JP6586768B2 - 成膜方法 - Google Patents

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本発明は、新規な結晶性酸化物半導体膜の成膜方法に関する。
高耐圧、低損失および高耐熱を実現できる次世代のスイッチング素子として、バンドギャップの大きな酸化ガリウム(Ga)を用いた半導体装置が注目されており、インバータなどの電力用半導体装置への適用が期待されている。しかも、広いバンドギャップからLEDやセンサー等の受発光装置としての応用も期待されている。当該酸化ガリウムは非特許文献1によると、インジウムやアルミニウムをそれぞれ、あるいは組み合わせて混晶することによりバンドギャップ制御することが可能であり、InAlGaO系半導体として極めて魅力的な材料系統を構成している。ここでInAlGaO系半導体とはInAlGa(0≦X≦2、0≦Y≦2、0≦Z≦2、X+Y+Z=1.5〜2.5)を示し、酸化ガリウムを内包する同一材料系統として俯瞰することができる。
InAlGaO系半導体の成長技術においては、MBE法などが先行しているが、実用の観点からは気相成長法などの、より量産性に優れた成長法による研究を進めることが必要である。非特許文献2には、ミストCVD法によりSnドープが可能なことが記載されている。また、特許文献1には、4価のSnをドーパントとして用いたα−Ga薄膜が記載されている。しかしながら、このように4価のSnをドーパントとして用いても、電気特性があまり良くならず、まだまだ実用化には到底至るものではなかった。
そのため、電気特性に優れたInAlGaO系半導体膜が得られる成膜方法が待ち望まれていた。
特開2013−28480号公報
金子健太郎、「コランダム構造酸化ガリウム系混晶薄膜の成長と物性」、京都大学博士論文、平成25年3月 赤岩和明ら、「ミストCVD法により成長したSnドープGa2O3薄膜の電気特性評価」第62回応用物理学会春季学術講演会予稿集、2015年東海大学湘南キャンパス
本発明は、電気特性に優れた半導体膜を形成することができる新規かつ有用な成膜方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、第1の半導体からなる第1の半導体膜を絶縁化させた後、第2の半導体の前駆体溶液を霧化または液滴化し、得られたミストまたは液滴を熱反応させることによって、絶縁化させた第1の半導体膜上に、第2の半導体からなる第2の半導体膜を成膜すると、驚くべきことに、電気特性に優れた半導体膜が得られることを見出し、この膜が、従来の問題を一挙に解決できるものであることを知見した。
また、本発明者らは、上記知見を得た後、さらに検討を重ねて本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の発明に関する。
[1] 第1の半導体からなる第1の半導体膜を絶縁化させた後、第2の半導体の前駆体溶液を霧化または液滴化し、得られたミストまたは液滴をキャリアガスでもって成膜室内に搬送し、ついで、成膜室内で前記ミストまたは液滴を熱反応させることによって、絶縁化させた第1の半導体膜上に、第2の半導体からなる第2の半導体膜を成膜することを特徴とする半導体膜の成膜方法。
[2] 第1の半導体が結晶性酸化物半導体である前記[1]記載の成膜方法。
[3] 結晶性酸化物半導体がコランダム構造を有する前記[2]記載の成膜方法。
[4] 第1の半導体がガリウムまたはインジウムを少なくとも含む前記[1]〜[3]のいずれかに記載の成膜方法。
[5] 第1の半導体膜が、第1の半導体の前駆体溶液を霧化または液滴化し、得られたミストまたは液滴をキャリアガスでもって成膜室内に搬送し、ついで、前記ミストまたは液滴を熱反応させることによって、成膜室内に設置されている基体上に成膜されてなる前記[1]〜[4]のいずれかに記載の成膜方法。
[6] 第2の半導体が結晶性酸化物半導体である前記[1]〜[5]のいずれかに記載の成膜方法。
[7] 第2の半導体の主成分が、第1の半導体の主成分と同じである前記[1]〜[6]のいずれかに記載の成膜方法。
[8] 第2の半導体の前駆体溶液がガリウムまたはインジウムを少なくとも含む前記[1]〜[7]のいずれかに記載の成膜方法。
[9] 第2の半導体の前駆体溶液がドーパントを含む前記[1]〜[8]のいずれかに記載の成膜方法。
[10]ドーパントがスズを少なくとも含む前記[9]記載の成膜方法。
[11]絶縁化処理がアニール処理である前記[1]〜[10]のいずれかに記載の成膜方法。
[12]アニール処理を、400℃〜500℃で行う前記[11]記載の成膜方法。
[13]前記[1]〜[12]のいずれかに記載の成膜方法により形成された半導体膜。
[14]前記[13]記載の半導体膜と電極とを少なくとも含む半導体装置。
本発明の成膜方法によれば、電気特性に優れた半導体膜が得られる。
本発明において用いられる成膜装置(ミストCVD)の概略構成図である。
本発明の成膜方法は、第1の半導体からなる第1の半導体膜を絶縁化させた後(絶縁化工程)、第2の半導体の前駆体溶液を霧化または液滴化し(霧化・液滴化工程)、得られたミストまたは液滴をキャリアガスでもって成膜室内に搬送し(搬送工程)、ついで、成膜室内で前記ミストまたは液滴を熱反応させることによって、絶縁化させた第1の半導体膜上に、第2の半導体からなる第2の半導体膜を成膜する(成膜工程)。
(第1の半導体膜)
第1の半導体膜は、第1の半導体からなる半導体膜であれば特に限定されない。第1の半導体としては、半導体であれば特に限定されず、例えば、酸化物半導体、窒化物半導体、炭化物半導体、ケイ素含有半導体などが挙げられるが、本発明においては、第1の半導体が、酸化物半導体であるのが好ましく、結晶性酸化物半導体であるのがより好ましい。前記結晶性酸化物半導体としては、例えば、βガリア構造を有する結晶性酸化物半導体、コランダム構造を有する結晶性酸化物半導体などが挙げられるが、本発明においては、前記結晶性酸化物半導体が、コランダム構造を有するのが好ましい。また、第1の半導体は、InAlGaO系半導体であるのが好ましく、ガリウムまたはインジウムを少なくとも含むのがより好ましく、ガリウムを少なくとも含むのが最も好ましい。
第1の半導体膜は、公知の手段を用いて成膜されてよいが、本発明においては、第1の半導体の前駆体溶液を霧化または液滴化し、得られたミストまたは液滴をキャリアガスでもって成膜室内に搬送し、ついで、前記ミストまたは液滴を熱反応させることによって、成膜室内に設置されている基体上に成膜されてなるのが好ましい。このようにして成膜することにより、第2の半導体膜の電気特性をより優れたものにすることができる。
第1の半導体の前駆体溶液は、ミストCVDにより、第1の半導体が得られる溶液であれば特に限定されない。前記前駆体溶液としては、例えば、金属の有機金属錯体(例えばアセチルアセトナート錯体等)やハロゲン化物(例えばフッ化物、塩化物、臭化物またはヨウ化物等)の水溶液などが挙げられる。前記金属は、半導体を構成可能な金属であればそれでよく、このような金属としては、例えば、ガリウム、インジウム、アルミニウム、鉄等が挙げられる。本発明においては、前記金属が、ガリウムまたはインジウムを少なくとも含むのが好ましく、ガリウムを少なくとも含むのがより好ましい。前駆体溶液中の金属の含有量は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、好ましくは、0.001モル%〜50モル%であり、より好ましくは0.01モル%〜50モル%である。
また、第1の半導体の前駆体溶液は、ドーパントが含まれているのが好ましい。ドーパントを含ませることにより、イオン注入等を行わずに、第1の半導体膜を形成することができる。前記ドーパントとしては、例えば前記金属が少なくともガリウムを含む場合には、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛などのn型ドーパント等が挙げられる。本発明においては、前記ドーパントがスズであるのが第2の半導体膜の電気特性をより向上させることができるので好ましい。なお、前記ドーパントを前駆体溶液に含ませる場合には、ハロゲン化物や錯体の形態にして含有させるのが好ましい。また、ドーピング量は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、前駆体溶液中、体積比で、0.001〜20%であるのが好ましく、0.01〜10%であるのがより好ましい。また、本発明においては、ノンドープも好ましい。
また、第1の半導体の前駆体溶液は、さらに、酸や塩基等のその他添加剤が含まれていてもよい。本発明においては、前駆体溶液に酸が含まれているのが好ましく、このような好ましい酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸などが挙げられる。
第1の半導体の前駆体溶液の溶媒は、特に限定されず、水等の無機溶媒であってもよいし、アルコール等の有機溶媒であってもよいし、無機溶媒と有機溶媒との混合溶媒であってもよい。本発明においては、前記溶媒が水を含むのが好ましく、水または水とアルコールとの混合溶媒であるのがより好ましい。
第1の半導体の前駆体溶液の霧化手段または液滴化手段は、前駆体溶液を霧化または液滴化できさえすれば特に限定されず、公知の手段であってよいが、本発明においては、超音波を用いる霧化手段または液滴化手段が好ましい。超音波を用いて得られたミストまたは液滴は、初速度がゼロであり、空中に浮遊するので好ましく、例えば、スプレーのように吹き付けるのではなく、空間に浮遊してガスとして搬送することが可能なミストであるので衝突エネルギーによる損傷がないためにより好ましい。液滴サイズは、特に限定されず、数mm程度の液滴であってもよいが、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは1〜10μmである。
第1の半導体の前駆体溶液を霧化または液滴化した後、得られたミストまたは液滴(以下、第1のミスト等ともいう)をキャリアガスでもって成膜室内に搬送するのが好ましい。前記キャリアガスとしては、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、例えば、酸素、オゾン、窒素やアルゴン等の不活性ガス、または水素ガスやフォーミングガス等の還元ガスなどが好適な例として挙げられる。また、キャリアガスの種類は1種類であってよいが、2種類以上であってもよく、流量を下げた希釈ガス(例えば10倍希釈ガス等)などを、第2のキャリアガスとしてさらに用いてもよい。また、キャリアガスの供給箇所も1箇所だけでなく、2箇所以上あってもよい。キャリアガスの流量は、特に限定されないが、0.01〜20L/分であるのが好ましく、1〜10L/分であるのがより好ましい。希釈ガスの場合には、希釈ガスの流量が、0.001〜2L/分であるのが好ましく、0.1〜1L/分であるのがより好ましい。
第1のミスト等をキャリアガスでもって成膜室内に搬送した後、成膜室内で第1のミスト等を熱反応させることによって、成膜室内に設置されている基体上に成膜するのが好ましい。熱反応は、熱でもって第1のミスト等が反応すればそれでよく、反応条件等も本発明の目的を阻害しない限り特に限定されない。本工程においては、前記熱反応を、通常、溶媒の蒸発温度以上の温度で行うが、高すぎない温度(例えば1000℃)以下が好ましい。また、熱反応は、本発明の目的を阻害しない限り、真空下、非酸素雰囲気下、還元ガス雰囲気下および酸素雰囲気下のいずれの雰囲気下で行われてもよく、また、大気圧下、加圧下および減圧下のいずれの条件下で行われてもよいが、本発明においては、大気圧下で行われるのが好ましい。なお、膜厚は、成膜時間を調整することにより、設定することができる。
前記基体は、前記膜を支持できるものであれば特に限定されない。前記基体の材料も、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知の基体であってよく、有機化合物であってもよいし、無機化合物であってもよい。前記基体の形状としては、どのような形状のものであってもよく、例えば、平板や円板等の板状、繊維状、棒状、円柱状、角柱状、筒状、螺旋状、球状、リング状などが挙げられるが、本発明においては、基板が好ましい。基板の厚さは、本発明においては特に限定されない。
前記基板は、板状であって、前記結晶膜の支持体となるものであれば特に限定されない。絶縁体基板であってもよいし、半導体基板であってもよいし、導電性基板であってもよいが、前記基板が、絶縁体基板であるのが好ましく、また、表面に金属膜を有する基板であるのも好ましい。前記基板としては、例えば、コランダム構造を有する基板材料を主成分として含む下地基板、またはβ−ガリア構造を有する基板材料を主成分として含む下地基板、六方晶構造を有する基板材料を主成分として含む下地基板などが挙げられる。ここで、「主成分」とは、前記特定の結晶構造を有する基板材料が、原子比で、基板材料の全成分に対し、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは90%以上含まれることを意味し、100%であってもよいことを意味する。
基板材料は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されず、公知のものであってよい。前記のコランダム構造を有する基板材料としては、例えば、InAlGaO系半導体などが挙げられるが、本発明においては、α−Alまたはα−Gaが好ましい。そして、コランダム構造を有する基板材料を主成分とする下地基板としては、サファイア基板(好ましくはc面サファイア基板)や、α型酸化ガリウム基板などが好適な例として挙げられる。β−ガリア構造を有する基板材料を主成分とする下地基板としては、例えばβ−Ga基板、又はGaとAlとを含みAlが0wt%より多くかつ60wt%以下である混晶体基板などが挙げられる。また、六方晶構造を有する基板材料を主成分とする下地基板としては、例えば、SiC基板、ZnO基板、GaN基板などが挙げられる。なお、六方晶構造を有する基板材料を主成分とする下地基板上には、直接または別の層(例:緩衝層)を介して、各層を積層してもよい。
本発明においては、前記基体が、コランダム構造を有する基板材料を主成分とする下地基板であるのが好ましく、サファイア基板またはα型酸化ガリウム基板であるのがより好ましく、c面サファイア基板であるのが最も好ましい。
本発明では、上記のようにして得られた第1の半導体膜が好適に用いられる。
(絶縁化工程)
絶縁化工程では、第1の半導体からなる第1の半導体膜を絶縁化させる。絶縁化手段は、第1の半導体を絶縁化させることができさえすればそれでよく、公知の手段であってよい。前記絶縁化手段としては、例えば、酸化処理、水酸化処理、酸素プラズマ処理、水蒸気および/または酸素存在下における紫外線照射処理、アニール処理、水蒸気および/または酸素存在下における電流印加処理などが挙げられる。本発明においては、前記絶縁化手段がアニール処理であるのが好ましく、水蒸気および/または酸素存在下におけるアニール処理であるのがより好ましい。
前記アニール処理は、第1の半導体を絶縁化させる熱処理であれば特に限定されないが、本発明においては、アニール処理を400℃〜500℃で行うのが好ましく、425℃〜475℃で行うのがより好ましい。また、アニール時間は1時間〜48時間が好ましく、12時間〜48時間がより好ましい。
(霧化・液滴化工程)
霧化・液滴化工程では、第2の半導体の前駆体溶液を霧化または液滴化する。第2の半導体の前駆体溶液の霧化手段または液滴化手段は、前駆体溶液を霧化または液滴化できさえすれば特に限定されず、公知の手段であってよいが、本発明においては、超音波を用いる霧化手段または液滴化手段が好ましい。超音波を用いて得られたミストまたは液滴は、初速度がゼロであり、空中に浮遊するので好ましく、例えば、スプレーのように吹き付けるのではなく、空間に浮遊してガスとして搬送することが可能なミストであるので衝突エネルギーによる損傷がないためにより好ましい。液滴サイズは、特に限定されず、数mm程度の液滴であってもよいが、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは1〜10μmである。
(第2の半導体)
第2の半導体は、半導体であって、ミストCVDにより、絶縁化させた第1の半導体膜上に成膜されるものであれば特に限定されない。第2の半導体としては、例えば、酸化物半導体、窒化物半導体、炭化物半導体、ケイ素含有半導体などが挙げられるが、本発明においては、第2の半導体が、酸化物半導体であるのが好ましく、結晶性酸化物半導体であるのがより好ましい。前記結晶性酸化物半導体としては、例えば、βガリア構造を有する結晶性酸化物半導体、コランダム構造を有する結晶性酸化物半導体などが挙げられるが、本発明においては、前記結晶性酸化物半導体が、コランダム構造を有するのが好ましい。また、第2の半導体は、InAlGaO系半導体であるのが好ましく、ガリウムまたはインジウムを少なくとも含むのがより好ましく、ガリウムを少なくとも含むのが最も好ましい。
また、本発明においては、第2の半導体の主成分が、第1の半導体の主成分と同じであるのが好ましい。「主成分」とは、例えば前記結晶性酸化物半導体がα−Gaである場合、膜中の金属元素におけるガリウムの原子が0.5以上の割合でα−Gaが含まれていればそれでよい。なお、本発明においては、前記膜中の金属元素におけるガリウムの原子比が0.7以上であることが好ましく、0.8以上であるのがより好ましい。
第2の半導体の前駆体溶液は、ミストCVDにより、第2の半導体が得られる溶液であれば特に限定されない。前記前駆体溶液としては、例えば、金属の有機金属錯体(例えばアセチルアセトナート錯体等)やハロゲン化物(例えばフッ化物、塩化物、臭化物またはヨウ化物等)の水溶液などが挙げられる。前記金属は、半導体を構成可能な金属であればそれでよく、このような金属としては、例えば、ガリウム、インジウム、アルミニウム、鉄等が挙げられる。本発明においては、前記金属が、ガリウムまたはインジウムを少なくとも含むのが好ましく、ガリウムを少なくとも含むのがより好ましい。前駆体溶液中の金属の含有量は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、好ましくは、0.001モル%〜50モル%であり、より好ましくは0.01モル%〜50モル%である。
また、第2の半導体の前駆体溶液は、ドーパントが含まれているのが好ましい。ドーパントを含ませることにより、イオン注入等を行わずに、第2の半導体膜を形成することができる。前記ドーパントとしては、例えば前記金属が少なくともガリウムを含む場合には、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛などのn型ドーパント等が挙げられる。本発明においては、前記ドーパントがスズであるのが電気特性をより向上させることができるので好ましい。なお、前記ドーパントを前駆体溶液に含ませる場合には、ハロゲン化物や錯体の形態にして含有させるのが好ましい。また、ドーピング量は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、前駆体溶液中、体積比で、0.001〜20%であるのが好ましく、0.01〜10%であるのがより好ましい。また、本発明においては、ノンドープも好ましい。
また、第2の半導体の前駆体溶液は、さらに、酸や塩基等のその他添加剤が含まれていてもよい。本発明においては、前駆体溶液に酸が含まれているのが好ましく、このような好ましい酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸などが挙げられる。
第2の半導体の前駆体溶液の溶媒は、特に限定されず、水等の無機溶媒であってもよいし、アルコール等の有機溶媒であってもよいし、無機溶媒と有機溶媒との混合溶媒であってもよい。本発明においては、前記溶媒が水を含むのが好ましく、水または水とアルコールとの混合溶媒であるのがより好ましい。
(搬送工程)
搬送工程では、キャリアガスでもって前記ミストまたは前記液滴を成膜室内に搬送する。前記キャリアガスとしては、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、例えば、酸素、オゾン、窒素やアルゴン等の不活性ガス、または水素ガスやフォーミングガス等の還元ガスなどが好適な例として挙げられる。また、キャリアガスの種類は1種類であってよいが、2種類以上であってもよく、流量を下げた希釈ガス(例えば10倍希釈ガス等)などを、第2のキャリアガスとしてさらに用いてもよい。また、キャリアガスの供給箇所も1箇所だけでなく、2箇所以上あってもよい。キャリアガスの流量は、特に限定されないが、0.01〜20L/分であるのが好ましく、1〜10L/分であるのがより好ましい。希釈ガスの場合には、希釈ガスの流量が、0.001〜2L/分であるのが好ましく、0.1〜1L/分であるのがより好ましい。
(成膜工程)
成膜工程では、成膜室内で前記ミストまたは液滴を熱反応させることによって、絶縁化させた第1の半導体膜上に、第2の半導体からなる第2の半導体膜を成膜する。熱反応は、熱でもって第1のミスト等が反応すればそれでよく、反応条件等も本発明の目的を阻害しない限り特に限定されない。本工程においては、前記熱反応を、通常、溶媒の蒸発温度以上の温度で行うが、高すぎない温度(例えば1000℃)以下が好ましく、600℃以下がより好ましい。また、熱反応は、本発明の目的を阻害しない限り、真空下、非酸素雰囲気下、還元ガス雰囲気下および酸素雰囲気下のいずれの雰囲気下で行われてもよく、また、大気圧下、加圧下および減圧下のいずれの条件下で行われてもよいが、本発明においては、大気圧下で行われるのが好ましい。なお、膜厚は、成膜時間を調整することにより、設定することができる。
また、本発明においては、前記結晶基板上にバッファ層や応力緩和層等の他の層を設けもよい。
本発明においては、例えば、酸素存在下のアニール処理で第1の半導体膜を絶縁化した場合には、基体上に絶縁体膜が積層され、さらに該絶縁体膜上に、半導体膜が積層されている積層構造体が好適に得られる。また、第1の半導体および第2の半導体の主成分が同じである場合であって、主成分を結晶性酸化物半導体にした場合には、基体上に、結晶性酸化物半導体からなる絶縁体膜が形成されており、さらに、該絶縁体膜上に、結晶性酸化物半導体の半導体膜が形成されている積層構造体が好適に得られる。なお、前記結晶性酸化物半導体は、InAlGaO系半導体であるのがより好ましい。前記結晶性酸化物半導体がInAlGaO系半導体である場合には、キャリア密度2×1018cm−3において、移動度が1cm/Vs以上、好ましくは10cm/Vs以上、より好ましくは20cm/Vs以上を実現することが可能である。
前記成膜方法で得られた半導体膜は、半導体装置等に用いることができる。また、本発明においては、前記結晶性酸化物半導体膜を、前記基体等から剥離する等の公知の手段を用いた後に、半導体装置等に用いてもよい。なお、前記成膜方法で得られた半導体膜と電極とを少なくとも含む半導体装置も本発明に含まれる。
前記半導体膜および前記電極を用いて形成される半導体装置としては、例えば、半導体レーザ、ダイオードまたはトランジスタなどが挙げられ、より具体的には例えば、MISやHEMT等のトランジスタやTFT、半導体‐金属接合を利用したショットキーバリアダイオード、他のP層と組み合わせたPN又はPINダイオード、受発光素子等が挙げられる。
前記電極は、例えば、前記半導体装置がショットキーダイオードである場合には、ショットキー電極やオーミック電極であってよく、また、例えば、前記半導体装置がMOSFETである場合には、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極であってよい。前記電極材料としては、例えば、Al、Mo、Co、Zr、Sn、Nb、Fe、Cr、Ta、Ti、Au、Pt、V、Mn、Ni、Cu、Hf、W、Ir、Zn、In、Pd、NdもしくはAg等の金属またはこれらの合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の金属酸化物導電膜、ポリアニリン、ポリチオフェン又はポリピロ−ルなどの有機導電性化合物、またはこれらの混合物などが挙げられる。電極の形成は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法などの公知の手段により行うことができる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
1.成膜装置
図1を用いて、本実施例で用いたミストCVD装置19を説明する。ミストCVD装置19は、基板20を載置するサセプタ21と、キャリアガスを供給するキャリアガス供給手段22aと、キャリアガス供給手段22aから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁23aと、キャリアガス(希釈)を供給するキャリアガス(希釈)供給手段22bと、キャリアガス(希釈)供給手段22bから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁23bと、原料溶液24aが収容されるミスト発生源24と、水25aが入れられる容器25と、容器25の底面に取り付けられた超音波振動子26と、内径40mmの石英管からなる供給管27と、供給管27の周辺部に設置されたヒーター28と、熱反応後のミスト、液滴および排気ガスを排出する排気口29とを備えている。サセプタ21は、石英からなり、基板20を載置する面が水平面から傾斜している。成膜室となる供給管27とサセプタ21をどちらも石英で作製することにより、基板20上に形成される膜内に装置由来の不純物が混入することを抑制している。
2.原料溶液(第1の半導体の前駆体溶液)の作製
下記表1に示す配合割合で、水に、ガリウムアセチルアセトナート、塩化スズ、塩酸を混合して原料溶液を調整した。
3.成膜準備
上記2.で得られた原料溶液24aをミスト発生源24内に収容した。次に、基板20として、c面サファイア基板をサセプタ21上に設置し、ヒーター28を作動させて成膜室27内の温度を500℃にまで昇温させた。次に、流量調節弁23a、23bを開いて、キャリアガス源であるキャリアガス供給手段22a、22bからキャリアガスを成膜室27内に供給し、成膜室27の雰囲気をキャリアガスで十分に置換した後、キャリアガスの流量を3.0L/minに、キャリアガス(希釈)の流量を0.5L/minにそれぞれ調節した。なお、キャリアガスとして窒素を用いた。
4.半導体膜形成
次に、超音波振動子26を2.4MHzで振動させ、その振動を、水25aを通じて原料溶液24aに伝播させることによって、原料溶液24aを微粒子化させて原料微粒子を生成した。この原料微粒子が、キャリアガスによって成膜室27内に導入され、大気圧下、500℃にて、成膜室27内でミストが反応して、基板20上に半導体膜が形成された。なお、膜厚は0.5μmであり、成膜時間は30分間であった。
5.アニール処理(絶縁化処理)
成膜後、空気中、450℃にて24時間アニール処理した。処理後、テスターを用いて、半導体膜が絶縁化されたことを確認した。
6.原料溶液(第2の半導体の前駆体溶液)の作製
下記表2に示す配合割合で、水に、ガリウムアセチルアセトナート、塩化スズ、塩酸を混合して原料溶液を調整した。
7.成膜準備
上記6.で得られた原料溶液24aをミスト発生源24内に収容した。次に、基板20として、5.で得られたアニール処理された半導体膜(絶縁体化膜)が表面に形成されているc面サファイア基板を、サセプタ21上に設置し、ヒーター28を作動させて成膜室27内の温度を500℃にまで昇温させた。次に、流量調節弁23a、23bを開いてキャリアガス源であるキャリアガス供給手段22a、22bからキャリアガスを成膜室27内に供給し、成膜室27の雰囲気をキャリアガスで十分に置換した後、キャリアガスの流量を3.0L/minに、キャリアガス(希釈)の流量を0.5L/minにそれぞれ調節した。なお、キャリアガスとして窒素を用いた。
8.半導体膜形成
次に、超音波振動子26を2.4MHzで振動させ、その振動を、水25aを通じて原料溶液24aに伝播させることによって、原料溶液24aを微粒子化させて原料微粒子を生成した。この原料微粒子が、キャリアガスによって成膜室27内に導入され、大気圧下、500℃にて、成膜室27内でミストが反応して、アニール処理された半導体膜(絶縁体化膜)上に薄膜が形成された。なお、膜厚は0.5μmであり、成膜時間は30分間であった。
9.評価
上記8.にて得られた膜につき、ホール効果測定を実施したところ、キャリア密度2×1018cm−3において、移動度が24cm/Vsであった。
本発明の成膜方法によれば、電気特性に優れた半導体膜が得られるので、半導体(例えば化合物半導体電子デバイス等)産業に好適に用いることができる。
19 ミストCVD装置
20 基板
21 サセプタ
22a キャリアガス供給手段
22b キャリアガス(希釈)供給手段
23a 流量調節弁
23b 流量調節弁
24 ミスト発生源
24a 原料溶液
25 容器
25a 水
26 超音波振動子
27 供給管
28 ヒーター
29 排気口

Claims (13)

  1. 結晶性酸化物半導体である第1の半導体からなる第1の半導体膜を絶縁化させた後、第2の半導体の前駆体溶液を霧化または液滴化し、得られたミストまたは液滴をキャリアガスでもって成膜室内に搬送し、ついで、成膜室内で前記ミストまたは液滴を熱反応させることによって、絶縁化させた第1の半導体膜上に、第2の半導体からなる第2の半導体膜を成膜することを特徴とする半導体膜の成膜方法。
  2. 結晶性酸化物半導体がコランダム構造を有する請求項記載の成膜方法。
  3. 第1の半導体がガリウムまたはインジウムを少なくとも含む請求項1または2に記載の成膜方法。
  4. 第1の半導体膜が、第1の半導体の前駆体溶液を霧化または液滴化し、得られたミストまたは液滴をキャリアガスでもって成膜室内に搬送し、ついで、前記ミストまたは液滴を熱反応させることによって、成膜室内に設置されている基体上に成膜されてなる請求項1〜のいずれかに記載の成膜方法。
  5. 第2の半導体が結晶性酸化物半導体である請求項1〜のいずれかに記載の成膜方法。
  6. 第2の半導体の主成分が、第1の半導体の主成分と同じである請求項1〜のいずれかに記載の成膜方法。
  7. 第2の半導体の前駆体溶液がガリウムまたはインジウムを少なくとも含む請求項1〜のいずれかに記載の成膜方法。
  8. 第2の半導体の前駆体溶液がドーパントを含む請求項1〜のいずれかに記載の成膜方法。
  9. ドーパントがスズを少なくとも含む請求項記載の成膜方法。
  10. 絶縁化処理がアニール処理である請求項1〜のいずれかに記載の成膜方法。
  11. アニール処理を、400℃〜500℃で行う請求項10記載の成膜方法。
  12. 請求項1〜11のいずれかに記載の成膜方法により形成された半導体膜。
  13. 請求項12記載の半導体膜と電極とを少なくとも含む半導体装置。
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