(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した車両電源装置及び当該車両電源装置が搭載された車両の第1実施形態について説明する。
図1に示すように、車両100は、エンジン101と、エンジン101を制御するECU102とを備えている。ECU102は、予め定められた自動停止条件が成立した場合にエンジン101のアイドルストップ(自動停止)を行うアイドル制御部103を有している。アイドル制御部103は、アイドルストップ中に予め定められた再始動条件が成立した場合には自動でエンジン101の再始動を行う。
図1に示すように、車両電源装置10は、オルタネータ(発電機)11と、スタータ(スタータモータ)12と、充放電可能な第1蓄電装置としての二次電池13と、通常負荷14と、これらオルタネータ11、スタータ12、二次電池13及び通常負荷14を互いに並列接続する給電線L1とを備えている。車両電源装置10は、第2蓄電装置としてのストレージ15と、保護負荷16とを備えている。車両電源装置10は、オルタネータ11、スタータ12、二次電池13及び通常負荷14を含む機器群と、ストレージ15及び保護負荷16を含む機器群との間に設けられたDC/DCコンバータ部20を備えている。DC/DCコンバータ部20は、給電線L1に接続されている。なお、本明細書において接続とは、特に断りがない限り、電気的な接続を意味する。
オルタネータ11は、エンジン101の出力軸(クランク軸)101aに回転に伴って駆動(回転)して発電するものである。オルタネータ11は、整流器(図示略)を有しており、エンジン101が運転(稼働)している場合には直流電力を出力する。また、オルタネータ11は、減速時には、回生電力を出力する。オルタネータ11から出力された直流の発電電力は、二次電池13及び通常負荷14に供給されるとともに、DC/DCコンバータ部20を介して、ストレージ15及び保護負荷16に供給される。この電力供給態様については後述する。ちなみに、オルタネータ11から出力される発電電力の電圧は、二次電池13を充電可能であって、且つ、通常負荷14及び保護負荷16が動作可能な電圧に設定されている。
スタータ12は、運転者による始動動作によってエンジン101を始動させる初始動時、及び、アイドルストップからのエンジン101の再始動時には、当該スタータ12と並列接続されている二次電池13からの電力を用いてエンジン101の出力軸101aを回転駆動させる。なお、以降の説明において、特に断りがない限り、再始動とは、スタータ12によるアイドルストップからのエンジン101の再始動を意味する。
二次電池13は、例えば鉛蓄電池である。二次電池13は、ストレージ15よりも容量が大きく、SOC(充電状態)の変動に対する電圧変動が小さい。二次電池13は、給電線L1を介してスタータ12及び通常負荷14に接続されているとともに、DC/DCコンバータ部20を介して保護負荷16に接続されている。
ストレージ15は、二次電池13よりも、SOCの変動に対する電圧変動範囲が大きく、内部抵抗が小さいものが採用されている。また、ストレージ15は、二次電池13よりもサイクル特性に優れており、二次電池13と比較して充放電に伴う劣化が緩やかとなっている。例えば、ストレージ15は、キャパシタやコバルト、ニッケル及びマンガンが含まれた三元系のリチウム二次電池で構成されている。
通常負荷14は、保護負荷16と比較して、入力される電圧の変動がある程度許容される負荷であり、例えばヘッドライト、ワイパ、車両100に搭載されている空調装置のファン、デフロスタ用のヒータ等である。換言すれば、通常負荷14は、動作を継続できる電圧の許容範囲が保護負荷16よりも大きい負荷と言える。通常負荷14は、二次電池13とDC/DCコンバータ部20との間に設けられている。
保護負荷16は、当該保護負荷16の入力電圧の許容範囲が通常負荷14の入力電圧の許容範囲よりも小さい負荷である。詳細には、保護負荷16は、当該保護負荷16の入力電圧が予め定められた最低動作電圧よりも低下すると動作を停止又はリセットするものである。すなわち、保護負荷16は、通常負荷14と比較して、安定した入力電圧が要求される負荷である。保護負荷16としては、例えばナビゲーション機器やオーディオ機器が挙げられる。
なお、保護負荷16が動作可能な入力電圧の許容範囲は、通常負荷14が動作可能な入力電圧の許容範囲に含まれている。すなわち、保護負荷16が動作可能な電圧は、通常負荷14が動作可能な電圧である。また、本実施形態の保護負荷16は、一つの電子機器であってもよいし、互いに直列又は並列に接続された複数の電子機器の集合体でもよい。
DC/DCコンバータ部20は、複数の入出力部21〜23を有している。第1入出力部21は、給電線L1に接続されている。車両電源装置10は、DC/DCコンバータ部20の第2入出力部22と保護負荷16とを接続する負荷線L2と、DC/DCコンバータ部20の第3入出力部23とストレージ15とを接続するストレージ線L3とを有している。この場合、保護負荷16及びストレージ15は、DC/DCコンバータ部20を介して給電線L1に接続されていると言える。また、ストレージ15は、ストレージ線L3とDC/DCコンバータ部20とを介して給電線L1に接続されていると言える。
DC/DCコンバータ部20は、給電線L1と負荷線L2とを接続するバイパス線Laと、バイパス線Laに接続された電圧変換回路24とを備えている。
バイパス線Laは、電圧変換回路24を介することなく、第1入出力部21及び第2入出力部22を接続している。バイパス線La上には、バイパススイッチQaが設けられている。バイパス線Laには、バイパススイッチQaに対して並列に接続されたバイパスダイオードDaが設けられている。バイパスダイオードDaは、オルタネータ11及び二次電池13側がアノードとなり、ストレージ15及び保護負荷16側がカソードとなる向きで設けられている。このため、バイパススイッチQaのON/OFFに関わらず、オルタネータ11及び二次電池13側から保護負荷16側への電力供給は可能である。
なお、図2に示すように、バイパススイッチQaは、例えば1つMOSFET等で構成されている。この場合、バイパスダイオードDaは、バイパススイッチQaとしてのMOSFETのボディダイオードとなる。
本実施形態の電圧変換回路24は、例えばオルタネータ11側から入力される直流電力を降圧してストレージ15に出力する一方、ストレージ15から入力される直流電力を昇圧するものである。詳細には、電圧変換回路24は、例えば互いに直列に接続された2つの変換スイッチング素子Qb1,Qb2を有している。両変換スイッチング素子Qb1,Qb2は、例えばn型のMOSFETで構成されている。第1変換スイッチング素子Qb1のドレインは、バイパス線La、詳細にはバイパス線LaにおけるバイパススイッチQaと第2入出力部22とを接続する部分に接続されている。第2変換スイッチング素子Qb2のソースはグランドに接続されている。また、電圧変換回路24は、第1変換スイッチング素子Qb1のソースと第2変換スイッチング素子Qb2のドレインとを接続する第1接続線Lb1と、第1接続線Lb1と第3入出力部23とを接続する第2接続線Lb2とを有している。第2接続線Lb2上にはコイルLが設けられている。
かかる構成によれば、両変換スイッチング素子Qb1,Qb2が交互にON/OFFすることにより、電圧変換回路24にて電圧変換が行われる。この場合、電圧変換回路24の変圧比は、両変換スイッチング素子Qb1,Qb2のON/OFFのデューティ比によって決まる。このため、上記デューティ比の制御によって、電圧変換回路24の出力電圧の調整が可能となっている。なお、以降の説明において、デューティ比とは、特に断りがない限り、両変換スイッチング素子Qb1,Qb2のON/OFFのデューティ比を意味する。
図1に示すように、車両電源装置10は、給電線L1の電圧である給電線電圧V1を検出する第1電圧センサ31と、保護負荷16の入力電圧である保護負荷電圧V2を検出する第2電圧センサ32と、ストレージ15の電圧であるストレージ電圧V3を検出する第3電圧センサ33とを備えている。
車両電源装置10は、DC/DCコンバータ部20を制御する制御部34を備えている。制御部34は、電圧変換回路24(詳細には両変換スイッチング素子Qb1,Qb2)及びバイパススイッチQaを制御するものである。制御部34は、各電圧センサ31〜33と接続されており、これら各電圧センサ31〜33の検出結果に基づいて、各電圧V1〜V3を把握する。制御部34は、ECU102と情報のやり取りが可能に構成されており、車両100の状態(例えば回生電力の発生中やアイドルストップ中等)を把握可能となっている。制御部34は、車両100の状態に応じて、電圧変換回路24及びバイパススイッチQaを制御することにより、通常負荷14及び保護負荷16に対して電力供給を行うとともに二次電池13及びストレージ15の充放電制御を行う電力制御処理を実行する。当該電力制御処理について図3を用いて以下に説明する。なお、電力制御処理は、定期的又は車両100の状態が変わる度に実行される。
図3に示すように、制御部34は、まずステップS101にて、オルタネータ11が稼働中か否かを判定する。オルタネータ11の稼働とは、エンジン101の駆動によってオルタネータ11にて発電が行われている場合や、オルタネータ11にて回生電力が発生している場合を含む。換言すれば、ステップS101の処理は、オルタネータ11が発電中か否かを判定する処理とも言える。
制御部34は、オルタネータ11が稼働している場合(例えば回生時)には、ステップS102に進み、バイパススイッチQaをON状態にする。そして、制御部34は、ステップS103にて、オルタネータ11の発電電力(例えば回生電力)を用いてストレージ15を充電させるストレージ充電処理を実行する。詳細には、制御部34は、給電線L1及びバイパス線Laを介して電圧変換回路24に入力される発電電力が充電に適した電圧の直流電力に変換(降圧)されるように、給電線電圧V1及びストレージ電圧V3に基づいて、デューティ比を調整する。ステップS102及びステップS103の処理を実行する制御部34が「回生時制御部」に対応する。なお、ON状態とは導通状態とも接続状態とも言え、OFF状態とは非導通状態とも遮断状態とも言える。
かかる構成によれば、図4の一点鎖線に示すように、回生時等のオルタネータ11の稼働時には、オルタネータ11の発電電力(例えば回生電力)は、二次電池13及び通常負荷14に供給されるとともに、バイパススイッチQa(バイパスダイオードDa)を介して保護負荷16に供給される。また、発電電力の一部は電圧変換回路24に入力され、ストレージ15の充電に適した電圧の直流電力に変換される。そして、その変換された直流電力は、第3入出力部23から出力され、ストレージ線L3を介してストレージ15に入力される。これにより、ストレージ15の充電が行われる。
ストレージ15は内部抵抗が小さく、充電許容電流が大きいため、DC/DCコンバータ部20で充電に適した電圧に制御すると二次電池13よりも電力をより多く吸収する。
図3に示すように、制御部34は、オルタネータ11が稼働していない場合には、ステップS101を否定判定し、ステップS104に進む。ステップS104では、制御部34は、アイドルストップ中であるか否かを判定する。
なお、アイドルストップ中は、オルタネータ11は稼働していないため、オルタネータ11からの電力供給は行われない。また、アイドルストップは、車両100の運転中に行われるため、アイドルストップ時におけるストレージ15のSOCは比較的高い。
制御部34は、アイドルストップ中であると判定した場合には、ステップS105に進み、バイパススイッチQaをON状態にする。そして、制御部34は、ステップS106にて、ストレージ15の放電電力を用いて保護負荷16及び通常負荷14に電力供給を行うストレージ放電処理を実行する。詳細には、制御部34は、ストレージ線L3を介して電圧変換回路24に入力される放電電力が保護負荷16及び通常負荷14の動作可能な電圧であって且つ二次電池13の電圧と同一又はそれよりも若干高い電圧の直流電力に変換(昇圧)されるように、各電圧V1〜V3に基づいてデューティ比を調整する。ステップS105及びステップS106の処理を実行する制御部34が「アイドルストップ時制御部」に対応する。
かかる構成によれば、図5の一点鎖線に示すように、アイドルストップ中には、ストレージ15の放電電力による通常負荷14及び保護負荷16への電力供給が行われる。これにより、通常負荷14及び保護負荷16の動作が継続される。一方、ストレージ15から二次電池13への電力供給、及び、二次電池13から通常負荷14への電力供給は抑制される。すなわち、アイドルストップ中は、二次電池13よりもストレージ15が優先的に使用される。
図3に示すように、制御部34は、アイドルストップ中ではない場合にはステップS104を否定判定し、ステップS107に進む。ステップS107では、制御部34は、エンジン101の再始動時か否かを判定する。
制御部34は、再始動時であると判定した場合には、ステップS108に進み、バイパススイッチQaをOFF状態にする。そして、制御部34は、ステップS109にて、ストレージ15の放電電力を用いて保護負荷16に電力供給を行うストレージ放電処理を実行する。詳細には、制御部34は、ストレージ線L3を介して電圧変換回路24に入力される放電電力が保護負荷16の動作可能な電圧の直流電力に変換(昇圧)されるように、保護負荷電圧V2及びストレージ電圧V3に基づいてデューティ比を調整する。ステップS108及びステップS109の処理を実行する制御部34が「再始動時制御部」に対応する。
かかる構成によれば、図6の一点鎖線に示すように、再始動時には、ストレージ15の放電電力を用いて保護負荷16への電力供給が行われる一方、電圧変換回路24を介するストレージ15から給電線L1への電力供給が規制される。そして、二次電池13の放電電力を用いてスタータ12及び通常負荷14への電力供給が行われる。この場合、再始動に伴って給電線電圧V1が一時的に低下する一方、保護負荷電圧V2は、一定に維持される。
ここで、詳細な説明は省略するが、車両100の状態としては、上述した状態に限られず、他の状態も考えられる。この場合、制御部34は、車両100の各状態に応じて、実行する処理を適宜選択するとよい。例えば、制御部34は、ストレージ15の充電量が所定値以上であり、且つ、車両100の走行中である場合には、オルタネータ11を停止し、ステップS105及びステップS106の処理を実行するとよい。
また、車両100の状態として、例えばエンジン101が停止している状況下で通常負荷14及び保護負荷16への電力供給が行われるACC状態がある。この場合、図7に示すように、制御部34は、電圧変換回路24を動作させることなく、二次電池13を用いて通常負荷14及び保護負荷16に電力供給を行うとよい。これにより、長時間運転が行われなかったことに起因してストレージ15に電力が溜まっていない場合等に対応できる。この場合、バイパススイッチQaについては、ON状態でもよいし、OFF状態でもよい。バイパススイッチQaがOFF状態である場合、バイパスダイオードDaを介して、保護負荷16への電力供給が行われる。すなわち、ACC状態において、バイパススイッチQaを制御するために、制御部34を動作させる必要はない。
なお、制御部34は、ストレージ15のSOCが比較的低いことが想定されるエンジン101の初始動時には、二次電池13を用いて、通常負荷14、保護負荷16及びスタータ12に電力供給を行うとよい。
以上詳述した本実施形態によれば以下の作用効果を奏する。
(1)エンジン101のアイドルストップを行うアイドル制御部103を有する車両100に搭載される車両電源装置10は、オルタネータ11と、二次電池13と、アイドルストップからのエンジン101の再始動時にエンジン101の出力軸101aを回転駆動させるスタータ12と、通常負荷14とを備えている。車両電源装置10は、これらオルタネータ11、二次電池13、スタータ12及び通常負荷14を互いに並列接続する給電線L1と、当該給電線L1に接続されたDC/DCコンバータ部20とを備えている。車両電源装置10は、ストレージ線L3によってDC/DCコンバータ部20に接続され、当該ストレージ線L3及びDC/DCコンバータ部20を介して給電線L1に接続されているストレージ15と、負荷線L2によってDC/DCコンバータ部20に接続されている保護負荷16とを備えている。
DC/DCコンバータ部20は、給電線L1と負荷線L2とを接続するものであってバイパススイッチQaが設けられたバイパス線Laと、バイパス線Laとストレージ線L3とに接続された電圧変換回路24とを備えている。車両電源装置10は、バイパススイッチQa及び電圧変換回路24を制御する制御部34を備えている。制御部34は、再始動時に、バイパススイッチQaをOFF状態にすることにより、電圧変換回路24を介したストレージ15から給電線L1への電力供給を規制する。また、制御部34は、回生電力の発生時に、給電線L1及びバイパス線Laを介して電圧変換回路24に入力される回生電力を電圧変換回路24にて電圧変換させ、その変換された電力を、ストレージ線L3を介してストレージ15に供給させることにより、ストレージ15の充電を行う。
かかる構成によれば、オルタネータ11にて発電された発電電力や二次電池13の放電電力を、バイパス線Laを介して保護負荷16に供給することができる。また、再始動時には、電圧変換回路24を介したストレージ15から給電線L1への電力供給が規制されているため、スタータ12に電力供給が行われることに起因する保護負荷電圧V2の低下を抑制できる。これにより、保護負荷16に対して安定した電圧の直流電力を供給することができる。
更に、本実施形態では、回生電力の発生時には、電圧変換回路24にて電圧変換された電力がストレージ15に供給されるため、ストレージ15の充電を好適に行うことができる。詳細には、ストレージ電圧V3は、ストレージ15のSOCに応じて変動するため、ストレージ15のSOCによっては、回生電力の電圧(二次電池13に適した電圧)とストレージ15の充電に適した電圧とのズレが大きくなり、ストレージ15の過充電等といった不都合が生じ得る。これに対して、本実施形態では、電圧変換回路24によって回生電力の電圧変換が行われるため、SOCの変動に伴うストレージ電圧V3の変動に関わらず、ストレージ15に対して充電に適した電圧の直流電力を供給できる。したがって、ストレージ電圧V3の変動に好適に対応できる。よって、ストレージ15として、SOCに応じてストレージ電圧V3が大きく変動するものを採用できるため、ストレージ15の選択自由度の向上を図ることができる。
(2)ストレージ15は、三元系のリチウム二次電池である。当該三元系のリチウム二次電池は、例えばチタン酸リチウムを用いたものと比較して、内部抵抗が小さく大容量なものとなり易い一方、ストレージ電圧V3の変動範囲が大きくなり易い。これに対して、本実施形態では、電圧変換回路24が設けられているため、ストレージ電圧V3の変動に好適に対応できる。これにより、三元系のリチウム二次電池を採用することによって生じ得る不都合、例えばストレージ電圧V3が過度に変動することによってストレージ15の過充電が行われストレージ15の寿命が短くなること等を抑制できる。
(3)制御部34は、アイドルストップ中である場合には、バイパススイッチQaをON状態にし、且つ、電圧変換回路24にてストレージ15の放電電力の電圧変換を行わせることにより、ストレージ15を用いて通常負荷14及び保護負荷16の双方に電力供給を行う。詳細には、制御部34は、アイドルストップ中である場合には、電圧変換回路24を用いて、ストレージ15の放電電力を、通常負荷14及び保護負荷16が動作可能な電圧であって且つ給電線電圧V1と同一又はそれよりも高い電圧の直流電力に変換し、その変換された直流電力をバイパス線Laに供給させる。かかる構成によれば、アイドルストップ中には、ストレージ15による通常負荷14への電力供給が行われるため、二次電池13の使用を抑制できる。これにより、二次電池13の充放電が繰り返し行われることに起因する二次電池13の寿命低下を抑制できる。
(第2実施形態)
以下、車両電源装置の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付すとともに、その詳細な説明を省略する。
本実施形態では、図8及び図9に示すように、車両電源装置40は、ストレージ線L3上に設けられた切り離しスイッチ41を備えている。切り離しスイッチ41は、ストレージ15と電圧変換回路24とを電気的に導通又は遮断するものであり、双方向の電力伝送を許容又は禁止するものである。詳細には、切り離しスイッチ41は、例えばボディダイオードが互いに逆向きに接続された2つのMOSFETQc1,Qc2で構成されている。制御部34は、切り離しスイッチ41を制御可能に構成されている。なお、切り離しスイッチ41のON状態とは、両MOSFETQc1,Qc2の双方がON状態であることを意味し、切り離しスイッチ41のOFF状態とは、両MOSFETQc1,Qc2の双方がOFF状態であることを意味する。
車両電源装置40の制御部34は、各電圧V1〜V3に基づいて車両電源装置40の異常を検知する異常検知部42を備えている。異常検知部42は、例えば、バイパススイッチQaの異常及びストレージ15の異常の少なくとも一方(本実施形態では双方)を検知する。詳細には、異常検知部42は、再始動時に、保護負荷電圧V2が給電線電圧V1と同一又はそれに近づくように低下した場合には、バイパススイッチQaにて短絡異常が発生していると判定する。また、異常検知部42は、ストレージ電圧V3が異常閾値よりも低くなった場合、例えばストレージ電圧V3が「0」に近い場合には、ストレージ15にて異常が発生していると判定する。
制御部34は、通常時、詳細には異常検知部42により異常が検知されていない場合には、切り離しスイッチ41をON状態にする。一方、制御部34は、車両電源装置40の異常発生時、詳細には異常検知部42により異常が検知された場合には、切り離しスイッチ41をON状態からOFF状態に切り替えることにより、ストレージ15をDC/DCコンバータ部20から切り離す。
例えば、図10に示すように、制御部34は、再始動時にバイパススイッチQaの短絡異常が発生していることが検知された場合には、切り離しスイッチ41をON状態からOFF状態に切り替える。これにより、バイパススイッチQaを介してストレージ15からスタータ12に向かう電力供給が規制される。この場合、保護負荷16には、二次電池13から電力が供給される。
また、図11に示すように、制御部34は、ストレージ15の異常が検知された場合には、切り離しスイッチ41をON状態からOFF状態に切り替える。この場合、制御部34は、バイパススイッチQaをON状態にする。これにより、保護負荷16には、二次電池13から電力が供給される。
また、車両100がイグニッションONされたとき、すなわち初期始動時、ストレージ15の電圧が低い状態であると、二次電池13が通常負荷14と保護負荷16の両方に電力を供給する。この際、ストレージ電圧V3の異常時と同様に切り離しスイッチ41をOFF状態にする。電圧変換回路24の回路構成によっては二次電池13の電力がストレージ15へ供給されてしまう虞があるが、切り離しスイッチ41をOFF状態にすることで、保護負荷16へ確実に供給することもできる。
また、電圧変換回路24の中には、昇降圧する機能と兼ねて、バイパス線Laからストレージ線L3への短絡を防止するスイッチとストレージ線L3からDC/DCコンバータ部20のGNDへの短絡を防止するスイッチとが既に設けられている。この場合、切り離しスイッチ41を設置すると、二次電池13からストレージ15への短絡を2重で遮断することが可能で、バイパススイッチQaがあることからストレージ15から二次電池13への短絡も2重で遮断することが可能になる。また、ストレージ15からGNDへの短絡も2重で遮断することが可能になる。
以上詳述した本実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて以下の効果を奏する。
(4)ストレージ線L3上には、ストレージ15と電圧変換回路24とを電気的に導通又は遮断する切り離しスイッチ41が設けられている。かかる構成によれば、例えばバイパススイッチQaやストレージ15に異常が発生した場合には、切り離しスイッチ41を用いてストレージ15とDC/DCコンバータ部20(電圧変換回路24)とを電気的に切り離することができる。これにより、バイパススイッチQaやストレージ15の異常に起因して別の異常が発生することを抑制できる。
詳述すると、仮にバイパススイッチQaの短絡異常が発生している状況下で再始動が行われると、バイパススイッチQaを介する電圧変換回路24からスタータ12への電力供給が行われ得る。この場合、ストレージ15の内部抵抗は、二次電池13の内部抵抗よりも低いため、ストレージ15からスタータ12に向けて比較的大きな電流が流れ得る。すると、給電線L1やバイパス線La、電圧変換回路24に異常が発生し得る。また、仮にストレージ15に異常が発生している状況下でストレージ15から保護負荷16への電力供給が行われると、保護負荷電圧V2が異常値となり保護負荷16に異常が生じたり、保護負荷16の動作が安定しなくなったりする。これに対して、本実施形態では、上記のような異常時には切り離しスイッチ41を用いてストレージ15をDC/DCコンバータ部20から電気的に切り離すことによって、バイパススイッチQaやストレージ15の異常に起因する連鎖的な異常等を抑制できる。また、電圧変換回路24の動作に異常をきたし、ストレージ線L3を介してストレージ15に対して過充電、過放電、過電圧の制御をした場合でも、切り離しスイッチ41をOFF状態にすることでストレージ15を保護することもできる。
(5)特に、バイパス線Laや給電線L1ではなく、ストレージ線L3上に切り離しスイッチ41が設けられているため、安全性の更なる向上を図ることができる。詳述すると、仮にバイパス線Laや給電線L1に安全用スイッチが設けられている構成において、通常負荷14や保護負荷16を構成する機器の短絡故障等でバイパス線La及び給電線L1に過電流が流れた場合には、バイパススイッチQa及び安全用スイッチの双方に過電流が流れることとなり、両者に異常が発生し得る。すると、安全用スイッチを用いてストレージ15からスタータ12への電力供給を規制することができない場合が生じ得る。これに対して、ストレージ線L3は、DC/DCコンバータ部20を介して給電線L1に接続されているため、仮に給電線L1等に過電流が流れた場合であっても、ストレージ線L3にはその影響が及びにくい。このため、仮にバイパススイッチQaにて短絡異常が発生するような過電流が給電線L1やバイパス線Laに流れたとしても、ストレージ線L3上に設けられている切り離しスイッチ41には異常が発生しにくく、ストレージ15が短絡故障した場合は電圧変換回路24が電流制限するため、切り離しスイッチ41には異常が生じにくい。したがって、バイパススイッチQaと切り離しスイッチ41との双方に同時に異常が発生する事態を抑制することができ、それを通じて安全性の更なる向上を図ることができる。
(6)制御部34は、ストレージ15の異常を検知する異常検知部42を備え、当該異常検知部42によってストレージ15の異常が検知されたことに基づいて、切り離しスイッチ41をON状態からOFF状態に切り替える。これにより、ストレージ15の異常に起因する、他の異常の発生及び保護負荷電圧V2の不安定化を抑制できる。
(7)異常検知部42は、再始動時において、バイパススイッチQaの短絡異常を検知する。そして、制御部34は、再始動時に、異常検知部42によってバイパススイッチQaの短絡異常が検知されたことに基づいて、切り離しスイッチ41をON状態からOFF状態に切り替える。これにより、バイパススイッチQaの短絡異常に起因する他の異常の発生を抑制できる。
(第3実施形態)
以下、車両電源装置の第3実施形態について説明する。なお、第2実施形態と同様の構成については同一の符号を付すとともに、その詳細な説明を省略する。
図12に示すように、本実施形態の電圧変換回路50は、給電線L1から入力される電力を昇圧又は降圧してストレージ15に出力可能であり、且つ、ストレージ15から入力される放電電力を昇圧又は降圧して給電線L1に出力可能に構成されている。詳細には、電圧変換回路50は、ブリッジ接続された4つの変換スイッチング素子Qb1〜Qb4と、両変換スイッチング素子Qb1,Qb2の接続線と両変換スイッチング素子Qb3,Qb4の接続線とを繋ぐライン上に設けられたコイルLとを備えている。
各変換スイッチング素子Qb1〜Qb4は、例えばn型のMOSFETで構成されている。第1変換スイッチング素子Qb1のドレインは、第3入出力部23に接続されている。第3変換スイッチング素子Qb3のドレインは、バイパス線LaにおけるバイパススイッチQaと第2入出力部22との間の部分に接続されている。第2変換スイッチング素子Qb2及び第4変換スイッチング素子Qb4のソースはグランドに接続されている。
制御部34は、各電圧V1〜V3に基づいて各変換スイッチング素子Qb1〜Qb4を制御することにより、電圧変換回路50にて電圧変換を行わせる。
例えば、制御部34は、オルタネータ11が稼働中である状況において給電線電圧V1がストレージ15の充電に適した電圧よりも低い場合には、電圧変換回路50にて昇圧動作が行われるように各変換スイッチング素子Qb1〜Qb4を制御する。
また、制御部34は、アイドルストップ中である状況においてストレージ電圧V3が給電線電圧(換言すれば二次電池13の電圧)V1よりも過度に高い場合には、給電線電圧V1と同一又はそれよりも若干高い電圧の直流電力が給電線L1に供給されるように電圧変換回路50にて降圧動作を行わせる。制御部34は、再始動時には、バイパススイッチQaをOFF状態にし、ストレージ15から保護負荷16に対してブリッジ接続された4つの変換スイッチング素子Qb1〜Qb4を使用し、昇圧もしくは降圧により電力を供給する。
以上詳述した本実施形態によれば、仮にストレージ電圧V3が給電線電圧V1よりも高くなり得る場合であっても、ストレージ15の充放電を好適に行うことができる。これにより、ストレージ15として、より電圧範囲の大きい蓄電装置を採用することができるため、ストレージ15の選択自由度の更なる向上を図ることができる。
(第4実施形態)
以下、車両電源装置の第4実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付すとともに、その詳細な説明を省略する。
図13に示すように、本実施形態の車両電源装置60は、第1保護負荷61と第2保護負荷62とを別々に有している。第1保護負荷61と第2保護負荷62とは直接接続されていない。なお、両保護負荷61,62の特性は、第1実施形態の保護負荷16と同様である。
本実施形態の車両電源装置60は、両保護負荷61,62が設けられていることに対応させて、2つのDC/DCコンバータ部70,80を備えている。
図14に示すように、両DC/DCコンバータ部70,80は同一の構成である。本実施形態では、両DC/DCコンバータ部70,80は、第1実施形態のDC/DCコンバータ部20と同様の構成となっている。詳細には、第1DC/DCコンバータ部70は、第1バイパススイッチQa1が設けられた第1バイパス線La1と、3つの入出力部71〜73と、第1電圧変換回路74とを備えている。第2DC/DCコンバータ部80は、第2バイパススイッチQa2が設けられた第2バイパス線La2と、3つの入出力部81〜83と第2電圧変換回路84とを備えている。両電圧変換回路74,84はそれぞれ、変換スイッチング素子Qb1,Qb2と、両変換スイッチング素子Qb1,Qb2を接続する第1接続線Lb1と、コイルLが設けられた第2接続線Lb2と、を有している。
車両電源装置60は、第1DC/DCコンバータ部70と第1保護負荷61とを接続する第1負荷線L21を備えている。第1負荷線L21は、第1DC/DCコンバータ部70の第2入出力部72(詳細には第1バイパス線La1)と、第1保護負荷61とを接続している。
車両電源装置60は、第2DC/DCコンバータ部80と第2保護負荷62とを接続する第2負荷線L22を備えている。第2負荷線L22は、第2DC/DCコンバータ部80の第2入出力部82(詳細には第2バイパス線La2)と、第2保護負荷62とを接続している。
本実施形態の給電線L1は二股に分岐しており、第1DC/DCコンバータ部70の第1入出力部71、及び、第2DC/DCコンバータ部80の第1入出力部81の双方に接続されている。両DC/DCコンバータ部70,80は互いに並列に接続されている。
図13及び図14に示すように、本実施形態のストレージ線L3は、ストレージ15と、両DC/DCコンバータ部70,80とを接続している。詳細には、図14に示すように、ストレージ線L3は、ストレージ15に接続されている共通線L30と、共通線L30から分岐した第1分岐線L31及び第2分岐線L32とを有している。第1分岐線L31は、第1DC/DCコンバータ部70の第3入出力部73(詳細には第2接続線Lb2)に接続されており、第2分岐線L32は、第2DC/DCコンバータ部80の第3入出力部83(詳細には第2接続線Lb2)に接続されている。
かかる構成によれば、図14の一点鎖線に示すように、給電線L1とストレージ15との間の電力伝送経路として、第1DC/DCコンバータ部70を経由する経路と、第2DC/DCコンバータ部80を経由する経路との2つの経路が存在する。
制御部34は、車両100の状態に応じて、両バイパススイッチQa1,Qa2及び両電圧変換回路74,84を制御する。
例えば、制御部34は、オルタネータ11が稼働中である場合(例えば回生時)には、両バイパススイッチQa1,Qa2をON状態にし、両DC/DCコンバータ部70,80を経由して給電線L1から両保護負荷61,62に向けて電力供給を行う。更に、制御部34は、オルタネータ11が稼働中である場合には、両電圧変換回路74,84にて降圧動作を行わせることにより、両電圧変換回路74,84からストレージ15に向けてストレージ15の充電に適した電圧の直流電力を出力させる。これにより、ストレージ15の充電が好適に行われる。この場合、2つのDC/DCコンバータ部70,80を用いることにより、ストレージ15に供給する電力を大きくすることが可能となる。また、スイッチングの位相を180度ずらすことで電圧変動を小さくすることもできる(インターリーブ動作)。
制御部34は、アイドルストップ中には、両電圧変換回路74,84にて電圧変換動作が行われるように両電圧変換回路74,84の変換スイッチング素子Qb1,Qb2を周期的にON/OFFする。これにより、ストレージ15から第1DC/DCコンバータ部70を介して保護負荷61への電力供給が行われ、第2DC/DCコンバータ部80を介して保護負荷62への電力供給が行われる。更に、制御部34は、アイドルストップ中には、両DC/DCコンバータ部70,80から通常負荷14への電力供給が行われるように両バイパススイッチQa1,Qa2をON状態にする。
制御部34は、再始動時には、両電圧変換回路74,84にて電圧変換動作が行われるように両電圧変換回路74,84の変換スイッチング素子Qb1,Qb2を周期的にON/OFFする。これにより、ストレージ15から第1DC/DCコンバータ部70を介して保護負荷61への電力供給が行われ、第2DC/DCコンバータ部80を介して保護負荷62への電力供給が行われる。更に、制御部34は、再始動時には、両バイパススイッチQa1,Qa2をOFF状態にすることにより、ストレージ15から通常負荷14への電力供給を規制する。
なお、図示は省略するが、車両電源装置60は、給電線電圧V1、第1保護負荷61の入力電圧である第1保護負荷電圧V2a、第2保護負荷62の入力電圧である第2保護負荷電圧V2b及びストレージ電圧V3を検知し、その検知結果を制御部34に出力する電圧検知部を有している。制御部34は、各電圧V1,V2a,V3に基づいて、第1電圧変換回路74の変換スイッチング素子Qb1,Qb2のデューティ比を調整し、各電圧V1,V2b,V3に基づいて、第2電圧変換回路84の変換スイッチング素子Qb1,Qb2のデューティ比を調整する。
次に本実施形態の作用について説明する。
図15に示すように、例えば第2バイパススイッチQa2のオープンエラーが発生している状況においてアイドルストップ中である場合、第1バイパススイッチQa1がON状態となり、第2電圧変換回路84にて昇圧動作が行われる。これにより、共通線L30→第2分岐線L32→第2DC/DCコンバータ部80の第2接続線Lb2→第2電圧変換回路84→第2バイパス線La2→第2負荷線L22で構成された第1電力伝送経路EL1を通ってストレージ15から第2保護負荷62への電力供給が行われる。この場合、第2DC/DCコンバータ部80から通常負荷14への電力供給は行われないが、第1バイパススイッチQa1がON状態となっているため、第1DC/DCコンバータ部70から通常負荷14への電力供給が行われる。これにより、ストレージ15を用いた通常負荷14への電力供給は行われる。なお、オープンエラーとは、スイッチング素子にON信号が入力されているにも関わらずスイッチング素子がOFF状態に固定された異常である。
図16に示すように、例えば第2電圧変換回路84の両変換スイッチング素子Qb1,Qb2のオープンエラーが発生している状況においてアイドルストップ中である場合には、両バイパススイッチQa1,Qa2がON状態となり、第1電圧変換回路74にて昇圧動作が行われる。これにより、共通線L30→第1分岐線L31→第1DC/DCコンバータ部70の第2接続線Lb2→第1電圧変換回路74→第1バイパス線La1→給電線L1→第2バイパス線La2→第2負荷線L22で構成された第2電力伝送経路EL2を通ってストレージ15から第2保護負荷62への電力供給が行われる。すなわち、本実施形態の車両電源装置60は、ストレージ15から第2保護負荷62への電力伝送経路ELとして、第1電力伝送経路EL1と第2電力伝送経路EL2とを有している。
ちなみに、第2バイパススイッチQa2のオープンエラーが発生している場合には、第1バイパススイッチQa1がON状態となるとともに、第1電圧変換回路74にて降圧動作が行われ且つ第2電圧変換回路84にて昇圧動作が行われる。これにより、給電線L1→第1バイパス線La1→第1電圧変換回路74→第1分岐線L31→第2分岐線L32→第2電圧変換回路84→第2バイパス線La2→第2負荷線L22を経由して、オルタネータ11から第2保護負荷62への電力供給が行われる。
また、制御部34は、二次電池13が第1保護負荷61と第2保護負荷62の使用電圧範囲内である場合は、第1バイパススイッチQa1と、第1電圧変換回路74及び第2電圧変換回路84の第1変換スイッチング素子Qb1とをON状態にして、昇降圧動作なしで電力を供給できる。
なお、第1DC/DCコンバータ部70の異常が発生した場合は、電力伝送経路が第1DC/DCコンバータ部70と第2DC/DCコンバータ部80とで反対となる点を除いて、第2DC/DCコンバータ部80の異常が発生した場合と同様である。すなわち、本実施形態の車両電源装置60は、両DC/DCコンバータ部70,80のいずれか一方に異常が発生した場合であっても、他方を用いて両保護負荷61,62に電力供給を行うことが可能となっている。
また、回生動作時において、例えば第2バイパススイッチQa2のオープンエラーが発生しているときでも、給電線L1→第1バイパス線La1→第1電圧変換回路74→第1分岐線L31→第2分岐線L32→第2電圧変換回路84→第2バイパス線La2を経由して第2保護負荷62に電力を供給できる。
以上詳述した本実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて以下の効果を奏する。なお、以下の説明では、例示として第2DC/DCコンバータ部80の異常時について説明するが、第1DC/DCコンバータ部70の異常時についても同様の効果を奏する。
(8)車両電源装置60は、保護負荷61,62と、給電線L1に接続されたバイパス線La1,La2を有するDC/DCコンバータ部70,80と、保護負荷61,62とバイパス線La1,La2とを接続する負荷線L21,L22とを備えている。ストレージ線L3は、両負荷線L21,L22とは別に設けられており、両電圧変換回路74,84の双方に接続されている。かかる構成によれば、給電線L1とストレージ15との間の電力伝送経路として、第1DC/DCコンバータ部70を経由する経路と、第2DC/DCコンバータ部80を経由する経路とが存在する。これにより、両DC/DCコンバータ部70,80のいずれか一方に異常が発生した場合には、他方を経由する経路で電力伝送を行うことにより、ストレージ15の充放電を行うことができる。また、両DC/DCコンバータ部70,80が正常である場合には、両DC/DCコンバータ部70,80の双方を用いてストレージ15の充電を行うことができるため、ストレージ15の充電に係る電力を大きくでき、また、スイッチングの位相を180度ずらすことで電圧変動を小さくすることもできる(インターリーブ動作)。これにより、回生電力を用いたストレージ15の充電を、より好適に行うことができる。
特に、保護負荷16は車両100の運転に関する重要部品が含まれる場合がある。また、ストレージ15にリチウム二次電池等を選択した場合、過充電や過放電が行われないように高い信頼性が求められる。このため、ストレージ15への電力供給や遮断に関して、2重系の設計が求められ、1つの部品が故障しても動作しなければならない。これに対して、本実施形態では、両DC/DCコンバータ部70,80のいずれか一方に異常が発生した場合であっても、ストレージ15の充放電を行うことができる。これにより、安全性の更なる向上を図ることができる。
(9)ストレージ15から第2保護負荷62への電力伝送経路ELは、第2DC/DCコンバータ部80を経由する第1電力伝送経路EL1と、第1DC/DCコンバータ部70、給電線L1の一部及び第2バイパス線La2を経由する第2電力伝送経路EL2とを有している。かかる構成によれば、第2電力伝送経路EL2を用いることにより、第2電圧変換回路84を経由することなく、ストレージ15による第2保護負荷62への電力供給を行うことができる。これにより、仮に第2電圧変換回路84にて異常が発生した場合であっても両保護負荷61,62への電力供給ができるため、第2電圧変換回路84の異常に好適に対応できる。
(10)制御部34は、第1バイパススイッチQa1をON状態にするとともに、第1電圧変換回路74にて降圧動作が行われ且つ第2電圧変換回路84にて昇圧動作が行われるように制御する。これにより、給電線L1→第1バイパス線La1→第1電圧変換回路74→第1分岐線L31→第2分岐線L32→第2電圧変換回路84→第2バイパス線La2→第2負荷線L22を経由して、オルタネータ11から第2保護負荷62への電力供給が行われる。
また、二次電池13が第1保護負荷61と第2保護負荷62の使用電圧範囲内である場合は、第1バイパススイッチQa1と、第1電圧変換回路74及び第2電圧変換回路84の第1変換スイッチング素子Qb1とをON状態にすることにより、昇降圧動作なしで電力を供給できる。
つまり第2バイパススイッチQa2のオープンエラーが発生している状況においても第2保護負荷62への電力供給ができる。
(第5実施形態)
以下、車両電源装置の第5実施形態について説明する。なお、第4実施形態と同様の構成については同一の符号を付すとともに、その詳細な説明を省略する。
図17に示すように、本実施形態の車両電源装置90は、両DC/DCコンバータ部70,80を介することなく、給電線L1とストレージ15とを接続する特定バイパス線L4を備えている。特定バイパス線L4は、両バイパス線La1,La2と比較して、大電流を流すことが可能な配線である。
特定バイパス線L4上には、給電線L1とストレージ15とを電気的に導通又は遮断する特定バイパススイッチ91が設けられている。特定バイパススイッチ91は、例えばボディダイオードが互いに逆向きになるように直列接続された2つのMOSFETで構成されている。但し、特定バイパススイッチ91の具体的な構成は任意である。なお、特定バイパススイッチ91は、通常時(初期状態)ではOFF状態である。
制御部34は、車両100の状態に応じて、特定バイパススイッチ91をON/OFF制御する。例えば、制御部34は、再始動時に、特定バイパススイッチ91を所定期間に亘ってON状態にすることにより、両DC/DCコンバータ部70,80を経由しないストレージ15からスタータ12への電力供給を許容する。
詳細には、制御部34は、再始動が開始された場合には、給電線電圧V1がストレージ電圧V3以下となるまで特定バイパススイッチ91をOFF状態に維持する。なお、特定バイパススイッチ91がOFF状態である場合のストレージ電圧V3をストレージ電圧V3の初期値とする。
その後、制御部34は、再始動に伴って給電線電圧V1が低下してストレージ電圧V3の初期値以下となったことに基づいて、特定バイパススイッチ91をOFF状態からON状態に切り替える。これにより、特定バイパス線L4を介するストレージ15から給電線L1(詳細にはスタータ12)への電力供給が行われる。
制御部34は、給電線電圧V1がストレージ電圧V3の初期値となるまで特定バイパススイッチ91をON状態に維持する。そして、制御部34は、給電線電圧V1が上記初期値よりも高くなったことに基づいて、特定バイパススイッチ91をON状態からOFF状態に切り替える。これにより、ストレージ15からスタータ12への電力供給が停止する。なお、再始動中における両バイパススイッチQa1,Qa2はOFF状態である。
この構成以外に、制御部34は、再始動が始まる前に特定バイパススイッチ91をON状態に維持し、両バイパススイッチQa1,Qa2をOFF状態にし、再始動時において給電線電圧V1がストレージ電圧V3以下になった時に電力供給を行ってもよい。
次に、図18を用いて本実施形態の再始動時における電圧変化について説明する。図18(c)において、実線は給電線電圧(換言すれば二次電池13の電圧)V1を示し、一点鎖線は、ストレージ電圧V3を示す。また、比較例として、ストレージ15からスタータ12への電力供給が行われない場合の給電線電圧V1の時間変化を二点鎖線で示す。
エンジン101の再始動時に特定バイパス線L4を介するストレージ15からスタータ12への電力供給が行われない場合、エンジン101の再始動は、二次電池13の電力のみを用いて行われる。このため、図18(c)の二点鎖線に示すように、再始動時において給電線電圧V1は大きく低下する。
これに対して、エンジン101の再始動時に特定バイパス線L4を介するストレージ15からスタータ12への電力供給が行われる場合、エンジン101の再始動は、二次電池13及びストレージ15の双方の電力を用いて行われる。
詳細には、図18(a)及び図18(c)に示すように、例えば給電線電圧V1がストレージ電圧V3よりも高い状況でスタータ12の駆動が開始されると、給電線電圧V1が低下する。そして、図18(b)及び図18(c)に示すように、給電線電圧V1がストレージ電圧V3まで低下したタイミングにて、特定バイパススイッチ91がOFF状態からON状態となり、ストレージ15によるアシストが開始される。この場合、図18(c)の実線及び二点鎖線に示すように、ストレージ15によるアシストがない場合と比較して、再始動時における給電線電圧V1の低下が抑制される。なお、図18(c)の一点鎖線に示すように、ストレージ電圧V3は、給電線電圧V1の低下に伴って低下する。
その後、給電線電圧V1及びストレージ電圧V3は徐々に上昇する。そして、図18(b)及び図18(c)に示すように、給電線電圧V1及びストレージ電圧V3がストレージ電圧V3の初期値に到達したことに基づいて、特定バイパススイッチ91がON状態からOFF状態に切り替わる。その後、図18(a)に示すように、スタータ12の駆動が終了し、アイドルストップからの再始動が終了する。
なお、通常時の給電線電圧V1とストレージ電圧V3との大小関係が図18(c)のとおりであれば、特定バイパススイッチ91はアノードがストレージ15側でカソードが二次電池13側の半導体素子としてのダイオードでもよい。すなわち、「半導体素子としての特定バイパススイッチ」とは、スイッチング素子やダイオード、又はこれらの組み合わせを含む。
以上詳述した本実施形態によれば、第4実施形態の効果に加えて以下の効果を奏する。
(11)車両電源装置90は、両DC/DCコンバータ部70,80を介することなく、給電線L1とストレージ15とを接続する特定バイパス線L4を備え、当該特定バイパス線L4上には給電線L1とストレージ15とを電気的に導通又は遮断する特定バイパススイッチ91が設けられている。かかる構成によれば、特定バイパススイッチ91をON/OFF制御することにより、両DC/DCコンバータ部70,80を介することなく、ストレージ15と給電線L1との間の電力伝送を行うことができる。
(12)制御部34は、再始動時に、特定バイパススイッチ91をON状態にする。これにより、二次電池13とストレージ15からスタータ12への電力供給が行われるため、再始動時における二次電池13の電圧変動を抑制できる。よって、二次電池13の電圧変動に起因する寿命の低下を抑制できる。
特に、アイドルストップシステムでは繰り返し再始動するため、二次電池13からスタータ12に大電流を流す頻度が多くなる。二次電池13が鉛蓄電池の場合は、瞬間的な大電流は、劣化を大きく進めてしまい易いといった問題がある。これに対して、本実施形態では、再始動時には、ストレージ15によるアシストによって二次電池13にて瞬間的な大電流が流れることを抑制できるため、上記問題を解決できる。
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
○ ストレージ15は、三元系のリチウム二次電池に限られず、他の二次電池でもよい。また、ストレージ15は、電気二重層キャパシタ等であってもよい。
○ バイパススイッチQaは、1つのMOSFETで構成されていたが、これに限られず、2つのMOSFETで構成されていてもよい。この場合、両MOSFETは、両ボディダイオードが互いに逆向きになるように直列接続されているとよい。つまり、バイパススイッチQaは、双方向の電力伝送を許容又は禁止する双方向スイッチであってもよい。これにより、意図しないオルタネータ11及び二次電池13側からストレージ15側への電力供給を抑制できる。
○ バイパススイッチや切り離しスイッチを構成するスイッチング素子及び電圧変換回路の変換スイッチング素子は、MOSFETに限られず、IGBT等任意である。
○ 制御部34とECU102とは、一体であってもよい。要は、制御部34とECU102とは、それぞれの機能を有していれば物理的に別体であってもよいし、一体でもよい。
○ 図19に示すように、コイルLのストレージ15側に両変換スイッチング素子Qb1,Qb2を配置し、第1変換スイッチング素子Qb1のドレインを第3入出力部23に接続する構成としてもよい。この場合、給電線電圧V1よりストレージ電圧V3を高くする回生時昇圧動作が可能となる。
○ 切り離しスイッチ41の設置箇所は任意である。例えば、図19に示すように、切り離しスイッチ41は、ストレージ15とグランドとを接続するライン上に設けられていてもよい。また、切り離しスイッチ41は、DC/DCコンバータ部20とユニット化されていてもよいし、ストレージ15とユニット化されていてもよい。
○ 第4実施形態では、2つのDC/DCコンバータ部70,80が設けられていたが、DC/DCコンバータ部の数としては、これに限られず、3つ以上であってもよい。要は、車両電源装置60は、給電線L1及びストレージ15の双方に接続され、且つ、互いに並列接続された複数のDC/DCコンバータ部を有していればよい。
○ 電圧変換回路の具体的な構成は、各実施形態のものに限られず任意である。
○ 第4実施形態において、両DC/DCコンバータ部70,80の第2接続線Lb2同士が接続されてもよい。この場合、ストレージ線L3は、両DC/DCコンバータ部70,80の第3入出力部73,83のうち少なくとも一方に接続されるとよい。
○ 第4実施形態において、両DC/DCコンバータ部70,80は、一体のユニットとなっていてもよいし、別体であってもよい。
○ 第5実施形態において、両DC/DCコンバータ部70,80と、特定バイパス線L4及び特定バイパススイッチ91とは一体のユニットとなっていてもよいし、別体であってもよい。
○ 上述した各実施形態及び上記別例を任意に組み合わせてもよい。例えば、特定バイパス線L4及び特定バイパススイッチ91は、他の実施形態の車両電源装置10,40,60に設けられてもよい。また、第4実施形態において、ストレージ線L3の共通線L30上に切り離しスイッチ41が設けられてもよい。
次に、上記各実施形態及び別例から把握できる好適な一例について以下に記載する。
(イ)車両に搭載される車両電源装置において、前記車両の回生時に回生電力を発生させる発電機と、充放電可能な第1蓄電装置と、通常負荷と、前記発電機、前記第1蓄電装置及び前記通常負荷を互いに並列接続する給電線と、前記給電線に接続されたDC/DCコンバータ部と、ストレージ線によって前記DC/DCコンバータ部に接続され、当該ストレージ線及び前記DC/DCコンバータ部を介して前記給電線に接続されている第2蓄電装置と、負荷線によって前記DC/DCコンバータ部に接続されている保護負荷と、前記DC/DCコンバータ部を制御する制御部と、を備え、前記DC/DCコンバータ部は、前記給電線と前記負荷線とを接続するバイパス線と、前記バイパス線と前記ストレージ線とに接続された電圧変換回路と、を備え、前記制御部は、前記回生電力の発生時に、前記給電線及び前記バイパス線を介して前記電圧変換回路に入力される回生電力を当該電圧変換回路にて電圧変換させ、その変換された電力を、前記ストレージ線を介して前記第2蓄電装置に供給させることにより、前記第2蓄電装置の充電を行う回生時制御部を備えていることを特徴とする車両電源装置。
なお、上記車両電源装置に対応する課題としては以下のとおりである。
第2蓄電装置の電圧は、充電状態に応じて変動する。このため、第2蓄電装置の充電状態によっては、回生電力がそのまま第2蓄電装置に供給されると、回生電力の電圧と、第2蓄電装置の充電に適した電圧とが大きくずれてしまい、第2蓄電装置の充電を適切に行うことができない場合が生じ得る。
これに対して、例えば充電状態に対する電圧の変動範囲が小さいものを第2蓄電装置として採用することも考えられる。しかしながら、このような電圧の変動範囲が小さい蓄電装置は、サイクル特性等の点において、電圧の変動範囲が大きい蓄電装置に劣る場合がある。このため、蓄電装置の選択自由度の向上を図るために、第2蓄電装置の電圧変動に対応できることが求められる。