JP6587276B2 - 光学ガラス、光学ガラスブランク、プレス成型用ガラス素材、光学素子、およびそれらの製造方法 - Google Patents
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しかしながら、ガラスのネットワークフォーマーとしてリン酸を多く含むとともに、高屈折率付与成分および高分散性付与成分を含む組成の光学ガラスは、一般に失透傾向が強い。そのため、高屈折率・高分散特性を有するリン酸系光学ガラスにおける耐失透性を向上することは、従来困難であった。
更に本発明の一態様によれば、上述の光学ガラスからなる光学ガラスブランク、プレス成形用ガラス素材、光学素子、およびそれらの製造方法も提供される。
酸化物基準のガラス組成において、
P2O5、B2O3およびTiO2が必須成分であり、SiO2、Li2O、Nb2O5、WO3、Bi2O3、およびTa2O5が任意成分であり、
P2O5含有量が20〜34質量%、
B2O3含有量が0質量%超かつ10質量%以下、
Li2O含有量が0質量%以上0.3質量%未満、
質量比(B2O3/P2O5)が0超かつ0.39未満、
質量比[(P2O5+B2O3)/(TiO2+Nb2O5+WO3+Bi2O3+Ta2O5)]が0.53超、
質量比[TiO2/(TiO2+Nb2O5+WO3+Bi2O3+Ta2O5)]が0.059〜0.96の範囲、
であり、屈折率ndが1.78〜1.83の範囲であり、かつアッベ数νdが20〜25の範囲である光学ガラス(以下、「ガラスA」と記載する。);
酸化物基準のガラス組成において、
P2O5、B2O3およびTiO2が必須成分であり、SiO2、Li2O、Nb2O5、WO3、Bi2O3、およびTa2O5が任意成分であり、
P2O5含有量が20〜34質量%、
B2O3含有量が0質量%超かつ10質量%以下、
Li2O含有量が0質量%以上0.3質量%未満、
質量比(B2O3/P2O5)が0超かつ0.39未満、
質量比[(P2O5+B2O3+SiO2)/(TiO2+Nb2O5+WO3+Bi2O3+Ta2O5)]が0.53超、
質量比[SiO2/(SiO2+P2O5+B2O3)]が0.02未満、
質量比[TiO2/(TiO2+Nb2O5+WO3+Bi2O3+Ta2O5)]が0.059〜0.96の範囲、
であり、屈折率ndが1.78〜1.83の範囲であり、かつアッベ数νdが20〜25の範囲である光学ガラス(以下、「ガラスB」と記載する)、
を包含する。
本発明の一態様にかかる光学ガラスは、上述のガラスAおよびBを包含する。以下、その詳細について説明する。特記しない限り、下記記載は、ガラスAおよびBの両ガラスに適用される。
本発明におけるガラス組成は、ICP−AES(Inductively Coupled Plasma - Atomic Emission Spectrometry)により求められたものである。また、本分析方法により求められた分析値は、±5%程度の測定誤差を含んでいる。また、本明細書および本発明において、構成成分の含有量が0%とは、この構成成分を実質的に含まないことを意味し、この構成成分の含有量が不純物レベル程度以下であることを指す。
ここでB2O3含有量が0%とは、B2O3がガラス中に不純物レベル程度に微量に含有されている場合を含む。したがって、B2O3含有量0%超とは、B2O3が不純物レベル程度を超えて含有されていることを指す。具体的には、例えば700ppm(質量比)以上、または1000ppm(質量比)以上である。
また、Na2O含有量は、例えば0%以上とすることができ、8%以上であることが好ましく、11%以上であることがより好ましい。K2O含有量は、例えば0%以上とすることができ、2%以上であることが好ましく、3%以上であることがより好ましい。
耐失透性の観点からは、上述の光学ガラスのNa2O含有量は、例えば16%以下とすることができ、15%以下であることが好ましく、14%以下であることがより好ましい。同様の観点から、K2O含有量は、6%以下とすることが好ましく、より好ましくは5%以下である。
アルカリ金属酸化物の含有量(複数種含む場合には、それらの合計含有量)は、10%以上とすることが好ましく、耐失透性維持の観点からは、30%以下とすることが好ましく、20%以下とすることがより好ましい。好ましい下限は15%である。
また、各アルカリ土類金属酸化物の含有量については、MgO含有量の好ましい下限値は0%以上であり、好ましい上限値は5%以下である。CaO含有量は好ましい下限値は0%以上であり、好ましい上限値は1%未満である。SrO含有量の好ましい下限値は0%以上であり、好ましい上限値は 5 %以下である。BaO含有量の好ましい下限値は0%以上であり、好ましい上限値は7%未満であり、より好ましくは6%以下である。
液相温度の低いガラスは、軟化点付近での失透安定性が高いため、リヒートプレスのための加熱や精密プレス成形における加熱においてガラス中に結晶が析出することを防ぐことができる。また、液相温度の低いガラスは、低温で流出させることができるため、熔融ガラスを流出する際の温度を低くすることができる。ここでの温度を低くすることにより、ダイレクトプレス法による光学素子ブランク作製時や精密プレス成形法に用いるプレス成形用ガラス素材の作製時においてガラス中に結晶が析出することを防ぐことが可能となる。
また、熔融ガラスを流出する際の温度を低くすることにより、揮発による脈理発生を抑えること、および光学特性変動を低減することもできる。
更に、液相温度を低くすることにより、熔解を行うルツボのガラスによる侵蝕を抑えることができる。その結果、ルツボを構成する白金などの物質が、侵蝕によってガラス中に混入し異物となることや、イオンとして溶け込んでガラスの着色を引き起こすことを回避することができる。
本発明の他の一態様は、
上述の光学ガラスからなる光学素子ブランク;
上述の光学ガラスからなるプレス成形用ガラス素材;
上述の光学ガラスをプレス成形用ガラス素材に成形する工程を備えるプレス成形用ガラス素材の製造方法;および、
上述のプレス成形用ガラス素材を加熱により軟化した状態で、プレス成形型を用いてプレス成形することにより光学素子ブランクを作製する工程を備える光学素子ブランクの製造方法、
に関する。
本発明の他の一態様は、
上述の光学ガラスからなる光学素子;
上述の光学素子ブランクを研削および/または研磨することにより光学素子を作製する工程を備える光学素子の製造方法(以下、「方法A」という);
上述のプレス成形用ガラス素材を加熱により軟化した状態で、プレス成形型を用いて精密プレス成形することにより光学素子を作製する工程を備える光学素子の製造方法(以下、「方法B」という)、
に関する。
表1に示す組成の光学ガラスが得られるように、各ガラス成分に対応する酸化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、水酸化物等のガラス原料を所定の割合に150〜300g秤量し、十分に混合して調合バッチとした。これを白金ルツボに入れ、1000〜1250℃で攪拌しながら空気中で2〜4時間、ガラスの熔解を行った。熔解後、熔融ガラスを40×70×15mmのカーボンの金型に流し、ガラス転移温度まで放冷してから直ちにアニール炉に入れ、ガラスの転移温度範囲で約1時間アニールして炉内で室温まで放冷し、各光学ガラスを作製した。
下記方法により、各光学ガラスの屈折率、アッベ数、ガラス転移温度、および液相温度を測定した。
(1)屈折率(nd)およびアッべ数(νd)
徐冷降温速度を−30℃/時にして得られた光学ガラスについて測定した。
(2)ガラス転移温度Tg
示差走査熱量計(DSC(Differential Scanning Calorimetry))により、昇温速度10℃/分にして測定した。
(3)液相温度LT
ガラス試料を任意温度に設定した試験炉に2時間保持し、倍率10〜100倍の顕微鏡により結晶の有無を観察し、液相温度を測定した。
(4)失透性評価
1cm角ガラス試料を、そのガラスのガラス転移温度Tgに設定した第1の試験炉で10分間加熱し、さらにそのガラスのTgプラス10℃に設定した第2の試験炉に10分間加熱した後、結晶または分相の有無を顕微鏡で確認した。結晶も分相も確認されなかった場合は○、結晶および分相の少なくとも一方が確認された場合は×と判定した。本明細書では、耐失透性の指標として、以上の評価結果を用いた。
本発明の一態様にかかる光学ガラスとはガラス組成が相違する特開平6−345481号公報記載の実施例4についても同様の評価を行ったところ、ndは1.72914、νdは26.22であり、上述の光学ガラスが満たす光学特性を有さないことが確認された。
上述のプリフォームの表面に必要に応じてコーティングを施し、成形面に炭素系離型膜を設けたSiC製の上下型および胴型を含むプレス成形型内に導入し、窒素雰囲気中で成形型とプリフォームを一緒に加熱してプリフォームを軟化し、精密プレス成形して上記各種ガラスからなる非球面凸メニスカスレンズ、非球面凹メニスカスレンズ、非球面両凸レンズ、非球面両凹レンズの各種レンズを作製した。なお、精密プレス成形の各条件は前述の範囲で調整した。
表1に示す実施例の各ガラスが得られる清澄、均質化した熔融ガラスを用意し、白金製パイプから一定流量で連続して流出し、パイプ下方に水平に配置した一側壁が開口した鋳型に流し込み、一定の幅を厚みを有するガラス板に成形しつつ、鋳型の開口部から成形したガラス板を引き出した。引き出されたガラス板を、アニール炉内でアニール処理し、歪を低減し、脈理や異物が無く、着色の少ない上記各光学ガラスからなるガラス板を得た。
次に、これら各ガラス板を縦横に切断し、同一寸法を有する直方体形状のガラス片を複数個得た。さらに複数個のガラス片をバレル研磨して、目的とするプレス成形品の重量にあわせ、プレス成形用ガラスゴブとした。
なお、上述の方法とは別に、熔融ガラスを一定流速で白金製ノズルから流出し、このノズルの下方に多数の受け型を次々と移送して所定質量の熔融ガラス塊を次々と受け、これら熔融ガラス塊を球または回転体形状に成形し、アニール処理してからバレル研磨して目的とするプレス成形品の質量にあわせ、プレス成形用ガラスゴブとしてもよい。
このようなレンズにより、良好な撮像光学系を構成することができる。
なお、プレス成形型の形状、ガラスゴブの体積を適宜設定することにより、プリズム等その他の光学素子を製造することもできる。
P2O5含有量を20〜34質量%、B2O3含有量を0質量%超かつ10質量%以下、Li2O含有量を0質量%以上0.3質量%未満、質量比(B2O3/P2O5)を0超かつ0.39未満、質量比[(P2O5+B2O3)/(TiO2+Nb2O5+WO3+Bi2O3+Ta2O5)]を0.53超、質量比[TiO2/(TiO2+Nb2O5+WO3+Bi2O3+Ta2O5)]を0.059〜0.96の範囲(ガラスA)、または、
P2O5含有量を20〜34質量%、B2O3含有量を0質量%超かつ10質量%以下、Li2O含有量が0質量%以上0.3質量%未満、
質量比(B2O3/P2O5)を0超かつ0.39未満、質量比[(P2O5+B2O3+SiO2)/(TiO2+Nb2O5+WO3+Bi2O3+Ta2O5)]を0.53超、質量比[SiO2/(SiO2+P2O5+B2O3)]を0.02未満、質量比[TiO2/(TiO2+Nb2O5+WO3+Bi2O3+Ta2O5)]を0.059〜0.96の範囲(ガラスB)、
とすることにより、屈折率ndが1.78〜1.83の範囲、かつアッベ数νdが20〜25の範囲の高屈折率・高分散特性を有する、優れた耐失透性を有する光学ガラスを得ることができる。
P2O5含有量を20〜34質量%、B2O3含有量を0質量%超かつ10質量%以下、Li2O含有量を0質量%以上0.3質量%未満、質量比(B2O3/P2O5)を0超かつ0.39未満、質量比[(P2O5+B2O3+SiO2)/(TiO2+Nb2O5+WO3+Bi2O3+Ta2O5)]を0.6以上、質量比[TiO2/(TiO2+Nb2O5+WO3+Bi2O3+Ta2O5)]を0.059〜0.96の範囲(ガラスC)、
とすることによって、屈折率ndが1.78〜1.83の範囲、かつアッベ数νdが20〜25の範囲の高屈折率・高分散特性を有する、優れた耐失透性を有する光学ガラスを得ることができる。
ガラスCの詳細については、ガラスA、Bに関する上述の記載を適用することができる。
Nb2O5含有量が19〜47質量%の範囲である;
TiO2含有量が6〜24質量%の範囲である;
アルカリ金属酸化物の含有量が10〜30質量%の範囲である;
Na2O含有量が0〜16質量%の範囲である;
K2O含有量が0〜6質量%の範囲である;
Bi2O3含有量が0〜15質量%の範囲である;
WO3含有量が0〜15質量%の範囲である。
Claims (17)
- 酸化物基準のガラス組成において、
P2O5、B2O3およびTiO2が必須成分であり、SiO2、Li2O、Nb2O5、WO3、Bi2O3、およびTa2O5が任意成分であり、
P2O5含有量が20〜34質量%、
B2O3含有量が0質量%超かつ10質量%以下、
Li2O含有量が0質量%以上0.3質量%未満、
Al2O3含有量が2質量%以下、
SiO2含有量が3.85質量%以下、
Nb2O5含有量が47%以下、
PbO含有量が0〜1%、
TiO2、Nb2O5、WO3、Bi2O3、およびTa2O5の合計含有量が47%超55%以下、質量比(B2O3/P2O5)が0超かつ0.39未満、
質量比[(P2O5+B2O3)/(TiO2+Nb2O5+WO3+Bi2O3+Ta2O5)]が0.53超、
質量比[TiO2/(TiO2+Nb2O5+WO3+Bi2O3+Ta2O5)]が0.059〜0.96の範囲、
であり、屈折率ndが1.78〜1.83の範囲であり、かつアッベ数νdが20〜25の範囲である光学ガラス。 - 質量比[SiO2/(SiO2+P2O5+B2O3)]が0.02未満である請求項1に記載の光学ガラス。
- 酸化物基準のガラス組成において、
P2O5、B2O3およびTiO2が必須成分であり、SiO2、Li2O、Nb2O5、WO3、Bi2O3、およびTa2O5が任意成分であり、
P2O5含有量が20〜34質量%、
B2O3含有量が0質量%超かつ10質量%以下、
Li2O含有量が0質量%以上0.3質量%未満、
Al2O3含有量が2質量%以下、
Nb2O5含有量が47%以下、
PbO含有量が0〜1%、
TiO2、Nb2O5、WO3、Bi2O3、およびTa2O5の合計含有量が47%超55%以下、質量比(B2O3/P2O5)が0超かつ0.39未満、
質量比[(P2O5+B2O3+SiO2)/(TiO2+Nb2O5+WO3+Bi2O3+Ta2O5)]が0.53超、
質量比[SiO2/(SiO2+P2O5+B2O3)]が0.02未満、
質量比[TiO2/(TiO2+Nb2O5+WO3+Bi2O3+Ta2O5)]が0.059〜0.96の範囲、
であり、屈折率ndが1.78〜1.83の範囲であり、かつアッベ数νdが20〜25の範囲である光学ガラス。 - 1050℃以下の液相温度を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学ガラス。
- Nb2O5含有量が19〜47質量%の範囲である請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学ガラス。
- TiO2含有量が6〜24質量%の範囲である請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学ガラス。
- アルカリ金属酸化物の含有量が10〜30質量%の範囲である請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学ガラス。
- Na2O含有量が0〜16質量%の範囲、
K2O含有量が0〜6質量%の範囲、
である請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学ガラス。 - Bi2O3含有量が0〜15質量%の範囲である請求項1〜8のいずれか1項に記載の光学ガラス。
- WO3含有量が0〜15質量%の範囲である請求項1〜9のいずれか1項に記載の光学ガラス。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の光学ガラスからなる光学素子ブランク。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の光学ガラスからなるプレス成形用ガラス素材。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の光学ガラスからなる光学素子。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の光学ガラスをプレス成形用ガラス素材に成形する工程を備えるプレス成形用ガラス素材の製造方法。
- 請求項12に記載のプレス成形用ガラス素材を加熱により軟化した状態で、プレス成形型を用いてプレス成形することにより光学素子ブランクを作製する工程を備える光学素子ブランクの製造方法。
- 請求項11に記載の光学素子ブランクを研削および/または研磨することにより光学素子を作製する工程を備える光学素子の製造方法。
- 請求項12に記載のプレス成形用ガラス素材を加熱により軟化した状態で、プレス成形型を用いて精密プレス成形することにより光学素子を作製する工程を備える光学素子の製造方法。
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