本発明に係るタンクの気密検査方法、並びにタンクの気密検査方法を実行するための気密検査システムについて以下説明する。
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態において用いられる気密検査システム1000を概略的に示す説明図である。気密検査システム1000は、第1の気密検査装置100Aと、第2の気密検査装置100Bと、ヒートパイプ80と、制御部90と、を備える。気密検査システム1000は、第1の気密検査装置100Aによる第1のタンクTAの気密検査と、第2の気密検査装置100Bによる第2のタンクTBの気密検査とを並行して行う。第1の気密検査装置100Aと第2の気密検査装置100Bとは、同一の構成であり、それぞれ、単独でも用いることができる。以下、第1の気密検査装置100Aと第2の気密検査装置100Bとを区別するときには、それぞれの構成要素の符号にも、末尾に「A」,「B」を付すものとする。一方、第1の気密検査装置100Aと第2の気密検査装置100Bとを区別しないときには、双方を単に「気密検査装置100」と呼び、構成要素の符号についても、末尾の「A」,「B」を省略する。同様に、第1のタンクTAと第2のタンクTBとを区別するときには、それぞれの構成要素等の符号にも、末尾に「A」,「B」を付し、第1のタンクTAと第2のタンクTBとを区別しないときには、双方を単に「タンクT」と呼び、構成要素の符号についても、末尾の「A」,「B」を省略する。
タンクTは、ガスが収容されるタンク本体TSと、ガスの充填口となる第1の口金部B1と、ヒートパイプ80が接続される第2の口金部B2と、を備える。
気密検査装置100は、検査チャンバ10と、検査用ガス供給部20と、検査用ガス検出器30と、を備える。
検査チャンバ10は、内部に検査対象となるタンクTを収容可能な略直方体形状の金属製筐体である。検査チャンバ10は、タンクTを搬入・搬出するための開口部、開口部に配置され開口部を開放または閉塞するための扉有している。扉および開口部の少なくともいずれか一方にはシール部が配置されており、扉が開口部を閉じている際には、検査チャンバ10は密閉される。検査チャンバ10内に収容されたタンクTには、第1の口金部B1の近傍に、温度センサ72および圧力センサ74が設置される。検査チャンバ10は、チャンバ内圧力調整器(不図示)を備え、検査チャンバ内圧力は、所定の真空度に調整されうる。
検査用ガス供給部20は、検査用ガス貯蔵器、検査用ガス供給ポンプ、希釈用ガス貯蔵器、希釈用ガス供給ポンプ、および気化器等(不図示)を備え、制御部90に制御されてタンクTに希釈用ガスによって所定の濃度に希釈された検査用ガスを供給する。タンクTに対して検査用ガスを充填する際には、圧力センサ74により検出される圧力が、予め定められたタンク圧力、例えば、80Mpaとなるまで充填を継続する。
本実施形態においては、検査用ガスとして希釈ヘリウムガスが用いられる。希釈用ガスとしては窒素ガスが用いられる。検査用ガスは、第1のガス配管40を介してタンクTに充填される。気密検査終了後、タンクTに充填された検査用ガスは、第1のガス配管40から分岐して設けられた第2のガス配管50を介して大気中に放出される。なお、大気中に放出される代わりに、検査に再度用いるために回収されてもよい。第2のガス配管50には、放出弁52が設けられ、タンクT内の圧力(圧力センサ74により検出)が異常に高くなったときや、検査終了後に、制御部90に制御され、開弁される。
検査用ガス検出器30は、検査用ポンプによって検査用ガス配管60を介して検査チャンバ10内の気体を吸引し、吸引した気体中における検査用ガスのリーク量(ml/h)を検出する。本実施形態においては希釈ヘリウムガスが用いられるため、検出されたリーク量に対して換算処理を行った上で、100%ヘリウムガスを用いた場合のリーク量が求められる。
ヒートパイプ80は、金属の管中に揮発性の液体を封入した伝熱部材であり、第1のタンクTAの第2の口金部B2Aと、第2のタンクTBの第2の口金部B2Bとに接続され、第1のタンクTAと第2のタンクTBとを、熱的に接続する。伝熱部材として、ヒートパイプ80に代えて、熱伝導率の高い金属(例えば、銅等)柱を用いてもよい。
制御部90は、予め用意されたプログラムに従って、気密検査システム1000の各部を制御する。制御部90は、検査用ガス供給部20および放出弁52を制御して、タンクTに対する検査用ガスの充填、放出のタイミングを制御する。また、制御部90は、検査用ガス検出器30を制御して、検査用ガスのリーク量を検出させ、検出結果を受信する。本実施形態において、制御部90は、温度センサ72、圧力センサ74による検出結果を受信し、受信結果に基づいて、検査用ガス供給部20および放出弁52を制御する。また、制御部90は、検査用ガス検出器30による測定結果に基づいて、タンクTの気密検査合否判定を行い、判定結果を、表示部(不図示)に表示させる。制御部90は、温度センサ72、圧力センサ74による検出結果、検査用ガス検出器30による測定結果を、表示部に表示させてもよい。
図2は、気密検査装置100において行われる気密検査の工程を示す工程図である。気密検査システム1000における第1の気密検査装置100Aおよび第2の気密検査装置100Bそれぞれにおいて、図2に示す工程が行われる。
ステップS101では、作業者が、検査チャンバ10内にタンクTを搬入する。ステップS102では、作業者が、第1のガス配管40を第1の口金部B1に接続する。ステップS103では、作業者が操作部(不図示)を介して制御部90にガスパージの指示を入力すると、制御部90は、放出弁52を開弁すると共に、検査用ガス供給部20を制御して、窒素ガスを用いてタンクT内ガスのパージを行う。制御部90は所定の時間、パージを行うと、検査用ガス供給部20による窒素ガスの供給を停止すると共に、放出弁52を閉弁する。ステップS104では、作業者が、ヒートパイプ80を第2の口金部B2に接続し、検査チャンバ10の扉を閉めて検査チャンバ10を密閉状態とし、チャンバ内の圧力を所定の真空度に調整する。図2に示すステップS101〜104を、タンクの設置処理(ステップS210)とも呼ぶ。
ステップS105では、制御部90は、検査用ガス供給部20を制御して、希釈ヘリウムガスのタンクTへの充填を開始する。制御部90は、圧力センサ74により検出されるタンクT内の圧力が80MPaとなるまで充填を実行する。なお、タンクTへの検査用ガスの充填圧力は、任意に設定可能である。
ステップS106では、制御部90によって制御され、検査用ガス検出器30は、検査用ガスのリーク量(ml/h)の測定を行い、測定結果を制御部90に送信する。制御部90は、受信した測定結果に基づいて、対象タンクの気密検査の合否を判定する(リーク判定とも呼ぶ)。具体的には、タンクTに対する検査用ガスの充填が完了すると、制御部90は、タンクTの温度および圧力が安定するまで待機したのち、検査用ガス検出器30による測定を行わせる。安定待機は、予め実験的に求められた安定に要する時間待機するようにしてもよいし、温度センサ72によって検出されるタンクTの温度または温度の変化率が所定値以下になるまで待機するようにしてもよい。なお、タンクTの温度に代えてタンクTの圧力の変化率を参照しても良い。本実施形態においては検査用ガスとして希釈ヘリウムガスが用いられているので、ヘリウム濃度100%への換算、時間当たりへの換算、並びに、検査体積の検査チャンバ10の容積への換算を経て、判定に用いられるリーク量が得られる。制御部90は、これらの換算結果(リーク量)を用いて、気密検査の合否を判定する。例えば、リーク量<5ml/h/Lの場合、対象タンクは気密検査に合格と判定する。
ステップS107では、制御部90は、放出弁52を開弁させて、タンクT内の検査用ガスを放出させる。タンクT内の検査用ガスは、第1のガス配管40および第2のガス配管50を介して、大気中に放出される。圧力センサ74によって検出されるタンクT内の圧力値が0kPaになると、制御部90は、放出弁52を閉弁させる。なお、圧力センサ74から制御部90が受信したタンクT内の圧力値は、制御部90に接続された表示部(不図示)に表示される。
ステップS108では、作業者は、表示部を見てタンクT内の圧力値が0kPaになったことを確認した後、検査チャンバ10の扉を開けて、ヒートパイプ80を第2の口金部B2から取り外す。ステップS109では、作業者は、検査チャンバ10内からタンクTを搬出し、検査対象の1基のタンクTに対する気密検査が完了する。図2に示すステップS108〜109を、タンクの搬出処理(ステップS220)とも呼ぶ。図2に示すステップS101〜109を、気密検査装置100において行われる気密検査処理(ステップS100(n)(nは1以上の整数))とも呼ぶ。ここで、ステップS100に(n)を付したのは、後に詳述するように、本実施形態の気密検査システム1000では、n基の第1のタンクTA(気密検査対象タンク)を、第1の気密検査装置100Aで検査すると共に、n基の第2のタンクTB(気密検査対象タンク)を、第2の気密検査装置100Bで検査するため、各気密検査装置100において、ステップS100がn回繰り返されるためである。n回繰り返されるステップS100の各回を区別するために、(n)を付している。なお、各回を区別しない場合には、単にステップS100と呼ぶ。気密検査システム1000において、第1の気密検査装置100Aにおける気密検査(ステップS100A)と、第2の気密検査装置100Bにおける気密検査(ステップS100B)は、並行して実行される。
図3は、気密検査システム1000において行われる気密検査の工程を示す工程図である。図3において、左のラインは、第1の気密検査装置100Aにおける工程を示し、右のラインは第2の気密検査装置100Bにおける工程を示す。なお、図3は、n=2の例を示している。
作業者は、第1の気密検査装置100Aにおいて、第1のタンクTA(1)を設置し(ステップS210A)、第2の気密検査装置100Bにおいて、第2のタンクTB(1)を設置する(ステップS210B)。これらのタンクの設置処理において、ヒートパイプ80の一端が第1のタンクTA(1)の第2の口金部B2A(1)に取付けられると共に、ヒートパイプ80の他端が第2のタンクTB(1)の第2の口金部B2B(1)に取付けられ、第1のタンクTA(1)と第2のタンクTB(1)とが熱的に接続される。
制御部90は、まず、第1の気密検査装置100Aにおいて、検査用ガス充填処理(ステップS105A)を行い、第1のタンクTA(1)のリーク量を測定して合否判定を行う(ステップS106A)。
その後、制御部90は、第1の気密検査装置100Aにおける検査用ガス放出処理(ステップS107A)と、第2の気密検査装置100Bにおける検査用ガス充填処理(ステップS105B)を、同時に開始する。このとき、第1のタンクTA(1)と第2のタンクTB(1)とは、ヒートパイプ80によって熱的に接続されているため、第1のタンクTA(1)と第2のタンクTB(1)との間で熱交換が行われる。第2のタンクTB(1)では、検査用ガスの充填時に、ガスの断熱圧縮に伴い、タンク内温度が上昇する。一方、第1のタンクTA(1)では、検査用ガスの放出時に、ガスの断熱膨張に伴いタンク内温度が低下する。すなわち、ヒートパイプ80によって熱的に接続されている第1のタンクTA(1)と第2のタンクTB(1)とに温度勾配が生じるため、第2のタンクTB(1)から第1のタンクTA(1)に熱が移動する。そのため、第1のタンクTA(1)においては、検査用ガスの放出に伴うタンク内温度の低下が抑制され、第2のタンクTB(1)においては、検査用ガスの充填に伴うタンク内温度の上昇が抑制される。本実施形態におけるステップS107AとステップS105Bとを同時に行う工程を、「充填放出工程」とも呼ぶ。
制御部90は、第2のタンクTB(1)内の温度および圧力が安定するまで待機した後、第2の気密検査装置100Bの検査用ガス検出器30Bにリーク量の測定を実行させ、第2のタンクTB(1)の気密検査合否判定を行う(ステップS106B)。
作業者は、第2のタンクTB(1)の気密検査合否判定(ステップS106B)が終了すると、第1の気密検査装置100Aの検査チャンバ10Aの扉を開け、第1のタンクTA(1)の第2の口金部B2A(1)に接続されたヒートパイプ80を取り外し、第1のタンクTA(1)を検査チャンバ10Aから搬出する(ステップS220A)。これにより、第1の気密検査装置100Aにおける第1のタンクTA(1)に対する気密検査(ステップS100A(1))が終了する。例えば、第2のタンクTB(1)の気密検査合否判定の終了を、表示部に表示したり、音声、ビープ音等の音で報知するように構成されてもよい。このようにすると、作業者は、第2のタンクTB(1)の気密検査合否判定の終了を容易に認識することができる。以下に説明する第1のタンクTA(2)の気密検査合否判定の終了についても同様である。
作業者は、第1のタンクTA(1)の搬出が完了すると(ステップS100A(1)のステップS220A)、代わりに、第1のタンクTA(1)とは別の(2基めの)第1のタンクTA(2)を、第1の気密検査装置100Aに設置する(ステップS210A)。上述の通り、ヒートパイプ80の他端は第2のタンクTB(1)の第1の口金部B1B(1)に取付けられており(ステップS100B(1)におけるステップS104B)、ステップS210Aにおいて、ヒートパイプ80の一端が第1のタンクTA(2)の第1の口金部B1A(2)に取付けられると(ステップS104A)、第1のタンクTA(2)と第2のタンクTB(1)とが熱的に接続される。
制御部90は、第1の気密検査装置100Aにおける第1のタンクTA(2)に対する検査用ガス充填処理(ステップS105A)と、第2の気密検査装置100Bにおける第2のタンクTB(1)に対する検査用ガス放出処理(ステップS107B)を、同時に開始する。このとき、第1のタンクTA(2)と第2のタンクTB(1)とは、ヒートパイプ80によって熱的に接続されているため、第1のタンクTA(1)と第2のタンクTB(1)との間で熱交換が行われる。第1のタンクTA(2)では、検査用ガスの充填時に、ガスの断熱圧縮に伴い、タンク内温度が上昇する。一方、第2のタンクTB(1)では、検査用ガスの放出時に、ガスの断熱膨張に伴いタンク内温度が低下する。すなわち、ヒートパイプ80によって熱的に接続されている第1のタンクTA(2)と第2のタンクTB(1)とに温度勾配が生じるため、第1のタンクTA(2)から第2のタンクTB(1)に熱が移動する。そのため、第2のタンクTB(1)においては、検査用ガスの放出に伴うタンク内温度の低下が抑制され、第1のタンクTA(2)においては、検査用ガスの充填に伴うタンク内温度の上昇が抑制される。本実施形態におけるステップS105AとステップS107Bとを同時に行う工程を、「充填放出工程」とも呼ぶ。
制御部90は、第1のタンクTA(2)内の温度および圧力が安定するまで待機した後、第1の気密検査装置100Aの検査用ガス検出器30Aにリーク量の測定を実行させ、2基めの第1のタンクTA(2)の気密検査合否判定を行う(ステップS106A)。
作業者は、2基めの第1のタンクTA(2)の気密検査合否判定(ステップS106A)が終了すると、第2の気密検査装置100Bの検査チャンバ10Bの扉を開け、第2のタンクTB(1)の第2の口金部B2B(1)に接続されたヒートパイプ80を取り外し、第2のタンクTB(1)を検査チャンバ10Bから搬出する(ステップS220B)。これにより、第2の気密検査装置100Bにおける1基めの第2のタンクTB(1)に対する気密検査(ステップS100B(1))が終了する。
作業者は、第2のタンクTB(1)の搬出が完了すると(ステップS100B(1)のステップS220B)、代わりに、第2のタンクTB(1)とは別の(2基めの)第2のタンクTB(2)を、第2の気密検査装置100Bに設置する(ステップS100B(2)のステップS210B)。その後、制御部90が、1基めの第2のタンクTB(1)に対する処理と同様に、2基めの第2のタンクTB(2)に対してステップS105B〜107Bを実行し、作業者がステップS220Bを実行して、第2の気密検査装置100Bにおける第2のタンクTB(2)に対する気密検査(ステップS100B(2))が終了する。
制御部90は、第2の気密検査装置100Bにおける第2のタンクTB(2)に対する気密検査(ステップS100B(2))における検査用ガス充填処理(ステップS105B)の開始と同時に、第1の気密検査装置100Aにおける第1のタンクTA(2)に対する気密検査(ステップS100A(2))における検査用ガス放出処理(ステップS107A)を開始する。これにより、上述と同様に、第1のタンクTA(2)におけるタンク内温度の低下が抑制されると共に、第2のタンクTB(2)におけるタンク内温度の上昇が抑制される。
作業者は、2基めの第2のタンクTB(2)の気密検査合否判定(ステップS100B(2)のステップS106B)が終了すると、第1の気密検査装置100Aの検査チャンバ10Aの扉を開け、第1のタンクTA(2)の第2の口金部B2A(2)に接続されたヒートパイプ80を取り外し、第1のタンクTA(2)を検査チャンバ10Aから搬出する(ステップS220A)。これにより、第1の気密検査装置100Aにおける2基めの第1のタンクTA(2)に対する気密検査(ステップS100A(2))が終了する。
第1の気密検査装置100Aにおける2基めの第1のタンクTA(2)に対する気密検査(ステップS100A(2))と、第2の気密検査装置100Bにおける2基めの第2のタンクTB(2)に対する気密検査(ステップS100B(2))の両方が終了すると、気密検査システム1000におけるタンクの気密検査が終了する。図3に示した例では、第1の気密検査装置100Aにおいて2基の第1のタンクTA、第2の気密検査装置100Bにおいて2基の第2のタンクTBの気密検査を実施しており、合計4基のタンクTの気密検査を実行している。
気密検査システム1000におけるタンクの気密検査において、1基めの第1のタンクTA(1)に対する検査用ガスの充填処理(ステップS100A(1)のステップS105A)は、従来通り、検査チャンバ10A内の気体との熱交換により、タンク内温度が所定の範囲内に収まる程度の低速で行われる。同様に、2基めの第2のタンクTB(2)に対する検査ガスの放出処理(ステップS100B(2)のステップS107B)も、従来通り、検査チャンバ10A内の気体との熱交換により、タンク内温度が所定の範囲内に収まる程度の低速で行われる。すなわち、ステップS100A(2)のステップS105A、ステップS100B(1)のステップS105B、ステップS100B(2)のステップS105Bにおける検査用ガスの充填速度は、ステップS100A(1)のステップS105Aにおける検査用ガスの充填速度より早い。また、ステップS100A(1)のステップS107A、ステップS100A(2)のステップS107A、ステップS100B(1)のステップS107Bにおける検査用ガスの放出速度は、ステップS100B(2)のステップS107Bにおける検査用ガスの放出速度より早い。
本実施形態において、気密検査システム1000が制御部90を備える構成を例示したが、気密検査システム1000は制御部90を備えない構成にしてもよい。例えば、検査用ガス供給部20、検査用ガス検出器30、放出弁52等を作業者が操作することにより、ステップS103,105,106,107の処理を実行させてもよい。
以上説明したように、本実施形態のタンクの気密検査方法によれば、検査対象となる2基のタンクT(第1のタンクTAと第2のタンクTB)がヒートパイプ80を介して熱的に接続され、一方のタンクTの検査ガスの放出と、他方のタンクTの検査ガスの充填が同時に開始される。そのため、タンクTの検査ガスの放出と、他方のタンクTの検査ガスの充填が同時に行われている間は、両タンクT間で熱交換が行われる。その結果、検査ガスの放出が行われるタンクTにおいては、タンク内温度の低下が抑制され、検査ガスの充填が行われるタンクTにおいては、タンク内温度の上昇が抑制される。
タンクの気密性検査において、タンク内の温度が、所定の範囲に収まるようにタンクに対する検査用ガスの充填、放出を行うことが望ましい。タンク内の温度の上限は、日本国内においては法令で定められており、例えば、85℃である。タンク内温度の下限は、例えば、製品性能から定められる。本実施形態では、タンク内温度の下限は、タンクの割れの発生が起こらない温度の下限を用いて定められており、例えば、−60℃である。なお、タンク内温度の上下限値は、本実施形態に限定されず、適宜設定することができる。例えば、法定の上限温度よりも低い温度を設定してもよい。
従来、タンクの気密性検査に要する時間の短縮要請がある。タンクの気密性検査に要する時間の短縮は、タンクに対する検査用ガスの充填、放出速度を上げることで実現できる。しかしながら、検査用ガスの充填、放出速度を上げる(単位時間当たりの流量を増加する)と、タンク内温度が急激に上昇、低下して、タンク内温度が所定の範囲内に収まらないおそれがある。これに対し、本実施形態のタンクの気密検査方法では、上述の通り、検査ガスの放出が行われるタンクTにおいては、タンク内温度の低下が抑制され、検査ガスの充填が行われるタンクTにおいては、タンク内温度の上昇が抑制される。そのため、検査用ガスの充填、放出速度を上げても、タンク内の温度を所定の温度範囲内に収めることが可能となる。その結果、タンクの気密性検査に要する時間を短縮することができる。なお、検査用ガスの充填、放出速度は、タンク内温度の許容範囲、検査用ガスの温度、検査チャンバ10内の温度、タンクの容量、検査用ガスの種類等に基づいて適切に定めることができる。
B.第2実施形態:
図4は、第2実施形態において用いられる気密検査システム2000を概略的に示す説明図である。気密検査システム2000は、検査用ガス分配部200と、第1の気密検査システム部1100Aと、第2の気密検査システム部1100Bと、を備える。気密検査システム2000は、第1の気密検査システム部1100Aによる2基のタンクTの気密検査と、第2の気密検査システム部1100Bによる2基のタンクTの気密検査とを並行して行う。第1の気密検査システム部1100Aと第2の気密検査システム部1100Bとは、同一の構成である。以下、第1の気密検査システム部1100Aと第2の気密検査システム部1100Bとを区別しないときには、双方を単に「気密検査システム部1100」と呼び、末尾の符号「A」,「B」を省略する。本実施形態における気密検査システム2000は、第1実施形態において用いられる気密検査システム1000における制御部90と同様の制御部を備えるが、気密検査システム2000の構成を明瞭に示すため、制御部および信号線の図示を省略している。
気密検査システム部1100は、第1実施形態において用いられた気密検査システム1000と、第1の検査用ガス供給部20Aと、第2の検査用ガス供給部20Bと、制御部90と、を備えない点で異なるものの、他の構成は同一である。そのため、同一の符号を用いて、その説明を省略する。気密検査システム部1100の第1のガス配管40は、検査用ガス分配部200に接続されている。
検査用ガス分配部200は、第1実施形態において用いられた検査用ガス供給部20と、一端が検査用ガス供給部20に接続され、他端が4本に分岐された分配配管44と、を備える。分配配管44の各分岐管上には、それぞれ、開閉弁42A、42Bが設けられている。本実施形態において用いられる気密検査システム2000では、検査対象の4基のタンクTに対して、検査用ガス分配部200から検査用ガスが供給される。検査用ガス分配部200は、制御部(不図示)に制御されて、開閉弁42A、開閉弁42Bの開閉を行うことにより、各タンクTへの検査用ガスの供給を行う。
本実施形態では、第1の気密検査システム部1100A、第2の気密検査システム部1100B、それぞれにおいて、図3に示した気密検査工程を同時に実行する。具体的には、第1の気密検査システム部1100Aにおいて、第1のタンクTAに対して、図3の左のラインの工程を実行し、第2のタンクTBに対して図3の右のラインの工程を実行する。第2の気密検査システム部1100Bにおいても同様である。気密検査システム2000において、図3に示す気密検査が終了すると、8基のタンクTの気密検査が完了する。本実施形態においても、第1実施形態と同様に、気密検査システム2000が制御部を備えない構成にしてもよい。例えば、検査用ガス分配部200に設けられたガス供給用のボタンを作業者が操作することにより、検査用ガス供給部20を制御すると共に、開閉弁42A、42Bを開閉してステップS103,105の処理を実行させてもよい。また、検査用ガス検出器30、放出弁52等を作業者が操作することにより、ステップS106,107の処理を実行させてもよい。
以上説明したように、気密検査システム2000を用いても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。気密検査システム2000を用いると、4基のタンクTの気密検査を並行して進めることができるため、気密検査に要する時間をさらに短縮することができる。また、1つの検査用ガス供給部20を用いて、検査用ガスを4基のタンクTに分配するため、検査用ガス供給部20を複数備える構成と比較して、気密検査システムを安価に構成することができる。
C.変形例:
この発明は上記の実施形態や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
(1)上記実施形態において、一方のタンクTにおける検査用ガスの放出と、他方のタンクTにおける検査用ガスの充填とを同時に開始する例を示したが、同時に開始しなくてもよい。一方のタンクTにおける検査用ガスの放出と、他方のタンクTにおける検査用ガスの充填とが所定の時間同時に行われればよい。所定の時間は、タンク内温度が所定の範囲内に収まるように、例えば、実験的(シミュレーションを含む)に予め定めることができる。一方のタンクTにおける検査用ガスの放出と、他方のタンクTにおける検査用ガスの充填とが所定の時間同時に行われれば、例えば、一方のタンクTにおける検査用ガスの放出を開始した後に、他方のタンクTにおける検査用ガスの充填を開始してもよい。逆に、一方のタンクTにおける検査用ガスの充填を開始した後に、他方のタンクTにおける検査用ガスの放出を開始してもよい。
(2)上記実施形態において、検査対象の1基のタンクTに対する気密検査処理(ステップS100)が、各気密検査装置において2回繰り返される例を示して説明したが、1回でもよいし、3回以上行ってもよい。検査対象のタンクTの数に応じて、適宜変更可能である。
(3)上記第1実施形態において、2基のタンクTの気密検査を並行して行える気密検査システム1000、上記第2実施形態において、4基のタンクTの気密検査を並行して行える気密検査システム2000を例示したが、気密検査システムの構成は、上記実施形態に限定されない。例えば、気密検査システム1000(制御部90を除く)を複数備える気密検査システムを構成してもよい。この場合、複数の気密検査システム1000を制御する制御部を備えてもよい。また、気密検査システム2000における気密検査システム部1100を、3以上備える構成にしてもよい。その場合、検査用ガス分配部200における分岐管の本数を、気密検査システム部1100の台数に合わせればよい。
(4)上記実施形態では、いわゆるベルジャー法を例示したが、スニッファー法、加圧積分法によって気密検査を実施する場合にも、上記のように、2つのタンクを熱的に接続し、一方のタンクへの検査用ガスの充填と、他方のタンクからの検査用ガスの放出とを所定の時間同時に行うことにより、タンク内温度を調整することができるため、検査用ガスの充填と放出に要する時間を短縮することができる。
(5)上記実施形態では、伝熱部材としてのヒートパイプ80によって、第1のタンクTAと第2のタンクTBとを熱的に接続しているが、第1のタンクTAと第2のタンクTBとを熱的に接続する方法は、上記実施形態に限定されない。例えば、第1のタンクTAの第2の口金部B2Aと第2のタンクTBの第2の口金部B2Bとを接触させてもよい。第2の口金部B2として熱伝導率の高い材料を採用すると、第1のタンクTAと第2のタンクTBとの間で容易に熱交換を行わせることができる。
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。たとえば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。