上記特許文献1においては積極的にしわが形成されるように構成されているが、一般的に、回転引き曲げ加工にはしわを無くすために、しわおさえが用いられ、特許文献2乃至4においてはワイパーが設けられている。このうち、特許文献2及び4に記載のワイパーは先端部が楔形状に形成されており、特許文献2では先端のエッジ部の摩耗が懸念され、その対策が講じられている。特に、ワイパーと曲げダイとの間には、パイプの曲げ開始線(通常は、曲げダイの回転軸を含む面が曲げダイの溝内面と交差する線)に沿って段差が存在するので、この段差に起因するしわを回避することはできない。これを最小減に抑えるにはワイパー先端部の楔形状の維持が必須であり、特に先端部を極力薄くする必要があるため脆弱であり、耐久性に乏しい。また、定期的な摩耗対策が不可避であり、頻繁な交換が必要とされている。しかも、曲げ加工の初期設定が困難であるので、熟練した技術が要求される。従って、大量の曲げ加工を連続して行うことは困難である。
これに対し、特許文献3に一実施形態として記載されたワイパーは、上下方向に三分割された曲げダイのうちの中央ダイ部の一部を構成し、断面円弧状の凹部が形成されており(特許文献3の段落〔0025〕乃至〔0030〕に記載)、これにより「エッジ構造を有する先端部を形成する必要がなく、曲げダイとの間に段差が生じる虞れもない」と記載されているが(同段落〔0032〕)、この間の説明は不明である。仮に、加工対象のパイプに対し、曲げ加工の開始から終了まで、パイプ軸に平行な三つの平面で分割された曲げダイのうち、上下のサイドダイ部が曲げ加工に寄与し、中央部がワイパーとして機能するという分離作動が行われるというのであれば、しわの発生を防止することが困難というだけでなく、曲げ加工自体も適切に行うことは困難であり、所望の曲げ加工を可能とする構成の開示は見当たらない。
一方、特許文献4には、異なる寸法の管を曲げるために、または、異なる形式の管曲げ作業のために、曲げダイ、クランプダイ及び圧力ダイが予め組立てられたダイセットを交換し得るように構成されているが、ワイパーダイは必ずしも必須とされていない(特許文献4の第11頁に記載)。従って、特許文献4においては、段替え機能に着目されているものの、しわの発生を適切に防止し得る機能を含めて交換可能なダイセットが開示されているものではなく、パイプの曲げ加工に好適なパイプ曲げ型ユニット及びこれを備えた装置が示唆されているものでもない。
そこで、本発明は、しわの発生を懸念することなくパイプに対する曲げ加工を適切に行い得るパイプ曲げ型ユニットを提供することを課題とする。また、当該曲げ加工に好適なパイプ曲げ型ユニットを備えたパイプ曲げ加工装置を提供することを課題とする。
更に、本発明は、しわの発生を懸念することなくパイプに対する曲げ加工を適切に行い、且つ、段替えを容易に行い得るパイプ曲げ型ユニット、及び該ユニットを備えたパイプ曲げ加工装置を提供することを別の課題とする。
上記の課題を達成するため、本発明は、外周面に断面半円状のパイプ受溝を有し回転軸を中心に回転駆動される曲げ型を備え、該曲げ型が、外周面に断面半円状の第1の溝部を有すると共に、該第1の溝部に形成され、前記回転軸に対し直交する平面内で周方向に第1の所定距離延在する嵌合凹部を有する把持部材と、外周面に断面半円状の第2の溝部を有すると共に、該第2の溝部の先端部から周方向に第2の所定距離延出する嵌合凸部を有し、該嵌合凸部が前記嵌合凹部に嵌合し前記第1の溝部及び前記第2の溝部を結合して前記断面半円状のパイプ受溝を形成する対圧部材であって、前記嵌合凹部に嵌合される前記嵌合凸部の嵌合部が、加工対象のパイプの曲げ加工開始位置に対し前記パイプの進行方向の前方側に位置し、前記把持部材の前記第1の溝部と前記対圧部材の前記第2の溝部との当接部が、前記パイプの曲げ加工開始位置に対し前記パイプの進行方向の後方側に位置している対圧部材と、前記回転軸を中心軸に有し、前記把持部材及び前記対圧部材を回転可能に支持する中空軸部材と、該中空軸部材に収容され、当該中空軸部材に係合する係合部を有すると共に、少なくとも一端に固定部を有する固定軸部材とを具備し、前記対圧部材と前記把持部材が前記中空軸部材を介した蝶番結合によって連結され、前記回転軸を中心に相対的に回転可能に支持される構成としたものである。
上記の各パイプ曲げ型ユニットにおいて、前記対圧部材は、前記中空軸部材に回転可能に支持される環状の回転支持部を有し、該回転支持部の一部が前記嵌合凸部を構成し、当該回転支持部の外周面が、前記断面半円状のパイプ受溝の一部を形成する曲面である構成とするとよい。
更に、上記の各パイプ曲げ型ユニットにおいて、前記把持部材及び前記対圧部材と前記中空軸部材との間に介装される滑動部材を備えたものとしてもよい。
また、本発明は、外周面に断面半円状のパイプ受溝を有し回転軸を中心に回転駆動される曲げ型と、該曲げ型のパイプ受溝に配置される加工対象のパイプを把持する把持型と、前記パイプを前記曲げ型方向に押圧する圧力型とを備え、前記曲げ型が、外周面に断面半円状の第1の溝部を有すると共に、該第1の溝部に形成され、前記回転軸に対し直交する平面内で周方向に第1の所定距離延在する嵌合凹部を有する把持部材と、外周面に断面半円状の第2の溝部を有すると共に、該第2の溝部の先端部から周方向に第2の所定距離延出する嵌合凸部を有し、該嵌合凸部が前記嵌合凹部に嵌合し前記第1の溝部及び前記第2の溝部を結合して前記断面半円状のパイプ受溝を形成する対圧部材であって、前記嵌合凹部に嵌合される前記嵌合凸部の嵌合部が、前記パイプの曲げ加工開始位置に対し前記パイプの進行方向の前方側に位置し、前記把持部材の前記第1の溝部と前記対圧部材の前記第2の溝部との当接部が、前記パイプの曲げ加工開始位置に対し前記パイプの進行方向の後方側に位置している対圧部材と、前記回転軸を中心軸に有し、前記把持部材及び前記対圧部材を回転可能に支持する中空軸部材と、該中空軸部材に収容され、当該中空軸部材に係合する係合部を有すると共に、少なくとも一端に固定部を有する固定軸部材とを具備し、前記対圧部材と前記把持部材が前記中空軸部材を介した蝶番結合によって連結され、前記回転軸を中心に相対的に回転可能に支持されてパイプ曲げ型ユニットが構成されているパイプ曲げ加工装置を提供するものである。
上記の各パイプ曲げ加工装置において、前記対圧部材は、前記中空軸部材に回転可能に支持される環状の回転支持部を有し、該回転支持部の一部が前記嵌合凸部を構成し、当該回転支持部の外周面が、前記断面半円状のパイプ受溝の一部を形成する曲面である構成とするとよい。
更に、上記の各パイプ曲げ加工装置において、前記把持部材及び前記対圧部材と前記中空軸部材との間に介装される滑動部材を備えたものとしてもよい。
そして、上記の各パイプ曲げ加工装置において、前記パイプ内に先端部が挿入され、前記曲げ型の所定の回転範囲で前記先端部が前記圧力型に対向するように駆動される芯金を備えたものとしてもよい。
本発明は上述のように構成されているので以下の効果を奏する。即ち、本発明のパイプ曲げ型ユニットにおいては、これを構成する曲げ型が、外周面に断面半円状の第1の溝部を有すると共に、第1の溝部に形成され、回転軸に対し直交する平面内で周方向に第1の所定距離延在する嵌合凹部を有する把持部材と、外周面に断面半円状の第2の溝部を有すると共に、第2の溝部の先端部から周方向に第2の所定距離延出する嵌合凸部を有し、嵌合凸部が嵌合凹部に嵌合し第1の溝部及び第2の溝部を結合して断面半円状のパイプ受溝を形成する対圧部材であって、嵌合凹部に嵌合される嵌合凸部の嵌合部が、加工対象のパイプの曲げ加工開始位置に対しパイプの進行方向の前方側に位置し、把持部材の第1の溝部と対圧部材の第2の溝部との当接部が、パイプの曲げ加工開始位置に対しパイプの進行方向の後方側に位置している対圧部材と、回転軸を中心軸に有し、把持部材及び対圧部材を回転可能に支持する中空軸部材と、中空軸部材に収容され、中空軸部材に係合する係合部を有すると共に、少なくとも一端に固定部を有する固定軸部材とを具備し、対圧部材と把持部材が中空軸部材を介した蝶番結合によって連結され、回転軸を中心に相対的に回転可能に支持されているので、しわの発生を懸念することなくパイプに対する曲げ加工を適切に行なうことができる。しかも、加工対象のパイプの形状に応じて複数のパイプ曲げ型ユニットを用意しておけば、種々のパイプ形状に対する曲げ加工に際し、その形状に応じたパイプ曲げ型ユニットを選択して交換するだけでよいので、段替えが容易で段替え後の調整も不要なパイプ曲げ型ユニットを提供することができる。
対圧部材は、中空軸部材に回転可能に支持される環状の回転支持部を有するものとすれば、確実に回転軸を中心に回転可能に支持することができ、更に、回転支持部の一部が嵌合凸部を構成し、回転支持部の外周面が、断面半円状のパイプ受溝の一部を形成する曲面となるように構成すれば、対圧部材を単一部品で適切な形状に形成することができる。
更に、上記の各パイプ曲げ型ユニットにおいて、把持部材及び対圧部材と中空軸部材との間に介装される滑動部材を備えたものとすれば、把持部材及び対圧部材が円滑に相対回転作動を行い、一層円滑な曲げ加工を行うことができる。
そして、本発明のパイプ曲げ加工装置は、前述のように構成されたパイプ曲げ型ユニットと、その曲げ型のパイプ受溝に配置される加工対象のパイプを把持する把持型と、パイプを曲げ型方向に押圧する圧力型とを備えており、この圧力型によってパイプを曲げ型方向に押圧しながら把持型及び曲げ型を回転させることにより、しわの発生を懸念することなくパイプに対する曲げ加工を適切に行なうことができる。しかも、加工対象のパイプの形状に応じて複数のパイプ曲げ型ユニットを用意しておけば、種々のパイプ形状に対する曲げ加工に際し、その形状に応じたパイプ曲げ型ユニットを選択して交換するだけでよいので、容易に段替えを行うことができ、段替え後の調整も不要である。従って、ロボットによる自動段替えも可能となる。
上記の各パイプ曲げ加工装置に供される対圧部材は、中空軸部材に回転可能に支持される環状の回転支持部を有するものとすれば、確実に回転軸を中心に回転可能に支持することができ、更に、回転支持部の一部が嵌合凸部を構成し、回転支持部の外周面が、断面半円状のパイプ受溝の一部を形成する曲面となるように構成すれば、対圧部材を単一部品で適切な形状に形成することができる。
更に、上記の各パイプ曲げ加工装置において、把持部材及び対圧部材と中空軸部材との間に介装される滑動部材を備えたものとすれば、把持部材及び対圧部材が円滑に相対回転作動を行い、一層円滑な曲げ加工を行うことができる。
そして、上記の各パイプ曲げ加工装置において、パイプ内に先端部が挿入され、曲げ型の所定の回転範囲で先端部が圧力型に対向するように駆動される芯金を備えたものとすれば、曲げ半径が小さな曲げ加工を容易に行うことができ、パイプに対する曲げ限界を大幅に向上することができる。
以下、本発明の望ましい実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施形態に係るパイプ曲げ型ユニット、並びに、これに加え把持型200及び圧力型300等を含む一実施形態に係るパイプ曲げ加工装置を示すもので、パイプ曲げ型ユニットは、外周面に断面半円状のパイプ受溝(後述する第1及び第2の溝部11、21によって構成)を有し回転軸(A)を中心に回転駆動される曲げ型100を備えている。そして、パイプ曲げ加工装置においては、加工対象のパイプPが、曲げ型100と把持型200との間に把持され、圧力型300によって曲げ型100方向に押圧されながら前進駆動され、圧縮荷重及び軸押し荷重によってパイプPに対し曲げ加工が行われるように構成されている。
本実施形態の曲げ型100は把持部材10及び対圧部材20を備えており、図1及び図2に示すように、把持部材10には断面半円状の第1の溝部11が形成されると共に、この第1の溝部11に、回転軸(A)に対し直交する平面内で周方向に所定距離延在するように所定幅の嵌合凹部12が形成されている。把持部材10は、図3に示す中空軸部材のスリーブ70を介して、回転軸(A)を中心軸とする固定軸部材のスタッド60によって、装着対象の基台13(図1及び図2に二点鎖線で示す)に固定される。スタッド60は、その中間部に大径の係合部60aが形成されると共に、先端に固定部たる螺子部60bが形成されたボルト形状で、スリーブ70の連通孔70a内に挿通され、螺子部60bが基台13に螺着されてスタッド60が固定されるように構成されている。而して、把持部材10と対圧部材20はスリーブ70を介した蝶番結合によって連結され、スタッド60によって回転軸(A)を中心に相対的に回転可能に支持されているが、この結合構造については後に詳述する。尚、把持部材10に係止具80が固定されると共に、対圧部材20にノックピン27が固定されているが、これらについても後述する。
上記の把持部材10は、図3に示すように、断面半円状の第1の溝部11を構成する環状凹部10bを有すると共に、回転軸(A)に直交する平面内で周方向に延在する所定幅の嵌合凹部12を具備している。この嵌合凹部12は環状凹部10bの底中心に配置されている。従って、断面半円状の第1の溝部11は、嵌合凹部12の一部を含み環状凹部10bに連続している。即ち、本実施形態の把持部材10は、パイプPを把持する把持部10a(把持型200との接合面は平面)と、これに連続して形成される環状凹部10bを有し、これらが一体的に形成されている。而して、第1の溝部11は、把持部10aに形成される断面半円状の溝部11aと、環状凹部10bに形成される断面半円状の溝部11bの、連続した半円状断面を有する。尚、溝部11aには、パイプPの把持を確実に行うため、把持型200の内周面と同様、溝部11aの周方向に複数の把持条が並設されている。
図4に示すように、把持部材10には、図4の上方から大径孔、中径孔及び小径孔の順に段付孔10cが形成されており、大径孔と中径孔の間に段部10dが形成されると共に、中径孔と小径孔の間に段部10eが形成され、図4の下方に小径孔の保持孔10fが形成されている。また、把持部材10の下端面には、インロー結合用の溝部10gが径方向に形成されると共に、保持孔10f周りで溝部10gを挟み両側に円弧状凸部10h(図4では一方のみが表れている)が形成されている。即ち、基台13にはインロー結合用の凸部13a、13b(図1及び図2に示す)が形成されており、凸部13a、13bが溝部10gに嵌合されてインロー結合されるように構成されている。尚、把持部材10の下端面は後述する図18と同様であり、インロー結合時に各円弧状凸部10hの端面が基台13に押接されるように構成されている。
更に、把持部材10には、図3及び図4に示すように、滑動部材たる円筒形状のブッシュ71がスリーブ70周りに装着され、スリーブ70の外周面にはブッシュ71を係止する段部70bが形成されている。而して、把持部材10の嵌合凹部12に対圧部材20の嵌合凸部22が嵌合された状態で、把持部材10の段付孔10cにブッシュ71及びスリーブ70が挿入されると、ブッシュ71の下端面が段部10dに係止されると共に、スリーブ70の下端面が段部10eに係止される。更に、スリーブ70の連通孔70a内にスタッド60が挿入され、その係合部60aがスリーブ70の上端面に当接すると、ブッシュ71が上記の段部70bと段部10dとの間に挟持されると共に、スリーブ70が係合部60aと段部10eとの間に挟持された状態で保持され、螺子部60bが保持孔10fから延出し、図1、図2及び図4に示すパイプ曲げ型ユニットとなる。
一方、対圧部材20には、図1及び図2に示すように、外周面に断面半円状の第2の溝部21が形成されると共に、この第2の溝部21の先端部から周方向に所定距離延出するように嵌合凸部22が形成されており、この嵌合凸部22が上記の嵌合凹部12に嵌合すると、把持部材10の第1の溝部11と対圧部材20の第2の溝部21によって断面半円状のパイプ受溝が形成される。図3に示すように、対圧部材20は回転支持部23を有し、この回転支持部23が仮想の回転軸(A)を中心にスリーブ70(及びスタッド60)に回転可能に支持され、回転支持部23の一部によって上記の嵌合凸部22が構成されている。
上記の対圧部材20は、図3に示すように、環状凹部10bに当接し得るように配置される曲面部(対圧部)20aと、ブッシュ71を介してスリーブ70に回転可能に支持(即ち、回転軸(A)周りに軸支)される回転支持部23が一体的に形成されており、この回転支持部23の一部によって嵌合凸部22が構成されている。従って、回転支持部23の外周面が曲面に形成されており、把持部材10の第1の溝部11と共に断面半円状のパイプ受溝を形成するように構成されている。即ち、対圧部材20には断面半円状の第2の溝部21が形成されており、把持部材10の第1の溝部11に当接する第2の溝部21の端面形状は、図2に当接部(R)で示すように、正面視で湾曲している。そして、嵌合凸部22の外周側面22a(即ち、回転支持部23の外周側面)は曲面に形成されており、嵌合凸部22が把持部材10の嵌合凹部12に嵌合されると把持部材10の第1の溝部11の半円状断面の一部を構成し、両者によって断面半円状のパイプ受溝が形成される。
本実施形態の対圧部材20は、図3に示すように、回転支持部23を構成する第1の部材20xと、第2の溝部21及び嵌合凸部22を構成する第2の部材20yに二分割されており、摩耗し易い部分を含む第2の部材20yのみを交換し得るように構成されている。更に、図5に示すように、第1の部材20xを、回転支持部23の主要部23x及び接合部25を包含する部材と支持部材26とに分割し、回転支持部23の一部23yと本体部24から成る第2の部材20yを、例えばボルトによって接合する構成としてもよい。而して、対圧部材20を交換する際には、摩耗が大きな一部23yを含む第2の部材20yのみを交換すればよいので、交換作業が容易となるだけでなく、長期的な使用の観点からは安価な対圧部材20を提供することができ、コストダウンとなる。
また、図5に示す対圧部材20には、本体部24に一体的に形成される回転支持部23の少なくとも円周方向の一部が径方向外側に延出したリブ23aが形成されている。このリブ23aは、回転支持部23における曲面部20aとの境界の裾部を、他の装置との干渉を回避するため、必要以上に厚くすることができないので、上記裾部への応力集中を緩和するもので、回転支持部23の環状部の接線方向に延出し、その先端には支持部材26に当接する当接面が形成されている。尚、本実施形態の回転支持部23は環状に形成されているが、嵌合凸部22以外の部分を空隙として回転支持部23をC字状に形成してもよい。
以上のように、把持部材10と対圧部材20は、図1及び図2に示すように、回転軸(A)(スタッド60及びスリーブ70の中心軸)を中心とし、スリーブ70(及びブッシュ71)を介した蝶番結合によって連結されており、スタッド60の螺子部60bが基台13に螺着され、把持部材10と対圧部材20が相対的に回転可能に支持された状態で基台13に固定される。本実施形態では、図示しない装置の所定位置に固定される対圧部材20に対して、基台13に固定された把持部材10が回転駆動されるように支持されている。そして、把持部材10の所定位置に固定された係止具80が、対圧部材20に固定されたノックピン27に当接する位置を、把持部材10と対圧部材20の初期相対位置として設定するように構成されている。
把持部材10と対圧部材20は、図2に示すように、パイプPに対し曲げ加工を行うときの曲げ加工開始位置(図2に鉛直方向の一点鎖線Sで示す)を基準に、嵌合凹部12における回転軸(A)に対し直交する平面(図2に示す(H)を含み図2の紙面に垂直な面に平行な二平面)に包含されない嵌合凸部22との嵌合部(F)がパイプPの進行方向の前方側(図2においてSの右側)に位置し、把持部材10の第1の溝部11と対圧部材20の第2の溝部21との回転方向の当接部(R)がパイプPの進行方向に対して後方側(図2においてSの左側)に位置するように、連結されている。換言すれば、嵌合凹部12に嵌合される嵌合凸部22の回転方向の嵌合部(F)が、パイプPの曲げ加工開始位置に対しパイプPの進行方向の前方側に位置し、把持部材10の第1の溝部11と対圧部材20の第2の溝部21との回転方向の当接部(R)が、パイプPの曲げ加工開始位置に対しパイプPの進行方向の後方側に位置している。
而して、図1及び図2に示すように、把持部材10と対圧部材20が上記の初期相対位置に配置された曲げ型100によってパイプ曲げ型ユニットが構成されるので、加工対象のパイプPの形状に応じて複数のパイプ曲げ型ユニットを用意しておけば、種々のパイプ形状に対する曲げ加工に際しては、その形状に応じたパイプ曲げ型ユニットを選択して交換するだけでよく、所謂段替えを容易に行うことができる。特に、前述のように、係止具80及びノックピン27によって把持部材10と対圧部材20の初期相対位置を予め設定しておくことができるので、段替え後の調整が不要であり、熟練を要することなく容易に調整することができる。更に、上記のパイプ曲げ型ユニットに把持型200及び圧力型300を含めてユニットを構成すれば、段替え及び調整が容易なパイプ曲げ工具アセンブリを提供することができる。
上記の図1に示すパイプ曲げ加工装置の全体作動を説明すると、先ず、係止具80がノックピン27に当接する初期相対位置で保持された状態で、パイプPの胴体部の曲げ加工対象部分が、曲げ型100の曲げ加工開始位置(図2のS)に配置され、パイプP内に従前と同様の芯金(マンドレルとも呼ばれ、図1にMで示す)が挿入される。芯金Mは、図6にその断面を示す(但し、視認性を考慮しハッチングは省略)ように、先端部に傾動自在に支持された玉芯金M1及びM2を有し、これらの玉芯金M1及びM2がパイプP内に挿入され、曲げ型100の所定の回転範囲で曲げ型100と把持型200及び圧力型300との間に介在するように駆動される。次に、把持型200及び圧力型300が曲げ型100方向に駆動され、パイプPの先端部が曲げ型100の把持部材10と把持型200との間に把持されると共に、パイプPの胴体部が曲げ型100の対圧部材20と圧力型300との間に押接される。
続いて、パイプPの先端部が把持部材10と把持型200との間に把持された状態で、パイプPの胴体部が圧力型300によって対圧部材20に押圧されながら、パイプPが前進駆動されると共に、把持型200及び把持部材10が回転軸(A)を中心に回転駆動されると、パイプPは曲げ型100のパイプ受溝(第1及び第2の溝部11,21)に順次巻きつけられるように屈曲され、図23に示すように屈曲されたパイプPが形成される。この間、パイプPの軸方向及び径方向に大きな圧力が加えられるが、上記のパイプ曲げ型ユニットを用いれば、曲げに伴うパイプPの曲げ内側部分の圧縮変形による厚肉化を制御し、パイプPの曲げ外側部分に対する増肉を行うと共に、パイプPの曲げ外側部分の薄肉化を防止し、屈曲部においても適切な管厚に維持することができる。
而して、本実施形態のパイプ曲げ型ユニットを用いて曲げ加工が行われたパイプPには、図23に示すように、嵌合凹部12と嵌合凸部22の嵌合部分に対応する位置に若干の厚肉部(コブ状部)が形成されるものの、これに連続する部分は滑らかな曲面となる。具体的には、図23に細線で示す部分で厚さが緩やかに変化し、流動する肉が嵌合部(図2のF)に嵌まり込んで厚肉部TP1が形成されると共に、当接部(図2のR)に沿って厚肉部TP2及びTP3が形成されるものの、図23に細線で示す部分は滑らかな曲面に形成され、所謂しわに相当するものではないので、厚肉部TP1、TP2及びTP3の発生を懸念する必要はない。寧ろ、これらの厚肉部TP1、TP2及びTP3が形成された屈曲パイプこそが、本実施形態のパイプ曲げ型ユニットを用いて曲げ加工が行われた証となり、その加工品質を裏付けるものとなる。
前述のように、本実施形態の曲げ型100は、把持部材10と対圧部材20を備え、これらはスリーブ70(及びブッシュ71)を介してスタッド60の中心軸、即ち回転軸(A)を中心とする蝶番結合によって連結されており、回転軸(A)を中心に相対的に回転可能に支持されているので、パイプPの屈曲に伴い、対圧部材20は(パイプPを介して)圧力型300に押圧された状態で把持部材10に対して回転軸(A)を中心に相対的に回転し得る。従って、把持部材10は、パイプPに対する曲げ加工開始位置(図2のS)から、対圧部材20に対して離隔する周方向に回転作動する。
そして、前述のように把持部材10と対圧部材20がスリーブ70(及びブッシュ71)を介して連結されており、把持部材10と対圧部材20との間に生じ得る段差が小さく抑えられている。このため、パイプPに対して従前に比し大きな軸押し荷重及び圧縮荷重が加えられても、曲げ加工に伴う塑性変形を適切に制御することができる。しかも、把持部材10を対圧部材20に対して回転駆動する際には、把持部材10と対圧部材20との相対回転によるトルクがスタッド60に直接伝達されることなく、スリーブ70(及びブッシュ71)を介して円滑に回動する。この結果、基台13に螺着されたスタッド60が(所謂共回りによって)緩むことはなく、安定した固定状態を維持することができる。
図7乃至図10は、パイプ曲げ型ユニットの他の実施形態に係るもので、上記の把持部10aは把持部材10に一体的に形成されているのに対し、把持部10a部分を別体(図7等に10yで示す)とし、環状凹部10bを構成する本体(図7等に10xで示す)に接合することとしたものである。即ち、把持部10yは取付孔14及び15から螺子(図示せず)が挿入され、本体10xの螺子孔(符合省略)に螺合されて本体10xに固定される。而して、別体10yの把持部10aに形成される断面半円状の溝部11aと、本体10xの環状凹部10bに形成される断面半円状の溝部11bによって、連続した半円状断面を有する第1の溝部11が構成される。尚、前述の実施形態と実質的に同一の部材については同一の符合を付して説明は省略する。
図8に示すように、把持部材10(本体10x)には、図4と同様、段付孔10cが形成されているが、本実施形態においては、大径孔及び中径孔のみで小径孔は形成されておらず、大径孔と中径孔の間に段部10dが形成され、図8の下方に中径孔の保持孔10jが形成されている。図8及び図10に示すように、把持部材10の下端面には、インロー結合用の溝部10gが径方向に形成されると共に、保持孔10j周りで溝部10gを挟み両側に円弧状凸部10hが形成されている。従って、図8に示すように、図4のスリーブ70より長尺のスリーブ70(符合は前者と同じとする)が保持孔10jに挿入されるが、下端面は保持孔10jの開口から露出しており、基台13の凸部13a、13b(図1及び図2に示す)が溝部10gに嵌合されてインロー結合されたときには、スリーブ70の下端面が基台13に当接するように構成されている。而して、把持部材10(本体10x)の嵌合凹部12に対圧部材20の嵌合凸部22が嵌合された状態で、段付孔10cにブッシュ71及びスリーブ70が挿入され、ブッシュ71がスタッド60の係合部60aとスリーブ70の段部70bとの間に保持されると共に、スリーブ70の下端面が基台13に当接した状態で保持され、図1等に示す状態となる。
図11及び図12は、パイプ曲げ型ユニットの更に他の実施形態に係るもので、前述のブッシュ71に代えて、複数のニードルベアリングを並設した円筒形状の滑動部材(以下、単にニードルベアリングという)72を設けることとしたものであり、一層円滑な対圧部材20の回転作動を確保することができる。尚、ブッシュ71及びニードルベアリング72は何れも容易に脱着し得るので、磨耗状況に応じて適宜交換することができる。
本実施形態においては、把持部材10(本体10x)には、図4と同様、段付孔10cが形成されているが、大径孔及び中径孔のみで小径孔は形成されておらず、大径孔と中径孔の間に段部10eが形成され、図12の下方に小径孔の保持孔10fが形成されている。而して、把持部材10(本体10x)の嵌合凹部12に対圧部材20の嵌合凸部22が嵌合された状態で、段付孔10cにニードルベアリング72及びスリーブ70が挿入されると、ニードルベアリング72がスタッド60の係合部60aとスリーブ70の段部70bとの間に挟持されると共に、スリーブ70が係合部60aと段部10eとの間に挟持された状態で保持され、螺子部60bが保持孔10fから延出し、図1等に示す状態となる。
更に、別の実施形態として、図13乃至図18に示すように、回転軸(A)に対して直交する面で分割された上型40及び下型50によって本体10xを構成し、これに別体10y(把持部10a)を接合して把持部材10を構成することができる。即ち、上型40及び下型50には、図17に示すように、夫々環状段部41、42及び中央孔43と環状段部51、52及び中央孔53が形成されると共に、対向する端面にはキー溝44及び54が形成されており、これらにキー45が嵌合された状態で、上型40及び下型50の係止孔(符合省略)にピン46が挿通され、キー45及びピン46を介して上型40及び下型50が接合され、例えばボルト固定されるように構成されている。
而して、スリーブ70及びブッシュ71が夫々、上型40の環状段部41、42と下型50の環状段部51、52の間に介装され、上型40と下型50が接合される。そして、別体10y(把持部10a)が本体10x(上型40及び下型50)に固定され、スタッド60が上型40の中央孔43、対圧部材20の回転支持部23及び下型50の中央孔53に挿通されると、図14乃至図18に示すパイプ曲げ型ユニットが構成される。本実施形態においては、対圧部材20の嵌合凸部22が上型40及び下型50の間に介装された状態になるが、上型40及び下型50間のクリアランスは上記のスリーブ70によって適切な値に設定され、スタッド60による基台13への強固な締結によっても当該クリアランスは歪むことがないので、上型40及び下型50間での嵌合凸部22の円滑な回転作動が確保され、ひいては把持部材10及び対圧部材20の円滑な相対回転が確保される。
更に、図13に示すように、グラファイト等で形成される滑動部材90が、上型40と下型50の上下端面に埋設されており、把持部材10及び対圧部材20の一層円滑な相対回転が確保され、嵌合凸部22等の摩耗が低減され、耐久性が向上する。尚、その他の構成は前述の実施形態と同様であるので、実質的に同一の部材については同一の符合を付して説明は省略する。
次に、更に別の実施形態として、図19及び図20に示すように、上記の把持部材10及び対圧部材20から成る複数の曲げ型100a及び100bが積層された形態で回転軸(A)を中心に回転可能に支持される構成とすることもできる。何れの把持部材10及び対圧部材20も、夫々回転軸(A)を中心とする蝶番結合によって連結されており、曲げ型100a及び100bにおいては、何れも図13乃至図18に示す上型40及び下型50と同様の上型及び下型によって構成される把持部材の本体10xが、二段積層された態様となっている。
即ち、図21に分解斜視図を示すように、三つの部材B1乃至B3(並びにスタッド60及びスリーブ70)によって二つの把持部材の本体10xa及び10xbが構成され、本体10xaは上型401(部材B1の一部)及び下型501(部材B2の一部)によって構成され、本体10xbは上型402(部材B2の一部)及び下型502(部材B3の一部)によって構成されており、夫々に環状凹部10b1及び10b2が形成されている。そして、図22に示すように、本体10xa及び10xbとスリーブ70との間に夫々、前述の実施形態と同様のブッシュ71が介装されている。
また、上型401、402と下型501、502の対向する端面に形成されたキー溝(符合省略)にキー45a及び45bが嵌合された状態で、ピン46a及び46bが挿通され、キー45a及び45b並びにピン46a及び46bを介して上型401、402と下型501、502が接合され、例えばボルト固定されるように構成されている。尚、本体10xa及び10xbには夫々、図19乃至図21に示すように、加工対象に応じた異なる溝部形状を有する把持具10ya及び10ybが接合されて、各把持部材が構成されている。
而して、二つの曲げ型100a及び100bは、これらを上記のスリーブ70が貫通した状態で保持されるので、両者の位置決めが容易であり、また、上型401、402と下型501、502との間の各クリアランスは上記のスリーブ70によって適切な値に設定し得るので、嵌合凸部22の円滑な回転作動(把持部材10及び対圧部材20の円滑な相対回転)が確保される。本実施形態においても、図21に示すように、上型401、402と下型501、502の上下端面に滑動部材90が埋設されており、把持部材10及び対圧部材20の一層円滑な相対回転が確保され、嵌合凸部22等の摩耗が低減され、耐久性が向上する。
上記各実施形態のパイプ曲げ型ユニットが装着されるパイプ曲げ加工装置1は、例えば図24に示すように構成され、加工対象のパイプPを把持するパイプチャックCHが設けられると共に、パイプPを前進駆動し軸押し荷重を付与するキャリッジCRが設けられている。パイプチャックCHを回転駆動(割出し)することにより、パイプPの曲げ方向を変えることができ、これによって3次元の曲げ加工が可能となる。また、把持型200は回動テーブル2に配置され、これによって回転軸(A)(図24に示すスタッド60の中心軸)を中心に回転駆動されるように構成されている。
このパイプ曲げ加工装置1においては、図19乃至図22に示すパイプ曲げ型ユニットと同様、前述のスリーブ70を介して例えば三つの把持部材10及び対圧部材20が相対的に回転駆動されるように構成されたパイプ曲げ型ユニット(図24にDUで示す)がスタッド60によって基台13に固定される。そして、図24に示す三つの把持部材10を連結して支持する連結支持部材91及び三つの対圧部材20を連結して支持する連結支持部材92がスタッド60(及びスリーブ70)の中心軸を中心に回転駆動され、把持部材10及び対圧部材20の相対移動が制御されるように構成されている。尚、図24においては、連結支持部材92はリンク93を介して駆動装置DRに接続され、三つの対圧部材20が夫々同時に移動するように構成されているが、三つの把持部材10及び対圧部材20を夫々別個に駆動制御するように構成してもよい。