Bが存在しない(及び場合によりB以外の要素を含む)ことを指し;別の実施形態では、少なくとも1つ(場合により2つ以上を含む)のBであり、Aが存在しない(且つ場合によりA以外の要素を含む)ことを指し;さらに別の実施形態では、少なくとも1つ(及び場合により2つ以上を含む)のA、且つ少なくとも1つ(場合により2つ以上を含む)のB(及び場合により他の要素を含む)を指す等となり得る。
また、明確にそれに反する旨が示されない限り、2つ以上のステップ又は行為を含む本明細書で特許請求される任意の方法において、この方法のステップ又は行為の順序は、必ずしも、方法のステップ又は行為が記載される順序に限られるわけではないことも理解されなければならない。
特許請求の範囲では、並びに上記の明細書では、「〜を含む(comprising)」、「〜を備える(including)」、「〜を担持する(carrying)」、「〜を有する(having)」、「〜を含有する(containing)」、「〜が関わる(involving)」、「〜を保持する(holding)」、「〜が含まれる(composed of)」などの全ての移行句は、オープンエンド型、即ち、包含するが限定はされないことを意味するものと理解されなければならない。移行句「〜からなる(consisting of)」及び「〜から本質的になる(consisting essentially of)」に限り、米国特許庁(United States Patent Office)の特許審査便覧(Manual of Patent Examining Procedures)第2111.03章に記載されるとおり、それぞれクローズド型又はセミクローズド型移行句であるものとする。