食器棚の中には、例えば図5に示すように、上方側に茶碗や皿などの食器収納部A、下方側に電子レンジや電気炊飯器、電気ポットなどの調理器具収納部Bが設けられ、それらを上下方向に仕切る中板5の前端部5a部分にレール部材2を設け、該レール部材2を介して、上記食器収納部Aの前部にガラス製その他の構成の引戸1A,1Bを設けたものがある(特許文献1の図10を参照)。この場合、調理器具収納部Bは、前面側が開放されている。
一方、レール部材2は、例えば図6に示すように、断面V状のレール溝2a,2bを備えたフラットなレール部2Aと、該レール部2Aの後端部側に一体に設けられた断面鉤状のレール部材取り付部2Bとからなり、レール部2Aの前端部(前端面)aの下端から上記レール部材取り付け部2Bの下端(レール部材後端部の下端)bまでの下面部分2Cは、上記レール部2Aの上面と平行なフラット面となっている。
そして、該レール部材2は、上記レール部材2後端部の下端側から上記レール部2Aの垂直方向上方に延びる上記レール部材取り付け部2Bの縦壁部21および同縦壁部21の上端から水平方向後方に伸びる上片部22を、上記食器棚側の中板5の前端部(前端面および上面)5aに対して衝合し、上記上片部22に設けたビス穴7,7・・・を介して木ネジ4,4・・・で締結固定することによって中板5の前端部に取り付けられている(第1の従来例として、特許文献1の図11の構成を参照)。
ところが、以上のような食器棚の場合、上記中板5は合板等木製部材であるのが通常であり、その下面部分は、電気炊飯器等の調理器具から出る蒸気によって加湿され、損傷されやすい。また、結露を生じ、カビ等も発生しやすい。このため、上記中板5の下面側には、例えば図6に示すように、調湿、防カビ、抗菌機能等をもった調湿性の高い機能板(例えば、珪酸カルシウム板等をベースに、天然鉱物のバーミキュライト、珪藻土などを配合した調湿性にすぐれた板材)8が設けられる(特許文献1の図11の構成を参照)。
ところが、そのような構成を採用した場合、当該機能板8は、上記食器棚本体の左右両側板部分に設けたダボ等で支持されることになるが、図6から明らかなように、その前端部8aの端面(小口部分)が、そのまま前方から見えるので見映えが悪いとともに、前端部8aと中板5の前端部5aとの間の隙間がシールされていないために、同隙間内に下方からの蒸気が侵入する。また、前後方向に幅の広いレール部材2の下面に生じた結露水も、同様に機能板8の前端部8aと中板5の前端部5aとの間の隙間に侵入する。したがって、やはり中板5が損傷されてしまう。
さらに、機能板8は、少なくとも左右2カ所をダボ等で食器棚側板に係止する必要があるので、組み付け作業が手間であるとともに、前端部が支持されていないために組付後の安定性も悪い。
そこで、このような問題を解決するために、本願発明者は、例えば図7に示すように、レール部材2自体に機能板8の支持部20を設けて、機能板8の前端部8aを支持することにより、機能板8前端部のシール性のある支持を可能とするとともに、中板5および機能板8の前端部8aを共にカバーできるようにした食器棚用のレール部材を提案した(第2の従来例として、特許文献1の図3の構成を参照)。
このレール部材2は、例えば図7に示すように、断面U状のレール溝2a,2bを備えた上面部側がフラットなレール部2Aと、該レール部2Aの後端部側に一体に設けられた断面鉤状のレール部材取り付け部2Bと、該レール部材取り付け部2Bの下端側に設けられた機能板嵌合20とからなり、レール部2Aの前端部(前端部前面)aから後端部側レール部材取り付け部2Bの下端部bまでの下面部分2cは、円弧状に大きく膨らんで曲成した傾斜面(曲面)となっている。
このように、レール部材2の下面部2cの全体が、円弧状に大きく曲成された傾斜面となっていると、後述するように、当該レール部材2を中板5および機能板8に取り付けた図示状態において、上記レール部2A上に上方から下方に向けて作用する引戸1A,1Bの荷重が、同傾斜面を介して水平方向(中板5および機能板8の方向)に分散されるようになり、レール部材2の支持剛性がアップする。
また、同レール部材2部分を前方側(食器棚正面側)から見た時に、全体として丸味を帯びたソフトなイメージを与えることができ、上下方向の厚みを感じさせないスリムなものになる。
レール部2Aには、その前後方向(幅方向)に所定の間隔を置いて前後2本の断面U状のレール溝2a,2bが設けられており、これら各レール溝2a、2bに対して、引き戸1A,1B下端の合成樹脂製ローラ9a,9b、9a,9bが走行可能に係合される。レール部材取り付け部2Bは、中板5の前端部5aの前面に当接される当接面である縦壁部21と該縦壁部21の上端から後方側中板5の前端部5aの上面側に延びて当接される当接面である上片部22とからなり、上片部22の長手方向所定の位置には、中板5に対してビスネジ4,4・・・を挿通して螺合締結するビス穴7,7・・・が設けられている。そして、同ビス穴7,7・・・を利用して、当該レール部材2のレール部材取り付け部2Bが、中板5の前端部(前端面および上面)5aに対して取り付けられている。なお、中板5にはネジ穴5aが設けられており、その下部側には、金属製のメネジ溝を形成した金属製のスリーブ5が嵌装固定されており、それを利用してビスネジ4,4・・・が螺合されている。
一方、上記レール部材取り付け部2Bにおける上記縦壁部21の下端部には、上記のように機能板8の支持部としての断面コ字形の機能板嵌合部20が設けられている。そして、この機能板嵌合部20に上記中板5の下面側に重合された機能板8の前端部8aの前端が嵌合されて支持されている。
この発明の構成の場合、機能板8は、上記のように、その前端部8aの前端が上記レール部材2の後端に設けられた機能板嵌合部20によって嵌合状態で支持され、後端部側のみがダボ等で支持される。したがって、左右の側板6a,6bの前後各2ケ所にダボ等で係止する構成の場合に比べて、その取り付け構造、取り付け作業が遥かに簡単になる。しかも、取り付け状態が安定する。
しかも、同取り付け状態において、上記レール部材2が、上記中板5の端部面はもちろん、上記機能板8の前端部面をも確実に前方から見えない状態にカバーし、同状態において、レール部2Aのレール溝2a,2b上に、左右一対の引戸1A,1Bが合成樹脂製ローラ9a,9b、9a,9bを介して走行可能に係合される。
このような構成によると、レール部材2そのものが、調湿手段としての機能板8を、その前端部5a側をシールし、かつ中板5の下部に重合する形で確実に嵌合支持するようになり、機能板8の食器棚本体への取り付けが後端側だけで良くなると同時に、レール部材2が中板5の前端部5aおよび機能板8の前端部8aをそれぞれ確実にカバーし、それらが前方からは全く見えないようになる。また、機能板8の前端部8aがレール部材2によって確実にシールされ、調理器具収納部B側からの蒸気やレール部材2の下面に生じた結露水が中板5と機能板8との間の隙間に入り込むようなこともなくなる。その結果、中板5の耐久性が向上する。
さらに、この発明の構成の場合、レール溝2a,2bの底部とレール部材2の下面部2cとは、上下に長い縦壁構造の支持壁23,24で連結一体化されている。したがって、一応引戸1A,1Bの走行部であるレール部2A(レール溝2a,2b)部分の支持剛性も確保される。
ところが、実際に製造し、使用していると、以上のような構成の場合にも、次のような幾つかの問題があることが判明した。
すなわち、上述のような構成にすると、中板5の下面部分を調理器具側の蒸気から保護することはできる。
しかし、同構成の場合、機能板8の調湿機能が作用するのは、あくまでも中板5の下面に対応したエリアだけであり、アルミ等の金属よりなり、前後方向に広い幅を有するレール部材2の下面部2c部分は滑らかな金属面であり、調湿性(吸湿性)は全く備えていない。したがって、同部分で蒸気の結露が生じやすい点は全く変わっていない。しかも、図7の構成の場合、同下面部2c部分は、当該レール部材2の前端部側から後端部側にかけて大きく円弧面上に曲成されているために、凝縮した結露水が次第に後端側(調理器具収納部B側)に集まって流れ落ちる新たな問題が生じる。
また、そのように下面部2c部分を、当該レール部材2の前端部から後端部にかけて大きく円弧面上に曲成させると、レール溝2a,2bの底部とレール部材2の下面部2cとを上下に連結している上下方向の支持壁(縦壁)23,24の上下方向の長さが長くなり、それだけ高価なアルミ材が多く必要になり、コストがかかる。また、その結果、レール部材2内部の空間部(共鳴空間)の容積も大きくなるので、振動が生じやすく、引戸走行時の騒音(空洞共鳴による共鳴音)が発生しやすい問題もある。
特に、この発明の構成の場合、レール部材2が、後端側縦壁部21の一面だけで中板5および機能板8の前端に固定されているだけで、上下部分の全体が殆ど空間中に浮いた状態となっている。したがって、引戸走行時のローラ部材回転による振動が加わると、振動しやすく、内部空間容積が広いため空洞共鳴を発生しやすい。
したがって、この点でも、レール部材2の板厚を薄くするには限界があり、レール部材のコストを削減しにくかった。
本願発明は、このような問題を解決するためになされたもので、上記同様の食器棚用のレール部材において、機能板の前端部を嵌合支持する機能板嵌合用の凹部をレール部材の下部側においてレール部材の後端側から前端側にかけて設けるとともに、それに対応して機能板の前端部を同機能板嵌合用凹部の前端側まで延ばし、レール部材の下部側を支持する状態で嵌合固定した食器棚用のレール部材を提供することを目的とするものである。
本願発明は、上記の目的を達成するために、次のような課題解決手段を備えて構成されている。
(1) 請求項1の発明の課題解決手段
この発明の課題解決手段は、食器棚が、食器棚を上方側食器収納部と下方側調理器具収納部に仕切る中板と、該中板の下面側にあって同中板の下面側を覆う調湿用の機能板とを備えてなり、上記中板の前端部に取り付けられ、上面側にレール部を有して引戸を走行可能に支持するとともに、後端側上部に上記中板の前端部前端面および前端部上面を覆う状態で当該中板の前端部に取り付けられる鉤状のレール部材取り付け部を、下部側に上記機能板の前端部を嵌合支持する機能板支持部を設けてなる食器棚用のレール部材であって、上記機能板の前端部を嵌合支持する機能板支持部を、上記レール部材の後端側下部から前端側下部に亘って延びる断面鉤状の機能板嵌合用の凹部と、該機能板嵌合用の凹部の前端部下端にあって、上部側断面鉤状の機能板嵌合用の凹部とともに断面コの字状の機能板嵌合部を形成する嵌合支持片とから構成し、上記機能板の前端部を上記機能板嵌合用の凹部の凹部面に内接させて上記レール部材の前端側まで延設し、同前端側で上記機能板嵌合部内に嵌合固定することにより支持したことを特徴としている。
このような構成によると、レール部材が、その後端側上部のレール部材取り付け部によって、中板に対して中板の前端部前端面および前端部上面を覆う状態で確実に取り付けられるとともに、同取り付け状態において、その後端側下部から前端側下部に亘って延びる断面鉤状の機能板嵌合用の凹部と同機能板嵌合用の凹部の前端側下部に設けられた機能板支持片によって、調湿機能を有する機能板を中板の下面部からレール部材の前端側下面部まで幅広く(長く)延設した状態で確実に嵌合支持するようになる。
その結果、従来だと結露が生じていたレール部材の下面部分が調湿機能のある機能板によって広くカバーされ、確実に結露自体が生じないようになる。また、中板に対するレール部材の取り付け状態、レール部材に対する機能板の取り付け状態がより安定するとともに、中板下面およびレール部材下面に対する機能板の取り付けも容易になる。
また、同構成の場合、従来のものに比べて機能板の前端部がレール部材の前端側に長く突出するが、同前端側に突出する機能板は、レール部材の下部に上方に窪んで形成された断面鉤状の機能板嵌合用の凹部内に嵌合される形でレール部材の下部に支持されているので、レール部材取り付け部によって中板の前端部がカバーされることはもちろん、機能板嵌合用の凹部によって機能板の前端部が確実にカバーされ、従来同様に前方からは全く見えないようになる。
また、機能板嵌合用の凹部の前端部下端には機能板の前端部下面を嵌合支持する支持片が設けられていて、機能板嵌合用の凹部の凹部面とともに断面コの字状の嵌合部を形成して、機能板の前端部を確実に嵌合するので、機能板の前端部が確実にシールされ、調理器具収納部側からの蒸気が中板との間の隙間に入り込むこともなくなる。
また、機能板嵌合用の凹部が断面鉤状に窪んでレール部材の後端側から前端側まで延設されていることから、同機能板嵌合用の凹部の容積分だけレール部材の金属素材量を少なくすることができ、レール部材のコストダウンを図ることができる。
また、その結果、機能板嵌合用の凹部を設けたレール部材部分の上下方向の厚みを小さくすることができ、各レール溝下部部分の支持壁部の長さを短くすることができ、内部空間の容積も小さくすることができるので、レール部材の振動が生じにくくなり、引戸走行時の騒音(共鳴音)も生じにくくなる。
特に、この発明の構成の場合、上記走行時の振動が生じやすいレール溝およびレール溝を支持する支持壁部の下部側に位置して断面鉤状の機能板嵌合用の凹部を設け、同凹部内に調湿性のある機能板を嵌合してレール溝およびレール溝支持用の支持壁部を広面積で密着支持している。したがって、機能板が振動吸収材、吸音材としても有効に機能し、非常に走行音の低いレール構造を実現することができる。
また、機能板は一般に所定値以上の厚さを有することから、嵌合された機能板そのものが中板とともにレール部材下部側の支持部材としても有効に機能するようになり、レール部材の剛性補強機能をも発揮する。そのため、レール部材の板厚を可能な限り薄くすることも可能となり、薄くしても上述のように走行音を発生しにくいことから、この点でもレール部材の材料コスト低減に寄与することができる。
以上の結果、本願発明によると、第2の従来例に係る食器棚用のレール部材同様のデザイン性、機能性、組付性を備えながら、しかも、その欠点であるレール部材下面部側の結露発生を確実に解消し、かつ全体として金属材料の使用量を減らし、さらには走行時の共鳴音をも生じさせない、食器棚用のレール部材をより低コストに提供することができるようになる。
図1および図2は、本願発明の実施の形態に係る食器棚用のレール部材を用いて構成した食器棚の正面側および側面側から見た構成、図3は、本願発明の実施の形態に係る食器棚用のレール部材を上記食器棚側の中板および機能板に取り付けた状態の構成、図4は、本願発明の実施の形態に係る食器棚用のレール部材自体の構成を、それぞれ示している。
(1)食器棚の構成:図1、図2を参照
本願発明の実施の形態における食器棚は、例えば図1(正面図)および図2(右側面図)に示すように、左右一対の両側板6a,6b、上板6c、底板6d、背板6eを備えた所定の奥行き寸法の箱状体よりなり、その上下方向略中間部分に設けられた中板5を介して、上方側に茶碗や皿などの食器収納部A、下方側に電子レンジや電気炊飯器、電気ポットなどの調理器具収納部Bが設けられている。
中板5は、例えば食器棚本体の左右両側板6a,6b部分に設けられたダボによって食器棚本体に固定支持されており、その下面側には調湿機能を備えた機能板8が設けられている。中板5の前端部には、左右両方向に伸びてアルミ等金属製のレール部材2が取り付けられており、機能板8は、その後端側が背板6eにダボ等で支持される一方、前端側が同レール部材2に嵌合されて支持されている。
そして、上記レール部材2のレール部2A上には、上記食器収納部Aの前部に位置する形で、引き違い構造のガラスその他の素材よりなる左右一対の引戸1A,1Bが走行可能に並設されている。
また、上記食器収納部Aは、縦方向の仕切板11aを介して左右2室に仕切られ、それら左右各室内には、例えば着脱可能なダボ11c,11c・・・、11c,11c・・・を利用して中棧11b,11b・・・、11b,11b・・・が高さ調節可能な状態で設けられている。一方、上記調理器具収納部Bは、何らカバー部材が設けられることなく、前面側に完全に開放されている。
(2)レール部材の具体的な構成:図3、図4を参照
レール部材2は、左右方向(長手方向)および前後方向(幅方向)共に略フラットな形状で前後方向(幅方向)に所定の幅を有するレール部2Aと、該レール部2Aの後端部において上下方向に伸びて設けられたレール部材取り付け部2Bと、上記レール部2Aの下部側に設けられた機能板支持部2Dとからなっている。
レール部2Aには、その前後方向(幅方向)に所定の間隔を置いて前後2本のレール溝2a,2bが設けられており、これら各レール溝2a、2bに対して、後述するように引戸1A,1B下端側の合成樹脂製ローラ9a,9b、9a,9b部分が走行可能に嵌合されている。
次にレール部材取り付け部2Bは、食器棚本体の上下方向略中間部分に設けられている中板5の前端部5aの前面に当接される当接面である中板5の板厚と同じ高さの縦壁部21と該縦壁部21の上端から中板5の前端部5aの上面側後方に所定の長さ直角に折り曲げられて当接される上片部22とからなり、該上片部22の後方側所定の位置には、中板5側のネジ穴5bに対してビスネジ4,4・・・を挿通して螺合締結されるビス穴7,7・・・が設けられている。そして、同ビス穴7,7・・・を利用して、レール部材2のレール部材取り付け部2Bが、中板5の前端部5a部分に締結固定される(図3参照)。
このレール部材2の取り付けに関し、中板5のネジ穴5bの下部側には、内側に金属製のメネジ溝を形成した金属製のスリーブ5cが嵌装固定されており、それを利用してネジ穴5b内に挿入されたビスネジ4,4・・・を螺合することにより、確実な締結状態が実現されるようになっている。
一方、機能板支持部2Dは、レール部材2におけるレール部2Aの下部側にあって、レール部材取り付け部2Bの縦壁部21部分の下端部分からレール部2Aの前端側レール溝2aの支持壁20の下端部分までに亘って設けられている。この機能板支持部2Dは、たとえばレール部材2本来の上下方向の厚さ(レール溝2aの支持壁20部分の上下方向の高さ)の約1/2寸法ほどレール部2A側に凹んだ断面鉤状の機能板嵌合用の凹部30により形成されている。
そして、この機能板嵌合用の凹部30部分には、中板5の下部側に重合される形で設けられた調湿、抗菌、防カビ等の機能を有する機能板(例えば、珪酸カルシウム板等をベースに天然鉱物のバーミキュライト、珪藻土などを配合した調湿性にすぐれた所定の厚さの板材)8の前端部8a側の幅広い部分の前端面および上面が嵌合当接されるようになっている。
この機能板嵌合用の凹部30の前端部下端(前端側レール溝2aの支持壁20の下端)部分には、さらに上部側断面鉤状の機能板嵌合用の凹部30の凹部面とともに断面コの字状の機能板嵌合部30aを形成する機能板支持片30bが所定の長さ後方に延びて設けられており、当該機能板嵌合用の凹部30の断面鉤状の凹部面に内接された状態で、上記前端側レール溝2aの支持壁23の下部部分まで延設された上記機能板8の前端部8aの前端をシール状態で確実に嵌合固定して支持するようになっている。
この場合、中板5は、例えば食器棚本体の左右両側板6a,6b部分に設けられたダボ3,3・・・によって食器棚本体に支持固定されているが(図示省略)、機能板8は、上記のように、その前端部8aの前端が上記のようにレール部材2の前端側まで延びる機能板支持部30の機能板嵌合部30aによって支持され、後端部側1ケ所のみがダボ等で支持される。
したがって、第1の従来例(図6)のように、左右の両側板6a,6bの2ケ所にダボ等で係止する必要がなくなり、その取り付け構造、取り付け作業が共に簡単になる。
しかも、この場合においても、上記レール部材2の前端部(前面側突状の端部)から上記機能板嵌合部30aを形成する機能板支持片30bまでのレール部材2の下面部2Cは、先に述べた2の従来例(図7)のものと同様の円弧状に曲成した傾斜面となっている。したがって、レール部2A上に上方から下方に向けて作用する引戸1A,1Bの荷重は、同傾斜面を介して水平方向(上記中板5および機能板8の方向)に分散されるようになり、レール部材2の支持剛性がアップする。
また、同様に、上記レール部材2部分を前方から見た時に、やはり見えるのは上記のような傾斜面を備えた金属製のレール部材2のみであり、中板5や機能板8の前端部は確実にカバーされるとともに、全体として丸味を帯びたソフトなイメージを与えることができる。また、上下方向の厚みを感じさせないようになる。
そして、以上のようにして、レール部材2とともに中板5、機能板8が食器棚本体に取り付けられると、同取り付け状態において、レール部2Aのレール溝2a,2b上には、左右一対の引戸1A,1Bが合成樹脂製ローラ9a,9b、9a,9bを介して走行可能に係合される。
この場合、食器棚本体の上板6cの前端部下面側にも凹状のレール溝10a,10bが設けられており、同レール溝10a,10bに対しても合成樹脂製ローラ14a,14bを介して上記引戸1A,1Bの上端側が走行可能に係合される。
なお、図1、図2中の符号12a,12bは、上記調理器具収納部Bの背面板6e側に設けられたコンセント、12c,12dは、電源コードの通し穴である。
以上のように、この実施の形態に係る食器棚用のレール部材2では、機能板8の前端部8aを嵌合支持する機能板支持部2Dを、レール部材2の後端側下部から前端側下部に亘って延びる断面鉤状の機能板嵌合用の凹部30と、該機能板嵌合用の凹部30の前端部下端にあって、上部側断面鉤状の機能板嵌合用の凹部30の凹部面とともに断面コの字状の機能板嵌合部30aを形成する機能板支持片30bとから構成し、上記機能板8の前端部8aを上記機能板嵌合用の凹部30の断面鉤状の凹部面に内接させて上記レール部材2の前端側まで延設し、同前端側で上記機能板嵌合部30a内に嵌合固定することにより支持している。
このような構成によると、レール部材2が、その後端側上部のレール部材取り付け部2Bによって、中板5に対して中板5の前端部5aの前端面および前端部5aの上面を覆う状態で確実に取り付けられるとともに、同取り付け状態において、その後端側下部から前端側下部に亘って延びる断面鉤状の機能板嵌合用の凹部30の凹部面と同凹部面の前端側下部に設けられた機能板支持片30bによって、調湿機能を有する機能板8の前端部8a側を中板5の前端部5aの下面からレール部材2の前端側下面まで十分に長く延設した状態で確実に嵌合支持するようになる。
その結果、従来だと結露が生じていたレール部材2の下面部が調湿機能のある機能板8によって殆どカバーされ(レール溝2aの下部側支持壁20の下部側部分まで)、確実に結露が生じないようになる。また、中板5に対するレール部材2の取り付け状態、レール部材2に対する機能板8の取り付け状態がより安定するとともに、中板5の下面およびレール部材2の下面に対する機能板8自体の取り付けも容易になる。
また、同構成の場合、第2の従来例(図7)のものに比べて、機能板8の前端部8aがレール部材2の前端側に長く突出するが、同前端側に突出する機能板8は、レール部材2の下部に上方に窪んで形成された断面鉤状の機能板嵌合用の凹部30内に嵌合される形でレール部材2の下部に支持されているので、レール部材取り付け部2Bによって中板5の前端部5aがカバーされることはもちろん、機能板嵌合用の凹部30によって機能板8の前端部8aがカバーされ、従来同様に前方からは全く見えないようになる。見えるのは、レール部材2の前端部およびその下面部2c部分のみとなる。
また、機能板嵌合用の凹部30の前端部下端には機能板8の前端部8aの前端下面を嵌合支持する機能板支持片30bが設けられていて、機能板嵌合用の凹部30の嵌合用凹部面とともに断面コの字状の機能板嵌合部30aを形成して、機能板8の前端部8aの前端を確実に嵌合するので、機能板8の前端部8aの前端が確実にシールされ、調理器具収納部1B側からの蒸気が中板5との間の隙間に入り込むこともない。
また、機能板嵌合用の凹部30が上方側に断面鉤状に窪んでレール部材2の後端側から前端側まで延設されていることから、同機能板嵌合用の凹部30の容積分だけレール部材2の金属素材量を少なくすることができ、レール部材2のコストダウンを図ることができる。
また、その結果、機能板嵌合用の凹部30を設けたレール部材2部分の上下方向の厚みを小さくすることができ、各レール溝2a,2b下部部分の支持壁23,24(特に支持壁24)の長さを短くすることができ、また同時に、それらによって区画されている内部空間21a、21bの容積も小さくすることができるので、レール部材2の剛性がアップして振動が生じにくくなるとともに、同内部空間21a、21bを共鳴空間とする引戸1A,1B走行時の騒音(共鳴音)も生じにくくなる。
特に、この実施の形態の構成の場合、上記走行時の振動が生じやすいレール溝2a,2bおよび該レール溝2a,2bを支持する支持壁23,24の下部側(レール部2Aの下面部側)に位置して断面鉤状の機能板嵌合用の凹部30を設け、同嵌合用の凹部30内に調湿性のある機能板8を嵌合(内接)することによって、レール溝2a,2bおよびレール溝2a,2b支持用の支持壁23,24の下部側(レール部2Aの下面部側)を広い面積に亘って密着状態で支持している。したがって、機能板8が振動吸収材、吸音材としても有効に機能し、非常に走行音の低いレール構造を実現することができる。
また、機能板8は一般に所定値以上の厚さを有することから、嵌合された機能板8そのものが中板5とともにレール部材2下部側の支持部材としても有効に機能するようになり、レール部材2の剛性補強機能をも発揮する。そのため、レール部材2の板厚を可能な限り薄くすることも可能となり、薄くしても上述のように走行音を発生しにくいことから、この点でもレール部材2の材料コスト低減に寄与することができる。
これらの結果、この実施の形態に係る食器棚用のレール部材によると、従来の食器棚用のレール部材同様のデザイン性、機能性、組付性を備えながら、しかもレール部材下面部における結露の発生を回避し、金属材料の使用量を減らし、さらには走行時の走行音をも生じさせない、高品質の食器棚用のレール部材を低コストに提供することができるようになる。