JP7101372B2 - イミダゾールジペプチドを含む剤 - Google Patents
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Description
[2] 神経心理機能が、アルツハイマー病または加齢に関連したものである、[1]に記載の剤。
[3] イミダゾールジペプチドおよびその代謝産物からなる群より選択される少なくとも一を含有する、神経心理機能の改善による、抗老化剤。
[4] イミダゾールジペプチドおよびその代謝産物からなる群より選択される少なくとも一を含有する、
トランスポーター遺伝子である、SLC23A2、SLC43A2、SLC29A3、SLC35C1、SLC25A33、SLC25A23、SLC6A12およびSLC6A13;
ケモカイン遺伝子である、CXCL12およびCCL17;
老化関連遺伝子である、TSPOおよびP2RY1;
神経系遺伝子である、CAMK1;
ミトコンドリア系遺伝子である、ACO2、ATP7A、POLG、IDH3G、UCP2、BCKDHAおよびTAP2;並びに
抗老化遺伝子である、SMARCD1およびSIRT6
からなる群より選択される少なくとも一の遺伝子の発現を変動させるための剤。
[5] 抗炎症作用を有する、[1]に記載の剤。
[6] イミダゾールジペプチドおよびその代謝産物からなる群より選択される少なくとも一を含有する、IP-10(CXCL10)、IL-2、IL-5、IL-7、IL-8(CXCL8)、IL-13、G-CSFおよびMCP-1(CCL2)からなる群より選択される少なくとも一のサイトカインの血液中の濃度を制御するための剤。
[7] 血糖値の上昇抑制作用または低減作用を有する、[1]に記載の剤。
[8] 血中のインスリン濃度の上昇抑制作用または低減作用を有する、[1]に記載の剤。
[9] 一日量として200mg以上のイミダゾールジペプチドおよびその代謝産物からなる群より選択される少なくとも一を摂取させるための、[1]~8のいずれか1項に記載の剤。
[10] 一日量として200mg以上の、動物肉由来のイミダゾールジペプチドの少なくとも一を含む、栄養組成物。
[11] イミダゾールジペプチドの少なくとも一が鶏肉由来である、[10]に記載の栄養組成物。
[12] クレアチンおよび核酸をさらに含む、[1]~[11]のいずれか1項に記載の剤または栄養組成物。
[13] 高齢者または軽度の気分障害を有する者を対象とする、[1]~[12]のいずれか1項に記載の剤または栄養組成物。
[14] イミダゾールジペプチドおよびその代謝産物からなる群より選択される少なくとも一を含有する、糖尿病および/またはアルツハイマー病の処置のための剤。
[15] イミダゾールジペプチドおよびその代謝産物からなる群より選択される少なくとも一を含む栄養組成物を、神経心理機能の改善が望ましい対象に摂取させる工程を含む、食餌方法。
[16] 対象の有するカルノシン分解酵素(CNDP1)活性に基づく、対象の神経心理機能の判定方法。
[17] 対象の有するCNDP1活性に基づく、[1]~[14]のいずれか1項に記載の剤または栄養組成物を対象に摂取させることによる神経心理機能の改善効果の予測方法。
[18] 神経心理機能の改善または改悪を検出するための
トランスポーター遺伝子である、SLC23A2、SLC43A2、SLC29A3、SLC35C1、SLC25A33、SLC25A23、SLC6A12およびSLC6A13;
ケモカイン遺伝子である、CXCL12およびCCL17;
老化関連遺伝子である、TSPOおよびP2RY1;
神経系遺伝子である、CAMK1;
ミトコンドリア系遺伝子である、ACO2、ATP7A、POLG、IDH3G、UCP2、BCKDHAおよびTAP2;並びに
抗老化遺伝子である、SMARCD1およびSIRT6
からなる群より選択される少なくとも一の遺伝子の
発現解析することによる、方法。
[19] 配列番号1~20のいずれかの塩基配列の全部または一部、および
配列番号1~20のいずれかの塩基配列に相補的な塩基配列の全部または一部
からなる群より選択される少なくとも一の塩基配列からなる核酸含む、神経心理機能の改善または改悪を検出するためのキット。
[20] 式IまたはIIで表される化合物を含む、脳の機能老化および/または認知症の処置のための、医薬組成物。
R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、HまたはC1-6アルキルであり、
Xは、Hまたは-COR4であり、このときR4はHまたはC1-6アルキルである。)
[21] 請求項20に定義された式Iまたは式IIで表される化合物をリード化合物として用いる、脳の機能老化および/または認知症の処置のための有効成分を探索する方法。
本発明は、イミダゾールジペプチドおよびその代謝産物からなる群より選択される少なくとも一を有効成分とする剤に関する。本明細書でイミダゾールジペプチドというときは、特に記載した場合を除き、イミダゾール環を有するアミノ酸と別のアミノ酸とが結合してなるジペプチドをいう。
本発明の剤は、神経心理機能の改善のために用いることができる。神経心理機能の改善には、抗うつ(心理機能の改善)および認知機能の改善が含まれる。また、神経心理機能の改善には、神経心理機能に関連した、脳の萎縮の抑制、脳の機能低下の抑制(海馬との機能連結の強化)、および炎症によるニューロンの損傷の改善が含まれる。神経心理機能は、アルツハイマー病または加齢に関連したものであってもよい。神経心理機能の改善にはまた、脳の機能老化および/または認知症の処置が含まれる。
本発明の剤は特に、SMARCD1およびSIRT6からなる群より選択される少なくとも一、好ましくは両方のケモカインの発現を変動させるために用いることができる。発現の変動は、発現を増加させせることと発現を低下させることとを含む。
本発明で「剤」というときは、特に記載した場合を除き、有効成分そのものである場合と、有効成分とそれ以外の成分とを含む場合とがあるが、イミダゾールジペプチドおよびその代謝産物からなる群より選択される少なくとも一を含有する既存の食品、例えば鶏肉自体は含まない。
本発明の剤、医薬組成物または栄養組成物は、種々の公知の技術を用いて製造することができる。有効成分を所定の濃度になるように調整する工程は、製造工程の種々の段階で適用できる。当業者であれば、有効成分の溶解性、安定性、揮発性等を考慮して、本発明の剤のための製造工程を、適宜設計しうる。本発明者の検討によると、アンセリンおよびカルノシンは、常温では十分に安定であり、また180℃以下の調理条件であれば十分に安定であることが確認されている。さらに、溶液状態で少なくとも2年9月は安定に保存できることが確認されている。
本発明はまた、神経心理機能の改善または改悪を検出するための、トランスポーター遺伝子である、SLC23A2、SLC43A2、SLC29A3、SLC35C1、SLC25A33、SLC25A23、SLC6A12およびSLC6A13;ケモカイン遺伝子である、CXCL12およびCCL17;老化関連遺伝子である、TSPOおよびP2RY1;神経系遺伝子である、CAMK1;ミトコンドリア系遺伝子である、ACO2、ATP7A、POLG、IDH3G、UCP2、BCKDHAおよびTAP2;並びに抗老化遺伝子である、SMARCD1およびSIRT6からなる群より選択される少なくとも一の遺伝子の発現解析することによる、方法、ならびに配列番号1~20のいずれかの塩基配列の全部または一部、および配列番号1~20のいずれかの塩基配列に相補的な塩基配列の全部または一部からなる群より選択される少なくとも一の塩基配列からなる核酸含む、神経心理機能の改善または改悪を検出するためのキットも提供する。
本発明により、上記イミダゾールジペプチドおよびその代謝産物をリード化合物として、神経心理機能の改善、特に脳の機能老化および/または認知症の処置のための有効成分等を探索する方法(スクリーニング方法)を提供する。リード化合物とは、一般に、薬理活性のプロファイルが明らかであり、これを化学的に改変することで活性の向上、毒性の減弱が期待できる化合物をいう。イミダゾールジペプチドおよびその代謝産物は、上述のように神経心理機能の改善、特に脳の機能老化および/または認知症の処置という薬理活性を有し、これをさらに化学的に改変することで活性の向上、毒性の減弱が期待できる。
鶏肉由来イミダゾールジペプチド(カルノシン、アンセリンとして1日1000mg)を含む試験食を、3か月間、被験者(40歳以上の健常人ボランティア男女28名を2群:試験食群およびプラセボ食群に分けた)に摂取させ、その前・中・後において、脳機能の変化等について評価した。試験食とプラセボ食の配合(一日量として)を下表に示す。
摂取期間の前および後に、BDI調査票(http://www.chibatc.co.jp/catalogue/04/1/67.html)により、うつ傾向を評価した。なおBDI調査票による点数は、高い方がうつ傾向にあることを示す。
摂取期間の前および後に、ADAS-cog(Alzheimer's Disease Assessment Scale-cognitive subscale)により、認知機能を評価した。
3次元T1強調画像による脳構造解析、安静時機能的MRIによる機能連結解析を行った。試験食群15名、プラセボ食群13名のベースラインおよび3ヶ月後における構造変化の縦断解析においては、灰白質において右下前頭回と左下側頭回(図3-1)、白質において右後部帯状回に試験食群がプラセボ食群よりも萎縮の進行が抑制されていることがわかった(図3-2)。
試験食群については13名分(2名分は調製不可)、プラセボ群については13名全員分の被験者血液サンプル(初回検査時と中間検査時のもの)を用いて、パクスジーンRNA採血管(日本ベクトン・ディキンソン、東京)を用いて採血後、PAXgene Blood RNA kit(Qiagen)を用いて高品質RNAを調製し、マイクロアレイにより、遺伝子発現の変化を解析した。
マイクロアレイはAgilent社(CA, USA)のWhole Human Genom オリゴDNAマイクロアレイ(4×44K) v2を用いて行った。
(1) ラベリング
まず、total RNAを被験者の血液サンプルからPAXgene blood RNA Kit(Qiagen)を用いて抽出し、各200 ngずつにAgilent Low-Input QuickAmp Labeling Kit, one-colorを用いてラベリングした。はじめに予め準備したOne-Color Spike Mix stock solution 2 μLに200 ngのtotal RNA 2.5 μLを加えた。次に、T7 Promoter Primerを0.8 μL加え、ヒートブロックで65℃ 10分間インキュベートし、その後5分間氷上で急冷した。さらに、予め調製したcDNA Master Mixを4.7 μL加え、2時間40℃のヒートブロックでインキュベートした後、70℃のヒートブロックに移しさらに15分間インキュベートした。その後、氷上で5分間急冷し、予め調製したTranscription Master Mix 6 μLを加えた。40℃のヒートブロックで遮光し2時間インキュベートした後、84 μLのnuclease-free waterを加え全量を100 μLとし、さらにBuffer RLTを350 μL加え、さらに、250 μLのエタノールを加えた。次に、RNeasyカラムに全量を添加し13000 rpmで4℃ 30秒間遠心し、buffer RPE 500 μLによって2回洗浄した後、最後に30 μLのRNase-free waterによって溶出した。
次に、Agilent社推奨のプロトコールで、ハイブリダイゼーションを行った。まず、先程溶出したRNAをFragmentation mix と混ぜ断片化し、60℃のヒートブロックで30分間インキュベートしてすぐに1分間氷冷した。次に、そのcRNA from Fragmentation Mix に2x GEx Hybridization Buffer HI-RPMを混合しHybridization mixを作製した。Hybridization mixをmicroarray slideにアプライした後、ハイブリダイゼーションチャンバーに設置し、ハイブリダイゼーションオーブンに設置し、65℃ 10 rpmにて17時間かけてハイブリダイズした。
予め準備したGene Expression Wash Bufferを用いてmicroarray slideの洗浄を行った。まず、ハイブリダイゼーションが終わる前に、3つの洗浄用ガラス容器のうち2つにGene Expression Wash Buffer 1を、残りの1つに37℃のGene Expression Wash Buffer 2をそれぞれ満たした。ハイブリダイゼーションが終わったハイブリダイゼーションチャンバーを1つ目の洗浄用ガラス容器中で分解しmicroarray slideを取り出し、2つ目の洗浄用ガラス容器中で洗浄した。3つ目の洗浄用ガラス容器でさらにmicroarray slideを洗浄後、microarray slideを水面からゆっくり引き上げることで乾燥させ、最後に専用のスキャナーに設置しmicroarray slideのスキャンを行った。
Agilent社Feature Extractionソフトウェアによってデータの数値化を行った。正規化は統計解析ソフトRを用い、quantile法にて行った。また、正規化後のシグナル値からZ-scoreとRatioを算出し、±2以上の変動があるもののみを抽出することで得られたデータを、アノテーションデータベース DAVID (http://david.abcc.ncifcrf.gov/)を用いて解析した。
まず、データベースに変動が確認された遺伝子のGenBank Accession Numberを入力した後、Functional Annotation Clusteringを行い遺伝子変動が起きている機能ごとにクラスタリングを行った。また、同様にDAVIDを用いて、KEGG (Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes)のパスウェイ解析を行った。
有意差レベルp<0.05に基づき、試験食の摂取により、プラセボ食群と比して、有意に変動している遺伝子を図5に示す。この遺伝子発現解析の結果から、血液細胞上に存在する各種のトランスポーター分子の発現が大きく変動していることがわかった。特に、イミダゾールジペプチドの摂取によりリンパ球上の膜表面にあるビタミンCトランスポーター(図5中、SLC23A2)の発現量が有意に上昇していることが見出された。また、ミトコンドリアのエネルギー代謝に関連する複数の遺伝子において、その発現が増加した(TCAサイクルの酵素であるACO2(アコニダーゼ)、IDH3G(イソクエン酸デヒドロゲナーゼ))。このような仕組みを利用してイミダゾールジペプチドは健康増進作用を発揮している可能性がある。
また、老化関連遺伝子の発現増強が認められた。試験食による老化制御が示唆される。
さらに、抗老化遺伝子の発現増強が認められた。試験食による抗老化が示唆される。
3か月の摂取期間において、食品摂取前、摂取中(開始6週間後)、期間終了直後の被験者からの血液サンプルについて、生化学検査、血球算定検査、血糖検査、凝固検査を行った。試験食の摂取により血糖値の低下傾向が観察された。それ以外の指標については摂取前後で変化が観察されなかったことから、試験食およびプラセボ食摂取の安全性が再確認された。
トランスジェニックマウス(アルツハイマー病モデルマウス)に高脂肪食(HFD: High Fat Diet)を与えて、脳機能低下を誘導した。マウスにカルノシン(L-ヒスチジン-β-アラニン)を投与し、カルノシンの影響を評価した。
上記と同じ、鶏肉由来イミダゾールジペプチドを含む試験食を、3か月間、被験者(40歳以上の健常人ボランティアを、試験食群およびプラセボ食群に分けた)に摂取させ、その前・中・後において、脳機能の変化等について評価した。試験食とプラセボ食の配合(一日量として)は、表1に記載したとおりである。第1次パイロット試験および第2次パイロット試験を行った。
第2次パイロット試験において、認知症の進行に伴い変化する脳血流を直接測るMRI撮像法を行った。
第1次および第2次パイロット試験の被験者のサブグループ解析(60歳以上)を対象に、前認知症段階からの進行および発症に伴って低下する論理記憶(遅延再生課題)について評価した。
(1) 鶏肉抽出物の製造
鶏肉由来イミダゾールジペプチドを含む試験食を次の工程により製造した。
鶏胸肉をミートグラインダーにて細切りし、鶏胸肉に肉の重量に対して1.5倍量の温水を加え、90℃で4時間加熱し、Brixが20%以上となるまで濃縮したのち、珪藻土ろ過および限外ろ過を行い、最終的にカルノシン+アンセリン濃度が約10%(w/v%)となるように調製した。
カルノシン1.0重量部、プラセンタエキス(粉末)0.2重量部および乳糖1.3重量部を混合して均一化した後、常法に準じてハードカプセルに充填し、内容量250 mgのカプセル剤(カルノシン100 mg/カプセル)を製造した。
マルトース、デキストリン、デンプン、ビタミンE含有直物油、イソマルトオリゴ糖、難消化性デキストリン、貝カルシウム、トレハロース、ショ糖エステル、ビタミンC、クエン酸、リン酸カルシウム、香料、シェラック、ナイアシン、ビタミンK、甘味料、塩化カリウム、ビタミンA、パントテン酸カルシウム、ビオチン、ピロリン酸鉄、ビタミンB類、ビタミンD、炭酸マグネシウム、葉酸とともに、1錠(300 mg)当たりカルノシン・アンセリン混合物60 mgを含む錠剤を製造した。
配列番号2: SLC43A2, NM#152346
配列番号3: SLC29A3, NM#018344
配列番号4: SLC35C1, NM#018389
配列番号5: SLC25A33, NM#032315
配列番号6: SLC22A23, NM#015482
配列番号7: CXCL12, NM#199168
配列番号8: CCL17, NM#002987
配列番号9: TSPO, NM#000714
配列番号10: P2RY1, NM#002563
配列番号11: CAMK1, NM#003656
配列番号12: ACO2, NM#001098
配列番号13: ATP7A, NM#000052
配列番号14: POLG, NM#002693
配列番号15: IDH3G, NM#004135
配列番号16: UCP2, NM#003355
配列番号17: BCKDHA, NM#000709
配列番号18: TAP2, NM#018833
配列番号19: SMARCD1, NM#139071
配列番号20: SIRT6, NM#016539
Claims (5)
- 40歳以上の者を対象とする、カルノシン、アンセリン、バレニンおよびホモカルノシンからなる群より選択される少なくとも一のイミダゾールジペプチドを含有する、前認知症段階の進行の停止または遅延のための、経口剤。
- ヒトを対象とする、カルノシン、アンセリン、バレニンおよびホモカルノシンからなる群より選択される少なくとも一のイミダゾールジペプチドを含有する、前認知症段階の進行の停止または遅延のための、経口剤(ただしセロトニン分泌の活性化により改善される疾患または対象の処置のための剤を除く。)。
- 40歳以上の者を対象とする、請求項2に記載の剤。
- カルノシン、アンセリン、バレニンおよびホモカルノシンからなる群より選択される少なくとも一のイミダゾールジペプチドを、鶏肉抽出物として含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の剤。
- カルノシン、アンセリン、バレニンおよびホモカルノシンからなる群より選択される少なくとも一のイミダゾールジペプチドをリード化合物として用いる、ヒトを対象とする、前認知症段階の進行の停止または遅延のための有効成分を探索する方法。
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