以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図面の寸法比率は、必ずしも実際の寸法比率とは一致していない。
[第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態に係る現像ローラ1の概略正面図である。図2は、図1に示すII−II線に沿った現像ローラ1の断面を示す断面図である。図3は、図1に示すIII−III線に沿った現像ローラ1の断面を示す断面図である。本実施形態に係る現像ローラ1は、軸体2と、軸体2の外周面上に設けられており、シリコーンゴムを含む弾性層3と、弾性層3上に設けられており、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分を含有する樹脂原料の硬化物を含む被覆層4と、を備える。
(軸体2)
軸体2は、導電特性を有しているものであってよい。軸体2としては、従来公知の現像ローラに用いられる軸体を用いることができる。軸体2は、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼及び真鍮からなる群より選択される少なくとも一種の金属で構成されていてよい。このような軸体2は、「芯金」と言い換えることができる。
軸体2は、絶縁性樹脂を含むものであってもよい。絶縁性樹脂は、例えば、熱可塑性樹脂であってよく、熱硬化性樹脂であってよい。軸体2は、例えば、絶縁性樹脂からなる芯体と、当該芯体上に設けられたメッキ層と、を備えるものであってよい。このような軸体2は、例えば、絶縁性樹脂からなる芯体にメッキを施して導電化することにより得ることができる。
軸体2は、良好な導電特性が得られる観点から、芯金であることが好ましい。
軸体2の形状は、例えば、棒状、管状等であってよい。軸体2の断面形状は、例えば、円形、楕円形であってよく、多角形等の非円形であってよい。
軸体2の外周面には、洗浄処理、脱脂処理、プライマー処理等の処理が施されていてよい。
軸体2の軸方向の長さは特に限定されず、設置される画像形成装置の形態に応じて適宜調整してよい。また、軸体2の直径(外接円の直径)も特に限定されず、設置される画像形成装置の形態に応じて適宜調整してよい。
(弾性層3)
弾性層3は、シリコーンゴムを含むゴム材料で構成されている。本実施形態では、弾性層3がシリコーンゴムを含むことで、圧縮永久歪みを低減することができると共に、低温環境下における柔軟性に優れるという効果が得られる。
シリコーンゴムとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等のオルガノポリシロキサンの架橋物が挙げられる。また、シリコーンゴムは、これらの変性物であってもよい。
ゴム材料は、主としてシリコーンゴムを含むことが好ましい。具体的には、ゴム材料におけるシリコーンゴムの含有量が、ゴム材料の全質量を基準として、60質量%以上であることが好ましい。シリコーンゴムの含有量は、30質量%以上であってもよく、40質量%以上であってもよい。
ゴム材料は、ゴム成分以外の成分を含んでいてよい。例えば、ゴム材料は、導電性付与剤を更に含んでいてよい。導電性付与剤は、弾性層3に導電性を付与し得る成分であればよく、特に限定されない。導電性付与剤は、例えば、導電性カーボン、ゴム用カーボン類、金属、導電性ポリマー等を含む導電性粉末であってよい。導電性粉末は、カーボンブラックであることが好ましい。カーボンブラックとしては、例えば、ケッチェンブラック(登録商標)等のファーネスブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、サーマルブラックなどが挙げられる。
現像ローラ1において、弾性層3は、軸体2の軸方向の両端で軸体2の外周面が露出するように形成されている。すなわち、軸体2の外周面上には、弾性層3が設けられていない領域が存在している。本発明において、弾性層3の態様はこれに限定されず、弾性層3は、軸体2の外周面の全面を覆うように設けられていてよい。
弾性層3は、中実な層であってよく、層の内部に中空を有していないことが好ましい。本明細書において「中実」とは、層の内部に0.1mm2/個以上の中空を有しないことを意味する。
弾性層3のJIS A硬度は、20〜55であることが好ましい。弾性層のJIS A硬度(JIS K6301)が上記範囲であると、現像ローラと被当接体(例えば、感光体等の像担持体)との接触面積(ニップ幅)が大きくなるため、転写効率、帯電効率及び現像効率等の性能が一層向上する傾向がある。また、被当接体に機械的ダメージを与えるおそれが低減される。
弾性層3の厚さは、被当接体との当接状態において被当接体との均一なニップ幅を確保することができる等の観点から、0.5〜10mmが好ましく、1〜5mmがより好ましい。なお、本明細書において「厚さ」とは、現像ローラ1の軸方向に垂直な方向の厚さを意味する。弾性層3の外径としては、特に限定されない。外径は、例えば、5〜20mmであってよい。なお、本明細書において、「外径」とは、現像ローラ1の軸方向に垂直な断面における外径を意味する。弾性層3の厚さ及び外径は、弾性層3を形成する際に用いるゴム組成物の量を調整する、弾性層3の形成後に弾性層3の外周面を研磨又は研削する、等の方法により調整することができる。
弾性層3の外周面には、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、エキシマ処理、UV処理、イトロ処理、フレーム処理等の表面処理が施されていてよい。
弾性層3を構成するゴム材料は、ゴム組成物の硬化物であってよい。
<ゴム組成物>
ゴム組成物は、架橋によりシリコーンゴムを構成するゴム成分を含有する。このようなゴム成分としては、例えば、オルガノポリシロキサン等のシリコーン生ゴムが挙げられる。
オルガノポリシロキサンとしては、例えば、下記平均組成式で表されるオルガノポリシロキサン等が挙げられる。
RnSiO(4−n)/2
[Rは、置換されていてもよい一価の炭化水素基を示す。炭化水素基の炭素数は、1〜12が好ましく、1〜8がより好ましい。複数のRは同一でも異なっていてもよい。nは1.95〜2.05の整数を示す。]
上記式中、Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基及びドデシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基及びヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基及びトリル基等のアリール基、β−フェニルプロピル基等のアラルキル基、並びに、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子又はシアノ基等で置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基及びシアノエチル基等が挙げられる。
オルガノポリシロキサンは、一分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンであることが好ましい。例えば、上記式中、少なくとも2個のRが上記アルケニル基を有することが好ましい。オルガノポリシロキサンは、ビニル基を有することが更に好ましい。
オルガノポリシロキサンの具体例としては、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等が挙げられる。
オルガノポリシロキサンは、分子鎖末端がトリメチルシリル基、ジメチルビニルシリル基、ジメチルヒドロキシシリル基、トリビニルシリル基等で封鎖されていることが好ましい。
ゴム組成物は、各種の添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、例えば、導電性付与剤、鎖延長剤及び架橋剤等の助剤、付加反応触媒等の触媒、反応制御剤、分散剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤などが挙げられる。
ゴム組成物は、導電性付与剤を含有することが好ましい。導電性付与剤としては、上述した導電性付与剤を用いることができる。
架橋剤としては、例えば、オルガノハイドロジェンポリシロキサン等の付加反応型架橋剤、及び、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物反応架橋剤が挙げられる。これらの架橋剤は、一種を単独で用いてよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、直鎖状、分枝鎖状又は環状のいずれであってもよい。具体的には、メチルハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられる。
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中に2個以上のSiH基(SiH結合)を有することが好ましい。
付加反応触媒としては、例えば、シリカ、アルミナ又はシリカゲル等の担体と、当該担体上に担持された白金と、を備える白金触媒が挙げられる。
反応制御剤としては、公知の反応制御剤を用いることができる。反応制御剤は、例えば、メチルビニルシクロテトラシロキサン、エチニルシクロヘキサノール等のアセチレンアルコール類、シロキサン変性アセチレンアルコール、ハイドロパーオキサイドなどであってよい。
充填剤は、無機質充填材であってよく、有機質充填剤であってもよい。無機質充填剤としては、例えば、ヒュームドシリカ等のシリカ系充填剤、タルク、アルミナ等が挙げられる。有機質充填剤としては、例えば、ウレタンビーズ、アクリルビーズ、ベンゾグアナミンビーズ等が挙げられる。充填剤は、ジメチルジクロロシラン等により疎水化処理されたものであってよい。
充填剤の平均粒径は、0.1〜30μmであることが好ましい。充填剤の嵩密度は0.1〜0.5g/cm3であることが好ましい。充填剤のBET比表面積は10〜300m2/gであることが好ましい。充填剤の平均粒径は、例えば、レーザー光回折法等による粒度分布測定装置を用いて、重量平均値として測定することができる。
ゴム組成物は、液状のゴム組成物であってよく、ミラブル型のゴム組成物であってよい。
ゴム組成物は、軸体2と弾性層3と密着性に優れる等の観点から、以下に示す付加硬化型のゴム組成物(第一のゴム組成物、第二のゴム組成物及び第三のゴム組成物)が好ましい。これらの中でも、第一のゴム組成物がより好ましく用いられる。
第一のゴム組成物は、一分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサン、一分子中にケイ素原子と結合する水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、付加反応触媒、導電性付与剤及び平均粒径が1〜30μmであり、嵩密度が0.1〜0.5g/cm3である無機質充填材を含有する。かかる第一のゴム組成物は液状であってよい。
第一のゴム組成物におけるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの含有量は、オルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.1〜30質量部であることが好ましい。付加反応触媒の含有量は、オルガノポリシロキサン及びオルガノハイドロジェンポリシロキサンの合計量100質量部に対して、0.5×10−4〜1000×10−4質量部であることが好ましい。導電性付与剤の含有量は、オルガノポリシロキサン及びオルガノハイドロジェンポリシロキサンの合計量100質量部に対して、2〜80質量部が好ましい。無機質充填剤の含有量は、オルガノポリシロキサン及びオルガノハイドロジェンポリシロキサンの合計量100質量部に対して、5〜100質量部が好ましい。
第二のゴム組成物は、上記平均組成式で表されるオルガノポリシロキサン、導電性付与剤及び充填剤を含有する。かかる第二のゴム組成物はミラブル型であってよい。
第二のゴム組成物における導電性付与剤の含有量は、オルガノポリシロキサン100質量部に対して、2〜80質量部が好ましい。充填剤の含有量は、オルガノポリシロキサン100質量部に対して、11〜39質量部が好ましい。
第三のゴム組成物は、ビニル基を含有するシリコーン生ゴム、シリカ系充填剤、付加反応架橋剤、付加反応触媒、反応制御剤を含有する。
第三のゴム組成物におけるシリカ系充填材の含有量は、ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、5〜100質量部であることが好ましい。付加反応架橋剤の含有量は、ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0.01〜20質量部であることが好ましい。反応制御剤の含有量は、ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0.1〜2質量部であることが好ましい。付加反応触媒の含有量は、ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、1×10−4〜1000×10−4質量部であることが好ましい。
第三のゴム組成物は、所望により有機過酸化物架橋剤及び各種添加剤を含有してよい。
本実施形態に係るゴム組成物は、特開2008−058622号公報に記載の「付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物、を用いることができ、これに記載された内容は本明細書に組み込まれる。
(被覆層4)
第一実施形態において、被覆層4は、樹脂原料の硬化物を含む樹脂材料で構成されている。樹脂原料は、ポリオール成分と、ポリイソシアネート成分と、硫黄系シランカップリング剤とを含有し、樹脂原料の硬化物は硫黄系シランカップリング剤由来の構造を含む。
ポリオール成分としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等が挙げられる。ポリオール成分は、これらのポリオールのうち、少なくとも二種以上のポリオールの共重合体であってもよい。本実施形態では、ポリオール成分として、一種のポリオールを単独で用いてよく、二種以上のポリオールを組み合わせて用いてもよい。
ポリオール成分は、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びこれらの共重合体からなる群より選択される少なくとも一種のポリオールであることが好ましい。ポリオール成分が、これらのポリオールを含む場合、耐熱性及び耐加水分解性に優れる傾向がある。
ポリエステルポリオールは、分子内に2つ以上のエステル結合と、2つ以上の水酸基を有する。ポリエステルポリオールとしては、例えば、ジカルボン酸とポリオールとの縮合反応物等が挙げられる。
ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。
ポリエステルポリオールの原料として用いられるポリオールとしては、例えば、ヘキサンジオール、ブタンジオール等のジオール、2,4−ブタントリオール等のトリオールなどが挙げられる。
ポリカーボネートポリオールは、分子内に2つ以上のカーボネート結合と、2つ以上の水酸基を有する。ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリオールとカーボネート化合物との縮合反応物等が挙げられる。
カーボネート化合物としては、例えば、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、アルキレンカーボネート等が挙げられる。ポリカーボネートポリオールの原料として用いられるポリオールとしては、ポリエステルポリオールの原料である上述のポリオールと同様のものが挙げられる。
ポリオール成分の数平均分子量は、被覆層4の柔軟性を向上できる観点及び作業性を向上できる観点から、100〜5000であることが好ましく、500〜3000であることがより好ましく、500〜2000であることが更に好ましい。なお、本明細書において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算の分子量である。
ポリイソシアネート成分としては、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、その他のポリイソシアネートなどが挙げられる。
ポリオール成分が有する水酸基のモル数M1に対する、ポリイソシアネート成分が有するイソシアネート基のモル数M2の比M2/M1は1〜5であることが好ましく、1.1〜4であることがより好ましい。比M2/M1が上記範囲である場合、ウレタンとして未反応の水酸基がなくなる傾向がある。
硫黄系シランカップリング剤は、分子内に硫黄系官能基と、アルコキシシリル基とを有するシラン化合物である。硫黄系官能基としては、例えば、メルカプト基、スルフィド基(スルフィド結合)、ジスルフィド基(ジスルフィド結合)、チオエステル基(チオエステル結合)、チオウレタン基(チオウレタン結合)、チオウレア基(チオウレア結合)等が挙げられる。硫黄系シランカップリング剤は、これらの硫黄系官能基を複数有するものであってよい。また、硫黄系シランカップリングは、これらの硫黄系官能基のうち、一種を含むものであってよく、複数種を含むものであってもよい。
硫黄系シランカップリング剤としては、例えば、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、トリエトキシシリルチオプロピルトリメトキシシラン、γメルカプト−プロピルトリエトキシシラン、トリエトキシシリルチオプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
硫黄系シランカップリング剤は、メルカプト型シラン、スルフィド型シラン、チオウレタン型シラン、チオウレア型シラン、多官能メルカプト型シランであってよい。メルカプト型シランとは、分子内にメルカプト基を含むシラン化合物である。メルカプト型シランとしては、例えば、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。スルフィド型シランとは、分子内にスルフィド結合を含むシラン化合物である。スルフィド型シランとしては、例えば、トリエトキシシリルチオプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。多官能メルカプト型シランとは、メルカプト基を複数有するシラン化合物である。多官能メルカプト型シランとしては、X−12−1154(信越化学工業社製)等が挙げられる。
硫黄系シランカップリング剤は、ポリマー型硫黄系シランカップリング剤、オリゴマー型硫黄系シランカップリング剤、長鎖型硫黄系シランカップリング剤等であってもよい。ポリマー型硫黄系シランカップリング剤とは、硫黄系官能基と、アルコキシシリル基とを有するモノマー成分の重合反応により得られる高分子化合物であり、例えば、数平均分子量が1000〜5000であるシランカップリング剤を意味する。ポリマー型硫黄系シランカップリング剤は、上述したシランカップリング剤の重合反応により得られる高分子化合物であることが好ましい。オリゴマー型硫黄系シランカップリング剤とは、硫黄系官能基と、アルコキシシリル基とを有するモノマー成分の重合反応により得られる比較的少数のモノマーが結合した重合体(例えば、数平均分子量が1000未満の重合体)のことである。オリゴマー型硫黄系シランカップリング剤は、上述したシランカップリング剤の重合反応により得られるオリゴマーであることが好ましい。長鎖型硫黄系シランカップリング剤とは、長鎖のアルキレン基を有する硫黄系シランカップリング剤を意味する。
硫黄系シランカップリングの25℃における粘度は、1〜5000mm2/sであってよく、10〜1500mm2/sであってよい。
本実施形態では、一種の硫黄系シランカップリングを単独で用いてよく、複数種の硫黄系シランカップリングを組み合わせて用いてもよい。
樹脂原料がこれらの硫黄系シランカップリング剤を含むことにより、被覆層4の外周面を、硫黄系シランカップリング剤由来の構造を含む材料で構成することができる。詳細には、被覆層4の外周面が、ポリオール成分と、ポリイソシアネート成分と、硫黄系シランカップリング剤と、を含有する樹脂原料の硬化物を含む樹脂材料で構成される。その結果、現像ローラ1の表面の摩擦帯電能を向上することができ、高温高湿環境下における画像濃度の均一性を保持することができる。また、低温低湿環境下における画像ムラの発生を抑制することができる。また、樹脂原料がこれらの硫黄系シランカップリング剤を含む場合、被覆層4の弾性層3側の主面には、硫黄系シランカップリング剤由来の構造を含む材料が存在し易い。このような理由から、第一実施形態では、被覆層4と弾性層3との接着性に優れる傾向がある。
樹脂原料における硫黄系シランカップリング剤の含有量は、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分の合計量100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、1質量部以上であることが更に好ましく、30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが更に好ましい。硫黄系シランカップリング剤の含有量が上記範囲であれば、画像濃度の均一性の保持効果及び画像ムラの抑制効果に一層優れる傾向がある。
樹脂原料は、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分、及び硫黄系シランカップリング剤以外の他の成分を含んでいてよい。他の成分としては、例えば、触媒等が挙げられる。
触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレートなどを用いることができる。
硬化物は、樹脂原料を加熱、電磁波加熱等の方法により硬化させることにより得られる。硬化物が、樹脂原料を加熱することにより得られる硬化物である場合、加熱温度は、80〜180℃であってよく、100〜160℃であってよい。
硬化物は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との縮合反応物を含んでいてよく、硫黄系シランカップリング剤と、ポリオール成分及び/又はポリイソシアネート成分との反応物を含んでいてよく、硫黄系シランカップリング剤そのものを含んでいてよい。硬化物は、硫黄系シランカップリング剤と、ポリオール成分及び/又はポリイソシアネート成分との反応物を含むことが好ましい。
本実施形態において、樹脂材料は硫黄系シランカップリング剤由来の構造を含む材料である。硫黄系シランカップリング剤由来の構造を含む材料は、硫黄系シランカップリング剤と、ポリオール成分及び/又はポリイソシアネート成分との反応物であってよく、硫黄系シランカップリング剤そのものを含む材料であってよい。
樹脂材料は、微粒子を含んでいてもよい。微粒子としては、例えば、導電性を有する微粒子、樹脂微粒子等が挙げられる。
導電性を有する微粒子は、例えば、導電性カーボン、ゴム用カーボン類、金属等の材料により構成される微粒子であってよい。導電性を有する微粒子は、現像ローラ1の表面の摩擦帯電能が一層向上する観点から、カーボンブラックであることが好ましい。カーボンブラックとしては、ケッチェンブラック(登録商標)等のファーネスブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、サーマルブラックなどが挙げられる。
樹脂材料におけるカーボンブラックの含有量は、硬化物100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがより好ましく、3質量部以上であること更に好ましく、100質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることが更に好ましい。
樹脂微粒子を構成する樹脂は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂であることが好ましい。樹脂微粒子を構成する樹脂は、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋ポリスチレン、アクリルスチレン共重合、架橋オレフィン系樹脂及びポリアミド樹脂からなる群より選択される少なくとも一種の樹脂であることがより好ましい。
樹脂微粒子の平均粒径は、5〜15μmであることが好ましい。樹脂微粒子の平均粒径が5μm以上である場合、現像ローラ1の表面粗さ(十点平均粗さRz)を十分に大きくすることができるため、現像剤の搬送性が向上する傾向がある。樹脂微粒子の平均粒径が15μm以下である場合、解像度に優れる傾向がある。そのため、樹脂微粒子の平均粒径が15μm以下である場合、良好な画質の画像を形成しやすい傾向がある。優れた現像剤の搬送性と高い解像度とを両立できる点で、樹脂微粒子の平均粒子径は、5〜14μmであることがより好ましく、6〜12μmであることが更に好ましい。上記平均粒径は、画像解析法で測定される投影面積円相当径で評価した直径の、算術平均値として定義される。
樹脂微粒子は、100℃以上でも変形又は溶融等しない耐熱性を有する樹脂微粒子であることが好ましい。すなわち、樹脂微粒子は、100℃以上の耐熱温度を有することが好ましい。樹脂原料中に樹脂微粒子を分散させた状態で樹脂原料を硬化させる場合、上記のような耐熱性を有する樹脂微粒子を用いることにより、樹脂原料の架橋温度(硬化温度)での樹脂微粒子の変形を抑制することができる。樹脂微粒子は、130〜180℃の耐熱温度を有することがより好ましい。なお、樹脂微粒子の耐熱温度は、以下の方法により測定する。まず、所定の温度に設定したメルトフローインデクサー(東洋精機製作所社製)に樹脂微粒子を入れる。次いで、圧力1.013Paの条件で、1分間保持した場合に、樹脂微粒子がこの装置から溶出しないことを確認する。設定温度を変更して同様の試験を繰り返し行い、樹脂微粒子が初めて溶出したときの温度を樹脂微粒子の耐熱温度とする。
微粒子の形状は特に限定されない。例えば、粒状であってよく、柱状、棒状、不定形、円盤状(偏平状)等であってもよい。
微粒子は、樹脂材料中に均一に分散されていてよい。また、微粒子は、樹脂材料中に不均一に分散されていてもよい。例えば、微粒子は、被覆層4の内部に偏在していてもよいし、被覆層4の外周面に偏在していてもよい。
被覆層4は、弾性層3の外周面の全面を覆うように設けられていてよい。弾性層3の外周面には、被覆層4が設けられていない領域が存在していてもよい。
被覆層4の厚さは、表面粗さの調整が容易となる観点で、10nm〜20μmが好ましく、100nm〜10μmがより好ましい。
被覆層4の表面粗さ(十点平均粗さ)Rzは、0.1〜30μmであることが好ましく、0.5〜20μmであることがより好ましく、1〜10μmであることが更に好ましい。表面粗さRzが上記範囲である場合、現像剤の搬送性に優れる傾向がある。なお、被覆層4の表面とは、被覆層4の弾性層3側とは反対側の主面を意味する。
被覆層4の表面には、表面粗さRzを調整する等の目的で、UV又はエキシマUV等による表面処理が施されていてよい。
本発明の効果を阻害しない限り、被覆層4上には表層が設けられていてよい。表層としては、種々の機能を有する層を適宜に設けることができる。例えば、現像剤に対する離型性、又は、接触するブレードに対する潤滑性を有する表層が挙げられる。表層は、被覆層4の外周面の一部を覆っていてよく、全部を覆っていてもよい。
このような表層は、所定の機能を有していればよく、Si元素及びフッ素元素の少なくとも一種を含有する材料を含むことが好ましい。
Si元素を含有する材料としては、例えば、シリコーングラフトポリマーとウレタン樹脂とを含む組成物、アクリルシリコーン樹脂とウレタン樹脂とを含む組成物、シリコーン系レベリング剤とウレタン樹脂とを含む組成物、シリコーンオイルとウレタン樹脂とを含む組成物、シランカップリング剤(硫黄系シランカップリング剤は除く)等が挙げられる。シリコーングラフトポリマーとしては、例えば、T&Ktoka製のZXシリーズ等が挙げられる。アクリルシリコーン樹脂としては、例えば、サイマックUS−270(東亜合成製)、レゼダGS−1015(東亜合成製)等が挙げられる。シリコーンレべリング剤としては、例えば、KP−323(信越化学工業社製)、KP−341(信越化学工業社製)等が挙げられる。シリコーンオイルとしては、例えば、KF−6000(信越化学工業社製)等が挙げられる。
フッ素元素を含有する材料としては、例えば、フッ素ポリオールとイソシアネートとの縮合反応物であるウレタン、フッ素系界面活性剤とウレタン樹脂とを含む組成物、アクリルフッ素樹脂とウレタン樹脂とを含む組成物、PTFEビーズ等のフッ素系微小ビーズとウレタン樹脂とを含む組成物などが挙げられる。フッ素形界面活性剤としては、例えば、フタージェント(ネオス製)等が挙げられる。アクリルフッ素樹脂としては、例えば、モディパーF700(日油製)等が挙げられる。
Si元素及びフッ素元素を含有する材料としては、例えば、フッ素樹脂/シロキサングラフト型ポリマーが挙げられる。このような樹脂としては、例えば、T&Ktoka製のZXシリーズ等が挙げられる。
表層がSi元素及び/又はフッ素元素を含有する材料を含むことは、現像ローラから表層の一部を採取し試験片を得た後、この試験片をX線光電子分光法(ESCA)にて分析することにより確認することができる。
第一実施形態において、現像ローラ1は、軸体2と弾性層3との間、及び、弾性層3と被覆層4との間に、接着層又はプライマー層等の中間層を備えていてもよい。プライマー層は、例えば、軸体2の外周面にプライマーを塗布する等の方法により、軸体2の外周面をプライマー処理することで形成される。
プライマー処理に用いられるプライマーは、例えば、信越化学工業(株)社製のプライマーNO.16等であってよい。
次に、第一実施形態に係る現像ローラ1の製造方法の一態様について説明する。
現像ローラ1の製造方法は、軸体2の外周面上にシリコーンゴムを含む弾性層3を形成する第一の工程と、弾性層3上に塗布された、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分及び硫黄系シランカップリング剤を含有する樹脂原料を硬化させて、樹脂原料の硬化物を含む被覆層4を形成する第二の工程と、を備える。
第一の工程では、軸体2の外周面上にシリコーンゴムを含む弾性層3を形成する。第一の工程では、軸体2の外周面にゴム組成物を含む層を形成した後、当該ゴム組成物を硬化させることにより弾性層3を形成してよく、ゴム組成物を含む層を形成すると同時にゴム組成物を硬化させて弾性層3を形成してもよい。
軸体2の外周面にゴム組成物を含む層を形成する方法は特に限定されない。例えば、ゴム組成物を軸体2の外周面に塗布することにより、軸体2の外周面にゴム組成物を含む層を形成してよい。ゴム組成物を軸体2の外周面に塗布する方法は特に限定されない。例えば、プレス成形方法、押し出し成形方法、インジェクション等の方法であってよい。
ゴム組成物を硬化させる方法は、特に限定されない。例えば、ゴム組成物を加熱することによりゴム組成物を硬化させてよい。加熱方法は、ゴム組成物の硬化に必要な熱を加えられる方法であれば、特に限定されない。
加熱温度及び加熱時間は、ゴム組成物の組成に応じて適宜設定すればよい。例えば、ゴム組成物として、上記第一のゴム組成物を用いる場合、加熱温度は100〜300℃が好ましく、110〜200℃がより好ましい。また、加熱時間は、5分以上5時間以下が好ましく、1時間以上3時間以下がより好ましい。例えば、ゴム組成物として、上記第二のゴム組成物を用いる場合、加熱温度は、100〜500℃が好ましく、120〜300℃がより好ましい。また、加熱時間は、数秒以上1時間以下が好ましく、10秒以上35分以下がより好ましい。例えば、ゴム組成物として、上記第三のゴム組成物を用いる場合、加熱温度は170〜500℃が好ましく、200〜400℃がより好ましい。加熱時間は、数分以上1時間以下が好ましく、5分以上30分以下がより好ましい。
第一の工程では、例えば、押出成形による連続加硫、プレス、インジェクションによる型成形等の方法により、軸体2の外周面に弾性層3を形成してよい。これらの中でも、型成形により弾性層3を形成することが好ましい。本実施形態では、第一の工程によりシリコーンゴムを含む弾性層3が形成されるが、シリコーンゴムは成型圧縮率が大きいため、本実施形態に係る製造方法によれば、容易に弾性層3を形成することができる。
第一の工程では、ゴム組成物を軸体2の外周面で硬化させた後、硬化したゴム組成物を、再度加熱することにより、二次硬化させてもよい。
第二の工程では、弾性層3上に塗布された、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分及び硫黄系シランカップリング剤を含有する樹脂原料を硬化させて、樹脂原料の硬化物を含む被覆層4を形成する。
樹脂原料を硬化させる方法は特に限定されない。例えば、樹脂原料を加熱することにより樹脂原料を硬化させてよい。加熱方法は、樹脂原料の硬化に必要な熱を加えられる方法であれば、特に限定されない。
加熱温度及び加熱時間は、樹脂原料の組成に応じて適宜設定すればよい。加熱温度は、例えば、100〜180℃が好ましく、130〜160℃がより好ましい。また、加熱時間は、10〜60分が好ましく、20〜40分がより好ましい。
現像ローラ1の製造方法は、第一の工程の後、第二の工程の前に、弾性層3上に樹脂原料を塗布する工程を備えてよい。弾性層3上に樹脂原料を塗布する方法は、特に限定されない。例えば、スプレー法、ディッピング法、刷毛塗り等の方法であってよい。
本実施形態では、弾性層3上に樹脂原料を塗布すると同時に樹脂原料を硬化させてもよい。すなわち、第二の工程は、弾性層3上に塗布すると同時に、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分及び硫黄系シランカップリング剤を含有する樹脂原料を硬化させて、樹脂原料の硬化物を含む被覆層4を形成する工程であってもよい。
本実施形態では、例えば、押出成形、プレス成形、インジェクション成形等の公知の方法により、弾性層3上に被覆層4を形成してもよい。
現像ローラ1の製造方法は、軸体2の外周面及び/又は弾性層3の外周面を所定の方法により処理する工程を備えていてもよい。例えば、軸体2の外周面及び/又は弾性層3の外周面をプライマー処理することにより、プライマー層を形成してよい。軸体2の外周面のプライマー処理に用いられるプライマーは金属用プライマーであってよい。弾性層3の外周面のプライマー処理に用いられるプライマーはエラストマー用プライマーであってよい。
また、軸体2の外周面及び/又は弾性層3の外周面にプラズマ処理、エキシマ処理、UV処理、コロナ処理、イトロ処理又はフレーム処理等の処理を行ってもよい。
また、弾性層3の外周面を研磨又は研削することにより、弾性層3の厚さ及び外径r並びに表面状態を調整してもよい。
[第二実施形態]
以下では、本発明の第二実施形態に固有の特徴について主に説明する。以下に記載された事項を除いて、第二実施形態は第一実施形態と同様であってよい。以下では、第二実施形態と第一実施形態との共通点については記載しない。
図4は、第二実施形態に係る現像ローラの断面図である。第二実施形態において、外周面が硫黄系シランカプリング剤で表面処理された被覆層4が、第一実施形態における被覆層4に相当するが、以下では、説明の都合上、場合により、硫黄系シランカプリング剤により表面処理される前の被覆層5を「被覆層5」又は「表面処理前の被覆層」といい、硫黄系シランカプリング剤の表面処理により形成される層6を「表面処理層6」という。
(被覆層4)
第二実施形態において、被覆層4は、外周面が硫黄系シランカップリング剤で表面処理されている。かかる被覆層4は、樹脂原料の硬化物を含む樹脂材料からなる被覆層5と、被覆層5上に設けられており、硫黄系シランカップリング由来の構造を含む材料で構成されている表面処理層6とを備える。表面処理に用いられる硫黄系シランカップリング剤は、上記第一実施形態において用いられる硫黄系シランカップリング剤と同様であってよい。
樹脂原料は、ポリオール成分と、ポリイソシアネート成分と、を含有する。ポリオール成分及びポリイソシアネート成分の種類及び含有量等の詳細は、第一実施形態における樹脂原料が含有するポリオール成分及びポリイソシアネート成分と同様であってよい。
樹脂原料は、第一実施形態における樹脂原料が含む成分と同様の成分を含むものであってよい。例えば、樹脂原料は、硫黄系シランカップリングを更に含有してよい。硫黄系シランカップリング剤の種類及び含有量等の詳細は、第一実施形態における樹脂原料が含有する硫黄系シランカップリング剤と同様であってよい。
樹脂材料は、第一実施形態における樹脂材料に含まれる成分と同様の成分を含むものであってよい。すなわち、第二実施形態に係る被覆層5は、第一実施形態に係る被覆層4と同様の樹脂材料からなる層であってよい。
被覆層5の弾性層3の外周面の全面を覆うように設けられていてよい。弾性層3の外周面には、被覆層5が設けられていない領域が存在していてもよい。
被覆層5の厚さは、表面粗さの調整が容易となる観点で、100nm〜20μmが好ましく、1000nm〜12μmがより好ましい。
表面処理層6は、硫黄系シランカップリング剤に由来する構造を含む材料で構成されている。硫黄系シランカップリング剤に由来する構造を含む材料は、硫黄系シランカップリング剤そのものを含む材料であってよく、硫黄系シランカップリング剤と、ウレタン樹脂との反応物を含む材料であってよい。
表面処理層6は、被覆層5の外周面の全面を覆うように設けられていてよい。被覆層5の外周面には、表面処理層6が設けられていない領域が存在していてもよい。
表面処理層6の厚さは、1nm〜10μmが好ましく、10nm〜5μmがより好ましい。表面処理層6の厚さが上記範囲である場合、摩擦帯電能の向上効果が得られやすい傾向がある。
表面処理層6の表面粗さ(十点平均粗さ)Rzは、0.5〜20μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましく、2〜8μmであることが更に好ましい。表面粗さRzが上記範囲である場合、現像剤の搬送性に優れる傾向がある。なお、表面処理層6の表面とは、表面処理層6の被覆層5とは反対側の主面を意味する。
第二実施形態では、弾性層3と被覆層4との接着性を向上させる観点から、被覆層4の弾性層3側の主面と接するように、硫黄系シランカップリング剤の表面処理により形成される第二の表面処理層7が設けられていてもよい。第二の表面処理層7は、硫黄系シランカップリング剤に由来する構造を含む材料で構成されている。第二の表面処理層7は、例えば、弾性層3の外周面を硫黄系シランカップリングで表面処理することにより形成してよい。
本発明の効果を阻害しない限り、表面処理層6上には表層が設けられていてよい。表層は、第一実施形態における表層と同様であってよい。
第二実施形態では、第一実施形態と同様に、現像ローラ1が、軸体2と弾性層3との間、及び、弾性層3と被覆層4との間に、接着層又はプライマー層等の中間層を備えていてもよい。
次に、第二実施形態に係る現像ローラ1の製造方法の一態様について説明する。なお、以下に記載された事項を除いて、第二実施形態に係る現像ローラ1の製造方法は、第一実施形態に係る現像ローラ1の製造方法と同様であってよい。上述の第一実施形態に係る現像ローラ1の製造方法との共通点については記載しない。
現像ローラ1の製造方法は、軸体2の外周面上にシリコーンゴムを含む弾性層3を形成する第一の工程と、弾性層3上に塗布された、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分を含有する樹脂原料を硬化させて、樹脂原料の硬化物を含む被覆層5を形成する第二の工程と、被覆層5の外周面を硫黄系シランカップリング剤で表面処理する第三の工程と、を備える。第一の工程及び第二の工程は、上述の第一実施形態に係る現像ローラ1の製造方法における第一の工程及び第二の工程と同様であってよい。
第三の工程では、被覆層5の外周面を硫黄系シランカップリング剤で表面処理する。これにより、被覆層5上に、表面処理層6が形成される。表面処理は、被覆層5の外周面の全面に行ってよく、被覆層5の外周面の一部の領域に行ってもよい。
第三の工程において、被覆層5の外周面を表面処理する方法は、例えば、被覆層5の外周面に硫黄系シランカップリング剤を塗布して乾燥させる方法であってよい。硫黄系シランカップリング剤を塗布する方法は特に限定されない。例えば、スプレー法、ディッピング法、刷毛塗り、乾布塗り等の方法であってよい。
硫黄系シランカップリング剤の粘度が高い場合には、硫黄系シランカップリング剤を溶剤に溶解させた溶液を、被覆層5の外周面に塗布してもよい。溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルアルコール等を用いてよい。
乾燥温度及び乾燥時間は、特に限定されず、硫黄系シランカップリングの種類、溶液に含まれる溶剤の量等により適宜調整すればよい。乾燥温度は、例えば、20〜60℃であってよい。乾燥時間は、例えば、5〜30分であってよい。
第一実施形態と同様に、現像ローラ1の製造方法は、軸体2の外周面及び/又は弾性層3の外周面を所定の方法により処理する工程を備えていてもよい。
次に、本実施形態(例えば、第一実施形態及び/又は第二実施形態)に係る現像ローラを用いた現像装置及び画像形成装置を、図5を参照して説明する。
画像形成装置10は、各色の現像ユニットB、C、M及びYに装備された複数の像担持体11B、11C、11M及び11Yを転写搬送ベルト26上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置であり、現像ユニットB、C、M及びYが転写搬送ベルト26上に直列に配置されている。各色とは、黒(B)、シアン(C)、マゼンタ(M)、黄色(Y)を意味する。
現像ユニットBは、像担持体11B(例えば感光体(感光ドラム))と、帯電手段12B(例えば帯電ローラ)と、露光手段13Bと、現像装置20Bと、転写搬送ベルト26を介して像担持体11Bに当接する転写手段14B(例えば転写ローラ)と、クリーニング手段15Bとを備えている。
現像装置20Bは、現像剤担持体23Bと、現像剤(トナー)と、を備える。現像装置20Bは、具体的には、現像剤22Bを収容する筐体21Bと、現像剤22Bを像担持体11Bに供給する現像剤担持体23Bと、現像剤22Bの厚みを調整する現像剤量調節手段24B(例えばブレード)とを備える。現像装置20Bにおいて、現像剤量調節手段24Bは、図5に示されるように、現像剤担持体23Bの外周面に接触又は圧接している。すなわち、現像装置20Bは「接触式現像装置」である。
現像ユニットC、M及びYは現像ユニットBと基本的に同様に構成されており、同じ要素には、同じ符号と各ユニットを示す記号C、M又はYとを付して、説明を省略する。
本実施形態において、現像装置20B、20C、20M及び20Yにおける現像剤担持体23B、23C、23M及び23Yの少なくとも1つは、本実施形態に係る現像ローラ1である。本実施形態に係る現像ローラ1を備える現像装置は、多様な環境下において、安定的に使用することができる。例えば、本実施形態に係る現像ローラ1を備える現像装置は、現像剤の搬送性に優れるとともに、多様な環境下で使用される場合であっても、高品質且つ高画質な画像を長期にわたって形成できる。
画像形成装置10において、現像装置20Bの現像剤担持体23Bは、その表面が像担持体11Bの表面に接触又は圧接するように配置されている。現像装置20C、20M及び20Yも、現像装置20Bと同様に、その表面が現像剤担持体23C、23M及び23Yが像担持体11C、11M及び11Yの表面に接触又は圧接するように配置されている。すなわち、この画像形成装置10は「接触式画像形成装置」である。
定着手段30は、現像ユニットYの下流側に配置されている。この定着手段30は、記録体16を通過させる開口部35を有する筐体内に、定着ローラ31と、定着ローラ31の近傍に配置された無端ベルト支持ローラ33と、定着ローラ31及び無端ベルト支持ローラ33に巻き掛けられた無端ベルト36と、定着ローラ31と対向配置された加圧ローラ32とを備え、無端ベルト36を介して定着ローラ31と加圧ローラ32とが互いに当接又は圧接するように回転自在に支持された圧力熱定着装置である。画像形成装置10の底部には、記録体16を収容するカセット41が設置されている。転写搬送ベルト26は複数の支持ローラ42に巻回されている。
画像形成装置10に使用される現像剤22B、22C、22M及び22Yはそれぞれ、摩擦により帯電可能な現像剤であればよい。現像剤は、例えば、乾式現像剤であってよく、湿式現像剤であってもよい。また、現像剤は、非磁性現像剤であってよく、磁性現像剤であってもよい。各現像ユニットの筐体21B、21C、21M及び21Y内には、黒色現像剤22B、シアン現像剤22C、マゼンタ現像剤22M及び黄色現像剤22Yが収納されている。
画像形成装置10は、以下のようにして記録体16にカラー画像を形成する。まず、現像ユニットBにおいて、帯電手段12Bで帯電した像担持体11Bの表面に露光手段13Bにより静電潜像が形成され、現像剤担持体23Bにより供給された現像剤22Bで黒色の静電潜像が現像される。そして、記録体16が転写手段14Bと像担持体11Bとの間を通過する際に、黒色の静電潜像(黒像)が記録体16Bの表面に転写され、黒像が顕像化される。次いで、現像ユニットBと同様にして、現像ユニットC、M及びYによって、黒像が顕造化された記録体16に、それぞれシアンの静電潜像、マゼンタの静電潜像及び黄色の静電潜像が転写され、カラー像が顕像化される。次いで、定着手段30によりカラー像が永久画像として記録体16に定着される。このようにして、記録体16にカラー画像を形成することができる。
本実施形態に係る画像形成装置は、現像装置20B、20C、20M及び20Yのうちの少なくとも1つが本実施形態に係る現像ローラ1を備えるため、多様な環境下において、安定的に使用することができる。例えば、本実施形態に係る画像形式装置は、多様な環境下で使用される場合であっても、高濃度で高画質の画像を長期にわたって形成することができる。
以上、本実施形態に係る現像装置及び画像形成装置について説明したが、本発明は上述したものに限定されることはなく、本発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。
(実施例1)
<ゴム組成物の調製>
両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(重合度300)100質量部、疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、R−972、BET比表面積:110m2/g)1質量部、珪藻土(オプライトW−3005S、北秋珪藻土社製、平均粒径:6μm、嵩密度:0.25g/cm3)40質量部、及び、アセチレンブラック(デンカブラックHS−100、電気化学工業社製)5質量部をプラネタリーミキサーに入れ、30分撹拌した。次いで、得られた混合物を、3本ロールに1回通し、これを再度プラネタリーミキサーに戻した。ここに、架橋剤として、両末端及び側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(重合度17、Si−H量0.0060mol/g)を2.1質量部、反応制御剤として、エチニルシクロヘキサノールを0.1質量部、付加反応触媒として、白金触媒(Pt濃度1%)を0.1質量部添加した後、15分撹拌して混練した。上記操作によりゴム組成物を調製した。
<ポリエステルポリオールの合成>
冷却管、温度計、水分受容器、窒素導入管及び減圧装置を備えたセパラブルフラスコに、1,6−ヘキサンジオール709質量部及び1,2,4−ブタントリオール212質量部、アジピン酸472質量部及びイソフタル酸498質量部、p−トルエンスルホン酸0.5質量部、トルエン50質量部を仕込み、反応溶液を得た。次いで、セパラブルフラスコに窒素を流しながら、且つ、反応溶液を撹拌しながら、2時間かけて180℃に加温した。加温中、各成分が溶融混合し、反応溶液全体が均一となったこと、及び、水とトルエンとの混合物が流出したことを確認した。180℃まで昇温後、同温度で2時間撹拌し、ポリオールとカルボン酸を脱水縮合させた。次いで、フラスコ内の圧力を20mmHgまで徐々に減圧し、この圧力で1時間かけてトルエンを留去しつつ、引き続き脱水縮合を行った。その後冷却してポリエステルポリオールを得た。
<樹脂原料の調製>
ポリオール成分28質量部と、ポリイソシアネート成分14質量部と、硫黄系シランカップリング剤5質量部と、ジブチル錫ジラウレート(商品名:ジ−n−ブチルすずジラウレート、昭和化学社製)0.03質量部と、カーボンブラック(商品名:トーカブラック#5500、東海カーボン社製)5質量部と、ウレタン樹脂からなる微粒子(商品名:アートパールP−600T、平均粒径6μm、根上工業社製)10質量部とを混合し、樹脂原料を調製した。ポリオール成分としては、上記操作により得られたポリエステルポリオールを用いた。ポリイソシアネート成分としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(商品名:デュラネートTPA−100、旭化成社製)を用いた。硫黄系シランカップリングとしては、トリエトキシシリルチオプロピルトリメトキシシラン(商品名:X−12−1056ES 信越化学工業社製)を用いた。ポリエステルポリオールが有する水酸基のモル数m1に対する、ヘキサメチレンジイソシアネートが有するイソシアネート基のモル数m2の比m2/m1は1.1であった。
<現像ローラの作製>
快削鋼SUM23で構成されている軸体(直径8mm、長さ282mm)の表面にシリコーン系プライマー(商品名:プライマーNo.4、信越化学工業社製)を塗布した後、ギヤオーブン中で150℃乾燥させた。この操作により、軸体の外周面をプライマー処理した。
上記プライマー処理された軸体と、上述の操作により得られたゴム組成物とをLIMS(リキッドインジェクションモールディングシステム)を用いて、金型温度130℃、加熱時間10分の条件で、一体成型した。また、温度200℃4時間の条件で2次加硫を行った。これにより、プライマー処理された軸体の外周面上にゴム組成物の硬化物からなる弾性層を形成した。弾性層はシリコーンゴムを含む。弾性層は中実な層であり、弾性層の厚さは3mmであった。また、弾性層のJIS A硬度は40であった。
次に、弾性層の外周面をコロナ処理した。その後、コロナ処理された弾性層上に、上述の操作により得られた樹脂原料をスプレー法によって塗布した。塗布された樹脂原料を160℃で30分間加熱することにより、弾性層上に被覆層を形成した。被覆層の厚さは6μmであった。得られた被覆層の外周面は、硫黄系シランカップリング剤由来の構造を含む材料で構成されている。
上記操作により実施例1の現像ローラを作製した。実施例1の現像ローラは、軸体と、軸体の外周面上に設けられた弾性層と、弾性層上に設けられた被覆層と、を備える。
(実施例2)
樹脂原料の調製工程において、硫黄系シランカップリング剤として、X−12−1154(商品名、信越化学工業社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の現像ローラを作製した。被覆層の厚さは6μmであった。得られた被覆層の外周面は、硫黄系シランカップリング剤由来の構造を含む材料で構成されている。
(実施例3)
樹脂原料の調製工程において、硫黄系シランカップリング剤を配合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして実施例3の樹脂原料を調製した。
実施例1と同様にして、軸体の外周面をプライマー処理し、プライマー処理された軸体の外周面上にゴム組成物の硬化物からなる弾性層を形成した。弾性層の外周面をコロナ処理した後、弾性層の外周面に1wt%に希釈したアミノシランカップリング剤(商品名:KBM−903、信越化学工業社製)を塗布し、風乾した。次いで、上記実施例3の樹脂原料を、スプレー法によって塗布した。塗布された樹脂原料を160℃で30分間加熱することにより、樹脂原料の硬化物からなる層(表面処理前の被覆層)を形成した。表面処理前の被覆層の厚さは6μmであった。
次いで、表面処理前の被覆層の外周面に、酢酸エチルで2wt%に希釈した硫黄系シランカップリング剤を塗布し、60℃で20分乾燥した。上記操作により、弾性層上に被覆層を形成した。被覆層の厚さは1μmであった。硫黄系シランカップリング剤には、トリエトキシシリルチオプロピルトリメトキシシラン(商品名:X−12−1056ES、信越化学工業社製)を用いた。得られた被覆層の外周面は、硫黄系シランカップリング剤由来の構造を含む材料で構成されている。
上記操作により、実施例3の現像ローラを作製した。
(実施例4)
樹脂原料の調製工程において、ポリポリオール成分として、ポリカーボネートジオール(商品名:デュラノールT5652、旭化成ケミカルズ社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4の現像ローラを作製した。被覆層の厚さは6μmであった。得られた被覆層の外周面は、硫黄系シランカップリング剤由来の構造を含む材料で構成されている。
(比較例1)
樹脂原料の調製工程において、硫黄系シランカップリング剤を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の現像ローラを作製した。被覆層の厚さは6μmであった。
(比較例2)
樹脂原料の調製工程において、硫黄系シランカップリング剤に代えてエポキシ系シランカップリング剤を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の現像ローラを作製した。被覆層の厚さは6μmであった。エポキシ系シランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−403、信越化学工業社製)を用いた。
(比較例3)
樹脂原料の調製工程において、硫黄系シランカップリング剤に代えてイソシアネート系カップリング剤を用いたところ、樹脂原料の調製時に配合成分がゲル化したため、樹脂原料を弾性層上に塗布することができなかった。なお、イソシアネート系カップリング剤としては、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(商品名:KBE−9007、信越化学工業社製)を用いた。
(帯電性の評価)
実施例及び比較例で作製した現像ローラの帯電性を、スタティックオネストメーター(シシド静電気(株)製)を用いて評価した。帯電性の評価では、印加電圧8KV、回転数1300rpmの条件で現像ローラに電圧を印加し、電圧を印加してから30秒後の現像ローラの帯電圧を測定した。結果を表1に示す。
実施例の現像ローラが、比較例の現像ローラと比較して、優れた帯電性を示すことが確認された。また、実施例4では、ポリオール成分としてポリエステルポリオールを用いた実施例1に比べて、一層帯電性が向上することが確認された。
(接着性の評価)
実施例及び比較例で作製した現像ローラそれぞれについて、カッターを用いて被覆層を1mm間隔で25マスの碁盤目にカットし、碁盤目試験を行い、被覆層と弾性層との接着性を評価した。結果を表1に示す。なお、表中の数字は、試験を行った25マスのうち、被覆層の剥がれが発生したマスの数を示す。
(印字評価)
画像形成装置としてC610dn2(型番、沖データ社製)を用意した。この画像形成装置の現像ローラとして実施例及び比較例の現像ローラを用いて、実施例及び比較例の現像ローラそれぞれについて印字評価を行った。具体的には、以下の方法により印字評価を行った。
まず、現像装置内に現像ローラを装着した。次いで、所定の条件で、2000枚のA4用紙に幅202mm、長さ288mmのベタ画像を印字し、印字濃度、画像均一性及び画像ムラの有無を評価した。
印字濃度の評価では、温度23℃、湿度55%の条件下でベタ画像を印字し、X−Rite社製の508分光濃度計を用いてベタ画像の印字濃度を測定した。具体的には、1.4以上を○とし、1.4未満を×とした。
画像ムラの評価では、温度10℃、湿度20%RHの条件下でベタ画像を印字し、印字状態を目視にて確認した。画像ムラの発生が確認されなかった場合を○とし、画像ムラの発生が確認された場合を×とした。結果を表1に示す。
画像均一性の評価では、室温(23℃)、湿度55%RHの条件下、及び、温度32℃、湿度80%RHの条件下でベタ画像を印字し、1枚目の印字濃度と2000枚目の印字濃度とを比較した。具体的には、ベタ印字の初期印字形成部分と終期印字形成部分との濃度段差率が1.2以内である場合を○とし、1.2より大きい場合を×とした。