JP6590447B2 - 多層プリント配線板の製造方法 - Google Patents
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Description
なお、本発明において、「剥離基材の厚み」とは、剥離基材について20mm以上の間隔をあけて測定した5点の厚みの測定値の平均値を指す。また、本発明において、「熱硬化性樹脂組成物層の厚み」とは、熱硬化性樹脂組成物層について20mm以上の間隔をあけて測定した5点の厚みの測定値の平均値を指す。更に、本発明において、「揮発成分含有量」は、熱硬化性樹脂組成物層を空気中において温度170℃で30分間乾燥した際の重量減少分から求めることができ、「ガラス転移点」は、動的粘弾性分析(DMA法)を用いて求めることができる。
なお、本発明において、「常温常圧下で液状である」とは、温度20℃、気圧1atmの条件下において液状であることを指す。
なお、本発明において、「電気絶縁層に形成された穴の径」は、剥離基材を剥離した後に電子顕微鏡等を用いて電気絶縁層に形成された穴の開口径を測定することにより求めることができる。
そこで、以下に本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の多層プリント配線板の製造方法の一例では、基材上に電気絶縁層と導体層とを順次積層してなる内層基板に対し、電気絶縁層の形成と、電気絶縁層上への導体層の形成とを繰り返し実施して所望の層数の電気絶縁層および導体層が交互に積層された多層プリント配線板を製造する。また、本発明の多層プリント配線板の製造方法の一例では、ビア用の穴を形成する工程と、穴を形成する際に発生したスミアを除去する工程と、穴内に導体を形成する工程とよりなるビア形成工程を少なくとも1回は実施して、多層プリント配線板にブラインドビア、ベリードビア、スルーホールビアなどのビアを設ける。
このように、厚みが80μm以上の剥離基材上からレーザーを照射してレーザー加工を行えば、底部側の径が小さいテーパー状の穴が電気絶縁層上の剥離基材と電気絶縁層とを貫通するように形成されることになるので、剥離基材を使用しない場合と比較し、電気絶縁層に形成される穴の径を小さくすることができる。そして、その結果、ビアを小径化して小型で高密度な多層プリント配線板を製造することができる。また、熱硬化性樹脂組成物層の揮発成分含有量を7.0質量%以下とすると共に厚みを25μm以下とすれば、厚みが80μm以上の剥離基材を使用し、且つ、剥離基材の材料のガラス転移点以上の温度で熱硬化性樹脂組成物層を硬化させて電気絶縁層を形成した場合であっても、熱硬化性樹脂組成物層中の揮発成分が剥離基材によって層内に大量に閉じ込められるのを抑制することができる。従って、電気絶縁層の耐熱性(特に、はんだ耐熱性)の低下を抑制し、はんだ付け時などの加熱時に膨れが生じるのを抑制することができる。
ここで、電気絶縁層および導体層を積層する内層基板の基材としては、特に限定されることなく、多層プリント配線板の製造において用いられている既知の基材を使用することができる。具体的には、基材としては、例えば、電気絶縁性基板、プリント配線板、プリント回路板などが挙げられる。なお、電気絶縁性基板は、例えば、脂環式オレフィン重合体、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、トリアジン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、全芳香族ポリエステル樹脂、ガラス等の電気絶縁材料を含有する樹脂組成物を硬化させて形成することができる。
また、多層プリント配線板の電気絶縁層としては、例えば、硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物よりなる層(絶縁樹脂層)が挙げられる。具体的には、電気絶縁層としては、硬化性樹脂組成物を用いて形成した単層または多層の硬化性樹脂組成物層を硬化させて得られる単層構造または多層構造の絶縁樹脂層が挙げられる。
そして、本発明の多層プリント配線板の製造方法の一例では、揮発成分含有量が7.0質量%以下であって厚みが25μm以下の熱硬化性樹脂組成物層を所定の条件下で硬化させて、ビア用の穴が形成される電気絶縁層を形成する。具体的には、基板と、基板上に設けられた上記熱硬化性樹脂組成物層と、熱硬化性樹脂組成物層上に設けられた剥離基材とを備える積層体を所定の条件下で加熱し、熱硬化性樹脂組成物層を硬化させることにより、表面に剥離基材が密着した電気絶縁層を基板上に形成する。
ここで、基板としては、基材上に電気絶縁層と導体層とを順次積層してなる基板を用いることができる。
また、熱硬化性樹脂組成物層としては、揮発成分含有量を7.0質量%以下に抑え、且つ、厚みが25μm以下となるようにすること以外は特に限定されることなく、多層プリント配線板の製造において用いられている既知の熱硬化性樹脂組成物を使用して形成された熱硬化性樹脂組成物層を挙げることができる。具体的には、熱硬化性樹脂組成物層としては、硬化性樹脂と、硬化剤とを含有し、任意に充填剤やポリフェニレンエーテル化合物を更に含有する熱硬化性樹脂組成物層を用いることができる。
ここで、熱硬化性樹脂組成物層に含まれる揮発成分としては、例えば、熱硬化性樹脂組成物層の形成に用いた熱硬化性樹脂組成物中に含まれていた揮発成分を挙げることができる。具体的には、揮発成分としては、溶剤を含む熱硬化性樹脂組成物を乾燥させて熱硬化性樹脂組成物層を形成した際に熱硬化性樹脂組成物層中に残留した溶剤などが挙げられる。なお、溶剤としては、特に限定されることなく、トルエン、アニソール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどの有機溶剤が挙げられる。
硬化性樹脂としては、硬化剤と組み合わせることで熱硬化性を示し、かつ、電気絶縁性を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、トリアジン樹脂、脂環式オレフィン重合体、芳香族ポリエーテル重合体、ベンゾシクロブテン重合体、シアネートエステル重合体、ポリイミドなどが挙げられる。これらの樹脂は、それぞれ単独で、または、2種以上を組合せて用いられる。
更に、エポキシ樹脂としては、常温常圧で液状のエポキシ化合物を含有するエポキシ樹脂が好ましく、常温常圧で液状のエポキシ化合物を20質量%以上含有するエポキシ樹脂がより好ましい。ここで、常温常圧で液状のエポキシ化合物としては、特に限定されることなく、4価のグリシジルアミン型エポキシ化合物である商品名「YH−434、YH−434L」(以上、新日鉄住金化学社製)、商品名「jER604」(三菱化学社製)などのグリシジルアミン型エポキシ化合物;3価のグリシジルアミン型エポキシ化合物である商品名「jER630」(三菱化学社製)などのフェノール構造やアミノフェニル構造を同一分子内に有する3価以上の化合物をグリシジル化した多価グリシジル基含有化合物;商品名「jER827、jER828、jER828EL、jER828XA、jER834」(以上、三菱化学社製)、商品名「エピクロン840、エピクロン840−S、エピクロン850、エピクロン850−S、エピクロン850−LC」(以上、大日本インキ化学工業社製、「エピクロン」は登録商標)などのビスフェノールA型エポキシ化合物;商品名「デコナール(登録商標)EX−721」(ナガセケムテックス(株)製)などのフタル酸エステル型エポキシ樹脂;等が挙げられる。
また、硬化剤としては、加熱により硬化性樹脂と反応して硬化性樹脂組成物層を硬化させることが可能な既知の化合物を使用することができる。具体的には、硬化性樹脂が例えばエポキシ樹脂の場合には、硬化剤としては、特に限定されることなく、活性エステル化合物、好ましくは分子内に少なくとも2つの活性エステル基を有する活性エステル化合物を用いることができる。また、硬化性樹脂が例えば極性基を有する脂環式オレフィン重合体の場合には、硬化剤としては、特に限定されることなく、極性基を有する脂環式オレフィン重合体の極性基と反応して結合を形成することができる官能基を2個以上有する化合物を用いることができる。
また、極性基と反応して結合を形成することができる官能基を2個以上有する化合物としては、例えば、多価エポキシ化合物、多価イソシアナート化合物、多価アミン化合物、多価ヒドラジド化合物、アジリジン化合物、塩基性金属酸化物、有機金属ハロゲン化物などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。また、これらの化合物と、過酸化物とを併用することで硬化剤として用いてもよい。
更に、充填剤としては、電気絶縁層の線膨張率を低減可能な公知の無機充填剤および有機充填剤のいずれも用いることができるが、無機充填剤を用いることが好ましい。無機充填剤の具体例としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、水和アルミナ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ、タルク、クレーなどを挙げることができる。なお、用いる充填剤は、シランカップリング剤等で予め表面処理されたものであってもよい。また、硬化性樹脂組成物層中の充填剤の含有量は、50質量%以上であることが好ましい。なお、多層の硬化性樹脂組成物層を硬化させて多層構造の絶縁樹脂層よりなる電気絶縁層を形成する場合には、多層の硬化性樹脂組成物層のうち少なくとも一層が充填剤を50質量%以上含むことが好ましい。
熱硬化性樹脂組成物層には、上述した成分に加えて、ポリフェニレンエーテル化合物を更に配合してもよい。ポリフェニレンエーテル化合物を配合すれば、硬化性樹脂組成物を用いて形成した電気絶縁層の耐熱性を高めると共に誘電正接を低減することができる。また、熱硬化性樹脂組成物層には、揮発成分含有量が7.0質量%以下となる範囲内であれば、硬化促進剤、難燃剤、難燃助剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、老化防止剤、紫外線吸収剤(レーザー加工性向上剤)、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、天然油、合成油、ワックス、乳剤、磁性体、誘電特性調整剤、靭性剤などの公知の配合剤を含有させてもよい。
そして、基板と、熱硬化性樹脂組成物層と、剥離基材とを備える積層体を調製する際に基板上や剥離基材上に熱硬化性樹脂組成物層を形成する方法としては、特に限定されないが、上述した成分と、所望により有機溶剤などの溶剤とを混合して得た熱硬化性樹脂組成物を、基板または剥離基材に塗布、散布または流延し、次いで、乾燥する方法が好ましい。
そして、熱硬化性樹脂組成物層の厚みは、25μm以下であることが必要であり、20μm以下であることが好ましい。また、熱硬化性樹脂組成物層の厚みは、通常、3μm以上である。熱硬化性樹脂組成物層の厚みが25μm以下であれば、熱硬化性樹脂組成物層中の揮発成分の総量を十分に低減し、電気絶縁層の耐熱性の低下および加熱時の膨れが生じるのを抑制することができるからである。更に、レーザー加工によりビア用の穴を形成する場合には底部側の径が小さいテーパー状の穴が形成されるところ、熱硬化性樹脂組成物層の厚みが25μm以下であれば、開口部と底部との間の径差を小さくすると共にビア用の穴を十分に小径化することができるからである。なお、熱硬化性樹脂組成物層の厚みを3μm未満とすると、得られる電気絶縁層の厚みも薄くなり過ぎてしまい、電気絶縁層としての信頼性に劣るものとなってしまう。
剥離基材としては、ガラス転移点を有する材料を用いて形成された、厚みが80μm以上のフィルム状または板状等の部材を用いる。
ここで、剥離基材の厚みは、剥離基材上からのレーザーの照射によって電気絶縁層に形成されるビア用の穴を十分に小径化する観点からは、80μm以上であることが必要であり、100μm以上であることが好ましい。また、熱硬化性樹脂組成物層を硬化させて電気絶縁層を形成する際に熱硬化性樹脂組成物層中の揮発成分が電気絶縁層内に閉じ込められるのを抑制する観点からは、剥離基材の厚みは、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましい。なお、剥離基材の厚みが80μm未満の場合には、熱硬化性樹脂組成物層の揮発成分含有量が7.0質量%超であっても、電気絶縁層の耐熱性の低下および加熱時の膨れは生じない。
また、剥離基材の形成に用いる材料としては、ガラス転移点を有するものであれば特に限定されることなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン等の高分子化合物や、ガラス等が挙げられる。これらの中でも、剥離基材の形成に用いる材料としては、ガラス転移点が70℃以上170℃以下の物質が好ましく、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
なお、剥離基材は、上述したガラス転移点を有する材料を用いて形成された層を有していれば、ガラス転移点を有する材料を用いて形成された層と、ガラス転移点を有さない材料を用いて形成された層との積層体であってもよい。ここで、本発明において、剥離基材がガラス転移点を有さない材料を用いて形成された層を有する場合には、当該剥離基材は、ガラス転移点を有する材料を用いて形成された層の厚みが80μm以上であることが好ましい。
ここで、電気絶縁層からの剥離基材の剥離操作を容易なものとする観点からは、剥離基材は離型層の形成などの離型処理が表面に施されていることが好ましい。
また、剥離基材は、紫外線吸収性を有していることが好ましい。剥離基材が紫外線吸収性を有していれば、エキシマレーザー、UVレーザー、UV−YAGレーザー等を用いた穴の形成が容易になるからである。なお、本発明において、「紫外線吸収性を有する」とは、紫外可視吸光光度計により測定した波長355nmにおける光透過率が20%以下であることを指す。
更に、剥離基材の表面粗さRaは、特に限定されないが、好ましくは1nm以上200nm以下、より好ましくは2nm以上170nm以下、更に好ましくは3nm以上150nm以下、特に好ましくは4nm以上130nm以下である。表面粗さRaが小さすぎると、取扱い性が低下してしまい、生産効率が悪化する場合がある。一方、表面粗さRaが大きすぎると、電気絶縁層の表面に凹凸形状が残存してしまい、電気絶縁層の表面への微細配線の形成が困難となる虞がある。
本発明の多層プリント配線板の製造方法の一例において、基板と、基板上に設けられた上記熱硬化性樹脂組成物層と、熱硬化性樹脂組成物層上に設けられた上記剥離基材とを備える積層体を加熱して熱硬化性樹脂組成物層を硬化させ、表面に剥離基材が密着した電気絶縁層を基板上に形成する際の加熱温度は、熱硬化性樹脂組成物層を硬化可能な温度であって、剥離基材の材料のガラス転移点以上の温度とする。なお、加熱温度が剥離基材の材料のガラス転移点未満の温度の場合には、電気絶縁層を形成する際に熱硬化性樹脂組成物層中の揮発成分が層内に閉じ込められ難く、加熱時に膨れの問題が発生し難い。
そして、本発明の多層プリント配線板の製造方法の一例では、上記のようにして形成された電気絶縁層へのビア用の穴の形成は、剥離基材を剥離する前に、剥離基材上からレーザーを照射して行う。このように、レーザーを用いたビア用の穴の形成を、電気絶縁層から厚さ80μm以上の剥離基材を剥離する前に(即ち、穴が形成される電気絶縁層上に厚さ80μm以上の剥離基材が位置する状態で)実施することにより、小径で、且つ、開口率(底径/開口径)が高い穴を形成することができる。
更に、形成する穴の深さは、所望の導体層同士を接続可能な深さとすることができる。
なお、本発明の多層プリント配線板の製造方法の一例において、電気絶縁層にビア用の穴を形成した際に発生したスミア(樹脂残渣)は、既知の手法を用いて除去することができる。具体的には、スミアは、過マンガン酸塩溶液などのデスミア液、紫外線、プラズマ等を用いた既知のデスミア処理方法を用いて除去することができる。なお、デスミア処理は、電気絶縁層から剥離基材を剥離する前に(即ち、穴が形成された電気絶縁層上に支持体(剥離基材)が位置する状態で)実施してもよいし、電気絶縁層から剥離基材を剥離した後に実施してもよい。中でも、デスミア処理中に電気絶縁層の表面が荒れるのを抑制する観点からは、電気絶縁層から剥離基材を剥離する前にデスミア処理を行うことが好ましい。
そして、上述のようにして電気絶縁層に形成したビア用の穴内への導体の形成は、電気絶縁層の表面から剥離基材が剥離されていない場合には当該剥離基材を剥離し、任意に穴が形成された電気絶縁層を有する基板を洗浄および乾燥した後、めっき法などの既知の方法を用いて行うことができる。なお、生産性の観点からは、穴内への導体の形成は、後に詳細に説明する導体層の形成と同時に行うことが好ましい。
なお、本発明の多層プリント配線板の製造方法の一例では、ビア用の穴が形成される電気絶縁層以外の電気絶縁層は、任意の方法で形成することができる。即ち、ビア用の穴が形成される電気絶縁層以外の電気絶縁層は、穴を形成しない以外はビア用の穴が形成される電気絶縁層と同様にして形成してもよいし、上述した剥離基材を使用しないで形成してもよいし、既知の硬化性樹脂組成物層を硬化させて形成してもよい。
また、多層プリント配線板の導体層としては、例えば、銅や金などの導電体により形成された配線を含む層が挙げられる。なお、導体層は、各種の回路を含んでいてもよく、また、配線や回路の構成、厚み等は特に限定されない。
そして、電気絶縁層上への導体層の形成は、めっき法などの既知の方法を用いて行うことができる。具体的には、導体層は、例えばフルアディティブ法やセミアディティブ法などを用いて電気絶縁層上に形成することができる。
(1)ビア用の穴が形成される電気絶縁層の形成、ビア用の穴の形成、スミアの除去およびビアの形成、或いは、ビア用の穴を形成しない電気絶縁層の形成と、
(2)電気絶縁層上への導体層の形成と、
を交互に繰り返し実施することにより、所望の層数の電気絶縁層および導体層が交互に積層され、且つ、少なくとも1つのビアを有する多層プリント配線板を製造することができる。
実施例および比較例において、剥離基材および熱硬化性樹脂組成物層の厚み、剥離基材の材料のガラス転移点、熱硬化性樹脂組成物層の揮発成分含有量、電気絶縁層に形成したビア用の穴の径および形状、並びに、電気絶縁層の耐熱性は、それぞれ以下の方法を使用して測定または評価した。
剥離基材および熱硬化性樹脂組成物層について、膜厚計を使用し、20mm以上の間隔をあけて測定した5点の厚みの測定値の平均値を求め、剥離基材および熱硬化性樹脂組成物層のそれぞれの厚みとした。
<ガラス転移点>
剥離基材から切り出した試験片をサンプルとし、動的粘弾性分析(DMA)装置としてセイコーインスツルメンツ(株)製のDMS−6100を用い、「引っ張りモード」にて貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E”)とを測定した。なお、測定は、5℃/分の昇温速度にて、25℃〜200℃の範囲で行った。そして、測定で得られた貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E”)との比から求められる損失正接(tanδ)の最大値の小数点第一位を四捨五入した値をガラス転移点(Tg)とした。
<揮発成分含有量>
作製した剥離基材付き熱硬化性樹脂組成物層から剥離基材を剥離し、熱硬化性樹脂組成物層の重量W1を測定した。その後、熱硬化性樹脂組成物層を空気中において温度170℃で30分間乾燥し、乾燥後の熱硬化性樹脂組成物層の重量W2を測定した。そして、乾燥前の熱硬化性樹脂組成物層の重量W1に対する重量減少分(W1−W2)の割合(={(W1−W2)/W1}×100%)を求め、揮発成分含有量とした。
<ビア用の穴の径>
ビア用の穴を形成した電気絶縁層から剥離基材を剥離した後、走査型電子顕微鏡を用いて電気絶縁層に形成されたビア用の穴の開口径を測定した。
<ビア用の穴の形状>
ビア用の穴を形成した電気絶縁層から剥離基材を剥離した後、走査型電子顕微鏡を用いて電気絶縁層に形成されたビア用の穴の開口径および底径を測定した。そして、開口率(=(底径/開口径)×100%)を求め、以下の基準で評価した。
○:開口率が65%以上
×:開口率が65%未満
<耐熱性>
作製した多層プリント配線板を260℃のはんだ浴槽上に10秒間フロートさせた。その後、はんだ浴から取り出した多層プリント配線板の外観観察を行い、以下の基準で耐熱性を評価した。膨れの数が少ないほど、電気絶縁層が耐熱性に優れていることを示す。
○:膨れが認められなかった
×:膨れが1箇所以上観察された
<熱硬化性樹脂組成物の調製>
常温常圧で液状のエポキシ化合物としてのビスフェノールA型エポキシ化合物(商品名「jER828EL」、三菱化学社製、エポキシ当量186)50部、3価以上の多価グリシジル基含有エポキシ化合物としてのテトラキスヒドロキシフェニルエタン型エポキシ化合物(商品名「jER 1031S」、三菱化学社製、エポキシ当量200、軟化点90℃)50部、トリアジン構造含有フェノール樹脂としてのトリアジン構造含有クレゾールノボラック樹脂(商品名「フェノライト LA−3018−50P」、不揮発分50%のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液、DIC社製、活性水酸基当量154)30部(トリアジン構造含有クレゾールノボラック樹脂換算で15部)、活性エステル化合物(商品名「エピクロン HPC−8000−65T」、不揮発分65%のトルエン溶液、DIC社製、活性エステル基当量223)115.3部(活性エステル化合物換算で75部)、ポリフェニレンエーテル化合物としての両末端スチリル基変性ポリフェニレンエーテル化合物(商品名「OPE−2St1200」、三菱瓦斯化学社製、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチルビフェニル−4,4’−ジオール・2,6−ジメチルフェノール重縮合物とクロロメチルスチレンとの反応生成物、数平均分子量(Mn)=1200、60%トルエン溶液)30部、無機充填剤としてのシリカ(商品名「SC2500−SXJ」、アドマテックス社製)670部、老化防止剤としてのヒンダードフェノール系酸化防止剤(商品名「イルガノックス(登録商標)3114」、BASF社製)1部、および、アニソール110部を混合し、遊星式攪拌機で3分間攪拌した。更に、硬化促進剤として1−べンジル−2−フェニルイミダゾールをアニソールに濃度30%となるように溶解した溶液8.3部(1−べンジル−2−フェニルイミダゾール換算で2.5部)、および、硬化剤としてのジクミルパーオキサイド(商品名「パーカドックスBC−FF」、化薬アクゾ社製)0.3部を混合し、遊星式攪拌機で5分間攪拌して熱硬化性樹脂組成物のワニスを得た。なお、ワニス中、無機充填剤の含有量は、固形分換算で75%であった。
<剥離基材付き熱硬化性樹脂組成物層の作製>
上記にて得られた熱硬化性樹脂組成物のワニスを、表面に離型層を備えるポリエチレンテレフタレートフィルム(剥離基材、厚さ:100μm、ガラス転移点:110℃)上にワイヤーバーを用いて塗布し、次いで、窒素雰囲気下、80℃で4分間乾燥させて、未硬化の熱硬化性樹脂組成物からなる厚み15μmの熱硬化性樹脂組成物層を剥離基材上に形成した。
そして、熱硬化性樹脂組成物層の揮発成分含有量を測定した。結果を表1に示す。
<電気絶縁層の形成>
ガラスフィラーおよびハロゲン不含エポキシ化合物を含有するワニスをガラス繊維に含浸させて得られたコア材の表面に厚みが18μmの銅が貼られた、厚み0.8mm、160mm角(縦160mm、横160mm)の両面銅張り基板の表面に、配線幅および配線間距離が50μm、厚み(配線高さ)が5μmで、表面が有機酸との接触によってマイクロエッチング処理された導体層を形成して内層基板を得た。
そして、内層基板の両面に、上記にて得られた剥離基材付き熱硬化性樹脂組成物層を150mm角に切断したものを、剥離基材が付いた状態で、熱硬化性樹脂組成物層側の面が内側となるようにして貼り合わせた。その後、耐熱性ゴム製プレス板を上下に備えた真空ラミネータを用い、200Paに減圧して、温度110℃、圧力0.1MPaで60秒間加熱圧着し、内層基板上に剥離基材付き熱硬化性樹脂組成物層を積層した。次いで、室温で30分間静置した後、空気中において30℃から180℃まで30分(5℃/分)かけて昇温し、更に180℃で30分間加熱することにより、熱硬化性樹脂組成物層を硬化させ、内層基板上に硬化樹脂層(電気絶縁層)を形成した。
<ビア用の穴の形成>
次いで、剥離基材を電気絶縁層から剥離する前に、内層基板の両面に形成した電気絶縁層および電気絶縁層上の剥離基材に対し、炭酸ガスレーザー加工機(製品名「YB−HCS301T13」、パナソニック溶接システム社製)を用いて、剥離基材上から、パルス幅45μs、エネルギー0.25mJ、3ショットの条件にて、炭酸ガスレーザーを照射した。そして、電気絶縁層にビア用の穴を形成した。その後、ビア用の穴を形成した電気絶縁層から剥離基材を剥離し、電気絶縁層に形成された穴の径および形状を評価した。結果を表1に示す。
<多層プリント配線板の作製>
ビア用の穴を形成した電気絶縁層と内層基板とよりなる基板を、膨潤液(「スウェリングディップセキュリガントP」、アトテック社製、「セキュリガント」は登録商標)の濃度が500mL/L、水酸化ナトリウムの濃度が3g/Lになるように調製した60℃の水溶液に15分間揺動浸漬し、膨潤処理を施した後、水洗した。
次いで、過マンガン酸塩の水溶液(「コンセントレートコンパクトCP」、アトテック社製)500mLと水酸化ナトリウム40gとの混合物に対し、合計で1Lとなるよう水を加えて調製した水溶液を80℃とし、この水溶液に基板を20分間揺動浸漬して粗化処理を施した後、水洗した。
続いて、硫酸ヒドロキシアミン水溶液(「リダクションセキュリガントP500」、アトテック社製、「セキュリガント」は登録商標)の濃度が100mL/L、硫酸の濃度が35mL/Lになるように調製した40℃の水溶液に、基板を5分間浸漬し、中和還元処理をした後、水洗した。
次いで、クリーナー・コンディショナー水溶液(「アルカップMCC−6−A」、上村工業社製、「アルカップ」は登録商標)の濃度が50mL/Lとなるよう調製した50℃の水溶液に基板を5分間浸漬し、クリーナー・コンディショナー処理を行った。次いで40℃の水洗水に基板を1分間浸漬した後、水洗した。
続いて、硫酸濃度100g/L、過硫酸ナトリウム濃度100g/Lとなるように調製した水溶液に基板を2分間浸漬し、ソフトエッチング処理を行った後、水洗した。
次いで、硫酸濃度100g/Lなるよう調製した水溶液に基板を1分間浸漬し、酸洗処理を行った後、水洗した。
続いて、アルカップアクチベータMAT−1−A(商品名、上村工業社製、「アルカップ」は登録商標)の濃度が200mL/L、アルカップアクチベータMAT−1−B(商品名、上村工業社製、「アルカップ」は登録商標)の濃度が30mL/L、水酸化ナトリウムの濃度が0.35g/Lになるように調製した60℃のPd塩含有めっき触媒水溶液に基板を5分間浸漬した後、水洗した。
次いで、アルカップレデユーサーMAB−4−A(商品名、上村工業社製、「アルカップ」は登録商標)の濃度が20mL/L、アルカップレデユーサーMAB−4−B(商品名、上村工業社製、「アルカップ」は登録商標)の濃度が200mL/Lになるように調製した水溶液に基板を35℃で3分間浸漬し、めっき触媒を還元処理した後、水洗した。
続いて、アルカップアクセレレーターMEL−3−A(商品名、上村工業社製、「アルカップ」は登録商標)の濃度が50mL/Lになるように調製した水溶液に基板を25℃で、1分間浸漬した。
そして、上記処理を施して得られた基板を、スルカップPEA−6−A(商品名、上村工業社製、「スルカップ」は登録商標)の濃度が100mL/L、スルカップPEA−6−B−2X(商品名、上村工業社製)の濃度が50mL/L、スルカップPEA−6−C(商品名、上村工業社製)の濃度が14mL/L、スルカップPEA−6−D(商品名、上村工業社製)の濃度が15mL/L、スルカップPEA−6−E(商品名、上村工業社製)の濃度が50mL/L、37%ホルマリン水溶液の濃度が5mL/Lとなるように調製した無電解銅めっき液に、空気を吹き込みながら、温度36℃で、20分間浸漬し、無電解銅めっき処理により基板の表面および穴内に無電解めっき膜を形成した。次いで、空気雰囲気下において150℃で30分間アニール処理を行った。
アニール処理が施された基板に、電解銅めっきを施し厚さ30μmの電解銅めっき膜を形成させた。次いで当該電解銅めっき膜を形成した基板を190℃で90分間加熱処理することにより、基板上に導体層を形成して多層プリント配線板を得た。そして、多層プリント配線板を用いて電気絶縁層の耐熱性を評価した。結果を表1に示す。
剥離基材上に形成した熱硬化性樹脂組成物層の厚みを25μmとした以外は実施例1と同様にして、剥離基材付き熱硬化性樹脂組成物層、電気絶縁層および多層プリント配線板を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
剥離基材上に塗布した熱硬化性樹脂組成物のワニスを乾燥する際の乾燥時間を2分間とした以外は実施例1と同様にして、剥離基材付き熱硬化性樹脂組成物層、電気絶縁層および多層プリント配線板を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
剥離基材の厚みを38μmとした以外は実施例1と同様にして、剥離基材付き熱硬化性樹脂組成物層、電気絶縁層および多層プリント配線板を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
Claims (5)
- ビアを有する多層プリント配線板の製造方法であって、
基板と、前記基板上に設けられた熱硬化性樹脂組成物層と、前記熱硬化性樹脂組成物層上に設けられた剥離基材とを備える積層体を加熱し、前記熱硬化性樹脂組成物層を硬化させて電気絶縁層を形成する工程と、
前記剥離基材上からレーザーを照射して前記電気絶縁層にビア用の穴を形成する工程と、
を含み、
前記剥離基材は、厚みが80μm以上で、且つ、ガラス転移点を有する材料を用いて形成されており、
前記熱硬化性樹脂組成物層は、揮発成分含有量が7.0質量%以下であり、且つ、厚みが25μm以下であり、
前記熱硬化性樹脂組成物層の硬化を前記ガラス転移点以上の温度で行う、多層プリント配線板の製造方法。 - 前記熱硬化性樹脂組成物層は、エポキシ樹脂を含み、
前記エポキシ樹脂は、常温常圧下で液状であるエポキシ化合物を20質量%以上の割合で含む、請求項1に記載の多層プリント配線板の製造方法。 - 前記熱硬化性樹脂組成物層は、無機充填剤を50質量%以上含む、請求項1または2に記載の多層プリント配線板の製造方法。
- 前記熱硬化性樹脂組成物層は、ポリフェニレンエーテル化合物を含む、請求項1〜3の何れかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
- 前記電気絶縁層に形成された穴の径が30μm以下である、請求項1〜4の何れかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
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