上述した光偏向ミラーを用いた小型の走査型の測距装置または当該走査型の測距装置を用いた障害物検知装置を構成する場合には、例えば数mm角の偏向ミラーを150Hzから500Hzの範囲の比較的低い周波数で揺動して、例えば45°の走査角度範囲で測定光を走査する必要がある。
しかし、特許文献1に記載されたようなシリコン材を用いて製作した梁部は、例えば5mm角程度の比較的小型の反射ミラーを備えた可動部を比較的高い周波数で駆動する必要がある場合に好適な材料であり、例えば10mm角のような比較的大型の反射ミラーを備えた可動部を500Hz以下の周波数では駆動する場合には安定駆動できないという問題があり、またシリコン材は比較的容易にへき開するために、耐衝撃性を要求される用途には使用し辛いという問題もあった。
特許文献2に記載されたような導電性アモルファスアルミニウム合金を用いた梁部は、モノリシック製造工程で製作されるために製造コストが嵩むという問題があり、また十数μm角の光偏向ミラーを含めてサイズが微小であるために、ある程度のビーム径が要求される計測用途に用いるのは困難であるという問題もあった。
特許文献3に記載されたような金属をプレス加工して得られる梁部は、加工時にその表面に多数の微小な凹凸や傷が形成され、そこに応力振幅による応力の集中が起こるため、繰返し使用により微小な凹凸や傷が起点となって亀裂に成長し、疲労破壊を招き易いという問題があった。
特に、測定光を走査して測定光に対応する反射光に基づいて障害物の有無を検知する光走査装置は長時間連続して作動するため、例えば100Hzの周波数で使用しても1年間で30億回の応力振幅に耐える必要がある。
そのため、通常これらの金属部品は、数万回から数十万回、あるいは数百万回から数千万回の寿命試験、時間にして数十時間あるいは数百時間の寿命試験を行ない、その結果に基づいて算出した安全率を考慮した範囲で使用されているが、近年、数百万回から数千万回の応力振幅による評価では不足することが指摘されている。
表面の傷等に端を発する亀裂は高サイクル疲労と呼ばれ、内部の結晶欠陥等に端を発する亀裂は超高サイクル疲労と言われ、その評価には数億回あるいは数十億回の試験が必要となり、それに伴って試験時間も膨大になり、そこまでの寿命を保証するのは事実上困難である。
そこで、本願発明者は、可動部を比較的低い周波数範囲で揺動可能な梁部を長寿命で信頼性の高い金属弾性部材で構成することに想起し、可動部を揺動支持するために、一端側に固定側パッドが形成され他端側に可動側パッドが形成された金属棒状部であって、機械的加工法を除く物理的または化学的加工法を用いて断面積1mm2以下に成形された金属棒状部を提案している(特願2012−247796号)。
このような金属棒状部を捩じり梁部として用いて、可動部を150Hzから500Hzの範囲の比較的低い周波数で揺動しても何らの問題も生じないのであるが、それより大きな周波数、例えば1kHzを超えた周波数で揺動すると揺動振幅が著しく小さくなるという問題に遭遇した。梁部を構成する金属が内部摩擦で発熱して温度上昇し、共振周波数が大きく低下して揺動角度が小さくなるのである。
一般に金属は上昇温度が著しくなると疲労限度や破断限界の低下を招き、その寿命が低下して最悪の場合には破断する虞がある。また、ヤング率も温度と共に低下する傾向にあり、上述のようにバネとして使用する場合にはバネ定数が変化してしまう結果、揺動角度が小さくなると推定される。
fを周波数、σを変位角θのときの応力とすると、金属棒状部で生じる内部摩擦の発熱量Qは以下の式のように、fとσの関数で表すことができる。
Q=F(f,σ(θ))
つまり、周波数fを低くするか、変位角θを小さくすれば、金属棒状部の発熱量を抑えることができる。しかし、そうすると設計の自由度が大幅に制限されるので、安易に周波数fや変位角θを制限することができない。
そこで、特許文献4に記載されたような放熱構造を採用することも考えられるが、数mm2以下という極めて小さな断面積で薄肉に形成された金属棒状部では固体内の伝熱が殆ど期待できないため、実質的に作用できない。
また、非常に小型の金属棒状部自体が内部摩擦で発熱するため、冷却ファン等の冷却機構を配置することが物理的に困難であり、また風圧で揺動状態が変動する虞もある。
そこで、放射や対流による放熱特性を上げるために金属棒状部の表面積を大きく、つまり金属棒状部を幅広に形成すると、共振周波数が変化して目標の周波数で揺動駆動できないという問題もあった。
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、内部摩擦による発熱を効率よく放熱して、長期にわたり安定して動作可能な金属弾性部材及び当該金属弾性部材を用いた微小機械装置を提供する点にある。
上述の目的を達成するため、本発明による金属弾性部材の第一の特徴構成は、少なくとも一つの可動部と、固定部と、両側から前記可動部を前記固定部に支持する一対の梁部とを含み、前記梁部を捻り回転軸とする軸心周りに前記可動部を揺動可能な微小機械装置の前記梁部に用いられる金属弾性部材であって、互いに分離して構成され、前記可動部を10Hzから1800Hzの周波数範囲で揺動する所定長の一対の金属棒状部と、前記一対の金属棒状部の各々の一端側に形成され前記固定部に固定する固定側パッドと、前記一対の金属棒状部の各々の他端側に配置され前記可動部に固定する可動側パッドとを含み、少なくとも前記一対の金属棒状部は、研削加工物及び塑性加工物を除く物理的または化学的加工物により積層構造を除く一体構造で断面積が1mm2以下に成形されるとともに、前記捻り回転軸の延出方向に沿って配列され前記捻り回転軸と交差する方向に向けた複数の突起が延出形成され、前記金属棒状部の捻り動作に起因する内部摩擦による発熱を対流熱伝達するように構成されている点にある。
機械的加工法を除く物理的または化学的加工法を用いて梁部となる金属棒状部を形成すると、応力振幅により亀裂に成長するような傷が表面に形成される確率が非常に小さく、従って疲労強度が低下する虞が極めて低くなる。また、金属棒状部を断面積1mm2以下に成形することにより、それだけ良好な実効耐力を示す梁部が構成できるようになる。
このような金属棒状部に捻り回転軸と交差する方向に複数の突起を延出形成すると、梁部の揺動に伴って突起が雰囲気中で変位し、このときの風の流れで対流熱伝達が発生する。この現象を利用して金属棒状部の捻り動作に伴なう内部摩擦による発熱を効率的に放熱することができるようになり、長期間安定して捻り動作を継続させることができるようになるのである。
同第二の特徴構成は、上述の第一の特徴構成に加えて、前記固定側パッドに前記固定部に対する位置決め用の孔が形成され、及び/または、前記可動側パッドに前記可動部に対する位置決め用の孔が形成されている点にある。
固定側パッドに形成された位置決め用の孔を介して固定側パッドが固定部に精度よく位置決めされて取り付けられ、可動側パッドに形成された位置決め用の孔を介して可動側パッドが可動部に精度よく位置決めされて取り付けられるようになるので、安定動作が実現できる。
同第三の特徴構成は、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記金属棒状部のばね定数が、前記突起が形成されていない金属棒状部のばね定数の±5%の範囲に調整されるように、前記金属棒状部に前記突起が形成されている点にある。
金属棒状部に突起を延出形成することによって、突起が形成されていない金属棒状部のバネ定数から大きく変化すると、金属棒状部の捻り動作で可動部を揺動駆動する際に、目標となる揺動周波数で駆動することが困難になり、新たに金属棒状部を設計する煩雑な作業が生じる。しかし、ばね定数の変動が±5%の範囲内に収まる範囲内で、突起が延出形成されていれば、設計の自由度を損なうことが無くなる。
同第四の特徴構成は、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記突起の最大幅が前記金属棒状部の幅の1.5倍以下に設定され、前記突起の最大長さが前記金属棒状部の幅の3倍以下に設定されている点にある。
突起の最大幅が金属棒状部の幅よりも長くなると、風圧を受けて円滑に揺動できなくなる虞が強く、突起の最大長さが金属棒状部の幅の3倍より長くなると、揺動時の慣性力が大きくなって円滑に揺動できなくなる虞が強くなる。つまり、目標とする揺動周波数で駆動できなくなる。突起の最大幅が金属棒状部の幅の1.5倍以下に設定され、突起の最大長さが金属棒状部の幅の3倍以下に設定されていれば、適切に放熱しながら目標とする揺動周波数で安定駆動させることができるようになる。
同第五の特徴構成は、上述の第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、ステンレス材、炭素工具鋼材、またはみがき鋼材の何れかのテンションアニール処理材で構成されている点にある。
テンションアニール法で圧延されたステンレス材、炭素工具鋼材、またはみがき鋼材の何れかの金属を用いて金属弾性部材を構成すれば、長期にわたり安定して動作可能な梁部が得られる。
同第六の特徴構成は、上述の第一から第五の何れかの特徴構成に加えて、前記物理的または化学的加工物に収束イオンビーム加工物、エッチング加工物、及びメッキ加工物が含まれる点にある。
研削加工物及び塑性加工物を除く物理的または化学的加工物として、収束イオンビーム加工物、エッチング加工物、及びメッキ加工物を好適に用いることができる。
本発明による微小機械装置の第一の特徴構成は、少なくとも一つの可動部と、固定部と、両側から前記可動部を前記固定部に支持する一対の梁部とを含み、前記梁部を捻り回転軸とする軸心周りに前記可動部を揺動可能な微小機械装置であって、前記梁部が上述の第一から第六の何れかの特徴構成を備えた金属弾性部材で構成されている点にある。
上述の構成によれば、揺動等の動作によって金属弾性部材に発生する熱を良好に放熱して長期にわたり安定して作動する微小機械装置が得られる。
同第二の特徴構成は、上述の第一の特徴構成に加えて、前記可動部にコイルが形成されるとともに、前記固定部に磁界形成部が設けられ、前記コイルに流れる電流と前記磁界形成部により形成される磁界によって発生する電磁力で前記可動部が揺動するように構成され、前記梁部は、前記可動部を支持する機能と、前記コイルに通電する導電体としての機能と、前記可動部を基準位置に戻すばねとしての機能を備えている点にある。
例えば、可動部に形成されたコイルに交流電流を供給すれば、コイルに流れる交流電流と固定部に備えた永久磁石により形成される磁界とによってコイルに作用するローレンツ力により、梁部で支持された可動部が繰り返し揺動される。このような梁部は、長期にわたり金属疲労を招くことなく、安定して可動部を支持できるようになる。
同第三の特徴構成は、上述の第二の特徴構成に加えて、前記可動部に、入射光を反射して偏向走査する光偏向面が形成されている点にある。
可動部に光偏向面を形成すれば、光偏向面で偏向された光が、可動部の揺動に伴って繰返し所定の走査角度範囲で安定して走査されるようになる。
以上説明した通り、本発明によれば、内部摩擦による発熱を効率よく放熱して、長期にわたり安定して動作可能な金属弾性部材及び当該金属弾性部材を用いた微小機械装置を提供することができるようになった。
以下、本発明による金属弾性部材及び当該金属弾性部材を用いた微小機械装置を図面に基づいて説明する。
図1及び図4には、走査型の測距装置等に用いられる微小機械装置1が示されている。微小機械装置1は、固定部2となる枠体と、可動部3となる平坦な板状体と、固定部2に対して可動部3を軸心P周りに揺動可能に支持する一対の梁部4,4と、梁部4,4を挟んで可動部3の両側に配置された永久磁石5,6と、上部カバー体8等を備えている。
固定部2はポリカーボネート等の樹脂製の直方体部材で構成されている。固定部2の中央部に、平面視で可動部3よりもやや大きな面積で、厚み方向に刳り抜かれた開口空間が形成され、その開口空間に可動部3が配置されている。
梁部4,4は金属弾性部材で構成されている。金属弾性部材は、所定長の金属棒状部4aと、金属棒状部4aの一端側に形成され固定部2に固定する固定側パッド4bと、金属棒状部4aの他端側に形成され可動部3に固定する可動側パッド4cとを備えている。
断面が“コ”の字形で、透磁率が高い部材で構成される磁性体保持部7に、一方5がN極、他方6がS極となるように永久磁石5,6が対向配置されている。永久磁石5,6は、固定部2の開口空間に、可動部3を挟むように下方から挿入固定されている。
可動部3は、ガラス基板またはシリコン基板に金またはアルミニウム等が蒸着された偏向ミラー3aと、ガラスエポキシ基板に銅製のコイルCと電極パッドEが印刷形成されたコイル基板3cと、それら間に配置される同じくガラスエポキシ製のスペーサ3bを備えている。
一対の梁部4,4の各可動側パッド4cが電極パッドEに接触するように位置決めされ、導電性接着剤を用いて偏向ミラー3aとコイル基板3cとの間に接着固定されている。尚、コイル基板3cを、エポキシ樹脂等を用いた各基板層にコイルパターンを形成し、各基板層のコイルをビアで連結した多層基板で構成してもよい。
一対の梁部4,4を介してコイルCに交流電流を印加すると、コイルCに流れる交流電流と固定部2に備えた永久磁石5,6により形成される磁界とによってコイルCにローレンツ力が作用し、当該ローレンツ力によって梁部4,4で支持された可動部3が繰り返し揺動される。
即ち、微小機械装置1は、少なくとも一つの可動部3と、固定部2と、両側から可動部3を固定部2に支持する一対の梁部4,4とを含み、梁部4を捻り回転軸とする軸心P周りに可動部3が揺動可能に構成されている。そして、梁部4,4は、可動部3を支持する機能と、コイルCに通電する導電体としての機能と、可動部3を基準位置に戻すばねとしての機能を備えている。さらに、可動部3に、入射光を反射して偏向走査する光偏向面が形成されている。
可動部3を揺動駆動する周波数、つまりコイルCに印加する交流電流の周波数は、可動部3を含む梁部4,4の機械的共振周波数から僅かにずらせた周波数に設定することが好ましく、可動部3の大きさ、金属棒状部4aの断面積と長さとその物理的特性に依存して50Hzから約1kHzの範囲で設定可能である。
例えば、可動ミラーの面積が12mm×12mmの場合で、本発明による金属弾性部材を用いた梁部4の場合には、10Hzから1800Hzの周波数範囲、特に150Hzから500Hzの周波数範囲が好適である。
図2(e)に示すように、梁部4,4は、一端側に固定側パッド4bが形成され他端側に可動側パッド4cが形成された一対の金属棒状部4aが、枠体40の内部で、直線上に対称に配置され、各パッド4b,4cが支持部41を介して枠体40に固定されるように一体に形成されている。
図3(a)に示すように、先ず、固定部2に設けられた一対の位置決めピン2pが各固定側パッド4bに形成された一対の位置決め用の孔部に嵌め込まれて接着固定される。
次に、図3(b)に示すように、可動側パッド4cに形成された一対の位置決め用孔部の上方から、偏向ミラー3aの裏面に形成された一対の位置決めピンが嵌め込まれ、次に可動側パッド4cの下方から開放空間を通してスペーサ3bがあてがわれ、さらにコイル基板3cに形成された一対の位置決め用孔部に偏向ミラー3aの位置決めピンが嵌め込まれ、それぞれが接着剤で接着固定される。
その後、図3(c)に示すように、各支持部41が切断されて枠体40が離脱され、さらに固定部2の上方から上部カバー体8(図1参照)が被覆されて、固定側パッド4bが確実に固定される。一対の金属棒状部4aで構成されるねじり回転軸の直線性が高精度に保たれた状態で可動部3を支持できるようになり、しかも組立作業も簡素化できるようになる。
図5(a),図5(b)には、コイル基板3cに形成された電極パッドEと、梁部4,4の一端部に形成された可動側パッド4cとが、スペーサ3bを介して電気的に接触するように位置決め配置された状態が示されている。スペーサ3bは中央部が絶縁部材33で形成され、両端部が金属部材34で構成されている。各電極パッドE,Eと各可動側パッド4c,4cとが金属部材34,34を通して電気的に接続されている。当該構成については後に図7に基づいて詳述する。
図3(c)に示すように、固定部2に設けられた位置決めピン2pは金属で構成され、梁部4,4を介してコイル基板3cに形成されたコイルCに交流電流を印加する電極ピンとなる。
図6に示すように、レーザダイオード等の発光素子LDから光学レンズ(図示せず)を介して平行光に形成された測定光を偏向ミラー3aに入射させ、コイルCに交流電流を印加すると、梁部4,4を捻り回転軸とする軸心P周りに偏向ミラー3aが揺動し、発光素子LDからの入射光が偏向ミラー3aで偏向され、偏向ミラー3aの揺動角度の2倍の角度で反射光が偏向走査される。例えば、偏向ミラー3aの揺動角度を±11.25°に設定すると、±22.5°の走査角度範囲で反射光が走査される。
梁部4,4は、テンションアニール法で圧延されたステンレス材、炭素工具鋼材、またはみがき鋼材の何れかの金属を用いて、プレス加工等の機械的加工法を除く物理的または化学的加工法で形成される。テンションアニール法とは、ステンレス材等に一定の引っ張り応力をかけながら、高温下の水素ガスを含む窒素ガス雰囲気中で一定時間の放置を行なう処理のことをいう。物理的または化学的加工法として、集束イオンビーム法、エッチング法、及びメッキ法(電鋳法)が好適に用いられる。
図2(a)から図2(e)には、化学的加工法の一例であるエッチング法を用いて、梁部4,4を構成する金属弾性部材の製作過程が示されている。本実施例では、SUS304CSP−Hのテンションアニール材を用いている。
所定厚さ(本実施形態では0.2mm)のステンレス薄板42(図2(a)参照)の表面にフォトレジスト43を均一に塗布し(図2(b)参照)、金属棒状部4a、固定側パッド4b、可動側パッド4c、枠体40、支持部41に対応する領域が遮光されるように形成されたフォトマスク(図示せず)を介して光露光する(図2(c)参照)。
露光された領域のフォトレジスト43bを所定のエッチング液で除去すると、ステンレス薄板42の表面のうち、枠体40や梁部4に対応する領域にのみフォトレジスト43層が形成される(図2(d)参照)。
その後、ステンレス薄板42の表面にステンレスを溶かすエッチング液を吹きかけて徐々にエッチング処理を進め、エッチング処理が完了すると溶剤でフォトレジスト43を除去する。以上のプロセスによって、一端側に固定側パッド4bが形成され他端側に可動側パッド4cが形成された一対の金属棒状部4aが、枠体40の内部で直線上に対称に配置され、各パッド4b,4cが支持部41を介して枠体40に固定されるように一体に形成された金属弾性部材が出来上がる(図2(e)参照)。
メッキ法を用いて金属弾性部材を製作する場合には、図2(d)に示したフォトレジスト43の形状が凹部となる所定深さの型枠を作成し、型枠に離型材を塗布した後に、金属イオンを含む電解液を満たし、電解液中の金属を電着させることにより製作することができる。
梁部4を構成する金属棒状部4aをプレス加工や研削加工等の機械的加工(塑性加工)法で形成すると、加工時に表面にできる複数の微小な傷に、応力振幅に起因する応力の集中が起こり、微小な傷が起点となって亀裂に成長して、疲労強度が低下するため、可動部3を長期にわたり安定して揺動することができない。
しかし、機械的加工法を除く物理的または化学的加工法を用いて梁部となる金属棒状部4aを形成すると、応力振幅により亀裂に成長するような傷が表面に形成される確率が非常に小さく、従って疲労強度が低下する虞が極めて低くなる。
一般に金属材料の諸物性、例えば耐力等は10mm径(断面積78.5mm2)の試験片に基づいて測定されるが、少なくとも試験片の1桁以下の寸法(1mm径(断面積0.785mm2)以下)で作製された試験片の耐力は公表されている値よりも大きな値になる傾向があり、断面積を微小にすることで実効耐力が数十%高い値を示すことが想定できる。
対象物の表面の傷の存在確率が一定であるならば、超高サイクル疲労の亀裂の基点となる傷の絶対数が小型化による表面積の減少に伴って減少する結果、或いは、対象物の内部の欠陥確率が同一であるならば、超高サイクル疲労の亀裂の基点となる内部欠陥の絶対数が体積の減少により減少する結果、耐久性や耐力が増加すると定性的に理解されているためである。
限度はあるが、物質は小さくなればその物質本来の物性値に近くなると考えられる。本願発明者は、10mm径の試験片で得られた捻り方向の疲労限界が機械角±9.25°であるのに対して、同じ金属材料を用いて0.2mm×0.25mmの断面を持つ金属梁では機械角±15.5°であることを実験により確認している。
捻り部分の最大応力は1.4倍程度であり、断面寸法が1桁下がると20%程度丈夫になるという当業者による経験上の知見を考慮すれば、2桁小さいサイズ効果から1.2×1.2=1.4倍程度に疲労限度が上昇することになる。このような耐久性、耐力の上昇は、上述した定性的な一般的理解から定量的理解へと実験を行った結果により裏付けられている。
そこで、金属棒状部を断面積1mm2以下に成形することにより、それだけ良好な実効耐力を示す梁部が構成できるようになり、周波数150Hzから500Hzの範囲で可動部3を長期にわたり安定して揺動することができるようになる。尚、可動部3を構成する偏向ミラー3aの揺動角度は±11.25°に制限されることは無く、微小機械装置1の用途に応じて適宜設定される値である。
図2(e)に示す梁部4,4を構成する金属棒状部4aは、断面積が1mm2以下に形成されていればよく、0.001mm2〜1mm2の範囲で成形されていることが好ましい。
本実施形態では、金属棒状部4aは幅Wが1.0mm、厚さTが0.2mm、長さLが5mmに形成され、断面積Sが0.20mm2に形成されている。尚、微小機械装置1の各部の大きさは以下の通りである。固定部2は幅23mm、奥行き26mm、厚さ5.5mm、可動部3は幅12.0mm、奥行き12.0mm、厚さ2.0mmに形成されている。
本発明による金属弾性部材を構成する金属棒状部4aには、さらに捻り回転軸つまり金属棒状部4aの長手方向と交差する方向に複数の板状の突起4dが延出形成されている。当該突起4dは、図2(a)から図2(e)で説明した手順で製作され、幅が0.5mm、長さが0.5mm、厚さが0.2mmに形成されている。
梁部4の揺動に伴って突起が雰囲気中で変位し、このときの風の流れで対流熱伝達が発生する。この現象を利用して金属棒状部4aの捻り動作に伴なう内部摩擦による発熱を空気への放熱によって効率的に冷却でき、周波数500Hzから数kHzの範囲で揺動しても発熱による共振周波数の低下が回避され、長期間安定して捻り動作を継続させることができるようになる。つまり、突起4dが放熱フィンとして機能する。
図12(a)に示すように、突起4dの最大幅Wbは金属棒状部4aの幅Wの1.5倍以下、好ましくは0.5倍〜1.0倍の範囲に設定されることが好ましく、突起4dの最大長さLbは金属棒状部4aの幅Wの3倍以下、好ましくは0.5倍〜1.5倍の範囲に設定されていることが好ましい。
上述の条件を満たしたうえで、さらに突起4dの配列ピッチPbが、金属棒状部4aの幅Wの0.5以上、好ましくは0.75倍から1.5倍の範囲に設定されていることが好ましい。配列ピッチPbが大きくなると突起4dの数が少なくなり、放熱効果が低下する。
突起4dの幅が金属棒状部4aの幅Wよりも長くなると、風圧を受けて円滑に揺動できなくなる虞が強く、突起4dの長さが金属棒状部4aの幅Wの3倍より長くなると、揺動時の慣性力が大きくなって円滑に揺動できなくなる虞が強くなる。つまり、目標とする揺動周波数で駆動できなくなる。従って、上述の範囲に設定されていれば、適切に放熱しながら目標とする揺動周波数で安定駆動させることができるようになる。
金属棒状部4aのばね定数が、突起4dが形成されていない金属棒状部、つまり幅Wが1.0mm、厚さTが0.2mm、長さLが5mmに形成され、断面積Sが0.20mm2に形成されている金属棒状部のばね定数の±5%の範囲に調整されるように、好ましくは±3%の範囲に調整されるように、金属棒状部4aに突起4dが形成されていることが好ましい。
金属棒状部4aに突起4dを延出形成することによって、突起4dが形成されていない金属棒状部のバネ定数から大きく変化すると、金属棒状部の捻り動作で可動部を揺動駆動する際に、目標となる揺動周波数で駆動することが困難になり、新たに金属棒状部を設計する煩雑な作業が生じる。しかし、ばね定数の変動が±5%の範囲内に収まる範囲内で、突起が延出形成されていれば、設計の自由度を損なうことが無くなる。
図1から図9には、何れも矩形形状の同一形状の突起4dが示されているが、突起4dの形状は矩形形状に限定されることはなく、任意の形状を採用することができる。
例えば、図12(b)に示すように、基端側よりも先端側が幅狭になる台形状に形成してもよいし、基端側よりも先端側が幅広になる逆台形状に形成してもよい。さらには先端が尖った三角形状に形成されていてもよい。
また、金属棒状部4aの左右両側に形成される複数の突起4dを同じピッチで対称に形状に形成した例を示したが、可動部の揺動時に金属棒状部4aに作用する正逆方向の慣性モーメントに大きなアンバランスが生じない範囲であれば、左右で突起4dの形成位置を僅かにずらせてもよいし、全ての突起が同一形状に形成されている必要もない。
さらに、突起4dが金属棒状部4aの左右両側ではなく、金属棒状部4aの上下面に垂直に形成されていてもよい。この場合、エッチング法での形成は困難であるので、三次元プリンタを用いて形成した型枠に離型材を塗布した後に、金属イオンを含む電解液を満たし、電解液中の金属を電着させることにより製作するメッキ法を用いることができる。
突起4dの延出方向は、金属棒状部4aの長手方向と交差する方向であればよく、必ずしも垂直に延出形成されていなくてもよい。金属棒状部4aが揺動する際に雰囲気と接触して放熱できるように形成されていればよい。
図11(a)には、断面積0.05mm2、長さ4mmで、突起4dが形成されていない梁4を用いて、面積144mm2(12mm×12mm)の偏向ミラー3aを駆動周波数200Hz(共振周波数平均:188.6Hz)で揺動したときの破断試験の結果であるS−N線図が示されている。
白丸はSUS304CSP−Hテンションアニール材で構成された梁の特性、黒丸はSUS304CSP−Hストレスリリース材で構成された梁の特性、黒三角は時効処理済みCoNi合金材(高耐久性を謳っている材料)で構成された梁の特性である。縦軸のOptical angleは測定光の全振れ角で例えばOptical angle 60°の場合は測定光の振れ角は±30°、偏向板の振れ角は±15°となる。
試験の結果、黒丸及び黒三角は破断に到った。一方白丸(テンションアニール材)の場合、Optical angle 70°以上では破断に到ったが、Optical angle65°以下の場合は揺動サイクル1億回を超えても破断に到るサンプルは無かった。Optical angle 62°における白丸と黒丸のように、バネ材として好適なステンレスSUS304CSP−Hであっても、テンションアニールの有無で破壊サイクルが2桁以上変わることが明らかになった。
図11(b),図11(c)には、偏向ミラー3aの面積、梁の断面積、梁の長さを変化させたときの共振周波数のシミュレーションの結果が示されている。試作した可動ミラー(条件1:面積12mm×12mm、梁断面積0.05mm2、梁長4mm、実測共振周波数平均188.6Hz、及び条件2:面積12mm×12mm、梁断面積0.16mm2、梁長5mm、実測共振周波数平均400.7Hz)でシミュレーションパラメータをフィッティングして、他の条件のシミュレーションを実施した。偏向ミラー及び梁の形状を変えることにより、共振周波数が変化して50Hzから1KHz超で遥動可能であることが確認された。
図11(b)は、条件1に基づくシミュレーション結果であり、梁の長さを4mmに固定し、梁の断面積を変化させた場合の共振周波数の変化が示されている。図中、系列1は偏向ミラー20mm×20mm、系列2は偏向ミラー16mm×16mm、系列3は偏向ミラー12mm×12mm、系列4は可動ミラー8mm×8mmである。
図11(c)は、条件2に基づくシミュレーション結果であり、梁の長さを5mmに固定し、梁の断面積を変化させた場合の共振周波数の変化が示されている。図中、系列1は偏向ミラー20mm×20mm、系列2は偏向ミラー16mm×16mm、系列3は偏向ミラー12mm×12mm、系列4は可動ミラー8mm×8mmである。
しかし、約1kHz以上の周波数で長時間にわたって揺動させると、梁部の発熱によって共振周波数が低下し、揺動振幅が小さくなるという現象が生じる。
図14には、梁部に対して放熱フィンとして機能する突起4dを形成した場合の共振周波数と最大主応力を有限要素法で解析した結果が示されている。梁部を構成する金属棒状部4aは、幅Wが1.0mm、長さLが4.0mm、厚さTが0.25mmに設定され、金属棒状部4aの左右側部に、幅がW(1.0mm)、ピッチがW(1.0mm)、長さがnW、つまり金属棒状部4aの幅Wの実数n倍の値に設定されている。最大主応力は金属棒状部4aによって揺動される反射ミラーの機械角を10度とした場合の解析値である。また、突起先端速度は、長さを変化させて、機械角10度で揺動させたときの突起の先端部の速度である。突起4dが金属棒状部4aの左右両側に形成されることを考慮して片方の突起4dの先端部の速度を2倍した値でプロットしている。
突起先端速度は、突起長さが長くなるほど上昇し、それだけ冷却能力が上昇していることを示している。解析の結果、突起長さが3W程度の範囲まで最大主応力に大きな変化が見られず、また共振周波数も約1200Hzで安定していることが判明した。同様の解析を金属棒状部4aの厚さTを0.2mm、0.3mmに変えて解析しても同様の特性が得られた。但し、厚さTを0.2mmにした場合には共振周波数が約900Hzで安定し、厚さTを0.3mmにした場合には共振周波数が約1500Hzで安定した。
これらの結果に基づいて、幅Wが0.8mm〜1.0mm、長さLが4.0mm〜9.0mm、厚さTが0.25mmに設定され、金属棒状部4aの左右側部に、幅がW(1.0mm)、ピッチがW(1.0mm)、長さが0.65W(0.65mm)の梁部を製作し、その試作梁部に対して共振実験を行なった。その結果、数百Hzから1800Hzの範囲まで極めて安定して長時間搖動駆動させることができることが判明した。実験では周波数上限を1800Hzにしたが、さらに高い周波数まで安定駆動できると推測している。
図7には、金属棒状部4aの各端部に固定側パッド4b及び可動側パッド4cが形成された金属弾性部材と、可動部3を構成する上方のガラス基板3a、下方のガラスエポキシ基板(例えば偏向ミラーとコイル基板)3c及びスペーサ3bの位置関係が示されている。
上方のガラス基板3aの底面には、軸心Pと直交する方向に第1溝部30が形成されるとともに、軸心Pに沿う方向に一対の第2溝部31,31が形成されている。第1溝部30の深さは可動側パッド4cの厚みより僅かに深く形成され、第2溝部31,31の深さは第1溝部30の深さよりさらに深く形成されている。
可動側パッド4cの位置決め用の孔部に第1溝部30に形成された一対の位置決めピン3Pを挿通した状態で、第1溝部30にスペーサ3bを挿入して、第1溝部30の底面とスペーサ3bの上面との間で可動側パッド4cを挟むように接着する。さらに、当該一対の位置決めピン3Pが下方のガラスエポキシ基板に形成された一対の位置決め用の孔部に挿通するように位置決めして上下のガラス基板、ガラスエポキシ基板を接着する。
スペーサ3bのうち、コイル基板3cに形成された電極パッドEと金属弾性部材の可動側パッド4cとが対向する両端部には、両者を電気的に接続するために金属部材が配され、スペーサ3bは、それら一対の金属部材の間に絶縁部材を配置して構成されている。
このように上方のガラス基板3aに第1溝部30及び第2溝部31,31を形成すると、金属棒状部4aが上下のガラス基板3a,ガラスエポキシ基板3cと接触しない状態でその姿勢が保持されるようになり、金属棒状部4aの捻り動作時にガラス基板3a,ガラスエポキシ基板3cと接触するような不都合が解消できる。
しかも、上方のガラス基板3aを偏向ミラーとして機能させ、その偏向面の面積を大きくする必要がある場合でも、このような構成を採用すれば、金属棒状部4aの長さを短くする必要もない。
図5(a),図5(b),及び図7で説明した梁部4と可動部3との接続態様は一例であり、本願発明による梁部4と可動部3との接続態様がこのような構成に限定されるものではない。
例えば、図5(c)に示すように、可動側パッド4cが上下のガラス基板3a,ガラスエポキシ基板3cの縁部近傍に固定され、金属棒状部4aが上下のガラス基板3a,ガラスエポキシ基板3cで覆われないように配置される場合であれば、上部ガラス基板3aの縁部に可動側パッド4cを収容する凹部が形成されていればよく、スペーサを設ける必要は無い。
また、図8及び図9に示すように、偏向ミラー3aの偏向面が永久磁石5,6の高さよりも高くなるように、偏向ミラー3aと可動側パッド4cとの間に、例えばポリカーボネート製のスペーサ部材3d,3eを挿入してもよい。このように偏向ミラー3aの偏向面を嵩上げすれば、偏向ミラー3aの揺動時に、偏向ミラー3aで偏向される測定光が永久磁石5,6の立ち上がり部で遮られる虞がなくなる。
図10には、上述した金属弾性部材とは異なる形状の金属弾性部材が示されている。金属棒状部4aは、幅0.1mm、厚さ0.05mm、長さ1.50mmに形成され、断面積が0.005mm2に形成されている。
本発明による金属弾性部材を構成する金属棒状部4aは、その断面積が1mm2以下に形成されていればよく、その幅、厚さ、長さは適宜設定することができる。また、固定側パッド4b及び可動側パッド4cの形状も特に制限されることなく、それが組み込まれる微小機械装置に合わせればよい。
本発明による微小機械装置の用途は、走査型の測距装置に限らず、プロジェクタやレーザプリンタ等の光を走査する必要があるデバイスに適用できる。例えば、可動部3を構成する上方のガラス基板3aに発光素子を組み付け、走査角度に応じて微小機械装置を走査方向と直交する方向に揺動させつつ、発光素子の発光状態を制御すればプロジェクタやレーザプリンタ等の画像形成エンジンを実現できる。
さらに本発明による金属弾性部材および微小機械装置は、高速試験が可能な金属疲労試験の試料としても好適である。
一般的な疲労試験装置は10Hz最高でも100Hz程度の繰返しサイクルで行われるため、高サイクル疲労の評価は100万回から1000万回程度なので100Hz試験でも約3時間で100万回〜約2日1000万回となる。しかし、近年着目されている超高サイクル疲労1億回〜10億回となると、その10倍〜100倍の時間が必要で、仮に100Hzの試験機で1ヶ月2億9千万回の試験であり、複数個行う疲労試験の性質上、年単位で高価な試験装置を占有せねばならない。また、さらに高速の試験機では冷却機構が必須で、試料の温度上昇では試料そのものの特性が著しく低下するため試験結果の信頼性の吟味が必要であった。
一方、本発明の金属弾性部材、微小機械装置においては12mm×10mmミラーで共振周波数400Hz,全振幅45度126億回の遥動動作が確認されており、1KHzを超える周波数での揺動動作する金属弾性部材、微小機械装置も設計可能であることから、疲労試験試料に本発明の金属弾性部材、微小機械装置を備えることで従来の一般的な疲労試験装置に比べ4倍〜10倍の高速試験が実現できる。また本発明では、例えば小型の試験片を光偏向装置として組み立てれば、偏向角をレーザーで正確に読み取ることができ、複数個同時に試験を実施することも可能となる。さらに自己冷却機構形状で行うため、特別な冷却装置も必要ない。予めねじり角と発生応力の関係を明確化することで、極めて安価にすばやく正確に実験結果が得られる。
上述した実施形態では、一対の梁部4,4で支持される一つの可動部3を一つ備えた微小機械装置1を説明したが、一つの微小機械装置1に一対の梁部4,4で支持される一つの可動部3を複数組設けた構成を採用してもよい。
上述した実施形態では、金属弾性部材は、金属棒状部4aの一端側に固定側パッド4bが形成され、他端側に可動側パッド4cが形成された金属弾性部材を説明したが、本発明による金属弾性部材は、可動部を揺動する所定長の金属棒状部と、金属棒状部の一端側に形成され固定部に固定する固定側パッドとを含み、捻り回転軸と交差する方向に複数の突起が延出形成されていればよい。
例えば、図13に示すように、一対の金属棒状部4aを、可動部取付け部3aを介して一体に形成し、一体化された金属棒状部4aの両端部に夫々固定側パッド4bを形成してもよい。図13は、図2(a)から図2(d)で説明した製作プロセスと同様の製作プロセスで製作することができ、図中の符号41は、金属弾性部材を枠体40に固定するための支持部41である。
上述した実施形態では、固定部に磁界形成部としての永久磁石を設けるとともに、可動部にコイルを設けたが、逆に可動部に永久磁石を設け、固定部にコイルを設けてもよい。この場合もコイルに交流電流を印加することでローレンツ力を発生させ、可動部を駆動することができる。
固定部と可動部の双方にコイルを設け、何れか一方のコイルには直流電流を印加して磁界形成部として作用させ、他方のコイルに交流電流を印加することでもローレンツ力を発生させ、可動部を駆動することができる。
さらに、可動部の駆動方式は上述したような、ローレンツ力を用いて駆動させる方式に限定されるものではなく、例えば固定部と可動部の夫々に電極を設け、静電気力によって駆動させる方式を用いることもできる。
上述した実施形態は、何れも本発明による金属弾性部材及び当該金属弾性部材を用いた微小機械装置の一例を説明したものであり、該記載により本発明の技術的範囲が限定されるものではなく、また突起の具体的な形状、サイズ、ピッチ等は本発明による作用効果を奏する範囲において適宜設定できることはいうまでもない。