以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺及び縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
本明細書において、「板」、「シート」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「シート」は板やフィルムと呼ばれ得るような部材をも含む概念であり、したがって、「導電体付きシート」は、「導電体付き板(基板)」や「導電体付きフィルム」と呼ばれる部材と、呼称の違いのみにおいて区別され得ない。
また、本明細書において、「シート面(板面、フィルム面)」とは、対象となるシート状(板状、フィルム状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状部材(板状部材、フィルム状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。
なお、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
図1〜図14、図17及び図18は、本発明による一実施の形態を説明するための図である。このうち図1は、透明発熱板を備えた自動車を概略的に示す図であり、図2は、透明発熱板をその板面の法線Nの方向(以下、単に法線方向とも呼称する)から見た図であり、図3は、図2の透明発熱板のIII−III線に沿った横断面図である。
図1に示されているように、乗り物の一例としての自動車1は、フロントウィンドウ、リアウィンドウ、サイドウィンドウ等の窓ガラスを有している。ここでは、フロントウィンドウ5が透明発熱板10で構成されている例を説明する。また、自動車1はバッテリー等の電源7(図2参照)を有している。
図2及び図3に示すように、本実施の形態における透明発熱板10は、一対の基板11,12と、一対の基板11,12の間に配置された導電体付きシート20と、各基板11,12と導電体付きシート20とを接合する一対の接合層13,14と、を有している。なお、図1及び図2に示した例では、透明発熱板10及び基板11,12は湾曲しているが、他の図では、理解を容易にするため、透明発熱板10及び基板11,12を平板状にて図示している。
導電体付きシート20は、基材フィルム21と、基材フィルム21の一方の基板11に対面する面上に設けられ且つ導電性細線31を含む発熱用導電体30と、発熱用導電体30に通電するための一対のバスバー25と、を有する。なお、図2では、発熱用導電体30の図示を省略している。
また、図1及び図2によく示されているように、透明発熱板10は、発熱用導電体30に通電するための配線部15を有している。図示された例では、バッテリー等の電源7によって、配線部15から導電体付きシート20のバスバー25を介して発熱用導電体30に通電し、発熱用導電体30を抵抗加熱により発熱させる。発熱用導電体30で発生した熱は基板11,12に伝わり、基板11,12が温められる。これにより、基板11,12に付着した結露による曇りを取り除くことができる。また、基板11,12に雪や氷が付着している場合には、この雪や氷を溶かすことができる。したがって、乗員の視界が良好に確保される。なお、図示は省略するが、通常は、配線部15は電源7と導電体付きシート20のバスバー25との間に、開閉器が挿入(直列に接続)される。そして、透明発熱板10の加熱が必要な時のみ開閉器を閉じて、導電体付きシート20の発熱用導電体30に通電する。
なお、透明発熱板の「透明」とは、当該透明発熱板を介して当該透明発熱板の一方の側から他方の側を透視し得る程度の透明性を有していることを意味しており、例えば、30%以上、より好ましくは70%以上の可視光透過率を有していることを意味する。可視光透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV−3100PC」、JIS K0115準拠品)を用いて測定波長380nm〜780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される。
以下、透明発熱板10の各構成要素について説明する。
まず、基板11,12について説明する。基板11,12は、図1で示された例のように自動車のフロントウィンドウに用いる場合、乗員の視界を妨げないよう可視光透過率が高いものを用いることが好ましい。このような基板11,12の材質としては、ソーダライムガラス(ソーダガラス、青板ガラス)、硼珪酸ガラス、石英ガラス、カリガラス等が例示できる。基板11,12の可視光透過率は90%以上であることが好ましい。ただし、基板11,12の一部または全体に着色するなどして、この着色部分の可視光透過率を低くしてもよい。この場合、太陽光の直射を遮ったり、車外から車内を視認しにくくしたりすることができる。
また、基板11,12は、1mm以上5mm以下の厚みを有していることが好ましい。このような厚みであると、強度及び光学特性に優れた基板11,12を得ることができる。一対の基板11,12は、同一の材料で同一に構成されていてもよいし、あるいは、材料及び構成の少なくとも一方において互いに異なるようにしてもよい。
次に、接合層13,14について説明する。一方の接合層13が、一方の基板11と導電体付きシート20との間に配置され、一方の基板11と導電体付きシート20とを互いに接合する。他方の接合層14が、他方の基板12と導電体付きシート20との間に配置され、他方の基板12と導電体付きシート20とを互いに接合する。
このような接合層13,14としては、種々の接着性または粘着性を有した材料からなる層を用いることができる。また、接合層13,14は、可視光透過率が高いものを用いることが好ましい。典型的な接合層としては、ポリビニルブチラール(PVB)からなる層を例示することができる。接合層13,14の厚みは、それぞれ0.15mm以上1mm以下であることが好ましい。一対の接合層13,14は、同一の材料で同一に構成されていてもよいし、あるいは、材料及び構成の少なくとも一方において互いに異なるようにしてもよい。
なお、透明発熱板10には、図示された例に限られず、特定の機能を発揮することを期待されたその他の機能層が設けられても良い。また、1つの機能層が2つ以上の機能を発揮するようにしてもよいし、例えば、透明発熱板10の基板11,12、接合層13,14、後述する導電体付きシート20の基材フィルム21、の少なくとも1つに何らかの機能を付与するようにしてもよい。透明発熱板10に付与され得る機能としては、一例として、反射防止(AR)機能、耐擦傷性を有したハードコート(HC)機能、赤外線遮蔽(反射)機能、紫外線遮蔽(反射)機能、帯電防止機能、防汚機能等を例示することができる。
次に、導電体付きシート20について説明する。導電体付きシート20は、基材フィルム21と、基材フィルム21の一方の基板11に対面する面上に設けられ且つ導電性細線31を含む発熱用導電体30と、発熱用導電体30に通電するための一対のバスバー25と、を有する。導電体付きシート20は、基板11,12と略同一の平面寸法を有して、透明発熱板10の全体にわたって配置されてもよいし、図1の例における運転席の正面部分等、透明発熱板10の一部にのみ配置されてもよい。
基材フィルム21は、発熱用導電体30を支持する基材として機能する。基材フィルム21は、可視光線波長帯域の波長(380nm〜780nm)を透過する一般に言うところの透明である電気絶縁性のフィルムである。基材フィルム21としては、可視光を透過し、発熱用導電体30を適切に支持し得るものであればいかなる材質のものでもよいが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、環状ポリオレフィン等を挙げることができる。また、基材フィルム21は、光透過性や、発熱用導電体30の適切な支持性等を考慮すると、0.03mm以上0.20mm以下の厚みを有していることが好ましい。
次に、図11を参照して、発熱用導電体30について説明する。図11は、導電体付きシート20をそのシート面の法線方向から見た平面図である。
発熱用導電体30は、一対のバスバー25の間に配置された導電性細線31を有している。導電性細線31は、バッテリー等の電源7から、配線部15及びバスバー25を介して通電され、抵抗加熱により発熱する。そして、この熱が接合層13,14を介して基板11,12に伝わることで、基板11,12が温められる。
導電性細線31は、種々のパターンで配列することができる。図11に示された例では、発熱用導電体30は、導電性細線31が多数の開口33を画成するメッシュ状のパターンで配置されることによって形成されている。発熱用導電体30は、2つの分岐点32の間を延びて、開口33を画成する複数の接続要素34を含んでいる。すなわち、発熱用導電体30の導電性細線31は、両端において分岐点32を形成する多数の接続要素34の集まりとして構成されている。
このような発熱用導電体30を構成するための材料としては、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウム、クロム、モリブデン、ニッケル、チタン、パラジウム、インジウム、タングステン、及び、ニッケル−クロム合金、レニウム−タングステン合金、ニッケル−タングステン合金等のこれらの金属の1種以上を含む合金の一以上を例示することができる。
発熱用導電体30は、上述したように不透明な金属材料を用いて形成され得る。その一方で、発熱用導電体30によって覆われていない基材フィルム21上の領域の割合、すなわち非被覆率(開口率)は、例えば0.7以上0.9以下程度と高くなっている。また、導電性細線31の線幅は、2μm以上20μm以下程度となっている。このため、発熱用導電体30が設けられている領域は、全体として透明に把握され、発熱用導電体30の存在が透明発熱板10の透視性を害さないようになっている。
図3に示された例では、導電性細線31は、全体として矩形状の断面を有している。導電性細線31の幅W、すなわち、透明発熱板10の板面(導電体付きシート20のシート面、基材フィルム21のフィルム面)に沿った幅Wは2μm以上20μm以下とし、高さ(厚さ)H、すなわち、透明発熱板10の板面への法線方向に沿った高さ(厚さ)Hは1μm以上60μm以下とすることが好ましい。このような寸法の導電性細線31によれば、その導電性細線31が十分に細線化されているので、発熱用導電体30を効果的に不可視化することができる。
また、図3に示されたように、導電性細線31は、導電性金属層36、導電性金属層36の表面のうち、基材フィルム21に対向する側の面を覆う第1の暗色層37、導電性金属層36の表面のうち、基板11に対向する側の面及び両側面を覆う第2の暗色層38を含むようにしてもよい。優れた導電性を有する金属材料からなる導電性金属層36は、比較的高い反射率を呈する。そして、発熱用導電体30の導電性細線31をなす導電性金属層36によって光が反射されると、その反射した光が視認されるようになり、乗員の視界を妨げる場合がある。また、外部から導電性金属層36が視認されると、意匠性が低下する場合がある。そこで、第1及び第2の暗色層37,38が、導電性金属層36の表面の少なくとも一部分を覆っている。第1及び第2の暗色層37,38は、導電性金属層36よりも可視光の反射率が低い層であればよく、例えば黒色等の暗色の層である。この暗色層37,38によって、導電性金属層36が視認されづらくなり、乗員の視界を良好に確保することができる。また、外部から見たときの意匠性の低下を防ぐことができる。
なお、前述したように、透明発熱板10の透視性または透明発熱板10を介した視認性を確保する観点から、非被覆率が高くなるように、発熱用導電体30の導電性細線31は基材フィルム21上に形成されている。このため、図3に示すように、接合層13と導電体付きシート20の基材フィルム21とは、導電性細線31の非被覆部、すなわち隣り合う導電性細線31の間となる領域を介して接触している。このため、発熱用導電体30は、接合層13内に埋め込まれた状態となっている。
ところで、上述したように、電熱線を含んだ透明発熱板を介して光、例えば対向車の照明を観察した場合、尾を引くように観察される光の筋、すなわち光芒が当該照明の周囲に観察される。このような光芒の発生は、透明発熱板を介した視認性を悪化させることになる。この光芒の発生原理について本件発明者らが鋭意検討を重ねたところ、光芒の発生する方向は、透明発熱板への入射光が電熱線で回折される方向と一致することを知見した。
以下、光芒の発生原理について、図4〜図10を参照して説明する。
一般に、構造に形成された隙間や開口の透過部を光が通過するとき、当該光は回折する。このとき生成される回折像が、光芒として視認され得る。回折像の形状は、構造の透過部の形状、より詳しくは、透過部と遮蔽部の境界の形状によって決定される。回折像は、0次以外の各次数の回折光の集合として視認されるようになる。各次数の回折効率ηは、物体の開口率(非被覆率)Dに依存する。0次から無限次の回折光の回折効率の総和、すなわち全透過率は、Dとなる。このうち、0次回折光の回折効率η0はD2となり、光芒に寄与する0次回折光以外の回折光の回折効率の総和η1〜∞はD−D2となる。図4に、開口率(非被覆率)Dに対する0次回折光以外の回折光の回折効率の総和η1〜∞すなわち光芒の視認されやすさに相当する回折像の強度の変化をグラフで示す。図4に示されているように、回折像の強度(0次回折光以外の回折光の回折効率の総和η1〜∞)は、開口率(非被覆率)Dに依存する。とりわけ、回折像の強度(0次回折光以外の回折光の回折効率の総和η1〜∞)は、開口率(非被覆率)Dが0.5のときに最も大きくなり、Dが0.5から小さくなる又は大きくなるにつれて低下する。また、この回折像の強度の値(0次回折光以外の回折光の回折効率の総和η1〜∞)は、D=0.5のときを中心として対称的となる。以降、「回折像」とは0次回折光以外の回折光による像を表すこととする。
次に、観察される回折像の形状について検討する。回折像の形状は、以下の方法によって特定される。ここでは、例として、図5に示すような、d1方向に複数本配列され、d1方向と交差するとりわけ直交するd2方向に延びる第1パターン要素51と、d2方向に複数本配列され、d1方向に延びる第2パターン要素52と、を有し、第1パターン要素51と第2パターン要素52とにより全体として格子状をなすパターン構造50に光が入射した際に観察される回折像について検討する。このとき、パターン構造50を光が進む際に生じる回折像は、図6に示す第1パターン要素51を光が進む際に生じる回折像と、図8に示す第2パターン要素52を光が進む際に生じる回折像と、を重ね合わせることによって得ることができる。
図7に、図6に示された第1パターン要素51に光が入射した際に観察される回折像61を示す。図7に示された回折像61は、各第1パターン要素51の延在方向(d2方向)と交差する方向、とりわけ各第1パターン要素51の延在方向と直交する方向に延びている。とりわけ図7に示された例では、第1パターン要素51による回折像61は、複数の第1パターン要素51の配列方向(d1方向)に延びている。なお、この回折像61の強度は、第1パターン要素51における開口率(非被覆率)に依存する。
図9に、図8に示された第2パターン要素52に光が入射した際に観察される回折像62を示す。図9に示された回折像62は、各第2パターン要素52の延在方向(d1方向)と交差する方向、とりわけ各第2パターン要素52の延在方向と直交する方向に延びている。とりわけ図9に示された例では、第2パターン要素52による回折像62は、複数の第2パターン要素52の配列方向(d2方向)に延びている。なお、この回折像62の強度は、第2パターン要素52における開口率(非被覆率)に依存する。
このようにして得られた各回折像61,62を重ね合わせることにより、図5に示したパターン構造50に光が入射した際に観察される回折像60が得られる。図10にこの回折像60を示す。図5、図6及び図8に示された例では、第1パターン要素51における開口率と、第2パターン要素52における開口率とは、等しくなっている。したがって、図10に示された例において、第1パターン要素51による回折像61の強度と、第2パターン要素52による回折像62の強度とは、等しくなっている。
以上のように、図5に例示したパターン構造50から観測される回折像60は、図10に示すように、異なる2方向(d1方向、d2方向)に放射状に延びる2本の筋状の光となる。この筋状の光が、光芒として観察される。そして、このような光芒は、透明発熱板10を介した視認性に強い影響を及ぼす。この光芒の、透明発熱板10を介した視認性への影響について本件発明者らが鋭意検討を進めたところ、透明発熱板が鉛直方向から傾斜して設置された場合に、この透明発熱板を介して照明光を観察すると、水平方向に延びる光芒の強度と比較して、鉛直方向に延びる光芒の強度の方が大きくなり、このことによって光芒が視認されやすくなることが知見された。この現象について本件発明者らがさらに検討を重ねたところ、光芒が互いに交差する方向(例えば水平方向と鉛直方向)に等方的な強度を有して延びる場合に、当該光芒を目立たなくさせることができることを知見した。これらの知見に基づいて、本件発明者らは、導電性細線31(図5、図6、及び図8に於ける第1パターン要素51及び第2パターン要素52に対応する)の幅又は複数の導電性細線31間のピッチを工夫することで、光芒の強度を等方化、すなわち互いに交差する方向(とりわけ水平方向と鉛直方向)における光芒の強度を均一化して、極めて効果的に光芒を目立たなくさせることを可能にした。
このような、光芒の強度を等方化し得る発熱用導電体30のパターン構造の一例について、図11〜図14を参照して、以下に説明する。
図3に示された例では、透明発熱板10の板面、基板11の板面、基板12の板面、導電体付きシート20のシート面及び基材フィルム21のフィルム面は、それぞれ平行をなしている。そして、図11〜図18に示された例では、透明発熱板10の板面(導電体付きシート20のシート面、基材フィルム21のフィルム面)内における水平方向と平行な方向を第1方向(X)とし、透明発熱板10の板面と平行な面内における第1方向(X)と直交する方向を第2方向(Y)とし、透明発熱板10の板面に垂直な方向、すなわち第1方向(X)及び第2方向(Y)の両方に垂直な方向を第3方向(Z)とする。また、鉛直方向vdと平行な方向を第4方向(Y’)とし、第1方向(X)及び第4方向(Y’)の両方に垂直な方向を第5方向(Z’)とする。したがって、第5方向(Z’)は、水平方向と平行をなしている。
図11は、透明発熱板10の導電体付きシート20をそのシート面の法線方向(Z)から見た図であって、導電体付きシート20の発熱用導電体30のパターン形状の一例を示す図である。
発熱用導電体30は、一対のバスバー25の間に配置された導電性細線31を有している。発熱用導電体30の導電性細線31は、透明発熱板10の板面に沿って、透明発熱板10の板面における水平方向(第1方向(X))に対して45°以上傾斜(図11の形態に於いては90°傾斜)した縦導線31aと、透明発熱板10の板面に沿って、透明発熱板10の板面における水平方向(第1方向(X))に対して45°より小さく傾斜(図11の形態に於いては0°傾斜)した横導線31bと、を有している。尚、斯かる縦導線31aの透明発熱板10の板面における水平方向に対する傾斜角は、劣角にて定義して、70°以上90°以下の範囲とすることができる。又、横導線31bの透明発熱板10の板面における水平方向に対する傾斜角は、劣角にて定義して、0°以上20°以下の範囲とすることができる。
発熱用導電体30の一例として、図11には、格子配列状の規則的なメッシュパターンを有する発熱用導電体30が示されている。図11に示された例では、透明発熱板10の板面に沿って、透明発熱板10の板面における水平方向に対して45°以上傾斜した縦方向に沿って形成され、縦方向と交差する方向に沿って複数本配列された縦導線31aと、透明発熱板10の板面に沿って、透明発熱板10の板面における水平方向に対して45°より小さく傾斜した横方向に沿って形成され、横方向と交差する方向に沿って複数本配列された横導線31bとにより、格子配列状の規則的な発熱用導電体30が形成されている。とりわけ図示された例では、縦導線31aは第2方向(Y)に沿って形成されかつ第1方向(X)に沿って複数本配列され、横導線31bは第1方向(X)に沿って形成されかつ第2方向(Y)に沿って複数本配列されている。さらに、図示された例では、複数の縦導線31aは、それぞれ互いに平行にかつ第1方向(X)に沿って互いに等ピッチで配列され、複数の横導線31bは、それぞれ互いに平行にかつ第2方向(Y)に沿って互いに等ピッチで配列されている。
そして、図11に示された例では、縦導線31a(導電性細線31)と横導線31b(導電性細線31)とにより、格子配列状の規則的なメッシュパターンが形成される。言い換えると、発熱用導電体30は、多数の矩形状の開口33を画成するメッシュ状のパターンをなす導電性細線31(縦導線31a、横導線31b)を有している。このメッシュ状のパターンをなす導電性細線31は、2つの分岐点32の間を延びて、開口33を画成する複数の接続要素34を含んでいる。すなわち、発熱用導電体30の導電性細線31は、両端において分岐点32を形成する多数の接続要素34の集まりとして構成されている。
ところで、自動車のフロントウィンドウやリアウィンドウ等の窓ガラスは、鉛直方向に対して傾斜して配置されることが多い。したがって、透明発熱板10が、このような自動車のフロントウィンドウやリアウィンドウ等に用いられた場合、この透明発熱板10の板面が鉛直方向に対して傾斜して配置される。図12に、透明発熱板10の板面が鉛直方向vdから傾斜して配置された状態において、透明発熱板10の導電体付きシート20を断面で示す。なお、図12に示された断面は、図11のXII−XII線に沿った断面に概ね対応している。
図12に示された例では、導電体付きシート20のシート面(透明発熱板10の板面、基材フィルム21のフィルム面)は、鉛直方向vd(第4方向(Y’))から角度θだけ傾斜している。したがって、第2方向(Y)及び第4方向(Y’)は角度θをなし、第3方向(Z)及び第5方向(Z’)は角度θをなしている。
透明発熱板10が自動車のフロントウィンドウやリアウィンドウ等に用いられた場合、この透明発熱板10は、乗員により概ね第5方向(Z’)から視認されることになる。このとき、導電体付きシート20のシート面に沿って、すなわち第2方向(Y)に沿って幅Wを有する横導線31b(導電性細線31)は、第5方向(Z’)からは、第4方向(Y’)に沿った幅W’を有して視認される。また、導電体付きシート20のシート面に沿って、すなわち第2方向(Y)に沿ってピッチPを有して配列された横導線31bは、第5方向(Z’)からは、第4方向(Y’)に沿ったピッチP’を有して視認される。
図12に示された例では、横導線31bの第4方向(Y’)に沿った幅W’は、第2方向(Y)に沿った幅Wよりも大きくなり、横導線31bの第4方向(Y’)に沿ったピッチP’は、第2方向(Y)に沿ったピッチPよりも小さくなる。したがって、W<W’及びP>P’の関係が成り立つ。
即ち、横導線31bの高さHが0の場合、図12からも明白な様に、横導線31b幅W’と幅Wとの間、及びピッチPとP’との間には、導線の厚みを無視すると、
W’=Wcosθ<W (式1)
P’=Pcosθ<P (式2)
の関係が成り立つ。尚、此処で、透明発熱板30の板面の鉛直方向vdからの傾斜角度θは、自動車等の乗り物の窓用途の場合、0°<θ≦45°である。
但し、現実には横導線31b(縦導線31aも同様であるが)は高さH>0である。此の点を考慮すると、図12からもわかるように、横導線31bの第4方向(Y’)に沿った幅W’は、
W’=Wcosθ+Hsinθ (式3)
となる。(式2)より、HとWとの間に、
H/W>(1−cosθ)/sinθ (式4)
の関係が成り立てば、W’>Wとなる。(式3)の右辺はθの増加函数となる為、θの最大値であるθ=45°の場合を考えると、右辺の値は0.414(=(2)1/2−1)となる為、
H/W>0.414 (式5)
を満たす場合は、(式3)は
W’>W (式3’)
となることがわかる。本発明は、此の場合を前提とする。
又、ピッチPとP’との間には、図12からも明白な様に、高さの影響(+Hsinθ)はピッチを測る隣接2導線の端縁部の位置に等分に加算され、二端縁部の位置を減算してピッチを求めるときに相殺する為、ピッチPとP’との関係は、現実に導線の高さを考慮しても、なお、(式2)の通りとなる。
一方、縦導線31aについては、基材フィルム21のフィルム面が鉛直方向vdから角度θ傾斜した場合に於いて、其の線幅Wa及びピッチPa(図13参照)は、基材フィルム21のフィルム面の法線方向(第3方向(Z))から見た場合、及び車内の乗員からの視線方向に相当する第5方向(Z’)から見た場合の何れも同じ値となる。即ち、
Wa’=Wa
Pa’=Pa
となる。
先ず、従来の導電体付きシートの光芒について説明する。図15(a)は、従来の発熱用導電体130のパターン構造の一例を示す図である。図15(a)は、発熱用導電体130を導電体付きシートのシート面に垂直な方向すなわち第3方向(Z)から見た図である。尚、導電体付きシート21のシート面と鉛直方向vdとのなす角度θは、0°<θ≦45°である。
図15(a)に示された従来の発熱用導電体130は、導電体付きシートのシート面に沿って、導電体付きシートのシート面(透明発熱板の板面、基材フィルムのフィルム面)における水平方向(第1方向(X))に対して45°以上(図15の形態に於いては90°)傾斜した縦導線131aと、導電体付きシートのシート面に沿って、導電体付きシートのシート面における水平方向(第1方向(X))に対して45°より小さく(図15の形態に於いては0°)傾斜した横導線131bと、を備えている。また、横導線131bの導電体付きシートのシート面に沿った幅すなわち第2方向(Y)に沿った幅Wb3は、縦導線131aの導電体付きシートのシート面に沿った幅すなわち第1方向(X)に沿った幅Waと等しくなっている。さらに、複数の縦導線131aは、それぞれ互いに平行にかつ第1方向(X)に沿って互いに等ピッチPaで配列され、複数の横導線131bは、それぞれ互いに平行にかつ第2方向(Y)に沿って互いに等ピッチPb3で配列されている。なお、複数の縦導線131a間のピッチPaと複数の横導線131b間のピッチPb3とは、等しくなっている。
図15(a)の発熱用導電体130を、第5方向(Z’)から見たものを、図15(b)に示す。図15(b)に示された例では、横導線131bの第4方向(Y’)に沿った幅Wb3’は、第2方向(Y)に沿った幅Wb3よりも広くなっている。なお、縦導線131aの第1方向(X)に沿った幅Waは、第3方向(Z)から見ても第5方向(Z’)から見ても変化しない。したがって、横導線131bの第4方向(Y’)に沿った幅Wb3’は、縦導線131aの第1方向(X)に沿った幅Waよりも広くなる。また、複数の横導線131bの第4方向(Y’)に沿ったピッチPb3’は、第2方向(Y)に沿ったピッチPb3よりも狭くなっている。なお、複数の縦導線131a間のピッチPaは、第3方向(Z)から見ても第5方向(Z’)から見ても変化しない。したがって、複数の横導線131bの第4方向(Y’)に沿ったピッチPb3’は、複数の縦導線131a間のピッチPaよりも狭くなる。
図16(a)は、図5〜図10を参照して説明した上述の手法により得られた、図15(b)の従来の発熱用導電体130の縦導線131aによる回折像141aを示す。図16(b)は、同様にして得られた、図15(b)の従来の発熱用導電体130の横導線131bによる回折像141bを示す。図16(c)は、図15(b)の従来の発熱用導電体130を介して観測される回折像142を示す。
図15(b)に示された例では、横導線131bの第4方向(Y’)に沿った幅Wb3’は、縦導線131aの第1方向(X)に沿った幅Waよりも広い。これにより、導電性細線131を有する従来の発熱用導電体130において、第4方向(Y’)に沿った開口率Dが小さくなり、0次回折光以外の回折光の回折効率の総和η1〜∞は大きくなる。さらに、複数の横導線131bの第4方向(Y’)に沿ったピッチPb3’は、複数の縦導線131a間のピッチPaよりも狭い。これによっても、導電性細線131を有する従来の発熱用導電体130において、第4方向(Y’)に沿った開口率Dが小さくなり、0次回折光以外の回折光の回折効率の総和η1〜∞は大きくなる。したがって、横導線131bによる回折像141bの強度は、縦導線131aによる回折像141aの強度よりも大きくなる。これにより、図16(c)に示すように、図15(b)の従来の発熱用導電体130を介して観測される回折像142、すなわち、回折像141aと回折像141bとを重ね合わせることにより得られる回折像142は、複数の横導線131bの配列方向(第4方向(Y’))により大きな強度を有して観測されるようになる。すなわち、回折像142が非等方化されるようになる。
したがって、鉛直方向から傾斜して配置された従来の発熱用導電体130を介して照明光を観察すると、水平方向に延びる光芒の強度と比較して、鉛直方向に延びる光芒の強度の方が大きくなり、この水平方向と鉛直方向における光芒の強度の非等方性により、光芒が視認されやすくなる。
続いて、本発明の導電体付きシートについて説明する。図13(a)は、発熱用導電体30のパターン構造の一例を示す図である。図13(a)は、発熱用導電体30を導電体付きシート20のシート面に垂直な方向すなわち第3方向(Z)から見た図である。
図13(a)に示された発熱用導電体30は、導電体付きシート20のシート面に沿って、導電体付きシート20のシート面(透明発熱板10の板面、基材フィルム21のフィルム面)における水平方向(第1方向(X))に対して45°以上傾斜した縦導線31aと、導電体付きシート20のシート面に沿って、導電体付きシート20のシート面における水平方向(第1方向(X))に対して45°より小さく傾斜した横導線31bと、を備え、横導線31bの導電体付きシート20のシート面に沿った幅すなわち第2方向(Y)に沿った幅Wb1は、縦導線31aの導電体付きシート20のシート面に沿った幅すなわち第1方向(X)に沿った幅Waよりも狭くなっている。とりわけ図示された例では、縦導線31aは第2方向(Y)に沿って形成されかつ第1方向(X)に沿って複数本配列され、横導線31bは第1方向(X)に沿って形成されかつ第2方向(Y)に沿って複数本配列されている。さらに、図示された例では、複数の縦導線31aは、それぞれ互いに平行にかつ第1方向(X)に沿って互いに等ピッチPaで配列され、複数の横導線31bは、それぞれ互いに平行にかつ第2方向(Y)に沿って互いに等ピッチPb1で配列されている。なお、図示された例では、複数の縦導線31a間のピッチPaと複数の横導線31b間のピッチPb1とは、等しくなっている。
図13(a)の発熱用導電体30を、第5方向(Z’)から見たものを、図13(b)に示す。上述のように、横導線31bの第4方向(Y’)に沿った幅は、第2方向(Y)に沿った幅よりも広くなり、複数の横導線31bの第4方向(Y’)に沿ったピッチは、第2方向(Y)に沿ったピッチよりも狭くなる。すなわち、図13(b)に示された例では、横導線31bの第4方向(Y’)に沿った幅Wb1’は、第2方向(Y)に沿った幅Wb1よりも広くなる。また、複数の横導線31bの第4方向(Y’)に沿ったピッチPb1’は、第2方向(Y)に沿ったピッチPb1よりも狭くなる。また、図13(b)に示された例では、縦導線31aの第1方向(X)に沿った幅Wa、及び、複数の縦導線31a間のピッチPaは、第3方向(Z)から見ても第5方向(Z’)から見ても変化しない。したがって、複数の横導線31bの第4方向(Y’)に沿ったピッチPb1’は、複数の縦導線31a間のピッチPaよりも狭くなる。ここで、図13(b)に示された例では、横導線31bの第4方向(Y’)に沿った幅Wb1’は、縦導線31aの第1方向(X)に沿った幅Waよりも狭くなっている。
とりわけ、図13(b)に示された例では、横導線31bによる被覆率Wb1’/Pb1’と、縦導線31aによる被覆率Wa/Paとは、等しくなっている。すなわち、
Wb1’/Pb1’=Wa/Pa
の関係が成り立っている。
したがって、この場合、横導線31bによる開口率(非被覆率)(Pb1’−Wb1’)/Pb1’と、縦導線31aによる開口率(非被覆率)(Pa−Wa)/Paとは、等しくなる。すなわち、
(Pb1’−Wb1’)/Pb1’=(Pa−Wa)/Pa
の関係が成り立つ。
図14(a)は、図4〜図14を参照して説明した上述の手法により得られた、図13(b)の発熱用導電体30の縦導線31aによる回折像41aを示す。図14(b)は、同様にして得られた、図13(b)の発熱用導電体30の横導線31bによる回折像41bを示す。図14(c)は、図13(b)の発熱用導電体30を介して観測される回折像42を示す。
上述したように、発熱用導電体30は、不透明な金属材料を用いて形成され得る。その一方で、発熱用導電体30によって覆われていない基材フィルム21上の領域の割合、すなわち開口率(非被覆率)Dは、例えば0.7以上0.9以下程度と高くなっている。
ところで、前記の如く、構造に形成された隙間や開口の透過部を光が通過するときに生成される0次以外の各次数の回折像の集合が、光芒として視認され得る。各次数の回折効率ηは、物体の開口率(非被覆率)Dに依存する。0次から無限次の回折光の回折効率の総和、すなわち全透過率は、Dとなる。このうち、0次回折光の回折効率はD2となり、光芒に寄与する0次回折光以外の回折光の回折効率の総和η1〜∞はD−D2となる。とりわけ、回折像の強度(0次回折光以外の回折光の回折効率の総和η1〜∞)は、開口率(非被覆率)Dが0.5のときに最も大きくなり、Dが0.5から小さくなる又は大きくなるにつれて低下する。したがって、0.5以上1未満、例えば0.7以上0.9以下程度と高い開口率Dを有する発熱用導電体30においては、開口率Dが小さくなるほど、光芒に寄与する0次回折光以外の回折光の回折効率の総和η1〜∞は大きくなる。
導電性細線31を有する発熱用導電体30において、導電性細線31の幅が大きくなると、これにより開口率Dが小さくなり、0次回折光以外の回折光の回折効率の総和η1〜∞は大きくなる。また、発熱用導電体30において、複数の導電性細線31の配列ピッチが小さくなると、これにより開口率Dが小さくなり、0次回折光以外の回折光の回折効率の総和η1〜∞は大きくなる。
図13(b)に示された例では、複数の横導線31bの第4方向(Y’)に沿ったピッチPb1’は、複数の縦導線31a間のピッチPaよりも狭いものの、横導線31bの第4方向(Y’)に沿った幅Wb1’は、縦導線31aの第1方向(X)に沿った幅Waよりも狭い。これにより、図14(b)に示されているように、複数の横導線31bの配列方向(第4方向(Y’))における0次回折光以外の回折光の回折効率の総和の増加が抑制される。したがって、図14(c)に示すように、図13(b)の発熱用導電体30を介して観測される回折像42、すなわち、発熱用導電体30の縦導線31aによる回折像41aと発熱用導電体30の横導線31bによる回折像41bとを重ね合わせることにより得られる回折像42が、第1方向(X)及び第4方向(Y’)において等方化され得る。
とりわけ、図13(b)に示された例では、横導線31bによる開口率(非被覆率)(Pb1’−Wb1’)/Pb1’と、縦導線31aによる開口率(非被覆率)(Pa−Wa)/Paとは、等しくなるよう設計されている。この場合、図14(a)〜図14(c)に示された例において、発熱用導電体30の縦導線31aによる回折像41aの強度と、発熱用導電体30の横導線31bによる回折像41bの強度とは、等しくなる。
図13及び図14を参照して説明した、本実施の形態の透明発熱板10は、透明発熱板10の板面が、鉛直方向vdから傾斜しており、発熱用導電体30は、透明発熱板10の板面に沿って、透明発熱板10の板面における水平方向(X)に対して45°以上傾斜した縦導線31aと、透明発熱板10の板面に沿って、透明発熱板10の板面における水平方向(X)に対して45°より小さく傾斜した横導線31bと、を備え、横導線31bの透明発熱板10の板面に沿った幅Wb1は、縦導線31aの透明発熱板10の板面に沿った幅Waよりも狭い。
このような発熱用導電体30を有する透明発熱板10によれば、発熱用導電体30を介して観測される回折像42が、水平方向(X)及び鉛直方向(Y’)において等方化され得る。したがって、透明発熱板10を介して照明光を観察した際に視認される光芒を目立たなくさせることができる。
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を適宜参照しながら、変形例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
図17及び図18を参照して、発熱用導電体30のパターン構造の変形例について説明する。図17(a)は、発熱用導電体30を導電体付きシート20のシート面に垂直な方向すなわち第3方向(Z)から見た図である。
図17(a)に示された発熱用導電体30では、横導線31bの導電体付きシート20のシート面に沿った幅すなわち第2方向(Y)に沿った幅Wb2は、縦導線31aの導電体付きシート20のシート面に沿った幅すなわち第1方向(X)に沿った幅Waと等しくなっている。複数の横導線31bは、それぞれ互いに平行にかつ第2方向(Y)に沿って互いに等ピッチPb2で配列されている。また、図示された例では、複数の横導線31bの配列方向(第2方向(Y))のピッチPb2は、複数の縦導線31aの配列方向(第1方向(X))のピッチPaよりも広くなっている。
図17(a)の発熱用導電体30を、第5方向(Z’)から見たものを、図17(b)に示す。図17(b)に示された例では、横導線31bの第4方向(Y’)に沿った幅Wb2’は、第2方向(Y)に沿った幅Wb2よりも大きくなっている。なお、縦導線31aの第1方向(X)に沿った幅Waは、第3方向(Z)から見ても第5方向(Z’)から見ても変化しない。したがって、横導線31bの第4方向(Y’)に沿った幅Wb2’は、縦導線31aの第1方向(X)に沿った幅Waよりも大きくなる。また、複数の横導線31bの第4方向(Y’)に沿ったピッチPb2’は、第2方向(Y)に沿ったピッチPb2よりも小さくなっている。なお、複数の縦導線31a間のピッチPaは、第3方向(Z)から見ても第5方向(Z’)から見ても変化しない。ここで、図17(b)に示された例では、複数の横導線31bの第4方向(Y’)に沿ったピッチPb2’は、複数の縦導線31a間のピッチPaよりも広くなっている。
とりわけ、図17(b)に示された例では、横導線31bによる被覆率Wb2’/Pb2’と、縦導線31aによる被覆率Wa/Paとは、等しくなっている。すなわち、
Wb2’/Pb2’=Wa/Pa
の関係が成り立っている。
したがって、この場合、横導線31bによる開口率(非被覆率)(Pb2’−Wb2’)/Pb2’と、縦導線31aによる開口率(非被覆率)(Pa−Wa)/Paとは、等しくなる。すなわち、
(Pb2’−Wb2’)/Pb2’=(Pa−Wa)/Pa
の関係が成り立つように導電性細線31のパターンを設計する。
図18(a)は、図4〜図14を参照して説明した上述の手法により得られた、図17(b)の発熱用導電体30の縦導線31aによる回折像41aを示す。図18(b)は、同様にして得られた、図17(b)の発熱用導電体30の横導線31bによる回折像41bを示す。図18(c)は、図17(b)の発熱用導電体30を介して観測される回折像42を示す。
図17(b)に示された例では、横導線31bの第4方向(Y’)に沿った幅Wb2’は、縦導線31aの第1方向(X)に沿った幅Waよりも大きいものの、複数の横導線31bの第4方向(Y’)に沿ったピッチPb2’は、複数の縦導線31a間のピッチPaよりも広い。これにより、図18(b)に示されているように、複数の横導線31bの配列方向(第4方向(Y’))における0次回折光以外の回折光の回折効率の総和の増加が抑制される。したがって、図18(c)に示すように、図17(b)の発熱用導電体30を介して観測される回折像42、すなわち、発熱用導電体30の縦導線31aによる回折像41aと発熱用導電体30の横導線31bによる回折像41bとを重ね合わせることにより得られる回折像42が、第1方向(X)及び第4方向(Y’)において等方化され得る。
とりわけ、図17(b)に示された例では、横導線31bによる開口率(非被覆率)(Pb2’−Wb2’)/Pb2’と、縦導線31aによる開口率(非被覆率)(Pa−Wa)/Paとは、等しくなっている。この場合、図18(a)〜図18(c)に示された例において、発熱用導電体30の縦導線31aによる回折像41aの強度と、発熱用導電体30の横導線31bによる回折像41bの強度とは、等しくなる。
図17及び図18を参照して説明した発熱用導電体30を有する透明発熱板10は、透明発熱板10の板面が、鉛直方向vdから傾斜しており、発熱用導電体30は、透明発熱板10の板面に沿って、透明発熱板10の板面における水平方向(X)に対して45°以上(図17の形態に於いては90°)傾斜した縦導線31aと、透明発熱板10の板面に沿って、透明発熱板10の板面における水平方向(X)に対して45°より小さく(図17の形態に於いては0°)傾斜した横導線31bと、を備え、横導線31bの配列方向のピッチPb2は、縦導線31aの配列方向のピッチPaよりも広い。
このような発熱用導電体30を有する透明発熱板10によっても、発熱用導電体30を介して観測される回折像42が、水平方向(X)及び鉛直方向(Y’)において等方化され得る。したがって、透明発熱板10を介して照明光を観察した際に視認される光芒を目立たなくさせることができる。
他の変形例として、透明発熱板10の発熱用導電体30において、横導線31bの透明発熱板10の板面に沿った幅を、縦導線31aの透明発熱板10の板面に沿った幅よりも狭くし、かつ、横導線31bの配列方向のピッチを、縦導線31aの配列方向のピッチよりも広くしてもよい。このような発熱用導電体30を有する透明発熱板10によっても、発熱用導電体30を介して観測される回折像42を、水平方向(X)及び鉛直方向(Y’)において等方化することができる。したがって、透明発熱板10を介して照明光を観察した際に視認される光芒を目立たなくさせることができる。
上述した実施の形態では、透明発熱板10の発熱用導電体30は、格子配列状の規則的なメッシュパターンを有しているが、このようなパターンに限られず、発熱用導電体30は、例えば、三角形、四角形、六角形等の同一形状の開口領域が規則的に配置されたパターン、異形状の開口領域が規則的に配置されたパターン、特開2012−178556号公報、特開2013−238029号公報等に開示の如き、隣接母点間距離がある上限値及び下限値の間に分布するランダム2次元分布した母点から生成されるボロノイ図形のボロノイ領域から多数の開口領域を構成したパターンのような不規則的なパターン、を有していてもよい。
上述した実施の形態では、複数の縦導線31a間の透明発熱板10の板面に沿った幅Waがそれぞれ同じであり、複数の横導線31b間の透明発熱板10の板面に沿った幅Wb1,Wb2がそれぞれ同じであるものを示したが、これに限られず、複数の縦導線31a間の幅Waがそれぞれ異なっていてもよいし、複数の横導線31b間の幅Wb1,Wb2がそれぞれ異なっていてもよい。とりわけ、縦導線31aの幅Wa又は横導線31bの幅Wb1,Wb2が、透明発熱板10の板面における水平方向(X)に対する角度に応じて異なる幅を有するようにしてもよい。具体的には、透明発熱板10の板面における水平方向(X)に対する角度が大きくなるにつれて、縦導線31aの幅Wa又は横導線31bの幅Wb1,Wb2が広くなるようにしてもよい。
上述した実施の形態では、透明発熱板10が平板状に形成されている例を示したが、これに限られず、透明発熱板10が曲面状に形成されていてもよい。
透明発熱板10は、自動車1のリアウィンドウ、サイドウィンドウやサンルーフに用いてもよい。また、自動車以外の、鉄道車両、航空機、船舶、宇宙船等の乗り物の窓あるいは扉の透明部分に用いてもよい。
さらに、発熱板10は、乗り物以外にも、特に室内と室外とを区画する箇所、例えばビルや店舗、住宅の窓あるいは扉の透明部分等に使用することもできる。
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。