JP6589002B2 - 冬虫夏草子実体の生産方法 - Google Patents
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Description
冬虫夏草は広義的に子嚢菌亜門、核菌綱、バッカク菌目、バッカク菌科に属する昆虫寄生性の一群の菌類と言われている。この中にCordyceps属、Orrubiella属などの完全菌類のほか、Paecilomyces属、Beauveria属などの不完全菌もある。
かかる状況下、本発明の目的は、冬虫夏草の子実体を生産性よく得ることができる、冬虫夏草子実体の生産方法を提供することにある。
<1> 宿主昆虫に冬虫夏草菌の菌種を接種し、前記宿主昆虫の体内で冬虫夏草菌を増殖させて菌糸体を形成する工程と、
菌糸体が形成された前記宿主昆虫に、印加電圧80kV以上で電圧を印加し、火花放電により電気刺激を加える工程と、
前記火花放電により電気刺激を加えた宿主昆虫を培養して冬虫夏草の子実体を形成させる工程と、
を含み、
前記宿主昆虫が、生きたカイコ幼虫またはカイコ蛹であり、かつ、前記冬虫夏草菌が、サナギタケ(Cordyceps militaris)であり、
前記火花放電により電気刺激を加える工程において、火花放電の方法が、高電圧発生部に接続された球状の放電極を、対象物としての菌糸体が形成された前記宿主昆虫から離間させた状態で、前記高電圧発生部から前記放電極に高電圧を印加することで前記放電極と前記宿主昆虫との間に火花放電を発生させて、前記火花放電により前記宿主昆虫に電気刺激を加える方法であって、前記火花放電による電気刺激を、1日1回の頻度で、1日以上4日以下行う、
冬虫夏草子実体の生産方法。
<2> 前記火花放電により電気刺激を加える工程において、宿主昆虫に対し、LED照射を行う工程を有する<1>に記載の生産方法。
工程(1)は、宿主昆虫に冬虫夏草菌の菌種を接種し、前記宿主昆虫の体内で冬虫夏草菌を増殖させて菌糸体を形成する工程である。
本発明の生産方法において使用できる冬虫夏草菌は、子嚢菌類麦角菌科の菌類で主として昆虫類に寄生して子実体を形成する菌類であればよく、特にはノムシタケ属(Cordyceps属)に属する菌類を使用することができる。Cordyceps属に属する菌類としては、例えば、セミタケ(Cordyceps sobolifera)、サナギタケ(Cordyceps militaris)、ミミカキタケ(Cordycepsnutans)、オオノムシタケ(Cordyceps nawai)、天然冬虫夏草(Cordyceps sinensis)などが挙げられる。
また、Cordyceps属に属する冬虫夏草菌以外にも、コナサナギタケ(Isaria farinosa)、ハナサナギタケ(Isaria japonica)等の冬虫夏草菌も使用できる。
宿主昆虫は、使用する冬虫夏草菌に適した昆虫を使用すればよく、生きているものを使用することが好ましい。
冬虫夏草菌としてサナギタケを使用する場合には、カイコの幼虫や蛹が好適であり、特に生きたカイコ幼虫またはカイコ蛹であることが好ましい。生きたカイコ幼虫またはカイコ蛹は清浄な環境で飼育したものが好ましく、特には冬虫夏草菌以外の他の雑菌を有さない無菌飼育したものが好ましい。無菌飼育した生きたカイコ幼虫またはカイコ蛹であると、冬虫夏草菌が繁殖しやすく、子実体の発生率が増加する傾向にある。なお、冬虫夏草菌を接種しやすいという面では、動きの少ないカイコ蛹が宿主昆虫として好ましい。
工程(2)は、菌糸体が形成された前記宿主昆虫に、印加電圧50kV以上でパルス電圧を印加し、火花放電により電気刺激を加える工程である。工程(2)は、本発明の特徴的工程であり、印加電圧50kV以上での火花放電により電気刺激を加えることによって、子実体および子嚢殻の形成が促進され、子実体の発生率が増加させることができる。
この装置では、パルス状の高電圧印加指令が発振回路に入力し、発振した交流電圧で、所定の電位Vに達するまで電圧を高め、電位Vになると放電する機構を有し、指定した処理時間の間、所定の電位Vに達する回数だけ、火花放電が繰り返し発生される。その結果、火花放電はパルス状に行われることになるため、本明細書において、このような仕組みの放電装置によるパルス状での電気刺激を、「高電圧パルス」又は単に「電圧パルス」と称する場合がある。
なお、印加電圧の上限は子実体の発生率を高める限り制限はないが、200kV以下であり、好ましくは150kV以下である。
LEDは蛍光灯や白熱灯など他の多くの光源と異なり、特定の波長に偏った光である。そのため、対応する波長に対する光化学反応が促進されたり、逆に明るさの割に必要な波長の光がないため十分な効果が得られないことがある。
好ましい波長のひとつは、400〜500nm(特には450nm)の波長域にピークを持つ青色光である。また、他の好ましい波長のひとつは、600〜700nm(特には660nm)の波長域にピークを持つ赤色光である。
実施例で後述するように、青450nmと赤660nmの混合光であると、より優れた冬虫夏草子実体の生産性の向上効果が認められる。
また、LED光の強度は、子実体の発生率が増加する範囲で任意である。
工程(3)は、前記宿主昆虫を培養して冬虫夏草の子実体を形成させる工程である。
培養する条件は、子実体が成長するのに適した温度および湿度であればよく、使用する冬虫夏草菌の種類や宿主昆虫の種類に応じて適宜選択されるが、具体的な条件を例示すると、温度18〜24℃程度、湿度80%以上、全暗で一週間から15日間程度の条件で生育し、子実体を形成させる。不完全菌類の場合は束状体(子実体)と分生子の形成、完全菌類の場合は子実体と子嚢殻の形成が確認された時点で成熟と判断し、その前後に収穫を行えばよい。
人工飼料無菌飼育法により、カイコを飼育し、得られた生きたカイコ蛹を寄主とし実験を行った。まず、子嚢菌類の冬虫夏草菌であるサナギタケ(C. militaris)をカイコ蛹に接種し、17℃〜23℃の環境で菌糸体を形成させた。
なお、使用した冬虫夏草菌は、自然界にある野生サナギタケを採取し、サナギタケ菌株の分離培養を行い、無菌蚕を寄主として、菌糸の成長がよく、子実体の形成がいい菌株を厳選し得られた菌株(「CM02」と命名)を使用した。
次いで、放電装置として株式会社グリーンテクノGM100(らいぞう)を使用し、菌糸体を形成させたカイコ蛹に対し、所定の印加電圧の火花放電によるパルス状での電気刺激を付与して子実体の培養を行った。
印加電圧は、低電圧の0.5kV区と、高電圧の50kV区、80kV区、100kV区を設けた。また、対照区として電圧を与えない区を設定した。
各試験区とも二連で行い、一連を20頭とし、パルス電圧の印加(火花放電によるパルス状での電気刺激)は1日一回、一回約10秒、連続二日間行った。電圧印加後のカイコ蛹は通常培養(温度:20〜23℃、湿度:80%)を行い、子実体を形成させ、1ケ月後収穫した。
子実体発生量指数 =(乾燥子実体重さ)/(乾燥子実体重さ+乾燥サナギ重さ)
上記の結果に基づき、菌糸形成後子実体培養開始時に、印加電圧80kVの火花放電によるパルス状での電気刺激(高電圧パルス)を与える日数(印加回数)による子実体発生量への影響を調べた。
試験は、上記実施例1に準じる方法で行い、試験区においては、印加電圧80kVの火花放電による電気刺激を一日一回与えた。これを1日、連続2日間、4日間、6日間、8日間行った。電気刺激を与えた後のカイコ蛹は通常培養を行い、子実体を形成させ、1ケ月後収穫した。なお、対照区として無印加区を設けた。結果を図2に示す。
印加電圧80kVの火花放電によるパルス状での電気刺激(電圧パルス印加区)、および印加電圧80kVでの火花放電による電気刺激とLED照射との組み合わせ処理(電圧パルス+LED照射区)による影響を調べた。実験は実施例1に準じる方法で行った。
電圧パルスの印加区は一日一回、一回約5秒の高電圧パルス(80kV)を印加し、火花放電による電気刺激を与えるパルス電圧処理を連続して3日間行った。
電圧パルス+LED照射区は、上記電圧パルスの印加区と同じ方法で火花放電による電気刺(高電圧パルス処理)を行い、光源はLED光源装置(KP-E2)により、さらにLED赤とLED赤青の混色(発光波長:赤660nm、青450nm)を一日6時間の照射行い、これを連続して3日間行った。
それぞれの処理後、通常培養を行い、子実体を形成させ、1ケ月後収穫した。その結果、各試験区の子実体発生指数を図3に示す。
Claims (2)
- 宿主昆虫に冬虫夏草菌の菌種を接種し、前記宿主昆虫の体内で冬虫夏草菌を増殖させて菌糸体を形成する工程と、
菌糸体が形成された前記宿主昆虫に、印加電圧80kV以上で電圧を印加し、火花放電により電気刺激を加える工程と、
前記火花放電により電気刺激を加えた宿主昆虫を培養して冬虫夏草の子実体を形成させる工程と、
を含み、
前記宿主昆虫が、生きたカイコ幼虫またはカイコ蛹であり、かつ、前記冬虫夏草菌が、サナギタケ(Cordyceps militaris)であり、
前記火花放電により電気刺激を加える工程において、火花放電の方法が、グリーンテクノ株式会社製電圧パルス放電装置(品名:らいぞう、型番:GM100)を使用し、高電圧発生部に接続された球状の放電極を、対象物としての菌糸体が形成された前記宿主昆虫から離間させた状態で、前記高電圧発生部から前記放電極に高電圧を印加することで前記放電極と前記宿主昆虫との間に火花放電(パルス幅:msオーダー)を発生させて、前記火花放電により前記宿主昆虫に電気刺激を加える方法であって、
前記火花放電による電気刺激を、1日1回の頻度で、1日以上4日以下行う、
ことを特徴とする冬虫夏草子実体の生産方法。 - 前記火花放電により電気刺激を加える工程において、宿主昆虫に対し、LED照射を行う工程を有する請求項1に記載の生産方法。
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