以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
第1実施形態について、図1を参照しながら説明する。本実施形態に係る複合型熱交換器10は、車両(全体構成は不図示)に備えられる空調用熱交換器100と、冷却用熱交換器200と、を組み合わせた複合型熱交換器として構成されている。本実施形態において、複合型熱交換器10が搭載されている車両は、内燃機関と回転電機との両方の駆動力によって走行する、所謂ハイブリッド車両として構成されている。複合型熱交換器10の構成について説明する前に、車両に設けられた冷却水の循環経路など、複合型熱交換器10の周辺における構成について先ず説明する。
車両には、内燃機関11と、ターボチャージャー12と、インタークーラ13と、強電系機器14と、が設けられている。
内燃機関11は所謂エンジンであって、内部で燃料を燃焼させて車両の走行力を生じさせる装置である。内燃機関11では、燃料の燃焼に伴って熱が生じる。内燃機関11の温度が上昇し過ぎることを防止するために、内燃機関11には冷却水が通る流路が形成されており、当該流路に冷却水を流すことによって内燃機関11の冷却が行われる。車両には、内燃機関11に冷却水を供給するための機構として、ポンプ15と、ラジエータ20とが設けられている。
ポンプ15は、ラジエータ20から排出された冷却水を内燃機関11に向けて送り出し、これによりラジエータ20と内燃機関11との間で冷却水を循環させるためのポンプである。ポンプ15は内燃機関11に隣接するように設けられており、ポンプ15から送り出された冷却水は内燃機関11の流路に直接供給される。また、ラジエータ20とポンプ15との間は配管32を介して接続されており、内燃機関11とラジエータ20との間は配管31を介して接続されている。
ラジエータ20は、外部から導入された空気と冷却水との間で熱交換を行うための熱交換器である。ラジエータ20の後方側(図1では上側)には、ラジエータ20を通過するように空気の流れを生じさせるための電動ファン21が設けられている。ポンプ15が動作しているときには、内燃機関11を通り高温となった冷却水が、配管31を通ってラジエータ20に供給される。ラジエータ20では、空気との熱交換によって冷却水の温度が低下する。ラジエータ20を通り低温となった冷却水は、配管32を通ってポンプ15に供給され、内燃機関11に向けて送り出される。このように、ラジエータ20は、内燃機関11で生じた熱を空気に放出し、内燃機関11の温度を適温に保つための装置として機能する。
ラジエータ20は、車両の内部、具体的にはフロントグリルの後方側となる位置であり、且つ複合型熱交換器10よりも後方側となる位置に設置されている。後に説明するように、フロントグリルから導入された空気は、複合型熱交換器10における熱交換に供されてその温度を上昇させた後、ラジエータ20における熱交換に供されて更にその温度を上昇させる。図1では、不図示のフロントグリルから流入し複合型熱交換器10に向かう空気の流れが、矢印AR1で示されている。また、複合型熱交換器10を通過しラジエータ20に向かう空気の流れが、矢印AR3で示されている。
尚、ラジエータ20は、本実施形態のように複合型熱交換器10とは別体の熱交換器として設けられていてもよいのであるが、複合型熱交換器10と一体となった熱交換器として設けられていてもよい。つまり、ラジエータ20が複合型熱交換器10の一部として設けられているような態様であってもよい。
ターボチャージャー12は、内燃機関11に供給される空気(吸気)を予め圧縮するための装置である。インタークーラ13は、ターボチャージャー12で圧縮され高温となった空気を、冷却水との熱交換によって冷却するための装置である。ターボチャージャー12及びインタークーラ13のそれぞれには、複合型熱交換器10が備える冷却用熱交換器200から排出された冷却水が供給される。
車両にはポンプ16が設けられている。ポンプ16は、冷却用熱交換器200から排出された冷却水をターボチャージャー12等に向けて送り出し、これによりターボチャージャー12等と冷却用熱交換器200との間で冷却水を循環させるためのポンプである。ポンプ16と冷却用熱交換器200との間は配管57を介して接続されており、ポンプ16とターボチャージャー12等との間は配管58を介して接続されている。また、配管58のうち下流側の端部は2つの配管(配管581、582)に分岐している。一方の配管581はターボチャージャー12に接続されており、他方の配管582はインタークーラ13に接続されている。
ターボチャージャー12の冷却水出口には、配管591の一端が接続されている。また、インタークーラ13の冷却水出口には、配管592の一端が接続されている。配管591及び配管592のそれぞれの他端は、いずれも配管59の一端に接続されている。配管59の他端と、冷却用熱交換器200との間は、配管51を介して接続されている。
ポンプ16が動作しているときには、冷却用熱交換器200から排出された冷却水が配管57を通ってポンプ16に供給される。ポンプ16から送り出された冷却水は、配管58を通った後、その一部が配管581を通ってターボチャージャー12に供給され、残りが配管582を通ってインタークーラ13に供給される。
ターボチャージャー12に供給された冷却水は、ターボチャージャー12の冷却に供されることによりその温度を上昇させた後、配管591へと排出される。また、インタークーラ13に供給された冷却水は、インタークーラ13の冷却に供されることによりその温度を上昇させた後、配管592へと排出される。これら冷却水は配管59において合流した後、配管51を通って冷却用熱交換器200に供給される。
冷却用熱交換器200では、空気との熱交換によって冷却水の温度が低下する。これにより低温となった冷却水がターボチャージャー12及びインタークーラ13のそれぞれに再び供給され、それぞれの冷却のために供される。このように、冷却用熱交換器200は、ターボチャージャー12等の熱を空気に放出し、これによりターボチャージャー12等を冷却する機能を有している。ターボチャージャー12及びインタークーラ13はいずれも、本実施形態における「冷却対象機器」に該当する。
強電系機器14は、例えば車両に搭載された電力変換器や回転電機等、比較的高電圧の電力が入出力される機器である。図1においては、このように複数の機器からなる強電系機器14の全体が単一ブロックとして示されている。強電系機器14は、その動作中において比較的大きな熱が生じる。このため、本実施形態では、ターボチャージャー12等と同様に、強電系機器14にも冷却用熱交換器200からの冷却水が供給される構成となっている。
車両にはポンプ17が設けられている。ポンプ17は、冷却用熱交換器200から排出された冷却水を強電系機器14に向けて送り出し、これにより強電系機器14と冷却用熱交換器200との間で冷却水を循環させるためのポンプである。ポンプ17と冷却用熱交換器200との間は配管52を介して接続されており、ポンプ17と強電系機器14との間は配管53を介して接続されている。また、強電系機器14の冷却水出口と、配管51の上流側端部(配管59との接続部分)との間は、配管54で接続されている。
ポンプ17が動作しているときには、冷却用熱交換器200から排出された冷却水が配管52を通ってポンプ17に供給される。ポンプ17から送り出された冷却水は、配管53を通って強電系機器14に供給される。強電系機器14に供給された冷却水は、強電系機器14の冷却に供されることによりその温度を上昇させた後、配管54及び配管51を順に通って冷却用熱交換器200に供給される。冷却用熱交換器200では、空気との熱交換によって冷却水の温度が低下する。これにより低温となった冷却水が強電系機器14に再び供給され、強電系機器14の冷却のために供される。
このように、冷却用熱交換器200は、強電系機器14の熱を空気に放出し、これにより強電系機器14を冷却する機能を有している。強電系機器14は、既に述べたターボチャージャー12及びインタークーラ13と共に、本実施形態における「冷却対象機器」に該当する。
複合型熱交換器10が備える空調用熱交換器100は、車両に設けられた空調装置(全体は不図示)の一部として機能する部分である。具体的には、空調装置が備える冷凍サイクルのうち、冷媒を凝縮させるコンデンサ(凝縮器)として機能する部分である。
冷凍サイクルは、コンデンサである空調用熱交換器100の他、コンプレッサと、エバポレータと、膨張弁とを有している。コンプレッサが動作すると、空調用熱交換器100には、配管41を介してコンプレッサから高温の気相冷媒が供給される。空調用熱交換器100の内部では、空気との熱交換によって冷媒は気相から液相へと変化する。また、当該熱交換によって、空調用熱交換器100を通過する空気はその温度を上昇させる。
液相となった冷媒は空調用熱交換器100から排出され、配管43及び膨張弁を介してエバポレータに供給される。冷媒は、膨張弁を通過する際においてその圧力及び温度を低下させる。エバポレータでは、空気との熱交換によって冷媒は液相から再び気相へと変化する。気相となった冷媒はエバポレータから排出され、コンプレッサに戻る。尚、このような冷凍サイクルを備える空調装置の構成としては公知のものを採用し得るので、その具体的な図示や説明を省略する。
尚、空調装置は、冷媒の流れる経路を電磁弁によって切り換えて、空調用熱交換器100がコンデンサとして機能する状態と、エバポレータとして機能する状態と、のいずれをもとり得るように構成されていてもよい。この場合、空調用熱交換器100はヒートポンプシステムの室外機として機能することとなる。
複合型熱交換器10の構成について説明する。複合型熱交換器10は、空調用熱交換器100と冷却用熱交換器200とを備えており、これら2つの熱交換器が一体となるように構成されている。これまで述べたように、空調用熱交換器100は、車両に設けられた空調装置を循環する冷媒と空気との間で熱交換を行うための熱交換器である。また、冷却用熱交換器200は、車両に設けられたターボチャージャー12等の冷却対象機器を通る冷却水と空気との間で熱交換を行うための熱交換器である。
図1に示されるように、空調用熱交換器100は、第1空調用熱交換部110と、第2空調用熱交換部120とに分かれた構成となっている。第1空調用熱交換部110と第2空調用熱交換部120との間は配管42を介して接続されている。第2空調用熱交換部120には、コンプレッサから伸びる配管41の端部が接続されている。第1空調用熱交換部110には、エバポレータに向かう配管43の端部が接続されている。このため、空調装置を循環する冷媒は、配管41、第2空調用熱交換部120、配管42、第1空調用熱交換部110、及び配管43を順に通る。
このように、本実施形態では、冷媒が第2空調用熱交換部120を通った後に第1空調用熱交換部110を通るよう、空調用熱交換器100が構成されている。このような構成においては、冷媒は第2空調用熱交換部120を通る際に放熱し、凝縮液化した後、第1空調用熱交換部110を通る際に冷却される。本実施形態では、過冷却された液相冷媒が第1空調用熱交換部110を通るように構成されている。換言すれば、第1空調用熱交換部110が所謂サブクール部として機能するように構成されている。
冷却用熱交換器200は、第1冷却用熱交換部210と、第2冷却用熱交換部220とに分かれた構成となっている。第2冷却用熱交換部220には、配管51の下流側端部が接続されている。また、第2冷却用熱交換部220には、配管52の上流側端部が接続されている。
配管52の途中には、切り換えバルブ521が設けられている。切り換えバルブ521と第1冷却用熱交換部210との間は、配管56を介して接続されている。切り換えバルブ521は、第2冷却用熱交換部220から排出された冷却水が強電系機器14及び第1冷却用熱交換部210の両方に向かう状態と、第2冷却用熱交換部220から排出された冷却水が強電系機器14のみに向かう状態と、を切り換えるために設けられた電磁弁である。以下においては特に断らない限り、切り換えバルブ521の状態は前者の状態になっているものとして説明する。
尚、このような切り換えバルブ521に替えて、単なる分岐具が設けられているような態様であってもよい。すなわち、第2冷却用熱交換部220から排出された冷却水が、常に強電系機器14及び第1冷却用熱交換部210の両方に向かうように構成されていてもよい。
第1冷却用熱交換部210には、配管57の上流側端部が接続されている。本実施形態では、冷却水が第2冷却用熱交換部220を通った後に第1冷却用熱交換部210を通るよう、冷却用熱交換器200が構成されている。このような構成においては、冷却水は先ず第2冷却用熱交換部220を通る際においてその温度を低下させる。当該冷媒の一部は、配管52及び配管53を通り強電系機器14に向かって流れる。また、当該冷媒の残部は、配管52から配管56を通り第1冷却用熱交換部210に供給され、第1冷却用熱交換部210を通る際において更にその温度を低下させる。低温となった冷却水は、配管57及び配管58を通りターボチャージャー12及びインタークーラ13に向かって流れる。
本実施形態では、インタークーラ13を冷却する際における目標温度が50℃以下に設定されており、強電系機器14を冷却する際における目標温度が65度以下に設定されている。目標温度が高めに設定されている強電系機器14には、第2冷却用熱交換部220のみを通った比較的高温の冷却水が供給される。また、目標温度が低めに設定されているインタークーラ13には、第2冷却用熱交換部220及び第1冷却用熱交換部210の両方を通った比較的低温の冷却水が供給される。このように、複合型熱交換器10は、各冷却対象機器の目標温度に応じて異なる温度の冷却水が供給される構成となっている。
図1は、下方側が車両の前方側となり、上方側が車両の後方側となるように描かれている。従って、複合型熱交換器10に供給される空気の流れは、矢印AR1で示されるように、図1の下方側から上方側に向かうような流れとなる。
本実施形態では、空気の流れる方向に沿って上流側となる位置に第1空調用熱交換部110が配置されており、空気の流れる方向に沿って下流側となる位置に第2空調用熱交換部120が配置されている。同様に、空気の流れる方向に沿って上流側となる位置に第1冷却用熱交換部210が配置されており、空気の流れる方向に沿って下流側となる位置に第2冷却用熱交換部220が配置されている。
尚、上記における「空気の流れる方向」とは、熱交換器を設計する上で、空気が通過すると想定された方向のことを示すものであり、具体的には熱交換器のコア部(後述)に対して垂直な方向を示すものである。以下においても同様である。
尚、図1においては、第2冷却用熱交換部220よりも前方側にとなる位置に第2空調用熱交換部120が配置されているように描かれているのであるが、実際には、空気の流れ方向に沿った同一の位置に両者が配置されている。同様に、図1においては、第1空調用熱交換部110よりも前方側にとなる位置に第1冷却用熱交換部210が配置されているように描かれているのであるが、実際には、空気の流れ方向に沿った同一の位置に両者が配置されている。図1では、第1空調用熱交換部110等を通過して第2空調用熱交換部120等に向かう空気の流れが、矢印AR2で示されている。
複合型熱交換器10の更に具体的な構成について、図2及び図3を参照しながら説明する。図2に示されるように、複合型熱交換器10は、2つの熱交換器300、400を空気の流れ方向(矢印AR1)に沿って並べたような構成となっている。空気の流れ方向における上流側に配置された熱交換器300のうち、点線DL1よりも上方側の部分が第1冷却用熱交換部210に該当し、点線DL1よりも下方側の部分が第1空調用熱交換部110に該当する。また、空気の流れ方向における下流側に配置された熱交換器400のうち、点線DL1よりも上方側の部分が第2空調用熱交換部120に該当し、点線DL1よりも下方側の部分が第2冷却用熱交換部220に該当する。
このように、本実施形態では、第1空調用熱交換部110が第1冷却用熱交換部210の下方側となる位置に配置されており、第2空調用熱交換部120が第2冷却用熱交換部220の上方側となる位置に配置されている。
熱交換器300は、タンク311と、タンク312と、チューブ320と、フィン330とを有している。
タンク311は略円柱形状に形成されている。タンク311は、その長手方向を鉛直方向に沿わせた状態で、熱交換器300の右側(車両の左右方向における右側、以下同様)部分に配置されている。タンク311の内部空間は、不図示のセパレータによって上下2つの空間に仕切られている。図2では、当該セパレータが設けられている位置の高さが点線DL1で示されている。タンク311のうち点線DL1よりも上方側の部分を冷却水が通過し、点線DL1よりも下方側の部分を冷媒が通過する。
タンク312は略円柱形状に形成されている。タンク312は、その長手方向を鉛直方向に沿わせた状態で、熱交換器300の左側部分に配置されている。タンク312の内部空間も、点線DL1の高さにおいて、セパレータ350(図3を参照)により上下2つの空間に仕切られている。タンク312のうち点線DL1よりも上方側の部分を冷却水が通過し、点線DL1よりも下方側の部分を冷媒が通過する。
図3には、タンク312の内部の構成が分解組立図として示されている。タンク312の内部空間を上下2つに区切るセパレータ350は、水平面に沿うように配置された板状の部材として形成されている。上面視におけるセパレータ350の外形は、タンク312の内周面の形状と概ね同じである。セパレータ350は、その先端部分に突起351が形成されている。タンク312のうち、点線DL1と同一の高さとなる位置には、スリット状の開口SL1が形成されている。セパレータ350は、その突起351を開口SL1に挿通させた状態で、且つその外周部分の全体をタンク312の内壁面に当接させた状態で、タンク312に対してろう付けされ固定されている。タンク311の内部構成も、図3に示されるタンク312の内部構成と同じである。
図2に戻って説明を続ける。チューブ320は、その断面が扁平形状となるように形成された管であって、熱交換器300に複数本設けられている。チューブ320は、タンク311とタンク312との間を繋ぐように設けられている。チューブ320は、その平坦な面を互いに対向させた状態で、タンク311等の長手方向(つまり上下方向)に沿って並ぶように設けられている。チューブ320の内部には冷媒又は冷却水が通る流路が形成されている。これにより、タンク311の内部空間とタンク312の内部空間とは、それぞれのチューブ320によって連通されている。
タンク311のうち点線DL1よりも上方側の部分には、配管56の一端が接続されている。配管56は、タンク311の側面に形成された穴(不図示)に挿通された状態で、当該穴の縁に対してろう付けされ固定されている。また、タンク312のうち点線DL1よりも上方側の部分には、配管57の一端が接続されている。配管57は、タンク312の側面に形成された穴HL1(図3を参照)に挿通された状態で、穴HL1の縁に対してろう付けされ固定されている。
タンク311のうち点線DL1よりも下方側の部分には、配管43の一端が接続されている。配管43は、タンク311の側面に形成された穴(不図示)に挿通された状態で、当該穴の縁に対してろう付けされ固定されている。また、タンク312のうち点線DL1よりも下方側の部分には、配管42の一端が接続されている。配管42は、タンク312の側面に形成された穴HL3(図3を参照)に挿通された状態で、穴HL3の縁に対してろう付けされ固定されている。
熱交換器300のうち点線DL1よりも上方側の部分、すなわち第1冷却用熱交換部210として機能する部分では、タンク311を通過した冷却水が、それぞれのチューブ320を通ってタンク312に流入する。冷却水は、チューブ320を通る際に、矢印AR1に沿って外部を流れる空気との熱交換により冷却される。一方、熱交換器300のうち点線DL1よりも下方側の部分、すなわち第1空調用熱交換部110として機能する部分では、タンク312を通過した冷媒が、それぞれのチューブ320を通ってタンク311に流入する。冷媒は、チューブ320を通る際に、矢印AR1に沿って外部を流れる空気との熱交換により凝縮液化される。
フィン330は、金属板を波状に折り曲げることにより形成されたものである。フィン330は、熱交換器300の全体、すなわち第1空調用熱交換部110及び第1冷却用熱交換部210の両方において、それぞれのチューブ320の間に配置されている。波状であるフィン330のそれぞれの頂部は、チューブ320の外表面に対して当接しており、且つろう付けされている。このため、熱交換器300を通過する空気の熱は、チューブ320を介して冷却水等に伝達されるだけでなく、フィン330を介しても冷却水等に伝達される。つまり、フィン330によって空気との接触面積が大きくなっており、冷却水等と空気との熱交換が効率よく行われる。
熱交換器300のうち、冷却水又は冷媒と空気との間で熱交換が行われる部分、つまりチューブ320とフィン330とが積層されている部分のことを、以下では熱交換器300のコア部とも称する。同様に、当該コア部のうち、点線DL1よりも上方側の部分のことを以下では第1冷却用熱交換部210のコア部と称することがあり、点線DL1よりも下方側の部分のことを以下では第1空調用熱交換部110のコア部と称することがある。
熱交換器300のうち最も上方側部分にはサイドプレート341が設けられており、最も下方側部分にはサイドプレート342が設けられている。サイドプレート341、342は、いずれも金属板を曲げ加工することにより形成された部材であって、タンク311とタンク312との間を繋ぐように設けられている。サイドプレート341、342は、熱交換器300のコア部を上下両側から挟み込むことにより、コア部を補強してその形状を維持するためのものである。
熱交換器400の構成は、以上に説明した熱交換器300の構成と概ね同じである。熱交換器400は、タンク411と、タンク412と、チューブ420と、フィン430とを有している。チューブ420及びフィン430の図示は省略されているが、これらの構成は、チューブ320及びフィン330の構成とそれぞれ同一である。タンク411の内部空間とタンク412の内部空間とは、それぞれのチューブ420によって連通されている。
タンク411の内部空間は、不図示のセパレータによって上下2つの空間に仕切られている。当該セパレータが設けられている位置の高さは、熱交換器300の場合と同様に、点線DL1で示される高さとなっている。タンク411のうち点線DL1よりも上方側の部分を冷媒が通過し、点線DL1よりも下方側の部分を冷却水が通過する。
タンク412の内部空間も、点線DL1の高さにおいて、セパレータ450(図3を参照)により上下2つの空間に仕切られている。タンク412のうち点線DL1よりも上方側の部分を冷媒が通過し、点線DL1よりも下方側の部分を冷却水が通過する。
図3に示されるように、タンク312の内部空間を上下2つに区切るセパレータ450は、セパレータ350と同一形状の板状の部材である。上面視におけるセパレータ450の外形は、タンク412の内周面の形状と概ね同じである。セパレータ450は、その先端部分に突起451が形成されている。タンク412のうち、点線DL1と同一の高さとなる位置には、スリット状の開口SL2が形成されている。セパレータ450は、その突起451を開口SL2に挿通させた状態で、且つその外周部分の全体をタンク412の内壁面に当接させた状態で、タンク412に対してろう付けされ固定されている。タンク411の内部構成も、図3に示されるタンク412の内部構成と同じである。
タンク411のうち点線DL1よりも上方側の部分には、配管41の一端が接続されている。配管41は、タンク411の側面に形成された穴(不図示)に挿通された状態で、当該穴の縁に対してろう付けされ固定されている。また、タンク412のうち点線DL1よりも上方側の部分には、配管42の一端が接続されている。配管42は、タンク412の側面に形成された穴HL2(図3を参照)に挿通された状態で、穴HL2の縁に対してろう付けされ固定されている。
尚、第1空調用熱交換部110を本実施形態のようにサブクール部として用いる場合には、第2空調用熱交換部120と第1空調用熱交換部110とを繋ぐ配管42の途中となる位置にモジュレータタンク(気液分離器)を配置してもよい。このような構成においては、第2空調用熱交換部120のタンク412から排出された冷媒は、先ずモジュレータタンクに流入する。その後、モジュレータタンクの内部において冷媒は気液分離された状態となり、液相冷媒のみがモジュレータタンクからタンク312を介して第1空調用熱交換部110に流入することとなる。
タンク411のうち点線DL1よりも下方側の部分には、配管56に繋がる配管52(図2では不図示。図1を参照)の一端が接続されている。配管52は、タンク411の側面に形成された穴(不図示)に挿通された状態で、当該穴の縁に対してろう付けされ固定されている。また、タンク412のうち点線DL1よりも下方側の部分には、配管51の一端が接続されている。配管51は、タンク412の側面に形成された穴HL4(図3を参照)に挿通された状態で、穴HL4の縁に対してろう付けされ固定されている。
熱交換器400のうち点線DL1よりも上方側の部分、すなわち第2空調用熱交換部120として機能する部分では、タンク411を通過した冷媒が、それぞれのチューブ420を通ってタンク412に流入する。冷媒は、チューブ420を通る際に、矢印AR1に沿って外部を流れる空気との熱交換により冷却される。当該空気は、第1冷却用熱交換部210を通過してその温度を上昇させた後の空気である。
一方、熱交換器400のうち点線DL1よりも下方側の部分、すなわち第2冷却用熱交換部220として機能する部分では、タンク412を通過した冷却水が、それぞれのチューブ420を通ってタンク411に流入する。冷却水は、チューブ420を通る際に、矢印AR1に沿って外部を流れる空気との熱交換により冷却される。当該空気は、第1空調用熱交換部110を通過してその温度を上昇させた後の空気である。
熱交換器400のうち、冷却水又は冷媒と空気との間で熱交換が行われる部分、つまりチューブ420とフィン430とが積層されている部分のことを、以下では熱交換器400のコア部とも称する。同様に、当該コア部のうち、点線DL1よりも上方側の部分のことを以下では第2空調用熱交換部120のコア部と称することがあり、点線DL1よりも下方側の部分のことを以下では第2冷却用熱交換部220のコア部と称することがある。
熱交換器400のうち最も上方側部分にはサイドプレート441が設けられており、最も下方側部分にはサイドプレート442(不図示)が設けられている。サイドプレート441、442は、いずれも金属板を曲げ加工することにより形成された部材であって、タンク411とタンク412との間を繋ぐように設けられている。サイドプレート441、442は、熱交換器400のコア部を上下両側から挟み込むことにより、コア部を補強してその形状を維持するためのものである。
熱交換器300と熱交換器400とは、空気が流れる方向に沿ってそれぞれのコア部を重ね合わせた状態で、互いに固定されている。その固定方法としては、種々の方法を採用し得る。例えば、タンク311とタンク411、及びタンク312とタンク412のように、互いに隣り合う部材同士をろう付けにより一体とし、これにより熱交換器300と熱交換器400とが互いに固定されている構成とすればよい。
また、例えば図4に示されるように、サイドプレート341、441のそれぞれを上方から覆うような固定部材600を用いて、熱交換器300と熱交換器400との固定を行ってもよい。固定部材600は、金属板を折り曲げることによって形成された板状の部材であって、平板部601と、一対の垂直部602、603とを有している。
平板部601は、熱交換器300及び熱交換器400の両方を上方から覆うような平板状の部分である。垂直部603は、平板部601のうち風上側の辺から下方に向かって伸びるように形成された部分である。垂直部602は、平板部601のうち風下側の辺から下方に向かって伸びるように形成された部分である。垂直部603は、サイドプレート341のうち風上側の側面に対して当接し、当該側面に対してろう付けされる。垂直部602は、サイドプレート441のうち風下側の側面に対して当接し、当該側面に対してろう付けされる。このような固定部材600を用いて、熱交換器300及び熱交換器400の上下両方を固定することとしてもよい。
熱交換器300と熱交換器400とが上記のように固定されているので、第1空調用熱交換部110、第2空調用熱交換部120、第1冷却用熱交換部210、及び第2冷却用熱交換部220のうち、空気の流れる方向に沿って見たときに互いに重なっている2つの部分は、いずれも互いに固定された状態となる。
本実施形態では、第1空調用熱交換部110、第2空調用熱交換部120、第1冷却用熱交換部210、及び第2冷却用熱交換部220のそれぞれが、一対のタンク(311、312、411、412)と、一対のタンクの間を繋いでおり、冷媒又は冷却水が通る流路が内部に形成されたチューブ(320、420)と、隣り合うチューブの間に配置されたフィン(330,430)と、を有する熱交換器として構成されている。また、本実施形態では、上下に重なる第1空調用熱交換部110と第1冷却用熱交換部210とにおいて、タンク311、312が共有されている。同様に、上下に重なる第2空調用熱交換部120と第2冷却用熱交換部220とにおいて、タンク411、412が共有されている。
以上のような構成の複合型熱交換器10では、第1空調用熱交換部110及び第1冷却用熱交換部210が、空気の流れる方向に対して垂直な方向、具体的には上下方向に並ぶように配置されている。また、第2空調用熱交換部120及び第2冷却用熱交換部220も、空気の流れる方向に対して垂直な方向、具体的には上下方向に並ぶように配置されている。
尚、本実施形態においては、第1空調用熱交換部110と第1冷却用熱交換部210との並び方向が、空気の流れる方向に対して垂直な方向と完全に一致している。しかしながら、両者は完全に一致していなくてもよい。その場合、空気の流れる方向に沿って見た場合において、第1空調用熱交換部110のコア部と、第1冷却用熱交換部210のコア部とが、互いに重なっていなければよい。第2空調用熱交換部120と第2冷却用熱交換部220との配置についても同様である。
また、本実施形態においては、第1空調用熱交換部110と第2冷却用熱交換部220のそれぞれの高さが互いに同一となっており、第1冷却用熱交換部210と第2空調用熱交換部120のそれぞれの高さが互いに同一となっている。その結果、空気の流れる方向に沿って見たときにおいては、第1空調用熱交換部110の全体が第2冷却用熱交換部220と重なるように配置されており、第1冷却用熱交換部210の全体が第2空調用熱交換部120と重なるように配置されている。
このような態様に替えて、第1空調用熱交換部110と第2冷却用熱交換部220のそれぞれの高さが互いに異なるような態様としてもよい。例えば、第1空調用熱交換部110の高さを、サブクール部として機能し得る最低限の高さとした上で、第2冷却用熱交換部220の高さはこれよりも高くしてもよい。いずれの場合であっても、空気の流れる方向に沿って見たときにおいては、第1空調用熱交換部110の少なくとも一部が第2冷却用熱交換部220と重なるような態様であればよい。同様に、第1冷却用熱交換部210の少なくとも一部が第2空調用熱交換部120と重なるような態様であればよい。
図5には、以上のような4つの熱交換部の配置、及び冷媒等の流れる経路が模式的に示されている。図5(A)において矢印で示されるのは、複合型熱交換器10を冷媒が流れる経路である。図5(B)において矢印で示されるのは、複合型熱交換器10において冷却水が流れる経路である。
図5(A)に示されるように、冷媒は、配管41を通って先ず第2空調用熱交換部120に供給される。冷媒は、第2空調用熱交換部120での熱交換によって放熱し、凝縮液化した後、配管42を通って第1空調用熱交換部110に供給される。冷媒は、第1空調用熱交換部110での熱交換によってその温度を低下させた後、配管43から排出されエバポレータに向かう。
第1空調用熱交換部110における2回目の熱交換は、第2空調用熱交換部120における1回目の熱交換よりも、空気の流れる方向において上流側となる位置で行われる。つまり、比較的高温の空気が流れている位置で1回目の熱交換(潜熱変化)が行われ、比較的低温の空気が流れている位置で2回目の熱交換(顕熱変化)が行われる。いずれの熱交換においても、空気と冷媒との温度差が確保されることとなるので、空調用熱交換器100の全体において熱交換が効率的に行われる。
図5(B)に示されるように、冷却水は、配管51を通って先ず第2冷却用熱交換部220に供給される。冷却水は、第2冷却用熱交換部220での熱交換によってその温度を低下させた後、配管56を通って第1冷却用熱交換部210に供給される。冷却水は、第1冷却用熱交換部210での熱交換によって更にその温度を低下させた後、配管57から排出されポンプ16に向かう。
第1冷却用熱交換部210における2回目の熱交換は、第2冷却用熱交換部220における1回目の熱交換よりも、空気の流れる方向において上流側となる位置で行われる。つまり、比較的高温の空気が流れている位置で1回目の熱交換(高温の冷却水を冷やすための熱交換)が行われ、比較的低温の空気が流れている位置で2回目の熱交換(低温となった冷却水を更に冷やすための熱交換)が行われる。いずれの熱交換においても、空気と冷却水との温度差が確保されることとなるので、冷却用熱交換器200の全体において熱交換が効率的に行われる。
尚、第1冷却用熱交換部210の入口部分(配管56の接続部分)における冷却水の温度は、第2空調用熱交換部120の入口部分(配管41の接続部分)における冷媒の温度よりも低くなっていることが好ましい。このような温度分布となっている場合には、第1冷却用熱交換部210を通過する冷却水と空気との温度差、及び、第2空調用熱交換部120を通過する冷媒と空気との温度差を、いずれも確保することができるからである。
冷媒や冷却水が流れる方向について、図6を参照しながら説明する。図6において実線で示されている2つの矢印は、第1空調用熱交換部110及び第2空調用熱交換部120のそれぞれのコア部を、冷媒が流れる方向を示している。また、図6において点線で示されている2つの矢印は、第1冷却用熱交換部210及び第2冷却用熱交換部220のそれぞれのコア部を、冷却水が流れる方向を示している。後述の図9、図11、及び図19においても同様である。
図6のように車両前方側から見た場合には、第1冷却用熱交換部210のコア部全体において、冷却水が左から右に向かって流れる。また、これと重なる第2空調用熱交換部120のコア部全体において、冷媒が左から右に向かって流れる。同様に、車両前方側から見た場合には、第1空調用熱交換部110のコア部全体において、冷媒が右から左に向かって流れる。また、これと重なる第2冷却用熱交換部220のコア部全体において、冷却水が右から左に向かって流れる。
このように、複合型熱交換器10を構成するそれぞれの熱交換部は、空気の流れる方向に沿って見たときに互いに重なっている部分のそれぞれにおいて、その内部を冷媒又は冷却水が流れる経路及び方向が互いに同一となるように構成されている。対向する2つのコア部を通過する冷媒及び冷却水は、空気との熱交換によっていずれも温度を低下させながら、同一方向に向かって流れることとなる。その結果、対向する2つのコア部間の温度差が、一部において大きくなり過ぎてしまったり、一部において小さくなり過ぎてしまったりすることが防止される。これにより、いずれかのコア部における熱交換性能が局所的に低下してしまうことが無いので、複合型熱交換器10の全体における熱交換がバランスよく行われる。
本実施形態では、第1空調用熱交換部110のコア部よりも、第2空調用熱交換部120のコア部の方が大きくなっている。このため、冷媒の温度は第2空調用熱交換部120を通過する際において大きく低下(例えば80℃→60℃)し、その後、第1空調用熱交換部110を通過する際においては小さく低下(例えば60℃→50℃)する。同様に、本実施形態では、第2冷却用熱交換部220のコア部よりも、第1冷却用熱交換部210のコア部の方が大きくなっている。このため、冷却水の温度は第2冷却用熱交換部220を通過する際においては小さく低下(例えば65℃→60℃)し、その後、第1冷却用熱交換部210を通過する際において大きく低下(例えば60℃→50℃)する。冷媒又は冷却水の目標温度低下量に合わせて、それぞれのコア部の大きさが設計されることが好ましい。
本実施形態では、空調用熱交換器100及び冷却用熱交換器200のそれぞれが2つの部分に分けられており、2つの部分のうち一方が空気の流れ方向における上流側に配置され、他方が下流側に配置されている。このような構成となっていることの効果について説明する。
図7には、空調用熱交換器100等が上記のように2つの部分に分けられていない場合の例、すなわち従来と同様の構成である比較例において、各部を通過する空気の温度の分布が示されている。この比較例では、空気の流れ方向における上流側に配置された熱交換器300の全体が空調用熱交換器100として構成され、その下流側に配置された熱交換器400の全体が冷却用熱交換器200として構成されている。つまり、1列目に空調用熱交換器100が配置され、その下流側である2列目に冷却用熱交換器200が配置され、更にその下流側である3列目にラジエータ20が配置された構成となっている。
図7の横軸は、空気が通過する方向に沿った位置を示している。位置P1は、1列目の空調用熱交換器100よりも僅かに上流側となる位置である。位置P2は、1列目の空調用熱交換器100と、2列目の冷却用熱交換器200との間となる位置である。位置P3は、2列目の冷却用熱交換器200と、3列目のラジエータ20との間となる位置である。位置P4は、3列目のラジエータ20よりも僅かに下流側となる位置である。
同図に示されるように、1列目の空調用熱交換器100を通過する際に、空気はその温度をT10からT25へと上昇させる。2列目の冷却用熱交換器200には、このように温度が上昇した空気(温度がT25の空気)が供給される。
2列目の冷却用熱交換器200を通過する際には、空気はその温度をT25からT35へと更に上昇させる。3列目のラジエータ20には、このように温度が上昇した空気(温度がT30の空気)が供給される。3列目のラジエータ20を通過する際には、空気はその温度をT30からT40へと更に上昇させる。
ところで、熱交換器を空気が通過する際において、当該空気に対し単位時間あたりに加えられる熱量Qは、以下の式(1)によって算出される。
Q=CP・ρ・W・H・V・(TOUT−TIN)・・・・(1)
式(1)におけるCPは空気の比熱であり、ρは空気の密度である。Wは熱交換器(コア部)の幅方向における寸法であり、Hは高さ方向における寸法である。Vは通過する空気の流速である。TOUTは熱交換器から流出した直後における空気の温度であり、TINは熱交換器に流入する直前における空気の温度である。
式(1)に示されるように、熱交換器を通過する空気に加えられる熱量は、TOUTとTINとの差に比例して大きくなる。TOUTとTINとの差は、例えば1列目の空調用熱交換器100を空気が通過する際の、T25とT10との差に該当する。従って、図7に示される三角形ABCの面積の大きさは、1列目の空調用熱交換器100を空気が通過する際において当該空気に加えられる熱量の大きさ(すなわち空調用熱交換器100の放熱量)、を示すものとなっている。これと同様に、三角形BDEの面積の大きさは、2列目の冷却用熱交換器200を空気が通過する際において当該空気に加えられる熱量の大きさ(すなわち冷却用熱交換器200の放熱量)、を示すものとなっている。更に、三角形DFGの面積の大きさは、3列目のラジエータ20を空気が通過する際において当該空気に加えられる熱量の大きさ(すなわちラジエータ20の放熱量)、を示すものとなっている。それぞれの熱交換器を通過する際において空気に加えられる熱量の大きさは、当該熱交換器の熱交換性能の高さを示す指標となる。
上記3つの三角形を比較すると明らかなように、図7の比較例では、2列目の三角形BDEの面積が、1列目の三角形ABCの面積に比べて著しく小さくなっている。つまり、2列目の冷却用熱交換器200の熱交換性能が著しく低下している。このような熱交換性能の低下は、2列目の冷却用熱交換器200を通過する空気の全てが、1列目の空調用熱交換器100を通過して予め温度が上昇した空気となっており、冷却用熱交換器200においては空気と冷却水との温度差が小さくなってしまうことに起因している。
このように、空気の流れる方向に沿って複数の熱交換器を単に重ねただけの構成においては、空気流れの下流側に配置された熱交換器の熱交換性能が、空気流れの上流側に配置された熱交換器の熱交換性能に比べて著しく低下してしまうことがある。このような現象が生じると、複合型熱交換器の各部における熱交換のバランスが崩れてしまい、結果的に複合型熱交換器の性能が低下してしまうこととなる。
図8には、本実施形態に係る複合型熱交換器10において、各部を通過する空気の温度の分布が示されている。図8の横軸に示される位置P1は、1列目の第1空調用熱交換部110(又は第1冷却用熱交換部210)よりも僅かに上流側となる位置である。位置P2は、1列目の第1空調用熱交換部110(又は第1冷却用熱交換部210)と、2列目の第2空調用熱交換部120(又は第2冷却用熱交換部220)との間となる位置である。位置P3は、2列目の第2空調用熱交換部120(又は第2冷却用熱交換部220)と、3列目のラジエータ20との間となる位置である。位置P4は、3列目のラジエータ20よりも僅かに下流側となる位置である。
1列目の第1空調用熱交換部110を通過する際に、空気はその温度をT10からT21へと上昇させる。図8に示される三角形AB1Cの面積の大きさは、第1空調用熱交換部110を空気が通過する際において、当該空気に加えられる熱量の大きさを示している。
1列目の第1空調用熱交換部110を通過した空気(温度がT21の空気)は、その後、2列目の第2冷却用熱交換部220を通過する。その際、空気はその温度をT21からT29へと上昇させる。図8に示される三角形B1D1E1の面積の大きさは、第2冷却用熱交換部220を空気が通過する際において、当該空気に加えられる熱量の大きさを示している。
2列目の第2冷却用熱交換部220を通過した空気(温度がT29の空気)は、その後、3列目のラジエータ20に供給される。3列目のラジエータ20には、当該空気の他、2列目の第2空調用熱交換部120を通過した空気(後述)も供給される。
1列目の第1冷却用熱交換部210を通過する際に、空気はその温度をT10からT22へと上昇させる。図8に示される三角形AB2Cの面積の大きさは、第1冷却用熱交換部210を空気が通過する際において、当該空気に加えられる熱量の大きさを示している。
1列目の第1冷却用熱交換部210を通過した空気(温度がT22の空気)は、その後、2列目の第2空調用熱交換部120を通過する。その際、空気はその温度をT22からT31へと上昇させる。図8に示される三角形B2D2E2の面積の大きさは、第2空調用熱交換部120を空気が通過する際において、当該空気に加えられる熱量の大きさを示している。
2列目の第2空調用熱交換部120を通過した空気(温度がT31の空気)は、その後、3列目のラジエータ20に供給される。
ラジエータ20には、第2空調用熱交換部120を通過し温度がT31となった空気と、第2冷却用熱交換部220を通過し温度がT29となった空気と、の両方が供給される。図8に示される例では、ラジエータ20に供給される空気の温度が、T29とT31との間の温度であるT30として示されている。当該空気は、3列目のラジエータ20を通過する際に、その温度をT30からT40へと更に上昇させる。図8に示される三角形DFGの面積は、ラジエータ20を空気が通過する際において、当該空気に加えられる熱量の大きさを示している。
図8の例においては、空調用熱交換器100を通過する際において空気に加えられる熱量が、三角形AB1Cの面積に三角形B2D2E2の面積を加えたものとなっている。また、冷却用熱交換器200を通過する際において空気に加えられる熱量が、三角形AB2Cの面積に三角形B1D1E1の面積を加えたものとなっている。それぞれの面積を比較すると明らかなように、本実施形態においては、空調用熱交換器100を通過する際において空気に加えられる熱量と、冷却用熱交換器200を通過する際において空気に加えられる熱量とが、概ね互いに等しくなっている。つまり、それぞれの熱交換器の熱交換性能がバランスよく発揮されており、図7に示される比較例のように、一方の冷却用熱交換器200における熱交換性能のみが著しく低下するような現象が生じていない。
これは、空気の流れ方向における最も上流側の位置、すなわち、最も熱交換を効率よく行い得る位置を、図7の比較例では一方の熱交換器(空調用熱交換器100)のみが占有しているのに対し、本実施形態では当該位置を両方の熱交換器の一部ずつ(第1空調用熱交換部110と第1冷却用熱交換部210)が共に占める構成になっているからである。
このように、本実施形態では、空調用熱交換器100と冷却用熱交換器200との間において、配置された位置による熱交換性能の違いが生じにくくなっており、空調用熱交換器100及び冷却用熱交換器200のそれぞれの熱交換性能が概ね均等に発揮されることとなる。
尚、2つに分割されたそれぞれの熱交換部(第1空調用熱交換部110など)のコア部の面積は、分割前におけるコア部の面積よりも当然に小さくなっている。その結果、それぞれの熱交換部における個々の熱交換性能は、分割されていない場合に比べると低くなっている。例えば図8における三角形AB1Cの面積は、図7の比較例における三角形ABCの面積に比べると小さい。
しかしながら、空調用熱交換器100の全体におけるコア部の面積は、第1空調用熱交換部110のコア部の面積と、第2空調用熱交換部120のコア部の面積とを合計したものである。従って、空調用熱交換器100の全体においてみれば、その熱交換性能は十分に発揮されることとなる。本実施形態では、それぞれのコア部の合計面積を小さくする必要は無く、従来通りの大きな面積を確保することが可能である。つまり、車両内部の限られた設置スペースを最大限有効に利用し得るような大きさのコア部とすることで、空調用熱交換器100の熱交換性能を十分に確保することが可能である。冷却用熱交換器200についても同様である。
このような複合型熱交換器10では、空調用熱交換器100と冷却用熱交換器200とのそれぞれの熱交換性能がバランスよく発揮される。このため、設置スペースの制約の範囲内において、複合型熱交換器10の性能を最大限に発揮させることができる。
複合型熱交換器10に対する要求性能は常に一定ではなく、例えば車両の低速高トルク走行時において最も高くなる傾向がある。そこで、そのような最も高い要求に応え得るように複合型熱交換器10を設計しておけばよい。その場合、低速高トルク走行時以外の場面においては、複合型熱交換器10の熱交換性能に余裕ができることとなる。その際には、例えば空調装置が備えるコンプレッサの回転数を低下させたり、電動ファン21の回転数を抑制したりすることで、システムの消費電力を抑制し更なる省エネを図ることも可能となる。
尚、複合型熱交換器10では、空調装置における冷媒の循環経路が多少複雑化しているので、コンプレッサの動作負荷が増加してしまうことが懸念される。しかしながら、本発明者らが実験にて確認したところによれば、コンプレッサの動作負荷の増加はほとんどなく、従来と同等のレベルであった。
上記のような構成の複合型熱交換器10には、種々の変更を加えることができる。例えば図9に示される変形例のように、第1冷却用熱交換部210の内部を冷却水が通過する方向と、第2冷却用熱交換部220の内部を冷却水が通過する方向とのいずれもが、上記第1実施形態の場合とは逆方向となるような構成としてもよい。
この場合、図10に示されるように、第2冷却用熱交換部220から第1冷却用熱交換部210に冷媒を供給するための配管56が、タンク412とタンク312との間を繋ぐように配置されることとすればよい。また、配管51の下流側端部がタンク411の下方側部分に接続され、配管57の上流側端部がタンク311の上方側部分に接続されることとすればよい。尚、図10においては流路の配置例を簡略化して示すために、ポンプ17に向かって伸びる配管52が省略されている。
上記の構成においては、複合型熱交換器10と外部とを繋ぐ配管(配管41、43、51、57)の全てが、左右方向における一方側に集約されることとなる。このため、車両の内部における配管の取り回しの制約によっては、図10に示される変形例のような構成が好ましい場合がある。
また、例えば図11に示される変形例のように、第1冷却用熱交換部210を1方向にのみ冷却水が流れるのではなく、途中で折り返して1往復半するような経路で冷却水が流れることとしてもよい。
このような冷却水の流れは、タンク312等の内部にセパレータを追加して設けることによって実現される。同様に、第2空調用熱交換部120を1方向にのみ冷媒が流れるのではなく、途中で折り返して1往復半するような経路で冷媒が流れることとしてもよい。このような冷媒の流れも、タンク412等の内部にセパレータを追加して設けることによって実現される。尚、冷媒や冷却水が折り返して流れる際の往復回数は、任意に設定することができる。
図11のように、冷却水などが折り返して流れるような構成とした場合でも、空気の流れる方向に沿って見たときに互いに重なっている部分のそれぞれにおいて、その内部を冷媒又は冷却水が流れる経路及び方向が互いに同一となるように構成されていることが好ましい。
図12(A)では、本実施形態に係る複合型熱交換器10及びその周辺の構成が、車両の側方側からみて模式的に描かれている。図12(A)においては、車両の車体BDと、車体BDの前方側部分に形成されたフロントグリルの開口OP1、OP2が示されている。図12(A)では更に、上方側の開口OP1の開閉を行うために設けられたシャッター装置ST1と、下方側の開口OP2の開閉を行うために設けられたシャッター装置ST2とが示されている。
複合型熱交換器10の上方側部分では、空気の流れ方向に沿って、第1冷却用熱交換部210と第2空調用熱交換部120とが互いに重なるように配置されている。シャッター装置ST1が開状態となっているときには、開口OP1から侵入した空気が、第1冷却用熱交換部210及び第2空調用熱交換部120の両方を通過する。図12(A)では、このような空気の流れが矢印AF1で示されている。
また、複合型熱交換器10の下方側部分では、空気の流れ方向に沿って、第1空調用熱交換部110と第2冷却用熱交換部220とが互いに重なるように配置されている。シャッター装置ST2が開状態となっているときには、開口OP2から侵入した空気が、第1空調用熱交換部110及び第2冷却用熱交換部220の両方を通過する。図12(A)では、このような空気の流れが矢印AF2で示されている。
このように、複合型熱交換器10の上方側部分及び下方側部分のいずれにおいても、空調用熱交換器100の一部と冷却用熱交換器200の一部とが重なるように配置されている。その結果、シャッター装置ST1及びシャッター装置ST2のいずれを開状態とした場合であっても、車両内に侵入した空気は空調用熱交換器100及び冷却用熱交換器200の両方を通過することとなる。
このような構成に換えて、図12(B)に示される変形例のように、第2空調用熱交換部120と第2冷却用熱交換部220とを上下に入れ替えたような構成としてもよい。当該変形例の上方側部分では、空気の流れ方向に沿って、第1冷却用熱交換部210と、第2冷却用熱交換部220とが互いに重なるように配置されている。また、下方側部分では、空気の流れ方向に沿って、第1空調用熱交換部110と第2空調用熱交換部120とが互いに重なるように配置されている。
この変形例においてシャッター装置ST1のみが開状態となっているときには、開口OP1から侵入した空気が、第1冷却用熱交換部210及び第2冷却用熱交換部220の両方を通過する。つまり、当該空気は冷却用熱交換器200のみを通過する。図12(B)では、このような空気の流れが矢印AF1で示されている。
また、この変形例においてシャッター装置ST2のみが開状態となっているときには、開口OP2から侵入した空気が、第1空調用熱交換部110及び第2空調用熱交換部120の両方を通過する。つまり、当該空気は空調用熱交換器100のみを通過する。図12(B)では、このような空気の流れが矢印AF2で示されている。
図12(B)に示される変形例においては、シャッター装置ST1及びシャッター装置ST2の両方が開状態となっているときにおいてのみ、空調用熱交換器100と冷却用熱交換器200との両方に空気が供給される。換言すれば、空調用熱交換器100と冷却用熱交換器200との両方に空気を供給する必要性が少しでも生じると、シャッター装置ST1及びシャッター装置ST2の両方を開状態としなければならない。このため、例えば水温の上昇や冷媒圧力の上昇が生じた際などにおいて、シャッター装置ST1及びシャッター装置ST2の両方が開状態とされる可能性が高くなっている。
これに対し、図12(A)に示される本実施形態の構成においては、シャッター装置ST1のみを開状態とした場合であっても、空調用熱交換器100及び冷却用熱交換器200のそれぞれにおける熱交換を行わせることが可能となっている。このため、シャッター装置ST1及びシャッター装置ST2を動作させる頻度を抑えることができる。
既に述べたように、複合型熱交換器10は、空調用熱交換器100がコンデンサとして機能する状態と、エバポレータとして機能する状態と、のいずれをもとり得るように構成されていてもよい。この場合には、図12(A)のように、空気の流れ方向に沿って第1冷却用熱交換部210と第2空調用熱交換部120とが互いに重なるように配置されている構成が特に好ましい。
図12(A)の構成において、空調用熱交換器100をエバポレータとして機能させる場合には、シャッター装置ST1のみを開状態とすればよい。この場合、第1冷却用熱交換部210から空気に放出された熱が、下流側の第2空調用熱交換部120(つまりエバポレータ)における吸熱のために有効に利用されることとなる。また、冷却水の熱が空調の熱源として有効活用されることに加えて、第2空調用熱交換部120に生じた着霜が熱によって除去されるという効果も発揮される。
尚、第2空調用熱交換部120をエバポレータとして用いる場合には、第1空調用熱交換部110に対する冷媒の供給が行われない状態となるように、冷媒の流路が切り換わるような構成としてもよい。この場合、配管42の途中と配管43の途中とをバイパスするような配管と、当該配管における冷媒の流入/遮断を切り換えるための流路切り替え弁とを、追加で設けることとすればよい。
図12(A)及び図12(B)に示される例ではいずれも、第1空調用熱交換部110が下方側となる位置に配置されている。このような態様に替えて、第1空調用熱交換部110が第1冷却用熱交換部210等の上方側となる位置に配置されているような態様としてもよい。ただし、第1空調用熱交換部110を所謂サブクール部として用いる場合には、本実施形態のように第1空調用熱交換部110を下方側となる位置に配置した方が好ましい。これは、第1空調用熱交換部110と第2空調用熱交換部120との間に気液分離器を配置した場合において、気液分離器の下方側に溜まった液相冷媒を、比較的単純な構成で第1空調用熱交換部110に供給することが可能となるからである。
ところで、下方側の開口OP2からは、稀に外部からの飛び石等が車両内に侵入し、複合型熱交換器10の一部を破損してしまうことがある。本実施形態では、このような開口OP2と対向する位置に第1空調用熱交換部110が配置されている。このため、飛び石の侵入により複合型熱交換器10の一部が破損したとしても、機能停止するのは第1空調用熱交換部110を含む空調装置のみであり、ターボチャージャー12やインタークーラ13のような走行に必要な機器の冷却については継続的に行うことができる。つまり、本実施形態の構成においては、飛び石等の侵入に起因して車両が走行不可能な状態となってしまうようなことが防止される。
尚、図12(B)のような構成においても、第1空調用熱交換部110と第2空調用熱交換部120のそれぞれの高さが互いに異なるような態様としてもよい。例えば、空気の流れる方向に沿って見たときに、第2空調用熱交換部120の全部ではなく一部のみが、第1空調用熱交換部110と重なっている構成としてもよい。また、第2冷却用熱交換部220の全部ではなく一部のみが、第1冷却用熱交換部210と重なっている構成としてもよい。
第1実施形態に係る複合型熱交換器10の、その他の構成について説明する。図13(A)に示されるのは、熱交換器300に設けられたチューブ320の内部構造を示す断面図である。尚、熱交換器400に設けられたチューブ420の内部構造は、図13(A)に示されるものと同一である。
チューブ320は、チューブ本体321と、インナーフィン322とを有している。チューブ本体321は、金属板によって形成された管であって、その長手方向に対し垂直な断面の形状が扁平形状となるように形成されている。また、チューブ本体321は、冷媒又は冷却水の流れる流路323が内部に形成されている。インナーフィン322は、フィン330と同様に、金属板を波状に折り曲げることにより形成されたものであって、チューブ本体321の内部に収容されている。インナーフィン322は、チューブ本体321の内壁面に当接した状態となっている。インナーフィン322により、チューブ320と冷媒等との接触面積が増加しているので、冷媒等と空気との熱交換が効率的に行われる。チューブ420も、その内部にインナーフィン422を有する構成となっている(図14を参照)。
本実施形態では、チューブ320、420の外形及び配置ピッチが、熱交換器300及び熱交換器400の全体において全て同じとなるように構成されている。また、インナーフィン322、422の形状についても、熱交換器300及び熱交換器400の全体において全て同じとなるように構成されている。
このような態様に替えて、一部のチューブ320、420については、その内部に収容されたインナーフィン322、422の形状を他と異ならせることにより、当該チューブ320、420における熱交換性能を向上又は低下させることとしてもよい。図13(B)に示されるチューブ320Bでは、インナーフィン322よりもピッチが大きなインナーフィン322Bが内部に収容されている。これにより、チューブ320Bの熱交換性能は、チューブ320の熱交換性能よりも僅かに低下している。一方で、チューブ320Bの流路抵抗は、チューブ320の流路抵抗よりも小さくなっている。
例えば、冷媒が通る部分(第1空調用熱交換部110、第2空調用熱交換部120)においてはチューブ320(またはこれと同形状のチューブ420)が配置されており、冷却水が通る部分(第1冷却用熱交換部210、第2冷却用熱交換部220)においてはチューブ320B(またはこれと同形状のチューブ420B)が配置されているような態様としてもよい。このように、熱交換性能や流路抵抗の分布が適切なものとなるように、一部のチューブ320、420が有するインナーフィン322、422の形状を他と異ならせることとすればよい。
また、例えば第1空調用熱交換部が有する複数のチューブ320のうち、一部のみをチューブ320Bに置き換えたような構成としてもよい。つまり、同一の熱交換部に、複数種類のチューブが混在しているような態様であってもよい。
図13(C)に示されるチューブ320Cは、その全体が押し出し成型によって形成された場合の例である。チューブ320Cでは、隔壁324Cによって、流路323Cが複数の空間に分かれた構成となっている。また、図13(D)に示されるチューブ320Dは、内部にインナーフィン322が配置されておらず、流路323Dの全体が一つの空間となっている場合の例である。
複合型熱交換器10に用いられるチューブの形状としては、図13に示されるチューブ320、320B、320C、320Dのいずれをも採用することができる。また、例えば、冷却水が通る部分(第1冷却用熱交換部210、第2冷却用熱交換部220)においては流路抵抗の小さなチューブ320Dを採用し、他の部分においてはチューブ320を採用する等、互いに構成の異なるチューブを適宜採用することとしてもよい。
図14(A)に示されるのは、空気の流れる方向に沿って並ぶように配置されたチューブ320及びチューブ420の一組と、やはり空気の流れる方向に沿って並ぶように配置されたフィン330及びフィン430の一組である。本実施形態では、フィン330とフィン430とがそれぞれ別体のものとして構成されており、両者の間には隙間GPが形成されている。このため、例えば複合型熱交換器10をヒートポンプの室外機として用いる際に、一方のチューブ420の表面において結露が生じた場合であっても、上記隙間GPにおいて排水が行われるので、結露水が他方のチューブ320に到達することはない。空気の通過する経路の大部分が結露水によって塞がれることが防止されるので、複合型熱交換器10の各部における熱交換性能を確保することができる。
このような態様に替えて、図14(B)に示されるように、1つのフィン330Bが熱交換器300と熱交換器400との間に跨って配置されているような態様であってもよい。つまり、第1空調用熱交換部110、第2空調用熱交換部120、第1冷却用熱交換部210、及び第2冷却用熱交換部220のうち、空気の流れる方向に沿って見たときに互いに重なっている2つの部分において、フィン330Bが共有されているような態様であってもよい。
このような構成においては、互いに重なっている2つの熱交換部における熱の授受が、空気を介して行われるのみならず、フィン330Bを介しても行われる。これにより、複合型熱交換器10における熱交換性能をさらに向上させることが可能となる。例えば空調用熱交換器100がエバポレータとして用いられることがなく、チューブ320等の表面において結露水が生じにくいような構成である場合には、図14(B)に示される構成とすることが好ましい。
また、図14(C)に示されるように、フィン330とフィン430との間が、連結部331Cによって繋がっているような態様であってもよい。連結部331Cの幅(チューブ320等の積層方向における寸法)は、フィン330等の幅よりも狭くなっている。このような構成のフィンは、図14(B)に示されるフィン330Bを、その中央部において括れさせたような形状、ともいうことができる。このような構成においては、互いに重なっている2つの熱交換部における熱の授受が、連結部331Cを介して行われる。また、複合型熱交換器10をヒートポンプの室外機として用いる場合、連結部331Cにおける結露水の排出もある程度行うことが可能となっている。
第2実施形態について、図15を参照しながら説明する。本実施形態に係る複合型熱交換器10Aでは、熱交換器300及び熱交換器400のそれぞれが、上下2つに分かれた構成となっている。その他の点においては第1実施形態と同じである。
本実施形態では、互いに別体のタンクとして形成されたタンク311aとタンク311bとが上下に重ねられており、これらが第1実施形態におけるタンク311として機能するような構成となっている。熱交換器300が有する他のタンクについても同様である。つまり、互いに別体のタンクとして形成されたタンク312aとタンク312bとが上下に重ねられており、これらが第1実施形態におけるタンク312として機能する。
本実施形態では、タンク311a及びタンク312aを有する熱交換器が第1冷却用熱交換部210として機能する。また、タンク311b及びタンク312bを有する熱交換器が第1空調用熱交換部110として機能する。図15では、第1冷却用熱交換部210と第1空調用熱交換部110との境界となる部分が、矢印BR1で示されている。当該部分は、第1実施形態においてセパレータ350が配置されていた部分に相当する。
熱交換器400が有するタンクについても上記と同様である。つまり、本実施形態では、互いに別体のタンクとして形成されたタンク411aとタンク411b(不図示)とが上下に重ねられており、これらが第1実施形態におけるタンク411として機能する。更に、互いに別体のタンクとして形成されたタンク412aとタンク412bとが上下に重ねられており、これらが第1実施形態におけるタンク412として機能する。
本実施形態では、タンク411a及びタンク412aを有する熱交換器が第2空調用熱交換部120として機能する。また、タンク411b及びタンク412bを有する熱交換器が第2冷却用熱交換部220として機能する。図15では、第2空調用熱交換部120と第2冷却用熱交換部220との境界となる部分が、矢印BR2で示されている。当該部分は、第1実施形態においてセパレータ450が配置されていた部分に相当する。
以上のように、本実施形態では、第1空調用熱交換部110と第1冷却用熱交換部210とが、タンク(311、312)を共有しておらず互いに別体の熱交換器として構成されている。また、第2空調用熱交換部120と第2冷却用熱交換部220とが、タンク(411、412)を共有しておらず互いに別体の熱交換器として構成されている。このような構成であっても、第1実施形態と同様の効果を奏する。
尚、上記4つの熱交換器(第1空調用熱交換部110、第2空調用熱交換部120、第1冷却用熱交換部210、及び第2冷却用熱交換部220)は、例えば一体ろう付けによって互いに接合されている構成とすればよい。また、適切な固定治具等により、4つの熱交換器が互いに結合されているような構成であってもよい。
上記のように本実施形態では、互いに別体の熱交換器を4つ組み合わせた構成となっている。このため、例えばそれぞれの熱交換器におけるチューブの形状や配置ピッチ、フィンの形状などを全体で共通化する必要はなく、それぞれの熱交換器において最適となるように個別に設定することが可能である。これにより、複合型熱交換器10Aの全体における熱交換性能をさらに向上させることができる。また、それぞれの熱交換器が異なる温度域で動作する際に、複合型熱交換器10Aにおいて大きな熱歪が生じることが防止されるという利点もある。
第3実施形態について説明する。図16に示されるのは、第3実施形態に係る複合型熱交換器10Bの全体構成である。また、図17に示されるのはその分解組立図である。以下では、複合型熱交換器10Bのうち第1実施形態と異なる部分についてのみ説明し、第1実施形態と共通する部分については適宜説明を省略する。
本実施形態では、冷却用熱交換器200が第1冷却用熱交換部210と第2冷却用熱交換部220とに分かれておらず、熱交換器300のうち点線DL1よりも上方側の部分が冷却用熱交換器200となっている。
一方、空調用熱交換器100については、第1実施形態と同様に第1空調用熱交換部110と第2空調用熱交換部120とに分かれている。ただし、本実施形態では、熱交換器400の一部ではなく全体が第2空調用熱交換部120となっている。第1空調用熱交換部110は、熱交換器300のうち点線DL1よりも下方側の部分である。
本実施形態では、冷却用熱交換器200に冷却水を供給するための配管51が、タンク311の上方側部分に接続されている。また、冷却用熱交換器200から冷却水を排出するための配管570が、タンク311のうち配管51よりも下方側であり、且つ点線DL1よりも上方側となる位置に配置されている。
タンク311の内部空間は、セパレータ370によって上下に仕切られている。図16では、セパレータ370が設けられている位置の高さが点線DL1で示されている。タンク311のうち点線DL1よりも上方側の部分を冷却水が通過し、点線DL1よりも下方側の部分を冷媒が通過する。同様に、タンク312の内部空間は、セパレータ350によって上下に仕切られている。セパレータ350は、セパレータ370と同じ高さ、つまり点線DL1の高さの位置に配置されている。タンク312のうち点線DL1よりも上方側の部分を冷却水が通過し、点線DL1よりも下方側の部分を冷媒が通過する。
タンク311のうちセパレータ370よりも上方側の空間は、セパレータ360によって更に上下2つの空間に仕切られている。セパレータ360は、配管51の接続部分よりも下方側であり、且つ配管570の接続部分よりも上方側となる位置に配置されている。
配管51から冷却用熱交換器200に供給された冷却水は、先ずタンク311のうちセパレータ360よりも上方側の部分に流入した後、セパレータ360よりも上方側に配置されたチューブ320(つまり冷却用熱交換器200のコア部)を通ってタンク312に向かって流れる。タンク312に流入した冷却水は、セパレータ360よりも下方側且つセパレータ350よりも上方側に配置されたチューブ320を通ってタンク311に向かって流れる。その後、冷却水はタンク311のうちセパレータ360よりも下方側(且つセパレータ370よりも上方側)の部分に流入し、配管570を通って外部に排出される。
本実施形態では、タンク411の上方側部分にコネクタ41aが設けられている。コネクタ41aは、空調用熱交換器100に冷媒を供給するための配管41が接続される部分である。
タンク411の内部空間は、セパレータ460によって上下2つの空間に仕切られている。セパレータ460は、セパレータ360と同じ高さとなるに配置されている。上記のコネクタ41aは、タンク411のうちセパレータ460よりも上方側の部分に設けられている。
タンク412の内部空間は、セパレータ450によって上下2つの空間に仕切られている。セパレータ450は、第1実施形態(図3)と同様に、セパレータ350と同じ高さとなる位置に配置されている。
配管41からコネクタ41aを介して空調用熱交換器100に供給された冷媒は、先ずタンク411のうちセパレータ460よりも上方側の部分に流入した後、セパレータ460よりも上方側に配置されたチューブ420(つまり第2空調用熱交換部120のコア部)を通ってタンク412に向かって流れる。タンク412に流入した冷媒は、セパレータ460よりも下方側且つセパレータ450よりも上方側に配置されたチューブ420を通ってタンク411に向かって流れる。その後、冷媒は、セパレータ450よりも下方側に配置されたチューブ420を通って再びタンク412に向かって流れる。冷媒は、タンク412のうちセパレータ450よりも下方側の部分に流入する。
複合型熱交換器10Bはモジュレータタンク700を備えている。モジュレータタンク700は円筒形状の容器であって、その長手方向をタンク312等の長手方向(つまり上下方向)に沿わせた状態で、タンク312及びタンク412と隣接する位置に設けられている。具体的には、モジュレータタンク700は、タンク312及びタンク412を挟んでコア部とは反対側となる位置に配置されている。モジュレータタンク700は、第2空調用熱交換部120のタンク412から排出された冷媒を受け入れて、そのうち液相の冷媒のみを第1空調用熱交換部110に供給するための容器、すなわち気液分離器として設けられている。
タンク412のうちセパレータ450よりも下方側の部分には、穴HL41が形成されている。また、モジュレータタンク700のうち穴HL41と対向する位置には、穴HL41と同一形状の穴701が形成されている。モジュレータタンク700は、穴701の縁を穴HL41の縁に重ねた状態で、これらの縁の全体が水密となるようにタンク412に対しろう付けされている。
また、タンク312のうちセパレータ350よりも下方側の部分には、穴HL31が形成されている。また、モジュレータタンク700のうち穴HL31と対向する位置には、穴HL31と同一形状の穴702が形成されている。モジュレータタンク700は、穴702の縁を穴HL31の縁に重ねた状態で、これらの縁の全体が水密となるようにタンク312に対しろう付けされている。
以上のような構成においては、タンク412のうちセパレータ450よりも下方側の部分に流入した冷媒は、穴701を通ってモジュレータタンク700の内部に流入する。モジュレータタンク700の内部には液相冷媒が貯えられている。液相冷媒の上端、すなわち気液界面の位置は、穴701及び穴702のいずれよりも上方側となっている。モジュレータタンク700の内部において、気相の冷媒はモジュレータタンク700の上方側に移動し、液相冷媒のみが穴702から排出される。
モジュレータタンク700の穴702から排出された液相冷媒は、タンク312のうちセパレータ350よりも下方側の空間に流入する。その後、冷媒は、セパレータ350よりも下方側に配置されたチューブ320(つまり第1空調用熱交換部110のコア部)を通ってタンク311に向かって流れる。冷媒は、タンク311のうちセパレータ370よりも下方側の部分に流入する。
タンク311のうちセパレータ370よりも下方側の部分には、コネクタ43aが設けられている。コネクタ43aは、空調用熱交換器100から冷媒を排出するための配管43が接続される部分である。第1空調用熱交換部110を通り、タンク311のうちセパレータ370よりも下方側の空間に流入した冷媒は、コネクタ43aを介して配管43へと排出される。
以上のように、本実施形態では、第1空調用熱交換部110と第2空調用熱交換部120との間が配管42で接続されているのではなく、冷媒の気液を分離するためのモジュレータタンク700を介して接続されている。このため、第1実施形態(図1)に比べて配管の引き回しが比較的簡単なものとなっている。
図18には、本実施形態における3つの熱交換部の配置、及び冷媒等の流れる経路が模式的に示されている。図18(A)において矢印で示されるのは、複合型熱交換器10Bを冷媒が流れる経路である。図18(B)において矢印で示されるのは、複合型熱交換器10Bにおいて冷却水が流れる経路である。
図18(A)に示されるように、冷媒は、コネクタ41aを通って先ず第2空調用熱交換部120に供給される。冷媒は、第2空調用熱交換部120での熱交換によって放熱し、凝縮液化した後、モジュレータタンク700を経由して第1空調用熱交換部110に供給される。モジュレータタンク700で気液分離された液冷媒は、第1空調用熱交換部110での熱交換によってその温度を低下させた後、コネクタ43aから排出されエバポレータに向かう。
本実施形態においても、第1空調用熱交換部110における2回目の熱交換は、第2空調用熱交換部120における1回目の熱交換よりも、空気の流れる方向において上流側となる位置で行われる。つまり、比較的高温の空気が流れている位置で1回目の熱交換(潜熱変化)が行われ、比較的低温の空気が流れている位置で2回目の熱交換(顕熱変化)が行われる。いずれの熱交換においても、空気と冷媒との温度差が確保されることとなるので、空調用熱交換器100の全体において熱交換が効率的に行われる。
図18(B)に示されるように、冷却水は、配管51を通って冷却用熱交換器200に供給される。冷却水は、冷却用熱交換器200での熱交換によってその温度を低下させた後、配管570から外部に排出される。
冷却用熱交換器200における熱交換は、空気の流れ方向において第1空調用熱交換部110と同じ位置、すなわち、比較的低温の空気が流れている位置で行われる。このため、冷却用熱交換器200における熱交換も効率的に行われる。
このように、複合型熱交換器10Bでは、空調用熱交換器100のみが第1空調用熱交換部110と第2空調用熱交換部120とに分かれており、空気の流れる方向に沿って上流側となる位置に第1空調用熱交換部110が配置されている。また、冷却用熱交換器200の全体と第1空調用熱交換部110とが、空気の流れる方向に対して垂直な方向に並ぶように配置されている。
つまり、空気の流れ方向において上流側となる位置に、空調用熱交換器100の一部(第1空調用熱交換部110)と冷却用熱交換器200の全部とが配置されている。このため、第1実施形態の場合と同様に、空調用熱交換器100及び冷却用熱交換器200のそれぞれの熱交換がいずれも効率的に行われる。
ただし、冷却用熱交換器200のコア部の面積は、第1実施形態の場合に比べて小さくなっている。車両に搭載される冷却対象機器(ターボチャージャー12等)の発熱量が小さく、冷却用熱交換器200に求められる冷却性能が比較的小さい場合には、本実施形態のように冷却用熱交換器200を小さくしてもよい。
本実施形態では、空気の流れる方向に沿って見たときにおいて、第1空調用熱交換部110の全体が、第2空調用熱交換部120と重なるように配置されている。その結果、空調用熱交換器100の全体におけるコア部の合計面積は、第1実施形態の場合に比べて大きくなっている。高い空調性能が求められる場合には、本実施形態のように空調用熱交換器100のコア部を大きくすることが好ましい。尚、第1空調用熱交換部110の全体ではなく一部のみが、第2空調用熱交換部120と重なるように配置された構成としてもよい。
複合型熱交換器10Bを冷媒や冷却水が流れる方向について、図19を参照しながら説明する。図19のように車両前方側から見た場合には、冷却用熱交換器200のコア部のうち、上方側部分においては冷却水が左から右に向かって流れ、下方側部分においては冷却水が右から左に向かって流れる。また、第1空調用熱交換部110のコア部では、その全体において冷媒が右から左に向かって流れる。
同様に車両前方側から見た場合には、第2空調用熱交換部120のコア部のうち、上方側部分においては冷媒が左から右に向かって流れ、中央部分においては冷媒が右から左に向かって流れる。更に、下方側に部分においては冷媒は右から左に向かって流れる。
本実施形態においても、冷媒や冷却水の流れる経路としては種々の態様を採用することができる。例えば、第2空調用熱交換部120のコア部において、本実施形態のように冷媒が一往復して流れるではなく、コア部の全体において冷媒が同じ方向に流れるような構成としてもよい。
図20を参照しながら、車両に搭載された複合型熱交換器10Bの周辺の構成について説明する。本実施形態では、冷却用熱交換器200が2つの部分に分かれていない。このため、第1実施形態のように、配管52と配管57とのそれぞれに対し互いに温度の異なる冷却水を供給することができない。そこで、本実施形態では、冷却用熱交換器200から冷却水を排出するための配管570の下流側端部が2つに分岐しており、その一方が配管52に接続され、他方が配管57に接続された構成となっている。
尚、複合型熱交換器10Bを用いた場合でも、配管52と配管57とのそれぞれに対し互いに温度の異なる冷却水を供給することは可能である。例えば、配管52の上流側端部を、タンク312のうちセパレータ350よりも上方側の部分に接続し、配管57の上流側端部を、タンク311のうちセパレータ360とセパレータ370との間となる位置(図17において配管570が接続されている位置)に接続すればよい。このような構成においては、冷却用熱交換器200のチューブ320を1回だけ通った冷却水が、タンク312から配管52を通って強電系機器14に供給される。また、冷却用熱交換器200のチューブ320を2回通って低温となった冷却水が、タンク311から配管57を通ってターボチャージャー12等に供給される。
第4実施形態について、図21乃至図23を参照しながら説明する。図21に示されるのは、第4実施形態に係る複合型熱交換器10Cの全体構成である。図22に示されるのはその分解組立図である。図23(A)には、複合型熱交換器10Cにおいて冷媒が流れる経路が矢印で示されている。図23(B)には、複合型熱交換器10Cにおいて冷却水が流れる経路が矢印で示されている。以下では、複合型熱交換器10Cのうち第1実施形態と異なる部分についてのみ説明し、第1実施形態と共通する部分については適宜説明を省略する。
複合型熱交換器10Cでは、第1実施形態と同様に、熱交換器300のうち下方側の部分が第1空調用熱交換部110となっており、熱交換器300のうち上方側の部分が第1冷却用熱交換部210となっている。また、熱交換器400のうち下方側の部分が第2冷却用熱交換部220となっており、熱交換器400のうち上方側の部分が第2空調用熱交換部120となっている。
タンク311の内部空間は、セパレータ370によって上下2つの空間に仕切られている。図21では、セパレータ370が設けられている位置の高さが点線DL1で示されている。タンク311のうち点線DL1よりも上方側の部分を冷却水が通過し、点線DL1よりも下方側の部分を冷媒が通過する。同様に、タンク312の内部空間は、セパレータ350によって上下2つの空間に仕切られている。セパレータ350は、セパレータ370と同じ高さ、つまり点線DL1の高さの位置に配置されている。タンク312のうち点線DL1よりも上方側の部分を冷却水が通過し、点線DL1よりも下方側の部分を冷媒が通過する。本実施形態では、熱交換器300のうち点線DL1の高さよりも上方側の部分が第1冷却用熱交換部210となっており、下方側の部分が第1空調用熱交換部110となっている。
タンク411の内部空間は、セパレータ470によって上下2つの空間に仕切られている。セパレータ470が設けられている位置は、タンク411の上下方向におけるほぼ中央となる位置であり、点線DL1よりも高い位置となっている。タンク411のうちセパレータ470よりも上方側の部分を冷媒が通過し、セパレータ470よりも下方側の部分を冷却水が通過する。同様に、タンク412の内部空間は、セパレータ450によって上下2つの空間に仕切られている。セパレータ450は、セパレータ470と同じ高さの位置に配置されている。タンク412のうちセパレータ450よりも上方側の部分を冷媒が通過し、セパレータ450よりも下方側の部分を冷却水が通過する。本実施形態では、熱交換器400のうちセパレータ450、470の高さよりも上方側の部分が第2空調用熱交換部120となっており、下方側の部分が第2冷却用熱交換部220となっている。
第3実施形態(図17)と同様に、タンク411のうちセパレータ470よりも上方側の部分にはコネクタ41aが設けられている。コネクタ41aは、空調用熱交換器100に冷媒を供給するための配管41が接続される部分である。
複合型熱交換器10Cは、第3実施形態と同様のモジュレータタンク700を備えている。モジュレータタンク700は円筒形状の容器であって、その長手方向をタンク312等の長手方向(つまり上下方向)に沿わせた状態で、タンク312及びタンク412と隣接する位置に設けられている。具体的には、モジュレータタンク700は、タンク312及びタンク412を挟んでコア部とは反対側となる位置に配置されている。モジュレータタンク700は、第2空調用熱交換部120のタンク412から流入した冷媒のうち液相の冷媒のみを第1空調用熱交換部110に供給するための容器、すなわち気液分離器として設けられている。
タンク412のうちセパレータ450よりも上方側の部分には、穴HL41が形成されている。また、モジュレータタンク700のうち穴HL41と対向する位置には、穴HL41と同一形状の穴701が形成されている。モジュレータタンク700は、穴701の縁を穴HL41の縁に重ねた状態で、これらの縁の全体が水密となるようにタンク412に対しろう付けされている。
また、タンク312のうちセパレータ350よりも下方側の部分には、穴HL31が形成されている。また、モジュレータタンク700のうち穴HL31と対向する位置には、穴HL31と同一形状の穴702が形成されている。モジュレータタンク700は、穴702の縁を穴HL31の縁に重ねた状態で、これらの縁の全体が水密となるようにタンク312に対しろう付けされている。
以上のような構成の複合型熱交換器10Cでは、第2空調用熱交換部120のタンク412と、第1空調用熱交換部110のタンク312との間が、モジュレータタンク700によって接続されている。このように、本実施形態では、第1空調用熱交換部110と第2空調用熱交換部120との間が配管42で接続されているのではなく、冷媒の気液を分離するためのモジュレータタンク700を介して接続されている。このため、第1実施形態(図2)に比べて配管の引き回しが比較的簡単なものとなっている。
第3実施形態(図17)と同様に、タンク311のうちセパレータ370よりも下方側の部分にはコネクタ43aが設けられている。コネクタ43aは、空調用熱交換器100から冷媒を排出するための配管43が接続される部分である。
タンク412の下端部には、パイプユニット51aが設けられている。パイプユニット51aは、タンク412の下端を塞ぐキャップとしての機能と、冷却水の入口となるパイプとしての機能とを兼ね備えたものである。パイプユニット51aには、冷却用熱交換器200に冷却水を供給するための配管51が接続される。
複合型熱交換器10Cは冷却水タンク800を備えている。冷却水タンク800は円筒形状の容器であって、その長手方向をタンク311等の長手方向(つまり上下方向)に沿わせた状態で、タンク311及びタンク411と隣接する位置に設けられている。冷却水タンク800は、第2冷却用熱交換部220から第1冷却用熱交換部210に向かう冷却水を貯えるための容器となっている。
タンク411のうちセパレータ470よりも下方側の部分には、不図示の穴が複数形成されている。また、冷却水タンク800のうち、上記穴と対向する位置のそれぞれには、上記穴と同一形状の穴822が形成されている。冷却水タンク800は、穴822の縁をタンク411の穴の縁に重ねた状態で、これらの縁の全体が水密となるようにタンク411に対しろう付けされている。
タンク311のうちセパレータ370よりも上方側の部分には、穴3111が複数形成されている。また、冷却水タンク800のうち、穴3111と対向する位置のそれぞれには、穴3111と同一形状の穴821が形成されている。冷却水タンク800は、穴821の縁を穴3111の縁に重ねた状態で、これらの縁の全体が水密となるようにタンク311に対しろう付けされている。
以上のような構成の複合型熱交換器10Cでは、第2冷却用熱交換部220のタンク411と、第1冷却用熱交換部210のタンク311との間が、冷却水を貯えるための冷却水タンク800を介して接続されている。つまり、冷却水タンク800は、第1実施形態(図2)における配管56と同様に、第2冷却用熱交換部220から第1冷却用熱交換部210へと冷却水を供給する機能を有している。
このように、本実施形態では、第1冷却用熱交換部210と第2冷却用熱交換部220との間が配管56で接続されているのではなく、冷却水タンク800を介して接続されている。このため、第1実施形態(図2)に比べて配管の引き回しが比較的簡単なものとなっている。
タンク312の上端部には、パイプユニット57aが設けられている。パイプユニット57aは、タンク312の上端を塞ぐキャップとしての機能と、冷却水の出口となるパイプとしての機能とを兼ね備えたものである。パイプユニット57aには、外部に冷却水を排出するための配管57が接続される。
以上のような構成の下で、冷媒及び冷却水が流れる経路について説明する。冷媒は、コネクタ41aを通って先ず第2空調用熱交換部120のタンク411に供給される。冷媒は、セパレータ470よりも上方側に配置されたチューブ420(つまり第2空調用熱交換部120のコア部)を通ってタンク412に流入する。その後、冷媒は穴701を通ってモジュレータタンク700の内部に流入する。モジュレータタンク700の内部には液相冷媒が貯えられている。穴701からの冷媒の流入に伴い、モジュレータタンク700の穴702から液相冷媒が排出される。
モジュレータタンク700の穴702から排出された液相冷媒は、タンク312のうちセパレータ350よりも下方側の空間に流入する。その後、冷媒は、セパレータ350よりも下方側に配置されたチューブ320(つまり第1空調用熱交換部110のコア部)を通ってタンク311に向かって流れる。冷媒は、タンク311のうちセパレータ370よりも下方側の部分に流入し、コネクタ43aを介して配管43へと排出される。図23(A)には、以上のような冷媒の流れが矢印で模式的に示されている。
冷却水は、パイプユニット51aを通って先ず第2冷却用熱交換部220のタンク412に供給される。冷却水は、セパレータ450よりも下方側に配置されたチューブ420(つまり第2冷却用熱交換部220のコア部)を通ってタンク411に流入する。その後、冷媒は穴822を通って冷却水タンク800の内部に流入する。冷却水タンク800の内部には冷却水が貯えられている。穴822からの冷却水の流入に伴い、冷却水タンク800の穴821から冷却水が排出される。
冷却水タンク800の穴821から排出された冷却水は、タンク311のうちセパレータ370よりも上方側の空間に流入する。その後、冷却水は、セパレータ370よりも上方側に配置されたチューブ420(つまり第1冷却用熱交換部210のコア部)を通ってタンク411に向かって流れる。冷却水は、タンク411のうちセパレータ350よりも上方側の部分に流入し、パイプユニット57aを介して配管57へと排出される。図23(B)には、以上のような冷却水の流れが矢印で模式的に示されている。
尚、パイプユニット51aを介することなく、タンク412に配管51が直接接続されているような態様であってもよい。また、パイプユニット57aを介することなく、タンク312に配管57が直接接続されているような態様であってもよい。同様に、コネクタ41aを介することなく、タンク411に配管41が直接接続されているような態様であってもよい。また、コネクタ43aを介することなく、タンク311に配管43が直接接続されているような態様であってもよい。
第5実施形態について、図24乃至図26を参照しながら説明する。図24に示されるのは、第5実施形態に係る複合型熱交換器10Dの全体構成である。図25に示されるのはその分解組立図である。図26(A)には、複合型熱交換器10Dにおいて冷媒が流れる経路が矢印で示されている。図26(B)には、複合型熱交換器10Dにおいて冷却水が流れる経路が矢印で示されている。以下では、複合型熱交換器10Dのうち第1実施形態と異なる部分についてのみ説明し、第1実施形態と共通する部分については適宜説明を省略する。
複合型熱交換器10Dでは、図15に示される第2実施形態と同様に、熱交換器300及び熱交換器400のそれぞれが、上下2つに分かれた構成となっている。本実施形態では、熱交換器300のうち上方側の部分、すなわちタンク311a及びタンク312aを有する熱交換器が第1冷却用熱交換部210として機能する。また、熱交換器300のうち下方側の部分、すなわちタンク311b及びタンク312bを有する熱交換器が第1空調用熱交換部110として機能する。
また、熱交換器400のうち上方側の部分、すなわちタンク411a及びタンク412aを有する熱交換器が第2冷却用熱交換部220として機能する。また、熱交換器400のうち下方側の部分、すなわちタンク411b及びタンク412bを有する熱交換器が第2空調用熱交換部120として機能する。
つまり、本実施形態における4つの熱交換部の配置は、図12(B)に示される第1実施形態の変形例と同様の配置となっている。具体的には、複合型熱交換器10Dの上方側部分では、空気の流れ方向に沿って、第1冷却用熱交換部210と、第2冷却用熱交換部220とが互いに重なるように配置されている。また、下方側部分では、空気の流れ方向に沿って、第1空調用熱交換部110と第2空調用熱交換部120とが互いに重なるように配置されている。
図24及び図25では、第1冷却用熱交換部210と第1空調用熱交換部110との境界となる部分が、矢印BR1で示されている。同様に、第2空調用熱交換部120と第2冷却用熱交換部220との境界となる部分が、矢印BR2で示されている。
タンク411bにはコネクタ41aが設けられている。コネクタ41aは、空調用熱交換器100に冷媒を供給するための配管41が接続される部分である。
本実施形態でも、第4実施形態(図22)と同様に、第1空調用熱交換部110と第2空調用熱交換部120との間がモジュレータタンク700を介して接続されている。モジュレータタンク700は円筒形状の容器であって、その長手方向をタンク312b等の長手方向(つまり上下方向)に沿わせた状態で、タンク312b及びタンク412bと隣接する位置に設けられている。具体的には、モジュレータタンク700は、タンク312a及びタンク412aを挟んでコア部とは反対側となる位置に配置されている。モジュレータタンク700は、第2空調用熱交換部120のタンク412bから流入した冷媒のうち液相の冷媒のみを第1空調用熱交換部110に供給するための容器、すなわち気液分離器として設けられている。
タンク412bには穴HL41が形成されている。また、モジュレータタンク700のうち穴HL41と対向する位置には、穴HL41と同一形状の穴701が形成されている。モジュレータタンク700は、穴701の縁を穴HL41の縁に重ねた状態で、これらの縁の全体が水密となるようにタンク412bに対しろう付けされている。
また、タンク312bには穴HL31が形成されている。また、モジュレータタンク700のうち穴HL31と対向する位置には、穴HL31と同一形状の穴702が形成されている。モジュレータタンク700は、穴702の縁を穴HL31の縁に重ねた状態で、これらの縁の全体が水密となるようにタンク312bに対しろう付けされている。
タンク311bにはコネクタ43aが設けられている。コネクタ43aは、空調用熱交換器100から冷媒を排出するための配管43が接続される部分である。
本実施形態でも、第4実施形態(図22)と同様に、第1冷却用熱交換部210と第2冷却用熱交換部220との間が冷却水タンク800を介して接続されている。冷却水タンク800は円筒形状の容器であって、その長手方向をタンク311a等の長手方向(つまり上下方向)に沿わせた状態で、タンク311a及びタンク411aと隣接する位置に設けられている。冷却水タンク800は、第2冷却用熱交換部220から第1冷却用熱交換部210に向かう冷却水を貯えるための容器となっている。
タンク411aには不図示の穴が複数形成されている。また、冷却水タンク800のうち、上記穴と対向する位置のそれぞれには、上記穴と同一形状の穴822が形成されている。冷却水タンク800は、穴822の縁をタンク411aの穴の縁に重ねた状態で、これらの縁の全体が水密となるようにタンク411aに対しろう付けされている。
タンク311aには穴3111が複数形成されている。また、冷却水タンク800のうち、穴3111と対向する位置のそれぞれには、穴3111と同一形状の穴821が形成されている。冷却水タンク800は、穴821の縁を穴3111の縁に重ねた状態で、これらの縁の全体が水密となるようにタンク311に対しろう付けされている。
タンク312aの上端部には、パイプユニット57aが設けられている。パイプユニット57aは、タンク312aの上端を塞ぐキャップとしての機能と、冷却水の出口となるパイプとしての機能とを兼ね備えたものである。パイプユニット57aには、外部に冷却水を排出するための配管57が接続される。
以上のような構成の下で、冷媒及び冷却水が流れる経路について説明する。冷媒は、コネクタ41aを通って先ず第2空調用熱交換部120のタンク411bに供給される。冷媒は、タンク411bに接続されたチューブ420(つまり第2空調用熱交換部120のコア部)を通ってタンク412bに流入する。その後、冷媒は穴701を通ってモジュレータタンク700の内部に流入する。モジュレータタンク700の内部には液相冷媒が貯えられている。穴701からの冷媒の流入に伴い、モジュレータタンク700の穴702から液相冷媒が排出される。
モジュレータタンク700の穴702から排出された液相冷媒は、タンク312bの内部空間に流入する。その後、冷媒は、タンク312bに接続されたチューブ320(つまり第1空調用熱交換部110のコア部)を通ってタンク311bに向かって流れる。冷媒は、タンク311bに流入し、コネクタ43aを介して配管43へと排出される。図26(A)には、以上のような冷媒の流れが矢印で模式的に示されている。
冷却水は、配管51を通って先ず第2冷却用熱交換部220のタンク412aに供給される。冷却水は、タンク412aに接続されたチューブ420(つまり第2冷却用熱交換部220のコア部)を通ってタンク411aに流入する。その後、冷媒は穴822を通って冷却水タンク800の内部に流入する。冷却水タンク800の内部には冷却水が貯えられている。穴822からの冷却水の流入に伴い、冷却水タンク800の穴821から冷却水が排出される。
冷却水タンク800の穴821から排出された冷却水は、タンク311aに流入する。その後、冷却水は、タンク311aに接続されたチューブ320(つまり第1冷却用熱交換部210のコア部)を通ってタンク312aに向かって流れる。冷却水は、タンク312aに流入し、パイプユニット57aを介して配管57へと排出される。図26(B)には、以上のような冷却水の流れが矢印で模式的に示されている。
このように、熱交換器300及び熱交換器400のそれぞれが上下2つに分かれた構成となっている場合であっても、モジュレータタンク700や冷却水タンク800を用いることができ、配管の引き回しを比較的簡単なものとすることができる。
第6実施形態について、図27乃至図29を参照しながら説明する。図27に示されるのは、第6実施形態に係る複合型熱交換器10Eの全体構成である。図28に示されるのはその一部の分解組立図である。以下では、複合型熱交換器10Eのうち第1実施形態と異なる部分についてのみ説明し、第1実施形態と共通する部分については適宜説明を省略する。
本実施形態における第1空調用熱交換部110、第2空調用熱交換部120、第1冷却用熱交換部210、及び第2冷却用熱交換部220のそれぞれの形状及び配置は、図10に示される第1実施形態の変形例の場合と同じである。
また、複合型熱交換器10Eにおいて冷媒が流れる経路、及び冷却水が流れる経路は、いずれも、図10に示される変形例の場合と同様の経路となっている。複合型熱交換器10Eのタンク311には、配管43の代わりにコネクタ43aが設けられている。コネクタ43aは、空調用熱交換器100から冷媒を排出するための配管43が接続される部分である。
本実施形態では、タンク312とタンク412との間が、図10に示される変形例のように配管42及び配管56で接続されているのではなく、代わりに接続タンク900及びモジュレータタンク700によって接続されている。
接続タンク900及びモジュレータタンク700は、いずれも円筒形状の容器であって、その長手方向をタンク312等の長手方向(つまり上下方向)に沿わせた状態で配置されている。具体的には、接続タンク900は、タンク312及びタンク412を挟んでコア部とは反対側となる位置に配置されている。また、モジュレータタンク700は、接続タンク900を挟んでタンク312等とは反対側となる位置に配置されている。
接続タンク900は、タンク312及びタンク412と隣接する位置に設けられている。図28及び図29に示されるように、接続タンク900の内部空間は、隔壁921、922、923、及びセパレータ930によって3つの空間に分けられている。
隔壁921は平板状の壁であり、その主面の法線方向をチューブ320の長手方向に沿わせた状態で配置されている。接続タンク900のうちモジュレータタンク700側の内壁面と、隔壁921との間は離間している。また、接続タンク900のうちタンク312側の内壁面と、隔壁921との間も離間している。隔壁921のうち側方側の2辺は、いずれも接続タンク900の内壁面に当接している。
隔壁922は、隔壁921の上端から、タンク312側の内壁面まで伸びるように形成された平板状の壁である。隔壁922が設けられている位置は、接続タンク900の上端よりも低い位置であり、且つセパレータ350、450よりも高い位置となっている。隔壁923は、隔壁921の下端から、タンク312側の内壁面まで伸びるように形成された平板状の壁である。隔壁923が設けられている位置は、接続タンク900の下端よりも高い位置であり、且つセパレータ350、450よりも低い位置となっている。接続タンク900の内部空間のうち、隔壁921、922、923によって囲まれた空間のことを、以下では「空間SP3」とも表記する。
隔壁921のうち、上下方向において概ね中央となる位置には、セパレータ930が設けられている。セパレータ930は、隔壁921からモジュレータタンク700側に向けて突出するように設けられている。セパレータ930は、その先端部分に突起931が形成されている。接続タンク900のうち、セパレータ930と同一の高さとなる位置には、スリット状の開口SL11が形成されている。セパレータ930は、その突起931を開口SL11に挿通させた状態で、その外周側部分の全体においてろう付けされ固定されている。
接続タンク900の内部空間のうち、空間SP3の外側の空間は、セパレータ930によって上下2つの空間に分けられている。以下では、これらの空間のうち上方側の空間のことを「空間SP1」とも表記し、下方側の空間のことを「空間SP2」とも表記する。空間SP1、SP2、SP3は、隔壁921等によって互いに完全に分離されている。
接続タンク900のうち、隔壁922よりも上方側の部分には、複数の穴9201が形成されている。また、タンク412のうち、穴9201と対向する位置のそれぞれには、穴9201と同一形状の穴4121が形成されている。接続タンク900は、穴9201の縁を穴4121の縁に重ねた状態で、これらの縁の全体が水密となるようにタンク412に対しろう付けされている。
接続タンク900のうち、隔壁923よりも下方側の部分には、複数の穴9204が形成されている。尚、図28においては穴9204が不図示となっている。また、図29においては、穴9204が模式的に一つだけ示されている。
タンク312のうち、穴9204と対向する位置のそれぞれには、穴9204と同一形状の穴3122が形成されている。接続タンク900は、穴9204の縁を穴3122の縁に重ねた状態で、これらの縁の全体が水密となるようにタンク312に対しろう付けされている。
接続タンク900のうち、隔壁922よりも下方側であり且つセパレータ350よりも上方側の部分には、複数の穴9202が形成されている。尚、図28においては穴9202が不図示となっている。また、図29においては、穴9202が模式的に一つだけ示されている。
タンク312のうち、穴9202と対向する位置のそれぞれには、穴9202と同一形状の穴3121が形成されている。接続タンク900は、穴9202の縁を穴3121の縁に重ねた状態で、これらの縁の全体が水密となるようにタンク312に対しろう付けされている。
接続タンク900のうち、隔壁923よりも上方側であり且つセパレータ450よりも下方側の部分には、複数の穴9203が形成されている。尚、図28においては穴9203が不図示となっている。また、図29においては、穴9203が模式的に一つだけ示されている。
タンク412のうち、穴9203と対向する位置のそれぞれには、穴9203と同一形状の穴4122が形成されている。接続タンク900は、穴9203の縁を穴4122の縁に重ねた状態で、これらの縁の全体が水密となるようにタンク412に対しろう付けされている。
モジュレータタンク700は、上記の接続タンク900を介してタンク312及びタンク412に接続されている。接続タンク900のうちセパレータ930よりも上方側となる位置には、配管部911が形成されている。配管部911は断面が円形の配管であって、モジュレータタンク700側に向けて突出するように形成されている。配管部911の内部空間は、接続タンク900の空間SP1に繋がっている。
モジュレータタンク700のうち配管部911と対向する位置には、配管部911の断面と概ね同一形状の穴701が形成されている。モジュレータタンク700は、穴701の縁に配管部911の先端を当接させた状態で、当該縁の全体が水密となるように配管部911に対しろう付けされている。
接続タンク900のうちセパレータ930よりも下方側となる位置には、配管部912が形成されている。配管部912は、断面が円形の配管であって、配管部911と同様にモジュレータタンク700側に向けて突出するように形成されている。配管部912の内部空間は、接続タンク900の空間SP2に繋がっている。
モジュレータタンク700のうち配管部912と対向する位置には、配管部912の断面と概ね同一形状の穴702が形成されている。モジュレータタンク700は、穴702の縁に配管部912の先端を当接させた状態で、当該縁の全体が水密となるように配管部912に対しろう付けされている。
以上のような構成の下で、冷媒及び冷却水が流れる経路について説明する。第2空調用熱交換部120のコア部を通り、タンク412のうちセパレータ450よりも上方側の部分に流入した冷媒は、穴9201を通って接続タンク900の空間SP1に流入する。当該冷媒は、隔壁921に沿って下方側に流れた後、配管部911及び穴701を通ってモジュレータタンク700の内部に流入する。モジュレータタンク700の内部には液相冷媒が貯えられている。穴701からの冷媒の流入に伴い、モジュレータタンク700の穴702から液相冷媒が排出される。
モジュレータタンク700の穴702から排出された液相冷媒は、配管部912を通って接続タンク900の空間SP2に流入する。当該冷媒は、隔壁921に沿って更に下方側に流れた後、穴9204を通って、タンク312のうちセパレータ350よりも下方側の部分に流入する。その後、冷媒は第1空調用熱交換部110のコア部を流れる。
このように、本実施形態における接続タンク900及びモジュレータタンク700は、図10に示される変形例における配管42と同様に、第2空調用熱交換部120から第1空調用熱交換部110へと冷媒を供給する機能を有している。
第2冷却用熱交換部220のコア部を通り、タンク412のうちセパレータ450よりも下方側の部分に流入した冷却水は、穴9203を通って接続タンク900の空間SP3に流入する。当該冷却水は、隔壁921に沿って上方側に流れた後、穴9202を通ってタンク312のうちセパレータ350よりも上方側の部分に流入する。その後、冷却水は第1冷却用熱交換部210のコア部を流れる。
このように、本実施形態における接続タンク900は、図10に示される変形例における配管56と同様に、第2冷却用熱交換部220から第1冷却用熱交換部210へと冷却水を供給する機能を有している。
接続タンク900の内部では、空間SP1及び空間SP2を流れる冷媒と、空間SP3を流れる冷却水との間で熱交換が行われる。具体的には、比較的低温の冷却水によって、比較的高温の冷媒が冷却される。その結果、空間SP2から第1空調用熱交換部110に供給される冷媒の温度、すなわちサブクール部に供給される冷媒の温度が上記熱交換によって低下する。十分なサブクールが得られ、冷凍サイクルの膨張弁の開度が大きくなることにより、冷凍サイクルのコンプレッサを動作させるために必要なエネルギーが低下する。
このように、本実施形態では、第1空調用熱交換部110と第2空調用熱交換部120との間を流れる冷媒と、第1冷却用熱交換部210と第2冷却用熱交換部220との間を流れる冷却水と、の間の熱交換が接続タンク900内で行われることにより、空調装置の動作効率を高めることが可能となっている。上記のような接続タンク900は、本実施形態における「補助熱交換部」に該当する。
第7実施形態について、図30及び図31を参照しながら説明する。図30に示されるのは、第7実施形態に係る複合型熱交換器10Fの全体構成である。図31に示されるのはその一部の分解組立図である。以下では、複合型熱交換器10Fのうち第1実施形態と異なる部分についてのみ説明し、第1実施形態と共通する部分については適宜説明を省略する。
本実施形態における第1空調用熱交換部110、第2空調用熱交換部120、第1冷却用熱交換部210、及び第2冷却用熱交換部220のそれぞれの形状及び配置は、図10に示される第1実施形態の変形例の場合と同じである。
また、複合型熱交換器10Fにおいて冷媒が流れる経路、及び冷却水が流れる経路は、いずれも、図10に示される変形例の場合と同様の経路となっている。本実施形態では、タンク312とタンク412との間は、図10に示される変形例のように配管42及び配管56で接続されているのではなく、代わりにモジュレータタンク700aによって接続されている。
モジュレータタンク700aは円筒形状の容器であって、その長手方向をタンク312等の長手方向(つまり上下方向)に沿わせた状態で配置されている。具体的には、モジュレータタンク700aは、タンク312及びタンク412を挟んでコア部とは反対側となる位置に配置されている。モジュレータタンク700aの上端部は円板状の上蓋750により塞がれている。また、モジュレータタンク700aの下端部は円形の下蓋760により塞がれている。
モジュレータタンク700aの内部空間は、隔壁710によって2つの空間(SP11、SP21)に分けられている。空間SP11は上下方向に伸びる空間であり、モジュレータタンク700aのうちタンク312側とは反対側となる位置に形成されている。同様に、空間SP21は上下方向に伸びる空間であり、モジュレータタンク700aのうちタンク312側となる位置に形成されている。
タンク412のうち点線DL1よりも上方側の部分と、上蓋750との間は、配管4201によって接続されている。配管4201により、タンク412の内部とモジュレータタンク700aの内部(空間SP11)とは連通されている。
タンク312のうち点線DL1よりも下方側の部分と、下蓋760との間は、配管4202によって接続されている。配管4202により、タンク312の内部とモジュレータタンク700aの内部(空間SP11)とは連通されている。
タンク312のうち点線DL1よりも上方側の部分と、上蓋750との間は、配管5601によって接続されている。配管5601により、タンク312の内部とモジュレータタンク700aの内部(空間SP21)とは連通されている。
タンク412のうち点線DL1よりも下方側の部分と、下蓋760との間は、配管5602によって接続されている。配管5602により、タンク412の内部とモジュレータタンク700aの内部(空間SP21)とは連通されている。
以上のような構成の下で、冷媒及び冷却水が流れる経路について説明する。第2空調用熱交換部120のコア部を通り、タンク412のうち点線DL1よりも上方側の部分に流入した冷媒は、配管4201を通ってモジュレータタンク700aの空間SP11に流入する。空間SP11には液相冷媒が貯えられている。配管4201からの冷媒の流入に伴い、モジュレータタンク700aの下方側から液相冷媒が排出される。モジュレータタンク700aの下方側から排出された液相冷媒は、配管4202を通って、タンク312のうち点線DL1よりも下方側の部分に流入する。その後、冷媒は第1空調用熱交換部110のコア部を流れる。
このように、本実施形態におけるモジュレータタンク700aは、図10に示される変形例における配管42と同様に、第2空調用熱交換部120から第1空調用熱交換部110へと冷媒を供給する機能を有している。
第2冷却用熱交換部220のコア部を通り、タンク412のうち点線DL1よりも下方側の部分に流入した冷却水は、配管5602を通ってモジュレータタンク700aの空間SP21に流入する。当該冷却水は、隔壁710に沿って上方側に流れた後、配管5601を通って、タンク312のうち点線DL1よりも上方側の部分に流入する。その後、冷却水は第1冷却用熱交換部210のコア部を流れる。
このように、本実施形態におけるモジュレータタンク700aは、図10に示される変形例における配管56と同様に、第2冷却用熱交換部220から第1冷却用熱交換部210へと冷却水を供給する機能を有している。
モジュレータタンク700aの内部では、空間SP11を流れる冷媒と、空間SP21を流れる冷却水との間で熱交換が行われる。具体的には、比較的低温の冷却水によって、比較的高温の冷媒が冷却される。その結果、第6実施形態について説明したものと同様の効果が得られる。上記のようなモジュレータタンク700aは、本実施形態における「補助熱交換部」に該当する。
第8実施形態について、図32乃至図34を参照しながら説明する。図32に示されるのは、第8実施形態に係る複合型熱交換器10Gの全体構成である。図33に示されるのはその一部の分解組立図である。以下では、複合型熱交換器10Gのうち第1実施形態と異なる部分についてのみ説明し、第1実施形態と共通する部分については適宜説明を省略する。
本実施形態における第1空調用熱交換部110、第2空調用熱交換部120、第1冷却用熱交換部210、及び第2冷却用熱交換部220のそれぞれの形状及び配置は、第1実施形態(図2)の場合と同じである。
複合型熱交換器10Gはモジュレータタンク700を備えている。複合型熱交換器10Gでは、第2空調用熱交換部120から排出された冷媒が、モジュレータタンク700を介して第1空調用熱交換部110に供給されるように構成されている。その具体的な構成は、図22等を参照して説明した第4実施形態の場合と概ね同じであるから、その詳細な図示や説明については省略する。
複合型熱交換器10Gは冷却水タンク800aを備えている。冷却水タンク800aは円筒形状の容器であって、その長手方向をタンク311等の長手方向(つまり上下方向)に沿わせた状態で、タンク311及びタンク411と隣接する位置に設けられている。具体的には、冷却水タンク800aは、タンク311及びタンク411を挟んでコア部とは反対側となる位置に配置されている。冷却水タンク800aは、第2冷却用熱交換部220から第1冷却用熱交換部210に向かう冷却水を貯えるための容器となっている。また、冷却水タンク800aは、配管41から供給される冷媒を第2空調用熱交換部120のタンク411に案内する機能をも有している。冷却水タンク800aは、その下端が配管43よりも上方側となるような位置に配置されている。
図33及び図34に示されるように、冷却水タンク800aの内部空間は、隔壁871、872、873によって2つの空間に分けられている。
隔壁871は平板状の壁であり、その主面の法線方向をチューブ320の長手方向に沿わせた状態で配置されている。冷却水タンク800aのうちタンク311側の内壁面と、隔壁871との間は離間している。また、冷却水タンク800aのうちタンク311とは反対側の内壁面と、隔壁871との間も離間している。隔壁871のうち側方側の2辺は、いずれも冷却水タンク800aの内壁面に当接している。
隔壁872は、隔壁871の上端から、タンク311側の内壁面まで伸びるように形成された平板状の壁である。隔壁872が設けられている位置は、冷却水タンク800aの上端よりも低い位置であり、且つセパレータ370、470(つまり点線DL1)よりも高い位置となっている。隔壁873は、隔壁871の下端から、タンク311側の内壁面まで伸びるように形成された平板状の壁である。隔壁873が設けられている位置は、冷却水タンク800aの下端よりも高い位置であり、且つセパレータ370、470よりも低い位置となっている。
冷却水タンク800aの内部空間のうち、隔壁871、872、873によって囲まれた空間のことを、以下では「空間SP22」とも表記する。また、冷却水タンク800aの内部空間のうち、隔壁871、872、873を挟んで空間SP22と隣り合う空間のことを、以下では「空間SP12」とも表記する。空間SP12及び空間SP22は、隔壁871等によって互いに完全に分離されている。
冷却水タンク800aのうち、タンク311側とは反対側の側面には、配管41が接続されている。配管41が接続されている位置は、隔壁872よりも低い位置であり、且つ隔壁871と対向する位置である。配管41の内部空間は、冷却水タンク800aの空間SP12に繋がっている。
冷却水タンク800aのうち、隔壁871よりも上方側の部分には、穴881が形成されている。また、タンク411のうち、穴881と対向する位置には、穴881と同一形状の穴(不図示)が形成されている。冷却水タンク800aは、穴881の縁をタンク411の穴の縁に重ねた状態で、これらの縁の全体が水密となるようにタンク411に対しろう付けされている。
冷却水タンク800aのうち、隔壁873よりも上方側であり且つセパレータ470よりも下方側の部分には、穴883が形成されている。また、タンク411のうち、穴883と対向する位置には、穴883と同一形状の穴(不図示)が形成されている。冷却水タンク800aは、穴883の縁をタンク411の穴の縁に重ねた状態で、これらの縁の全体が水密となるようにタンク411に対しろう付けされている。
冷却水タンク800aのうち、隔壁872よりも下方側であり且つセパレータ370よりも上方側の部分には、穴882が形成されている。また、タンク311のうち、穴882と対向する位置には、穴882と同一形状の穴3111が形成されている。冷却水タンク800aは、穴882の縁を穴3111の縁に重ねた状態で、これらの縁の全体が水密となるようにタンク311に対しろう付けされている。
以上のような構成の下で、冷媒及び冷却水が流れる経路について説明する。配管41を通って空調用熱交換器100に供給される冷媒は、先ず冷却水タンク800aの空間SP12に流入する。当該冷媒は隔壁871に沿って上方側に流れた後、穴881を通って、タンク411のうちセパレータ470よりも上方側の部分に流入する。その後、冷媒は第2空調用熱交換部120のコア部を通り、タンク412に向かって流れる。
第2冷却用熱交換部220のコア部を通って、タンク411のうちセパレータ470よりも下方側の部分に流入した冷却水は、穴883を通って冷却水タンク800aの空間SP22に流入する。当該冷却水は隔壁871に沿って上方側に流れた後、穴882を通って、タンク311のうちセパレータ370よりも上方側の部分に流入する。その後、冷却水は第1冷却用熱交換部210のコア部を通り、タンク312に向かって流れる。
このように、本実施形態における冷却水タンク800aは、第4実施形態に係る複合型熱交換器10C(図22)における冷却水タンク800と同様に、第2冷却用熱交換部220から第1冷却用熱交換部210へと冷却水を供給する機能を有している。
冷却水タンク800aの内部では、空間SP12を流れる冷媒と、空間SP22を流れる冷却水との間で熱交換が行われる。具体的には、比較的低温の冷却水によって、比較的高温の冷媒が冷却される。その結果、空間SP12から第2空調用熱交換部120に供給される冷媒の温度が上記熱交換によって低下するので、第6実施形態について説明したものと同様の効果が得られる。
このように、本実施形態では、第2空調用熱交換部120に供給される冷媒と、第1冷却用熱交換部210と第2冷却用熱交換部220との間を流れる冷却水と、の間の熱交換が冷却水タンク800a内で行われることにより、空調装置の動作効率を高めることが可能となっている。上記のような冷却水タンク800aは、本実施形態における「補助熱交換部」に該当する。
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。