JP6593984B2 - Rna増幅法およびhiv−1感染診断方法 - Google Patents
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Description
HIV−1感染の診断およびエイズ治療のためのHIV−1量のモニタリングには主に、HIV−1のゲノムRNAを標的とした核酸増幅法が用いられている。しかし、HIV−1の逆転写酵素の正確性が低いために、HIV−1のゲノムRNAは変異を起こしやすく、HIV−1のゲノムRNAを標的とした核酸増幅法の大きな問題点となっている。具体的には、HIV−1の診断方法を開発し提供しても、ゲノムRNAが変異して、開発した診断方法により変異したHIV−1が検出できなくなり、感染のリスクが拡大する問題である。
上記の変異が起きやすいHIV−1を対象として、変異が起きた場合でも、検出できるように増幅対象の遺伝子部分を選定できたとしても、二次構造がその増幅、すなわち、検出を妨げる可能性がある。
反応温度を上げて、逆転写反応を行うために、逆転写酵素の遺伝子改変を行うことで耐熱化する技術(特許文献2)や、DNAポリメラーゼにRNA認識活性を付与する遺伝子改変を行う技術(特許文献3)が開示されている。
これらの方法は、RNA増幅反応の反応温度を41℃よりも高温に設定する必要がある。
具体的には、RNA増幅法の反応温度を41℃以下に下げることが望ましいが、RNAの二次構造が、41℃より高温の温度条件よりも形成されやすくなり、RNA伸長反応の効率は、低下することが懸念される。
すなわち、本発明は、以下の技術的手段から構成される。
フォワードプライマーとして下記(a)〜(c):
(a)配列番号:2の配列、
(b)配列番号:3の配列、
(c)配列番号:4の配列、
のいずれかを、
プロモーターリバースプライマーとして下記(d)〜(f):
(d)配列番号:5の配列
(e)配列番号:6の配列、
(f)配列番号:7の配列、
のいずれかを用い、
その組み合わせが、前記(a)と前記(d)、前記(b)と前記(d)〜(f)のいずれか及び前記(c)と前記(d)〜(f)のいずれかの組み合わせのいずれかであることを特徴とするRNA増幅法。
〔2〕 有機溶媒を加え、41℃以下の反応温度で、RNA増幅を行う前記〔1〕に記載のRNA増幅法。
〔3〕 逆転写酵素として、耐熱性逆転写酵素を用いることを特徴とする前記〔1〕又は前記〔2〕に記載のRNA増幅法。
〔4〕 逆転写酵素が、モロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(MMLV RT)であることを特徴とする前記〔3〕に記載のRNA増幅法。
〔5〕 前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のRNA増幅法を用いることを特徴とするHIV−1感染検出方法。
また、有機溶媒と耐熱性逆転写酵素を用いることにより、41℃以下の低温で実施できるという優れた性質を有し、より簡便な装置でもって検査することが可能である。
(a)配列番号:2の配列、
(b)配列番号:3の配列、
(c)配列番号:4の配列、
のいずれかを、
プロモーターリバースプライマーとして下記(d)〜(f):
(d)配列番号:5の配列
(e)配列番号:6の配列、
(f)配列番号:7の配列、
のいずれかを用いることを特徴とする。
また、標的RNAを含むRNAは溶液の状態で反応試薬と混合して反応溶液として増幅反応させる。標的RNA溶液と反応試薬の混合は、標的RNA溶液を基質試薬、2種類のプライマー試薬及び酵素試薬を含む反応試薬と混合しても良いし、標的RNA溶液を反応試薬を構成する基質試薬、2種類のプライマー試薬及び酵素試薬のいずれかに予め混合しておいても良い。
有機溶媒としてホルムアミドを用いる場合の濃度は反応溶液全量中の濃度が1〜5%であることが好ましく、3%が特に好ましい。
耐熱性逆転写酵素が有機溶媒に耐性であることにより、有機溶媒と耐熱性逆転写酵素を用いることにより低温で、RNase HのRNAを標的としたRNA増幅反応が行うことが可能である。
一定温度で60分程度の一定時間保持すれば、検体にHIV−1が内在していれば、HIV−1の増幅対象の遺伝子由来のRNAを増幅することができる。
リアルタイムPCRや塩基配列分析操作で用いられている核酸の蛍光標識試薬の技術を利用して、増幅RNA量が増加することによる蛍光信号強度の増加を検出することによっても、増幅したRNAの確認ができる。
あるいは、増幅RNAをメンブレンに転写固定して、ノーザンブロティングハイブリダイゼーションで検出確認してもよく、あるいは、核酸チップでのハイブリダイゼーションで検出してもよい。
その結果、特に、新興国でのHIV−1感染症の診断に大きく役立つと考えられる。
HIV−1ゲノムのRNase H領域に相当する配列番号:8で示されるTM−F、配列番号:9で示されるTM−Bを用いて、また、配列番号:1で示されるHIV-1 RT(HIV−1逆転写酵素) RNAを用いて、下記(a)〜(g)を混合した反応液を用いて、(h)で示す条件のPCRによりHIV−1 RT RNase HのDNAを増幅させた。
(a)水 17.5μL
(b)2x buffer 25μL
(c)dNTP 4μL
(d)10 μM TM−F 1μL
(e)10 μM TM−B 1μL
(f)HIV−1 RT RNA 1μL
(g)KOD DNA polymerase(東洋紡) 0.5μL
(h)95℃ 30秒、55℃ 30秒、72℃ 60秒、30サイクル
得られた増幅DNAをpET−22b(+)(クローンテック)を制限酵素XbaIとEcoRIで切断した。次に、これらの2種類の反応物を混合し、ライゲーション反応により目的のプラスミド(pET−HIVMRNaseHと命名)(図4)を作製した。
下記の方法によりRNA増幅反応を行った。
(a)基質試薬
水:25.9μL
1M MgCl2:5.6μL
1.9M Tris−HCl(pH 8.6):19.8μL
40U/μL RNase Inhibitor(タカラバイオ)0.6μL
100mM ジチオトレイトール(DTT) 3.3μL
2.5mM dNTP 33.0μL
58mM NTP 17.1μL
250mM ITP 4.8μL
(b)プライマー試薬P1
水:32.5μL
2M KCl:21.5μL
50μM フォワードプライマー:6.6μL
50μM プロモータリバースプライマー:6.6μL
ジメチルスルホキシド(DMSO):42.9μL
(c)プライマー試薬P2
水:2.5μL
ホルムアミド:30μL
2M KCl:21.5μL
50μM フォワードプライマー:6.6μL
50μM プロモータリバースプライマー:6.6μL
DMSO:42.9μL
(d)酵素試薬
19.8μM 耐熱性MΜLV RT(MM4):4.3μL
10mg/μL bovine serum albumin:4.0μL
20,000units/μL AMV−007(Life Sciences Advanced Technologies, Inc.):4.4μL
60%ソルビトール:11.1μL
T7 RNA ポリメラーゼ:31.2μL
なお、MM4はMMLV RTの286位のグルタミン酸残基がアルギニン残基に、302位のグルタミン酸残基がリシン残基に、435位のロイシン残基がアルギニン残基に、および524位のアスパラギン残基がアラニン残基に置換されることにより耐熱化されたものである(Increase in thermal stability of Moloney murine leukaemia virus reverse transcriptase by site−directed mutagenesis」、ジャーナル・オブ・バイオテクノロジー(Journal of Biotechnology)、2010年発行、第150巻、pp.299−306)。
(1)1×1010コピー/μLの標準RNA溶液(2.5μL)、基質試薬(5.0μL)、プライマー試薬(計5.0μLになるように混合)の混合物を各温度で5分間保温した。
(2)これに酵素試薬2.5μLを加え、各温度で60分間保温した。
(3)反応後、反応液にLoading Dye Solutionを加え、2%アガロース電気泳動にかけた(100Vで40分間、泳動バッファーはTAE)。
(4)ゲルを1μg/μLの臭化エチヂウムで染色した後、トランスイリミネータでバンドを解析した。
実施例1に記載する方法により、RNA増幅反応を行った。ただし、プライマーは表1の組合せ番号5と8を使用し、反応時間は0、10、20、30、40、50、60分間とした。結果を図3に示す。組合せ番号5では20分でバンドが見られたが、10分では見られなかった。一方、組合せ番号8では10分でバンドが見られた。このことから、組合せ番号8が最適と考えられた。
実施例1に記載する方法により、RNA増幅反応を行った。ただし、プライマーは表1の組合せ番号8を使用し、MM4濃度(nM)は0、0.93、2.89.3、28、93、280、ホルムアミド濃度は3%、反応時間は60分間とした。結果を図4に示す。MM4濃度が28nMあるいは93nMで濃いバンドが見られた。このことからMM4濃度は約50nMが最適と考えられた。
配列番号:2は、TM−F1の配列である。
配列番号:3は、TM−F2の配列である。
配列番号:4は、TM−F3の配列である。
配列番号:5は、TM−PR1の配列である。
配列番号:6は、TM−PR2の配列である。
配列番号:7は、TM−PR3の配列である。
配列番号:8は、TM−Fの配列である。
配列番号:9は、TM−Bの配列である。
配列番号:10は、HIV−1逆転写酵素のアミノ酸配列である。
Claims (5)
- 標的遺伝子の増幅遺伝子部分の両端を特異的に結合できる2種類のDNAプライマーと逆転写酵素およびRNAポリメラーゼを用いるRNA増幅法によりヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)のゲノムの一部のRNAを増幅する方法であって、HIV−1 RNase H RNA(配列番号:1の1198−1683に対応する486ヌクレオチド)の一部を標的とし、
フォワードプライマーとして下記(a)〜(c):
(a)配列番号:2の配列、
(b)配列番号:3の配列、
(c)配列番号:4の配列、
のいずれかを、
プロモーターリバースプライマーとして下記(d)〜(f):
(d)配列番号:5の配列
(e)配列番号:6の配列、
(f)配列番号:7の配列、
のいずれかを用い、
その組み合わせが、前記(a)と前記(d)、前記(b)と前記(d)〜(f)のいずれか及び前記(c)と前記(d)〜(f)のいずれかの組み合わせのいずれかであることを特徴とするRNA増幅法。 - 有機溶媒を加え、41℃以下の反応温度で、RNA増幅を行う請求項1に記載のRNA増幅法。
- 逆転写酵素として、耐熱性逆転写酵素を用いることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のRNA増幅法。
- 逆転写酵素が、モロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(MMLV RT)であることを特徴とする請求項3に記載のRNA増幅法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のRNA増幅法を用いることを特徴とするHIV−1感染検出方法。
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