JP6590761B2 - クロム系硬質皮膜用剥離液 - Google Patents

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Description

本発明は、クロム系硬質皮膜用剥離液に関するものである。
従来より、超硬合金やサーメット、高速度鋼等を母材として用いてなる各種工具においては、耐摩耗性等の付与を目的として、その表面に対して、金属の(複合)窒化物等からなる硬質皮膜のコーティングが施されている。そのような硬質皮膜としては、これまでは、窒化チタンや窒化チタンアルミニウム等のチタン系硬質皮膜が主流であったが、最近では、耐摩耗性や耐酸化性等においてより優れたクロム系硬質皮膜の採用が進んできている(特許文献1を参照)。
ここで、上述の如き硬質皮膜のコーティングが施された工具であっても、度重なる使用によって表面の硬質皮膜は摩耗するため、長期間使用された工具に対しては、再度、硬質皮膜のコーティングが実施される場合がある。かかる再コーティングは、工具の表面に残存する硬質皮膜を除去(剥離)した後に実施されるため、近年では、硬質皮膜の種類に応じた除去剤(剥離液)の検討や開発等が盛んに行なわれている。
例えば、工具表面にコーティングされたクロム系硬質皮膜は、ある一定水準を超える酸化力が付与されたアルカリ性溶液(剥離液)中に工具を浸漬せしめることにより、剥離可能であることが知られている(特許文献2及び特許文献3を参照)。また、特に、強力な酸化剤である過マンガン酸カリウムやフェリシアン化カリウム(例えば、株式会社ADEKA製のチタピールCR(商品名))を主たる成分とする溶液にあっては、かかる溶液を剥離液として用いると、工具表面にコーティングされたクロム系硬質皮膜の除去速度が非常に速いという利点がある。
しかしながら、上記の過マンガン酸カリウム等の強力な酸化剤を主たる成分とする溶液は、非常に強力な酸化作用を発揮するものであるため、その溶液(剥離液)中に、表面にクロム系硬質皮膜が残存する工具を浸漬せしめるに際しては、工具(母材)へのダメージを考慮して、クロム系硬質皮膜の除去が完了次第、直ちに工具を剥離液から引き揚げる必要がある。このように、強力な酸化剤を主たる成分とする溶液を剥離液として用いる場合には、剥離液中への工具の浸漬時間を非常に厳密に監理する必要がある。また、強力な酸化剤を主たる成分とする溶液を剥離液として用いると、クロム系硬質皮膜の除去後の工具表面に異物が付着する恐れがあることが知られており、そのような異物を洗浄、除去する装置や方法が必要になるという問題もある(特許文献2を参照)。
一方で、クロム系硬質皮膜を除去可能な酸化能を有する酸化剤として、ペルオキソ二硫酸又はその塩類のアルカリ性水溶液も知られている。かかるペルオキソ二硫酸又はその塩類を酸化剤として使用した場合、前述の過マンガン酸カリウム等の非常に強力な酸化剤と比較すると、酸化反応が緩やかであるため、ペルオキソ二硫酸又はその塩類のアルカリ性水溶液を剥離液として用いた場合、かかる剥離液中に工具を長時間、浸漬せしめても、工具(母材)の腐蝕が発生し難いという利点がある。また、クロム系硬質皮膜の除去に伴ってペルオキソ二硫酸又はその塩類が消耗し、その際に生成する物質が、剥離液に易溶性の硫酸塩であるところから、工具表面への異物の付着を抑制することも出来る。
しかしながら、ペルオキソ二硫酸又はその塩類のみを含むアルカリ性水溶液にあっては、過マンガン酸カリウム等の強力な酸化剤を主たる成分とする溶液と比較すると、クロム系硬質皮膜に対する剥離性能が劣るものであるため、クロム系硬質皮膜の除去(剥離)に長時間を要したり、長時間の浸漬によっても剥離が完了しない恐れがあり、実用化には問題がある。
また、特許文献4にて提案の、硬質皮膜の除去速度向上に効果があるとされるヒドロキシ・カルボネート系有機酸アルカリ塩(例えば、グルコン酸ナトリウム)、エチレン・ジアミン・酢酸アルカリ塩(例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム)や、チオグリコール酸アルカリ塩(例えば、チオグリコール酸ナトリウム)等は、ペルオキソ二硫酸又はその塩類のアルカリ性水溶液中では速やかに酸化され、分解してしまうことから、ペルオキソ二硫酸又はその塩類のアルカリ性水溶液に添加し、クロム系硬質皮膜に対する剥離性の向上を図ることは出来ないのである。
特許第4713413号公報 特許第4675908号公報 特開2011−104724号公報 特許第2597931号公報
上述した状況の下、本発明者等は、先に、縮合リン酸及び/又はその塩を0.1〜20重量%、ペルオキソ二硫酸及び/又はその塩を0.1〜15重量%の割合において含み、pHが13.5以上に調製されたアルカリ性水溶液からなるクロム系硬質皮膜用剥離液を提案している(特願2012−280575号、特許5923033号)。そして、クロム系硬質皮膜用剥離液の更なる改良を目指して、鋭意、研究を進めた結果、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明の解決課題とするところは、短時間でクロム系硬質皮膜の除去が可能であり、また、浸漬による工具(母材)の腐蝕が効果的に抑制され、更には、皮膜除去後の工具表面への異物の付着が発生し難い、クロム系硬質皮膜用剥離液を提供することにある。
そして、本発明は、かかる課題を解決すべく、縮合リン酸のアルカリ塩の濃度が0.5〜2.5重量%であり、且つペルオキソ二硫酸のナトリウム塩及び/又はカリウム塩の濃度が1〜15重量%であり、前記縮合リン酸のアルカリ塩に由来する縮合リン酸イオン及び前記ペルオキソ二硫酸のナトリウム塩及び/又はカリウム塩に由来するペルオキソ二硫酸イオンを含むと共に、Na+ イオン及びK+ イオンを、下記式(1)より算出されるK+ イオンモル比が0.25〜0.95となるような割合において含み、pHが13.5以上に調製された水溶液からなるクロム系硬質皮膜用剥離液を、その要旨とするものである。
+ イオンモル比
=[K+ イオン]/([K+ イオン]+[Na+ イオン]) ・・・式(1)
上記式において、[K+ イオン]は水溶液中のK+ イオンのモル量(mol)を
示し、[Na+ イオン]は水溶液中のNa+ イオンのモル量(mol)を示す。
なお、本発明に従うクロム系硬質皮膜用剥離液の好ましい態様においては、前記縮合リン酸のアルカリ塩が、ピロリン酸のナトリウム塩又はカリウム塩、トリポリリン酸のナトリウム塩又はカリウム塩、及び、ヘキサメタリン酸のナトリウム塩又はカリウム塩からなる群より選択される一種又は二種以上のものである
このように、本発明に従うクロム系硬質皮膜用剥離液にあっては、縮合リン酸イオン及びペルオキソ二硫酸イオンを含むと共に、Na+ イオン及びK+ イオンを、上記した式(1)より算出されるK+ イオンモル比が所定の範囲となるような割合において含み、pHが13.5以上に調製された水溶液にて構成されるものであるところから、短時間でのクロム系硬質皮膜の除去が、可能ならしめられるのである。また、クロム系硬質皮膜が表面にコーティングされた工具を本発明のクロム系硬質皮膜用剥離液に浸漬しても、工具(母材)の腐蝕は効果的に抑制され得るのであり、更には、皮膜除去後の工具表面への異物の付着も、発生し難いものとなっているのである。
本発明に従うクロム系硬質皮膜用剥離液は、縮合リン酸イオン及びペルオキソ二硫酸イオンを含むと共に、Na+ イオン及びK+ イオンを、下記式(1)より算出されるK+ イオンモル比が0.25〜0.95となるような割合において含む、pHが13.5以上に調製された水溶液にて、構成されるものである。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、クロム系硬質皮膜とは、耐摩耗性の向上等を目的として各種工具の表面に設けられる皮膜であって、単層若しくは二以上の層から構成され、かかる層の少なくとも一以上がクロムを含むものを意味する。
+ イオンモル比
=[K+ イオン]/([K+ イオン]+[Na+ イオン]) ・・・式(1)
上記式において、[K+ イオン]は水溶液中のK+ イオンのモル量(mol)を
示し、[Na+ イオン]は水溶液中のNa+ イオンのモル量(mol)を示す。
先ず、縮合リン酸イオンは、金属イオン封鎖能(溶解金属の分散能)や、金属表面の洗浄作用等の界面活性作用に優れており、また、ペルオキソ二硫酸イオンを含むアルカリ性水溶液中においても、長期間に亘って安定的に存在することが可能である。このような特性を有する縮合リン酸イオンと、ペルオキソ二硫酸イオンとを含む水溶液であって、pHが13.5以上に調製されたものにてクロム系硬質皮膜用剥離液を構成することにより、かかるクロム系硬質皮膜用剥離液においては、縮合リン酸イオンにより、クロム系硬質皮膜への浸透性が効果的に付与され、その結果、ペルオキソ二硫酸イオンが皮膜の内部にまで充分に浸透することとなり、工具との界面に存在するクロム成分に直接作用して酸化クロムを生成し、その生成した酸化クロムがアルカリ反応によって溶出せしめられ、以て、皮膜を浮き上がらせるようにして剥離(除去)せしめることとなるのである。
本発明において、縮合リン酸イオンは、水溶液中にて縮合リン酸イオンを与え得る縮合リン酸のアルカリ塩を用いることによって、剥離液(水溶液)中に添加(配合)することが可能である。そのような縮合リン酸のアルカリ塩としては、従来より公知のものであれば、何れのものであっても使用することが可能ではあるが、本発明においては、ピロリン酸のナトリウム塩又はカリウム塩、トリポリリン酸のナトリウム塩又はカリウム塩、及び、ヘキサメタリン酸のナトリウム塩又はカリウム塩からなる群より選択される一種又は二種以上のものが、特に有利に用いられる。
本発明に従うクロム系硬質皮膜用剥離液において、縮合リン酸のアルカリ塩は、その濃度が0.1〜20重量%となるような量的割合において、好ましくは0.5〜2.5重量%となるような量的割合において、配合される。縮合リン酸のアルカリ塩の濃度が低すぎると、上述した効果が充分に発揮され得ない恐れがあり、その一方、縮合リン酸のアルカリ塩の濃度が高すぎると、後述するペルオキソ二硫酸イオンとクロム系硬質皮膜との反応を阻害し、結果として、クロム系硬質皮膜の除去(剥離)速度が低下する恐れがあるからである。
一方、ペルオキソ二硫酸イオンは、本発明に従うクロム系硬質皮膜用剥離液においては、クロム系硬質皮膜を酸化し、分解するという機能を発揮する。前述したように、ペルオキソ二硫酸イオンは、クロム系硬質皮膜を除去可能な酸化能を有することが知られているが、ペルオキソ二硫酸イオンを含むアルカリ性水溶液は、クロム系硬質皮膜に対する除去(剥離)性能が劣るという問題があった。そこで、水溶液(剥離液)中に、ペルオキソ二硫酸イオンと縮合リン酸イオンとを併存させ、且つ、pHを13.5以上に調製することにより、クロム系硬質皮膜が表面にコーティングされた工具を浸漬せしめても、工具(母材)の腐蝕は効果的に抑制されるのであり、また、皮膜除去後の工具表面への異物の付着も、効果的に抑制されることとなるのである。
本発明において、ペルオキソ二硫酸イオンは、水溶液中にてペルオキソ二硫酸イオンを与え得るペルオキソ二硫酸のアルカリ塩を用いることによって、剥離液(水溶液)中に添加(配合)することが可能である。本発明においては、ペルオキソ二硫酸のアルカリ塩として、ペルオキソ二硫酸のナトリウム塩及び/又はカリウム塩が有利に用いられる。なお、本発明においては、ペルオキソ二硫酸アンモニウムを使用することが好ましくない場合がある。本発明者等が知得したところによれば、ペルオキソ二硫酸アンモニウムを使用すると、後述する、除膜時間の短縮化に寄与していると思われる組成物(活性種)の生成を阻害する恐れがあるからである。
本発明に従うクロム系硬質皮膜用剥離液において、ペルオキソ二硫酸のナトリウム塩及び/又はカリウム塩は、その濃度が0.1〜15重量%となるような量的割合において、好ましくは1〜15重量%となるような量的割合において、配合される。ペルオキソ二硫酸のナトリウム塩及び/又はカリウム塩の濃度が低すぎると、酸化能が充分に発揮されない恐れがあり、一方で、ペルオキソ二硫酸のナトリウム塩及び/又はカリウム塩の濃度が高すぎると、皮膜除去(剥離)中に、工具表面にペルオキソ二硫酸のナトリウム塩及び/又はカリウム塩が析出する恐れがあるからである。
また、本発明のクロム系硬質皮膜用剥離液は、上述したように、縮合リン酸イオンとペルオキソ二硫酸イオンとを含むとともに、溶液全体のpHが13.5以上に調製されていることによって、構成されるものである。このように、溶液(剥離液)のpHを13.5以上に調製することによって、ペルオキソ二硫酸イオンによるクロム系硬質皮膜の除去(剥離)が効果的に進行するものとなっているのである。
なお、本発明において、溶液(剥離液)のpHを調製する手法としては、公知の各種手法の何れをも採用することが可能であるが、有利には、水酸化カリウムや水酸化ナトリウム等の強アルカリを所定量、溶液(剥離液)に添加することによって、溶液(剥離液)のpHを調製することが可能である。
そして、本発明に従うクロム系硬質皮膜用剥離液にあっては、上述した縮合リン酸イオン及びペルオキソ二硫酸イオンと共に、Na+ イオン(ナトリウムイオン)と、更にはK+ イオン(カリウムイオン)とを、下記式(1)より算出されるK+ イオンモル比が0.25〜0.95となるような割合において含むように調製されているところに、大きな技術的特徴が存するのである。このように、剥離液中に、Na+ イオンとK+ イオンとを所定の割合にて併存させることにより、本発明にかかるクロム系硬質皮膜用剥離液は、Na+ イオン又はK+ イオンが単独で存在する剥離液と比較して、クロム系硬質皮膜の除去(剥離)時間の短縮化が可能ならしめられているのである。
+ イオンモル比
=[K+ イオン]/([K+ イオン]+[Na+ イオン]) ・・・式(1)
上記式において、[K+ イオン]は水溶液中のK+ イオンのモル量(mol)を
示し、[Na+ イオン]は水溶液中のNa+ イオンのモル量(mol)を示す。
なお、縮合リン酸イオン及びペルオキソ二硫酸イオンを含有し、Na+ イオン(ナトリウムイオン)とK+ イオン(カリウムイオン)とを、本発明の如き所定の割合にて含む水溶液が、何故、クロム系硬質皮膜を短時間にて除去可能であるのかについては、本発明者等も、未だ完全には把握していないところである。ただ、本発明のクロム系硬質皮膜用剥離液にあっては、その調製の際に、白色粉末状の沈殿物が生成することが確認されており、この沈殿物を分離、回収して、その組成及び物性を調べたところ、K8(S283(OH)2 の様な組成比であり、また、極めて水に溶けやすい性状を有するものであることを確認している。このK8(S283(OH)2 の如き組成物が、活性種として機能することにより、クロム系硬質皮膜の除去(剥離)が効果的に促進すると、本発明者等は考えるところである。
本発明に従うクロム系硬質皮膜用剥離液は、アルカリ性水溶液からなるものであることから、その調製(製造)の際には、従来より一般的なアルカリ性水溶液を調製する場合と同様の手法が採用される。例えば、所定量の水に、縮合リン酸のアルカリ塩の一種又は二種以上のものと、ペルオキソ二硫酸のナトリウム塩及び/又はカリウム塩とを、除去(剥離)するクロム系硬質皮膜の組成や厚さ等に応じて決定された各々の添加量に従って添加し、更に、溶液(剥離液)全体のpHが13.5以上となり、且つ、剥離液中のNa+ イオン及びK+ イオンが上記式(1)を満たすように、適量の水酸化カリウム及び/又は水酸化ナトリウムを添加し、全体を撹拌、混合することにより、調製(製造)することが可能である。
そして、そのようにして調製された、本発明に従うクロム系硬質皮膜用剥離液にあっては、短時間でのクロム系硬質皮膜の除去が可能であり、また、クロム系硬質皮膜が表面にコーティングされた工具を浸漬せしめても、工具(母材)の腐蝕は効果的に抑制され得るのであり、更には、皮膜除去後の工具表面への異物の付着も発生し難いものとなっているのである。
なお、本発明のクロム系硬質皮膜用剥離液を用いて、クロム系硬質皮膜の除去(剥離)を行なう際の処理温度は、高温ほどクロム系硬質皮膜の除去(剥離)速度は向上するものの、65℃を超えると、縮合リン酸イオン及び/又はペルオキソ二硫酸イオンの分解により除去(剥離)速度が低下する恐れがあるため、65℃以下であることが好ましい。その一方、処理温度が低すぎると、クロム系硬質皮膜の除去(剥離)速度が遅く、皮膜の除去(剥離)が充分に進行しない恐れがあるため、25℃以上であることが好ましい。
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等が加え得るものであることが、理解されるべきである。
なお、以下の記載において、下層とは、クロム系硬質皮膜を構成する2層のうち、母材の表面と接する層を意味し、上層とは、下層の上側の面(母材の表面と接する面とは反対側の面)に設けられた層を、それぞれ示すものである。また、「AlCrN」はAl及びCrの複合窒化物より構成される層であることを、「TiCrAlSiYN」はTi、Cr、Al、Si及びYの複合窒化物より構成される層であることを、「TiCrAlN」はTi、Cr及びAlの複合窒化物より構成される層であることを、「TiAlN」はTi及びAlの複合窒化物より構成される層であることを、「TiN」はTiの窒化物より構成される層であることを、「CrN」はCrの窒化物より構成される層であることを、各々、示すものである。
また、以下の除去(剥離)試験において、クロム系硬質皮膜の除去(剥離)完了の判断は、次の手順に従って判断した。剥離液中より試料を適宜に取り出し、その表面(クロム系硬質皮膜が形成されている側の面。以下、同じ。)を紙タオルで擦り、黒変したクロム系硬質皮膜の剥がれカスを取り除く。その際、試料表面を観察し、黒変したクロム系硬質皮膜が残留している場合は、再度、試料を剥離液中に浸漬せしめて、試験を継続する。試料表面に、目視にて黒変したクロム系硬質皮膜の存在が確認できなくなった時点を除膜完了とし、剥離液への浸漬開始から除膜完了に至るまでの時間を「除膜時間」とする。
−実施例1〜実施例9、比較例1〜比較例8−
母材としてのダイス鋼SKD11の片面に、厚さが8μmのクロム系硬質皮膜(下層:AlCrN、上層:TiCrAlSiYN)がコーティングされてなる、大きさが12.7mm×12.7mmで、厚さが約5mmの試料を準備した。一方、ヘキサメタリン酸ナトリウムの濃度が0.5重量%(ヘキサメタリン酸イオンの濃度が0.0036mol/L)、ペルオキソ二硫酸ナトリウムの濃度が7.5重量%(ペルオキソ二硫酸イオンの濃度が0.35mol/L)、水酸化物イオンの濃度が1.22mol/L(即ち、pHは14.1である)であって、下記式(1)より算出されるK+ イオンモル比が下記表1に示されるクロム系硬質皮膜用剥離液を17種類、準備した(実施例1〜実施例9、比較例1〜比較例8)。
+ イオンモル比
=[K+ イオン]/([K+ イオン]+[Na+ イオン]) ・・・式(1)
上記式において、[K+ イオン]は水溶液中のK+ イオンのモル量(mol)を
示し、[Na+ イオン]は水溶液中のNa+ イオンのモル量(mol)を示す。
準備された試料を、各クロム系硬質皮膜用剥離液に浸漬せしめることにより、皮膜の除去(剥離)試験を行なった。皮膜除去に至るまでの時間(除膜時間)を、下記表1に示す。
Figure 0006590761
かかる表1からも明らかなように、本発明の如く、上記式(1)より算出されるK+ イオンモル比が0.25〜0.95の範囲内であるクロム系硬質皮膜用剥離液にあっては、K+ イオンモル比が範囲外のものと比較して、除膜時間が短いことが認められた。
−実施例10、実施例11、比較例9、比較例10−
厚さが約8μmのクロム系硬質皮膜(下層:AlCrN、上層:TiCrAlN)がコーティングされた、高速度工具鋼からなる刃物工具を準備した。その一方で、ヘキサメタリン酸ナトリウムの濃度が0.5重量%(ヘキサメタリン酸イオンの濃度が0.0036mol/L)、ペルオキソ二硫酸ナトリウムの濃度が、7.5重量%(ペルオキソ二硫酸イオンの濃度が0.35mol/L)又は15重量%(ペルオキソ二硫酸イオンの濃度が0.69mol/L)、水酸化物イオンの濃度が2.12mol/L(即ち、pHは14.3である)であって、上記式(1)より算出されるK+ イオンモル比が下記表2に示されるものである、クロム系硬質皮膜用剥離液を準備した。
ポリエチレン製計量カップに、刃物工具を十分に浸漬することが可能な量の剥離液を投入し、カップを温浴せしめて剥離液が下記表2に示す温度となった後、刃物工具をカップ内に投入し、皮膜の除去(剥離)試験を行なった。皮膜除去に至るまでの時間(除膜時間)を、下記表2に示す。
Figure 0006590761
かかる表2からも明らかなように、本発明の如く、上記式(1)より算出されるK+ イオンモル比が0.25〜0.95の範囲内であるクロム系硬質皮膜用剥離液にあっては、K+ イオンモル比が範囲外のものと比較して、除膜時間が短いことが認められた。尚、K+ イオンモル比が0.25未満である場合、除膜時間が長い理由としては、ペルオキソ二硫酸イオンの自然分解による消耗が著しく、ペルオキソ二硫酸イオンの含有量を増やしても、その消耗を補うことができないためであると、推察される。
−実施例12、比較例11−
厚さが約8μmのクロム系硬質皮膜(下層:AlCrN、上層:TiAlN)がコーティングされた、高速度工具鋼からなる刃物工具を準備した。その一方で、ヘキサメタリン酸ナトリウムの濃度が0.5重量%(ヘキサメタリン酸イオンの濃度が0.0036mol/L)、ペルオキソ二硫酸ナトリウムの濃度が15重量%(ペルオキソ二硫酸イオンの濃度が0.69mol/L)、水酸化物イオンの濃度が2.12mol/L(即ち、pHは14.3である)であって、上記式(1)より算出されるK+ イオンモル比が下記表3に示されるものである、クロム系硬質皮膜用剥離液を準備した。
ポリエチレン製計量カップに、刃物工具を十分に浸漬することが可能な量の剥離液を投入し、カップを温浴せしめて剥離液の温度が40℃となった後、刃物工具をカップ内に投入し、皮膜の除去(剥離)試験を行なった。皮膜除去に至るまでの時間(除膜時間)を、下記表3に示す。
Figure 0006590761
上記表3からも明らかなように、本発明に従うクロム系硬質皮膜用剥離液にあっては、本発明の範囲外のものと比較して、除膜時間が短いことが認められた。なお、比較例11に係るクロム系硬質皮膜用剥離液において、除膜時間が長くなった理由としては、上述したものと同様の理由(ペルオキソ二硫酸イオンの自然分解による著しい消耗)が推察される。
−実施例13−
厚さが約3μmのクロム系硬質皮膜(下層:TiN、上層:CrN)がコーティングされた、高速度工具鋼からなる刃物工具を準備した。実施例11に係るクロム系硬質皮膜用剥離液を用いて、液温(剥離液の温度)を70℃とした以外は実施例11と同様の条件に従い、皮膜の除去(剥離)試験を実施したところ、除膜時間は3時間であった。
−比較例12−
比較例9に係るクロム系硬質皮膜用剥離液を用いたこと以外は実施例13と同様の条件に従い、皮膜の除去(剥離)試験を実施したところ、被膜を完全に除去することは不可能であった。

Claims (2)

  1. 縮合リン酸のアルカリ塩の濃度が0.5〜2.5重量%であり、且つペルオキソ二硫酸のナトリウム塩及び/又はカリウム塩の濃度が1〜15重量%であり、
    前記縮合リン酸のアルカリ塩に由来する縮合リン酸イオン及び前記ペルオキソ二硫酸のナトリウム塩及び/又はカリウム塩に由来するペルオキソ二硫酸イオンを含むと共に、Na+ イオン及びK+ イオンを、下記式(1)より算出されるK+ イオンモル比が0.25〜0.95となるような割合において含み、pHが13.5以上に調製された水溶液からなるクロム系硬質皮膜用剥離液。
    + イオンモル比
    =[K+ イオン]/([K+ イオン]+[Na+ イオン]) ・・・式(1)
    上記式において、[K+ イオン]は水溶液中のK+ イオンのモル量(mol)を
    示し、[Na+ イオン]は水溶液中のNa+ イオンのモル量(mol)を示す。
  2. 前記縮合リン酸のアルカリ塩が、ピロリン酸のナトリウム塩又はカリウム塩、トリポリリン酸のナトリウム塩又はカリウム塩、及び、ヘキサメタリン酸のナトリウム塩又はカリウム塩からなる群より選択される一種又は二種以上のものである請求項1に記載のクロム系硬質皮膜用剥離液。
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