JP2021169441A - 睡眠の質改善剤 - Google Patents

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Mayumi Otsuka
泰徳 山本
Yasunori Yamamoto
尚基 山本
Naoki Yamamoto
夏海 長森
Natsumi Nagamori
英雄 大南
Hideo Ominami
尚也 北村
Hisaya Kitamura
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Abstract

【課題】睡眠の質の改善に有用な睡眠の質改善剤の提供。【解決手段】デルフィニジン‐3‐ルチノシド、シアニジン‐3‐ルチノシド又はその組み合わせを有効成分とする睡眠の質改善剤。【選択図】なし

Description

本発明は、睡眠の質改善剤及びTRPV4活性抑制剤に関する。
人間は人生の約3分の1を「睡眠」に費やしており、睡眠は人間にとって最も重要な行為と考えられる。しかしながら、現代社会では、生活リズムの乱れやストレス、運動不足等により睡眠不足、不眠の症状を訴える人が多く存在する。平成27年国民健康・栄養調査報告(厚生労働省,2017)によれば、日本人の約5人に1人は、自身の睡眠全体の質に対して不満を抱えている。加えて、日本人の平均睡眠時間は、年々短くなっていることが報告されている。
さらに睡眠の質は、加齢に伴い低下する。平成29年版高齢社会白書(内閣府、2017)によると、少子高齢化が加速して2050年には日本国の高齢化率が40%に達すると公表されている。これらのことから、今後、高齢者数の増加に伴い、睡眠の質が低下した高齢者が増加すると予想される。
睡眠の質には、身体的要因の他、心理的要因、薬理学的要因、環境要因等の様々な要因が影響し、一般的に、寝つきが悪い入眠障害、夜中に何度も目が覚める中途覚醒、朝早くに目が覚めてしまう早期覚醒、よく眠った感じがしない熟眠不全等を誘発する。睡眠の質の低下は、心筋梗塞や脳梗塞等の重大な疾患に繋がるだけでなく、日中の眠気や疲労から作業能率が低下し、重大な事故に繋がることから、その改善は重要な課題である。
従来、食経験のある素材から多くの睡眠改善効果を有する成分が見出されている。例えば、テアニン(特許文献1)、グリシン(特許文献2)、オルニチン(特許文献3)、γ−アミノ酪酸(gamma-Aminobutyric acid,GABA;特許文献4)、アルギニン(特許文献5)、グルタチオン(特許文献6)、納豆菌等のバシラス・サブチルス(Bacillus subtilis)に属する微生物の菌体破砕物(特許文献7)、清酒酵母(特許文献8)、亜鉛及び糖類又は糖アルコール(特許文献9)、カゼイン加水分解物及びミネラル(特許文献10)、セサミン類(特許文献11)、カボチャ属種子抽出物(特許文献12)、トネリコ属植物若しくはその抽出エキス、シベリアカラマツエキス、ジヒドロケルセチン、ジヒドロケンフェロール又はナリンゲニン(特許文献13)等が報告されている。このうち、グリシンは、動物で足裏血流量増加・深部体温低下が報告され(非特許文献1)、グリシンの摂取により末梢血流が増加し熱放散が高まり、深部体温が低下して、睡眠の質が向上すると考えられている。一方、ベンゾジアゼピン系や抗ヒスタミン系等の睡眠改善医薬品による作用点は中枢で、睡眠の質を改善させる一般的な治療法は睡眠・覚醒関連神経の制御であるため、睡眠改善用飲食品が睡眠に対して効果をもたらす機構については未だ不明な点が多い。また、これらの睡眠改善用飲食品は、睡眠の質を改善する一定の効果を示すものの、その効果は必ずしも十分とはいえず、睡眠改善用飲食品としてより睡眠の質の改善が可能な技術の開発が望まれている。
一方、カシス(学名:Ribes nigrum)は黒すぐり、ブラックカラントとも呼ばれるユキノシタ科スグリ属に分類される植物で、4種類のアントシアニンを多く含む。カシスアントシアニンのうちルチノシド体であるデルフィニジン‐3‐ルチノシドとシアニジン‐3‐ルチノシドはカシスアントシアニンの特徴的成分である。カシスアントシアニンは、抗酸化作用等の他、指先血流量を増加させる作用を有することが報告されている(非特許文献2)。
しかしながら、カシスアントシアニンに睡眠の質改善作用があるかは明らかになっていない。
特許第4961087号公報 特開2006−333872号公報 特許第5053535号公報 特開2007−63236号公報 特開2007−230954号公報 特開2008−56628号公報 特開2008−137941号公報 特開2015−214518号公報 国際公開第2015/099102号 特開2009−13143号公報 特許第5925984号公報 特開2012−206943号公報 国際公開第2013/051727号
Neuropsychopharmacology, 40(6), 1405-1416, 2015 医学・生物学サーモロジー 23(4), 194-201, 2004
本発明は、睡眠の質の改善に有用な睡眠の質改善剤を提供することに関する。
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討したところ、TRPV4(Transient receptor potential cation channel subfamily V member 4)が睡眠の質の制御に関与しており、TRPV4の活性を抑制することで睡眠の質が改善されること、カシスアントシアニン、そのなかでもデルフィニジン‐3‐ルチノシド及びシアニジン‐3‐ルチノシドはTRPV4の活性を抑制する作用を有し、睡眠の質を改善する効果を有することを見出した。
TRPV4は、温度感受性TRPチャネルを構成するタンパク質の1つである。TRPV4は、腎臓、肺、膀胱、心臓、皮膚、脳、消化管等の幅広い組織で発現しており、浸透圧変化・温度変化・血流によって生じるせん断応力・臓器の容積変化といった様々な物理化学的刺激を感知し、細胞に伝達するセンサー分子として機能すると考えられている。TRPV4は特に膀胱内側の膀胱上皮細胞に存在し、TRPV4の活性抑制は過活動膀胱や過敏性腸症候群の改善に有用であることが知られているが、これまでにTRPV4と睡眠との関連性は知られていなく、TRPV4の活性抑制によって睡眠の質が改善されることは、本発明者によって新たに得られた知見である。
すなわち、本発明は、以下の1)〜5)に係るものである。
1)デルフィニジン‐3‐ルチノシド、シアニジン‐3‐ルチノシド又はその組み合わせを有効成分とする睡眠の質改善剤。
2)デルフィニジン‐3‐ルチノシド、シアニジン‐3‐ルチノシド又はその組み合わせを有効成分とするTRPV4活性抑制剤。
3)デルフィニジン‐3‐ルチノシド、シアニジン‐3‐ルチノシド又はその組み合わせを有効成分とする睡眠の質改善用食品。
4)デルフィニジン‐3‐ルチノシド、シアニジン‐3‐ルチノシド又はその組み合わせを有効成分とするTRPV4活性抑制用食品。
5)下記の工程を含む、睡眠の質改善剤の評価又は探索方法。
(a)TRPV4発現細胞に被験物質を接触させる工程
(b)前記TRPV4発現細胞において、TRPV4刺激物質がTRPV4に結合することによって発現する活性を測定する工程
(c)前記(b)の測定結果に基づいて、TRPV4の活性を抑制又は阻害する被験物質を睡眠の質改善剤として選択又は評価する工程
本発明の睡眠の質改善剤によれば、入眠を促し、深い睡眠状態であるノンレム睡眠時間の割合を増加させ、覚醒の割合を減少させることができ、睡眠の質を高めることができる。また、本発明のTRPV4活性抑制剤によれば、TRPV4活性を効果的に抑制することができる。
カシスアントシアニン精製の流れを示すグラフ。 カシスアントシアニンの分取HPLCのクロマトグラム。 Fr.E−3〜−6の1H、13C−NMRスペクトル。
本発明においてデルフィニジン‐3‐ルチノシドは、デルフィニジン3位の水酸基にラムノシル−(α1→6)−グルコースが結合した配糖体で、以下の構造を有する。
Figure 2021169441
本発明においてシアニジン‐3‐ルチノシドは、シアニジン3位の水酸基にラムノシル−(α1→6)−グルコースが結合した配糖体で、以下の構造を有する。
Figure 2021169441
デルフィニジン‐3‐ルチノシド及びシアニジン‐3‐ルチノシドは、塩や溶媒和物であってもよく、いずれも包含される。また、これらは各々単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、所望の効果を得やすい点で、デルフィニジン‐3‐ルチノシドを用いることが好ましい。
デルフィニジン‐3‐ルチノシド及びシアニジン‐3‐ルチノシドは、化学合成すること、或いはこれらを含有する天然物、特に植物から抽出・精製することにより取得することができる。また、試薬として市販されているものを用いることができる。デルフィニジン‐3‐ルチノシド及びシアニジン‐3‐ルチノシドは、カシス(学名:Ribes nigrum)に見出されることから、カシス抽出物に由来するものを使用することが好ましい。カシス抽出物をデルフィニジン‐3‐ルチノシド及びシアニジン‐3‐ルチノシドとして使用してもよい。
カシスの使用部位は、特に限定されず、植物全体、葉、茎、花、芽、蕾、果皮、果実、根、根茎、種子等又はそれらの組み合わせであり得るが、カシスアントシアニンを豊富に含むことから果実又は果皮を用いるのが好ましい。カシスは、生のまま、乾燥又はそれらを処理して用いることができる。処理としては、例えば、切断、破砕、磨砕、粉砕等が挙げられる。
抽出方法は、適宜選択することができ、浸漬、煎出、浸出、還流抽出、超臨界抽出、超音波抽出、マイクロ波抽出等のいずれでもよい。
抽出の為の溶媒には、極性溶媒、非極性溶媒のいずれをも使用することができる。溶媒の具体例としては、例えば、水;1価、2価又は多価のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の鎖状又は環状のエーテル類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;ヘキサン等の飽和又は不飽和の炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;ピリジン類;ジメチルスルホキシド;アセトニトリル;二酸化炭素、超臨界二酸化炭素;油脂、ワックス、その他のオイル類;並びにこれらの混合物が挙げられる。好適には、アルコール類及びその水溶液が挙げられ、アルコール類としてはメタノール、エタノール、1,3−ブチレングリコール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール等が挙げられ、好ましくはエタノール及びエタノール水溶液である。
抽出における溶媒の使用量、抽出条件は、十分な抽出が行える条件であれば特に限定されず、適宜調整することができる。
カシス抽出物は、食品や医薬品上許容し得る規格に適合し、本発明の効果を発揮するものであれば粗精製物であってもよい。また、必要に応じて、液々分配、固液分配、濾過膜、活性炭、合成吸着樹脂、イオン交換樹脂、澱出し等の公知の技術によって不活性な夾雑物の除去、脱臭、脱色等の処理を施すことができる。
また、さらに公知の分離精製方法を適宜組み合わせてこれらの純度を高めてもよい。精製手段としては、有機溶剤沈殿、遠心分離、限界濾過膜、高速液体クロマトグラフやカラムクロマトグラフ等が挙げられる。
カシス抽出物は、そのまま用いてもよく、適宜な溶媒で希釈した希釈液として用いてもよく、あるいは濃縮エキスや乾燥粉末としたもの、ペースト状に調製したものでもよい。また、凍結乾燥し、用時に、通常抽出に用いられる溶剤、例えば水、エタノール、水・エタノール混液等の溶剤で希釈して用いることもできる。また、リポソーム等のベシクルやマイクロカプセル等に内包させて用いることもできる。
カシス抽出物は、デルフィニジン‐3‐ルチノシド及びシアニジン‐3‐ルチノシドの合計量で、0.1質量%以上含有することが好ましく、10質量%以上含有することがより好ましい。
後述する実施例に示すように、マウスへのTRPV4作動薬の経口投与により、ノンレム睡眠割合の減少、覚醒割合の増加、ノンレム睡眠潜時の延長が認められるが、TRPV4拮抗薬を同時に経口投与することで、ノンレム睡眠割合の減少、覚醒割合の増加、ノンレム睡眠潜時の延長が有意に抑制される。このことから、TRPV4は睡眠の質の制御に関与し、TRPV4の活性化は睡眠の質を悪化させること、逆に、TRPV4の活性を抑制することで、睡眠の質を改善できることが明らかとなった。そして、カシス抽出物、そのなかでもデルフィニジン‐3‐ルチノシド及びシアニジン‐3‐ルチノシドは、TRPV4作動薬の存在下で、ヒトTRPV4遺伝子導入によりTRPV4が機能的に発現している形質転換細胞(TRPV4発現細胞)と接触させた場合、TRPV4作動薬による細胞内の陽イオン(Ca2+)量の流入を抑制するという、TRPV4の活性を抑制する作用を有する。また、カシス抽出物により、睡眠の質、特に睡眠潜時の有意な短縮が認められる。
従って、デルフィニジン‐3‐ルチノシド、シアニジン‐3‐ルチノシド又はその組み合わせは、睡眠の質改善剤、TRPV4活性抑制剤(以下、「睡眠の質改善剤等」と称す)となり得、睡眠の質の改善のため、TRPV4の活性抑制のために使用することができ、また、睡眠の質改善剤等を製造するために使用することができる。
ここで、「使用」は、ヒト又は非ヒト動物における使用であり、また治療的使用であっても非治療的使用であってもよい。「非治療的」とは、医療行為を含まない概念、すなわち人間を手術、治療又は診断する方法を含まない概念、より具体的には医師又は医師の指示を受けた者が人間に対して手術、治療又は診断を実施する方法を含まない概念である。
また、TRPV4の活性抑制を指標として、睡眠の質を改善する素材を簡易に評価又は探索することができる。
本発明において「睡眠の質の改善」とは、睡眠を質的に改善することを意味し、好ましくは、ノンレム睡眠時間の睡眠時間全体に占める割合の増加、中途又は早期覚醒の改善、睡眠潜時の短縮のうち1以上、好ましくは2以上の現象が観察されることを指す。
「改善」とは、症状若しくは状態の好転、症状若しくは状態の悪化の防止若しくは遅延、又は症状若しくは状態の進行の逆転、防止若しくは遅延をいう。
睡眠の質を評価する手法としては、実験動物を用いた場合、実験動物の頭部頭蓋骨上に脳波、筋電を測定する電極を装着して有線ケーブルを用いて測定する手法、体内に送信器を埋め込んで生体内の生理指標の情報を無線で飛ばすテレメトリーシステムを用いる手法等が挙げられる。一方で、ヒトの場合、脳波計等を用いた非侵襲的な測定による客観的な評価方法や、視覚的評価スケール(VAS)やOSA睡眠調査票等のアンケートによる主観的な評価方法が挙げられる。
睡眠判定は、測定脳波の結果から実施する。実験動物であるラット等の齧歯類の場合、覚醒、レム睡眠、ノンレム睡眠に判別される。一方で、ヒトの場合は、覚醒、レム睡眠、ノンレム睡眠(浅いノンレム睡眠(Stage N1, N2)、深いノンレム睡眠(Stage N3))に判別される。睡眠判別結果から、各睡眠量や睡眠持続時間、睡眠回数を算出し、睡眠の質を評価することができる。
本発明において「TRPV4」とは、「Transient receptor potential cation channel subfamily V member 4」を意味する。TRPV4は、ヒトにおいてTRPV4遺伝子によってコードされているタンパク質である。
「TRPV4の活性抑制」とは、受容体であるTRPV4の活性を抑制することを指す。具体的には、TRPV4刺激物質がTRPV4に結合することによって発現する活性、例えばイオン流束の調節能(例えば、細胞外から細胞内へのカルシウムイオン、ナトリウムイオン等の陽イオンの輸送能等)、膜電位の調節能(例えば、電流の発生能等)を抑制又は阻害することを意味する。
本発明の睡眠の質改善剤等は、それ自体、睡眠の質の改善、TRPV4の活性抑制の各作用効果を発揮する、ヒト若しくは動物用の医薬品、医薬部外品、食品となり、或いは当該医薬品、医薬部外品、食品に配合して使用される素材又は製剤となり得る。
当該食品には、睡眠の質の改善、TRPV4の活性抑制効果をコンセプトとし、必要に応じてその旨を表示した機能性表示食品、特定保健用食品、サプリメント等が包含される。これらの食品は機能表示が許可された食品であるため、一般の食品と区別することができる。
当該医薬品(医薬部外品も含む)は、デルフィニジン‐3‐ルチノシド、シアニジン‐3‐ルチノシド又はその組み合わせを、睡眠の質の改善、TRPV4の活性抑制のための有効成分として含有する。さらに、該医薬品は、該有効成分の機能が失われない限りにおいて、必要に応じて薬学的に許容される担体、又は他の有効成分、薬理成分等を含有していてもよい。
当該医薬品(医薬部外品も含む)の剤形としては、例えば、錠剤(チュアブル錠等を含む)、カプセル剤、顆粒剤、散剤、トローチ剤等の経口固形製剤、内服液剤、シロップ剤等の経口液状製剤、注射剤、坐剤、吸入薬、経皮吸収剤、外用剤等の非経口投与製剤が挙げられる。好ましい投与形態は経口投与である、
これらの剤形の製剤は、デルフィニジン‐3‐ルチノシド、シアニジン‐3‐ルチノシド又はその組み合わせを、薬学的に許容される担体(例えば賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、嬌味剤、香料、被膜剤、希釈剤等)、他の薬効成分等と適宜組み合わせて、定法に従って調製することができる。
当該食品は、デルフィニジン‐3‐ルチノシド、シアニジン‐3‐ルチノシド又はその組み合わせを、睡眠の質の改善、TRPV4の活性抑制のための有効成分として含有する。食品の形態は、固形、半固形又は液状(例えば飲料)であり得る。該食品の例としては、例えば、清涼飲料水、茶系飲料、コーヒー飲料、果汁飲料、炭酸飲料、ゼリー状飲料、ニアウォーター等の飲料、ゼリー、ウエハース、ビスケット、パン、麺、ソーセージ等の飲食品や栄養食等の各種食品、ならびにそれらの原料が挙げられる。あるいは、該食品は、錠剤、カプセル、顆粒、粉末、液剤、シロップ等の経口投与製剤の形態を有するサプリメントであってもよい。
当該食品は、デルフィニジン‐3‐ルチノシド、シアニジン‐3‐ルチノシド又はその組み合わせを、任意の食品材料、もしくは他の有効成分、又は食品に許容される添加物(例えば、溶剤、軟化剤、油、乳化剤、防腐剤、酸味料、甘味料、苦味料、pH調整剤、安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、保湿剤、増粘剤、固着剤、分散剤、流動性改善剤、湿潤剤、香科、調味料、風味調整剤)等と適宜組み合わせて、定法に従って調製することができる。
上記医薬品、医薬部外品又は食品におけるデルフィニジン‐3‐ルチノシド、シアニジン‐3‐ルチノシド又はその組み合わせの含有量は、それらの剤形や形態により異なり得る。例えば、食品若しくは経口投与製剤で且つ錠剤、顆粒剤、丸剤、散剤、グミ剤等の固形の場合は、デルフィニジン‐3‐ルチノシド及びシアニジン‐3‐ルチノシドの合計量で、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。
食品若しくは経口投与製剤で且つ液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤、ゼリー剤等の液体の場合は、デルフィニジン‐3‐ルチノシド及びシアニジン‐3‐ルチノシドの合計量で、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上がさらに好ましく、0.05質量%以上がさらに好ましい。
デルフィニジン‐3‐ルチノシド、シアニジン‐3‐ルチノシド又はその組み合わせの投与量及び投与計画は、対象の種、体重、性別、年齢、状態、又はその他の要因に従って当業者により適宜決定することができる。
デルフィニジン‐3‐ルチノシド、シアニジン‐3‐ルチノシド又はその組み合わせの投与量は、デルフィニジン‐3‐ルチノシド及びシアニジン‐3‐ルチノシドの合計量で、例えば、成人1人(60kg)に対して1日あたり、好ましくは1〜150mg、より好ましくは10〜100mg、更に好ましくは25〜50mgである。
本発明では、上記の用量を、例えば、1日に1回、2回又は3回以上に分け、投与又は摂取することが好ましい。投与又は摂取期間は、特に限定されないが、好ましくは継続的であり、より好ましくは1週間以上、さらに好ましくは2週間以上である。
投与又は摂取のタイミングは、夕食後から就寝までの間が好ましく、睡眠を希望する時間の30分間〜3時間前がより好ましく、1時間〜2時間前がより好ましい。
本発明の睡眠の質改善剤等を投与又は摂取させる対象者としては、睡眠の質の改善を必要とする或いは望むヒト又は非ヒト動物が好ましい。より好ましくは睡眠の質が低下しているヒト又は非ヒト動物、健常であるがより質の良い睡眠を必要とするヒト又は非ヒト動物、あるいは、睡眠障害を有するヒト又は非ヒト動物への摂取又は投与が有効である。
本発明の睡眠の質改善剤の評価又は探索方法は、(a)TRPV4発現細胞に被験物質を接触させる工程、(b)前記TRPV4発現細胞において、TRPV4刺激物質がTRPV4に結合することによって発現する活性を測定する工程、及び(c)前記(b)の測定結果に基づいて、TRPV4の活性を抑制又は阻害する被験物質を睡眠の質改善剤として選択又は評価する工程を有する。
工程(a)では、TRPV4発現細胞に被験物質を接触させる。TRPV4発現細胞は、例えば、TRPV4を発現する天然の細胞、TRPV4を発現するように遺伝的に操作された組換え細胞、又はそれらの培養物等が挙げられる。当該組換え細胞は、ヒトTRPV4をコードする遺伝子を組み込んだベクターを用いて細胞を形質転換することで作製することができる。
被験物質は、特に制限されず、公知化合物や新規化合物であってよい。例えば、核酸、糖質、脂質、タンパク質、ペプチド、有機低分子化合物、コンビナトリアルケミストリー技術を用いて作製された化合物ライブラリー、固相合成やファージディスプレイ法により作製されたランダムペプチドライブラリー、微生物、動植物、海洋生物等由来の天然成分等が挙げられる。
TRPV4発現細胞への被験物質の接触は、培養培地を除いた後、緩衝液中で行われるが、公知のものを使用すればよい。
工程(b)におけるTRPV4刺激物質がTRPV4に結合することによって発現する活性の測定は、当該分野で知られている任意の方法を用いることができ、例えば、前述したような、イオン流束の調節能(例えば、細胞外から細胞内へのカルシウムイオン、ナトリウムイオン等の陽イオンの輸送能等)、膜電位の調節能(例えば、電流の発生能等)を測定する方法が挙げられる。なかでも、細胞内へのカルシウムイオン流入活性を測定するカルシウムイメージング法が好ましい。
TRPV4刺激物質としては、TRPV4作動薬が挙げられる。
工程(c)では、前記工程(b)の測定結果に基づいて、TRPV4の活性を抑制又は阻害する被験物質が睡眠の質改善剤として選択又は評価される。例えば、細胞内へのカルシウムイオン流入活性を測定する方法では、TRPV4作動薬及び被験物質添加群と、TRPV4作動薬及び被験物質非添加群(対照群)との間で比較して、細胞内へのカルシウムイオン流入を、好ましくは90%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下に低下させた被験物質を睡眠の質改善剤として選択又は評価することができる。
<実施例1 TRPV4活性抑制が睡眠の質に及ぼす影響検討>
(1)マウス頭部への電極手術
雄性マウス(C57BL/6J, SLC Inc.)を用いた。マウスは、室温23±2℃、湿度55±10%、12時間の明暗サイクル下で飼育した。飼育期間中は、CE−2固形食の自由摂食、水の自由飲水の条件下で飼育した。脳波、筋電測定のための電極装着手術方法は以下のように実施した。まず、電極本体からは、脳波取得の為に2本の電線が伸びており、ステンレス製ビスを用いて、それを頭蓋骨上に固定した。また、電極本体から伸びた筋電図取得用の2本の電線を左右の僧帽筋上に留置した。その後、電極本体を歯科用セメントで頭蓋骨上に固定留置した。手術後、マウスは通常の飼育ケージにおいて、通常食の自由摂食下、水道水の自由飲水下、7日間以上の安静にさせた。当該試験では、マウス同士の接触により手術部が損傷される可能性があることから、飼育全期間で個別飼育を行った。
(2)TRPV4作動薬、拮抗薬の経口投与が睡眠の質に与える影響検討
マウスの頭部に脳波、筋電を測定する為の電極を装着する手術を行った後、手術後の安静期間を設けた。術後安静期間を経た後、マウスを脳波測定専用のケージに移し、環境変化に対する72時間以上の馴化を行った。脳波測定専用ケージ内で馴化させた後、脳波、筋電データの測定を開始した。明期に入って4時間後である10:00に、経口ゾンデを用いて、4mL/kg体重の投与量で、後述の薬剤をマウスの胃内へ直接投与した。TRPV4作動薬であるGSK1016790aは1μmol/kg体重、TRPV4拮抗薬であるHC067047は5mg/kg体重となるように、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶かしたものを滅菌精製水で希釈して、DMSOを終濃度1体積%となるように調製した。対照投与群では、DMSOを終濃度1%となるように滅菌精製水で希釈して調製した。経口投与後は、少なくとも12時間以上のデータを取得した。当試験においては、クロスオーバー法で実施し、最低1週間のウォッシュアウト期間を設けた。
得られた脳波と筋電の結果から、10秒間のデータを1エポックとし、各エポックの睡眠/覚醒の状態を判別した。睡眠/覚醒の状態の判別には、脳波記録ソフトウェア「SleepSign」(キッセイコムテック社製)を使用し、脳波と筋電位の周波数成分、及び、波形から、各エポックを覚醒、ノンレム(NREM)睡眠、レム(REM)睡眠のいずれかに自動判定した。得られた判定結果は、最終的に研究員自身が目視で確認し、必要に応じて修正を行った。経口投与前1時間から経口投与直後1時間の脳波と筋電のデータを解析し、1時間あたりの睡眠・覚醒時間の割合(%)、及び、投与後60秒以上のNREM睡眠が出現するまでの時間をNREM睡眠潜時と定義し(Neuroscience,153(4)、875-880、2008)、算出した。
測定結果は、平均値 ± 標準誤差で表した。統計学的検定は、分散分析(One-Way ANOVA)を実施した後、Student―Newman―Kuels testを実施し、p < 0.05を有意差ありとした。
経口投与直後1時間の解析結果を表1及び表2に示す(表中、GSK、HCはそれぞれGSK1016790a、HC067047を示す)。
Figure 2021169441
Figure 2021169441
その結果、TRPV4作動薬の経口投与により、ノンレム睡眠割合の減少、覚醒割合の増加、ノンレム睡眠潜時の延長が認められるが、TRPV4拮抗薬を同時に経口投与することで、ノンレム睡眠割合の減少、覚醒割合の増加、ノンレム睡眠潜時の延長が有意に抑制された。尚、経口投与直前1時間の解析結果については、各測定項目に群間差は認められなかった。以上の結果から、TRPV4の活性化は睡眠の質を悪化させること、逆にTRPV4の活性化を抑制することで、睡眠の質を改善できることが明らかとなった。
<実施例2 カシスアントシアニンの精製>
(1)カシス抽出物の粗分画
市販品のカシス抽出物(カシスポリフェノールAC10、総アントシアニン量11.8wt%、(株)明治フードマテリア社製)を用いて、アントシアニン類とそれ以外に分画した。文献(ポリフェノール:薬用植物及び食品の機能性成分、シーエムシー出版、250−251、2012)を参考に、合成吸着樹脂による分画を行った。その結果、アントシアニン類含有画分(EtOH溶出画分、HPLC分析クロマトにおける4つのピークがそれらに該当と判断、42.2wt%)と、それより高極性の画分(H2O溶出画分、60.0wt%)とに分画された(図1参照)。
(2)EtOH画分からのアントシアニン精製
EtOH画分(アントシアニン類含有画分)より、アントシアニン類の精製を行った。分析HPLCの条件を参考に、ODS分取HPLCによる分画を行った。その結果、4種のアントシアニン類精製画分とそれ以外の画分の計8画分(Fr.E−1:14.9wt%、Fr.E−2:1.91wt%、Fr.E−3:1.91wt%、Fr.E−4:6.41wt%、Fr.E−5:1.10wt%、Fr.E−6:4.65wt%、Fr.E−7:0.44wt%、Fr.E−8:6.27wt%)に分画された(図2参照)。
(3)精製アントシアニン類の同定
分取HPLCで4つの主要ピークをそれぞれ分離精製したので、次にそれらの同定を行った。文献(J Agric Food Chem, 50(11), 3228−3231, 2002)のHPLC分析クロマトと比較すると、Fr.E−3がデルフィニジン−3−グルコシド(1,D3G),Fr.E−4がデルフィニジン−3−ルチノシド(2、D3R)、Fr.E−5がシアニジン−3−グルコシド(3、C3G)、Fr.E−6がシアニジン−3−ルチノシド(4,C3R)の可能性が高いと考えられた。そこで、それぞれの1H、13C−NMRを測定し、各シグナルの帰属及び、文献(J Sep Sci, 40(17), 3506−3512, 2017)との比較をおこなったところ、推定通りであることが確認された(図3参照)。
<実施例3 TRPV4活性抑制作用の評価>
(1)ヒトTRPV4遺伝子発現ベクターの作製
ヒト十二指腸由来細胞(Hutu-80細胞、American Type Culture Collectionより購入)から抽出したtotalRNAを逆転写して得られたcDNAを鋳型にして、公開されているヒトTRPV4遺伝子配列を参考に合成した、下記に示す塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセットを用いて、下記の条件下でポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。
<プライマーセット>
フォワードプライマー;5’−CACCATGGCGGATTCCAGCGAAGGCCC−3’(配列番号1)
リバースプライマー;5’−CTAGAGCGGGGCGTCATCAGTCC−3’(配列番号2)
<PCR条件>
a)PCR溶液組成
cDNA(Template) 15μL
5x PrimeStar GXL Buffer 10μL
dNTPs mixture(2.5mM) 4μL
PrimeStar GXL DNA Polymerase(タカラバイオ) 1μL
Forward Primer(10μM) 1μL
Reverse Primer(10μM) 1μL
Water 18μL
b)温度とサイクル条件
95℃ 2min

98℃ 10sec 33cycles
70℃ 2min
得られたPCR産物をHigh Pure PCR Product Purification Kit(ロッシュ社製)用いて精製した。精製したPCR産物と、pcDNA3.1 Directional TOPO Expression Kit(インビトロジェン社製)を用いて、ヒトTRPV4遺伝子発現ベクターを作製した。
(2)ヒトTRPV4発現細胞の作製
10%牛胎児血清を含むDMEM/F12培地(インビトロジェン社製)を用いて、ヒト子宮頸癌由来細胞株(HeLa細胞、American Type Culture Collectionより購入)の培養を行った。HeLa細胞を10cm細胞培養用ディッシュに2×105cells/ディッシュで播種した。培養2日後、前記(1)で作製したヒトTRPV4遺伝子発現用ベクター(7.7μg)をTransIT-HeLaMONSTER Transfection Kit(Mirus社製)を用いて細胞にトランスフェクションし、1日培養した。
Detachin(Genlantis社製)で細胞をはがし96well Optical bottom plate(Nunc社製)に10%牛胎児血清を含むDMEM/F12培地で2.0×104cells/90μL/wellの細胞密度で播き、さらに1日培養した。
(3)細胞内カルシウムイオン流入活性の測定
細胞内カルシウムイオン流入活性の測定は、Calcium Kit II- fluo 4(商品名、DOJINDO)を用いて行った。Fluo4-AMを含有したLoading bufferを前記(2)で作製したヒトTRPV4発現細胞に90μL/well添加し、37℃で1時間インキュベートした。その後、37℃で蛍光プレートリーダー(FDSS/μCELL 創薬スクリーニング支援システムC13299、浜松ホトニクス社製)を用いて蛍光強度(励起波長:488nm、蛍光波長:524nm)を2秒毎に測定した。測定開始30秒後にTRPV4作動薬であるGSK1016790a(Sigma社製)と検体として前記製造例で調製したカシス抽出物、またはカシスアントシアニンであるD3R、C3R、D3G、C3Gをそれぞれ測定キットの希釈bufferで希釈し、それらの混合溶液(添加直前に混合)を20μL/well添加し、300秒まで2秒毎に蛍光強度変化を測定した。なお、GSK1016790aは終濃度10nMとなるように添加し、各カシスアントシアニンの評価濃度は、カシス抽出物中の含有率を基に設定した。
検体のTRPV4活性は、TRPV4作動薬であるGSK1016790aの処理によるカルシウムイオン流入率を100%として、次式により算出した。
(数式)
カルシウムイオン流入率(%)=[(F300/F0)−(F300C2/F0C2)]/[(F300C1/F0C1)−(F300C2/F0C2)]×100
F300:測定開始300秒後のGSK1016790aと検体を添加したウェルの蛍光強度
F300C1:測定開始300秒後のGSK1016790aと溶媒を添加したウェルの蛍光強度
F300C2:測定開始300秒後の溶媒のみを添加したウェルの蛍光強度
F0:測定開始直後のF300と同じウェルの蛍光強度
F0C1:測定開始直後のF300C1と同じウェルの蛍光強度
F0C2:測定開始直後の溶媒のみを添加したウェルの蛍光強度
検体を添加した場合のカルシウムイオン流入率を、GSK1016790a+溶媒添加時と比較しDunnett's testを用いて検定した。カシス抽出物、またはカシスアントシアニンであるD3R、C3R、D3G、C3Gを添加した場合の結果を、平均値±標準誤差として表に示す(表中、GSK1016790a、カシス抽出物、カシス抽出物エタノール画分、カシス抽出物水画分、カシスアントシアニン4種の混合物(D3R:45.6wt%、C3R:33.0wt%、D3G:13.6wt%、C3G:7.8wt%)は、それぞれGSK、CaE、EtOH、H2O、MIXと略記)。
Figure 2021169441
表3より、カシス抽出物及びカシス抽出物のエタノール画分はカルシウムイオン流入を有意に低下させた。また、エタノール画分の主要成分であるカシスアントシアニン4種の混合物(MIX)は、カルシウムイオン流入を有意に低下させ、特にD3Rはカルシウムイオン流入を有意に低下させ、C3Rにはカルシウムイオン流入を低下させる傾向が認められた。
以上の結果から、カシス抽出物又はD3R、C3Rを適用することにより、TRPV4活性が抑制される。これは、カシス抽出物又はD3R、C3Rが、TRPV4活性の抑制に有効であることを示している。さらに、TRPV4活性を抑制する作用を有するカシス抽出物又はD3R、C3Rは、睡眠の質の改善に有効であることを示している。
<実施例4 カシス抽出物の睡眠に対するヒト有効性評価>
(1)対象者
40才代〜50才代の健常女性17名で、試験開始時における対象者の平均年齢は51.5±1.4歳であった。
(2)試験品の作製
D3R及びC3Rを含む市販品のカシス抽出物(カシスポリフェノールAC10、総アントシアニン量11.8wt%、D3R5.4wt%、C3R3.8wt%、(株)明治フードマテリア社製)を糖衣粒にし、糖衣粒1粒当たりカシス抽出物が100mgになるよう作製した。カシス抽出物不含糖衣粒として、カシス抽出物の代わりに同量の糖を充填したものを作製した。
(3)試験形態
2群クロスオーバー試験(ウォッシュアウト期間:28日以上)
(i)処理群(カシス抽出物含有粒、4粒/日、カシス抽出物400mg含有)
(ii)対照群(カシス抽出物不含粒、4粒/日)
(4)糖衣粒の摂取方法
各粒(2粒/回)を100mLのミネラルウォーターと一緒に、1日2回(朝食後30分以内、及び就寝60〜30分前)で28日間摂取した。
(5)睡眠の評価方法
各粒の摂取前後(各1日)の睡眠の質を、活動量計(KSN-200、キッセイコムテック社製)、及び睡眠―覚醒リズム研究用プログラム(Sleep Sign Act、キッセイコムテック社製)を用いて評価した。
なお、試験期間中は、下記の点に注意して試験を行い、活動量測定日にはアルコールの摂取を禁止した。
(注意事項)
(i)普段通りの生活スタイルを維持するよう心がける。
(ii)普段通りの生活スタイルを維持するよう心がける。
(iii)運動習慣を変えない。
(iv)暴飲暴食や極端な減食(ダイエット)は控える。
(v)新たなサプリメントの摂取を始めない。
(6)統計学的検定
得られた結果は、平均値±標準誤差で示し、群間の平均値の比較にはPaired-t検定を用いた。
試験品摂取前後において、睡眠の質の指標である睡眠潜時(入床後、寝つきまでにかかる時間)について解析した結果、試験品摂取後において対照群では18.9±4.2(分)であるのに対して、処理群では9.8±1.8(分)と睡眠潜時が有意に短縮した(P<0.05)。一方で、試験品摂取前の睡眠潜時は、対照群で16.2±2.7(分)、処理群で18.9±4.0(分)と、群間差は認められなかった。
以上の結果から、カシス抽出物は睡眠の質の改善、特に入眠促進効果を有し、これを摂取することにより睡眠の質を改善できることが明らかとなった。

Claims (9)

  1. デルフィニジン‐3‐ルチノシド、シアニジン‐3‐ルチノシド又はその組み合わせを有効成分とする睡眠の質改善剤。
  2. 睡眠の質の改善がノンレム睡眠時間の睡眠時間全体に占める割合の増加、中途若しくは早期覚醒の改善、又は睡眠潜時の短縮である請求項1記載の睡眠の質改善剤。
  3. デルフィニジン‐3‐ルチノシド、シアニジン‐3‐ルチノシド又はその組み合わせを有効成分とするTRPV4活性抑制剤。
  4. デルフィニジン‐3‐ルチノシド及びシアニジン‐3‐ルチノシドがカシス抽出物に由来する請求項1又は2記載の睡眠の質改善剤、又は請求項3記載のTRPV4活性抑制剤。
  5. デルフィニジン‐3‐ルチノシド、シアニジン‐3‐ルチノシド又はその組み合わせを有効成分とする睡眠の質改善用食品。
  6. 睡眠の質の改善がノンレム睡眠時間の睡眠時間全体に占める割合の増加、中途若しくは早期覚醒の改善、又は睡眠潜時の短縮である請求項5記載の睡眠の質改善用食品。
  7. デルフィニジン‐3‐ルチノシド、シアニジン‐3‐ルチノシド又はその組み合わせを有効成分とするTRPV4活性抑制用食品。
  8. デルフィニジン‐3‐ルチノシド及びシアニジン‐3‐ルチノシドがカシス抽出物に由来する請求項5又は6記載の睡眠の質改善用食品、又は請求項7記載のTRPV4活性抑制用食品。
  9. 下記の工程を含む、睡眠の質改善剤の評価又は探索方法。
    (a)TRPV4発現細胞に被験物質を接触させる工程
    (b)前記TRPV4発現細胞において、TRPV4刺激物質がTRPV4に結合することによって発現する活性を測定する工程
    (c)前記(b)の測定結果に基づいて、TRPV4の活性を抑制又は阻害する被験物質を睡眠の質改善剤として選択又は評価する工程
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