JP6581599B2 - 車体フレーム - Google Patents

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Description

本発明は、頂部、底部、一対の側壁で中空に形成され、頂部側や底部側に一対の稜線を有し、車体前後方向に延びる車体フレームに関する。
車両の燃費向上などの目的で車体(特に、車体フレーム)の軽量化が求められている。車体フレームの軽量化に対応するために高強度のフレームを用い、車体フレームを薄型化して軽量化することが知られている。
軽量化する手段として、例えば、高張力鋼板(いわゆる、ハイテン材)を車体フレームとして採用したり、鋼板のブランク材を成形型でホットスタンプ成形(すなわち、熱間プレス)した高強度のフレームを車体フレームとして採用することが知られている。以下、ホットスタンプ成形による高強度のフレームを高強度フレームという。
高強度フレームを車体のセンターピラー、フロントサイドフレームやリヤフレームなどの車体フレームに採用することにより、車体フレームを薄板化でき車体の軽量化が図れる。
ところで、車体フレームのなかのフロントサイドフレームやリヤフレームは、通常、各フレームを補強するためや、衝撃荷重(衝撃エネルギー)を吸収するために、各フレームの内部に補強材が部分的に配置される。補強材が部分的に配置されることにより、各フレームの所定部位に強度差をもたせ、各フレームを変形しやすくすることにより衝撃荷重を吸収する。
しかし、各フレームの内部に補強材を配置することによりフロントサイドフレームやリヤフレームの重量が増加する。
一方、軽量化のためにフロントサイドフレームやリヤフレームに高強度フレームを採用することにより、各フレームを補強材で補強する必要がなく、車体の軽量化が図れる。しかし、各フレームに補強材が設けられないため、補強材で強度差をもたせることが難しくなる。
このため、入力した衝撃荷重で各フレームが変形し難くなり、入力した衝撃荷重をフロントサイドフレームやリヤフレームで吸収することが難しくなる。
この対策として、高強度フレームを採用したフロントサイドフレームの強度を、前端部から車体後方に向けて連続的に高めるように、フロントサイドフレームを形成することが知られている。(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1のフロントサイドフレームによれば、フロントサイドフレームの前部の強度が抑えられる。よって、車両がコンクリート壁などの硬い物体に衝突した場合に、フロントサイドフレームの前部を軸圧潰により順次座屈変形させて衝撃荷重を吸収することが可能である。
しかし、車両がコンクリート壁より軟らかい物体(例えば、車両)に衝突した場合、フロントサイドフレームの前部が柔らかい衝突物体に埋没することが考えられる。このため、フロントサイドフレームの前部を軸圧潰により順次座屈変形させて衝撃荷重を吸収することが難しい。
また、フロントサイドフレームの前部が衝突物体に埋没することにより、衝突物体にフロントサイドフレームの前部が支持される。よって、埋没したフロントサイドフレームの前部に曲げモーメントが作用することが考えられる。
フロントサイドフレームは高強度フレームが採用されて硬い部材である。このため、フロントサイドフレームの前部に曲げモーメントが作用した場合、フロントサイドフレームの前部に亀裂が発生する虞がある。
さらに、フロントサイドフレームの前部が衝突物体に埋没した状態で、フロントサイドフレームが変形して衝撃荷重を吸収することも考えられる。しかし、フロントサイドフレームの前部が衝突物体に埋没された状態で、フロントサイドフレームが変形する場合、フロントサイドフレームの変形箇所を所定位置に決めることが難しい。すなわち、フロントサイドフレームがどこで変形するかわからない。
このため、フロントサイドフレームの衝撃吸収性能が安定しないので、この観点から改良の余地が残されている。
特表2012−528752号公報
本発明は、車両などの軟らかい物体に衝突した場合でも、衝撃吸収性能を安定させることができる車体フレームを提供することを課題とする。
請求項1に係る発明によれば、頂部、底部、一対の側壁で中空に形成され、前記頂部、前記底部の少なくとも一方と前記一対の側壁との交差部で形成される一対の稜線を有し、車体前後方向に延びる車体フレームにおいて、前記一対の側壁の一方に前記中空側へ向けて凹形に形成されて上下方向に延び、前記一対の稜線の一方に隣接する第1縦ビード部と、該第1縦ビード部および前記一対の稜線の他方間の距離で、車幅方向の最短距離を半径とする第1歪進展領域と、前記一対の側壁の他方に前記中空側へ向けて凹形に形成されて上下方向に延び、前記一対の稜線の他方に隣接する第2縦ビード部と、該第2縦ビード部および前記一対の稜線の一方間の距離で、車幅方向の最短距離を半径とする第2歪進展領域と、を有し、前記第1縦ビード部および前記第2縦ビード部が前記車体フレームの車体前後方向において離間され、前記第1歪進展領域および前記第2歪進展領域が前記車体フレームの変形前状態において離間されている車体フレームを提供する。
請求項2に係る発明では、好ましくは、前記中空の車体フレームの変形途中において、前記第1歪進展領域および前記第2歪進展領域が相互に重なる。
請求項3に係る発明では、好ましくは、前記中空の車体フレームは、略1500MPaの高強度に形成され、前記第1縦ビード部および前記第2縦ビード部が590〜1000MPaまで軟化される。
ここで、中空の車体フレームを高強度に形成し、車体フレームに第1縦ビード部および第2縦ビード部を形成した。このため、車体フレームに衝撃荷重が入力する際に、入力した衝撃荷重で第1縦ビード部および第2縦ビード部に応力が集中する。
そこで、請求項3において、第1縦ビード部および第2縦ビード部を軟化することにした。
請求項4に係る発明では、好ましくは、前記頂部、前記底部の少なくとも一方は、前記第1縦ビード部および前記第2縦ビード部を連結するように帯状に延び、かつ、変形可能な軟化部を有する。
請求項5に係る発明では、好ましくは、前記底部および前記一対の側壁で断面略U字状のU字部が形成され、該U字部を有するロアフレーム部に前記頂部がスポット溶接で接合されることにより前記車体フレームが中空に形成され、前記スポット溶接は、前記第1縦ビード部および前記第2縦ビード部を除いた部位に位置し、前記車体フレームの変形の際に、前記スポット溶接による接合部への歪の集中を抑制するピッチ間隔とする。
請求項1に係る発明では、中空の車体フレームの一方の稜線に隣接させて第1縦ビード部を形成し、他方の稜線に隣接させて第2縦ビード部を形成した。
よって、車体フレームに衝撃荷重が入力した場合に、入力した衝撃荷重で第1縦ビード部および第2縦ビード部が変形を開始する。すなわち、第1縦ビード部および第2縦ビード部は、車体フレームを変形させる際のトリガー(すなわち、起点)としての役割を果たす。
また、第1縦ビード部の周囲に第1歪進展領域を備え、第2縦ビード部の周囲に第2歪進展領域を備えた。さらに、第1歪進展領域および第2歪進展領域を車体フレームの変形前状態において離間させた。
よって、第1縦ビード部および第2縦ビード部が変形を開始した後、第1歪進展領域および第2歪進展領域が変形を開始する。第1歪進展領域および第2歪進展領域が変形することにより、第1縦ビード部に対応する一方の稜線を中心にして第2歪進展領域が変位する。
ここで、第1歪進展領域および第2歪進展領域が離間されている。よって、第1歪進展領域および第2歪進展領域をそれぞれ個別に効率よく変形させることができる。これにより、第1縦ビード部に対応する他方の稜線を中心にして第2縦ビード部を円滑に変位させることができる。すなわち、車体フレームを好適にZ字状に折り曲げて座屈変形させることができる。
このように、車体フレームを好適に座屈変形させることにより、自動車などの軟らかい物体に衝突した場合でも衝撃荷重を良好に吸収できる。これにより、車体フレームの衝撃吸収性能を安定させることができる。
請求項2に係る発明では、第1歪進展領域および第2歪進展領域を車体フレームの変形途中において相互に重なるようにした。相互に重なるように配置することにより、車体フレームのうち、第1縦ビード部側の第1フレームと第2縦ビード部側の第2フレームとの車幅方向へのずれを小さく抑えることができる。
これにより、車体フレームがZ字状に折り曲げられても第1フレームと第2フレームとがすれ違うことなく再び衝突して衝撃を吸収できる。
すなわち、第1フレームと第2フレームとを、いわゆる二次衝突させて、第1フレームと第2フレームとに反力荷重を発生させることができる。第1フレームと第2フレームとに反力荷重を発生させることにより、車体フレームを一層好適に座屈変形させることができ、衝撃荷重(衝撃エネルギー)の吸収量を増加できる。
請求項3に係る発明では、車体フレームを超高強度に形成した。これにより、車体フレームの板厚寸法を最も小さく抑えることができ、車体フレームの軽量化が図れる。
さらに、第1縦ビード部および第2縦ビード部を軟化させた。よって、第1縦ビード部および第2縦ビード部を、延性を有する部位とすることができる。これにより、車体フレームに入力した衝撃荷重で、第1縦ビード部および第2縦ビード部を好適に変形させて衝撃荷重を良好に吸収できる。さらに、第1縦ビード部および第2縦ビード部に応力が集中して破断することを抑制できる。
請求項4に係る発明では、頂部、底部の少なくとも一方に変形可能な軟化部を備え、軟化部を第1縦ビード部および第2縦ビード部を連結するように帯状に延ばした。帯状の軟化部は第1縦ビード部および第2縦ビード部まで傾斜状に延ばされている。
よって、車体フレームに衝撃荷重が入力した際に、軟化部の一方の側辺と他方の側辺とに逆方向の剪断力が発生する。これにより、第1縦ビード部および第2縦ビード部に車体フレームをZ字状に折り曲げる曲げモーメントが発生する。
この曲げモーメントで軟化部を円滑に変形させ、車体フレームの座屈変形を促進させることができる。
さらに、頂部、底部の少なくとも一方に軟化部を備えることにより、車体フレームに入力した衝撃荷重で車体フレームに亀裂や破断が発生することを抑制できる。
このように、車体フレームの座屈変形を促進し、車体フレームに亀裂や破断が発生することを抑制することにより、車体フレームの衝撃吸収性能を安定させることができる。
請求項5に係る発明では、ロアフレーム部に頂部をスポット溶接で接合して中空の車体フレームを形成した。さらに、スポット溶接のピッチ間隔を、車体フレームの変形の際に、スポット溶接による接合部への歪の集中を抑制する間隔とした。
車体フレームの変形の際に、スポット溶接による接合部への歪の集中を抑制することにより、第1縦ビード部および第2縦ビード部を起点とする車体フレームの変形(すなわち、座屈変形)を促進することができる。
さらに、車体フレームの変形の際に、スポット溶接による接合部への歪の集中を抑制することにより、接合部に亀裂や破断が発生することを抑えることができる。
このように、中空の車体フレームの座屈変形を促進し、かつ、接合部に亀裂や破断が発生することを抑えることにより、車体フレームの衝撃吸収性能を安定させることができる。
ここで、第1縦ビード部および第2縦ビード部を除いてスポット溶接が位置しているので、第1縦ビード部および第2縦ビード部の変形を促進できる。
本発明に係る車体フレームを備えた車体後部構造の底面図である。 図1の2部拡大図である。 図2の3−3線断面図である。 図2の左リヤフレーム後部を示す斜視図である。 図2の左リヤフレーム後部に衝撃荷重が入力した状態を示す底面図である。 図5の左リヤフレーム後部が途中まで座屈変形した状態を示す底面図である。 図4の左リヤフレーム後部に衝撃荷重が入力した状態を示す斜視図である。 本発明に係る左リヤフレーム後部の後端部に衝撃荷重が入力する例を説明する図である。 本発明に係る左リヤフレーム後部が衝撃荷重により座屈変形する例を説明する図である。 (a)本発明に係る左リヤフレーム後部で衝撃荷重を吸収する例を説明する図、(b)は本発明に係る左リヤフレーム後部で衝撃荷重を吸収する状態を説明するグラフである。図10(b)のグラフにおいて、縦軸は左リヤフレーム後部に入力する衝撃荷重、横軸は左リヤフレーム後部の変形量を示す。
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前(Fr)」、「後(Rr)」、「左(L)」、「右(R)」は運転者から見た方向にしたがう。
実施例に係る車体フレーム20,21について説明する。
なお、実施例では車体フレーム20,21として左右のリヤフレーム後部を例示するが、車体フレームを左右のフロントサイドフレームに適用することも可能である。
図1に示すように、車体後部構造10は、車体前後方向略中央の右側部に設けられる右リヤフレーム前部11と、車体前後方向略中央の左側部に設けられる左リヤフレーム前部12と、右リヤフレーム前部11の後端部11aおよび左リヤフレーム前部12の後端部12aに架け渡されるリヤクロスメンバ13と、リヤクロスメンバ13の車体前方に設けられる燃料タンク14とを備えている。
さらに、車体後部構造10は、右リヤフレーム前部11の後端部11aから車体後方に延びる右リヤフレーム後部(車体フレーム)20と、右リヤフレーム後部20から車幅方向左外側に張り出される右リヤフロアサイドパネル22と、左リヤフレーム前部12の後端部12aから車体後方に延びる左リヤフレーム後部(車体フレーム)21と、左リヤフレーム後部21から車幅方向右外側に張り出される左リヤフロアサイドパネル23と、右リヤフレーム後部20および左リヤフレーム後部21に架け渡されるリヤバンパビーム24とを備えている。
右リヤフレーム前部11の右取付部16および左リヤフレーム前部12の左取付部17にリヤサブフレーム(図示せず)が取り付けられる。このリヤサブフレームに左リヤダンパおよび右リヤダンパなどが支持される。さらに、リヤサブフレームの上前方に燃料タンク14が取り付けられる。
よって、燃料タンク14が、リヤサブフレーム、右リヤフレーム前部11、左リヤフレーム前部12およびリヤクロスメンバ13で保護されている。
右リヤフレーム前部11の後端部11aから右リヤフレーム後部20が車体後方に向けて延出される。また、左リヤフレーム前部12の後端部12aから左リヤフレーム後部21が車体後方に向けて延出される。
右リヤフレーム後部20および左リヤフレーム後部21は略左右対称の部材である。よって、右リヤフレーム後部20の各構成部に左リヤフレーム後部21と同じ符号を付し、左リヤフレーム後部21について詳しく説明して右リヤフレーム後部20の詳しい説明を省略する。
図2、図3に示すように、左リヤフレーム後部21は、断面略U字状に形成されるU字部34を有するロアフレーム部31と、ロアフレーム部31に接合されてU字部34の開口を上方から塞ぐアッパフレーム部(頂部)32とを備えている。
ロアフレーム部31は、加熱した鋼板のブランク材(素材)を成形型でホットスタンプ成形(すなわち、熱間プレス)される際に、成形型に接触して急冷され、引張強度(引張強さ)が略1500MPaの高強度部材に形成される。詳しくは、ロアフレーム部31は、1500MPaを超える高強度部材に形成される。
アッパフレーム部32は、ロアフレーム部31と同様に、加熱した鋼板のブランク材を成形型でホットスタンプ成形される際に、成形型に接触して急冷され、引張強度(引張強さ)が略1500MPaの高強度部材に形成される。詳しくは、アッパフレーム部32は、1500MPaを超える高強度部材に形成される。
これらロアフレーム部31とアッパフレーム部32とが、フランジ35,58(後述する)で接合され、かつ、フランジ36,59(後述する)で接合される。これにより、ロアフレーム部31とアッパフレーム部32とにより左リヤフレーム後部21が高強度のフレームに形成される。
このように、高強度部材のフレームを用いることにより、左リヤフレーム後部21の板厚寸法を小さく抑えることができ、左リヤフレーム後部21の軽量化が図れる。
なお、目標とする衝撃エネルギー吸収量が低い場合は、ロアフレーム部31やアッパフレーム部32の一方に通常の強度の鋼板を用いることも可能である。
ロアフレーム部31は、断面略U字状に形成されるU字部34と、U字部34の開口34aから車内26側に張り出されるロア内フランジ35と、U字部34の開口34aから車外27側に張り出されるロア外フランジ36とを有する。
さらに、ロアフレーム部31は、U字部34の内側壁47に形成される第1縦ビード部38と、第1縦ビード部38の周囲に位置する第1歪進展領域39と、U字部34の外側壁51に形成される第2縦ビード部41と、第2縦ビード部41の周囲に位置する第2歪進展領域42と、第1縦ビード部38および第2縦ビード部41を連結する軟化部43とを有する。
U字部34は、平坦に形成される底部46と、底部46の内辺から上向きに折り曲げられる内側壁(一対の側壁の一方)47と、底部46の外辺から上向きに折り曲げられる外側壁(一対の側壁の他方)51と、底部46および内側壁47の交差部で形成される内稜線(一つの稜線の一方)54と、底部46および外側壁51の交差部で形成される外稜線(一対の稜線の他方)55とを有する。
底部46、内側壁47および外側壁51でU字部34が断面略U字状に形成される。
内側壁47の上端から車内26側にロア内フランジ35が略水平に張り出される。また、外側壁51の上端から車外27側にロア外フランジ36が略水平に張り出される。
U字部34、ロア内フランジ35およびロア外フランジ36でロアフレーム部31が断面略ハット状に形成される。
ロア内フランジ35およびロア外フランジ36は、レーザにより加熱した後、徐冷されることにより、延性を有するソフトゾーンに焼なまし(焼鈍)される。すなわち、ロア内フランジ35およびロア外フランジ36は、例えば、スポット溶接などで接合可能な部位である。
ソフトゾーンを形成する他の方法として、ホットスタンプ成形時に冷却速度を遅くしたり、ホットスタンプ成形後に熱処理をおこなうことにより、延性を有するソフトゾーンに焼なまし(焼鈍)することも可能である。
内側壁47は、底部46の内辺から車内26側で、かつ、上向きに傾斜状に折り曲げられる第1内側壁48と、第1内側壁48の上辺から上向きに折り曲げられる第2内側壁49とを有する。
すなわち、第1内側壁48および第2内側壁49で内側壁47が断面略V字状に形成されている。さらに、底部46および第1内側壁48の交差部で内稜線54が形成される。
外側壁51は、底部46の外辺から車外27側で、かつ、上向きに傾斜状に折り曲げられる第1外側壁52と、第1外側壁52の上辺から上向きに折り曲げられる第2外側壁53とを有する。
すなわち、第1外側壁52および第2外側壁53で外側壁51が断面略V字状に形成されている。さらに、底部46および第1外側壁52の交差部で外稜線55が形成される。
ロアフレーム部31にアッパフレーム部32が上方から接合されている。
アッパフレーム部32は、U字部34の開口34aの上方に配置される膨出部57と、膨出部57の内辺から車内26側に略水平に張り出されるアッパ内フランジ58と、膨出部57の外辺から車外27側に略水平に張り出されるアッパ外フランジ59とを有する。
アッパ内フランジ58およびアッパ外フランジ59は、高強度部材の鋼板を用いる場合、レーザにより加熱した後、徐冷されることにより、延性を有するソフトゾーンに焼なましされる。すなわち、アッパ内フランジ58およびアッパ外フランジ59は、例えば、スポット溶接などで接合可能な部位である。
ソフトゾーンを形成する他の方法として、ホットスタンプ成形時に冷却速度を遅くしたり、ホットスタンプ成形後の熱処理などで焼なましすることも可能である。
アッパ内フランジ58がロア内フランジ35に上方から当接され、同時に、アッパ外フランジ59がロア外フランジ36に上方から当接される。
この状態において、アッパ内フランジ58およびロア内フランジ35がスポット溶接の内接合部62で接合される。また、アッパ外フランジ59およびロア外フランジ36がスポット溶接の外接合部63で接合される。
これにより、ロアフレーム部31にアッパフレーム部32が接合される。
ここで、ロア内フランジ35、ロア外フランジ36、アッパ内フランジ58およびアッパ外フランジ59をソフトゾーンに焼なましする理由について説明する。
すなわち、、一般に、ホットスタンプ成形された1500MPaを超える高強度部材の鋼板を溶接すると溶接部分が590MPa程度に軟化して軟化部を形成する。よって、軟化部の周囲に引張強度が1500MPaを超える硬化部(すなわち、ホットスタンプ成形された高強度部材)が存在する。このため、軟化部と硬化部との間で強度差が大きくなる。
そこで、ロアフレーム部31の強度差を抑えるために、ロアフレーム部31のロア内フランジ35やロア外フランジ36を、焼なましにより部分的に帯状に軟化させてソフトゾーンとした。
ところで、アッパフレーム部32として590MPa程度の鋼板を用いることも考えられる。この場合であれば、アッパフレーム部32を焼なましにより部分的に帯状に軟化させることは不要である。
しかし、実施例のアッパフレーム部32は、引張強度が1500MPaを超えている。そこで、アッパ内フランジ58やアッパ外フランジ59も、ロア内フランジ35やロア外フランジ36と同様に、焼なましにより部分的に帯状に軟化させてソフトゾーンとした。
よって、アッパ内フランジ58およびロア内フランジ35が内接合部62で良好に接合される。また、アッパ外フランジ59およびロア外フランジ36が外接合部63で良好に接合される。
これにより、U字部34の開口34aがアッパフレーム部32で覆われる。この状態において、ロアフレーム部31およびアッパフレーム部32で左リヤフレーム後部21が中空の閉断面に形成される。換言すれば、ロアフレーム部31およびアッパフレーム部32で左リヤフレーム後部21が中空65を有するフレームに形成される。
ここで、アッパ内フランジ58およびロア内フランジ35は、第1縦ビード部38を除いた部位において、内接合部62がピッチ間隔P1になるようにスポット溶接される。
同様に、アッパ外フランジ59およびロア外フランジ36は、第2縦ビード部41を除いた部位において、外接合部63がピッチ間隔P1になるようにスポット溶接される。
内接合部62および外接合部63をピッチ間隔P1になるようにスポット溶接する理由については後で詳しく説明する。
図4に示すように、U字部34の内側壁47に第1縦ビード部38が形成される。第1縦ビード部38は、内側壁47に中空65側へ向けて断面湾曲状(具体的には、円弧状)の凹形に形成され、上下方向に延びるように形成される。この縦ビード部38は、下端部38aが内稜線54に隣接するように位置する。
第1縦ビード部38の周囲に第1歪進展領域39が形成される。
図5に示すように、第1歪進展領域39は、第1縦ビード部38および外稜線55間の距離のうち車幅方向の最短距離L1を半径とする円弧67で規定される。すなわち、第1縦ビード部38のうち外稜線55に最も近い部位38bを中心とする距離L1を半径とする円弧67の内部が第1歪進展領域39となる。
第1縦ビード部38および第1歪進展領域39は、レーザにより加熱した後、徐冷されることにより焼なましされる。よって、第1縦ビード部38および第1歪進展領域39は、略1500MPaの高強度から590〜1000MPaまで軟化される。
すなわち、第1縦ビード部38および第1歪進展領域39は、延性を有する変形可能な領域(いわゆる、ソフトゾーン)である。
第1縦ビード部38および第1歪進展領域39を590〜1000MPaに軟化させる理由はつぎの通りである。
すなわち、第1縦ビード部38および第1歪進展領域39を焼なましで590MPaの引張強度より小さく軟化させることは困難である。また、引張強度が1000MPaを超えると硬すぎて第1縦ビード部38や第1歪進展領域39が破断する虞がある。
なお、第1縦ビード部38および第1歪進展領域39を780MPaに軟化することが最も好ましい。
U字部34の外側壁51に第2縦ビード部41が形成される。第2縦ビード部41は、外側壁51に中空65側へ向けて断面湾曲状(具体的には、円弧状)の凹形に形成され、上下方向に延出される。この第2縦ビード部41は、下端部41aが外稜線55に隣接するように位置する。
第2縦ビード部41の周囲に第2歪進展領域42が形成される。
第2歪進展領域42は、第1歪進展領域39と同様に、第2縦ビード部41および内稜線54間の距離のうち車幅方向の最短距離L1を半径とする円弧68で規定される。すなわち、第2縦ビード部41のうち内稜線54に最も近い部位41bを中心とする距離L1を半径とする円弧68の内部が第2歪進展領域42となる。
第2縦ビード部41および第2歪進展領域42は、第1縦ビード部38および第1歪進展領域39と同様に、レーザにより加熱した後、徐冷されることにより焼なましされる。よって、第2縦ビード部41および第2歪進展領域42は、略1500MPaの高強度から590〜1000MPaまで軟化される。
すなわち、第2縦ビード部41および第2歪進展領域42は、延性を有する変形可能な領域(いわゆる、ソフトゾーン)である。
なお、第2縦ビード部41および第2歪進展領域42は、第1縦ビード部38および第1歪進展領域39と同様に780MPaに軟化することが最も好ましい。
このように、第1縦ビード部38および第2縦ビード部41が、延性を有する変形可能な領域に形成されている。よって、左リヤフレーム後部21に入力した衝撃荷重F1で、第1縦ビード部38および第2縦ビード部41を好適に変形させることができる。
これにより、左リヤフレーム後部21の車体前後方向(長手方向)の中央部を衝撃荷重F1でZ字状に折り曲げて座屈変形させることができ、衝撃荷重F1を良好に吸収できる。
すなわち、第1縦ビード部38および第2縦ビード部41は、左リヤフレーム後部21を変形させる際のトリガー(すなわち、起点)としての役割を果たす。
さらに、第1縦ビード部38および第2縦ビード部41が中空65側へ向けて断面湾曲状(具体的には、円弧状)の凹形に形成されている。よって、左リヤフレーム後部21の中央部がZ字状に折り曲げる方向に変形しやすくなる。これにより、第1縦ビード部38および第2縦ビード部41に応力が集中して破断することを抑制できる。
ここで、第1縦ビード部38を第2縦ビード部41より車体前方向で、かつ、反対側の側壁(すなわち、車体内側)に位置させた。この状態において、第1縦ビード部38の底部38bおよび第2縦ビード部41の底部41bが中空の左リヤフレーム後部21の長手方向において距離L2だけ離間される。
また、第1歪進展領域39および第2歪進展領域42が距離L3だけ離間される。具体的には、左リヤフレーム後部21の変形前の状態において、第1歪進展領域39および第2歪進展領域42が距離L3だけ離間される。
よって、第1縦ビード部38および第2縦ビード部41が変形を開始した後、第1歪進展領域39および第2歪進展領域42が変形を開始する。
第1歪進展領域39および第2歪進展領域42が変形することにより、第1縦ビード部38に対応する外稜線55の部位55aを中心にして第2歪進展領域42が矢印Aの如く変位する。
ここで、第1歪進展領域39および第2歪進展領域42が距離L3だけ離間されている。よって、第1歪進展領域39および第2歪進展領域42をそれぞれ個別に効率よく変形させることができる。
これにより、第1縦ビード部38に対応する外稜線55の部位55aを中心にして第2縦ビード部41を矢印Aの如く円滑に変位させることができる。すなわち、左リヤフレーム後部21を好適にZ字状に折り曲げて座屈変形させることができる。
このように、左リヤフレーム後部21を好適に座屈変形させることにより、自動車などの軟らかい物体に衝突した場合でも衝撃荷重F1を良好に吸収でき、左リヤフレーム後部21の衝撃吸収性能を安定させることができる。
図6に示すように、第2縦ビード部41を矢印Aの如く円滑に変位させることにより、左リヤフレーム後部21の変形途中において、左リヤフレーム後部21を水平Z字状の折り曲げ状態に座屈変形させることができる。
具体的には、左リヤフレーム後部21のうち、車体前方側の第1フレーム21a、車体後方側の第2フレーム21b、および中央の第3フレーム21cで左リヤフレーム後部21が水平Z字状の折り曲げ状態に座屈変形する。
車体前方側の第1フレーム21aは、第1縦ビード部38より車体前方側(すなわち、第1縦ビード部38側)のフレームである。車体後方側の第2フレーム21bは、第2縦ビード部41より車体後方側(すなわち、第2縦ビード部41)のフレームである。
中央の第3フレーム21cは、第1縦ビード部38および第2縦ビード部41間のフレームである。
左リヤフレーム後部21が水平Z字状の折り曲げ状態に座屈変形した状態において、第1歪進展領域39および第2歪進展領域42が相互に重なるように配置される。第1歪進展領域39および第2歪進展領域42を相互に重なるように配置することにより、第2フレーム21bの車幅方向内側(すなわち、車内26側)への変位を小さく抑えることができる。
換言すれば、第1フレーム21aと第2フレーム21bとの車幅方向へのずれを小さく抑えることができる。
よって、左リヤフレーム後部21の変形途中において、第1歪進展領域39および第2歪進展領域42が相互に重なった状態において、第1フレーム21aと第2フレーム21bとを同一直線状に配置できる。
これにより、左リヤフレーム後部21の変形途中において、第1フレーム21aと第2フレーム21bとを、いわゆる二次衝突させて、第1フレーム21aと第2フレーム21bとに反力荷重F2を発生させることができる。
第1フレーム21aと第2フレーム21bとに反力荷重F2を発生させることにより、左リヤフレーム後部21を一層好適に座屈変形させることができ、衝撃荷重(衝撃エネルギー)F1の吸収量を増加できる。
なお、左リヤフレーム後部21を長手方向の中心を軸にして90°回転させて第2内側壁49や第2外側壁53(図3参照)を上下方向に配置することにより、左リヤフレーム後部21を上下方向に鉛直Z字状の折り曲げが可能となる。
また、左リヤフレーム後部21を長手方向の中心を軸にして0〜90°の間に斜め回転させることにより、左リヤフレーム後部21を斜め方向にZ字状の折り曲げが可能となる。
図5、図7に示すように、第1縦ビード部38および第2縦ビード部41を連結するように軟化部43が延出されている。具体的には、軟化部43は、底部46、第1内側壁48および第1外側壁52において、第1縦ビード部38および第2縦ビード部41を連結するように傾斜状で、かつ、幅寸法W1の帯状に延出されている。
この軟化部43は、レーザにより加熱した後、徐冷されることにより、延性を有するソフトゾーンに焼なましされる。よって、軟化部43は、略1500MPaの高強度から590〜1000MPaまで軟化される。
なお、軟化部43は、780MPaに軟化されることが最も好ましい。
軟化部43を590〜1000MPaに軟化させる理由はつぎの通りである。
すなわち、軟化部43を焼なましで590MPaの引張強度より小さく軟化させることは困難である。また、引張強度が1000MPaを超えると硬すぎて軟化部43が破断する虞がある。
軟化部43を形成する他の方法として、ホットスタンプ成形時に冷却速度を遅くしたり、ホットスタンプ成形後の熱処理などで焼なましすることも可能である。
このように、軟化部43は、第1縦ビード部38および第1歪進展領域39や、第2縦ビード部41および第2歪進展領域42と同様に変形可能に焼なましされている。
さらに、第1縦ビード部38および第2縦ビード部41を連結するように軟化部43が傾斜状に備えられている。
よって、左リヤフレーム後部21に衝撃荷重F1が入力した際に、軟化部43の一方の側辺43aと他方の側辺43bとに逆方向の剪断力Τ1,Τ2が発生する。ここで、軟化部43に対して第1縦ビード部38および第2縦ビード部41が略直交する方向に延びている。具体的には、軟化部43が略水平に配置され、第1縦ビード部38および第2縦ビード部41が上下方向に延びている。
これにより、第1縦ビード部38を左リヤフレーム後部21の車幅方向(すなわち、内側)に曲げようとする曲げモーメントM1が発生し、第2縦ビード部41を左リヤフレーム後部21の車幅方向(すなわち、内側)に曲げようとする曲げモーメントM2が発生する。
曲げモーメントM1,M2で軟化部43を円滑に変形させ、左リヤフレーム後部21のZ字状の折り曲げによる座屈変形を促進させることができる。
さらに、第1縦ビード部38および第2縦ビード部41を連結する軟化部43が備えられることにより、左リヤフレーム後部21に入力した衝撃荷重F1で左リヤフレーム後部21の高強度部分(いわゆる、ハードゾーン)に亀裂や破断が発生することを抑制できる。
このように、左リヤフレーム後部21のZ字状の折り曲げによる座屈変形を促進し、左リヤフレーム後部21の高強度部分に亀裂や破断が発生することを抑制することにより、左リヤフレーム後部21の衝撃吸収性能を安定させることができる。
また、内接合部62および外接合部63がピッチ間隔P1で配置されている。
ここで、例えば、内接合部62および外接合部63のピッチ間隔P1を、左リヤフレーム後部21の中空断面が維持できないように粗くすることも考えられる。しかし、ピッチ間隔P1を粗くすると、左リヤフレーム後部21に入力した衝撃荷重F1で、内接合部62および外接合部63に歪が集中する虞がある。
このため、内接合部62および外接合部63において左リヤフレーム後部21が変形し、左リヤフレーム後部21を第1縦ビード部38および第2縦ビード部41から好適に座屈変形させることが難しくなる。
これに対して、実施例の左リヤフレーム後部21は、内接合部62や外接合部63のピッチ間隔P1が、左リヤフレーム後部21の中空断面を維持できるように密にされている。よって、左リヤフレーム後部21に入力した衝撃荷重F1で、内接合部62および外接合部63に歪が集中することを抑制し、左リヤフレーム後部21の中空断面を維持できる。
これにより、左リヤフレーム後部21のZ字状の折り曲げによる座屈変形を促進できる。
さらに、左リヤフレーム後部21の変形の際に、内接合部62や外接合部63への歪の集中を抑制することにより、内接合部62や外接合部63に亀裂や破断が発生することを抑えることができる。
このように、左リヤフレーム後部21のZ字状の折り曲げによる座屈変形を促進し、かつ、内接合部62や外接合部63に亀裂や破断が発生することを抑えることにより、左リヤフレーム後部21の衝撃吸収性能を安定させることができる。
また、内接合部62が第1縦ビード部38を除いた部位に位置し、外接合部63が第2縦ビード部41を除いた部位に位置する。よって、第1縦ビード部38の変形を内接合部62で抑制し、第2縦ビード部41の変形を外接合部63で抑制する虞がない。
これにより、第1縦ビード部38および第2縦ビード部41を起点として左リヤフレーム後部21を良好に座屈変形させることができる。
つぎに、車体後部構造10の後左側部に車体後方から軟らかい物体(例えば、自動車)がオフセット衝突した場合に、左リヤフレーム後部21に入力する衝撃荷重を吸収する例を図8〜図10に基づいて説明する。
図8(a)に示すように、自動車などの軟らかい物体が車体後部構造10の後左側部に車体後方からオフセット衝突する。これにより、リヤバンパビーム24の左側部24aを介して左リヤフレーム後部21の後端部21dに衝撃荷重F3が入力する。
図8(b)に示すように、入力した衝撃荷重F3で第1縦ビード部38および第2縦ビード部41が変形を開始する。第1縦ビード部38および第2縦ビード部41が変形を開始した後、第1歪進展領域39および第2歪進展領域42が変形を開始する。
第1歪進展領域39および第2歪進展領域42が変形することにより、第1縦ビード部38に対応する外稜線55の部位55aを中心にして第2歪進展領域42が矢印Bの如く変位する。
図9(a)に示すように、第2縦ビード部41を矢印Bの如く円滑に変位させることにより、左リヤフレーム後部21の変形途中において、左リヤフレーム後部21が水平Z字状の折り曲げ状態に座屈変形する。
この状態において、左リヤフレーム後部21のうち第1フレーム21aと第2フレーム21bとを、いわゆる二次衝突させて、第1フレーム21aと第2フレーム21bとに反力荷重F4を発生させる。反力荷重F4により、左リヤフレーム後部21を一層好適に座屈変形させることができる。
このように、左リヤフレーム後部21を水平Z字状の折り曲げ状態に座屈変形させ、さらに、反力荷重F4により左リヤフレーム後部21を一層好適に座屈変形させることにより、衝撃荷重(衝撃エネルギー)F3の吸収量を増加できる。
図8(b)に戻って、第1縦ビード部38および第2縦ビード部41を連結するように傾斜状の軟化部43が備えられている。よって、左リヤフレーム後部21に衝撃荷重F3が入力した際に、軟化部43の一方の側辺43aと他方の側辺43bとに逆方向の剪断力Τ1,Τ2が発生し、曲げモーメントM1,M2が発生する。
曲げモーメントM1,M2で軟化部43を円滑に変形させ、左リヤフレーム後部21のZ字状の折り曲げによる座屈変形を促進させる。
さらに、内接合部62および外接合部63のピッチ間隔P1が小さく抑えられている。よって、左リヤフレーム後部21に入力した衝撃荷重F1で、内接合部62および外接合部63に歪が集中することを抑制できる。
これにより、左リヤフレーム後部21を第1縦ビード部38および第2縦ビード部41から好適にZ字状に折り曲げて座屈変形させることができる。
図9(b)に示すように、左リヤフレーム後部21の水平Z字状の折り曲げ状態による座屈変形が促進される。これにより、左リヤフレーム後部21を好適に変形させて衝撃荷重F3を良好に吸収できる。
図10(a)に示すように、自動車などの軟らかい物体が衝突することにより、左リヤフレーム後部21の後端部21dに入力した衝撃荷重F3を、左リヤフレーム後部21をZ字状に折り曲げて座屈変形させることにより良好に吸収できる。
図10(b)のグラフG1において、左リヤフレーム後部21の衝撃荷重F3による変形状態を示す。グラフG1により、左リヤフレーム後部21が衝撃荷重F3でZ字状に折り曲げられるように座屈変形を開始し、座屈変形の開始後に左リヤフレーム後部21のZ字状への座屈変形が円滑に促進されて衝撃荷重F3が良好に吸収されることがわかる。
図10(a)に戻って、左リヤフレーム後部21の後端部21dに衝撃荷重F3が入力した際に、左リヤフレーム後部21がZ字状に折り曲がることにより、左リヤフレーム前部12の座屈変形が抑えられる。また、左リヤフレーム前部12の後端部12aにリヤクロスメンバ13が設けられている。
よって、リヤクロスメンバ13を変位させない状態に保持できる。これにより、リヤクロスメンバ13の車体前方に設けられた燃料タンク14を保護することができる。
図10(b)のグラフG2において、左リヤフレーム前部12の衝撃荷重F3、F5による変形状態を示す。グラフG2に示すように、左リヤフレーム前部12は衝撃荷重F5で座屈変形可能に形成されている。衝撃荷重F5は衝撃荷重F3より大きい。
すなわち、グラフG2により、左リヤフレーム後部21が衝撃荷重F3で変形することなく、衝撃荷重F5で座屈変形を開始することがわかる。これにより、左リヤフレーム前部12に衝撃荷重F3が入力した場合に、左リヤフレーム前部12の変形を抑えて燃料タンク14を保護できる。
図8〜図10で説明したように、左リヤフレーム後部21に第1縦ビード部38、第1歪進展領域39、第2縦ビード部41、第2歪進展領域42および軟化部43を有する。さらに、内接合部62および外接合部63のピッチ間隔P1(図5参照)が小さく抑えられている。
これにより、自動車などの軟らかい物体に衝突した場合でも、左リヤフレーム後部21を好適に変形(具体的には、Z字状に折り曲げて座屈変形)させて衝撃荷重F3を良好に吸収できる。
なお、本発明に係る車体フレームは、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例では、右リヤフレーム後部20や左リヤフレーム後部21を水平Z字状の折り曲げ状態に座屈変形させる例について説明したが、Z字状の折り曲げ方向は水平に限定するものではない。
例えば、前述したように、左リヤフレーム後部21を長手方向の中心を軸にして90°回転させることにより、左リヤフレーム後部21を上下方向に鉛直Z字状の折り曲げが可能となる。また、左リヤフレーム後部21を長手方向の中心を軸にして0〜90°の間に斜め回転させることにより、左リヤフレーム後部21を斜め方向にZ字状の折り曲げが可能となる。
また、前記実施例では、車体フレームとして右リヤフレーム後部20や左リヤフレーム後部21に本発明を適用する例について説明したが、これに限定するものではない。例えば、左フロントサイドフレームや右フロントサイドフレームなどの他のフレームに本発明を適用することも可能である。
さらに、前記実施例では、底部46および内側壁47の交差部で内稜線を形成し、底部46および外側壁51の交差部で外稜線を形成する例について説明したが、これに限定するものではない。
例えば、アッパフレーム部32、内側壁47および外側壁を一体に成形する。この状態において、アッパフレーム部32および内側壁47の交差部で内稜線を形成する。さらに、アッパフレーム部32および外側壁51の交差部で外稜線を形成することも可能である。
この場合、アッパフレーム部32および内側壁47の内稜線に隣接して第1縦ビード部38が形成される。また、アッパフレーム部32および外側壁51の外稜線に隣接して第2縦ビード部41が形成される。
あるいは、底部46側に内稜線54および外稜線55を形成し、さらに、アッパフレーム部32側にも内稜線および外稜線を形成することも可能である。すなわち、底部46側とアッパフレーム部32側との両方に稜線が形成される。
この場合、例えば、底部46側の内稜線54およびアッパフレーム部32側の内稜線に隣接して第1縦ビード部38が形成される。また、底部46側の外稜線55およびアッパフレーム部32側の外稜線に隣接して第2縦ビード部41が形成される。
また、前記実施例では、軟化部43を底部46、第1内側壁48および第1外側壁52に形成した例について説明したが、これに限らないで、アッパフレーム部32に軟化部を形成することも可能である。
すなわち、アッパフレーム部32および内側壁47の交差部で内稜線を形成し、さらに、アッパフレーム部32および外側壁51の交差部で外稜線を形成した場合には、アッパフレーム部32に軟化部を形成する。
さらに、前記実施例では、第1縦ビード部38、第1歪進展領域39、第2縦ビード部41、第2歪進展領域42および軟化部43などをレーザにより焼なましする例について説明したが、これに限定するものではない。例えば、第1縦ビード部38、第1歪進展領域39、第2縦ビード部41、第2歪進展領域42および軟化部43などを高周波誘導加熱などの他の方法で焼なましすることも可能である。
高周波誘導加熱は、一般に採用されている加熱方法であり、コイルに交流電流を流すことにより、第1縦ビード部38、第1歪進展領域39、第2縦ビード部41、第2歪進展領域42および軟化部43などを加熱する。
その他の焼なまし方法として、前述したように、各部をホットスタンプ成形時に冷却速度を遅くしたり、ホットスタンプ成形後の熱処理などで焼なましすることも可能である。
同様に、ロア内フランジ35、ロア外フランジ36、アッパ内フランジ58およびアッパ外フランジ59なども、レーザによる焼なましに限らないで、高周波誘導加熱などの他の方法で焼なましすることも可能である。
その他の焼なまし方法として、前述したように、各部をホットスタンプ成形時に冷却速度を遅くしたり、ホットスタンプ成形後の熱処理などで焼なましすることも可能である。
また、前記実施例では、車体後部構造10の後左側部へのオフセット衝突により、左リヤフレーム後部21をZ字状の折り曲げ状態に座屈変形させる例について説明したが、これに限定するものではない。例えば、右リヤフレーム後部20を左リヤフレーム後部21と同様にZ字状の折り曲げ状態に座屈変形させることも可能である。
これにより、車体後部構造10の後部全域に車両が衝突する場合や、車体後部構造10の後右側部に車両がオフセット衝突する場合でも、入力した衝撃荷重を良好に吸収することができる。
さらに、前記実施例では、右リヤフレーム後部20や左リヤフレーム後部21の閉断面形状は実施例に例示したものに限定するものではなく、矩形や多角形に適宜変更が可能である。
すなわち、実施例では、内側壁47を折り曲げて内側壁に稜線を形成し、外側壁51を折り曲げて外側壁に稜線を形成した。さらに、内側壁の稜線を第1縦ビード部38で横断し、外側壁の稜線を第2縦ビード部41で横断する例について説明したが、これに限定するものではない。
例えば、内側壁47や外側壁51を折り曲げないで垂直な側壁とすることも可能である。さらには、内側壁47や外側壁51を複数箇所で折り曲げ、内側壁47や外側壁51に多数の稜線を形成し、多数の稜線を第1縦ビード部38や第2縦ビード部41で横断させることも可能である。
但し、いずれの場合においても、内側壁47と底部46が交差する内稜線54は、第1縦ビード部38で横断させないように形成する必要がある。同様に、外側壁51と底部46が交差する外稜線55は、第2縦ビード部41で横断させないように形成する必要がある。
第1縦ビード部38や第2縦ビード部41を横断させないようにする理由はつぎの通りである。すなわち、内稜線54を第1縦ビード部38で横断させ、外稜線55を第2縦ビード部41で横断させた場合、左リヤフレーム後部21が折れ曲がり易くなるからである。このため、左リヤフレーム後部21の反力が小さくなり、衝撃エネルギー吸収量を確保することが難しくなる。
また、前記実施例では、左リヤフレーム後部21に第1縦ビード部38、第1歪進展領域39、第2縦ビード部41、第2歪進展領域42、軟化部43の組み合わせを一組備えた例について説明したがこれに限定するものではない。
例えば、第1縦ビード部38、第1歪進展領域39、第2縦ビード部41、第2歪進展領域42、軟化部43の組み合わせを左リヤフレーム後部21に車体前後方向において複数設けることも衝撃吸収性能の観点から好ましい。
さらに、前記実施例で示した車体後部構造、左右のリヤフレーム、ロアフレーム部、アッパフレーム部、U字部、第1縦ビード部、第1歪進展領域、第2縦ビード部、第2歪進展領域、軟化部、底部、内外の側壁、内外の稜線および内外の接合部などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
本発明は、頂部、底部、一対の側壁で中空に形成され、頂部側や底部側に一対の稜線を有する車体フレームを備えた自動車への適用に好適である。
10 車体後部構造
20 右リヤフレーム後部(車体フレーム)
21 左リヤフレーム後部(車体フレーム)
31 ロアフレーム部
32 アッパフレーム部(頂部)
34 U字部
38 第1縦ビード部
39 第1歪進展領域
41 第2縦ビード部
42 第2歪進展領域
43 軟化部
46 底部
47,51 内外の側壁
54,55 内外の稜線
62,63 内外の接合部
65 中空
L1 第1縦ビード部から外稜線までの距離、第2縦ビード部から内稜線までの距離
P1 ピッチ間隔

Claims (5)

  1. 頂部、底部、一対の側壁で中空に形成され、前記頂部、前記底部の少なくとも一方と前記一対の側壁との交差部で形成される一対の稜線を有し、車体前後方向に延びる車体フレームにおいて、
    前記一対の側壁の一方に前記中空側へ向けて凹形に形成されて上下方向に延び、前記一対の稜線の一方に隣接する第1縦ビード部と、
    該第1縦ビード部および前記一対の稜線の他方間の距離で、車幅方向の最短距離を半径とする第1歪進展領域と、
    前記一対の側壁の他方に前記中空側へ向けて凹形に形成されて上下方向に延び、前記一対の稜線の他方に隣接する第2縦ビード部と、
    該第2縦ビード部および前記一対の稜線の一方間の距離で、車幅方向の最短距離を半径とする第2歪進展領域と、を有し、
    前記第1縦ビード部および前記第2縦ビード部が前記車体フレームの車体前後方向において離間され、前記第1歪進展領域および前記第2歪進展領域が前記車体フレームの変形前状態において離間されていることを特徴とする車体フレーム。
  2. 前記中空の車体フレームの変形途中において、前記第1歪進展領域および前記第2歪進展領域が相互に重なる、請求項1記載の車体フレーム。
  3. 前記中空の車体フレームは、
    略1500MPaの高強度に形成され、
    前記第1縦ビード部および前記第2縦ビード部が590〜1000MPaまで軟化される、請求項1または請求項2記載の車体フレーム。
  4. 前記頂部、前記底部の少なくとも一方は、
    前記第1縦ビード部および前記第2縦ビード部を連結するように帯状に延び、かつ、変形可能な軟化部を有する、請求項1〜3のいずれか1項記載の車体フレーム。
  5. 前記底部および前記一対の側壁で断面略U字状のU字部が形成され、該U字部を有するロアフレーム部に前記頂部がスポット溶接で接合されることにより前記車体フレームが中空に形成され、
    前記スポット溶接は、
    前記第1縦ビード部および前記第2縦ビード部を除いた部位に位置し、
    前記車体フレームの変形の際に、前記スポット溶接による接合部への歪の集中を抑制するピッチ間隔とする、請求項1〜4のいずれか1項記載の車体フレーム。
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