JPWO2005024018A1 - 核酸構築物およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
本発明によれば、第1の1本鎖核酸と第2の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸とから構成される核酸構築物であって、第1の1本鎖核酸と第2の1本鎖核酸とは少なくとも一部がアニーリングしており、第1の1本鎖核酸及び第2の1本鎖核酸はそれぞれ第3の1本鎖核酸と連結している核酸構築物の製造方法が提供される。本発明によれば、本発明は、1本鎖核酸の特定のヌクレオチドどうしを連結することができるため、様々な構造を有する核酸を構築することができる。
Description
本発明は、1本鎖核酸どうしを連結する方法において、1本鎖核酸中の特定のヌクレオチドと他方の1本鎖核酸中の特定のヌクレオチドとをリンカーを介した化学結合させることにより核酸構築物を製造する方法、および1本鎖核酸どうしを連結する方法において、1本鎖核酸中の特定のヌクレオチドと他方の特定のヌクレオチドとを、リンカーを介した化学結合およびリガーゼによる酵素結合により連結し、突出構造を有さない核酸構築物を製造する方法、並びに該方法により製造された核酸構築物を用いたタンパク質−核酸連結体の製造方法等に関する。
遺伝子工学においてDNAの切断および連結は最も重要な基本的手法の一つである。一方、RNAの連結は、T4 RNAリガーゼを用いた、主に人工rRNAの合成(Bruce AG,Uhlenbech OC:Biochemistry,(1982)21(5)855−6)や、全長cDNA作製のためのmRNAの5’末端へのプライマー付加方法(Troutt AB,et al.:Proc Natl Acad Sci USA(1992)89(20):9823−5)等がある。最近になって進化分子工学の手法であるin vitro virus法(WO98/16636号公報およびNemoto,N.,et al.(1997)FEBS Lett.414,405−408)が登場し、そこでmRNAと、その3’末端にピューロマイシン等の核酸誘導体を末端に有するDNA等からなるリンカーを連結した核酸構築物を製造する必要がでてきた。従来の方法ではその効率が悪く、in vitro virus法に必須の該核酸構築物を用いて製造されるタンパク質−核酸連結体の製造にあたって大きな課題となっている。
また、上記リンカーには、さらにポリA鎖やビオチン等の精製用のタグ、蛍光色素等の検出用プローブ、逆転写によるmRNAのcDNA/mRNA化を可能にするプライマー配列等を付加する場合(WO03/14734号公報)もあり、そのような複雑な構造を有する核酸構築物を製造するために、さらに、核酸結合のためのより効率の良い加工技術が求められている。
2種類の核酸を連結させる方法としては、従来は制限酵素を用いた2本鎖核酸のライゲーションが主であり、DNAリガーゼを用いたものがほとんどであった。最近になり西垣らが(Nishigaki K.et al.Mol Divers 1998;4(3):187−9)2つのDNA断片の一部をハイブリダイズすることにより効率よくT4 RNAリガーゼを用いてライゲーションする方法(Y−ライゲーション法)を見出した。Y−ライゲーション法は、2本の1本鎖DNA(5’−ハーフおよび3’−ハーフ)の末端に互いに相補的配列(ステム部分)を含めておき、ハイブリダイゼーション後、一本鎖領域(ブランチ部分)の末端をRNAリガーゼで連結する方法である(WO03/14734号公報を参照)。しかし、この方法では連結すべき二本の一本鎖DNAの末端に互いに相補的な配列(ステム部分)を含めておく必要があり、この方法で製造された核酸構築物(図3のT−splint3FA)は、図に記載のとおり突出構造を有しているため、例えばこれを用いてタンパク質−核酸連結体を製造する場合、該連結体の生成効率が低いという問題があった。
本発明者らは、タンパク質の発現制御配列およびコーディング配列を有するmRNA鎖(第2の1本鎖核酸)、該RNAの3’末端の塩基配列とアニーリング可能な塩基配列からなるDNAで、かつ核酸誘導体を末端に有するスペーサーが枝分かれした状態で結合しているDNA鎖(第1の1本鎖核酸)、およびpolyA等を有するDNA鎖(第3の1本鎖核酸)を用いて、RNA(第2の1本鎖核酸)の3’末端とpolyA等を有するDNA鎖(第3の1本鎖核酸)の5’末端とを結合させる方法、および第1の1本鎖核酸の5’末端と第3のDNA鎖の5’末端側のヌクレオチドとを結合させる方法を検討し、該方法により得られた核酸構築物を翻訳することにより製造されるタンパク質−核酸連結物の生成における飛躍的な効率化を達成した。
さらに詳しくは、本発明者らは、5’末端のヌクレオチドにチオール基を有する化合物を付加した1本鎖DNAと、さらにアミノ基を有する化合物を5’末端付近のヌクレオチドに付加したDNAを、EMCSを用いて連結し、この連結物にmRNA鎖をアニーリングさせた後にリガーゼ処理することにより連結して得られた核酸構築物を鋳型として、タンパク質−核酸連結物を製造すれば、該連結物の生成効率が飛躍的に向上することを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
即ち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1) 第1の1本鎖核酸と第2の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸とから構成される核酸構築物であって、第1の1本鎖核酸と第2の1本鎖核酸とは少なくとも一部がアニーリングしており、第1の1本鎖核酸及び第2の1本鎖核酸はそれぞれ第3の1本鎖核酸と連結している核酸構築物の製造方法であって、
(i)第1の1本鎖核酸を構成するいずれかのヌクレオチドと、第3の1本鎖核酸を構成するいずれかのヌクレオチドであって、上記1本鎖核酸の各々同じ末端側に存在するヌクレオチドをリンカーを介して化学結合させることにより、第1の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸とを連結する工程、
(ii)第1の1本鎖核酸と第2の1本鎖核酸をアニーリングさせる工程、及び
(iii)前記工程(i)及び(ii)により得られた連結物をリガーゼ処理することにより第2の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸とを連結する工程、
を含むことを特徴とする上記の方法。
(2) リンカーが架橋剤であり、第1の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸の各々同じ末端側に存在するいずれかのヌクレオチドに、上記架橋剤により認識される官能基を付加し、該官能基と架橋剤を化学結合することにより結合する、(1)に記載の方法。
(3) リンカーが、第1の1本鎖核酸の片方の末端のヌクレオチドと、第3の1本鎖核酸の同じ側の末端から0〜10塩基内側のヌクレオチドとの結合を介するものである、(1)または(2)に記載の方法。
(4) 第2の1本鎖核酸または第1の1本鎖核酸のいずれか一方が、タンパク質の発現制御配列およびコーディング配列を有するRNAを含み、その3’末端側の塩基配列が、もう一方の1本鎖核酸とアニーリング可能な塩基配列であり、かつ、もう一方の1本鎖核酸は、核酸誘導体を末端に有するスペーサーが枝分かれした状態で結合しているものである、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5) 核酸誘導体が、ピューロマイシン、3’−N−アミノアシルピューロマイシンアミノヌクレオシド、3’−N−アミノアシルアデノシンアミノヌクレオシドの化学構造骨格を含む化合物又はそれらの類縁体である、(4)に記載の方法。
(6) スペーサーが、高分子からなるものである、(4)または(5)に記載の方法。
(7) スペーサーが、主鎖の原子数で10以上の長さである、(4)から(6)のいずれかに記載の方法。
(8) 第3の1本鎖核酸が、標識物質を含む、(1)から(7)のいずれかに記載の方法。
(9) (1)から(8)のいずれかに記載の方法により製造される核酸構築物。
(10) 第1の1本鎖核酸と第2の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸とから構成され、第1の1本鎖核酸と第2の1本鎖核酸とは少なくとも一部がアニーリングしており、第1の1本鎖核酸及び第2の1本鎖核酸はそれぞれ第3の1本鎖核酸と連結している核酸構築物であって、第1の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸の各々同じ末端側に存在するヌクレオチドがリンカーを介して化学結合しており、かつ第2の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸の末端のヌクレオチドが化学結合している、上記の核酸構築物。
(11) リンカーが架橋剤であり、第1の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸の各々同じ末端側に存在するいずれかのヌクレオチドに、上記架橋剤により認識される官能基を付加し、該官能基と架橋剤が化学結合することにより結合している、(10)に記載の核酸構築物。
(12) リンカーが、第1の1本鎖核酸の片方の末端のヌクレオチドと、第3の1本鎖核酸の同じ側の末端から0〜10塩基内側のヌクレオチドとの結合を介するものである、(10)または(11)に記載の核酸構築物。
(13) 第2の1本鎖核酸または第1の1本鎖核酸のいずれか一方が、タンパク質の発現制御配列およびコーディング配列を有するRNAを含み、その3’末端側の塩基配列が、もう一方の1本鎖核酸とアニーリング可能な塩基配列であり、かつ、もう一方の1本鎖核酸は、核酸誘導体を末端に有するスペーサーが枝分かれした状態で結合しているものである、(10)〜(12)のいずれかに記載の核酸構築物。
(14) 核酸誘導体が、ピューロマイシン、3’−N−アミノアシルピューロマイシンアミノヌクレオシド、3’−N−アミノアシルアデノシンアミノヌクレオシドの化学構造骨格を含む化合物又はそれらの類縁体である、(13)に記載の核酸構築物。
(15) スペーサーが、高分子からなるものである、(13)または(14)に記載の核酸構築物。
(16) スペーサーが、主鎖の原子数で10以上の長さである、(13)〜(15)のいずれかに記載の核酸構築物。
(17) 第3の1本鎖核酸が標識物質を含む、(13)〜(16)のいずれかに記載の核酸構築物。
(18) (4)〜(8)のいずれかに記載の方法により製造される核酸構築物または(13)〜(17)のいずれかに記載の核酸構築物をタンパク質翻訳系により翻訳し、コーディング配列がコードするタンパク質と該核酸構築物とを核酸誘導体を介して結合させることを含む、タンパク質−核酸連結体の製造方法。
(19) (4)〜(8)のいずれかに記載の方法により製造される核酸構築物または(13)〜(17)のいずれかに記載の核酸構築物を60〜90℃で加熱した後に冷却してから、タンパク質翻訳系により翻訳する、(18)に記載のタンパク質−核酸連結体の製造方法。
(20) (13)〜(17)のいずれかに記載の核酸構築物の核酸誘導体に、コーディング配列がコードするタンパク質が結合している、タンパク質−核酸連結体。
(21) (20)に記載のタンパク質−核酸連結体のmRNA鎖を逆転写することを含む、DNA−RNA−タンパク質連結体の製造方法。
(22) (20)に記載のタンパク質−核酸連結体のmRNA鎖にDNAがアニーリングしている、DNA−RNA−タンパク質連結体。
(23) (22)に記載のDNA−RNA−タンパク質連結体のRNAを分解し、DNAを鋳型にポリメラーゼ反応をすることにより得られる2本鎖DNA−タンパク質連結体。
(24) (20)〜(23)のいずれかに記載のタンパク質−核酸連結体を、第3の1本鎖核酸が有する標識物質により分離精製することを含む、タンパク質−核酸連結体の精製方法。
(25) (20)〜(23)のいずれかに記載のタンパク質−核酸連結体または(24)の精製方法により得られたタンパク質−核酸連結体の混合物の中から、タンパク質の機能を指標として所望のタンパク質−核酸連結体を選択することを含む、所望のタンパク質−核酸連結体、所望のタンパク質、所望のタンパク質をコードする塩基配列、または所望のタンパク質をコードするRNAの取得方法。
(26) (25)で選択されたタンパク質−核酸連結体のコーディング配列を含むDNAを増幅することを含む、所望のタンパク質をコードするDNAの取得方法。
(27) (26)で得られたDNAを転写して得られたmRNAをコーディング配列として、(4)〜(8)のいずれかに記載の方法、(18)又は(19)に記載の方法、(24)に記載の方法、(25)に記載の方法、および(26)に記載の方法を繰り返すことを含む、所望のタンパク質−核酸連結体、所望のタンパク質、所望のタンパク質をコードする塩基配列、所望のタンパク質をコードするRNA、または所望のタンパク質をコードするDNAの取得方法。
(28) 2本の核酸の同じ末端側をリンカーを介して結合する方法であって、該核酸の結合しようとする各ヌクレオチドに該架橋剤により認識される官能基を付加し、これらを該架橋剤で結合させることを特徴とする方法。
(29) (28)に記載の方法により結合された2本の核酸を含む核酸構築物。
また、上記リンカーには、さらにポリA鎖やビオチン等の精製用のタグ、蛍光色素等の検出用プローブ、逆転写によるmRNAのcDNA/mRNA化を可能にするプライマー配列等を付加する場合(WO03/14734号公報)もあり、そのような複雑な構造を有する核酸構築物を製造するために、さらに、核酸結合のためのより効率の良い加工技術が求められている。
2種類の核酸を連結させる方法としては、従来は制限酵素を用いた2本鎖核酸のライゲーションが主であり、DNAリガーゼを用いたものがほとんどであった。最近になり西垣らが(Nishigaki K.et al.Mol Divers 1998;4(3):187−9)2つのDNA断片の一部をハイブリダイズすることにより効率よくT4 RNAリガーゼを用いてライゲーションする方法(Y−ライゲーション法)を見出した。Y−ライゲーション法は、2本の1本鎖DNA(5’−ハーフおよび3’−ハーフ)の末端に互いに相補的配列(ステム部分)を含めておき、ハイブリダイゼーション後、一本鎖領域(ブランチ部分)の末端をRNAリガーゼで連結する方法である(WO03/14734号公報を参照)。しかし、この方法では連結すべき二本の一本鎖DNAの末端に互いに相補的な配列(ステム部分)を含めておく必要があり、この方法で製造された核酸構築物(図3のT−splint3FA)は、図に記載のとおり突出構造を有しているため、例えばこれを用いてタンパク質−核酸連結体を製造する場合、該連結体の生成効率が低いという問題があった。
本発明者らは、タンパク質の発現制御配列およびコーディング配列を有するmRNA鎖(第2の1本鎖核酸)、該RNAの3’末端の塩基配列とアニーリング可能な塩基配列からなるDNAで、かつ核酸誘導体を末端に有するスペーサーが枝分かれした状態で結合しているDNA鎖(第1の1本鎖核酸)、およびpolyA等を有するDNA鎖(第3の1本鎖核酸)を用いて、RNA(第2の1本鎖核酸)の3’末端とpolyA等を有するDNA鎖(第3の1本鎖核酸)の5’末端とを結合させる方法、および第1の1本鎖核酸の5’末端と第3のDNA鎖の5’末端側のヌクレオチドとを結合させる方法を検討し、該方法により得られた核酸構築物を翻訳することにより製造されるタンパク質−核酸連結物の生成における飛躍的な効率化を達成した。
さらに詳しくは、本発明者らは、5’末端のヌクレオチドにチオール基を有する化合物を付加した1本鎖DNAと、さらにアミノ基を有する化合物を5’末端付近のヌクレオチドに付加したDNAを、EMCSを用いて連結し、この連結物にmRNA鎖をアニーリングさせた後にリガーゼ処理することにより連結して得られた核酸構築物を鋳型として、タンパク質−核酸連結物を製造すれば、該連結物の生成効率が飛躍的に向上することを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
即ち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1) 第1の1本鎖核酸と第2の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸とから構成される核酸構築物であって、第1の1本鎖核酸と第2の1本鎖核酸とは少なくとも一部がアニーリングしており、第1の1本鎖核酸及び第2の1本鎖核酸はそれぞれ第3の1本鎖核酸と連結している核酸構築物の製造方法であって、
(i)第1の1本鎖核酸を構成するいずれかのヌクレオチドと、第3の1本鎖核酸を構成するいずれかのヌクレオチドであって、上記1本鎖核酸の各々同じ末端側に存在するヌクレオチドをリンカーを介して化学結合させることにより、第1の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸とを連結する工程、
(ii)第1の1本鎖核酸と第2の1本鎖核酸をアニーリングさせる工程、及び
(iii)前記工程(i)及び(ii)により得られた連結物をリガーゼ処理することにより第2の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸とを連結する工程、
を含むことを特徴とする上記の方法。
(2) リンカーが架橋剤であり、第1の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸の各々同じ末端側に存在するいずれかのヌクレオチドに、上記架橋剤により認識される官能基を付加し、該官能基と架橋剤を化学結合することにより結合する、(1)に記載の方法。
(3) リンカーが、第1の1本鎖核酸の片方の末端のヌクレオチドと、第3の1本鎖核酸の同じ側の末端から0〜10塩基内側のヌクレオチドとの結合を介するものである、(1)または(2)に記載の方法。
(4) 第2の1本鎖核酸または第1の1本鎖核酸のいずれか一方が、タンパク質の発現制御配列およびコーディング配列を有するRNAを含み、その3’末端側の塩基配列が、もう一方の1本鎖核酸とアニーリング可能な塩基配列であり、かつ、もう一方の1本鎖核酸は、核酸誘導体を末端に有するスペーサーが枝分かれした状態で結合しているものである、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5) 核酸誘導体が、ピューロマイシン、3’−N−アミノアシルピューロマイシンアミノヌクレオシド、3’−N−アミノアシルアデノシンアミノヌクレオシドの化学構造骨格を含む化合物又はそれらの類縁体である、(4)に記載の方法。
(6) スペーサーが、高分子からなるものである、(4)または(5)に記載の方法。
(7) スペーサーが、主鎖の原子数で10以上の長さである、(4)から(6)のいずれかに記載の方法。
(8) 第3の1本鎖核酸が、標識物質を含む、(1)から(7)のいずれかに記載の方法。
(9) (1)から(8)のいずれかに記載の方法により製造される核酸構築物。
(10) 第1の1本鎖核酸と第2の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸とから構成され、第1の1本鎖核酸と第2の1本鎖核酸とは少なくとも一部がアニーリングしており、第1の1本鎖核酸及び第2の1本鎖核酸はそれぞれ第3の1本鎖核酸と連結している核酸構築物であって、第1の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸の各々同じ末端側に存在するヌクレオチドがリンカーを介して化学結合しており、かつ第2の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸の末端のヌクレオチドが化学結合している、上記の核酸構築物。
(11) リンカーが架橋剤であり、第1の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸の各々同じ末端側に存在するいずれかのヌクレオチドに、上記架橋剤により認識される官能基を付加し、該官能基と架橋剤が化学結合することにより結合している、(10)に記載の核酸構築物。
(12) リンカーが、第1の1本鎖核酸の片方の末端のヌクレオチドと、第3の1本鎖核酸の同じ側の末端から0〜10塩基内側のヌクレオチドとの結合を介するものである、(10)または(11)に記載の核酸構築物。
(13) 第2の1本鎖核酸または第1の1本鎖核酸のいずれか一方が、タンパク質の発現制御配列およびコーディング配列を有するRNAを含み、その3’末端側の塩基配列が、もう一方の1本鎖核酸とアニーリング可能な塩基配列であり、かつ、もう一方の1本鎖核酸は、核酸誘導体を末端に有するスペーサーが枝分かれした状態で結合しているものである、(10)〜(12)のいずれかに記載の核酸構築物。
(14) 核酸誘導体が、ピューロマイシン、3’−N−アミノアシルピューロマイシンアミノヌクレオシド、3’−N−アミノアシルアデノシンアミノヌクレオシドの化学構造骨格を含む化合物又はそれらの類縁体である、(13)に記載の核酸構築物。
(15) スペーサーが、高分子からなるものである、(13)または(14)に記載の核酸構築物。
(16) スペーサーが、主鎖の原子数で10以上の長さである、(13)〜(15)のいずれかに記載の核酸構築物。
(17) 第3の1本鎖核酸が標識物質を含む、(13)〜(16)のいずれかに記載の核酸構築物。
(18) (4)〜(8)のいずれかに記載の方法により製造される核酸構築物または(13)〜(17)のいずれかに記載の核酸構築物をタンパク質翻訳系により翻訳し、コーディング配列がコードするタンパク質と該核酸構築物とを核酸誘導体を介して結合させることを含む、タンパク質−核酸連結体の製造方法。
(19) (4)〜(8)のいずれかに記載の方法により製造される核酸構築物または(13)〜(17)のいずれかに記載の核酸構築物を60〜90℃で加熱した後に冷却してから、タンパク質翻訳系により翻訳する、(18)に記載のタンパク質−核酸連結体の製造方法。
(20) (13)〜(17)のいずれかに記載の核酸構築物の核酸誘導体に、コーディング配列がコードするタンパク質が結合している、タンパク質−核酸連結体。
(21) (20)に記載のタンパク質−核酸連結体のmRNA鎖を逆転写することを含む、DNA−RNA−タンパク質連結体の製造方法。
(22) (20)に記載のタンパク質−核酸連結体のmRNA鎖にDNAがアニーリングしている、DNA−RNA−タンパク質連結体。
(23) (22)に記載のDNA−RNA−タンパク質連結体のRNAを分解し、DNAを鋳型にポリメラーゼ反応をすることにより得られる2本鎖DNA−タンパク質連結体。
(24) (20)〜(23)のいずれかに記載のタンパク質−核酸連結体を、第3の1本鎖核酸が有する標識物質により分離精製することを含む、タンパク質−核酸連結体の精製方法。
(25) (20)〜(23)のいずれかに記載のタンパク質−核酸連結体または(24)の精製方法により得られたタンパク質−核酸連結体の混合物の中から、タンパク質の機能を指標として所望のタンパク質−核酸連結体を選択することを含む、所望のタンパク質−核酸連結体、所望のタンパク質、所望のタンパク質をコードする塩基配列、または所望のタンパク質をコードするRNAの取得方法。
(26) (25)で選択されたタンパク質−核酸連結体のコーディング配列を含むDNAを増幅することを含む、所望のタンパク質をコードするDNAの取得方法。
(27) (26)で得られたDNAを転写して得られたmRNAをコーディング配列として、(4)〜(8)のいずれかに記載の方法、(18)又は(19)に記載の方法、(24)に記載の方法、(25)に記載の方法、および(26)に記載の方法を繰り返すことを含む、所望のタンパク質−核酸連結体、所望のタンパク質、所望のタンパク質をコードする塩基配列、所望のタンパク質をコードするRNA、または所望のタンパク質をコードするDNAの取得方法。
(28) 2本の核酸の同じ末端側をリンカーを介して結合する方法であって、該核酸の結合しようとする各ヌクレオチドに該架橋剤により認識される官能基を付加し、これらを該架橋剤で結合させることを特徴とする方法。
(29) (28)に記載の方法により結合された2本の核酸を含む核酸構築物。
図1は、架橋剤を介して1本鎖核酸中のヌクレオチドを結合する方法の模式図である。
図2は、スペーサー鎖、および標識鎖を結合する方法を示した模式図である。末端に核酸誘導体(図中Pで示される)および蛍光物質物等を有するオリゴ1とオリゴ2を連結(スペーサー鎖)し、さらにpolyA(標識物)を有するオリゴ3(標識鎖)を架橋剤を介して連結することによりスペーサー鎖と標識鎖の連結物が得られる。
図3は、T−splint5.2FA、およびT−splint3FAの構造を示す模式図である。図中枠内には、架橋剤を介した結合方法の模式図が示される。また、T−splint3FAで示したスペーサー鎖と標識鎖の連結物は、突出部を有し、本発明のものより、IVV分子の合成効率が低い。
図4は、T−splint5.1FA、またはT−splint3FAとmRNA鎖とのライゲーションの結果を示す電気泳動の写真である。本発明のT−splint5.1FAは、T−splint3FAに比べてmRNAとのライゲーション効率が高い。
レーン1: mRNA
レーン2: mRNA:T−splint3FA=1:1.2
レーン3: mRNA:T−splint5.1FA=1:1.2
レーン4: mRNA:T−splint5.1FA=1:2
レーン5: mRNA:T−splint5.1FA=1:3
レーン6: 分子量マーカー
図5は、スペーサー鎖と標識鎖の連結物の構造の違いによるIVV分子形成効率への影響を示す電気泳動の写真である。本発明のT−splint5.1FA、T−splint5.2FA、T−splint5.9FAは、いずれもT−splint3FAに比べてIVV分子の形成効率が高く、特にT−splint5.9FAではIVV形成効率が高くなっている。
レーン1: T−splint3FA 翻訳前
レーン2: T−splint3FA 翻訳1時間
レーン3: T−splint3FA 翻訳3時間
レーン4: T−splint5.1FA 翻訳前
レーン5: T−splint5.1FA 翻訳1時間
レーン6: T−splint5.1FA 翻訳3時間
レーン7: T−splint5.2FA 翻訳前
レーン8: T−splint5.2FA 翻訳1時間
レーン9: T−splint5.2FA 翻訳3時間
レーン10: T−splint5.9FA 翻訳前
レーン11: T−splint5.9FA 翻訳1時間
レーン12: T−splint5.9FA 翻訳3時間
図6は、スペーサー鎖と標識鎖の連結物の構造の違いによるIVV分子の逆転写効率への影響を示す電気泳動の写真である。T−splint5.1FAを除き、逆転写によるmRNA/cDNA2本鎖化とそのRNase H処理によってcDNA化が確認できた。T−splint5.2FA、T−splint5.9FAでは逆転写産物が40−50%程度確認された。
レーン1: T−splint3FA RNA−リンカー連結体
レーン2: T−splint3FA 逆転写反応後
レーン3: T−splint3FA RNaseH処理後
レーン4: T−splint5.1FA RNA−リンカー連結体
レーン5: T−splint5.1FA 逆転写反応後
レーン6: T−splint5.1FA RNaseH処理後
レーン7: T−splint5.2FA RNA−リンカー連結体
レーン8: T−splint5.2FA 逆転写反応後
レーン9: T−splint5.2FA RNaseH処理後
レーン10: T−splint5.9FA RNA−リンカー連結体
レーン11: T−splint5.9FA 逆転写反応後
レーン12: T−splint5.9FA RNaseH処理後
図7は、翻訳前にmRNA鎖−スペーサー鎖−標識鎖の連結物を加熱、急冷することのIVV分子の形成効率への影響を示す電気泳動の写真である。翻訳前にmRNA鎖−スペーサー鎖−標識鎖の連結物を加熱、急冷した方がIVV分子の形成効率が高い。
レーン1: 未処理 翻訳前
レーン2: 未処理 翻訳1時間
レーン3: 未処理 翻訳3時間
レーン4: 加熱冷却 翻訳前
レーン5: 加熱冷却 翻訳1時間
レーン6: 加熱冷却 翻訳3時間
図8は、IVV分子調製用cDNAライブラリーの作製方法の概略図である。mRNAからランダムプライミング法により逆転写でmRNAに相補的な一本鎖cDNAライブラリーを合成し(I)、RNaseH、DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼI、およびT4 DNAポリメラーゼ処理によりdsDNAライブラリーを合成し(II)、さらに翻訳エンハンサーなどを含むアダプターと結合して(III)、PCRによりフォワード共通プライマー(配列番号7)、リバース共通プライマー(配列番号8)を用いて、5’、3’共通配列を導入し、IVV分子調製用cDNAライブラリーを作製した(IV)。
図9Aは、IVV調製用翻訳鋳型ライブラリーを4%ウレア変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)にて泳動した結果を示す図である。調製されたIVV調製用翻訳鋳型ライブラリーは、スメアな泳動像を示し、またDNA鎖の長さも十分であった。
図9Bは、IVV調製用翻訳鋳型ライブラリーとその元となっているmRNA中に含まれる特定分子の存在量を定量PCR法により測定した結果を示すグラフである。調製されたIVV調製用翻訳鋳型ライブラリー中に含まれる複数種の特定のcDNA量は、もとのmRNA中に含まれるものと差異がない。
図10は、IVVスクリーニングの概略を示す図である。 IVV分子のスクリーニングは、(i)タンパク質−逆転写核酸連結体(以下、これを「IVVcDNA分子」と称することがある)形成工程、(ii)ベイト(被検物質)に対する相互作用分子の選抜工程、(iii)選択されたIVV分子からなるタンパク質−逆転写核酸連結体再作製工程、(iv)シークエンス解析による選択されたIVV分子の同定工程の4つの工程からなる。
図11は、FK506をベイトとしたIVVスクリーニングにより得られたIVVcDNAライブラリーをウレア変性PAGEにて泳動し、スペーサーに導入してある蛍光(Fluoroscein)を使って、Molecular Imager(Bio Rad社製)で画像化した結果を示す図である。ラウンド7および8で単一のバンドが確認された。
図12は、FK506をベイトとしたIVVスクリーニングの各ラウンドにおけるFKBP12を含むIVV分子数を示すグラフである。図中、四角のグラフはFKBPを含むIVV分子数を示し、三角はb−Actinを含むものを示す。ラウンドが重なるごとに、FKBP12を含むIVV分子数が増加しており、本実施例のスクリーニングにより、FK506と相互作用するタンパク質を含むIVV分子が濃縮されていることが確認された。
図13は、IVV調製用翻訳鋳型分子のDNA2本鎖化を行った反応液を変性、および非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離し、T−Splint5.9FAのフルオレセインに由来する蛍光およびVistra Green染色で検出した結果を示す図である。図中、レーン1は、FKBP12のmRNA、レーン2はmRNAとT−Splint5.9FAの結合体、レーン3はmRNA/cDNA−T−splint5.9FA結合体、レーン4はmRNA/cDNA−T−splint5.9FA結合体をRNaseAとRNaseHで処理したもの、レーン5から7は2本鎖DNA化したPCR反応液であり、レーン5は変性を72℃で行ない、プライマー濃度が鋳型の5等量のもの、レーン6は変性を72℃で行い、プライマー濃度が鋳型の1.25等量のもの、またレーン7は変性を84℃で行ない、プライマー濃度が鋳型の1.25等量であるものを示す。mRNA−T−Splint5.9FAの連結物のmRNA部が2本鎖DNAとなっていることが確認された。
図2は、スペーサー鎖、および標識鎖を結合する方法を示した模式図である。末端に核酸誘導体(図中Pで示される)および蛍光物質物等を有するオリゴ1とオリゴ2を連結(スペーサー鎖)し、さらにpolyA(標識物)を有するオリゴ3(標識鎖)を架橋剤を介して連結することによりスペーサー鎖と標識鎖の連結物が得られる。
図3は、T−splint5.2FA、およびT−splint3FAの構造を示す模式図である。図中枠内には、架橋剤を介した結合方法の模式図が示される。また、T−splint3FAで示したスペーサー鎖と標識鎖の連結物は、突出部を有し、本発明のものより、IVV分子の合成効率が低い。
図4は、T−splint5.1FA、またはT−splint3FAとmRNA鎖とのライゲーションの結果を示す電気泳動の写真である。本発明のT−splint5.1FAは、T−splint3FAに比べてmRNAとのライゲーション効率が高い。
レーン1: mRNA
レーン2: mRNA:T−splint3FA=1:1.2
レーン3: mRNA:T−splint5.1FA=1:1.2
レーン4: mRNA:T−splint5.1FA=1:2
レーン5: mRNA:T−splint5.1FA=1:3
レーン6: 分子量マーカー
図5は、スペーサー鎖と標識鎖の連結物の構造の違いによるIVV分子形成効率への影響を示す電気泳動の写真である。本発明のT−splint5.1FA、T−splint5.2FA、T−splint5.9FAは、いずれもT−splint3FAに比べてIVV分子の形成効率が高く、特にT−splint5.9FAではIVV形成効率が高くなっている。
レーン1: T−splint3FA 翻訳前
レーン2: T−splint3FA 翻訳1時間
レーン3: T−splint3FA 翻訳3時間
レーン4: T−splint5.1FA 翻訳前
レーン5: T−splint5.1FA 翻訳1時間
レーン6: T−splint5.1FA 翻訳3時間
レーン7: T−splint5.2FA 翻訳前
レーン8: T−splint5.2FA 翻訳1時間
レーン9: T−splint5.2FA 翻訳3時間
レーン10: T−splint5.9FA 翻訳前
レーン11: T−splint5.9FA 翻訳1時間
レーン12: T−splint5.9FA 翻訳3時間
図6は、スペーサー鎖と標識鎖の連結物の構造の違いによるIVV分子の逆転写効率への影響を示す電気泳動の写真である。T−splint5.1FAを除き、逆転写によるmRNA/cDNA2本鎖化とそのRNase H処理によってcDNA化が確認できた。T−splint5.2FA、T−splint5.9FAでは逆転写産物が40−50%程度確認された。
レーン1: T−splint3FA RNA−リンカー連結体
レーン2: T−splint3FA 逆転写反応後
レーン3: T−splint3FA RNaseH処理後
レーン4: T−splint5.1FA RNA−リンカー連結体
レーン5: T−splint5.1FA 逆転写反応後
レーン6: T−splint5.1FA RNaseH処理後
レーン7: T−splint5.2FA RNA−リンカー連結体
レーン8: T−splint5.2FA 逆転写反応後
レーン9: T−splint5.2FA RNaseH処理後
レーン10: T−splint5.9FA RNA−リンカー連結体
レーン11: T−splint5.9FA 逆転写反応後
レーン12: T−splint5.9FA RNaseH処理後
図7は、翻訳前にmRNA鎖−スペーサー鎖−標識鎖の連結物を加熱、急冷することのIVV分子の形成効率への影響を示す電気泳動の写真である。翻訳前にmRNA鎖−スペーサー鎖−標識鎖の連結物を加熱、急冷した方がIVV分子の形成効率が高い。
レーン1: 未処理 翻訳前
レーン2: 未処理 翻訳1時間
レーン3: 未処理 翻訳3時間
レーン4: 加熱冷却 翻訳前
レーン5: 加熱冷却 翻訳1時間
レーン6: 加熱冷却 翻訳3時間
図8は、IVV分子調製用cDNAライブラリーの作製方法の概略図である。mRNAからランダムプライミング法により逆転写でmRNAに相補的な一本鎖cDNAライブラリーを合成し(I)、RNaseH、DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼI、およびT4 DNAポリメラーゼ処理によりdsDNAライブラリーを合成し(II)、さらに翻訳エンハンサーなどを含むアダプターと結合して(III)、PCRによりフォワード共通プライマー(配列番号7)、リバース共通プライマー(配列番号8)を用いて、5’、3’共通配列を導入し、IVV分子調製用cDNAライブラリーを作製した(IV)。
図9Aは、IVV調製用翻訳鋳型ライブラリーを4%ウレア変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)にて泳動した結果を示す図である。調製されたIVV調製用翻訳鋳型ライブラリーは、スメアな泳動像を示し、またDNA鎖の長さも十分であった。
図9Bは、IVV調製用翻訳鋳型ライブラリーとその元となっているmRNA中に含まれる特定分子の存在量を定量PCR法により測定した結果を示すグラフである。調製されたIVV調製用翻訳鋳型ライブラリー中に含まれる複数種の特定のcDNA量は、もとのmRNA中に含まれるものと差異がない。
図10は、IVVスクリーニングの概略を示す図である。 IVV分子のスクリーニングは、(i)タンパク質−逆転写核酸連結体(以下、これを「IVVcDNA分子」と称することがある)形成工程、(ii)ベイト(被検物質)に対する相互作用分子の選抜工程、(iii)選択されたIVV分子からなるタンパク質−逆転写核酸連結体再作製工程、(iv)シークエンス解析による選択されたIVV分子の同定工程の4つの工程からなる。
図11は、FK506をベイトとしたIVVスクリーニングにより得られたIVVcDNAライブラリーをウレア変性PAGEにて泳動し、スペーサーに導入してある蛍光(Fluoroscein)を使って、Molecular Imager(Bio Rad社製)で画像化した結果を示す図である。ラウンド7および8で単一のバンドが確認された。
図12は、FK506をベイトとしたIVVスクリーニングの各ラウンドにおけるFKBP12を含むIVV分子数を示すグラフである。図中、四角のグラフはFKBPを含むIVV分子数を示し、三角はb−Actinを含むものを示す。ラウンドが重なるごとに、FKBP12を含むIVV分子数が増加しており、本実施例のスクリーニングにより、FK506と相互作用するタンパク質を含むIVV分子が濃縮されていることが確認された。
図13は、IVV調製用翻訳鋳型分子のDNA2本鎖化を行った反応液を変性、および非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離し、T−Splint5.9FAのフルオレセインに由来する蛍光およびVistra Green染色で検出した結果を示す図である。図中、レーン1は、FKBP12のmRNA、レーン2はmRNAとT−Splint5.9FAの結合体、レーン3はmRNA/cDNA−T−splint5.9FA結合体、レーン4はmRNA/cDNA−T−splint5.9FA結合体をRNaseAとRNaseHで処理したもの、レーン5から7は2本鎖DNA化したPCR反応液であり、レーン5は変性を72℃で行ない、プライマー濃度が鋳型の5等量のもの、レーン6は変性を72℃で行い、プライマー濃度が鋳型の1.25等量のもの、またレーン7は変性を84℃で行ない、プライマー濃度が鋳型の1.25等量であるものを示す。mRNA−T−Splint5.9FAの連結物のmRNA部が2本鎖DNAとなっていることが確認された。
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
(1)核酸構築物およびその製造方法
本発明の「核酸構築物」は、少なくともその一部がアニーリングしている第1の1本鎖核酸と第2の1本鎖核酸が、各々第3の1本鎖核酸と連結している構造を有する核酸構築物であり、第1の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸の各々同じ末端側に存在するヌクレオチドがリンカーを介して化学結合しており、第2の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸の各々異なる末端側のヌクレオチドが化学結合しているものである。
ここで、同じ末端側とは、例えば第1の1本鎖核酸の3’末端側のヌクレオチドと結合するのは、第3の1本鎖核酸の3’末端側に存在するいずれかのヌクレオチドであることを意味する。具体的には、第1の1本鎖核酸の3’末端側に存在するヌクレオチドと第3の1本鎖核酸の3’末端側に存在するヌクレオチドがリンカーを介して化学結合する場合、又は第1の1本鎖核酸の5’末端側に存在するヌクレオチドと第3の1本鎖核酸の5’末端側に存在するヌクレオチドがリンカーを介して化学結合する場合の2通りが考えられる。
第1の1本鎖核酸、第2の1本鎖核酸、及び第3の1本鎖核酸の種類は本発明の核酸構築物を構成し得る限り特に制限されず、DNAでもRNAでもよい。また、これらの1本鎖核酸は、それを構成するヌクレオチドが修飾を受けていてもよく、さらにヌクレオチド以外の物質、例えばペプチド、糖、ポリエチレングリコール等の高分子化合物等を含んでいてもよい。ヌクレオチドの修飾は、例えば、標識物質等によるものが挙げられる。標識物質としては、蛍光物質等が挙げられる。蛍光物質は、具体的には、フルオレセイン、オレゴングリーン、ローダミン、テトラメチルローダミン、テキサスレッド、Cy3、Cy5、Alexa488等が挙げられる。これらの標識物質は、それ自体既知の通常用いられるものであり、容易に入手できる。
本発明で用いられるDNA鎖は、天然由来のDNAから作製した1本鎖DNAでもよいし、遺伝子組み換え技術により作製した1本鎖DNAでもよいし、化学合成により作製した1本鎖DNAでもよい。また、本発明で用いるRNAの種類も特に限定されず、天然の組織又は細胞由来のRNAでも、DNAからインビトロで発現させたRNAでもよい。
第1の1本鎖核酸、第2の1本鎖核酸、及び第3の1本鎖核酸の長さは本発明の核酸構築物を構成し得る限り特に制限はない。一般的には、いずれの1本鎖核酸も、各数十塩基から数十キロ塩基程度であり、例えば、10塩基から50,000塩基程度であり、より好ましくは12塩基から10,000塩基程度である。また、第1の1本鎖核酸と第2の1本鎖核酸はその一部がアニーリングしているが、アニーリングする位置は、本発明の核酸構築物が形成され得る場所であれば特に制限はない。具体的には、第2の1本鎖核酸の、第3の1本鎖核酸とリガーゼ処理により酵素結合する末端付近で第1の1本鎖核酸第2の1本鎖核酸とがアニーリングしていることが好ましい。アニーリングにより2本鎖となっている長さは特に限定されないが、具体的には12塩基対から50塩基対程度が好ましい。
第1の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸の連結は、リンカーを介して行う。リンカーとは、第1の1本鎖核酸を構成するいずれかのヌクレオチドと第3の1本鎖核酸を構成するいずれかのヌクレオチドであって、第1の1本鎖核酸と同じ末端側に存在するヌクレオチドを連結し得るものであれば如何なるものでもよい。例えば、架橋剤が好ましく用いられ、この場合、第1の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸各々同じ末端側に存在するいずれかのヌクレオチドの末端に、上記架橋剤により認識される官能基を付加することによれば、該官能基と架橋剤を化学結合することにより、第1の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸の各々同じ末端側に存在するいずれかのヌクレオチドを結合することができる。さらに、上記官能基を末端に有する化合物を第1の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸各々同じ末端側に存在するいずれかのヌクレオチドの末端に結合させることにより該官能基を付加する方法が好ましく用いられる。
また、リンカーを介して第1の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸を結合する方法としては、ホスホアミダイド法によりそれらをリンカーを介してDNA合成機により連結する方法なども用いられる。この場合、リンカーは、ヌクレオチドのみで形成されるループ構造により立体的に小さなものが好ましく、炭素数2〜18のメチレン鎖あるいは主鎖の原子数が8〜120のポリオキシエチレングリコールを含む構造、およびそれらがリン酸化ジエステル結合で2〜40ユニット連結したものなどが好ましく用いられる。これらの市販品としては、スペーサーホスホアミダイドC3(グレンリサーチ社製)、スペーサーホスホアミダイド9(グレンリサーチ社製)、スペーサーホスホアミダイド18(グレンリサーチ社製)等が挙げられる。
上記で、架橋剤により認識される官能基を導入するヌクレオチドとしては、例えばDNAの場合、dA、dC、dG、dTのいずれでもよいが、dTが、官能基の導入を行う上で簡便であるので好ましい。官能基を導入するヌクレオチドの各1本鎖核酸中の位置は、上記した連結が可能であれば特に制限はないが、連結する末端から0〜50塩基内側のヌクレオチドが好ましく、1〜10塩基内側のヌクレオチドがさらに好ましい。官能基を末端に有する化合物としては、架橋剤との反応が可能であれば特に制限はないが、該化合物が末端に有する官能基が、第1の1本鎖核酸および第2の1本鎖核酸の他の構成要素に含まれる官能基より、架橋剤と反応しやすくする構造を有することが好ましい。例えば、アミノ基やチオール基などの官能基が炭素数2から18のメチレン鎖、あるい主鎖の原子数が8から120のポリオキシエチレングリコールを介してヌクレオチドの塩基部分やデオキシリボースあるいはリン酸ジエステル部分に連結している構造が挙げられる。
これらの構造は、それ自体既知の市販されている試薬を用いて化学反応させることにより構築することができる。市販品としては、例えば、5’−チオール修飾C6(グレンリサーチ社製)、5’アミノ修飾C6(グレンリサーチ社製)、5’アミノ修飾C12(グレンリサーチ社製)、5’アミノ修飾5(グレンリサーチ社製)、アミノ修飾C2dT(グレンリサーチ社製)、アミノ修飾C6dT(グレンリサーチ社製)等が挙げられる。このうち、アミノ基を有する化合物をN−Succinimidyl−3(2−pyridyldithio)propinate(同人化学社製)等でチオール基に変換して用いることもできる。また、該化合物中の官能基は目的の反応を行うまで保護基により保護されていることが要求される場合があり、その場合に用いられる保護基としては、官能基がチオール基の場合は、トリチル基、アセトアミドメチル基、t−ブチル基等が挙げられ、アミノ基の場合にはt−ブトキシカルボニル基や特願2003−042428号明細書に記載のNα−(Nα−ベンジルオキシカルボニル)フェニルアラニル基などのアミノ酸誘導体等が挙げられる。中性付近の水溶液中、37度以下の穏やかな条件でプロテアーゼやペプチダーゼで遊離されるアミノ酸誘導体はヌクレオチドに導入されるアミノ基の保護基として特に優れている。
ここで、架橋剤により認識される官能基が、架橋すべき部位以外に、第1の1本鎖核酸または第2の1本鎖核酸に存在する場合には、その官能基を上記の保護基を用いて保護しておき、架橋すべき部位の官能基のみが選択的に反応するようにしておくことが好ましい。具体的には、例えば、架橋すべき部位に導入した官能基以外に第1又は第2の1本鎖核酸に存在する同じ官能基を上記保護基で保護して、架橋すべき部位に導入した官能基は保護しないで、架橋反応を行うか、または、架橋すべき部位に導入した官能基と、架橋すべき部位に導入した官能基以外に第1又は第2の1本鎖核酸に存在する同じ官能基を異なる保護基で保護した後、架橋すべき部位に導入した官能基のみを脱保護して架橋反応を行う方法などが挙げられる。
このような官能基を末端に有する化合物の合成方法は、それ自体既知の通常用いられる方法が用いられ、また上記のような市販の化合物(試薬)を用いることもできる。上記化合物を、第1の1本鎖核酸または第2の1本鎖核酸を構成するいずれかのヌクレオチドに結合する方法としては、官能基をその保護基とともに導入したヌクレオシド誘導体あるいはアルコール誘導体の水酸基をホスホアミダイトに変換し、それをDNA合成機上で連結する方法等が挙げられる。また、上記した保護基の導入法及び脱保護法は当業者に公知であり、例えば、Teodora,W.Green,Protective Groups in Organic Synthesis,John & Wiley & Sons Inc.(1981)などに記載されている。
架橋剤としては、ヘテロ2価性、ホモ2価性試薬の何れでもよい。具体的には、例えば、アミノ基とチオール基を架橋するヘテロ2価性試薬としては、N−(4−Maleimidobutyryloxy)succinimide(GMCS:同人化学社製等)、N−(6−Maleimidocaproyloxy)succinimide(EMCS:同人化学社製等)、N−(8−Maleimidocapryloxy)succinimide(HMCS:同人化学社製等)、N−(11−Maleimidoundecanoyloxy)succinimide(KMCS:同人化学社製等)、N−Succinimidyl iodoacetate(SIA:PIERCE社製等)、N−(p−Maleimidophenyl)isocyanate(PMPI:PIERCE社製等)等が好ましく用いられる。これらの架橋剤を用いる場合、アミノ基とチオール基を認識して架橋するため、第1の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸のいずれかの末端付近に存在するヌクレオチドにアミノ基を導入し、もう一方の1本鎖核酸の同じ末端側に存在するいずれかのヌクレオチドにチオール基を導入して両者を結合させる。
アミノ基どうしを架橋するホモ2価性試薬としては、4,4’−Diisothiocyano−2,2’−stilbenedisulfonic acid,disodium salt(DIDS:同人化学社製等)、Disuccinimidyl glutarate(DSG:PIERCE社製等)、Disuccinimidyl suberate(DSS:PIERCE社製等)、Ethyleneglycol−0,0’−bis(succinimidylsuccinate)(EGS:同人化学社製等)等が挙げられる。また、チオール基どうしを架橋するホモ2価性試薬としては、1,4−Bis−maleimidobutane(BMB:PIERCE社製等)、1,4−Bis−Maleimidyl−2,3−dihydroxybutane(BMDB:PIERCE社製)等が挙げられる。
上記の官能基、又は上記の官能基を末端に有する化合物が結合している第1の1本鎖核酸および第3の1本鎖核酸を上記架橋剤を介して結合させる方法としては、それ自体既知の通常用いられる方法で、架橋剤や1本鎖核酸の種類等によって適宜選択して行うことができる。例えば、架橋剤としてEMCSを用いる場合を例に、以下に詳細に説明する。また、その結合の模式図を図1に示す。まず、第1の1本鎖核酸として、チオール基を導入したものを用いる場合で、該チオール基が、トリチル基等によって保護されている場合、該保護基を外す反応を行う。まず、該1本鎖核酸を適当な緩衝液、例えば、0.1M酢酸トリエチルアミン水溶液に溶解し、これに最終濃度6mMとなるように硝酸銀水溶液を添加し、さらに適当時間攪拌した後、最終濃度12mMとなるようにジチオスレイトールを添加してさらに適当時間攪拌する。この反応溶液から不溶物を遠心濾過フィルターによって濾去した後、逆相高速液体クロマトグラフィ等でトリチル基が外れ、チオール基が反応可能な第1の1本鎖核酸を分離取得する。次に、第3の1本鎖核酸としてアミノ基を導入したものを用いて、これを適当な緩衝液、例えば0.1Mリン酸水素2ナトリウム水溶液に溶解する。この溶液に、第3の1本鎖核酸に対して10等量以上となるようにEMCSを20mM DMF溶液に溶解したものを添加して一定時間攪拌する。この反応液から逆相高速液体クロマトグラフィ等でEMCSと結合した第3の1本鎖核酸を分離取得する。この連結物を上記で保護基を外した第1の1本鎖核酸と混合し、該混合溶液を必要であれば濃縮して、さらに必要であれば遠心エバポレーター等でほぼ乾固するまで濃縮し、これを適当な緩衝液、例えば、25%のジメチルホルムアミドを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.1)に再溶解した後に、逆相高速液体クロマトグラフィー等で分離して、第1の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸がEMCSを介して結合した分子を分離取得することができる。
この第1の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸のリンカーを介した結合工程の前後のいずれかで、第1の1本鎖核酸部分に第2の1本鎖核酸をアニーリングさせる。アニーリングの方法は、それ自体既知の通常用いられる方法でよいが、例えば、上記連結物と第2の1本鎖核酸をモル比で1:1.2〜1:3となるように混合して、該混合溶液を72℃で1〜3分加熱した後に、これを15〜25℃まで3分以上かけて冷却する方法等が挙げられる。この時の緩衝液としては、生化学上用いられ得るものであれば特に制限はないが、例えば、この後行うリガーゼ処理のための緩衝液を用いると緩衝液の交換が必要なく便利である。
上記の工程で得られた第1の核酸と第3の核酸がリンカーを介して結合しており、さらに第1の核酸に第2の核酸がアニーリングした連結物について、次に、第3の1本鎖核酸と第2の1本鎖核酸をリガーゼ処理により酵素結合する。このとき、第3の1本鎖核酸は、第1の1本鎖核酸と上記のようにリンカーを介して結合しており、第2の1本鎖核酸は第1の1本鎖核酸とアニーリングすることにより結合しているため、第2の1本鎖核酸のいずれかの末端に存在するヌクレオチドと、第3の1本鎖核酸のそれと反対側の末端のヌクレオチドが、溶液中で互いに接近して存在しており、リガーゼ処理により効率よく結合される。リガーゼ処理による結合に有利な末端どうしの距離は、例えば、リンカーの長さやリンカーが結合するヌクレオチドの位置により適宜調整することができる。リガーゼは、1本鎖核酸どうしを結合し得るものであればいずれのものでもよいが、具体的には、RNAリガーゼ等が挙げられ、好ましくはT4RNAリガーゼが用いられる。
リガーゼ処理の条件は、使用する酵素の活性が発揮される条件であればよく、例えば、好適な緩衝液(例えば、T4RNAリガーゼバッファー(50mM Tris−HCl,pH7.5,10mM MgCl2,10mM DTT,1mM ATP)中で、15〜25℃の温度で一定時間反応させたり、あるいは25℃で30分間と45℃で2分間のサイクルを反復した後に25℃で30分間反応させたりすることができる。ここに示した温度及び反応時間は一例に過ぎず、反応効率が高くなるように適宜選択して変更することができる。
上記リガーゼ反応後、該反応液をフェノール抽出及びエタノール沈殿等の定法により反応生成物を精製することにより、本発明の核酸構築物を取得することができる。このようにして得られる核酸構築物自体も本発明の範囲内である。
(2)タンパク質−核酸連結体の鋳型としての核酸構築物およびその製造法
本発明の核酸構築物は、WO98/16636号公報に記載のタンパク質−核酸連結体(以下、これを「タンパク質−核酸連結体」、または「IVV分子」と称することがある)の鋳型として特に好ましく用いられる。タンパク質−核酸連結体とは、タンパク質とそれをコードするRNAがピューロマイシン等の核酸誘導体を介して結合した分子であり、タンパク質の相互作用解析等の強力なツールとなり得る分子である。
本発明の核酸構築物をタンパク質−核酸連結体の鋳型として製造する場合には、基本的には(1)に記載の核酸構築物と同様の構造であるが、特にタンパク質−核酸連結体の鋳型として好ましい構造を以下に説明する。
第2の1本鎖核酸または第1の1本鎖核酸のいずれか一方は、タンパク質の発現制御配列およびコーディング配列を有するRNA(以下、これを「mRNA鎖」と称することがある)で、これとアニーリングする他方の1本鎖核酸が核酸誘導体を末端に有するスペーサーが枝分かれした状態で結合している核酸(以下、これを「スペーサー鎖」と称することがある)であることが好ましい。また、第3の1本鎖核酸は、DNA及びその誘導体であることが好ましく、作製された核酸構築物を翻訳してタンパク質−核酸連結体を製造した場合、翻訳反応液中から該分子のみを精製すること、該分子をラベルすること、及び該分子を固相(支持体)に結合させること等を目的として親和性物質や蛍光物質等の標識物質等を有することが好ましい(以下、これを「標識鎖」と称することがある)。
ここで、mRNA鎖のタンパク質の発現制御配列とは、(1)プロモーター配列、(2)翻訳の際にリボソームによって認識される配列が挙げられる。プロモーター配列の種類は、適用する発現系に適したものを適宜選択すればよく特に限定されない。例えば、大腸菌ウイルスT7のRNA polymeraseによって認識されるT7プロモーター配列、SP6プロモーター配列などが挙げられる。翻訳の際にリボソームによって認識される配列としては、翻訳の際に真核細胞のリボソームによって認識されるRNA配列(Kozak配列)に対応するDNA配列や原核細胞のリボソームによって認識されるシャイン・ダルガノ配列(Shine−Dalgarno)、5’キャップ構造(Shatkin,Cell,9,645−(1976))、オメガ配列等のtabacco mosaic virusのリボソームによって認識される配列、WO03/56009号公報に記載の配列、rabbitβ−globlin、Xenopusβ−globlin あるいはbromo mosaic virusのリボゾーム認識領域などが挙げられる。
コーディング配列とは、タンパク質−核酸連結体を作製する目的タンパク質をコードする配列であり、この種類は特に限定されず、目的に応じて適宜選択できる。また、コーディング配列としては、目的タンパク質に融合するようにFLAG、Hisタグなどをコードする配列を含んだり、さらにはポリメラーゼチェインリアクション(PCR)のプライマーがハイブリダイズするための共通配列などを含むこともできる。
スペーサー鎖は、核酸誘導体を末端に有するスペーサーが、枝分かれした状態で結合している1本鎖核酸であるが、これを使用して無細胞タンパク質翻訳系又は生細胞中でタンパク質の翻訳を行った場合、mRNAの末端付近まで翻訳が進んだ後、核酸誘導体(例えば、ピューロマイシンなど)がリボソームのAサイトに入ることによりタンパク質と結合させることができる。また、そのmRNAと2本鎖を形成している核酸部分は、最終的に本発明の核酸構築物として構築され、翻訳され、タンパク質−核酸連結体となった時に、mRNA鎖を逆転写するプライマーとしても機能する。
核酸誘導体としては、無細胞タンパク質翻訳系又は生細胞中でタンパク質の翻訳が行われた時に、合成されたタンパク質のC末端に結合する能力を有する化合物である限り限定されないが、その3’末端がアミノアシルtRNAに化学構造骨格が類似しているものを選択することができる。代表的な化合物として、ピューロマイシン(Puromycin)と3’−N−アミノアシルピューロマイシンアミノヌクレオシド(3’−N−Aminoacylpuromycin aminonucleoside、PANS−アミノ酸)、すなわち、アミノ酸部がグリシンのPANS−Gly、アミノ酸部がバリンのPANS−Val、アミノ酸部がアラニンのPANS−Ala、その他、アミノ酸部が全ての各アミノ酸に対応するPANS−アミノ酸化合物が挙げられる。
また、3’−アミノアデノシンのアミノ基とアミノ酸のカルボキシル基が脱水縮合して連結した3’−N−アミノアシルアデノシンアミノヌクレオシド(3’−Aminoacyladenosine aminonucleoside,AANS−アミノ酸)、すなわち、アミノ酸部がグリシンのAANS−Gly、アミノ酸部がバリンのAANS−Val、アミノ酸部がアラニンのAANS−Ala、その他、アミノ酸部が全アミノ酸の各アミノ酸に対応するAANS−アミノ酸化合物を使用できる。また、核酸あるいは核酸とアミノ酸のエステル結合したものなども使用できる。さらにまた、核酸あるいは核酸に類似した化学構造骨格及び塩基を有する物質と、アミノ酸に類似した化学構造骨格を有する物質とを化学的に結合した化合物は、すべて本発明で用いられる核酸誘導体に含まれる。核酸誘導体としては、ピューロマイシン、PANS−アミノ酸もしくはAANS−アミノ酸がリン酸基を介してヌクレオシドと結合している化合物がより好ましい。これらの化合物の中でピューロマイシン、リボシチジルピューロマイシン、デオキシシチジルピューロマイシン、デオキシシチジルデオキシシチジルピューロマイシン、デオキシウリジルピューロマイシンなどのピューロマイシン誘導体が特に好ましい。
上記したような核酸誘導体は、それ自体既知の化学結合方法によって製造することができる。具体的には、リン酸ジエステル結合で合成ユニットを結合させる場合は、DNA合成機に一般的に用いられているホスホアミダイド法などにより固相合成で合成することが可能である。ペプチド結合を導入する場合は、活性エステル法などにより合成ユニットを結合させるが、DNAとの複合体を合成する場合は、両方の合成法に対応が可能な保護基が必要になる。
また、(1)に記載したとおり核酸誘導体を含むスペーサー鎖は、架橋反応により他の1本鎖核酸と連結させる。この架橋反応に用いられる架橋剤が認識する官能基が核酸誘導体に含まれる場合には、これを適当な保護基により保護することが好ましい。具体的に、例えば核酸誘導体にピューロマイシンが含まれる場合は、そのαアミノ基をNα−(Nα−ベンジルオキシカルボニルフェニルアラニル)基などで保護しておくことが好ましい。
上記した保護基の導入法及び脱保護法は当業者に公知であり、例えば、Teodora,W.Green,Protective Groups in Organic Synthesis,John & Wiley & Sons Inc.(1981)などに記載されている。ピューロマイシンのαアミノ基をNα−(Nα−ベンジルオキシカルボニルフェニルアラニル)基で保護したものの製造方法としては、まず、ピューロマイシン2塩酸塩を適当な溶媒(例えば、水)に溶解した後、ジメトキシエタン(DME)と10%炭酸ナトリウム水溶液を加える。この溶液にベンジルオキシカルボニル基(Z基)で保護されたフェニルアラニル−OSuをDMEに溶かした溶液を加え、さらに10%炭酸ナトリウム水溶液を加えて反応させる。得られたNα−(Nα−ベンジルオキシカルボニルフェニルアラニル)ピューロマイシンは、常法により固相担体に結合させ、DNA合成機などで使用することができる。Nα−(Nα−ベンジルオキシカルボニルフェニルアラニル)基の脱保護は核酸誘導体をリン酸緩衝液に溶解し、キモトリプシンで酵素消化することで行われる。
上記核酸誘導体はスペーサーを介してスペーサー鎖の核酸部分に結合している。スペーサーとしては、ポリエチレン又はポリエチレングリコールあるいはその誘導体などの高分子物質や、オリゴヌクレオチドやペプチドあるいはその誘導体などの生体高分子物質等が用いられ、好ましくはポリエチレングリコールが用いられる。スペーサーの長さは特に限定されないが、好ましくは、分子量150〜6000であるか、または主鎖の原子数は10原子から400原子であり、さらに好ましくは、分子量600〜3000であるか、または主鎖の原子数が40原子から200原子である。スペーサーが結合するヌクレオチドは、スペーサー鎖の核酸部分の何れでもよいが、スペーサー鎖の3’末端から0〜20塩基内側のヌクレオチドが好ましく、0〜8塩基内側の末端がさらに好ましい。スペーサー鎖のスペーサーとヌクレオチドの結合は、(1)に記載のリンカーを介した結合が好ましく用いられる。
スペーサー鎖の核酸部分は、mRNAの3’末端とアニーリングする塩基配列を有する12〜50塩基程度のものが好ましい。スペーサー鎖の核酸部分がDNAであると、mRNA鎖とアニーリングさせて2本鎖とした後これを翻訳反応に供する際、RNaseHの分解を受けやすいため、DNAとRNA誘導体のキメラ鎖であることが好ましい。RNA誘導体は、具体的には、2’−OMeRNAや2‘−F RNAが好ましく用いられる。ただしこの場合キメラ鎖が逆転写酵素の基質として認識される必要があり、特に逆転写反応の開始点となる3’末端部分はDNAであることが逆転写効率上好ましく、そのDNA鎖は1〜6塩基程度が好ましい。スペーサー鎖と相補性を有するmRNAの3’末端の配列は、コーディング配列の3’末端側にアニーリングのための配列として付加した共通配列を用いることが好ましい。スペーサー鎖の好ましい配列として、例えば実施例1のオリゴ2に記載のもの等が挙げられる。スペーサー鎖の核酸部分のうち、(1)に記載のリンカーの一部となる架橋剤に認識される官能基を末端に有する化合物が結合するヌクレオチドは、5’末端のヌクレオチドであることが好ましい。
標識鎖の長さは適宜選択することができ、一般的には1塩基から数百塩基であり、好ましくは1〜100塩基程度である。標識鎖が有する標識物質としては、親和性物質、共有結合性物質、蛍光物質、分解性物質等が挙げられる。親和性物質としては、ポリA配列、ポリT配列、ビオチン、FLAG等の各種抗原又は抗体、Hisタグ、NTA等の配位子、受容体リガンド等が挙げられる。また、共有結合性物質としては、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド等の核酸末端部分、ヒドラジド、ケトン、チオエステル等の官能基、ソラレン等の架橋性物質が挙げられる。蛍光物質としては、フルオレセイン、オレゴングリーン、ローダミン、テトラメチルローダミン、テキサスレッド、Cy3、Cy5、Alexa488等が挙げられる。分解性物質としては、光反応で分解する1−(2−ニトロフェニル)−エチル基を有する誘導体や、プロテアーゼやペプチダーゼに認識されるアミノ酸配列等が挙げられる。これらの標識物質は、それ自体既知の通常用いられるものであり、容易に入手可能であり、また常法により核酸等に結合して標識することができる。
標識鎖の核酸部分には、(1)に記載のリンカーの一部となる架橋剤に認識される官能基を末端に有する化合物が結合しているが、その位置は、標識鎖のリガーゼ処理によって連結させる末端から0〜10塩基、好ましくは1〜10塩基内側に存在するいずれかのヌクレオチドであることが好ましい。標識物質が結合する位置は、標識鎖の核酸部分のうちリガーゼ処理によって連結させる末端と逆側の末端が好ましい。また、該標識物質は、ヌクレオチドに上記したようなスペーサーを介して結合していてもよい。
mRNA鎖、スペーサー鎖、及び標識鎖の連結は、(1)に記載の方法により行うことができる。 かくして構築された本発明の核酸構築物をタンパク質翻訳系に導入することによりタンパク質−核酸連結体を製造することができる。核酸からそれがコードするタンパク質を人工的に生成させるための翻訳系は当業者に公知である。具体的には、適当な細胞よりタンパク質合成能を有する成分を抽出し、その抽出液を用いて目的のタンパク質を合成させる無細胞タンパク質合成系が挙げられる。このような無細胞タンパク質合成系には、リボゾーム、開始因子、伸長因子及びtRNA等の翻訳に必要な要素が含まれている。このような無細胞タンパク質合成系としては、例えば、真核生物の無細胞タンパク質合成系が用いられ、より具体的には、ウサギ網状赤血球抽出液やコムギ胚芽抽出液などが挙げられるが、これらに限られるものではない。無細胞タンパク質合成系は、キットとして市販されているものを使用することができる。例えば、ウサギ網状赤血球抽出液のキットとしては、Rabbit Reticulocyte Lysate Systems,Nuclease Treated(Promega社製)等が用いられ、またコムギ胚芽抽出液としては、PROTEIOSTM Wheat germ cell−free protein synthesis core kit(TOYOBO社製)等が挙げられる。タンパク質翻訳系としては、生細胞を使用してもよく、具体的には、原核又は真核生物、例えば大腸菌の細胞等を用いることができる。無細胞タンパク質翻訳系又は生細胞などは、その中にタンパク質をコードする核酸を添加するか又は導入することによってタンパク質合成が行われるものである限り特に制限はない。本発明の核酸構築物を無細胞タンパク質合成系に導入する直前に、60〜90℃で加熱した後急冷する工程を行うと、タンパク質−核酸連結体の合成効率が高くなるため好ましい。
上記翻訳反応液から、タンパク質−核酸連結体を精製する場合、標識鎖に親和性物質あるいは共有結合物質が結合している場合には、該親和性物質あるいは共有結合物質を介して精製を行うことができる。精製の方法は、用いる親和性物質および共有結合物質に応じて適宜選択してそれ自体既知の定法を用いることができる。このようにして製造したタンパク質−核酸連結体も本発明に含まれるものである。
本発明は、さらに所望のタンパク質−核酸連結体をタンパク質の機能を指標として選択することを特徴とするタンパク質、該タンパク質のコーディング配列、該コーディング配列を有するRNAまたはDNAの選択方法も含まれる。
この選択方法は、タンパク質−核酸連結体(IVV分子)中のタンパク質が有する機能(生物活性)を用いて所望の機能を有するタンパク質をIVV分子として選択することを意味する。即ち、製造されたIVV分子と相互作用をし得る被験物質、例えばタンパク質、ペプチド、核酸、糖質、脂質、低分子化合物等との相互作用の有無や強弱に基づいて、IVV分子を選択することができる。このような相互作用の解析方法としては、例えばWO98/16636号公報に記載の方法を用いることができる。
また、本発明のタンパク質−核酸連結体および被験物質は、固相(支持体)に結合させて用いることもできる。タンパク質−核酸連結体の固相への結合は、上記標識鎖に親和性物質や共有結合性物質が結合している場合には、これらを用いて行うことができる。具体的には、親和性物質又は共有結合性物質が親和性を有するまたは結合する物質を予め固定化した固相に、上記タンパク質−核酸連結体を接触させることにより、当該タンパク質−核酸連結体を固相に容易に固定化することができる。固相への被験物質の結合は、例えば、Scott,J.K.& Smith,G.P.(1990)Science,249,386−390;Devlin,P.E.et al.(1990)Science,249,404−406;Mattheakis,L.C.et al.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91,9022−9026等に記載されている方法等により行うことができる。
固相(支持体)としては、通常の核酸、タンパク質、糖質、脂質、低分子化合物等の固定化に用いることができる支持体であれば特に限定されない。支持体としては、親和性物質や共有結合性物質どうしの結合形成、あるいは上記被験物質の結合に悪影響を及ぼさないものであればその形状は特に限定されず、例えば、平板、マイクロウェル、ビーズ等の任意の形態をとることができる。支持体の材質としては、例えば、ガラス、セメント、陶磁器等のセラミックス、ポリエチレンテレフタレート、酢酸セルロース、ビスフェノールAのポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等のポリマー類、シリコン、活性炭、多孔質ガラス、多孔質セラミックス、多孔質シリコン、多孔質活性炭、織編物、不織布、濾紙、短繊維、メンブランフィルター等の多孔質物質を挙げることができる。
上記選択方法に付するIVV分子は、上記タンパク質−核酸連結体でもよいし、mRNA鎖をDNAに逆転写したタンパク質−逆転写核酸連結体でもよい。即ち、RNA部分を含む核酸を逆転写酵素で処理することにより、RNAからDNAへの逆転写が起こり、RNA部分の塩基配列をDNAに転換することができる。逆転写反応に必要な試薬及び反応条件は当業者に周知であり、必要に応じて適宜選択することができる。さらに得られたDNA−RNA−タンパク質連結体のRNAをRNA分解酵素などを用いて分解し、DNAを鋳型にポリメラーゼ反応をすることにより2本鎖DNA−タンパク質連結体を作製して用いることもできる。本明細書では、上記RNA−DNA−タンパク質連結体および2本鎖DNA−タンパク質連結体を合わせてタンパク質−逆転写核酸連結体と言う。このような、タンパク質−逆転写核酸連結体を用いれば、核酸部分の安定性がよいこと、また1本鎖RNAの非特異的吸着がないため好ましい。本明細書では、上記タンパク質−核酸連結体とタンパク質−逆転写核酸連結体を、単に「タンパク質−核酸連結体」と称することがある。
上記選択方法で選択されたIVV分子は、これを再度被験物質との相互作用に基づいて選択することにより、該相互作用がより適当なタンパク質を選択および取得することができる。一度選択されたIVV分子を、再度被験物質と接触させるためには、(i)選択されたIVV分子の1本鎖RNA部分を必要に応じて分解する等した後に、これをPCRなどで増幅し(増幅工程)、(ii)増幅されたDNA鎖をもとにmRNA鎖を製造し、さらに上記の核酸構築物を製造してIVV分子を製造し(構築工程)、(iii)選択方法を行うことにより可能となる。これら(i)増幅工程、(ii)構築工程、(iii)選択工程を必要に応じて繰り返すことにより、被験物質との相互作用がより適当なタンパク質を選択および取得することができる。
(i)増幅工程は、PCRを用いて例えば以下のように行うことも好ましい。IVV分子の核酸中、増幅するのは少なくともタンパク質をコーディングする部分(以下、これを「ORF」と称することがある)を含む領域である。このように増幅されたDNAについて、塩基配列をそれ自体既知の定法により解析することにより、上記選択方法で選択されたタンパク質をコードするDNAまたはRNAも選択することができる。該領域を増幅するのに用いられるPCRプライマーとしては、特に制限はないが、全てのIVV分子に共通に用いられる配列として、5’側のプライマーは、ORFの5’上流側に連結されている配列が好ましく用いられる。具体的には、上記したタンパク質−核酸連結体の場合、5’側のプライマーは、翻訳の際にリボソームによって認識されるDNA配列などが好ましく用いられ、3’側のプライマーは、タグ配列や共通配列が好ましく用いられる。かくして増幅されて得られたDNAは、ORFのみを含むものであるので、上記に記載の(1)プロモーター配列、(2)翻訳の際にリボソームによって認識されるDNA配列(以下、これらを「5’付加配列」と称することがある)。タグ配列、共通配列等(以下、これらを「3’付加配列」と称することがある)を結合する。これらの配列の結合は、DNAリガーゼ、下述するオーバーラップエクステンション法、PCR法を用いて行うことができる。PCRのプライマーとしては、増幅されたDNAの5’末端と共通の配列を3’末端に有する5’末端付加配列からなるものと、増幅されたDNAの3’末端と共通の配列を5’末端に有する3’付加配列からなるものが用いられる。
オーバーラップエクステンション法による結合方法は、まず増幅されたDNAの5’末端と共通の配列を3’末端に有する5’付加配列を等モル数程度用意し、これをアニーリングさせた後に、DNAポリメラーゼなどを用いて2本鎖DNAに合成し、さらに増幅されたDNAの3’末端と共通の配列を5’末端に有する3’付加配列を等モル数程度用意し、これをアニーリングさせた後に、DNAポリメラーゼなどを用いて2本鎖DNAを合成する方法である。上記5’側付加配列および3’付加配列の結合は、片方ずつ行っても、両方同時に行ってもよい。かくして合成された2本鎖DNAは、これを両末端の塩基配列を有するプライマーなどを用いてさらにPCRで増幅してもよい。
上記(i)の増幅工程で得られたDNAに(iv)変異を導入(変異導入工程)し、さらにこれを上記の方法で増幅し、(ii)構築工程、(iii)選択工程を行うことにより、タンパク質の機能(生物活性)の改変および新たな機能の創製が可能となる。これら(i)〜(iv)の工程は必要に応じ繰り返すこともできる。変異導入工程は、IVV分子の核酸部がRNAの場合には、上記した方法によりRNAをcDNAに逆転写した後に変異の導入を行えばよく、核酸部の増幅は変異導入しながら行ってもよい。
変異導入はすでに確立しているError−prone PCR(Leung,D.W.,et al.(1989)J.Methods Cell Mol.Biol.,1,11−15)やSexual PCRStemmer,W.P.C.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91,1077−10751)を用いて容易に行うことができる。また、変異導入ライブラリーの作製方法としては、変異を導入したい配列をランダムDNA合成法などにより作製し、オーバーラップエクステンション法により、共通配列などと連結する方法もある。
なお、本明細書における、上記した核酸の単離、調製、核酸の連結、核酸の合成、PCR、プラスミドの構築、無細胞系の遺伝子操作技術は、市販のキットなどを用いた場合にはその取扱説明書に準じ、それ以外で特に明記しない限り、Sambrook et al.(1998)Molecular Clonimg,2nd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載の方法またはそれに準じた方法により行うことができる。
(1)核酸構築物およびその製造方法
本発明の「核酸構築物」は、少なくともその一部がアニーリングしている第1の1本鎖核酸と第2の1本鎖核酸が、各々第3の1本鎖核酸と連結している構造を有する核酸構築物であり、第1の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸の各々同じ末端側に存在するヌクレオチドがリンカーを介して化学結合しており、第2の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸の各々異なる末端側のヌクレオチドが化学結合しているものである。
ここで、同じ末端側とは、例えば第1の1本鎖核酸の3’末端側のヌクレオチドと結合するのは、第3の1本鎖核酸の3’末端側に存在するいずれかのヌクレオチドであることを意味する。具体的には、第1の1本鎖核酸の3’末端側に存在するヌクレオチドと第3の1本鎖核酸の3’末端側に存在するヌクレオチドがリンカーを介して化学結合する場合、又は第1の1本鎖核酸の5’末端側に存在するヌクレオチドと第3の1本鎖核酸の5’末端側に存在するヌクレオチドがリンカーを介して化学結合する場合の2通りが考えられる。
第1の1本鎖核酸、第2の1本鎖核酸、及び第3の1本鎖核酸の種類は本発明の核酸構築物を構成し得る限り特に制限されず、DNAでもRNAでもよい。また、これらの1本鎖核酸は、それを構成するヌクレオチドが修飾を受けていてもよく、さらにヌクレオチド以外の物質、例えばペプチド、糖、ポリエチレングリコール等の高分子化合物等を含んでいてもよい。ヌクレオチドの修飾は、例えば、標識物質等によるものが挙げられる。標識物質としては、蛍光物質等が挙げられる。蛍光物質は、具体的には、フルオレセイン、オレゴングリーン、ローダミン、テトラメチルローダミン、テキサスレッド、Cy3、Cy5、Alexa488等が挙げられる。これらの標識物質は、それ自体既知の通常用いられるものであり、容易に入手できる。
本発明で用いられるDNA鎖は、天然由来のDNAから作製した1本鎖DNAでもよいし、遺伝子組み換え技術により作製した1本鎖DNAでもよいし、化学合成により作製した1本鎖DNAでもよい。また、本発明で用いるRNAの種類も特に限定されず、天然の組織又は細胞由来のRNAでも、DNAからインビトロで発現させたRNAでもよい。
第1の1本鎖核酸、第2の1本鎖核酸、及び第3の1本鎖核酸の長さは本発明の核酸構築物を構成し得る限り特に制限はない。一般的には、いずれの1本鎖核酸も、各数十塩基から数十キロ塩基程度であり、例えば、10塩基から50,000塩基程度であり、より好ましくは12塩基から10,000塩基程度である。また、第1の1本鎖核酸と第2の1本鎖核酸はその一部がアニーリングしているが、アニーリングする位置は、本発明の核酸構築物が形成され得る場所であれば特に制限はない。具体的には、第2の1本鎖核酸の、第3の1本鎖核酸とリガーゼ処理により酵素結合する末端付近で第1の1本鎖核酸第2の1本鎖核酸とがアニーリングしていることが好ましい。アニーリングにより2本鎖となっている長さは特に限定されないが、具体的には12塩基対から50塩基対程度が好ましい。
第1の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸の連結は、リンカーを介して行う。リンカーとは、第1の1本鎖核酸を構成するいずれかのヌクレオチドと第3の1本鎖核酸を構成するいずれかのヌクレオチドであって、第1の1本鎖核酸と同じ末端側に存在するヌクレオチドを連結し得るものであれば如何なるものでもよい。例えば、架橋剤が好ましく用いられ、この場合、第1の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸各々同じ末端側に存在するいずれかのヌクレオチドの末端に、上記架橋剤により認識される官能基を付加することによれば、該官能基と架橋剤を化学結合することにより、第1の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸の各々同じ末端側に存在するいずれかのヌクレオチドを結合することができる。さらに、上記官能基を末端に有する化合物を第1の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸各々同じ末端側に存在するいずれかのヌクレオチドの末端に結合させることにより該官能基を付加する方法が好ましく用いられる。
また、リンカーを介して第1の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸を結合する方法としては、ホスホアミダイド法によりそれらをリンカーを介してDNA合成機により連結する方法なども用いられる。この場合、リンカーは、ヌクレオチドのみで形成されるループ構造により立体的に小さなものが好ましく、炭素数2〜18のメチレン鎖あるいは主鎖の原子数が8〜120のポリオキシエチレングリコールを含む構造、およびそれらがリン酸化ジエステル結合で2〜40ユニット連結したものなどが好ましく用いられる。これらの市販品としては、スペーサーホスホアミダイドC3(グレンリサーチ社製)、スペーサーホスホアミダイド9(グレンリサーチ社製)、スペーサーホスホアミダイド18(グレンリサーチ社製)等が挙げられる。
上記で、架橋剤により認識される官能基を導入するヌクレオチドとしては、例えばDNAの場合、dA、dC、dG、dTのいずれでもよいが、dTが、官能基の導入を行う上で簡便であるので好ましい。官能基を導入するヌクレオチドの各1本鎖核酸中の位置は、上記した連結が可能であれば特に制限はないが、連結する末端から0〜50塩基内側のヌクレオチドが好ましく、1〜10塩基内側のヌクレオチドがさらに好ましい。官能基を末端に有する化合物としては、架橋剤との反応が可能であれば特に制限はないが、該化合物が末端に有する官能基が、第1の1本鎖核酸および第2の1本鎖核酸の他の構成要素に含まれる官能基より、架橋剤と反応しやすくする構造を有することが好ましい。例えば、アミノ基やチオール基などの官能基が炭素数2から18のメチレン鎖、あるい主鎖の原子数が8から120のポリオキシエチレングリコールを介してヌクレオチドの塩基部分やデオキシリボースあるいはリン酸ジエステル部分に連結している構造が挙げられる。
これらの構造は、それ自体既知の市販されている試薬を用いて化学反応させることにより構築することができる。市販品としては、例えば、5’−チオール修飾C6(グレンリサーチ社製)、5’アミノ修飾C6(グレンリサーチ社製)、5’アミノ修飾C12(グレンリサーチ社製)、5’アミノ修飾5(グレンリサーチ社製)、アミノ修飾C2dT(グレンリサーチ社製)、アミノ修飾C6dT(グレンリサーチ社製)等が挙げられる。このうち、アミノ基を有する化合物をN−Succinimidyl−3(2−pyridyldithio)propinate(同人化学社製)等でチオール基に変換して用いることもできる。また、該化合物中の官能基は目的の反応を行うまで保護基により保護されていることが要求される場合があり、その場合に用いられる保護基としては、官能基がチオール基の場合は、トリチル基、アセトアミドメチル基、t−ブチル基等が挙げられ、アミノ基の場合にはt−ブトキシカルボニル基や特願2003−042428号明細書に記載のNα−(Nα−ベンジルオキシカルボニル)フェニルアラニル基などのアミノ酸誘導体等が挙げられる。中性付近の水溶液中、37度以下の穏やかな条件でプロテアーゼやペプチダーゼで遊離されるアミノ酸誘導体はヌクレオチドに導入されるアミノ基の保護基として特に優れている。
ここで、架橋剤により認識される官能基が、架橋すべき部位以外に、第1の1本鎖核酸または第2の1本鎖核酸に存在する場合には、その官能基を上記の保護基を用いて保護しておき、架橋すべき部位の官能基のみが選択的に反応するようにしておくことが好ましい。具体的には、例えば、架橋すべき部位に導入した官能基以外に第1又は第2の1本鎖核酸に存在する同じ官能基を上記保護基で保護して、架橋すべき部位に導入した官能基は保護しないで、架橋反応を行うか、または、架橋すべき部位に導入した官能基と、架橋すべき部位に導入した官能基以外に第1又は第2の1本鎖核酸に存在する同じ官能基を異なる保護基で保護した後、架橋すべき部位に導入した官能基のみを脱保護して架橋反応を行う方法などが挙げられる。
このような官能基を末端に有する化合物の合成方法は、それ自体既知の通常用いられる方法が用いられ、また上記のような市販の化合物(試薬)を用いることもできる。上記化合物を、第1の1本鎖核酸または第2の1本鎖核酸を構成するいずれかのヌクレオチドに結合する方法としては、官能基をその保護基とともに導入したヌクレオシド誘導体あるいはアルコール誘導体の水酸基をホスホアミダイトに変換し、それをDNA合成機上で連結する方法等が挙げられる。また、上記した保護基の導入法及び脱保護法は当業者に公知であり、例えば、Teodora,W.Green,Protective Groups in Organic Synthesis,John & Wiley & Sons Inc.(1981)などに記載されている。
架橋剤としては、ヘテロ2価性、ホモ2価性試薬の何れでもよい。具体的には、例えば、アミノ基とチオール基を架橋するヘテロ2価性試薬としては、N−(4−Maleimidobutyryloxy)succinimide(GMCS:同人化学社製等)、N−(6−Maleimidocaproyloxy)succinimide(EMCS:同人化学社製等)、N−(8−Maleimidocapryloxy)succinimide(HMCS:同人化学社製等)、N−(11−Maleimidoundecanoyloxy)succinimide(KMCS:同人化学社製等)、N−Succinimidyl iodoacetate(SIA:PIERCE社製等)、N−(p−Maleimidophenyl)isocyanate(PMPI:PIERCE社製等)等が好ましく用いられる。これらの架橋剤を用いる場合、アミノ基とチオール基を認識して架橋するため、第1の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸のいずれかの末端付近に存在するヌクレオチドにアミノ基を導入し、もう一方の1本鎖核酸の同じ末端側に存在するいずれかのヌクレオチドにチオール基を導入して両者を結合させる。
アミノ基どうしを架橋するホモ2価性試薬としては、4,4’−Diisothiocyano−2,2’−stilbenedisulfonic acid,disodium salt(DIDS:同人化学社製等)、Disuccinimidyl glutarate(DSG:PIERCE社製等)、Disuccinimidyl suberate(DSS:PIERCE社製等)、Ethyleneglycol−0,0’−bis(succinimidylsuccinate)(EGS:同人化学社製等)等が挙げられる。また、チオール基どうしを架橋するホモ2価性試薬としては、1,4−Bis−maleimidobutane(BMB:PIERCE社製等)、1,4−Bis−Maleimidyl−2,3−dihydroxybutane(BMDB:PIERCE社製)等が挙げられる。
上記の官能基、又は上記の官能基を末端に有する化合物が結合している第1の1本鎖核酸および第3の1本鎖核酸を上記架橋剤を介して結合させる方法としては、それ自体既知の通常用いられる方法で、架橋剤や1本鎖核酸の種類等によって適宜選択して行うことができる。例えば、架橋剤としてEMCSを用いる場合を例に、以下に詳細に説明する。また、その結合の模式図を図1に示す。まず、第1の1本鎖核酸として、チオール基を導入したものを用いる場合で、該チオール基が、トリチル基等によって保護されている場合、該保護基を外す反応を行う。まず、該1本鎖核酸を適当な緩衝液、例えば、0.1M酢酸トリエチルアミン水溶液に溶解し、これに最終濃度6mMとなるように硝酸銀水溶液を添加し、さらに適当時間攪拌した後、最終濃度12mMとなるようにジチオスレイトールを添加してさらに適当時間攪拌する。この反応溶液から不溶物を遠心濾過フィルターによって濾去した後、逆相高速液体クロマトグラフィ等でトリチル基が外れ、チオール基が反応可能な第1の1本鎖核酸を分離取得する。次に、第3の1本鎖核酸としてアミノ基を導入したものを用いて、これを適当な緩衝液、例えば0.1Mリン酸水素2ナトリウム水溶液に溶解する。この溶液に、第3の1本鎖核酸に対して10等量以上となるようにEMCSを20mM DMF溶液に溶解したものを添加して一定時間攪拌する。この反応液から逆相高速液体クロマトグラフィ等でEMCSと結合した第3の1本鎖核酸を分離取得する。この連結物を上記で保護基を外した第1の1本鎖核酸と混合し、該混合溶液を必要であれば濃縮して、さらに必要であれば遠心エバポレーター等でほぼ乾固するまで濃縮し、これを適当な緩衝液、例えば、25%のジメチルホルムアミドを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.1)に再溶解した後に、逆相高速液体クロマトグラフィー等で分離して、第1の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸がEMCSを介して結合した分子を分離取得することができる。
この第1の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸のリンカーを介した結合工程の前後のいずれかで、第1の1本鎖核酸部分に第2の1本鎖核酸をアニーリングさせる。アニーリングの方法は、それ自体既知の通常用いられる方法でよいが、例えば、上記連結物と第2の1本鎖核酸をモル比で1:1.2〜1:3となるように混合して、該混合溶液を72℃で1〜3分加熱した後に、これを15〜25℃まで3分以上かけて冷却する方法等が挙げられる。この時の緩衝液としては、生化学上用いられ得るものであれば特に制限はないが、例えば、この後行うリガーゼ処理のための緩衝液を用いると緩衝液の交換が必要なく便利である。
上記の工程で得られた第1の核酸と第3の核酸がリンカーを介して結合しており、さらに第1の核酸に第2の核酸がアニーリングした連結物について、次に、第3の1本鎖核酸と第2の1本鎖核酸をリガーゼ処理により酵素結合する。このとき、第3の1本鎖核酸は、第1の1本鎖核酸と上記のようにリンカーを介して結合しており、第2の1本鎖核酸は第1の1本鎖核酸とアニーリングすることにより結合しているため、第2の1本鎖核酸のいずれかの末端に存在するヌクレオチドと、第3の1本鎖核酸のそれと反対側の末端のヌクレオチドが、溶液中で互いに接近して存在しており、リガーゼ処理により効率よく結合される。リガーゼ処理による結合に有利な末端どうしの距離は、例えば、リンカーの長さやリンカーが結合するヌクレオチドの位置により適宜調整することができる。リガーゼは、1本鎖核酸どうしを結合し得るものであればいずれのものでもよいが、具体的には、RNAリガーゼ等が挙げられ、好ましくはT4RNAリガーゼが用いられる。
リガーゼ処理の条件は、使用する酵素の活性が発揮される条件であればよく、例えば、好適な緩衝液(例えば、T4RNAリガーゼバッファー(50mM Tris−HCl,pH7.5,10mM MgCl2,10mM DTT,1mM ATP)中で、15〜25℃の温度で一定時間反応させたり、あるいは25℃で30分間と45℃で2分間のサイクルを反復した後に25℃で30分間反応させたりすることができる。ここに示した温度及び反応時間は一例に過ぎず、反応効率が高くなるように適宜選択して変更することができる。
上記リガーゼ反応後、該反応液をフェノール抽出及びエタノール沈殿等の定法により反応生成物を精製することにより、本発明の核酸構築物を取得することができる。このようにして得られる核酸構築物自体も本発明の範囲内である。
(2)タンパク質−核酸連結体の鋳型としての核酸構築物およびその製造法
本発明の核酸構築物は、WO98/16636号公報に記載のタンパク質−核酸連結体(以下、これを「タンパク質−核酸連結体」、または「IVV分子」と称することがある)の鋳型として特に好ましく用いられる。タンパク質−核酸連結体とは、タンパク質とそれをコードするRNAがピューロマイシン等の核酸誘導体を介して結合した分子であり、タンパク質の相互作用解析等の強力なツールとなり得る分子である。
本発明の核酸構築物をタンパク質−核酸連結体の鋳型として製造する場合には、基本的には(1)に記載の核酸構築物と同様の構造であるが、特にタンパク質−核酸連結体の鋳型として好ましい構造を以下に説明する。
第2の1本鎖核酸または第1の1本鎖核酸のいずれか一方は、タンパク質の発現制御配列およびコーディング配列を有するRNA(以下、これを「mRNA鎖」と称することがある)で、これとアニーリングする他方の1本鎖核酸が核酸誘導体を末端に有するスペーサーが枝分かれした状態で結合している核酸(以下、これを「スペーサー鎖」と称することがある)であることが好ましい。また、第3の1本鎖核酸は、DNA及びその誘導体であることが好ましく、作製された核酸構築物を翻訳してタンパク質−核酸連結体を製造した場合、翻訳反応液中から該分子のみを精製すること、該分子をラベルすること、及び該分子を固相(支持体)に結合させること等を目的として親和性物質や蛍光物質等の標識物質等を有することが好ましい(以下、これを「標識鎖」と称することがある)。
ここで、mRNA鎖のタンパク質の発現制御配列とは、(1)プロモーター配列、(2)翻訳の際にリボソームによって認識される配列が挙げられる。プロモーター配列の種類は、適用する発現系に適したものを適宜選択すればよく特に限定されない。例えば、大腸菌ウイルスT7のRNA polymeraseによって認識されるT7プロモーター配列、SP6プロモーター配列などが挙げられる。翻訳の際にリボソームによって認識される配列としては、翻訳の際に真核細胞のリボソームによって認識されるRNA配列(Kozak配列)に対応するDNA配列や原核細胞のリボソームによって認識されるシャイン・ダルガノ配列(Shine−Dalgarno)、5’キャップ構造(Shatkin,Cell,9,645−(1976))、オメガ配列等のtabacco mosaic virusのリボソームによって認識される配列、WO03/56009号公報に記載の配列、rabbitβ−globlin、Xenopusβ−globlin あるいはbromo mosaic virusのリボゾーム認識領域などが挙げられる。
コーディング配列とは、タンパク質−核酸連結体を作製する目的タンパク質をコードする配列であり、この種類は特に限定されず、目的に応じて適宜選択できる。また、コーディング配列としては、目的タンパク質に融合するようにFLAG、Hisタグなどをコードする配列を含んだり、さらにはポリメラーゼチェインリアクション(PCR)のプライマーがハイブリダイズするための共通配列などを含むこともできる。
スペーサー鎖は、核酸誘導体を末端に有するスペーサーが、枝分かれした状態で結合している1本鎖核酸であるが、これを使用して無細胞タンパク質翻訳系又は生細胞中でタンパク質の翻訳を行った場合、mRNAの末端付近まで翻訳が進んだ後、核酸誘導体(例えば、ピューロマイシンなど)がリボソームのAサイトに入ることによりタンパク質と結合させることができる。また、そのmRNAと2本鎖を形成している核酸部分は、最終的に本発明の核酸構築物として構築され、翻訳され、タンパク質−核酸連結体となった時に、mRNA鎖を逆転写するプライマーとしても機能する。
核酸誘導体としては、無細胞タンパク質翻訳系又は生細胞中でタンパク質の翻訳が行われた時に、合成されたタンパク質のC末端に結合する能力を有する化合物である限り限定されないが、その3’末端がアミノアシルtRNAに化学構造骨格が類似しているものを選択することができる。代表的な化合物として、ピューロマイシン(Puromycin)と3’−N−アミノアシルピューロマイシンアミノヌクレオシド(3’−N−Aminoacylpuromycin aminonucleoside、PANS−アミノ酸)、すなわち、アミノ酸部がグリシンのPANS−Gly、アミノ酸部がバリンのPANS−Val、アミノ酸部がアラニンのPANS−Ala、その他、アミノ酸部が全ての各アミノ酸に対応するPANS−アミノ酸化合物が挙げられる。
また、3’−アミノアデノシンのアミノ基とアミノ酸のカルボキシル基が脱水縮合して連結した3’−N−アミノアシルアデノシンアミノヌクレオシド(3’−Aminoacyladenosine aminonucleoside,AANS−アミノ酸)、すなわち、アミノ酸部がグリシンのAANS−Gly、アミノ酸部がバリンのAANS−Val、アミノ酸部がアラニンのAANS−Ala、その他、アミノ酸部が全アミノ酸の各アミノ酸に対応するAANS−アミノ酸化合物を使用できる。また、核酸あるいは核酸とアミノ酸のエステル結合したものなども使用できる。さらにまた、核酸あるいは核酸に類似した化学構造骨格及び塩基を有する物質と、アミノ酸に類似した化学構造骨格を有する物質とを化学的に結合した化合物は、すべて本発明で用いられる核酸誘導体に含まれる。核酸誘導体としては、ピューロマイシン、PANS−アミノ酸もしくはAANS−アミノ酸がリン酸基を介してヌクレオシドと結合している化合物がより好ましい。これらの化合物の中でピューロマイシン、リボシチジルピューロマイシン、デオキシシチジルピューロマイシン、デオキシシチジルデオキシシチジルピューロマイシン、デオキシウリジルピューロマイシンなどのピューロマイシン誘導体が特に好ましい。
上記したような核酸誘導体は、それ自体既知の化学結合方法によって製造することができる。具体的には、リン酸ジエステル結合で合成ユニットを結合させる場合は、DNA合成機に一般的に用いられているホスホアミダイド法などにより固相合成で合成することが可能である。ペプチド結合を導入する場合は、活性エステル法などにより合成ユニットを結合させるが、DNAとの複合体を合成する場合は、両方の合成法に対応が可能な保護基が必要になる。
また、(1)に記載したとおり核酸誘導体を含むスペーサー鎖は、架橋反応により他の1本鎖核酸と連結させる。この架橋反応に用いられる架橋剤が認識する官能基が核酸誘導体に含まれる場合には、これを適当な保護基により保護することが好ましい。具体的に、例えば核酸誘導体にピューロマイシンが含まれる場合は、そのαアミノ基をNα−(Nα−ベンジルオキシカルボニルフェニルアラニル)基などで保護しておくことが好ましい。
上記した保護基の導入法及び脱保護法は当業者に公知であり、例えば、Teodora,W.Green,Protective Groups in Organic Synthesis,John & Wiley & Sons Inc.(1981)などに記載されている。ピューロマイシンのαアミノ基をNα−(Nα−ベンジルオキシカルボニルフェニルアラニル)基で保護したものの製造方法としては、まず、ピューロマイシン2塩酸塩を適当な溶媒(例えば、水)に溶解した後、ジメトキシエタン(DME)と10%炭酸ナトリウム水溶液を加える。この溶液にベンジルオキシカルボニル基(Z基)で保護されたフェニルアラニル−OSuをDMEに溶かした溶液を加え、さらに10%炭酸ナトリウム水溶液を加えて反応させる。得られたNα−(Nα−ベンジルオキシカルボニルフェニルアラニル)ピューロマイシンは、常法により固相担体に結合させ、DNA合成機などで使用することができる。Nα−(Nα−ベンジルオキシカルボニルフェニルアラニル)基の脱保護は核酸誘導体をリン酸緩衝液に溶解し、キモトリプシンで酵素消化することで行われる。
上記核酸誘導体はスペーサーを介してスペーサー鎖の核酸部分に結合している。スペーサーとしては、ポリエチレン又はポリエチレングリコールあるいはその誘導体などの高分子物質や、オリゴヌクレオチドやペプチドあるいはその誘導体などの生体高分子物質等が用いられ、好ましくはポリエチレングリコールが用いられる。スペーサーの長さは特に限定されないが、好ましくは、分子量150〜6000であるか、または主鎖の原子数は10原子から400原子であり、さらに好ましくは、分子量600〜3000であるか、または主鎖の原子数が40原子から200原子である。スペーサーが結合するヌクレオチドは、スペーサー鎖の核酸部分の何れでもよいが、スペーサー鎖の3’末端から0〜20塩基内側のヌクレオチドが好ましく、0〜8塩基内側の末端がさらに好ましい。スペーサー鎖のスペーサーとヌクレオチドの結合は、(1)に記載のリンカーを介した結合が好ましく用いられる。
スペーサー鎖の核酸部分は、mRNAの3’末端とアニーリングする塩基配列を有する12〜50塩基程度のものが好ましい。スペーサー鎖の核酸部分がDNAであると、mRNA鎖とアニーリングさせて2本鎖とした後これを翻訳反応に供する際、RNaseHの分解を受けやすいため、DNAとRNA誘導体のキメラ鎖であることが好ましい。RNA誘導体は、具体的には、2’−OMeRNAや2‘−F RNAが好ましく用いられる。ただしこの場合キメラ鎖が逆転写酵素の基質として認識される必要があり、特に逆転写反応の開始点となる3’末端部分はDNAであることが逆転写効率上好ましく、そのDNA鎖は1〜6塩基程度が好ましい。スペーサー鎖と相補性を有するmRNAの3’末端の配列は、コーディング配列の3’末端側にアニーリングのための配列として付加した共通配列を用いることが好ましい。スペーサー鎖の好ましい配列として、例えば実施例1のオリゴ2に記載のもの等が挙げられる。スペーサー鎖の核酸部分のうち、(1)に記載のリンカーの一部となる架橋剤に認識される官能基を末端に有する化合物が結合するヌクレオチドは、5’末端のヌクレオチドであることが好ましい。
標識鎖の長さは適宜選択することができ、一般的には1塩基から数百塩基であり、好ましくは1〜100塩基程度である。標識鎖が有する標識物質としては、親和性物質、共有結合性物質、蛍光物質、分解性物質等が挙げられる。親和性物質としては、ポリA配列、ポリT配列、ビオチン、FLAG等の各種抗原又は抗体、Hisタグ、NTA等の配位子、受容体リガンド等が挙げられる。また、共有結合性物質としては、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド等の核酸末端部分、ヒドラジド、ケトン、チオエステル等の官能基、ソラレン等の架橋性物質が挙げられる。蛍光物質としては、フルオレセイン、オレゴングリーン、ローダミン、テトラメチルローダミン、テキサスレッド、Cy3、Cy5、Alexa488等が挙げられる。分解性物質としては、光反応で分解する1−(2−ニトロフェニル)−エチル基を有する誘導体や、プロテアーゼやペプチダーゼに認識されるアミノ酸配列等が挙げられる。これらの標識物質は、それ自体既知の通常用いられるものであり、容易に入手可能であり、また常法により核酸等に結合して標識することができる。
標識鎖の核酸部分には、(1)に記載のリンカーの一部となる架橋剤に認識される官能基を末端に有する化合物が結合しているが、その位置は、標識鎖のリガーゼ処理によって連結させる末端から0〜10塩基、好ましくは1〜10塩基内側に存在するいずれかのヌクレオチドであることが好ましい。標識物質が結合する位置は、標識鎖の核酸部分のうちリガーゼ処理によって連結させる末端と逆側の末端が好ましい。また、該標識物質は、ヌクレオチドに上記したようなスペーサーを介して結合していてもよい。
mRNA鎖、スペーサー鎖、及び標識鎖の連結は、(1)に記載の方法により行うことができる。 かくして構築された本発明の核酸構築物をタンパク質翻訳系に導入することによりタンパク質−核酸連結体を製造することができる。核酸からそれがコードするタンパク質を人工的に生成させるための翻訳系は当業者に公知である。具体的には、適当な細胞よりタンパク質合成能を有する成分を抽出し、その抽出液を用いて目的のタンパク質を合成させる無細胞タンパク質合成系が挙げられる。このような無細胞タンパク質合成系には、リボゾーム、開始因子、伸長因子及びtRNA等の翻訳に必要な要素が含まれている。このような無細胞タンパク質合成系としては、例えば、真核生物の無細胞タンパク質合成系が用いられ、より具体的には、ウサギ網状赤血球抽出液やコムギ胚芽抽出液などが挙げられるが、これらに限られるものではない。無細胞タンパク質合成系は、キットとして市販されているものを使用することができる。例えば、ウサギ網状赤血球抽出液のキットとしては、Rabbit Reticulocyte Lysate Systems,Nuclease Treated(Promega社製)等が用いられ、またコムギ胚芽抽出液としては、PROTEIOSTM Wheat germ cell−free protein synthesis core kit(TOYOBO社製)等が挙げられる。タンパク質翻訳系としては、生細胞を使用してもよく、具体的には、原核又は真核生物、例えば大腸菌の細胞等を用いることができる。無細胞タンパク質翻訳系又は生細胞などは、その中にタンパク質をコードする核酸を添加するか又は導入することによってタンパク質合成が行われるものである限り特に制限はない。本発明の核酸構築物を無細胞タンパク質合成系に導入する直前に、60〜90℃で加熱した後急冷する工程を行うと、タンパク質−核酸連結体の合成効率が高くなるため好ましい。
上記翻訳反応液から、タンパク質−核酸連結体を精製する場合、標識鎖に親和性物質あるいは共有結合物質が結合している場合には、該親和性物質あるいは共有結合物質を介して精製を行うことができる。精製の方法は、用いる親和性物質および共有結合物質に応じて適宜選択してそれ自体既知の定法を用いることができる。このようにして製造したタンパク質−核酸連結体も本発明に含まれるものである。
本発明は、さらに所望のタンパク質−核酸連結体をタンパク質の機能を指標として選択することを特徴とするタンパク質、該タンパク質のコーディング配列、該コーディング配列を有するRNAまたはDNAの選択方法も含まれる。
この選択方法は、タンパク質−核酸連結体(IVV分子)中のタンパク質が有する機能(生物活性)を用いて所望の機能を有するタンパク質をIVV分子として選択することを意味する。即ち、製造されたIVV分子と相互作用をし得る被験物質、例えばタンパク質、ペプチド、核酸、糖質、脂質、低分子化合物等との相互作用の有無や強弱に基づいて、IVV分子を選択することができる。このような相互作用の解析方法としては、例えばWO98/16636号公報に記載の方法を用いることができる。
また、本発明のタンパク質−核酸連結体および被験物質は、固相(支持体)に結合させて用いることもできる。タンパク質−核酸連結体の固相への結合は、上記標識鎖に親和性物質や共有結合性物質が結合している場合には、これらを用いて行うことができる。具体的には、親和性物質又は共有結合性物質が親和性を有するまたは結合する物質を予め固定化した固相に、上記タンパク質−核酸連結体を接触させることにより、当該タンパク質−核酸連結体を固相に容易に固定化することができる。固相への被験物質の結合は、例えば、Scott,J.K.& Smith,G.P.(1990)Science,249,386−390;Devlin,P.E.et al.(1990)Science,249,404−406;Mattheakis,L.C.et al.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91,9022−9026等に記載されている方法等により行うことができる。
固相(支持体)としては、通常の核酸、タンパク質、糖質、脂質、低分子化合物等の固定化に用いることができる支持体であれば特に限定されない。支持体としては、親和性物質や共有結合性物質どうしの結合形成、あるいは上記被験物質の結合に悪影響を及ぼさないものであればその形状は特に限定されず、例えば、平板、マイクロウェル、ビーズ等の任意の形態をとることができる。支持体の材質としては、例えば、ガラス、セメント、陶磁器等のセラミックス、ポリエチレンテレフタレート、酢酸セルロース、ビスフェノールAのポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等のポリマー類、シリコン、活性炭、多孔質ガラス、多孔質セラミックス、多孔質シリコン、多孔質活性炭、織編物、不織布、濾紙、短繊維、メンブランフィルター等の多孔質物質を挙げることができる。
上記選択方法に付するIVV分子は、上記タンパク質−核酸連結体でもよいし、mRNA鎖をDNAに逆転写したタンパク質−逆転写核酸連結体でもよい。即ち、RNA部分を含む核酸を逆転写酵素で処理することにより、RNAからDNAへの逆転写が起こり、RNA部分の塩基配列をDNAに転換することができる。逆転写反応に必要な試薬及び反応条件は当業者に周知であり、必要に応じて適宜選択することができる。さらに得られたDNA−RNA−タンパク質連結体のRNAをRNA分解酵素などを用いて分解し、DNAを鋳型にポリメラーゼ反応をすることにより2本鎖DNA−タンパク質連結体を作製して用いることもできる。本明細書では、上記RNA−DNA−タンパク質連結体および2本鎖DNA−タンパク質連結体を合わせてタンパク質−逆転写核酸連結体と言う。このような、タンパク質−逆転写核酸連結体を用いれば、核酸部分の安定性がよいこと、また1本鎖RNAの非特異的吸着がないため好ましい。本明細書では、上記タンパク質−核酸連結体とタンパク質−逆転写核酸連結体を、単に「タンパク質−核酸連結体」と称することがある。
上記選択方法で選択されたIVV分子は、これを再度被験物質との相互作用に基づいて選択することにより、該相互作用がより適当なタンパク質を選択および取得することができる。一度選択されたIVV分子を、再度被験物質と接触させるためには、(i)選択されたIVV分子の1本鎖RNA部分を必要に応じて分解する等した後に、これをPCRなどで増幅し(増幅工程)、(ii)増幅されたDNA鎖をもとにmRNA鎖を製造し、さらに上記の核酸構築物を製造してIVV分子を製造し(構築工程)、(iii)選択方法を行うことにより可能となる。これら(i)増幅工程、(ii)構築工程、(iii)選択工程を必要に応じて繰り返すことにより、被験物質との相互作用がより適当なタンパク質を選択および取得することができる。
(i)増幅工程は、PCRを用いて例えば以下のように行うことも好ましい。IVV分子の核酸中、増幅するのは少なくともタンパク質をコーディングする部分(以下、これを「ORF」と称することがある)を含む領域である。このように増幅されたDNAについて、塩基配列をそれ自体既知の定法により解析することにより、上記選択方法で選択されたタンパク質をコードするDNAまたはRNAも選択することができる。該領域を増幅するのに用いられるPCRプライマーとしては、特に制限はないが、全てのIVV分子に共通に用いられる配列として、5’側のプライマーは、ORFの5’上流側に連結されている配列が好ましく用いられる。具体的には、上記したタンパク質−核酸連結体の場合、5’側のプライマーは、翻訳の際にリボソームによって認識されるDNA配列などが好ましく用いられ、3’側のプライマーは、タグ配列や共通配列が好ましく用いられる。かくして増幅されて得られたDNAは、ORFのみを含むものであるので、上記に記載の(1)プロモーター配列、(2)翻訳の際にリボソームによって認識されるDNA配列(以下、これらを「5’付加配列」と称することがある)。タグ配列、共通配列等(以下、これらを「3’付加配列」と称することがある)を結合する。これらの配列の結合は、DNAリガーゼ、下述するオーバーラップエクステンション法、PCR法を用いて行うことができる。PCRのプライマーとしては、増幅されたDNAの5’末端と共通の配列を3’末端に有する5’末端付加配列からなるものと、増幅されたDNAの3’末端と共通の配列を5’末端に有する3’付加配列からなるものが用いられる。
オーバーラップエクステンション法による結合方法は、まず増幅されたDNAの5’末端と共通の配列を3’末端に有する5’付加配列を等モル数程度用意し、これをアニーリングさせた後に、DNAポリメラーゼなどを用いて2本鎖DNAに合成し、さらに増幅されたDNAの3’末端と共通の配列を5’末端に有する3’付加配列を等モル数程度用意し、これをアニーリングさせた後に、DNAポリメラーゼなどを用いて2本鎖DNAを合成する方法である。上記5’側付加配列および3’付加配列の結合は、片方ずつ行っても、両方同時に行ってもよい。かくして合成された2本鎖DNAは、これを両末端の塩基配列を有するプライマーなどを用いてさらにPCRで増幅してもよい。
上記(i)の増幅工程で得られたDNAに(iv)変異を導入(変異導入工程)し、さらにこれを上記の方法で増幅し、(ii)構築工程、(iii)選択工程を行うことにより、タンパク質の機能(生物活性)の改変および新たな機能の創製が可能となる。これら(i)〜(iv)の工程は必要に応じ繰り返すこともできる。変異導入工程は、IVV分子の核酸部がRNAの場合には、上記した方法によりRNAをcDNAに逆転写した後に変異の導入を行えばよく、核酸部の増幅は変異導入しながら行ってもよい。
変異導入はすでに確立しているError−prone PCR(Leung,D.W.,et al.(1989)J.Methods Cell Mol.Biol.,1,11−15)やSexual PCRStemmer,W.P.C.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91,1077−10751)を用いて容易に行うことができる。また、変異導入ライブラリーの作製方法としては、変異を導入したい配列をランダムDNA合成法などにより作製し、オーバーラップエクステンション法により、共通配列などと連結する方法もある。
なお、本明細書における、上記した核酸の単離、調製、核酸の連結、核酸の合成、PCR、プラスミドの構築、無細胞系の遺伝子操作技術は、市販のキットなどを用いた場合にはその取扱説明書に準じ、それ以外で特に明記しない限り、Sambrook et al.(1998)Molecular Clonimg,2nd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載の方法またはそれに準じた方法により行うことができる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、下記の実施例は本発明を単に例示するものに過ぎず、本発明の範囲は下記の実施例により何ら限定されるものではない。本発明の精神から離れることなく、いかなる変更、改良または改変を加えることができることは当業者には自明である。
[実施例1] スペーサー鎖と標識鎖の連結
先ず、スペーサー鎖の合成工程を図2に模式的に示す。スペーサー鎖および標識鎖の原料として以下のような修飾オリゴヌクレオチドをDNA合成機で合成した。配列の中の(thiol)は5’−Thiol−modifier C6、(Spc)はSpacer18、(Ft)はFluorescein−dT、(Puro)はPuromycin CPG、(At)はAmino−modifier C6 dT、U’は2’−OMe−U、C’は2’−OMe−C、G’は2’−OMe−G、p−はChemical Phosphorylation Reagent(以上すべてグレンリサーチ)をそれぞれ示す。オリゴ1、オリゴ2、オリゴ4、オリゴ5は5’末端チオールの保護基であるトリチル基を残した状態で準備した。
オリゴ1(12.5nmol;図2)を0.1M酢酸トリエチルアミン水溶液45μlに溶かした溶液に0.2M硝酸銀水溶液を1.8μl加えて30分撹拌し、さらに0.2Mジチオスレイトール水溶液を3.6μl加えて30分撹拌した。不溶物を濾去したのち逆相高速液体クロマトグラフィ(逆相HPLC)でトリチル基が外れたオリゴ1のフラクション溶液を得た。オリゴ2(12.5nmol;図2)を0.1Mリン酸水素2ナトリウム水溶液15μlに溶かした溶液にEMCS(架橋剤;同仁化学)の20mM DMF溶液5μlを3回に分けて加えて合計30分室温で撹拌した。逆相HPLCでオリゴ2がEMCSと結合した目的物のフラクション溶液を得て、オリゴ1のフラクション溶液と混合した。この溶液を遠心エバポレーターで濃縮し、ほぼ乾固したあと25%のジメチルホルムアミドを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.1)40μlに再溶解して室温で1時間撹拌した。逆相HPLCでオリゴ1とオリゴ2がEMCSを介して連結した目的物オリゴ1−2(図2)を精製した(9nmol)。
オリゴ1−2(9nmol)を0.1M酢酸トリエチルアミン水溶液45μlに溶かした溶液に0.2M硝酸銀水溶液を1.8μl加えて30分撹拌し、さらに0.2Mジチオスレイトール水溶液を3.6μl加えて30分撹拌した。不溶物を濾去したのち逆相HPLCでトリチル基が外れたオリゴ1−2のフラクション溶液を得た。オリゴ3(9nmol;図2)を0.1Mリン酸水素2ナトリウム水溶液15μlに溶かした溶液にEMCSの20mM DMF溶液5μlを3回に分けて加えて合計30分室温で撹拌した。逆相HPLCでオリゴ3がEMCSと結合した目的物のフラクション溶液を得て、オリゴ1−2のフラクション溶液と混合した。この溶液を遠心エバポレーターで濃縮し、ほぼ乾固したあと25%のジメチルホルムアミドを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.1)40μlに再溶解して室温で1時間撹拌した。逆相HPLCでオリゴ1−2とオリゴ3がEMCSを介して連結した目的物T−splint5.9FA(図2)を精製した(約4.5nmol)。
同様にオリゴ2と3をEMCSで連結して得られたオリゴ2−3をオリゴ1と連結させる方法によってもT−splint5.9FAが得られた。
オリゴ2の代わりにオリゴ4からオリゴ10を用い、T−splint5.1FA(オリゴ4)、T−splint5.2FA(オリゴ5)、T−splint5.3FA(オリゴ6)、T−splint5.5FA(オリゴ7)、T−splint5.6FA(オリゴ8)、T−splint5.7FA(オリゴ9)、T−splint5.8FA(オリゴ10)、を同様の方法で合成した。
[実施例2] 転写用DNAの構築とmRNA鎖の作製
転写効率の高い大腸菌ウィルスT7のRNA polymeraseによって認識されるDNA配列(T7プロモーター配列)と翻訳の際に真核細胞のリボソームによって認識されるDNA配列(Kozak配列)と原核細胞のリボソームによって認識される(シャイン・ダルガノ配列:Shine−Dalgarno)を有し、その下流にOct−1の一部(POU;配列番号1)とFLAG配列、スペーサー鎖と連結するための共通配列(Y−tag)をコードしたDNAを構築した。
配列番号1のDNAを原料として、その3’末端の共通配列としての11塩基GCGGCGGGAAAをGGAAAの5塩基に改変したDNAを合成し、T−splint5.6FA、T−splint5.7FA用とした。
上記の作製したDNAを反応液100μlあたり10μg加え、RNA合成キットRibomax Large Scale RNA Production System(Promega)を使ってmRNAに転写した。翻訳効率をあげるためにキャップアナログ(RNA Capping Analog;Gibco BRL製)を最終濃度が7.2mMになるように加え、mRNAの5’側を修飾した。キャップアナログおよび過剰のNTP(ヌクレオチド3リン酸)を除去するために、プライマー除去剤(Primer Remover;Edge Biosystems製)を使ってエタノール沈澱を行った。
[実施例3] スペーサー鎖と標識鎖(スペーサー鎖と標識鎖の連結物)の連結物とmRNA鎖のライゲーション
上記で作製したmRNA鎖とスペーサー鎖と標識鎖の連結物(T−splint5.1FA)を割合(モル比)が1:1.2から1:3.0となるようにT4 RNA ligase buffer(50mM Tris−HCl、pH7.5、10mM MgCl2、10mM DTT、1mM ATP)に溶解し、ジメチルスルホキシドを最終濃度(Takara製)を至適量加えて25℃で1時間反応させた。ライゲーション産物をRneasy Mini Kit(QIAGEN製)を使って精製した。
ライゲーションの効率を確認するために、4%アクリルアミド8M尿素変性ゲル電気泳動、65℃、250V、100mA、60分の条件でサンプルを泳動し、Vistra Green(Amersham pharmacia製)で染色し、Molecular Imager(Bio Rad社製)で画像化した。結果を図4に示す。レーン1はライゲーション前のmRNA、レーン2は比較としてmRNA鎖と標識鎖の結合部が突出しているT−splint3FA(図3)をmRNAとモル比で1.2倍量用いてライゲーションしたもの、レーン3から5はT−splint5.1FAをmRNAとモル比でそれぞれ1.2倍、2.0倍、3.0倍量用いてライゲーションしたもの、レーン6は分子量マーカーに相当する。また、ライゲーション後の主生成物に相当するバンドは、特異的にフルオレセイン蛍光を発することを確認し、フルオレセインを有するスペーサー鎖と標識鎖の連結物とmRNAの連結物に由来するものと判断した。
T−splint5.2FA、T−splint5.3FA、T−splint5.5FA、T−splint5.6FA、T−splint5.7FA、T−splint5.8FA、T−splint5.9FAなど、実施例1で調製したスペーサー鎖と標識鎖の連結物のいずれを使ってもT−splint5.1FAとほぼ同効率のライゲーション結果が得られた。
[実施例4] 無細胞翻訳系によるmRNA−タンパク質連結体の調製
実施例3の方法により得られたmRNA鎖−スペーサー鎖−標識鎖の連結物を無細胞翻訳系に加えてmRNA−タンパク質連結体を形成させた。無細胞翻訳系としてはPROTEIOSTM(TOYOBO社製)小麦胚芽無細胞翻訳系を用い、バッチ法で小麦胚芽抽出液6μlに対しmRNA鎖−スペーサー鎖−標識鎖の連結物4pmol、全量25μlとして26℃で1時間ないし3時間反応させた。
IVV分子の形成効率を確認するために、5M尿素変性5%SDS−PAGEゲル、20mAの条件でサンプルを泳動した結果を図5に示す。レーン1はT−splint3FAのmRNA鎖−スペーサー鎖−標識鎖の連結物を無細胞翻訳系に加えてすぐに反応を止めたもの、レーン2は翻訳を1時間行なわせたもの、レーン3は翻訳を3時間行なわせたものをそれぞれ泳動したものに相当する。同様にレーン4からレーン6はT−splint5.1FA、レーン7からレーン9はT−splint5.2FA、レーン10からレーン12はT−splint5.9FAを用いて行なった場合の泳動結果を示す。T−splint3FAを用いた場合には、IVV分子がほとんど生成していないのに対し、T−splint5.1FA、T−splint5.2FA、T−splint5.9FAを用いた場合には14%から24%のIVV分子形成効率が確認された。特願2002−012820号明細書にあるように、T−splint3FAを用いた場合にはIVV分子形成効率をあげるために翻訳後に高塩濃度下におくことが必要であったが、T−splint5FAシリーズでは、そのような操作をする必要なく、同等以上の効率でIVV分子を得ることができた。
実施例1で調製した他のスペーサー鎖と標識鎖の連結物を同様に用いた場合、T−splint5.3FAはT−splint5.2FAと、T−splint5.7FAはT−splint5.1FAとそれぞれ同程度のIVV分子形成効率を示し、T−splint5.5FA、T−splint5.6FA、T−splint5.8FAは、ほぼ同程度のIVV分子形成効率を示した。さらに、その中で安定性はT−splint5.9FAがもっとも高いと判断された。
[実施例5] T−spacerによる逆転写の確認
実施例3の方法で得られたmRNA鎖−スペーサー鎖−標識鎖の連結物を用いて、逆転写反応によりスペーサー鎖の核酸部分をプライマーとしてmRNA/cDNA2本鎖化された産物が得られるか確認した。4 pmolのmRNA鎖−スペーサー鎖−標識鎖の連結物を溶かした溶液にSuperScript III Reverse Transcriptase(Invitrogen社製)を加えて至適条件で反応させ、さらにこのうちの3pmol相当の溶液にRNase H(Takara)2unitsを加えた。
4%アクリルアミド8M尿素変性ゲル電気泳動、65℃、250V、100mA、60分の条件でサンプル1pmol相当を泳動し、Molecular Imager(Bio Rad)でフルオレセインの蛍光を検出した。結果を図6に示す。レーン1はT−splint3FAのmRNA鎖−スペーサー鎖−標識鎖の連結物、レーン2はその逆転写反応混合物、レーン3はそれをさらにRNase H処理した混合物をそれぞれ泳動したものに相当する。同様にレーン4からレーン6はT−splint5.1FA、レーン7からレーン9はT−splint5.2FA、レーン10からレーン12はT−splint5.9FAをそれぞれスペーサー鎖と標識鎖の連結物として用いた場合のmRNA鎖−スペーサー鎖−標識鎖の連結物、逆転写反応混合物、RNase H処理混合物を泳動した結果である。T−splint5.1FAを除き、逆転写によるmRNA/cDNA2本鎖化とそのRNase H処理によってcDNA化が確認できた。
実施例1で調製した他のスペーサー鎖と標識鎖の連結物を用いて同様に行なった場合、T−splint5.3FAとT−splint5.8 FAではT−splint5.2FAやT−splint5.9FAと同程度の逆転写産物が検出され、T−splint5.5FAはT−splint5.1FAと同様に逆転写が進行しなかった。T−splint5.6FAとT−splint5.7FAでは逆転写産物が40−50%程度確認された。
T−splint5.1FAは逆転写のプライマーとなる配列が全て2’Ome−RNAであるため、逆転写は起こらないと考えられる。しかし、RNase H活性を受けにくくするためRNAと2本鎖を形成する配列は、できるだけ非DNA型であることが好ましい。そこで、T−splint5.5FAあるいはT−splint5.6FA、T−splint5.7FAのように、スペーサーが枝分かれして結合しているアミノdT基から3‘末端方向の塩基をDNAにし5’末端方向の塩基を全て2’Ome−RNAにした。その結果、T−splint5.5FAでは、逆転写が進行せず、T−splint5.6FAとT−splint5.7FAでは、逆転写産物が40−50%程度確認された。このことから、逆転写酵素は、3’側の2merないし3merだけを認識しているのではないことがわかった。また、このうち2’Ome−mRNA鎖が11merで、T−splint5.5FAより2本鎖部分が短いT−splint5.6FAの方が、逆転写が進行するということから、逆転写酵素は、プライマーとして、3’末端と10数mer程度5’側上流側のDNA鎖を認識するのではないかと考えた。そこで、3’末端から4merがDNA鎖、11merが2’Ome−mRNA鎖、6merがDNA鎖であるT−splint5.8FAを作製し検討したところ、T−splint3FA、あるいは、全てがDNA鎖であるT−splint5.2FAやT−splint5.3FAと同程度の逆転写産物が検出された。さらに、逆転写酵素のプライマーの認識部位として、5’方向の配列が厳密にDNAである必要が無いと考えられたことから、3’末端から4merがDNA鎖、その後の16merがDNAと2’Ome−RNA の繰り返し配列であるT−splint5.9FAを作製し検討したところ、T−splint3FA、あるいは、全てがDNA鎖であるT−splint5.2FAやT−splint5.3FA、上記のT−splint5.8FAと同程度の逆転写産物が検出された。実施例4及び5の結果から、T−splint5.9FAを主に用いることとした。
[実施例6] IVV分子形成効率向上のための操作
Sp6プロモーター配列とomega配列の下流にRXRαのC末端側の260塩基、FLAG配列、共通配列をそれぞれコードしたDNA(配列番号2)を構築した。実施例2と同様の方法で対応するmRNA鎖を作製した。
このmRNA鎖とT−splint5.9FAを割合(モル比)が1:3となるようにT4 RNA ligase buffer(50mM Tris−HCl、pH7.5、10mM MgCl2、10mM DTT、1mM ATP)に溶解し、ジメチルスルホキシドを最終濃度5%になるように加えた。この溶液をPCR装置上72℃で2分加熱し、15℃まで5分かけて冷却することでアニーリングした。T4 RNA ligase(Takara製)を至適量加えて15℃で2時間反応させた。生成したmRNA鎖−スペーサー鎖−標識鎖の連結物をRneasy Mini Kit(QIAGEN社製)を使って精製し、−80℃で保存した。
上記mRNA−スペーサー鎖−標識鎖の連結物の一部を無細胞翻訳系で用いる緩衝液(PROTEIOSTMキットに添付)中に溶かし、PCR装置上72℃で2分加熱したのち氷浴に移して急冷した。この溶液にRibonuclease inhibitor、Creatine kinase、tRNAを加えたのち小麦胚芽抽出液と混合して実施例4と同じ最終組成とした。続いて、26℃で1時間ないし3時間反応させた。
実施例4と同様に、IVV分子を5M尿素変性5%SDS−PAGEゲル、20mAの条件で泳動した結果を図7に示す。レーン1からレーン3は、実施例4の方法にあるように、翻訳に付する前に処理をせずmRNA鎖−スペーサー鎖−標識鎖の連結物を無細胞翻訳系に加えたもの、レーン4からレーン6は翻訳に付する前に加熱冷却後mRNA鎖−スペーサー鎖−標識鎖の連結物を無細胞翻訳系に加えたものを泳動した結果である。レーン1及び4は無細胞翻訳系に加えた後すぐに反応を停止したもの、レーン2及び5は翻訳を1時間行なわせたもの、レーン3及び6は翻訳を3時間行なわせたものをそれぞれ泳動したものに相当する。翻訳前にmRNA鎖−スペーサー鎖−標識鎖の連結物を加熱、急冷した方がIVV分子の形成効率が高いことが明らかとなった。
[実施例7] IVV分子ライブラリーの作製
IVV分子ライブラリーを作製する工程において、(i)スペーサー鎖と標識鎖の連結物の作製効率、(ii)mRNAとスペーサー鎖と標識鎖の連結体との連結効率、(iii)翻訳反応によるIVV分子の形成効率、(iv)スペーサー鎖のpoly−Aなどを用いたIVVの精製効率、(v)IVV分子の逆転写の効率、および(vi)特願2002−012820号明細書に記載のIVVライブラリー分子の精製効率が、最終的に調製されるIVVライブラリー中に含まれるIVV分子数に影響を及ぼす。
上記実施例における、各工程の効率とその際に得られる分子数の例を表1に示した。表1は、IVV分子ライブラリーを作製する各工程における効率と、各工程におけるライブラリー中に含まれるIVV分子数を示した表である。
(i)スペーサー鎖と標識鎖の連結物の作製効率は約36%、(ii)mRNAとスペーサー鎖と標識鎖の連結体との連結効率は80%以上、(iii)翻訳反応によるIVV分子の形成効率は14〜24%、(iv)スペーサー鎖のpoly−Aなどを用いたIVVの精製効率は約80%、(v)IVV分子の逆転写の効率はほぼ100%、さらに(vi)IVVライブラリー分子の精製効率は20〜40%であった。また、工程(ii)で調製される500pmol(3×1015分子)のIVVライブラリーを使用した場合、ベイトとの相互作用反応を行う際のIVVライブラリー(工程(v)または(vi))は11.2〜96pmol(0.67〜5.76×1013分子)のIVV分子が含まれる。実際のスクリーニングには、上記工程(v)または(vi)まで経たものを使用する。また、工程(iii)〜(vi)は分子の安定性の面から、一連で行われることが望ましい。
これらの効率から、最終的に本実施例において調製されるIVV分子ライブラリーに含まれるIVV分子の数は、例えば、工程(ii)で調製される500pmol(3×1015分子)のIVVライブラリーを使用した場合、ベイトとの相互作用反応を行う際のIVVライブラリー(工程(v)または(vi))は11.2〜96pmol(0.67〜5.76×1013分子)のIVV分子が含まれる。IVVライブラリー分子の作製は全てin vitroで行うため、その特徴として、IVVライブラリーのダイバーシティー(分子の多様性)を維持することが挙げられる。このことから、ベイトとの相互作用反応を行う際のIVVライブラリーサイズが約1013分子と非常に大きいことは、この特徴を有効に活用できるという点でスクリーニングに有用である。
[実施例8] FK506をベイトとしたIVVライブラリースクリーニング
(1)IVV調製用cDNAライブラリーの作製
常法にしたがって、SuperScript Double Strand cDNA Synthesis Kit(Invitrogen)を用い、cDNAライブラリを作製した。作製の概略を図8に示した。まず、ヒト脳から抽出し、oligo dTカラムで精製したmRNA(CLONTECH社製)0.5μgを鋳型として、9塩基からなるランダム配列と特定配列を含むランダムプライマー(配列番号4)0.2あるいは0.4pmol、または、2あるいは4pmolを用いて、ランダムプライミング法により逆転写でmRNAに相補的な一本鎖cDNAライブラリーを合成した(I)。RNaseH(TOYOBO社製)によりcDNAと二本鎖化しているRNAを切断するのと同時に、E.coli DNAポリメラーゼI(invitrogen社製)によりcDNAに相補的なDNAを合成し、さらに、E.coli DNAリガーゼ(invitrogen社製)により、T4 DNAポリメラーゼIにより合成されたDNA間にあるニックを修正してdsDNAライブラリーを合成した(II)。T4 DNAポリメラーゼIは合成した側のDNAの5’末端にのみリン酸基を導入することから、次に、合成したdsDNAをエタノール沈殿し、4μlのnuclease free水に溶解し、翻訳エンハンサーなどを含む100μMアダプター(配列番号5および6)を1μlとDNAリガーゼ(ligation high、TOYOBO社製)を5μl加えて、16℃で一晩反応させ両者を結合した(III)。アダプターは、エンハンサーや特定配列をコードする一本鎖DNA(配列番号5)とその3’末端に相補な短いDNA(配列番号6)を、常法に従ってアニーリングすることで作製した。この反応液を精製(DNA purifucation Kit;QIAGEN社製)した後、50μlのnuclease free水で溶出した。
次に、KOD plus(TOYOBO社製)を用いたPCRによりフォワード共通プライマー(配列番号7)、リバース共通プライマー(配列番号8)を用いて、5’、3’共通配列を導入し、IVV分子調製用cDNAライブラリーを作製した(IV)。PCRは、template量及びサイクル数を検討した後、最適条件として、0.2あるいは0.4pmolのランダムプライマーを用いた際には、50μlの反応系で、溶出液1μlをテンプレートとし、94℃で2分、18サイクル(98℃で10秒、60℃で30秒、68℃で5分を1サイクルとする)、68℃で3分の反応を行った。2あるいは4pmolのランダムプライマーを用いた際には、同条件で16サイクルの反応を行った。
(2)IVV調製用RNAライブラリーの作製およびT−splint5.9FAとの連結
上記(1)で作製したIVV調製用cDNAライブラリーを反応液50μlあたり1μg加え、RNA合成キットRibomax Large Scale RNA Production System(Promega社製)を使ってmRNAに転写した。翻訳効率をあげるためにキャップアナログ(RNA Capping Analog、Gibco BRL社製)を最終濃度が7.2mMになるように加え、mRNAの5’側を修飾した。
さらに、上記で作製したmRNAとスペーサー鎖と標識鎖(ピューロマイシンリンカー:T−splint5.9FA)を割合(モル比)が1:1.2から1:3.0となるようにT4 RNA ligase buffer(50mM Tris−HCl、pH7.5、10mM MgCl2、10mM DTT、1mM ATP)に溶解し、ジメチルスルホキシドを最終濃度5%になるように加えた。この溶液をPCR装置上94℃で加熱し25℃まで10分かけて冷却することでアニーリングした。T4 RNA ligase(Takara社製)を至適量加えて25℃で約1時間反応させた。ライゲーション産物をRneasy Mini Kit(QIAGEN製)を使って精製し、IVV調製用翻訳鋳型ライブラリーとした。
このIVV調製用翻訳鋳型ライブラリーの質は、(a)ライブラリーをゲル電気泳動により分画した際の大きさやスメアな泳動像示すこと、(b)mRNAとの特定分子の存在量の比較、あるいは(c)配列解析により評価することができる。
(a)ゲル電気泳動による評価
上記で作製したIVV調製用翻訳鋳型ライブラリー200ng(A:上記で0.2あるいは0.4pmolのランダムプライマーから作製したもの、B:2あるいは4pmolのランダムプライマーから作製したものをそれぞれ等モルずつあわせた)を4%ウレア変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)にて泳動し、標識鎖のFluorosceinを使って、Molecular Imager(Bio Rad社製)で画像化した。結果を図9Aに示す。レーン1はIVV cDNAライブラリA、レーン2はIVV cDNAライブラリBである。図から明らかなように、上記で調製されたIVV調製用翻訳鋳型ライブラリーは、スメアな泳動像を示し、またDNA鎖の長さも十分であることを確認した。
(b)mRNAとの特定分子の存在量の比較による評価
常法に従って、サイバーグリーンをもちいた定量PCR法(SYBR GREEN PCR Master MiX:ABI社製)によって、数種の分子の存在量を定量した。元のmRNAの鋳型としては、元のmRNAをSYBR Green RT PCR Reagents(ABI社)によって、ランダムプライマーによって作製したcDNAを使用した。IVV調製用翻訳鋳型ライブラリーは、スペーサーに導入してある逆転写プライマー配列を利用して、Super Script III Reverse Transcriptase(Invitrogen社製)を用いて逆転写し、その後、RNaseH(TOYOBO社製)処理したものを精製し、Nuclease Free水に溶解したものを使用した。
これらのDNAを鋳型として、FKBP12(配列番号9、10)、FKBP5(配列番号11、12)、Sara(配列13、14)、STCH(配列番号15、16)、Smad4(配列番号17、18)、CDH1(配列番号19、20)、RXRα(配列番号21、22)、SDP1(配列番号23、24)、b−Actin(配列番号25、26)量を上記定量PCRにより測定した。
いずれも、鋳型10ng中の存在量をもとめ、図9Bに示した。白カラムは元のmRNA、黒カラムはIVV調製用翻訳鋳型ライブラリーを示す。図から明らかなように、調製されたIVV調製用翻訳鋳型ライブラリー中に含まれる複数種の特定のcDNA量は、もとのmRNA中に含まれるものと差異がないことを確認した。
(c)配列解析
上記で作製したIVV調製用翻訳鋳型ライブラリー200ng(A:上記で0.2あるいは0.4pmolのランダムプライマーから作製したもの、B:2あるいは4pmolのランダムプライマーから作製したものをそれぞれ等モルずつあわせた))を、スペーサー鎖に導入してある逆転写プライマー配列を利用して、SuperScript III Reverse Transcriptase(Invitrogen社製)を用いて逆転写し、その後、RNaseH(TOYOBO社製)処理したものを精製し、Nuclease Free水に溶解した。これを鋳型としてPCRによってクローニングするDNAを作製した。反応条件は、EX Taq(TAKARA社製)を用いて、フォワードプライマーとして配列番号27、リバースプライマーとして配列番号28を使用し、最適な鋳型の量、PCRサイクル数でそれぞれ行った。PCRは、94℃で2分、最適サイクル(94℃で30秒、60℃で30秒、72℃で5分を1サイクルとする)、72℃で3分の条件とした。以下常法に従って、上記のPCR産物を精製し、pGEM−Teasyベクター(プロメガ社製)にライゲーションし、クローニングした。インサートを含んでいるコロニーからプラスミドを抽出し、シークエンス解析を行った。A、Bそれぞれ約100個のIVV調製用翻訳鋳型ライブラリークローンの配列解析により、IVVフォームからなることを確認した。
(3)スクリーニング
IVV分子のスクリーニングは、(i)タンパク質−逆転写核酸連結体(以下、これを「IVVcDNA分子」と称することがある)形成工程、(ii)ベイト(被検物質)に対する相互作用分子の選抜工程、(iii)選択されたIVV分子からなるタンパク質−逆転写核酸連結体再作製工程、(iv)シークエンス解析による選択されたIVV分子の同定工程の4つの工程からなる。(i)、(iii)、および(iv)はIVV分子のスクリーニング(以下、これを「IVVスクリーニング」と称することがある)において共通の工程であり、(ii)はベイト特異的な工程である。また、ベイトは、その特性に従って、できるだけ高い濃度で調製されることが望ましい。IVVスクリーニングは、ベイトごとに相互作用分子が選択されているかを確認しつつ、上記(i)から(iii)の工程を繰り返し、特定のIVV分子の選択がなされた際には(iv)の工程で選択されたIVV分子のDNA配列を解析し、いずれの分子が選択されたか確認する。選択がされたかどうかの決定は、(iii)の工程で、選択分子の量の増加、あるいは、再ライブラリー化時にライブラリーをゲル電気泳動により分画した際にいくつかの単一なバンドを形成することを指標とする。IVVスクリーニングの概略を図10に示した。
(3)−(i)IVVcDNA分子ライブラリー調製
上記(2)で作製したIVV調製用翻訳鋳型ライブラリー64μgを小麦胚芽無細胞翻訳系PROTEIOS(TOYOBO社製)を用いて、26℃で1時間反応し翻訳させることでピューロマイシンに翻訳されたペプチドを結合させてIVV分子を形成させた。
この分子を、1M NaCl、100mM Tris−HCl(pH8.0)、10mM EDTA、0.25% Triton−X100になるように調整し、9.6nmolのBiotinylated Oligo(dT)Probe(Promega社製)を結合させたMAGNOTEX−SA(Takara社製)360μlと4℃、約1時間結合させた。その後、上清をとり、洗浄buffer A(1M NaCl、100mM Tris−HCl(pH8.0)、0.25% Triton−X100)で3回洗い、buffer B(500mM NaCl、100mM Tris−HCl(pH8.0)、0.25% Triton−X100)で1回洗い、buffer C(250mM NaCl、100mM Tris−HCl(pH8.0)、0.25% Triton−X100)で1回洗い、次いで、MilliQ水90μlで3回溶出して元のIVV分子ライブラリー及びIVV分子ライブラリー分子を得た。
次いで、上記の元のIVV分子ライブラリー及びIVV分子ライブラリー分子を、スペーサーに導入してある逆転写プライマー配列を利用して、SuperScript III Reverse Transcriptase(Invitrogen社製)を用いて逆転写した。溶出画分270μlに5×RT Buffer:108μl、10mM dNTP:54μl、0.1M DTT:27μl、40U/μl RNase Inhibitor(WAKO社製):21.6μl、200U/μl RTase:27μl、nuclease free水:32.4μlを加え、50度で2分、26℃まで1秒間に0.4℃ずつ下げて反応させた。
次いで、抗FLAG抗体(シグマ社製)を用いてIVVcDNA分子ライブラリを精製した。上記で逆転写反応したもの540μlを、final 20mM HEPES−KOH(pH7.8)、100mM KCl、0.1mM EDTA、1mM DTT、0.1% Np40、10% グリセロール、50μg/ml BSA、0.5μg/ml tRNAになるように調製した。これを、40μlの抗FLAG M2抗体アガロースビーズ(Sigma社製)に4℃で一晩結合させ、100μlのBinding Buffer(20mM HEPES−KOH(pH7.8)、100mM KCl、0.1mM EDTA、1mM DTT、0.1% Np40、10% グリセロール、50μg/ml BSA、0.5μg/ml tRNA)で3回洗いIVVcDNA分子ライブラリーを得た。
(3)−(ii)ベイトに対する相互作用分子の選抜工程
(I)ビオチン化FK506およびFK506ビーズの調製
FK506はペプチジルプロリルイソメラーゼである蛋白質FKBPと複合体を形成してカルシニューリンに結合し、NFATの脱リン酸化とその核内移行によるT細胞の活性化を阻害する天然から単離された免疫抑制剤である。FKBPの中でも12kDaのFKBP12がFK506の主な標的であるとされている。
ベイト用FK506(Sequoia Research Products社製)はまず1等量のジメチルアミノピリジン存在下で5等量の無水コハク酸とジメチルホルムアミド(DMF)中、室温で2日間室温で反応させ、カルボン酸誘導体として逆相HPLCで精製した。これをDMFに溶解し、それぞれ1等量のPyBOP(Benzotriazole−1−yl−oxy−tris−pyrrolidino−phosphonium hexafluorophosphate)、HOBt(1−Hydroxybenzotriazole hydrate)、トリエチルアミンを加えて室温で5分反応させたのちBiotin−POE3−amine(モレキュラーバイオサイエンス社製)を3等量加えて1時間反応させた。生成したビオチン化FK506を逆相HPLCで精製し、MALDI−TOF−MSで確認した。
濃度1mMのビオチン化FK506の50%エタノール水溶液16μlをTBKT(150mM KCl、50mM Tris−HCl(pH7.5)、0.2% Tween20)384μlに加えて撹拌し、MAGNOTEX−SA(Takara社製)100μl相当に加えて室温で30分混合した。ビーズをTBKT150μlで5回、FK506 Binding buffer(150mM KCl、50mM Tris−HCl(pH7.5)、0.1% Tween20、1mM EDTA、1mM DTT)300μlで3回洗ってFK506ビーズを調製した。ビオチン化FK506の代わりにBiotin−POE3−amineを使って同様にビオチンビーズを調製した。
(II)IVVcDNA分子とベイトとの接触および結合体の取得
上記(3)−(i)で得たIVVcDNAライブラリー30μgを、3×FLAG peptideをTBK溶液(150mM KCl、50mM Tris−HCl(pH7.5))40μlで3回溶出した。この溶液に各種原液を加え、最終量400μl、最終濃度150mM KCl、50mM Tris−HCl(pH7.5)、0.1% Tween20、1mM EDTA、1mM DTT、0.5μg/ml tRNA、50μg/ml BSAとした。これを上記(I)で得たビオチンビーズと合わせて室温で1時間静かに混合したのち、上清を上記(I)で得たFK506ビーズと合わせて室温で2時間静かに混合した。
この溶液中のビーズを200μlの上記FK506 Binding bufferで5回、200μlの上記FK506 Washing buffer(FK506 Binding bufferにエタノールを1%加えたもの)で5回洗浄し、100μMのFK506溶液(FK506 Binding bufferに溶かしたもの)を50μl加えて室温で1時間懸濁させた。上清にRNase H溶液(TOYOBO社製)を2μl、10μg/ml RNase A溶液を10μl加えて室温で30分反応させ、残ったDNA鎖から成る分子をエタノール沈殿で回収し、20μlのNuclease Free水に懸濁して再ライブラリー化のためのPCRの鋳型として調製した。
(3)−(iii)選択されたIVV分子からなるIVVcDNA分子ライブラリー作製
上記(3)−(ii)で得られたFK506と相互作用するタンパク質を含むIVVcDNA分子ライブラリーから、該タンパク質をコードするDNA部分の増幅を行った。PCRは、10μlの反応系で、プライマー(配列番号27、および28)を用いて、上記で得られたIVVcDNA分子を含む溶出液1μlを鋳型とし、94℃で2分、18サイクル(98℃で10秒、60℃で30秒、68℃で5分を1サイクルとする)、68℃で3分の反応を行った(1st PCR)。次に、このPCR産物を鋳型とし、転写プロモーターやスペーサー鎖とのアニーリング配列を含むプライマー(配列番号7、および8)を用いて同様にPCRを行った(2nd PCR)。スクリーニング初回あるいは、回収量が増加するまでは、溶出画分全て、またはダイバーシティを維持しつつ再ライブラリ化することが望ましい。
上記で作製したIVVcDNAライブラリーのタンパク質部分をコードするDNAを反応液50μlあたり1〜2μg加え、RNA合成キットRibomax Large Scale RNA Production System(Promega社製)を使ってmRNAに転写した。翻訳効率をあげるためにキャップアナログ(RNA Capping Analog、Gibco BRL社製)を最終濃度が7.2mMになるように加え、mRNAの5’側を修飾した。
さらに、上記で作製したmRNA鎖とT−splint5.9FAを割合(モル比)が1:1.2から1:3.0となるようにT4 RNA ligase buffer(50mM Tris−HCl、pH7.5、10mM MgCl2、10mM DTT、1mM ATP)に溶解し、ジメチルスルホキシドを最終濃度5%になるように加えた。この溶液をPCR装置上94℃で加熱し25℃まで10分かけて冷却することでアニーリングした。T4 RNA ligase(Takara社製)を至適量加えて25℃で約1時間反応させた。ライゲーション産物をRneasy Mini Kit(QIAGEN社製)を使って精製し、IVVcDNAライブラリー(以下、これを「濃縮IVVcDNAライブラリー」と称することがある)とした。
(3)−(iv)シークエンス解析による選択されたIVV分子の同定
上記(3)−(iii)の工程を何回か繰り返し、得られたIVVcDNAライブラリーをゲル電気泳動により分画した際に、いくつかの単一なバンドを形成した場合、これをクローニングしシークエンス解析することによりベイトと相互作用するタンパク質が同定される。本実施例では、上記(iii)の工程を7回および8回繰り返した後、IVVcDNAライブラリーのタンパク質部分をコードするDNAを、ウレア変性PAGEにて泳動し、スペーサーに導入してある蛍光(Fluoroscein)を使って、Molecular Imager(Bio Rad社製)で画像化した。このスクリーニングの1ラウンドから8ラウンドまでの結果を図11に示す。ここで、濃縮されているラウンド7および8のバンドとその周辺を、分画して精製したものをクローニングした。クローニングは、DNAを精製し、pGEM−Teasyベクター(プロメガ社製)にライゲーションして行った。
次に、インサートを含んでいるコロニーからプラスミドを抽出し、シークエンス解析を行った。約150クローンをシークエンス解析し、得られた塩基配列Blast検索によって同定した。この結果、FKBP12のほぼ全長に相当する配列がラウンド7で40.3%(64/159)、ラウンド8で80.7%(121/150)得られた。他にFKBP12のホモログ由来と推測されるシークエンスがラウンド7とラウンド8で1つずつ確認された。
(4)各ラウンドにおけるFKBP12を含むIVV分子数の測定
常法に従って、サイバーグリーンをもちいた定量PCR法(SYBER GREEN Master MiX:ABI社製)によって、各ラウンドのFKBP12を含むIVV分子の存在量を定量した。ベイトに対して、内因性のネガティブコントロールとして、βActinを指標とした。定量PCR法のテンプレートしては、1ラウンド以降は、再ライブラリー化した際の1st PCR産物あるいは2nd PCR産物を用い、最初のIVVcDNAライブラリーとしては、最初のIVVcDNAライブラリーを、スペーサーに導入してある逆転写プライマー配列を利用して、SuperScript III Reverse Transcriptase(Invitrogen社製)を用いて逆転写し、その後、RNaseH(TOYOBO社製)処理したものをプライマー除去剤(Primer Remover、Edge Biosystems社製)を使って精製し、Nuclease Free水に溶解したものを鋳型として、再ライブラリー化と同様にPCRしたものを鋳型とした。また、同定された遺伝子の定量は、FKBP12は配列番号9および10のプライマー、b−Actinは配列番号25および26の配列を有するプライマーを用いて行った。この結果を図12に示す。図中、四角のグラフはFKBPを含むIVV分子数を示し、三角はb−Actinを含むものを示し、いずれもライブラリー10ng中の存在量を示した。図から明らかなように、ラウンドが重なるごとに、FKBP12を含むIVV分子数が増加しており、本実施例のスクリーニングにより、FK506と相互作用するタンパク質を含むIVV分子が濃縮されていることがわかった。
[実施例9] IVV調製用翻訳鋳型分子のDNA2本鎖化
上記実施例8で得られたFKBP12をコードするDNAを含むシークエンス解析用ベクターを鋳型として、配列番号29および30に記載のプライマーを用いたPCRを行った。このDNAを実施例8(2)に記載の方法と同様にmRNAとT−splint5.9FAの結合体を作製し、さらにT−splint5.9FAに導入してある逆転写プライマー配列を利用して、SuperScript III Reverse Transcriptase(Invitrogen社製)を用いて逆転写した。
得られたmRNA/cDNA−T−splint5.9FA結合体2pmolを実施例5のmRNA分解の方法により処理し、cDNA−T−splint5.9FA結合体を得た。これを5‘プライマー(配列番号29)とともにEX Taq(TAKARA社製)の反応液10μlに溶解した。PCR装置中で72℃または84℃で1分間加熱変性し、さらに72℃で2分間伸張反応を行った。生成物を尿素変性下および非変性下でポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離し、T−Splint5.9FAのフルオレセインに由来する蛍光およびVistra Green染色で検出した。この結果を図13に示す。図中、レーン1は、FKBP12のmRNA、レーン2はmRNAとT−Splint5.9FAの結合体、レーン3はmRNA/cDNA−T−splint5.9FA結合体、レーン4はmRNA/cDNA−T−splint5.9FA結合体をRNaseAとRNaseHで処理したもの、レーン5から7は2本鎖DNA化したPCR反応液であり、レーン5は変性を72℃で行ない、プライマー濃度が鋳型の5等量のもの、レーン6は変性を72℃で行い、プライマー濃度が鋳型の1.25等量のもの、またレーン7は変性を84℃で行ない、プライマー濃度が鋳型の1.25等量であるものを示す。図13から明らかなように、変性PAGEでは、T−Splint5.9FA由来の蛍光で検出したDNA鎖はレーン5〜7でいずれも主に1本であるのに対し、Vistra Greenで検出するとやや分子量の小さいものに由来するバンドを加えて主に2本になっていることから、上記の反応でcDNA−T−Splint5.9FAの連結物のcDNA部分が2本鎖DNAとなっていることがわかった。
[実施例1] スペーサー鎖と標識鎖の連結
先ず、スペーサー鎖の合成工程を図2に模式的に示す。スペーサー鎖および標識鎖の原料として以下のような修飾オリゴヌクレオチドをDNA合成機で合成した。配列の中の(thiol)は5’−Thiol−modifier C6、(Spc)はSpacer18、(Ft)はFluorescein−dT、(Puro)はPuromycin CPG、(At)はAmino−modifier C6 dT、U’は2’−OMe−U、C’は2’−OMe−C、G’は2’−OMe−G、p−はChemical Phosphorylation Reagent(以上すべてグレンリサーチ)をそれぞれ示す。オリゴ1、オリゴ2、オリゴ4、オリゴ5は5’末端チオールの保護基であるトリチル基を残した状態で準備した。
オリゴ1(12.5nmol;図2)を0.1M酢酸トリエチルアミン水溶液45μlに溶かした溶液に0.2M硝酸銀水溶液を1.8μl加えて30分撹拌し、さらに0.2Mジチオスレイトール水溶液を3.6μl加えて30分撹拌した。不溶物を濾去したのち逆相高速液体クロマトグラフィ(逆相HPLC)でトリチル基が外れたオリゴ1のフラクション溶液を得た。オリゴ2(12.5nmol;図2)を0.1Mリン酸水素2ナトリウム水溶液15μlに溶かした溶液にEMCS(架橋剤;同仁化学)の20mM DMF溶液5μlを3回に分けて加えて合計30分室温で撹拌した。逆相HPLCでオリゴ2がEMCSと結合した目的物のフラクション溶液を得て、オリゴ1のフラクション溶液と混合した。この溶液を遠心エバポレーターで濃縮し、ほぼ乾固したあと25%のジメチルホルムアミドを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.1)40μlに再溶解して室温で1時間撹拌した。逆相HPLCでオリゴ1とオリゴ2がEMCSを介して連結した目的物オリゴ1−2(図2)を精製した(9nmol)。
オリゴ1−2(9nmol)を0.1M酢酸トリエチルアミン水溶液45μlに溶かした溶液に0.2M硝酸銀水溶液を1.8μl加えて30分撹拌し、さらに0.2Mジチオスレイトール水溶液を3.6μl加えて30分撹拌した。不溶物を濾去したのち逆相HPLCでトリチル基が外れたオリゴ1−2のフラクション溶液を得た。オリゴ3(9nmol;図2)を0.1Mリン酸水素2ナトリウム水溶液15μlに溶かした溶液にEMCSの20mM DMF溶液5μlを3回に分けて加えて合計30分室温で撹拌した。逆相HPLCでオリゴ3がEMCSと結合した目的物のフラクション溶液を得て、オリゴ1−2のフラクション溶液と混合した。この溶液を遠心エバポレーターで濃縮し、ほぼ乾固したあと25%のジメチルホルムアミドを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.1)40μlに再溶解して室温で1時間撹拌した。逆相HPLCでオリゴ1−2とオリゴ3がEMCSを介して連結した目的物T−splint5.9FA(図2)を精製した(約4.5nmol)。
同様にオリゴ2と3をEMCSで連結して得られたオリゴ2−3をオリゴ1と連結させる方法によってもT−splint5.9FAが得られた。
オリゴ2の代わりにオリゴ4からオリゴ10を用い、T−splint5.1FA(オリゴ4)、T−splint5.2FA(オリゴ5)、T−splint5.3FA(オリゴ6)、T−splint5.5FA(オリゴ7)、T−splint5.6FA(オリゴ8)、T−splint5.7FA(オリゴ9)、T−splint5.8FA(オリゴ10)、を同様の方法で合成した。
[実施例2] 転写用DNAの構築とmRNA鎖の作製
転写効率の高い大腸菌ウィルスT7のRNA polymeraseによって認識されるDNA配列(T7プロモーター配列)と翻訳の際に真核細胞のリボソームによって認識されるDNA配列(Kozak配列)と原核細胞のリボソームによって認識される(シャイン・ダルガノ配列:Shine−Dalgarno)を有し、その下流にOct−1の一部(POU;配列番号1)とFLAG配列、スペーサー鎖と連結するための共通配列(Y−tag)をコードしたDNAを構築した。
配列番号1のDNAを原料として、その3’末端の共通配列としての11塩基GCGGCGGGAAAをGGAAAの5塩基に改変したDNAを合成し、T−splint5.6FA、T−splint5.7FA用とした。
上記の作製したDNAを反応液100μlあたり10μg加え、RNA合成キットRibomax Large Scale RNA Production System(Promega)を使ってmRNAに転写した。翻訳効率をあげるためにキャップアナログ(RNA Capping Analog;Gibco BRL製)を最終濃度が7.2mMになるように加え、mRNAの5’側を修飾した。キャップアナログおよび過剰のNTP(ヌクレオチド3リン酸)を除去するために、プライマー除去剤(Primer Remover;Edge Biosystems製)を使ってエタノール沈澱を行った。
[実施例3] スペーサー鎖と標識鎖(スペーサー鎖と標識鎖の連結物)の連結物とmRNA鎖のライゲーション
上記で作製したmRNA鎖とスペーサー鎖と標識鎖の連結物(T−splint5.1FA)を割合(モル比)が1:1.2から1:3.0となるようにT4 RNA ligase buffer(50mM Tris−HCl、pH7.5、10mM MgCl2、10mM DTT、1mM ATP)に溶解し、ジメチルスルホキシドを最終濃度(Takara製)を至適量加えて25℃で1時間反応させた。ライゲーション産物をRneasy Mini Kit(QIAGEN製)を使って精製した。
ライゲーションの効率を確認するために、4%アクリルアミド8M尿素変性ゲル電気泳動、65℃、250V、100mA、60分の条件でサンプルを泳動し、Vistra Green(Amersham pharmacia製)で染色し、Molecular Imager(Bio Rad社製)で画像化した。結果を図4に示す。レーン1はライゲーション前のmRNA、レーン2は比較としてmRNA鎖と標識鎖の結合部が突出しているT−splint3FA(図3)をmRNAとモル比で1.2倍量用いてライゲーションしたもの、レーン3から5はT−splint5.1FAをmRNAとモル比でそれぞれ1.2倍、2.0倍、3.0倍量用いてライゲーションしたもの、レーン6は分子量マーカーに相当する。また、ライゲーション後の主生成物に相当するバンドは、特異的にフルオレセイン蛍光を発することを確認し、フルオレセインを有するスペーサー鎖と標識鎖の連結物とmRNAの連結物に由来するものと判断した。
T−splint5.2FA、T−splint5.3FA、T−splint5.5FA、T−splint5.6FA、T−splint5.7FA、T−splint5.8FA、T−splint5.9FAなど、実施例1で調製したスペーサー鎖と標識鎖の連結物のいずれを使ってもT−splint5.1FAとほぼ同効率のライゲーション結果が得られた。
[実施例4] 無細胞翻訳系によるmRNA−タンパク質連結体の調製
実施例3の方法により得られたmRNA鎖−スペーサー鎖−標識鎖の連結物を無細胞翻訳系に加えてmRNA−タンパク質連結体を形成させた。無細胞翻訳系としてはPROTEIOSTM(TOYOBO社製)小麦胚芽無細胞翻訳系を用い、バッチ法で小麦胚芽抽出液6μlに対しmRNA鎖−スペーサー鎖−標識鎖の連結物4pmol、全量25μlとして26℃で1時間ないし3時間反応させた。
IVV分子の形成効率を確認するために、5M尿素変性5%SDS−PAGEゲル、20mAの条件でサンプルを泳動した結果を図5に示す。レーン1はT−splint3FAのmRNA鎖−スペーサー鎖−標識鎖の連結物を無細胞翻訳系に加えてすぐに反応を止めたもの、レーン2は翻訳を1時間行なわせたもの、レーン3は翻訳を3時間行なわせたものをそれぞれ泳動したものに相当する。同様にレーン4からレーン6はT−splint5.1FA、レーン7からレーン9はT−splint5.2FA、レーン10からレーン12はT−splint5.9FAを用いて行なった場合の泳動結果を示す。T−splint3FAを用いた場合には、IVV分子がほとんど生成していないのに対し、T−splint5.1FA、T−splint5.2FA、T−splint5.9FAを用いた場合には14%から24%のIVV分子形成効率が確認された。特願2002−012820号明細書にあるように、T−splint3FAを用いた場合にはIVV分子形成効率をあげるために翻訳後に高塩濃度下におくことが必要であったが、T−splint5FAシリーズでは、そのような操作をする必要なく、同等以上の効率でIVV分子を得ることができた。
実施例1で調製した他のスペーサー鎖と標識鎖の連結物を同様に用いた場合、T−splint5.3FAはT−splint5.2FAと、T−splint5.7FAはT−splint5.1FAとそれぞれ同程度のIVV分子形成効率を示し、T−splint5.5FA、T−splint5.6FA、T−splint5.8FAは、ほぼ同程度のIVV分子形成効率を示した。さらに、その中で安定性はT−splint5.9FAがもっとも高いと判断された。
[実施例5] T−spacerによる逆転写の確認
実施例3の方法で得られたmRNA鎖−スペーサー鎖−標識鎖の連結物を用いて、逆転写反応によりスペーサー鎖の核酸部分をプライマーとしてmRNA/cDNA2本鎖化された産物が得られるか確認した。4 pmolのmRNA鎖−スペーサー鎖−標識鎖の連結物を溶かした溶液にSuperScript III Reverse Transcriptase(Invitrogen社製)を加えて至適条件で反応させ、さらにこのうちの3pmol相当の溶液にRNase H(Takara)2unitsを加えた。
4%アクリルアミド8M尿素変性ゲル電気泳動、65℃、250V、100mA、60分の条件でサンプル1pmol相当を泳動し、Molecular Imager(Bio Rad)でフルオレセインの蛍光を検出した。結果を図6に示す。レーン1はT−splint3FAのmRNA鎖−スペーサー鎖−標識鎖の連結物、レーン2はその逆転写反応混合物、レーン3はそれをさらにRNase H処理した混合物をそれぞれ泳動したものに相当する。同様にレーン4からレーン6はT−splint5.1FA、レーン7からレーン9はT−splint5.2FA、レーン10からレーン12はT−splint5.9FAをそれぞれスペーサー鎖と標識鎖の連結物として用いた場合のmRNA鎖−スペーサー鎖−標識鎖の連結物、逆転写反応混合物、RNase H処理混合物を泳動した結果である。T−splint5.1FAを除き、逆転写によるmRNA/cDNA2本鎖化とそのRNase H処理によってcDNA化が確認できた。
実施例1で調製した他のスペーサー鎖と標識鎖の連結物を用いて同様に行なった場合、T−splint5.3FAとT−splint5.8 FAではT−splint5.2FAやT−splint5.9FAと同程度の逆転写産物が検出され、T−splint5.5FAはT−splint5.1FAと同様に逆転写が進行しなかった。T−splint5.6FAとT−splint5.7FAでは逆転写産物が40−50%程度確認された。
T−splint5.1FAは逆転写のプライマーとなる配列が全て2’Ome−RNAであるため、逆転写は起こらないと考えられる。しかし、RNase H活性を受けにくくするためRNAと2本鎖を形成する配列は、できるだけ非DNA型であることが好ましい。そこで、T−splint5.5FAあるいはT−splint5.6FA、T−splint5.7FAのように、スペーサーが枝分かれして結合しているアミノdT基から3‘末端方向の塩基をDNAにし5’末端方向の塩基を全て2’Ome−RNAにした。その結果、T−splint5.5FAでは、逆転写が進行せず、T−splint5.6FAとT−splint5.7FAでは、逆転写産物が40−50%程度確認された。このことから、逆転写酵素は、3’側の2merないし3merだけを認識しているのではないことがわかった。また、このうち2’Ome−mRNA鎖が11merで、T−splint5.5FAより2本鎖部分が短いT−splint5.6FAの方が、逆転写が進行するということから、逆転写酵素は、プライマーとして、3’末端と10数mer程度5’側上流側のDNA鎖を認識するのではないかと考えた。そこで、3’末端から4merがDNA鎖、11merが2’Ome−mRNA鎖、6merがDNA鎖であるT−splint5.8FAを作製し検討したところ、T−splint3FA、あるいは、全てがDNA鎖であるT−splint5.2FAやT−splint5.3FAと同程度の逆転写産物が検出された。さらに、逆転写酵素のプライマーの認識部位として、5’方向の配列が厳密にDNAである必要が無いと考えられたことから、3’末端から4merがDNA鎖、その後の16merがDNAと2’Ome−RNA の繰り返し配列であるT−splint5.9FAを作製し検討したところ、T−splint3FA、あるいは、全てがDNA鎖であるT−splint5.2FAやT−splint5.3FA、上記のT−splint5.8FAと同程度の逆転写産物が検出された。実施例4及び5の結果から、T−splint5.9FAを主に用いることとした。
[実施例6] IVV分子形成効率向上のための操作
Sp6プロモーター配列とomega配列の下流にRXRαのC末端側の260塩基、FLAG配列、共通配列をそれぞれコードしたDNA(配列番号2)を構築した。実施例2と同様の方法で対応するmRNA鎖を作製した。
このmRNA鎖とT−splint5.9FAを割合(モル比)が1:3となるようにT4 RNA ligase buffer(50mM Tris−HCl、pH7.5、10mM MgCl2、10mM DTT、1mM ATP)に溶解し、ジメチルスルホキシドを最終濃度5%になるように加えた。この溶液をPCR装置上72℃で2分加熱し、15℃まで5分かけて冷却することでアニーリングした。T4 RNA ligase(Takara製)を至適量加えて15℃で2時間反応させた。生成したmRNA鎖−スペーサー鎖−標識鎖の連結物をRneasy Mini Kit(QIAGEN社製)を使って精製し、−80℃で保存した。
上記mRNA−スペーサー鎖−標識鎖の連結物の一部を無細胞翻訳系で用いる緩衝液(PROTEIOSTMキットに添付)中に溶かし、PCR装置上72℃で2分加熱したのち氷浴に移して急冷した。この溶液にRibonuclease inhibitor、Creatine kinase、tRNAを加えたのち小麦胚芽抽出液と混合して実施例4と同じ最終組成とした。続いて、26℃で1時間ないし3時間反応させた。
実施例4と同様に、IVV分子を5M尿素変性5%SDS−PAGEゲル、20mAの条件で泳動した結果を図7に示す。レーン1からレーン3は、実施例4の方法にあるように、翻訳に付する前に処理をせずmRNA鎖−スペーサー鎖−標識鎖の連結物を無細胞翻訳系に加えたもの、レーン4からレーン6は翻訳に付する前に加熱冷却後mRNA鎖−スペーサー鎖−標識鎖の連結物を無細胞翻訳系に加えたものを泳動した結果である。レーン1及び4は無細胞翻訳系に加えた後すぐに反応を停止したもの、レーン2及び5は翻訳を1時間行なわせたもの、レーン3及び6は翻訳を3時間行なわせたものをそれぞれ泳動したものに相当する。翻訳前にmRNA鎖−スペーサー鎖−標識鎖の連結物を加熱、急冷した方がIVV分子の形成効率が高いことが明らかとなった。
[実施例7] IVV分子ライブラリーの作製
IVV分子ライブラリーを作製する工程において、(i)スペーサー鎖と標識鎖の連結物の作製効率、(ii)mRNAとスペーサー鎖と標識鎖の連結体との連結効率、(iii)翻訳反応によるIVV分子の形成効率、(iv)スペーサー鎖のpoly−Aなどを用いたIVVの精製効率、(v)IVV分子の逆転写の効率、および(vi)特願2002−012820号明細書に記載のIVVライブラリー分子の精製効率が、最終的に調製されるIVVライブラリー中に含まれるIVV分子数に影響を及ぼす。
上記実施例における、各工程の効率とその際に得られる分子数の例を表1に示した。表1は、IVV分子ライブラリーを作製する各工程における効率と、各工程におけるライブラリー中に含まれるIVV分子数を示した表である。
(i)スペーサー鎖と標識鎖の連結物の作製効率は約36%、(ii)mRNAとスペーサー鎖と標識鎖の連結体との連結効率は80%以上、(iii)翻訳反応によるIVV分子の形成効率は14〜24%、(iv)スペーサー鎖のpoly−Aなどを用いたIVVの精製効率は約80%、(v)IVV分子の逆転写の効率はほぼ100%、さらに(vi)IVVライブラリー分子の精製効率は20〜40%であった。また、工程(ii)で調製される500pmol(3×1015分子)のIVVライブラリーを使用した場合、ベイトとの相互作用反応を行う際のIVVライブラリー(工程(v)または(vi))は11.2〜96pmol(0.67〜5.76×1013分子)のIVV分子が含まれる。実際のスクリーニングには、上記工程(v)または(vi)まで経たものを使用する。また、工程(iii)〜(vi)は分子の安定性の面から、一連で行われることが望ましい。
これらの効率から、最終的に本実施例において調製されるIVV分子ライブラリーに含まれるIVV分子の数は、例えば、工程(ii)で調製される500pmol(3×1015分子)のIVVライブラリーを使用した場合、ベイトとの相互作用反応を行う際のIVVライブラリー(工程(v)または(vi))は11.2〜96pmol(0.67〜5.76×1013分子)のIVV分子が含まれる。IVVライブラリー分子の作製は全てin vitroで行うため、その特徴として、IVVライブラリーのダイバーシティー(分子の多様性)を維持することが挙げられる。このことから、ベイトとの相互作用反応を行う際のIVVライブラリーサイズが約1013分子と非常に大きいことは、この特徴を有効に活用できるという点でスクリーニングに有用である。
[実施例8] FK506をベイトとしたIVVライブラリースクリーニング
(1)IVV調製用cDNAライブラリーの作製
常法にしたがって、SuperScript Double Strand cDNA Synthesis Kit(Invitrogen)を用い、cDNAライブラリを作製した。作製の概略を図8に示した。まず、ヒト脳から抽出し、oligo dTカラムで精製したmRNA(CLONTECH社製)0.5μgを鋳型として、9塩基からなるランダム配列と特定配列を含むランダムプライマー(配列番号4)0.2あるいは0.4pmol、または、2あるいは4pmolを用いて、ランダムプライミング法により逆転写でmRNAに相補的な一本鎖cDNAライブラリーを合成した(I)。RNaseH(TOYOBO社製)によりcDNAと二本鎖化しているRNAを切断するのと同時に、E.coli DNAポリメラーゼI(invitrogen社製)によりcDNAに相補的なDNAを合成し、さらに、E.coli DNAリガーゼ(invitrogen社製)により、T4 DNAポリメラーゼIにより合成されたDNA間にあるニックを修正してdsDNAライブラリーを合成した(II)。T4 DNAポリメラーゼIは合成した側のDNAの5’末端にのみリン酸基を導入することから、次に、合成したdsDNAをエタノール沈殿し、4μlのnuclease free水に溶解し、翻訳エンハンサーなどを含む100μMアダプター(配列番号5および6)を1μlとDNAリガーゼ(ligation high、TOYOBO社製)を5μl加えて、16℃で一晩反応させ両者を結合した(III)。アダプターは、エンハンサーや特定配列をコードする一本鎖DNA(配列番号5)とその3’末端に相補な短いDNA(配列番号6)を、常法に従ってアニーリングすることで作製した。この反応液を精製(DNA purifucation Kit;QIAGEN社製)した後、50μlのnuclease free水で溶出した。
次に、KOD plus(TOYOBO社製)を用いたPCRによりフォワード共通プライマー(配列番号7)、リバース共通プライマー(配列番号8)を用いて、5’、3’共通配列を導入し、IVV分子調製用cDNAライブラリーを作製した(IV)。PCRは、template量及びサイクル数を検討した後、最適条件として、0.2あるいは0.4pmolのランダムプライマーを用いた際には、50μlの反応系で、溶出液1μlをテンプレートとし、94℃で2分、18サイクル(98℃で10秒、60℃で30秒、68℃で5分を1サイクルとする)、68℃で3分の反応を行った。2あるいは4pmolのランダムプライマーを用いた際には、同条件で16サイクルの反応を行った。
(2)IVV調製用RNAライブラリーの作製およびT−splint5.9FAとの連結
上記(1)で作製したIVV調製用cDNAライブラリーを反応液50μlあたり1μg加え、RNA合成キットRibomax Large Scale RNA Production System(Promega社製)を使ってmRNAに転写した。翻訳効率をあげるためにキャップアナログ(RNA Capping Analog、Gibco BRL社製)を最終濃度が7.2mMになるように加え、mRNAの5’側を修飾した。
さらに、上記で作製したmRNAとスペーサー鎖と標識鎖(ピューロマイシンリンカー:T−splint5.9FA)を割合(モル比)が1:1.2から1:3.0となるようにT4 RNA ligase buffer(50mM Tris−HCl、pH7.5、10mM MgCl2、10mM DTT、1mM ATP)に溶解し、ジメチルスルホキシドを最終濃度5%になるように加えた。この溶液をPCR装置上94℃で加熱し25℃まで10分かけて冷却することでアニーリングした。T4 RNA ligase(Takara社製)を至適量加えて25℃で約1時間反応させた。ライゲーション産物をRneasy Mini Kit(QIAGEN製)を使って精製し、IVV調製用翻訳鋳型ライブラリーとした。
このIVV調製用翻訳鋳型ライブラリーの質は、(a)ライブラリーをゲル電気泳動により分画した際の大きさやスメアな泳動像示すこと、(b)mRNAとの特定分子の存在量の比較、あるいは(c)配列解析により評価することができる。
(a)ゲル電気泳動による評価
上記で作製したIVV調製用翻訳鋳型ライブラリー200ng(A:上記で0.2あるいは0.4pmolのランダムプライマーから作製したもの、B:2あるいは4pmolのランダムプライマーから作製したものをそれぞれ等モルずつあわせた)を4%ウレア変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)にて泳動し、標識鎖のFluorosceinを使って、Molecular Imager(Bio Rad社製)で画像化した。結果を図9Aに示す。レーン1はIVV cDNAライブラリA、レーン2はIVV cDNAライブラリBである。図から明らかなように、上記で調製されたIVV調製用翻訳鋳型ライブラリーは、スメアな泳動像を示し、またDNA鎖の長さも十分であることを確認した。
(b)mRNAとの特定分子の存在量の比較による評価
常法に従って、サイバーグリーンをもちいた定量PCR法(SYBR GREEN PCR Master MiX:ABI社製)によって、数種の分子の存在量を定量した。元のmRNAの鋳型としては、元のmRNAをSYBR Green RT PCR Reagents(ABI社)によって、ランダムプライマーによって作製したcDNAを使用した。IVV調製用翻訳鋳型ライブラリーは、スペーサーに導入してある逆転写プライマー配列を利用して、Super Script III Reverse Transcriptase(Invitrogen社製)を用いて逆転写し、その後、RNaseH(TOYOBO社製)処理したものを精製し、Nuclease Free水に溶解したものを使用した。
これらのDNAを鋳型として、FKBP12(配列番号9、10)、FKBP5(配列番号11、12)、Sara(配列13、14)、STCH(配列番号15、16)、Smad4(配列番号17、18)、CDH1(配列番号19、20)、RXRα(配列番号21、22)、SDP1(配列番号23、24)、b−Actin(配列番号25、26)量を上記定量PCRにより測定した。
いずれも、鋳型10ng中の存在量をもとめ、図9Bに示した。白カラムは元のmRNA、黒カラムはIVV調製用翻訳鋳型ライブラリーを示す。図から明らかなように、調製されたIVV調製用翻訳鋳型ライブラリー中に含まれる複数種の特定のcDNA量は、もとのmRNA中に含まれるものと差異がないことを確認した。
(c)配列解析
上記で作製したIVV調製用翻訳鋳型ライブラリー200ng(A:上記で0.2あるいは0.4pmolのランダムプライマーから作製したもの、B:2あるいは4pmolのランダムプライマーから作製したものをそれぞれ等モルずつあわせた))を、スペーサー鎖に導入してある逆転写プライマー配列を利用して、SuperScript III Reverse Transcriptase(Invitrogen社製)を用いて逆転写し、その後、RNaseH(TOYOBO社製)処理したものを精製し、Nuclease Free水に溶解した。これを鋳型としてPCRによってクローニングするDNAを作製した。反応条件は、EX Taq(TAKARA社製)を用いて、フォワードプライマーとして配列番号27、リバースプライマーとして配列番号28を使用し、最適な鋳型の量、PCRサイクル数でそれぞれ行った。PCRは、94℃で2分、最適サイクル(94℃で30秒、60℃で30秒、72℃で5分を1サイクルとする)、72℃で3分の条件とした。以下常法に従って、上記のPCR産物を精製し、pGEM−Teasyベクター(プロメガ社製)にライゲーションし、クローニングした。インサートを含んでいるコロニーからプラスミドを抽出し、シークエンス解析を行った。A、Bそれぞれ約100個のIVV調製用翻訳鋳型ライブラリークローンの配列解析により、IVVフォームからなることを確認した。
(3)スクリーニング
IVV分子のスクリーニングは、(i)タンパク質−逆転写核酸連結体(以下、これを「IVVcDNA分子」と称することがある)形成工程、(ii)ベイト(被検物質)に対する相互作用分子の選抜工程、(iii)選択されたIVV分子からなるタンパク質−逆転写核酸連結体再作製工程、(iv)シークエンス解析による選択されたIVV分子の同定工程の4つの工程からなる。(i)、(iii)、および(iv)はIVV分子のスクリーニング(以下、これを「IVVスクリーニング」と称することがある)において共通の工程であり、(ii)はベイト特異的な工程である。また、ベイトは、その特性に従って、できるだけ高い濃度で調製されることが望ましい。IVVスクリーニングは、ベイトごとに相互作用分子が選択されているかを確認しつつ、上記(i)から(iii)の工程を繰り返し、特定のIVV分子の選択がなされた際には(iv)の工程で選択されたIVV分子のDNA配列を解析し、いずれの分子が選択されたか確認する。選択がされたかどうかの決定は、(iii)の工程で、選択分子の量の増加、あるいは、再ライブラリー化時にライブラリーをゲル電気泳動により分画した際にいくつかの単一なバンドを形成することを指標とする。IVVスクリーニングの概略を図10に示した。
(3)−(i)IVVcDNA分子ライブラリー調製
上記(2)で作製したIVV調製用翻訳鋳型ライブラリー64μgを小麦胚芽無細胞翻訳系PROTEIOS(TOYOBO社製)を用いて、26℃で1時間反応し翻訳させることでピューロマイシンに翻訳されたペプチドを結合させてIVV分子を形成させた。
この分子を、1M NaCl、100mM Tris−HCl(pH8.0)、10mM EDTA、0.25% Triton−X100になるように調整し、9.6nmolのBiotinylated Oligo(dT)Probe(Promega社製)を結合させたMAGNOTEX−SA(Takara社製)360μlと4℃、約1時間結合させた。その後、上清をとり、洗浄buffer A(1M NaCl、100mM Tris−HCl(pH8.0)、0.25% Triton−X100)で3回洗い、buffer B(500mM NaCl、100mM Tris−HCl(pH8.0)、0.25% Triton−X100)で1回洗い、buffer C(250mM NaCl、100mM Tris−HCl(pH8.0)、0.25% Triton−X100)で1回洗い、次いで、MilliQ水90μlで3回溶出して元のIVV分子ライブラリー及びIVV分子ライブラリー分子を得た。
次いで、上記の元のIVV分子ライブラリー及びIVV分子ライブラリー分子を、スペーサーに導入してある逆転写プライマー配列を利用して、SuperScript III Reverse Transcriptase(Invitrogen社製)を用いて逆転写した。溶出画分270μlに5×RT Buffer:108μl、10mM dNTP:54μl、0.1M DTT:27μl、40U/μl RNase Inhibitor(WAKO社製):21.6μl、200U/μl RTase:27μl、nuclease free水:32.4μlを加え、50度で2分、26℃まで1秒間に0.4℃ずつ下げて反応させた。
次いで、抗FLAG抗体(シグマ社製)を用いてIVVcDNA分子ライブラリを精製した。上記で逆転写反応したもの540μlを、final 20mM HEPES−KOH(pH7.8)、100mM KCl、0.1mM EDTA、1mM DTT、0.1% Np40、10% グリセロール、50μg/ml BSA、0.5μg/ml tRNAになるように調製した。これを、40μlの抗FLAG M2抗体アガロースビーズ(Sigma社製)に4℃で一晩結合させ、100μlのBinding Buffer(20mM HEPES−KOH(pH7.8)、100mM KCl、0.1mM EDTA、1mM DTT、0.1% Np40、10% グリセロール、50μg/ml BSA、0.5μg/ml tRNA)で3回洗いIVVcDNA分子ライブラリーを得た。
(3)−(ii)ベイトに対する相互作用分子の選抜工程
(I)ビオチン化FK506およびFK506ビーズの調製
FK506はペプチジルプロリルイソメラーゼである蛋白質FKBPと複合体を形成してカルシニューリンに結合し、NFATの脱リン酸化とその核内移行によるT細胞の活性化を阻害する天然から単離された免疫抑制剤である。FKBPの中でも12kDaのFKBP12がFK506の主な標的であるとされている。
ベイト用FK506(Sequoia Research Products社製)はまず1等量のジメチルアミノピリジン存在下で5等量の無水コハク酸とジメチルホルムアミド(DMF)中、室温で2日間室温で反応させ、カルボン酸誘導体として逆相HPLCで精製した。これをDMFに溶解し、それぞれ1等量のPyBOP(Benzotriazole−1−yl−oxy−tris−pyrrolidino−phosphonium hexafluorophosphate)、HOBt(1−Hydroxybenzotriazole hydrate)、トリエチルアミンを加えて室温で5分反応させたのちBiotin−POE3−amine(モレキュラーバイオサイエンス社製)を3等量加えて1時間反応させた。生成したビオチン化FK506を逆相HPLCで精製し、MALDI−TOF−MSで確認した。
濃度1mMのビオチン化FK506の50%エタノール水溶液16μlをTBKT(150mM KCl、50mM Tris−HCl(pH7.5)、0.2% Tween20)384μlに加えて撹拌し、MAGNOTEX−SA(Takara社製)100μl相当に加えて室温で30分混合した。ビーズをTBKT150μlで5回、FK506 Binding buffer(150mM KCl、50mM Tris−HCl(pH7.5)、0.1% Tween20、1mM EDTA、1mM DTT)300μlで3回洗ってFK506ビーズを調製した。ビオチン化FK506の代わりにBiotin−POE3−amineを使って同様にビオチンビーズを調製した。
(II)IVVcDNA分子とベイトとの接触および結合体の取得
上記(3)−(i)で得たIVVcDNAライブラリー30μgを、3×FLAG peptideをTBK溶液(150mM KCl、50mM Tris−HCl(pH7.5))40μlで3回溶出した。この溶液に各種原液を加え、最終量400μl、最終濃度150mM KCl、50mM Tris−HCl(pH7.5)、0.1% Tween20、1mM EDTA、1mM DTT、0.5μg/ml tRNA、50μg/ml BSAとした。これを上記(I)で得たビオチンビーズと合わせて室温で1時間静かに混合したのち、上清を上記(I)で得たFK506ビーズと合わせて室温で2時間静かに混合した。
この溶液中のビーズを200μlの上記FK506 Binding bufferで5回、200μlの上記FK506 Washing buffer(FK506 Binding bufferにエタノールを1%加えたもの)で5回洗浄し、100μMのFK506溶液(FK506 Binding bufferに溶かしたもの)を50μl加えて室温で1時間懸濁させた。上清にRNase H溶液(TOYOBO社製)を2μl、10μg/ml RNase A溶液を10μl加えて室温で30分反応させ、残ったDNA鎖から成る分子をエタノール沈殿で回収し、20μlのNuclease Free水に懸濁して再ライブラリー化のためのPCRの鋳型として調製した。
(3)−(iii)選択されたIVV分子からなるIVVcDNA分子ライブラリー作製
上記(3)−(ii)で得られたFK506と相互作用するタンパク質を含むIVVcDNA分子ライブラリーから、該タンパク質をコードするDNA部分の増幅を行った。PCRは、10μlの反応系で、プライマー(配列番号27、および28)を用いて、上記で得られたIVVcDNA分子を含む溶出液1μlを鋳型とし、94℃で2分、18サイクル(98℃で10秒、60℃で30秒、68℃で5分を1サイクルとする)、68℃で3分の反応を行った(1st PCR)。次に、このPCR産物を鋳型とし、転写プロモーターやスペーサー鎖とのアニーリング配列を含むプライマー(配列番号7、および8)を用いて同様にPCRを行った(2nd PCR)。スクリーニング初回あるいは、回収量が増加するまでは、溶出画分全て、またはダイバーシティを維持しつつ再ライブラリ化することが望ましい。
上記で作製したIVVcDNAライブラリーのタンパク質部分をコードするDNAを反応液50μlあたり1〜2μg加え、RNA合成キットRibomax Large Scale RNA Production System(Promega社製)を使ってmRNAに転写した。翻訳効率をあげるためにキャップアナログ(RNA Capping Analog、Gibco BRL社製)を最終濃度が7.2mMになるように加え、mRNAの5’側を修飾した。
さらに、上記で作製したmRNA鎖とT−splint5.9FAを割合(モル比)が1:1.2から1:3.0となるようにT4 RNA ligase buffer(50mM Tris−HCl、pH7.5、10mM MgCl2、10mM DTT、1mM ATP)に溶解し、ジメチルスルホキシドを最終濃度5%になるように加えた。この溶液をPCR装置上94℃で加熱し25℃まで10分かけて冷却することでアニーリングした。T4 RNA ligase(Takara社製)を至適量加えて25℃で約1時間反応させた。ライゲーション産物をRneasy Mini Kit(QIAGEN社製)を使って精製し、IVVcDNAライブラリー(以下、これを「濃縮IVVcDNAライブラリー」と称することがある)とした。
(3)−(iv)シークエンス解析による選択されたIVV分子の同定
上記(3)−(iii)の工程を何回か繰り返し、得られたIVVcDNAライブラリーをゲル電気泳動により分画した際に、いくつかの単一なバンドを形成した場合、これをクローニングしシークエンス解析することによりベイトと相互作用するタンパク質が同定される。本実施例では、上記(iii)の工程を7回および8回繰り返した後、IVVcDNAライブラリーのタンパク質部分をコードするDNAを、ウレア変性PAGEにて泳動し、スペーサーに導入してある蛍光(Fluoroscein)を使って、Molecular Imager(Bio Rad社製)で画像化した。このスクリーニングの1ラウンドから8ラウンドまでの結果を図11に示す。ここで、濃縮されているラウンド7および8のバンドとその周辺を、分画して精製したものをクローニングした。クローニングは、DNAを精製し、pGEM−Teasyベクター(プロメガ社製)にライゲーションして行った。
次に、インサートを含んでいるコロニーからプラスミドを抽出し、シークエンス解析を行った。約150クローンをシークエンス解析し、得られた塩基配列Blast検索によって同定した。この結果、FKBP12のほぼ全長に相当する配列がラウンド7で40.3%(64/159)、ラウンド8で80.7%(121/150)得られた。他にFKBP12のホモログ由来と推測されるシークエンスがラウンド7とラウンド8で1つずつ確認された。
(4)各ラウンドにおけるFKBP12を含むIVV分子数の測定
常法に従って、サイバーグリーンをもちいた定量PCR法(SYBER GREEN Master MiX:ABI社製)によって、各ラウンドのFKBP12を含むIVV分子の存在量を定量した。ベイトに対して、内因性のネガティブコントロールとして、βActinを指標とした。定量PCR法のテンプレートしては、1ラウンド以降は、再ライブラリー化した際の1st PCR産物あるいは2nd PCR産物を用い、最初のIVVcDNAライブラリーとしては、最初のIVVcDNAライブラリーを、スペーサーに導入してある逆転写プライマー配列を利用して、SuperScript III Reverse Transcriptase(Invitrogen社製)を用いて逆転写し、その後、RNaseH(TOYOBO社製)処理したものをプライマー除去剤(Primer Remover、Edge Biosystems社製)を使って精製し、Nuclease Free水に溶解したものを鋳型として、再ライブラリー化と同様にPCRしたものを鋳型とした。また、同定された遺伝子の定量は、FKBP12は配列番号9および10のプライマー、b−Actinは配列番号25および26の配列を有するプライマーを用いて行った。この結果を図12に示す。図中、四角のグラフはFKBPを含むIVV分子数を示し、三角はb−Actinを含むものを示し、いずれもライブラリー10ng中の存在量を示した。図から明らかなように、ラウンドが重なるごとに、FKBP12を含むIVV分子数が増加しており、本実施例のスクリーニングにより、FK506と相互作用するタンパク質を含むIVV分子が濃縮されていることがわかった。
[実施例9] IVV調製用翻訳鋳型分子のDNA2本鎖化
上記実施例8で得られたFKBP12をコードするDNAを含むシークエンス解析用ベクターを鋳型として、配列番号29および30に記載のプライマーを用いたPCRを行った。このDNAを実施例8(2)に記載の方法と同様にmRNAとT−splint5.9FAの結合体を作製し、さらにT−splint5.9FAに導入してある逆転写プライマー配列を利用して、SuperScript III Reverse Transcriptase(Invitrogen社製)を用いて逆転写した。
得られたmRNA/cDNA−T−splint5.9FA結合体2pmolを実施例5のmRNA分解の方法により処理し、cDNA−T−splint5.9FA結合体を得た。これを5‘プライマー(配列番号29)とともにEX Taq(TAKARA社製)の反応液10μlに溶解した。PCR装置中で72℃または84℃で1分間加熱変性し、さらに72℃で2分間伸張反応を行った。生成物を尿素変性下および非変性下でポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離し、T−Splint5.9FAのフルオレセインに由来する蛍光およびVistra Green染色で検出した。この結果を図13に示す。図中、レーン1は、FKBP12のmRNA、レーン2はmRNAとT−Splint5.9FAの結合体、レーン3はmRNA/cDNA−T−splint5.9FA結合体、レーン4はmRNA/cDNA−T−splint5.9FA結合体をRNaseAとRNaseHで処理したもの、レーン5から7は2本鎖DNA化したPCR反応液であり、レーン5は変性を72℃で行ない、プライマー濃度が鋳型の5等量のもの、レーン6は変性を72℃で行い、プライマー濃度が鋳型の1.25等量のもの、またレーン7は変性を84℃で行ない、プライマー濃度が鋳型の1.25等量であるものを示す。図13から明らかなように、変性PAGEでは、T−Splint5.9FA由来の蛍光で検出したDNA鎖はレーン5〜7でいずれも主に1本であるのに対し、Vistra Greenで検出するとやや分子量の小さいものに由来するバンドを加えて主に2本になっていることから、上記の反応でcDNA−T−Splint5.9FAの連結物のcDNA部分が2本鎖DNAとなっていることがわかった。
本発明は、1本鎖核酸の特定のヌクレオチドどうしを連結することができるため、様々な構造を有する核酸を構築することができる。このことは、例えば、複雑な構造を有するcDNAライブラリーの構築等に有用である。また、本発明の核酸構築物は、タンパク質−核酸連結物の鋳型として構築することができる。タンパク質−核酸連結体は、タンパク質−物質間の相互作用解析等の強力なツールであるが、タンパク質(−核酸連結体)ライブラリーの分子の多様性が重要であるため、該連結体の形成効率が高い製造方法が必要とされている。本発明の核酸構築物を鋳型とすると、連結部分に突出部がないため、タンパク質−核酸連結体の形成効率が著しく高くなり、多様性の高いライブラリーが構築される。
本発明による1本鎖核酸の連結方法は、1本鎖核酸中の特定のヌクレオチドと他方の1本鎖核酸中の特定のヌクレオチドを結合し、その一方を化学結合していない他の1本鎖核酸とアニーリングし、アニーリングされていない他方の1本鎖核酸を近傍効果により化学結合していない1本鎖核酸と連結することを可能にする。本発明の方法で形成された核酸構築物は、通常の2本鎖核酸より立体的に大きな部分を有さず、ステムループ構造やソラレン架橋部位のような突出構造を有さない。この効果により、得られた核酸構築物を翻訳すると、翻訳後の高塩濃度化の操作を行わずに、タンパク質−核酸連結物を高効率で製造することができる利点を有する。
また、本発明の方法は上記の核酸構築物以外にも1本鎖核酸どうしを連結することができ、例えば、様々な複雑な構造を有する核酸ライブラリーを作製すること等も可能である。これは、タンパク質工学や進化分子工学において極めて有用な技術となる。
本出願は、2003年9月8日付の日本特許出願(特願2003−315385)に基づく優先権を主張する出願であり、その内容は本明細書中に参照として取り込まれる。また、本明細書にて引用した文献の内容も本明細書中に参照として取り込まれる。
本発明による1本鎖核酸の連結方法は、1本鎖核酸中の特定のヌクレオチドと他方の1本鎖核酸中の特定のヌクレオチドを結合し、その一方を化学結合していない他の1本鎖核酸とアニーリングし、アニーリングされていない他方の1本鎖核酸を近傍効果により化学結合していない1本鎖核酸と連結することを可能にする。本発明の方法で形成された核酸構築物は、通常の2本鎖核酸より立体的に大きな部分を有さず、ステムループ構造やソラレン架橋部位のような突出構造を有さない。この効果により、得られた核酸構築物を翻訳すると、翻訳後の高塩濃度化の操作を行わずに、タンパク質−核酸連結物を高効率で製造することができる利点を有する。
また、本発明の方法は上記の核酸構築物以外にも1本鎖核酸どうしを連結することができ、例えば、様々な複雑な構造を有する核酸ライブラリーを作製すること等も可能である。これは、タンパク質工学や進化分子工学において極めて有用な技術となる。
本出願は、2003年9月8日付の日本特許出願(特願2003−315385)に基づく優先権を主張する出願であり、その内容は本明細書中に参照として取り込まれる。また、本明細書にて引用した文献の内容も本明細書中に参照として取り込まれる。
Claims (29)
- 第1の1本鎖核酸と第2の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸とから構成される核酸構築物であって、第1の1本鎖核酸と第2の1本鎖核酸とは少なくとも一部がアニーリングしており、第1の1本鎖核酸及び第2の1本鎖核酸はそれぞれ第3の1本鎖核酸と連結している核酸構築物の製造方法であって、
(i)第1の1本鎖核酸を構成するいずれかのヌクレオチドと、第3の1本鎖核酸を構成するいずれかのヌクレオチドであって、上記1本鎖核酸の各々同じ末端側に存在するヌクレオチドをリンカーを介して化学結合させることにより、第1の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸とを連結する工程、
(ii)第1の1本鎖核酸と第2の1本鎖核酸をアニーリングさせる工程、及び
(iii)前記工程(i)及び(ii)により得られた連結物をリガーゼ処理することにより第2の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸とを連結する工程、
を含むことを特徴とする上記の方法。 - リンカーが架橋剤であり、第1の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸の各々同じ末端側に存在するいずれかのヌクレオチドに、上記架橋剤により認識される官能基を付加し、該官能基と架橋剤を化学結合することにより結合する、請求項1に記載の方法。
- リンカーが、第1の1本鎖核酸の片方の末端のヌクレオチドと、第3の1本鎖核酸の同じ側の末端から0〜10塩基内側のヌクレオチドとの結合を介するものである、請求項1または2に記載の方法。
- 第2の1本鎖核酸または第1の1本鎖核酸のいずれか一方が、タンパク質の発現制御配列およびコーディング配列を有するRNAを含み、その3’末端側の塩基配列が、もう一方の1本鎖核酸とアニーリング可能な塩基配列であり、かつ、もう一方の1本鎖核酸は、核酸誘導体を末端に有するスペーサーが枝分かれした状態で結合しているものである、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- 核酸誘導体が、ピューロマイシン、3’−N−アミノアシルピューロマイシンアミノヌクレオシド、3’−N−アミノアシルアデノシンアミノヌクレオシドの化学構造骨格を含む化合物又はそれらの類縁体である、請求項4に記載の方法。
- スペーサーが、高分子からなるものである、請求項4または5に記載の方法。
- スペーサーが、主鎖の原子数で10以上の長さである、請求項4から6のいずれかに記載の方法。
- 第3の1本鎖核酸が、標識物質を含む、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
- 請求項1から8のいずれかに記載の方法により製造される核酸構築物。
- 第1の1本鎖核酸と第2の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸とから構成され、第1の1本鎖核酸と第2の1本鎖核酸とは少なくとも一部がアニーリングしており、第1の1本鎖核酸及び第2の1本鎖核酸はそれぞれ第3の1本鎖核酸と連結している核酸構築物であって、第1の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸の各々同じ末端側に存在するヌクレオチドがリンカーを介して化学結合しており、かつ第2の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸の末端のヌクレオチドが化学結合している、上記の核酸構築物。
- リンカーが架橋剤であり、第1の1本鎖核酸と第3の1本鎖核酸の各々同じ末端側に存在するいずれかのヌクレオチドに、上記架橋剤により認識される官能基を付加し、該官能基と架橋剤が化学結合することにより結合している、請求項10に記載の核酸構築物。
- リンカーが、第1の1本鎖核酸の片方の末端のヌクレオチドと、第3の1本鎖核酸の同じ側の末端から0〜10塩基内側のヌクレオチドとの結合を介するものである、請求項10または11に記載の核酸構築物。
- 第2の1本鎖核酸または第1の1本鎖核酸のいずれか一方が、タンパク質の発現制御配列およびコーディング配列を有するRNAを含み、その3’末端側の塩基配列が、もう一方の1本鎖核酸とアニーリング可能な塩基配列であり、かつ、もう一方の1本鎖核酸は、核酸誘導体を末端に有するスペーサーが枝分かれした状態で結合しているものである、請求項10〜12のいずれかに記載の核酸構築物。
- 核酸誘導体が、ピューロマイシン、3’−N−アミノアシルピューロマイシンアミノヌクレオシド、3’−N−アミノアシルアデノシンアミノヌクレオシドの化学構造骨格を含む化合物又はそれらの類縁体である、請求項13に記載の核酸構築物。
- スペーサーが、高分子からなるものである、請求項13または14に記載の核酸構築物。
- スペーサーが、主鎖の原子数で10以上の長さである、請求項13〜15のいずれかに記載の核酸構築物。
- 第3の1本鎖核酸が標識物質を含む、請求項13〜16のいずれかに記載の核酸構築物。
- 請求項4〜8のいずれかに記載の方法により製造される核酸構築物または13〜17のいずれかに記載の核酸構築物をタンパク質翻訳系により翻訳し、コーディング配列がコードするタンパク質と該核酸構築物とを核酸誘導体を介して結合させることを含む、タンパク質−核酸連結体の製造方法。
- 請求項4〜8のいずれかに記載の方法により製造される核酸構築物または13〜17のいずれかに記載の核酸構築物を60〜90℃で加熱した後に冷却してから、タンパク質翻訳系により翻訳する、請求項18に記載のタンパク質−核酸連結体の製造方法。
- 請求項13〜17のいずれかに記載の核酸構築物の核酸誘導体に、コーディング配列がコードするタンパク質が結合している、タンパク質−核酸連結体。
- 請求項20に記載のタンパク質−核酸連結体のmRNA鎖を逆転写することを含む、DNA−RNA−タンパク質連結体の製造方法。
- 請求項20に記載のタンパク質−核酸連結体のmRNA鎖にDNAがアニーリングしている、DNA−RNA−タンパク質連結体。
- 請求項22に記載のDNA−RNA−タンパク質連結体のRNAを分解し、DNAを鋳型にポリメラーゼ反応をすることにより得られる2本鎖DNA−タンパク質連結体。
- 請求項20〜23のいずれかに記載のタンパク質−核酸連結体を、第3の1本鎖核酸が有する標識物質により分離精製することを含む、タンパク質−核酸連結体の精製方法。
- 請求項20〜23のいずれかに記載のタンパク質−核酸連結体または請求項24の精製方法により得られたタンパク質−核酸連結体の混合物の中から、タンパク質の機能を指標として所望のタンパク質−核酸連結体を選択することを含む、所望のタンパク質−核酸連結体、所望のタンパク質、所望のタンパク質をコードする塩基配列、または所望のタンパク質をコードするRNAの取得方法。
- 請求項25で選択されたタンパク質−核酸連結体のコーディング配列を含むDNAを増幅することを含む、所望のタンパク質をコードするDNAの取得方法。
- 請求項26で得られたDNAを転写して得られたmRNAをコーディング配列として、請求項4〜8のいずれかに記載の方法、請求項18又は19に記載の方法、請求項24に記載の方法、請求項25に記載の方法、および請求項26に記載の方法を繰り返すことを含む、所望のタンパク質−核酸連結体、所望のタンパク質、所望のタンパク質をコードする塩基配列、所望のタンパク質をコードするRNA、または所望のタンパク質をコードするDNAの取得方法。
- 2本の核酸の同じ末端側をリンカーを介して結合する方法であって、該核酸の結合しようとする各ヌクレオチドに該架橋剤により認識される官能基を付加し、これらを該架橋剤で結合させることを特徴とする方法。
- 請求項28に記載の方法により結合された2本の核酸を含む核酸構築物。
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