JP6579358B2 - 水性顔料分散体の製造方法及びインクジェット記録用インク - Google Patents

水性顔料分散体の製造方法及びインクジェット記録用インク Download PDF

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Description

本発明はイエロー顔料を使用した水性顔料分散体の製造方法及びインクジェット記録用インクに関する。
色材として顔料を使用した顔料組成物は、顔料が有する優れた耐光性を利用して、屋内外問わず、自動車や建材用の塗料分野や、オフセットインキ、グラビアインキ、フレキソインキ、シルクスクリーンインキ等の印刷インキ分野、あるいはインクジェット記録用水性インク分野等様々な用途に使用されている。
この中で、主溶剤として水を用いた水性インクは溶剤インクのような火災の危険性等をより低減できるという優れた特徴を有しており、特にインクジェット記録用としては水性インクが主流となっている。
顔料は水不溶性であり水性媒体に分散させた水性顔料分散体として使用する。このことから、顔料を安定に水性媒体に分散させる手法が従来検討されてきた。
例えば、ケトン系溶媒やアルコール系溶媒等の有機溶媒の存在下に、特定の酸価を有する合成樹脂、塩基及び着色剤を攪拌機や分散装置を用いてよく混合して、着色剤の溶解又は分散と合成樹脂の自己水分散化とを行った後、当該着色樹脂溶液と水性媒体とを混合することによって着色剤を含む自己水分散性樹脂溶液の小滴を水性媒体中に分散する方法や(例えば特許文献1の段落0024、特許文献2の段落0025参照)、疎水セグメントと、疎水性ユニット及び親水性ユニットを含む親水セグメントとを有するブロックポリマー化合物を顔料分散剤として使用する方法や(例えば特許文献3参照)、A−Bブロックポリマーであり、Aはスチレン、Bはアクリル酸であり、Aの重合度は約5から約50、Bの重合度は約70から約800である(An−Bm)ブロックポリマーを顔料分散剤として使用する方法が知られている(例えば特許文献4参照)。
一方、水性顔料分散体の課題の1つに、分散中に生じると考えられる粗大粒子を低減することが挙げられる。粗大粒子とは得られた水性顔料分散体の平均粒径と比較して粒径が非常に大きい粒子のことで、顔料の未分散物や、顔料が分散中に壊れ凝集したものや、あるいは顔料分散剤として使用するポリマーが凝集したものと推定されている。
粗大粒子はどの顔料でも発生しうるため、各色顔料毎に検討が行われている。例えば特許文献5では、イエロー顔料を使用した水性顔料分散体を得る方法として、アニオン性基を有する樹脂、イエロー顔料、及び塩基性化合物を含む混合物を混練し、固体もしくは半固体状の水性イエロー顔料分散液用混練物を得る方法が開示されている。
粗大粒子は、塗装や印刷時には均一な塗膜面の形成を阻害し、一方インクジェット記録用水性インクのようにインクをノズルから吐出し印字する方法においては、インクジェットヘッドのノズル目詰まりを引き起こす。特に近年のインクジェットプリンタの高解像度化に伴いインクジェットヘッドのノズルの高密度化及び液滴の微細化、即ちインクを吐出するノズル径の微細化、高集積化が進んでいる(例えば特許文献6参照)。ノズル径の微細化が進むと許容できる異物の大きさも小さくなるため、ノズルの目詰まりが増加し、即ち従来のインクジェットプリンタに適用できていたインクが、新たに開発された高解像度のインクジェットヘッドを搭載したプリンタには使用できないという問題が生じる。
前記特許文献1や特許文献5に記載の方法はインクジェット記録用水性インクの製造方法として優れた方法であるが、近年のノズル径の微細化、高集積化に対応したインクを提供するには未だ検討の余地がある。
特開平08−183920号公報 特開2007−238949号公報 特開2008−195769号公報 特開平10−7955号公報 特開2005−60411号公報 特開2013−993号公報
本発明の課題は、高解像度のインクジェットヘッドを搭載したプリンタにも適用可能な、粗大粒子が低減され吐出安定性に優れたインクジェット記録用水性インクを与えるイエロー顔料を使用した水性顔料分散体の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、特定の数平均分子量を有し、アニオン性基を有するが水への溶解度がとても低く、アニオン性基を塩基性化合物によって中和率100%としたとき微粒子を形成するポリマーを顔料分散剤として使用し、且つ分散時における塩基性化合物の添加のタイミングを特定のタイミングとすることで、上記課題を解決した。
即ち本発明は、アニオン性基を有し、水への溶解度が0.1g/100ml以下であり、且つ、前記アニオン性基の塩基性化合物による中和率を100%にしたときに水中で微粒子を形成する、数平均分子量が1000〜6000の範囲内であるポリマー(A)と、水溶性有機溶剤と、イエロー顔料とを含む固形分比率40質量%以上の実質的に水を含まない分散物を得る工程1と、前記分散物に塩基性化合物及び水を混合する工程2とをこの順で行う水性顔料分散体の製造方法を提供する。
また本発明は、前記製造方法により得た水性顔料分散体を使用するインクジェット記録用インクを提供する。
本発明により、粗大粒子が低減され吐出安定性に優れたインクジェット記録用水性インクを与えるイエロー顔料を使用した水性顔料分散体を得ることができる。
(ポリマー(A))
本発明で使用するポリマー(A)は、水への溶解度が0.1g/100ml以下であり、且つ、前記アニオン性基の塩基性化合物による中和率を100%にしたときに水中で微粒子を形成する、数平均分子量が1000〜6000の範囲内のポリマーである。
(水への溶解度)
本発明において、ポリマー(A)の水への溶解度は、次のように定義した。すなわち、目開き250μm、および90μmの篩を用い250μm〜90μmの範囲に粒径を整えたポリマー0.5gを、400メッシュ金網を加工した袋に封入し、水50mlに浸漬、25℃の温度下で24時間緩やかに攪拌放置した。24時間浸漬後、ポリマーを封入した400メッシュ金網を110℃に設定した乾燥機において2時間乾燥を行うことにより、乾燥させた。ポリマーを封入した400メッシュ金網の水浸漬前後の重量の変化を測定し、次式により溶解度を算出した。
Figure 0006579358
水への溶解度は、なかでも0.03g/100mlであることが好ましく、0.01g/100ml以下であることが好ましい。
前記アニオン性基の塩基性化合物による中和率を100%にしたときに水中で微粒子を形成する際の平均粒径は、中でも350nm以下であることが好ましく、400nm以下であることが好ましい。
(微粒子)
また、本発明において、アニオン性基の塩基性化合物による中和率を100%にしたときに水中で微粒子を形成するか否かは、次のように判断した。
(1)ポリマーの酸価を予め、JIS試験方法K 0070−1992に基づく酸価測定方法により測定する。具体的には、テトラヒドロフラン(以下THFと称する場合がある)溶媒にポリマー0.5gを溶解させ、フェノールフタレインを指示薬として、0.1M水酸化カリウムアルコール溶液で滴定し酸価を求める。
(2)水50mlに対して、ポリマーを1g添加後、得られた酸価を100%中和するだけの0.1mol/L水酸化カリウム水溶液を加え、100%中和とする。
(3)100%中和させた液を、25℃の温度下で、2時間超音波洗浄器(株式会社エスエヌディ超音波洗浄器US−102、38kHz自励発信)中で超音波を照射させた後24時間室温で放置する。
24時間放置後、液面から2センチメートルの深部にある液をサンプリングしたサンプル液を、動的光散乱式粒子径分布測定装置(日機装株式会社製動的光散乱式粒子径測定装置「マイクロトラック粒度分布計UPA−ST150」)を用い、微粒子形成による光散乱情報が得られるか判定することにより、微粒子が存在するか確認する。
(微粒子の粒径)
本発明で使用するポリマー(A)から得られる微粒子の粒径があまり大きいとポリマー(A)が水中で安定しないおそれがある。従ってポリマー(A)の粒径はあまり大きくないほうが好ましく、5〜1,000nmの範囲が好ましく、7〜700nmの範囲がなお好ましく、10〜500nmの範囲が最も好ましい。
また微粒子の粒度分布は狭いほうがより分散性に優れる傾向にあるが、粒度分布が広い場合の実施を妨げるものではない。
なお粒径、粒度分布も、前記微粒子の測定方法と同様に、動的光散乱式粒径分布測定装置(日機装株式会社製動的光散乱式粒子径測定装置「マイクロトラック粒度分布計UPA−ST150」)を用い測定を行った。
(ポリマー(A)の中和率)
本発明で使用するポリマー(A)の中和率は、以下の式により決定した。
Figure 0006579358
また、前記ポリマー(A)の酸価は、JIS試験方法K 0070−1992に基づいて測定した。具体的には、THF溶媒に試料0.5gを溶解させ、フェノールフタレインを指示薬として、0.1M水酸化カリウムアルコール溶液で滴定することにより求めた。
(ポリマー(A) 数平均分子量)
本発明で使用するポリマー(A)の数平均分子量は1000〜6000である。本発明の樹脂は前述のとおり水への溶解度が0.1g/100ml以下と低いため、あまり高い分子量のものは、塩基性化合物で中和された状態であっても水分散時において析出する可能性がある。また顔料凝集体への浸透性が弱くなり顔料の凝集体の解砕性が低くなる傾向にあり、顔料分散が容易に行うことが困難となる。
一方数平均分子量が1000に満たない場合、得られる水性顔料分散体の安定性が低下することがある。
この観点から、本願で使用するポリマー(A)は分子量が低いほうが好ましい。中でも数平均分子量が1300〜5000であることがなお好ましく、1500〜4500であることが最も好ましい。
本発明において数平均分子量は、GPC(ゲルパーミネーションクロマトグラフィー)によって測定されるポリスチレン換算の値とし、具体的には以下の条件で測定した値とする。
(数平均分子量(Mn)の測定方法)
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した。
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のTHF溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作製した。
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
(表面張力)
本発明で使用するポリマー(A)を含む水性樹脂分散体の表面張力が70dyn/cm近くと、水に近い表面張力を示すものがある。顔料分散剤の表面張力が高いほど、得られる顔料分散体の表面張力を一定以上に維持することが期待できる。一方、水に対する溶解性が高く、またアニオン性基の塩基性化合物による中和率を100%にしたときに微粒子を形成しないような、水に溶解するポリマーを用いた場合、ポリマーの水溶液の表面張力は非常に低くなる傾向にある。本発明においては、ポリマー(A)から得られる水性樹脂分散体の表面張力が30dyn/cm以上が好ましく、より好ましくはポリマー(A)の表面張力が40dyn/cm以上である。なお該表面張力は、ポリマー(A)を1g添加後、得られた酸価を100%中和するだけの0.1mol/L水酸化カリウム水溶液を加え、100%中和した樹脂溶液について測定した値である。
前記ポリマー(A)は、前述の通り顔料分散体の主媒体となる水に対し、未中和の状態では不溶もしくは難溶性であり、且つ100%中和された状態では微粒子を形成するポリマーであり、親水性基であるアニオン性基のほかに疎水性基を1分子中に有するポリマーであるならば、特に限定はされない。
このようなポリマーとして、疎水性基を有するポリマーブロックとアニオン性基を有するポリマーブロックとを有するブロックポリマーがあげられる。なおブロックポリマーであっても、水への溶解度が0.1g/100mlを上回ったり、前記アニオン性基の塩基性化合物による中和率を100%にしたときに微粒子を形成しないポリマーは、本発明の効果を得られない。
前記疎水性基と前記アニオン性基の数は、前記アニオン性基数があまりに多いと、水への溶解度が0.1g/100mlを上回ったり、前記アニオン性基の塩基性化合物による中和率を100%にしたときに微粒子を形成しない可能性が高くなる。この観点から、前記アニオン性基数はあまり高くないほうが好ましい。なおポリマーにおいて、前記アニオン性基の数と水への溶解度は、必ずしも酸価や、ポリマー設計時のアニオン性基の数で特定されるものではなく、例えば同一の酸価を有するポリマーであっても、分子量の低いものは水への溶解度が高くなる傾向にあり、分子量の高いものは水への溶解度は下がる傾向にある。このことから、本発明においては、ポリマー(A)を水への溶解度で特定している。
前記ポリマー(A)は、ホモポリマーでも良いが、共重合体であることが好ましく、ランダムポリマーであってもブロックポリマーであっても、交互ポリマーであっても良いが、中でもブロックポリマーであることが好ましい。また、ポリマーは分岐ポリマーであっても良いが、直鎖ポリマーであることが好ましい。
また、前記ポリマー(A)は設計の自由度からビニルポリマーであることが好ましく、本発明において所望される分子量や、溶解度特性を有するビニルポリマーを製造する方法としては、リビングラジカル重合、リビングカチオン重合、リビングアニオン重合といった、「リビング重合」を用いることにより製造することが好ましい。
中でも、前記ポリマー(A)は(メタ)アクリレートモノマーを原料の1つとして用い製造されるビニルポリマーであることが好ましく、そのようなビニルポリマーの製造方法としては、リビングラジカル重合、リビングアニオン重合が好ましく、さらにブロックポリマーの分子量や各セグメントをより精密に設計できる観点からリビングアニオン重合が好ましい。
(リビングアニオン重合によって製造される前記ポリマー(A))
リビングアニオン重合によって製造される前記ポリマー(A)は、具体的には、一般式(1)で表されるポリマーである。
Figure 0006579358


(1)
式(1)中、Aは有機リチウム開始剤残基を表し、Aは芳香環または複素環を有するモノマーのポリマーブロックを表し、Aはアニオン性基を含むポリマーブロックを表し、nは1〜5の整数を表し、Bは芳香族基またはアルキル基を表す。
一般式(1)中、Aは有機リチウム開始剤残基を表す。有機リチウム開始剤として具体的にはメチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム(n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、iso−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムなど)、ペンチルリチウム、へキシルリチウム、メトキシメチルリチウム、エトシキメチルリチウムなどのアルキルリチウム;ベンジルリチウム、α−メチルスチリルリチウム、1,1−ジフェニル−3−メチルペンチルリチウム、1,1−ジフェニルヘキシルリチウム、フェニルエチルリチウムなどのフェニルアルキレンリチウム;ビニルリチウム、アリルリチウム、プロペニルリチウム、ブテニルリチウムなどのアルケニルリチウム;エチニルリチウム、ブチニルリチウム、ペンチニルリチウム、ヘキシニルリチウムなどのアルキニルリチウム;フェニルリチウム、ナフチルリチウムなどのアリールリチウム;2−チエニルリチウム、4−ピリジルリチウム、2−キノリルリチウムなどのヘテロ環リチウム;トリ(n−ブチル)マグネシウムリチウム、トリメチルマグネシウムリチウムなどのアルキルリチウムマグネシウム錯体などが挙げられる。
有機リチウム開始剤は、有機基とリチウムとの結合が開裂し有機基側に活性末端が生じ、そこから重合が開始される。従って得られるポリマー末端には有機リチウム由来の有機基が結合している。本発明においては、該ポリマー末端に結合した有機リチウム由来の有機基を、有機リチウム開始剤残基と称する。例えばメチルリチウムを開始剤として使用したポリマーであれば、有機リチウム開始剤酸基はメチル基となり、ブチルリチウムを開始剤として使用したポリマーであれば、有機リチウム開始剤酸基はブチル基となる。
前記一般式(1)中、Aは疎水性基を有するポリマーブロックを表す。Aは、前述の通り適度な溶解性のバランスのバランスを取る目的の他、顔料と接触したときに顔料への吸着の高い基であることが好ましく、その観点から、Aは芳香環または複素環を有するモノマーのポリマーブロックであることが好ましい。
芳香環または複素環を有するモノマーのポリマーブロックとは、具体的には、スチレン系モノマー等の芳香族環を有するモノマーや、ビニルピリジン系モノマー等の複素環を有するモノマーを単独重合または共重合して得たホモポリマーまたはコポリマーのポリマーブロックである。
芳香環を有するモノマーとしては、スチレン、p−tert−ブチルジメチルシロキシスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、m−tert−ブトキシスチレン、p−tert−(1−エトキシメチル)スチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、p−フロロスチレン、α−メチルスチレン、p−メチル−α−メチルスチレン、などのスチレン系モノマーや、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどがあげられる。
また複素環を有するモノマーとしては、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンなどのビニルピリジン系モノマーがあげられる。
これらのモノマーは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
前記一般式(1)中、Aはアニオン性基を含むポリマーブロックを表す。Aは、前述の通り適度な溶解性を与える目的の他、顔料分散体となったときに水中で分散安定性を付与する目的がある。
前記ポリマーブロックAにおけるアニオン性基は、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基または燐酸基等があげられる。中でもカルボキシル基がその調製やモノマー品種の豊富さ入手し易さから好ましい。また2つのカルボキシル基が分子内または分子間において脱水縮合した酸無水基となっていてもよい。
前記Aのアニオン性基の導入方法は特に限定はなく、例えば該アニオン性基がカルボキシル基の場合は、(メタ)アクリル酸を単独重合もしくは他のモノマーと共重合させて得たホモポリマーまたはコポリマーのポリマーブロック(PB1)であってもよいし、脱保護をすることによりアニオン性基に再生可能な保護基を有する(メタ)アクリレートを単独重合もしくは他のモノマーと共重合させて得たホモポリマーまたはコポリマーの、該アニオン性基に再生可能な保護基の一部または全てがアニオン性基に再生されたポリマーブロック(PB2)であってもよい。
なお、前記ポリマーブロックAで使用する(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸とメタクリル酸の総称を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートとの総称を表す。
(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリレートとして具体的には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸iso−アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ラウリル、(メタ)アクリル酸n−トリデシル、(メタ)アクリル酸n−ステアリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4−tert−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタジエニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸テトラフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸ペンタフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸オクタフルオロペンチル、(メタ)アクリル酸ペンタデカフルオロオクチル、(メタ)アクリル酸ヘプタデカフルオロデシル、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリロニトリル、
ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール−ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリアルキレンオキサイド基含有(メタ)アクリレート等があげられる。これらのモノマーは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
リビングアニオン重合法においては、使用するモノマーがアニオン性基等の活性プロトンを持つ基を有するモノマーの場合、リビングアニオン重合ポリマーの活性末端が直ちにこれら活性プロトンを持つ基と反応し失活するため、ポリマーが得られない。リビングアニオン重合では活性プロトンを持つ基を有するモノマーをそのまま重合することは困難であるため、活性プロトンを持つ基を保護した状態で重合し、その後保護基を脱保護することで活性プロトンを持つ基を再生することが好ましい。
このような理由から、前記ポリマーブロックAにおいては、脱保護をすることによりアニオン性基に再生可能な保護基を有する(メタ)アクリレートを含むモノマーを用いることが好ましい。該モノマーを使用することで、重合時には前述の重合の阻害を防止できる。また保護基により保護されたアニオン性基は、ブロックポリマーを得た後に脱保護することにより、アニオン性基に再生することが可能である。
中でも、反応性の容易さから、脱保護をすることによりアニオン性基に再生可能な保護基を有するメタクリレートを含むモノマーが好ましい。
例えばアニオン性基がカルボキシル基の場合、カルボキシル基をエステル化し、後工程として加水分解等で脱保護することによりカルボキシル基を再生することができる。この場合のカルボキシル基に変換可能な保護基としてはエステル結合を有する基が好ましく、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基等の第1級アルコキシカルボニル基;イソプロポキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基等の第2級アルコキシカルボニル基;t−ブトキシカルボニル基等の第3級アルコキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル基等のフェニルアルコキシカルボニル基;エトキシエチルカルボニル基等のアルコキシアルキルカルボニル基などが挙げられる。
アニオン性基がカルボキシル基の場合、使用できるモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレート)、トリデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート(ステアリル(メタ)アクリレート)、ノナデシル(メタ)アクリレート、イコサニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等のフェニルアルキレン(メタ)アクリレート;エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリレート(c1)は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。また、これらの(メタ)アクリレート(c1)の中でも、t−ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートを用いると、カルボキシル基への変換反応が容易であることから好ましく、t−ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレートがより好ましい。また、工業的に入手のしやすさを考慮すると、t−ブチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
一般式(1)中、Bは芳香族基または炭素原子数1〜10のアルキル基を表す。またnは1〜5の整数を表す。
リビングアニオン重合法においては、(メタ)アクリレートモノマーを求核性の強いスチレン系ポリマーの活性末端に直接重合しようとした場合、カルボニル炭素への求核攻撃により、ポリマー化できない場合がある。このため、前記A1−A2に(メタ)アクリレートモノマーの重合を行う際には反応調整剤を使用し、求核性を調整した後、(メタ)アクリレートモノマーを重合することが行われる。一般式(1)におけるBは該反応調整剤に由来する基である。反応調整剤としては、具体的にはジフェニルエチレンやα−メチルスチレン、p−メチル−α−メチルスチレン等があげられる。
(マイクロリアクターを使用したリビングアニオン重合)
リビングアニオン重合法は、反応条件を整えることにより、従来のフリーラジカル重合で用いられるようなバッチ方式により実施できる他、マイクロリアクターによる連続的に重合する方法を挙げることもできる。マイクロリアクターは、重合開始剤とモノマーの混合性が良好であるため、反応が同時に開始し、温度が均一で重合速度を揃えることができるため、製造される重合体の分子量分布を狭くできる。また同時に、成長末端が安定であるためブロックの両成分が混じりあわないブロック共重合体を製造することが容易になる。また、反応温度の制御性が良好であるため副反応を抑えることが容易である。
マイクロリアクターを使用したリビングアニオン重合の一般的な方法を、マイクロリアクターの模式図である図1を参照しながら説明する。
第一のモノマーと重合を開始させる重合開始剤とを、それぞれチューブリアクターP1及びP2(図1中7及び8)から、複数の液体を混合可能な流路を備えるT字型マイクロミキサーM1(図1中1)に導入し、T字型マイクロミキサーM1内で、第一のモノマーをリビングアニオン重合し第一の重合体を形成する(工程1)。
次に、得られた第一の重合体をT字型マイクロミキサーM2(図1中2)に移動させ、同ミキサーM2内で、得られた重合体の成長末端を、チューブリアクターP3(図1中9)から導入された反応調整剤によりトラップし、反応調節を行う(工程2)。
なお、このとき反応調整剤の種類や使用量により、前記一般式(1)におけるnの数をコントロールすることが可能である。
次に、前記T字型マイクロミキサーM2内の反応調節を行った第一の重合体を、T字型マイクロミキサーM3(図1中3)に移動させ、同ミキサーM3内で、チューブリアクターP4から導入された第二のモノマーと、前記反応調節を行った第一の重合体とを、連続的にリビングアニオン重合を行う(工程3)。
その後メタノール等活性プロトンを有する化合物で反応をクエンチすることで、ブロック共重合体を製造する。
本発明の一般式(1)で表されるポリマー(A)を、前記マイクロリアクターで製造する場合は、前記第一のモノマーとして芳香環または複素環を有するモノマーを使用し、前記開始剤として有機リチウム開始剤により反応させることで、前記Aの芳香環または複素環を有するモノマーのポリマーブロック(該ポリマーブロックAの片末端には前記Aの有機リチウム開始剤残基である有機基が結合している)を得る。
次に、反応調整剤を使用して成長末端の反応性を調整した後、前記アニオン性基に再生可能な保護基を有する(メタ)アクリレートを含むモノマーを前記第二のモノマーとして反応させポリマーブロックを得る。
この後、加水分解等の脱保護反応によりアニオン性基に再生することにより、前記A即ちアニオン性基を含むポリマーブロックが得られる。
前記アニオン性基に再生可能な保護基のエステル結合を、加水分解等の脱保護反応によりアニオン性基に再生させる方法を詳細に述べる。
エステル結合の加水分解反応は、酸性条件下でも塩基性条件下でも進行するが、エステル結合を有する基によって条件がやや異なる。例えばエステル結合を有する基がメトキシカルボニル基等の第1級アルコキシカルボニル基又はイソプロポキシカルボニル基等の第2級アルコキシカルボニル基の場合は、塩基性条件下で加水分解を行うことでカルボキシル基を得ることができる。この際、塩基性条件下とする塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物などが挙げられる。
また、エステル結合を有する基が、t−ブトキシカルボニル基等の第3級アルコキシカルボニル基の場合は、酸性条件下で加水分解を行うことにより、カルボキシル基を得ることができる。この際、酸性条件下とする酸性化合物としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸;トリフルオロ酢酸等のブレステッド酸;トリメチルシリルトリフラート等のルイス酸などが挙げられる。t−ブトキシカルボニル基の酸性条件下で加水分解の反応条件については、例えば、「日本化学会編第5版 実験化学講座16 有機化合物の合成IV」に開示されている。
さらに、t−ブトキシカルボニル基をカルボキシル基に変換する方法として、上記の酸に代えて、陽イオン交換樹脂を用いた方法も挙げられる。前記陽イオン交換樹脂としては、例えば、ポリマー鎖の側鎖にカルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SOH)等の酸基を有する樹脂が挙げられる。これらの中でも、当該樹脂の側鎖にスルホ基を有する強酸性を示す陽イオン交換樹脂が、反応の進行を速くできることから好ましい。本発明で使用できる陽イオン交換樹脂の市販品としては、例えば、オルガノ株式会社製強酸性陽イオン交換樹脂「アンバーライト」等が挙げられる。この陽イオン交換樹脂の使用量は、効果的に加水分解できることから、前記一般式(1)で表されるポリマー100質量部に対し、5〜200質量部の範囲が好ましく、10〜100質量部の範囲がより好ましい。
また、エステル結合を有する基が、ベンジルオキシカルボニル基等のフェニルアルコキシカルボニル基の場合は、水素化還元反応を行うことにより、カルボキシル基に変換できる。この際、反応条件としては、室温下、酢酸パラジウム等のパラジウム触媒の存在下で、水素ガスを還元剤として用いて反応を行うことにより定量的にフェニルアルコキシカルボニル基をカルボキシル基に再生できる。
上記のように、エステル結合を有する基の種類によってカルボキシル基への変換の際の反応条件が異なるため、例えばAの原料としてt−ブチル(メタ)アクリレートとn−ブチル(メタ)アクリレートを用い共重合して得られたポリマーは、t−ブトキシカルボニル基とn−ブトキシカルボニル基とを有することになる。ここで、t−ブトキシカルボニル基が加水分解する酸性条件下では、n−ブトキシカルボニル基は加水分解しないことから、t−ブトキシカルボニル基のみを選択的に加水分解してカルボキシル基へ脱保護が可能となる。したがって、Aの原料モノマーであるアニオン性基に再生可能な保護基を有する(メタ)アクリレートを含むモノマーを適宜選択することにより親水ブロック(A)の酸価の調整が可能となる。
また、前記一般式(1)で表されるポリマー(A)において、ポリマーブロック(A)とポリマーブロック(A)は、明確に分離されている方が、得られる水性顔料分散体の安定性において有利である。ポリマーブロック(A)とポリマーブロック(A)のモル比A:Aは、100:10〜100:500の範囲が好ましい。Aの比率がAの100に対して10に満たない場合、顔料の分散安定性やインクジェット吐出時の吐出安定性に劣る傾向にある。一方Aの比率がAの100に対して500を超えると、ポリマーの親水性が高くなりすぎ、記録媒体が紙等の場合であると中へ浸透しやすくなり、発色性が低下する。比率は、中でも、A:A=100:10〜100:450であることが好ましい。
また、前記一般式(1)で表されるポリマー(A)において、ポリマーブロック(A)を構成する芳香環または複素環を有するモノマー数は5〜40の範囲が好ましく、6〜30の範囲がなお好ましく、7〜25の範囲が最も好ましい。またポリマーブロック(A)を構成するアニオン性基の数は、3〜20の範囲が好ましく、4〜17の範囲がなお好ましく、5〜15の範囲が最も好ましい。
前記ポリマーブロック(A)とポリマーブロック(A)のモル比A:Aを、ポリマーブロック(A)を構成する芳香環または複素環を有するモル数と、(A)を構成するアニオン性基のモル数のモル比で表した場合は100:7.5〜100:400が好ましい。
また、前記一般式(1)で表されるポリマー(A)の酸価は40〜400mgKOH/gが好ましく、より好ましくは40〜300mgKOH/gであり、最も好ましく40〜190mgKOH/gである。酸価が40mgKOH/gを満たない場合、顔料の分散安定性、インクジェット吐出時の吐出安定性が充分ではない可能性がある。一方酸価が400mgKOH/gを超える場合、ポリマーの親水性が高まり、記録媒体中へ浸透しやすくなるため発色性が低下する。また酸価が190mgKOH/gを超える場合、場合によっては得られるインクの耐水性に影響が生じる場合がある。
なお、本発明におけるポリマーの酸価は、前記ポリマー(A)の微粒子の測定方法と同様の酸価測定方法による酸価とした。
(中和剤 塩基性化合物)
本発明の製造方法で得られる水性顔料分散体中において、前記ポリマー(A)のアニオン性基は中和されていることが好ましい。
前記ポリマー(A)のアニオン性基を中和する塩基性化合物としては、公知慣用のものがいずれも使用出来、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物等の無機塩基性物質や、アンモニア、トリエチルアミン、アルカノールアミンの様な有機塩基性化合物を用いることが出来る。
本発明においては、水性顔料分散体中に存在する前記ポリマー(A)の中和量は、ポリマーの酸価に対して100%中和されている必要はない。具体的には、前記ポリマー(A)の中和率が20%〜200%になるように中和されることが好ましく、80%〜150%がなお好ましい。
(顔料)
本発明で使用するイエロー顔料は、カラーインデックスNo.において、ピグメントイエローに分類されるものをの中から、有機系の顔料を示すものとする。具体的な例としては、下記の顔料を挙げることができる。
アントラピリミジン系顔料;C.I.ピグメント イエロー108等、
フラバンスロン系顔料;C.I.ピグメント イエロー24等、
アントラキノン系顔料;C.I.ピグメント イエロー196等、
ペリノン系顔料;C.I.ピグメント イエロー196等、
キノフタロン系顔料;C.I.ピグメント イエロー138等、
イソインドリン系顔料;C.I.ピグメント イエロー139、C.I.ピグメント イエロー185等、
イソインドリノン系顔料;C.I.ピグメント イエロー109、C.I.ピグメント イエロー110、C.I.ピグメント イエロー173、C.I.ピグメント イエロー185等、
アゾメチン系顔料;C.I.ピグメント イエロー101、C.I.ピグメント イエロー129等
不溶性アゾ顔料としては、C.I.ピグメント イエロー120、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメント イエロー154、C.I.ピグメント イエロー175、C.I.ピグメント イエロー180、C.I.ピグメントイエロー181 、C.I.ピグメント イエロー1、C.I.ピグメント イエロー65、C.I.ピグメント イエロー73、C.I.ピグメント イエロー74、C.I.ピグメント イエロー116 、C.I.ピグメント イエロー12、C.I.ピグメント イエロー13、C.I.ピグメント イエロー17、C.I.ピグメント イエロー81、C.I.ピグメント イエロー83、C.I.ピグメント イエロー155、C.I.ピグメント イエロー214 、C.I.ピグメント イエロー128等の、モノアゾ及びジスアゾ顔料が含まれる。
顔料は粉末状、顆粒状あるいは塊状の乾燥顔料でも良く、ウェットケーキやスラリーでも良い。特に好適に使用できるのは、色調等の点から、不溶性アゾ顔料である。中でも、C.I.ピグメント イエロー74、C.I.ピグメント イエロー120、C.I.ピグメント イエロー128、C.I.ピグメント イエロー155、 C.I.ピグメント イエロー180の中から選ばれる顔料が更に好ましい。
(水溶性有機溶剤)
本発明で使用する水溶性有機溶剤は、工程1においてイエロー顔料の表面を濡らしたリ、イエロー顔料とポリマー(A)とのなじみを促進させる目的で添加する。また得られる水性顔料分散体をインクジェット記録用インクの原料として使用する際に、インク特定に影響せず、好ましくはインクの乾燥防止剤として適用されるような、沸点が100℃以上の高沸点の水溶性有機溶剤が好ましく、高沸点、低揮発性で、高表面張力の多価アルコール類が好ましく、特にジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール類が好ましい。グリコール類は一般的にインク組成物に含まれている場合が多く、最終製品中に残留しても問題がない。
好ましい水溶性有機溶剤としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのグリコール類;ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、およびこれらと同族のジオールなどのジオール類;ラウリン酸プロピレングリコールなどのグリコールエステル;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを含むセロソルブなどのグリコールエーテル類;スルホラン;γ−ブチロラクトンなどのラクトン類;N−(2−ヒドロキシエチル)ピロリドン、2−ヒドロキシピロリドン、N−メチルピロリドンなどのラクタム類;グリセリン、グリセリンのエチレンオキサイド付加物、グリセリンのプロピレンオキサイド付加物等のグリセリンのアルキレンオキサイド付加物等、水溶性有機溶剤として知られる他の各種の溶剤などを挙げることができる。これらの水溶性有機溶剤は1種又は2種以上混合して用いることができる。
(水)
本発明で使用する水は、最終的に得られる顔料の分散媒である。水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、または超純水を用いることができる。また水は単独で使用してもよいし、水と水溶性溶剤からなる混合溶媒でもよい。水溶性溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、等のケトン類;メタノール、エタノール、2−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ブタノール、2−メトキシエタノール、等のアルコール類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、好ましい水溶性有機溶剤として前述した多価アルコール類等が挙げられる。これら水溶性有機溶剤は1種または2種以上混合して用いることができる。
(水性顔料分散体の製造方法)
本発明において、水性顔料分散体とは、インク化する前の顔料が分散媒である水に高濃度に分散された水性顔料分散体を指す。
水性顔料分散体の顔料濃度は通常10〜50質量%となるように調整してある。これを使用してインク化する際は、所望するインク用途や物性に応じて、適宜水、あるいは添加剤を添加して、顔料濃度を0.1〜20質量%となるように希釈するのみで、インクを得ることができる。
本発明の水性顔料分散体の製造方法は、前記ポリマー(A)と、水溶性有機溶剤と、イエロー顔料とを含む実質的に水を含まない固形分比率40質量%以上の分散物を得る工程1と、前記分散物に塩基性化合物及び水を混合する工程2とをこの順で行うことが特徴である。
実質的に水を含まないとは具体的には、水を全く含まないか、含んでもごく少量、具体的には3質量%以上とならないように含むことであり、より好ましくは水は2質量%未満であることが好ましい。
一般に、顔料分散剤として使用されるアニオン性基を有するポリマーは、顔料と分散させる際に、あらかじめ中和させておいたり、顔料と同時に塩基性化合物を仕込むことが多い。中和が不十分の場合、アニオン性基を有するポリマーの水への溶解性が不十分となり、ポリマーそのものが析出する恐れや、得られる水性顔料分散体の保存安定性が低下する恐れがある。特に本願で使用するポリマー(A)は水への溶解性が非常に低いことから、ポリマー(A)が析出し分離や沈殿が発生するおそれがあり、前述の通り、本発明の製造方法で得られる水性顔料分散体中において、前記ポリマー(A)のアニオン性基は中和されていることが好ましい。
一方、本願で使用するイエロー顔料は、塩基性化合物により溶解する。特に色調等の点から好ましく使用される不溶性アゾ顔料はその傾向が強く、この結果、分散中に再結晶が生じる可能性があることが分かった。再結晶化は分散時の温度により促進され、再結晶化が進むと粗大粒子の大きな原因となる。
本願では、前記ポリマー(A)を中和せずに、即ち塩基性化合物の不存在下でイエロー顔料と水溶性有機溶剤を仕込み、実質的に水を含まない状態で分散を開始し、イエロー顔料とポリマー(A)とを十分なじませた後(工程1)、塩基性化合物と水とを加え混合する(工程2)ことで、イエロー顔料の過度な再結晶化を抑制しながら良好な分散が行えることを見出した。
前記工程1で、ポリマー(A)を中和せずに仕込み顔料を分散させることで、ポリマーの顔料への吸着性が向上し、水性顔料分散体の安定性を高めることができる。
本願に使用するイエロー顔料は疎水性が非常に強い。この様な顔料に、ポリマー(A)を効果的に吸着させるにはポリマー(A)の疎水性を高め、疎水性相互作用を最大化させる必要がある。塩基性化合物を不存在下で分散を行うことで、ポリマー(A)上に発生する極性の高いイオン性基による電荷反発を最小化できるため、ポリマー(A)の顔料への吸着性が向上するものと考えられる。
更に、前記工程2で塩基性化合物と水とを加えることで、良好な水性顔料分散体を得ることができる。
本願で使用するポリマー(A)は疎水基と親水基が分離されたブロック型の構造をしている。親水部がランダム構造とは異なり高密度化されているため、一つの親水基が中和され、水和されると、隣接する親水基も中和されやすい環境になると推定される。この様に、酸基の中和反応が逐次的に進行するため水への親和性が高まると推定され、一般に使用されるポリマーで懸念される析出や沈殿の恐れが無く、良好な水性顔料分散体を得ることができる。
(工程1)
本発明の工程1における固形分比率は、40質量%以上とすることが好ましい。本願の製造方法においてはポリマー(A)は中和されていないため疎水度が非常に高く、媒体として働く水溶性有機溶剤中でより顔料に吸着しやすいが、固形分比率を高くすることでその率がより高くなることが期待できる。また工程1における分散方法としては、より固形分比率の高い混合物を分散するのに適した混練分散法が好ましい。混練分散法に適した装置としては、例えばロールミル、ヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、インテンシブミキサー、バンバリーミキサー、プラネタリーミキサーが挙げられる。
混練分散法で工程(1)を行う場合は、混練装置中に、前記ポリマー(A)と、水溶性有機溶剤と、顔料とを仕込み混練を行う。このときの仕込み順序には特に限定はなく全量を同時に仕込んで混練を開始してもよいし、各々を少量ずつ仕込んでもよいし、各々の原料の仕込み量は前述の範囲で行うことができる。
混練分散法のメリットである強い剪断力を混合物に与えるためには、該混合物の固形分比率が高い状態で混練するほうが好ましく、より高い剪断力を該混合物に加えることができる。固形分比率は50質量%以上がなお好ましい。
前記強い剪断力で混練分散を行う際には分散物に熱がかかる。しかし本発明においては前記ポリマー(A)を中和せずに仕込むため、分散時に温度のかかる工程1において、分散物温度が100度付近に達しても顔料の結晶成長を抑制しつつ分散させることができる。
工程1における分散物の温度は60〜110度が好ましく、70〜100度が更に好ましい。分散物の温度が60度を下回ると樹脂の溶解度が低下するため分散不良となる可能性がある。一方110度を超えると顔料の溶剤による結晶成長が起きる可能性があり、その結果粗大粒子が増大する可能性がある。
また、得られる水性顔料分散体の顔料濃度を高濃度とするために、前記混合物中の顔料量はなるべく多くすることが好ましい。例えば、前記混合物全量に対して35質量%以上とすることが好ましく、40質量%以上であることがなお好ましい。
また、顔料とポリマー(A)との含有比率は、特に限定はないが、例えば前記ポリマー(A)は、顔料100質量部に対し、5〜200質量部配合することが好ましく、より好ましくは5〜100質量部である。
なお、水溶性有機溶剤は、通常は仕込みの混合物中に10〜50質量%、好ましくは20〜40質量%配合される。その添加量は、ポリマー(A)量の1/2〜10倍程度であり、好ましくはポリマー(A)量の1〜5倍程度である。水溶性有機溶剤の量がポリマー(A)量の1/2未満では樹脂を溶解、部分溶解、又は膨潤させることができず、イエロー顔料の分散安定性が低下するおそれがある。また10倍を超えると混練用混合物粘度が低下し、十分な混練が行えないため、イエロー顔料の分散性が低下し、インク組成物において、吐出不良等の画質低下を生じさせるおそれがある。
また、水溶性有機溶剤はイエロー顔料に対して、顔料100質量部に対し、20〜200質量部配合することが好ましく、より好ましくは30〜200質量部である。20質量部未満では混練初期にイエロー顔料の表面を充分に濡らすことができないおそれがある。
また、イエロー顔料の再結晶化は、前述の通り分散時の温度によっても促進される。従って分散時の温度はイエロー顔料の再結晶化が著しく促進されない温度範囲内で行うことが好ましく、具体的には、前記イエロー顔料の粒径変化率が2.0倍以下となる温度域で行うことが好ましい。粒径変化率は、イエロー顔料の1次粒子径を1としたときの加温による粒径の変化率で判断すればよい。例えばイエロー74は、本実施例によると、1次粒子径が14nmであり、65℃における粒径は22nmであり、95℃における粒径は26nmとなる。このように、温度に従って粒径は増大していることから、イエロー74の粒径変化率が2.0倍以下となる温度は110℃以下、ということがわかる。なおこの時の粒径は、XRD(小角X線散乱)での2θ=11.8deg.のピークから算出した値とする。
(工程2)
前記工程1で得た前記分散物に、塩基性化合物及び水を混合する。このとき塩基性化合物は100%純正物を添加してもよいが、発熱等の恐れがあることから水溶液を使用することが好ましい。また予め仕込み量の水と塩基性化合物とを加えておいてもよい。塩基性化合物は、前記ポリマー(A)の中和率が20%〜200%になるように使用することが好ましく、中和率が80%〜150%となるように使用することがなお好ましい。このときの中和率は、前述の通り次の式で算出される。
Figure 0006579358
前記工程2において、塩基性化合物及び水を混合する際は、塩基性化合物及び水の混合物中に前記分散物を加えても良いが、逆に前記分散物中に塩基性化合物及び水の混合物を加えるほうが、均一な粒子径の水性顔料分散体が得られる点で好ましい。
塩基性化合物及び水の混合物を混合する方法は特に限定はないが、一度に添加して混合することは、時として均一な水性顔料分散体が得られない可能性があるので、少量ずつに分けて添加し混合することが好ましい。また通常は分散機を使用して分散させる。
工程2で使用する分散機は、公知のものを用いることができ、例えば、メディアを用いたものではペイントシェーカー、ボールミル、アトライター、バスケットミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、スパイクミル、アジテーターミルなどを挙げられる。またメディアを用いないものとしては、超音波ホモジナイザー、ナノマイザー、デゾルバー、ディスパー、高速インペラー分散機などがあげられる。なお分散後に必要に応じて水溶性溶剤で濃度調整を行っても良い。
なお、用いる分散機などの種類によっては、分散機で水分散を行う前に、必要に応じて前記分散物に更に水溶性有機溶剤を添加し、混合、希釈して、前記分散機で処理するのに適した粘度に調整すると好ましい(以下、この粘度調整されたものを粘度調整物と呼ぶ場合がある)。例えばサンドミルを用いる時には、固形分濃度で10〜40質量%となる様に希釈し、数十〜数百センチポイズの粘度に調整した後にサンドミルを駆動させて分散を行うと好ましい。
また工程2の水分散化を行った後、必要に応じて遠心分離や濾過工程をいれてもよい。
なお本願においては、該工程2により、転相乳化あるいはその類似機構により水を媒体とする水性顔料分散体を形成する。
本願の工程(1)と工程(2)とをこの順に経ることで、粗大粒子が低減された水性顔料分散体を得ることができる。
またこのようにして得られた水性顔料分散体は、顔料がポリマー(A)に内包あるいは一部吸着して安定化していると推定される。
(インクジェット記録用水性インク)
本発明の水性顔料分散体は、所望の濃度に希釈して、自動車や建材用の塗料分野や、オフセットインキ、グラビアインキ、フレキソインキ、シルクスクリーンインキ等の印刷インキ分野、あるいはインクジェット記録用水性インク分野等様々な用途に使用することができる。なかでも、粗大粒子が低減されていることから、インクジェット記録用水性インクとして特に好ましく使用できる。
本発明の水性顔料分散体をインクジェット記録用水性インクに適用する場合は、更に水、バインダー樹脂等を加え、所望の物性を得るために、必要に応じて湿潤剤(乾燥抑止剤)、浸透剤、あるいはその他の添加剤を添加して調製する。
インクの調整後に、遠心分離あるいは濾過処理工程を加えてもよい。
(湿潤剤)
前記湿潤剤は、インクの乾燥防止を目的として添加する。乾燥防止を目的とする湿潤剤のインク中の含有量は3〜50質量%であることが好ましい。
本発明で使用する湿潤剤としては特に限定はないが、水との混和性がありインクジェットプリンターのヘッドの目詰まり防止効果が得られるものが好ましい。例えば;グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール、スルホラン;γ−ブチロラクトンなどのラクトン類;N−(2−ヒドロキシエチル)ピロリドンなどのラクタム類;グリセリンおよびその誘導体などが挙げられる。中でも、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオールを含むことが安全性を有し、かつインク乾燥性、吐出性能に優れた効果が見られる。
(浸透剤)
前記浸透剤は、被記録媒体への浸透性改良や記録媒体上でのドット径調整を目的として添加する。
浸透剤としては、例えばエタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、エチレングリコールヘキシルエーテルやジエチレングリコールブチルエーテル等のアルキルアルコールのエチレンオキシド付加物やプロピレングリコールプロピルエーテル等のアルキルアルコールのプロピレンオキシド付加物等が挙げられる。
インク中の浸透剤の含有量は0.01〜10質量%であることが好ましい。
(界面活性剤)
前記界面活性剤は、表面張力等のインク特性を調整するために添加する。このために添加することのできる界面活性剤は特に限定されるものではなく、各種のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられ、これらの中では、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩及びスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等が挙げられ、これらの具体例として、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸塩、モノブチルフェニルフェノールモノスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、ジブチルフェニルフェノールジスルホン酸塩などを挙げることができる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、脂肪酸アルキロールアミド、アルキルアルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー、等を挙げることができ、これらの中では、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマーが好ましい。中でも、HLBが7〜20の範囲であるものは、溶解安定性に優れ好ましい。
その他の界面活性剤として、ポリシロキサンオキシエチレン付加物のようなシリコーン系界面活性剤;パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテルのようなフッ素系界面活性剤;スピクリスポール酸、ラムノリピド、リゾレシチンのようなバイオサーファクタント等も使用することができる。
これらの界面活性剤は、単独で用いることもでき、又2種類以上を混合して用いることもできる。界面活性剤を添加する場合その添加量はインクの全質量に対し、0.001〜2質量%の範囲が好ましく、0.001〜1.5質量%であることがより好ましく、0.01〜1質量%の範囲であることがさらに好ましい。界面活性剤の添加量が0.001質量%未満の場合は、界面活性剤添加の効果が得られない傾向にあり、2質量%を超えて用いると、画像が滲むなどの問題を生じやすくなる。
また、必要に応じて防腐剤、粘度調整剤、pH調整剤、キレート化剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。
なお、前記工程1で使用する水溶性有機溶剤には、例えば湿潤剤や浸透剤としての機能を果たすものがある。このような機能を有する水溶性有機溶剤を前記工程1で使用している場合は、その量を調整しながら加えることが好ましい。
前記インクジェット記録用水性インクに占める顔料量は、充分な画像濃度を得る必要性と、インク中での顔料の分散安定性を確保するために、0.1〜20質量%であることが好ましい。
(記録媒体)
インクジェット記録用水性インクの記録媒体としては特に限定はなく、複写機で一般的に使用されているコピー用紙(PPC紙)等の吸収性の記録媒体、インクの吸収層を有する記録媒体、インクの吸収性を有しない非吸水性の記録媒体、インクの吸水性の低い難吸収性の記録媒体などがありうる。本発明のインクジェット記録用水性インクは、特に吸収層を有する記録媒体、非吸水性の記録媒体、難吸収性の記録媒体に記録した際に、発色性が良好という特徴も有する。
吸収性の記録媒体の例としては、例えば普通紙、布帛、ダンボール、木材等があげられる。また吸収層を有する記録媒体の例としては、インクジェット専用紙等があげられ、この具体例としては、例えば、株式会社ピクトリコのピクトリコプロ・フォトペーパー等が挙げられる。
インクの吸収性を有しない非吸水性の記録媒体の例には、例えば食品用の包装材料に使用されているもの等を使用することができ、公知のプラスチックフィルムが使用できる。具体例としては、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、ナイロン等のポリアミド系フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリ乳酸フィルム等が挙げられる。特にポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリアミド系フィルムが好ましく、さらにポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ナイロンが好ましい。またバリア性を付与するためのポリ塩化ビニリデン等のコーティングをした上記フィルムでもよいし、必要に応じてアルミニウム等の金属、あるいはシリカやアルミナ等の金属酸化物の蒸着層を積層したフィルムを併用してもよい。
前記プラスチックフィルムは、未延伸フィルムであってもよいが、1軸もしくは2軸方向に延伸されたものでも良い。さらにフィルムの表面は、未処理であってもよいが、コロナ放電処理、オゾン処理、低温プラズマ処理、フレーム処理、グロー放電処理等、接着性を向上させるための各種処理を施したものが好ましい。
前記プラスチックフィルムの膜厚は用途に応じて適宜変更されるが、例えば軟包装用途である場合は、柔軟性と耐久性、耐カール性を有しているものとして、膜厚が10μm〜100μmであることが好ましい。より好ましくは10μm〜30μmである。この具体例としては、東洋紡株式会社のパイレン(登録商標)などが挙げられる。
インクの吸水性の低い難吸収性の記録媒体には、印刷本紙などのアート紙、コート紙、軽量コート紙、微塗工紙などが使用できる。これら難吸収性の記録媒体は、セルロースを主体とした一般に表面処理されていない上質紙や中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものであり、王子製紙(株)製の「OKエバーライトコート」及び日本製紙(株)製の「オーロラS」等の微塗工紙、王子製紙(株)製の「OKコートL」及び日本製紙(株)製の「オーロラL」等の軽量コート紙(A3)、王子製紙(株)製の「OKトップコート+」及び日本製紙(株)製の「オーロラコート」等のコート紙(A2、B2)、王子製紙(株)製の「OK金藤+」及び三菱製紙(株)製の「特菱アート」等のアート紙(A1)等が挙げられる。
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の例において「部」及び「%」は特に断りがない限り質量基準である。
(ポリマー(A)の合成例)
(合成例1)
重合開始剤としてn-ブチルリチウム(BuLi)と第一のモノマーとしてスチレン(St)とを図1におけるチューブリアクターP1及びP2とから、図1におけるT字型マイクロミキサーM1に導入し、リビングアニオン重合させ重合体を形成させた。
次に、得られた重合体を図1におけるチューブリアクターR1を通じて図1におけるT字型マイクロミキサーM2に移動させ、該重合体の成長末端を、図1におけるチューブリアクターP3から導入した反応調整剤(1,1−ジフェニルエチレン(DPE))によりトラップした。
次いで、第二のモノマーとしてメタクリル酸tert−ブチルエステル(t−BMA)を図1に示すチューブリアクターP4からT字型マイクロミキサーM3に導入し、図1におけるチューブリアクターR2を通じて移動させた前記重合体と、連続的なリビングアニオン重合反応を行った。その後メタノールで反応をクエンチしてブロック共重合体(PA−1)を製造した。
この際、マイクロリアクター全体を恒温槽に埋没させることで、反応温度を24℃に設定した。また、マイクロリアクターに導入するモノマーおよび反応調整剤はテトラヒドロフラン(THF)で溶解し、またBuLiは市販の2.6Mヘキサン溶液をヘキサンで希釈し、その希釈濃度及び導入速度により、ブロック共重合体(PA−1)のmol比を以下の通り調整した。
ブロック共重合体(PA−1)のmol比
重合開始剤/第一モノマー/反応調整剤/第二モノマー=1.0/13.5/1.0/7.5
得られたブロック共重合体(PA−1)は、陽イオン交換樹脂で処理することでt−BMAブロックのt−ブトキシカルボニル基を加水分解し、カルボキシル基に再生した。反応溶液を減圧下で留去し、得られた固体を粉砕して、ポリマー(A)としてポリマー(P−1)の粉体を得た。
なお、得られたポリマー(A)の数平均分子量、酸価、水への溶解度、中和率100%時の微粒子の有無/平均粒径(nm)、表面張力(mN/m)は後述の表に示した。
(合成例2〜6)
合成例1と同様の方法で、モノマー種類・導入量等を調節してポリマー(P−2)、(P−6)、(P−7)、(P−9)、(P−12)を製造した。
(合成例7)
重合開始剤としてBuLiと第一のモノマーとしてStとを図1におけるチューブリアクターP1及びP2とから、図1におけるT字型マイクロミキサーM1に導入し、リビングアニオン重合させ重合体を形成させた。
次に、得られた重合体を図1におけるチューブリアクターR1を通じて図1におけるT字型マイクロミキサーM2に移動させ、該重合体の成長末端を、図1におけるチューブリアクターP3から導入した反応調整剤(α−メチルスチレン(α−MeSt))によりトラップした。
次いで、第二のモノマーとしてt−BMAを図1に示すチューブリアクターP4からT字型マイクロミキサーM3に導入し、図1におけるチューブリアクターR2を通じて移動させた前記重合体と、連続的なリビングアニオン重合反応を行った。その後メタノールで反応をクエンチしてブロック共重合体(PA−13)を製造した。
この際、マイクロリアクター全体を恒温槽に埋没させることで、反応温度を24℃に設定した。また、マイクロリアクターに導入するモノマーおよび反応調整剤はTHFで溶解し、またBuLiは市販の2.6Mヘキサン溶液をヘキサンで希釈し、その希釈濃度及び導入速度により、ブロック共重合体(PA−13)のmol比を以下の通り調整した。
ブロック共重合体(PA−13)のmol比
重合開始剤/第一モノマー/反応調整剤/第二モノマー=1.0/12.0/1.3/8.1
得られたブロック共重合体(PA−13)は、陽イオン交換樹脂で処理することで加水分解させ、反応溶液を減圧下で留去し、得られた固体を粉砕して、ポリマー(P−13)の粉体を得た。
(合成例8)
合成例7と同様の方法で、モノマー種類・導入量等を調節してポリマー(P−14)を製造した。
(比較合成例1 比較例用ポリマー(PH−1)の合成例)
(ランダムポリマーの調整方法)
撹拌装置、滴下装置、還流装置を有する反応容器にメチルエチルケトン100部を仕込み、撹拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら加温しメチルエチルケトンの還流状態とした後、滴下装置からSt74部、アクリル酸11部、メタクリル酸15部および重合開始剤(和光純薬工業社製/「V−75」)8部の混合液を2時間かけて滴下した。なお滴下の途中より反応系の温度を80℃に保った。
滴下終了後、同温度でさらに25時間反応を続けた。なお、反応の途中において、原料の消費状況を確認しながら、適宜、重合開始剤を追加した。反応終了後、メチルエチルケトンを減圧下で留去し、得られた固体を粉砕して、ポリマー(PH−1)の粉体を得た。
ポリマー(PH−1)の数平均分子量は5255、重量平均分子量は9000で、酸価は185mgKOH/gであった。
(ポリマーの物性値の測定方法)
得られた各ポリマー(A)の物性値は以下のように測定した。
(数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)の測定方法)
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した。
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のTHF溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作製した。
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
(酸価の測定方法)
JIS試験方法K 0070−1992に準拠して測定した。THF溶媒に試料0.5gを溶解させ、フェノールフタレインを指示薬として、0.1M水酸化カリウムアルコール溶液で滴定することにより求めた。
(水への溶解度の測定方法)
目開き250μm、および90μmの篩を用い250μm〜90μmの範囲に粒径を整えたポリマー0.5gを、400メッシュ金網を加工した袋に封入し、水50mlに浸漬、25℃の温度下で24時間緩やかに攪拌放置した。24時間浸漬後、ポリマーを封入した400メッシュ金網を110℃に設定した乾燥機において2時間乾燥を行うことにより、乾燥させた。ポリマーを封入した400メッシュ金網の水浸漬前後の重量の変化を測定し、次式により溶解度を算出した。
Figure 0006579358

(水中での微粒子形成の判断方法、および平均粒径(nm)の測定方法))
(1)前記酸価の測定方法に従い、ポリマーの酸価を求める。
(2)水50mlに対して、ポリマーを1g添加後、上記(1)で得たポリマーの酸価を100%中和するだけの0.1mol/L水酸化カリウム水溶液を加え、100%中和とする。
(3)100%中和させた液を、25℃の温度下で、2時間超音波洗浄機(株式会社エスエヌディ超音波洗浄器US−102、38kHz自励発信)中で超音波を照射し分散させた後、24時間室温で放置する。
24時間放置後、液面から2センチメートルの深部にある液をサンプリングしたサンプル液を、日機装株式会社製動的光散乱式粒子径測定装置「マイクロトラック粒度分布計UPA−ST150」を用い、微粒子形成による光散乱情報が得られるか判定することにより、微粒子が存在するか確認した。
同時に、平均粒径を測定した。
(表面張力の測定方法)
前記水中での微粒子形成の判断方法で得たサンプル液と同様のサンプル液を、ウィルヘルミ表面張力計を用い測定した値とした。
前記合成例、比較合成例で得られたポリマーの原料、反応条件、物性値を表に示す。
Figure 0006579358


Figure 0006579358

Figure 0006579358
表1〜表4中、
BuLiはノルマルブチルリチウムを表し、
Stはスチレンを表し、
DPEは1,1−ジフェニルエチレンを表し、
αMeStはαメチルスチレンを表し、
tBMAはメタクリル酸tert−ブチルエステルを表し、
nBMAはメタクリル酸n−ブチルエステルを表す。
(実施例 水性顔料分散体の製造方法)
(製法A)
表4に記載の実施例1の組成を例として説明する。
顔料としてFast Yellow7413(山陽色素製:Pigment Yellow 74))を150部、粉砕した樹脂にトリエチレングリコールを添加・攪拌し、30%トリエチレングリコール溶液としたポリマー(P−1)溶液を100部(P−1として30部)、水溶性有機溶剤としてトリエチレングリコールを50部を1.0Lのインテンシブミキサー(日本アイリッヒ株式会社)に仕込み、ローター周速2.94m/s、パン周速1m/sで、25分間混練を行う工程1を行った。また工程1は、最高到達温度が110℃を超えないように行った。
続いて、インテンシブミキサー容器内の混練物に、撹拌を継続しながら、34%水酸化カリウム水溶液を、100%中和率になるよう12.8部加えた後、更に30分間攪拌した後、イオン交換水687部を徐々に加え混合する工程2を行い、顔料濃度は15.0%の水性顔料分散体を得た。
同様の方法にて、実施例2〜8の水性顔料分散体を得た。
(製法B)
表4に記載の実施例9の組成を例として説明する。
顔料としてFast Yellow7413(山陽色素製:Pigment Yellow 74))を150部、粉砕した樹脂にトリエチレングリコールを添加・攪拌し、30%トリエチレングリコール溶液としたポリマー(P−13)溶液を100部(P−13として30部)、水溶性有機溶剤としてトリエチレングリコールを50部を1.0Lのインテンシブミキサー(日本アイリッヒ株式会社)に仕込み、ローター周速2.94m/s、パン周速1m/sで、25分間混練を行う工程1を行った。また工程1は、最高到達温度が110℃を超えるように行った。
続いて、インテンシブミキサー容器内の混練物に、撹拌を継続しながら、34%水酸化カリウム水溶液を、100%中和率になるよう12.8部加えた後、更に30分間攪拌した後、イオン交換水687部を徐々に加え混合する工程2を行い、顔料濃度は15.0%の水性顔料分散体を得た。
同様の方法にて、実施例10の水性顔料分散体を得た。
(製法C)
表5に記載の比較例1の組成を例として説明する。
顔料としてFast Yellow7413(山陽色素製:Pigment Yellow 74))を150部、粉砕した樹脂にトリエチレングリコールを添加・攪拌し、30%トリエチレングリコール溶液としたポリマー(PH−1)溶液を100部(PH−1として30部)、水溶性有機溶剤としてトリエチレングリコールを50部を1.0Lのインテンシブミキサー(日本アイリッヒ株式会社)に仕込み、ローター周速2.94m/s、パン周速1m/sで、25分間混練を行う工程1を行った。また工程1は、最高到達温度が110℃を超えないように行った。
続いて、インテンシブミキサー容器内の混練物に、撹拌を継続しながら、34%水酸化カリウム水溶液を、100%中和率になるよう16.3部加えた後、更に30分間攪拌した後、イオン交換水687部を徐々に加え混合する工程2を行い、顔料濃度は15.0%の水性顔料分散体を得た。
(製法D)
表5に記載の比較例2の組成を例として説明する。
顔料としてFast Yellow7413(山陽色素製:Pigment Yellow 74))を150部、粉砕した樹脂にトリエチレングリコールを添加・攪拌し、30%トリエチレングリコール溶液としたポリマー(P−1)溶液を100部(P−13として30部)、水溶性有機溶剤としてトリエチレングリコールを50部、34%水酸化カリウム水溶液を100%中和率になるように12.8部を、1.0Lのインテンシブミキサー(日本アイリッヒ株式会社)に仕込み、ローター周速2.94m/s、パン周速1m/sで、25分間混練を行う工程1を行った。また工程1は、最高到達温度が110℃を超えるように行った。
続いて、インテンシブミキサー容器内の混練物に、撹拌を継続しながら、イオン交換水687部を徐々に加え混合する工程2を行い、顔料濃度は15.0%の水性顔料分散体を得た。
同様の方法にて、比較例3の水性顔料分散体を得た。
(評価方法)
前記得られた水性顔料分散体は、以下の項目を測定して評価を行った。
<体積平均粒径>
作製した水性顔料分散体を5000倍に希釈し、マイクロトラックUPA−150(日機装社製)で測定を行った。測定値は3度測定した平均値を取った。
判定基準
○:体積平均粒径が100nm未満
△:体積平均粒径が100nm〜120nm未満
×:体積平均粒径が120nm以上
<粗大粒子数>
作製した水性顔料分散体を250倍に希釈し、アキュサイザー780APS(インターナショナル・ビジネス社製)にて測定を行った。粗大粒子数は希釈前の水性顔料分散液1ml当たりの粒子数に換算した。表中の粒子数には(×10個/ml)の単位を用いている。×10個/ml
判定基準
○:0.5um以上の粗大粒子数50×10個/ml未満
△:0.5um以上の粗大粒子数50〜100×10個/ml未満
×:0.5um以上の粗大粒子数100×10個/ml以上
<吐出性・発色性>
インクジェットの吐出特性および印刷物の印字濃度を測定するために、作製した水性顔料分散体を用いて、以下の評価用インクジェット記録用水性インクを作製した。
水性顔料分散体は最終的な顔料濃度が5質量%となるように、全量が100部の以下の配合において、作製した水性顔料分散体の顔料濃度に合わせて調整した。
水性顔料分散液 約5部(顔料分として)
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 8部
2−ピロリドン 8部
グリセリン 3部
サーフィノール440(エアープロダクツジャパン製) 0.5部
純水 残量
作製した各インクジェット記録用水性インクをインクジェットプリンター(EPSON社製EM−930C)を用いて試験した。インクをカートリッジに充填後ノズルチェックパターンを印刷した。更に単色モードで、ピクトリコプロ・フォトペーパー(株式会社ピクトリコ製)、並びにOKトップコート+(王子製紙株式会社製)にA4用紙1枚の340cmの範囲に印刷濃度設定100%の印刷をした後に、再度ノズルチェックテストパターンを印刷し、試験前後のノズルの状態を比較し、ノズル欠けが増加するかどうかをチェックし、吐出性の評価とした。
判定基準
○:ノズル欠け数 ゼロ
△:ノズル欠け増加 10%未満
×:ノズル欠け増加 10%以上
Figure 0006579358



Figure 0006579358

表中、略語は以下の通りである。
PY74:ピグメントイエロー74
KOH:水酸化カリウム水溶液
TEG:トリエチレングリコール
水:イオン交換水
この結果、一般式(1)で表されるポリマー(A)を使用した実施例1〜実施例10は、いずれも、体積平均粒径は小さく、粗大粒子数は少なく、吐出性に優れた顔料分散体及びインクが得られた。
一方、比較例1は使用するポリマーとして、ランダムポリマーを使用した例であるが、体積平均粒径は大きく、粗大粒子数は多く、吐出性は不良であった。また比較例2、3は、工程1で塩基性化合物を配合した例であるが、体積平均粒径、粗大粒子数は中程度であったが、吐出性が不良であった。
本発明で使用するマイクロリアクターの模式図である。
1:T字型マイクロミキサーM1
2:T字型マイクロミキサーM2
3:T字型マイクロミキサーM3
4:チューブリアクターR1
5:チューブリアクターR2
6:チューブリアクターR3
7:プレクーリングの為のチューブリアクターP1
8:プレクーリングの為のチューブリアクターP2
9:プレクーリングの為のチューブリアクターP3
10:プレクーリングの為のチューブリアクターP4

Claims (3)

  1. アニオン性基を有し、水への溶解度が0.1g/100ml以下であり、且つ、数平均分子量が1000〜6000の範囲内で酸価が40〜300mgKOH/gの範囲内である一般式(1)で表されるポリマー(A)と、水溶性有機溶剤と、イエロー顔料とを含む固形分比率40質量%以上の実質的に水を含まない分散物を得る工程1と、前記分散物に塩基性化合物及び水を混合する工程2とをこの順で行うことを特徴とする水性顔料分散体の製造方法。
    Figure 0006579358
    (1)
    (式(1)中、Aは有機リチウム開始剤残基を表し、Aスチレン系モノマーのポリマーブロックを表し、Aカルボキシル基を含むポリマーブロックを表し、nは1〜5の整数を表し、Bはフェニル基またはメチル基を表す。)
  2. 前記イエロー顔料が不溶性アゾ顔料である請求項1に記載の水性顔料分散体の製造方法。
  3. 前記工程1において、前記イエロー顔料の粒径変化率が1.8倍以下となる温度域で行う請求項1または2に記載の水性顔料分散体の製造方法。
JP2015056178A 2015-03-19 2015-03-19 水性顔料分散体の製造方法及びインクジェット記録用インク Active JP6579358B2 (ja)

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