JP6576656B2 - イオン液体、潤滑剤及び磁気記録媒体 - Google Patents

イオン液体、潤滑剤及び磁気記録媒体 Download PDF

Info

Publication number
JP6576656B2
JP6576656B2 JP2015051427A JP2015051427A JP6576656B2 JP 6576656 B2 JP6576656 B2 JP 6576656B2 JP 2015051427 A JP2015051427 A JP 2015051427A JP 2015051427 A JP2015051427 A JP 2015051427A JP 6576656 B2 JP6576656 B2 JP 6576656B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
lubricant
ionic liquid
magnetic
temperature
environment
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2015051427A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2016169345A (ja
Inventor
近藤 洋文
洋文 近藤
弘毅 初田
弘毅 初田
信郎 多納
信郎 多納
キョンソン ユン
キョンソン ユン
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Dexerials Corp
Original Assignee
Dexerials Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Dexerials Corp filed Critical Dexerials Corp
Priority to JP2015051427A priority Critical patent/JP6576656B2/ja
Publication of JP2016169345A publication Critical patent/JP2016169345A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6576656B2 publication Critical patent/JP6576656B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Lubricants (AREA)
  • Magnetic Record Carriers (AREA)

Description

本発明は、ブレンステッド酸とブレンステッド塩基とから構成されるイオン液体、該イオン液体を含有する潤滑剤、及びそれを用いた磁気記録媒体に関する。
従来、薄膜磁気記録媒体では、磁気ヘッドと媒体表面における摩擦や摩耗を減少させるために磁性層表面に潤滑剤が塗布される。実際の潤滑剤の膜厚は、スティクションのような接着を避けるため、分子レベルになる。それゆえ、薄膜磁気記録媒体において、最も重要なことは、あらゆる環境下においても、優れた耐摩耗性を有する潤滑剤の選択にあるといっても過言ではない。
磁気記録媒体のライフにおいて、脱離、スピンオフ、化学的な劣化などを生じさせずに、潤滑剤を媒体表面に存在させることは重要である。潤滑剤を媒体表面に存在させることは、薄膜磁気記録媒体の表面が平滑になるほど困難となる。これは、薄膜磁気記録媒体が塗布型磁気記録媒体のような潤滑剤の補充能力を有していないからである。
また、潤滑剤と磁性層表面の保護膜との接着力が弱い場合には、加熱や摺動時に潤滑剤膜厚の減少が生じ、摩耗を加速することになるため、多量の潤滑剤が必要とされる。多量の潤滑剤は、移動性の潤滑剤となり、消失した潤滑剤の補充機能を持たせることができる。しかし、過剰な潤滑剤は、潤滑剤の膜厚を表面疎度よりも大きくするため、接着に関連する問題が生じ、致命的な場合にはスティクションとなってドライブ不良の原因になるというジレンマがある。これらの摩擦の問題は、従来のパーフルオロポリエーテル(PFPE)系潤滑剤では、十分には解決されていない。
特に、表面平滑性の高い薄膜磁気記録媒体では、これらのトレードオフを解消するために、新規潤滑剤が分子設計され、合成されている。また、PFPEの潤滑性に関する報告が数多く提出されている。このように、磁気記録媒体において、潤滑剤は、大変重要なものである。
表1に、代表的なPFPE系潤滑剤の化学構造を示す。
表1中のZ−DOLは、一般に使用されている薄膜磁気記録媒体用の潤滑剤の一つである。また、Z−tetraol(ZTMD)は、機能性の水酸基をPFPEの主鎖にさらに導入したものであり、ヘッドメディアインターフェイスの隙間を減少させながらドライブの信頼性を高めるとの報告がある。A20Hは、PFPE主鎖のルイス酸やルイス塩基による分解を抑え、トライボロジー特性を改善するとの報告がある。一方、Monoは、高分子主鎖及び極性基が、上記のPFPEと異なり、それぞれポリノルマルプロピルオキシとアミンであり、ニアコンタクトにおける接着相互作用を減少させるとの報告がある。
しかし、融点が高く熱的に安定と考えられる一般的な固体潤滑剤では、非常に高感度である電磁変換プロセスを妨害し、また、ヘッドによって削られた摩耗粉が走行トラックに生じるために摩耗特性が悪くなる。前述のように液体潤滑剤では、ヘッドによる摩耗によって取り除かれた潤滑剤に対して隣の潤滑層から移動して補充するといった移動性がある。しかし、この移動性のために、特に高温では、ディスク稼働中にディスク表面からスピンオフして潤滑剤が減少し、その結果、防護機能が失われる。このため、粘度が高くまた低揮発性の潤滑剤が好適に用いられており、蒸発速度を抑え、ディスクドライブの寿命を延ばすことを可能としている。
これらの潤滑機構から鑑みると、薄膜磁気記録媒体に用いられる低摩擦、低摩耗の潤滑剤への要求としては、以下のようになる。
(1)低揮発性であること。
(2)表面補充機能のために低表面張力であること。
(3)末端極性基とディスク表面への相互作用があること。
(4)使用期間での分解、減少がないように、熱的及び酸化安定性が高いこと。
(5)金属、ガラス、高分子に対して化学的に不活性で、ヘッドやガイドに対して摩耗粉を生じないこと。
(6)毒性、可燃性がないこと。
(7)境界潤滑特性に優れていること。
(8)有機溶媒に溶解すること。
近年、蓄電材料、分離技術、触媒技術などにおいて、イオン液体が、有機や無機材料合成のための環境にやさしい溶媒の一つとして、注目を集めている。イオン液体は、低融点の溶融塩という大きな範疇に入るが、一般的には、その中でも融点が100℃以下のものをいう。潤滑剤として使用するイオン液体の重要な特性として、揮発性が低いこと、可燃性がないこと、熱的に安定であること、溶解性能に優れていることがある。
例えば金属やセラミックス表面での摩擦及び摩耗が、あるイオン液体を用いることにより、従来の炭化水素系潤滑剤と比較して低減することがある。例えばフルオロアルキル基で置換してイミダゾールカチオンベースのイオン液体が合成され、アルキルイミダゾリウムのテトラフルオロホウ酸塩やヘキサフルオロリン酸塩が、鋼、アルミニウム、銅、単結晶SiO、シリコン、サイアロンセラミックス(Si−Al−O−N)に用いた場合、環状フォスファゼン(X−1P)やPFPEよりも優れたトライボロジー特性を示すとの報告がある。また、アンモニウムベースのイオン液体では、弾性流体から境界潤滑領域において、ベースオイルよりも摩擦を低下させる報告もある。また、イオン液体は、ベースオイルへの添加剤としての効果が調べられたり、化学的な及びトライボ化学的な反応が潤滑機構を理解するうえで研究されたりしているが、磁気記録媒体としての応用例はほとんどない。
イオン液体の中でプロトン性のイオン液体は、ブレンステッド酸とブレンステッド塩基の当量の化学反応によって形成される化合物の総称である。Kohlerらによるカルボン酸とアミンの相互作用に関する研究では、化学等量でカルボン酸とアミンの1:1複合体ができることを報告している(例えば非特許文献1、及び2参照)。パーフルオロオクタン酸アルキルアンモニウム塩は、プロトン性イオン液体(PIL)であるが、既述のZ−DOLと比較して、著しく磁気記録媒体の摩擦低減の効果があることを報告している(特許文献1、及び2、並びに非特許文献3〜5参照)。
しかし、これらのパーフルオロカルボン酸アンモニウム塩は、以下の反応式(A)に示す反応の中で、カチオンとアニオンの相互作用が弱く、Le Chatelier’sの法則から、高温では平衡が左側になり、解離した中性の化合物となって熱的な安定性が悪くなる。つまり、高温ではプロトンの移動が起こり、平衡が中性の物質へと移動して解離する(例えば、非特許文献6参照)。
ところで、ハードディスクの面記録密度の限界は、1−2.5Tb/inと言われている。現在、その限界に近付きつつあるが、磁性粒子の微細化を大前提として、大容量化技術への精力的な開発が続けられている。大容量化の技術として、実効フライングハイトの減少、Shingle Writeの導入(BMP)などがある。
また、次世代記録技術として、「熱アシスト磁気記録(Heat Assisted Magnetic Recording)」がある。図1に、熱アシスト磁気記録の概略を示す。この技術の課題としては、記録再生時にレーザーで記録部分を加熱するために、磁性層表面の潤滑剤の蒸発あるいは分解による耐久性の悪化が挙げられる。熱アシスト磁気記録は、短い時間ではあるが400℃以上とも言われる高温に晒される可能性があり、一般に使用されている薄膜磁気記録媒体用の潤滑剤Z−DOLやカルボン酸アンニウム塩系潤滑剤では、その熱的な安定性が懸念されている。
イオン液体は、前述のようにイオンを形成するために一般的には熱的な安定性が高い物質である。その平衡は次のScheme1に示される。
ここでHAはブレンステッド酸を、Bはブレンステッド塩基を示す。酸(HA)と塩基(B)はScheme1に示すように反応して塩(AHB)となる。
このときに酸及び塩基のそれぞれの解離定数Ka1及びKb2は、濃度を含めた形で次のScheme2のように表すことができる。
a1及びKb2は物質によって大きく異なり、場合によっては大きな桁数になるため、取扱いに不便なため、負の常用対数で表される場合が多い。つまり、次のScheme3に示すように−log10a1=pKa1と定義し、明らかにpKa1が小さい酸ほど酸性が強い。
ここで酸と塩基の酸解離定数の差ΔpKaについて議論する。酸・塩基反応はお互いにその酸性・塩基性(あるいはその共役酸の酸性)に影響され、その酸性度の差ΔpKaは併せて次のScheme3に表すことができる。
ΔpKaは、酸濃度及び塩基濃度に対して塩濃度[AHB]が大きくなると大きくなる、ことがわかる。
その中でYoshizawaらは、酸と塩基のpKaの差(ΔpKa)が10以上となるとプロトン移動が起こりやすくなり、
[AH]+[B]⇔[AHB
上記式の平衡がイオン側(右側)へシフトし、より安定性が増すことを報告している(例えば、非特許文献6参照)。また、渡邉らは、プロトン性イオン液体のプロトン移動性と熱的な安定性がΔpKaに大きく依存し、塩基としてDBU(1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデ−7−セン)を用いた場合、そのΔpKaが15以上となる酸を用いることにより、イオン液体の熱的安定性が大きく向上することを報告している(非特許文献7参照)。また、近藤らは、ΔpKaが大きいパーフルオロオクタンスルホン酸オクタデシルアンモニウム塩系のプロトン性イオン液体が磁気記録媒体の耐久性を改善することを報告している(非特許文献8、特許文献3参照)。
特許第2581090号公報 特許第2629725号公報 国際公開第2014/104342号パンフレット
Kohler, F., Atrops, H., Kalall, H., Liebermann, E., Wilhelm, E., Ratkovics, F., & Salamon, T., (1981a). Molecular Interactions in Mixtures of Carboxylic acids with amines. 1. Melting Curves and Viscosities, J. Phys. Chem. Vol. 85, No. 17, (Aug. 1981), pp. 2520−2524, ISSN: 0022−3654 Kohler, F., Gopal, R., Goetze, G., Atrops, H., Demiriz, M.A., Liebermann, E., Wilhelm, E., Ratkovics, F., & Palagyl, B., (1981). Molecular Interactions in Mixtures of Carboxylic acids with amines. 2. Volumetric, Conductimetric, and NMR Properties, J. Phys. Chem. Vol. 85, No. 17, pp.2524−2529, ISSN: 0022−3654 Kondo, H., Seto, J., Haga. S., Ozawa, K.,(1989) Novel Lubricants for Magnetic Thin Film Media, Magnetic Soc. Japan, Vol. 13, Suppl. No. S1, pp.213−218 Kondo, H., Seki, A., Watanabe, H., & Seto, J., (1990). Frictional Properties of Novel Lubricants for Magnetic Thin Film Media, IEEE Trans. Magn. Vol.26, No. 5, (Sep. 1990), pp.2691−2693, , ISSN:0018−9464 Kondo, H., Seki, A., & Kita, A., (1994a). Comparison of an Amide and Amine Salt as Friction Modifiers for a Magnetic Thin Film Medium. Tribology Trans. Vol.37, No. 1, (Jan. 1994), pp. 99−105, ISSN: 0569−8197 Yoshizawa, M., Xu, W., Angell, C. A., Ionic Liquids by Proton Transfer: Vapor pressure, Conductivity, and the Relevance of ΔpKa from Aqueous Solutions, J. Am. Chem. Soc.,Vol.125, pp.15411−15419(2003) Miran, M.S., Kinoshita, H., Yasuda, T., Susan, M.A.B.H., Watanabe, M., Physicochemical Properties Determined by ΔpKa for Protic Ionic Liquids Based on an Organic Super−strong Base with Various Bronsted Acids, Phys. Chem. Chem. Phys., Vol 14, pp.5178−5186 (2012) Hirofumi Kondo, Makiya Ito, Koki Hatsuda, KyungSung Yun and Masayoshi Watanabe, "Novel Ionic Lubricants for Magnetic Thin Film" Media,IEEE TRANSACTIONS ON MAGNETICS, VOL. 49, NO. 7, pp.3756−3759,JULY (2013)
しかし、磁気記録媒体の分野においては、潤滑剤の能力不足に起因して、走行性、耐摩耗性、耐久性等の実用特性に不満を残している。
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、高温においても優れた潤滑性を有するイオン液体、高温においても優れた潤滑性を有する潤滑剤、及び優れた実用特性を有する磁気記録媒体を提供する。
本件発明者は、鋭意検討を行った結果、プロトン性イオン液体において、ブレンステッド塩基として、長鎖の直鎖炭化水素基を有する、非環状のグアニジンを用い、ブレンステッド酸として、パーフルオロスルホン酸、パーフルオロスルホイミド等の有機ブレンステッド酸を用いることにより、上述の目的を達成できることを見出すことによって、本発明を完成させるに至った。
<1> ブレンステッド酸(HX)と、ブレンステッド塩基(B)とから形成されるイオン液体を含有し、
前記ブレンステッド塩基が、炭素数が10以上の直鎖状の炭化水素基を有する非環状のグアニジンであり、
アセトニトリル中における前記ブレンステッド酸のpKaが、10以下であることを特徴とする潤滑剤である。
<2> 前記イオン液体が、下記一般式(1)で表される前記<1>に記載の潤滑剤である。
ただし、前記一般式(1)中、Rは、炭素数が10以上の直鎖状の炭化水素基を含む基を表す。Xは、前記ブレンステッド酸の共役塩基を表す。
<3> 前記イオン液体が、下記一般式(2)で表される前記<1>から<2>のいずれかに記載の潤滑剤である。
ただし、前記一般式(2)中、Rは、炭素数が10以上の直鎖状の炭化水素基を含む基を表す。nは、1〜12の整数を表す。
<4> 前記イオン液体が、下記一般式(3)で表される前記<1>から<2>のいずれかに記載の潤滑剤である。
ただし、前記一般式(3)中、Rは、炭素数が10以上の直鎖状の炭化水素基を含む基を表す。
<5> 前記イオン液体が、下記一般式(4)で表される前記<1>から<2>のいずれかに記載の潤滑剤である。

ただし、前記一般式(4)中、Rは、炭素数が10以上の直鎖状の炭化水素基を含む基を表す。lは、1〜12の整数を表す。
<6> 前記イオン液体が、下記一般式(5)で表される前記<1>から<2>のいずれかに記載の潤滑剤である。
ただし、前記一般式(5)中、Rは、炭素数が10以上の直鎖状の炭化水素基を含む基を表す。mは、0〜12の整数を表す。
<7> 非磁性支持体と、前記非磁性支持体上に磁性層と、前記磁性層上に前記<1>から<6>のいずれかに記載の潤滑剤とを有することを特徴とする磁気記録媒体である。
<8> ブレンステッド酸(HX)と、ブレンステッド塩基(B)とから形成され、
前記ブレンステッド塩基が、炭素数が10以上の直鎖状の炭化水素基を有する非環状のグアニジンであり、
アセトニトリル中における前記ブレンステッド酸のpKaが、10以下であることを特徴とするイオン液体である。
<9> 下記一般式(1)で表される前記<8>に記載のイオン液体である。
ただし、前記一般式(1)中、Rは、炭素数が10以上の直鎖状の炭化水素基を含む基を表す。Xは、前記ブレンステッド酸の共役塩基を表す。
<10> 下記一般式(2)で表される前記<8>から<9>のいずれかに記載のイオン液体である。
ただし、前記一般式(2)中、Rは、炭素数が10以上の直鎖状の炭化水素基を含む基を表す。nは、1〜12の整数を表す。
<11> 下記一般式(3)で表される前記<8>から<9>のいずれかに記載のイオン液体である。
ただし、前記一般式(3)中、Rは、炭素数が10以上の直鎖状の炭化水素基を含む基を表す。
<12> 下記一般式(4)で表される前記<8>から<9>のいずれかに記載のイオン液体である。

ただし、前記一般式(4)中、Rは、炭素数が10以上の直鎖状の炭化水素基を含む基を表す。lは、1〜12の整数を表す。
<13> 下記一般式(5)で表される前記<8>から<9>のいずれかに記載のイオン液体である。
ただし、前記一般式(5)中、Rは、炭素数が10以上の直鎖状の炭化水素基を含む基を表す。mは、0〜12の整数を表す。
本発明によれば、潤滑剤の蒸発や熱分解といった熱的な安定性を改善し、かつ優れた潤滑特性を長期に亘り維持させることができる。また、潤滑剤を磁気記録媒体に用いた場合も、潤滑特性に優れ、走行性、耐摩耗性、耐久性等の実用特性を向上させることができる。
図1は、熱アシスト磁気記録を示す概略図である。 図2は、本発明の一実施の形態に係るハードディスクの一例を示す断面図である。 図3は、本発明の一実施の形態に係る磁気テープの一例を示す断面図である。 図4は、n−オクタデシルグアニジンの質量スペクトルである。 図5は、ピンオンディスク試験機の概略図である。 図6は、摩擦試験結果である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら下記順序にて詳細に説明する。
1. 潤滑剤及びイオン液体
2. 磁気記録媒体
3. 実施例
<1.潤滑剤及びイオン液体>
本発明の一実施形態として示す潤滑剤は、ブレンステッド酸(HX)と、ブレンステッド塩基(B)とから形成されるイオン液体を含有する。
前記イオン液体において、前記ブレンステッド塩基は、炭素数が10以上の直鎖状の炭化水素基を有する非環状のグアニジンである。
また、アセトニトリル中における前記ブレンステッド酸のpKaは、10以下(強酸)である。そうすることにより、優れた熱安定性を発揮することができる。
「非環状のグアニジン」は、例えば、以下の構造式(A)で表される。
即ち、「炭素数が10以上の直鎖状の炭化水素基を有する非環状のグアニジン」とは、前記構造式(A)で表される非環状のグアニジンの水素原子が、炭素数が10以上の直鎖状の炭化水素基を含む基によって1置換以上され、更に必要に応じてその他の置換基によって1置換以上された非環状のグアニジンを意味する。
ここで、本明細書におけるブレンステッド酸のpKaは、酸解離定数であって、アセトニトリル中における酸解離定数である。
アセトニトリル中における前記酸解離定数は、ブレンステッド酸をアセトニトリル中に溶解させ塩基で滴定を行い、UV−visスペクトロメータを用いて測定したスペクトルから計算される。
アセトニトリル中における前記酸解離定数については、例えば、J. Org. Chem. 2006, Vol.71, pp.2829−2838が、参照される。
前記ブレンステッド酸としては、ブレンステッド酸(HX)のpKaとブレンステッド塩基(B)のpKaとの差(ΔpKa)が12以上である条件を満たすものが好適に用いられ、好ましくは、ブレンステッド酸(HX)のpKaが小さい、ビス((パーフルオロアルキル)スルホニル)イミド((C2l+1SONH)、パーフルオロシクロプロパンスルホニルイミド、パーフルオロアルキルスルホン酸(C2n+1SOH)、トリス(パーフルオロアルカンスルホニル)メチド化合物((C2m+1SOCH)などのスーパー酸に位置づけられるブレンステッド酸が用いられる。
前記ブレンステッド酸のpKaは、10以下であり、−5〜10がより好ましい。
前記ブレンステッド塩基としては、好ましくは炭素数が10以上の直鎖状の炭化水素基を有するグアニジン誘導体が用いられる。炭素水素鎖が長鎖であることにより、摩擦係数を低減し、潤滑特性を向上させることができる。
前記炭素数が10以上の直鎖状の炭化水素基の炭素数の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記炭素数は、25以下が好ましく、20以下がより好ましい。
炭化水素基は直鎖状であればよく、飽和炭化水素基でも、一部に二重結合を有する不飽和炭化水素基、又は一部に分岐を有する不飽和分枝炭化水素基のいずれでもよい。これらの中でも、耐摩耗性の観点から飽和炭化水素基であるアルキル基であることが好ましい。また、一部にも分岐を有さない直鎖状の炭化水素基であることも好ましい。
前記イオン液体としては、下記一般式(1)で表されることが好ましい。
ただし、前記一般式(1)中、Rは、炭素数が10以上の直鎖状の炭化水素基を含む基を表す。Xは、前記ブレンステッド酸の共役塩基を表す。
また、前記イオン液体としては、下記一般式(2)〜一般式(5)のいずれかで表されることがより好ましい。
ただし、前記一般式(2)中、Rは、炭素数が10以上の直鎖状の炭化水素基を含む基を表す。nは、1〜12の整数を表し、1〜6の整数が好ましい。
ただし、前記一般式(3)中、Rは、炭素数が10以上の直鎖状の炭化水素基を含む基を表す。

ただし、前記一般式(4)中、Rは、炭素数が10以上の直鎖状の炭化水素基を含む基を表す。lは、1〜12の整数を表し、1〜6の整数が好ましい。
ただし、前記一般式(5)中、Rは、炭素数が10以上の直鎖状の炭化水素基を含む基を表す。mは、0〜12の整数を表し、1〜6の整数が好ましい。
前記Rにおける前記炭素数が10以上の直鎖状の炭化水素基の炭素数の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記炭素数は、25以下が好ましく、20以下がより好ましい。
ここで、前記イオン液体の合成法について、一例を説明する。前記イオン液体は、ブレンステッド酸とブレンステッド塩基とから合成される。具体的には、例えばスルホン酸とグアニジン化合物を当モル量混合して中和することによって得られる。
本実施の形態における潤滑剤は、前述のイオン液体を単独で使用してもよいが、従来公知の潤滑剤と組み合わせて用いてもよい。例えば、長鎖カルボン酸、長鎖カルボン酸エステル、パーフルオロアルキルカルボン酸エステル、カルボン酸パーフルオロアルキルエステル、パーフルオロアルキルカルボン酸パーフルオロアルキルエステル、パーフルオロポリエーテル誘導体などと組み合わせて使用することが可能である。
また、厳しい条件で潤滑効果を持続させるために、質量比30:70〜70:30程度の配合比で極圧剤を併用してもよい。前記極圧剤は、境界潤滑領域において部分的に金属接触が生じたときに、これに伴う摩擦熱によって金属面と反応し、反応生成物皮膜を形成することにより、摩擦・摩耗防止作用を行うものである。前記極圧剤としては、例えば、リン系極圧剤、イオウ系極圧剤、ハロゲン系極圧剤、有機金属系極圧剤、複合型極圧剤などのいずれも使用できる。
また、必要に応じて防錆剤を併用してもよい。前記防錆剤としては、通常この種の磁気記録媒体の防錆剤として使用可能であるものであればよく、例えば、フェノール類、ナフトール類、キノン類、窒素原子を含む複素環化合物、酸素原子を含む複素環化合物、硫黄原子を含む複素環化合物などが挙げられる。また、前記防錆剤は、潤滑剤として混合して用いてもよいが、非磁性支持体上に磁性層を形成し、その上部に防錆剤層を塗布した後、潤滑剤層を塗布するというように、2層以上に分けて被着してもよい。
また、前記潤滑剤の溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)、エタノール等のアルコール系溶媒などから単独又は組み合わせて使用することができる。例えば、ノルマルヘキサンのような炭化水素系溶剤やフッ素系溶媒を混合しても使用することができる。
<2.磁気記録媒体>
次に、前述の潤滑剤を用いた磁気記録媒体について説明する。本発明の一実施形態として示す磁気記録媒体は、非磁性支持体上に少なくとも磁性層を有してなり、前記磁性層に前述の潤滑剤を保有してなるものである。
本実施の形態における潤滑剤は、磁性層が非磁性支持体表面に蒸着やスパッタリング等の手法により形成された、所謂、金属薄膜型の磁気記録媒体に適用することが可能である。また、非磁性支持体と磁性層との間に下地層を介した構成の磁気記録媒体にも適用することもできる。このような磁気記録媒体としては、磁気ディスク、磁気テープなどを挙げることができる
図2は、ハードディスクの一例を示す断面図である。このハードディスクは、基板11と、下地層12と、磁性層13と、カーボン保護層14と、潤滑剤層15とが順次積層された構造を有する。
また、図3は、磁気テープの一例を示す断面図である。この磁気テープは、バックコート層25と、基板21と、磁性層22と、カーボン保護層23と、潤滑剤層24とが順次積層された構造を有する。
図2に示す磁気ディスクにおいて、非磁性支持体は、基板11、下地層12が該当し、図3に示す磁気テープにおいて、非磁性支持体は、基板21が該当する。非磁性支持体として、Al合金板やガラス板等の剛性を有する基板を使用した場合、基板表面にアルマイト処理等の酸化皮膜やNi−P皮膜等を形成して、その表面を硬くしてもよい。
磁性層13、22は、メッキ、スパッタリング、真空蒸着、プラズマCVD等の手法により、連続膜として形成される。磁性層13、22としては、Fe、Co、Ni等の金属や、Co−Ni系合金、Co−Pt系合金、Co−Ni−Pt系合金、Fe−Co系合金、Fe−Ni系合金、Fe−Co−Ni系合金、Fe−Ni−B系合金、Fe−Co−B系合金、Fe−Co−Ni−B系合金等からなる面内磁化記録金属磁性膜や、Co−Cr系合金薄膜、Co−O系薄膜等の垂直磁化記録金属磁性薄膜が例示される。
特に、面内磁化記録金属磁性薄膜を形成する場合、予め非磁性支持体上にBi、Sb、Pb、Sn、Ga、In、Ge、Si、Tl等の非磁性材料を、下地層12として形成しておき、金属磁性材料を垂直方向から蒸着あるいはスパッタし、磁性金属薄膜中にこれら非磁性材料を拡散せしめ、配向性を解消して面内等方性を確保するとともに、抗磁力を向上するようにしてもよい。
また、磁性層13、22の表面に、カーボン膜、ダイヤモンド状カーボン膜、酸化クロム膜、SiO膜等の硬質な保護層14、23を形成してもよい。
このような金属薄膜型の磁気記録媒体に前述の潤滑剤を保有させる方法としては、図2及び図3に示すように、磁性層13、22の表面や、保護層14、23の表面にトップコートする方法が挙げられる。潤滑剤の塗布量としては、0.1mg/m〜100mg/mであることが好ましく、0.5mg/m〜30mg/mであることがより好ましく、0.5mg/m〜20mg/mであることが特に好ましい。
また、図3に示すように、金属薄膜型の磁気テープは、磁性層22である金属磁性薄膜の他に、バックコート層25が必要に応じて形成されていてもよい。
バックコート層25は、樹脂結合剤に導電性を付与するためのカーボン系微粉末や表面粗度をコントロールするための無機顔料を添加し塗布形成されるものである。本実施の形態においては、前述の潤滑剤を、バックコート層25に内添又はトップコートにより含有させてもよい。また、前述の潤滑剤を、磁性層22とバックコート層25のいずれにも内添、トップコートにより含有させてもよい。
また、他の実施の形態として、磁性塗料を非磁性支持体表面に塗布することにより磁性塗膜が磁性層として形成される、所謂、塗布型の磁気記録媒体にも潤滑剤の適用が可能である。塗布型の磁気記録媒体において、非磁性支持体や磁性塗膜を構成する磁性粉末、樹脂結合剤などは、従来公知のものがいずれも使用可能である。
例えば、前記非磁性支持体としては、例えば、ポリエステル類、ポリオレフィン類、セルロース誘導体、ビニル系樹脂、ポリイミド類、ポリアミド類、ポリカーボネート等に代表されるような高分子材料により形成される高分子支持体や、アルミニウム合金、チタン合金等からなる金属基板、アルミナガラス等からなるセラミックス基板、ガラス基板などが例示される。また、その形状も何ら限定されるものではなく、テープ状、シート状、ドラム状等、如何なる形態であってもよい。さらに、この非磁性支持体には、その表面性をコントロールするために、微細な凹凸が形成されるような表面処理が施されたものであってもよい。
前記磁性粉末としては、γ−Fe、コバルト被着γ−Fe等の強磁性酸化鉄系粒子、強磁性二酸化クロム系粒子、Fe、Co、Ni等の金属や、これらを含んだ合金からなる強磁性金属系粒子、六角板状の六方晶系フェライト微粒子等が例示される。
前記樹脂結合剤としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、塩化ビニリデン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、アクリロニトリル等の重合体、あるいはこれら二種以上を組み合わせた共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等が例示される。これら結合剤には、磁性粉末の分散性を改善するために、カルボン酸基やカルボキシル基、リン酸基等の親水性極性基が導入されてもよい。
前記磁性塗膜には、前記の磁性粉末、樹脂結合剤の他、添加剤として分散剤、研磨剤、帯電防止剤、防錆剤等が加えられてもよい。
このような塗布型の磁気記録媒体に前述の潤滑剤を保有させる方法としては、前記非磁性支持体上に形成される前記磁性塗膜を構成する前記磁性層中に内添する方法、前記磁性層の表面にトップコートする方法、若しくはこれら両者の併用等がある。また、前記潤滑剤を前記磁性塗膜中に内添する場合には、前記樹脂結合剤100質量部に対して0.2質量部〜20質量部の範囲で添加される。
また、前記潤滑剤を前記磁性層の表面にトップコートする場合には、その塗布量は0.1mg/m〜100mg/mであることが好ましく、0.5mg/m〜20mg/mであることがより好ましい。なお、前記潤滑剤をトップコートする場合の被着方法としては、イオン液体を溶媒に溶解し、得られた溶液を塗布若しくは噴霧するか、又はこの溶液中に磁気記録媒体を浸漬すればよい。
本実施の形態では、アセトニトリル中でのpKaが10以下であるブレンステッド酸と、好ましくは炭素数が10以上の直鎖状の炭化水素基を有するグアニジン誘導体であるブレンステッド塩基から形成されるイオン液体を含有する潤滑剤を用いることにより、良好な潤滑作用を発揮して摩擦係数を低減することができ、熱的に高い安定性を得ることができる。また、この潤滑作用は、高温、低温、高湿、低湿下等の厳しい条件下においても損なわれることはない。
したがって、本実施の形態における潤滑剤を適用した磁気記録媒体は、潤滑作用により、優れた走行性、耐摩耗性、耐久性等を発揮し、さらに、熱的安定性を向上させることができる。
<3.実施例>
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。本実施例では、イオン液体を合成し、イオン液体を含有する潤滑剤を作製した。そして、潤滑剤を用いて磁気ディスク及び磁気テープを作製し、それぞれディスク耐久性及びテープ耐久性について評価した。磁気ディスクの製造、ディスク耐久性試験、磁気テープの製造、及びテープ耐久性試験は、次のように行った。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
<磁気ディスクの製造>
例えば、国際公開第2005/068589号公報に従って、ガラス基板上に磁性薄膜を形成し、図2に示すような磁気ディスクを作製した。具体的には、アルミシリケートガラスからなる外径65mm、内径20mm、ディスク厚0.635mmの化学強化ガラスディスクを準備し、その表面をRmaxが4.8nm、Raが0.43nmになるように研磨した。ガラス基板を純水及び純度99.9%以上のイソプロピルアルコール(IPA)中で、それぞれ5分間超音波洗浄を行い、IPA飽和蒸気内に1.5分間放置後、乾燥させ、これを基板11とした。
この基板11上に、DCマグネトロンスパッタリング法によりシード層としてNiAl合金(Ni:50モル%、Al:50モル%)薄膜を30nm、下地層12としてCrMo合金(Cr:80モル%、Mo:20モル%)薄膜を8nm、磁性層13としてCoCrPtB合金(Co:62モル%、Cr:20モル%、Pt:12モル%、B:6モル%)薄膜を15nmとなるように順次形成した。
次に、プラズマCVD法によりアモルファスのダイヤモンドライクカーボンからなるカーボン保護層14を5nm製膜し、そのディスクサンプルを洗浄器内に純度99.9%以上のイソプロピルアルコール(IPA)中で10分間超音波洗浄を行い、ディスク表面上の不純物を取り除いた後に乾燥させた。その後、25℃50%相対湿度(RH)の環境においてディスク表面にイオン液体のIPA溶液を用いてディップコート法により塗布することで、潤滑剤層15を約1nm形成した。
<熱安定性測定>
TG/DTA測定では、セイコーインスツルメント社製EXSTAR6000を使用し、200ml/minの流量で空気中を導入しながら、10℃/minの昇温速度で30℃−600℃の温度範囲で測定を行った。
<ディスク耐久性試験1>
市販のひずみゲージ式ディスク摩擦・摩耗試験機を用いて、ハードディスクを14.7Ncmの締め付けトルクで回転スピンドルに装着後、ヘッドスライダーのハードディスクに対して内周側のエアベアリング面の中心が、ハードディスクの中心より17.5mmになるようにヘッドスライダーをハードディスク上に取り付けCSS耐久試験を行った。本測定に用いたヘッドは、IBM3370タイプのインライン型ヘッドであり、スライダーの材質はAl−TiC、ヘッド荷重は63.7mNである。本試験は、クリーン清浄度100、25℃60%RHの環境下で、CSS(Contact、Start、Stop)毎に摩擦力の最大値をモニターした。摩擦係数が1.0を超えた回数をCSS耐久試験の結果とした。CSS耐久試験の結果において、50,000回を超える場合には「>50,000」と表示した。また、耐熱性を調べるために、300℃の温度で3分間加熱試験を行った後のCSS耐久性試験を同様に行った。
<ディスク耐久性試験2(ピンオンディスク試験)>
図5に示すピンオンディスク試験機を用いて、以下の測定条件でアームに生じる摩擦力をストレインゲージで検出した。
〔測定条件〕
・測定装置: Tribotester TS−501(協和界面科学株式会社製)
・荷重 : 15mN
・摺動速度: 6mm/sec
・接触部 : 3mmφ SUSボール
・摺動距離: 20mm
・摺動回数: 100回
<磁気テープの製造>
図3に示すような断面構造の磁気テープを作製した。先ず、5μm厚の東レ製ミクトロン(芳香族ポリアミド)フィルムからなる基板21に、斜め蒸着法によりCoを被着させ、膜厚100nmの強磁性金属薄膜からなる磁性層22を形成した。次に、この強磁性金属薄膜表面にプラズマCVD法により10nmのダイヤモンドライクカーボンからなるカーボン保護層23を形成させた後、6ミリ幅に裁断した。このカーボン保護層23上にIPAに溶解したイオン液体を、膜厚が1nm程度となるように塗布して潤滑剤層24を形成し、サンプルテープを作製した。
<テープ耐久性試験>
各サンプルテープについて、温度−5℃環境下、温度40℃30%RH環境下のスチル耐久性、並びに、温度−5℃環境下、温度40℃90%RH環境下の摩擦係数及びシャトル耐久性について測定を行った。スチル耐久性は、ポーズ状態での出力が−3dB低下するまでの減衰時間を評価した。シャトル耐久性は、1回につき2分間の繰り返しシャトル走行を行い、出力が3dB低下するまでのシャトル回数で評価した。また、耐熱性を調べるために、100℃の温度で10分間加熱試験を行った後の耐久性試験も同様に行った。
ブレンステッド酸(HX)とブレンステッド塩基(B)とから形成されるイオン液体を含有し、前記ブレンステッド塩基としてのグアニジンが、炭素数が10以上の直鎖状の炭化水素基を有し、アセトニトリル中における前記ブレンステッド酸のpKaが、10以下である潤滑剤を合成して、熱安定性を及び磁気記録媒体の耐久性についての影響を調べた。
(実施例1)
<n−オクタデシルグアニジンの合成>
n−オクタデシルグアニジンの合成は、非特許文献(ROSS PHILLIPS AND H. T. CLARKE,THE PREPARATION OF ALKYLGUANIDINES,J.Am.Chem.Soc.Vol.45,pp.1755−1757)を参考にして行った。
メチルイソチオ尿素硫酸塩(和光純薬工業株式会社製)25.2g、及びオクタデシルアミン(東京化成工業社製;オクタデシルアミンを80質量%以上含む)55.0gをメタノール100mlに混合し、常温で1時間撹拌後、約60℃に加熱して6時間撹拌した。メルカプタンが発生するのでこれをNaClO溶液でトラップしながら反応を行った。メルカプタンの発生がなくなるのを確認し、反応液を1常温まで冷却後、析出した白色固体を濾取した。この白色固体にジエチルエーテル300mlを加え、常温で4時間リスラリーした後に白色固体を濾取した。50℃で減圧乾燥して、n−オクタデシルグアニジン硫酸塩62.0gを得た。収率96%。
このn−オクタデシルグアニジン硫酸塩30.3gと、テトラヒドロフラン500ccと、メタノール200ccと、25%水酸化ナトリウム溶液75gを水225ccに溶解させた溶液とを混合し、窒素雰囲気中62℃で1時間撹拌した。有機層をろ過後冷却し、析出した結晶を濾取した。50℃で真空乾燥を行い、無色結晶20.0gを得た。収率86%。さらにエタノールから再結晶を行った結晶の液体クロマトグラフィーによる純度は>98%であった。その質量スペクトルを図4に示すが、312.5に分子イオンピーク+1のピークがあることから、その構造が決定される。
<ノナフルオロブタンスルホン酸−n−オクタデシルグアニジン塩の合成>
n−オクタデシルグアニジン4.92gをエタノールに溶解させ、そこへn−ノナフルオロブタンスルホン酸4.75gのエタノール溶液を加えた。加熱還流を5時間行い、エタノールを乾燥後、ジクロルメタンに溶解させ、約20ccの水で3回洗浄し、洗浄液が中性になるのを確認後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、n−ノナフルオロブタンスルホン酸−n−オクタデシルグアニジン塩9.1gを得た。収率94%。溶媒除去後n−ヘキサンから再結晶を行った。
ここで、本明細書においてのFTIRの測定は、日本分光社製FT/IR−460を使用し、KBrプレート法あるいはKBr錠剤法を用いて透過法で測定を行った。そのときの分解能は4cm−1である。
また、TG/DTA測定では、セイコーインスツルメント社製EXSTAR6000を使用し、200ml/minの流量で空気中を導入しながら、10℃/minの昇温速度で30℃−600℃の温度範囲で測定を行った。
HNMR及び13CNMRスペクトルは、Varian MercuryPlus300核磁気共鳴装置(バリアン社製)で測定した。HNMRの化学シフトは、内部標準(0ppmにおけるTMSあるいは重水素化溶媒ピーク)との比較としてppmで表した。分裂パターンは、一重項をs、二重項をd、三重項をt、多重項をm、ブロードピークをbrとして示した。
生成物のFTIR吸収とその帰属を以下に示す。
1138cm−1にSOの対称伸縮振動、1281cm−1にCFの対称伸縮振動、1365cm−1にSO結合の逆対称伸縮振動、1471cm−1にC=Nの伸縮振動、1668cm−1にC−N結合の逆対称伸縮振動、2851cm−1にCHの対称伸縮振動、2920cm−1にCHの逆対称伸縮振動、3297−3459cm−1にNH結合の伸縮振動が見られた。
また、重トリフルオロ酢酸(CFCOOD)中でのプロトン(H)NMR及びカーボン(13C)NMRのピークとその帰属について、以下に示す。
H−NMR(CFCOOD,δppm);0.912(t,3H,J=7.2Hz), 1.270−1.500(m,30H), 1.723(brs,2H), 3.286(t,2H,J=7.2Hz)
13C−NMR(CFCOOD,δppm);14.683, 24.345, 28.328, 30.206, 30.832, 31.198, 31.320, 31.396, 31.488, 33.808, 43.958, 158.721
これらのスペクトルからn−ノナフルオロブタンスルホン酸オクタデシルグアニジン塩が同定された。
なお、アセトニトリル中におけるn−ノナフルオロブタンスルホン酸のpKaは、0.7であった。
(実施例2)
<ヘキサフルオロシクロプロパン−1,3−ジスルホンイミド−n−オクタデシルグアニジン塩の合成>
実施例1で合成したn−オクタデシルグアニジン3.00gをエタノールに溶解させ、ヘキサフルオロシクロプロパン−1,3−ジスルホンイミド2.83gのエタノール溶液を加えた。加熱還流を5時間行い、エタノールを乾燥後ジクロルメタンに溶解させ、約20ccの水で3回洗浄し、洗浄液が中性になるのを確認後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ヘキサフルオロシクロプロパン−1,3−ジスルホンイミド−n−オクタデシルグアニジン塩3.85gを得た。収率66%。溶媒除去後n−ヘキサンとエタノールの混合溶媒から再結晶を行った。
生成物のFTIR吸収とその帰属を以下に示す。
1156cm−1にSOの対称伸縮振動、1281cm−1にCFの対称伸縮振動、1357cm−1にSO結合の逆対称伸縮振動、1473cm−1にC=Nの伸縮振動、1661cm−1にC−N結合の逆対称伸縮振動、2851cm−1にCHの対称伸縮振動、2917cm−1にCHの逆対称伸縮振動、3260−3475cm−1にNH結合の伸縮振動が見られた。
また、重トリフルオロ酢酸(CFCOOD)中でのプロトン(H)NMR及びカーボン(13C)NMRのピークとその帰属について、以下に示す。
H−NMR(CFCOOD,δppm);0.889(t,3H,J=7.2Hz), 1.200−1.400(m,30H), 1.572(5重線,2H), 3.145(t,2H,J=7.2Hz)
13C−NMR(CFCOOD,δppm);14.429, 23.709, 29.875, 30.181, 30.318, 30.455, 30.623, 30.669, 30.761, 33.065, 42.483, 158.619
これらのスペクトルからヘキサフルオロシクロプロパン−1,3−ジスルホンイミド−n−オクタデシルグアニジン塩が同定された。
なお、アセトニトリル中におけるヘキサフルオロシクロプロパン−1,3−ジスルホンイミドのpKaは、−0.8であった。
(実施例3)
[イオン液体1]
実施例1に示すように、ノナフルオロブタンスルホン酸−n−オクタデシルグアニジン塩を合成して、イオン液体1として用いた。5%、10%、20%重量減少温度はそれぞれ335.1℃、355.8℃、374.5℃であり、比較例1として示したヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸オクタデシルアンモニウム塩よりもそれぞれ7.1℃、12.4℃、16.1℃高く、また分解時のメイン発熱温度も20℃高い。比較例2のカルボン酸アンモニウム塩と比較しても130℃以上高いことが分かる。また市販品のパーフルオロポリエーテル(Z−DOL)では10%、20%重量減少温度はそれぞれ197℃、226℃であり、Z−TETRAOLでは261℃、282℃であることから、重量減少温度で80℃以上安定であることが分かる。
つまり、アンモニウム塩を塩基性が高いグアニジン塩とすることにより熱安定性が改善されていることがわかる。
(実施例4)
[イオン液体2]
実施例2に示すように、ヘキサフルオロシクロプロパン−1,3−ジスルホンイミド−n−オクタデシルグアニジン塩を合成してイオン液体2として用いた。5%、10%、20%重量減少温度はそれぞれ322.7℃、346.4℃、367.3℃であり、比較例1として示したヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸オクタデシルアンモニウム塩よりも10%、20%重量減少温度が改善されており、また分解時のメイン発熱温度も26℃高い。
このことからも、アンモニウム塩を塩基性が高いグアニジン塩とすることにより熱安定性が改善されていることが一般化できることがわかる。
(比較例1)
[比較イオン液体3]
表2に示すように、ヘプタデカフルオロオクタデカンスルホン酸オクタデシルアンモニウム塩(C17SO 1837)を比較例1の比較イオン液体3として用いた。5%、10%、20%重量減少温度はそれぞれ328.0℃、343.4℃、358.4℃であり、分解時のメイン発熱温度は386.3℃である。
なお、ヘプタデカフルオロオクタデカンスルホン酸オクタデシルアンモニウム塩は以下の方法で合成した。
ステアリルアミン(オクタデシルアミン)をn−ヘキサン85質量%/エタノール15質量%の混合溶媒に溶解させ、エタノールに溶解させた等モルのパーフルオロオクタンスルホン酸を加え、60℃で30分間加熱した。溶媒除去後、n−ヘキサンに少量のエタノールを混合させた溶媒から再結晶させ、無色の結晶(C17SO 1837)を得た。
(比較例2)
[比較イオン液体4]
表2に示すように、ブレンステッド酸としてペンタデカフルオロオクタン酸オクタデシルアンモニウム塩を比較イオン液体4として用いた。5%、10%、20%重量減少温度はそれぞれ206.9℃、215.8℃、223.4℃であり、分解時のメイン吸熱温度は236.4℃である。
なお、ペンタデカフルオロオクタン酸オクタデシルアンモニウム塩は、オクタデシルアミンに対して当量のパーフルオロオクタン酸を混合して中和することで合成した。
なお、アセトニトリル中におけるペンタデカフルオロオクタン酸のpKaは、12.65であった(J. Comp. Chem. 2009, Vol.30, pp.799−810参照)。
(比較例3)
市販品で磁気記録媒体用潤滑剤として一般的に使用されている末端に水酸基をもつ分子量約2000のパーフルオロポリエーテル(Z−DOL)を比較例3の比較イオン液体5として用いた。10%、20%重量減少温度はそれぞれ165.0℃、197.0℃、226.0℃である。重量減少が蒸発であり、明確な吸熱ピークは持たない。
(比較例4)
市販品で磁気記録媒体用潤滑剤として一般的に使用されている末端に水酸基を複数個持つ分子量約2000のパーフルオロポリエーテル(Z−TETRAOL)を比較例4の比較イオン液体5として用いた。10%、20%重量減少温度はそれぞれ261.0℃、282.0℃であり、分解時のメイン発熱温度は386.3℃である。重量減少が蒸発であり、明確な吸熱ピークは持たない。
続いて、ディスク耐久性試験1を行った。
(実施例5)
イオン液体1を含有する潤滑剤を用いて、前述の磁気ディスクを作製した。表3に示すように、磁気ディスクのCSS測定は、50,000回を超え、加熱試験後のCSS測定も50,000回を超え、優れた耐久性を示した。
(実施例6)
イオン液体2を含有する潤滑剤を用いて、前述の磁気ディスクを作製した。表3に示すように、磁気ディスクのCSS測定は、50,000回を超え、加熱試験後のCSS測定も50,000回を超え、優れた耐久性を示した。
(比較例5)
比較例1の比較イオン液体3を含有する潤滑剤を用いて、前述の磁気ディスクを作製した。表3に示すように、磁気ディスクのCSS測定は、50,000回を超え、加熱試験後のCSS測定も50,000回を超え、優れた磁気ディスク耐久性を示した。
(比較例6)
比較例2の比較イオン液体4を含有する潤滑剤を用いて、前述の磁気ディスクを作製した。表3に示すように、磁気ディスクのCSS測定は、50,000回を超え優れた耐久性を示したが、加熱試験後のCSS測定は891回であった。
(比較例7)
Z−DOLを含有する潤滑剤を用いて、前述の磁気ディスクを作製した。表3に示すように、磁気ディスクのCSS測定は、50,000回を超えたものの、加熱試験後のCSS測定は12,000回であり、加熱試験により耐久性が悪化した。
(比較例8)
Z−TETRAOLを含有する潤滑剤を用いて、前述の磁気ディスクを作製した。表3に示すように、磁気ディスクのCSS測定は、50,000回を超えたものの、加熱試験後のCSS測定は36,000回であり、加熱試験により耐久性が悪化した。
続いて、ディスク耐久性試験2を行った。
(実施例7)
<ディスク耐久性試験2>
図5に示すピンオンディスク試験機を用いて、実施例1の潤滑剤について摩擦試験を行った。3mmφのSUSピンに荷重15mNをかけて試料ディスクに押し当て、移動架台を6mms−1の速度で20mm幅で往復運動をさせ、そのときに生じる摩擦力をストレインゲージで測定した。その往復運動での摩擦係数の結果を図6に示した。
(比較例9)
<ディスク耐久性試験2>
実施例7と同様にして、環状グアニジンを含みかつ長鎖のアルキル鎖を持つ比較イオン液体5について摩擦試験を行い、結果を図6に示した。
なお、比較イオン液体5は、国際公開第2014/104342号パンフレットに記載の実施例41の7−n−オクタデシル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]−5−デセン(C18−TBD) ペンタデカフルオロオクタンスルホン酸塩(下記構造)であり、国際公開第2014/104342号パンフレットに記載の実施例41の合成方法にしたがって、合成した。
(比較例10)
<ディスク耐久性試験2>
実施例7と同様にして、環状グアニジンを含みかつ長鎖のアルキル鎖を持たない比較イオン液体6について摩擦試験を行い、結果を図6に示した。
なお、比較イオン液体6は、国際公開第2014/104342号パンフレットに記載の比較例28のTBDペンタデカフルオロスルホン酸塩(下記構造)であり、国際公開第2014/104342号パンフレットに記載の比較例28の合成方法にしたがって、合成した。
実施例7に示すように、非環状構造のグアニジン系イオン液体1の摩擦係数は繰り返し摺動に対して安定して低く、またその摩擦係数は長鎖のアルキル鎖を持つ環状構造グアニジン系の比較イオン液体5よりも低かった。また長鎖のアルキル鎖を持たない環状構造グアニジン系の比較イオン液体6の摩擦は高かった。
これから、一般的なピンオンディスク摩擦試験では、長鎖のアルキル鎖を持つ非環状グアニジン系のイオン液体では、環状構造のグアニジン系イオン液体よりも摩擦係数は安定して低いことが分かった。
次に、新規グアニジン塩のイオン液体を用いた潤滑剤、及び比較イオン液体を磁気テープに適用した例を示す。
(実施例8)
イオン液体1を含有する潤滑剤を用いて、前述の磁気テープを作製した。表4に示すように、100回のシャトル走行後の磁気テープの摩擦係数は、温度−5℃の環境下で0.20であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で0.22であった。また、スチル耐久試験は、温度−5℃の環境下で60min超であり、温度40℃、相対湿度30%環境下で60min超であった。また、シャトル耐久試験は、温度−5℃の環境下で200回超であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で200回超であった。また、加熱試験後の100回のシャトル走行後の磁気テープの摩擦係数は、温度−5℃の環境下で0.21であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で0.23であった。また、加熱試験後のスチル耐久試験は、温度−5℃の環境下で60min超であり、温度40℃、相対湿度30%環境下で60min超であった。また、加熱試験後のシャトル耐久試験は、温度−5℃の環境下で200回超であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で200回超であった。以上の結果より、イオン液体1を含有する潤滑剤を塗布した磁気テープは、優れた摩擦特性、スチル耐久性、及びシャトル耐久性を有することが分かった。
(実施例9)
イオン液体2を含有する潤滑剤を用いて、前述の磁気テープを作製した。表4に示すように、100回のシャトル走行後の磁気テープの摩擦係数は、温度−5℃の環境下で0.20であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で0.23であった。また、スチル耐久試験は、温度−5℃の環境下で60min超であり、温度40℃、相対湿度30%環境下で60min超であった。また、シャトル耐久試験は、温度−5℃の環境下で200回超であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で200回超であった。また、加熱試験後の100回のシャトル走行後の磁気テープの摩擦係数は、温度−5℃の環境下で0.23であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で0.24であった。また、加熱試験後のスチル耐久試験は、温度−5℃の環境下で60min超であり、温度40℃、相対湿度30%環境下で60min超であった。また、加熱試験後のシャトル耐久試験は、温度−5℃の環境下で200回超であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で200回超であった。以上の結果より、イオン液体2を含有する潤滑剤を塗布した磁気テープは、優れた摩擦特性、スチル耐久性、及びシャトル耐久性を有することが分かった。
(比較例11)
比較例1の比較イオン液体3を含有する潤滑剤を用いて、前述の磁気テープを作製した。表4に示すように、100回のシャトル走行後の磁気テープの摩擦係数は、温度−5℃の環境下で0.20であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で0.23であった。また、スチル耐久試験は、温度−5℃の環境下で60min超であり、温度40℃、相対湿度30%環境下で60min超であった。また、シャトル耐久試験は、温度−5℃の環境下で200回超であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で200回超であった。また、加熱試験後の100回のシャトル走行後の磁気テープの摩擦係数は、温度−5℃の環境下で0.23であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で0.26であった。また、加熱試験後のスチル耐久試験は、温度−5℃の環境下で60min超であり、温度40℃、相対湿度30%環境下で60min超であった。また、加熱試験後のシャトル耐久試験は、温度−5℃の環境下で200回超であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で200回超であった。以上の結果より、比較イオン液体3を含有する潤滑剤を塗布した磁気テープは、優れた摩擦特性、スチル耐久性、及びシャトル耐久性を有することが分かった。この比較例潤滑剤は優れた磁気テープ耐久性を示した。
(比較例12)
比較例2の比較イオン液体4を含有する潤滑剤を用いて、前述の磁気テープを作製した。表4に示すように、100回のシャトル走行後の磁気テープの摩擦係数は、温度−5℃の環境下で0.22であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で0.25であった。また、スチル耐久試験は、温度−5℃の環境下で60min超であり、温度40℃、相対湿度30%環境下で60min超であった。また、シャトル耐久試験は、温度−5℃の環境下で200回超であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で200回超であった。また、加熱試験後の100回のシャトル走行後の磁気テープの摩擦係数は、温度−5℃の環境下で0.29であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で0.31であった。また、加熱試験後のスチル耐久試験は、温度−5℃の環境下で45minであり、温度40℃、相対湿度30%環境下で36minであった。また、加熱試験後のシャトル耐久試験は、温度−5℃の環境下で130回であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で123回であった。以上の結果より、比較イオン液体4を含有する潤滑剤を塗布した磁気テープは、優れた摩擦特性、スチル耐久性、及びシャトル耐久性を有することが分かった。
(比較例13)
Z−DOLを含有する潤滑剤を用いて、前述の磁気テープを作製した。表4に示すように、100回のシャトル走行後の磁気テープの摩擦係数は、温度−5℃の環境下で0.25であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で0.30であった。また、スチル耐久試験は、温度−5℃の環境下で12minであり、温度40℃、相対湿度30%環境下で48minであった。また、シャトル耐久試験は、温度−5℃の環境下で59回であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で124回であった。また、加熱試験後の100回のシャトル走行後の磁気テープの摩擦係数は、温度−5℃の環境下で0.32であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で0.35であった。また、加熱試験後のスチル耐久試験は、温度−5℃の環境下で12minであり、温度40℃、相対湿度30%環境下で15minであった。また、加熱試験後のシャトル耐久試験は、温度−5℃の環境下で46回であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で58回であった。以上の結果より、Z−DOLを含有する潤滑剤を塗布した磁気テープは、スチル耐久性、及びシャトル耐久性の劣化が大きいことが分かった。
(比較例14)
Z−TETRAOLを含有する潤滑剤を用いて、前述の磁気テープを作製した。表4に示すように、100回のシャトル走行後の磁気テープの摩擦係数は、温度−5℃の環境下で0.22であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で0.26であった。また、スチル耐久試験は、温度−5℃の環境下で25minであり、温度40℃、相対湿度30%環境下で35minであった。また、シャトル耐久試験は、温度−5℃の環境下で65回であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で156回であった。また、加熱試験後の100回のシャトル走行後の磁気テープの摩擦係数は、温度−5℃の環境下で0.28であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で0.32であった。また、加熱試験後のスチル耐久試験は、温度−5℃の環境下で23minであり、温度40℃、相対湿度30%環境下で31minであった。また、加熱試験後のシャトル耐久試験は、温度−5℃の環境下で55回であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で126回であった。以上の結果より、Z−TETRAOLを含有する潤滑剤を塗布した磁気テープは、スチル耐久性、及びシャトル耐久性の劣化が大きいことが分かった。
表3、及び表4から、パーフルオロスルホン酸及びパーフルオロスルホイミドを酸としてグアニジンを塩基として持つイオン液体系潤滑剤を用いることにより、優れた耐熱性及び磁気テープ及び磁気ディスクにおける耐久性を得られることが分かった。
以上の説明からも明らかなように、パーフルオロスルホン酸及びパーフルオロスルホイミドを酸としてグアニジンを塩基として持つイオン液体系潤滑剤は、対応するアンモニウム塩よりも分解温度及び5%、10%、20%重量減少温度が高く熱安定性に優れる。また高温条件下においても従来のパーフルオロポリエーテルと比較しても優れた潤滑性を保つことができ、また、長期に亘って潤滑性を保つことができる。したがって、このイオン液体を含有する潤滑剤を用いた磁気記録媒体は、非常に優れた走行性、耐摩耗性、及び耐久性を得ることができる。
11 基板
12 下地層
13 磁性層
14 カーボン保護層
15 潤滑剤層
21 基板
22 磁性層
23 カーボン保護層
24 潤滑剤層
25 バックコート層

Claims (5)

  1. ブレンステッド酸(HX)と、ブレンステッド塩基(B)とから形成されるイオン液体を含有し、
    前記イオン液体が、下記一般式(2)で表され、
    アセトニトリル中における前記ブレンステッド酸のpKaが、10以下であることを特徴とする潤滑剤。
    ただし、前記一般式(2)中、R は、炭素数が10以上の直鎖状の炭化水素基を含む基を表す。nは、1〜12の整数を表す。
  2. ブレンステッド酸(HX)と、ブレンステッド塩基(B)とから形成されるイオン液体を含有し、
    前記イオン液体が、下記一般式(3)で表され、
    アセトニトリル中における前記ブレンステッド酸のpKaが、10以下であることを特徴とする潤滑剤。
    ただし、前記一般式(3)中、R は、炭素数が10以上の直鎖状の炭化水素基を含む基を表す。
  3. ブレンステッド酸(HX)と、ブレンステッド塩基(B)とから形成されるイオン液体を含有し、
    前記イオン液体が、下記一般式(4)で表され、
    アセトニトリル中における前記ブレンステッド酸のpKaが、10以下であることを特徴とする潤滑剤。
    ただし、前記一般式(4)中、R は、炭素数が10以上の直鎖状の炭化水素基を含む基を表す。lは、1〜12の整数を表す。
  4. ブレンステッド酸(HX)と、ブレンステッド塩基(B)とから形成されるイオン液体を含有し、
    前記イオン液体が、下記一般式(5)で表され、
    アセトニトリル中における前記ブレンステッド酸のpKaが、10以下であることを特徴とする潤滑剤。
    ただし、前記一般式(5)中、R は、炭素数が10以上の直鎖状の炭化水素基を含む基を表す。mは、0〜12の整数を表す。
  5. 非磁性支持体と、前記非磁性支持体上に磁性層と、前記磁性層上に請求項1から4のいずれかに記載の潤滑剤とを有することを特徴とする磁気記録媒体。
JP2015051427A 2015-03-13 2015-03-13 イオン液体、潤滑剤及び磁気記録媒体 Active JP6576656B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015051427A JP6576656B2 (ja) 2015-03-13 2015-03-13 イオン液体、潤滑剤及び磁気記録媒体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015051427A JP6576656B2 (ja) 2015-03-13 2015-03-13 イオン液体、潤滑剤及び磁気記録媒体

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016169345A JP2016169345A (ja) 2016-09-23
JP6576656B2 true JP6576656B2 (ja) 2019-09-18

Family

ID=56982144

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015051427A Active JP6576656B2 (ja) 2015-03-13 2015-03-13 イオン液体、潤滑剤及び磁気記録媒体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6576656B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN109913300B (zh) * 2019-03-28 2022-12-16 乐福思健康用品有限公司 一种可生物降解的环保型润滑剂及其制备方法
KR20230002572A (ko) * 2020-04-16 2023-01-05 토탈에너지스 원테크 구아니디늄계 이온성 액체 및 윤활제 첨가제로서의 그의 용도

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE10325051A1 (de) * 2003-06-02 2004-12-23 Merck Patent Gmbh Ionische Flüssigkeiten mit Guanidinium-Kationen
JP2008074947A (ja) * 2006-09-21 2008-04-03 Nissan Motor Co Ltd 低摩擦摺動機構及びこれを用いた摺動システム
DE102007034353A1 (de) * 2007-07-24 2009-01-29 Evonik Goldschmidt Gmbh Verwendung von ionischen Flüssigkeiten für die spanlose Umformung von metallischen Werkstücken
JPWO2010029945A1 (ja) * 2008-09-09 2012-02-02 協和発酵ケミカル株式会社 油類用添加剤およびこれを含有する潤滑油組成物
JP6283515B2 (ja) * 2012-12-28 2018-02-21 デクセリアルズ株式会社 イオン液体、潤滑剤及び磁気記録媒体
JP6042781B2 (ja) * 2013-08-21 2016-12-14 デクセリアルズ株式会社 潤滑剤及び磁気記録媒体

Also Published As

Publication number Publication date
JP2016169345A (ja) 2016-09-23

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6294158B2 (ja) イオン液体、潤滑剤及び磁気記録媒体
JP6305844B2 (ja) イオン液体、潤滑剤及び磁気記録媒体
JP6283515B2 (ja) イオン液体、潤滑剤及び磁気記録媒体
JP6374708B2 (ja) イオン液体、潤滑剤及び磁気記録媒体
US20200216773A1 (en) Ionic Liquid, Lubricant, and Magnetic Recording Medium
JP6862254B2 (ja) イオン液体、潤滑剤及び磁気記録媒体
JP6305845B2 (ja) イオン液体、潤滑剤及び磁気記録媒体
JP2016009509A (ja) 磁気記録媒体用潤滑剤、及び磁気記録媒体
JP6576656B2 (ja) イオン液体、潤滑剤及び磁気記録媒体
WO2017141775A1 (ja) イオン液体、潤滑剤及び磁気記録媒体
JP6780965B2 (ja) 潤滑剤及び磁気記録媒体
JP6702778B2 (ja) イオン液体、潤滑剤及び磁気記録媒体
WO2017022788A1 (ja) イオン液体、潤滑剤及び磁気記録媒体
JP6663793B2 (ja) イオン液体、潤滑剤及び磁気記録媒体
WO2017030122A1 (ja) イオン液体、潤滑剤及び磁気記録媒体
JP6780945B2 (ja) イオン液体、潤滑剤及び磁気記録媒体
JP6702816B2 (ja) イオン液体、潤滑剤及び磁気記録媒体
WO2016121439A1 (ja) イオン液体、潤滑剤及び磁気記録媒体

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20150408

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20171213

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20180815

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20180828

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20181009

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20190220

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20190402

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190606

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20190613

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20190730

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20190821

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6576656

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250