以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態は、自動車のステアリングホイール等に搭載されるエアバッグ装置に好適に組み込まれるディスク型ガス発生器に本発明を適用したものである。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分に図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるガス発生器の概略図である。まず、この図1を参照して、本実施の形態におけるガス発生器の構成について説明する。
図1に示すように、本実施の形態におけるガス発生器1は、軸方向の両端が閉塞された短尺略円筒状のハウジングを有しており、このハウジングの内部に設けられた収容空間に、内部構成部品としての保持部30、点火器40、カップ状部材50、伝火薬56、ガス発生剤61、下部側支持部材70、上部側支持部材80、クッション材85およびフィルタ90等が収容されることで構成されている。また、ハウジングの内部に設けられた収容空間には、上述した内部構成部品のうちのガス発生剤61が主として収容された燃焼室60が位置している。
短尺略円筒状のハウジングは、下部側シェル10と上部側シェル20とを含んでいる。下部側シェル10および上部側シェル20のそれぞれは、たとえば圧延された金属製の板状部材をプレス加工することによって形成されたプレス成形品からなる。下部側シェル10および上部側シェル20を構成する金属製の板状部材としては、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等からなる金属板が利用され、好適には440MPa以上780MPa以下の引張応力が印加された場合にも破断等の破損が生じないいわゆる高張力鋼板が利用される。
下部側シェル10および上部側シェル20は、それぞれが有底略円筒状に形成されており、これらの開口面同士が向き合うように組み合わされて接合されることによってハウジングが構成されている。下部側シェル10は、底板部11と周壁部12とを有しており、上部側シェル20は、天板部21と周壁部22とを有している。これにより、ハウジングの軸方向の端部は、天板部21と底板部11とによって閉塞されている。なお、下部側シェル10と上部側シェル20との接合には、電子ビーム溶接やレーザー溶接、摩擦圧接等が好適に利用できる。
下部側シェル10の底板部11の中央部には、天板部21側に向かって突出する突状筒部13が設けられており、これにより下部側シェル10の底板部11の中央部には、窪み部14が形成されている。突状筒部13は、上述した保持部30を介して点火器40が固定される部位であり、窪み部14は、保持部30に雌型コネクタ部34を設けるためのスペースとなる部位である。
突状筒部13は、有底略円筒状に形成されており、その天板部21側に位置する軸方向端部には、平面視した状態において非点対称形状(たとえばD字状、樽型形状、長円形状等)の開口部15が設けられている。当該開口部15は、点火器40の一対の端子ピン42が挿通される部位である。
図1に示すように、点火器40は、火炎を発生させるためのものであり、点火部41と、上述した一対の端子ピン42とを備えている。点火部41は、その内部に、作動時において着火して燃焼することで火炎を発生する点火薬と、この点火薬を着火させるための抵抗体とを含んでいる。一対の端子ピン42は、点火薬を着火させるために点火部41に接続されている。
より詳細には、点火部41は、カップ状に形成されたスクイブカップと、当該スクイブカップの開口端を閉塞し、一対の端子ピン42が挿通されてこれを保持する基部とを備えており、スクイブカップ内に挿入された一対の端子ピン42の先端を連結するように抵抗体(ブリッジワイヤ)が取付けられ、この抵抗体を取り囲むようにまたはこの抵抗体に近接するようにスクイブカップ内に点火薬が装填された構成を有している。
ここで、抵抗体としては一般にニクロム線等が利用され、点火薬としては一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等が利用される。なお、上述したスクイブカップおよび基部は、一般に金属製またはプラスチック製である。
衝突を検知した際には、端子ピン42を介して抵抗体に所定量の電流が流れる。抵抗体に所定量の電流が流れることにより、抵抗体においてジュール熱が発生し、点火薬が燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の火炎は、点火薬を収納しているスクイブカップを破裂させる。抵抗体に電流が流れてから点火器40が作動するまでの時間は、抵抗体にニクロム線を利用した場合には一般に2ミリ秒以下である。
点火器40は、突状筒部13に設けられた開口部15に端子ピン42が挿通するように下部側シェル10の内側から挿入された状態で底板部11に取付けられている。具体的には、底板部11に設けられた突状筒部13の周囲には、樹脂成形部からなる保持部30が設けられており、点火器40は、当該保持部30によって保持されることにより、底板部11に固定されている。
保持部30は、型を用いた射出成形(より特定的にはインサート成形)によって形成されるものであり、下部側シェル10の底板部11に設けられた開口部15を経由して底板部11の内表面の一部から外表面の一部にまで達するように絶縁性の流動性樹脂材料を底板部11に付着させてこれを固化させることによって形成されている。
点火器40は、保持部30の成形の際に、開口部15に端子ピン42が挿通するように下部側シェル10の内側から挿入された状態とされ、この状態において点火器40と下部側シェル10との間の空間を充填するように上述した流動性樹脂材料が流し込まれることにより、保持部30を介して底板部11に固定される。
射出成形によって形成される保持部30の原料としては、硬化後において耐熱性や耐久性、耐腐食性等に優れた樹脂材料が好適に選択されて利用される。その場合、エポキシ樹脂等に代表される熱硬化性樹脂に限られず、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂(たとえばナイロン6やナイロン66等)、ポリプロピレンスルフィド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂等に代表される熱可塑性樹脂を利用することも可能である。これら熱可塑性樹脂を原材料として選択する場合には、成形後において保持部30の機械的強度を確保するためにこれら樹脂材料にガラス繊維等をフィラーとして含有させることが好ましい。しかしながら、熱可塑性樹脂のみで十分な機械的強度が確保できる場合には、上述の如くのフィラーを添加する必要はない。
保持部30は、下部側シェル10の底板部11の内表面の一部を覆う内側被覆部31と、下部側シェル10の底板部11の外表面の一部を覆う外側被覆部32と、下部側シェル10の底板部11に設けられた開口部15内に位置し、上記内側被覆部31および外側被覆部32にそれぞれ連続する連結部33とを有している。
保持部30は、内側被覆部31、外側被覆部32および連結部33のそれぞれの底板部11側の表面において底板部11に固着している。また、保持部30は、点火器40の点火部41の下方端寄りの部分の側面および下面と、点火器40の端子ピン42の上方端寄りの部分の表面とにそれぞれ固着している。これにより、開口部15は、端子ピン42と保持部30とによって完全に埋め込まれた状態となり、当該部分におけるシール性が確保されることでハウジングの内部の空間の気密性が確保されている。なお、開口部15は、上述したように平面視非点対称形状に形成されているため、当該開口部15を連結部33で埋め込むことにより、これら開口部15および連結部33は、保持部30が底板部11に対して回転してしまうことを防止する回り止め機構としても機能する。
保持部30の外側被覆部32の外部に面する部分には、雌型コネクタ部34が形成されている。この雌型コネクタ部34は、点火器40とコントロールユニット(不図示)とを結線するためのハーネスの雄型コネクタ(図示せず)を受け入れるための部位であり、下部側シェル10の底板部11に設けられた窪み部14内に位置している。この雌型コネクタ部34内には、点火器40の端子ピン42の下方端寄りの部分が露出して配置されている。雌型コネクタ部34には、雄型コネクタが挿し込まれ、これによりハーネスの芯線と端子ピン42との電気的導通が実現される。
また、保持部30によって覆われることとなる部分の底板部11の表面の所定位置に予め接着剤層が設けられてなる下部側シェル10を用いて上述した射出成形を行なうこととしてもよい。当該接着剤層は、上記底板部11の所定位置に予め接着剤を塗布してこれを硬化させておくことにより、その形成が可能である。
このようにすれば、底板部11と保持部30との間に硬化した接着剤層が位置することになるため、樹脂成形部からなる保持部30をより強固に底板部11に固着させることが可能になる。したがって、底板部11に設けられた開口部15を囲うように上記接着剤層を周方向に沿って環状に設けることとすれば、当該部分においてより高いシール性を確保することが可能になる。
ここで、底板部11に予め塗布しておく接着剤としては、硬化後において耐熱性や耐久性、耐腐食性等に優れた樹脂材料を原料として含むものが好適に利用され、たとえばシアノアクリレート系樹脂やシリコーン系樹脂を原料として含むものが特に好適に利用される。なお、上述の樹脂材料以外にも、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂、アクリロニトリルスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネイト系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリブチレンテレフタラート系樹脂、ポリエチレンテレフタラート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンスルファイド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、液晶ポリマー、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム等を含むものが、上述した接着剤として利用可能である。
なお、ここでは、樹脂成形部からなる保持部30を射出成形することで下部側シェル10に対する点火器40の固定を可能にした場合の構成例を例示したが、下部側シェル10に対する点火器40の固定に他の代替手段を用いることも可能である。
底板部11には、突状筒部13、保持部30および点火器40を覆うようにカップ状部材50が組付けられている。カップ状部材50は、底板部11側の端部が開口した有底略円筒形状を有しており、内部に伝火薬56が収容された伝火室55を含んでいる。カップ状部材50は、その内部に設けられた伝火室55が点火器40の点火部41に面することとなるように、ガス発生剤61が収容された燃焼室60内に向けて突出して位置するように配置されている。
カップ状部材50は、上述した伝火室55を規定する頂壁部51および側壁部52と、側壁部52の開口端側の部分から径方向外側に向けて延設された延設部53とを有している。延設部53は、下部側シェル10の底板部11の内表面に沿って延びるように形成されている。具体的には、延設部53は、突状筒部13が設けられた部分およびその近傍における底板部11の内底面の形状に沿うように曲成された形状を有しており、その径方向外側の部分にフランジ状に延出する先端部54を含んでいる。
延設部53の先端部54は、ハウジングの軸方向に沿って底板部11と下部側支持部材70との間に配置されており、これによりハウジングの軸方向に沿って底板部11と下部側支持部材70とによって挟み込まれている。ここで、下部側支持部材70は、その上方に配置されたガス発生剤61、クッション材85、上部側支持部材80および天板部21によって底板部11側に向けて押し付けられた状態にあるため、カップ状部材50は、その延設部53の先端部54が下部側支持部材70によって底板部11側に向けて押し付けられた状態となり、底板部11に対して固定されることになる。これにより、カップ状部材50の固定にかしめ固定や圧入固定を利用せずとも、カップ状部材50が底板部11から脱落することが防止される。
カップ状部材50は、頂壁部51および側壁部52のいずれにも開口を有しておらず、その内部に設けられた伝火室55を取り囲んでいる。このカップ状部材50は、点火器40が作動することによって伝火薬56が着火された場合に伝火室55内の圧力上昇や発生した熱の伝導に伴って破裂または溶融するものであり、その機械的強度は比較的低いものが使用される。
そのため、カップ状部材50としては、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属製の部材や、エポキシ樹脂等に代表される熱硬化性樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂(たとえばナイロン6やナイロン66等)、ポリプロピレンスルフィド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂等に代表される熱可塑性樹脂等の樹脂製の部材からなるものが好適に利用される。
なお、カップ状部材50としては、このようなものの他にも、鉄や銅等に代表されるような機械的強度の高い金属製の部材からなり、その側壁部52に開口を有し、当該開口を閉塞するようにシールテープが貼着されたもの等を利用することも可能である。また、カップ状部材50の固定方法も、上述した下部側支持部材70を用いた固定方法に限られず、他の固定方法を利用してもよい。
伝火室55に充填された伝火薬56は、点火器40が作動することによって生じた火炎によって点火され、燃焼することによって熱粒子を発生する。伝火薬56としては、ガス発生剤61を確実に燃焼開始させることができるものであることが必要であり、一般的には、B/KNO3等に代表される金属粉/酸化剤からなる組成物などが用いられる。伝火薬56は、粉状のものや、バインダによって所定の形状に成形されたもの等が利用される。バインダによって成形された伝火薬56の形状としては、たとえば顆粒状、円柱状、シート状、球状、単孔円筒状、多孔円筒状、タブレット状など種々の形状がある。
ハウジングの内部の空間のうち、上述したカップ状部材50が配置された部分を取り巻く空間には、ガス発生剤61が収容された燃焼室60が位置している。具体的には、上述したように、カップ状部材50は、ハウジングの内部に形成された燃焼室60内に突出して配置されており、このカップ状部材50の側壁部52の外表面に面する部分に設けられた空間が燃焼室60として構成されている。
また、燃焼室60のうち、ガス発生剤61が収容された空間をハウジングの径方向に取り巻く空間には、ハウジングの内周に沿ってフィルタ90が配置されている。フィルタ90は、円筒状の形状を有しており、その中心軸がハウジングの軸方向と実質的に合致するように配置されている。
ガス発生剤61は、点火器40が作動することによって生じた熱粒子によって着火され、燃焼することによってガスを発生させる薬剤である。ガス発生剤61としては、非アジド系ガス発生剤を用いることが好ましく、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む成形体としてガス発生剤61が形成される。燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等またはこれらの組み合わせが利用される。具体的には、たとえばニトログアニジンや硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5−アミノテトラゾール等が好適に利用される。また、酸化剤としては、たとえば塩基性硝酸銅等の塩基性硝酸塩や、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。また、添加剤としては、バインダやスラグ形成剤、燃焼調整剤等が挙げられる。バインダとしては、たとえばカルボキシメチルセルロースの金属塩、ステアリン酸塩等の有機バインダや、合成ヒドロタルサイト、酸性白土等の無機バインダが好適に利用可能である。スラグ形成剤としては窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。また、燃焼調整剤としては、金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。
ガス発生剤61の成形体の形状には、顆粒状、ペレット状、円柱状等の粒状のもの、ディスク状のものなど様々な形状のものがある。また、円柱状のものでは、成形体内部に貫通孔を有する有孔状(たとえば単孔筒形状や多孔筒形状等)の成形体も利用される。これらの形状は、ガス発生器1が組み込まれるエアバッグ装置の仕様に応じて適宜選択されることが好ましく、たとえばガス発生剤61の燃焼時においてガスの生成速度が時間的に変化する形状を選択するなど、仕様に応じた最適な形状を選択することが好ましい。また、ガス発生剤61の形状の他にもガス発生剤61の線燃焼速度、圧力指数などを考慮に入れて成形体のサイズや充填量を適宜選択することが好ましい。
フィルタ90は、たとえばステンレス鋼や鉄鋼等の金属線材を巻き回して焼結したものや、金属線材を編み込んだ網材をプレス加工することによって押し固めたもの、あるいは孔あき金属板を巻き回したもの等が利用される。ここで、網材としては、具体的にはメリヤス編みの金網や平織りの金網、クリンプ織りの金属線材の集合体等が利用される。また、孔あき金属板としては、たとえば、金属板に千鳥状に切れ目を入れるとともにこれを押し広げて孔を形成して網目状に加工したエキスパンドメタルや、金属板に孔を穿つとともにその際に孔の周縁に生じるバリを潰すことでこれを平坦化したフックメタル等が利用される。この場合において、形成される孔の大きさや形状は、必要に応じて適宜変更が可能であり、同一金属板上において異なる大きさや形状の孔が含まれていてもよい。なお、金属板としては、たとえば鋼板(マイルドスチール)やステンレス鋼板が好適に利用でき、またアルミニウム、銅、チタン、ニッケルまたはこれらの合金等の非鉄金属板を利用することもできる。
フィルタ90は、燃焼室60にて発生したガスがこのフィルタ90中を通過する際に、ガスが有する高温の熱を奪い取ることによってガスを冷却する冷却手段として機能するとともに、ガス中に含まれる残渣(スラグ)等を除去する除去手段としても機能する。したがって、ガスを十分に冷却しかつ残渣が外部に放出されないようにするためには、燃焼室60内にて発生したガスが確実にフィルタ90中を通過するようにすることが必要である。なお、フィルタ90は、ハウジングの周壁部を構成する上部側シェル20の周壁部22および下部側シェル10の周壁部12との間で所定の大きさの間隙25が構成されることとなるように、当該周壁部22から離間して配置されている。
フィルタ90に対面する部分の上部側シェル20の周壁部22には、ガス噴出口23が複数設けられている。このガス噴出口23は、フィルタ90を通過したガスをハウジングの外部に導出するためのものである。上部側シェル20の周壁部22の内周面には、上記ガス噴出口23を閉塞するように金属製のシールテープ24が貼り付けられている。このシールテープ24としては、片面に粘着部材が塗布されたアルミニウム箔等が利用でき、当該シールテープ24によって燃焼室60の気密性が確保されている。
ここで、本実施の形態におけるガス発生器1においては、複数のガス噴出口23のうちの一部のガス噴出口を閉塞する部分のシールテープ24の厚みが、複数のガス噴出口23のうちの残りのガス噴出口を閉塞する部分のシールテープ24の厚みよりも厚くなるように構成されている。これにより、厚みが相対的に厚い部分のシールテープ24の破断強度が、厚みが相対的に薄い部分のシールテープ24の破断強度よりも高くなるように調節されている。
このように構成することにより、シールテープ24の厚みを上記条件を前提として適宜調節することにより、低温環境下および常温環境下においては、ガス発生器1の作動時において、ガス発生剤61の燃焼に伴ったハウジングの内部の圧力上昇に伴い、厚みが相対的に薄い部分のシールテープ24のみが開裂して当該部分によって閉塞されていたガス噴出口のみが開口してガスが外部に噴出されるようにするとともに、高温環境下においては、ガス発生器1の作動時において、ガス発生剤61の燃焼に伴ったハウジングの内部の圧力上昇に伴い、厚みが相対的に薄い部分のシールテープ24のみならず厚みが相対的に厚い部分のシールテープ24が開裂することですべてのガス噴出口が開口してガスが外部に噴出されるようにすることができる。
また、シールテープ24の厚みを上記条件を前提として適宜調節することにより、低温環境下においては、ガス発生器1の作動時において、ガス発生剤61の燃焼に伴ったハウジングの内部の圧力上昇に伴い、厚みが相対的に薄い部分のシールテープ24のみが開裂して当該部分によって閉塞されていたガス噴出口のみが開口してガスが外部に噴出されるようにするとともに、常温環境下および高温環境下においては、ガス発生器1の作動時において、ガス発生剤61の燃焼に伴ったハウジングの内部の圧力上昇に伴い、厚みが相対的に薄い部分のシールテープ24のみならず厚みが相対的に厚い部分のシールテープ24が開裂することですべてのガス噴出口が開口してガスが外部に噴出されるようにすることもできる。
したがって、上記構成を採用することにより、環境温度の違いに基づいた出力特性のばらつきを抑制することが可能になり、高性能のガス発生器とすることができる。
ここで、シールテープ24を開裂させてガス噴出口23を開口させるために必要となるハウジングの内部の圧力は、上述したシールテープ24の厚みのみならず、ガス噴出口23の開口面積(すなわち、開口径)によっても変化する。したがって、シールテープ24の厚みのみならず、これとガス噴出口23の開口面積とを個別に調節することにより、シールテープ24の部位ごとの破断強度を任意に設定することができる。
なお、上述した環境温度の違いに基づいた出力特性のばらつきを抑制することができるガス噴出口23およびシールテープ24の具体的な構成としては、各種の態様を採用することができるが、その詳細については後述することとする。
燃焼室60のうち、底板部11側に位置する端部近傍には、下部側支持部材70が配置されている。下部側支持部材70は、環状の形状を有しており、フィルタ90と底板部11との境目部分を覆うように、これらフィルタ90と底板部11とに実質的に宛がわれて配置されている。これにより、下部側支持部材70は、燃焼室60の上記端部近傍において、底板部11とガス発生剤61との間に位置している。
下部側支持部材70は、フィルタ90の底板部11側に位置する軸方向端部の内周面に当接するように立設された当接部72と、当該当接部72から径方向内側に向けて延設された底部71とを有している。底部71は、下部側シェル10の底板部11の内底面に沿って延びるように形成されている。具体的には、底部71は、突状筒部13が設けられた部分を含む底板部11の内底面の形状に沿うように折り曲げられた形状を有しており、その径方向内側の部分に立設された先端部73を含んでいる。
当該下部側支持部材70は、作動時において、燃焼室60にて発生したガスが、フィルタ90の下端と底板部11との間の隙間からフィルタ90の内部を経由することなく流出してしまうことを防止するための流出防止手段として機能する。下部側支持部材70は、たとえば金属製の板状部材をプレス加工等することによって形成されたものであり、好適には普通鋼や特殊鋼等の鋼板(たとえば、冷間圧延鋼板やステンレス鋼板等)からなる部材にて構成される。
ここで、上述したカップ状部材50の延設部53の先端部54は、ハウジングの軸方向に沿って底板部11と下部側支持部材70の底部71との間に配置されており、これによりハウジングの軸方向に沿って底板部11と底部71とによって挟み込まれて保持されている。これにより、カップ状部材50は、その延設部53の先端部54が下部側支持部材70の底部71によって底板部11側に向けて押し付けられた状態となり、底板部11に対して固定されることになる。
燃焼室60のうち、天板部21側に位置する端部には、上部側支持部材80が配置されている。上部側支持部材80は、略円盤状の形状を有しており、フィルタ90と天板部21との境目部分を覆うように、これらフィルタ90と天板部21とに宛がわれて配置されている。これにより、上部側支持部材80は、燃焼室60の上記端部近傍において、天板部21とガス発生剤61との間に位置している。
上部側支持部材80は、天板部21に当接する底部81と、当該底部81の周縁から立設された当接部82とを有している。当接部82は、フィルタ90の天板部21側に位置する軸方向端部の内周面に当接している。
当該上部側支持部材80は、作動時において、燃焼室60にて発生したガスが、フィルタ90の上端と天板部21との間の隙間からフィルタ90の内部を経由することなく流出してしまうことを防止するための流出防止手段として機能する。上部側支持部材80は、下部側支持部材70と同様に、たとえば金属製の板状部材をプレス加工等することによって形成されたものであり、好適には普通鋼や特殊鋼等の鋼板(たとえば、冷間圧延鋼板やステンレス鋼板等)からなる部材にて構成される。
この上部側支持部材80の内部には、燃焼室60に収容されたガス発生剤61に接触するように環状形状のクッション材85が配置されている。これにより、クッション材85は、燃焼室60の天板部21側の部分において天板部21とガス発生剤61との間に位置することになり、ガス発生剤61を底板部11側に向けて押圧している。このクッション材85は、成形体からなるガス発生剤61が振動等によって粉砕されてしまうことを防止する目的で設けられるものであり、好適にはセラミックスファイバの成形体やロックウール、発泡樹脂(たとえば発泡シリコーン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン等)、クロロプレンおよびEPDMに代表されるゴム等からなる部材にて構成される。
次に、図1を参照して、上述した本実施の形態におけるガス発生器1の動作について説明する。
本実施の形態におけるガス発生器1が搭載された車両が衝突した場合には、車両に別途設けられた衝突検知手段によって衝突が検知され、これに基づいて車両に別途設けられたコントロールユニットからの通電によって点火器40が作動する。伝火室55に収容された伝火薬56は、点火器40が作動することによって生じた火炎によって点火されて燃焼し、多量の熱粒子を発生させる。この伝火薬56の燃焼によってカップ状部材50は破裂または溶融し、上述の熱粒子が燃焼室60へと流れ込む。
流れ込んだ熱粒子により、燃焼室60に収容されたガス発生剤61が着火されて燃焼し、多量のガスを発生させる。燃焼室60にて発生したガスは、フィルタ90の内部を通過し、その際、フィルタ90によって熱が奪われて冷却されるとともに、ガス中に含まれるスラグがフィルタ90によって除去されてハウジングの外周縁部に流れ込む。
ハウジングの内圧の上昇に伴い、上部側シェル20のガス噴出口23を閉塞していたシールテープ24による封止が環境温度に応じて全部または一部破られ、これによってシールテープ24による封止が解除されたガス噴出口23を介してガスがハウジングの外部へと噴出される。噴出されたガスは、ガス発生器1に隣接して設けられたエアバッグの内部に導入され、エアバッグを膨張および展開する。
以下においては、上述した本実施の形態におけるガス発生器1において採り得るガス噴出口23およびシールテープ24の具体的な構成について、そのバリエーションを含めて詳細に説明する。
上述した本実施の形態におけるガス発生器1においては、帯状の複数枚のシールテープまたは帯状の1枚のシールテープを用いて、上部側シェルの周壁部(隔壁部に相当)に設けられた複数のガス噴出口(複数のガス通過孔に相当)のすべてが閉塞されている。より詳細には、帯状の複数枚のシールテープを用いて複数のガス噴出口のすべてが閉塞される場合には、当該帯状の複数枚のシールテープの各々の端部が隣り合うシールテープと一部重なるように周壁部に連なって貼り付けられ、帯状の1枚のシールテープを用いて複数のガス噴出口のすべてが閉塞される場合には、当該帯状の1枚のシールテープの端部同士が重なるように周壁部に貼り付けられる。
ここで、帯状の複数枚のシールテープを用いて複数のガス噴出口のすべてが閉塞される場合、および、帯状の1枚のシールテープを用いて複数のガス噴出口のすべてが閉塞される場合のいずれにおいても、1枚のシールテープによって閉塞されるガス噴出口は複数存在し、そのうちの一部のガス噴出口は、シールテープが重ね合わされた部分である重ね貼り領域によって閉塞され、そのうちの残りのガス噴出口は、シールテープが重ね合わされていない部分である非重ね貼り領域によって閉塞される。すなわち、1枚のシールテープによって1個のガス噴出口のみが閉塞されることはなく、これによりシールテープの貼り付け枚数の削減が可能に構成されているとともに、重ね貼り領域と非重ね貼り領域とを設けることにより、シールテープの破断強度に差をもたせることが可能に構成されている。
図2ないし図9は、本実施の形態に基づいた第1ないし第7構成例に係る上部側シェルの端面図または断面図である。ここで、図2、図4、図6、図8および図9において示す上部側シェルの端面は、いずれも図1に示すII−II線に沿ったものであり、図3、図5および図7において示す断面は、図1に示す状態から内部構成部品および下部側シェルを取り除いたものである。
(第1構成例)
図2および図3は、第1構成例に係る上部側シェルの端面図および断面図である。まず、これら図2および図3を参照して、第1構成例について詳説する。
図2および図3に示すように、上部側シェル20Aは、複数のガス噴出口23a,23bが設けられた周壁部22の内周面に帯状の複数枚のシールテープ24A,24Bが貼り付けられることにより、これら複数のガス噴出口23a,23bがこれら帯状の複数枚のシールテープ24A,24Bによって閉塞されてなるものである。
複数のガス噴出口23a,23bは、その総数が12個であり、上部側シェル20Aの周壁部22の周方向における異なる位置に点在するように設けられている。より具体的には、総数が12個であるガス噴出口23a,23bは、各々の開口面積(すなわち、開口径)が同じに設定されており、周壁部22の周方向に沿って等間隔に一列に並んで設けられている。
一方、帯状の複数枚のシールテープ24A,24Bは、その総数が2枚であり、いずれも周壁部22の内周面に貼り付けられている。ここで、帯状の2枚のシールテープ24A,24Bは、同一の厚み、幅および長さを有しており、これら帯状の2枚のシールテープ24A,24Bによって上述した12個のガス噴出口23a,23bのすべてが閉塞されている。
帯状の2枚のシールテープ24A,24Bは、その各々の延在方向が周壁部22の周方向に合致するとともにその各々の延在方向に位置する一対の端部が隣り合うシールテープと重なった状態となるように連なって配置されることにより、全体として周壁部22の周方向に沿って周回して設けられている。より詳細には、シールテープ24Aは、その延在方向の一対の端部がシールテープ24Bによって覆われた状態とされているとともに、シールテープ24Bは、その延在方向の一対の端部がシールテープ24Aを覆った状態とされている。
これにより、これら帯状の2枚のシールテープ24A,24Bが重なった部分によって重ね貼り領域R1,R2が2箇所設けられることになり、当該2箇所の重ね貼り領域R1,R2は、周壁部22の周方向に沿って均等に配置されることになる。なお、これら2箇所の重ね貼り領域R1,R2の間に位置する部分の周壁部22は、帯状の2枚のシールテープ24A,24Bのいずれか1枚のみによって覆われることになり、当該部分が、隣り合うシールテープが重ね合わされていない部分である非重ね貼り領域となる。
ここで、これら帯状の2枚のシールテープ24A,24Bは、12個のガス噴出口23a,23bのうちの一部である、周壁部22を周方向に沿って2等分した位置に配置された2個のガス噴出口23bが上述した重ね貼り領域R1,R2によってそれぞれ閉塞されるとともに、12個のガス噴出口23a,23bのうちの残りである10個のガス噴出口23aが上述した非重ね貼り領域によって閉塞されるように、その貼り付け位置が調節されている。
以上のように構成することにより、第1構成例においては、帯状の2枚のシールテープの各々によって総数が12個のガス噴出口のうちのそれぞれ隣り合う7個のガス噴出口が閉塞されることにより、シールテープの貼り付け枚数の削減が可能とされているとともに、重ね貼り領域と非重ね貼り領域とを設けることにより、重ね貼り領域によって覆われた2個のガス噴出口を閉塞する部分のシールテープの破断強度と、非重ね貼り領域によって覆われた残る10個のガス噴出口を閉塞する部分のシールテープの破断強度とに差をもたせることが可能とされている。
(第2構成例)
図4は、第2構成例に係る上部側シェルの端面図である。次に、この図4を参照して、第2構成例について詳説する。なお、第2構成例は、上述した第1構成例と比較した場合に重ね貼り領域の構成のみが相違するものである。
図4に示すように、上部側シェル20A1は、上述した第1構成例に係る上部側シェル20Aと同様に、複数のガス噴出口23a,23bが設けられた周壁部22の内周面に帯状の複数枚のシールテープ24A,24Bが貼り付けられることにより、これら複数のガス噴出口23a,23bがこれら帯状の複数枚のシールテープ24A,24Bによって閉塞されてなるものである。
ここで、第2構成例においては、上述した第1構成例とは異なり、シールテープ24Aは、その延在方向の一対の端部のうちの一方がシールテープ24Bによって覆われた状態とされ、かつ、他方の端部がシールテープ24Bを覆った状態とされているとともに、シールテープ24Bは、その延在方向の一対の端部のうちの一方がシールテープ24Aによって覆われた状態とされ、かつ、他方の端部がシールテープ24Aを覆った状態とされている。
このように構成した場合にも、上述した第1構成例の場合と同様に、帯状の2枚のシールテープの各々によって総数が12個のガス噴出口のうちのそれぞれ隣り合う7個のガス噴出口が閉塞されることにより、シールテープの貼り付け枚数の削減が可能とされているとともに、重ね貼り領域と非重ね貼り領域とを設けることにより、重ね貼り領域によって覆われた2個のガス噴出口を閉塞する部分のシールテープの破断強度と、非重ね貼り領域によって覆われた残る10個のガス噴出口を閉塞する部分のシールテープの破断強度とに差をもたせることが可能とされている。
(第3構成例)
図5は、第3構成例に係る上部側シェルの断面図である。次に、この図5を参照して、第3構成例について詳説する。なお、第3構成例は、上述した第1構成例と比較した場合にガス噴出口の構成のみが相違するものである。
図5に示すように、上部側シェル20A2は、上述した第1構成例に係る上部側シェル20Aと同様に、複数のガス噴出口23a,23bが設けられた周壁部22の内周面に帯状の複数枚のシールテープ24A,24Bが貼り付けられることにより、これら複数のガス噴出口23a,23bがこれら帯状の複数枚のシールテープ24A,24Bによって閉塞されてなるものである。
ここで、第3構成例においては、上述した第1構成例とは異なり、重ね貼り領域R1,R2によって閉塞された2個のガス噴出口23bの各々の開口面積が、非重ね貼り領域によって閉塞された10個のガス噴出口23aの各々の開口面積よりも小さくなるように構成されている。より具体的には、重ね貼り領域R1,R2によって閉塞された2個のガス噴出口23bの各々の開口径(図中において示すDb)が、非重ね貼り領域によって閉塞された10個のガス噴出口23aの各々の開口径(図中において示すDa)よりも小さくなるように構成されている(Db<Da)。
このように構成した場合にも、上述した第1構成例の場合と同様に、帯状の2枚のシールテープの各々によって総数が12個のガス噴出口のうちのそれぞれ隣り合う7個のガス噴出口が閉塞されることにより、シールテープの貼り付け枚数の削減が可能とされているとともに、重ね貼り領域と非重ね貼り領域とを設けることにより、重ね貼り領域によって覆われた2個のガス噴出口を閉塞する部分のシールテープの破断強度と、非重ね貼り領域によって覆われた残る10個のガス噴出口を閉塞する部分のシールテープの破断強度とに差をもたせることが可能とされている。
さらに、上記のように構成した場合には、ガス噴出口の開口面積が相違することによってもシールテープの破断強度が調節されるため、2個のガス噴出口を閉塞する部分のシールテープの破断強度と、残る10個のガス噴出口を閉塞する部分のシールテープの破断強度とにさらなる任意の差をもたせることが可能になる。このように、重ね貼り領域によって覆われたガス噴出口の開口面積を小さくすることにより、ハウジングの内部の圧力上昇によって当該ガス噴出口を閉塞する部分のシールテープが受ける力がより小さくなるため、当該ガス噴出口が開口し難くなり、結果として非重ね貼り領域によって覆われたガス噴出口に比べて閉塞状態が保たれ易くなる。そのため、上記のように構成することにより、重ね貼り領域と非重ね貼り領域との間でシールテープの破断強度により大きな差をもたせることが可能になる。
なお、本第3構成例においては、重ね貼り領域によって閉塞されたガス噴出口の1個当たりの開口面積を非重ね貼り領域によって閉塞されたガス噴出口の1個当たりの開口面積よりも小さく構成した場合を例示したが、重ね貼り領域によって閉塞されたガス噴出口の1個当たりの開口面積を非重ね貼り領域によって閉塞されたガス噴出口の1個当たりの開口面積よりも大きく構成してもよい。このように構成した場合にも、重ね貼り領域と非重ね貼り領域との間でシールテープの破断強度に差をもたせることは可能である。
(第4構成例)
図6は、第4構成例に係る上部側シェルの断面図である。次に、この図6を参照して、第4構成例について詳説する。
図6に示すように、上部側シェル20A3は、上述した第1構成例に係る上部側シェル20Aと同様に、複数のガス噴出口23a,23bが設けられた周壁部22の内周面に帯状の複数枚のシールテープ24A,24Bが貼り付けられることにより、これら複数のガス噴出口23a,23bがこれら帯状の複数枚のシールテープ24A,24Bによって閉塞されてなるものである。
複数のガス噴出口23a,23bは、その総数が18個であり、上部側シェル20A3の周壁部22の周方向における異なる位置に点在するように設けられている。より具体的には、総数が18個であるガス噴出口23a,23bは、各々の開口面積(すなわち、開口径)が同じに設定されており、周壁部22の周方向に沿って等間隔に一列に並んで設けられている。
一方、帯状の複数枚のシールテープ24A,24Bは、その総数が2枚であり、いずれも周壁部22の内周面に貼り付けられている。ここで、帯状の2枚のシールテープ24A,24Bは、同一の厚み、幅および長さを有しており、これら帯状の2枚のシールテープ24A,24Bによって上述した18個のガス噴出口23a,23bのすべてが閉塞されている。
帯状の2枚のシールテープ24A,24Bは、その各々の延在方向が周壁部22の周方向に合致するとともにその各々の延在方向に位置する一対の端部が隣り合うシールテープと重なった状態となるように連なって配置されることにより、全体として周壁部22の周方向に沿って周回して設けられている。より詳細には、シールテープ24Aは、その延在方向の一対の端部がシールテープ24Bによって覆われた状態とされているとともに、シールテープ24Bは、その延在方向の一対の端部がシールテープ24Aを覆った状態とされている。
これにより、これら帯状の2枚のシールテープ24A,24Bが重なった部分によって重ね貼り領域R1,R2が2箇所設けられることになり、当該2箇所の重ね貼り領域R1,R2は、周壁部22の周方向に沿って均等に配置されることになる。なお、これら2箇所の重ね貼り領域R1,R2の間に位置する部分の周壁部22は、帯状の2枚のシールテープ24A,24Bのいずれか1枚のみによって覆われることになり、当該部分が、隣り合うシールテープが重ね合わされていない部分である非重ね貼り領域となる。
ここで、これら帯状の2枚のシールテープ24A,24Bは、18個のガス噴出口23a,23bのうちの一部である、上部側シェル20A3の中心を挟んで相対して位置する6個のガス噴出口23bが上述した重ね貼り領域R1,R2によってそれぞれ閉塞されるとともに、18個のガス噴出口23a,23bのうちの残りである12個のガス噴出口23aが上述した非重ね貼り領域によって閉塞されるように、その貼り付け位置が調節されている。
以上のように構成することにより、第4構成例においては、帯状の2枚のシールテープの各々によって総数が18個のガス噴出口のうちのそれぞれ隣り合う12個のガス噴出口が閉塞されることにより、シールテープの貼り付け枚数の削減が可能とされているとともに、重ね貼り領域と非重ね貼り領域とを設けることにより、重ね貼り領域によって覆われた6個のガス噴出口を閉塞する部分のシールテープの破断強度と、非重ね貼り領域によって覆われた残る12個のガス噴出口を閉塞する部分のシールテープの破断強度とに差をもたせることが可能とされている。
(第5構成例)
図7は、第5構成例に係る上部側シェルの断面図である。次に、この図7を参照して、第5構成例について詳説する。なお、第5構成例は、上述した第4構成例と比較した場合にガス噴出口の構成が主として相違するものである。
図7に示すように、上部側シェル20A4は、上述した第4構成例に係る上部側シェル20A3と同様に、複数のガス噴出口23a,23bが設けられた周壁部22の内周面に帯状の複数枚のシールテープ24A,24Bが貼り付けられることにより、これら複数のガス噴出口23a,23bがこれら帯状の複数枚のシールテープ24A,24Bによって閉塞されてなるものである。
ここで、第5構成例においては、上述した第4構成例とは異なり、複数のガス噴出口23a,23bが、周壁部22の周方向における異なる位置に点在するように設けられているのみならず、周壁部22の軸方向における異なる位置にも点在するように設けられている。より具体的には、周壁部22の周方向において隣り合って位置するガス噴出口が軸方向においてずれた位置に配置されることにより、ガス噴出口23a,23bが周壁部22にジグザグ状に設けられている。
そのため、当該第5構成例においては、帯状の2枚のシールテープ24A,24Bの幅が、これらジグザグ状に設けられたガス噴出口23a,23bを覆うことができるように調節されている。
このように構成した場合にも、上述した第4構成例の場合と同様に、帯状の2枚のシールテープの各々によって総数が18個のガス噴出口のうちのそれぞれ隣り合う12個のガス噴出口が閉塞されることにより、シールテープの貼り付け枚数の削減が可能とされているとともに、重ね貼り領域と非重ね貼り領域とを設けることにより、重ね貼り領域によって覆われた6個のガス噴出口を閉塞する部分のシールテープの破断強度と、非重ね貼り領域によって覆われた残る12個のガス噴出口を閉塞する部分のシールテープの破断強度とに差をもたせることが可能とされている。
(第6構成例)
図8は、第6構成例に係る上部側シェルの端面図である。次に、この図8を参照して、第6構成例について詳説する。
図8に示すように、上部側シェル20Bは、複数のガス噴出口23a,23bが設けられた周壁部22の内周面に帯状の複数枚のシールテープ24A,24B,24Cが貼り付けられることにより、これら複数のガス噴出口23a,23bがこれら帯状の複数枚のシールテープ24A,24B,24Cによって閉塞されてなるものである。
複数のガス噴出口23a,23bは、その総数が12個であり、上部側シェル20Bの周壁部22の周方向における異なる位置に点在するように設けられている。より具体的には、総数が12個であるガス噴出口23a,23bは、各々の開口面積(すなわち、開口径)が同じに設定されており、周壁部22の周方向に沿って等間隔に一列に並んで設けられている。
一方、帯状の複数枚のシールテープ24A,24B,24Cは、その総数が3枚であり、いずれも周壁部22の内周面に貼り付けられている。ここで、帯状の3枚のシールテープ24A,24B,24Cは、同一の厚み、幅および長さを有しており、これら帯状の3枚のシールテープ24A,24B,24Cによって上述した12個のガス噴出口23a,23bのすべてが閉塞されている。
帯状の3枚のシールテープ24A,24B,24Cは、その各々の延在方向が周壁部22の周方向に合致するとともにその各々の延在方向に位置する一対の端部が隣り合うシールテープと重なった状態となるように連なって配置されることにより、全体として周壁部22の周方向に沿って周回して設けられている。より詳細には、シールテープ24Aは、その延在方向の一対の端部のうちの一方がシールテープ24Bによって覆われた状態とされ、かつ、他方の端部がシールテープ24Cによって覆われた状態とされているとともに、シールテープ24Bは、その延在方向の一対の端部のうちの一方がシールテープ24Cによって覆われた状態とされ、かつ、他方の端部がシールテープ24Aを覆った状態とされ、さらに、シールテープ24Cは、その延在方向の一対の端部のうちの一方がシールテープ24Aを覆った状態とされ、かつ、他方の端部がシールテープ24Bを覆った状態とされている。
これにより、これら帯状の3枚のシールテープ24A,24B,24Cのうちの2枚が重なった部分によって重ね貼り領域R1,R2,R3が3箇所設けられることになり、当該3箇所の重ね貼り領域R1,R2,R3は、周壁部22の周方向に沿って均等に配置されることになる。なお、これら3箇所の重ね貼り領域R1,R2,R3の間に位置する部分の周壁部22は、帯状の3枚のシールテープ24A,24B,24Cのいずれか1枚のみによって覆われることになり、当該部分が、隣り合うシールテープが重ね合わされていない部分である非重ね貼り領域となる。
ここで、これら帯状の3枚のシールテープ24A,24B,24Cは、12個のガス噴出口23a,23bのうちの一部である、周壁部22を周方向に沿って3等分した位置に配置された3個のガス噴出口23bが上述した重ね貼り領域R1,R2,R3によってそれぞれ閉塞されるとともに、12個のガス噴出口23a,23bのうちの残りである9個のガス噴出口23aが上述した非重ね貼り領域によって閉塞されるように、その貼り付け位置が調節されている。
以上のように構成することにより、第6構成例においては、帯状の3枚のシールテープの各々によって総数が12個のガス噴出口のうちのそれぞれ隣り合う5個のガス噴出口が閉塞されることにより、シールテープの貼り付け枚数の削減が可能とされているとともに、重ね貼り領域と非重ね貼り領域とを設けることにより、重ね貼り領域によって覆われた3個のガス噴出口を閉塞する部分のシールテープの破断強度と、非重ね貼り領域によって覆われた残る9個のガス噴出口を閉塞する部分のシールテープの破断強度とに差をもたせることが可能とされている。
(第7構成例)
図9は、第7構成例に係る上部側シェルの端面図である。次に、この図9を参照して、第7構成例について詳説する。
図9に示すように、上部側シェル20Cは、複数のガス噴出口23a,23bが設けられた周壁部22の内周面に帯状の1枚のシールテープ24Aが貼り付けられることにより、これら複数のガス噴出口23a,23bが当該帯状の1枚のシールテープ24Aによって閉塞されてなるものである。
複数のガス噴出口23a,23bは、その総数が12個であり、上部側シェル20Cの周壁部22の周方向における異なる位置に点在するように設けられている。より具体的には、総数が12個であるガス噴出口23a,23bは、各々の開口面積(すなわち、開口径)が同じに設定されており、周壁部22の周方向に沿って等間隔に一列に並んで設けられている。
帯状の1枚のシールテープ24Aは、その延在方向が周壁部22の周方向に合致するとともにその延在方向に位置する一対の端部同士が重なった状態となるように、周壁部22の周方向に沿って周回して設けられている。より詳細には、シールテープ24Aは、その延在方向の一対の端部のうちの一方が当該シールテープ24Aの他方の端部によって覆われた状態とされている。
これにより、当該帯状の1枚のシールテープ24Aが重なった部分によって重ね貼り領域R1が1箇所設けられることになり、当該1箇所の重ね貼り領域R1は、周壁部22の周方向に沿った所定位置に配置されることになる。なお、当該1箇所の重ね貼り領域R1を除く部分の周壁部22は、帯状の1枚のシールテープ24Aが重ね合わされていない部分である非重ね貼り領域となる。
ここで、当該帯状の1枚のシールテープ24Aは、12個のガス噴出口23a,23bのうちの一部である1個のガス噴出口23bが上述した重ね貼り領域R1によって閉塞されるとともに、12個のガス噴出口23a,23bのうちの残りである11個のガス噴出口23aが上述した非重ね貼り領域によって閉塞されるように、その貼り付け位置が調節されている。
以上のように構成することにより、第7構成例においては、帯状の1枚のシールテープによって総数が12個のガス噴出口のすべてが閉塞されることにより、シールテープの貼り付け枚数の削減が可能とされているとともに、重ね貼り領域と非重ね貼り領域とを設けることにより、重ね貼り領域によって覆われた1個のガス噴出口を閉塞する部分のシールテープの破断強度と、非重ね貼り領域によって覆われた残る11個のガス噴出口を閉塞する部分のシールテープの破断強度とに差をもたせることが可能とされている。
上記において示した第1ないし第7構成例におけるガス噴出口23およびシールテープ24の構成を採用することにより、以下の効果を得ることができる。
第1に、第1ないし第7構成例においては、上述のように、シールテープの貼り付け枚数の削減が可能になるため、部品点数が削減できるばかりでなく、製造の際の生産性を低下させることもなく、重ね貼り領域と非重ね貼り領域とにおいてシールテープの破断強度に差をもたせることが可能になる。特に、第7構成例においては、シールテープの貼り付け枚数が1枚のみで足りることから、貼り付け回数を1回にまで削減することができ、生産性が顕著に改善される。
第2に、第1ないし第6構成例においては、複数枚のシールテープを同一の仕様(すなわち、同一の厚み、幅および長さ等)のものとすることができるため、部品の管理が容易となり、生産性に資することとなる。
第3に、第1ないし第6構成例においては、重ね貼り領域が周壁部の周方向に沿って均等に配置されることになるため、ガス噴出口から噴出されるガスによってガス発生器に加えられることになる推力が互いに相殺し合うこととなり、ガス発生器に外力が加わることが未然に防止され、作動時における安全性が確保できることになる。なお、第7構成例においても、重ね貼り領域を周壁部の周方向に沿って極端に大きく設定しない限り、大きな外力がガス発生器に加わることはないため、ガス発生器を固定するリテーナによる固定力を十分に高くすることにより、作動時における安全性の確保が可能である。
第4に、第1ないし第7構成例においては、いずれもガス噴出口の周囲部分の周壁部に十分なシールテープの貼り付け代を確保することができることになるため、当該シールテープによるシール性を十分に高くすることができる。したがって、ガス発生剤や伝火薬が吸湿してしまうことが確実に防止でき、高性能でかつ高信頼性のガス発生器とすることができる。
第5に、第1ないし第7構成例においては、上述したようにシールテープの貼り付け代が十分に確保できるため、隣り合うガス噴出口同士を比較的接近させて設けることも可能になり、ガス発生器の小型化にも寄与することになる。その場合、ガス噴出口が比較的密に配置されることにより、フィルタを通過するガスの流れもより分散された状態となるため、フィルタの利用効率が高まることになり、フィルタの冷却機能およびスラグ除去機能が向上することになる。また、フィルタの冷却機能およびスラグ除去機能が向上することにより、フィルタをより小型に構成することも可能となり、この点においてもガス発生器の小型化に寄与することとなる。
第6に、第1ないし第7構成例においては、周壁部のうちの径が一様な円筒状の部位に複数のガス噴出口のすべてが設けられているが、このような構成を採用することにより、シールテープの貼り付けの際にシールテープに皺が生じることがなく、その貼り付けが容易となるとともに、高いシール性を確保することもできる。また、周壁部の軸方向に沿ったシールテープの貼り付け代を必要最小限に抑えることができるため、当該貼り付け代を確保するために必要となる周壁部の上記円筒状の部位を軸方向に沿って小さくすることができ、この点においてもガス発生器の小型化に寄与することになる。ここで、第1ないし第4、第6および第7構成例においては、ガス噴出口が周壁部の周方向に並ぶように一列に配列された構成であるため、第5構成例のようにガス噴出口を周壁部の軸方向に点在させた構成とした場合に比べ、周壁部のうちの径が一様な円筒状の部位を当該周壁部の軸方向に沿ってさらに短尺化することができ、ガス発生器の小型化の点において特に優位となる。
なお、上記において示した第1ないし第7構成例においては、重ね貼り領域によって閉塞された一部のガス噴出口の総開口面積が、非重ね貼り領域によって閉塞された残りのガス噴出口の総開口面積と同じかそれよりも小さく構成されていることが好ましい。このように構成することにより、ガス噴出口のすべてが開口せずに動作する条件下においても、高いガス出力を得ることができる。
また、上記において示した第1ないし第7構成例においては、周壁部に設けられるガス噴出口の総数を12個または18個とした場合を例示したが、当該ガス噴出口の総数は、これに限られるものではなく、好ましくは8個から24個程度の範囲とされる。その場合に重ね貼り領域によって閉塞されるガス噴出口の数は、複数のシールテープを用いる場合には、好ましくは2個から12個程度の範囲とされ、1枚のシールテープのみを用いる場合には、好ましくは1個または2個程度とされる。
また、上記において示した第1ないし第6構成例においては、同一の長さのシールテープを2枚または3枚用いる場合を例示して説明を行なったが、必要に応じて異なる長さのシールテープを用いることとしてもよく、また、使用するシールテープの枚数も、これに限られず4枚以上であってもよい。
また、上記において示した第1ないし第6構成例においては、同一の長さのシールテープを複数枚用いることで重ね貼り領域が周壁部の周方向に沿って均等に配置された場合を例示して説明を行なったが、上述したように必要に応じて異なる長さのシールテープを用いることにより、当該重ね貼り領域が周壁部の周方向に沿って不均等に配置されてもよい。
また、上記において示した第1ないし第4、第6および第7構成例においては、ガス噴出口が一列に配列された場合を、また、上記において示した第5構成例においては、ガス噴出口がジグザグ状に配置された場合をそれぞれ例示して説明を行なったが、ガス噴出口のレイアウトはこれに限られるものではなく、たとえば格子状、千鳥状等、周壁部の軸方向に沿って多段に設けられていてもよい。
また、上記において示した第1ないし第7構成例においては、周壁部の内周面にシールテープが貼り付けられた場合を例示して説明を行なったが、周壁部の外周面にシールテープが貼り付けられていてもよい。
(実施の形態2)
図10および図11は、本発明の実施の形態2におけるガス発生器の上部側シェルの端面図および断面図である。まず、これら図10および図11を参照して、本実施の形態におけるガス発生器について説明する。
本実施の形態におけるガス発生器は、基本的に上述した実施の形態1におけるガス発生器1と同様の構成を有しており、当該実施の形態1におけるガス発生器1と異なる点は、上部側シェルの構成ならびにこれに貼り付けられたシールテープの構成のみである。
ただし、上述した実施の形態1におけるガス発生器1は、環境温度の違い(すなわち、低温環境下にあるか、それとも常温環境下にあるか、はたまた高温環境下にあるか)に基づき、特定の条件下において、作動時において複数のガス噴出口のうちの一部が開裂して他の一部が開裂しないように設計されたものであったが、本実施の形態におけるガス発生器は、これとは異なり、いずれの条件下においても、作動時において複数のガス噴出口が段階的にすべて開裂するように設計されたものである。
図10および図11に示すように、本実施の形態におけるガス発生器の上部側シェル20Dは、複数のガス噴出口23a1,23a2,23bが設けられた周壁部22の内周面に帯状のシールテープ24A,24Bが貼り付けられることにより、これら複数のガス噴出口23a1,23a2,23bがこれら帯状のシールテープ24A,24Bによって閉塞されてなるものである。
複数のガス噴出口23a1,23a2,23bは、その総数が8個であり、上部側シェル20Dの周壁部22の周方向における異なる位置に点在するように設けられている。より具体的には、総数が8個であるガス噴出口23a1,23a2,23bのうち、周方向に沿って1つ置きに配置された4つのガス噴出口23a1,23bは、各々の開口面積(すなわち、開口径)が同じに設定されており、相対的に開口面積が大きい大孔にて構成されている。一方、総数が8個であるガス噴出口23a1,23a2,23bのうち、上記4つのガス噴出口23a1,23b以外の残る4つのガス噴出口23a2は、各々の開口面積(すなわち、開口径)が同じに設定されており、相対的に開口面積が小さい小孔にて構成されている。すなわち、2つのガス噴出口23a1の開口径Da1と、2つのガス噴出口23bの開口径Dbと、4つのガス噴出口23a2の開口径Da2とは、Da1=Db>Da2の関係にある。なお、これら複数のガス噴出口23a1,23a2,23bは、周壁部22の周方向に沿って等間隔に一列に並んで設けられている。
一方、帯状の複数枚のシールテープ24A,24Bは、その総数が2枚であり、いずれも周壁部22の内周面に貼り付けられている。ここで、帯状の2枚のシールテープ24A,24Bは、同一の厚み、幅および長さを有しており、これら帯状の2枚のシールテープ24A,24Bによって上述した12個のガス噴出口23a1,23a2,23bのすべてが閉塞されている。
帯状の2枚のシールテープ24A,24Bは、その各々の延在方向が周壁部22の周方向に合致するとともにその各々の延在方向に位置する一対の端部が隣り合うシールテープと重なった状態となるように連なって配置されることにより、全体として周壁部22の周方向に沿って周回して設けられている。より詳細には、シールテープ24Aは、その延在方向の一対の端部がシールテープ24Bによって覆われた状態とされているとともに、シールテープ24Bは、その延在方向の一対の端部がシールテープ24Aを覆った状態とされている。
これにより、これら帯状の2枚のシールテープ24A,24Bが重なった部分によって重ね貼り領域R1,R2が2箇所設けられることになり、当該2箇所の重ね貼り領域R1,R2は、周壁部22の周方向に沿って均等に配置されることになる。なお、これら2箇所の重ね貼り領域R1,R2の間に位置する部分の周壁部22は、帯状の2枚のシールテープ24A,24Bのいずれか1枚のみによって覆われることになり、当該部分が、隣り合うシールテープが重ね合わされていない部分である非重ね貼り領域となる。
ここで、これら帯状の2枚のシールテープ24A,24Bは、8個のガス噴出口23a1,23a2,23bのうちの一部である、周壁部22を周方向に沿って2等分した位置に配置された2個のガス噴出口23bが上述した重ね貼り領域R1,R2によってそれぞれ閉塞されるとともに、8個のガス噴出口23a1,23a2,23bのうちの残りである6個のガス噴出口23a1,23a2が上述した非重ね貼り領域によって閉塞されるように、その貼り付け位置が調節されている。
以上のように構成することにより、本実施の形態においては、帯状の2枚のシールテープの各々によって総数が8個のガス噴出口のうちのそれぞれ隣り合う5個のガス噴出口が閉塞されることにより、シールテープの貼り付け枚数の削減が可能とされているとともに、重ね貼り領域と非重ね貼り領域とを設けるとともに総数が8個のガス噴出口を開口面積が大きい大孔4個と開口面積が小さい小孔4個に設定することにより、重ね貼り領域によって覆われた2個の大孔からなるガス噴出口を閉塞する部分のシールテープの破断強度と、非重ね貼り領域によって覆われた2個の大孔からなるガス噴出口を閉塞する部分のシールテープの破断強度と、非重ね貼り領域によって覆われた4個の小孔からなるガス噴出口を閉塞する部分のシールテープの破断強度とに差をもたせることが可能とされている。
より詳細には、本実施の形態におけるガス発生器は、ガス噴出口23として、非重ね貼り領域で覆われることでシールテープの相対的に厚みの薄い部分によって閉塞された相対的に開口面積が大きいガス噴出口23a1と、非重ね貼り領域で覆われることでシールテープの相対的に厚みの薄い部分によって閉塞された相対的に開口面積が小さいガス噴出口23a2と、重ね貼り領域R1,R2で覆われることでシールテープの相対的に厚みの厚い部分で閉塞された相対的に開口面積が大きいガス噴出口23bとの3種類のものを有することになる。したがって、これら3種類のガス噴出口が開口するために必要となる圧力が3段階に設定されることになり、当該圧力が、ガス噴出口23a1、ガス噴出口23a2、ガス噴出口23bの順で大きくなることになる。
図12は、本実施の形態におけるガス発生器の作動時においてガス噴出口が段階的に開口する様子を模式的に表わした図である。以下、この図12を参照して、本実施の形態におけるガス発生器の作動時の動作について詳説する。なお、図12(A)、図12(B)および図12(C)は、それぞれ作動開始から所定時間が経過した時点での状態を模式的に表わしたものであり、図12(A)、図12(B)、図12(C)の順に経過時間が長くなっている。
本実施の形態におけるガス発生器が作動すると、ガス発生剤61が燃焼を開始し、これに伴って燃焼室60の内圧が上昇し始める。本実施の形態におけるガス発生器においては、当該燃焼室60の内圧が上昇する過程において、複数のガス噴出口23a1,23a2,23bが段階的に開口する。
作動開始後の第1段階においては、燃焼室60の内圧が、8個のガス噴出口23a1,23a2,23bのいずれをも開口させることができる圧力にまで到達しておらず、これら8個のガス噴出口23a1,23a2,23bが開口することはなく、内圧が上昇をし続ける。
作動開始後の第2段階においては、図12(A)に示すように、燃焼室60の内圧が、8個のガス噴出口23a1,23a2,23bのうちで最も低い圧力で開口する2個のガス噴出口23a1を開口させることができる内圧P1に達し、これに伴って当該2個のガス噴出口23a1を覆う部分のシールテープ24A,24Bが開裂し、開口した2個のガス噴出口23a1を介してガスが噴出される。これにより、作動開始から比較的短時間のうちにガス出力が得られることになり、エアバッグの膨張および展開を早期に開始させることができる。
作動開始後の第3段階においては、図12(B)に示すように、燃焼室60の内圧が、8個のガス噴出口23a1,23a2,23bのうちで2番目に低い圧力で開口する4個のガス噴出口23a2を開口させることができる内圧P2に達し、これに伴って当該4個のガス噴出口23a2を覆う部分のシールテープ24A,24Bが開裂し、既に開口している上記2個のガス噴出口23a1を含め、開口した6個のガス噴出口23a1,23a2を介してガスが噴出される。これにより、エアバッグの膨張および展開を持続させることができる。
作動開始後の第4段階においては、図12(C)に示すように、燃焼室60の内圧が、8個のガス噴出口23a1,23a2,23bのうちで最も高い圧力で開口する2個のガス噴出口23bを開口させることができる内圧P3に達し、これに伴って当該2個のガス噴出口23bを覆う部分のシールテープ24A,24Bが開裂し、既に開口している上記6個のガス噴出口23a1,23a2を含め、開口した8個すべてのガス噴出口23a1,23a2,23bを介してガスが噴出される。これにより、燃焼室60の内圧が適切な高圧状態に維持されることでガス発生剤61が安定的に燃焼することになり、ガス発生剤61のすべてが燃え尽きるまで安定的に高いガス出力が得られ、結果としてエアバッグの持続的な展開が継続できることになる。
なお、作動開始後の第5段階においては、ガス発生剤61が完全に燃え尽きることでガスの出力が停止され、これによりガス発生器の作動が終了することでエアバッグの展開も終了する。
以上において説明した本実施の形態におけるガス発生器とすることにより、その詳細な説明はここでは繰り返さないが、上述した実施の形態1において説明した如くの効果、すなわち製造の際の生産性を低下させることなく、ガス通過孔を閉塞するシールテープの破断強度に差をもたせることができる効果等を得ることができる。加えて、本実施の形態におけるガス発生器とすることにより、以下のような効果をさらに得ることができる。
第1に、ガス発生器の作動時における燃焼室の内圧の最大値を必要以上に高めることなく相当程度に低く抑えることができる。すなわち、ガス発生剤を持続的に燃焼させるためには、相当程度に燃焼室の内圧が高圧である状態を維持することが必要であるため、従来のガス発生器においては、これを確実ならしめるために、本来必要である燃焼室の内圧の最大値よりも十分なマージンをもってより高い内圧にまで到達するようにその設計がなされている。これに対し、本実施の形態におけるガス発生器においては、上述した如くの段階的な動作が実現できるため、ガス発生剤が燃焼することによる燃焼室の内圧の上昇速度と、早期のうちから段階的にガスが適度に排出されることによる燃焼室の内圧の下降速度とのバランスが図られることで燃焼室の内圧を経時的に所望の値に制御することが可能になり、必要以上に上述したマージンを確保せずとも十分にガス発生剤を持続的に燃焼させることができる。したがって、当該マージンが従来に比して小さくて済む分、ガス発生器の耐圧性能を極めて高くする必要もなく、たとえば従来に比してハウジングの厚みを薄くすること等ができ、部品コストの削減や軽量化等が実現できることになる。
第2に、低温環境下におけるガス発生器の動作を確実ならしめることができる。すなわち、一般に低温環境下においては、常温環境下および高温環境下に比べて燃焼室の内圧の上昇速度を確保することが難しくなる分、ガス噴出口が非段階的に(すなわち、すべてのガス噴出口がほぼ同時に開口する)従来のガス発生器においては、ガス噴出口の開口に伴って燃焼室の内圧が急激に低下してしまい、ガス発生剤がすべて燃え尽きるまでにガス発生剤の燃焼が終了してしまうおそれが生じ易くなるところ、本実施の形態におけるガス発生器においては、上述した如くの段階的な動作が実現できるため、低温環境下においても上述した如くの燃焼室の内圧の急激な減少が生じず、ガス発生剤を確実にすべて燃焼させることができる。したがって、従来に比してより高性能のガス発生器とすることができる。
第3に、環境温度に起因するガス出力の性能差を格段に軽減することができる。すなわち、上述したように、一般的にガス発生器においては、環境温度の相違に基づいて燃焼室の内圧の上昇速度に大きな差が生じてしまうため、燃焼室の内圧が最大値に維持できる時間的な長さも環境温度によって大幅に異なることとなってしまうところ、本実施の形態におけるガス発生器においては、上述した如くの段階的な動作が実現できるため、ガス噴出口が段階的に開口することでその際の燃焼室の内圧の落ち込みを効果的に抑制することができ、結果として燃焼室の内圧を最大値に維持できる時間的な長さの差が環境温度に依存してしまうことを軽減することができる。したがって、従来に比してより高性能のガス発生器とすることができる。
なお、本実施の形態においては、上部側シェルに8個のガス噴出口を設け、これら8個のガス噴出口のうちの4個を同一の形状および大きさの大孔にて構成するとともに、残る4個を同一の形状および大きさの小孔にて構成し、さらにこれらを2枚のシールテープを用いて閉塞することにより、2水準のガス噴出口と2水準のシールテープの厚みとの組み合わせによって、ガス噴出口を開口させるために必要となる圧力が3段階に設定されてなるガス発生器を例示して説明を行なったが、ガス噴出口の数や大きさ、ガス噴出口の水準の数、シールテープの厚みや枚数、シールテープの重ね合わせ具合、シールテープの厚みの水準の数等を適宜変更することにより、段階的に開口するガス噴出口の種類の数を任意に調節することができる。したがって、個々のガス発生器の仕様に応じてこれらを最適化することにより、高性能のガス発生器を比較的容易に設計できるばかりでなく、ガス出力のチューニングの自由度も広がることになる。
また、本実施の形態におけるガス発生器においても、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、上述した実施の形態1において説明した如くの各種の変更を施すことが当然に可能である。
加えて、本実施の形態においては、上述したように、環境温度の違い(すなわち、低温環境下にあるか、それとも常温環境下にあるか、はたまた高温環境下にあるか)に依らず、いずれの条件下においても、作動時において複数のガス噴出口が段階的にすべて開裂するように設計がなされたガス発生器を例示して説明を行なったが、上述した実施の形態1の場合と同様に、特定の条件下において、作動時において複数のガス噴出口のうちの一部が開裂して他の一部が開裂しないように設計がなされたガス発生器とすることもできる。具体的には、本実施の形態において開示した構成のうち、たとえば大孔および小孔からなるガス噴出口の構成やシールテープの貼付け方法等を変更することなく、個々のガス噴出口の開口面積やシールテープの厚み等を所定の大きさや厚み等に変更することとすれば、上述した実施の形態1と同様の動作が実現できるガス発生器とすることもできる。
(実施の形態3)
図13は、本発明の実施の形態3におけるガス発生器の上部側シェルの断面図である。まず、この図13を参照して、本実施の形態におけるガス発生器について説明する。
本実施の形態におけるガス発生器は、基本的に上述した実施の形態2におけるガス発生器と同様の構成を有しており、当該実施の形態2におけるガス発生器と異なる点は、上部側シェルに設けられた開口部の形状および大きさ等にある。なお、本実施の形態におけるガス発生器も、上述した実施の形態2におけるガス発生器と同様に、環境温度の違い(すなわち、低温環境下にあるか、それとも常温環境下にあるか、はたまた高温環境下にあるか)に依らず、いずれの条件下においても、作動時において複数のガス噴出口が段階的にすべて開裂するように設計されたものである。
図13に示すように、本実施の形態におけるガス発生器の上部側シェル20Eは、複数のガス噴出口23a,23bが設けられた周壁部22の内周面に帯状のシールテープ24A,24Bが貼り付けられることにより、これら複数のガス噴出口23a,23bがこれら帯状のシールテープ24A,24Bによって閉塞されてなるものである。
複数のガス噴出口23a,23bは、その総数が8個(図においてはこのうちの5個のみが表われている)であり、上部側シェル20Eの周壁部22の周方向における異なる位置に点在するように設けられている。より具体的には、総数が8個であるガス噴出口23a,23bは、各々の開口面積(すなわち、開口径)および形状が同じに設定されており、周壁部22の周方向に沿って等間隔に一列に並んで設けられている。
一方、帯状の複数枚のシールテープ24A,24Bは、その総数が2枚であり、いずれも周壁部22の内周面に貼り付けられている。ここで、帯状の2枚のシールテープ24A,24Bは、同一の厚み、幅および長さを有しており、これら帯状の2枚のシールテープ24A,24Bによって上述した8個のガス噴出口23a,23bのすべてが閉塞されている。
帯状の2枚のシールテープ24A,24Bは、その各々の延在方向が周壁部22の周方向に合致するとともにその各々の延在方向に位置する一対の端部が隣り合うシールテープと重なった状態となるように連なって配置されることにより、全体として周壁部22の周方向に沿って周回して設けられている。より詳細には、シールテープ24Aは、その延在方向の一対の端部がシールテープ24Bによって覆われた状態とされている(図においてはこのうちの一方の端部のみが表われている)とともに、シールテープ24Bは、その延在方向の一対の端部がシールテープ24Aを覆った状態とされている(図においてはこのうちの一方の端部のみが表われている)。
これにより、これら帯状の2枚のシールテープ24A,24Bが重なった部分によって重ね貼り領域R1,R2(図においてはこのうちのR1のみが表われている)が2箇所設けられることになり、当該2箇所の重ね貼り領域R1,R2は、周壁部22の周方向に沿って均等に配置されることになる。なお、これら2箇所の重ね貼り領域R1,R2の間に位置する部分の周壁部22は、帯状の2枚のシールテープ24A,24Bのいずれか1枚のみによって覆われることになり、当該部分が、隣り合うシールテープが重ね合わされていない部分である非重ね貼り領域となる。
ここで、これら帯状の2枚のシールテープ24A,24Bは、8個のガス噴出口23a,23bのうちの一部である、周壁部22を周方向に沿って2等分した位置に配置された2個のガス噴出口23bが上述した重ね貼り領域R1,R2によってそれぞれ閉塞されるとともに、8個のガス噴出口23a,23bのうちの残りである6個のガス噴出口23aが上述した非重ね貼り領域によって閉塞されるように、その貼り付け位置が調節されている。
ガス噴出口23a,23bは、いずれも周壁部22の軸方向に沿った開口幅DAよりも周壁部22の周方向に沿った開口幅DCが大きい長孔形状を有している(すなわち、DA<DC)。より厳密には、本実施の形態においては、これらガス噴出口23a,23bが、いずれも周壁部22に沿って並行して延在する(より詳細には、いずれもが周壁部22の周方向と同方向に延びるように設けられた)一対の開口縁部を有するトラック孔にて構成されている。
このように構成した場合にも、その詳細な説明はここでは繰り返さないが、上述した実施の形態1において説明した如くの効果、すなわち製造の際の生産性を低下させることなく、ガス通過孔を閉塞するシールテープの破断強度に差をもたせることができる効果等を得ることができる。加えて、本実施の形態におけるガス発生器とすることにより、以下のような効果をさらに得ることもできる。
第1に、ガス噴出口を周壁部の周方向に沿って延在する長孔形状とすることにより、ガス噴出口を正円形状の丸孔にて構成した場合に比べ、周壁部の軸方向に沿った開口幅を増加させることなく、またガス噴出口の数を増加させることなく、ガス噴出口の総開口面積を大面積化することができる。そのため、ガス発生器の作動時における燃焼室の内圧の最大値を必要以上に高めることなく相当程度に低く抑えるために、ガス噴出口の総開口面積を大面積化する場合においても、シールテープの幅(すなわち、周壁部の軸方向におけるシールテープの長さ)を大きくすることなくシール性を確保することが可能になり、製造コストの増大を防止することができる。
第2に、環境温度の違い(すなわち、低温環境下にあるか、それとも常温環境下にあるか、はたまた高温環境下にあるか)に応じて、ガス噴出口が開口した状態における実際の開口面積を異ならしめることが可能になり、特に低温環境下においてガス発生剤の燃焼を促進させることが可能になる。そのため、環境温度に起因するガス出力の性能差を格段に軽減することができ、従来に比してより高性能のガス発生器とすることができる。以下、この点について詳細に説明する。
図14は、本実施の形態におけるガス発生器の作動時のガス噴出口近傍の状態を模式的に表わした図である。なお、図14(A)は、常温環境下および高温環境下において当該ガス発生器を作動させた場合を示しており、図14(B)は、低温環境下において当該ガス発生器を作動させた場合を示している。
図14(A)に示すように、常温環境下および高温環境下において本実施の形態におけるガス発生器を作動させた場合には、燃焼室60の内圧上昇に伴ってガス噴出口23を閉塞する部分のシールテープ24が開裂するに際して、シールテープ24が長孔形状を有するガス噴出口23の開口縁部に沿って完全に破断し、ガス噴出口23の開口縁部に破断後のシールテープ24が付着することはない。そのため、ガス噴出口23の開口面積と、シールテープ24が開裂することでガス噴出口23が開口した状態における実際の開口面積とが同じとなる。
一方、図14(B)に示すように、低温環境下において本実施の形態におけるガス発生器を作動させた場合には、燃焼室60の内圧上昇に伴ってガス噴出口23を閉塞する部分のシールテープ24が開裂するに際して、シールテープ24が長孔形状を有するガス噴出口23の開口縁部に沿って破断するものの、当該開口縁部の全周に沿って完全に破断することはなく、上述した周壁部22に沿って並行して延在する一対の開口縁部の一方において破断が生じず、ガス噴出口23の開口縁部に破断後のシールテープ24が付着した状態となる。そのため、ガス噴出口23の開口面積よりも、シールテープ24が開裂することでガス噴出口23が開口した状態における実際の開口面積の方が当該シールテープ24の断面積に相当する分だけ小さくなることになる。
そのため、常温環境下および高温環境下においては、ガス発生器の作動時におけるガス噴出口23の実際の開口面積の総和が相対的に大きく確保される反面、低温環境下においては、ガス発生器の作動時におけるガス噴出口23の実際の開口面積の総和が相対的に小さく減じられることになる。これにより、低温環境下において、常温環境下および高温環境下に比べて、ガス噴出口23が開口することによって当該ガス噴出口23を介して排出されるガスの量が制限されることになり、その分だけ燃焼室60の内圧の上昇が促進されることになる。したがって、特に低温環境下においてガス発生剤の燃焼を促進させることが可能になり、環境温度に起因するガス出力の性能差を格段に軽減することが可能となって、結果的に従来に比してより高性能のガス発生器とすることができる。
ここで、本実施の形態の如くの構成を採用することにより、周囲温度に応じて、開裂したシールテープの一部がガス噴出口の開口縁部に付着するか否かに差が生じる理由は、もっぱら、ガス噴出口が非丸孔状の長孔形状であるためにガス噴出口の中央から開口縁部までの距離が非一様となることにより、当該開口縁部に沿って一度にシールテープを破断させるために必要となる瞬間的なエネルギーが増大し、常温環境下および高温環境下においては燃焼室の内圧の上昇速度が速いため、当該瞬間的なエネルギーが得られるのに対し、低温環境下において燃焼室の内圧の上昇速度が遅いため、当該瞬間的なエネルギーが得られないためと推察される。
なお、本実施の形態においては、長孔形状の典型的な例として、ガス噴出口をトラック孔にて構成した場合を例示して説明を行なったが、ガス噴出口の開口形状はこれに限定されるものではなく、たとえば楕円形状としてもよいし長方形形状としてもよい。ここで、上述した効果をより確実に得るためには、長孔形状のガス噴出口が、周壁部に沿って並行して延在する一対の開口縁部を有していることが好ましく、上述したトラック形状や長方形形状の孔にて構成されていることがなお好ましい。
(実施の形態4)
図15は、本発明の実施の形態4におけるガス発生器の上部側シェルの断面図である。次に、この図15を参照して、本実施の形態におけるガス発生器について説明する。
本実施の形態におけるガス発生器は、上述した実施の形態3におけるガス発生器と比較した場合に、複数のガス噴出口23a,23bの形状においてのみ相違している。
具体的には、図15に示すように、上部側シェル20Fに設けられたガス噴出口23a,23bは、いずれも周壁部22の周方向に沿った開口幅DCよりも周壁部22の軸方向に沿った開口幅DAが大きい長孔形状を有している(すなわち、DC<DA)。より厳密には、本実施の形態においては、これらガス噴出口23a,23bが、いずれも周壁部22に沿って並行して延在する(より詳細には、いずれもが周壁部22の軸方向と同方向に延びるように設けられた)一対の開口縁部を有するトラック孔にて構成されている。
このように構成した場合には、上述した実施の形態3において説明した効果と同様の効果が得られるばかりでなく、隣り合うガス噴出口間の距離を上述した実施の形態3の場合よりも長く確保できるため、上部側シェルの耐圧性能がより高められる効果を得ることができる。
以上において説明した本発明の実施の形態1ないし4において示した特徴的な構成(本発明の実施の形態1の第1ないし第7構成例において示した個々の特徴的な構成も含む)は、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいてこれを相互に組み合わせることが当然に可能である。
さらには、上記において示した本発明の実施の形態1ないし4においては、ハウジングの周壁部に設けられるガス噴出口およびこれを閉塞するシールテープに本発明を適用した場合を例示して説明を行なったが、ハウジングの内部に設置される各種の隔壁部に設けられるガス連通孔等のガス通過孔およびこれを閉塞するシールテープに本発明を適用することも当然に可能である。
加えて、上記において示した本発明の実施の形態1ないし4においては、本発明をいわゆるディスク型ガス発生器に適用した場合を例示して説明を行なったが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、たとえばシリンダ型ガス発生器に本発明を適用することも可能である。
なお、以上において説明した本発明の実施の形態1ないし4における低温環境下、常温環境下、高温環境下とは、それぞれ環境温度が−40℃前後の環境下、20℃前後の環境下、85℃前後の環境下を意味している。
今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は請求の範囲によって画定され、また請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。