JP6592434B2 - 脂質の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、脂質の製造方法に関する。また、本発明は当該方法に用いるアシル−ACPチオエステラーゼ改変体、これをコードする遺伝子、及び当該遺伝子を導入した形質転換体に関する。
脂肪酸は脂質の主要構成成分の1つであり、生体内においてグリセリンとのエステル結合により生成するトリアシルグリセロール等の脂質を構成する。また、多くの動植物において脂肪酸はエネルギー源として貯蔵され利用される物質でもある。動植物内に蓄えられた脂肪酸や脂質は、食用又は工業用として広く利用されている。
例えば、炭素数12〜18前後の高級脂肪酸を還元して得られる高級アルコールの誘導体は、界面活性剤として用いられている。アルキル硫酸エステル塩やアルキルベンゼンスルホン酸塩等は陰イオン性界面活性剤として利用されている。また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルやアルキルポリグリコシド等は非イオン性界面活性剤として利用されている。そしてこれらの界面活性剤は、いずれも洗浄剤又は殺菌剤に利用されている。同じ高級アルコールの誘導体であるアルキルアミン塩やモノ又はジアルキル4級アミン塩は、繊維処理剤や毛髪リンス剤又は殺菌剤に日常的に利用されている。また、ベンザルコニウム型4級アンモニウム塩は殺菌剤や防腐剤に日常的に利用されている。さらに、炭素数18前後の高級アルコールは植物の成長促進剤としても有用である。
このように脂肪酸や脂質の利用は多岐にわたり、そのため植物等において生体内での脂肪酸や脂質の生産性を向上させる試みが行われている。さらに、脂肪酸の用途や有用性はその炭素数に依存するため、脂肪酸の炭素数、即ち鎖長を制御する試みも行われている。例えば、ゲッケイジュ(Umbellularia californica(California bay))由来のアシル−ACP(アシルキャリヤープロテイン)チオエステラーゼの導入により炭素数12の脂肪酸を蓄積させる方法(特許文献1、非特許文献1)等が提案されている。
近年、バイオ燃料生産に有用であるとして、藻類が注目を集めている。藻類は、バイオディーゼル燃料として利用可能な脂質を光合成によって生産でき、しかも食料と競合しない。そのため藻類は、次世代のバイオマス資源として注目されている。また、藻類は、植物に比べ、高い脂質生産・蓄積能力を有するとの報告もある。
藻類の脂質合成メカニズムやそれを応用した生産技術について研究が始まってはいるが、未解明な部分も多い。例えば、上述のアシル−ACPチオエステラーゼについても、現在のところ、藻類由来のものはほとんど報告されておらず、珪藻網等でわずかに報告例があるのみである(例えば、非特許文献2)。
国際公開第92/20236号パンフレット
Voelker TA,et al.,Science,1992,vol.257(5066),p.72-74 Yangmin Gong,et al.,Journal of Basic Microbiology,2011,vol.51,p.666-672
本発明は、宿主に下記タンパク質(A)〜(C)のいずれか1つをコードする遺伝子を導入して得られた形質転換体を培養して脂質を生産させる、脂質の製造方法に関する。
(A)配列番号1の128位〜287位のアミノ酸配列において、203位のグリシン及び204位のバリンの少なくとも一方がトリプトファンに置換されたアミノ酸配列からなるタンパク質。
(B)配列番号1の128位〜287位のアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列において、配列番号1の203位に相当する位置のアミノ酸及び204位に相当する位置のアミノ酸の少なくとも一方がトリプトファンに置換されたアミノ酸配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質。
(C)前記タンパク質(A)又は(B)のアミノ酸配列を有し、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質。
また、本発明は、前記タンパク質(A)〜(C)に関する。
また、本発明は、前記タンパク質(A)〜(C)のいずれか1つをコードする遺伝子に関する。
また、本発明は、宿主に前記遺伝子を導入して得られた形質転換体に関する。
ナンノクロロプシス・オキュラータ(Nannochloropsis oculata)由来のアシル−ACPチオエステラーゼ(以下、「NoTE」ともいう)のアミノ酸配列(配列番号1)、ナンノクロロプシス・ガディタナ(Nannochloropsis gaditana)由来のアシル−ACPチオエステラーゼ(以下、「NgTE」ともいう)のアミノ酸配列(配列番号3)、及びナンノクロロプシス・グラニュラータ(Nannochloropsis granulata)由来のアシル−ACPチオエステラーゼ(以下、「NgrTE」ともいう)のアミノ酸配列(配列番号49)を比較した図である。
本発明は、ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属に属する藻類由来の野生型アシル−ACPチオエステラーゼのアミノ酸配列を改変した、アシル−ACPチオエステラーゼ改変体、及びこれを用いた脂質の製造方法を提供する。また、本発明は、前記アシル−ACPチオエステラーゼ改変体をコードする遺伝子を提供する。また、本発明は、当該遺伝子を導入し、生産される脂質の脂肪酸組成を変化させた形質転換体を提供する。
本発明者らは、ナンノクロロプシス属に属する藻類由来のアシル−ACPチオエステラーゼについて研究を行い、ナンノクロロプシス・オキュラータ由来の野生型アシル−ACPチオエステラーゼを取得し、このアミノ酸配列に変異を導入して、複数のアシル−ACPチオエステラーゼ改変体を得た。そして、これらを用いて形質転換を行った結果、いくつかの形質転換体において、野生型アシル−ACPチオエステラーゼを導入した形質転換体と比較して、脂質中の総脂肪酸成分における特定の炭素数の脂肪酸の含有率が有意に向上することを見出した。本発明はこの知見に基づいて完成するに至ったものである。
本発明の形質転換体は、ナンノクロロプシス属に属する藻類由来の野生型アシル−ACPチオエステラーゼを導入した形質転換体に比べ、特定の炭素数の脂肪酸の生産能に優れる。当該形質転換体を用いた本発明の脂質の製造方法は、特定の炭素数の脂肪酸及びこれらを構成成分とする脂質の生産性に特に優れる。本発明のアシル−ACPチオエステラーゼ改変体、これをコードする遺伝子、形質転換体、及び脂質の製造方法は、特定の炭素数の脂肪酸及び脂質の工業的生産に好適に用いることができる。
本明細書における「脂質」には、単純脂質、複合脂質及び誘導脂質が含まれ、具体的には、脂肪酸、脂肪族アルコール類、炭化水素類(アルカン等)、中性脂質(トリアシルグリセロール等)、ろう、セラミド、リン脂質、糖脂質、スルホ脂質等が含まれる。
また本明細書において、脂肪酸や脂肪酸を構成するアシル基の表記で「Cx:y」とあるのは、炭素原子数xで二重結合の数がyの脂肪酸やアシル基を表す。また、「Cx脂肪酸」や「Cxアシル」はそれぞれ、炭素原子数xの脂肪酸やアシル基を表す。
以下本明細書において、「アシル−ACPチオエステラーゼ」を単に「TE」ともいい、TEをコードする遺伝子を「アシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子」又は「TE遺伝子」ともいう。
以下、本発明のアシル−ACPチオエステラーゼ改変体、アシル−ACPチオエステラーゼ改変体をコードする遺伝子及びこれを用いた形質転換体、並びに脂質の製造方法について順に説明する。
1.アシル−ACPチオエステラーゼ改変体
本発明のタンパク質(以下、「アシル−ACPチオエステラーゼ改変体」又は「TE改変体」ともいう)は、配列番号1に示すアミノ酸配列の一部が改変され、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性(以下、「TE活性」ともいう)を有するタンパク質、及び当該タンパク質と機能的に均等なタンパク質である。
アシル−ACPチオエステラーゼは、脂肪酸やその誘導体(トリアシルグリセロール(トリグリセリド)等)の生合成系に関与する酵素である。当該酵素は、植物体や藻類では葉緑体等の色素体内において、細菌・真菌や動物体では細胞質内において、脂肪酸生合成過程の中間体であるアシル−ACP(脂肪酸残基であるアシル基とアシルキャリヤープロテインとからなる複合体)のチオエステル結合を加水分解し、遊離の脂肪酸を生成する。TEの作用によって、ACP上での脂肪酸合成が終了し、切り出された脂肪酸はトリアシルグリセロール等の合成に供される。TEには、基質であるアシル−ACPを構成するアシル基(脂肪酸残基)の炭素原子数や不飽和結合数によって異なる反応特異性を示す複数のTEが存在していることが知られている。よってTEは、生体内での脂肪酸組成を決める重要なファクターであると考えられている。
本明細書で記載する「アシル−ACPチオエステラーゼ活性」とは、アシル−ACPのチオエステル結合を加水分解する活性をいう。
本発明のTE改変体として、具体的には以下のタンパク質(A)〜(C)が挙げられる。

(A)配列番号1の128位〜287位のアミノ酸配列において、203位のグリシン及び204位のバリンの少なくとも一方がトリプトファンに置換されたアミノ酸配列からなるタンパク質。
(B)配列番号1の128位〜287位のアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列において、配列番号1の203位に相当する位置のアミノ酸及び204位に相当する位置のアミノ酸の少なくとも一方がトリプトファンに置換されたアミノ酸配列からなり、かつTE活性を有するタンパク質。
(C)前記タンパク質(A)又は(B)のアミノ酸配列を有し、かつTE活性を有するタンパク質。
配列番号1は、ナンノクロロプシス属に属する藻類であるナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株由来のTE(NoTE)のアミノ酸配列である。
本発明者らは、配列番号1のアミノ酸配列中、128位〜287位の領域がTEとして機能するために重要で、TE活性を示すために十分な領域であることを見出した。すなわち、配列番号1の128位〜287位のアミノ酸配列からなるタンパク質は、TE活性を有する。
前記タンパク質(A)は、このTE活性にとって十分な領域を有し、TEとして機能する。
前記タンパク質(A)のアミノ酸配列は、TE活性にとって十分な領域である配列番号1の128位〜287位のアミノ酸配列を基本とし、さらに当該配列中の特定の位置のアミノ酸が置換されている。配列番号1において後述する位置のアミノ酸を置換したTE改変体では、特定の炭素数のアシル−ACP、特にC8アシル−ACP、C10アシル−ACP、及びC12アシル−ACPからなる群より選ばれる少なくとも1種のアシル−ACP、に対する特異性が向上する。すなわち、本発明のTE改変体は、野生型TEと比べて、基質として特定の炭素数のアシル−ACP(具体的には、C8アシル−ACP、C10アシル−ACP、及びC12アシル−ACPからなる群より選ばれる少なくとも1種のアシル−ACP)を選択的に利用し、これを加水分解する活性が向上する。
前記タンパク質(A)において、配列番号1の128位〜287位のアミノ酸配列中、203位と204位のアミノ酸の少なくとも一方がトリプトファンに置換されている。配列番号1に示す野生型TEでは、203位のアミノ酸はグリシン、204位のアミノ酸はバリンである。
特定の炭素数のアシル−ACP、特にC8アシル−ACP、C10アシル−ACP、及びC12アシル−ACPからなる群より選ばれる少なくとも1種のアシル−ACP、への特異性を向上させる観点から、前記タンパク質(A)において、配列番号1の203位のグリシンがトリプトファンに置換され、204位のバリンがトリプトファン又はフェニルアラニンに置換されていることが好ましく、配列番号1の203位のグリシン及び204位のバリンがそれぞれトリプトファンに置換されていることがより好ましい。
本明細書においては、特定のアミノ酸置換を有するTE改変体を以下のように略記することがある。
NoTE(G203W):配列番号1の203位のグリシン(Gly;G)がトリプトファン(Trp;W)に置換された、ナンノクロロプシス・オキュラータ由来のTE改変体。
NoTE(G203W+V204F):配列番号1の203位のグリシン(Gly;G)がトリプトファン(Trp;W)に、204位のバリン(Val;V)がフェニルアラニン(Phe;F)置換された、ナンノクロロプシス・オキュラータ由来のTE改変体。
さらに前記タンパク質(A)は、配列番号1の203位及び204位以外の位置にアミノ酸置換を有していてもよい。例えば、特定の炭素数のアシル−ACPへの特異性を向上させる観点から、前記タンパク質(A)は、下記(Ca−1)〜(Cg−1)からなる群より選ばれる少なくとも1つのアミノ酸置換をさらに有することが好ましい。

(Ca−1)配列番号1の143位のロイシン(Leu;L)をプロリン(Pro;P)に置換。
(Cb−1)配列番号1の146位のヒスチジン(His;H)をアスパラギン(Asn;N)又はセリン(Ser;S)に置換。
(Cc−1)配列番号1の160位のグリシン(Gly;G)をアラニン(Ala;A)に置換。
(Cd−1)配列番号1の202位のメチオニン(Met;M)をフェニルアラニン(Phe;F)、ヒスチジン(His;H)、ロイシン(Leu;L)、グルタミン(Gln;Q)、又はバリン(Val;V)に置換。
(Ce−1)配列番号1の212位のグリシン(Gly;G)をプロリン(Pro;P)に置換。
(Cf−1)配列番号1の213位のアスパラギン(Asn;N)をチロシン(Tyr;Y)に置換。
(Cg−1)配列番号1の281位のプロリン(Pro;P)をグルタミン(Gln;Q)に置換。
前記タンパク質(A)は、配列番号1の203位のグリシン及び204位のバリンがそれぞれトリプトファンに置換され、さらに前記(Ca−1)〜(Cg−1)からなる群より選ばれる1つ又は2つのアミノ酸置換を有することがより好ましい。あるいは、前記タンパク質(A)は、配列番号1の204位のバリンがトリプトファンに置換され、さらに前記(Ca−1)〜(Cg−1)からなる群より選ばれる1つ又は2つのアミノ酸置換を有することがより好ましい。
前記タンパク質(B)は、配列番号1の128位〜287位のアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列を基本とし、かつ、TE活性を有する。
一般に、酵素タンパク質をコードしているアミノ酸配列は、必ずしも全領域の配列が保存されていなければ酵素活性を示さないというものではなく、アミノ酸配列が変化しても酵素活性に影響を与えない領域も存在することが知られている。このような酵素活性に必須でない領域においては、アミノ酸の欠失、置換、挿入又は付加といった変異が導入されても酵素本来の活性を維持することができる。本発明においても、このようにTE活性が保持され、かつ配列番号1で示すアミノ酸配列が一部変異したタンパク質を用いることができる。
本明細書において、アミノ酸配列及び塩基配列の同一性は、Lipman-Pearson法(Science,1985,vol.227,p.1435-1441)によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Win(ソフトウェア開発)のホモロジー解析(homology search)プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出される。
さらに、前記タンパク質(B)のアミノ酸配列は、配列番号1の128位〜287位のアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列中に、前記タンパク質(A)におけるアミノ酸置換と同様のアミノ酸置換を有している。すなわち、前記タンパク質(B)のアミノ酸配列では、配列番号1の203位に相当する位置のアミノ酸及び204位に相当する位置のアミノ酸の少なくとも一方がトリプトファンに置換されたアミノ酸置換を有している。
上述した前記タンパク質(A)と同様、前記タンパク質(B)のアミノ酸配列も、配列番号1の203位に相当する位置のアミノ酸がトリプトファンに置換され、204位に相当する位置のアミノ酸がトリプトファン又はフェニルアラニンに置換されていることが好ましく、配列番号1の203位に相当する位置のアミノ酸及び204位に相当する位置のアミノ酸がそれぞれトリプトファンに置換されていることがより好ましい。
さらに、前記タンパク質(B)は、配列番号1の203位及び204位に相当する位置以外の位置にアミノ酸置換を有していてもよい。例えば前記タンパク質(B)は、下記(Ca−2)〜(Cg−2)からなる群より選ばれる少なくとも1つのアミノ酸置換をさらに有することが好ましい。

(Ca−2)配列番号1の143位に相当する位置のアミノ酸をプロリンに置換。
(Cb−2)配列番号1の146位に相当する位置のアミノ酸をアスパラギン又はセリンに置換。
(Cc−2)配列番号1の160位に相当する位置のアミノ酸をアラニンに置換。
(Cd−2)配列番号1の202位に相当する位置のアミノ酸をフェニルアラニン、ヒスチジン、ロイシン、グルタミン、又はバリンに置換。
(Ce−2)配列番号1の212位に相当する位置のアミノ酸をプロリンに置換。
(Cf−2)配列番号1の213位に相当する位置のアミノ酸をチロシンに置換。
(Cg−2)配列番号1の281位に相当する位置のアミノ酸をグルタミンに置換。
前記タンパク質(B)は、配列番号1の203位及び204位に相当する位置のアミノ酸がそれぞれトリプトファンに置換され、さらに前記(Ca−2)〜(Cg−2)からなる群より選ばれる1つ又は2つのアミノ酸置換を有することがより好ましい。あるいは、前記タンパク質(B)は、配列番号1の204位に相当する位置のアミノ酸がトリプトファンに置換され、さらに前記(Ca−2)〜(Cg−2)からなる群より選ばれる1つ又は2つのアミノ酸置換を有することがより好ましい。
本明細書で記載する、アミノ酸配列又は塩基配列における「相当する位置」又は「相当する領域」は、目的アミノ酸配列を参照配列と比較し、各アミノ酸配列中に存在する保存アミノ酸残基に最大の相同性を与えるように配列を整列(アラインメント)させることにより決定することができる。アラインメントは、公知のアルゴリズムを用いて実行することができ、その手順は当業者に公知である。例えば、アラインメントは、上述のLipman-Pearson法等に基づいて手作業で行うこともできるし、Clustal Wマルチプルアラインメントプログラム(Thompson,J.D.et al,Nucleic Acids Res.,1994,vol.22,p.4673-4680)をデフォルト設定で用いることにより行うこともできる。Clustal Wは、例えば、欧州バイオインフォマティクス研究所(European Bioinformatics Institute:EBI,[www.ebi.ac.uk/index.html])や、国立遺伝学研究所が運営する日本DNAデータバンク(DDBJ,[www.ddbj.nig.ac.jp/Welcome-j.html])のウェブサイト上で利用することができる。
配列番号1の128位〜287位のアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列として、配列番号3の115位〜274位のアミノ酸配列、及び配列番号49の126位〜285位のアミノ酸配列が挙げられる。配列番号3は、ナンノクロロプシス・ガディタナCCMP526株由来のTE(NgTE)である。配列番号49は、ナンノクロロプシス・グラニュラータNIES2588株由来のTE(NgrTE)である。
なお、配列番号1,3,49に示したアミノ酸配列又はその部分配列からなるタンパク質を「野生型TE」といい、野生型TEのアミノ酸配列が一部変異したアミノ酸配列からなるタンパク質を「TE改変体」という。
図1に示すように、配列番号1の128位〜287位のアミノ酸配列、配列番号3の115位〜274位のアミノ酸配列、及び配列番号49の126位〜285位のアミノ酸配列は、互いに高い同一性を有する。配列番号1の128位〜287位のアミノ酸配列と配列番号3の115位〜274位のアミノ酸配列との同一性は約91%である。また、配列番号1の128位〜287位のアミノ酸配列と配列番号49の126位〜285位のアミノ酸配列との同一性は約98%である。
配列番号1と同様、配列番号3のアミノ酸配列における115位〜274位の領域、及び配列番号49のアミノ酸配列における126位〜285位の領域も、TEとして機能するために重要で、TE活性を示すために十分な領域であることが、本発明者らによって確認されている。したがって、配列番号3の115位〜274位のアミノ酸配列からなるタンパク質、及び配列番号49の126位〜285位のアミノ酸配列からなるタンパク質も、TE活性を有する。
前記タンパク質(B)としては、下記タンパク質(Ba)又は(Bb)が好ましい。

(Ba)配列番号3の115位〜274位のアミノ酸配列において、配列番号3の190位のグリシン及び191位のバリンの少なくとも一方がトリプトファンに置換されたアミノ酸配列からなり、かつTE活性を有するタンパク質。
(Bb)配列番号49の126位〜285位のアミノ酸配列において、配列番号49の201位のグリシン及び202位のバリンの少なくとも一方がトリプトファンに置換されたアミノ酸配列からなり、かつTE活性を有するタンパク質。
図1に示すように、配列番号1の203位のグリシン、204位のバリン、143位のロイシン、146位のヒスチジン、160位のグリシン、202位のメチオニン、212位のグリシン、213位のアスパラギン、281位のプロリンはそれぞれ、配列番号3の190位のグリシン、191位のバリン、130位のロイシン、133位のヒスチジン、147位のグリシン、189位のメチオニン、199位のグリシン、200位のアスパラギン、268位のプロリンに相当する。
また、配列番号1の203位のグリシン、204位のバリン、143位のロイシン、146位のヒスチジン、160位のグリシン、202位のメチオニン、212位のグリシン、213位のアスパラギン、281位のプロリンはそれぞれ、配列番号49の201位のグリシン、202位のバリン、141位のロイシン、144位のヒスチジン、158位のグリシン、200位のメチオニン、210位のグリシン、211位のアスパラギン、279位のプロリンに相当する。
前記タンパク質(Ba)及び(Bb)のアミノ酸配列においても、これらのアミノ酸が前記タンパク質(A)と同様に置換されていることが好ましい。
前記タンパク質(Ba)は、前記タンパク質(A)と同様、特定の炭素数のアシル−ACPへの特異性が向上する。前記タンパク質(Ba)のアミノ酸配列は、前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と90%程度の同一性を有する。このことから、前記タンパク質(B)において、配列番号1の128位〜287位のアミノ酸配列に対する同一性は、86%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
また、前記タンパク質(B)において、配列番号1の128位〜287位のアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列としては、配列番号1の128位〜287位のアミノ酸配列、配列番号3の115位〜274位のアミノ酸配列、又は配列番号49の126位〜285位のアミノ酸配列において1又は数個(好ましくは1〜8個、より好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜4個、よりさらに好ましくは1〜3個、よりさらに好ましくは1〜2個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入、又は付加されたアミノ酸配列も好ましい。
なお、アミノ酸配列に欠失、置換、挿入、付加等の変異を導入する方法としては、例えば、アミノ酸配列をコードする塩基配列に変異を導入する方法が挙げられる。塩基配列に変異を導入する方法については、後述する。
前記タンパク質(C)は、そのアミノ酸配列の一部として前記タンパク質(A)又は(B)のアミノ酸配列を含んでおり、かつTE活性を示す。
前記タンパク質(C)を構成するアミノ酸配列中、前記タンパク質(A)又は(B)のアミノ酸配列以外の配列としては、例えば、配列番号1の128位〜287位以外の任意のアミノ酸配列、配列番号3の115位〜274位以外の任意のアミノ酸配列、配列番号49の126位〜285位以外の任意のアミノ酸配列、又はこれらの配列に1又は数個(好ましくは1以上20個以下、より好ましくは1以上15個以下、さらに好ましくは1以上10個以下、よりさらに好ましくは1以上5個以下、よりさらに好ましくは1以上3個以下)の変異が導入されたアミノ酸配列、等が挙げられる。変異としては、アミノ酸の欠失、置換、挿入又は付加が挙げられる。これらの配列は、前記タンパク質(A)又は(B)のアミノ酸配列のN末端側に付加されることが好ましい。
また、前記タンパク質(C)として、前記タンパク質(A)又は(B)のアミノ酸配列に、タンパク質の輸送や分泌に関与するシグナルペプチドが付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質も好ましい。シグナルペプチドの付加の例としては、葉緑体移行シグナルペプチドのN末端への付加等が挙げられる。
前記タンパク質(C)として好ましくは、前記タンパク質(A)のアミノ酸配列のN末端側に、配列番号1の1位〜127位のアミノ酸配列、配列番号1の49位〜127位のアミノ酸配列、配列番号1の58位〜127位のアミノ酸配列、配列番号1の78位〜127位のアミノ酸配列、配列番号1の87位〜127位のアミノ酸配列、配列番号1の88位〜127位のアミノ酸配列、配列番号1の98位〜127位のアミノ酸配列、配列番号1の108位〜127位のアミノ酸配列、配列番号1の118位〜127位のアミノ酸配列、又はこれらの配列に1又は数個(好ましくは1個以上20個以下、より好ましくは1個以上15個以下、さらに好ましくは1個以上10個以下、よりさらに好ましくは1個以上5個以下、よりさらに好ましくは1個以上3個以下)のアミノ酸変異(アミノ酸の欠失、置換、挿入又は付加)が導入されたアミノ酸配列、が付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質である。なお、配列番号1のアミノ酸配列、又は配列番号1の49位〜287位、58位〜287位、78位〜287位、87位〜287位、88位〜287位、98位〜287位、108位〜287位、若しくは118位〜287位のアミノ酸配列からなるタンパク質が、TE活性を有することは本発明者らにより確認されている。
また、前記タンパク質(C)として好ましくは、前記タンパク質(Ba)のアミノ酸配列のN末端側に、配列番号3の36位〜114位のアミノ酸配列、配列番号3の45位〜114位のアミノ酸配列、配列番号3の55位〜114位のアミノ酸配列、配列番号3の65位〜114位のアミノ酸配列、配列番号3の75位〜114位のアミノ酸配列、配列番号3の85位〜114位のアミノ酸配列、配列番号3の95位〜114位のアミノ酸配列、配列番号3の105位〜114位のアミノ酸配列、又はこれらの配列に1又は数個(好ましくは1個以上20個以下、より好ましくは1個以上15個以下、さらに好ましくは1個以上10個以下、よりさらに好ましくは1個以上5個以下、よりさらに好ましくは1個以上3個以下)のアミノ酸変異(アミノ酸の欠失、置換、挿入又は付加)が導入されたアミノ酸配列、が付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質である。なお、配列番号3の36位〜274位、45位〜274位、55位〜274位、65位〜274位、75位〜274位、85位〜274位、95位〜274位、若しくは105位〜274位のアミノ酸配列からなるタンパク質が、TE活性を有することは本発明者らにより確認されている。
また、前記タンパク質(C)として好ましくは、前記タンパク質(Bb)のアミノ酸配列のN末端側に、配列番号49の1位〜125位のアミノ酸配列、配列番号49の35位〜125位のアミノ酸配列、配列番号49の55位〜125位のアミノ酸配列、配列番号49の85位〜125位のアミノ酸配列、又はこれらの配列に1又は数個(好ましくは1個以上20個以下、より好ましくは1個以上15個以下、さらに好ましくは1個以上10個以下、よりさらに好ましくは1個以上5個以下、よりさらに好ましくは1個以上3個以下)のアミノ酸変異(アミノ酸の欠失、置換、挿入又は付加)が導入されたアミノ酸配列、が付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質である。なお、配列番号49のアミノ酸配列、又は配列番号49の35位〜285位、55位〜285位、若しくは85位〜285位のアミノ酸配列からなるタンパク質が、TE活性を有することは本発明者らにより確認されている。
また、前記タンパク質(C)として好ましくは、配列番号1、3又は49に示すアミノ酸配列において、配列番号1の203位に相当する位置のアミノ酸及び204位に相当する位置のアミノ酸の少なくとも一方がトリプトファンに置換されたアミノ酸配列からなり、かつTE活性を有するタンパク質である。
さらに、前記タンパク質(C)として、配列番号1、3又は49に示すアミノ酸配列において、前述のアミノ酸置換を有し、配列番号1の1〜127位、配列番号3の1〜114位、又は配列番号49の1〜125位の任意の位置でN末端側が欠失したアミノ酸配列からなるタンパク質であってもよい。
本発明のTE改変体がTE活性を有することは、例えば、大腸菌等の宿主細胞内で機能するプロモーターの下流にTE遺伝子を連結した融合遺伝子を脂肪酸分解系が欠損した宿主細胞へ導入し、導入したTE遺伝子が発現する条件で培養して、宿主細胞又は培養液中の脂肪酸組成の変化をガスクロマトグラフィー解析等の方法を用いて分析することにより、確認することができる。この場合、総脂肪酸量に占める特定の炭素数の脂肪酸の割合を、野生型TEを発現させた系と比較することで、TE改変体で特定の炭素数のアシル−ACPに対する特異性の変化を確認できる。
また、大腸菌等の宿主細胞内で機能するプロモーターの下流にTE遺伝子を連結した融合遺伝子を宿主細胞へ導入し、導入したTE遺伝子が発現する条件で細胞を培養した後、細胞の破砕液に対し、Yuanらの方法(Yuan L.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1995,vol.92(23),p.10639-10643)によって調製した各種アシル−ACPを基質とした反応を行うことにより、TE活性を測定することができる。
本発明のタンパク質の取得方法については特に制限はなく、通常行われる化学的手法又は遺伝子工学的手法等により得ることができる。また、化学合成によりタンパク質合成を行ってもよく、遺伝子組み換え技術により組換えタンパク質を作製してもよい。例えば、ナンノクロロプシス・オキュラータからクローニングによって取得したTE遺伝子を遺伝子組み換え技術により改変したものを用いることで、TE改変体を得ることができる。
また、ナンノクロロプシス・オキュラータ等のナンノクロロプシス属に属する藻類は、The culture collection of algae at University of Texas at Austin (UTEX)、独立行政法人国立環境研究所(NIES)、National Center for Marine Algae and Microbiota (NCMA:旧CCMP)、Culture Collection of Algae and Protozoa (CCAP)、Australian National Algae Culture Collection(CSIRO)等から入手できる。
2.アシル−ACPチオエステラーゼ改変体をコードする遺伝子
本発明の遺伝子は、前記タンパク質(A)〜(C)のいずれか1つをコードする遺伝子である。
配列番号1に示すアミノ酸配列をコードする遺伝子の例として、配列番号2に示す塩基配列からなる遺伝子が挙げられる。配列番号2に示す塩基配列は、ナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株由来の野生型TEをコードする遺伝子の塩基配列である。配列番号2の382位〜864位の塩基配列は、配列番号1の128位〜287位のアミノ酸配列をコードする。
配列番号3に示すアミノ酸配列をコードする遺伝子の例として、配列番号4に示す塩基配列からなる遺伝子が挙げられる。配列番号4に示す塩基配列は、ナンノクロロプシス・ガディタナCCMP526株由来の野生型TEをコードする遺伝子の塩基配列である。配列番号4の343位〜825位の塩基配列は、配列番号3の115位〜274位のアミノ酸配列をコードする。配列番号4の343位〜825位までの塩基配列は、配列番号2の382位〜864位までの塩基配列と約76%の同一性を有する。
配列番号49に示すアミノ酸配列をコードする遺伝子の例として、配列番号50に示す塩基配列からなる遺伝子が挙げられる。配列番号50に示す塩基配列は、ナンノクロロプシス・グラニュラータNIES2588株由来の野生型TEをコードする遺伝子の塩基配列である。配列番号50の376位〜858位の塩基配列は、配列番号49の126位〜285位のアミノ酸配列をコードする。配列番号50の376位〜858位の塩基配列は、配列番号2の382位〜864位までの塩基配列と約93%の同一性を有する。
前記タンパク質(A)〜(C)のいずれか1つをコードする遺伝子の具体例として、下記DNA(A1)〜(C1)のいずれか1つからなる遺伝子が挙げられる。しかし、本発明はこれらに限定されるものではない。

(A1)配列番号2の382位〜864位の塩基配列において、607位〜609位の塩基及び610位〜612位の塩基の少なくとも一方がトリプトファンをコードする塩基に置換された塩基配列からなるDNA。
(B1)配列番号2の382位〜864位の塩基配列と70%以上の同一性を有する塩基配列において、配列番号2の607位〜609位に相当する位置の塩基及び610位〜612位に相当する位置の塩基の少なくとも一方がトリプトファンをコードする塩基に置換された塩基配列からなり、かつTE活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(C1)前記DNA(A1)又は(B1)の塩基配列を有し、かつTE活性を有するタンパク質をコードするDNA。
前記DNA(A1)からなる遺伝子は、前記タンパク質(A)をコードする遺伝子である。
前記DNA(A1)からなる遺伝子の塩基配列は、配列番号2の607位〜609位の塩基(コドン)がトリプトファンをコードする塩基に置換され、610位〜612位の塩基がトリプトファンをコードする塩基又はフェニルアラニンをコードする塩基に置換されていることが好ましく、配列番号2の607位〜609位の塩基及び610位〜612位の塩基がそれぞれトリプトファンをコードする塩基に置換されていることがより好ましい。
さらに、前記DNA(A1)からなる遺伝子の塩基配列は、配列番号2の607位〜609位の塩基及び610位〜612位以外の位置に塩基置換を有していてもよい。例えば、前記DNA(A1)は、下記(C1a−1)〜(C1g−1)からなる群より選ばれる少なくとも1つの塩基置換をさらに有することが好ましい。

(C1a−1)配列番号2の427位〜429位の塩基がプロリンをコードする塩基に置換。
(C1b−1)配列番号2の436位〜438位の塩基がアスパラギン又はセリンをコードする塩基に置換。
(C1c−1)配列番号2の478位〜480位の塩基がアラニンをコードする塩基に置換。
(C1d−1)配列番号2の604位〜606位の塩基がフェニルアラニン、ヒスチジン、ロイシン、グルタミン、又はバリンをコードする塩基に置換。
(C1e−1)配列番号2の634位〜636位の塩基がプロリンをコードする塩基に置換。
(C1f−1)配列番号2の637位〜639位の塩基がチロシンをコードする塩基に置換。
(C1g−1)配列番号2の841位〜843位の塩基がグルタミンをコードする塩基に置換。
前記DNA(A1)からなる遺伝子の塩基配列は、配列番号2の607位〜609位の塩基及び610位〜612位の塩基がそれぞれトリプトファンをコードする塩基に置換され、さらに前記(C1a−1)〜(C1g−1)からなる群より選ばれる1つ又は2つの塩基置換を有することがより好ましい。あるいは、前記DNA(A1)からなる遺伝子の塩基配列は、配列番号2の610位〜612位の塩基がトリプトファンをコードする塩基に置換され、さらに前記(C1a−1)〜(C1g−1)からなる群より選ばれる1つ又は2つの塩基置換を有することがより好ましい。
前記DNA(B1)からなる遺伝子は、前記タンパク質(B)が有するアミノ酸置換に相当する塩基置換を有する遺伝子である。
前記DNA(B1)からなる遺伝子の塩基配列は、配列番号2の607位〜609位に相当する位置の塩基がトリプトファンをコードする塩基に置換され、610位〜612位に相当する位置の塩基がトリプトファン又はフェニルアラニンをコードする塩基に置換されていることが好ましく、配列番号2の607位〜609位に相当する位置の塩基及び610位〜612位に相当する位置の塩基がそれぞれトリプトファンをコードする塩基に置換されていることがより好ましい。
さらに、前記DNA(B1)からなる遺伝子の塩基配列は、配列番号2の607位〜609位に相当する位置の塩基及び610位〜612位に相当する位置以外の位置に塩基置換を有していてもよい。例えば、前記DNA(B1)は、下記(C1a−2)〜(C1g−2)からなる群より選ばれる少なくとも1つの塩基置換をさらに有することが好ましい。

(C1a−2)配列番号2の427位〜429位に相当する位置の塩基がプロリンをコードする塩基に置換。
(C1b−2)配列番号2の436位〜438位に相当する位置の塩基がアスパラギン又はセリンをコードする塩基に置換。
(C1c−2)配列番号2の478位〜480位に相当する位置の塩基がアラニンをコードする塩基に置換。
(C1d−2)配列番号2の604位〜606位に相当する位置の塩基がフェニルアラニン、ヒスチジン、ロイシン、グルタミン、又はバリンをコードする塩基に置換。
(C1e−2)配列番号2の634位〜636位に相当する位置の塩基がプロリンをコードする塩基に置換。
(C1f−2)配列番号2の637位〜639位に相当する位置の塩基がチロシンをコードする塩基に置換。
(C1g−2)配列番号2の841位〜843位に相当する位置の塩基がグルタミンをコードする塩基に置換。
前記DNA(B1)からなる遺伝子の塩基配列は、配列番号2の607位〜609位の塩基及び610位〜612位の塩基に相当する位置がそれぞれトリプトファンをコードする塩基に置換され、さらに前記(C1a−2)〜(C1g−2)からなる群より選ばれる1つ又は2つの塩基置換を有することがより好ましい。あるいは、前記DNA(B1)からなる遺伝子の塩基配列は、配列番号2の610位〜612位に相当する位置の塩基がトリプトファンをコードする塩基に置換され、さらに前記(C1a−2)〜(C1g−2)からなる群より選ばれる1つ又は2つの塩基置換を有することがより好ましい。
前記DNA(B1)からなる遺伝子としては、下記DNA(B1a)又は(B1b)からなる遺伝子が好ましい。

(B1a)配列番号4の343位〜825位の塩基配列において、568位〜570位の塩基及び571位〜573位の塩基の少なくとも一方がトリプトファンをコードする塩基に置換された塩基配列からなり、かつTE活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(B1b)配列番号50の376位〜858位の塩基配列において、601位〜603位の塩基及び604位〜606位の塩基の少なくとも一方がトリプトファンをコードする塩基に置換された塩基配列からなり、かつTE活性を有するタンパク質をコードするDNA。
配列番号2の607位〜609位の塩基、610位〜612位の塩基、427位〜429位の塩基、436位〜438位の塩基、478位〜480位の塩基、604位〜606位の塩基、634位〜636位の塩基、637位〜639位、841位〜843位の塩基の塩基はそれぞれ、配列番号4の568位〜570位の塩基、571位〜573位の塩基、388位〜390位の塩基、397位〜399位の塩基、439位〜441位の塩基、565位〜567位の塩基、595位〜597位の塩基、598位〜600位の塩基、802位〜804位の塩基に相当する。
また、配列番号2の607位〜609位の塩基、610位〜612位の塩基、427位〜429位の塩基、436位〜438位の塩基、478位〜480位の塩基、604位〜606位の塩基、634位〜636位の塩基、637位〜639位、841位〜843位の塩基の塩基はそれぞれ、配列番号50の601位〜603位の塩基、604位〜606位の塩基、421位〜423位の塩基、430位〜432位の塩基、472位〜474位の塩基、598位〜600位の塩基、628位〜630位の塩基、631位〜633位の塩基、835位〜837位の塩基に相当する。
前記DNA(B1a)及び(B1b)の塩基配列においても、これらの塩基が前記DNA(A1)の塩基配列と同様に置換されていることが好ましい。
前記DNA(B1)において、配列番号2の382位〜864位の塩基配列に対する同一性は、72%以上が好ましく、74%以上がより好ましく、76%以上がさらに好ましい。
また、前記DNA(B1)において、配列番号2の382位〜864位の塩基配列と70%以上の同一性を有する塩基配列は、配列番号2の382位〜864位の塩基配列、配列番号4の343位〜825位の塩基配列、又は配列番号50の376位〜858位の塩基配列において1又は数個(好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜15個、さらに好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜3個)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加された塩基配列も好ましい。
塩基配列に欠失、置換、挿入、付加等の変異を導入する方法としては、例えば、部位特異的な変異導入法が挙げられる。具体的な部位特異的変異の導入方法としては、Splicing overlap extension(SOE)PCRを利用した方法、ODA法、Kunkel法等が挙げられる。また、Site-Directed Mutagenesis System Mutan-SuperExpress Kmキット(タカラバイオ社)、Transformer TM Site-Directed Mutagenesisキット(Clonetech社)、KOD-Plus-Mutagenesis Kit(東洋紡社)等の市販のキットを利用することもできる。また、ランダムな遺伝子変異を与えた後、適当な方法により酵素活性の評価及び遺伝子解析を行うことにより目的遺伝子を取得することもできる。
前記DNA(C1)は、その塩基配列の一部として前記DNA(A1)又は(B1)の塩基配列を含む。
前記DNA(C1)の塩基配列中、前記DNA(A1)又は(B1)の塩基配列以外の塩基配列としては、例えば、配列番号2の382位〜864位以外の任意の塩基配列、配列番号4の343位〜825位以外の任意の塩基配列、配列番号50の376位〜858位以外の任意の塩基配列、又はこれらの配列に1又は数個(好ましくは1以上20個以下、より好ましくは1以上15個以下、さらに好ましくは1以上10個以下、よりさらに好ましくは1以上5個以下、さらに好ましくは1以上3個以下)の変異が導入された塩基配列、等が挙げられる。変異としては、塩基の欠失、置換、挿入又は付加が挙げられる。これらの配列は、前記DNA(A1)又は(B1)の塩基配列の5’末端側に付加されることが好ましい。
また、タンパク質の輸送や分泌に関与するシグナルペプチドをコードする塩基配列も好ましい。シグナルペプチドとしては、前記タンパク質(C)で述べたものが挙げられる。シグナルペプチドをコードする塩基配列は、前記DNA(A1)又は(B1)の塩基配列の5'末端側に付加されることが好ましい。
前記DNA(C1)の塩基配列として好ましくは、前記DNA(A1)の塩基配列の5'末端側に、配列番号2の1位〜381位の塩基配列、配列番号2の145位〜381位の塩基配列、配列番号2の172位〜381位の塩基配列、配列番号2の232位〜381位の塩基配列、配列番号2の259位〜381位の塩基配列、配列番号2の262位〜381位の塩基配列、配列番号2の292位〜381位の塩基配列、配列番号2の322位〜381位の塩基配列、配列番号2の352位〜381位の塩基配列、又はこれらの配列に1又は数個(好ましくは1個以上20個以下、より好ましくは1個以上15個以下、さらに好ましくは1個以上10個以下、よりさらに好ましくは1個以上5個以下、よりさらに好ましくは1個以上3個以下)の塩基変異(塩基の欠失、置換、挿入又は付加)が導入された塩基配列、が付加された塩基配列である。なお、配列番号2の塩基配列、又は配列番号2の145位〜864位、172位〜864位、232位〜864位、259位〜864位、262位〜864位、292位〜864位、322位〜864位、若しくは352位〜864位の塩基配列がコードするタンパク質が、TE活性を有することは本発明者らにより確認されている。
また、前記DNA(C1)の塩基配列として好ましくは、前記DNA(B1a)の塩基配列の5'末端側に、配列番号4の106位〜342位の塩基配列、配列番号4の133位〜342位の塩基配列、配列番号4の163位〜342位の塩基配列、配列番号4の193位〜342位の塩基配列、配列番号4の223位〜342位の塩基配列、配列番号4の253位〜342位の塩基配列、配列番号4の283位〜342位の塩基配列、配列番号4の313位〜342位の塩基配列、又はこれらの配列に1又は数個(好ましくは1個以上20個以下、より好ましくは1個以上15個以下、さらに好ましくは1個以上10個以下、よりさらに好ましくは1個以上5個以下、よりさらに好ましくは1個以上3個以下)の塩基変異(塩基の欠失、置換、挿入又は付加)が導入された塩基配列、が付加された塩基配列である。なお、配列番号4の106位〜825位、133位〜825位、163位〜825位、193位〜825位、223位〜825位、253位〜825位、283位〜825位、若しくは313位〜825位の塩基配列がコードするタンパク質が、TE活性を有することは本発明者らにより確認されている。
また、前記DNA(C1)の塩基配列として好ましくは、前記DNA(B1b)の塩基配列の5'末端側に、配列番号50の1位〜375位の塩基配列、配列番号50の103位〜375位の塩基配列、配列番号50の163位〜375位の塩基配列、配列番号50の253位〜375位の塩基配列、又はこれらの配列に1又は数個(好ましくは1個以上20個以下、より好ましくは1個以上15個以下、さらに好ましくは1個以上10個以下、よりさらに好ましくは1個以上5個以下、よりさらに好ましくは1個以上3個以下)の塩基変異(塩基の欠失、置換、挿入又は付加)が導入された塩基配列、が付加された塩基配列である。なお、配列番号50の塩基配列、又は配列番号50の103位〜858位、163位〜858位、若しくは253位〜858位の塩基配列がコードするタンパク質が、TE活性を有することは本発明者らにより確認されている。
また、前記DNA(C1)として好ましくは、配列番号2、4又は50に示す塩基配列において、配列番号2の607位〜609位に相当する位置の塩基及び610位〜612位に相当する位置の塩基の少なくとも一方がトリプトファンをコードする塩基に置換された塩基配列からなり、かつTE活性を有するタンパク質をコードするDNAである。
さらに、前記DNA(C1)として、配列番号2、4又は50に示す塩基配列において、前述の塩基置換を有し、配列番号2の1〜381位、配列番号4の1〜342位、又は配列番号50の1〜375位の任意の位置で5'末端側が欠失した塩基配列からなるDNAであってもよい。
TE改変体をコードする遺伝子の調製方法の一例としては、まず、ナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株よりクローニングした野生型TE遺伝子の塩基配列(配列番号2で示される塩基配列)を、In-Fusion(登録商標) HD Cloning Kit(Clonthech,Mountain View,California)を用いてベクターに組み込む。次いで、得られたベクターDNAを鋳型にして、配列番号1で示されるアミノ酸配列において配列番号1の203位に相当する位置のアミノ酸又は204位に相当する位置のアミノ酸がトリプトファンに置換されたアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むオリゴヌクレオチドをプライマーとして用い、PCR法によってDNA断片を増幅する。ここで、PCRの反応条件の好ましい一例としては、2本鎖DNAを1本鎖にする熱変性反応を98℃で10秒間行い、プライマー対を1本鎖DNAにハイブリダイズさせるアニーリング反応を55℃で約10秒間行い、DNAポリメラーゼを作用させる伸長反応を72℃で約30秒間行い、これらを1サイクルとしたものを30サイクル行うことが挙げられる。
PCR反応で増幅したDNAを、メチル化DNAを特異的に切断するDpnI酵素で処理し、これを用いて大腸菌を形質転換し、抗生物質含有プレート培地で選択する。形質転換された大腸菌よりプラスミド抽出することで、目的のアミノ酸変異が導入されたTE改変体をコードする遺伝子を取得することができる。
3.形質転換体
本発明の形質転換体は、宿主に前記タンパク質(A)〜(C)のいずれか1つをコードする遺伝子を導入して得られる。当該形質転換体では、ナンノクロロプシス属に属する藻類由来の野生型TE遺伝子を導入した形質転換体に比べ、特定の炭素数の脂質の生産能、特にC8脂肪酸、C10脂肪酸、又はC12脂肪酸及びこれを構成成分とする脂質の生産能が有意に向上する。また、当該形質転換体では、野生型TE遺伝子を導入した形質転換体と比べ、前述した特定の炭素数の脂肪酸の生産性が向上することにより、生産される脂質中の脂肪酸組成が変化する。なお、宿主や形質転換体の脂肪酸及び脂質の生産能については、実施例で用いた方法により測定することができる。
本発明の形質転換体は、TE改変体をコードするTE遺伝子を、通常の遺伝子工学的方法によって宿主に導入することで得られる。具体的には、TE改変体をコードする遺伝子を宿主細胞中で発現させることのできる発現ベクターや遺伝子発現カセットを調製し、これを宿主細胞に導入して宿主細胞を形質転換させることにより作製できる。
形質転換体の宿主としては通常用いられるものより適宜選択することができる。本発明で用いることができる宿主としては、微生物(藻類や微細藻類を含む)、植物体、又は動物体が挙げられる。製造効率及び得られた脂質の利用性の点から、宿主は微生物又は植物体であることが好ましく、微生物であることがより好ましい。
前記微生物は原核生物、真核生物のいずれであってもよく、エシェリキア(Escherichia)属の微生物やバシラス(Bacillus)属の微生物等の原核生物、又は酵母や糸状菌等の真核微生物を用いることができる。なかでも、脂質生産性の観点から、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、赤色酵母(Rhodosporidium toruloides)、モルチエレラ・エスピー(Mortierella sp.)が好ましく、大腸菌がより好ましい。
前記藻類や微細藻類としては、遺伝子組換え手法が確立している観点から、クラミドモナス(Chlamydomonas)属の藻類、クロレラ(Chlorella)属の藻類、ファエオダクティラム(Phaeodactylum)属の藻類、又はナンノクロロプシス属の藻類が好ましく、ナンノクロロプシス属の藻類がより好ましい。ナンノクロロプシス属の藻類の具体例としては、ナンノクロロプシス・オキュラータ、ナンノクロロプシス・ガディタナ、ナンノクロロプシス・サリナ(Nannochloropsis salina)、ナンノクロロプシス・オセアニカ(Nannochloropsis oceanica)、ナンノクロロプシス・アトムス(Nannochloropsis atomus)、ナンノクロロプシス・マキュラタ(Nannochloropsis maculata)、ナンノクロロプシス・グラニュラータ、ナンノクロロプシス・エスピー(Nannochloropsis sp.)等が挙げられる。なかでも、脂質生産性の観点から、ナンノクロロプシス・オキュラータ、又はナンノクロロプシス・ガディタナが好ましく、ナンノクロロプシス・オキュラータがより好ましい。
前記植物体としては、種子に脂質を高含有する観点から、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、ナタネ、ココヤシ、パーム、クフェア、又はヤトロファが好ましく、シロイヌナズナがより好ましい。
遺伝子発現ベクターの母体となるベクター(プラスミド)としては、TE改変体をコードする遺伝子を宿主に導入することができ、宿主細胞内で当該遺伝子を発現させることができるベクターであればよい。例えば、導入する宿主の種類に応じたプロモーターやターミネーター等の発現調節領域を有するベクターであって、複製開始点や選択マーカー等を有するベクターを用いることができる。また、プラスミド等の染色体外で自立増殖・複製するベクターであってもよいし、染色体内に組み込まれるベクターであってもよい。
本発明で好ましく用いることができる発現用ベクターとしては、微生物を宿主とする場合には、例えば、pBluescript(pBS) II SK(-)(Stratagene社製)、pSTV系ベクター(タカラバイオ社製)、pUC系ベクター(宝酒造社製)、pET系ベクター(タカラバイオ社製)、pGEX系ベクター(GEヘルスケア社製)、pCold系ベクター(タカラバイオ社製)、pHY300PLK(タカラバイオ社製)、pUB110(Mckenzie,T. et al.,(1986),Plasmid 15(2);p.93-103)、pBR322(タカラバイオ社製)、pRS403(ストラタジーン社製)、又はpMW218/219(ニッポンジーン社製)が挙げられる。特に、宿主が大腸菌の場合は、pBluescript II SK(-)、又はpMW218/219が好ましく用いられる。
藻類又は微細藻類を宿主とする場合には、例えば、pUC19(タカラバイオ社製)、P66(Chlamydomonas Center)、P-322(Chlamydomonas Center)、pPha-T1(非特許文献2参照)、又はpJET1(コスモ・バイオ社製)が挙げられる。特に、宿主がナンノクロロプシス属に属する藻類の場合は、pUC19、pPha-T1、又はpJET1が好ましく用いられる。また、宿主がナンノクロロプシス属に属する藻類の場合には、Oliver Kilian,et al.,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,Dec 27;108(52),2011、の文献記載の方法を参考にして、本発明の遺伝子、プロモーター及びターミネーターからなるDNA断片(遺伝子発現カセット)を用いて宿主を形質転換することもできる。このDNA断片としては、例えば、PCRにより増幅したDNA断片や制限酵素で切断したDNA断片が挙げられる。
植物細胞を宿主とする場合には、例えば、pRI系ベクター(タカラバイオ社製)、pBI系ベクター(クロンテック社製)、又はIN3系ベクター(インプランタイノベーションズ社製)が挙げられる。特に、宿主がシロイヌナズナの場合は、pRI系ベクター又はpBI系ベクターが好ましく用いられる。
発現ベクターや遺伝子発現カセットに用いるプロモーターやターミネーター等の発現調節領域も、使用する宿主やベクターの種類に応じて適宜選択することができる。本発明で好ましく用いることができるプロモーターとしては、例えば、lacプロモーター、trpプロモーター、tacプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーター、SpoVGプロモーター、カリフラワーモザイルウイルス35SRNAプロモーター、ハウスキーピング遺伝子プロモーター(例えば、チューブリンプロモーター、アクチンプロモーター、ユビキチンプロモーター等)、ナタネ由来Napin遺伝子プロモーター、植物由来Rubiscoプロモーター、又はナンノクロロプシス属由来のビオラキサンチン/クロロフィルa結合タンパク質遺伝子のプロモーターが挙げられる。
また、目的のタンパク質をコードする遺伝子が組み込まれたことを確認するための選択マーカーの種類も、使用する宿主やベクターの種類に応じて適宜選択することができる。本発明で好ましく用いることができる選択マーカーとしては、アンピシリン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、エリスロマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、スペクチノマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、ブラストサイジンS耐性遺伝子、ビアラホス耐性遺伝子、ゼオシン耐性遺伝子、パロモマイシン耐性遺伝子、又はハイグロマイシン耐性遺伝子等の薬剤耐性遺伝子が挙げられる。さらに、栄養要求性に関連する遺伝子の欠損等を選択マーカー遺伝子として使用することも可能である。
上記ベクターに前記TE改変体をコードする遺伝子を、制限酵素処理やライゲーション等の通常の手法によって組み込むことにより形質転換に用いる発現ベクターを構築することができる。
形質転換方法としては、使用する宿主やベクターの種類に応じて常法より適宜選択することができる。例えば、カルシウムイオンを用いる方法、一般的なコンピテントセル形質転換方法(J.Bacterial.93,1925(1967))、プロトプラスト形質転換法、エレクトロポレーション法又はLP形質転換方法等を用いることができる。宿主としてナンノクロロプシス属の藻類を用いる場合、Randor Radakovits, et al.,Nature Communications,DOI:10.1038/ncomms1688,2012、等に記載のエレクトロポレーション法を用いて形質転換を行うこともできる。
目的遺伝子断片が導入された形質転換体の選択は、選択マーカー等を利用することで行うことができる。例えば、薬剤耐性遺伝子が、形質転換時に目的DNA断片とともに宿主細胞中に導入された結果、形質転換体が獲得する薬剤耐性を指標に行うことができる。また、ゲノムを鋳型としたPCR法等によって、目的DNA断片の導入を確認することもできる。
4.脂質の製造方法
本発明の脂質の製造方法は、TE改変体をコードする遺伝子を導入した形質転換体を培養し、脂質を生産させる工程を含む。当該工程は、脂質の生産性向上の観点から、TE改変体をコードする遺伝子を導入した形質転換体を適切な条件にて培養して培養物を得る工程、及び得られた培養物から脂質を採取する工程を含むことが好ましい。なお、本明細書で記載する「形質転換体を培養する」とは、微生物、藻類、植物体、動物体、及びそれらの細胞や組織を培養、生育することをいい、植物体を土壌等で栽培することも含まれる。また、「培養物」には、形質転換体の培養液に加えて、培養等した後の形質転換体そのものも含まれる。
培養条件は、形質転換体の宿主に応じて適宜選択することができる。
また、脂質の生産効率の点から、培地中に、例えばTEの基質或いは脂肪酸生合成系に関与する前駆物質としてグリセロール、酢酸、又はマロン酸等を添加してもよい。
培養条件の1例として、大腸菌を宿主として用いた形質転換体の場合、LB培地又はOvernight Express Instant TB Medium(Novagen社)で、30〜37℃、0.5〜1日間培養を行うことが挙げられる。
また、シロイヌナズナを宿主として用いた形質転換体の場合、土壌で温度条件20〜25℃、白色光を連続照射又は明期16時間・暗期8時間等の光条件下で1〜2か月間栽培を行うことが挙げられる。
形質転換体の宿主が藻類の場合、以下の培地及び培養条件を用いることができる。
培地は天然海水又は人工海水をベースにしたものを使用してもよいし、市販の培地を使用してもよい。具体的な培地としては、f/2培地、ESM培地、ダイゴIMK培地、L1培地、MNK培地、等を挙げることができる。なかでも、脂質の生産性向上及び栄養成分濃度の観点から、f/2培地、ESM培地、又はダイゴIMK培地が好ましく、f/2培地、又はダイゴIMK培地がより好ましく、f/2培地がさらに好ましい。藻類の生育促進、脂肪酸の生産性向上のため、培地に、窒素源、リン源、金属塩、ビタミン類、微量金属等を適宜添加することができる。
培地に接種する藻類の量は特に限定されないが、生育性の点から、培地当り1〜50%(vol/vol)が好ましく、1〜10%(vol/vol)がより好ましい。培養温度は、藻類の増殖に悪影響を与えない範囲であれば特に制限されないが、通常、5〜40℃の範囲である。藻類の生育促進、脂肪酸の生産性向上、及び生産コストの低減の観点から、好ましくは10〜35℃であり、より好ましくは15〜30℃である。
また、藻類の培養は、光合成ができるよう光照射下で行うことが好ましい。光照射は、光合成が可能な条件であればよく、人工光でも太陽光でもよい。光照射時の照度としては、藻類の生育促進、脂肪酸の生産性向上の観点から、好ましくは100〜50000ルクスの範囲、より好ましくは300〜10000ルクスの範囲、さらに好ましくは1000〜6000ルクスの範囲である。また、光照射の間隔は、特に制限されないが、前記と同様の観点から、明暗周期で行うことが好ましく、24時間のうち明期が好ましくは8〜24時間、より好ましくは10〜18時間、さらに好ましくは12時間である。
また、藻類の培養は、光合成ができるように二酸化炭素を含む気体の存在下、又は炭酸水素ナトリウムなどの炭酸塩を含む培地で行うことが好ましい。気体中の二酸化炭素の濃度は特に限定されないが、生育促進、脂肪酸の生産性向上の観点から0.03(大気条件と同程度)〜10%が好ましく、より好ましくは0.05〜5%、さらに好ましくは0.1〜3%、よりさらに好ましくは0.3〜1%である。炭酸塩の濃度は特に限定されないが、例えば炭酸水素ナトリウムを用いる場合、生育促進、脂肪酸の生産性向上の観点から0.01〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜2質量%、さらに好ましくは0.1〜1質量%である。
培養時間は特に限定されず、脂質を高濃度に蓄積する藻体が高い濃度で増殖できるように、長期間(例えば150日程度)行なってもよい。藻類の生育促進、脂肪酸の生産性向上、及び生産コストの低減の観点から、培養期間は、好ましくは3〜90日間、より好ましくは3〜30日間、さらに好ましくは7〜30日間である。なお、培養は、通気攪拌培養、振とう培養又は静置培養のいずれでもよく、通気性の向上の観点から、振とう培養が好ましい。
形質転換体が産生した脂質を採取する方法としては、通常生体内の脂質成分等を単離する際に用いられる方法、例えば、前述の培養物や形質転換体から、ろ過、遠心分離、細胞の破砕、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、クロロホルム/メタノール抽出法、ヘキサン抽出法、又はエタノール抽出法等により脂質成分を単離、回収する方法が挙げられる。より大規模な場合は、培養物や形質転換体より油分を圧搾又は抽出により回収後、脱ガム、脱酸、脱色、脱蝋、脱臭等の一般的な精製を行い、脂質を得ることができる。このように脂質成分を単離した後、単離した脂質を加水分解することで脂肪酸を得ることができる。脂質成分から脂肪酸を単離する方法としては、例えば、アルカリ溶液中で70℃程度の高温で処理をする方法、リパーゼ処理をする方法、又は高圧熱水を用いて分解する方法等が挙げられる。
本発明のTE改変体は、野生型TEと比べ、特定の炭素数のアシル−ACP、例えば、C8アシル−ACP、C10アシル−ACP、又はC12アシル−ACPに対する特異性が向上する。その結果、当該改変体を導入した形質転換体では、野生型TEを導入した形質転換体と比べて、総脂肪酸成分におけるC8脂肪酸、C10脂肪酸、C12脂肪酸など、特定の炭素数の脂肪酸の含有率が増加する。そのため、当該形質転換体を用いた本発明の製造方法は、特定の炭素数脂質、特にC8脂肪酸、C10脂肪酸、又はC12脂肪酸及びこれを構成成分とする脂質の生産に好適に用いることができる。
本発明の製造方法において製造される脂質は、その利用性の点から、脂肪酸及びこれを構成成分とする脂質であることが好ましく、脂肪酸又はそのエステルを含んでいることがさらに好ましい。脂質中に含まれる脂肪酸又はそのエステルは、界面活性剤等への利用性から、C8〜C16の脂肪酸又はそのエステルが好ましく、C12〜C14の脂肪酸又はそのエステルがより好ましく、C12脂肪酸又はそのエステルがさらに好ましく、ラウリン酸又はそのエステルがよりさらに好ましい。
採取された総脂質成分中の総脂肪酸量に対するC12脂肪酸の含有量は、界面活性剤として利用する観点から、好ましくは3質量%以上である。ここで、「採取された総脂質成分」とは、実施例で用いられた方法により算出された総脂質成分をいう。
本発明の製造方法、形質転換体により得られる脂肪酸や脂質は、食用として用いる他、化粧品等の乳化剤、石鹸や洗剤等の洗浄剤、繊維処理剤、毛髪リンス剤、又は殺菌剤や防腐剤として利用することができる。
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の脂質の製造方法、形質転換体、形質転換体の作製方法、タンパク質、遺伝子、脂肪酸組成の改変方法及び脂質生産性の向上方法を開示する。
<1>宿主に下記タンパク質(A)〜(C)のいずれか1つをコードする遺伝子を導入して得られた形質転換体を培養して脂質を生産させる、脂質の製造方法。

(A)配列番号1の128位〜287位のアミノ酸配列において、203位のグリシン及び204位のバリンの少なくとも一方がトリプトファンに置換されたアミノ酸配列からなるタンパク質。
(B)配列番号1の128位〜287位のアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列において、配列番号1の203位に相当する位置のアミノ酸及び204位に相当する位置のアミノ酸の少なくとも一方がトリプトファンに置換されたアミノ酸配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質。
(C)前記タンパク質(A)又は(B)のアミノ酸配列を有し、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質。
<2>前記タンパク質(B)において、配列番号1の128位〜287位のアミノ酸配列との同一性が86%以上、好ましくは88%以上、より好ましくは90%以上、である、前記<1>項記載の製造方法。
<3>前記タンパク質(B)が、配列番号1の128位〜287位のアミノ酸配列、配列番号3の115位〜274位のアミノ酸配列、又は配列番号49の126位〜285位のアミノ酸配列に1又は数個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜4個、さらに好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1〜2個、のアミノ酸が欠失、置換、挿入、又は付加されたアミノ酸配列において、配列番号1の203位に相当する位置のアミノ酸及び204位に相当する位置のアミノ酸の少なくとも一方がトリプトファンに置換されたアミノ酸配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質である、前記<1>又は<2>項記載の製造方法。
<4>前記タンパク質(B)が、下記タンパク質(Ba)又は(Bb)である、前記<1>〜<3>のいずれか1項記載の製造方法。

(Ba)配列番号3の115位〜274位のアミノ酸配列において、配列番号3の190位のグリシン及び191位のバリンの少なくとも一方がトリプトファンに置換されたアミノ酸配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質。
(Bb)配列番号49の126位〜285位のアミノ酸配列において、配列番号49の201位のグリシン及び202位のバリンの少なくとも一方がトリプトファンに置換されたアミノ酸配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質。
<5>前記タンパク質(C)が、配列番号1、3又は49に示すアミノ酸配列において、配列番号1の203位に相当する位置のアミノ酸及び204位に相当する位置のアミノ酸の少なくとも一方がトリプトファンに置換され、配列番号1の1〜127位、配列番号3の1〜114位、又は配列番号49の1〜125位の任意の位置でN末端側が欠失したアミノ酸配列からなるタンパク質である、前記<1>〜<4>のいずれか1項記載の製造方法。
<6>前記タンパク質(C)が、前記タンパク質(A)のアミノ酸配列のN末端側に、配列番号1の1位〜127位のアミノ酸配列、配列番号1の49位〜127位のアミノ酸配列、配列番号1の58位〜127位のアミノ酸配列、配列番号1の78位〜127位のアミノ酸配列、配列番号1の87位〜127位のアミノ酸配列、配列番号1の88位〜127位のアミノ酸配列、配列番号1の98位〜127位のアミノ酸配列、配列番号1の108位〜127位のアミノ酸配列、配列番号1の118位〜127位のアミノ酸配列、又はこれらの配列に1又は数個、好ましくは1個以上20個以下、より好ましくは1個以上15個以下、さらに好ましくは1個以上10個以下、よりさらに好ましくは1個以上5個以下、よりさらに好ましくは1個以上3個以下のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列、が付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質である、前記<1>〜<5>のいずれか1項記載の製造方法。
<7>前記タンパク質(C)が、前記タンパク質(Ba)のアミノ酸配列のN末端側に、配列番号3の36位〜114位のアミノ酸配列、配列番号3の45位〜114位のアミノ酸配列、配列番号3の55位〜114位のアミノ酸配列、配列番号3の65位〜114位のアミノ酸配列、配列番号3の75位〜114位のアミノ酸配列、配列番号3の85位〜114位のアミノ酸配列、配列番号3の95位〜114位のアミノ酸配列、配列番号3の105位〜114位のアミノ酸配列、又はこれらの配列に1又は数個、好ましくは1個以上20個以下、より好ましくは1個以上15個以下、さらに好ましくは1個以上10個以下、よりさらに好ましくは1個以上5個以下、よりさらに好ましくは1個以上3個以下のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列、が付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質である、前記<1>〜<5>のいずれか1項記載の製造方法。
<8>前記タンパク質(C)が、前記タンパク質(Bb)のアミノ酸配列のN末端側に、配列番号49の1位〜125位のアミノ酸配列、配列番号49の35位〜125位のアミノ酸配列、配列番号49の55位〜125位のアミノ酸配列、配列番号49の85位〜125位のアミノ酸配列、又はこれらの配列に1又は数個、好ましくは1個以上20個以下、より好ましくは1個以上15個以下、さらに好ましくは1個以上10個以下、よりさらに好ましくは1個以上5個以下、よりさらに好ましくは1個以上3個以下のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列、が付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質である、前記<1>〜<5>のいずれか1項記載の製造方法。
<9>前記タンパク質(A)〜(C)において、配列番号1の203位のグリシン又はこれに相当する位置のアミノ酸がトリプトファンに、配列番号1の204位のバリン又はこれに相当する位置のアミノ酸がトリプトファン又はフェニルアラニン、好ましくはトリプトファン、にそれぞれ置換されている、前記<1>〜<8>のいずれか1項記載の製造方法。
<10>前記タンパク質(A)〜(C)が、さらに下記(Ca)〜(Cg)からなる群より選ばれる少なくとも1つのアミノ酸置換を有する、前記<1>〜<9>のいずれか1項記載の製造方法。

(Ca)配列番号1の143位のロイシン又はこれに相当する位置のアミノ酸がプロリンに置換。
(Cb)配列番号1の146位のヒスチジン又はこれに相当する位置のアミノ酸がアスパラギン又はセリンに置換。
(Cc)配列番号1の160位のグリシン又はこれに相当する位置のアミノ酸がアラニンに置換。
(Cd)配列番号1の202位のメチオニン又はこれに相当する位置のアミノ酸がフェニルアラニン、ヒスチジン、ロイシン、グルタミン、又はバリンに置換。
(Ce)配列番号1の212位のグリシン又はこれに相当する位置のアミノ酸がプロリンに置換。
(Cf)配列番号1の213位のアスパラギン又はこれに相当する位置のアミノ酸がチロシンに置換。
(Cg)配列番号1の281位のプロリン又はこれに相当する位置のアミノ酸がグルタミンに置換。
<11>前記タンパク質(A)〜(C)のアミノ酸配列が、配列番号1の203位のグリシン又はこれに相当する位置及び204位のバリン又はこれに相当する位置がそれぞれトリプトファンに置換され、前記(Ca)〜(Cg)からなる群より選ばれる1つ又は2つのアミノ酸置換を有する、前記<10>項記載の製造方法。
<12>前記タンパク質(A)〜(C)のアミノ酸配列が、配列番号1の204位のバリン又はこれに相当する位置がトリプトファンに置換され、前記(Ca)〜(Cg)からなる群より選ばれる1つ又は2つのアミノ酸置換を有する、前記<10>項記載の製造方法。
<13>前記タンパク質(A)〜(C)のアミノ酸配列が、下記(1)〜(14)のいずれか1つで規定するアミノ酸置換を有する、前記<1>〜<12>のいずれか1項記載の製造方法。

(1)配列番号1の203位のグリシン又はこれに相当する位置のアミノ酸がトリプトファンに置換。
(2)配列番号1の204位のバリン又はこれに相当する位置のアミノ酸がトリプトファンに置換。
(3)配列番号1の203位のグリシン及び204位のバリン又はこれらに相当する位置のアミノ酸それぞれがトリプトファンに置換。
(4)配列番号1の203位のグリシン又はこれに相当する位置のアミノ酸がトリプトファンに、204位のバリン又はこれに相当する位置のアミノ酸がフェニルアラニンに置換。
(5)配列番号1の203位のグリシン及び204位のバリン又はこれらに相当する位置のアミノ酸それぞれがトリプトファンに、143位のロイシン又はこれに相当する位置のアミノ酸がプロリンに置換。
(6)配列番号1の203位のグリシン及び204位のバリン又はこれらに相当する位置のアミノ酸それぞれがトリプトファンに、160位のグリシン又はこれに相当する位置のアミノ酸がアラニンに置換。
(7)配列番号1の203位のグリシン及び204位のバリン又はこれらに相当する位置のアミノ酸それぞれがトリプトファンに、212位のグリシン又はこれに相当する位置のアミノ酸がプロリンに置換。
(8)配列番号1の203位のグリシン及び204位のバリン又はこれらに相当する位置のアミノ酸それぞれがトリプトファンに、213位のアスパラギン又はこれに相当する位置のアミノ酸がチロシンに置換。
(9)配列番号1の203位のグリシン及び204位のバリン又はこれらに相当する位置のアミノ酸それぞれがトリプトファンに、160位のグリシン又はこれに相当する位置のアミノ酸がアラニンに、213位のアスパラギン又はこれに相当する位置のアミノ酸がチロシンに置換。
(10)配列番号3の190位のグリシン及び191位のバリン又はこれらに相当する位置のアミノ酸それぞれがトリプトファンに置換。
(11)配列番号1の204位のバリン又はこれに相当する位置のアミノ酸がトリプトファンに、146位のヒスチジン又はこれに相当する位置のアミノ酸がアスパラギン、又はセリンに置換。
(12)配列番号1の204位のバリン又はこれに相当する位置のアミノ酸がトリプトファンに、202位のメチオニン又はこれに相当する位置のアミノ酸がフェニルアラニン、ヒスチジン、ロイシン、グルタミン、又はバリンに置換。
(13)配列番号1の204位のバリン又はこれに相当する位置のアミノ酸がトリプトファンに、281位のプロリン又はこれに相当する位置のアミノ酸がグルタミンに置換。
(14)配列番号1の204位のバリン又はこれに相当する位置のアミノ酸がトリプトファンに、202位のメチオニン又はこれに相当する位置のアミノ酸がヒスチジンに、281位のプロリン又はこれに相当する位置のアミノ酸がグルタミンに置換。
<14>前記タンパク質(A)〜(C)のいずれか1つをコードする遺伝子が、下記DNA(A1)〜(C1)のいずれか1つからなる遺伝子である、前記<1>〜<13>のいずれか1項記載の製造方法。

(A1)配列番号2の382位〜864位の塩基配列において、607位〜609位の塩基及び610位〜612位の塩基の少なくとも一方がトリプトファンをコードする塩基に置換された塩基配列からなるDNA。
(B1)配列番号2の382位〜864位の塩基配列と70%以上の同一性を有する塩基配列において、配列番号2の607位〜609位に相当する位置の塩基及び610位〜612位に相当する位置の塩基の少なくとも一方がトリプトファンをコードする塩基に置換された塩基配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(C1)前記DNA(a)又は(b)の塩基配列を有し、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
<15>前記DNA(B1)において、配列番号2の382位〜864位の塩基配列に対する同一性が72%以上、好ましくは74%以上、より好ましくは76%以上、である、前記<14>項記載の製造方法。
<16>前記DNA(B1)が、配列番号2の382位〜864位の塩基配列、配列番号4の343位〜825位の塩基配列、又は配列番号50の376位〜858位の塩基配列において1又は数個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜15個、さらに好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個、よりさらに好ましくは1〜3個、の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加された塩基配列において、配列番号2の607位〜609位に相当する位置の塩基及び610位〜612位に相当する位置の塩基の少なくとも一方がトリプトファンをコードする塩基に置換された塩基配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記<14>又は<15>項記載の製造方法。
<17>前記DNA(B1)が下記DNA(B1a)又は(B1b)である、前記<14>〜<16>のいずれか1項記載の製造方法。

(B1a)配列番号4の343位〜825位の塩基配列において、配列番号4の568位〜570位の塩基及び571位〜573位の塩基の少なくとも一方がトリプトファンをコードする塩基に置換された塩基配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(B1b)配列番号50の376位〜858位の塩基配列において、配列番号50の601位〜603位の塩基及び604位〜606位の塩基の少なくとも一方がトリプトファンをコードする塩基に置換された塩基配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
<18>前記DNA(C1)が、配列番号2、4又は50に示す塩基配列において、配列番号2の607位〜609位に相当する位置の塩基及び610位〜612位に相当する位置の塩基の少なくとも一方がトリプトファンをコードする塩基に置換され、配列番号2の1〜381位、配列番号4の1〜342位、又は配列番号50の1〜375位の任意の位置で5'末端側が欠失した塩基配列からなるDNAである、前記<14>〜<17>のいずれか1項記載の製造方法。
<19>前記DNA(C1)が、前記DNA(A1)の塩基配列の5'末端側に、配列番号2の1位〜381位の塩基配列、配列番号2の145位〜381位の塩基配列、配列番号2の172位〜381位の塩基配列、配列番号2の232位〜381位の塩基配列、配列番号2の259位〜381位の塩基配列、配列番号2の262位〜381位の塩基配列、配列番号2の292位〜381位の塩基配列、配列番号2の322位〜381位の塩基配列、配列番号2の352位〜381位の塩基配列、又はこれらの配列に1又は数個、好ましくは1個以上20個以下、より好ましくは1個以上15個以下、さらに好ましくは1個以上10個以下、よりさらに好ましくは1個以上5個以下、よりさらに好ましくは1個以上3個以下、の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列、が付加された塩基配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記<14>〜<18>のいずれか1項記載の製造方法。
<20>前記DNA(C1)が、前記DNA(B1a)の塩基配列の5'末端側に、配列番号4の106位〜342位の塩基配列、配列番号4の133位〜342位の塩基配列、配列番号4の163位〜342位の塩基配列、配列番号4の193位〜342位の塩基配列、配列番号4の223位〜342位の塩基配列、配列番号4の253位〜342位の塩基配列、配列番号4の283位〜342位の塩基配列、配列番号4の313位〜342位の塩基配列、又はこれらの配列に1又は数個、好ましくは1個以上20個以下、より好ましくは1個以上15個以下、さらに好ましくは1個以上10個以下、よりさらに好ましくは1個以上5個以下、よりさらに好ましくは1個以上3個以下、の塩基の欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記<14>〜<18>のいずれか1項記載の製造方法。
<21>前記DNA(C1)が、前記DNA(B1b)の塩基配列の5'末端側に、配列番号50の1位〜375位の塩基配列、配列番号50の103位〜375位の塩基配列、配列番号50の163位〜375位の塩基配列、配列番号50の253位〜375位の塩基配列、又はこれらの配列に1又は数個(好ましくは1個以上20個以下、より好ましくは1個以上15個以下、さらに好ましくは1個以上10個以下、よりさらに好ましくは1個以上5個以下、よりさらに好ましくは1個以上3個以下、の塩基の欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記<14>〜<18>のいずれか1項記載の製造方法。
<22>前記DNA(A1)〜(C1)において、配列番号2の607位〜609位の塩基又はこれに相当する位置の塩基がトリプトファンをコードする塩基に、配列番号2の610位〜612位の塩基又はこれに相当する位置の塩基がトリプトファン又はフェニルアラニンをコードする塩基、好ましくはトリプトファンをコードする塩基、に置換されている、前記<14>〜<21>のいずれか1項記載の製造方法。
<23>前記DNA(A1)〜(C1)が、さらに下記(C1a)〜(C1g)からなる群より選ばれる少なくとも1つの塩基置換を有する、前記<14>〜<22>のいずれか1項記載の製造方法。

(C1a)配列番号2の427位〜429位の塩基又はこれに相当する位置の塩基がプロリンをコードする塩基に置換。
(C1b)配列番号2の436位〜438位の塩基又はこれに相当する位置の塩基がアスパラギン又はセリンをコードする塩基に置換。
(C1c)配列番号2の478位〜480位の塩基又はこれに相当する位置の塩基がアラニンをコードする塩基に置換。
(C1d)配列番号2の604位〜606位の塩基又はこれに相当する位置の塩基がフェニルアラニン、ヒスチジン、ロイシン、グルタミン、又はバリンをコードする塩基に置換。
(C1e)配列番号2の634位〜636位の塩基又はこれに相当する位置の塩基がプロリンをコードする塩基に置換。
(C1f)配列番号2の637位〜639位の塩基又はこれに相当する位置の塩基がチロシンをコードする塩基に置換。
(C1g)配列番号2の841位〜843位の塩基又はこれに相当する位置の塩基がグルタミンをコードする塩基に置換。
<24>前記DNA(A1)〜(C1)の塩基配列が、配列番号2の607位〜609位の塩基又はこれに相当する位置の塩基及び610位〜612位の塩基又はこれに相当する位置の塩基がそれぞれトリプトファンをコードする塩基に置換され、前記(C1a)〜(C1g)からなる群より選ばれる1つ又は2つの塩基置換を有する、前記<23>項記載の製造方法。
<25>前記DNA(A1)〜(C1)の塩基配列が、配列番号2の610位〜612位の塩基又はこれに相当する位置の塩基がトリプトファンをコードする塩基に置換され、前記(C1a)〜(C1g)からなる群より選ばれる1つ又は2つの塩基置換を有する、前記<23>項記載の製造方法。
<26>前記DNA(A1)〜(C1)の塩基配列が、下記(1-1)〜(14-1)のいずれか1つで規定する塩基置換を有する、前記<14>〜<25>のいずれか1項記載の製造方法。

(1-1)配列番号2の607位〜609位の塩基又はこれらに相当する位置の塩基がトリプトファンをコードする塩基に置換。
(2-1)配列番号2の610位〜612位の塩基又はこれらに相当する位置の塩基がトリプトファンをコードする塩基に置換。
(3-1)配列番号2の607位〜609位の塩基及び610位〜612位の塩基又はこれらに相当する位置の塩基それぞれがトリプトファンをコードする塩基に置換。
(4-1)配列番号2の607位〜609位の塩基又はこれらに相当する位置の塩基がトリプトファンをコードする塩基に、610位〜612位の塩基又はこれらに相当する位置の塩基がフェニルアラニンをコードする塩基に置換。
(5-1)配列番号2の607位〜609位の塩基及び610位〜612位の塩基又はこれらに相当する位置の塩基それぞれがトリプトファンをコードする塩基に、427位〜429位の塩基又はこれらに相当する位置の塩基がプロリンをコードする塩基に置換。
(6-1)配列番号2の607位〜609位の塩基及び610位〜612位の塩基又はこれらに相当する位置の塩基それぞれがトリプトファンをコードする塩基に、478位〜480位の塩基又はこれに相当する位置の塩基がアラニンをコードする塩基に置換。
(7-1)配列番号2の607位〜609位の塩基及び610位〜612位の塩基又はこれらに相当する位置の塩基それぞれがトリプトファンをコードする塩基に、634位〜636位の塩基又はこれらに相当する位置の塩基がプロリンをコードする塩基に置換。
(8-1)配列番号2の607位〜609位の塩基及び610位〜612位の塩基又はこれらに相当する位置の塩基それぞれがトリプトファンをコードする塩基に、637位〜639位の塩基又はこれらに相当する位置の塩基がチロシンをコードする塩基に置換。
(9-1)配列番号2の607位〜609位の塩基及び610位〜612位の塩基又はこれらに相当する位置の塩基それぞれがトリプトファンをコードする塩基に、478位〜480位の塩基又はこれらに相当する位置の塩基がアラニンをコードする塩基に、637位〜639位の塩基又はこれらに相当する位置の塩基がチロシンをコードする塩基に置換。
(10-1)配列番号4の568位〜570位の塩基及び571位〜573位の塩基又はこれらに相当する位置の塩基それぞれがトリプトファンをコードする塩基に置換。
(11-1)配列番号2の610位〜612位の塩基又はこれらに相当する位置の塩基がトリプトファンをコードする塩基に、436位〜438位の塩基又はこれらに相当する位置の塩基がアスパラギン、又はセリンをコードする塩基に置換。
(12-1)配列番号2の610位〜612位の塩基又はこれらに相当する位置の塩基がトリプトファンをコードする塩基に、604位〜606位の塩基又はこれらに相当する位置の塩基がフェニルアラニン、ヒスチジン、ロイシン、グルタミン、又はバリンをコードする塩基に置換。
(13-1)配列番号2の610位〜612位の塩基又はこれらに相当する位置の塩基がトリプトファンをコードする塩基に、841位〜843位の塩基又はこれらに相当する位置の塩基がグルタミンをコードする塩基に置換。
(14-1)配列番号2の610位〜612位の塩基又はこれらに相当する位置の塩基がトリプトファンをコードする塩基に、604位〜606位の塩基又はこれらに相当する位置の塩基がヒスチジンをコードする塩基に、841位〜843位の塩基又はこれらに相当する位置の塩基がグルタミンをコードする塩基に置換。
<27>前記宿主が微生物である、前記<1>〜<26>のいずれか1項記載の製造方法。
<28>前記微生物が微細藻類、好ましくはナンノクロロプシス属に属する藻類、である、前記<27>項記載の製造方法。
<29>前記微生物が大腸菌である、前記<27>項記載の製造方法。
<30>前記脂質が炭素数8、10、若しくは12の脂肪酸又はそのエステルを含む、前記<1>〜<29>のいずれか1項記載の製造方法。
<31>前記脂質中の炭素数8、10、又は12の脂肪酸の含有率が、配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子を導入した形質転換体から採取された脂質と比べて増加している、前記<1>〜<30>のいずれか1項記載の製造方法。
<32>前記(A)〜(C)のいずれか1つで規定されるタンパク質。
<33>前記タンパク質が、前記<1>〜<13>のいずれか1項に記載の製造方法で規定するタンパク質のいずれか1つである、前記<32>項記載のタンパク質。
<34>前記<32>又は<33>項記載のタンパク質をコードする遺伝子。
<35>前記(A1)〜(C1)で規定するいずれか1つのDNAからなる遺伝子。
<36>前記DNAが、前記<14>〜<26>のいずれか1項に記載の製造方法で規定するDNAのいずれか1つである、前記<34>又は<35>項記載の遺伝子。
<37>前記<34>〜<36>のいずれか1項記載の遺伝子を含有する、組換えベクター。
<38>前記<34>〜<36>のいずれか1項記載の遺伝子、又は前記<37>項記載の組換えベクターを宿主に導入してなる、形質転換体。
<39>前記<34>〜<36>のいずれか1項記載の遺伝子、又は前記<37>項記載の組換えベクターを宿主に導入する、形質転換体の作製方法。
<40>前記宿主が微生物である、前記<38>又は<39>項記載の形質転換体又はその作製方法。
<41>前記微生物が微細藻類、好ましくはナンノクロロプシス属に属する藻類、である、前記<40>項記載の形質転換体又はその作製方法。
<42>前記微生物が大腸菌である、前記<40>項記載の形質転換体又はその作製方法。
<43>脂質を製造するための、前記<38>〜<42>のいずれか1項記載の形質転換体、又は形質転換体の作製方法により得られた形質転換体の使用。
<44>前記脂質が炭素数8、10、若しくは12の脂肪酸又はそのエステルを含む、前記<43>項記載の使用。
<45>宿主に前記<34>〜<36>のいずれか1項記載の遺伝子、又は前記<37>項記載の組換えベクターを導入し、得られた形質転換体が生産する脂質中の脂肪酸組成を改変する、脂質中の脂肪酸組成を改変する方法。
<46>宿主に前記<34>〜<36>のいずれか1項記載の遺伝子、又は前記<37>項記載の組換えベクターを導入する、脂質の生産性を向上させる方法。
<47>前記脂質が炭素数8、10、若しくは12の脂肪酸又はそのエステルを含む、前記<45>又は<46>項記載の方法。
<48>宿主に前記<34>〜<36>のいずれか1項記載の遺伝子、又は前記<37>項記載の組換えベクターを導入する、炭素数8、10、又は12の脂肪酸の生産性を向上させる方法。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。ここで、本実施例で用いるプライマーの塩基配列を表1〜4に示す。
実施例1 NoTE改変体をコードする遺伝子を導入した大腸菌による脂質の製造
(1)NoTE遺伝子の取得、及びNoTE発現プラスミドの構築
ナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株(独立行政法人国立環境研究所(NIES)より入手)の全RNAを抽出し、SuperScript(商標)III First-Strand Synthesis SuperMix for qRT-PCR(invitrogen社製)を用いて逆転写を行ってcDNAを得た。このcDNAを鋳型として、表1に示すプライマー番号5及びプライマー番号6のプライマー対を用いたPCRにより、配列番号2の262位〜864位の塩基配列からなる遺伝子断片を取得した。また、プラスミドベクターpBluescriptII SK(-)(Stratagene社製)を鋳型として、表1に示すプライマー番号7及びプライマー番号8のプライマー対を用いたPCRによりpBluescriptII SK(-)を増幅し、制限酵素DpnI(東洋紡株式会社製)処理により鋳型の消化を行った。これら2つの断片を、High Pure PCR Product Purification Kit(Roche Applied Science社製)を用いて精製した後に、In-Fusion HD Cloning Kit(Clontech社製)を用いて融合し、NoTE発現プラスミドNoTE_262を構築した。このプラスミドNoTE_262は、配列番号1に示すアミノ酸配列のN末端側1位〜87位のアミノ酸残基を除去し、その上流にプラスミドベクターpBluescriptII SK(-)由来のLacZタンパク質のN末端側1位〜29位のアミノ酸残基が融合したタンパク質を発現させるように構築した。
なお、以下のプラスミド表記において、「NoTE_262」は、配列番号1の88位〜287位のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする塩基配列として、配列番号2の262位〜864位の塩基配列をプラスミドが有することを意味する。
(2)NoTE改変体発現プラスミドの構築
前記プラスミドNoTE_262を鋳型として、表1に示すプライマー番号9〜12のいずれか1つのプライマーと、プライマー番号13のプライマー対を用いてPCRを行い、配列番号2に示す塩基配列の262位〜864位の塩基の一部を変異させた遺伝子断片をそれぞれ取得した。これらの遺伝子断片を用いて、前記手法と同様の手法により、各種NoTE改変体発現プラスミド(NoTE_262(G203W)、NoTE_262(V204W)、NoTE_262(G203W+V204W)、NoTE_262(G203W+V204F))をそれぞれ構築した。これらのプラスミドは、配列番号2の塩基配列に対して、下記の部位のコドンが改変されている。
(i)NoTE_262(G203W):配列番号1に示すアミノ酸配列の203位のグリシンをコードするコドンがトリプトファンをコードするコドン(TGG)に置換されている。
(ii)NoTE_262(V204W):配列番号1に示すアミノ酸配列の204位のバリンをコードするコドンがトリプトファンをコードするコドン(TGG)に置換されている。
(iii)NoTE_262(G203W+V204W):配列番号1に示すアミノ酸配列の203位のグリシンをコードするコドンがトリプトファンをコードするコドン(TGG)に、204位のバリンをコードするコドンがトリプトファンをコードするコドン(TGG)に、それぞれ置換されている。
(iv)NoTE_262(G203W+V204F):配列番号1に示すアミノ酸配列の203位のグリシンをコードするコドンがトリプトファンをコードするコドン(TGG)に、204位のバリンをコードするコドンがフェニルアラニンをコードするコドン(TTT)に、それぞれ置換されている。
続いて、前記プラスミドNoTE_262(G203W+V204W)を鋳型として、表1に示すプライマー番号14及びプライマー番号15のプライマー対、プライマー番号16及びプライマー番号17のプライマー対、プライマー番号18及びプライマー番号19のプライマー対、プライマー番号20及びプライマー番号21のプライマー対をそれぞれ用いてPCRを行い、配列番号2に示す塩基配列の262位〜864位の塩基の一部を変異させた遺伝子断片をそれぞれ取得した。これらの遺伝子断片を用いて、前記手法と同様の手法により、各種NoTE改変体発現プラスミド(NoTE_262(WW+L143P)、NoTE_262(WW+G160A)、NoTE_262(WW+G212P)、NoTE_262(WW+N213Y))をそれぞれ構築した。これらのプラスミドは、配列番号2の塩基配列に対して、下記の部位のコドンが改変されている。
(v)NoTE_262(WW+L143P):配列番号1に示すアミノ酸配列の203位のグリシンをコードするコドンがトリプトファンをコードするコドン(TGG)に、204位のバリンをコードするコドンがトリプトファンをコードするコドン(TGG)に、143位のロイシン(L)をコードするコドンがプロリンをコードするコドン(CCT)に、それぞれ置換されている。
(vi)NoTE_262(WW+G160A):配列番号1に示すアミノ酸配列の203位のグリシンをコードするコドンがトリプトファンをコードするコドン(TGG)に、204位のバリンをコードするコドンがトリプトファンをコードするコドン(TGG)に、160位のグリシンをコードするコドンがアラニンをコードするコドン(GCT)に、それぞれ置換されている。
(vii)NoTE_262(WW+G212P):配列番号1に示すアミノ酸配列の203位のグリシンをコードするコドンがトリプトファンをコードするコドン(TGG)に、204位のバリンをコードするコドンがトリプトファンをコードするコドン(TGG)に、212位のグリシンをコードするコドンがプロリンをコードするコドン(CCA)に、それぞれ置換されている。
(viii)NoTE_262(WW+N213Y):配列番号1に示すアミノ酸配列の203位のグリシンをコードするコドンがトリプトファンをコードするコドン(TGG)に、204位のバリンをコードするコドンがトリプトファンをコードするコドン(TGG)に、213位のアスパラギンをコードするコドンがチロシンをコードするコドン(TAC)に、それぞれ置換されている。
さらに、前記プラスミドNoTE_262(WW+N213Y)を鋳型として、表1に示すプライマー番号16及びプライマー番号17のプライマー対を用いてPCRを行い、配列番号2に示す塩基配列の262位〜864位の塩基の一部を変異させた遺伝子断片を取得した。この遺伝子断片を用いて、前記手法と同様の手法により、NoTE改変体発現プラスミド(NoTE_262(WW+G160A+N213Y))を構築した。
(ix)NoTE_262(WW+G160A+N213Y):配列番号1に示すアミノ酸配列の203位のグリシンをコードするコドンがトリプトファンをコードするコドン(TGG)に、204位のバリンをコードするコドンがトリプトファンをコードするコドン(TGG)に、160位のグリシンをコードするコドンがアラニンをコードするコドン(GCT)に、213位のアスパラギンをコードするコドンがチロシン(Y)をコードするコドン(TAC)に、それぞれ置換されている。
(3)発現プラスミドの大腸菌への導入、大腸菌培養液中の脂質の抽出、及び構成脂肪酸の分析
前記各種NoTE改変体発現プラスミドを用いて、大腸菌突然変異株(K27株(fadD88)、Overath et al.,Eur.J.Biochem.,1969,vol.7,p.559-574参照)をコンピテントセル形質転換法により形質転換した。得られた形質転換体を30℃で一晩静置し、得られたコロニーをLBAmp液体培地(Bacto Trypton 1%,Yeast Extract 0.5%,NaCl 1%,アンピシリンナトリウム50μg/mL)1mLに接種し、30℃で一晩培養した。この培養液2μLを、2mLのOvernight Express Instant TB Medium(Novagen社)に接種し、30℃で振とう培養した。24時間の培養後、培養液に含まれる脂質成分を、下記に示す方法にて分析した。なお、陰性対照として、プラスミドベクターpBluescriptII SK(-)で形質転換した大腸菌K27株、及び前述の野生型NoTE発現プラスミド(NoTE_262)で形質転換した大腸菌K27株についても同様に実験を行った。
<脂質成分の分析方法>
培養液1mLに、内部標準として1mg/mLの7-ペンタデカノン50μLを添加後、クロロホルム0.5mL、メタノール1mL及び2N塩酸10μLを培養液に添加して激しく攪拌し、30分間放置した。その後さらに、クロロホルム0.5mL及び1.5%KCl0.5mLを添加して攪拌し、3,000rpmにて15分間遠心分離を行い、パスツールピペットにてクロロホルム層(下層)を回収した。
得られたクロロホルム層に窒素ガスを吹き付けて乾固し、0.5N水酸化カリウム/メタノール溶液0.7mLを添加し、80℃で30分間恒温した。続いて14%三フッ化ホウ素溶液(SIGMA社製)1mLを添加し、80℃にて10分間恒温した。その後、ヘキサン及び飽和食塩水を各1mL添加し激しく撹拌し、室温にて30分間放置し、上層であるヘキサン層を回収して脂肪酸エステルを得た。
下記に示す測定条件下で、得られた脂肪酸エステルをガスクロマトグラフィー解析に供した。
<ガスクロマトグラフィー条件>
キャピラリーカラム:DB-1 MS(30m×200μm×0.25μm、J&W Scientific社製)
移動相:高純度ヘリウム
カラム内流量:1.0mL/分
昇温プログラム:100℃(1分間)→10℃/分→300℃(5分間)
平衡化時間:1分間
注入口:スプリット注入(スプリット比:100:1)
圧力:14.49psi,104mL/分
注入量:1μL
洗浄バイアル:メタノール・クロロホルム
検出器温度:300℃
脂肪酸エステルの同定は、同サンプルを同条件でガスクロマトグラフ質量分析解析に供することにより行った。
ガスクロマトグラフィー解析により得られた波形データのピーク面積より、各脂肪酸のメチルエステル量を定量した。各ピーク面積を、内部標準である7-ペンタデカノンのピーク面積と比較することで試料間の補正を行い、培養液1リットルあたりの各脂肪酸量を算出した。さらに、各脂肪酸量の総和を総脂肪酸量とし、総脂肪酸量に占める各脂肪酸量の割合を算出した。
その結果を表5に示す。なお、以下の表において、「TFA」は総脂肪酸量を、「脂肪酸組成(%TFA)」は総脂肪酸の重量に対する各脂肪酸量の割合を示す。また、「C17:0Δ」及び「C19:0Δ」はそれぞれ、cis-9,10-Methylen-hexadecanoic acid及びcis-11,12-Methylen-octadecanoic acidを表す。さらに「C12:n」は、C12:1とC12:0の脂肪酸の総和を表し、「C12:n(%TFA)」は、総脂肪酸の重量に対するC12:nの脂肪酸量の割合を表す。
表5に示すように、前記プラスミドNoTE_262を導入した形質転換体と比べ、配列番号1に示すアミノ酸配列の203位と204位のアミノ酸の少なくとも一方をトリプトファンに置換されるように構築したNoTE改変体を導入した形質転換体では、総脂肪酸量に占めるC10脂肪酸及びC12脂肪酸(C12:n)の割合が有意に増加した。
また、配列番号1に示すアミノ酸配列の203位と204位のアミノ酸の両方がトリプトファンに置換されるように構築したプラスミドNoTE_262(G203W+V204W)、及び配列番号1に示すアミノ酸配列の203位と204位のアミノ酸がそれぞれトリプトファン及びフェニルアラニンに置換されるように構築したプラスミドNoTE_262(G203W+V204F)、をそれぞれ導入した形質転換体では、NoTE_262(G203W)及びNoTE_262(V204W)をそれぞれ導入した形質転換体と比べ、総脂肪酸量に占めるC10脂肪酸及びC12脂肪酸の含有率がさらに増加した。
さらに、配列番号1に示すアミノ酸配列の203位と204位のアミノ酸に加えて、他の特定の位置のアミノ酸を特定のアミノ酸に置換されるように構築したNoTE_262(WW+L143P)、NoTE_262(WW+G160A)、NoTE_262(WW+G212P)、NoTE_262(WW+N213Y)を導入した形質転換体では、NoTE_262(G203W+V204W)を導入した形質転換体と比べ、総脂肪酸量に占めるC10脂肪酸及びC12脂肪酸の含有率がさらに増加した。特に、NoTE_262(WW+G160A+N213Y)を導入した形質転換体では、NoTE_262(WW+G160A)やNoTE(WW+N213Y)を導入した形質転換体株と比べ、総脂肪酸量に占めるC10脂肪酸及びC12脂肪酸の含有率が一層増加した。
実施例2 配列番号1に示すアミノ酸配列のN末端を削除したNoTE改変体をコードする遺伝子を導入した大腸菌による脂質の製造
(1)NoTE改変体発現プラスミドの構築
実施例1で作製した前記プラスミドNoTE_262及びNoTE_262(G203W+V204W)をそれぞれ鋳型として、表1に示すプライマー番号22及びプライマー番号8のプライマー対を用いてPCRを行い、配列番号2に示す塩基配列の382位〜864位の塩基配列からなる遺伝子断片、及び配列番号2に示す塩基配列の382位〜864位の塩基の一部を変異させた遺伝子断片をそれぞれ取得した。これらの遺伝子断片を用いて、実施例1と同様の手法により、NoTE発現プラスミド(NoTE_382)、及びNoTE改変体発現プラスミド(NoTE_382(G203W+V204W))をそれぞれ構築した。
なお、以下のプラスミド表記において、「NoTE_382」は、配列番号1の128位〜287位のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする塩基配列として、配列番号2の382位〜864位の塩基配列をプラスミドが有することを意味する。
また、前記プラスミドNoTE_382(G203W+V204W)は、配列番号2の塩基配列に対して、下記の部位のコドンが改変されている。
(x)NoTE_382(G203W+V204W):配列番号1に示すアミノ酸配列の203位のグリシンをコードするコドンがトリプトファンをコードするコドン(TGG)に、204位のバリンをコードするコドンがトリプトファンをコードするコドン(TGG)に、それぞれ置換されている。
(2)発現プラスミドの大腸菌への導入、大腸菌培養液中の脂質の抽出、及び構成脂肪酸の分析
実施例1と同様の方法で、前記プラスミドNoTE_382(G203W+V204W)を大腸菌へ導入して培養を行い、培養液に含まれる脂質成分の分析を行った。また、陰性対象として、前記プラスミドNoTE_382についても同様の実験を行った。結果を表6に示す。
表6に示すように、NoTEのN末端のアミノ酸を127残基削除した場合においても、野生型NoTE_382発現用プラスミドを導入した形質転換体と比べ、配列番号1に示すアミノ酸配列の203位と204位のアミノ酸をトリプトファンに置換されるように構築したNoTE_382(G203W+V204W)を導入した形質転換体では、総脂肪酸量に占めるC10脂肪酸及びC12脂肪酸(C12:n)の割合が有意に増加した。
実施例3 NgTE改変体をコードする遺伝子を導入した大腸菌による脂質の製造
(1)NgTE遺伝子の取得、及びNgTE発現プラスミドの構築
配列番号3に示すアミノ酸配列からなるナンノクロロプシス・ガディタナ由来アシル−ACPチオエステラーゼをコードする遺伝子(NgTE遺伝子、配列番号4)を、人工遺伝子の受託合成サービスを利用して取得した。
前記NgTE遺伝子を鋳型として、表1に示すプライマー番号23及びプライマー番号24のプライマー対を用いたPCRにより、配列番号4の253位〜825位の塩基配列からなる遺伝子断片を取得した。得られた遺伝子断片を、実施例1と同様の方法でpBluescriptII SK(-)ベクターに融合し、野生型NgTE発現プラスミドNgTE_253を構築した。このプラスミドNgTE_253は、配列番号3に示すアミノ酸配列のN末端側1位〜84位のアミノ酸残基を除去し、その上流にプラスミドベクターpBluescriptII SK(-)由来のLacZタンパク質のN末端側1位〜29位のアミノ酸残基が融合したタンパク質を発現させるように構築した。
なお、以下のプラスミド表記において、「NgTE_253」は、配列番号3の85位〜274位のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする塩基配列として、配列番号4の253位〜825位の塩基配列をプラスミドが有することを意味する。
(2)NgTE改変体発現プラスミドの構築
前記プラスミドNgTE_253を鋳型として、表1に示すプライマー番号25及びプライマー番号26のプライマー対を用いてPCRを行い、配列番号4に示す塩基配列の253位〜825位の塩基の一部を変異させた遺伝子断片を取得した。得られた遺伝子断片を用いて、実施例1と同様の手法により、NgTE改変体発現プラスミド(NgTE_253(G190W+V191W))を構築した。
なお、前記プラスミドNgTE_253(G190W+V191W)は、配列番号4の塩基配列に対して、下記の部位のコドンが改変されている。
(xi)NgTE_253(G190W+V191W):配列番号3に示すアミノ酸配列の190位のグリシンをコードするコドンがトリプトファンをコードするコドン(TGG)に、191位のバリンをコードする塩基がトリプトファンをコードするコドン(TGG)に、それぞれ置換されている。
(3)発現プラスミドの大腸菌への導入、大腸菌培養液中の脂質の抽出、及び構成脂肪酸の分析
実施例1と同様の方法で、前記プラスミドNgTE_253(G190W+V191W)を大腸菌へ導入して培養を行い、培養液に含まれる脂質成分の分析を行った。また、陰性対象として、前記プラスミドNgTE_253についても同様の実験を行った。結果を表7に示す。
表7に示すように、野生型NgTE_253発現用プラスミドを導入した形質転換体と比べ、配列番号3に示すアミノ酸配列の190位と191位のアミノ酸をトリプトファンに置換されるように構築したNgTE_253(G190W+V191W)を導入した形質転換体では、総脂肪酸量に占めるC12脂肪酸(C12:n)の割合が有意に増加した。
実施例4 NoTE改変体をコードする遺伝子を導入したナンノクロロプシス・オキュラータによる脂質の製造
(1)NoTE改変体発現プラスミドの構築
実施例1で作製したプラスミドNoTE_262、NoTE_262(G203W+V204F)、及びNoTE_262(G203W+V204W)を鋳型として、表2に示すプライマー番号27及びプライマー番号28のプライマー対を用いてPCRを行い、配列番号2に示す塩基配列の262位〜864位の塩基配列からなる遺伝子断片、及び配列番号2に示す塩基配列の262位〜864位の塩基の一部を変異させた遺伝子断片をそれぞれ取得した。
GenBankに登録されているナンノクロロプシス・エスピー(Nannochloropsis sp.)W2J3B株のVCP1(ビオラキサンチン/クロロフィルa結合タンパク質)遺伝子のcomplete cds配列(Accession number:JF957601.1)より、VCP1プロモーター配列(配列番号29)、VCP1葉緑体移行シグナル配列(配列番号30)、及びVCP1ターミネーター配列(配列番号31)を人工合成した。合成したDNA断片を鋳型として、表2に示すプライマー番号32及びプライマー番号33のプライマー対、プライマー番号34及びプライマー番号35のプライマー対、並びにプライマー番号36及びプライマー番号37のプライマー対をそれぞれ用いてPCRを行い、VCP1プロモーター配列、VCP1葉緑体移行シグナル配列、及びVCP1ターミネーター配列をそれぞれ取得した。また、プラスミドベクターpUC19(タカラバイオ社製)を鋳型として、表2に示すプライマー番号38及びプライマー番号39のプライマー対を用いたPCRを行い、プラスミドベクターpUC19を増幅した。
上記により得られたNoTE遺伝子断片、VCP1プロモーター配列、VCP1葉緑体移行シグナル配列、及びVCP1ターミネーター配列を、実施例1と同様の方法でプラスミドベクターpUC19に融合し、NoTE発現用プラスミドNoTE_262_Nanno、並びにNoTE改変体発現用プラスミドNoTE_262(G203W+V204F)_Nanno及びNoTE_262(G203W+V204W)_Nannoをそれぞれ構築した。なおこれらのプラスミドは、VCP1プロモーター配列、VCP1葉緑体移行シグナル配列、NoTE遺伝子断片(野生型又は改変型)、及びVCP1ターミネーター配列の順に連結したNoTE遺伝子発現用配列と、pUC19ベクター配列からなる。
なお、前記プラスミドは、配列番号1の88位〜287位のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする塩基配列として、配列番号2の262位〜864位の塩基配列をプラスミドが有する。
また、前記NoTE改変体発現用プラスミドは、配列番号2の塩基配列に対して、下記の部位のコドンが改変されている。
(xii)NoTE_262(G203W+V204F)_Nanno:配列番号1に示すアミノ酸配列の203位のグリシンをコードするコドンがトリプトファンをコードするコドン(TGG)に、204位のバリンをコードするコドンがフェニルアラニンをコードするコドン(TTT)に、それぞれ置換されている。
(xiii)NoTE_262(G203W+V204W)_Nanno:配列番号1に示すアミノ酸配列の203位のグリシンをコードするコドンがトリプトファンをコードするコドン(TGG)に、204位のバリンをコードするコドンがトリプトファンをコードするコドン(TGG)に、それぞれ置換されている。
(2)ゼオシン耐性遺伝子のナンノクロロプシス発現用プラスミドの構築
ゼオシン耐性遺伝子(配列番号40)、及び文献(Randor Radakovits, et al.,Nature Communications,DOI:10.1038/ncomms1688,2012)記載のナンノクロロプシス・ガディタナCCMP526株由来チューブリンプロモーター配列(配列番号41)を人工合成した。
合成したDNA断片を鋳型として、表2に示すプライマー番号42及びプライマー番号43のプライマー対、並びにプライマー番号44及びプライマー番号45のプライマー対をそれぞれ用いてPCRを行い、ゼオシン耐性遺伝子及びチューブリンプロモーター配列をそれぞれ取得した。これらの増幅断片と、前記VCP1ターミネーター配列、及びプラスミドベクターpUC19の増幅断片を、実施例1と同様の方法で融合し、ゼオシン耐性遺伝子発現プラスミドを構築した。なお、本発現プラスミドは、チューブリンプロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子、VCP1ターミネーター配列の順に連結したゼオシン耐性遺伝子発現用配列と、pUC19ベクター配列からなる。
(3)各種NoTE発現プラスミド及びゼオシン耐性遺伝子発現用プラスミドのナンノクロロプシスへの導入
前記発現プラスミドNoTE_262_Nanno、NoTE_262(G203W+V204F)_Nanno、及びNoTE_262(G203W+V204W)_Nannoを鋳型として、表2に示すプライマー番号46とプライマー番号47のプライマー対を用いてPCRを行い、当該プラスミド中のNoTE遺伝子発現用配列を増幅した。
また、前記ゼオシン耐性遺伝子発現用プラスミドを鋳型として、表2に示すプライマー番号48とプライマー番号47のプライマー対を用いてPCRを行い、ゼオシン耐性遺伝子発現用配列を増幅した。
増幅したDNA断片を、High Pure PCR Product Purification Kit(Roche Applied Science社製)を用いて精製した。なお、精製の際の溶出には、キットに含まれる溶出バッファーではなく、滅菌水を用いた。
約1×10細胞のナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株(独立行政法人国立環境研究所(NIES)より入手)を、ソルビトール溶液384mMで洗浄して塩を完全に除去し、形質転換の宿主細胞として用いた。上記で増幅したNoTE遺伝子発現用DNA断片(野生型又は改変型)及びゼオシン耐性遺伝子発現用DNA断片を、約500ngずつ宿主細胞と混和し、50μF、500Ω、2,200v/2mmの条件でエレクトロポレーションを行った。
f/2液体培地(NaNO3 75mg、NaH2PO4・2H2O 6mg、ビタミンB12 0.5μg、ビオチン 0.5μg、チアミン 100μg、Na2SiO3・9H2O 10mg、Na2EDTA・2H2O 4.4mg、FeCl3・6H2O 3.16mg、FeCl3・6H2O 12μg、ZnSO4・7H2O 21μg、MnCl2・4H2O 180μg、CuSO4・5H2O 7μg、Na2MoO4・2H2O 7μg/人工海水1L)にて24時間回復培養を行った。その後に、2μg/mLのゼオシン含有f/2寒天培地に塗布し、25℃、0.3%CO2雰囲気下、12h/12h明暗条件にて2〜3週間培養した。得られたコロニーの中から、NoTE遺伝子発現用断片を含むものをPCR法により選抜した。選抜した株を、f/2培地の窒素濃度を15倍、リン濃度を5倍に増強した培地(以下、N15P5培地)20mLに播種し、25℃、0.3%CO2雰囲気下、12h/12h明暗条件にて4週間振盪培養し、前培養液とした。前培養液2mLを、18mLのN15P5培地に植継ぎ、25℃、0.3%CO2雰囲気下、12h/12h明暗条件にて2週間振盪培養した。なお、陰性対照として、野生株であるナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株についても同様に実験を行った。
(4)ナンノクロロプシス培養液中の脂質の抽出及び構成脂肪酸の分析
培養後実施例1と同様の方法で、培養液に含まれる脂質成分の分析を行った。結果を表8に示す。なお、表8において、「n」は、0〜5の整数を表し、例えば「C18:n」と記載した場合には、組成がC18:0,C18:1,C18:2,C18:3,C18:4,及びC18:5の各脂肪酸の総和を表す。
表8に示すように、配列番号1に示すアミノ酸配列の203位と204位のアミノ酸の少なくとも一方をトリプトファンに置換されるように構築したNoTE_262(G203W+V204F)_Nanno、及びNoTE_262(G203W+V204W)_Nannoを導入した形質転換体では、NoTE_262発現用プラスミドを導入した形質転換体と比べ、総脂肪酸量に占めるC12:0脂肪酸、及びC14:0脂肪酸の割合が有意に増加した。
実施例5 NoTE改変体をコードする遺伝子を導入した大腸菌による脂質の製造
(1)NoTE多重改変体発現プラスミドの構築
実施例1で作製したプラスミドNoTE_262(V204W)を鋳型として、表3に示すプライマー番号51とプライマー番号52のプライマー対、プライマー番号51とプライマー番号53のプライマー対、プライマー番号54とプライマー番号55のプライマー対、プライマー番号54とプライマー番号56のプライマー対、プライマー番号54とプライマー番号57のプライマー対、プライマー番号54とプライマー番号58のプライマー対、プライマー番号54とプライマー番号59のプライマー対、並びにプライマー番号60とプライマー番号61のプライマー対をそれぞれ用いてPCRを行い、配列番号2の262位〜864位の塩基の一部を変異させた遺伝子断片をそれぞれ取得した。これらの遺伝子断片を用いて、前記手法と同様の手法により、各種NoTE改変体発現プラスミド(NoTE_262(V204W+H146N)、NoTE_262(V204W+H146S)、NoTE_262(V204W+M202F)、NoTE_262(V204W+M202H)、NoTE_262(V204W+M202L)、NoTE_262(V204W+M202Q)、NoTE_262(V204W+M202V)、NoTE_262(V204W+P281Q))をそれぞれ構築した。これらのプラスミドは、配列番号2の塩基配列に対して、下記の部位のコドンが改変されている。
(xiv)NoTE_262(V204W+H146N):配列番号1に示すアミノ酸配列の204位のバリンをコードするコドンがトリプトファンをコードするコドン(TGG)に、146位のヒスチジンをコードするコドンがアスパラギンをコードするコドン(AAC)に、それぞれ置換されている。
(xv)NoTE_262(V204W+H146S):配列番号1に示すアミノ酸配列の204位のバリンをコードするコドンがトリプトファンをコードするコドン(TGG)に、146位のヒスチジンをコードするコドンがセリンをコードするコドン(TCA)に、それぞれ置換されている。
(xvi)NoTE_262(V204W+M202F):配列番号1に示すアミノ酸配列の204位のバリンをコードするコドンがトリプトファンをコードするコドン(TGG)に、202位のメチオニンをコードするコドンがフェニルアラニン(F)をコードするコドン(TTC)に、それぞれ置換されている。
(xvii)NoTE_262(V204W+M202H):配列番号1に示すアミノ酸配列の204位のバリンをコードするコドンがトリプトファンをコードするコドン(TGG)に、202位のメチオニンをコードするコドンがヒスチジンをコードするコドン(CAT)に、それぞれ置換されている。
(xviii)NoTE_262(V204W+M202L):配列番号1に示すアミノ酸配列の204位のバリンをコードするコドンがトリプトファンをコードするコドン(TGG)に、202位のメチオニンをコードするコドンがロイシンをコードするコドン(CTA)に、それぞれ置換されている。
(xix)NoTE_262(V204W+M202Q):配列番号1に示すアミノ酸配列の204位のバリンをコードするコドンがトリプトファンをコードするコドン(TGG)に、202位のメチオニンをコードするコドンがグルタミンをコードするコドン(CAA)に、それぞれ置換されている。
(xx)NoTE_262(V204W+M202V):配列番号1に示すアミノ酸配列の204位のバリンをコードするコドンがトリプトファンをコードするコドン(TGG)に、202位のメチオニンをコードするコドンがバリンをコードするコドン(GTA)に、それぞれ置換されている。
(xxi)NoTE_262(V204W+P281Q):配列番号1に示すアミノ酸配列の204位のバリンをコードするコドンがトリプトファンをコードするコドン(TGG)に、281位のプロリンをコードするコドンがグルタミンをコードするコドン(CAG)に、それぞれ置換されている。
続いて、前記プラスミドNoTE_262(V204W+P281Q)を鋳型として、表3に示すプライマー番号54とプライマー番号56のプライマー対を用いてPCRを行い、配列番号2の262位〜864位の塩基の一部を変異させた遺伝子断片を取得した。この遺伝子断片を用いて、前記手法と同様の手法により、NoTE改変体発現プラスミド(NoTE_262(V204W+M202H+P281Q))を構築した。このプラスミドは、配列番号2の塩基配列に対して、下記の部位のコドンが改変されている。
(xxii)NoTE_262(V204W+M202H+P281Q): 配列番号1に示すアミノ酸配列の204位のバリンをコードするコドンがトリプトファンをコードするコドン(TGG)に、202位のメチオニンをコードするコドンがヒスチジンをコードするコドン(CAT)に、281位のプロリンをコードするコドンがグルタミンをコードするコドン(CAG)に、それぞれ置換されている。
(2)発現プラスミドの大腸菌への導入、大腸菌培養液中の脂質の抽出、及び構成脂肪酸の分析
実施例1と同様の方法で、前記発現プラスミドを大腸菌へ導入して培養を行い、培養液に含まれる脂質成分の分析を行った。また、比較対象として、前記発現プラスミドNoTE_262、NoTE_262(V204W)についても同様の実験を行った。結果を表9に示す。
表9に示すように、前記プラスミドNoTE_262を導入した形質転換体と比べ、いずれの変異体も総脂肪酸量に占めるC12脂肪酸の割合が有意に増加した。
また、配列番号1に示すアミノ酸配列の146位のアミノ酸が置換されるように構築した、プラスミドNoTE_262(V204W+H146N)及びプラスミドNoTE_262(V204W+H146S)をそれぞれ導入した形質転換体では、NoTE_262導入株やNoTE_262(V204W)をそれぞれ導入した形質転換体ではほとんど存在を確認できなかったC8脂肪酸の生産が確認された。
さらに、配列番号1に示すアミノ酸配列の204位のバリンをトリプトファンに、202位のメチオニンや281位のプロリンを他のアミノ酸にそれぞれ置換されるように構築したプラスミドを導入した形質転換体では、NoTE_262(V204W)を導入した形質転換体と比べ、総脂肪酸量に占めるC12脂肪酸の含有率がさらに増加した。
実施例6 NoTE改変体をコードする遺伝子を導入したナンノクロロプシス・オキュラータによる脂質の製造
(1)NoTE改変体発現プラスミドの構築
実施例1で作製したプラスミドNoTE_262、NoTE_262(G203W)、NoTE_262(V204W)、及びNoTE_262(G203W+V204W)を鋳型として、表2に示すプライマー番号27及びプライマー番号28のプライマー対を用いてPCRを行い、配列番号2に示す塩基配列の262位〜864位の塩基配列からなる遺伝子断片、及び配列番号2に示す塩基配列の262位〜864位の塩基の一部を変異させた遺伝子断片をそれぞれ取得した。
実施例4で作製したVCP1プロモーター配列、VCP1葉緑体移行シグナル配列、及びVCP1ターミネーター配列を含むpUC19ベクターを鋳型とし、表2に示すプライマー番号32及び表3に示すプライマー番号62のプライマー対を用いたPCRを行い、NoTE発現カセット(VCP1プロモーター配列、VCP1葉緑体移行シグナル配列、野生型又は改変型NoTE配列、VCP1ターミネーター配列からなる断片)を増幅した。
続いて、実施例4で作製したゼオシン耐性遺伝子発現プラスミドを鋳型として、表2に示すプライマー番号39及び表3に示すプライマー番号63のプライマー対を用いたPCRを行い、ゼオシン耐性遺伝子発現カセット(チューブリンプロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子、VCP1ターミネーター配列)及びpUC19配列からなる断片を増幅した。
前記NoTE発現カセットと、ゼオシン耐性遺伝子発現カセット及びpUC19配列からなる断片を、実施例1と同様の方法で融合し、NoTE発現カセットとゼオシン耐性遺伝子発現カセットが連結した薬剤耐性連結型NoTE発現プラスミド(NoTE_262_Nanno(zeo)、NoTE_262(G203W)_Nanno(zeo)、NoTE_262(V204W)_Nanno(zeo)、及びNoTE_262(G203W+V204W)_Nanno(zeo))をそれぞれ構築した。前記NoTE発現プラスミドは、配列番号2の塩基配列に対して、下記の部位のコドンが改変されている。
(xxiii)NoTE_262(G203W)_Nanno(zeo):配列番号1に示すアミノ酸配列の203位のグリシンをコードするコドンがトリプトファンをコードするコドン(TGG)に置換されている。
(xxiv)NoTE_262(V204W)_Nanno(zeo):配列番号1に示すアミノ酸配列の204位のバリンをコードするコドンがトリプトファンをコードするコドン(TGG)に置換されている。
(xxv)NoTE_262(G203W+V204W)_Nanno(zeo):配列番号1に示すアミノ酸配列の203位のグリシンをコードするコドンがトリプトファンをコードするコドン(TGG)に、204位のバリンをコードするコドンがトリプトファンをコードするコドン(TGG)に、それぞれ置換されている。
(2)各種NoTE発現プラスミドのナンノクロロプシスへの導入、形質転換体の培養、培養液中の脂質の抽出、及び構成脂肪酸の分析
前記発現プラスミドNoTE_262_Nanno(zeo)、NoTE_262(G203W)_Nanno(zeo)、NoTE_262(V204W)_Nanno(zeo)、及びNoTE_262(G203W+V204W)_Nanno(zeo)を鋳型として、表2に示すプライマー番号46とプライマー番号47のプライマー対を用いてPCRを行い、NoTE遺伝子発現カセットとゼオシン耐性遺伝子発現カセットが連結した断片を増幅した。
実施例4と同様の方法で、得られたDNA断片を精製し、エレクトロポレーション法によりナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株に導入した。
(3)ナンノクロロプシス培養液中の脂質の抽出及び構成脂肪酸の分析
実施例4と同様の方法で、形質転換体の選抜及び培養を行い、培養液に含まれる脂質成分の分析を行った。なお、脂質抽出の際に用いるヘキサンの量は0.5mLとした。結果を表10に示す。
表10に示すように、配列番号1に示すアミノ酸配列203位のグリシンをトリプトファンに置換されるように構築したNoTE_262(G203W)_Nanno(zeo)、204位のバリンをトリプトファンに置換されるように構築したNoTE_262(V203W)_Nanno(zeo)、203位と204位のアミノ酸をともにトリプトファンに置換されるように構築したNoTE_262(G203W+V204W)_Nanno(zeo)をそれぞれ導入した形質転換体では、NoTE_262を導入した形質転換体と比べ、総脂肪酸量に占めるC10脂肪酸、C12脂肪酸、C14脂肪酸の含有率が有意に増加した。
実施例7 N末端長を変更したNoTE改変体をコードする遺伝子を導入した大腸菌による脂質の製造
(1)N末端長を変更したNoTE改変体発現プラスミドの構築
実施例1で調製したナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株のcDNAを鋳型として、表4に示すプライマー番号64〜69及び表1に示すプライマー番号22のいずれか1つのプライマーと、表1に示すプライマー番号6のプライマー対を用いてPCRを行い、配列番号2の1〜864位の塩基配列からなる遺伝子断片、配列番号2の172〜864位の塩基配列からなる遺伝子断片、配列番号2の232〜864位の塩基配列からなる遺伝子断片、配列番号2の292〜864位の塩基配列からなる遺伝子断片、配列番号2の322〜864位の塩基配列からなる遺伝子断片、配列番号2の352〜864位の塩基配列からなる遺伝子断片、配列番号2の382〜864位の塩基配列からなる遺伝子断片、をそれぞれ取得した。これらの遺伝子断片を用いて、実施例1と同様の方法により、N末端長を変更したNoTE発現プラスミドNoTE_1、NoTE_172、NoTE_232、NoTE_292、NoTE_322、NoTE_352、NoTE_382、をそれぞれ構築した。
なお、以下のプラスミド表記において、「NoTE_1」、「NoTE_172」、「NoTE_232」、「NoTE_292」、「NoTE_322」、「NoTE_352」、「NoTE_382」はそれぞれ、配列番号1の1〜287位、57〜287位、77〜287位、97〜287位、107〜287位、117〜287位、127〜287位のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする塩基配列として、それぞれ配列番号2の1〜864位、172〜864位、232〜864位、292〜864位、322〜864位、352〜864位、382〜864位の塩基配列をプラスミドが有することを意味する。
これらのプラスミドを鋳型として、表1に示すプライマー番号10及びプライマー番号13のプライマー対を用いてPCRを行い、配列番号2の1〜864位、172〜864位、232〜864位、292〜864位、322〜864位、352〜864位、382〜864位の塩基の一部を変異させた遺伝子断片をそれぞれ取得した。これらの遺伝子断片を用いて、実施例1と同様の方法によりN末端長を変更したNoTE改変体発現プラスミドNoTE_1(V204W)、NoTE_172(V204W)、NoTE_232(V204W)、NoTE_292(V204W)、NoTE_322(V204W)、NoTE_352(V204W)、NoTE_382(V204W)、をそれぞれ構築した。
これらのプラスミド(xxvi)NoTE_1(V204W)、(xxvii)NoTE_172(V204W)、(xxviii)NoTE_232(V204W)、(xxix)NoTE_292(V204W)、(xxx)NoTE_322(V204W)、(xxxi)NoTE_352(V204W)、(xxxii)NoTE_382(V204W)はいずれも配列番号2の塩基配列に対して、下記の部位のコドンが改変されている。
(xxvi)〜(xxxii):配列番号1に示すアミノ酸配列の204位のバリンをコードするコドンがトリプトファンをコードするコドン(TGG)に置換されている。
(2)発現プラスミドの大腸菌への導入、大腸菌培養液中の脂質の抽出、及び構成脂肪酸の分析
実施例1と同様の方法で、前記プラスミドNoTE_1(V204W)、NoTE_172(V204W)、NoTE_232(V204W)、NoTE_292(V204W)、NoTE_322(V204W)、NoTE_352(V204W)、NoTE_382(V204W)をそれぞれ大腸菌へ導入して培養を行い、培養液に含まれる脂質成分の分析を行った。また、陰性対象として、前記プラスミドNoTE_1、NoTE_172、NoTE_232、NoTE_292、NoTE_322、NoTE_352、NoTE_382についてもそれぞれ同様の実験を行った。結果を表11に示す。
表11に示すように、NoTEのN末端のアミノ酸を種々の長さに変更した場合においても、野生型NoTE発現用プラスミドを導入した形質転換体と比べ、配列番号1に示すアミノ酸配列の204位のアミノ酸をトリプトファンに置換されるように構築したNoTE改変体発現用プラスミドを導入した形質転換体では、総脂肪酸量に占めるC10脂肪酸及びC12脂肪酸(C12:n)の割合が有意に増加した。
以上のように、本発明で規定するタンパク質をコードする遺伝子を宿主に導入することで、特定の炭素数の脂肪酸の生産性を向上させた形質転換体を作製することができる。そしてこの形質転換体を培養することで、特定の脂肪酸の生産性を向上させることができる。

Claims (17)

  1. 宿主に下記タンパク質(A)〜(C)のいずれか1つをコードする遺伝子を導入して得られた形質転換体を培養して脂質を生産させる、脂質の製造方法。

    (A)配列番号1の128位〜287位のアミノ酸配列において、203位のグリシン及び204位のバリンの少なくとも一方がトリプトファンに置換されたアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (B)配列番号1の128位〜287位のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列
    配列番号1の128位〜287位のアミノ酸配列に1〜8個のアミノ酸が欠失、置換、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列、
    配列番号3の115位〜274位のアミノ酸配列、
    配列番号3の115位〜274位のアミノ酸配列に1〜8個のアミノ酸が欠失、置換、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列、
    配列番号49の126位〜285位のアミノ酸配列、又は
    配列番号49の126位〜285位のアミノ酸配列に1〜8個のアミノ酸が欠失、置換、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列
    において、配列番号1の203位に相当する位置のアミノ酸及び204位に相当する位置のアミノ酸の少なくとも一方がトリプトファンに置換されたアミノ酸配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質。
    (C)前記タンパク質(A)又は(B)のアミノ酸配列を有し、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質。
  2. 前記タンパク質(A)〜(C)において、配列番号1の203位のグリシン又はこれに相当する位置のアミノ酸がトリプトファンに、配列番号1の204位のバリン又はこれに相当する位置のアミノ酸がトリプトファン又はフェニルアラニンに、それぞれ置換されている、請求項1記載の製造方法。
  3. 前記タンパク質(A)〜(C)において、配列番号1の203位のグリシン又はこれに相当する位置のアミノ酸及び204位のバリン又はこれに相当する位置のアミノ酸それぞれがトリプトファンに置換されている、請求項1又は2記載の製造方法。
  4. 前記タンパク質(A)〜(C)が、さらに下記(Ca)〜(Cg)からなる群より選ばれる少なくとも1つのアミノ酸置換を有する、請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法。

    (Ca)配列番号1の143位のロイシン又はこれに相当する位置のアミノ酸がプロリンに置換。
    (Cb)配列番号1の146位のヒスチジン又はこれに相当する位置のアミノ酸がアスパラギン又はセリンに置換。
    (Cc)配列番号1の160位のグリシン又はこれに相当する位置のアミノ酸がアラニンに置換。
    (Cd)配列番号1の202位のメチオニン又はこれに相当する位置のアミノ酸がフェニルアラニン、ヒスチジン、ロイシン、グルタミン、又はバリンに置換。
    (Ce)配列番号1の212位のグリシン又はこれに相当する位置のアミノ酸がプロリンに置換。
    (Cf)配列番号1の213位のアスパラギン又はこれに相当する位置のアミノ酸がチロシンに置換。
    (Cg)配列番号1の281位のプロリン又はこれに相当する位置のアミノ酸がグルタミンに置換。
  5. 前記タンパク質(A)〜(C)のいずれか1つをコードする遺伝子が、下記DNA(A1)〜(C1)のいずれか1つからなる遺伝子である、請求項1〜4のいずれか1項記載の製造方法。

    (A1)配列番号2の382位〜864位の塩基配列において、607位〜609位の塩基及び610位〜612位の塩基の少なくとも一方がトリプトファンをコードする塩基に置換された塩基配列からなるDNA。
    (B1)配列番号2の382位〜864位の塩基配列に1〜20個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加された塩基配列、
    配列番号4の343位〜825位の塩基配列、
    配列番号4の343位〜825位の塩基配列に1〜20個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加された塩基配列、
    配列番号50の376位〜858位の塩基配列、又は
    配列番号50の376位〜858位の塩基配列に1〜20個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加された塩基配列
    において、配列番号2の607位〜609位に相当する位置の塩基及び610位〜612位に相当する位置の塩基の少なくとも一方がトリプトファンをコードする塩基に置換された塩基配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
    (C1)前記DNA(a)又は(b)の塩基配列を有し、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
  6. 前記宿主が微生物である、請求項1〜5のいずれか1項記載の製造方法。
  7. 前記微生物が微細藻類である、請求項6記載の製造方法。
  8. 前記微細藻類がナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属に属する藻類である、請求項7記載の製造方法。
  9. 前記微生物が大腸菌である、請求項6記載の製造方法。
  10. 前記脂質が炭素数8、10、若しくは12の脂肪酸又はそのエステルを含む、請求項1〜9のいずれか1項記載の製造方法。
  11. 下記(A)〜(C)のいずれか1つで規定されるタンパク質。

    (A)配列番号1の128位〜287位のアミノ酸配列において、203位のグリシン及び204位のバリンの少なくとも一方がトリプトファンに置換されたアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (B)配列番号1の128位〜287位のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列
    配列番号1の128位〜287位のアミノ酸配列に1〜8個のアミノ酸が欠失、置換、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列、
    配列番号3の115位〜274位のアミノ酸配列、
    配列番号3の115位〜274位のアミノ酸配列に1〜8個のアミノ酸が欠失、置換、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列、
    配列番号49の126位〜285位のアミノ酸配列、又は
    配列番号49の126位〜285位のアミノ酸配列に1〜8個のアミノ酸が欠失、置換、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列
    において、配列番号1の203位に相当する位置のアミノ酸及び204位に相当する位置のアミノ酸の少なくとも一方がトリプトファンに置換されたアミノ酸配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質。
    (C)前記タンパク質(A)又は(B)のアミノ酸配列を有し、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質。
  12. 請求項11記載のタンパク質をコードする遺伝子。
  13. 下記(A1)〜(C1)で規定するいずれか1つのDNAからなる遺伝子。

    (A1)配列番号2の382位〜864位の塩基配列において、607位〜609位の塩基及び610位〜612位の塩基の少なくとも一方がトリプトファンをコードする塩基に置換された塩基配列からなるDNA。
    (B1)配列番号2の382位〜864位の塩基配列に1〜20個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加された塩基配列、
    配列番号4の343位〜825位の塩基配列、
    配列番号4の343位〜825位の塩基配列に1〜20個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加された塩基配列、
    配列番号50の376位〜858位の塩基配列、又は
    配列番号50の376位〜858位の塩基配列に1〜20個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加された塩基配列
    において、配列番号2の607位〜609位に相当する位置の塩基及び610位〜612位に相当する位置の塩基の少なくとも一方がトリプトファンをコードする塩基に置換された塩基配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
    (C1)前記DNA(a)又は(b)の塩基配列を有し、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
  14. 請求項12又は13記載の遺伝子を含有する組換えベクター。
  15. 請求項12若しくは13記載の遺伝子、又は請求項14記載の組換えベクターを、宿主に導入してなる形質転換体。
  16. 宿主に請求項12若しくは13記載の遺伝子、又は請求項14記載の組換えベクターを導入し、得られた形質転換体が生産する脂質中の脂肪酸組成を改変する、脂質中の脂肪酸組成を改変する方法。
  17. 宿主に請求項12若しくは13記載の遺伝子、又は請求項14記載の組換えベクターを導入する、炭素数8、10、又は12の脂肪酸の生産性を向上させる方法。
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