以下、本発明の実施形態を説明する。
本発明の実施形態に係るトナーは、少なくとも結着樹脂および変性シリコーンオイルを含有するトナー母体粒子を有する。以下、結着樹脂および変性シリコーンについて説明する。
−結着樹脂−
上記結着樹脂は、スチレン(メタ)アクリル樹脂およびポリエステル樹脂を含む。本明細書において、「結着樹脂がスチレン(メタ)アクリル樹脂を含む」とは、結着樹脂が、スチレン(メタ)アクリル樹脂そのものを含む態様であってもよいし、後述のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂におけるスチレン(メタ)アクリル重合セグメントのように、他の樹脂中に含まれるセグメントを含む態様であってもよい。
上記スチレン−(メタ)アクリル樹脂は、ラジカル重合性の不飽和結合を有する化合物のラジカル重合体の分子構造を有し、例えば、当該化合物のラジカル重合によって合成することが可能である。上記化合物は、一種でもそれ以上でもよく、その例には、スチレンおよびその誘導体、および、(メタ)アクリル酸およびその誘導体が含まれる。なお、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよびメタクリルの総称であり、それらの一方または両方を意味する。
上記スチレンおよびその誘導体の例には、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレンおよび3,4−ジクロロスチレンが含まれる。
上記(メタ)アクリル酸およびその誘導体の例には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルおよびメタクリル酸ジエチルアミノエチルが含まれる。
上記結着樹脂中のスチレン(メタ)アクリル樹脂の含有量は50〜95質量%であることが好ましい。
上記スチレン(メタ)アクリル樹脂は一種でもそれ以上でもよい。
上記結着樹脂はポリエステル樹脂を含む。本明細書において「結着樹脂がポリエステルを含む」とは、結着樹脂がポリエステル樹脂そのものを含む態様であってもよいし、後述のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂における結晶性ポリエステル重合セグメントのように、他の樹脂中に含まれるセグメントを含む態様であってもよい。上記ポリエステル樹脂は結晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。熱定着時に結晶性ポリエステル樹脂が融解してスチレン(メタ)アクリル樹脂の可塑化剤として働くために低温定着性を向上させることができるからである。当該結晶性ポリエステルは、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの脱水縮合反応による公知の合成法により得ることができる。
上記多価カルボン酸の例には、コハク酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸;それらの酸無水物;およびそれらの炭素数1〜3のアルキルエステル;が含まれる。上記多価カルボン酸は、脂肪族ジカルボン酸であることが好ましい。
上記多価アルコールの例には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、1,7−へプタンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオールなどの脂肪族ジオール;および、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールなどの3価以上のアルコール;が含まれる。上記多価アルコールは、脂肪族ジオールであることが好ましい。
上記結晶性ポリエステル樹脂は、一種でもそれ以上でもよい。
上記結晶性ポリエステルにおける「結晶性」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有することを言う。当該「明確な吸熱ピーク」とは、具体的には、DSCにおいて、昇温速度10℃/minで測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。なお、上記半値幅が小さいほど、上記樹脂の結晶性が高い。
上記結晶性ポリエステルの融点は、低温定着性を確保する観点から、50〜100℃であることが好ましく、60〜90℃であることがより好ましい。
上記結着樹脂中のポリエステル樹脂の含有量は5〜50質量%であることが好ましい。結着樹脂中のポリエステル樹脂の含有量が5質量%未満であると、低温定着の効果が小さくなることがあり、50質量%を超えると耐熱保管性が悪化することがある。
また、上記結晶性ポリエステル樹脂は、スチレン(メタ)アクリル重合セグメントと結晶性ポリエステル重合セグメントとが化学的に結合した構造を有するハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂であってもよい。かかる場合、上記結着樹脂はスチレン(メタ)アクリル樹脂を必ずしも含まなくともよい。上記スチレン(メタ)アクリル重合セグメントは、スチレン(メタ)アクリル樹脂に由来する部分であり、当該スチレン(メタ)アクリル樹脂は、前述したスチレン(メタ)アクリル樹脂を採用しうる。また、上記結晶性ポリエステル重合セグメントは、結晶性ポリエステル樹脂に由来する部分であり、当該結晶性ポリエステル樹脂は、前述した結晶性ポリエステル樹脂を採用しうる。
上記ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の分子構造は限定されず、例えば、スチレン(メタ)アクリル重合セグメントを主鎖(幹)とし、結晶性ポリエステル重合セグメントを側鎖(枝)とするグラフト共重合体であってもよいし、両重合セグメントが鎖状に連なっていてもよい。
上記重合セグメント同士の結合は、例えばエステル結合であり、あるいは不飽和基の付加反応による共有結合である。このような化学的な結合は、例えば、上記重合セグメントのモノマーの一部に両反応性モノマーを用いることによってもたらされる。当該両反応性モノマーとは、結晶性ポリエステル重合セグメントを生成する際の重縮合反応に対して反応性を有する官能基と、スチレン(メタ)アクリル系重合セグメントを生成する際のラジカル重合反応に対して反応性を有する官能基との両方を有するモノマーである。両反応性モノマーは、一種でもそれ以上でもよく、その例には、(メタ)アクリル酸などの、不飽和二重結合とカルボキシル基および水酸基の一方または両方とを有する化合物が含まれる。
たとえば、グラフト共重合体である上記ハイブリッド結晶性樹脂であれば、上記化学的な結合は、主鎖用のモノマーおよび側鎖用のモノマーのそれぞれと重合反応する部位を有する両反応性モノマーを主鎖用モノマーに配合して、これらのモノマーの重合によって主鎖となる樹脂ユニットを生成し、次いで、当該樹脂ユニットの存在下で側鎖用モノマーを重合させることによって、製造することが可能である。
上記ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂における主鎖および側鎖の構造および量は、例えば、上記結着樹脂またはその加水分解物を、核磁気共鳴(NMR)やエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)などの公知の機器分析法によって分析することにより確認または推定することができる。
また、上記の重合セグメントの合成では、得られる樹脂の分子量を調整するための連鎖移動剤が当該重合セグメントのモノマーなどの原料にさらに含まれていてもよい。上記連鎖移動剤は、一種でもそれ以上でもよく、本実施形態の効果を奏する範囲内において、上記の目的を達成可能な量で用いられる。当該連鎖移動剤の例には、2−クロロエタノール、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン、および、スチレンダイマーが含まれる。
上記ハイブリッド結晶性樹脂における上記結晶性ポリエステル重合セグメントの含有量は、本実施形態の効果が得られる範囲において適宜に決めることが可能である。たとえば、上記ハイブリッド結晶性樹脂における上記結晶性ポリエステル重合セグメントの含有量は、少なすぎると低温定着性が不十分となることがあり、多すぎると高温保管性が不十分となることがある。このような観点から、上記含有量は、10〜30質量%であることが好ましく、15〜25質量%であることがより好ましい。
−変性シリコーンオイル−
上記変性シリコーンオイルは、下記式(1)で表される化合物である。
(式(1)中、nは1以上の整数であり、
R1、R2、R3は、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜10のアルキル基、エポキシ基、脂環式エポキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、-(C
2H
4O)
a−CH
3(ただし、aは1〜10の整数を表す)、および、−(CH
2)
b−CF
3(ただし、bは1〜10の整数を表す)からなる群から選ばれ、かつ、−(C
2H
4O)
a−CH
3(ただし、aは1〜10の整数を表す)、または、−(CH
2)
b−CF
3(ただし、bは1〜10の整数を表す)を含む1以上の置換基を表す)
上記のとおり、本発明で使用される変性シリコーンオイルは、R1、R2およびR3で置換されたシリコーンオイルであって、上記エーテル含有基(-(C2H4O)a−CH3)または上記フッ素含有基(−(CH2)b−CF3)を少なくとも1つ有することを特徴とする。シリコーンオイルが上記エーテル含有基または上記フッ素含有基で変性されていることにより、トナーの低温定着性を向上させることができる。
トナー母体粒子中の上記変性シリコーンオイルの含有量は、0.001〜0.1質量%の範囲であることが好ましい。上記シリコーンオイルの含有量が0.001質量%未満であると低温定着性が損なわれることがある。また、上記シリコーンオイルの含有量が0.1質量%を超えると、トナーの耐熱性が損なわれることがある。
上記変性シリコーンオイルは市販製品を使用してもよいし、適宜合成したものを使用してもよい。本発明の変性シリコーンオイルとして使用可能な市販製品としては、KM−71(信越化学工業株式会社製)などが挙げられる。
また、トナー母体粒子中の上記変性シリコーンオイルの含有量は以下の手順により測定することができる。まず、トナー粒子を精秤する(1g〜2g)。精秤したトナー粒子に変性シリコーンオイルを溶かしやすい溶剤、例えば、クロロホルムを添加し、遠心分離する。このとき遠心は高回転(例えば20000rpm)で行うことが好ましい。次いで、上済みを採取する。この工程を数回繰り返した後、クロロホルムを蒸発乾燥する(室温にて送風乾燥)。次いで、重クロロホルム(CDCL3)を1ml添加し、1H−NMRにて測定し、変性シリコーンオイルの同定を行う。変性シリコーンオイルのSi−CH3のHは0.5ppm付近にケミカルシフトを有する。これはSiに直結したメチル基のHに非常に特徴的なピークであり、徴的なピーク位置であり、他の化学構造を持つ有機物とは間違いなく区別できる。定量する場合、前記定性の手順中の、重クロロホルム添加の際に内部標準1μlを添加する。なお、内部標準とは、NMRピークが単純で、試料のピークとできるだけ重ならないもので、蒸気圧が高く、添加後の濃度が変化しにくいもので、例えば、DMFがある。1H−NMRを測定後、積分値によって定量する。このとき内部標準との相対比により、重クロロホルム1ml中の変性シリコーンオイルのモル比を算出し、重量換算する。はじめに採取したトナー粒子の量から、変性シリコーンオイルの含有量を計算する。上記の方法により、10ppm程度までの変性シリコーンオイルを定量することが可能である。他に同定法としては、13C−NMR、29Si−NMRなどがある。あるいは、トナー粒子の熱重量分析により、温度に対する変性シリコーンオイル由来の減量を測定し、測定前と測定後後の変性シリコーンオイルの重量差(減量率)を測定し、その結果によりシリコーンオイル含有量を求めてもよい。上記熱重量分析は、例えば、熱重量分析装置DTA−60AH(島津製作所製)を用いて行うことができる。
−その他の成分−
また、上記トナー母体粒子は、本発明の効果を奏する範囲において、上記結着樹脂および変性シリコーンオイル以外のその他の成分をさらに含有していてもよい。当該その他の成分の例には、着色剤、離型剤、帯電制御剤、界面活性剤が含まれる。当該その他の成分は、一種でもそれ以上含まれていてもよい。
[着色剤]
上記着色剤には、カラートナーの着色剤に用いられる公知の無機または有機着色剤が用いられる。当該着色剤の例には、カーボンブラック、磁性体、顔料および染料が含まれる。上記着色剤は一種でもそれ以上でもよい。
上記カーボンブラックの例には、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラックおよびランプブラックが含まれる。上記磁性体の例には、鉄やニッケル、コバルトなどの強磁性金属、これらの金属を含む合金、および、フェライトやマグネタイトなどの強磁性金属の化合物、が含まれる。
上記顔料の例には、C.I.ピグメントレッド2、同3、同5、同7、同15、同16、同48:1、同48:3、同53:1、同57:1、同81:4、同122、同123、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同208、同209、同222、同238、同269、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントイエロー3、同9、同14、同17、同35、同36、同65、同74、同83、同93、同94、同98、同110、同111、同138、同139、同153、同155、同180、同181、同185、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントブルー15:3、同15:4、同60、および、中心金属が亜鉛やチタン、マグネシウムなどであるフタロシアニン顔料、が含まれる。
上記染料の例には、C.I.ソルベントレッド1、同3、同14、同17、同18、同22、同23、同49、同51、同52、同58、同63、同87、同111、同122、同127、同128、同131、同145、同146、同149、同150、同151、同152、同153、同154、同155、同156、同157、同158、同176、同179、ピラゾロトリアゾールアゾ染料、ピラゾロトリアゾールアゾメチン染料、ピラゾロンアゾ染料、ピラゾロンアゾメチン染料、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93および同95が含まれる。
[離型剤]
上記離型剤(ワックス)の例には、炭化水素系ワックスおよびエステルワックスが含まれる。当該炭化水素系ワックスの例には、低分子量ポリエチレンワックス、低分子量ポリプロピレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックスおよびパラフィンワックスが含まれる。また、上記エステルワックスの例には、カルナウバワックス、ペンタエリスリトールベヘン酸エステル、ベヘン酸ベヘニルおよびクエン酸ベヘニルが含まれる。上記離型剤は1種でもそれ以上でもよい。
[帯電制御剤]
上記帯電制御剤の例には、ニグロシン系染料、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、および、サリチル酸金属塩あるいはその金属錯体が含まれる。上記帯電制御剤は一種でもそれ以上でもよい。
[界面活性剤]
上記界面活性剤の例には、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系等のアニオン系界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン系界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤が含まれる。上記界面活性剤は、一種でもそれ以上でもよい。
上記アニオン系界面活性剤の具体例には、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムが含まれる。上記カチオン系界面活性剤の具体例には、アルキルベンゼンジメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルアンモニウムクロライドが含まれる。非イオン系界面活性剤の例には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルが含まれる。
上記トナー母体粒子は、その粒径および円形度の適切な制御の観点から、粉砕トナーよりも、水系媒体中で調製される重合トナーであることが好ましく、乳化会合凝集法によるトナー母体粒子であることがより好ましい。
上記水系媒体は、水を主成分(例えば50体積%以上)とし、水溶性の有機化合物を含有していてもよい液体である。水系媒体の例には、蒸留水、イオン交換水などの水、アルコール類が含まれる。
−外添剤−
上記トナー粒子は、例えば、上記トナー母体粒子と、その表面に存在する外添剤とを有してもよい。トナー粒子が外添剤を含有することは、トナー粒子の流動性や帯電性などを制御する観点から好ましい。当該外添剤は、一種でもそれ以上でもよい。当該外添剤の例には、シリカ粒子、チタニア粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、酸化亜鉛粒子、酸化クロム粒子、酸化セリウム粒子、酸化アンチモン粒子、酸化タングステン粒子、酸化スズ粒子、酸化テルル粒子、酸化マンガン粒子および酸化ホウ素粒子が含まれる。
上記外添剤は、ゾル−ゲル法で作製されたシリカ粒子を含むことがより好ましい。ゾル−ゲル法で作製されたシリカ粒子は、粒子径分布が狭いという特徴を有しているので、トナー母体粒子に対する外添剤の付着強度のバラツキを抑制する観点から好ましい。
また、上記シリカ粒子の個数平均一次粒子径は、70〜200nmであることが好ましい。個数平均一次粒子径が上記範囲内にあるシリカ粒子は、他の外添剤に比べて大きい。したがって、二成分現像剤においてスペーサーとしての役割を有する。よって、二成分現像剤が現像装置中で撹拌されているときに、より小さな他の外添剤がトナー母体粒子に埋め込まれることを防止する観点から好ましい。また、トナー母体粒子同士の融着を防止する観点からも好ましい。
上記外添剤の個数平均一次粒子径は、例えば、透過型電子顕微鏡で撮影した画像の画像処理によって求めることが可能であり、例えば、分級や分級品の混合などによって調整することが可能である。
上記外添剤は、その表面が疎水化処理されていることが好ましい。当該疎水化処理には、公知の表面処理剤が用いられる。当該表面処理剤は、一種でもそれ以上でもよく、その例には、シランカップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、脂肪酸、脂肪酸金属塩、そのエステル化物およびロジン酸が含まれる。
上記シランカップリング剤の例には、ジメチルジメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、メチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシランおよびデシルトリメトキシシランが含まれる。上記シリコーンオイルの例には、環状化合物や、直鎖状あるいは分岐状のオルガノシロキサンなどが含まれ、より具体的には、オルガノシロキサンオリゴマー、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、および、テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン、が含まれる。
また、上記シリコーンオイルの例には、側鎖または片末端や両末端、側鎖片末端、側鎖両末端などに変性基を導入した反応性の高い、少なくとも末端を変性したシリコーンオイルが含まれる。上記変性基の種類は、一種でもそれ以上でもよく、その例には、アルコキシ、カルボキシル、カルビノール、高級脂肪酸変性、フェノール、エポキシ、メタクリルおよびアミノが含まれる。
上記外添剤の添加量は、トナー粒子全体に対して0.1〜10.0質量%が好ましい。より好ましくは1.0〜3.0質量%である。
−現像剤−
上記トナーは、一成分現像剤であれば上記トナー粒子そのものにより構成され、二成分現像剤であれば上記トナー粒子およびキャリア粒子により構成される。当該二成分現像剤におけるトナー粒子の含有量(トナー濃度)は、通常の二成分現像剤と同様でよく、例えば4.0〜8.0質量%である。
上記キャリア粒子は、磁性体により構成される。当該キャリア粒子の例には、当該磁性体からなる芯材粒子と、その表面を被覆する被覆材の層とを有する被覆型キャリア粒子、および、樹脂中に磁性体の微粉末が分散されてなる樹脂分散型のキャリア粒子、が含まれる。上記キャリア粒子は、感光体へのキャリア粒子の付着を抑制する観点から、上記被覆型キャリア粒子であることが好ましい。
上記芯材粒子は、磁性体、例えば、磁場によってその方向に強く磁化する物質、によって構成される。当該磁性体は、一種でもそれ以上でもよく、その例には、鉄、ニッケルおよびコバルトなどの強磁性を示す金属、これらの金属を含む合金もしくは化合物、および、熱処理することにより強磁性を示す合金、が含まれる。
上記強磁性を示す金属またはそれを含む化合物の例には、鉄、下記式(a)で表されるフェライト、および、下記式(b)で表されるマグネタイト、が含まれる。式(a)、式(b)中のMは、Mn、Fe、Ni、Co、Cu、Mg、Zn、CdおよびLiの群から選ばれる一以上の1価または2価の金属を表す。
式(a):MO・Fe2O3
式(b):MFe2O4
また、上記熱処理することにより強磁性を示す合金または金属酸化物の例には、マンガン−銅−アルミニウムおよびマンガン−銅−錫などのホイスラー合金、および、二酸化クロム、が含まれる。
上記芯材粒子は、上記フェライトであることが好ましい。これは、被覆型キャリア粒子の比重は、芯材粒子を構成する金属の比重よりも小さくなることから、現像装置内における撹拌の衝撃力をより小さくすることができるためである。
上記被覆材は、一種でもそれ以上でもよい。被覆材には、キャリア粒子の芯材粒子の被覆に利用される公知の樹脂を用いることができる。当該被覆材は、シクロアルキル基を有する樹脂であることが、キャリア粒子の水分吸着性を低減させる観点、および、被覆層の芯材粒子との密着性を高める観点、から好ましい。当該シクロアルキル基の例には、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基およびシクロデシル基が含まれる。中でも、シクロヘキシル基またはシクロペンチル基が好ましく、被覆層とフェライト粒子との密着性の観点からシクロへキシル基がより好ましい。
上記シクロアルキル基を有する樹脂の重量平均分子量Mwは、例えば10,000〜800,000であり、より好ましくは100,000〜750,000である。当該樹脂における上記シクロアルキル基の含有量は、例えば10〜90質量%である。上記樹脂中の当該シクロアルキル基の含有量は、例えば、P−GC/MSや1H−NMRなどの公知の機器分析法を利用して求めることが可能である。
上記二成分現像剤は、上記トナー粒子と上記キャリア粒子とを適量混合することによって製造することができる。当該混合に用いられる混合装置の例には、ナウターミキサー、WコーンおよびV型混合機が含まれる。
上記トナー粒子の大きさおよび形状は、本実施形態の効果が得られる範囲において適宜に決めることが可能である。たとえば、上記トナー粒子の体積平均粒径は、3.0〜8.0μmであり、上記トナー粒子の平均円形度は、0.920〜1.000である。
上記トナー粒子の個数平均粒径は、「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用のコンピューターシステムを接続した装置を用いて測定、算出することができる。また、上記トナー粒子の個数平均粒径は、例えば、トナー粒子の製造における温度や攪拌の条件、トナー粒子の分級、トナー粒子の分級品の混合などによって調整することが可能である。
上記トナー粒子の平均円形度は、例えば、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(Sysmex社製)を用い、所定数のトナー粒子における、粒子像と同じ投影面積を持つ円の周囲長L1と、粒子投影像の周囲長L2とから、下記式から算出した円形度Cの総和を、当該所定数で除することにより求められる。上記トナー粒子の平均円形度は、例えば、トナー粒子の製造における樹脂粒子の熟成の程度や、トナー粒子の熱処理、異なる円形度のトナー粒子の混合、などによって調整することが可能である。
(式) C=L1/L2
また、上記キャリア粒子の大きさおよび形状も、本実施形態の効果が得られる範囲において適宜に決めることが可能である。たとえば、上記キャリア粒子の体積平均粒径は、15〜100μmである。当該キャリア粒子の体積平均粒径は、例えばレーザー回折式粒度分布測定装置「HELOS KA」(日本レーザー株式会社製)を用いて湿式にて測定することができる。また、上記キャリア粒子の体積平均粒径は、例えば、芯材粒子の製造条件による芯材粒子の粒径を制御する方法や、キャリア粒子の分級、キャリア粒子の分級品の混合などによって調整することが可能である。
−トナーの製造方法−
上記トナーは、少なくとも下記工程(1)および(2)を含む方法で製造することができる。
(1)少なくとも上記スチレン(メタ)アクリル樹脂および上記ポリエステル樹脂の一方の粒子を、上記変性シリコーンオイルを含む水系分散液中で凝集、融着させる工程(第1の工程)
(2)凝集した粒子を上記水系分散液から分離してトナー母体粒子を得る工程(第2の工程)
上記第1の工程は、例えば、少なくとも上記スチレン(メタ)アクリル樹脂および上記ポリエステル樹脂の一方の粒子を、上記変性シリコーンオイルを含むアルカリ性に調整した水系媒体中で凝集させ、当該水系媒体を加温して融着させることによって行うことができる。例えば、まず、上記スチレン(メタ)アクリル樹脂を分散させた分散液を調製し当該分散液をアルカリ性に調整する。次いで、上記変性シリコーンオイルを分散させた分散液を調製し、これを前記スチレン(メタ)アクリル樹脂を分散させた分散液に添加して混合液を調製する。その後、上記ポリエステル樹脂を分散させた分散液を調製し、当該混合液に添加し、結着樹脂の粒子を凝集させ、次いで当該水系媒体を加温して当該結着樹脂の粒子を融着させることができる。
あるいは、上記結着樹脂(上記スチレン(メタ)アクリル樹脂および上記ポリエステル樹脂の粒子)を含む分散液を調整し、当該分散液をアルカリ性に調製する。ついで、上記変性シリコーンオイルを分散させた分散液を調製し、これを上記結着樹脂を分散させた分散液に添加し、その後、当該結着樹脂の粒子を凝集、融着させてもよい。なお、pHの調整には、水酸化ナトリウムなどの公知の塩基性化合物を用いることができる。
また、結着樹脂を凝集させるために凝集剤を使用してもよい。凝集剤は、特に限定されないが、電荷中和反応と架橋作用を使い粒子を成長させるものとして金属塩から選択されるものが好適である。上記金属塩の例には、例えばナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属の塩などの一価の金属塩;カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅などの二価の金属塩;鉄、アルミニウムなどの三価の金属塩が含まれる。具体的な金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガンなどを挙げることができ、これらの中で、より少量で凝集を進めることができることから、二価の金属塩を用いることが特に好ましい。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
凝集粒子の成長は、水系媒体中の塩濃度を高めることによって実質的に停止させることができる。例えば塩化ナトリウム、多価有機酸またはその塩、アミノ酸、ポリホスホン酸またはこれらの塩を凝集停止剤として使用することができる。また系内のpHを変化させることによって凝集作用を緩和させることができる。pHを調整するためにはフマル酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、塩酸などを用いることができる。さらにはpHを調整するとともにキレート剤を併用し金属イオンによる架橋作用を緩和させることも有効である。上記キレート剤の例には、HIDA(ヒドロキシエチルイミノ二酢酸)、HEDTA(ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸)、HEDP(ヒドロキシエチリデンジホスホン酸)、HIDS(3−ヒドロキシ−2,2’−イミノジコハク酸)が含まれる。
また、上記第1の工程では、結着樹脂および変性シリコーンオイル以外のその他の成分を上記結着樹脂の粒子にさらに含有させてもよいし、結着樹脂および変性シリコーンオイル以外のその他の成分の粒子をさらに加えて、凝集、融着させてもよい。
上記第2の工程は、公知の固液分離の方法によって行うことが可能である。当該第2の工程では、得られた湿潤トナー母体粒子を洗浄する工程をさらに含むことが好ましい。また、上記第2の工程は、必要に応じて、トナー母体粒子の粒径や粒子形状を調整する工程をさらに含んでもよい。
上記トナーの製造方法は、本実施の形態の効果を奏する範囲において、上記第1の工程および上記第2の工程以外の他の工程をさらに含んでいてもよい。当該他の工程の例には、得られたトナー母体粒子を乾燥する工程;得られたトナー母体粒子に外添剤を混合、付着させてトナー粒子を得る工程;熱および撹拌によるせん断をトナー粒子に加えることにより、凝集粒子中の樹脂微粒子同志を融着させるとともに粒子の円形度および表面性を制御したり、トナー内の結着樹脂、結晶性成分などの配向を制御する熟成工程;得られたトナー粒子をキャリア粒子に混合して二成分現像剤としてのトナーを得る工程、が含まれる。
本実施形態のトナーは、少なくとも結着樹脂および変性シリコーンオイルを含有するトナー母体粒子を有し、当該変性シリコーンオイルが上記式(1)で表される化合物である。上記トナーの特徴の1つは、低温定着性に優れることであり、その理由は、定かではないが、以下のように考えられる。すなわち、上記変性シリコーンオイルがトナー表面に存在することで、当該変性シリコーンオイルの特定のポリオキシエチレン鎖またはフッ素含有基中のアルキレン鎖と、上記結着樹脂中のポリエステル樹脂中の主鎖やスチレン(メタ)アクリル樹脂の主鎖との水素結合やファンデルワールス結合などの相互作用によって、トナー定着時に、溶融した当該結着樹脂と当該変性シリコーンオイルとの相溶性が格段に高まり、当該結着樹脂がより一層可塑化することでトナーの熱特性が低下するものと思われる。それにより、トナーの低温定着性が向上する。また、シリコーンオイルの表面張力を下げる特性により、泡が顕著に抑制される。
上記結着樹脂中の上記スチレン(メタ)アクリル樹脂の含有量が50〜95質量%であることは、耐熱性の観点からより一層効果的である。
上記結着樹脂中の上記ポリエステル樹脂の含有量が5〜50質量%であることは、低温定着性の観点からより一層効果的である。
上記トナー母体粒子中の上記変性シリコーンオイルの含有量が0.001〜0.1質量%であることは、トナーの低温定着性および耐熱性の観点からより一層効果的である。
本実施形態のトナーの製造方法は、少なくとも上記スチレン(メタ)アクリル樹脂および上記ポリエステル樹脂の一方の粒子を、上記変性シリコーンオイルを含む水系分散液中で凝集、融着させる工程(第1の工程)と、凝集した粒子を上記水系分散液から分離してトナー母体粒子を得る工程(第2の工程)とを含む。上記変性シリコーンオイルを含む水系分散液中で結着樹脂を構成する樹脂粒子を凝集、融着させるため、上記変性シリコーンオイルがトナー粒子表面に存在する。したがって、前述したように、トナー画像の定着時に、上記結着樹脂と上記変性シリコーンオイルとが顕著に相溶し、当該結着樹脂が可塑化しトナーの低温定着性が向上する。また、上記変性シリコーンオイルにより分散液の表面張力が低下するため、上記第1の工程において発泡を抑制することができる。
上記トナーは、通常の電子写真方式の画像形成方法に適用され、静電潜像の現像に供される。上記トナーは、例えば、図1に示される画像形成装置に収容され、記録媒体上でのトナー像の形成に供される。
図1に示す画像形成装置1は、画像読取部110、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50および定着装置60を有する。
画像形成部40は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナーによる画像を形成する画像形成ユニット41Y、41M、41Cおよび41Kを有する。これらは、収容されるトナー以外はいずれも同じ構成を有するので、以後、色を表す記号を省略することがある。画像形成部40は、さらに、中間転写ユニット42および二次転写ユニット43を有する。これらは、転写装置に相当する。
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414、およびドラムクリーニング装置415を有する。感光体ドラム413は、例えば負帯電型の有機感光体である。感光体ドラム413の表面は、光導電性を有する。感光体ドラム413は、感光体に相当する。帯電装置414は、例えばコロナ帯電器である。帯電装置414は、帯電ローラーや帯電ブラシ、帯電ブレードなどの接触帯電部材を感光体ドラム413に接触させて帯電させる接触帯電装置であってもよい。露光装置411は、例えば、光源としての半導体レーザーと、形成すべき画像に応じたレーザー光を感光体ドラム413に向けて照射する光偏向装置(ポリゴンモータ)とを含む。
現像装置412は、二成分現像方式の現像装置である。現像装置412は、例えば、二成分現像剤を収容する現像容器と、当該現像容器の開口部に回転自在に配置されている現像ローラー(磁性ローラー)と、二成分現像剤が連通可能に現像容器内を仕切る隔壁と、現像容器における開口部側の二成分現像剤を現像ローラーに向けて搬送するための搬送ローラーと、現像容器内の二成分現像剤を撹拌するための撹拌ローラーと、を有する。上記現像容器には、二成分現像剤としての上記トナーが収容されている。
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト421、中間転写ベルト421を感光体ドラム413に圧接させる一次転写ローラー422、バックアップローラー423Aを含む複数の支持ローラー423、およびベルトクリーニング装置426を有する。中間転写ベルト421は、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも一つの駆動ローラーが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
二次転写ユニット43は、無端状の二次転写ベルト432、および二次転写ローラー431Aを含む複数の支持ローラー431を有する。二次転写ベルト432は、二次転写ローラー431Aおよび支持ローラー431によってループ状に張架される。
定着装置60は、例えば、定着ローラー62と、定着ローラー62の外周面を覆い、用紙S上のトナー画像を構成するトナーを加熱、融解するための無端状の発熱ベルト63と、用紙Sを定着ローラー62および発熱ベルト63に向けて押圧する加圧ローラー64と、を有する。用紙Sは、記録媒体に相当する。
画像形成装置1は、さらに、画像読取部110、画像処理部30および用紙搬送部50を有する。画像読取部110は、給紙装置111およびスキャナー112を有する。用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52、および搬送経路部53を有する。給紙部51を構成する三つの給紙トレイユニット51a〜51cには、坪量やサイズなどに基づいて識別された用紙S(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された種類ごとに収容される。搬送経路部53は、レジストローラー対53aなどの複数の搬送ローラー対を有する。
画像形成装置1による画像の形成を説明する。
スキャナー112は、コンタクトガラス上の原稿Dを光学的に走査して読み取る。原稿Dからの反射光がCCDセンサー112aにより読み取られ、入力画像データとなる。入力画像データは、画像処理部30において所定の画像処理が施され、露光装置411に送られる。
感光体ドラム413は一定の周速度で回転する。帯電装置414は、感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置411では、ポリゴンモータのポリゴンミラーが高速で回転し、各色成分の入力画像データに対応するレーザー光が、感光体ドラム413の軸方向に沿って展開し、当該軸方向に沿って感光体ドラム413の外周面に照射される。こうして感光体ドラム413の表面には、静電潜像が形成される。
現像装置412では、上記現像容器内の二成分現像剤の撹拌、搬送によってトナー粒子が帯電し、二成分現像剤は上記現像ローラーに搬送され、当該現像ローラーの表面で磁性ブラシを形成する。帯電したトナー粒子は、上記磁性ブラシから感光体ドラム413における静電潜像の部分に静電的に付着する。こうして、感光体ドラム413の表面の静電潜像が可視化され、感光体ドラム413の表面に、静電潜像に応じたトナー画像が形成される。上記の搬送に伴い、上記現像容器内のトナーは撹拌され、当該撹拌に伴うストレスを受けるが、上記トナーは、優れた耐破砕性を有するので、上記搬送によるトナーの破砕が生じない。
感光体ドラム413の表面のトナー画像は、中間転写ユニット42によって中間転写ベルト421に転写される。転写後に感光体ドラム413の表面に残存する転写残トナーは、感光体ドラム413の表面に摺接されるドラムクリーニングブレードを有するドラムクリーニング装置415によって除去される。
一次転写ローラー422によって中間転写ベルト421が感光体ドラム413に圧接することにより、感光体ドラム413と中間転写ベルト421とによって、一次転写ニップが感光体ドラムごとに形成される。当該一次転写ニップにおいて、各色のトナー画像が中間転写ベルト421に順次重なって転写される。
一方、二次転写ローラー431Aは、中間転写ベルト421および二次転写ベルト432を介して、バックアップローラー423Aに圧接される。それにより、中間転写ベルト421と二次転写ベルト432とによって、二次転写ニップが形成される。用紙Sは、用紙搬送部50によって二次転写ニップへ搬送され、当該二次転写ニップを用紙Sが通過する。用紙Sの傾きの補正および搬送のタイミングの調整は、レジストローラー対53aが配設されたレジストローラー部により行われる。
上記二次転写ニップに用紙Sが搬送されると、二次転写ローラー431Aへ転写バイアスが印加される。この転写バイアスの印加によって、中間転写ベルト421に担持されているトナー画像が用紙Sに転写される。トナー画像が転写された用紙Sは、二次転写ベルト432によって、定着装置60に向けて搬送される。
定着装置60は、発熱ベルト63と加圧ローラー64とによって、定着ニップを形成し、搬送されてきた用紙Sを当該定着ニップ部で加熱、加圧する。用紙S上のトナー画像を構成するトナー粒子は、加熱され、その内部で結晶性樹脂が速やかに融ける。また、上記変性シリコーンオイルがトナー粒子に存在することにより、加熱により溶融した結着樹脂と当該変性シリコーンオイルとが顕著に相溶して当該結着樹脂が可塑化することでトナーの熱特性が低下する。その結果、比較的少ない熱量で速やかにトナー粒子全体が融解し、トナー成分が用紙Sに付着する。また付着している溶融トナー成分では、ハイブリッド結晶性樹脂中の結晶性ポリエステル重合セグメントが速やかに結晶化し、当該溶融トナー成分全体が速やかに固化する。こうして、比較的少ない熱量で速やかにトナー画像が用紙Sに定着する。トナー像が定着された用紙Sは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。こうして、高画質の画像が形成される。
なお、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残存する転写残トナーは、中間転写ベルト421の表面に摺接されるベルトクリーニングブレードを有するベルトクリーニング装置426によって除去される。
以下、本発明を実施例および比較例を用いてさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されない。
[樹脂微粒子分散液MD1の調製]
(第1段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム8gをイオン交換水3Lに溶解させた溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。その後、過硫酸カリウム10gをイオン交換水200gに溶解させた溶液を上記溶液に添加し、再度液温を80℃とした。
スチレン 480g
n−ブチルアクリレート 250g
メタクリル酸 68g
得られた溶液に、上記成分を上記の量で含有する単量体混合液を1時間かけて滴下後、80℃で2時間加熱、撹拌することにより重合を行い、樹脂微粒子[a1]が分散されてなる樹脂微粒子分散液[A1]を調製した。
(第2段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム6gをイオン交換水1850mlに溶解させた溶液を仕込み、80℃に加熱後、上記の樹脂微粒子[a1]260gを加えて、溶液を得た。
さらに、下記量の下記成分を含む80℃で溶解、混合して単量体溶液を得た。当該単量体溶液を、循環経路を有する機械式分散機「CREARMIX(クレアミックス)」(エム・テクニック社;CREARMIXは同社の登録商標)により15分間上記溶液に混合、分散させた。このように、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。なお、下記ベヘン酸ベヘネートは離型剤であり、その融点は73℃である。
スチレン 175g
n−ブチルアクリレート 80g
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 3.8g
ベヘン酸ベヘネート 80g
次いで、上記反応容器の分散液に、過硫酸カリウム5gをイオン交換水100mlに溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を82℃で1時間にわたって加熱撹拌することにより上記単量体の重合を行い、樹脂微粒子[a2]が分散されてなる樹脂微粒子分散液[A2]を調製した。
(第3段重合)
上記の樹脂微粒子分散液[A2]に、過硫酸カリウム5gをイオン交換水100mlに溶解させた溶液を添加して混合液を得た。82℃の当該混合液に、下記成分を下記の量で含む単量体混合液を90分間かけて滴下した。
スチレン 340g
n−ブチルアクリレート 120g
メタクリル酸 32g
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 8g
滴下終了後、2時間にわたって加熱撹拌することにより上記単量体の重合を行った後、上記混合液を28℃まで冷却した。こうして、ビニル系単量体を主成分とし、離型剤を含有する樹脂微粒子[M1]が分散されてなる分散液[MD1]を調製した。
この分散液[MD1]について、樹脂微粒子[M1]の体積基準のメジアン径を測定したところ、230nmであった。また、樹脂微粒子[M1]を構成する樹脂の分子量を測定したところ、重量平均分子量が60,200であった。
[ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂c1の合成]
下記の成分を下記の量で含むモノマー液c−1を滴下ロートに入れた。アクリル酸は両反応性モノマーであり、ジーt−ブチルパーオキサイドはラジカル重合開始剤である。
スチレン 35質量部
ブチルアクリレート 9質量部
アクリル酸 4質量部
重合開始剤 7質量部
さらに、下記の重縮合系の原料モノマーを下記の量で、窒素導入管、脱水管、撹拌器および熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、170℃に加熱し溶解させてモノマー液c−2を得た。
ドデカン二酸 318質量部
1,6−ヘキサンジオール 196質量部
次いで、上記の温度のモノマー液c−2に、撹拌下でモノマー液c−1を90分間かけて滴下し、60分間熟成を行った後、減圧下(8kPa)にて未反応の付加重合モノマーを除去した。
その後、エステル化触媒としてTi(Obu)4を0.8質量部投入し、235℃まで昇温、常圧下(101.3kPa)にて5時間、さらに減圧下(8kPa)にて1時間反応を行った。次に200℃まで冷却した後、減圧下(20KPa)にて1時間反応させることによりハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(c1)を得た。
[ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液C1の調整]
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(c1)30質量部を溶融状態のまま、乳化分散機「キャビトロンCD1010」(株式会社ユーロテック製)に対して毎分100質量部の移送速度で移送した。同時に、濃度0.37質量%の希アンモニア水を、熱交換器で100℃に加熱しながら毎分0.1リットルの移送速度で移送した。そして、この乳化分散機を、回転子の回転速度60Hz、圧力5kg/cm2(4.90×105Pa)の条件で運転することにより、体積基準のメディアン径が200nm、固形分量が30質量部のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液[C1]を得た。
[変性シリコーンオイルの準備]
下記式(1−1)および表1に示すように、上記式(1)におけるR1、R2をメチル基(CH
3)とし、R3をそれぞれ表1のとおりとした変性シリコーンオイルA〜Gを準備した。なお、式(1−1)中の括弧内の構成単位は連続していてもランダムに配置されていてもよい。
また、下記式(1−2)および表2に示すように、上記式(1)におけるR1、R2およびR3を下記のとおりとした変性シリコーンオイルH〜Jを準備した。なお、式(1−2)中の括弧内の構成単位は連続していてもランダムに配置されていてもよい。
[カーボンブラック分散液の調製]
ドデシル硫酸ナトリウム90gをイオン交換水1600gに撹拌溶解し、この溶液を撹拌しながら、カーボンブラック「リーガル330R」(キャボット社製)420gを徐々に添加し、次いで、撹拌装置「CREAMIX(クレアミックス)」(エム・テクニック社製;CREARMIXは同社の登録商標)を用いて分散処理することにより、着色剤(カーボンブラック)の微粒子が分散されてなる着色剤微粒子分散液〔Bk〕を調製した。着色剤微粒子分散液〔Bk〕における着色剤微粒子〔Bk〕の体積基準のメジアン径を電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定したところ、120nmであった。
[実施例1 トナー1の製造]
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入装置を取り付けたフラスコに、400質量部のイオン交換水と、486質量部(固形分換算)の樹脂微粒子分散液MD1と、435質量部の着色剤微粒子の分散液Bkとを仕込み、液温を25℃に調整した後、濃度25質量%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを10.5に調整した。
次いで、50質量部の塩化マグネシウム・6水和物を50質量部のイオン交換水に溶解させた水溶液を上記混合液に添加し、その後、54質量部(固形分換算)の結晶性樹脂微粒子分散液C1を添加して樹脂微粒子および着色剤微粒子の混合液を得た。
次いで、92質量部のシリコーンオイルAと、6質量部のソルビタン脂肪酸エステルと、2質量部の非結晶性シリカとをイオン交換水100質量部に投入し、ホモジナイザー「T25Basic」(IKA社製)を用いて分散処理することにより、変性シリコーンオイルAが分散されてなる変性シリコーンオイル分散液Aを調製した。
次いで、1.092質量部(固形分換算)の変性シリコーンオイル分散液Aを9.828質量部のイオン交換水に溶解した水溶液を調製した。この水溶液を、上記混合液に添加し、得られた溶液の温度をさらに93℃にまで昇温することによって樹脂微粒子と着色剤微粒子との凝集反応を開始した。
この凝集反応の開始後、定期的にサンプリングを行い、粒度分布測定装置「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)を用いて粒子の体積基準のメジアン径を測定し、体積基準のメジアン径が7.0μmになるまで撹拌を継続しながら凝集させた。
その後、塩化ナトリウム120質量部をイオン交換水600質量部に溶解させた水溶液を上記分散液に添加し、分散液の温度を90℃として当該温度で当該分散液を4時間撹拌を継続し、フロー式粒子像解析装置「FPIA−2100」(Sysmex社製)による測定で円形度が0.940に達した時点で、6℃/分の条件で30℃にまで冷却して反応を停止させた。こうして、トナー粒子の分散液を得た。冷却後のトナー粒子の粒径は6.9μm、円形度は0.940であった。
上記トナー粒子の分散液をバスケット型遠心分離機「MARK III 型式番号60×40」(松本機械(株)製)を用いて固液分離し、ウェットケーキを形成した。このウェットケーキを、前記バスケット型遠心分離機で濾液の電気伝導度が15μS/cmになるまで洗浄と固液分離を繰り返し、その後、「フラッシュジェットドライヤー」(セイシン企業社製)を用い、温度40℃および湿度20%RHの気流を吹き付けることによって水分量が0.5質量%となるまで乾燥処理し、次いで24℃にトナー母体粒子を冷却することにより、トナー粒子1Xを得た。
得られたトナー粒子1Xに対して、疎水性シリカ粒子1質量%と疎水性酸化チタン粒子1.2質量%とを添加し、ヘンシェルミキサーを用い、回転翼の周速24m/sの条件で20分間かけて混合し、さらに400メッシュの篩を通過させた。こうして、トナー母体粒子1Xに外添剤を添加し、トナー1を得た。
[実施例2 トナー2の製造]
変性シリコーンオイルAの代わりに変性シリコーンオイルBを用いた以外は実施例1と同様にしてトナー2を得た。
[実施例3 トナー3の製造]
変性シリコーンオイルAの代わりに変性シリコーンオイルCを用いた以外は実施例1と同様にしてトナー3を得た。
[実施例4 トナー4の製造]
変性シリコーンオイルAの代わりに変性シリコーンオイルDを用いた以外は実施例1と同様にしてトナー4を得た。
[実施例5 トナー5の製造]
変性シリコーンオイル分散液Aの仕込み量を0.2184質量部、イオン交換水の仕込み量を1.9656質量部とした以外は実施例1と同様にしてトナー5を得た。
[実施例6 トナー6の製造]
変性シリコーンオイル分散液Aの仕込み量を0.1092質量部、イオン交換水の仕込み量を0.9828質量部とした以外は実施例1と同様にしてトナー6を得た。
[実施例7 トナー7の製造]
樹脂微粒子分散液MD1の仕込み量を378質量部(固形分換算)とし、結晶性樹脂微粒子分散液C1の仕込み量を162質量部(固形分換算)とした以外は実施例1と同様にしてトナー7を得た。
[実施例8 トナー8の製造]
変性シリコーンオイル分散液Aの仕込み量を1.5288質量部、イオン交換水の仕込み量を13.7592質量部とした以外は実施例1と同様にしてトナー8を得た。
[実施例9 トナー9の製造]
変性シリコーンオイル分散液Aの仕込み量を0.03276質量部、イオン交換水の仕込み量を0.29484質量部とした以外は実施例1と同様にしてトナー9を得た。
[実施例10 トナー10の製造]
変性シリコーンオイルAの代わりに変性シリコーンオイルHを用いた以外は実施例1と同様にしてトナー10を得た。
[実施例11 トナー11の製造]
変性シリコーンオイルAの代わりに変性シリコーンオイルIを用いた以外は実施例1と同様にしてトナー11を得た。
[実施例12 トナー12の製造]
変性シリコーンオイルAの代わりに変性シリコーンオイルJを用いた以外は実施例1と同様にしてトナー12を得た。
[実施例13 トナー13の製造]
変性シリコーンオイル分散液Aの仕込み量を2.8392質量部、イオン交換水の仕込み量を25.5528質量部とした以外は実施例1と同様にしてトナー13を得た。
[実施例14 トナー14の製造]
変性シリコーンオイル分散液Aの仕込み量を0.01092質量部、イオン交換水の仕込み量を0.09828質量部とした以外は実施例1と同様にしてトナー14を得た。
[比較例1 トナー15の製造]
変性シリコーンオイル分散液を調製せずにトナー母体粒子を製造した以外は実施例1と同様にしてトナー15を得た。
[比較例2 トナー16の製造]
変性シリコーンオイルAの代わりに変性シリコーンオイルEを用いた以外は実施例1と同様にしてトナー16を得た。
[比較例3 トナー17の製造]
変性シリコーンオイルAの代わりに変性シリコーンオイルFを用いた以外は実施例1と同様にしてトナー17を得た。
[比較例4 トナー18の製造]
変性シリコーンオイルAの代わりに変性シリコーンオイルGを用いた以外は実施例1と同様にしてトナー18を得た。
上記トナー1〜18の結着樹脂および変性シリコーンオイルの組成及び含有量を表3にまとめる。なお、表3中の「スチレン(メタ)アクリル」および「ポリエステル」の含有量は、それぞれ、結着樹脂中のスチレン(メタ)アクリル樹脂の含有量およびポリエステル樹脂の含有量であり、「変性シリコーンオイル」の含有量はトナー母体粒子中の含有量である。
−低温定着性の評価−
トナー1〜18のそれぞれについて、コニカミノルタ社製bizhub PRESS C7000(bizhubは同社の登録商標)を用い、トナー最大付着量5g/m2で、13段階のグラデーションパッチを未定着画像として用紙に出力した。当該用紙の紙種はprofi80とした。未定着画像の後端にJ PAPER(コニカミノルタ社製)を耐熱用テープでつなぎ合わせた。次いで、線速620mm/s、ニップ圧11mmにて上ローラー温度を160℃から5℃刻みで210℃まで上げ、未定着画像を定着させた。J PAPERへの画像のオフセットが目視で見えなくなった定着温度をコールドオフセット解消温度とし、下記基準に基づいて低温定着性を評価した。
○:コールドオフセット解消温度が180℃
△:コールドオフセット解消温度が185℃
×:コールドオフセット解消温度が190℃
−耐熱性の評価−。
トナーの耐熱保管性
トナー〔1〕〜〔18〕について、それぞれ、トナー0.5gを内径21mmの10mLガラス瓶に取り、蓋を閉めて、振とう機「タップデンサーKYT−2000」(セイシン企業社製)を用い、室温で600回振とうした後、蓋を開けた状態で温度55℃、湿度35%RHの環境下において2時間放置した。次いで、トナーを48メッシュ(目開き350μm)の篩上に、トナーの凝集物を解砕しないように注意しながらのせて、「パウダーテスター」(ホソカワミクロン社製)にセットし、押さえバー、ノブナットで固定し、送り幅1mmとなる振動強度に調整し、10秒間振動を加えた後、篩上の残存したトナー量の比率(質量%)を測定し、下記式(A)によりトナー凝集率を算出した。得られたトナー凝集率に基づいてトナー粒子の耐熱保管性の評価を行った。結果を表4に示す。トナー凝集率が20%以下であったものを合格とした。
式(A):トナー凝集率(%)=(篩上の残存トナー質量(g))/0.5(g)×100
◎:トナー凝集率が10質量%未満(トナーの耐熱保管性が極めて良好)
○:トナー凝集率が10質量%以上15質量%未満(トナーの耐熱保管性が良好)
△:トナー凝集率が15質量%以上20質量%以下(トナーの耐熱保管性が良好)
×:トナー凝集率が20質量%を超える(トナーの耐熱保管性が悪く、使用不可)
−消泡効果の評価−
トナー1〜18のそれぞれについて、トナー母体粒子の凝集工程において、目視にて分散液の起泡性を下記基準で評価した。
1: 液面全体を泡が覆っている
2: 撹拌翼の軸の周りと釜の縁に泡立ちがある
3: 泡が全くない
表4からわかるように、変性シリコーンオイルが上記のエーテル含有基またはフッ素含有基を少なくとも1つ有する化合物であるトナー1〜14は、いずれも、十分な低温定着性および消泡効果を有している。
トナーの低温定着性が向上した理由は定かではないが、当該変性シリコーンオイルがトナー表面に存在することで、定着時に溶融した結着樹脂と当該変性シリコーンオイルとが顕著に相溶して当該結着樹脂が可塑化することでトナーの熱特性が低下したためと推察される。また、シリコーンオイルの表面張力を下げる特性により、泡が顕著に抑制されたものと推察される。
これに対して、比較例1では低温定着性および消泡効果が不十分である。これは、トナー母体粒子がシリコーンオイルを含んでないため、トナー母体粒子の結着樹脂が可塑化せず、トナーの熱特性が十分に低下せず、また、シリコーンオイルにより表面張力が低下しなかったためと考えられる。
また比較例2〜4では低温定着性が不十分である。これは、トナー母体粒子が変性シリコーンオイルを含んでいるものの、特定のエーテル含有基またはフッ素含有基により変性されていないため、結着樹脂が十分に可塑化されなかったためと考えられる。