JP2004097213A - 核酸および/またはタンパク質の選択方法 - Google Patents

核酸および/またはタンパク質の選択方法 Download PDF

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Abstract

【課題】RNA−DNA結合体のRNAをタンパク質に翻訳させた核酸−タンパク質複合体、及び核酸−タンパク質複合体を用いたタンパク質の効率的な選択方法等の提供。
【解決手段】(1)(a)一本鎖RNAの3’末端とアニーリング可能なDNA配列を3’末端側に含む一本鎖DNA又はその誘導体の調製(b)該一本鎖DNA又はその誘導体と一本鎖RNAとのアニーリング(c)該アニーリング産物の一本鎖RNAの3’末端と一本鎖DNA又はその誘導体の5’末端と連結しRNA−DNA結合体を調製する工程、(2)RNA−DNA結合体のRNAをタンパク質に翻訳しRNAと該RNAにコードされたタンパク質から成る核酸−タンパク質複合体を構築する工程、(3)核酸−タンパク質複合体を選抜する工程、および、(4)選択された核酸−タンパク質複合体の核酸部分を増幅する工程とを含むことを特徴とする核酸および/またはタンパク質の選択方法。
【選択図】   なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、核酸および/またはタンパク質の選択方法に関し、さらに詳しくは、標的mRNAとそれがコードするタンパク質との連結体を用いる核酸および/またはタンパク質の選択方法、並びに、タンパク質と被験物質との相互作用の検出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
1990年に開発されたファージディスプレイ法(Scott JK &Smith GP, (1990) Science, 249; 386−390)は、様々なタンパク質を大腸菌ファージ表面に提示して特定のターゲット分子に特異的に結合するタンパク質を迅速に見い出すことができる進化分子工学的手法の一つである。ファージディスプレイ法の実用化により、この手法を利用して様々な応用が始まった。また、大腸菌等の細胞表面の膜タンパク質を利用してこのようなランダムな配列のペプチドを提示し、機能ペプチドを取得する方法も開発された(Lu, Z. et al. (1995) Bio/Technology 13: 366−372)。
これらの方法はいずれも機能ペプチドを取得する有効な方法であるが、生細胞を用いるため、提示するペプチド配列に片寄りが生じるなどの問題点も有している。
【0003】
一方、1997年に開発されたIn vitro virus法は、無細胞翻訳系中においてmRNAとそれによりコードされたタンパク質をmRNAの3’末端側にピューロマイシン付スペーサを介して連結させる方法である(Nemoto, N. et al.  (1997) FEBS Lett. 414, 405−408, Roberts, R. W. et al (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94, 12297−12302)。このようにして作成されたIn vitro virus virion(mRNAとタンパク質との結合体;以下これを単に「核酸−タンパク質複合体」と称することがある)では、無細胞翻訳系でタンパク質を発現させるために、生細胞を用いた場合に問題となる配列の片寄りが生じにくく、また、1回でスクリーニングするライブラリーサイズが大きいという利点を有する。しかしながら、下記するような幾つかの問題点も有している。
【0004】
ファージディスプレイ法又は大腸菌の表面にペプチド等を提示する方法の場合には、培地中からのタンパク質又はペプチドの精製が容易であるが、無細胞翻訳系は細胞を破砕した中からの抽出物であるため、RNA分解酵素やDNA分解酵素等のような夾雑物の含有量が極めて多い。また、In vitro virus法で作製されるIn vitro virus virionは、核酸とタンパク質が結合した形態であるが、このうちの核酸部分は遺伝子情報をコードしているため分解されることで大きなダメージを受ける。従って、In vitro virus法では、in vitro virus virionを無細胞翻訳系から迅速に分離することが重要な課題である。また、In vitro virus virionのmRNAはなるべく早くDNAに転化して分解されにくくすることが望ましい。しかし、無細胞翻訳系の中での逆転写は困難であるため、無細胞翻訳系からin vitro virus virionを迅速に分離することが望ましい。
【0005】
従来のIn vitro virus virionの精製技術としては大きく2つに分けることができる。一つは、poly Aを含むpuromycinスペーサを利用してoligo dTで精製する方法(RW Roberts & JW Szostack (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94, 12297−12302)であり(図1の(1)を参照)、もう一つは、遺伝子の両端にFLAGとHis×6タグを連結させておき翻訳後、FLAG抗体及びNi−NTAカラムで精製するやり方である(AD Keefe & JW Szostak, (2001) Nature, 410, 715−718)(図1の(2)を参照)。これらのスペーサによって精製は可能であるが、invitro virus virionを安定化するために逆転写することが難しい。
【0006】
そこで、逆転写可能なT型のpuromycinスペーサが提案された(I Tabuchi, et al. (2001) FEBS lett. 508(3); 309−312)(図1の(3)を参照)。このようなT型のpuromycinスペーサを用いることにより、逆転写が可能になりin vitro virus virionをDNA化して安定化することができる。しかし、この場合、mRNAとスペーサーの結合効率が悪いという問題点や、精製に際し、図1の(1)の場合のようにスペーサを用いて精製することができない等の問題点があった。また、図1の(2)の場合のようにタンパク質側で精製することは可能であるが、mRNAにアフィニティータグをコードさせることが必要になる。
【0007】
本発明者らは、上記した従来技術の問題点を解消することができるin vitro virus virionを作成するための一本鎖DNA又はその誘導体等の核酸構築物、該核酸構築物を用いて調製されたin vitro virus genome(RNA−DNA結合体)、該RNA−DNA結合体のRNA部分を翻訳して得られるin vitro virus virion(核酸−タンパク質結複合体)等を先に提案した(特願2002−012820号および特願2002−031779号明細書参照)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、in vitro virus virionを効率よく構築可能な構造を有するRNA−DNA結合体のRNAをタンパク質に翻訳させた核酸−タンパク質複合体、及び煩雑な操作をすることなくin vitro virus genomeにタグを付け、in vitro virus virionの精製に有用で、かつ支持体に固定化してプロテインチップを作成する際においても有用な核酸−タンパク質複合体を用いる、所望の機能を有するタンパク質の効率的な選択方法等の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、一本鎖RNAの3’末端側の配列とアニーリングすることができる一本鎖DNA配列の3’末端に、該一本鎖RNAの逆転写のためのプライマー配列と、核酸誘導体を末端に有するスペーサー配列とが枝分かれした状態で結合したT字型の構造を有する一本鎖DNA誘導体(以下、T−Spacerとも称する)で、5’末端側に親和性物質と制限酵素認識部位を導入したT−Spacerを用いることにより、一本鎖RNAとそれがコードするタンパク質との結合体を簡単に構築することができ、さらにこの核酸とタンパク質との結合体を用いることにより効率的に所望の機能を有するタンパク質を選択できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
【0010】
即ち、本発明によれば、(1)(a)一本鎖RNAの3’末端側の配列とアニーリングすることができる一本鎖DNA配列を3’末端側に含み、かつその3’末端側に核酸誘導体が結合している一本鎖DNA又はその誘導体を調製し、(b)該一本鎖DNA又はその誘導体と一本鎖RNAとをアニーリングさせ、(c)該アニーリング産物の一本鎖RNAの3’末端と一本鎖DNA又はその誘導体の5’末端とを連結させてRNA−DNA結合体を調製する調製工程、(2)調製工程で得られたRNA−DNA結合体をタンパク質翻訳系に導入してRNAをタンパク質に翻訳させてRNAと該RNAによりコードされるタンパク質から成る核酸−タンパク質複合体を構築する構築工程、(3)構築工程で得られた核酸−タンパク質複合体を選抜する選抜工程、および、(4)選抜工程で選択された核酸−タンパク質複合体の核酸部分を増幅する増幅工程とを含むことを特徴とする核酸および/またはタンパク質の選択方法が提供される。
【0011】
本発明の好ましい態様によれば、増幅工程で得られた核酸を、一本鎖RNAとしてRNA−DNA結合体を調製する調製工程に供し、(1)調製工程、(2)構築工程、(3)選抜工程、および、(4)増幅工程を繰り返し行うことを特徴とする上記方法が提供される。
【0012】
また、本発明の別の態様によれば、(1)(a)一本鎖RNAの3’末端側の配列とアニーリングすることができる一本鎖DNA配列を3’末端側に含み、かつその3’末端側に核酸誘導体が結合している一本鎖DNA又はその誘導体を調製し、(b)該一本鎖DNA又はその誘導体と一本鎖RNAとをアニーリングさせ、(c)該アニーリング産物の一本鎖RNAの3’末端と一本鎖DNA又はその誘導体の5’末端とを連結させてRNA−DNA結合体を調製する調製工程、(2)調製工程で得られたRNA−DNA結合体をタンパク質翻訳系に導入してRNAをタンパク質に翻訳させてRNAと該RNAによりコードされるタンパク質から成る核酸−タンパク質複合体を構築する構築工程、(3)構築工程で得られた核酸−タンパク質複合体を被験物質との相互作用に基づいて選抜する選抜工程、(4)選抜工程で選択された核酸−タンパク質複合体の核酸部分に変異を導入する変異導入工程、および、(5)変異導入工程で得られた核酸部分を増幅する増幅工程とを含むことを特徴とする核酸および/またはタンパク質の選択方法が提供される。
【0013】
本発明の好ましい態様によれば、増幅工程で得られた核酸を、一本鎖RNAとしてRNA−DNA結合体を調製する調製工程に供し、(1)調製工程、(2)構築工程、(3)選抜工程、(4)変異導入工程、および、(5)増幅工程を繰り返し行うことを特徴とする上記方法が提供される。
【0014】
さらに、本発明の別の態様によれば、(1)(a)一本鎖RNAの3’末端側の配列とアニーリングすることができる一本鎖DNA配列を3’末端側に含み、かつその3’末端側に核酸誘導体が結合している一本鎖DNA又はその誘導体を調製し、(b)該一本鎖DNA又はその誘導体と一本鎖RNAとをアニーリングさせ、(c)該アニーリング産物の一本鎖RNAの3’末端と一本鎖DNA又はその誘導体の5’末端とを連結させてRNA−DNA結合体を調製する調製工程、(2)該RNA−DNA結合体をタンパク質翻訳系に導入してRNAをタンパク質に翻訳させてRNAと該RNAによりコードされるタンパク質から成る核酸−タンパク質複合体を構築する構築工程、および、(3)構築工程で得られた核酸−タンパク質複合体と被験物質との相互作用を調べる検定工程とを含むことを特徴とするタンパク質と被験物質との相互作用の検出方法が提供される。
【0015】
本発明において、好ましくは、一本鎖DNA又はその誘導体は、3’末端に核酸誘導体がスペーサーを介して結合している構造を有するものである。
本発明において、好ましくは、一本鎖DNA又はその誘導体は、3’末端に、一本鎖RNAの逆転写のためのプライマーを有し、かつ核酸誘導体を末端に有するスペーサーが枝分かれした状態で結合している構造を有するものである。
本発明において、好ましくは、一本鎖DNA又はその誘導体は、(i)該一本鎖DNA配列の3’末端に、該一本鎖RNAの逆転写のためのプライマー配列と、核酸誘導体を末端に有するスペーサーとが枝分かれした状態で結合しており、(ii)該一本鎖DNA配列の5’末端側に親和性物質が結合している構造を有するものである。
さらに好ましくは、一本鎖DNA又はその誘導体は、(i)該一本鎖DNA配列の3’末端に、該一本鎖RNAの逆転写のためのプライマー配列と、核酸誘導体を末端に有するスペーサーとが枝分かれした状態で結合しており、(ii)該一本鎖RNAとアニーリングしない5’末端側は、ループ領域を介して互いに相補的な二本鎖配列を形成しており、(iii)該ループ領域に親和性物質が結合している構造を有するものであるか、又は、(i)該一本鎖DNA配列の3’末端に、該一本鎖RNAの逆転写のためのプライマー配列と、核酸誘導体を末端に有するスペーサーとが枝分かれした状態で結合しており、(ii)該一本鎖RNAとアニーリングしない5’末端側は、相補DNA鎖と化学的に結合して互いに相補的な二本鎖配列を形成しており、(iii)該相補DNA鎖の3’末端に親和性物質が結合している構造を有するものである。
【0016】
好ましくは、二本鎖配列中には、制限酵素認識部位が存在する。
好ましくは、核酸誘導体は、ピューロマイシン、3’−N−アミノアシルピューロマイシンアミノヌクレオシド、3’−N−アミノアシルアデノシンアミノヌクレオシドの化学構造骨格を含む化合物又はそれらの類縁体である。
【0017】
好ましくは、一本鎖RNAは、mRNA又はmRNAライブラリーである。
好ましくは、一本鎖RNAは、(1)プロモーター配列、(2)翻訳の際にリボソームによって認識されるDNA配列、及び (3)目的タンパク質をコードする配列を有するものである。
好ましくは、スペーサーは、高分子物質である。
好ましくは、親和性物質は、ビオチン又はポリA配列である。
好ましくは、一本鎖RNAの3’末端と一本鎖DNA又はその誘導体の5’末端との連結を、RNAリガーゼを用いて行なう。
好ましくは、翻訳は、無細胞翻訳系で行なわれる。
好ましくは、増幅工程は、核酸−タンパク質複合体の核酸部分がRNAとDNAから成る場合、RNA分解酵素処理を含む。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態についてより詳細に説明する。
(1)RNA−DNA結合体を調製する調製工程
(1−1)一本鎖DNA又はその誘導体
本発明で用いる一本鎖DNA又はその誘導体は、一本鎖RNAとそれがコードするタンパク質との結合体を作製するために使用するものであり、その構造は、一本鎖RNAの3’末端側の配列とアニーリングすることができる一本鎖DNA配列を3’末端側に含み、かつその3’末端側に核酸誘導体が結合している構造を有する。該一本鎖DNA又はその誘導体は、該一本鎖DNA配列の3’末端に、該一本鎖RNAの逆転写のためのプライマー配列と、核酸誘導体を末端に有するスペーサーとが枝分かれした状態で結合している構造を有するものが好ましく、さらに該一本鎖DNA配列の5’末端側に親和性物質が結合している構造を有するものも好ましい。
【0019】
本発明で用いる一本鎖DNA誘導体の一例の模式図を図2に示す。図2に示す一本鎖DNA誘導体は、固定化したin vitro virus virionを固相(支持体)上から切り離すための制限酵素認識部位をもつ2本鎖DNAと、固相(支持体)に結合させるためのビオチンまたはpoly Aを有している。なお、図2は、一本鎖DNA誘導体に一本鎖RNA(mRNA)をアニーリングさせた状態を示している。
上記の通り、in vitro virus virionの精製に関して、polyAを介しdTカラムによって精製する方法、HisタグやFLAG等を構造遺伝子領域に連結してタンパク質側で精製する方法がある。本発明の一本鎖DNA誘導体(T−Spacer)においては、上記の2つの方法を併用することが可能である。
親和性物質をin vitro virus virionの精製に用いる例としては、親和性物質としてpolyAを用いる場合、dTカラムによって精製する方法や、親和性物質としてHis−tagを用いる場合にはNiを用いて精製する方法、並びに親和性物質としてFLAGペプチドを用いる場合にはこの抗体を用いて精製する方法等がある。
【0020】
本発明で用いる一本鎖DNA又はその誘導体の具体例の構造を図3に示す。一本鎖DNA配列の5’末端側の構造としては、一本鎖DNA配列がループ領域を介して互いに相補的な二本鎖配列を形成しており、該ループ領域に親和性物質が結合しており、該二本鎖配列中に制限酵素認識部位が存在している構造(図3のT−splint1FB、T−splint4FB)、あるいは、相補DNA鎖と化学的に結合して互いに相補的な二本鎖配列を形成しており、該相補DNA鎖の3’末端に親和性物質が結合しており、該二本鎖配列中に制限酵素認識部位が存在している構造(図3のT−splint3FB、T−splint3FA、T−splint6FB、T−splint6FA)などが挙げられる。
【0021】
なお、ここで言う「化学的に結合」の具体例としては、Psoralenを末端に有する核酸と別の核酸とを混合して、紫外線を照射することによって両核酸を化学的に結合する場合、架橋剤により結合する場合、RNAリガーゼなどによって結合する場合、あるいは前述のY−ライゲーションによって結合する場合などが挙げられる。架橋剤として具体的には、N−(6−マレイミドカプロイルオキシ)スクシイミド等の2価性試薬が挙げられる。
【0022】
以下、本発明で用いる一本鎖DNA又はその誘導体の各構成要素について説明する。
(RNAに相補的な一本鎖DNA配列)
本発明で用いる一本鎖DNA又はその誘導体は、一本鎖RNAの3’末端側の配列とアニーリングすることができる一本鎖DNA配列を3’末端側に含む。これにより、本発明では、互いに相補的な配列を有する一本鎖RNAと一本鎖DNAとを好適な条件下でアニーリングすることにより両者をアニーリングさせ、次いで、RNAリガーゼで処理することにより両者を効率よく連結することができる。
【0023】
一本鎖RNAの3’末端側の配列とアニーリングすることができる一本鎖DNA配列とは、互いにアニーリングすることができる配列であり、RNA配列に相補的な配列を有するDNA配列を言う。このような相補的な配列の長さは、両鎖がアニーリングすることができるのに十分な長さであれば特に限定されないが、一般的には10から50塩基、より好ましくは10から30塩基程度である。
【0024】
本発明で用いる一本鎖DNAとしては、天然由来のDNAから作成した一本鎖DNAでもよいし、遺伝子組換え技術により作成した一本鎖DNAでもよいし、化学合成により作成した一本鎖DNAでもよい。
また、一本鎖DNAの構成要素である核酸の全てがデオキシリボヌクレオチドである必要はなく、その一部のみがDNAタイプであるものでもよく、それ以外の領域は、リボヌクレオチドでもデオキシリボヌクレオチドでもPNA(ペプチド核酸)タイプでもよい。また、ペプチドでも糖などが結合したものでもよい。
【0025】
本発明で用いる一本鎖DNAの長さは、特に限定されないが、一般的には、数塩基から数十キロ塩基程度であり、例えば10塩基から500塩基程度であり、より好ましくは20塩基から200塩基程度である。
【0026】
(プライマー配列)
本発明の一本鎖DNA又はその誘導体の一本鎖DNA配列の3’末端には、RNAの逆転写のためのプライマー配列が結合している。
本明細書で言う「一本鎖RNAの逆転写のためのプライマー配列」とは、一本鎖DNA又はその誘導体(T−Spacer)と一本鎖RNAとのライゲーションにより得られるRNA−DNA結合体を逆転写反応系に導入した場合に、逆転写反応を開始するためのプライマー配列として作用する塩基配列を意味し、一般的には、一本鎖RNAの配列と相補的な配列から構成されることが好ましい。
【0027】
このようなRNAの逆転写のためのプライマーを有することにより、本発明の一本鎖DNA又はその誘導体を用いればin vitro virus virionのRNAのDNA化も容易に可能である。即ち、本発明の一本鎖DNA又はその誘導体は、逆転写プライマーの役割も持つため、in vitro virus virionをカラム等の固相に固定化する等してバッファー交換後、ただちに逆転写してRNAをDNA化し、invitro virus virionを安定化することができる。従来のin vitro virus virionではタンパク質翻訳系の反応液中から精製できず、しかも外から添加した逆転写プライマーを一本鎖RNAにハイブリダイゼーションさせるために温度を上げることが必要であったが、これは連結させたタンパク質を変性させる可能性があり大きな問題となっていた。本発明の一本鎖DNA又はその誘導体では、このような問題がなく、in vitro virus virionのDNA化による安定化が容易である。
【0028】
(核酸誘導体を末端に有するスペーサー)
本発明の一本鎖DNA又はその誘導体の一本鎖DNA配列の3’末端側には、核酸誘導体を末端に有するスペーサー配列が、RNAの逆転写のためのプライマー配列と一緒に枝分かれした状態で結合していることが好ましい。
このような一本鎖DNAの誘導体を使用して無細胞タンパク質翻訳系又は生細胞中でタンパク質の翻訳を行った場合、2本鎖でリボソームを止め、核酸誘導体(例えば、ピューロマイシンなど)がリボソームのAサイトに入れることによりタンパク質と結合させることができる。
【0029】
この核酸誘導体としては、無細胞タンパク質翻訳系又は生細胞中でタンパク質の翻訳が行われた時に、合成されたタンパク質のC末端に結合する能力を有する化合物である限り限定されないが、その3’末端がアミノアシルtRNAに化学構造骨格が類似しているものを選択することができる。代表的な化合物として、アミド結合を有するピューロマイシン(Puromycin)、3’−N−アミノアシルピューロマイシンアミノヌクレオシド(3’−N−Aminoacylpuromycin aminonucleoside 、 PANS−アミノ酸)、たとえば、アミノ酸部がグリシンのPANS−Gly、アミノ酸部がバリンのPANS−Val、アミノ酸部がアラニンのPANS−Ala、その他、アミノ酸部が全ての各アミノ酸に対応するPANS−アミノ酸化合物が挙げられる。
【0030】
また、3’−アミノアデノシンのアミノ基とアミノ酸のカルボキシル基が脱水縮合して形成されるアミド結合で連結した3’−N−アミノアシルアデノシンアミノヌクレオシド(3’−Aminoacyladenosine aminonucleoside, AANS−アミノ酸)、例えば、アミノ酸部がグリシンのAANS−Gly、アミノ酸部がバリンのAANS−Val、アミノ酸部がアラニンのAANS−Ala、その他、アミノ酸部が全アミノ酸の各アミノ酸に対応するAANS−アミノ酸化合物を使用できる。
【0031】
また、ヌクレオシドあるいはヌクレオシドとアミノ酸のエステル結合したものなども使用できる。さらにまた、核酸あるいは核酸に類似した化学構造骨格及び塩基を有する物質と、アミノ酸に類似した化学構造骨格を有する物質とを化学的に結合した化合物は、すべて本発明で用いられる一本鎖DNA又はその誘導体に含まれる。
【0032】
核酸誘導体としては、ピューロマイシン、PANS−アミノ酸もしくはAANS−アミノ酸がリン酸基を介してヌクレオシドと結合している化合物がより好ましい。これらの化合物の中でピューロマイシン、リボシチジルピューロマイシン、デオキシシチジルピューロマイシン、デオキシウリジルピューロマイシンなどのピューロマイシン誘導体が特に好ましい。
【0033】
本発明では、核酸誘導体はスペーサーを介して一本鎖DNAに結合している。スペーサーとしては、ポリエチレン又はポリエチレングリコールなどの高分子物質が用いられ、好ましくはポリエチレングリコールが用いられる。スペーサーの長さは特に限定されないが、好ましくは、分子量150〜6000であるか、または主鎖の原子数は10原子から400原子であり、さらに好ましくは、分子量600〜3000であるか、または主鎖の原子数が40原子から200原子である。
【0034】
上記したような一本鎖DNA又はその誘導体は、それ自体既知の化学結合方法によって製造することができる。具体的には、リン酸ジエステル結合で合成ユニットを結合させる場合は、DNA合成機に一般的に用いられているホスホアミダイド法などにより固相合成で合成することが可能である。ペプチド結合を導入する場合は、活性エステル法などにより合成ユニットを結合させるが、DNAとの複合体を合成する場合は、両方の合成法に対応が可能な保護基が必要になる。
【0035】
(制限酵素認識部位)
本発明で用いる核酸構築物の好ましい態様においては、5’末端側には、制限酵素認識部位が存在する。5’末端側とは親和性物質に隣接する位置を意味する。制限酵素認識部位は、通常、DNAの2本鎖から構成される。このような制限酵素認識部位を導入することにより、in vitro virus virionを親和性物質から切り離すことができる。例えば、in vitro virus virionを親和性物質を介して固相に結合させている場合、in vitro virus virionを固相(支持体)から切り離すことが可能になる。即ち、親和性物質同士(例えば、ビオチン−ストレプトアビジンなど)の結合等により、支持体に強く結合したin vitro virus virionを37℃という温和な条件下で制限酵素によって切り離し精製することができる。制限酵素認識部位の配列は特に限定されず、Pvu IIなど任意の制限酵素認識配列を使用することができる。
【0036】
(親和性物質)
本発明で用いる一本鎖DNA又はその誘導体には、親和性物質が結合していてもよい。親和性物質を導入することにより、本発明の核酸構築物を作成したin vitro virus virion並びにそれを用いて作成した各種核酸構築物を固相(支持体)に容易に結合させることができる。親和性物質としては、固相(支持体)との結合に用いうるものであれば、その種類は特に限定されないが、例えば、ビオチン、ポリA、各種の抗原又は抗体、FLAG、Hisタグなどが挙げられる。親和性物質は一本鎖DNA又はその誘導体に上記したようなスペーサーを介して結合していてもよい。
【0037】
(1−2)一本鎖RNA
本発明で用いる一本鎖RNAの種類は特に限定されず、天然の組織又は細胞由来のRNAでも、DNAからインビトロで発現させたRNAでもよい。
また、一本鎖RNAの構成要素である核酸の全てがリボヌクレオチドである必要はなく、その一部のみがRNAタイプであるものでもよく、それ以外の領域は、リボヌクレオチドでもデオキシリボヌクレオチドでもPNAタイプでもよい。また、ペプチドでも糖などが結合したものでもよい。
【0038】
本発明で用いる一本鎖RNAの長さは、連結反応が可能である限り、特に限定されない。一般的には、一本鎖RNAの長さは、数十塩基から数十キロ塩基程度であり、例えば10塩基から50,000塩基程度であり、より好ましくは20塩基から10,000塩基程度である。
【0039】
本発明で用いる一本鎖RNAは、タンパク質をコードする配列を含むことが好ましく、具体的にはmRNA又はmRNAライブラリーであることが好ましい。
本発明の方法で得られるRNA−DNA結合体(in vitro virus genome)をタンパク質翻訳系に導入するような場合には、連結すべき一本鎖RNAは、(1)プロモーター配列、(2)翻訳の際にリボソームによって認識される塩基配列、及び、(3)目的タンパク質をコードする配列が含まれていることが好ましい。さらに、FLAG、Hisタグ等のタグ配列をコードする配列あるいはPCRにより増幅するための共通配列を含むことができる。
【0040】
プロモーター配列の種類は、適用する発現系に適したものを適宜選択すればよく特に限定されない。例えば、大腸菌ウイルスT7のRNAポリメラーゼによって認識されるT7プロモーター配列あるいはSP6プロモーター配列などが挙げられる。
【0041】
翻訳の際にリボソームによって認識されるDNA配列としては、翻訳の際に真核細胞のリボソームによって認識されるRNA配列(Kozak配列)に対応するDNA配列や原核細胞のリボソームによって認識されるシャイン・ダルガノ配列(Shine−Dalgarno)、オメガ配列等のtabacco mosaic virusのリボソームによって認識される配列、rabbitβ−globlin、Xenopus β−globlinあるいはbromo mosaicvirusのリボゾーム認識配列などが挙げられる。
目的タンパク質をコードする配列の種類は特に限定されず、目的に応じて適宜選択できる。
【0042】
(1−3)RNA−DNA結合体とその製造
本発明においては、上記(1−1)に記載の一本鎖DNA又はその誘導体と一本鎖RNAとをアニーリングさせ、該一本鎖DNA又はその誘導体の二本鎖領域の5’末端と一本鎖RNAの3’末端とをライゲーションさせることを特徴とする。
本発明では、互いに相補的な配列を有する一本鎖RNAと一本鎖DNAまたはその誘導体とを好適な条件下でアニーリングすることにより両者をアニーリングさせ、次いで、RNAリガーゼ処理することにより両者を効率よく連結することができる。
【0043】
本発明の方法では、先ず、上記した互いに相補的な配列を有する一本鎖RNAと本発明の一本鎖DNA又はその誘導体とをアニーリングさせる。アニーリングは上記した2種の核酸を適当な緩衝液(以後の操作の便宜上から言うと、RNAリガーゼ用の緩衝液が好ましい)に溶解し、高温から段階的に低温にすることにより行なうことができる。このような温度変化はPCR装置などを用いて行なうこともできる。アニーリング条件の一例としては、94℃から25℃まで10分かけて冷却するという条件が挙げられるが、これは一例にすぎず、温度および時間は適宜変更することができる。アニーリングの条件(緩衝液の組成、アニーリング温度、及びアニーリング時間など)は、アニーリング配列の長さや塩基組成などに応じて適宜設定することができる。
【0044】
アニーリング反応における一本鎖RNAと、一本鎖DNA又はその誘導体とのモル比はアニーリング反応が進行する限り、特に限定されないが、反応効率の観点からは、1:1〜1:2.5程度であることが好ましい。
【0045】
一本鎖RNAと一本鎖DNA又はその誘導体とのアニーリング後、アニーリング産物では、一本鎖RNAの3’末端と一本鎖DNA又はその誘導体の5’末端とが連結される。この連結は、一本鎖RNAの3’末端と一本鎖DNA又はその誘導体の5’末端とが連結すればいずれの方法によってもよいが、例えば、RNAリガーゼ、架橋剤など、上述の「化学的結合」を行う具体例に挙げた方法等を用いることができる。
本発明で用いるRNAリガーゼは2つの一本鎖核酸同士を連結できるものであればよく、好ましくはT4RNAリガーゼを使用できる。
【0046】
なお、アニーリングの際の溶液としてRNAリガーゼの緩衝液として適当なものを使用した場合には、アニーリング生成物を含む溶液をそのままリガーゼ反応に使用することができ、そうでない場合には、アニーリング生成物を通常の核酸精製方法により回収した後、RNAリガーゼ用の緩衝液に溶解してリガーゼ反応用の溶液を調製する。
【0047】
連結反応(リガーゼ反応)の条件は、使用するRNAリガーゼの活性が発揮される条件であればよく、例えば、好適な緩衝液(例えば、T4 RNA ligase buffer(50mM Tris−HCl, pH7.5, 10mM MgCl, 10mM DTT, 1mM ATP)など)中で、25℃の温度一定で反応させたり、あるいは25℃で30分間と45℃で2分間のサイクルを反復した後に25℃で30分間反応させたりすることができる。ここに示した温度及び反応時間は一例に過ぎず反応効率が高くなるように適宜設定変更することができる。
【0048】
反応後にエタノール沈殿などの常法により反応生成物を精製することにより、RNA−DNA結合体(in vitro virus genome)を得ることができる。
【0049】
(2)核酸−タンパク質複合体を構築する構築工程
上記(1−3)に記載のRNA−DNA結合体をタンパク質翻訳系に導入して一本鎖RNAをタンパク質に翻訳する。
【0050】
核酸からそれがコードするタンパク質を人工的に生成させるためのタンパク質翻訳系は当業者に公知である。具体的には、適当な細胞よりタンパク質合成能を有する成分を抽出し、その抽出液を用いて目的のタンパク質を合成させる無細胞タンパク質合成系が挙げられる。このような無細胞蛋白質合成系には、リボゾ−ム、開始因子、伸長因子及びtRNA等の転写・翻訳系に必要な要素が含まれている。
【0051】
このような無細胞タンパク質合成系(細胞溶解物由来の系)としては、原核又は真核生物の抽出物により構成される無細胞翻訳系が挙げられ、例えば大腸菌、ウサギ網状赤血球抽出液、小麦胚芽抽出液などが使用できるが、DNA又はRNAから目的とするタンパク質を産生するものであればいずれでもよい。また、無細胞翻訳系はキットとして市販されているものを使用することができ、例えば、ウサギ網状赤血球抽出液 (Rabbit Reticulocyte Lysate Systems, Nuclease Treated, Promega)や小麦胚芽抽出液 (PROTEIOS, TOYOBO; Wheat Germ Extract, Promega)などが挙げられる。
【0052】
タンパク質翻訳系としては、生細胞を使用してもよく、具体的には、原核又は真核生物、例えば大腸菌の細胞などが使用できる。
無細胞翻訳系又は生細胞などは、その中にタンパク質をコードする核酸を添加又は導入することによってタンパク質合成が行われるものである限り制限されない。
【0053】
本発明では、RNA−DNA結合体(in vitro virus genome)を上記したようなタンパク質翻訳系に導入して一本鎖RNAをタンパク質に翻訳した後、リボゾームを除去することによって、RNAと該RNAによりコードされるタンパク質から成るRNA−タンパク質複合体(in vitro virus virion)を製造することができる。
【0054】
本発明においては、上記(1−3)に記載のRNA−DNA結合体または上記(2)に記載のRNA−タンパク質複合体を逆転写反応に付することにより、DNA結合体及びDNA−タンパク質複合体として用いてもよい。
即ち、RNA部分を含む核酸を逆転写酵素で処理することにより、RNAからDNAへの逆転写が起こり、RNA部分の塩基配列をDNAに転換することができる。逆転写反応に必要な試薬及び反応条件は当業者に周知であり、必要に応じて適宜選択することができる。
【0055】
かくして調製される核酸−タンパク質複合体には、必要に応じて親和性物質が結合している。従って、この親和性物質に親和性を有する物質を予め固定化した支持体に、前記RNA−DNA結合体を用いて調製した核酸−タンパク質複合体を接触させることにより、当該核酸−タンパク質複合体を支持体上に容易に固定化することができる。この固定化物を洗浄後、適当な方法、例えば適当な溶出液により溶出する、核酸構築物中に存在する制限酵素認識部位を利用して支持体から切断する等して、核酸−タンパク質複合体を精製することができる。このようにして作製されるチップは例えば、下述の選択工程において有用である。
【0056】
親和性物質とそれに親和性を有する物質の組み合わせとしては、ビオチン/ストレプトアビジン、ポリA配列/オリゴdT配列、抗原/抗体、Hisタグ配列/Ni、リガンド/レセプター、FLAG/抗FLAG抗体などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
支持体としては、通常の核酸またはタンパク質の固定化に用いることができる支持体であれば特に限定されない。支持体としては、親和性物質同士の間の結合形成に悪影響を及ぼさないものであれば、その形状は特に限定されず、例えば、平板、マイクロウエル、ビーズ等の任意の形態をとることができる。支持体の材質としては、例えば、ガラス、セメント、陶磁器等のセラミックス;ポリエチレンテレフタレート、酢酸セルロース、ビスフェノールAのポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等のポリマー類;シリコン、活性炭、多孔質ガラス、多孔質セラミックス、多孔質シリコン、多孔質活性炭、織編物、不織布、濾紙、短繊維、メンブレンフィルター等の多孔質物質を挙げることができる。
【0058】
(3)核酸−タンパク質複合体を選抜する選抜工程
上記(2)で構築された核酸−タンパク質複合体(in vitro virus virion)中のタンパク質が有する機能(生物活性)を用いて所望の機能を有する核酸−タンパク質複合体として選択して取得することができる。
この選抜工程とは、in vitro virus virionを構成するタンパク質部の機能(生物活性)を評価し、目的とする生物活性に基づいてin  vitro virus virionを選択する工程を意味する。即ち、構築されたin vitro virus virionと相互作用をし得る被験物質、例えばタンパク質、ペプチド、核酸、糖質、脂質、低分子化合物等との相互作用の有無や強弱に基づいて、in vitro virus virionを選択することができる。これらの被験物質は、前記した固相(支持体)に結合させて用いることもできる。このような工程はそれ自体既知の方法、例えば、Scott, J. K. & Smith, G. P. (1990) Science, 249, 386−390; Devlin, P. E. et al. (1990) Science, 249, 404−406; Mattheakis, L. C. et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91, 9022−9026等に記載されている方法等により行うことができる。
【0059】
選抜工程に付するin vitro virus virionは、上記RNA−タンパク質複合体でもよいし、RNA部分をDNAに逆転写したRNA−DNA−タンパク質複合体でもよい。このうちRNA−DNA−タンパク質複合体を用いれば、核酸部分の安定性がよいため好ましい。また、本明細書においては、RNA−タンパク質複合体、RNA−DNA−タンパク質複合体を併せて「核酸−タンパク質複合体」または「in vitro virus virion」と称することがある。
【0060】
(5)増幅工程
上記(3)で選抜されたin vitro virus virionは、これを再度被験物質との相互作用に基づいて選抜することにより、該相互作用がより適当なタンパク質を選抜および取得することができる。一度選抜されたin vitro virus virionを、再度被験物質と接触させるためには、選抜されたin vitro virus virionの一本鎖RNA部分を必要に応じて逆転写する等した後に、これを増幅し、増幅されたDNA鎖をもとに(2)に記載の構築工程を行ってin vitro virus virionを製造して、(3)に記載の選抜工程に付することにより可能となる。
【0061】
つまり、上記の選抜工程において、ターゲット(被験物質)に対し、表現型であるタンパク質部分で相互作用のあるin vitro virus virionを選択し、遺伝型である核酸部のDNAを増幅することによって、該ターゲットに対して相互作用のあるin vitro virusの鋳型となる核酸またはその一部が濃縮されたライブラリーを最構築することができる。この場合、増幅工程において、in vitro virus virionの核酸部分の塩基配列(遺伝子の種類)により偏ることなく、また効率よく増幅が行われることが重要である。
【0062】
これら(1)調製工程、(2)構築工程、(3)選抜工程、(5)増幅工程を必要に応じてくりかえし行うことにより、被験物質との相互作用がより適当なタンパク質を選抜および取得することができる。ここで、選抜工程に供するin vitro virus virionは、RNA−DNA−タンパク質複合体が好ましい。これにより以降の工程におけるin vitro virus virionの安定性等が増加する。
【0063】
(5)増幅工程は、PCRを用いて、例えば、以下のようにして行うことが好ましい。in vitro virus virionの核酸中、増幅するのは、少なくともタンパク質をコードしている部分(以下、これを「ORF」と称することがある)を含む領域である。該領域を増幅するのに用いられるPCRプライマーとしては、特に制限はないが、全てのin vitro virus virionに共通に用いられる配列として、5’側のプライマーは、ORFの5’上流側に連結されている配列が、また3’側のプライマーは、ORFの3’側に連結されている配列が好ましく用いられる。具体的には、上記(1)および(2)に記載の構造を有するin vitro virus virionの場合、5’側のプライマーは、翻訳の際にリボソームによって認識されるDNA配列等が好ましく用いられ、3’側のプライマーは、タグ配列や共通配列が好ましく用いられる。
【0064】
また、塩基配列(遺伝子の種類)によって隔たることなく、また効率良く増幅が行われるために、選抜されたin vitro virusを予めRNA分解酵素で処理することが好ましい。RNA分解酵素は、in vitro virus virionに含まれるRNAを分解氏得るものであれば如何なるものであってもよいが、RNase Hが好ましく用いられる。
【0065】
かくして増幅されたDNAは、ORFのみを含むものであるので、上記(1)および(2)に記載のプロモーター配列、翻訳の際にリボソームによって認識されるDNA配列(以下、これらを「5’側付加配列」と称することがある)、タグ配列、共通配列、並びにアニーリング配列、ブランチ配列など(以下、これらを「3’側付加配列」と称することがある)を結合する。これらの配列の結合は、DNAリガーゼ、下述するオーバーラップエクステンション法、PCR法等を用いて行うことができる。PCRのプライマーとしては、増幅されたDNAの5’末端と共通配列を3’末端に有する5’付加配列からなるものと、増幅されたDNAの3’末端と共通の配列を5’末端に有する3’付加配列からなるものが用いられる。
【0066】
オーバーラップエクステンション法による結合方法は、まず増幅されたDNAの5’末端と共通の配列を3’末端に有する5’付加配列を用意し、これをアニーリングさせた後に、DNAポリメラーゼ等を用いて2本鎖DNAを合成し、さらに増幅されたDNAの3’末端と共通の配列を5’末端に有する3’付加配列を用意し、これをアニーリングさせた後に、DNAポリメラーゼ等を用いて2本鎖DNAを合成する方法である。上記の5’付加配列および3’付加配列の結合は、片方ずつ行っても、両方同時に行ってもよい。かくして合成された2本鎖DNAは、これを両末端の塩基配列を有するプライマー等を用いてさらにPCRで増幅してもよい。
【0067】
上記(3)で選抜されたin vitro virus virion は、IVVを用いたスクリーニングは、ターゲットに対し、表現型である蛋白質部分で相互作用のあるIVVを選択し、遺伝型であるDNAを増幅することによって、相互作用のあるIVVが濃縮されたライブラリーを再構築することができる。このことから、DNAを増幅する過程が、遺伝子により偏ることなく、また効率よく行われることが重要である。このような方法として、RNA−DNA−タンパク質複合体を用いてPCRを行う際、RNaseHにて処理をする方法が好ましく用いられる。
【0068】
(4)変異導入工程、(5)増幅工程、及び(6)検定工程
上記(3)で選択されたin vitro virus virion(核酸−タンパク質複合体)の核酸部分に変異を導入し、増幅を行う。これら(1)調製工程、(2)構築工程、(3)選抜工程、(4)変異導入工程、(5)増幅工程を必要に応じて繰り返し行うことによりタンパク質の機能(生物活性)の改変及び新たな機能の創製が可能となる。この内、(1)及び(2)の工程については上記に詳述した構築方法に従って行うことができる。ここで、選抜工程に供するin vitro virus virionは逆転写を行ったものが好ましい。これにより、以降の工程におけるvirionの安定性等が増加する。
【0069】
(4)変異導入及び(5)増幅の工程において、選択されたin vitro virus virionの核酸部に必要に応じて変異を導入してPCR等で増幅する。ここで、in vitro virus virionの核酸部がmRNAの場合は、逆転写酵素によりcDNAを合成した後に変異の導入を行えば良く、核酸部の増幅は変異導入しながら行っても良い。変異導入は、すでに確立しているError−prone PCR(Leung,D.W.,et al.,(1989)J.Methods Cell Mol.Biol.,1,11−15)やSexual PCR(Stemmer,W.P.C.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA91,10747−10751)を用いて容易に行うことができる。
【0070】
さらに、変異が導入され増幅されたin vitro virus virionの核酸部を用いて、(1)調製工程にてRNA−DNA結合体を調製し、それを用いて(2)構築工程にてRNA−DNA−タンパク質複合体を調製し、それを(3)選抜工程にかけ目的とする生物活性によって選択し、さらに(4)変異導入及び増幅を行うことができる。これらの工程を必要に応じて繰り返すことにより、タンパク質の機能改変及び新たな機能を有するタンパク質の創製が可能となる。
【0071】
本発明のタンパク質−タンパク質またはタンパク質−核酸相互作用の検定方法における、核酸−タンパク質複合体を構築する構築工程は、一般には、(1)遺伝子ライブラリーやcDNAライブラリーからmRNAを合成し、in vitro virus genome(RNA−DNA結合体)を調製する調製工程、及び、(2)無細胞タンパク質合成系を利用して、mRNAとそれに対応するタンパク質とをリボソーム上で連結したin vitro virus virion(核酸−タンパク質複合体)を構築する構築工程を含む。
【0072】
(1)の工程は、配列既知のDNAでORFに対応する配列を含むcDNAや配列未知のDNAで適当な制限酵素で断片化した断片を含むcDNAからRNAポリメラーゼを用いてmRNAを合成し、in vitro virus genome(RNA−DNA結合体)を構築することに相当する。
上記(1)のin vitro virus genomeの構築と、(2)のin vitro virus virion(核酸−タンパク質複合体)の構築工程は、上記に詳述した方法に従って行うことができる。
【0073】
in vitro virus virion(核酸−タンパク質複合体)と他のタンパク質や核酸(DNAまたはRNA)との相互作用を調べる検定工程(6)は、構築された核酸−タンパク質複合体の中から所望の機能をもつタンパク質を選抜する選抜工程(3)、必要に応じて、逆転写、増幅、配列決定等の工程も含まれる。
【0074】
(3)の選抜工程では、標的のタンパク質や核酸(DNAまたはRNA)や他の物質、例えば、薬物、糖質、脂質などをマイクロプレートやビーズに予め共有結合や非共有結合を介して結合させておき、これに(2)調製工程で調製したinvitro virus genome(RNA−DNA結合体)を加え、ある温度条件で、一定時間反応させた後、洗浄し、標的に結合しないin vitro virus virion(核酸−タンパク質複合体)を除去する。その後、標的に結合したin vitro virus virionを遊離させる。この工程は、前記の通り、すでに確立している方法で行うことができる。
【0075】
(6)の検定工程には、(3)の選抜工程で遊離したin vitro virus virionを、例えばPCRにより増幅させ、増幅したDNAを直接あるいはクローニングした後、その配列を決定する工程も含まれる。相互作用の検出は、virionの逆転写後に行うのが好ましい。これにより、virionの安定性が増し、また相互作用の妨害作用も減少し、より精度の高い相互作用の検出が可能となる。
【0076】
本発明の検出方法により、(1)配列既知あるいは未知の遺伝子DNAからmRNAを合成し、in vitro virus genome(RNA−DNA結合体)を構築し、(2)それを用いてin vitro virus virion(核酸−タンパク質複合体)を構築し、(3)in vitro virus virion(核酸−タンパク質複合体)の中から標的のタンパク質あるいは核酸あるいは他の物質、たとえば薬物、糖質、脂質などと結合するもののみを選択し、(5)選択したin vitroウイルスvirion(核酸−タンパク質複合体)を逆転写、増幅、クローニング、配列決定することにより、機能未知の遺伝子に対応する遺伝子産物(タンパク質)の機能を同定することが可能になる。
なお、本明細書における、上記した核酸の単離・調製、核酸の連結、核酸の合成、PCR、プラスミドの構築、無細胞系での翻訳等の遺伝子操作技術は、特に明記しない限り、Sambrook et al.(1989) Molecular Cloning, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載の方法またはそれに準じた方法により行うことができる。
【0077】
【実施例】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されることはない。
実施例1:スペーサーの作製
以下のような修飾DNAをスペーサーの原料としてDNA合成機で合成した。
DNA 1: (thiol)(Spc)(Spc)(Spc)(Spc)CC(ZFP)
DNA 2: CCCGGTGCAGCTGTTTCATC(Bt)CGGAAACAGCTGCACCCCCC(Ft)CCGCCCCCCG(At)CCGC
DNA 3: (Pso)TACGCCAGCTGCACCCCCCGCCGCCCCCCG(At)CCGC
DNA 4: CCCGG(Ft)GCAGCTGGCGTATAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA
上記配列中の(thiol)、(Spc)、(Bt)、(Ft)、(At)及び(Pso)はユニットの略称であり、すべてグレンリサーチ社製の合成試薬を用いて配列中に導入した。これらユニットの略称、合成(導入)試薬の品名及びその化学名は、それぞれ次の通りである。
【0078】
(thiol)
5’−Thiol−modifier C6
(S−Trityl−6−mercaptohexyl)−(2−cyanoehyl)−(N,N−diisopropyl)]−phosphoramidite
(Spc)
Spacer Phosphoramidite 18
18−O−Dimethoxytritylhexaethyleneglycol,1−[(2−cyanoethyl)−(N,N−diisopropyl)]−phosphoramidite
【0079】
(Bt)
Biotin−dT
5’−Dimethoxytrityl−5−[N−((4−t−butylbenzoyl)−biotinyl)−aminohexyl)−3−acrylimido]−2’−deoxyUridine,3’−[(2−cyanoethyl)−(N,N−diisopropyl)]−phosphoramidite
(Ft)
Fluorescein−dT
5’−Dimethoxytrityl−5−[N−((3’,6’−dipivaloylfluoresceinyl)−aminohexyl)−3−acrylimido]−2’−deoxyUridine,3’−[(2−cyanoethyl)−(N,N−diisopropyl)]−phosphoramidite
【0080】
(At)
Amino−modifier C6 dT
5’−Dimethoxytrityl−5−[N−(trifluoroacetylaminohexyl)−3−acrylimido]−2’−deoxyUridine,3’−[(2−cyanoethyl)−(N,N−diisopropyl)]−phosphoramidite
(Pso)
Psoralen C6 Phosphoramidite
2−[4’−(hydroxymethyl)−4,5’,8−trimethylpsoralen]−hexyl−1−O−(2−cyanoethyl)−(N,N−diisopropyl)−phosphoramidite
【0081】
また、(ZFP)はN−α−(N−α−benzyloxycarbonyl−L−phenylalanyl)−puromycin残基を示し、支持体CPGに固定してDNA合成機上で使えるようにしたものを特願2002−044955号明細書に記載の方法に準じて次の通り合成して配列の3’末端に導入した。
【0082】
ピューロマイシン2塩酸塩(和光純薬工業)250 mgを水3 mlに溶かし、ジメトキシエタン (DME) 2 ml、10%炭酸ナトリウム水溶液0.5 mlを加えた。撹拌しながらこの溶液にZ−Phe−OSu (N−α−benzyloxycarbonyl−L−phenylalanine N−hydroxysuccinimide ester; BACHEM社) 200 mg(1.1当量)をDME 2 mlに溶かした溶液を加え、さらに10%炭酸ナトリウム水溶液0.5 mlを加えた。1時間室温で撹拌したのち析出した固体をグラスフィルター上で濾取し、50%DME水溶液2 mlで2回、水2 mlで3回、冷却したDME 2 mlで2回洗浄したのち真空ポンプで乾燥してN−α−(N−α−benzyloxycarbonyl−L−phenylalanyl)−puromycin (ZF−puromycin)を330 mg得た。
【0083】
ZF−puromycin 315 mgをピリジン2.5 mlに溶かし、塩化ジメトキシトリチル149mgを加えて室温で1時間撹拌した。氷浴で冷却してから水0.1 mlを加え、10分撹拌したのち水と酢酸エチルで分液し、有機層を水で3回洗ってから濃縮し、真空ポンプで乾燥して粗5’−dimethoxytrityl ZF−puromycin (DMTr−ZF−puromycin)を450 mg得た。
【0084】
DMTr−ZF−puromycin 450 mgをピリジン2 mlに溶かし、無水コハク酸61 mg、ジメチルアミノピリジンの0.5 Mピリジン溶液40μlを加えて、窒素雰囲気下、室温で3日間撹拌した。氷浴で冷却してから水0.1 mlを加え、10分撹拌したのち水と酢酸エチルで分液し、有機層を水で3回、飽和食塩水で1回洗ったのち濃縮した。酢酸エチルを展開溶媒としてシリカゲルクロマトグラフィで精製し、目的物であるDMTr−ZF−puromycin−3’−succinateを385 mg得た。
【0085】
DMTr−ZF−puromycin−3’−succinate 255 mgをジメチルホルムアミド(DMF) 0.4 mlに溶かし、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)の1.0 M DMF溶液0.2 mlとN−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)の0.5 M DMF溶液0.4 mlを加え、16時間室温で撹拌した。この溶液にCPG (CPG LCA00500A ; 0.17 mmol/g) 500 mgを加えて2時間室温で撹拌し、さらにDICの1.0 M DMF溶液0.15 mlとHOBtの0.5 M DMF溶液0.3 mlを加えて16時間室温で撹拌した。CPGをグラスフィルター上に濾取し、DMF、50% DMF水溶液、アセトニトリルで洗ったのちポンプで乾燥した。全量をDMF 2 mlに懸濁させ、ピリジン0.5 ml、無水酢酸125 mgを加えて1時間室温で撹拌したのちCPGを濾取してDMFとアセトニトリルで洗浄した。真空ポンプで乾燥し、ZF−puromycin CPGを520 mg得た。一部を固相反応用の容器に入れ、トリクロロ酢酸の3%塩化メチレン溶液を加えて室温で1分撹拌し、アセトニトリルで洗浄したのち濃アンモニア水を加えて室温で2時間撹拌した。回収されたZF−puromycinを定量し、CPG 1グラム当たり28 μmolと算出した。
【0086】
(1) T−splint1FB
DNA 2 (4 nmol)を0.1 M リン酸水素2ナトリウム水溶液15μlに溶かし、N−(6−maleimidocaproyloxy)succinimide(EMCS)(架橋剤;同仁化学製)の5 mM DMF溶液4μlを加えて20分室温で撹拌した。この溶液にDNA 1(20 nmol)を0.1 Mリン酸緩衝液(pH 7.1)40μlに溶かした溶液を加え、さらに室温で16時間撹拌した。逆相高速液体クロマトグラフィ(逆相HPLC)でDNA 1とDNA 2が架橋剤を介して結合した目的物を単離し、50 mMリン酸緩衝液(pH 8.0)に溶かしてキモトリプシン溶液を基質に対して酵素の重量比が10%程度になるように加えて36℃で1時間放置した。逆相HPLCで精製し、T−splint1FBを得た。
【0087】
(2) T−splint3FA
DNA 3 (12 nmol)とDNA 4 (12 nmol)をTBS緩衝液 (25 mM Tris−HCl、pH7.0、100 mM NaCl) 0.48 mlに溶かし、85℃で40秒加熱したのち室温で放冷した。氷浴上で5分放置したのちハンディUVランプ(365 nm)で8分間光照射し、反応生成物を逆相HPLCで精製した。これをT−splint1FB調製の際と同様にEMCSでDNA 1と架橋し、キモトリプシン処理ののち精製してT−splint3FAを得た。
【0088】
実施例2:転写用DNAの構築とmRNAの作製
転写効率の高い大腸菌ウィルスT7のRNA polymeraseによって認識されるDNA配列(T7プロモーター配列)と翻訳の際に真核細胞のリボソームによって認識されるDNA配列(Kozak配列)と原核細胞のリボソームによって認識される(シャイン・ダルガノ配列:Shine−Dalgarno)を有し、その下流にOct−1の一部 (POU;配列番号1)とFLAG配列、T−Spacerと連結するための配列(Y−tag)をコードしたDNAを構築した。
【0089】
Figure 2004097213
【0090】
上記の方法で作製したDNAを、反応液100μlあたり10μgを加え、RNA合成キットRibomax Large Scale RNA Production System(Promega製)を使ってmRNAに転写した。翻訳効率をあげるためにキャップアナログ(RNA Capping Analog ; Gibco BRL製)を最終濃度が7.2mMになるように加え、mRNAの5’側を修飾した。キャップアナログおよび過剰のNTP(ヌクレオチド3リン酸)を除去するために、プライマー除去剤(Primer Remover ; Edge Biosystems製)を使ってエタノール沈澱を行った。
【0091】
実施例3:mRNAとT−スペーサーとのライゲーション
上記の実施例1で作製したT−スペーサー (T−splint3FA)と上記の実施例2で作製したmRNAとのライゲーションは、特開2002−291491号明細書に記載の方法に準じて行なった。具体的には以下の通りである。
上記で作製した mRNAとT−スペーサーを1:1.2〜1.5の割合(モル比)で混合し、T4 RNA ligase buffer (50mM Tris−HCl、pH7.5、10mM MgCl、10mM DTT、1mM ATP)に溶解し、特異性をあげるため変性剤としてDMSO (Dimethyl sulfoxide)を最終濃度5%になるように加えた。得られた混合物は、PCR装置を用いて、94℃〜25℃まで10分かけて冷却することによりアニーリングした。
【0092】
つづけて、上記のアニーリングした溶液中にT4 Polynucleotide Kinase (Takara製)とT4 RNA ligase(Takara製)を至適量加え、25℃で30分間反応させた。反応後、RNeasy Mini Kit (QIAGEN製)を使って、ライゲーション産物を精製した。ライゲーションの効率を確認するために、4%アクリルアミド8M尿素変性ゲル電気泳動、65℃、250Vの条件でサンプルを泳動し、Vistra Green (Amersham pharmacia製)で染色し、Molecular Imager (Bio Rad製)で画像化した。また、T−スペーサーに導入してある蛍光(Fluoroscein)についても確認した。この結果から、mRNAとT− スペーサーとの結合率(RNA−DNA結合体の形成率)は80〜90%であることが確認された。
【0093】
実施例4:T−スペーサーを用いた in vitro virus virion 形成
in vitro virus genomeが、実際にin vitro virus virionを形成できるかどうか確認した。in vitro virus genome 4 pmolを小麦胚芽無細胞翻訳系PROTEIOS (TOYOBO製)を用いて、26℃で30分間反応し翻訳させ、ピューロマイシンに翻訳されたペプチドを結合させる(virion化)ために最終濃度が40mM MgCl、1 M KClになるように塩を加え、26℃で1時間反応させた。
Virion化の効率を確認するために、5M尿素変性5%SDS−PAGEゲル、20mAの条件でサンプルを泳動した。
【0094】
実施例5:T−スペーサーを用いた  in vitro virus の精製
In vitro virus virionを形成した後、T−スペーサーを用いて、実際に精製できるかどうかを確認した。
(1)ビオチン  (T−splint1FB)
8pmolのin vitro virus genomeを上記の方法でvirion化し、buffer交換をするために、Micro BioSpin Column−6 (Bio−Rad製)を用いて脱塩後、1M NaCl、100mMTris−HCl (pH8.0)、10mM EDTA、0.25% Triton−X100になるように調製し、MAGNOTEX−SA (Takara製) 5μlと4℃、約2時間結合させる。その後、上清をとり、洗浄buffer (1M NaCl、100mM Tris−HCl (pH8.0)、10mM EDTA、0.25% Triton−X100)20μlで3回洗い、その後、MAGNOTEX−SAを2つにわけ、一方を制限酵素Pvu II (Takara製) 37℃、約1時間処理し、その上清を得て、in vitro virus が精製できるかどうか確認した。
【0095】
精製効率を確認するために、5M尿素変性5%SDS−PAGEゲル、20mAの条件でサンプルを泳動した。スペーサーに導入してある蛍光(Fluoroscein)を使って、Molecular Imager (Bio Rad製)で画像化した。その結果を図4に示す。
【0096】
図4において、レーン1は、virion化しBioSpin Column−6を用いて脱塩されたin vitro virusを泳動したものを示し、レーン2は、MAGNOTEX−SAと結合させた後の上清を泳動したものを示し、レーン3〜5は、上清を除いた後のMAGNOTEX−SAを洗浄したものを泳動し、レーン6は、洗浄した後のMAGNOTEX−SAを泳動し、レーン7は、洗浄したMAGNOTEX−SAを制限酵素で処理した後の上清を泳動し、レーン8は、MAGNOTEX−SAを制限酵素で処理した後のMAGNOTEX−SAを泳動したものを示す。洗浄したMAGNOTEX−SAを制限酵素で処理した後の上清に、in vitro virusが存在することから、T−splintスペーサーを使ってin vitro virusが精製できることが確認された。
【0097】
(2) Poly A(T−splint3FA)
8pmolのin vitro virus genomeを上記(1)の方法でvirion化し、buffer交換をするために、Micro BioSpin Column−6 (Bio−Rad製)を用いて脱塩後、1M NaCl、100mM Tris−HCl (pH8.0)、10mM EDTA、0.25% Triton−X100になるように調整し、Biotinylated Oligo(dT) Probe (Promega製)を結合させたMAGNOTEX−SA (Takara製) 5μlと4℃、約1時間結合させる。その後、上清をとり、洗浄buffer A (1MNaCl、100mM Tris−HCl (pH8.0)、0.25% Triton−X100) 20μlで3回洗い、bufferB (500mM NaCl、100mM Tris−HCl (pH8.0)、0.25% Triton−X100) 20μlで1回洗い、 buffer C (250mM NaCl、100 mM Tris−HCl (pH8.0)、0.25% Triton−X100) 20μlで1回洗い、その後、Dep水 10μlで3回溶出してin vitro virus virionが精製できるかどうか確認した。
【0098】
精製効率を確認するために、5M尿素変性5%SDS−PAGEゲル、20mAの条件でサンプルを泳動した。スペーサーに導入してある蛍光(Fluoroscein)を使って、Molecular Imager (Bio Rad製)で画像化した。その結果を図5に示す。
【0099】
図5において、レーン1は、virion化しBioSpin Column−6を用いて脱塩されたin vitro virus genomeを泳動したものを示し、レーン2は、Biotinylated Oligo(dT) Probeを結合させたMAGNOTEX−SAと結合しなかった上清を泳動したものを示し、レーン3〜7は、上清を除いた後のBiotinylated Oligo(dT) Probeを結合させたMAGNOTEX−SAを洗浄したものを泳動し、レーン8〜10は、洗浄したBiotinylated Oligo(dT) Probeを結合させたMAGNOTEX−SAを溶出したものを泳動し、レーン11は、溶出した後のBiotinylated Oligo(dT) Probeを結合させたMAGNOTEX−SAを泳動したものを示す。Biotinylated Oligo(dT) Probeを結合させたMAGNOTEX−SAを溶出したものにin vitro virus virionが存在することから、T−splintスペーサーを使ってin vitro virus virionが精製できることが確認された。
【0100】
実施例6:T−スペーサーを用いた  in vitro virus の精製後の逆転写反応
T−spacerを用いた in vitro virus virion精製時の溶出画分の1と2を混ぜ、TrueScript II Reverse Transcriptase (sawady製)を用いて逆転写した。さらに、ネガティブコントロールとしてin vitro virus genome、ポジティブコントロールとしてin vitro virus genomeを逆転写したもの(図4)とともに、センスプライマー 5’−GTT TAA CTT TAA GAA GGA GTT GCC ACC ATG−3’(配列番号2)とアンチセンスプライマー 5’−TTT CCC GCC GCC CCC CGT CCG CTT CCG CCC TTG TCA TCG TCA TCC TTG TAA TC−3’(配列番号3)をもちいて、ポリメラーゼ連鎖反応 (PCR)を行った。DNA合成酵素は、TaKaRa Ex Taq (TAKARA製)をもちいた。結果を確認するために、6M尿素変性6%ポリアクリルアミドゲル、250Vの条件でサンプルを泳動し、Vistra Green (Amersham pharmacia製)で染色し、Molecular Imager (Bio Rad製)で画像化した。その結果を図6に示す。
【0101】
図6において、レーン1は、in vitro virus genome、レーン2は、in vitrovirus genome を逆転写したもの、レーン3は、ビリオン化後に精製して逆転写したin vitro virusを鋳型としてPCRを行ったサンプルを泳動したものを示す。ビリオン化後に精製して逆転写したin vitro virus virionが、in vitro virus genomeを逆転写したものを鋳型としてPCRを行ったものと同様に、目的のDNAが増幅できていた。この結果から、ビリオン化後に精製したin vitro virus virionが、T−spacerを用いて逆転写できたことが確認された。
【0102】
実施例7: in vitro virus の核酸部分の増幅方法の検討
(1)転写用DNAの構築とmRNAの作成
転写効率の高い大腸菌ウィルスT7のRNA polymeraseによって認識されるDNA配列(T7プロモーター配列)と翻訳の際に真核細胞のリボソームによって認識されるDNA配列(Kozak配列)と原核細胞のリボソームによって認識される(シャイン・ダルガノ配列:Shine−Dalgarno)を有し、その下流にOct−1の一部(ネガティブコントロール/POU;配列番号1)あるいはprotein AのBドメイン(配列番号4)とFLAG配列、T−Spacerと連結するための配列(Y−tag)をコードしたDNAを構築した。
Figure 2004097213
構築されたDNAを実施例2に記載の方法に従って転写し、mRNAを調製した。
【0103】
(2)mRNAとT−スペーサーとのライゲーション
実施例1で作成したT−Spacer(Tsplint3FA)と上記(2)作成した各mRNAとを、実施例3に記載の方法に従ってライゲーションし、in vitro virus genomeを調製した。
(3)in vitro virus virion形成
実施例4に記載の方法で、上記(2)で調製したin vitro virus genomeを用いてvirion形成をさせた。
Virion形成は、単独で行う場合にはBドメインと POUのin vitro virus genomeをそれぞれ8 pmol用い、混合して行う場合には、1:1であわせて8 pmolになるようにして翻訳させた。
(4)in vitro virus virionの精製
実施例5(2)に記載の方法に準じてvirion精製を行った。
(5)精製in vitro virus virionの逆転写反応
上記(4)で得られたin vitro virus精製画分を用いて、実施例6に記載の方法に準じて逆転写を行った。
【0104】
(6)PCRのための鋳型の調製方法の検討
(a)処理なし、(b)熱処理(PCR反応を行う直前に95℃、5分加熱)、(c)Protease K処理(100 μg/ml protease K(GIBCO製), final 100mM KCl(pH8.0), 50mM EDTA, 500mM NaCl, 37℃, 30分)、(d)RNase H処理(10unit RNase H(TOYOBO製), 37℃, 30分)し、エタノール沈澱後PCRを行った。DNA合成酵素は、TaKaRa Ex Taq (TAKARA製)を用いた。プライマーは、センス側:GTT TAA CTT TAA GAA GGA GTT GCC ACC ATG(配列番号2)、アンチセンス側:TTT CCC GCC GCC CCC CGT CCG CTT CCG CCC TTG TCA TCG TCA TCC TTG TAA TC(配列番号3)を用いた。
結果を確認するために、6M尿素変性4%ポリアクリルアミドゲル、250Vの条件でサンプルを泳動し、Vistra Green (Amersham pharmacia製)で染色し、Molecular Imager (Bio Rad製)で画像化した。その結果を図7に示す。図から明らかなように、POUおよびBドメインのin vitro virus virionが混合された状態では、RNaseH処理した場合に、それぞれの核酸部分が遺伝子により偏ることなく効率よく行われることがわかった(図7(d)レーン1)。
【0105】
実施例8:  Pool (ネガティブコントロール/ POU )からの protein A ドメインの選択
(1)転写用 DNA の構築
転写効率の高い大腸菌ウィルスT7のRNA polymeraseによって認識されるDNA配列(T7プロモーター配列)と翻訳の際に真核細胞のリボソームによって認識されるDNA配列(Kozak配列)と原核細胞のリボソームによって認識される(シャイン・ダルガノ配列:Shine−Dalgarno)を有し、その下流にOct−1の一部(ネガティブコントロール/POU;配列番号1)あるいはprotein AのBドメイン(配列番号4)とFLAG配列、T−Spacerと連結するための配列(Y−tag)をコードしたDNAを構築した。
Figure 2004097213
【0106】
(2)mRNAの作成
上記(1)で構築されたDNAを実施例2に記載の方法に従って転写し、mRNAを調製した。
【0107】
(3)mRNAとT−スペーサーとのライゲーション
実施例1で作成したT−Spacer(Tsplint3FA)と上記(2)で作成した各mRNAとを、実施例3に記載の方法に従ってライゲーションし、in vitro virus genomeを調製した。
【0108】
(4) In vitro virus virion 形成
実施例4に記載の方法で、上記(3)で調製したin vitro virus genomeを用いてvirion形成をさせた。
Virion形成させる際に、Bドメインと POUのin vitro virus genomeを、1:1、1:20、1:200あるいは1:200、1:20000、1:2000000、1:200000000であわせて8 pmolになるようにして翻訳させた。
【0109】
(5) In vitro virus virion の精製
実施例5(2)に記載の方法に準じてvirion精製を行った。
【0110】
(6)精製 in vitro virus virion の逆転写反応
上記(5)で得られたin vitro virus精製画分を用いて、実施例6に記載の方法に準じて逆転写を行った。
【0111】
(7) ドメインの選択−1
逆転写反応したもの(それぞれ40ul)を、final 50mM Tris−HCl、150mM NaCl、0.25% Triton−X100、50μg/ml BSA、0.5 μg/ml tRNAになるように調製した(total 50μl)。これを、10μgの抗FLAG M2抗体 (sigma製) を結合させたプロテインGセファロースビーズ10μl (アマシャム・ファルマシア)に4℃、1時間結合させ、40μlのTBSで3回洗い、20μlの0.1M Glycine−HCl (pH2.7) で3回溶出し、それぞれ1M Tris (pH9.0)を1μl加えることによって、中性にし、in vitro virus virionを得た。
上記の溶出画分を集め、その1/10量6μlを選択前のサンプルとした。残りの溶出画分を、final 50mM Tris−HCl、150mM NaCl、0.25% Triton−X100、50μg/mlBSA、0.5μg/ml tRNAになるように調製した(total 60.9μl)。これを、IgGセファロースビーズ(Amersham pharmacia製)に、4℃で1時間〜一晩結合させ、40μlのTBSで3回洗った。洗浄後のビーズを選択後のサンプルとした。
【0112】
選択前、後のサンプルをRNase H処理(10unit RNase H (QIAGEN製), 37℃, 30分)し、次いでproteinase K処理(100 μg/ml protease K(GIBCO製) , final 100mM KCl(pH8.0), 50mM EDTA, 500mM NaCl, 37℃, 30分)し、エタノール沈澱後PCRを行った。DNA合成酵素は、TaKaRa Ex Taq (TAKARA製)を用いた。プライマーは、センス側:GTT TAA CTT TAA GAA GGA GTT GCC ACC ATG(配列番号2)、アンチセンス側:TTT CCC GCC GCC CCC CGT CCG CTT CCG CCC TTG TCA TCG TCA TCC TTG TAA TC(配列番号3)を用いた。
【0113】
結果を確認するために、6M尿素変性4%ポリアクリルアミドゲル、250Vの条件でサンプルを泳動し、Vistra Green (Amersham pharmacia製)で染色し、Molecular Imager (Bio Rad製)で画像化した。その結果を図8に示す。
【0114】
バンドの定量はMolecular Imager (Bio Rad製)で画像化したものを、解析ソフトを用いて数値化した。その結果を表1及び表2に示す。表中の値は、POUの量を1としたときの Bドメインの比である。なお、1:200以上の割合いでPOUが存在している場合には、PCRのバンドとしてBドメインのバンドは検出できなかった。
【0115】
【表1】
Figure 2004097213
【0116】
【表2】
Figure 2004097213
【0117】
(8) ドメインの選択−2
上記(7)1st roundで選択、濃縮されたBドメインとネガティブコントロール(POU)DNAをもちいて、in vitro virus用に再ライブラリー化し、さらに、Bドメインを次の通り選択した。
【0118】
先ず、1st roundで選択、濃縮されたBドメインとネガティブコントロール(POU)DNAをアガロースゲルで分離し、QIA quick gel extraction キット(QIAGEN製)で精製した。そのDNAに5’非翻訳領域を連結させた。DNA合成酵素は、TaKaRaEx Taq (TAKARA製)をもちいた。連結させた5’非翻訳領域の配列は次の通りである。
Figure 2004097213
転写以降は、1st roundと同様に行った。その結果を図9に示す。
【0119】
(9)選択結果の評価
上記の通り、本実施例7においては、1st roundでIgGと反応しないPOU in vitro virus genomeに、それぞれの割合いで結合するBドメイン in vitro virus genomeを混ぜて、ビリオン化以降の反応を共に行った。その際、in vitro virus genomeを、計約8pmolになるように調整して反応を行い、それぞれの過程を踏んだ後、IgGに結合させる前にはin vitro virus virionとしては0.1 pmol程度になっている。これを、1/10量とっておき選択前のサンプルとした。残りの9/10をIgGカラムに結合させ、洗浄したあと残ったものを選択後のサンプルとした。それぞれについてPCR を行い、泳動したものを図8及び9に示した。
【0120】
図8は、選択前と選択後のPOUとBドメインのバンドの濃さを示しているが、そのまま定量してBドメインとPOUが1:20や1:200になっているわけではない。検出されているバンドの比にから逆算して、初め1:200で混ぜたものが、選択後には1:20の選択前に近い比を示すので、10倍濃縮されたというように考える。今回の結果から考えると、1:200で始めたものは100倍濃縮されて1:2程度に、1:2万ではじめたものは1万倍濃縮されて1:2程度に、1:200万ではじめたものは10万倍濃縮されて1:20程度に、1:2億ではじめたものは1000万倍濃縮されて1:20程度になる。
【0121】
この選択後のものからin vitro virus virionを作製し、2nd roundを行った。1st roundでそれぞれ1:2から1:20まで濃縮されているので、1st roundの1:1から1:20でみられた濃縮パターンと同じような結果が得られた(図9)。
今回は、ライブラリーのサイズとして選択時に約1x1011のin vitro virusビリオンを用いて行ったが、目的に合わせてサイズは増減できる。
【0122】
【発明の効果】
本発明で用いるT−スペーサーは、mRNAとライゲーションすることにより、in vitro virus genomeを効率的に構築することができ、さらにこれを翻訳することでin vitro virus virionを容易に作製することができる。また、このT−スペーサーには、mRNAの逆転写のためのプライマーとして作用するDNA配列を有していることから、上記で得られたin vitro virus virionを逆転写反応に付することにより、mRNAをDNAに転換することができる。
【0123】
さらに、本発明で用いるT−スペーサーは親和性物質を有することにより、mRNA側でin vitro virus virionの精製を行なうことができるだけでなく、mRNAを支持体に固定化してプロテインチップ作成する際においても有用である。
かかる特長を有するT−スペーサーを用いて製造された核酸−タンパク質複合体(in vitro virus virion)を用いて、所望の機能を(生物活性)を有するタンパク質および/または核酸の効率的な選択、相互作用の検出や機能の解析などが可能となる。
【0124】
【配列表】
Figure 2004097213
Figure 2004097213

【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、従来のin vitro virus virionの精製技術の具体例を示す。
【図2】図2は、本発明で使用可能な一本鎖DNA又はその誘導体の構造を示す。
【図3】図3は、本発明で使用可能な一本鎖DNA又はその誘導体の具体例を示す。
【図4】図4は、T−スペーサー(親和性物資としてビオチンを使用)を用いて in vitro virus virionを精製した結果を示す。
【図5】図5は、T−スペーサー(親和性物資としてPoly Aを使用)を用いて in vitro virus virionを精製した結果を示す。
【図6】図6は、T−スペーサーを用いた in vitro virus virionの精製後の逆転写反応の結果を示す。
【図7】図7は、本発明の方法に従いin vitro virus virion pool(ネガティブコントロール/POU)の核酸部分の増幅反応の結果を示す。
【図8】図8は、本発明の方法に従いin vitro virus virion pool(ネガティブコントロール/POU)からprotein AのBドメインを有するin vitro virus virionを選択した結果を示す。
【図9】図9は、本発明の方法に従いin vitro virus virion pool(ネガティブコントロール/POU)からprotein AのBドメインを有するin vitro virus virionを選択した結果を示す。

Claims (19)

  1. (1)(a)一本鎖RNAの3’末端側の配列とアニーリングすることができる一本鎖DNA配列を3’末端側に含み、かつその3’末端側に核酸誘導体が結合している一本鎖DNA又はその誘導体を調製し、(b)該一本鎖DNA又はその誘導体と一本鎖RNAとをアニーリングさせ、(c)該アニーリング産物の一本鎖RNAの3’末端と一本鎖DNA又はその誘導体の5’末端とを連結させてRNA−DNA結合体を調製する調製工程、(2)調製工程で得られたRNA−DNA結合体をタンパク質翻訳系に導入してRNAをタンパク質に翻訳させてRNAと該RNAによりコードされるタンパク質から成る核酸−タンパク質複合体を構築する構築工程、(3)構築工程で得られた核酸−タンパク質複合体を選抜する選抜工程、および、(4)選抜工程で選択された核酸−タンパク質複合体の核酸部分を増幅する増幅工程とを含むことを特徴とする核酸および/またはタンパク質の選択方法。
  2. 増幅工程で得られた核酸を、一本鎖RNAとしてRNA−DNA結合体を調製する調製工程に供し、(1)調製工程、(2)構築工程、(3)選抜工程、および、(4)増幅工程を繰り返し行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. (1)(a)一本鎖RNAの3’末端側の配列とアニーリングすることができる一本鎖DNA配列を3’末端側に含み、かつその3’末端側に核酸誘導体が結合している一本鎖DNA又はその誘導体を調製し、(b)該一本鎖DNA又はその誘導体と一本鎖RNAとをアニーリングさせ、(c)該アニーリング産物の一本鎖RNAの3’末端と一本鎖DNA又はその誘導体の5’末端とを連結させてRNA−DNA結合体を調製する調製工程、(2)調製工程で得られたRNA−DNA結合体をタンパク質翻訳系に導入してRNAをタンパク質に翻訳させてRNAと該RNAによりコードされるタンパク質から成る核酸−タンパク質複合体を構築する構築工程、(3)構築工程で得られた核酸−タンパク質複合体を被験物質との相互作用に基づいて選抜する選抜工程、(4)選抜工程で選択された核酸−タンパク質複合体の核酸部分に変異を導入する変異導入工程、および、(5)変異導入工程で得られた核酸部分を増幅する増幅工程とを含むことを特徴とする核酸および/またはタンパク質の選択方法。
  4. 増幅工程で得られた核酸を、一本鎖RNAとしてRNA−DNA結合体を調製する調製工程に供し、(1)調製工程、(2)構築工程、(3)選抜工程、(4)変異導入工程、および、(5)増幅工程を繰り返し行うことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
  5. (1)(a)一本鎖RNAの3’末端側の配列とアニーリングすることができる一本鎖DNA配列を3’末端側に含み、かつその3’末端側に核酸誘導体が結合している一本鎖DNA又はその誘導体を調製し、(b)該一本鎖DNA又はその誘導体と一本鎖RNAとをアニーリングさせ、(c)該アニーリング産物の一本鎖RNAの3’末端と一本鎖DNA又はその誘導体の5’末端とを連結させてRNA−DNA結合体を調製する調製工程、(2)該RNA−DNA結合体をタンパク質翻訳系に導入してRNAをタンパク質に翻訳させてRNAと該RNAによりコードされるタンパク質から成る核酸−タンパク質複合体を構築する構築工程、および、(3)構築工程で得られた核酸−タンパク質複合体と被験物質との相互作用を調べる検定工程とを含むことを特徴とするタンパク質と被験物質の相互作用の検出方法。
  6. 一本鎖DNA又はその誘導体が、3’末端に核酸誘導体がスペーサーを介して結合している構造を有するものである請求項1から5のいずれかに記載の方法。
  7. 一本鎖DNA又はその誘導体が、3’末端に、一本鎖RNAの逆転写のためのプライマーを有し、かつ核酸誘導体を末端に有するスペーサーが枝分かれした状態で結合している構造を有するものである請求項1から6のいずれかに記載の方法。
  8. 一本鎖DNA又はその誘導体が、(i)該一本鎖DNA配列の3’末端に、該一本鎖RNAの逆転写のためのプライマー配列と、核酸誘導体を末端に有するスペーサーとが枝分かれした状態で結合しており、(ii)該一本鎖DNA配列の5’末端側に親和性物質が結合している構造を有するものである、請求項1から7の何れかに記載の方法。
  9. 一本鎖DNA又はその誘導体が、(i)該一本鎖DNA配列の3’末端に、該一本鎖RNAの逆転写のためのプライマー配列と、核酸誘導体を末端に有するスペーサーとが枝分かれした状態で結合しており、(ii)該一本鎖RNAとアニーリングしない5’末端側は、ループ領域を介して互いに相補的な二本鎖配列を形成しており、(iii)該ループ領域に親和性物質が結合している構造を有するものである、請求項1から7の何れかに記載の方法。
  10. 一本鎖DNA又はその誘導体が、(i)該一本鎖DNA配列の3’末端に、該一本鎖RNAの逆転写のためのプライマー配列と、核酸誘導体を末端に有するスペーサーとが枝分かれした状態で結合しており、(ii)該一本鎖RNAとアニーリングしない5’末端側は、相補DNA鎖と化学的に結合して互いに相補的な二本鎖配列を形成しており、(iii)該相補DNA鎖の3’末端に親和性物質が結合している構造を有するものである、請求項1から7の何れかに記載の方法。
  11. 二本鎖配列中に制限酵素認識部位が存在する、請求項9又は10に記載の方法。
  12. 核酸誘導体が、ピューロマイシン、3’−N−アミノアシルピューロマイシンアミノヌクレオシド、3’−N−アミノアシルアデノシンアミノヌクレオシドの化学構造骨格を含む化合物又はそれらの類縁体である、請求項1から11の何れかに記載の方法。
  13. 一本鎖RNAが、mRNA又はmRNAライブラリーである、請求項1から12の何れかに記載の方法。
  14. 一本鎖RNAが、(1)プロモーター配列、(2)翻訳の際にリボソームによって認識されるDNA配列、及び、(3)目的タンパク質をコードする配列を有する、請求項1から13の何れかに記載の方法。
  15. スペーサーが、高分子物質である、請求項6から14の何れかに記載の方法。
  16. 親和性物質が、ビオチン又はポリA配列である、請求項8から15の何れかに記載の方法。
  17. 一本鎖RNAの3’末端と一本鎖DNA又はその誘導体の5’末端との連結を、RNAリガーゼを用いて行う、請求項1から16の何れかに記載の方法。
  18. 翻訳を無細胞翻訳系で行う、請求項1から17の何れかに記載の方法。
  19. 増幅工程が、核酸−タンパク質複合体の核酸部分がRNAとDNAから成る場合、RNA分解酵素処理を含むことを特徴とする、請求項1から18の何れかに記載の方法。
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