JP5327813B2 - 光走査装置 - Google Patents
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Description
一方の固定電極7aのパッド8aと、トーションバー3a、3bのパッド4a、4bとの間に所定の電圧を印加すると、これらパッド4a、4bにつながるミラー電極部5に電圧が印加され、固定電極7aとミラー電極部5の表面にお互いに逆の極性の電荷が蓄積してコンデンサが構成され、固定電極7aとミラー電極部5との間に静電引力が働き、ミラー2は回転が開始される。次に、ミラー2が元の位置に復帰された後は、今度は反対側の固定電極7bとミラー電極部5との間に電圧を印加することにより、今度は、回転方向は逆であるがミラー2が回転される。このような動作を繰り返して行うことにより、ミラー2は版と警報光及び時計方向のそれぞれの最大回転位置にまで回転する動作を繰り返す揺動動作が行われることになる。
この光スキャナは、図15に示すように、光を反射するための板状のマイクロミラー1と、一直線上に位置してマイクロミラー1の両側を支持する一対の回転支持体2と、一対の回転支持体2が接続され、ミラー1の周辺を囲う枠部3と、枠部3に並進運動を加える圧電素子4とを備え、かつ、一対の回転支持体2を結ぶ直線上以外の場所にミラー1の重心を位置させた構成となっている。
圧電素子4に電圧を加えると、圧電素子4は伸縮を行い、Z軸方向に振動し、この振動は枠部3に伝達される。マイクロミラー1は、駆動された枠部3に対して相対運動を起こし、Z軸方向の振動成分がマイクロミラー1に伝えられると、マイクロミラー1はX軸回転支持体2で成す軸線に対して左右非対称の質量成分を持つので、X軸回転支持体2を中心にマイクロミラー1に回転モーメントが生じる。このようにして、圧電素子4によって枠部3に加えられた並進運動は、マイクロミラー1のX軸回転支持体2を中心とした回転運動に変換される。
このように、ミラー2の少なくとも周辺領域あるいは表面に電極部5を、また、トーションバー3a、3bにパッド4a、4bを、さらに、支持基板1の両側位置の表面上に絶縁体6を介してそれぞれ固定電極7a、7b及びパッド8a、8bを、形成するため、構造が複雑になり、故障発生の要因が増加するだけでなく、製造に時間がかかり、コストアップにつながるという問題があった。
また、装置がX−Y軸方向だけでなくZ軸方向にも厚みが必要であり、薄型化が困難であった。
〔板波発生原理〕
板波を基板10に発生させるには、基板上に固定された圧電体を振動させる。このとき上記圧電体は、基板上に直接形成された圧電膜である場合、板波の励起効率は高くなる。以下では、この様な圧電膜を用いた場合の板波発生原理を説明する。圧電膜11への厚み方向に印加される電圧により、基板10の面に平行方向に伸縮する横方向変位モード(d31モード)を主に利用するのが効率的で、この場合、圧電膜11直下の基板10は圧電膜11と一緒に、図1に示すように曲げたわみを生じ、基板10に板波を発生する。すなわち、図1(a)に示すように圧電膜11側にプラスの電圧を印加すると圧電膜11は延び、逆に図1(b)に示すように圧電膜11側にマイナスの電圧を印加すると圧電膜11は縮む。この時、基板10上に発生された板波は、図2に示す捻れ梁部12で支持された水平状態にあるミラー部13に回転モーメントを与える力を作用させることができ、捻れ振動を誘起する。なお、このときミラー部13が捻れ梁部12の軸に対し垂直方向(Y軸方向)の重心位置からずれた位置(L1≠L2)で支持されていれば、板波がミラー部近傍に発生する基板面に垂直なZ軸方向の上下振動により、容易にミラー部に回転モーメントを生じさせられるが、ミラー部13がその重心位置(L1=L2)で捻れ梁部12により支持されていても、振動発生源である圧電膜11が基板10上のミラー部13の配置場所に対しX軸方向に対し非対称な位置に配置すれば、ミラー部13ならび捻れ梁部12近傍に回転モーメントを与える捻れ振動を誘起し、その結果ミラー部13に回転モーメントを生じせしめ、光ビームを走査するような捻れ振動動作を実現することができる。
また、基板10は片持ち状にその一端が支持されることで、上記板波の振動エネルギーは、ミラー部13近傍に解放されやすくなり、より効率的にミラー部13に回転モーメントを与えやすくなり、より効率的に捻り振動を発生できる。
尚、上記ミラー部の捻れ振動駆動原理は、圧電膜を用いた場合で説明したが、圧電膜の代わりに外部印加交番磁界により伸び縮する磁歪膜や外部印加交番磁界に吸引、反発される永久磁石膜を用いても同様の原理に基づき、ミラー部に回転モーメントを発生し、駆動することが可能である。特に磁歪膜として超磁歪材料を用いるとエネルギー的には圧電膜を用いるより駆動効率の高いことが期待される。このとき外部から印加する交番磁界は、上記磁歪膜、永久磁石膜が形成された基板部近傍に設けられたコイルに交流電流を流すことで発生できる。この場合、圧電駆動に比べ、電流駆動のため駆動電圧を低くすることが容易になり、回路設計が簡素化される場合がある。また、この様な磁歪膜や永久磁石膜で基板に板波を発生する場合、基板材料は非磁性材料である方が、より効率的に板波を発生することができる。
以上のように、駆動源に圧電膜を用いる場合も磁歪膜や永久磁石膜を用いる場合も、板波発生に於いて本質的な違いがないため、以下では、圧電膜を用いた場合で、本発明の説明を行う。
ミラー部13から離れた位置に配置された圧電膜11で板波を発生し、一定の駆動電圧下でミラー捻れ角度の最大振幅を得るためには、ミラー部13に対する圧電膜11の配置が重要である。これには、まず捻れ梁部12の軸方向(X軸)のミラー重心位置の軸上(Y軸:基板面内で捻れ梁部の軸とは垂直方向)に圧電膜11を形成すると効率が高くなる。さらに、光スキャナーのミラー部13を支持する捻り梁12の取り付け位置が、捻れ梁部12の軸に対し垂直方向のミラー部13の重心位置からずれた場合、ミラー部13を支持している捻れ梁部12と基板10の接続箇所近傍に板波が最大振幅になる様に配置する。
このとき、圧電膜11の中心と捻れ梁部12の軸間での距離(D)が、l/2の整数倍になるように配置(板波の腹の部分)するのが好適である。ただし、λは板波の波長を表す。
しかしながら、上述のミラー部13重心位置を捻り梁12の取り付け位置と一致させた場合は、ミラー部13を支持している捻れ梁部12と基板10の接続箇所近傍に板波の振幅が最小になる様に配置(板波の節の部分)する。これには、圧電膜11の中心と捻れ梁部12の軸間での距離(D)が、l/2の整数倍+l/4になるように配置すると捻り梁12に容易に回転モーメントを与えられ好適である。また、このとき上記上述のミラー部13重心位置を捻り梁12の取り付け位置と一致させた場合、一致させない場合のいづれの場合に対しても、図3に示すようにミラー部13近傍に形成される基板振動の最大振幅箇所Amax(板波振動の腹)、または、最小振幅位置Amin(板波振動の節)は、捻れ梁部12と基板10の接続部より、僅かにずれた位置に形成すると、捻れ梁部12に発生する上下振動(Z軸方向の変位)を最小にできると共に、より効率的にミラー部13に回転モーメントを与えることができ、効率的な駆動を行うことが可能となる。
光スキャナーの基板10に形成され、ミラーを振動させる板波を発生させる圧電膜11の厚みと、大きさは、基板10の厚みと大きさに応じて最適なサイズを取る必要がある。
上記のミラー駆動原理に於いて、電圧により基板10上に誘起される曲げたわみの振幅は、圧電ユニモルフアクチュエータ構造の変位を表す下記の式で1次元近似され、図4のBに示すように圧電膜11に印加する電界強度(V/m)一定のもとで、基板材料がSiかステンレス材(SUS)で、圧電膜11が典型的なチタン酸ジルコン酸鉛系材料の場合、圧電膜11の厚みが基板10の厚みとほぼ同程度の時に最大となる。
y=Ys/Yp(ただし、Ysは基板のヤング率、Ypは圧電膜のヤング率を表す。)、d31:圧電膜の横方向圧電定数。
一方で、光スキャナーの使用条件を考えると、駆動電圧(圧電膜印加電圧)一定のもとでは、膜厚が薄くなればなるほど、大きな変位が得られることになる。実際には、特にAD法により形成された膜で金属基板上に形成した圧電膜の特性、膜厚に関して依存性があり、薄すぎると圧電特性の低下やリーク電流の増加などの膜特性が低下し、厚すぎると分極処理が困難になる。また、基板10の厚みに関しては、動作中のミラーの平坦性やプロジェクターデバイスなどへの応用で要求されるミラーサイズを考慮し、Si、ステンレス材の基板を想定すると、少なくとも10μm以上の厚みが要求される。以上のような点を考慮し、光スキャナーデバイスの駆動に適した最適な圧電膜の膜厚範囲は、おおよそ1μm〜100μmの範囲にあり、好ましくは5μm〜50μmの範囲が適切で、このとき同一面積の膜厚に対し、最小の駆動電圧、消費電力で最大のミラー走査角度を得ることができる。
また、圧電膜の形状や面積については、上記、膜厚範囲に於いて、基板上での板波や振動の伝搬方向に対して、圧電膜11の長さが、おおよそ光スキャナーを駆動する共振周波数と基板材料の音速で決まる板波の波長より小さい範囲であれば効率的に駆動できる。さらにその範囲に於いて、圧電膜11の形成(駆動)面積は、大きければ大きいほど、大きなミラー走査角度を得ることができるが、この場合、同時に消費電力も大きくなる。従って、携帯機器に応用するなど実際の光スキャナーデバイスの使用目的を想定すると、最適な膜面積(S)があり、実験からはおおよそ上記板波の波長をλとして、(λ/100)2<S<λ2の範囲、好ましくは(λ/10)2<S<(λ/2)2の範囲にある。約25kHzの共振周波数に光スキャナーを設計した場合、λ=4mmで、このとき圧電膜の形状は一辺λ/4=1mm角の正方形とし、その結果、光走査角30度で消費電力100mW以下であった。
光スキャナーのミラー部13を支持する捻り梁12の取り付け位置であるが、捻れ梁部12の軸に対し垂直方向のミラー部13の重心位置からずれた場合、図5に示すように梁の軸(X軸)を中心とする捻れ共振モードとミラー部13の重心位置(Xm)を中心とする捻れ共振モードの2つの共振f1、f2が存在する。このときに二つの共振周波数f1、f2の差はわずかで、駆動周波数が低周波数側から共振周波数に近づくときと、高周波側から共振周波数に近づく場合で、共振周波数近傍でのミラーの捻れ振動の角度の振幅(光走査角度)は同一にならず、大きなヒステリシス(履歴)が発生する。このヒステリシスは実用上大きな問題になる。例えば、環境温度の変動などにより光スキャナーの機械定数が変化し、これに応じて共振周波数が変化、光走査角度が変動する場合が考えられるが、この様な変動は、通常、圧電膜11に印加する駆動周波数を変化させ補償制御するが、上述のようなヒステリシスが存在すると、その非線形性のために非常に複雑な制御が必要となり、実用的でない。これに対して、ミラー部13の重心位置と、捻り梁の支持位置を一致させると、上述したようなヒステリシスは現れず、良好な共振特性を得ることができる。
しかしながら、上述のミラー部13重心位置を捻り梁12の取り付け位置と一致させた場合、圧電膜11の振動開始から共振状態での最大光走査角度(ミラーの最大捻れ角度の振幅)に達するまでの時間(立ち上がり動作)は、ミラー部13重心位置を捻り梁12の取り付け位置から僅かにずれた場合に比べ、時間がかかり、例えば携帯機器などでの応用でバッテリー駆動を行った場合、消費電力削減のために、光走査をしない場合は動作をOFFする場合があり、この様な状態から光走査を開始する場合、定常状態になるのに要する時間が問題になる。
従って、実際のデバイスでは、この相反する光スキャナーデバイスに求められる特性を両立させるために適切な量だけ、ミラー部13重心位置を捻り梁12の取り付け位置からずらすことが必要な場合がある。実験から求めた実用的なずれ量(ΔL=(L1−L2)/(L1+L2))は、0≦ΔL≦0.2の範囲、好ましくは0≦ΔL≦0.05の範囲が適切であった。
この様な上述した課題を解決するもう一つの方法は、基板材料がステンレスなどの金属材料の場合、延性があるためSi部材の場合と異なり、基板材料に弾性限界以上の力を加え、ミラー支持部に僅かな捻りを与えミラー角度を基板面と平行な水平位置から数度程度捻った角度にしてやると、基板に誘起された板波や振動の力をより効率的にミラー部の回転モーメントに変えることができ、上述したミラー共振動作のヒステリシスを押さえ、速い動作の立ち上がりを実現できる。
ミラー部13を支持する捻れ梁部12の断面は、理想的には軸対象な円形であることが好ましいが、実際の加工では板材から形成されるので、有限の幅を持ち、その断面は矩形状である。このため、梁の幅(W)が大きくなりすぎると、僅かな加工誤差などに於いて、梁の幅(W)内で共振時の捻れ梁部12の軸の位置が移動するなどの現象を起こし、先述したような共振周波数近傍での駆動周波数に対し、捻れ角度の振幅(光走査角度)にヒステリシス現象を生じ駆動制御を困難にする。この様な問題を解決するためには、捻れ梁部の幅についてもある幅以下にする必要がある。実験的には、捻れ梁部の長さ(T1)、基板厚み(T2)に対し、W/T1≦0.2または0.1≦T2/W≦1の範囲にあることが必要で、W/T1≦0.1または0.5≦T2/W≦1の範囲にあることがより好ましい。
光スキャナーなどの光学部品として、この様な捻れ梁部構造を用いた共振振動子を用いるには、動作中のミラー部13の平坦性がλ0/8(ここでλ0は、ミラーで反射させる光の波長)以下であることが要求され、このためには大気圧中の共振動作の状態で、この平坦性を確保できる機械的強度が必要となる。実験的には、基板材料にSiやステンレス材を想定するとミラー厚みは少なくとも10μm以上が必要となる。さらに、プロジェクターデバイスなどへの応用を想定すると、光走査ビームを十分に集光し、焦点位置に十分に明るく小さな光スポット径を結ぶには、光ビームの開口角(N.A.)と光スポットの光量とがミラーサイズによって決まるため、実用的には、少なくとも200μm角あるいは200μmφから1mm角あるいは1mmφ程度に設定する必要がある。この大きさのミラー部13に対して、大気中駆動で上記ミラー部13の平坦性を確保するには、実用的には、ミラー厚みは少なくとも30μm以上、好ましくは50μm程度の厚みが必要である。また、表面荒さについても、Raで50nm以下が要求される。金属基板材料で低コストに上記平坦度や表面荒さが得られない場合は、Siやガラスに高反射率の膜が形成されたミラーをミラー部13に貼り付けてもよい。
圧電膜の形成方法については、エアロゾルデポジション法を用いて形成すれば、低温高速プロセスのため、容易に短時間で数ミクロン以上の厚膜を金属基板上などに直接形成できるが、これに限ったものでなく、例えば、Si基板など耐熱温度のある材料を利用すれば、スパッター法やCVD法、ゾル−ゲル法などの従来の薄膜技術を用いて、エピタキシャル成長した高性能の圧電薄膜を形成することも可能で、より低電圧駆動で低消費電力の光走査装置を構成する場合などに有用である。
また、基板材料については、この様なミラーの機械的共振を利用する光スキャナーの場合、使用環境の温度変動に対する安定性も重要で、これは主に基板材料の熱膨張係数が大きく影響する。基板材料として、低熱膨張係数のSiや石英(熱膨張係数:3.5×10-6/K、0.5×10-6/K)を用いるのは好適であるが、本実施例に記載したように、より安価にスキャナー構造を形成するためにステンレスなど金属基板を用いた場合は、実施例のSUS304(熱膨張係数:17.3×10-6/K)に代わりに、インバーやスーパーインバー、コバール(熱膨張係数:1〜3×10-6/K)などの低熱膨張係数の金属基板を用いてもよい。
(1)本発明の光走査装置は、一端が支持部材に片持ち状に支持された基板と、
前記基板に振動の腹と振動の節とを有する板波振動を発生させるための、該基板の一部に固定あるいは形成してなる圧電体、磁歪体又は永久磁石体と、
前記圧電体、磁歪体又は永久磁石体から離れた位置において前記基板に形成され、ミラー部を支持する捻れ梁部と、
前記ミラー部に走査ビームを照射する走査ビーム源と、
を備え、前記捻れ梁部と前記基板との接続箇所より僅かにずれた位置にミラー部近傍に形成される基板振動の最小振幅箇所(節)を形成し、前記基板に誘起される板波を利用してミラー部に捻れ振動を生じさせ、ミラー部で反射した走査ビームを所定の角度で振れさせてなることを特徴としている。
(2)また、本発明の光走査装置は、上記(1)において、前記ミラー部の重心位置と前記捻れ梁部の基板との接続個所とのずれ量;ΔLは、0≦ΔL≦0.2(ΔL=(L1−L2)/(L1+L2)、(L1;捻れ梁部の中心線からミラー部の一端までの距離、L2;捻れ梁部の中心線からミラー部の他端までの距離))であることを特徴としている。
(3)また、本発明の光走査装置は、一端が支持部材に片持ち状に支持された基板と、
前記基板に振動の腹と振動の節とを有する板波振動を発生させるための、該基板の一部に固定あるいは形成してなる圧電体、磁歪体又は永久磁石体と、
前記圧電体、磁歪体又は永久磁石体から離れた位置において前記基板に形成され、ミラー部を支持する捻れ梁部と、
前記ミラー部に走査ビームを照射する走査ビーム源と、
を備え、前記捻り梁部の取り付け位置が前記ミラー部重心位置と一致しており、前記捻れ梁部と前記基板との接続箇所近傍に板波の振幅が最小(板波の節)になるようにし、前記基板に誘起される板波を利用してミラー部に捻れ振動を生じさせ、ミラー部で反射した走査ビームを所定の角度で振れさせてなることを特徴としている。
(4)また、本発明の光走査装置は、上記(3)において、前記圧電体、磁歪体又は永久磁石体の中心と前記捻れ梁部の軸との距離は、λ/2の整数倍にλ/4(λ;板波の波長)を加えた値であることを特徴としている。
(5)また、本発明の光走査装置は、上記(1)又は(3)において、前記捻れ梁部の幅は、W/T1≦0.2、又は0.1≦T2/W≦1(T1;捻れ梁部の長さ、T2;基板の厚み、W;捻れ梁部の幅)で規定されることを特徴としている。
(6)また、本発明の光走査装置は、上記(1)又は(3)において、前記圧電体、磁歪体又は永久磁石体の面積;Sは、(λ/100)2<S<λ2(λ;板波の波長)であることを特徴としている。
また、本発明は、つぎのような特徴を有しているということもできる。
(1′)本発明の光走査装置は、基板に捻れ梁部を形成し、該捻れ梁部により支持されたミラー部を揺動させてなる光走査装置において、前記基板の一部に圧電体、磁歪体又は永久磁石体を固定あるいは形成し、該圧電体、磁歪体又は永久磁石体に電圧あるいは磁界を印加して基板に誘起される板波を利用して捻れ梁部に支持されたミラー部を励振させることを特徴としている。
(2′)また、本発明の光走査装置は、上記(1′)において、圧電体、磁歪体又は永久磁石体は基板上に直接形成された膜状であることを特徴としている。
(3′)また、本発明の光走査装置は、上記(1′)または(2′)において、ミラー部の面積が200μm角あるいは200μmφ以上で光ビーム走査速度10kHz以上であることを特徴としている。
(4′)また、本発明の光走査装置は、上記(1′)乃至(3′)のいずれかにおいて、基板を、捻れ梁部及びミラー部を残して中抜きされた形状に作製することを特徴としている。
(5′)また、本発明の光走査装置は、上記(1′)乃至(4′)のいずれかにおいて、基板を片持ち状に支持することを特徴としている。
(6′)また、本発明の光走査装置は、上記(1′)乃至(5′)のいずれかにおいて、基板材料がステンレスなど導電性材料であることを特徴としている。
(7′)また、本発明の光走査装置は、上記(1′)乃至(6′)のいずれかにおいて、基板材料がSiなどの非磁性材料であることを特徴としている。
(8′)また、本発明の光走査装置は、上記(1′)乃至(7′)のいずれかにおいて、基板の捻れ梁部の両端をそれぞれ支持する両側部が片持ち梁の形状に形成されていることを特徴としている。
(9′)また、本発明の光走査装置は、上記(1′)乃至(8′)のいずれかにおいて、ミラー部は、その重心位置で両側から捻れ梁部により支持されていることを特徴としている。
(10′)また、本発明の光走査装置は、上記(1′)乃至(8′)のいずれかにおいて、ミラー部は、その重心位置から外れた位置で両側から捻れ梁部により支持されていることを特徴としている。
(11′)また、本発明の光走査装置は、上記(1′)乃至(10′)のいずれかにおいて、ミラー部の取付け角度を基板面と平行な水平位置から捻った角度に設定することを特徴としている。
(12′)また、本発明の光走査装置は、上記(1′)乃至(11′)のいずれかにおいて、ミラー部と圧電膜、磁歪膜又は永久磁石膜とは略同一平面上に配置されていることを特徴としている。
(13′)また、本発明の光走査装置は、上記(1′)乃至(12′)のいずれかにおいて、ミラー部は、圧電膜、磁歪膜又は永久磁石膜により基板に励起される板波振動の最大振幅の近傍に形成されることを特徴としている。
(14′)また、本発明の光走査装置は、上記(1′)乃至(12′)のいずれかにおいて、ミラー部は、圧電膜、磁歪膜又は永久磁石膜により基板に励起される板波振動の最小振幅の近傍に形成されることを特徴としている。
(15′)また、本発明の光走査装置は、上記(1′)乃至(14′)のいずれかにおいて、圧電膜、磁歪膜又は永久磁石膜は、捻れ梁部の軸方向と垂直方向のずれた位置に形成されることを特徴としている。
(16′)また、本発明の光走査装置は、上記(1′)乃至(15′)のいずれかにおいて、圧電膜、磁歪膜又は永久磁石膜の中心と捻れ梁部の軸との距離がλ/2の整数倍にλ/4を加えた値になるように配置することを特徴としている。
ただし、λは板波の波長を表す。
(17′)また、本発明の光走査装置は、上記(15′)において、圧電膜や磁歪膜、永久磁石膜の中心と捻れ梁部の軸との距離がλ/2の整数倍になるように配置することを特徴としている。
ただし、λは板波の波長を表す。
(18′)また、本発明の光走査装置は、上記(1′)乃至(17′)のいずれかにおいて、
圧電膜、磁歪膜又は永久磁石膜は、エアロゾルデポジション法により基板に直接形成されることを特徴としている。
(19′)また、本発明の光走査装置は、上記(1′)乃至(18′)のいずれかにおいて、圧電膜、磁歪膜又は永久磁石膜の面積Sが(λ/100)2<S<λ2であり、また、圧電膜の厚さが1μm〜100μmであることを特徴としている。
ただし、λは板波の波長を表す。
上記の特徴を有する本発明は、ミラー部を支持する基板に圧電素子からなる振動源によって誘起された板波を発生させ、この板波によりミラー部に回転モーメントを生じさせ、共振現象を利用してミラー部に大きな捻れ振幅を発生させるものである。
(1)ディスプレーデバイス分野における動画表示サイズ及び画像精細度から求められる1mmφ程度のミラーサイズで少なくとも10kHz以上の高速走査速度及び20°以上の大振幅光学走査角を有する高性能な光走査装置を提供できる。
(2)ミラー部を、重心及び重心から外れた位置のどちらで支持してもミラー部の捻れ振動を可能とする。
(3)ミラー部の重心位置を捻れ梁部の取り付け位置から僅かにずらすことにより、ミラー部を効率的に励振することができるとともに、ヒステリスの発生を防止することができる。
(4)構造の単純化、製造コストの低減を図ることができる。
(5)小型の振動源でミラー部に大きな振動を与えることができる。
(6)振動源となる圧電膜の消費電力を大幅に低減できる。
(7)圧電膜の配置に自由度が増すため、光スキャナー装置の小型、薄型化を図ることができる。
図6は、実施例1に係る光走査装置の斜視図である。
なお、以下に記載する部材のサイズはその一例を示すものであり、これに限定されないことはいうまでもない。
基板10は、厚さ30あるいは50μmのSUS304の方形をした板材をエッチングあるいはプレス加工により、捻れ梁部12及びミラー部13を残して中抜きされた形状に作製される。基板10の一端は支持部材16により片持ち状に支持されている。
この様に導電性があるSUS304、さらに低熱膨張係数のSUS430などの金属基板を用いることで、下部電極形成の必要が無くなり、光走査装置のより小型化、構造の簡素化を図ることができる。
ミラー部13のサイズは、長さl1=1.1mm、幅b1=100〜500μmの範囲に形成される。また、ミラー部13の両側の捻れ梁部12は、それぞれの捻れ梁部12の幅がb2=80〜100μmに形成される。
図6においては、ミラー部13を支持する捻れ梁部12の位置は、捻れ梁部12の軸に対して垂直な方向のミラー部13の重心位置より100μm以下ずれた位置に設定している。ミラー部13を支持する捻れ梁部12の位置を、捻れ梁部12の軸に対して垂直な方向のミラー部13の重心位置に設定しても、目的を達成することができる。
圧電膜11は、例えば代表的な圧電材料であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなり、そのサイズは1mm角で膜厚は10〜20μmである。
磁歪膜11は、例えばRTy(ここで、Rは1種類以上の希土類金属、Tは1種類以上の遷移金属であり、yは1<y<4を表す。)で示す組成の超磁歪合金からなり、そのサイズは1mm角で膜厚は10〜20μmである。
ここで、Rは、Yを含むランタノイド系列、アクチノイド系列の希土類金属から選択される1種以上を表している。これらの中で、Rとしては、特に、Nd、Pr、Sm、Tb、Dy、Hoの希土類金属が好ましく、Tb、Dyがより一層好ましく、これらを混合して用いることができる。Tは、1種以上の遷移金属を表している。これらの中で、Tとしては、特に、Fe、Co、Ni、Mn、Cr、Mo等の遷移金属が好ましく、Fe、Co、Niが一層好ましく、これらを混合して用いることができる。
永久磁石膜11は、例えば、ネオジウム鉄ボロン系、窒化鉄系の高エネルギー密度の永久磁石材料からなり、そのサイズは1mm角で膜厚は10〜20μmである。
基板10上に公知のAD法により圧電膜11を直接形成する手法を簡単に説明する。
粒径0.1μm前後のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)をガスと混合してエアロゾル化し、ノズルから高速のジエットにして基板10上の所定の個所に吹き付け成膜する。成膜の際、PZT微粒子の基板1への衝突によってPZT微粒子に大きな機械的衝撃が生じ、PZT微粒子の破壊と新生表面の発生が同時に行われ、緻密な膜が形成される。このようにして形成される圧電膜11は、強誘電特性を有している。
圧電膜11の成膜後、大気中において600℃で10分間熱処理した後、圧電膜11の上面に上部電極14を、例えば、金スパッターで形成する。なお、金スパッターに代えて、AD法により圧電膜11の成膜に続いて上部電極14を形成することにより、製作工程を簡素化、低コスト化を実現できる。
基板10及び上部電極14に電圧を印加すると、圧電膜11は圧電振動し、この振動が基板10に板波(本明細書において、「板波」とは振動方向が基板表面に平行、かつ伝播方向に対して垂直である波動をいう。)を発生させる。この基板10に発生する板波は、捻れ梁部12を介してミラー部13に回転モーメントを生じさせ、共振状態で大きな捻れ振幅を発生させる。
次の表1に、駆動に用いたAD法により作製されたPZT膜の電気特性を示す。
表1:PZT膜の電気特性と基板特性
比誘電率(at 1kHz) 700〜1800
誘電損失(tanδ,at1kHz) 0.01〜0.05
横方向圧電定数(d31 ) −60〜−120pm/V
膜密度 7.5〜8.1g/cm3
膜ヤング率 60〜90GPa
基板ヤング率 150〜200GPa
また、図8には、駆動に用いたAD法により作製されたPZT膜の強誘電特性を示す。
厚さが30μm及び50μmのSUS基板上に膜厚10μmの圧電膜をAD法により直接形成した場合と、駆動源に積層アクチュエータ(1mm角×2mm厚みの積層ピエゾ(70mmピッチ))の接着を用いた場合とを比較した。
AD法で形成した膜厚10のμmの圧電膜を用いた場合、40Vの駆動電圧で約20゜の振れ角が得られた。これは、従来のSi−MEMSスキャナーの共振周波数を一桁上回る性能である。
基板の厚みの違いは、ミラー部を支持する捻れ梁部のバネ定数を変化させ、共振周波数は大きく変化するが、ミラー部の振れ角の方は、あまり影響を受けないことが分かる。
また、AD法で形成した圧電膜の代わりに、接着剤で接着した積層圧電アクチュエータを振動源に用いた場合は、AD法で形成した圧電膜の約2倍の圧電定数にもかかわらず、振れ角、すなわちスキャナーの走査角度は半分以下になる。これは、圧電積層体厚みが2mmと厚すぎることと、接着剤による振動の吸収の影響が大きいためと考えられ、AD方による100μm以下の圧電膜の直接形成が優れた効果を奏することが確認できた。
図11は、実施例2に係る光走査装置の基板10、圧電膜11、捻れ梁部12及びミラー部13を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
図11に示す光走査装置は、基板10の自由端側が切り落とされて捻れ梁部12の両端をそれぞれ支持する両側部19、19が図に示すように片持ち梁の形状に形成されている点で実施例1と相違するものであるが、その他は実施例1と同様である。
捻れ梁部12の両端をそれぞれ支持する両側部19、19が片持ち梁の形状であるため、捻れ梁部12を支持する部分がより変形し易くなり、図の(b)及び(c)に示すように効率的にミラー部13に回転モーメントを与えることができ、効率的な駆動を行うことが可能となる。
また、基板振動の最小振幅箇所Amin(板波振動の節)を、捻れ梁部12の軸X−Xより僅かにずれた位置に形成しているため、図のようにミラー部13がその重心位置で捻れ梁部12に支持されたものでもミラー部13に回転モーメントを与え捻れ振動を効率的に励振することが可能となる。図13は、これを実際に確認例で、圧電膜11に印加する励起信号に同期してレーザードップラー変位計で、ミラー部13の捻れ振動が共振時に最大となるとき基板表面に発生する振動変位分布を測定したものである。基板上、捻れ梁部12の基板接続部は、板波振動の節近傍になっており振動変位は最小となっている。
11 圧電膜
12 捻れ梁部
13 ミラー部
14 上部電極
15 電源
16 支持部材
17 レーザビーム
18 レーザ光
19 捻れ梁部の両端を支持する両側部
Claims (6)
- 一端が支持部材に片持ち状に支持された基板と、
前記基板に振動の腹と振動の節とを有する板波振動を発生させるための、該基板の一部に固定あるいは形成してなる圧電体、磁歪体又は永久磁石体と、
前記圧電体、磁歪体又は永久磁石体から離れた位置において前記基板に形成され、ミラー部を支持する捻れ梁部と、
前記ミラー部に走査ビームを照射する走査ビーム源と、
を備え、前記捻れ梁部と前記基板との接続箇所より僅かにずれた位置にミラー部近傍に形成される基板振動の最小振幅箇所(節)を形成し、前記基板に誘起される板波を利用してミラー部に捻れ振動を生じさせ、ミラー部で反射した走査ビームを所定の角度で振れさせてなる光走査装置。 - 前記ミラー部の重心位置と前記捻れ梁部の基板との接続個所とのずれ量;ΔLは、0≦ΔL≦0.2(ΔL=(L1−L2)/(L1+L2)、(L1;捻れ梁部の中心線からミラー部の一端までの距離、L2;捻れ梁部の中心線からミラー部の他端までの距離))であることを特徴とする請求項1記載の光走査装置。
- 一端が支持部材に片持ち状に支持された基板と、
前記基板に振動の腹と振動の節とを有する板波振動を発生させるための、該基板の一部に固定あるいは形成してなる圧電体、磁歪体又は永久磁石体と、
前記圧電体、磁歪体又は永久磁石体から離れた位置において前記基板に形成され、ミラー部を支持する捻れ梁部と、
前記ミラー部に走査ビームを照射する走査ビーム源と、
を備え、前記捻り梁部の取り付け位置が前記ミラー部重心位置と一致しており、前記捻れ梁部と前記基板との接続箇所近傍に板波の振幅が最小(板波の節)になるようにし、前記基板に誘起される板波を利用してミラー部に捻れ振動を生じさせ、ミラー部で反射した走査ビームを所定の角度で振れさせてなる光走査装置。 - 前記圧電体、磁歪体又は永久磁石体の中心と前記捻れ梁部の軸との距離は、λ/2の整数倍にλ/4(λ;板波の波長)を加えた値であることを特徴とする請求項3記載の光走査装置。
- 前記捻れ梁部の幅は、W/T1≦0.2、又は0.1≦T2/W≦1(T1;捻れ梁部の長さ、T2;基板の厚み、W;捻れ梁部の幅)で規定されることを特徴とする請求項1又は3記載の光走査装置。
- 前記圧電体、磁歪体又は永久磁石体の面積;Sは、(λ/100)2<S<λ2(λ;板波の波長)であることを特徴とする請求項1又は3記載の光走査装置。
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