JP6588666B2 - イミダゾールジペプチドを含む剤 - Google Patents

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Description

本発明は、イミダゾールジペプチドおよびその代謝産物からなる群より選択される少なくとも一を有効成分とする剤に関する。本発明の剤は、認知機能改善、心理機能改善、抗老化、健康維持のために用いることができる。本発明は、一般食品、健康食品、医薬品、美容、健康および医療に関連する分野で有用である。
カルノシンは、β-アラニンとヒスチジンからなるジペプチドであり、アンセリンは、β-アラニンとメチル化ヒスチジンとからなるジペプチドである。いずれも鶏肉等に含まれることが知られている。カルノシンおよびアンセリンは、皮膚代謝促進(特許文献1)、自律神経調節作用(特許文献2)、ストレス緩和(特許文献3)、ならびに学習機能向上および抗不安(特許文献4)作用について検討されてきた。
近年、老化に伴う疾病の予防や、免疫力の強化など、健康を維持しつつ長生きすることに関心がもたれるようになってきた。加齢は多くの場合、ある程度の認知機能の低下を伴う。認知機能の低下はまた、アルツハイマー病の発症や進行からも生じる。
特開2000-201649公報 WO2002/076455公報 特開2007-70316公報 特開2000-116987公報
適切な食事、運動、精神療法などにより、日々の生活において老化の進行を遅らせ、また老化に伴う疾患に対して早めに対処できることが望ましい。
食品は、エネルギー源および必須栄養素源であること(栄養性)に加えて、食べる楽しさを与え(嗜好性)、健康的な生活に貢献する(機能性)ものでもある。食品または食品由来の機能性成分を含む製品は、健康や美容に役立つことが期待され、健康食品等として広く一般に受け入れられてきている。食経験のある天然物の利用は、安全・安心の観点からも好ましいと考えられる。
本発明者らは、天然物を活用して、健康に役立つ食品・素材の研究開発に取り組んできた。その中で、今般、鶏肉由来のカルノシンおよびアンセリンに心理機能改善作用等があることを見出し、本発明を完成した。本発明は以下を提供する。
[1] イミダゾールジペプチドおよびその代謝産物からなる群より選択される少なくとも一を含有する、神経心理機能の改善のための剤。
[2] 神経心理機能が、アルツハイマー病または加齢に関連したものである、[1]に記載の剤。
[3] イミダゾールジペプチドおよびその代謝産物からなる群より選択される少なくとも一を含有する、神経心理機能の改善による、抗老化剤。
[4] イミダゾールジペプチドおよびその代謝産物からなる群より選択される少なくとも一を含有する、
トランスポーター遺伝子である、SLC23A2、SLC43A2、SLC29A3、SLC35C1、SLC25A33、SLC25A23、SLC6A12およびSLC6A13;
ケモカイン遺伝子である、CXCL12およびCCL17;
老化関連遺伝子である、TSPOおよびP2RY1;
神経系遺伝子である、CAMK1;
ミトコンドリア系遺伝子である、ACO2、ATP7A、POLG、IDH3G、UCP2、BCKDHAおよびTAP2;並びに
抗老化遺伝子である、SMARCD1およびSIRT6
からなる群より選択される少なくとも一の遺伝子の発現を変動させるための剤。
[5] 抗炎症作用を有する、[1]に記載の剤。
[6] イミダゾールジペプチドおよびその代謝産物からなる群より選択される少なくとも一を含有する、IP-10(CXCL10)、IL-2、IL-5、IL-7、IL-8(CXCL8)、IL-13、G-CSFおよびMCP-1(CCL2)からなる群より選択される少なくとも一のサイトカインの血液中の濃度を制御するための剤。
[7] 血糖値の上昇抑制作用または低減作用を有する、[1]に記載の剤。
[8] 血中のインスリン濃度の上昇抑制作用または低減作用を有する、[1]に記載の剤。
[9] 一日量として200mg以上のイミダゾールジペプチドおよびその代謝産物からなる群より選択される少なくとも一を摂取させるための、[1]〜8のいずれか1項に記載の剤。
[10] 一日量として200mg以上の、動物肉由来のイミダゾールジペプチドの少なくとも一を含む、栄養組成物。
[11] イミダゾールジペプチドの少なくとも一が鶏肉由来である、[10]に記載の栄養組成物。
[12] クレアチンおよび核酸をさらに含む、[1]〜[11]のいずれか1項に記載の剤または栄養組成物。
[13] 高齢者または軽度の気分障害を有する者を対象とする、[1]〜[12]のいずれか1項に記載の剤または栄養組成物。
[14] イミダゾールジペプチドおよびその代謝産物からなる群より選択される少なくとも一を含有する、糖尿病および/またはアルツハイマー病の処置のための剤。
[15] イミダゾールジペプチドおよびその代謝産物からなる群より選択される少なくとも一を含む栄養組成物を、神経心理機能の改善が望ましい対象に摂取させる工程を含む、食餌方法。
[16] 対象の有するカルノシン分解酵素(CNDP1)活性に基づく、対象の神経心理機能の判定方法。
[17] 対象の有するCNDP1活性に基づく、[1]〜[14]のいずれか1項に記載の剤または栄養組成物を対象に摂取させることによる神経心理機能の改善効果の予測方法。
[18] 神経心理機能の改善または改悪を検出するための
トランスポーター遺伝子である、SLC23A2、SLC43A2、SLC29A3、SLC35C1、SLC25A33、SLC25A23、SLC6A12およびSLC6A13;
ケモカイン遺伝子である、CXCL12およびCCL17;
老化関連遺伝子である、TSPOおよびP2RY1;
神経系遺伝子である、CAMK1;
ミトコンドリア系遺伝子である、ACO2、ATP7A、POLG、IDH3G、UCP2、BCKDHAおよびTAP2;並びに
抗老化遺伝子である、SMARCD1およびSIRT6
からなる群より選択される少なくとも一の遺伝子の
発現解析することによる、方法。
[19] 配列番号1〜20のいずれかの塩基配列の全部または一部、および
配列番号1〜20のいずれかの塩基配列に相補的な塩基配列の全部または一部
からなる群より選択される少なくとも一の塩基配列からなる核酸含む、神経心理機能の改善または改悪を検出するためのキット。
[20] 式IまたはIIで表される化合物を含む、脳の機能老化および/または認知症の処置のための、医薬組成物。
(式I、式II中、
R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、HまたはC1-6アルキルであり、
Xは、Hまたは-COR4であり、このときR4はHまたはC1-6アルキルである。)
[21] 請求項20に定義された式Iまたは式IIで表される化合物をリード化合物として用いる、脳の機能老化および/または認知症の処置のための有効成分を探索する方法。
心理機能検査(BDI検査)の結果。 心理機能検査(脳老化を評価するADAScog検査)の結果。改善、変化なし、悪化、それぞれの割合を表示した。 イミダゾールジペプチドの摂取により萎縮が改善した脳部位(灰白質)。p<0.005である部位をカラーで表示した。 イミダゾールジペプチドの摂取により萎縮が改善した脳部位(白質)。 イミダゾールジペプチドの摂取による神経回路機能の改善。加齢に伴い海馬と後部帯状回との神経回路機能が低下するが(左図)、試験食摂取群では、摂取後にこの機能低下が改善していた(右図)。 イミダゾールジペプチドの摂取により変動する遺伝子。SLC(トランスポーター)に属する6遺伝子において、試験食の摂取により、プラセボ食摂取に比べ遺伝子発現レベルが有意に変動していた。その他、ケモカイン類など、図中に示した各遺伝子でその発現レベルが変動していることがわかった。 イミダゾールジペプチドの摂取により変動する血中サイトカイン・ケモカイン。 平均値±SE, 試験食:実線, プラセボ:破線、対応のあるt検定, *: p < 0.05, **: p < 0.01 イミダゾールジペプチドの摂取による血糖値の低下。 認知症モデルマウスにおける血中サイトカイン類の減少。カルノシン含有食群では、サイトカイン類が減少しており、炎症が抑えられていると示唆される。wt: wild-type, tg: transgenic, *: p < 0.05, **: P< 0.01 (Dunnett's test vs tgHFD), #: p < 0.05, ##: P< 0.01 (Student ttest) 認知症モデルマウスにおける脳内炎症反応の抑制(マウスMRI画像)。イミダゾールジペプチドの摂取による炎症抑制が見られた。 高機能ジペプチド摂取によるグリア細胞のGABAトランスポーター遺伝子発現の抑制。Slc6A13: アストロサイトに発現するGABA Transporter 2 (GAT-2) 、Slc6A12: アストロサイトに発現するBetaine/GABA Transporter 1 (BGT-1) マウスの血中インスリン濃度。アルツハイマー病(AD)高脂肪食群とAD高脂肪食+カルノシン群の値の間には有意差(student's t-test, P<0.05)が認められた。 ASL解析 ASL解析により両群間で差が見られた部位(後部帯状回) 論理記憶IIの得点(60歳以上のサブ解析の結果)。両群間の有意差(P<0.01)。なお、摂取後試験のほうが摂取前試験よりも難易度がはるかに高い。 論理記憶IIの得点(60歳以上のサブ解析の結果)。試験食群ではどの年齢でも機能が低下していないのに対し、プラセボ食群では、年齢に応じて機能低下が著しい傾向があった。
〔有効成分〕
本発明は、イミダゾールジペプチドおよびその代謝産物からなる群より選択される少なくとも一を有効成分とする剤に関する。本明細書でイミダゾールジペプチドというときは、特に記載した場合を除き、イミダゾール環を有するアミノ酸と別のアミノ酸とが結合してなるジペプチドをいう。
本発明でいうイミダゾールジペプチドは、下記の式Iまたは式IIで表すことができる。
式I、式II中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、HまたはC1-6アルキルであり、Xは、Hまたは-COR4であり、このときR4はH、C1-6アルキル、置換されていてもよいベンジル、またはH2C=CH-である。
式Iにおいては、R1、R2は、いずれか一方がC1-6アルキルであり、他方がHであることが好ましい。式IIにおいては、R2、R3は、いずれか一方がC1-6アルキルであり、他方がHであることが好ましい。C1-6アルキルの好ましい例の一つは、メチルである。
-COR4であるXの具体例としては、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ベンゾイル、アクリロイルが挙げられる。
式Iまたは式IIで表わされる化合物の製造方法等に関しては、特表2003-520221、特開2006-232686、特表2006-504701、特表2008-517911、特表2009-512459、特開2010-31004、特開2011-37891、特開2011-37892、特開2013-165728、特開2014-12735等を参考にすることができる。
イミダゾールジペプチドには、カルノシン、アンセリン、バレニンおよびホモカルノシンが含まれる。カルノシンはβ-アラニンとヒスチジンからなるジペプチドである。構成するヒスチジンの立体構造により、カルノシンにはL体とD体とが存在する。本発明およびその説明において、単に「カルノシン」というときは、特に記載した場合を除き、L-カルノシン、D-カルノシンまたはそれらの混合物を指す。L-カルノシンはヒトなどの哺乳類では、筋肉や神経組織に比較的高い濃度で存在していることが知られている。
L-カルノシン(L-carnosine、IUPAC名:(2S)-2-[(3-Amino-1-oxopropyl)amino]-3-(3H-imidazol-4-yl)propanoic acid)の構造を下記に示す。
一部の動物では、β-アラニンとメチル化ヒスチジンとからなるL-アンセリンが多く見られる。本発明およびその説明において、単に「アンセリン」というときは、特に記載した場合を除き、L-アンセリン、D-アンセリンまたはそれらの混合物を指す。L-アンセリン(L-anserine、IUPAC名:(2S)-2-[(3-amino-1-oxopropyl)amino]-3-(3-methyl-4-imidazolyl)propanoic acid)の構造を下記に示す。
カルノシンとアンセリンは、いずれも水溶性である(カルノシン 1g/3.1ml at 25℃)。
本明細書でイミダゾールジペプチドの代謝産物というときは、特に記載した場合を除き、カルノシン、アンセリン、バレニンおよびホモカルノシンからなる群より選択される一の代謝産物をいう。イミダゾールジペプチドの代謝産物には、β-アラニン、ヒスチジン、メチル化ヒスチジンおよびγ-アミノ酪酸(GABA)が含まれる。
本発明で「イミダゾールジペプチドおよびその代謝産物からなる群より選択される少なくとも一」というときは、特に記載した場合を除き、イミダゾールジペプチドのうち、一または二以上を指す意図である。例えば、「イミダゾールジペプチドおよびその代謝産物からなる群より選択される少なくとも一を有効成分として含む」というときは、カルノシンを有効成分とし、他のイミダゾールジペプチドを含まない場合、ならびにカルノシンおよびアンセリンを有効成分とする場合等が含まれる。また、「イミダゾールジペプチドおよびその代謝産物からなる群より選択される少なくとも一」に関し、量または濃度をいう場合は、特に記載した場合を除き、二以上のイミダゾールジペプチドおよびその代謝産物が存在する場合はすべてのイミダゾールジペプチドおよびその代謝産物を合計した量または濃度をいう。なお、本明細書では、イミダゾールジペプチドおよびその代謝産物のうち、イミダゾールペプチド、またはカルノシンもしくはアンセリンを用いた態様を例に説明することがあるが、その説明は、他のイミダゾールジペプチドおよびその代謝産物を用いた場合にも当てはまる。
本発明においては、有効成分として用いられるイミダゾールジペプチドおよびその代謝産物は、合成されたものでもよく、発酵生産されたものでもよく、天然物から得たものでもよい。また、単離されたもの、精製されたものでもよい。より具体的にはイミダゾールジペプチドおよびその代謝産物は、種々の動物由来、例えば、牛、馬、豚、鶏、クジラ、魚(例えば、かつお、まぐろ、うなぎ)であってもよい。好ましい例の一つは、鶏肉由来である。イミダゾールジペプチドおよびその代謝産物は、天然物の抽出物、濃縮物、粗精製物等として剤中に含まれていてもよい。
〔用途、機能〕
本発明の剤は、神経心理機能の改善のために用いることができる。神経心理機能の改善には、抗うつ(心理機能の改善)および認知機能の改善が含まれる。また、神経心理機能の改善には、神経心理機能に関連した、脳の萎縮の抑制、脳の機能低下の抑制(海馬との機能連結の強化)、および炎症によるニューロンの損傷の改善が含まれる。神経心理機能は、アルツハイマー病または加齢に関連したものであってもよい。神経心理機能の改善にはまた、脳の機能老化および/または認知症の処置が含まれる。
本発明の剤による抗うつ(心理機能の改善)効果は、BDI調査票(http://www.chibatc.co.jp/catalogue/04/1/67.html)により評価することができる。BDI調査票による点数は、高い方がうつ傾向にあることを示すので、例えば、本発明の剤の摂取期間の前後で調査を行い、摂取前の点数と摂取後の点数を比較することにより、心理機能の改善の程度を比較することができる。本発明の剤は特に、軽度の気分障害を有する対象に対して、心理機能を改善する効果が期待できる。
本発明の剤による認知機能の改善効果は、ADAS-cog(Alzheimer's Disease Assessment Scale-cognitive subscale)法により評価することができる。本発明による認知機能の改善効果は、老化に伴って物覚えが悪くなるといった程度のものを改善する場合と、病的に認知能力が低下するもの(認知症)を改善する場合とを含む。本発明の剤は特に、アルツハイマー病または加齢に関連した認知機能の低下に対して、改善する効果が期待できる。
本発明の剤は、脳の萎縮の抑制、脳の機能低下の抑制(海馬との機能連結の強化)、または炎症によるニューロンの損傷の改善のために用いることができる。これらに対する効果は、画像診断等の当業者にはよく知られた方法により、評価することができる。本発明者らの検討によると、高齢者を含む対象群において、脳の灰白質および白質のそれぞれに、萎縮の進行が抑制された部位がみられた。このような効果は、アンセリンおよびカルノシンを含まないプラセボを投与した群には見られなかった。
本発明の剤は、脳の機能老化および認知症の発症を処置するために、より特定すると脳の機能老化および認知症の発症を予防、遅延または阻害し、または重症化を防ぐために、用いることができる。このような効果は、対象者における後部帯状回部位の血流変化、または60歳以上の被験者を対象に論理記憶(遅延再生課題)について、評価することにより、確認できる。本発明者らの検討によると、60歳以上の者を含む被験者を対象とした場合、イミダゾールジペプチド含む試験食摂取群においてプラセボ食群と比べて有意差を持って後部帯状回部位の血流が保たれていることがわかった。また、60歳以上を被験者とした場合、3か月間試験食を摂取群では、プラセボ食群に比べて論理記憶の点数が、有意差を持って保たれていることがわかった。
本発明の剤は、トランスポーターの発現を変動させるために用いることができる。トランスポーターはチャネルやレセプターと共に細胞膜に存在する膜タンパク質であるが、トランスポーターは、チャネルとは異なり輸送基質として内因性物質だけでなく、薬物や環境化学物質を含む多くの外因性物質も認識する。トランスポーターは現在ATPの加水分解エネルギーを利用して輸送を行うABC (ATP binding cassette) ファミリーと、ATPのエネルギーを用いないで輸送を行うSLC (Solute carrier) ファミリーの二つに分けられ、ヒトにおいては48種類のABCトランスポーター遺伝子と319種類のSLCトランスポーター遺伝子が同定されている。トランスポーターの異常によって生ずる疾患は加齢とともに増加し、50歳以降の高齢化疾患関連遺伝子の約10%にトランスポーターが関連するとされる。
本発明の剤は特に、SLC23A2、SLC43A2、SLC29A3、SLC35C1、SLC25A33、SLC25A23、SLC6A12、SLC6A13からなる群より選択される少なくとも一、好ましくは少なくとも3つ以上、より好ましくは5つ以上、さらに好ましくはすべてのトランスポーターの発現を変動させるために用いることができる。発現の変動は、発現を増加させせることと発現を低下させることとを含む。
本発明の剤は、ケモカインの発現を変動させるために用いることができる。ケモカインは、Gタンパク質共役受容体を介してその作用を発現する塩基性タンパク質であり、サイトカインの一群である。白血球などの遊走を引き起こし炎症の形成に関与する。これまでに数多くのケモカインが発見されてきた。構造上の違いから、CCケモカイン、CXCケモカイン、Cケモカイン、CX3Cケモカインに分類される。これまでに50種類以上のケモカインが同定されている。
本発明の剤は特に、CXCL12およびCCL17からなる群より選択される少なくとも一、好ましくは両方のケモカインの発現を変動させるために用いることができる。発現の変動は、発現を増加させせることと発現を低下させることとを含む。
本発明の剤は、老化関連遺伝子の発現を変動させるために用いることができる。老化関連遺伝子は、個体老化、細胞老化に関わる遺伝子として同定され、これまでに数多くの老化関連遺伝子が同定されてきた。
本発明の剤は特に、TSPOおよびP2RY1からなる群より選択される少なくとも一、好ましくは両方の老化関連遺伝子の発現を変動させるために用いることができる。発現の変動は、発現を増加させせることと発現を低下させることとを含む。
本発明の剤は、神経系遺伝子の発現を変動させるために用いることができる。神経系遺伝子は、神経発生、神経分化等に関わる遺伝子であり、これまでに数多くの神経系遺伝子が同定されてきた。
本発明の剤は特に、神経系遺伝子CAMK1の発現を変動させるために用いることができる。発現の変動は、発現を増加させせることと発現を低下させることとを含む。
本発明の剤は、ミトコンドリア系遺伝子の発現を変動させるために用いることができる。ミトコンドリア系遺伝子は、ミトコンドリア生合成、融合、TCAサイクル、呼吸に関わる遺伝子であり、これまでに数多くの遺伝子が同定されてきた。
本発明の剤は特に、ACO2、ATP7A、POLG、IDH3G、UCP2、BCKDHAおよびTAP2からなる群より選択される少なくとも一、好ましくは少なくとも3つ以上、より好ましくは5つ以上、さらに好ましくはすべてのミトコンドリア系遺伝子の発現を変動させるために用いることができる。発現の変動は、発現を増加させせることと発現を低下させることとを含む。
本発明の剤は、抗老化遺伝子の発現を変動させるために用いることができる。抗老化遺伝子は、細胞老化抑制、アンチエイジングを実現する遺伝子であり、これまでに数多くの遺伝子が同定されてきた。
本発明の剤は特に、SMARCD1およびSIRT6からなる群より選択される少なくとも一、好ましくは両方のケモカインの発現を変動させるために用いることができる。発現の変動は、発現を増加させせることと発現を低下させることとを含む。
本発明の剤はまた、IP-10(CXCL10)、IL-2、IL-5、IL-7、IL-8(CXCL8)、IL-13、G-CSFおよびMCP-1(CCL2)からなる群より選択される少なくとも一のサイトカインの制御のために用いることができる。制御には、レベルを上昇させることと低下させることとを含む。
本発明の剤はまた、抗炎症剤または血糖値の上昇抑制または低減のためにも用いることができる。
本発明で疾患または状態について「改善」または「処置」というときは、発症リスクの低減、発症の遅延、予防、治療、進行の停止、遅延を含む。改善または処置のための行為には、医師が行う、病気の治療を目的とした医療行為と、医師以外の者、例えば栄養士(管理栄養士、保健師、助産師、看護師、臨床検査技師、美容部員、エステティシャン、食品製造者、食品販売者等が行う、非医療的行為とが含まれる。また処置には、特定の食品の投与または摂取の推奨、食餌方法指導、保健指導、栄養指導(傷病者に対する療養のため必要な栄養の指導、および健康の保持増進のための栄養の指導を含む。)、給食管理、給食に関する栄養改善上必要な指導を含む。本発明における処置の対象は、ヒト(個体)を含み、好ましくは、上述したいずれかの処置を施すことが望ましいか、または上述したいずれかの処置を施す必要のあるヒトである。
なお本発明者らは、イミダゾールジペプチドの有効性に与える個人差について検証する目的で、被験者血清中の血清カルノシン分解酵素(以下、CNDP1)活性を測定した。活性測定の結果、被験者により大きな個人差があることが確認された。CNDP1は、血液中に存在し、イミダゾールジペプチドを分解する。したがってCNDP1は、イミダゾールジペプチド摂取後の血中イミダゾールジペプチド濃度に影響を与え、そのためイミダゾールジペプチドの有効性に影響を与える可能性がある。よって、対象におけるCNDP1の活性情報は、イミダゾールジペプチドの摂取による処置が有効かどうかを予め判定するために、有用であると考えられる。したがって、本発明は、対象の有するカルノシン分解酵素(CNDP1)活性に基づく、対象の神経心理機能の判定方法、ならびに対象の有するCNDP1活性に基づく、本発明の剤または栄養組成物を対象に摂取させることによる神経心理機能の改善効果の予測方法を提供する。これらの方法においては、判断のための基準値を予め定めておき、その基準にしたがって機械的に予測する方法としてもよい。
〔剤〕
本発明で「剤」というときは、特に記載した場合を除き、有効成分そのものである場合と、有効成分とそれ以外の成分とを含む場合とがあるが、イミダゾールジペプチドおよびその代謝産物からなる群より選択される少なくとも一を含有する既存の食品、例えば鶏肉自体は含まない。
本発明の剤には、目的の効果を発揮しうる限り、有効成分以外の他の成分を配合することができる。他の成分は、食品として許容される種々の添加剤、または医薬として許容される種々の添加剤であり得る。この例には、賦形剤、酸化防止剤抗(酸化剤)、香料、調味料、甘味料、着色料、増粘安定剤、発色剤、漂白剤、防かび剤、ガムベース、苦味料等、酵素、光沢剤、酸味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、結合剤、緊張化剤(等張化剤)、緩衝剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化剤、凝固剤等である。
他の成分は、有効成分以外の機能性成分であってもよい。他の機能性成分に例としては、アミノ酸類(例えば、分岐鎖アミノ酸類、オルニチン)、不飽和脂肪酸類(例えば、EPA、DHA)、ビタミン類、微量金属類、グルコサミン、コンドロイチン類等が挙げられる。
本発明の剤が有効成分と有効成分以外の他の成分からなる場合、有効成分の含有量は、当業者であれば、製造し易さ、用い易さ等の点から適宜設計でき、例えば、0.1〜99.9%とすることができ、また1〜95%とすることができ、また10〜90%とすることができ、さらに51〜90%以上とすることができる。また、カルノシンとして21%以上とすることができ、アンセリンとして31%以上とすることができる。
本発明の剤の形態は、上述したように、既存の食品を除き、種々の形態であり得る。例えば、経口医薬品等の医薬組成物または栄養組成物であり得る。また、本発明の剤は、経口医薬品等の医薬組成物または栄養組成物に添加して用いることができる。本発明で「栄養組成物」というときは、特に記載した場合を除き、固形物のみならず、液状のもの、例えば飲料を含む。また、本発明で「栄養組成物」というときは、特に記載した場合を除き、健康食品、サプリメント、保健機能食品(栄養機能食品および特定保健用食品を含む。)を含み、また治療食(治療の目的を果たすもの。医師が食事箋を出し、それに従い栄養士等が作成した献立に基づいて調理されたもの。)、食事療法食、成分調整食、減塩食、介護食、減カロリー食、およびダイエット食、並びにそれらのための素材を含む。
本発明の剤、医薬組成物または栄養組成物の形態の例として、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液状製剤(エリキシル剤、リモナーデ剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、溶液剤、ドリンク剤を含む。)、ゲル状製剤、治療食、飲料、菓子、食肉加工品、魚介加工品、野菜加工品、惣菜、調味料組成物、食品添加物を挙げることができる。
本発明による、有効成分の摂取量は、当業者であれば、摂取する対象の、年齢、体重、性別、適用される疾患または状態等に応じ、適宜設計することができる。有効成分の摂取量は、例えば、200 mg/dayとすることができ、400 mg/dayとすることが好ましく、500 mg/day以上とすることがより好ましく、750 mg/day以上とすることがさらに好ましい。また、1,000 mg/day以上としてもよく、2,000 mg/day以上としてもよく、5,000 mg/day以上としてもよく、7,500 mg/day以上としてもよい。いずれの場合であっても、10,000 mg/day以下とすることができる。また下限値がいずれの場合であっても、50,000 mg/day以下とすることができ、30,000 mg/day以下とすることが好ましく、20,000 mg/day以下とすることがよりに好ましく、10,000 mg/day以下とすることがさらに好ましい。有効成分として、上記の一日当たりの摂取量を一度に摂取してもよいし、複数回に分けて摂取してもよい。
本発明の剤、医薬組成物または栄養組成物における、有効成分の量は、当業者であれば適宜設計できるが、例えば1,000 mg/100 g以上とすることができ、1,500 mg/100 g以上とすることが好ましく、2,000 mg/100 g以上とすることがより好ましく、2,500 mg/100 g以上とすることがより好ましく、3,000 mg/100 g以上とすることがより好ましく、3,500 mg/100 g以上とすることがさらに好ましい。いずれの場合であっても、50,000 mg/100 g以下とすることができ、40,000 mg/100 g以下とすることが好ましく、30,000mg/100 g以下とすることがより好ましく、20,000 mg/100 g以下とすることがさらに好ましい。
本発明の剤、医薬組成物または栄養組成物はまた、有効成分以外の成分を含んでいてもよい。有効成分以外の成分は、例えば、クレアチンおよび核酸である。クレアチンの含有量は、例えば一日量中、10 mg以上とすることができ、20 mg以上とすることが好ましく、30 mg以上とすることがより好ましく、60 mg以上とすることがより好ましく、100 mg以上とすることがより好ましく、200 mg以上とすることがさらに好ましい。いずれの場合であっても、2,000 mg以下とすることができ、1,000 mg以下とすることが好ましく、750 mg以下とすることがより好ましく、500 mg以下とすることがさらに好ましい。核酸の含有量は、例えば一日量中、0.15 mg以上とすることができ、0.30 mg以上とすることが好ましく、0.50 mg以上とすることがより好ましく、1.0 mg以上とすることがより好ましく、2.0 mg以上とすることがより好ましく、3.0 mg以上とすることがさらに好ましい。いずれの場合であっても、50 mg以下とすることができ、40 mg以下とすることが好ましく、20 mg以下とすることがより好ましく、10 mg以下とすることがさらに好ましい。
本発明の剤、医薬組成物または栄養組成物を治療食(治療の目的を果たすもの。医師が食事箋を出し、それに従い栄養士等が作成した献立に基づいて調理されたもの。)、食事療法食、成分調整食、減塩食、介護食、減カロリー食、ダイエット食、またはスポーツ食(有酸素運動における能力増強を目的とした食、有酸素運動における持久力の増強を目的とした食、競技当日までの栄養を身体に蓄積するための食、競技中に栄養補給するための食、および競技終了後の疲労を回復を目的とする食が含まれる。)とする場合、有効成分の含量は、一食としての摂取量を勘案して設計することができる。
本発明の剤、医薬組成物または栄養組成物は、繰り返し対象に摂取させることができ、また長期間にわたり、対象に摂取させることができる。特に、運動に関する能力の増強を目的とする場合は、運動の前に摂取させることが好ましく、また日常的に摂取させることが好ましいであろう。
本発明の剤、医薬組成物または栄養組成物には、神経心理機能 、脳の萎縮もしくは機能低下、および炎症によるニューロンの損傷ために用いることができる旨を表示することができ、また特定の対象、例えば65歳以上の高齢者または軽度の気分障害を有する者に対して摂取を薦める旨を表示することができる。表示は、直接的にまたは間接的にすることができ、直接的な表示の例は、製品自体、パッケージ、容器、ラベル、タグ等の有体物への記載であり、間接的な表示の例は、ウェブサイト、店頭、展示会、看板、掲示板、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、郵送物、電子メール等の場所または手段による、広告・宣伝活動を含む。
〔製造方法〕
本発明の剤、医薬組成物または栄養組成物は、種々の公知の技術を用いて製造することができる。有効成分を所定の濃度になるように調整する工程は、製造工程の種々の段階で適用できる。当業者であれば、有効成分の溶解性、安定性、揮発性等を考慮して、本発明の剤のための製造工程を、適宜設計しうる。本発明者の検討によると、アンセリンおよびカルノシンは、常温では十分に安定であり、また180℃以下の調理条件であれば十分に安定であることが確認されている。さらに、溶液状態で少なくとも2年9月は安定に保存できることが確認されている。
本発明の有効成分を鶏肉抽出物として構成する場合、鶏肉抽出物の製造方法の一例を具体的に説明すると、鶏肉を細切りし、温水を加え、必要に応じてpHを調節し、必要に応じ加温し、数分間〜数日間かけて抽出することによる。抽出条件の一例は、50〜100℃で1〜10時間処理することである。得られた抽出液は、必要に応じて珪藻土ろ過、限外ろ過等により、精製・分画することができる。必要に応じ、脱塩処理、プロテアーゼ処理を行うことができる。原料である鶏肉の部位は特に限定されないが、カルノシン及び/又はアンセリンを多く含有することから、胸肉を含むことが好ましい。得られた抽出物は、熱風乾燥、スプレー乾燥、凍結乾燥等により乾燥し、乾燥物とすることができる。造粒し、顆粒とすることもできる。
〔発現解析〕
本発明はまた、神経心理機能の改善または改悪を検出するための、トランスポーター遺伝子である、SLC23A2、SLC43A2、SLC29A3、SLC35C1、SLC25A33、SLC25A23、SLC6A12およびSLC6A13;ケモカイン遺伝子である、CXCL12およびCCL17;老化関連遺伝子である、TSPOおよびP2RY1;神経系遺伝子である、CAMK1;ミトコンドリア系遺伝子である、ACO2、ATP7A、POLG、IDH3G、UCP2、BCKDHAおよびTAP2;並びに抗老化遺伝子である、SMARCD1およびSIRT6からなる群より選択される少なくとも一の遺伝子の発現解析することによる、方法、ならびに配列番号1〜20のいずれかの塩基配列の全部または一部、および配列番号1〜20のいずれかの塩基配列に相補的な塩基配列の全部または一部からなる群より選択される少なくとも一の塩基配列からなる核酸含む、神経心理機能の改善または改悪を検出するためのキットも提供する。
発現解析は、好ましくは、SLC23A2、SLC43A2、SLC29A3、SLC35C1、SLC25A33、SLC25A23、SLC6A12およびSLC6A13からなる群より選択される少なくとも一のトランスポーター遺伝子、CXCL12およびCCL17からなる群より選択される少なくとも一のケモカイン遺伝子、TSPOおよびP2RY1からなる群より選択される少なくとも一の老化関連遺伝子、CAMK1より選択される神経系遺伝子、ACO2、ATP7A、POLG、IDH3G、UCP2、BCKDHAおよびTAP2からなる群より選択される少なくとも一のミトコンドリア系遺伝子、SMARCD1およびSIRT6よりなる群より選択される少なくとも一の抗老化遺伝子の発現を解析することによる。より好ましくは、上述したすべての遺伝子の発現を解析することによる、
新薬や機能性の食品成分の開発等においては、候補薬剤や成分の作用を細胞レベルでモニターし、それらの薬効や安全性を評価することがなされるが、薬剤投与の前後で細胞に発現している遺伝子をゲノム全域にわたって捉え、薬剤や成分の作用を遺伝子発現量の変化として定量的に捉える手法が注目されている。このような方法において、本発明によって提供される遺伝子の組み合わせについて発現を解析することにより、候補薬物の神経心理機能に対する効果を解析することができる。
発現解析に関する本発明において、配列番号1〜20のいずれかの塩基配列の全部または一部、および配列番号1〜20のいずれかの塩基配列に相補的な塩基配列の全部または一部からなる群より選択される少なくとも一の塩基配列からなる核酸としては、検出の対象となる試料中の転写産物と特異的にハイブリダイズできるプローブ、または転写産物の全部または一部を増幅するプライマーとして機能可能な一対のプライマーセットであり得る。核酸はDNAであってもRNAであってもよい。
発現解析に関する本発明において、配列番号1〜20のいずれかの塩基配列の全部または一部、および配列番号1〜20のいずれかの塩基配列に相補的な塩基配列の全部または一部からなる群より選択される少なくとも一の塩基配列からなる核酸の長さは、プローブとして使用する場合、例えば15塩基長以上であり、好ましくは20塩基長以上であり、より好ましくは25塩基長以上である。プローブ核酸は、標的核酸の検出・定量を可能とするために、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質により標識されていてもよい。プローブとなる核酸は、固相上に固定化してもよい。
プライマーとして使用する場合の核酸の長さは、例えば15〜約100塩基長であり、好ましくは15〜50塩基長であり、100bp〜数kbpのDNA断片を増幅するようにデザインされたペアであることが好ましい。
使用される核酸は、市販のDNA/RNA自動合成機等を用いて化学的に合成することによって製造することができる。また、シリコンやガラス等の固相上で核酸を直接合成することにより、核酸が固定化されたチップ(アレイ)とすることもできる。核酸プローブが基板に固定化された状態で提供される好ましい態様として、DNAマイクロアレイが挙げられる。
微量の試料を用いて所定の遺伝子群の発現を定量的に解析するためには、競合RT−PCRまたはリアルタイムRT−PCRを用いることができる。解析の対象となる試料は、ヒトから採取した血液でありうる。
〔リード化合物としての利用〕
本発明により、上記イミダゾールジペプチドおよびその代謝産物をリード化合物として、神経心理機能の改善、特に脳の機能老化および/または認知症の処置のための有効成分等を探索する方法(スクリーニング方法)を提供する。リード化合物とは、一般に、薬理活性のプロファイルが明らかであり、これを化学的に改変することで活性の向上、毒性の減弱が期待できる化合物をいう。イミダゾールジペプチドおよびその代謝産物は、上述のように神経心理機能の改善、特に脳の機能老化および/または認知症の処置という薬理活性を有し、これをさらに化学的に改変することで活性の向上、毒性の減弱が期待できる。
化学的に改変するとは、例えば、前記リード化合物を化学修飾することでリード化合物の最適化を行うことを指す。化学修飾は、例えば、一部のアミノ酸の置換、除去、少なくとも1つのアミノ酸の付加、挿入であることができる。また各アミノ酸への官能基の付加、置換、除去、ならびに各アミノ酸のD体アミノ酸への、または人工アミノ酸への置換等が考えられる。
本発明により、イミダゾールジペプチドおよびその代謝産物をリード化合物として最適化を行うことで、物性、薬物動態および毒性等の点でより優れた有効成分を探索できる。
以下、本発明を実施例を用いて説明するが、本発明の範囲は実施例に記載したものに限られない。
〔健常人ボランティアによる評価1〕
鶏肉由来イミダゾールジペプチド(カルノシン、アンセリンとして1日1000mg)を含む試験食を、3か月間、被験者(40歳以上の健常人ボランティア男女28名を2群:試験食群およびプラセボ食群に分けた)に摂取させ、その前・中・後において、脳機能の変化等について評価した。試験食とプラセボ食の配合(一日量として)を下表に示す。
1. 抗うつ効果(BDI調査票による評価)
摂取期間の前および後に、BDI調査票(http://www.chibatc.co.jp/catalogue/04/1/67.html)により、うつ傾向を評価した。なおBDI調査票による点数は、高い方がうつ傾向にあることを示す。
結果を図1に示した。BDI点数の変化、すなわち摂取前の点数(test1)−摂取後の点数(test2)により改善の程度を比較したところ、プラセボ群ではほとんど改善が見られないのに対し、試験食群では改善傾向が見られた。また摂取前後での変化を順位で示したところ(順位の数字が大きい程、改善している)、試験食群のほうが変化が大きい傾向がみられた。健常者でも軽度にうつ傾向を有している場合があり、イミダゾールジペプチドはGABA神経系の機能を整えることにより、このうつ傾向を改善したのではないかと思われる。
2. 認知機能の改善効果(ADAS-cogによる評価)〕
摂取期間の前および後に、ADAS-cog(Alzheimer's Disease Assessment Scale-cognitive subscale)により、認知機能を評価した。
結果を図2に示した。摂取前後で、3ポイント以上改善した人、改悪した人の割合を示したところ、試験食群において、プラセボ群よりも改善した人数割合が多かった。
3. 脳の萎縮等に対する効果
3次元T1強調画像による脳構造解析、安静時機能的MRIによる機能連結解析を行った。試験食群15名、プラセボ食群13名のベースラインおよび3ヶ月後における構造変化の縦断解析においては、灰白質において右下前頭回と左下側頭回(図3-1)、白質において右後部帯状回に試験食群がプラセボ食群よりも萎縮の進行が抑制されていることがわかった(図3-2)。
また、安静時機能的MRIによる機能連結解析では、ベースラインでは加齢とともに海馬との機能連結が後部帯状回において低下していた(図4)。後部帯状回は記憶の再生に関与し、アルツハイマー病においては、最初に機能が低下することが知られている。この部位において、試験食群は3ヶ月後においてプラセボ食群よりも海馬との機能連結が強化されていた。また、この部位は、試験食群で萎縮抑制効果のみられる白質部位(図3-2)と一致していた。
4. 遺伝子発現解析
試験食群については13名分(2名分は調製不可)、プラセボ群については13名全員分の被験者血液サンプル(初回検査時と中間検査時のもの)を用いて、パクスジーンRNA採血管(日本ベクトン・ディキンソン、東京)を用いて採血後、PAXgene Blood RNA kit(Qiagen)を用いて高品質RNAを調製し、マイクロアレイにより、遺伝子発現の変化を解析した。
方法
マイクロアレイはAgilent社(CA, USA)のWhole Human Genom オリゴDNAマイクロアレイ(4×44K) v2を用いて行った。
(1) ラベリング
まず、total RNAを被験者の血液サンプルからPAXgene blood RNA Kit(Qiagen)を用いて抽出し、各200 ngずつにAgilent Low-Input QuickAmp Labeling Kit, one-colorを用いてラベリングした。はじめに予め準備したOne-Color Spike Mix stock solution 2 μLに200 ngのtotal RNA 2.5 μLを加えた。次に、T7 Promoter Primerを0.8 μL加え、ヒートブロックで65℃ 10分間インキュベートし、その後5分間氷上で急冷した。さらに、予め調製したcDNA Master Mixを4.7 μL加え、2時間40℃のヒートブロックでインキュベートした後、70℃のヒートブロックに移しさらに15分間インキュベートした。その後、氷上で5分間急冷し、予め調製したTranscription Master Mix 6 μLを加えた。40℃のヒートブロックで遮光し2時間インキュベートした後、84 μLのnuclease-free waterを加え全量を100 μLとし、さらにBuffer RLTを350 μL加え、さらに、250 μLのエタノールを加えた。次に、RNeasyカラムに全量を添加し13000 rpmで4℃ 30秒間遠心し、buffer RPE 500 μLによって2回洗浄した後、最後に30 μLのRNase-free waterによって溶出した。
(2) ハイブリダイゼーション
次に、Agilent社推奨のプロトコールで、ハイブリダイゼーションを行った。まず、先程溶出したRNAをFragmentation mix と混ぜ断片化し、60℃のヒートブロックで30分間インキュベートしてすぐに1分間氷冷した。次に、そのcRNA from Fragmentation Mix に2x GEx Hybridization Buffer HI-RPMを混合しHybridization mixを作製した。Hybridization mixをmicroarray slideにアプライした後、ハイブリダイゼーションチャンバーに設置し、ハイブリダイゼーションオーブンに設置し、65℃ 10 rpmにて17時間かけてハイブリダイズした。
(3) microarray slideの洗浄とscanning
予め準備したGene Expression Wash Bufferを用いてmicroarray slideの洗浄を行った。まず、ハイブリダイゼーションが終わる前に、3つの洗浄用ガラス容器のうち2つにGene Expression Wash Buffer 1を、残りの1つに37℃のGene Expression Wash Buffer 2をそれぞれ満たした。ハイブリダイゼーションが終わったハイブリダイゼーションチャンバーを1つ目の洗浄用ガラス容器中で分解しmicroarray slideを取り出し、2つ目の洗浄用ガラス容器中で洗浄した。3つ目の洗浄用ガラス容器でさらにmicroarray slideを洗浄後、microarray slideを水面からゆっくり引き上げることで乾燥させ、最後に専用のスキャナーに設置しmicroarray slideのスキャンを行った。
(4) データ解析
Agilent社Feature Extractionソフトウェアによってデータの数値化を行った。正規化は統計解析ソフトRを用い、quantile法にて行った。また、正規化後のシグナル値からZ-scoreとRatioを算出し、±2以上の変動があるもののみを抽出することで得られたデータを、アノテーションデータベース DAVID (http://david.abcc.ncifcrf.gov/)を用いて解析した。
まず、データベースに変動が確認された遺伝子のGenBank Accession Numberを入力した後、Functional Annotation Clusteringを行い遺伝子変動が起きている機能ごとにクラスタリングを行った。また、同様にDAVIDを用いて、KEGG (Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes)のパスウェイ解析を行った。
結果
有意差レベルp<0.05に基づき、試験食の摂取により、プラセボ食群と比して、有意に変動している遺伝子を図5に示す。この遺伝子発現解析の結果から、血液細胞上に存在する各種のトランスポーター分子の発現が大きく変動していることがわかった。特に、イミダゾールジペプチドの摂取によりリンパ球上の膜表面にあるビタミンCトランスポーター(図5中、SLC23A2)の発現量が有意に上昇していることが見出された。また、ミトコンドリアのエネルギー代謝に関連する複数の遺伝子において、その発現が増加した(TCAサイクルの酵素であるACO2(アコニダーゼ)、IDH3G(イソクエン酸デヒドロゲナーゼ))。このような仕組みを利用してイミダゾールジペプチドは健康増進作用を発揮している可能性がある。
ケモカイン類では、CXCケモカイン、CCケモカインの発現低下が見られた。試験食は炎症を抑制する傾向にあることが示唆される。
また、老化関連遺伝子の発現増強が認められた。試験食による老化制御が示唆される。
さらに、抗老化遺伝子の発現増強が認められた。試験食による抗老化が示唆される。
カルノシンには、筋肉疲労改善効果が知られており、疲労回復は、筋肉中のpHを中和する効果と考えられてきた。しかし、今回、試験食の摂取によりミトコンドリア系の遺伝子の増強が見られたことから、解糖系を介したミトコンドリアの機能増強という、筋肉に対する新たな機能も示唆される。また、今回、長寿遺伝子として知られるSIRT6の発現が増強していることが分かった。この遺伝子はマウス個体で高発現させると、マウスの寿命が延びることが知られている。そのため、イミダゾールジペプチドにより延命も期待できるかもしれない。さらにイミダゾールペプチドの摂取によって、様々なSLCの遺伝子発現が変動する点に関しては、カルノシンとの食べ合わせによって、いろいろな生理活性物質・食成分に対する応答が変化する、いわゆる食べ合わせ効果のようなものが期待できるかもしれない。
5. 血清中サイトカイン類の濃度変化
3か月の摂取期間において、食品摂取前、摂取中(開始6週間後)、期間終了直後の被験者からの血液サンプルについて、生化学検査、血球算定検査、血糖検査、凝固検査を行った。試験食の摂取により血糖値の低下傾向が観察された。それ以外の指標については摂取前後で変化が観察されなかったことから、試験食およびプラセボ食摂取の安全性が再確認された。
また、同じ血液サンプルについて、27種類のサイトカイン・ケモカインの定量解析を実施した。被験者末梢血の血清中サイトカイン濃度を、xMAPテクノロジー(Luminex社)を用いたビーズベースのマルチプレックス解析を用いて定量解析した。この方法は、それぞれ異なる蛍光で標識されたビーズ上に結合した特異抗体を用いて、フローサイトメトリーの原理を活用して同時に各サイトカインを定量解析するものである。Bio-Plex ProTM Human Cytokine Grp I panel 27-pLexキット(Bio-Rad社)を用いた解析方法の概要を下記に示す。各抗体ビーズを96-wellアッセイプレートに分注し、Bio-Plex Wash bufferで2回洗浄後、血清および標準溶液を添加し遮光して1時間室温にてシェーカー上でインキュベートした。Wash bufferで3回洗浄した後、検出抗体溶液を加え遮光して30分間室温にてシェーカー上でインキュベートした。Wash bufferで3回洗浄した後、PE標識ストレプトアビジン溶液を加え、遮光して10分間室温にてシェーカー上でインキュベートした。Wash bufferで3回洗浄した後、Assay bufferを加えて遮光して10秒間振盪した。Bio-Plex 200 システム(Bio-Rad社)を用いて、各ビーズのPE蛍光強度を測定し、既知の試料を用いて求めた標準曲線から血清中の各サイトカイン濃度を算出した。各被験者ごとに摂取前後で対応のあるt検定で統計解析を行い、試験食群で変化が認められたサイトカインを図6に示した。
試験食の摂取により、IL-8(CXCL8)をはじめとして、IL-5、IL-7、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、MCP-1 (CCL2)など多くのサイトカイン・ケモカイン分子でその血中レベルが有意に低下していることがわかった。一方、IP-10(CXCL10)の血中レベルは試験食摂取で有意に上昇することも明らかとなった。なお、今回のプラセボ食には必須アミノ酸量を試験食と合わせる目的で、ヒスチジンが含まれており、ヒスチジンには抗炎症作用があることが知られている。そのため、上述した分子群のうちIL-5, IL-7、MCP-1(CCL2)においては、プラセボ食の摂取によってもその血中レベルが有意に低下した。
血糖値を測定した。結果を図7に示した。プラセボ群は上昇傾向、試験食群は低下傾向にあった。プラセボ群と比較して、試験食群では血糖値が改善する傾向にあった。一方で、今回のパイロット試験は健康な中高齢者を対象としたため、糖尿病のマーカー分子とされるHbA1c(糖化したヘモグロビン)は多くの被験者で正常値の範囲内にあり、試験食の摂取によりその値の変化は認められなかった。
〔病態マウスによる評価〕
トランスジェニックマウス(アルツハイマー病モデルマウス)に高脂肪食(HFD: High Fat Diet)を与えて、脳機能低下を誘導した。マウスにカルノシン(L-ヒスチジン-β-アラニン)を投与し、カルノシンの影響を評価した。
結果を図8-1、8-2、8-3、および8-4に示した。カルノシン含有食群では、サイトカイン類が減少しており、炎症が抑えられていると示唆される(図8-1)。また、カルノシン投与群では脳の炎症が抑えられていることがMRI検査の結果から示された(図8-2: 赤い部分)。マイクロアレイ解析の結果、アルツハイマーモデルで見られる7Slc6a12、slc6a13といったGABAトランスポーターの発現上昇が、カルノシン投与群では抑制されていた(図8-3)。アルツハイマー病モデルマウスでは、トランスポーター発現上昇により伝達物質として作用できるGABA量が減少するが、それをGABA量の減少をカルノシンが抑制するという可能性が示唆された。
また、一晩マウスを絶食させた後、血液を採取し、キット(morinaga)により血中インスリン濃度を検出した。血液検査の結果、カルノシン投与群では、高脂肪食投与アルツハイマー病に見られる血中インスリン濃度の上昇が抑えられていることがわかった(図8-4)。
〔健常人ボランティアによる評価2〕
上記と同じ、鶏肉由来イミダゾールジペプチドを含む試験食を、3か月間、被験者(40歳以上の健常人ボランティアを、試験食群およびプラセボ食群に分けた)に摂取させ、その前・中・後において、脳機能の変化等について評価した。試験食とプラセボ食の配合(一日量として)は、表1に記載したとおりである。第1次パイロット試験および第2次パイロット試験を行った。
第1次と第2次あわせた被験者の合計は、試験食群30名、普通食群(プラセボ食群)30名であった(下図参照)。
1. MRI撮像法による解析
第2次パイロット試験において、認知症の進行に伴い変化する脳血流を直接測るMRI撮像法を行った。
脳の血流変化は、MRI装置を用いて、ラベル体を用いることなく磁気を用いて血流変化を図る方法であるArterial Spin Labeling法などを用いて計測することができる。
結果を図9および10に示した。前認知症段階からの進行および発症に伴ってその血流が変化する後部帯状回部位の血流変化の低下が、試験食摂取群においてプラセボ食群と比べて有意差(P<0.005)を持って保たれていることがわかった。
2. サブグループ解析
第1次および第2次パイロット試験の被験者のサブグループ解析(60歳以上)を対象に、前認知症段階からの進行および発症に伴って低下する論理記憶(遅延再生課題)について評価した。
結果を図11および12に示した。本試験の場合、第1回目試験より、第2回目試験のほうが難易度が高いため、1回目よりも2回目のほうが点数が悪くなる傾向があるが試験食摂取群においてプラセボ食群に比べて統計学的な強い有意性(P<0.01)を持って点数の悪化が抑えられていることが判った。
これらの二つの結果から、鶏肉に由来するイミダゾールジペプチドを含む剤には脳の機能老化および認知症の発症を予防するはたらきがあることが示唆された。
〔製造例〕
(1) 鶏肉抽出物の製造
鶏肉由来イミダゾールジペプチドを含む試験食を次の工程により製造した。
鶏胸肉をミートグラインダーにて細切りし、鶏胸肉に肉の重量に対して1.5倍量の温水を加え、90℃で4時間加熱し、Brixが20%以上となるまで濃縮したのち、珪藻土ろ過および限外ろ過を行い、最終的にカルノシン+アンセリン濃度が約10%(w/v%)となるように調製した。
(2)カプセル剤
カルノシン1.0重量部、プラセンタエキス(粉末)0.2重量部および乳糖1.3重量部を混合して均一化した後、常法に準じてハードカプセルに充填し、内容量250 mgのカプセル剤(カルノシン100 mg/カプセル)を製造した。
(3)錠剤
マルトース、デキストリン、デンプン、ビタミンE含有直物油、イソマルトオリゴ糖、難消化性デキストリン、貝カルシウム、トレハロース、ショ糖エステル、ビタミンC、クエン酸、リン酸カルシウム、香料、シェラック、ナイアシン、ビタミンK、甘味料、塩化カリウム、ビタミンA、パントテン酸カルシウム、ビオチン、ピロリン酸鉄、ビタミンB類、ビタミンD、炭酸マグネシウム、葉酸とともに、1錠(300 mg)当たりカルノシン・アンセリン混合物60 mgを含む錠剤を製造した。
配列番号1: SLC23A2, NM#203327
配列番号2: SLC43A2, NM#152346
配列番号3: SLC29A3, NM#018344
配列番号4: SLC35C1, NM#018389
配列番号5: SLC25A33, NM#032315
配列番号6: SLC22A23, NM#015482
配列番号7: CXCL12, NM#199168
配列番号8: CCL17, NM#002987
配列番号9: TSPO, NM#000714
配列番号10: P2RY1, NM#002563
配列番号11: CAMK1, NM#003656
配列番号12: ACO2, NM#001098
配列番号13: ATP7A, NM#000052
配列番号14: POLG, NM#002693
配列番号15: IDH3G, NM#004135
配列番号16: UCP2, NM#003355
配列番号17: BCKDHA, NM#000709
配列番号18: TAP2, NM#018833
配列番号19: SMARCD1, NM#139071
配列番号20: SIRT6, NM#016539

Claims (7)

  1. 40歳以上の者を対象とする、カルノシン、アンセリン、バレニンおよびホモカルノシンからなる群より選択される少なくとも一のイミダゾールジペプチドを含有する、加齢による認知機能の低下の改善、加齢による論理記憶の低下の改善、および認知症(ただしアルツハイマー型認知症を除く。)の発症のリスクの低減からなる群より選択される少なくとも一のための、経口剤。
  2. カルノシン、アンセリン、バレニンおよびホモカルノシンからなる群より選択される少なくとも一のイミダゾールジペプチドを含有する、加齢による認知機能の低下の改善、加齢による論理記憶の低下の改善、および認知症(ただしアルツハイマー型認知症を除く。)の発症のリスクの低減からなる群より選択される少なくとも一のための、経口剤(ただしセロトニン分泌の活性化により改善される疾患または対象の処置のための剤を除く。)。
  3. 40歳以上の者を対象とする、カルノシン、アンセリン、バレニンおよびホモカルノシンからなる群より選択される少なくとも一のイミダゾールジペプチドを含有する、脳の委縮の抑制、加齢に伴う後部帯状回における海馬との機能連結の低下の改善、または前認知症段階からの進行および発症に伴って低下する後部帯状回部位の血流の維持のための、経口剤。
  4. カルノシン、アンセリン、バレニンおよびホモカルノシンからなる群より選択される少なくとも一のイミダゾールジペプチドを含有する、脳の委縮の抑制、加齢に伴う後部帯状回における海馬との機能連結の低下の改善、または前認知症段階からの進行および発症に伴って低下する後部帯状回部位の血流の維持のための、経口剤(ただしセロトニン分泌の活性化により改善される疾患または対象の処置のための剤を除く。)。
  5. 40歳以上の者を対象とする、請求項2または4に記載の剤。
  6. カルノシン、アンセリン、バレニンおよびホモカルノシンからなる群より選択される少なくとも一のイミダゾールジペプチドを、鶏肉抽出物として含有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の剤。
  7. カルノシン、アンセリン、バレニンおよびホモカルノシンからなる群より選択される少なくとも一のイミダゾールジペプチドをリード化合物として用いる、加齢による認知機能の低下の改善、加齢による論理記憶の低下の改善、および認知症(ただしアルツハイマー型認知症を除く。)の発症のリスクの低減からなる群より選択される少なくとも一のための有効成分を探索する方法。
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