以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る樹脂フィルムは、熱硬化性化合物と、アニリンと、無機充填材とを含み、上記アニリンの含有量が、1000ppm以下である。本発明に係る樹脂フィルムは、上記アニリンを、1000ppm以下で含む。
本発明に係る樹脂フィルムでは、上記の構成が備えられているので、デスミア処理によってスミアを効果的に除去することができ、アンジュレーションの発生を抑えることができ、かつメッキピール強度を高めることができる。
本発明者は、アニリンを特定の量で含む樹脂フィルムを用いることによって、デスミア処理によってスミアを効果的に除去することができ、無機充填材の分散性を効果的に高めることができ、その結果、アンジュレーションの発生を抑えることができ、かつメッキピール強度を高めることができることを見出した。本発明では、デスミア処理によってスミアを効果的に除去することができることに加え、無機充填材の分散性を十分に高めることができるので、無機充填材の配合量が多い場合であっても、アンジュレーションの発生を抑えることができ、かつメッキピール強度を高めることができるという効果が全て発揮される。
また、本発明に係る樹脂フィルムでは、上記の構成が備えられているので、絶縁層(樹脂フィルムの硬化物)の誘電正接を低くすることができる。
本発明に係る樹脂フィルムは、熱硬化性化合物と、アニリンと、無機充填材とを含む樹脂組成物をフィルム状に成形することにより得ることができる。
本発明に係る樹脂フィルムは、熱硬化性樹脂フィルムであることが好ましい。
以下、本発明に係る樹脂フィルム及び樹脂組成物に用いられる各成分の詳細、及び本発明に係る樹脂フィルムの用途などを説明する。
[熱硬化性化合物]
上記樹脂フィルムは、熱硬化性化合物を含む。上記熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記熱硬化性化合物としては、エポキシ化合物、マレイミド化合物、ベンゾオキサジン化合物、ビニル化合物、スチレン化合物、フェノキシ化合物、オキセタン化合物、ポリアリレート化合物、ジアリルフタレート化合物、アクリレート化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、及びシリコーン化合物等が挙げられる。
上記熱硬化性化合物は、エポキシ化合物、マレイミド化合物、ベンゾオキサジン化合物又はビニル化合物を含むことが好ましく、エポキシ化合物、マレイミド化合物、又はベンゾオキサジン化合物を含むことがより好ましい。この場合には、絶縁層の誘電正接をより一層低くし、かつ絶縁層の熱寸法安定性をより一層高めることができる。
<エポキシ化合物>
上記エポキシ化合物として、従来公知のエポキシ化合物を使用可能である。上記エポキシ化合物は、少なくとも1個のエポキシ基を有する有機化合物である。上記エポキシ化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、ビフェノール型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、フルオレン型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、アントラセン型エポキシ化合物、アダマンタン骨格を有するエポキシ化合物、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ化合物、ナフチレンエーテル型エポキシ化合物、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ化合物等が挙げられる。
硬化物の誘電正接をより一層低くし、かつ硬化物の熱寸法安定性及び難燃性を高める観点からは、上記エポキシ化合物は、芳香族骨格を有するエポキシ化合物を含むことが好ましく、ナフタレン骨格又はフェニル骨格を有するエポキシ化合物を含むことがより好ましい。
硬化物の誘電正接をより一層低くし、かつ硬化物の線膨張係数(CTE)を良好にする観点からは、上記エポキシ化合物は、25℃で液状のエポキシ化合物と、25℃で固形のエポキシ化合物とを含むことが好ましい。
上記25℃で液状のエポキシ化合物の25℃での粘度は、1000mPa・s以下であることが好ましく、500mPa・s以下であることがより好ましい。
上記エポキシ化合物の粘度は、例えばE型粘度計(東機産業社製「TV-35」)等を用いて測定することができる。
上記エポキシ化合物の分子量は1000以下であることがより好ましい。この場合には、樹脂フィルム中の溶剤を除く成分100重量%中、無機充填材の含有量が50重量%以上であっても、絶縁層の形成時に流動性が高い樹脂フィルムが得られる。このため、樹脂フィルムの未硬化物又はBステージフィルムを回路基板上にラミネートした場合に、無機充填材を均一に存在させることができる。
上記エポキシ化合物の分子量は、上記エポキシ化合物が重合体ではない場合、及び上記エポキシ化合物の構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味する。また、上記エポキシ化合物が重合体である場合は、重量平均分子量を意味する。
硬化物の熱寸法安定性をより一層高める観点からは、樹脂フィルム中の溶剤を除く成分100重量%中、上記エポキシ化合物の含有量は、好ましくは4重量%以上、より好ましくは7重量%以上、好ましくは15重量%以下、より好ましくは12重量%以下である。
上記樹脂フィルム中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記エポキシ化合物の含有量は、好ましくは15重量%以上、より好ましくは25重量%以上、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。上記エポキシ化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の熱寸法安定性をより一層高めることができる。
<マレイミド化合物>
上記マレイミド化合物として、従来公知のマレイミド化合物を使用可能である。上記マレイミド化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記マレイミド化合物は、ビスマレイミド化合物であってもよい。
上記マレイミド化合物としては、N-フェニルマレイミド及びN-アルキルビスマレイミド等が挙げられる。
上記マレイミド化合物は、芳香族環を有していてもよく、有していなくてもよい。上記マレイミド化合物は、芳香族環を有することが好ましい。
上記マレイミド化合物では、マレイミド骨格における窒素原子と、芳香族環とが結合していることが好ましい。
硬化物の熱寸法安定性をより一層高める観点からは、樹脂フィルム中の溶剤を除く成分100重量%中、上記マレイミド化合物の含有量は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。
上記樹脂フィルム中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記マレイミド化合物の含有量は、好ましくは2.5重量%以上、より好ましくは5重量%以上、更に好ましくは7.5重量%以上、好ましくは50重量%以下、より好ましくは35重量%以下である。上記マレイミド化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の熱寸法安定性をより一層高めることができる。
本発明の効果を効果的に発揮する観点からは、上記マレイミド化合物の分子量は、好ましくは500以上、より好ましくは1000以上、好ましくは30000未満、より好ましくは20000未満である。
上記マレイミド化合物の分子量は、上記マレイミド化合物が重合体ではない場合、及び上記マレイミド化合物の構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味する。また、上記マレイミド化合物の分子量は、上記マレイミド化合物が重合体である場合は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
上記マレイミド化合物の市販品としては、例えば、大和化成工業社製「BMI-4000」及び「BMI-5100」、並びにDesigner Molecules Inc.製「BMI-3000」等が挙げられる。
<ベンゾオキサジン化合物>
上記ベンゾオキサジン化合物として、従来公知のベンゾオキサジン化合物を使用可能である。上記ベンゾオキサジン化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記ベンゾオキサジン化合物としては、P-d型ベンゾオキサジン、及びF-a型ベンゾオキサジン等が挙げられる。
上記ベンゾオキサジン化合物の市販品としては、四国化成工業社製「P-d型」等が挙げられる。
上記樹脂フィルム中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記ベンゾオキサジン化合物の含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上、更に好ましくは10重量%以上、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。上記ベンゾオキサジン化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の熱寸法安定性をより一層高めることができる。
<ビニル化合物>
上記ビニル化合物として、従来公知のビニル化合物を使用可能である。上記ビニル化合物は、少なくとも1個のビニル基を有する有機化合物である。上記ビニル化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記ビニル化合物としては、ジビニルベンジルエーテル化合物が挙げられる。
上記樹脂フィルム中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記ビニル化合物の含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、更に好ましくは20重量%以上、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。上記ビニル化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の熱寸法安定性をより一層高めることができる。
[アニリン]
上記樹脂フィルムは、アニリンを含む。
上記樹脂フィルム中の、上記アニリンの含有量は1000ppm以下である。上記アニリンの含有量が1000ppmを超えると、無機充填材の分散性が低下して、アンジュレーションの発生を十分に抑えることができなかったり、メッキピール強度を十分に高めることができなかったりすることがある。
上記樹脂フィルム中、上記アニリンの含有量は、好ましくは0.2ppm以上、より好ましくは0.5ppm以上、好ましくは500ppm以下、より好ましくは100ppm以下、より一層好ましくは80ppm以下、更に好ましくは40ppm以下、特に好ましくは30ppm以下である。上記アニリンの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。上記アニリンの含有量が上記下限以上であると、特に、アンジュレーションの発生をより一層抑えることができる。上記アニリンの含有量が上記上限以下であると、特に、メッキピール強度をより一層高めることができる。
上記樹脂フィルム中のアニリンの含有量は、以下のようにして測定することができる。
樹脂フィルムをクロロホルムに溶解し、約10重量%のクロロホルム溶液を調製して、上澄み液を採取し、試料溶液とする。また、0.001μg/mL、0.005μg/mL、0.01μg/mL、0.05μg/mL、0.1μg/mL、0.5μg/mL、1.5μg/mL、10μg/mLのアニリンを含むクロロホルム溶液(アニリン標準試料溶液)を調製する。得られた試料溶液及びアニリン試料溶液について、GC/MS装置を用いて定量することにより、樹脂フィルム中のアニリンの含有量を求めることができる。なお、GCカラムとしてアミンカラムを用いる。
上記アニリンは、樹脂フィルム中に添加物として含まれていてもよく、分解物として含まれていてもよい。例えば、上記アニリンは、上記無機充填材の表面処理剤の分解物として樹脂フィルム中に含まれていてもよい。
上記アニリンを樹脂フィルム中に特定量で含ませる方法としては、具体的には、以下の方法が挙げられる。アニリンを含む樹脂組成物をフィルム状に成形する方法。表面処理剤により表面処理された無機充填材を用いる事で、表面処理剤の分解物として樹脂フィルム中にアニリンを含ませる方法。
上記アニリンの含有量の、上記無機充填材の含有量に対する比(アニリンの含有量/無機充填材の含有量)は、好ましくは0.00002%以上、より好ましくは0.00005%以上、好ましくは0.35%以下、より好ましくは0.2%以下、更に好ましくは0.02%以下、特に好ましくは0.01%以下である。上記比(アニリンの含有量/無機充填材の含有量)が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
上記比(アニリンの含有量/無機充填材の含有量)は、以下の式により算出される。
比(アニリンの含有量/無機充填材の含有量)=(A/10000)/B×100
A:アニリンの含有量(ppm)
B:無機充填材の含有量(重量%)
[無機充填材]
上記樹脂フィルムは、無機充填材を含む。上記無機充填材の使用により、硬化物の誘電正接をより一層低くすることができる。また、上記無機充填材の使用により、硬化物の熱による寸法変化がより一層小さくなる。上記無機充填材は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記無機充填材としては、シリカ、タルク、クレイ、マイカ、ハイドロタルサイト、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、及び窒化ホウ素等が挙げられる。
硬化物の表面の表面粗さを小さくし、硬化物と金属層との接着強度をより一層高くし、かつ硬化物の表面により一層微細な配線を形成し、かつ硬化物により良好な絶縁信頼性を付与する観点からは、上記無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましく、シリカであることがより好ましく、溶融シリカであることが更に好ましい。シリカの使用により、硬化物の熱膨張率がより一層低くなり、また、硬化物の誘電正接がより一層低くなる。また、シリカの使用により、硬化物の表面の表面粗さが効果的に小さくなり、硬化物と金属層との接着強度が効果的に高くなる。シリカの形状は球状であることが好ましい。
硬化環境によらず、樹脂の硬化を進め、硬化物のガラス転移温度を効果的に高くし、硬化物の熱線膨張係数を効果的に小さくする観点からは、上記無機充填材は球状シリカであることが好ましい。
熱伝導率を高め、かつ絶縁性を高める観点からは、上記無機充填材はアルミナであることが好ましい。
上記無機充填材の平均粒径は、好ましくは50nm以上、より好ましくは50nmを超え、更に好ましくは100nm以上、特に好ましくは500nm以上、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、更に好ましくは2μm以下、特に好ましくは1μm以下である。上記無機充填材の平均粒径が上記下限以上及び上記上限以下であると、エッチング後の表面粗度を小さくし、かつメッキピール強度を高くすることができ、また、絶縁層と金属層との密着性をより一層高めることができる。
上記無機充填材の平均粒径として、50%となるメディアン径(d50)の値が採用される。上記平均粒径は、レーザー回折散乱方式の粒度分布測定装置を用いて測定可能である。
上記無機充填材は、球状であることが好ましく、球状シリカであることがより好ましい。この場合には、硬化物の表面の表面粗さが効果的に小さくなり、更に硬化物と金属層との接着強度が効果的に高くなる。上記無機充填材が球状である場合には、上記無機充填材のアスペクト比は好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下である。
上記無機充填材は、表面処理剤により表面処理された無機充填材を含んでいてもよい。すなわち、上記無機充填材は、表面処理剤による表面処理物である無機充填材を含んでいてもよい。上記無機充填材は、表面処理されていない無機充填材であってもよく、表面処理されていない無機充填材と、表面処理剤により表面処理された無機充填材との混合物であってもよく、表面処理剤により表面処理された無機充填材であってもよい。なお、上記無機充填材が表面処理されていることにより、粗化硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなる。また、上記無機充填材が表面処理されていることにより、硬化物の表面により一層微細な配線を形成することができ、かつより一層良好な配線間絶縁信頼性及び層間絶縁信頼性を硬化物に付与することができる。
上記表面処理剤としては、アミン系表面処理剤、ビニル系表面処理剤、及びエポキシ系表面処理剤等が挙げられる。上記表面処理剤は、アミン系表面処理剤、ビニル系表面処理剤、又はエポキシ系表面処理剤であることが好ましい。
上記表面処理剤は、カップリング剤であることが好ましい。
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。
上記シランカップリング剤としては、アミノフェニルシランカップリング剤、メタクリルシランカップリング剤、アクリルシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、イミダゾールシラカップリング剤ン、ビニルシランカップリング剤、及びエポキシシランカップリング剤等が挙げられる。
エポキシ化合物、マレイミド化合物、又はベンゾオキサジン化合物を含む樹脂組成物中における無機充填材の分散性を高め、アンジュレーションを低く抑える観点から、上記表面処理剤は、ビニル系表面処理剤であることが好ましい。
メッキピール強度を高める観点からは、上記表面処理剤は、アミノフェニルシランカップリング剤、又はエポキシシランカップリング剤であることが好ましい。
上記表面処理剤に由来させて樹脂フィルム中のアニリンの含有量を調整する観点からは、上記表面処理剤は、アミノフェニルシランカップリング剤であることが好ましい。
樹脂フィルム中の溶剤を除く成分100重量%中、上記無機充填材の含有量は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは35重量%以上、より一層好ましくは50重量%以上、更に好ましくは60重量%以上、更により一層好ましくは65重量%以上、特に好ましくは68重量%以上である。樹脂フィルム中の溶剤を除く成分100重量%中、上記無機充填材の含有量は、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下、更に好ましくは80重量%以下、特に好ましくは75重量%以下である。上記無機充填材の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。上記無機充填材の含有量が上記下限以上であると、誘電正接がより一層効果的に低くなる。上記無機充填材の含有量が上記上限以下であると、熱寸法安定性を高め、硬化物の反りを効果的に抑えることができる。
[硬化剤]
上記樹脂フィルムは、硬化剤を含むことが好ましい。上記硬化剤は特に限定されない。上記硬化剤として、従来公知の硬化剤を使用可能である。上記硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記硬化剤としては、フェノール化合物(フェノール硬化剤)、活性エステル化合物、シアネートエステル化合物(シアネートエステル硬化剤)、カルボジイミド化合物(カルボジイミド硬化剤)、アミン化合物(アミン硬化剤)、チオール化合物(チオール硬化剤)、ホスフィン化合物、ジシアンジアミド、及び酸無水物等が挙げられる。上記硬化剤は、上記エポキシ化合物のエポキシ基と反応可能な官能基を有することが好ましい。
熱寸法安定性をより一層高める観点及び誘電正接を一層低くする観点から、上記硬化剤は、フェノール化合物、活性エステル化合物、シアネートエステル化合物、カルボジイミド化合物及び酸無水物の内の少なくとも1種の成分を含むことが好ましい。熱寸法安定性をより一層高める観点及び誘電正接を一層低くする観点から、上記硬化剤は、フェノール化合物、活性エステル化合物、シアネートエステル化合物、及びカルボジイミド化合物の内の少なくとも1種の成分を含むことがより好ましく、活性エステル化合物を含むことが更に好ましい。
熱寸法安定性をより一層高める観点から、上記熱硬化性化合物がエポキシ化合物を含み、上記硬化剤がフェノール化合物と活性エステル化合物との双方を含むことが好ましい。
上記フェノール化合物としては、ノボラック型フェノール、ビフェノール型フェノール、ナフタレン型フェノール、ジシクロペンタジエン型フェノール、アラルキル型フェノール及びジシクロペンタジエン型フェノール等が挙げられる。
上記フェノール化合物の市販品としては、ノボラック型フェノール(DIC社製「TD-2091」)、ビフェニルノボラック型フェノール(明和化成社製「MEH-7851」)、アラルキル型フェノール化合物(明和化成社製「MEH-7800」)、並びにアミノトリアジン骨格を有するフェノール(DIC社製「LA-1356」及び「LA-3018-50P」)等が挙げられる。
上記活性エステル化合物とは、構造体中にエステル結合を少なくとも1つ含み、かつ、エステル結合の両側に脂肪族鎖、脂肪族環又は芳香族環が結合している化合物をいう。活性エステル化合物は、例えばカルボン酸化合物又はチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物又はチオール化合物との縮合反応によって得られる。活性エステル化合物の例としては、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
上記式(1)中、X1は、脂肪族鎖を含む基、脂肪族環を含む基又は芳香族環を含む基を表し、X2は、芳香族環を含む基を表す。上記芳香族環を含む基の好ましい例としては、置換基を有していてもよいベンゼン環、及び置換基を有していてもよいナフタレン環等が挙げられる。上記置換基としては、炭化水素基が挙げられる。該炭化水素基の炭素数は、好ましくは12以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下である。
上記式(1)中、X1及びX2の組み合わせとしては、置換基を有していてもよいベンゼン環と、置換基を有していてもよいベンゼン環との組み合わせ、置換基を有していてもよいベンゼン環と、置換基を有していてもよいナフタレン環との組み合わせが挙げられる。さらに、上記式(1)中、X1及びX2の組み合わせとしては、置換基を有していてもよいナフタレン環と、置換基を有していてもよいナフタレン環との組み合わせが挙げられる。
上記活性エステル化合物は特に限定されない。熱寸法安定性及び難燃性をより一層高める観点からは、上記活性エステル化合物は、2個以上の芳香族骨格を有する活性エステル化合物であることが好ましい。硬化物の誘電正接を低くし、かつ硬化物の熱寸法安定性を高める観点から、活性エステル化合物の主鎖骨格中にナフタレン環を有することがより好ましい。
上記活性エステル化合物の市販品としては、DIC社製「HPC-8000-65T」、「HPC-8900-70BK」及び「HPC-8150-62T」等が挙げられる。
上記シアネートエステル化合物としては、ノボラック型シアネートエステル樹脂、ビスフェノール型シアネートエステル樹脂、並びにこれらが一部三量化されたプレポリマー等が挙げられる。上記ノボラック型シアネートエステル樹脂としては、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂及びアルキルフェノール型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。上記ビスフェノール型シアネートエステル樹脂としては、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂及びテトラメチルビスフェノールF型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。
上記シアネートエステル化合物の市販品としては、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン社製「PT-30」及び「PT-60」)、並びにビスフェノール型シアネートエステル樹脂が三量化されたプレポリマー(ロンザジャパン社製「BA-230S」、「BA-3000S」、「BTP-1000S」及び「BTP-6020S」)等が挙げられる。
上記樹脂フィルム中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記シアネートエステル化合物の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、更に好ましくは20重量%以上、好ましくは85重量%以下、より好ましくは75重量%以下である。上記シアネートエステル化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の熱寸法安定性をより一層高めることができる。
上記カルボジイミド化合物は、下記式(2)で表される構造単位を有する化合物である。下記式(2)において、右端部及び左端部は、他の基との結合部位である。上記カルボジイミド化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記式(2)中、Xは、アルキレン基、アルキレン基に置換基が結合した基、シクロアルキレン基、シクロアルキレン基に置換基が結合した基、アリーレン基、又はアリーレン基に置換基が結合した基を表し、pは1~5の整数を表す。Xが複数存在する場合、複数のXは同一であってもよく、異なっていてもよい。
好適な一つの形態において、少なくとも1つのXは、アルキレン基、アルキレン基に置換基が結合した基、シクロアルキレン基、又はシクロアルキレン基に置換基が結合した基である。
上記カルボジイミド化合物の市販品としては、日清紡ケミカル社製「カルボジライト V-02B」、「カルボジライト V-03」、「カルボジライト V-04K」、「カルボジライト V-07」、「カルボジライト V-09」、「カルボジライト 10M-SP」、及び「カルボジライト 10M-SP(改)」、並びに、ラインケミー社製「スタバクゾールP」、「スタバクゾールP400」、及び「ハイカジル510」等が挙げられる。
上記酸無水物としては、テトラヒドロフタル酸無水物、及びアルキルスチレン-無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
上記酸無水物の市販品としては、新日本理化社製「リカシッド TDA-100」等が挙げられる。
上記樹脂フィルム中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記熱硬化性化合物と上記硬化剤との合計の含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、好ましくは98重量%以下、より好ましくは95重量%以下である。上記合計の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化性により一層優れ、熱寸法安定性をより一層高めることができる。
[硬化促進剤]
上記樹脂フィルムは、硬化促進剤を含むことが好ましい。上記硬化促進剤の使用により、硬化速度がより一層速くなる。樹脂フィルムを速やかに硬化させることで、硬化物における架橋構造が均一になると共に、未反応の官能基数が減り、結果的に架橋密度が高くなる。上記硬化促進剤は特に限定されず、従来公知の硬化促進剤を使用可能である。上記硬化促進剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール化合物等のアニオン性硬化促進剤、アミン化合物等のカチオン性硬化促進剤、リン化合物及び有機金属化合物等のアニオン性及びカチオン性硬化促進剤以外の硬化促進剤、並びに過酸化物等のラジカル性硬化促進剤等が挙げられる。
上記イミダゾール化合物としては、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2-フェニル-4-メチル-5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
上記アミン化合物としては、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエチレンテトラミン、トリエチレンテトラミン及び4,4-ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
上記リン化合物としては、トリフェニルホスフィン化合物等が挙げられる。
上記有機金属化合物としては、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)及びトリスアセチルアセトナートコバルト(III)等が挙げられる。
上記過酸化物としてはジクミルペルオキシド、及びパーヘキシル25B等が挙げられる。
上記硬化促進剤の含有量は特に限定されない。樹脂フィルム中の上記無機充填材及び上記溶剤を除く成分100重量%中、上記硬化促進剤の含有量は好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下である。上記硬化促進剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、樹脂フィルムが効率的に硬化する。上記硬化促進剤の含有量がより好ましい範囲であれば、樹脂フィルムの保存安定性がより一層高くなり、かつより一層良好な硬化物が得られる。
[熱可塑性樹脂]
上記樹脂フィルムは、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。上記熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド樹脂及びフェノキシ樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
硬化環境によらず、誘電正接を効果的に低くし、かつ、金属配線の密着性を効果的に高める観点からは、上記熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂であることが好ましい。フェノキシ樹脂の使用により、樹脂フィルムの回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性の悪化及び無機充填材の不均一化が抑えられる。また、フェノキシ樹脂の使用により、溶融粘度を調整可能であるために無機充填材の分散性が良好になり、かつ硬化過程で、意図しない領域にBステージ化物が濡れ拡がり難くなる。
上記樹脂フィルムに含まれているフェノキシ樹脂は特に限定されない。上記フェノキシ樹脂として、従来公知のフェノキシ樹脂を使用可能である。上記フェノキシ樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型の骨格、ビスフェノールF型の骨格、ビスフェノールS型の骨格、ビフェニル骨格、ノボラック骨格、ナフタレン骨格及びイミド骨格などの骨格を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。
上記フェノキシ樹脂の市販品としては、例えば、新日鉄住金化学社製の「YP50」、「YP55」及び「YP70」、並びに三菱化学社製の「1256B40」、「4250」、「4256H40」、「4275」、「YX6954BH30」及び「YX8100BH30」等が挙げられる。
ハンドリング性、低粗度でのメッキピール強度及び絶縁層と金属層との密着性を高める観点から、上記熱可塑性樹脂は、ポリイミド樹脂(ポリイミド化合物)であることが好ましい。
溶解性を良好にする観点からは、上記ポリイミド化合物は、テトラカルボン酸二無水物とダイマージアミンとを反応させる方法によって得られたポリイミド化合物であることが好ましい。
上記テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’-パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p-フェニレン-ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m-フェニレン-ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)-4,4’-ジフェニルエーテル二無水物、及びビス(トリフェニルフタル酸)-4,4’-ジフェニルメタン二無水物等が挙げられる。
上記ダイマージアミンとしては、例えば、バーサミン551(商品名BASFジャパン社製、3,4-ビス(1-アミノヘプチル)-6-ヘキシル-5-(1-オクテニル)シクロヘキセン)、バーサミン552(商品名、コグニクスジャパン社製、バーサミン551の水添物)、PRIAMINE1075、PRIAMINE1074(商品名、いずれもクローダジャパン社製)等が挙げられる。
なお、上記ポリイミド化合物は末端に、酸無水物構造、マレイミド構造、シトラコンイミド構造を有していてもよい。この場合には、上記ポリイミド化合物とエポキシ化合物とを反応させることができる。上記ポリイミド化合物とエポキシ化合物とを反応させることにより、硬化物の熱寸法安定性を高めることができる。
保存安定性により一層優れた樹脂フィルムを得る観点からは、上記熱可塑性樹脂、上記ポリイミド樹脂及び上記フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5000以上、より好ましくは10000以上、好ましくは100000以下、より好ましくは50000以下である。
上記熱可塑性樹脂、上記ポリイミド樹脂及び上記フェノキシ樹脂の上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
上記熱可塑性樹脂、上記ポリイミド樹脂及び上記フェノキシ樹脂の含有量は特に限定されない。樹脂フィルム中の上記無機充填材及び上記溶剤を除く成分100重量%中、上記熱可塑性樹脂の含有量(熱可塑性樹脂がポリイミド樹脂又はフェノキシ樹脂である場合には、ポリイミド樹脂又はフェノキシ樹脂の含有量)は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、樹脂フィルムの回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性が良好になる。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記下限以上であると、樹脂フィルムの形成がより一層容易になり、より一層良好な絶縁層が得られる。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記上限以下であると、硬化物の熱膨張率がより一層低くなる。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記上限以下であると、硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなる。
[溶剤]
上記樹脂フィルムは、溶剤を含まないか又は含む。上記樹脂組成物は、溶剤を含まないか又は含む。上記溶剤の使用により、樹脂組成物の粘度を好適な範囲に制御でき、樹脂組成物の塗工性を高めることができ、樹脂フィルムを好適に得ることができる。また、上記溶剤は、上記無機充填材を含むスラリーを得るために用いられてもよい。上記溶剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記溶剤としては、アセトン、メタノール、エタノール、ブタノール、2-プロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、2-アセトキシ-1-メトキシプロパン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、N-メチル-ピロリドン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン及び混合物であるナフサ等が挙げられる。
上記溶剤の多くは、上記樹脂組成物をフィルム状に成形するときに、除去されることが好ましい。従って、上記溶剤の沸点は好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。上記樹脂組成物中の上記溶剤の含有量は特に限定されない。上記樹脂組成物の塗工性などを考慮して、上記溶剤の含有量は適宜変更可能である。
上記樹脂フィルムがBステージフィルムである場合には、上記Bステージフィルム100重量%中、上記溶剤の含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。
[他の成分]
耐衝撃性、耐熱性、樹脂の相溶性及び作業性等の改善を目的として、上記樹脂フィルムは、レベリング剤、難燃剤、カップリング剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線劣化防止剤、消泡剤、増粘剤、及び揺変性付与剤等を含んでいてもよい。
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、ビニルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン及びエポキシシラン等が挙げられる。
(樹脂フィルムの他の詳細)
樹脂組成物をフィルム状に成形することにより樹脂フィルムが得られる。樹脂フィルムは、Bステージフィルム(Bステージ化物)であることが好ましい。
樹脂組成物をフィルム状に成形して、樹脂フィルムを得る方法としては、以下の方法が挙げられる。押出機を用いて、樹脂組成物を溶融混練し、押出した後、Tダイ又はサーキュラーダイ等により、フィルム状に成形する押出成形法。溶剤を含む樹脂組成物をキャスティングしてフィルム状に成形するキャスティング成形法。従来公知のその他のフィルム成形法。薄型化に対応可能であることから、押出成形法又はキャスティング成形法が好ましい。フィルムにはシートが含まれる。
樹脂組成物をフィルム状に成形し、熱による硬化が進行し過ぎない程度に、例えば50℃~150℃で1分間~10分間加熱乾燥させることにより、Bステージフィルムである樹脂フィルムを得ることができる。
上述のような乾燥工程により得ることができるフィルム状の樹脂組成物をBステージフィルムと称する。上記Bステージフィルムは、半硬化状態にある。半硬化物は、完全に硬化しておらず、硬化がさらに進行され得る。
上記樹脂フィルムは、プリプレグでなくてもよい。上記樹脂フィルムがプリプレグではない場合には、ガラスクロス等に沿ってマイグレーションが生じなくなる。また、樹脂フィルムをラミネート又はプレキュアする際に、表面にガラスクロスに起因する凹凸が生じなくなる。
上記樹脂フィルムは、金属箔又は基材フィルムと、該金属箔又は該基材フィルムの表面に積層された樹脂フィルムとを備える積層フィルムの形態で用いることができる。上記金属箔は銅箔であることが好ましい。
上記積層フィルムの上記基材フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリブチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル樹脂フィルム、ポリエチレンフィルム及びポリプロピレンフィルム等のオレフィン樹脂フィルム、並びにポリイミド樹脂フィルム等が挙げられる。上記基材フィルムの表面は、必要に応じて、離型処理されていてもよい。
樹脂フィルムの硬化度をより一層均一に制御する観点からは、上記樹脂フィルムの厚さは、好ましくは5μm以上であり、好ましくは200μm以下である。上記樹脂フィルムを回路の絶縁層として用いる場合、上記樹脂フィルムにより形成された絶縁層の厚さは、回路を形成する導体層(金属層)の厚さ以上であることが好ましい。上記絶縁層の厚さは、好ましくは5μm以上であり、好ましくは200μm以下である。
(半導体装置、プリント配線板、銅張積層板及び多層プリント配線板)
上記樹脂フィルムは、半導体装置において半導体チップを埋め込むモールド樹脂を形成するために好適に用いられる。
上記樹脂フィルムは、絶縁材料として好適に用いられる。上記樹脂フィルムは、プリント配線板において絶縁層を形成するために好適に用いられる。
上記プリント配線板は、例えば、上記樹脂フィルムを加熱加圧成形することにより得られる。
上記樹脂フィルムに対して、片面又は両面に金属層を表面に有する積層対象部材を積層できる。金属層を表面に有する積層対象部材と、上記金属層の表面上に積層された樹脂フィルムとを備える、積層構造体を好適に得ることができる。上記樹脂フィルムと上記金属層を表面に有する積層対象部材とを積層する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、平行平板プレス機又はロールラミネーター等の装置を用いて、加熱しながら又は加熱せずに加圧しながら、上記樹脂フィルムを、金属層を表面に有する積層対象部材に積層可能である。
上記金属層の材料は銅であることが好ましい。
上記金属層を表面に有する積層対象部材は、銅箔等の金属箔であってもよい。
上記樹脂フィルムは、銅張積層板を得るために好適に用いられる。上記銅張積層板の一例として、銅箔と、該銅箔の一方の表面に積層された樹脂フィルムとを備える銅張積層板が挙げられる。
上記銅張積層板の上記銅箔の厚さは特に限定されない。上記銅箔の厚さは、1μm~50μmの範囲内であることが好ましい。また、上記樹脂フィルムの硬化物と銅箔との接着強度を高めるために、上記銅箔は微細な凹凸を表面に有することが好ましい。凹凸の形成方法は特に限定されない。上記凹凸の形成方法としては、公知の薬液を用いた処理による形成方法等が挙げられる。
上記樹脂フィルムは、多層基板を得るために好適に用いられる。
上記多層基板の一例として、回路基板と、該回路基板上に積層された絶縁層とを備える多層基板が挙げられる。この多層基板の絶縁層が、上記樹脂フィルムにより形成されている。また、多層基板の絶縁層が、積層フィルムを用いて、上記積層フィルムの上記樹脂フィルムにより形成されていてもよい。上記絶縁層は、回路基板の回路が設けられた表面上に積層されていることが好ましい。上記絶縁層の一部は、上記回路間に埋め込まれていることが好ましい。
上記多層基板では、上記絶縁層の上記回路基板が積層された表面とは反対側の表面が粗化処理されていることが好ましい。
粗化処理方法は、従来公知の粗化処理方法を用いることができ、特に限定されない。上記絶縁層の表面は、粗化処理の前に膨潤処理されていてもよい。
また、上記多層基板は、上記絶縁層の粗化処理された表面に積層された銅めっき層をさらに備えることが好ましい。
また、上記多層基板の他の例として、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された絶縁層と、該絶縁層の上記回路基板が積層された表面とは反対側の表面に積層された銅箔とを備える多層基板が挙げられる。上記絶縁層が、銅箔と該銅箔の一方の表面に積層された樹脂フィルムとを備える銅張積層板を用いて、上記樹脂フィルムを硬化させることにより形成されていることが好ましい。さらに、上記銅箔はエッチング処理されており、銅回路であることが好ましい。
上記多層基板の他の例として、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された複数の絶縁層とを備える多層基板が挙げられる。上記回路基板上に配置された上記複数層の絶縁層の内の少なくとも1層が、上記樹脂フィルムを用いて形成される。上記多層基板は、上記樹脂フィルムを用いて形成されている上記絶縁層の少なくとも一方の表面に積層されている回路をさらに備えることが好ましい。
多層基板のうち多層プリント配線板においては、低い誘電正接が求められ、絶縁層による高い絶縁信頼性が求められる。本発明に係る樹脂フィルムは、多層プリント配線板において、絶縁層を形成するために好適に用いられる。
上記多層プリント配線板は、例えば、回路基板と、上記回路基板の表面上に配置された複数の絶縁層と、複数の上記絶縁層間に配置された金属層とを備える。上記絶縁層の内の少なくとも1層が、上記樹脂フィルムの硬化物である。
図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂フィルムを用いた多層プリント配線板を模式的に示す断面図である。
図1に示す多層プリント配線板11では、回路基板12の上面12aに、複数層の絶縁層13~16が積層されている。絶縁層13~16は、硬化物層である。回路基板12の上面12aの一部の領域には、金属層17が形成されている。複数層の絶縁層13~16のうち、回路基板12側とは反対の外側の表面に位置する絶縁層16以外の絶縁層13~15には、上面の一部の領域に金属層17が形成されている。金属層17は回路である。回路基板12と絶縁層13の間、及び積層された絶縁層13~16の各層間に、金属層17がそれぞれ配置されている。下方の金属層17と上方の金属層17とは、図示しないビアホール接続及びスルーホール接続の内の少なくとも一方により互いに接続されている。
多層プリント配線板11では、絶縁層13~16が、上記樹脂フィルムの硬化物により形成されている。本実施形態では、絶縁層13~16の表面が粗化処理されているので、絶縁層13~16の表面に図示しない微細な孔が形成されている。また、微細な孔の内部に金属層17が至っている。また、多層プリント配線板11では、金属層17の幅方向寸法(L)と、金属層17が形成されていない部分の幅方向寸法(S)とを小さくすることができる。また、多層プリント配線板11では、図示しないビアホール接続及びスルーホール接続で接続されていない上方の金属層と下方の金属層との間に、良好な絶縁信頼性が付与されている。
(粗化処理及び膨潤処理)
上記樹脂フィルムは、粗化処理又はデスミア処理される硬化物を得るために用いられることが好ましい。上記硬化物には、更に硬化が可能な予備硬化物も含まれる。
上記樹脂フィルムを予備硬化させることにより得られた硬化物の表面に微細な凹凸を形成するために、硬化物は粗化処理されることが好ましい。粗化処理の前に、硬化物は膨潤処理されることが好ましい。硬化物は、予備硬化の後、かつ粗化処理される前に、膨潤処理されており、さらに粗化処理の後に硬化されていることが好ましい。ただし、硬化物は、必ずしも膨潤処理されなくてもよい。
上記膨潤処理の方法としては、例えば、エチレングリコールなどを主成分とする化合物の水溶液又は有機溶媒分散溶液などにより、硬化物を処理する方法が用いられる。膨潤処理に用いる膨潤液は、一般にpH調整剤などとして、アルカリを含む。膨潤液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。具体的には、例えば、上記膨潤処理は、40重量%エチレングリコール水溶液等を用いて、処理温度30℃~85℃で1分間~30分間、硬化物を処理することにより行なわれる。上記膨潤処理の温度は50℃~85℃の範囲内であることが好ましい。上記膨潤処理の温度が低すぎると、膨潤処理に長時間を要し、更に硬化物と金属層との接着強度が低くなる傾向がある。
上記粗化処理には、例えば、マンガン化合物、クロム化合物又は過硫酸化合物などの化学酸化剤等が用いられる。これらの化学酸化剤は、水又は有機溶剤が添加された後、水溶液又は有機溶媒分散溶液として用いられる。粗化処理に用いられる粗化液は、一般にpH調整剤などとしてアルカリを含む。粗化液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。
上記マンガン化合物としては、過マンガン酸カリウム及び過マンガン酸ナトリウム等が挙げられる。上記クロム化合物としては、重クロム酸カリウム及び無水クロム酸カリウム等が挙げられる。上記過硫酸化合物としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
硬化物の表面の算術平均粗さRaは、好ましくは10nm以上であり、好ましくは300nm未満、より好ましくは200nm未満、更に好ましくは150nm未満である。この場合には、硬化物と金属層との接着強度が高くなり、更に絶縁層の表面により一層微細な配線が形成される。さらに、導体損失を抑えることができ、信号損失を低く抑えることができる。上記算術平均粗さRaは、JIS B0601:1994に準拠して測定される。
(デスミア処理)
上記樹脂フィルムを予備硬化させることにより得られた硬化物に、貫通孔が形成されることがある。上記多層基板などでは、貫通孔として、ビア又はスルーホール等が形成される。例えば、ビアは、CO2レーザー等のレーザーの照射により形成できる。ビアの直径は特に限定されないが、60μm~80μm程度である。上記貫通孔の形成により、ビア内の底部には、硬化物に含まれている樹脂成分に由来する樹脂の残渣であるスミアが形成されることが多い。
上記スミアを除去するために、硬化物の表面は、デスミア処理されることが好ましい。デスミア処理が粗化処理を兼ねることもある。
上記デスミア処理には、上記粗化処理と同様に、例えば、マンガン化合物、クロム化合物又は過硫酸化合物等の化学酸化剤等が用いられる。これらの化学酸化剤は、水又は有機溶剤が添加された後、水溶液又は有機溶媒分散溶液として用いられる。デスミア処理に用いられるデスミア処理液は、一般にアルカリを含む。デスミア処理液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。
上記樹脂フィルムの使用により、スミア除去性を高めつつ、デスミア処理された硬化物の表面の表面粗さを十分に低く抑えることができる。
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
以下の材料を用意した。
(熱硬化性化合物)
ビフェニル型エポキシ化合物(日本化薬社製「NC-3000」)
特殊ビスフェノールA型エポキシ化合物(三菱ケミカル社製「YX8034」)
(アミン系化合物)
アニリン(東京化成社製)
N,N-ジイソプロピルエチルアミン(東京化成社製)
アニリンノボラック化合物(以下の合成例1により合成)
<合成例1>
N-エチルアニリン化合物(1mol)に塩酸(1.05mol)を加え、液温を35℃に保ちながら、ホルムアルデヒド水溶液0.5molを滴下した。滴下後、35℃で2時間及び95℃で2時間、縮合反応を行った後、反応液を常温に冷却し、水酸化ナトリウムにて中和を行った。反応物をトルエンにて抽出して、水にて洗浄後、溶媒を留去してアニリンノボラック化合物を得た(特開2003-137970号公報を参照)。
(無機充填材)
シリカ1含有スラリー:
SO-C4(アドマテックス社製、平均粒径1.0μmのシリカ)100gに対し、KBM-403(信越化学社製、エポキシシランカップリング剤)を0.37g処理した。シリカ1含有スラリーは、表面処理物75重量%とシクロヘキサノン25重量%とを含む。
シリカ2含有スラリー:
SO-C4(アドマテックス社製、平均粒径1.0μmのシリカ)100gに対し、KBM-573(信越化学社製、アミノフェニルシランカップリング剤)を4g処理した。シリカ2含有スラリーは、表面処理物75重量%とシクロヘキサノン25重量%とを含む。
シリカ2含有スラリーに対して、以下の洗浄操作を1回行い、洗浄1回のシリカ2を得た。
シリカ2含有スラリーに対して、以下の洗浄操作を4回行い、洗浄4回のシリカ2を得た。
<無機充填材の洗浄操作>
シリカスラリーを遠心分離機(久保田商事社製「Model 7780」)を用いて、10000rpmで10分間の遠心分離を行ったのち、上澄み溶媒を除去した。エタノールを加え、高速分散機(プライミクス社製「ホモディスパー 2.5型」)を用いて800rpmで10分間撹拌した。10000rpmで10分間の遠心分離を行ったのち、上澄み溶媒を除去した。上記の操作を洗浄操作1回とした。
(硬化剤)
活性エステル化合物含有液(DIC社製「HPC-8900-70BK」、固形分70重量%)
フェノール化合物含有液(DIC社製「LA-1356」、固形分60重量%)
(硬化促進剤)
ジメチルアミノピリジン(和光純薬工業社製「DMAP」)
(熱可塑性樹脂)
フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX6954BH30」、固形分70重量%)
(実施例1~5及び比較例1~4)
下記の表1,2に示す成分を下記の表1,2に示す配合量(単位は固形分重量部)で配合し、均一な溶液となるまで常温で攪拌し、樹脂組成物を得た。
樹脂フィルムの作製:
アプリケーターを用いて、離型処理されたPETフィルム(東レ社製「XG284」、厚み25μm)の離型処理面上に得られた樹脂組成物を塗工した後、100℃のギヤオーブン内で2分30秒間乾燥し、溶剤を揮発させた。このようにして、PETフィルム上に、厚さが40μmである樹脂フィルム(Bステージフィルム)が積層されている積層フィルム(PETフィルムと樹脂フィルムとの積層フィルム)を得た。
(評価)
(1)樹脂フィルム中のアミン系化合物の含有量
得られた樹脂フィルムをクロロホルムに溶解し、約10重量%のクロロホルム溶液を調製して、上澄み液を採取し、試料溶液とした。また、0.001μg/mL、0.005μg/mL、0.01μg/mL、0.05μg/mL、0.1μg/mL、0.5μg/mL、1.5μg/mL、10μg/mLのアミン系化合物を含むクロロホルム溶液(アニリン標準試料溶液、N,N-ジイソプロピルエチルアミン標準試料溶液、アニリンノボラック化合物標準試料溶液)を調製した。得られた試料溶液、アニリン試料溶液、N,N-ジイソプロピルエチルアミン標準試料溶液、アニリンノボラック化合物標準試料溶液について、GC/MS装置(GC:Agilent製「7890B」、MS:日本電子製「Q1500」)を用いて定量することにより、樹脂フィルム中のアニリンの含有量を求めた。なお、GCカラムとしてアミンカラムを用いた。
(2)デスミア性(ビア底の残渣の除去性)
ラミネート・半硬化処理:
100mm角の両面銅張積層板(CCL基板)(日立化成工業社製「MCL-E-679FG(R)」)を用意した。この両面銅張積層板の銅箔面の両面をメック社製「Cz8101」に浸漬して、銅箔の表面を粗化処理した。粗化処理された銅張積層板の両面に、名機製作所社製「バッチ式真空ラミネーターMVLP-500-IIA」を用いて、積層フィルムの樹脂フィルム(Bステージフィルム)側を銅張積層板上に重ねてラミネートして、積層構造体を得た。なお、ラミネートの条件は、30秒減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、100℃及び圧力0.4MPaでプレスし、さらに100℃及び圧力1.0MPaで60秒間プレスする条件とした。
得られた積層構造体において、PETフィルムを剥がした後、180℃で30分間加熱して、樹脂フィルムを半硬化させた。このようにして、CCL基板に樹脂フィルムの半硬化物が積層されている積層体Aを得た。
ビア(貫通孔)形成:
得られた積層体Aの樹脂フィルムの半硬化物に、CO2レーザー(日立ビアメカニクス社製「LC-1K21」)を用いて、上端での直径が60μm、下端(底部)での直径が40μmであるビア(貫通孔)を形成した。このようにして、CCL基板に樹脂フィルムの半硬化物が積層されており、かつ樹脂フィルムの半硬化物にビア(貫通孔)が形成されている積層体Bを得た。
ビア底の残渣の除去処理:
(a)膨潤処理
60℃の膨潤液(アトテックジャパン社製「スウェリングディップセキュリガントP」)に、得られた積層体Bを入れて、10分間揺動させた。その後、純水で洗浄した。
(b)過マンガン酸塩処理(粗化処理及びデスミア処理)
80℃の過マンガン酸カリウム(アトテックジャパン社製「コンセントレートコンパクトCP」)粗化水溶液に、膨潤処理後の積層体Bを入れて、30分間揺動させた。次に、25℃の洗浄液(アトテックジャパン社製「リダクションセキュリガントP」)を用いて2分間処理した後、純水で洗浄を行い、評価サンプルを得た。
評価サンプルのビアの底部を走査電子顕微鏡(SEM)にて観察し、ビア底の壁面からの最大スミア長を測定した。ビア底の残渣の除去性を以下の基準で判定した。
[デスミア性の判定基準]
○○:最大スミア長が1μm未満
○:最大スミア長が1μm以上2μm未満
△:最大スミア長が2μm以上4μm未満
×:最大スミア長が4μm以上
(3)メッキピール強度
無電解めっき処理:
(2)デスミア性の評価で得られた評価サンプルの粗化処理された硬化物の表面を、60℃のアルカリクリーナ(アトテックジャパン社製「クリーナーセキュリガント902」)で5分間処理し、脱脂洗浄した。洗浄後、上記硬化物を25℃のプリディップ液(アトテックジャパン社製「プリディップネオガントB」)で2分間処理した。その後、上記硬化物を40℃のアクチベーター液(アトテックジャパン社製「アクチベーターネオガント834」)で5分間処理し、パラジウム触媒を付けた。次に、30℃の還元液(アトテックジャパン社製「リデューサーネオガントWA」)により、硬化物を5分間処理した。
次に、上記硬化物を化学銅液(アトテックジャパン社製「ベーシックプリントガントMSK-DK」、「カッパープリントガントMSK」、「スタビライザープリントガントMSK」、及び「リデューサーCu」)に入れ、無電解めっきをめっき厚さが0.5μm程度になるまで実施した。無電解めっき後に、残留している水素ガスを除去するため、120℃の温度で30分間アニール処理した。なお、無電解めっきの工程までの全ての工程は、ビーカースケールで処理液を2Lとし、硬化物を揺動させながら実施した。
電解めっき処理:
次に、無電解めっき処理された硬化物に、電解めっきをめっき厚さが25μmとなるまで実施した。電解銅めっきとして硫酸銅溶液(和光純薬工業社製「硫酸銅五水和物」、和光純薬工業社製「硫酸」、アトテックジャパン社製「ベーシックレベラーカパラシド HL」、アトテックジャパン社製「補正剤カパラシド GS」)を用いて、0.6A/cm2の電流を流しめっき厚さが25μm程度となるまで電解めっきを実施した。銅めっき処理後、硬化物を200℃で60分間加熱し、硬化物を更に硬化させた。このようにして、銅めっき層が上面に積層された硬化物を得た。
メッキピール強度の測定:
得られた銅めっき層が上面に積層された硬化物の銅めっき層の表面に10mm幅の短冊状の切込みを、5mm間隔で合計6箇所入れた。90°剥離試験機(テスター産業社製「TE-3001」)に銅めっき層が上面に積層された硬化物をセットし、つかみ具で切込みの入った銅めっき層の端部をつまみあげ、ビアが形成された箇所を避けて銅めっき層を20mm剥離して剥離強度(メッキピール強度)を測定した。6箇所の切り込み箇所に対してそれぞれ剥離強度(メッキピール強度)を測定し、メッキピール強度の平均値を求めた。メッキピール強度を下記の基準で判定した。
[メッキピール強度の判定基準]
○:メッキピール強度の平均値が0.5kgf/cm以上
△:メッキピール強度の平均値が0.4kgf/cm以上0.5kgf/cm未満
×:メッキピール強度の平均値が0.4kgf/cm未満
(4)アンジュレーション
積層工程(積層サンプルAの作製):
銅張積層板(厚さ150μmのガラスエポキシ基板と厚さ35μmの銅箔との積層体)を用意した。銅箔をエッチング処理し、L/Sが2mm/2mm及び長さが5cmである銅パターンを10本作製し、アンジュレーション評価用基板を作製した。
得られたアンジュレーション評価用基板の両面を銅表面粗化剤(メック社製「メックエッチボンド CZ-8101」)に浸漬して、銅表面を粗化処理した。
得られた樹脂フィルムを、アンジュレーション評価用基板の粗化処理した銅表面上に重ねて、名機製作所社製「バッチ式真空ラミネーターMVLP-500-IIA」を用いて、アンジュレーション評価用基板上に樹脂フィルムが積層されている積層体を作製した。なお、ラミネートの条件は、30秒減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、100℃及び圧力0.4MPaでプレスする条件とした。その後、真空ラミネートし、さらに100℃及び圧力1.0MPaで60秒間プレスした。
得られた積層体において、PETフィルムを剥がした後、180℃で30分間硬化させ、樹脂フィルムを硬化させて、絶縁層を形成した。このようにして、アンジュレーション評価用基板上に樹脂フィルムの硬化物が積層された積層サンプルAを作製した。
得られた積層サンプルAにおいて、Veeco社製「WYKO」を用いて、硬化物のアンジュレーション評価用基板とは反対側の表面を観察することにより、アンジュレーションの値を測定した。具体的には、硬化物表面の凹凸の隣り合う凹部部分と凸部部分との高低差の最大値をアンジュレーションの値として採用した。アンジュレーションを下記の基準で判定した。
[アンジュレーションの判定基準]
○○:アンジュレーションの値が1μm以下
○:アンジュレーションの値が1μmを超え1.5μm以下
△:アンジュレーションの値が1.5μmを超え2μm以下
×:アンジュレーションの値が2μmを超える
組成及び結果を下記の表1,2に示す。