以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る多層プリント配線板の製造方法は、回路基板上にて、絶縁層と配線回路層とが交互に積層された構造を有する多層プリント配線板の製造方法であって、樹脂フィルムを用いて複数の絶縁層を形成する多層プリント配線板の製造方法である。
本発明に係る多層プリント配線板の製造方法は、回路基板上に、樹脂フィルムを用いて1層目の絶縁層を形成し、かつ該1層目の絶縁層上に1層目の配線回路層を形成して、1層目の絶縁−配線回路複合層を形成する工程を備える。本発明に係る多層プリント配線板の製造方法は、1層目の絶縁−配線回路複合層上に、樹脂フィルムを用いて2層目の絶縁層を形成し、かつ該2層目の絶縁層上に2層目の配線回路層を形成して、2層目の絶縁−配線回路複合層を形成する工程を備える。本発明に係る多層プリント配線板の製造方法は、2層目の絶縁−配線回路複合層上に、樹脂フィルムを用いて3層目の絶縁層を形成し、かつ該3層目の絶縁層上に3層目の配線回路層を形成して、3層目の絶縁−配線回路複合層を形成する工程を備える。本発明に係る多層プリント配線板の製造方法は、3層目の絶縁−配線回路複合層上に、樹脂フィルムを用いて4層目の絶縁層を形成し、かつ該4層目の絶縁層上に4層目の配線回路層を形成して、4層目の絶縁−配線回路複合層を形成する工程を備える。本発明に係る多層プリント配線板の製造方法は、4層目の絶縁−配線回路複合層上に、樹脂フィルムを用いて5層目の絶縁層を形成し、かつ該5層目の絶縁層上に5層目の配線回路層を形成して、5層目の絶縁−配線回路複合層を形成する工程を備える。本発明に係る多層プリント配線板の製造方法は、5層目の絶縁−配線回路複合層上に、樹脂フィルムを用いて6層目の絶縁層を形成し、かつ該6層目の絶縁層上に6層目の配線回路層を形成して、6層目の絶縁−配線回路複合層を形成する工程を備える。
本発明に係る多層プリント配線板の製造方法では、上記樹脂フィルムは、熱硬化性化合物と、無機充填材とを含む。
本発明に係る多層プリント配線板の製造方法では、上記樹脂フィルムは、示差走査熱量計での測定において、130℃以上200℃以下に発熱ピークトップ温度を有する。
本発明に係る多層プリント配線板の製造方法では、上記130℃以上200℃以下に発熱ピークトップ温度を有する発熱ピークのうち、最大ピーク高さを有する発熱ピークのピーク温度をT℃とする。本発明に係る多層プリント配線板の製造方法では、1層目〜6層目の上記絶縁−配線回路複合層を形成する工程のそれぞれにおいて、上記樹脂フィルムを本硬化させるための加熱温度が、(T+30)℃以上(T+80)℃以下である。
本発明に係る多層プリント配線板の製造方法では、得られる多層プリント配線板における1層目の配線回路層の伝送損失の絶対値をIL1とし、得られる多層プリント配線板における5層目の配線回路層の伝送損失の絶対値をIL5としたときに、IL1のIL5に対する比を、0.96以上1.05以下にする。
本発明に係る多層プリント配線板の製造方法では、上記の構成が備えられているので、伝送性能に優れる多層プリント配線板を得ることができる。
本発明に係る多層プリント配線板の製造方法では、上記1層目の配線回路層及び上記5層目の配線回路層は、金属層であることが好ましく、信号層であることが好ましい。
本発明に係る多層プリント配線板の製造方法では、上記2層目の配線回路層、上記3層目の配線回路層、上記4層目の配線回路層及び上記6層目の配線回路層はそれぞれ、金属層であることが好ましく、電源層又はグランド層であることが好ましい。
従って、本発明に係る多層プリント配線板の製造方法では、2つの信号層における伝送損失の比が上述した範囲であることが好ましい。
本発明に係る多層プリント配線板の製造方法では、上記の構成が備えられているので、配線回路層(例えば信号層)の位置に関係なく、伝送性能に優れる多層プリント配線板を得ることができる。
本発明に係る樹脂フィルムは、熱硬化性化合物と、無機充填材とを含み、示差走査熱量計での測定において、130℃以上200℃以下に発熱ピークトップ温度を有する。本発明に係る樹脂フィルムでは、上記130℃以上200℃以下に発熱ピークトップ温度を有する発熱ピークのうち、最大ピーク高さを有する発熱ピークのピーク温度をT℃とする。本発明に係る樹脂フィルムでは、(T+50)℃で1.5時間硬化させた樹脂フィルムの硬化物の周波数10GHzでの誘電正接をDf1.5hとし、(T+50)℃で7.5時間硬化させた樹脂フィルムの硬化物の周波数10GHzでの誘電正接をDf7.5hとする。本発明に係る樹脂フィルムでは、Df7.5hのDf1.5hに対する比が、0.9以上1.15以下である。
本発明に係る樹脂フィルムでは、上記の構成が備えられているので、伝送性能に優れる多層プリント配線板を得ることができる。
本発明に係る樹脂フィルムでは、上記の構成が備えられているので、配線回路層(例えば信号層)の位置に関係なく、伝送性能に優れる多層プリント配線板を得ることができる。
本発明に係る樹脂フィルムは、多層プリント配線板において、6層以上の絶縁層を形成するために用いられることが好ましい。本発明に係る樹脂フィルムは、多層プリント配線板において、5層以下の絶縁層を形成するために用いることもできる。本発明に係る樹脂フィルムを5層以下の絶縁層を形成するために用いたとしても、伝送性能を高めることができる。
本発明に係る多層プリント配線板は、回路基板と、樹脂フィルムにより形成された絶縁層と、配線回路層とを備え、上記回路基板上にて、上記絶縁層と上記配線回路層とが交互に積層された構造を有する。本発明に係る多層プリント配線板は、以下の1層目〜6層目の絶縁−配線回路複合層を少なくとも有する。上記回路基板上にて、1層目の絶縁層及び1層目の配線回路層により構成される1層目の絶縁−配線回路複合層。2層目の絶縁層及び2層目の配線回路層により構成される2層目の絶縁−配線回路複合層。3層目の絶縁層及び3層目の配線回路層により構成される3層目の絶縁−配線回路複合層。4層目の絶縁層及び4層目の配線回路層により構成される4層目の絶縁−配線回路複合層。5層目の絶縁層及び5層目の配線回路層により構成される5層目の絶縁−配線回路複合層。6層目の絶縁層及び6層目の配線回路層により構成される6層目の絶縁−配線回路複合層。
本発明に係る多層プリント配線板では、上記樹脂フィルムは、熱硬化性化合物と、無機充填材とを含み、上記樹脂フィルムは、示差走査熱量計での測定において、130℃以上200℃以下に発熱ピークトップ温度を有する。
本発明に係る多層プリント配線板では、1層目の配線回路層の伝送損失の絶対値をIL1とし、5層目の配線回路層の伝送損失の絶対値をIL5としたときに、IL1のIL5に対する比が、0.96以上1.05以下である。
本発明に係る多層プリント配線板では、上記の構成が備えられているので、伝送性能に優れる。
本発明に係る多層プリント配線板では、上記1層目の配線回路層及び上記5層目の配線回路層は、金属層であることが好ましく、信号層であることが好ましい。
本発明に係る多層プリント配線板では、上記2層目の配線回路層、上記3層目の配線回路層、上記4層目の配線回路層及び上記6層目の配線回路層はそれぞれ、金属層であることが好ましく、電源層又はグランド層であることが好ましい。
従って、本発明に係る多層プリント配線板では、2つの信号層における伝送損失の比が上述した範囲であることが好ましい。
本発明に係る多層プリント配線板では、上記の構成が備えられているので、配線回路層(例えば信号層)の位置に関係なく、伝送性能に優れる。
本発明者は、樹脂フィルムの硬化物(絶縁層)の加熱に伴う誘電率の変化及び誘電正接の変化と多層プリント配線板の伝送損失とが相関していることを見出した。本発明者は、特定の発熱ピークトップ温度を有しかつ特定の温度範囲で樹脂フィルムを硬化させれば、樹脂フィルムの硬化物(絶縁層)の加熱に伴う誘電率の変化及び誘電正接の変化を小さくすることができることを見出した。本発明者は、樹脂フィルムの硬化物(絶縁層)の加熱に伴う誘電率の変化及び誘電正接の変化を小さくすることができれば、多層プリント配線板の伝送性能を高めることができることを見出した。
従来の多層プリント配線板及び従来の多層プリント配線板の製造方法で得られる多層プリント配線板では、初期に積層されて形成された絶縁層と、後期に積層されて形成された絶縁層との双方で、電気特性を良好にすることは困難であり、その結果、多層プリント配線板の伝送性能が低下することがある。これに対して、本発明に係る多層プリント配線板及び本発明に係る多層プリント配線板の製造方法で得られる多層プリント配線板では、特定の樹脂フィルムを用いているため、絶縁層の電気特性が変化し難く、伝送性能に優れる。
上記樹脂フィルムの示差走査熱量計での測定において、発熱ピークは、具体的には、以下のようにして測定される。
示差走査熱量測定装置(例えば、TA・インスツルメント社製「Q2000」)を用意する。専用アルミパンに樹脂フィルム8mgを取り、専用治具を用いて蓋をする。この専用アルミパンと空のアルミパン(リファレンス)とを加熱ユニット内に設置し、昇温速度3℃/分で−30℃から250℃まで窒素雰囲気下で加熱を行い、リバースヒートフロー及びノンリバースヒートフローの観測を行う。ノンリバースヒートフローにおいて観測される発熱ピークを樹脂フィルムの発熱ピークとする。
上記樹脂フィルムは、示差走査熱量計での測定において、130℃以上200℃以下に発熱ピークトップ温度を有する。上記発熱ピークトップ温度が130℃未満であると、樹脂フィルムの貯蔵安定性が悪化することがある。上記発熱ピークトップ温度が200℃を越えると、乾燥炉の温度のばらつきが大きくなることがあり、多層プリント配線板の製造が困難になることがある。
樹脂フィルムの硬化反応をより一層良好にする観点からは、上記発熱ピークトップ温度は、好ましくは140℃以上、好ましくは170℃以下である。
上記130℃以上200℃以下に発熱ピークトップ温度を有する発熱ピークのうち、最大ピーク高さを有する発熱ピークのピーク温度をT℃とする。上記樹脂フィルムは、示差走査熱量計の測定において、130℃以上200℃以下に少なくとも1つの発熱ピークトップ温度を有する。上記130℃以上200℃以下に発熱ピークトップ温度を有する発熱ピークが1つである場合には、上記最大ピーク高さを有する発熱ピークのピーク温度Tは、該発熱ピークのピーク温度である。上記130℃以上200℃以下に発熱ピークトップ温度を有する発熱ピークが複数である場合には、上記最大ピーク高さを有する発熱ピークのピーク温度Tは、該発熱ピークのうち、最大ピーク高さを有する発熱ピークのピーク温度である。
したがって、上記最大ピーク高さを有する発熱ピークのピーク温度Tは、130℃以上200℃以下である。上記ピーク温度Tが130℃未満であると、保管時において硬化が進行しやすく、樹脂フィルムの可使時間が短くなることがある。
上記ピーク温度Tは、好ましくは140℃以上、好ましくは170℃以下である。上記ピーク温度Tが170℃以下であると、170℃を超える場合と比べて、製造工程での樹脂フィルムの硬化のばらつき及び硬化残りを抑えることができる。
また、セミアディティブ工程(SAP工程)における粗化処理後の樹脂フィルム(半硬化物)の表面の表面粗さは、200nm以下であることが好ましい。粗化処理後の樹脂フィルム(半硬化物)の表面の表面粗さの制御には、粗化処理後の樹脂フィルム(半硬化物)の硬化度が大きく影響する。粗化処理前の半硬化物の硬化度の制御、及び粗化処理後のファイナルキュアにおいて十分に硬化させる観点から、上記ピーク温度Tは上述した温度範囲であること好ましい。
本発明に係る樹脂フィルムの硬化物、本発明に係る多層プリント配線板の製造方法で得られる多層プリント配線板及び本発明に係る多層プリント配線板の絶縁層の周波数10GHzでの誘電正接は、空洞共振法で、23℃にて測定される。
なお、本発明に係る多層プリント配線板の製造方法で得られる多層プリント配線板及び本発明に係る多層プリント配線板の絶縁層の周波数10GHzでの誘電正接は、該多層プリント配線板に用いられた樹脂フィルムと同じ樹脂フィルムを硬化させて、硬化させた樹脂フィルム(絶縁層)について求めてもよい。
本発明に係る多層プリント配線板の製造方法で得られる多層プリント配線板及び本発明に係る多層プリント配線板では、1層目の絶縁層の周波数10GHzでの誘電正接をDf1とし、5層目の絶縁層の周波数10GHzでの誘電正接をDf5とする。また、10層以上の絶縁−配線回路複合層が形成されている場合に、10層目の絶縁層の周波数10GHzでの誘電正接をDf10とする。なお、1層目の絶縁層、5層目の絶縁層、10層目の絶縁層はそれぞれ、本硬化後の絶縁層であることが好ましい。なお、上記本硬化後の絶縁層は、本硬化前に予備硬化されていてもよい。上記本硬化後の絶縁層は、予備硬化後に本硬化された絶縁層であることが好ましい。
本発明に係る多層プリント配線板の製造方法及び多層プリント配線板に用いられる絶縁層では、上記Df1の上記Df5に対する比(Df1/Df5)が、0.9以上1.15以下であることが好ましい。上記比(Df1/Df5)が0.9未満であると、硬化後の加熱で樹脂成分が過度に揮発していることがあり、その結果、樹脂フィルム及び絶縁層の柔軟性が低下し、樹脂フィルム及び絶縁層の割れ又は欠けが生じることがある。また、上記比(Df1/Df5)が0.9未満であると、上層に積層されていくことにより、内部にガスがたまり、ブリスターが生じることがある。上記比(Df1/Df5)が1.15を超えると、伝送性能が劣ることがある。
本発明に係る多層プリント配線板の製造方法及び多層プリント配線板に用いられる絶縁層では、上記Df1の上記Df5に対する比(Df1/Df5)は、より好ましくは0.95以上、更に好ましくは0.99以上、特に好ましくは1.0以上、より好ましくは1.14以下、更に好ましくは1.13以下である。上記比(Df1/Df5)が上記下限以上及び上記上限以下であると、伝送性能をより一層高めることができる。
本発明に係る多層プリント配線板の製造方法及び多層プリント配線板に用いられる絶縁層では、上記Df1の上記Df10に対する比(Df1/Df10)は、好ましくは0.95以上、より好ましくは0.99以上、更に好ましくは1.0以上、好ましくは1.25以下、より好ましくは1.2以下である。上記比(Df1/Df10)が上記下限以上及び上記上限以下であると、伝送性能を更により一層高めることができる。
伝送性能をより一層高める観点からは、上記Df1は、好ましくは0.008以下、より好ましくは0.005以下である。
なお、1層目、5層目及び10層目の絶縁層の誘電正接(上記Df1、上記Df5及び上記Df10)を、多層プリント配線板に備えられた絶縁層を用いて測定することは困難である。そのため、上記Df1、上記Df5及び上記Df10は、以下のようにして測定される。
多層プリント配線板を製造する際に用いられた樹脂フィルムと同じ組成を有する樹脂フィルムを用意する。多層プリント配線板の製造工程において、1層目の絶縁層が加熱された温度及び時間と同等の加熱温度及び加熱時間で上記樹脂フィルムを硬化させて、得られた硬化物(絶縁層)の誘電正接を測定し、Df1とする。多層プリント配線板の製造工程において、5層目の絶縁層が加熱された温度及び時間と同等の加熱温度及び加熱時間で上記樹脂フィルムを硬化させて、得られた硬化物(絶縁層)の誘電正接を測定し、Df5とする。多層プリント配線板の製造工程において、10層目の絶縁層が加熱された温度及び時間と同等の加熱温度及び加熱時間で上記樹脂フィルムを硬化させて、得られた硬化物(絶縁層)の誘電正接を測定し、Df10とする。なお、多層プリント配線板の製造工程においては、1層目の絶縁層>5層目の絶縁層>10層目の絶縁層の順で長い時間加熱される。
本発明に係る樹脂フィルムでは、(T+50)℃で1.5時間硬化させた樹脂フィルムの硬化物の周波数10GHzでの誘電正接をDf1.5hとする。本発明に係る樹脂フィルムでは、(T+50)℃で7.5時間硬化させた樹脂フィルムの硬化物の周波数10GHzでの誘電正接をDf7.5hとする。本発明に係る樹脂フィルムでは、(T+50)℃で15時間硬化させた樹脂フィルムの硬化物の周波数10GHzでの誘電正接をDf15hとする。
本発明に係る樹脂フィルムでは、上記Df7.5hの上記Df1.5hに対する比(Df7.5h/Df1.5h)が、0.9以上1.15以下である。上記比(Df7.5h/Df1.5h)が、0.9未満であると、硬化後の加熱で樹脂成分の揮発が過度に生じていることがあり、その結果、樹脂フィルム及び絶縁層の柔軟性が低下し、樹脂フィルム及び絶縁層の割れ又は欠けが生じることがある。また、上記比(Df7.5h/Df1.5h)が、0.9未満であると、上層に積層されていくことにより、内部にガスがたまり、ブリスターが生じることがある。上記比(Df7.5h/Df1.5h)が1.15を超えると、伝送性能が劣ることがある。
本発明に係る樹脂フィルムでは、上記Df7.5hの上記Df1.5hに対する比(Df7.5h/Df1.5h)は、好ましくは0.95以上、より好ましくは0.99以上、更に好ましくは1.0以上、好ましくは1.14以下、より好ましくは1.13以下である。上記比(Df7.5h/Df1.5h)が上記下限以上及び上記上限以下であると、伝送性能をより一層高めることができる。
本発明に係る樹脂フィルムでは、上記Df15hの上記Df1.5hに対する比(Df15h/Df1.5h)は、好ましくは0.9以上、より好ましくは0.95以上、更に好ましくは0.99以上、特に好ましくは1.0以上、好ましくは1.25以下、より好ましくは1.2以下である。上記比(Df15h/Df1.5h)が上記下限以上及び上記上限以下であると、伝送性能を更により一層高めることができる。
伝送性能をより一層高める観点からは、上記Df7.5hは、好ましくは0.008以下、より好ましくは0.005以下である。
本発明に係る樹脂フィルムでは、(T+30)℃以上(T+80)℃以下で1.5時間硬化させた樹脂フィルムの硬化物の周波数10GHzでの誘電正接をDf’1.5hとする。本発明に係る樹脂フィルムでは、(T+30)℃以上(T+80)℃以下で7.5時間硬化させた樹脂フィルムの硬化物の周波数10GHzでの誘電正接をDf’7.5hとする。本発明に係る樹脂フィルムでは、(T+30)℃以上(T+80)℃以下で15時間硬化させた樹脂フィルムの硬化物の周波数10GHzでの誘電正接をDf’15hとする。
本発明に係る樹脂フィルムでは、上記Df’7.5hの上記Df’1.5hに対する比(Df’7.5h/Df’1.5h)は、好ましくは1.01以上、より好ましくは1.02以上、更に好ましくは1.03以上、好ましくは1.15以下、より好ましくは1.14以下、更に好ましくは1.13以下である。上記比(Df’7.5h/Df’1.5h)が上記下限以上及び上記上限以下であると、伝送性能をより一層高めることができる。
上記Df’7.5hの上記Df’1.5hに対する比(Df’7.5h/Df’1.5h)が上記下限以上及び上記上限以下であるとは、(T+30)℃以上(T+80)℃以下のうちの半分以上の温度領域において、上記比が上記下限以上及び上記上限以下を満足することを意味する。(T+30)℃以上(T+80)℃以下の全体の温度領域において、上記比が上記下限以上及び上記上限以下を満足することが特に好ましい。
本発明に係る多層プリント配線板の製造方法で得られる多層プリント配線板、及び本発明に係る多層プリント配線板の配線回路層の伝送損失は、ネットワーク・アナライザを用いて、周波数100MHzから40GHzの範囲で測定される。本発明に係る多層プリント配線板の製造方法で得られる多層プリント配線板、及び本発明に係る多層プリント配線板の配線回路層の伝送損失は、少なくとも38GHzにおいて以下の比等を満足することが好ましい。なお、伝送損失が測定される配線回路層(例えば信号層)では、該配線回路層における伝送損失のみが測定できるように、該配線回路層は引き出し電極を備えることが好ましい。
本発明に係る多層プリント配線板の製造方法で得られる多層プリント配線板及び本発明に係る多層プリント配線板では、1層目の配線回路層の伝送損失の絶対値をIL1とし、5層目の配線回路層の伝送損失の絶対値をIL5とする。また、10層以上の絶縁−配線回路複合層が形成されている場合に、10層目の絶縁層の配線回路層(10層目の配線回路層は信号層であることが好ましい)の伝送損失の絶対値をIL10とする。
本発明に係る多層プリント配線板の製造方法及び多層プリント配線板では、上記IL1の上記IL5に対する比(IL1/IL5)が、0.96以上1.05以下である。上記比(IL1/IL5)が0.96未満であると、硬化後の加熱で樹脂成分の揮発が過度に生じていることがあり、その結果、樹脂フィルム及び絶縁層の柔軟性が低下し、樹脂フィルム及び絶縁層の割れ又は欠けが生じることがある。また、上記比(IL1/IL5)が0.96未満であると、上層に積層されていくことにより、内部にガスがたまり、ブリスターが生じることがある。上記比(IL1/IL5)が1.05を超えると、多層プリント配線板の伝送性能が劣ることがある。
本発明に係る多層プリント配線板の製造方法及び多層プリント配線板では、上記IL1の上記IL5に対する比(IL1/IL5)は、好ましくは1.03以下、より好ましくは1.01以下である。上記比(IL1/IL5)が上記上限以下であると、多層プリント配線板の伝送性能をより一層高めることができる。
本発明に係る多層プリント配線板の製造方法及び多層プリント配線板では、上記IL1の上記IL10に対する比(IL1/IL10)は、好ましくは1.03以下、より好ましくは1.01以下である。上記比(IL1/IL10)が上記上限以下であると、多層プリント配線板の伝送性能を更により一層高めることができる。
伝送性能をより一層高める観点からは、上記IL1は、好ましくは0.2dB/mm以下、より好ましくは0.15dB/mm以下である。なお、伝送損失の測定結果は負の値であるが、上述したようにIL1は1層目の配線回路層の伝送損失の絶対値であるため、0以上の数で表される。
本発明に係る樹脂フィルムは、本発明に係る多層プリント配線板の製造方法及び多層プリント配線板に用いられる樹脂フィルムとして、好適に用いられる。
上記樹脂フィルムは、Bステージフィルムであることが好ましい。
(多層プリント配線板、及び、多層プリント配線板の製造方法)
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態及び実施例を説明することにより、本発明を明らかにする。
図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂フィルムを用いた多層プリント配線板を模式的に示す断面図である。
多層プリント配線板1は、基板11と、配線回路層12とを備える。多層プリント配線板1は、1層目の絶縁層13と、1層目の配線回路層14と、2層目の絶縁層15と、2層目の配線回路層16と、3層目の絶縁層17と、3層目の配線回路層18と、4層目の絶縁層19と、4層目の配線回路層20と、5層目の絶縁層21と、5層目の配線回路層22と、6層目の絶縁層23と、6層目の配線回路層24とを備える。多層プリント配線板1は、ソルダーレジスト膜31を備える。基板11と配線回路層12とで、回路基板が構成されている。1層目の絶縁層13と1層目の配線回路層14とで、1層目の絶縁−配線回路複合層が構成されている。2層目の絶縁層15と2層目の配線回路層16とで、2層目の絶縁−配線回路複合層が構成されている。3層目の絶縁層17と3層目の配線回路層18とで、3層目の絶縁−配線回路複合層が構成されている。4層目の絶縁層19と4層目の配線回路層20とで、4層目の絶縁−配線回路複合層が構成されている。5層目の絶縁層21と5層目の配線回路層22とで、5層目の絶縁−配線回路複合層が構成されている。6層目の絶縁層23と6層目の配線回路層24とで、6層目の絶縁−配線回路複合層が構成されている。
基板11は、穴11aを有する。穴11aはスルーホールである。基板11は、絶縁基板である。
配線回路層12,14,16,18,20,22,24は、金属層である。配線回路層12は、電源層である。配線回路層14,24は、信号層である。配線回路層16,18,20,22は、電源層又はグランド層である。
ソルダーレジスト膜31は、最表層を構成している。
配線回路層12は、基板11の表面上に配置されている。また、配線回路層12は、基板11の両側の表面上に部分的に配置されている。配線回路層12は、基板11の穴11a内にも配置されている。穴11a内に配置された配線回路層12部分により、両側(下側は図示せず)の表面上に位置する配線回路層12部分が導通されている。基板11の穴11aは、ビアホールとも呼ばれる。
配線回路層12の表面上に、絶縁層13が積層されている。絶縁層13は、配線回路層12の表面が部分的に露出するように開口している穴を有する。穴はビアホールとも呼ばれる。
絶縁層13の表面上に、配線回路層14が配置されている。絶縁層13と配線回路層14とにより、1層目の絶縁−配線回路複合層が構成されている。配線回路層14は、絶縁層13の配線回路層12側とは反対の表面上に、部分的に配置されている。配線回路層14は、絶縁層13の穴内にも配置されている。穴内に配置された配線回路層14部分により、配線回路層12の表面と配線回路層14の表面とが接続されている。配線回路層12と配線回路層14とは導通されている。
配線回路層14の表面上に、絶縁層15が積層されている。絶縁層15は、配線回路層14の表面が部分的に露出するように開口している穴を有する。
絶縁層15の表面上に、配線回路層16が配置されている。絶縁層15と配線回路層16とにより、2層目の絶縁−配線回路複合層が構成されている。配線回路層16は、絶縁層15の配線回路層14側とは反対の表面上に、部分的に配置されている。配線回路層16は、絶縁層15の穴内にも配置されている。穴内に配置された配線回路層16部分により、配線回路層14の表面と配線回路層16の表面とが接続されている。配線回路層14と配線回路層16とは導通されている。
配線回路層16の表面上に、絶縁層17が積層されている。絶縁層17は、配線回路層16の表面が部分的に露出するように開口している穴を有する。
絶縁層17の表面上に、配線回路層18が配置されている。絶縁層17と配線回路層18とにより、3層目の絶縁−配線回路複合層が構成されている。配線回路層18は、絶縁層17の配線回路層16側とは反対の表面上に、部分的に配置されている。配線回路層18は、絶縁層17の穴内にも配置されている。穴内に配置された配線回路層18部分により、配線回路層16の表面と配線回路層18の表面とが接続されている。配線回路層16と配線回路層18とは導通されている。
同様にして、4〜6層目の絶縁−配線回路複合層が形成されている。
なお、多層プリント配線板1では、1〜6層目の絶縁−配線回路複合層が形成されているが、7層目以降の絶縁−配線回路複合層が更に形成されてもよい。
また、回路基板自体が、絶縁層と配線回路層との絶縁−配線回路複合層を有していてもよい。特定の樹脂フィルムを用いて絶縁層を形成する前の回路基板は、絶縁層と配線回路層との絶縁−配線回路複合層を有する回路基板であってもよい。上記樹脂フィルムにより形成する1層目の絶縁−配線回路複合層は、回路基板における絶縁−配線回路複合層に接するように形成されてもよい。本発明では、特定の樹脂フィルムを用いて、1層目の絶縁−配線回路複合層を形成することができる。特定の樹脂フィルムを用いて、最初に形成する絶縁−配線回路複合層を、1層目の絶縁−配線回路複合層とする。
また、プリント配線板では、基板11の両側にそれぞれ、絶縁−配線回路複合層を形成してもよい。
次に、図2(a)〜(d)、図3(a)〜(c)及び図4(a)〜(f)を参照しつつ、図1に示す多層プリント配線板1を得る方法を具体的に説明する。
先ず、基板11の表面上に、配線回路層12が配置されている回路基板を用意する(図2(a))。
上記回路基板の配線回路層12の表面上に、樹脂フィルムを積層した後、加熱により硬化を進行させて、絶縁層13Aを形成する(図2(b))。
次に、絶縁層13Aにレーザー等を照射して、穴を有する絶縁層13Bを得る(図2(c))。上記レーザーとしては、UVレーザー、炭酸ガスレーザー及びエキシマレーザー等が挙げられる。
次に、絶縁層13Bの穴内をデスミア処理して、穴内がデスミア処理された絶縁層13を得る(図2(d))。デスミア処理によって、穴内が洗浄され、上記スミアが除去される。デスミア処理を行う際に、絶縁層13Bの表面の粗度を高めるために、絶縁層13Bの表面を粗化処理することが好ましい。絶縁層13の表面が粗化処理されていることが好ましい。絶縁層13Bの表面の粗面化と、穴内の洗浄とが行われることが好ましい。
上記デスミア処理と、絶縁層の表面の粗度を高めるための上記粗化処理とに同じ処理液を用いることが好ましく、上記デスミア処理と絶縁層の表面の粗度を高めるための上記粗化処理とは同時に行われることが好ましい。
また、デスミア処理の後に、穴の開口から露出している配線回路層12の表面(ランド部、粗化処理される表面)を粗化処理してもよい。それによって、表面が粗化処理された配線回路層12を得ることができる。穴内を洗浄するためのデスミア処理と、配線回路層12の表面を粗化処理するための粗化処理とは、別の工程として行われていてもよい。デスミア処理後の粗化処理によって、配線回路層12の粗化処理された表面の粗度が大きくなる。この結果、配線回路層12の表面と配線回路層14の表面との接触界面の接触面積が大きくなる。従って、熱衝撃に対する配線回路層12と配線回路層14との間の導通信頼性が高くなる。例えば、得られる多層プリント配線板1において、配線回路層12と配線回路層14との接触界面において、クラックが生じ難くなる。
次に、絶縁層13の表面を無電解めっき処理することが好ましい。それによって、絶縁層13の表面に導電性を付与し、絶縁層13の表面上に電解めっきなどによって配線回路層14を形成することが容易になる。
次に、絶縁層13の表面上に、ドライフィルムレジストをラミネートして、レジストパターン51を形成する(図3(a))。但し、レジストパターン51は必ずしも形成しなくてもよい。レジストパターン51の形成によって、レジストパターン51により覆われていない部分に、電気めっきなどを行うことで、絶縁層13の表面上に、選択的に導体層(配線回路層)を形成できる。
次に、電気めっき等を行うことで、絶縁層13の表面上と絶縁層13の穴内とに配線回路層14を形成する(図3(b))。デスミア処理後に粗化処理された配線回路層12の表面と、配線回路層14の表面とを接続することで、配線回路層12と配線回路層14とを導通させる。
次に、レジストパターン51を、水酸化ナトリウム等を含むアルカリ水溶液等で剥離して、除去する(図3(c))。次いで、配線回路層14形成時に形成した無電解銅めっき層を酸性エッチング液(例えば、JCU社製「SACプロセス」)にて除去する。このようにして、1層目の絶縁層13と1層目の配線回路層14とから構成される1層目の絶縁−配線回路複合層を形成する。なお、1層目の絶縁−配線回路複合層を形成する際に、樹脂フィルムを本硬化させるために、樹脂フィルムは(T+30)℃以上(T+80)℃以下の加熱温度で加熱される。樹脂フィルムの本硬化は、絶縁層13Aの形成時に行われてもよく、絶縁層13上に配線回路層14を形成した後に行われてもよい。
次に、1層目の絶縁−配線回路複合層の表面上に、樹脂フィルムを積層した後、加熱により硬化を進行させて、絶縁層15Aを形成する(図4(a))。
次に、絶縁層15Aにレーザー等を照射して、穴を有する絶縁層15Bを得る(図4(b))。
次に、絶縁層15Bの穴内をデスミア処理して、穴内がデスミア処理された絶縁層15を得る(図4(c))。デスミア処理によって、穴内が洗浄され、上記スミアが除去される。デスミア処理を行う際に、絶縁層15Bの表面の粗度を高めるために、絶縁層15Bの表面を粗化処理することが好ましい。
上記デスミア処理と、絶縁層の表面の粗度を高めるための上記粗化処理とに同じ処理液を用いることが好ましく、上記デスミア処理と絶縁層の表面の粗度を高めるための上記粗化処理とは同時に行われることが好ましい。
また、デスミア処理の後に、穴の開口から露出している配線回路層14の表面(ランド部、粗化処理される表面)を粗化処理してもよい。それによって、表面が粗化処理された配線回路層14を得ることができる。
次に、絶縁層15の表面を無電解めっき処理することが好ましい。それによって、絶縁層15の表面に導電性を付与し、絶縁層15の表面上に電解めっきなどによって配線回路層16を形成することが容易になる。
次に、絶縁層15の表面上に、ドライフィルムレジストをラミネートして、レジストパターン52を形成する(図4(d))。
次に、電気めっき等を行うことで、絶縁層15の表面上と絶縁層15の穴内とに配線回路層16を形成する(図4(e))。デスミア処理後に粗化処理された配線回路層14の表面と、配線回路層16の表面とを接続することで、配線回路層14と配線回路層16とを導通させる。
次に、レジストパターン52を、水酸化ナトリウム等を含むアルカリ水溶液等で剥離して、除去する(図4(f))。このようにして、2層目の絶縁層15と2層目の配線回路層16とから構成される2層目の絶縁−配線回路複合層を形成する。なお、2層目の絶縁−配線回路複合層を形成する際に、樹脂フィルムを本硬化させるために、樹脂フィルムは(T+30)℃以上(T+80)℃以下の加熱温度で加熱される。樹脂フィルムの本硬化は、絶縁層15Aの形成時に行われてもよく、絶縁層15上に配線回路層16を形成した後に行われてもよい。
上記の工程を繰り返して、3層目以降の絶縁−配線回路複合層を形成する。このようにして、多層プリント配線板1を得ることができる。この多層プリント配線板1の製造方法において、2層目の絶縁層を形成する際には、1層目の絶縁層が、2層目の絶縁層を形成するための硬化環境に晒される。3層目の絶縁層を形成する際には、1層目の絶縁層及び2層目の絶縁層のそれぞれが、3層目の絶縁層を形成するための硬化環境に晒される。4層目の絶縁層を形成する際には、1層目の絶縁層、2層目の絶縁層及び3層目の絶縁層のそれぞれが、4層目の絶縁層を形成するための硬化環境に晒される。5層目の絶縁層を形成する際には、1層目の絶縁層、2層目の絶縁層、3層目の絶縁層及び4層目の絶縁層のそれぞれが、5層目の絶縁層を形成するための硬化環境に晒される。6層目の絶縁層を形成する際には、1層目の絶縁層、2層目の絶縁層、3層目の絶縁層、4層目の絶縁層及び5層目の絶縁層のそれぞれが、6層目の絶縁層を形成するための硬化環境に晒される。1層目の絶縁層は、形成する絶縁層の層数の回数で、硬化環境に晒される。2層目の絶縁層は、形成する絶縁層の層数−1の回数で、硬化環境に晒される。3層目の絶縁層は、形成する絶縁層の層数−2の回数で、硬化環境に晒される。4層目の絶縁層は、形成する絶縁層の層数−3の回数で、硬化環境に晒される。5層目の絶縁層は、形成する絶縁層の層数−4の回数で、硬化環境に晒される。6層目の絶縁層は、形成する絶縁層の層数−5の回数で、硬化環境に晒される。n層目の絶縁層は、形成する絶縁層の層数−(n−1)の回数で、硬化環境に晒される。IL1のIL5に対する比を、0.96以上1.05以下とすることで、伝送性能に優れる多層プリント配線板1を得ることができる。
上記したプリント配線板の製造方法のように、本発明に係る多層プリント配線板の製造方法は、回路基板上に、樹脂フィルムを用いて1層目の絶縁層を形成し、かつ該1層目の絶縁層上に1層目の配線回路層を形成して、1層目の絶縁−配線回路複合層を形成する工程を備える。
上記1層目の絶縁層を形成するための上記樹脂フィルムは、回路基板の表面に配置された配線(回路)上に積層される。該樹脂フィルムは、回路基板上の配線回路層(金属層)部分及び該配線回路層(金属層)が形成されていない部分と接する。
本発明に係る多層プリント配線板の製造方法は、1層目の絶縁−配線回路複合層上に、樹脂フィルムを用いて2層目の絶縁層を形成し、かつ該2層目の絶縁層上に2層目の配線回路層を形成して、2層目の絶縁−配線回路複合層を形成する工程を備える。
本発明に係る多層プリント配線板の製造方法は、2層目の絶縁−配線回路複合層上に、樹脂フィルムを用いて3層目の絶縁層を形成し、かつ該3層目の絶縁層上に3層目の配線回路層を形成して、3層目の絶縁−配線回路複合層を形成する工程を備える。
本発明に係る多層プリント配線板の製造方法は、3層目の絶縁−配線回路複合層上に、樹脂フィルムを用いて4層目の絶縁層を形成し、かつ該4層目の絶縁層上に4層目の配線回路層を形成して、4層目の絶縁−配線回路複合層を形成する工程を備える。
本発明に係る多層プリント配線板の製造方法は、4層目の絶縁−配線回路複合層上に、樹脂フィルムを用いて5層目の絶縁層を形成し、かつ該5層目の絶縁層上に5層目の配線回路層を形成して、5層目の絶縁−配線回路複合層を形成する工程を備える。
本発明に係る多層プリント配線板の製造方法は、5層目の絶縁−配線回路複合層上に、樹脂フィルムを用いて6層目の絶縁層を形成し、かつ該6層目の絶縁層上に6層目の配線回路層を形成して、6層目の絶縁−配線回路複合層を形成する工程を備える。
本発明では、多層プリント配線板の絶縁−配線回路複合層の積層数は、6層に限られない。上記絶縁−配線回路複合層の積層数は、6層であってもよく、6層以上であってもよく、7層以上であってもよい。
多層プリント配線板における絶縁−配線回路複合層の積層数が7層以上である場合において、n層目(nは、7以上の整数)の絶縁−配線回路複合層は、(n−1)層目の絶縁−配線回路複合層上に、樹脂フィルムを用いてn層目の絶縁層を形成し、かつ該n層目の絶縁層上にn層目の配線回路層を形成することで、形成することができる。
上記絶縁−配線回路複合層の層数(すなわちn)は、7以上であることが好ましい。すなわち、本発明に係る多層プリント配線板の製造方法では、絶縁−配線回路複合層上に、樹脂フィルムを用いて絶縁層を形成し、かつ該絶縁層上に配線回路層を形成する工程を繰り返すことにより、7層以上の絶縁−配線回路複合層を形成することが好ましい。
上記絶縁−配線回路複合層の層数(すなわちn)は、好ましくは7以上、より好ましくは8以上、好ましくは20以下、より好ましくは15以下である。上記絶縁−配線回路複合層の層数(すなわちn)が上記下限以上及び上記上限以下であると、伝送性能をより一層高めることができる。
本発明に係る多層プリント配線板の製造方法では、m層目(mは、1以上の整数)の絶縁層を形成した(絶縁層形成工程)後、かつ、該m層目の絶縁層上にm層目の配線回路層を形成する(配線回路層形成工程)前に、ビアホール形成工程、及びデスミア処理工程をこの順で備えることが好ましい。上記デスミア処理工程の前又は後に、膨潤処理工程が行われてもよく、粗化処理工程が行われてもよい。上記デスミア処理工程が、粗化処理工程を兼ねていてもよい。膨潤処理工程及び粗化処理工程は、ビアホール形成工程の前に行われてもよく、ビアホール形成工程の後に行われてもよい。以下、上記絶縁層形成工程、上記膨潤処理工程、上記粗化処理工程、上記ビアホール形成工程、上記デスミア処理工程、上記配線回路層形成工程、及び本硬化工程について、具体的に説明する。
<絶縁層形成工程>
上記絶縁層は、樹脂フィルムを硬化させて形成される。配線回路層が形成される際の絶縁層は、樹脂フィルムの硬化を進行させることにより得られる。上記硬化は予備硬化であってもよく、本硬化であってもよい。上記硬化には、更に硬化が可能な予備硬化も含まれる。絶縁層の劣化を抑える観点からは、上記硬化は、予備硬化であることが好ましい。上記絶縁層は、樹脂フィルムの予備硬化物層であってもよく、樹脂フィルムの硬化物層であってもよい。上記絶縁層は、樹脂フィルムの予備硬化物層であることが好ましい。なお、上記絶縁層形成工程にて、上記硬化が予備硬化である場合には、後述の本硬化工程が行われることが好ましい。
上記樹脂フィルムの硬化は、加熱によって行われる。
上記絶縁層形成工程にて、上記樹脂フィルムを予備硬化させる場合において、樹脂フィルムの加熱温度は、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上、好ましくは190℃以下、より好ましくは180℃以下である。上記加熱温度が上記下限以上及び上記上限以下であると、加熱に伴う溶剤や液状成分の急激な揮発を抑えることができる。
上記絶縁層形成工程にて、上記樹脂フィルムを予備硬化させる場合において、樹脂フィルムの加熱時間は、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上、好ましくは2時間以下、より好ましくは1.75時間以下である。上記加熱時間が上記下限以上及び上記上限以下であると、粗化処理工程でのエッチングされる樹脂量を制御することができ、表面粗さを小さくすることができるため、得られる多層プリント配線板の伝送性能を高めることができる。
上記絶縁層形成工程にて、上記樹脂フィルムを本硬化させる場合において、樹脂フィルムの加熱温度は、(T+30)℃以上(T+80)℃以下である。上記樹脂フィルムを本硬化させる場合における樹脂フィルムの加熱温度を上記の範囲とすることで、絶縁層の電気特性の低下を抑えることができ、得られる多層プリント配線板の伝送性能を高めることができる。
上記絶縁層形成工程にて、上記樹脂フィルムを本硬化させる場合において、樹脂フィルムの加熱温度は、好ましくは180℃以上、より好ましくは185℃以上、更に好ましくは190℃以上、好ましくは210℃以下、より好ましくは205℃以下、更に好ましくは200℃以下である。また、上記樹脂フィルムを本硬化させる場合において、樹脂フィルムの加熱温度は、好ましくは(T+40)℃以上、好ましくは(T+60)℃以下である。上記加熱温度が上記下限以上及び上記上限以下であると、絶縁層の電気特性の低下をより一層効果的に抑えることができ、得られる多層プリント配線板の伝送性能をより一層高めることができる。特に、本発明に係る樹脂フィルムは、190℃以上200℃以下で加熱することにより、樹脂フィルムを本硬化させて絶縁層を形成するために好適に用いられる。
上記絶縁層形成工程にて、上記樹脂フィルムを本硬化させる場合において、樹脂フィルムの加熱時間は、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上、好ましくは2時間以下、より好ましくは1.75時間以下である。上記加熱時間が上記下限以上及び上記上限以下であると、絶縁層の電気特性の低下を抑えることができ、得られる多層プリント配線板の伝送性能を高めることができる。
上記樹脂フィルムの硬化は、窒素環境下で行われてもよく、大気環境下で行われてもよい。
上記配線回路層は、めっき処理及びエッチング処理によって形成された配線回路であることが好ましい。上記配線回路層の形成方法は後述する。
<膨潤処理工程>
本発明に係る多層プリント配線板の製造方法は、上記絶縁層を膨潤処理する工程(膨潤処理工程)を備えることが好ましい。上記膨潤処理を行うことにより、膨潤処理された絶縁層を得ることができる。上記膨潤処理工程を行うことにより、後述する粗化処理工程における粗化処理の効率が高くなる。なお、上記粗化処理工程を行う場合であっても、上記膨潤処理工程は、必ずしも行われなくてもよい。上記膨潤処理工程では、従来公知の膨潤処理方法を採用することができる。
上記膨潤処理としては、エチレングリコール等を主成分とする化合物の水溶液又は有機溶媒分散溶液等の膨潤液により、絶縁層(樹脂フィルムの硬化物(予備硬化物))を処理する方法等が挙げられる。
上記膨潤液は、一般にpH調整剤などとして、アルカリを含む。上記膨潤液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。
上記膨潤処理は、具体的には、例えば、40重量%エチレングリコール水溶液等を含む膨潤液を用いて、温度30℃〜85℃で1分間〜30分間、絶縁層を処理することにより行なわれる。上記膨潤処理の温度は50℃以上85℃以下であることが好ましい。上記膨潤処理の温度が低すぎると、膨潤処理に長時間を要し、更に絶縁層と配線回路層との接着強度が低くなる傾向がある。
<粗化処理工程>
本発明に係る多層プリント配線板の製造方法は、上記絶縁層を粗化処理する工程(粗化処理工程)を備えることが好ましい。上記粗化処理を行うことにより、粗化処理された絶縁層を得ることができる。なお、上記膨潤処理工程が行われる場合には、膨潤処理された絶縁層に対して、上記粗化処理が行われる。上記粗化処理工程を行うことで、上記絶縁層(樹脂フィルムの硬化物(予備硬化物))の表面に小さい凹凸を形成することができる。上記粗化処理工程では、従来公知の粗化処理方法を採用することができる。
上記粗化処理としては、マンガン化合物、クロム化合物又は過硫酸化合物等の化学酸化剤等に水又は有機溶剤が添加された粗化液により、絶縁層(樹脂フィルムの硬化物(予備硬化物))を処理する方法等が挙げられる。
上記マンガン化合物としては、過マンガン酸カリウム及び過マンガン酸ナトリウム等が挙げられる。上記クロム化合物としては、重クロム酸カリウム及び無水クロム酸カリウム等が挙げられる。上記過硫酸化合物としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
上記粗化液は、一般にpH調整剤などとしてアルカリを含む。上記粗化液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。
上記粗化処理の温度は、40℃以上85℃以下であることが好ましい。上記粗化処理の時間は、5分間以上45分間以下であることが好ましい。
<ビアホール形成工程>
本発明に係る多層プリント配線板の製造方法は、上記絶縁層にビアホールを形成する工程(ビアホール形成工程)を備えることが好ましい。本発明に係る多層プリント配線板の製造方法が、上記膨潤処理工程及び上記粗化処理工程を備える場合には、上記粗化処理工程の後に行われることが好ましい。上記ビアホール形成工程及び配線回路層形成工程等を行うことにより、ビアホールが形成された絶縁層を得ることができ、また、層間を電気的に接続することができる。上記ビアホール形成工程では、従来公知のビアホール形成方法を採用することができる。
上記ビアホールは、レーザーを照射することにより形成されることが好ましい。
上記レーザーとしては、CO2レーザー等が挙げられる。
作業性の観点からは、上記レーザーはCO2レーザーであることが好ましい。
形成されるビアホールの直径は、特に限定されないが、好ましくは60μm以上、好ましくは80μm以下である。
<デスミア処理工程>
本発明に係る多層プリント配線板の製造方法は、上記ビアホール形成工程後にデスミア処理により、上記ビアホールの内部のスミアを除去する工程(デスミア処理工程)を備えることが好ましい。上記デスミア処理を行うことにより、デスミア処理された絶縁層を得ることができる。上記デスミア処理を行うことにより、上記ビアホール形成工程で形成された樹脂成分に由来する樹脂の残渣であるスミアを効果的に除去することができる。
上記デスミア処理としては、マンガン化合物、クロム化合物又は過硫酸化合物等の化学酸化剤等に水又は有機溶剤が添加されたデスミア処理液により、絶縁層(樹脂フィルムの硬化物(予備硬化物))を処理する方法等が挙げられる。
上記デスミア処理液は、一般にアルカリを含む。上記デスミア処理液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。
上記デスミア処理工程は、上記粗化処理工程を兼ねていてもよい。
上記デスミア処理の温度は、60℃以上100℃以下であることが好ましい。上記デスミア処理の時間は、5分間以上45分間以下であることが好ましい。
<配線回路層形成工程>
上記配線回路層の形成は、無電解めっき工程、電解めっき工程、及びエッチング工程により行われることが好ましい。上記無電解めっき工程により、上記ビアホール内をめっき加工でき、層間を電気的に接続することができる。上記電解めっき工程及び上記エッチング工程により、配線回路(配線回路層)を良好に形成することができる。
上記無電解めっき工程は、無電解銅めっき工程であることが好ましい。
上記無電解銅めっき工程は、従来公知の無電解銅めっき方法を採用することができる。
上記無電解銅めっき工程で用いられる化学銅液としては、アトテックジャパン社製「ベーシックプリントガントMSK−DK」、アトテックジャパン社製「カッパープリントガントMSK」、アトテックジャパン社製「スタビライザープリントガントMSK」、及びアトテックジャパン社製「リデューサーCu」の混合液等が挙げられる。
上記電解めっき工程は、電解銅めっき工程であることが好ましい。
上記電解銅めっき工程は、従来公知の電解銅めっき方法を採用することができる。
上記電解銅めっきの方法としては、パネルめっき法及びパターンめっき法等のサブトラクティブ法、並びにセミアディティブ法等が挙げられる。
上記電解銅めっき工程で用いられる硫酸銅水溶液としては、和光純薬工業社製「硫酸銅五水和物」、和光純薬工業社製「硫酸」、アトテックジャパン社製「ベーシックレベラーカパラシド HL」、及びアトテックジャパン社製「補正剤カパラシド GS」の混合液等が挙げられる。
上記エッチング工程は、従来公知のエッチング方法を採用することができる。
上記エッチング工程で用いられるエッチング液としては、150g/Lの過硫酸ナトリウムを含む酸性エッチング液等が挙げられる。
<本硬化工程>
本発明に係る多層プリント配線板の製造方法では、上記絶縁層形成工程にて、樹脂フィルムが予備硬化されている場合には、絶縁層上に配線回路層が形成された後、以下の本硬化工程を備える。なお、上記絶縁層形成工程にて、樹脂フィルムが本硬化されている場合には、以下の本硬化工程は備えなくてよい。
上記本硬化工程における絶縁層の硬化は、加熱によって行われる。
上記本硬化工程における加熱温度は、(T+30)℃以上(T+80)℃以下である。上記樹脂フィルムを本硬化させる場合における樹脂フィルムの加熱温度を上記の範囲とすることで、絶縁層の電気特性の低下を抑えることができ、得られる多層プリント配線板の伝送性能を高めることができる。
本硬化工程における加熱温度は、上記絶縁層形成工程にて上記樹脂フィルムを予備硬化させるための加熱温度よりも高い温度であることが好ましく、上記絶縁層形成工程にて上記樹脂フィルムを予備硬化させるための加熱温度よりも100℃未満で高い温度であることが好ましい。
上記本硬化工程における加熱温度は、好ましくは180℃以上、より好ましくは185℃以上、更に好ましくは190℃以上、好ましくは210℃以下、より好ましくは205℃以下、更に好ましくは200℃以下である。また、上記本硬化工程における加熱温度は、好ましくは(T+40)℃以上、好ましくは(T+60)℃以下である。上記加熱温度が上記下限以上及び上記上限以下であると、絶縁層の電気特性の低下を抑えることができ、得られる多層プリント配線板の伝送性能を高めることができる。特に、本発明に係る樹脂フィルムは、190℃以上200℃以下で加熱することにより、樹脂フィルムを本硬化させて絶縁層を形成するために好適に用いられる。
上記本硬化工程における加熱時間は、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上、好ましくは2時間以下、より好ましくは1.75時間以下である。上記加熱時間が上記下限以上及び上記上限以下であると、絶縁層の電気特性の低下を抑えることができ、得られる多層プリント配線板の伝送性能を高めることができる。
本発明に係る多層プリント配線板の製造方法では、例えば、上記絶縁層形成工程、上記膨潤処理工程、上記粗化処理工程、上記ビアホール形成工程、上記デスミア処理工程、上記配線回路層形成工程、及び本硬化工程を繰り返すことにより、多層プリント配線板を得ることができる。
なお、本発明に係る多層プリント配線板の製造方法では、最後の絶縁−配線回路複合層を形成する工程を行った後、上記本硬化工程と同様の条件にて、更に絶縁−配線回路複合層が加熱されていてもよい。
以下、本発明に係る多層プリント配線板の製造方法及び多層プリント配線板に用いられる樹脂フィルム及び本発明に係る樹脂フィルムの各成分の詳細、並びに本発明に係る樹脂フィルムの用途などを説明する。
[熱硬化性化合物]
上記樹脂フィルムは、熱硬化性化合物を含む。上記熱硬化性化合物としては、スチレン化合物、フェノキシ化合物、オキセタン化合物、エポキシ化合物、マレイミド化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、フェノール化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、ポリフェニレンエーテル化合物、ジビニルベンジルエーテル化合物、ポリアリレート化合物、ジアリルフタレート化合物、ベンゾオキサゾール化合物、アクリレート化合物及びシリコーン化合物等が挙げられる。上記熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
伝送性能を高める観点からは、上記熱硬化性化合物は、上記エポキシ化合物又は上記マレイミド化合物を含むこと好ましく、上記エポキシ化合物を含むことがより好ましい。
伝送性能を高める観点からは、上記マレイミド化合物は、アルキルマレイミド化合物であることが好ましい。
上記エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、ビフェノール型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、フルオレン型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、アントラセン型エポキシ化合物、アダマンタン骨格を有するエポキシ化合物、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ化合物、ナフチレンエーテル型エポキシ化合物、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ化合物等が挙げられる。
誘電正接をより一層低くし、かつ硬化物の熱線膨張係数(CTE)を良好にする観点からは、上記エポキシ化合物は、芳香族骨格を有するエポキシ化合物を含むことが好ましく、ナフタレン骨格又はフェニル骨格を有するエポキシ化合物を含むことが好ましく、芳香族骨格を有するエポキシ化合物であることがより好ましい。
誘電正接をより一層低くし、かつ硬化物の熱線膨張係数(CTE)を良好にする観点、樹脂フィルム及び絶縁層の柔軟性を高める観点からは、上記エポキシ化合物は、25℃で液状のエポキシ化合物と、25℃で固形のエポキシ化合物とを含むことが好ましい。
上記25℃で液状のエポキシ化合物の25℃での粘度は、1000mPa・s以下であることが好ましく、500mPa・s以下であることがより好ましい。
上記エポキシ化合物の粘度を測定する際には、例えば動的粘弾性測定装置(レオロジカ・インスツルメンツ社製「VAR−100」)等が用いられる。
上記エポキシ化合物の分子量は1000以下であることがより好ましい。この場合には、樹脂フィルム中の溶剤を除く成分100重量%、無機充填材の含有量が50重量%以上であっても、絶縁層の形成時に流動性が高い樹脂材料が得られる。このため、樹脂フィルムの未硬化物又はBステージ化物を回路基板上にラミネートした場合に、無機充填材を均一に存在させることができる。
上記エポキシ化合物の分子量は、上記エポキシ化合物が重合体ではない場合、及び上記エポキシ化合物の構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味する。また、上記エポキシ化合物が重合体である場合は、重量平均分子量を意味する。
硬化物と配線回路層との接着強度をより一層高める観点からは、樹脂フィルム中の溶剤を除く成分100重量%中、上記エポキシ化合物の含有量は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。
[無機充填材]
上記樹脂フィルムは、無機充填材を含む。上記無機充填材の使用により、硬化物の誘電正接がより一層低くなり、電気特性を高めることができる。また、上記無機充填材の使用により、硬化物の熱による寸法変化がより一層小さくなる。上記無機充填材は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記無機充填材としては、シリカ、タルク、クレイ、マイカ、ハイドロタルサイト、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、及び窒化ホウ素等が挙げられる。
硬化物の表面の表面粗さを小さくし、硬化物と配線回路層との接着強度をより一層高くし、かつ硬化物の表面により一層微細な配線を形成し、かつ硬化物により良好な絶縁信頼性を付与する観点からは、上記無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましく、シリカであることがより好ましく、溶融シリカであることが更に好ましい。シリカの使用により、硬化物の熱膨張率がより一層低くなり、また、硬化物の誘電正接がより一層低くなる。また、シリカの使用により、硬化物の表面の表面粗さが効果的に小さくなり、硬化物と配線回路層との接着強度が効果的に高くなる。シリカの形状は球状であることが好ましい。
硬化環境によらず、樹脂の硬化を進め、硬化物のガラス転移温度を効果的に高くし、硬化物の熱線膨張係数を効果的に小さくする観点からは、上記無機充填材は球状シリカであることが好ましい。
上記無機充填材の平均粒径は、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上、更に好ましくは500nm以上、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下、更に好ましくは1μm以下である。上記無機充填材の平均粒径が上記下限以上及び上記上限以下であると、粗化処理後の硬化物の表面の表面粗さを制御しやすく、絶縁層と配線回路層との密着性をより一層高めることができる。
上記無機充填材の平均粒径として、50%となるメディアン径(d50)の値が採用される。上記平均粒径は、レーザー回折散乱方式の粒度分布測定装置を用いて測定可能である。
上記無機充填材は、球状であることが好ましく、球状シリカであることがより好ましい。この場合には、硬化物の表面の表面粗さが効果的に小さくなり、更に硬化物と配線回路層との接着強度が効果的に高くなる。上記無機充填材が球状である場合には、上記無機充填材のアスペクト比は好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下である。
上記無機充填材は、表面処理されていることが好ましく、カップリング剤による表面処理物であることがより好ましく、シランカップリング剤による表面処理物であることが更に好ましい。上記無機充填材が表面処理されていることにより、粗化硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と配線回路層との接着強度がより一層高くなる。また、上記無機充填材が表面処理されていることにより、硬化物の表面により一層微細な配線を形成することができ、かつより一層良好な配線間絶縁信頼性及び層間絶縁信頼性を硬化物に付与することができる。
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、メタクリルシラン、アクリルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン、ビニルシラン、及びエポキシシラン等が挙げられる。
樹脂フィルム中の溶剤を除く成分100重量%中、上記無機充填材の含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、更に好ましくは65重量%以上、特に好ましくは68重量%以上、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下、更に好ましくは75重量%以下、特に好ましくは73重量%以下である。上記無機充填材の含有量が上記下限以上であると、誘電正接が効果的に低くなる。上記無機充填材の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の表面の表面粗さをより一層小さくすることができ、かつ硬化物の表面により一層微細な配線を形成することができる。さらに、この無機充填材量であれば、硬化物の熱膨張率を低くすることと同時に、スミア除去性を良好にすることも可能である。
[硬化剤]
上記樹脂フィルムは、硬化剤を含むことが好ましい。上記硬化剤は特に限定されない。上記硬化剤として、従来公知の硬化剤を使用可能である。上記硬化剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記硬化剤としては、アミン化合物(アミン硬化剤)、チオール化合物(チオール硬化剤)、イミダゾール化合物、ホスフィン化合物、ジシアンジアミド、フェノール化合物(フェノール硬化剤)、シアネート化合物(シアネート硬化剤)、酸無水物、活性エステル化合物、カルボジイミド化合物(カルボジイミド硬化剤)、及びベンゾオキサジン化合物(ベンゾオキサジン硬化剤)等が挙げられる。上記硬化剤は、上記エポキシ化合物のエポキシ基と反応可能な官能基を有することが好ましい。
熱寸法安定性をより一層高める観点、誘電正接を低下させる観点から、上記硬化剤は、フェノール化合物、シアネート化合物、酸無水物、活性エステル化合物、カルボジイミド化合物、及びベンゾオキサジン化合物の内の少なくとも1種の成分を含むことが好ましい。すなわち、上記樹脂フィルムは、フェノール化合物、シアネート化合物、酸無水物、活性エステル化合物、カルボジイミド化合物、及びベンゾオキサジン化合物の内の少なくとも1種の成分を含む硬化剤を含むことが好ましい。
本明細書において、「フェノール化合物、シアネート化合物、酸無水物、活性エステル化合物、カルボジイミド化合物、及びベンゾオキサジン化合物の内の少なくとも1種の成分」を「成分X」と記載することがある。
したがって、上記樹脂フィルムは、成分Xを含む硬化剤を含むことが好ましい。上記成分Xは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記フェノール化合物としては、ノボラック型フェノール、ビフェノール型フェノール、ナフタレン型フェノール、ジシクロペンタジエン型フェノール、アラルキル型フェノール及びジシクロペンタジエン型フェノール等が挙げられる。
上記フェノール化合物の市販品としては、ノボラック型フェノール(DIC社製「TD−2091」)、ビフェニルノボラック型フェノール(明和化成社製「MEH−7851」)、アラルキル型フェノール化合物(明和化成社製「MEH−7800」)、並びにアミノトリアジン骨格を有するフェノール(DIC社製「LA1356」及び「LA3018−50P」)等が挙げられる。
上記シアネート化合物は、シアネートエステル化合物(シアネートエステル硬化剤)であってもよい。
上記シアネートエステル化合物としては、ノボラック型シアネートエステル樹脂、ビスフェノール型シアネートエステル樹脂、並びにこれらが一部三量化されたプレポリマー等が挙げられる。上記ノボラック型シアネートエステル樹脂としては、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂及びアルキルフェノール型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。上記ビスフェノール型シアネートエステル樹脂としては、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂及びテトラメチルビスフェノールF型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。
上記シアネートエステル化合物の市販品としては、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン社製「PT−30」及び「PT−60」)、及びビスフェノール型シアネートエステル樹脂が三量化されたプレポリマー(ロンザジャパン社製「BA−230S」、「BA−3000S」、「BTP−1000S」及び「BTP−6020S」)等が挙げられる。
上記酸無水物としては、テトラヒドロフタル酸無水物、及びアルキルスチレン−無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
上記酸無水物の市販品としては、新日本理化社製「リカシッド TDA−100」等が挙げられる。
上記活性エステル化合物とは、構造体中にエステル結合を少なくとも1つ含み、かつ、エステル結合の両側に脂肪族鎖、脂肪族環又は芳香族環が結合している化合物をいう。活性エステル化合物は、例えばカルボン酸化合物又はチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物又はチオール化合物との縮合反応によって得られる。活性エステル化合物の例としては、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
上記式(1)中、X1は、脂肪族鎖を含む基、脂肪族環を含む基又は芳香族環を含む基を表し、X2は、芳香族環を含む基を表す。上記芳香族環を含む基の好ましい例としては、置換基を有していてもよいベンゼン環、及び置換基を有していてもよいナフタレン環等が挙げられる。上記置換基としては、炭化水素基が挙げられる。該炭化水素基の炭素数は、好ましくは12以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下である。
X1及びX2の組み合わせとしては、置換基を有していてもよいベンゼン環と、置換基を有していてもよいベンゼン環との組み合わせ、置換基を有していてもよいベンゼン環と、置換基を有していてもよいナフタレン環との組み合わせが挙げられる。さらに、X1及びX2の組み合わせとしては、置換基を有していてもよいナフタレン環と、置換基を有していてもよいナフタレン環との組み合わせが挙げられる。
上記活性エステル化合物は特に限定されない。熱寸法安定性及び難燃性をより一層高める観点からは、上記活性エステルは、2個以上の芳香族骨格を有する活性エステル化合物であることが好ましい。硬化物の誘電正接を低くし、かつ硬化物の熱寸法安定性を高める観点から、活性エステルの主鎖骨格中にナフタレン環を有することがより好ましい。
上記活性エステル化合物の市販品としては、DIC社製「HPC−8000−65T」、「EXB9416−70BK」及び「EXB8100−65T」等が挙げられる。
上記カルボジイミド化合物は、下記式(2)で表される構造単位を有する。下記式(2)において、右端部及び左端部は、他の基との結合部位である。上記カルボジイミド化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記式(2)中、Xは、アルキレン基、アルキレン基に置換基が結合した基、シクロアルキレン基、シクロアルキレン基に置換基が結合した基、アリーレン基、又はアリーレン基に置換基が結合した基を表し、pは1〜5の整数を表す。Xが複数存在する場合、複数のXは同一であってもよく、異なっていてもよい。
好適な一つの形態において、少なくとも1つのXは、アルキレン基、アルキレン基に置換基が結合した基、シクロアルキレン基、又はシクロアルキレン基に置換基が結合した基である。
上記カルボジイミド化合物の市販品としては、日清紡ケミカル社製「カルボジライト V−02B」、「カルボジライト V−03」、「カルボジライト V−04K」、「カルボジライト V−07」、「カルボジライト V−09」、「カルボジライト 10M−SP」、及び「カルボジライト 10M−SP(改)」、並びに、ラインケミー社製「スタバクゾールP」、「スタバクゾールP400」、及び「ハイカジル510」等が挙げられる。
上記ベンゾオキサジン化合物としては、P−d型ベンゾオキサジン、及びF−a型ベンゾオキサジン等が挙げられる。
上記ベンゾオキサジン化合物の市販品としては、四国化成工業社製「P−d型」等が挙げられる。
上記熱硬化性化合物100重量部に対して、上記成分Xの含有量は、好ましくは70重量部以上、より好ましくは85重量部以上、好ましくは150重量部以下、より好ましくは120重量部以下である。上記成分Xの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化性により一層優れ、熱寸法安定性をより一層高め、残存未反応成分の揮発をより一層抑制できる。
上記樹脂フィルム中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記熱硬化性化合物と上記成分Xとの合計の含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下である。上記熱硬化性化合物と上記成分Xとの合計の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化性により一層優れ、熱寸法安定性をより一層高めることができる。
[硬化促進剤]
上記樹脂フィルムは、硬化促進剤を含むことが好ましい。上記硬化促進剤の使用により、硬化速度がより一層速くなる。樹脂フィルムを速やかに硬化させることで、硬化物における架橋構造が均一になると共に、未反応の官能基数が減り、結果的に架橋密度が高くなる。上記硬化促進剤は特に限定されず、従来公知の硬化促進剤を使用可能である。上記硬化促進剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール化合物等のアニオン性硬化促進剤、アミン化合物等のカチオン性硬化促進剤、並びにリン化合物及び有機金属化合物等のアニオン性及びカチオン性硬化促進剤以外の硬化促進剤等が挙げられる。
上記イミダゾール化合物としては、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2−フェニル−4−メチル−5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
上記アミン化合物としては、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエチレンテトラミン、トリエチレンテトラミン、4,4−ジメチルアミノピリジン及びジアザビシクロノネン等が挙げられる。
上記リン化合物としては、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。
上記有機金属化合物としては、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)及びトリスアセチルアセトナートコバルト(III)等が挙げられる。
硬化温度をより一層低く抑える観点からは、上記硬化促進剤は、上記アニオン性硬化促進剤を含むことが好ましく、上記イミダゾール化合物を含むことがより好ましい。
硬化温度をより一層低く抑える観点からは、上記硬化促進剤100重量%中、上記アニオン性硬化促進剤の含有量は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは50重量%以上、更に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは100重量%(全量)である。
上記硬化促進剤の含有量は特に限定されない。樹脂フィルム中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記硬化促進剤の含有量は好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下である。上記硬化促進剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、樹脂フィルムが効率的に硬化する。上記硬化促進剤の含有量がより好ましい範囲であれば、樹脂フィルムの保存安定性がより一層高くなり、かつより一層良好な硬化物が得られる。
[熱可塑性樹脂]
上記樹脂フィルムは、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。上記熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、フェノキシ樹脂及びポリイミド等が挙げられる。ポリイミドは、可溶性ポリイミドであることが好ましく、樹脂フィルム中の他の成分に可溶であることが好ましい。上記熱可塑性樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
硬化環境によらず、誘電正接を効果的に低くし、かつ、金属配線の密着性を効果的に高める観点からは、上記熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂又はポリイミドであることが好ましい。フェノキシ樹脂又はポリイミドの使用により、樹脂フィルムの回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性の悪化及び無機充填材の不均一化が抑えられる。また、フェノキシ樹脂又は可溶性ポリイミドの使用により、溶融粘度を調整可能であるために無機充填材の分散性が良好になり、かつ硬化過程で、意図しない領域に樹脂組成物又はBステージ化物が濡れ拡がり難くなる。
上記樹脂フィルムに含まれているフェノキシ樹脂は特に限定されない。上記フェノキシ樹脂として、従来公知のフェノキシ樹脂を使用可能である。上記フェノキシ樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型の骨格、ビスフェノールF型の骨格、ビスフェノールS型の骨格、ビフェニル骨格、ノボラック骨格、ナフタレン骨格及びイミド骨格などの骨格を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。
上記フェノキシ樹脂の市販品としては、例えば、新日鐵住金化学社製の「YP50」、「YP55」及び「YP70」、並びに三菱化学社製の「1256B40」、「4250」、「4256H40」、「4275」、「YX6954BH30」及び「YX8100BH30」等が挙げられる。
保存安定性により一層優れた樹脂フィルムを得る観点からは、上記熱可塑性樹脂及び上記フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5000以上、より好ましくは10000以上、好ましくは100000以下、より好ましくは50000以下である。
上記熱可塑性樹脂及び上記フェノキシ樹脂の上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
上記熱可塑性樹脂及び上記フェノキシ樹脂の含有量は特に限定されない。樹脂フィルム中の上記無機充填材及び上記溶剤を除く成分100重量%中、上記熱可塑性樹脂の含有量(上記熱可塑性樹脂がフェノキシ樹脂である場合にはフェノキシ樹脂の含有量)は好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、樹脂フィルムの回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性が良好になる。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記下限以上であると、樹脂フィルムの形成がより一層容易になり、より一層良好な絶縁層が得られる。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記上限以下であると、硬化物の熱膨張率がより一層低くなる。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記上限以下であると、硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と配線回路層との接着強度がより一層高くなる。
[溶剤]
上記樹脂フィルムは、溶剤を含まないか又は含む。上記溶剤の使用により、樹脂フィルムの粘度を好適な範囲に制御でき、樹脂フィルムの塗工性を高めることができる。また、上記溶剤は、上記無機充填材を含むスラリーを得るために用いられてもよい。上記溶剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記溶剤としては、アセトン、メタノール、エタノール、ブタノール、2−プロパノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−アセトキシ−1−メトキシプロパン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、N−メチル−ピロリドン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン及び混合物であるナフサ等が挙げられる。
上記溶剤の多くは、上記樹脂組成物をフィルム状に成形するときに、除去されることが好ましい。従って、上記溶剤の沸点は好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。上記樹脂組成物における上記溶剤の含有量は特に限定されない。上記樹脂組成物の塗工性などを考慮して、上記溶剤の含有量は適宜変更可能である。
[他の成分]
耐衝撃性、耐熱性、樹脂の相溶性及び作業性等の改善を目的として、上記樹脂フィルムには、レベリング剤、難燃剤、カップリング剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線劣化防止剤、消泡剤、増粘剤、及び揺変性付与剤等を添加してもよい。
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、ビニルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン及びエポキシシラン等が挙げられる。
(樹脂フィルム)
樹脂組成物をフィルム状に成形することにより樹脂フィルム(Bステージ化物/Bステージフィルム)が得られる。上記樹脂フィルムは、Bステージフィルムであることが好ましい。上記樹脂フィルムは、熱硬化性樹脂フィルムであることが好ましい。
樹脂組成物をフィルム状に成形して、樹脂フィルムを得る方法としては、以下の方法が挙げられる。押出機を用いて、樹脂組成物を溶融混練し、押出した後、Tダイ又はサーキュラーダイ等により、フィルム状に成形する押出成形法。溶剤を含む樹脂組成物をキャスティングしてフィルム状に成形するキャスティング成形法。従来公知のその他のフィルム成形法。薄型化に対応可能であることから、押出成形法又はキャスティング成形法が好ましい。フィルムにはシートが含まれる。
樹脂組成物をフィルム状に成形し、熱による硬化が進行し過ぎない程度に、例えば50℃〜150℃で1分間〜10分間加熱乾燥させることにより、Bステージフィルムである樹脂フィルムを得ることができる。
上述のような乾燥工程により得ることができるフィルム状の樹脂組成物をBステージフィルムと称する。上記Bステージフィルムは、半硬化状態にある。半硬化物は、完全に硬化しておらず、硬化がさらに進行され得る。
上記樹脂フィルムは、プリプレグでなくてもよい。上記樹脂フィルムがプリプレグではない場合には、ガラスクロス等に沿ってマイグレーションが生じなくなる。また、樹脂フィルムをラミネート又はプレキュアする際に、表面にガラスクロスに起因する凹凸が生じなくなる。上記樹脂フィルムは、金属箔又は基材と、該金属箔又は基材の表面に積層された樹脂フィルムとを備える積層フィルムの形態で用いることができる。上記金属箔は銅箔であることが好ましい。
上記積層フィルムの上記基材としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリブチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル樹脂フィルム、ポリエチレンフィルム及びポリプロピレンフィルム等のオレフィン樹脂フィルム、及びポリイミド樹脂フィルム等が挙げられる。上記基材の表面は、必要に応じて、離型処理されていてもよい。
樹脂フィルムの硬化度をより一層均一に制御する観点からは、上記樹脂フィルムの厚さは、好ましくは5μm以上であり、好ましくは200μm以下である。上記樹脂フィルムを回路の絶縁層として用いる場合、上記樹脂フィルムにより形成された絶縁層の厚さは、回路を形成する導体層(配線回路層)の厚さ以上であることが好ましい。上記絶縁層の厚さは、好ましくは5μm以上であり、好ましくは200μm以下である。
上記樹脂フィルムの硬化物の表面の算術平均粗さRaは好ましくは10nm以上であり、好ましくは300nm未満、より好ましくは200nm未満、更に好ましくは150nm未満である。この場合には、硬化物と配線回路層との接着強度が高くなり、更に絶縁層の表面により一層微細な配線が形成される。さらに、導体損失を抑えることができ、信号損失を低く抑えることができる。上記算術平均粗さRaは、JIS B0601:1994に準拠して測定される。
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
(熱硬化性化合物)
エポキシ化合物:
ビフェニル型エポキシ化合物(日本化薬社製「NC−3000」)
ナフタレン型エポキシ化合物(DIC社製「HP−4032D」)
ナフトールアラルキル型エポキシ化合物(新日鐵住金化学社製「ESN−475V」)
マレイミド化合物:
N−フェニルマレイミド化合物(大和化成工業社製「BMI−4000」)
N−アルキルビスマレイミド化合物(Designer Molecules Inc.製「BMI−1500」)
(無機充填材)
シリカ含有スラリー(シリカ75重量%:アドマテックス社製「SC4050−HOA」、平均粒径1.0μm、アミノシラン処理、シクロヘキサノン25重量%)
(硬化剤)
成分X:
フェノールノボラック化合物(DIC社製「LA−1356」)
活性エステル化合物含有液(DIC社製「EXB−9416−70BK」、固形分70重量%)
カルボジイミド化合物含有液(日清紡ケミカル社製「V−03」、固形分50重量%)
ベンゾオキサジン化合物(四国化成工業社製「P−d型」)
(硬化促進剤)
ジアザビシクロノネン(DBN)
ジメチルアミノピリジン(和光純薬工業社製「DMAP」)
イミダゾール化合物(2−フェニル−4−メチルイミダゾール、四国化成工業社製「2P4MZ」、アニオン性硬化促進剤)
(熱可塑性樹脂)
ポリイミド化合物(可溶性ポリイミド):
テトラカルボン酸二無水物とダイマージアミンとの反応物であるポリイミド含有溶液(不揮発分26.8重量%)を以下の合成例1に従って合成した。
(合成例1)
撹拌機、分水器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、テトラカルボン酸二無水物(SABICジャパン合同会社製「BisDA−1000」)300.0gと、シクロヘキサノン665.5gとを入れ、反応容器中の溶液を60℃まで加熱した。次いで、反応容器中に、ダイマージアミン(クローダジャパン社製「PRIAMINE1075」)89.0gと、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(三菱ガス化学社製)54.7gとを滴下した。次いで、反応容器中に、メチルシクロヘキサン121.0gと、エチレングリコールジメチルエーテル423.5gとを添加し、140℃で10時間かけてイミド化反応を行った。このようにして、ポリイミド化合物含有溶液(不揮発分26.8重量%)を得た。得られたポリイミド化合物の分子量(下記のGPC測定により求められる重量平均分子量)は20000であった。なお、酸成分/アミン成分のモル比は1.04であった。
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定:
島津製作所社製高速液体クロマトグラフシステムを使用し、テトラヒドロフラン(THF)を展開媒として、カラム温度40℃、流速1.0ml/分で測定を行った。検出器として「SPD−10A」を用い、カラムはShodex社製「KF−804L」(排除限界分子量400,000)を2本直列につないで使用した。標準ポリスチレンとして、東ソー社製「TSKスタンダードポリスチレン」を用い、重量平均分子量Mw=354,000、189,000、98,900、37,200、17,100、9,830、5,870、2,500、1,050、500の物質を使用して較正曲線を作成し、分子量の計算を行った。
(実施例1〜3及び比較例1,2)
下記の表1に示す成分を下記の表1に示す配合量(単位は固形分重量部)で配合し、均一な溶液となるまで常温で攪拌し、樹脂材料を得た。
樹脂フィルムの作製:
アプリケーターを用いて、離型処理されたPETフィルム(東レ社製「XG284」、厚み25μm)の離型処理面上に得られた樹脂材料を塗工した後、100℃のギヤオーブン内で3分間乾燥し、溶剤を揮発させた。このようにして、PETフィルム上に、厚さが40μmである樹脂フィルム(Bステージフィルム)が積層されている積層フィルム(PETフィルムと樹脂フィルムとの積層フィルム)を得た。
(評価)
(1)ピーク温度T
得られた樹脂フィルム(Bステージフィルム)の硬化に伴う発熱ピークを、示差走査熱量測定装置(TA・インスツルメント社製「Q2000」)を用いて評価した。専用アルミパンに樹脂フィルム8mgを取り、専用治具を用いて蓋をした。この専用アルミパンと空のアルミパン(リファレンス)とを加熱ユニット内に設置し、昇温速度3℃/分で−30℃から250℃まで窒素雰囲気下で加熱を行い、リバースヒートフロー及びノンリバースヒートフローの観測を行った。ノンリバースヒートフローにおいて観測される発熱ピークを樹脂フィルムの発熱ピークとした。得られた発熱ピークにおいて、130℃以上200℃以下に発熱ピークトップ温度を有する発熱ピークのうち、最大ピーク高さを有する発熱ピークのピーク温度Tを求めた。
(2)誘電正接
得られた樹脂フィルムを幅2mm、長さ80mmの大きさに裁断して5枚を重ね合わせて、厚み200μmの積層体を得た。
得られた積層体を130℃で1時間加熱して、予備硬化された樹脂フィルムを得た。この樹脂フィルムを、(T+50)℃で1.5時間加熱して、樹脂フィルムの硬化物(1)を得た。
得られた積層体を130℃で1時間加熱して、予備硬化された樹脂フィルムを得た。この樹脂フィルムを、(T+50)℃で7.5時間加熱して、樹脂フィルムの硬化物(2)を得た(樹脂フィルムの硬化物(1)を得た加熱時間よりも5倍長い加熱時間)。
得られた積層体を130℃で1時間加熱して、予備硬化された樹脂フィルムを得た。この樹脂フィルムを、(T+50)℃で15時間加熱して、樹脂フィルムの硬化物(3)を得た(樹脂フィルムの硬化物(1)を得た加熱時間よりも10倍長い加熱時間)。
なお、上記硬化温度における上記Tは、ピーク温度Tを意味する。また、樹脂フィルムの硬化は表1に示すように、大気環境下又は窒素環境下で行った。
得られた樹脂フィルムの硬化物(1)〜(3)について、関東電子応用開発社製「空洞共振摂動法誘電率測定装置CP521」及びキーサイトテクノロジー社製「ネットワークアナライザーN5224A PNA」を用いて、空洞共振法で常温(23℃)にて、周波数10GHzにて誘電正接を測定した。
測定された樹脂フィルムの硬化物(1)の誘電正接Df1.5hと、樹脂フィルムの硬化物(2)の誘電正接Df7.5hと、樹脂フィルムの硬化物(3)の誘電正接Df15hとから、以下を算出した。
Df7.5hのDf1.5hに対する比(Df7.5h/Df1.5h)
Df15hのDf1.5hに対する比(Df15h/Df1.5h)
[誘電正接の判定基準]
A:比(Df7.5h/Df1.5h)が、0.9以上1.15以下
B:比(Df7.5h/Df1.5h)が、0.9未満、又は、1.15を超える
A:比(Df15h/Df1.5h)が、0.9以上1.2以下
B:比(Df15h/Df1.5h)が、0.9未満、又は、1.2を超える
(3)伝送損失
伝送損失測定用の評価基板(銅張積層板と6層の絶縁−配線回路複合層とを備える評価基板)を下記に従い作製した。
1層目の絶縁−配線回路複合層の形成:
(a1)ラミネート工程:
両面銅張積層板(各面の銅箔の厚み18μm、基板の厚み0.7mm、基板サイズ100mm×100mm、日立化成社製「MCL−E679FG」)を用意した。この両面銅張積層板の銅箔面の両面をメック社製「Cz8101」に浸漬して、銅箔の表面を粗化処理した。粗化処理された銅張積層板の両面に、名機製作所社製「バッチ式真空ラミネーターMVLP−500/600−IIA」を用いて、積層フィルムの樹脂フィルム(Bステージフィルム)側を銅張積層板上に重ねてラミネートした。ラミネートの条件は、30秒減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、100℃及び圧力0.4MPaでプレスする条件とした。PETフィルムを剥がした後130℃で60分間加熱し、樹脂フィルムを半硬化(予備硬化)させた。このようにして、CCL基板に樹脂フィルムの半硬化物が積層されている積層体(1)を得た。
(b1)ビアホール形成工程:
CO2レーザー加工機(ビアメカニクス社製「LC−4KF212」)を用いて、バーストモード、エネルギー0.4mJ、パルス27μsec、3ショットの条件で、直径約60μmのビアホールを形成した。
(c1)デスミア処理及び粗化処理:
(c1−1)膨潤処理:
60℃の膨潤液(アトテックジャパン社製「スウェリングディップセキュリガントP」)に、得られた積層体(1)を入れて、10分間揺動させた。その後、純水で洗浄した。
(c1−2)過マンガン酸塩処理(粗化処理及びデスミア処理):
80℃の過マンガン酸カリウム(アトテックジャパン社製「コンセントレートコンパクトCP」)粗化水溶液に、膨潤処理後の積層体(1)を入れて、30分間揺動させた。次に、25℃の洗浄液(アトテックジャパン社製「リダクションセキュリガントP」)を用いて2分間処理した後、純水で洗浄を行い、粗化処理後の積層体(1)を得た。
(c1−3)表面粗さの測定:
粗化処理後の積層体(1)(粗化処理された硬化物)の表面を、非接触3次元表面形状測定装置(Bruker社製「Contour GT−K」)を用いて、95.6μm×71.7μmの測定領域で算術平均粗さRaを測定した。なお、上記算術平均粗さRaは、JIS B0601:1994に準拠して測定した。粗化処理された硬化物の表面の表面粗さが200nm以下であることを確認した。
(d1)無電解めっき処理:
粗化処理後の積層体(1)の硬化物の表面を、60℃のアルカリクリーナ(アトテックジャパン社製「クリーナーセキュリガント902」)で5分間処理し、脱脂洗浄した。洗浄後、上記硬化物を25℃のプリディップ液(アトテックジャパン社製「プリディップネオガントB」)で2分間処理した。その後、上記硬化物を40℃のアクチベーター液(アトテックジャパン社製「アクチベーターネオガント834」)で5分間処理し、パラジウム触媒を付けた。次に、30℃の還元液(アトテックジャパン社製「リデューサーネオガントWA」)により、硬化物を5分間処理した。
次に、上記硬化物を化学銅液(アトテックジャパン社製「ベーシックプリントガントMSK−DK」、「カッパープリントガントMSK」、「スタビライザープリントガントMSK」、及び「リデューサーCu」)に入れ、無電解めっきをめっき厚さが0.5μm程度になるまで実施した。無電解めっき後に、残留している水素ガスを除去するため、120℃の温度で30分間アニール処理した。なお、無電解めっきの工程までの全ての工程は、ビーカースケールで処理液を2Lとし、硬化物を揺動させながら実施した。
(e1)レジスト形成:
ドライフィルムレジスト(日立化成社製「RY5125」)を、ホットロールラミネーターを用いて貼り付けた。ラミネート条件は、温度100℃、圧力0.4MPa及びラミネート速度1.5m/分とする条件とし、その後、15分ホールドした。次いで、85mJ/cm2で露光した後、1wt%の炭酸ナトリウム水溶液を27℃で、スプレー圧1.2MPa、30秒間スプレー処理して現像を行った。
(f1)電解めっき処理:
次に、無電解めっき処理された硬化物に、電解めっきをめっき厚さが25μmとなるまで実施した。電解銅めっきとして硫酸銅溶液(和光純薬工業社製「硫酸銅五水和物」、和光純薬工業社製「硫酸」、アトテックジャパン社製「ベーシックレベラーカパラシド HL」、アトテックジャパン社製「補正剤カパラシド GS」)を用いて、0.6A/cm2の電流を流しめっき厚さが25μm程度となるまで電解めっきを実施した。
(g1)DFR剥離及びエッチング処理:
3wt%の水酸化ナトリウム水溶液を用いてスプレー処理することによりドライフィルムレジスト(DFR)を剥離した。次いで、過水硫酸系の酸性エッチング液(JCU社製「SACプロセス」)にてクイックエッチングを行った。
(h1)本硬化工程:
ピーク温度Tに対し、(T+50)℃で1.5時間加熱した。
このようにして、銅張積層板上に1層目の絶縁−配線回路複合層を形成した。
2層目の絶縁−配線回路複合層の形成:
(a2)ラミネート工程:
(a1)ラミネート工程で実施した粗化処理条件と同様にして、1層目の配線回路層の粗化処理を行った。その後、(a1)ラミネート工程で実施したラミネート条件で、1層目の絶縁−配線回路複合層上に、積層フィルムの樹脂フィルム(Bステージフィルム)側をラミネートした。その後、PETフィルムを剥がた後130℃で60分間加熱して樹脂フィルムを予備硬化させた。このようにして、1層目の絶縁−配線回路複合層上に樹脂フィルムの半硬化物が積層されている積層体(2)を得た。
(b2)ビアホール形成工程:
(b1)ビアホール形成工程で実施した工程を、積層体(1)を積層体(2)に変更したこと以外は同様にして、ビアホールを形成した。
(c2)デスミア処理及び粗化処理:
(c1)デスミア処理及び粗化処理で実施した工程を、積層体(1)を積層体(2)に変更したこと以外は同様にして、粗化処理後の積層体(2)を得た。
(d2)無電解めっき処理:
(d1)無電解めっき処理で実施した工程を、粗化処理後の積層体(1)を粗化処理後の積層体(2)に変更したこと以外は同様にして、無電解めっき処理を行った。
(f2)電解めっき処理:
(d2)無電解めっき処理を行った後、(f1)電解めっき処理と同様にして、無電解めっき処理を行った。
(h2)本硬化工程:
(h1)本硬化工程と同様にして、(T+50)℃で1.5時間加熱した。
このようにして、1層目の絶縁−配線回路複合層上に2層目の絶縁−配線回路複合層を形成した。
3層目の絶縁−配線回路複合層の形成:
2層目の絶縁−配線回路複合層の形成で実施した工程と同様にして、2層目の絶縁−配線回路複合層上に3層目の絶縁−配線回路複合層を形成した。
4層目の絶縁−配線回路複合層の形成:
2層目の絶縁−配線回路複合層の形成で実施した工程と同様にして、3層目の絶縁−配線回路複合層上に4層目の絶縁−配線回路複合層を形成した。
5層目の絶縁−配線回路複合層の形成:
(a5)ラミネート工程:
(a2)ラミネート工程で実施した工程と同様にして、4層目の絶縁−配線回路複合層上に樹脂フィルムの半硬化物が積層されている積層体(5)を得た。
(b5)ビアホール形成工程:
(b1)ビアホール形成工程で実施した工程を、積層体(1)を積層体(5)に変更したこと以外は同様にして、ビアホールを形成した。
(c5)デスミア処理及び粗化処理:
(c1)デスミア処理及び粗化処理で実施した工程を、積層体(1)を積層体(5)に変更したこと以外は同様にして、粗化処理後の積層体(5)を得た。
(d5)無電解めっき処理:
(d1)無電解めっき処理で実施した工程を、粗化処理後の積層体(1)を粗化処理後の積層体(5)に変更したこと以外は同様にして、無電解めっき処理を行った。
(e5)レジスト形成:
(e1)レジスト形成で実施した工程と同様にして、現像を行った。
(f5)電解めっき処理:
ドライフィルムレジストのパターンが形成された後、(f1)電解めっき処理と同様にして、無電解めっき処理を行った。
(g5)DFR剥離及びエッチング処理:
(g1)DFR剥離及びエッチング処理で実施した工程と同様にして、DFR剥離及びエッチング処理を行った。
(h5)本硬化工程:
(h1)本硬化工程と同様にして、(T+50)℃で1.5時間加熱した。
このようにして、4層目の絶縁−配線回路複合層上に5層目の絶縁−配線回路複合層を形成した。
6層目の絶縁−配線回路複合層の形成:
2層目の絶縁−配線回路複合層の形成で実施した工程と同様にして、5層目の絶縁−配線回路複合層上に6層目の絶縁−配線回路複合層を形成した。
このようにして、銅張積層板上に1層目〜6層目の絶縁−配線回路複合層が形成された評価基板を作製した。得られた評価基板では、1層目〜6層目の配線回路層のうち、1層目及び5層目の配線回路層のみがパターンを有している。1層目及び5層目の配線回路層は信号層である。
図5は、実施例及び比較例で作製された評価基板の信号層近傍を拡大して示す模式的部分断面図である。図5において、符号43は配線回路層(信号層)を示し、符号41,45は信号層とは異なる配線回路層(グランド層)を示し、符号42,44は絶縁層を示す。得られた評価基板において、信号層43の上面の幅W1及び下面の幅W2はそれぞれ20μmであり、信号層43の厚みtは15μmであり、絶縁層の厚みH1,H2はそれぞれ30μmであった。
1層目の配線回路層(信号層)の伝送路と、5層目の配線回路層(信号層)の伝送路とについて、下記に手順に従い、伝送損失を測定した。
伝送損失の評価:
40GHz エア・コプレナ・プローブ(カスケード・マイクロテック社製「ACP40−A−GSG−150」)をセットしたプローブステーションM150(カスケード・マイクロテック社製)の測定テーブルに、得られた評価基板を静置した。次いで、LRMインピーダンス基準基板(カスケード・マイクロテック社製)及びキーサイトテクノロジー社製「ベクトル型ネットワークアナライザーN5224A」を用いて、測定システムの校正を行った後、評価基板の測定ポイントに40GHz エア・コプレナ・プローブを伝送路の両端パッドに接触させた。キーサイトテクノロジー社製「ベクトル型ネットワークアナライザーN5224A」を用いて、周波数100MHzから40GHzの範囲で、1層目の配線回路層(信号層)の伝送損失の絶対値IL1及び5層目の配線回路層(信号層)の伝送損失の絶対値IL5を測定した。なお、伝送損失は、ベクトル型ネットワークアナライザーで測定されたS12(TouchStone Formatより算出)から、20Log(S21)を求めることにより得た。
[伝送損失の判定基準]
○:38GHzにおけるIL1のIL5に対する比(IL1/IL5)が0.96以上1.05以下
×:38GHzにおけるIL1のIL5に対する比(IL1/IL5)が1.05を超える
組成及び結果を下記の表1に示す。今回の評価では、実験的に各層の伝送測定を行っているが、この値に大きな差異があると、実基板における伝送損失も大きくなると考えられる。