JP6575382B2 - 画像形成装置 - Google Patents
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Description
このような熱定着を行う構成では、画像形成の実行指示を待っている待機中に、定着部材の温度が熱定着に必要な定着温度やこれよりも低い節電温度などの目標温度に維持されるように定着部のヒーターへの供給電力の制御が行われることが多い。
このセンサーとしては、定着部材とは接触しない非接触式のものを用いる構成が多い。
これは、定着部材がローラーやベルトなどの回転体の場合に接触式のセンサーを用いると、ローラーやベルト表面のうちセンサーとの接触部分がその回転に伴って徐々に摩耗していき、定着部材の寿命が短くなり易いからである。
センサー自体の温度が変動すると、定着部材の温度が一定でもセンサーによる温度検出結果に変動が生じ易くなる。例えば、定着部材の温度が本来の目標温度に保たれている状態で、外気が定着部に流入してセンサーが冷やされ、センサー自体の温度が低下すると、その温度低下に応じた分、センサーからは定着部材の温度が目標温度よりも低下したことを示す誤った結果が出力されることが生じ易い。このようになると、目標温度との差分を取り戻すべく、ヒーターの加熱により定着部材が目標温度からさらに昇温されてしまう。
上記では非接触式のセンサーの例を説明したが、これに限られない。例えば、接触式のセンサーでも外部からの風の影響を受けてセンサーの検出温度が変動することにより定着部材の温度が目標温度よりも高くなる状態が続けば、ヒーターへの無駄な電力消費が多くなったり、定着部材の熱劣化が進んだりすることが生じ得る。
さらに、前記検出手段は、前記定着部材と非接触のセンサーであり、前記指標値は、前記センサーの検出温度の単位時間当たりにおける温度変化の絶対値であるとしても良い。
また、前記流入した外気の風速、風量または風圧を計測する計測手段を備え、前記指標値は、前記計測手段の計測値であるとしても良い。
さらに、前記警告手段は、前記判断を行うと、さらに前記ヒーターへの電力供給を遮断して画像形成の実行を禁止し、当該禁止後、ユーザーによる所定の解除操作の実行を判断すると、前記警告出力を中止し、画像形成の実行禁止の解除および前記ヒーターへの電力供給の再開を行うとしても良い。
ここで、前記警告手段は、前記判断を行っても、前記温調制御手段に前記制御を継続させるとしても良い。
さらに、前記警告は、当該画像形成装置の設置場所の変更を促すもの、当該画像形成装置の向きの変更を促すもの、および前記排出口を塞ぐための閉塞部材の装着を促すもののうち、少なくとも一つであるとしても良い。
(1)全体構成
図1は、画像形成装置10の全体構成を示すブロック図である。
同図に示すように、画像形成装置10は、周知の電子写真方式により画像を形成するものであり、画像読取部1と、画像プロセス部2と、中間転写部3と、給送部4と、定着部5と、全体制御部6と、操作部7とを備える。
画像プロセス部2は、Y〜K色のそれぞれに対応する作像部20Y〜20Kを備えている。作像部20Yは、矢印で示す方向に回転する感光体ドラム21と、その周囲に配設された帯電部22、露光部23、現像部24、一次転写ローラー25、感光体ドラム21の表面を清掃するためのクリーナー26などを備えており、画像読取部1で読み取られた原稿の画像データまたは外部の端末装置から送られて来た画像データに基づき、公知の帯電、露光、現像工程を経て感光体ドラム21上にY色のトナー像を作像する。この構成は、他の作像部20M、20C、20Kについても同様であり、同図では符号が省略されているが、対応する色のトナー像が感光体ドラム21上に作像される。
カラーの画像形成を実行する場合には、作像部20Y〜20Kのそれぞれ毎に、対応する色のトナーが感光体ドラム21上に作像され、その作像されたトナー像のそれぞれが一次転写ローラー25の静電作用により中間転写ベルト31上に一次転写される。
給送部4は、給紙カセット41からシート、ここでは用紙Sを1枚ずつ用紙搬送路43上に繰り出して、繰り出された用紙Sを二次転写ローラー32に送る。
定着部5は、搬送されて来る用紙Sを加熱、加圧して、用紙S上の各色トナー像を用紙Sに定着させるものであり、筒状の定着ローラー51(定着部材)と、加圧ローラー52と、定着ヒーター53と、温度検出センサー54と、サーモスタット55を備える。
定着ヒーター53は、例えば細長状のハロゲンヒーターであり、筒状の定着ローラー51に挿通され、電源60(図2)からの電力供給により点灯して発熱する。
定着ローラー51は、定着ヒーター53から発せられる熱により加熱され、同図の矢印で示す方向に回転する。この定着ローラー51と加圧ローラー52との圧接部59(定着ニップ:搬送方向長さ(ニップ幅)が例えば7mm)を用紙Sが通過する際に、用紙S上の各色トナー像が定着ローラー51の熱によりシートSに熱定着される。
定着部5を通過後の用紙Sは、排出ローラー対33を介して、装置筐体10aに設けられた排出口48から排出され、排出トレイ47に収容される。なお、感光体ドラム11、中間転写ベルト31、二次転写ローラー32、定着ローラー51、排出ローラー対33などの各回転部材は、駆動モーター9の回転駆動力により回転する。
全体制御部6は、ユーザーによる操作部7の入力情報などに基づき、画像読取部1〜定着部5を統括的に制御して、スキャンジョブ、コピージョブ、プリントジョブなどを円滑に実行させる。また、後述の定着温調制御や警告制御を実行する。
図2は、全体制御部6の構成を示すブロック図である。
同図に示すように全体制御部6は、通信インターフェース(I/F)部61と、CPU62と、ROM63と、RAM64と、定着制御部65を備え、それぞれが相互に通信可能になっている。
CPU(Central Processing Unit)62は、ROM(Read Only Memory)63から必要なプログラムを読み出して、画像読取部1、画像プロセス部2などの動作を制御して、コピーやプリントなどの各ジョブを円滑に実行させる。また、CPU62は、操作部7からの入力情報に基づきコピージョブの開始等の制御を行う。さらに、CPU62は、画像形成時には、駆動モーター9を回転駆動させて、感光体ドラム11や定着ローラー51などを回転させる制御と、画像形成を行っておらず画像形成の実行指示を待っている間(画像形成の実行待機中:以下、「待機中」という。)には、駆動モーター9の回転を停止させる制御を行う。
定着制御部65は、定着ローラー51の表面温度が所定の目標温度(例えば、待機中について185℃など)に維持されるように、温度検出センサー54の温度検出結果に基づき定着ヒーター53のオン(点灯)とオフ(消灯)を切り換える温調制御を行う。
具体的には、本実施の形態では定着ヒーター53とスイッチ(SW)58とサーモスタット55とが直列接続されてなる回路に電源60が接続される構成になっている。スイッチ58としては、例えばトライアックが用いられる。
図3(a)は、用紙搬送路43のうち定着部5の定着ニップ59から排出口48までの湾曲状の経路部分45を拡大して示す図であり、図3(b)は、排出ローラー対33を図3(a)の矢印Aで示す方向から見たときの図であり、排出ローラー対33の一部分だけを示している。
一方、待機中には、ガイド部材45a、45bの間を用紙Sが搬送されていない。このため、例えば図4(a)や(b)の模式図に記載の例のようにエアコンや窓からの風(外気)が画像形成装置10の排出口48に当たると、図3(a)に記載のように外気8(破線)が排出口48から装置筐体10aの内部(機内)に流入する。
排出ローラー対33を通過した外気8は、図3(a)に示すように用紙などの障害物が何も存在しないガイド部材45a、45bの間の空間を通って定着部5に流入し、温度検出センサー54のサーミスター54aの周辺にも流れる。
このような問題に対し、例えば、画像形成装置をエアコンや窓からの風が直接当たらない場所に設置してほしい旨が記載されたチラシを新品の画像形成装置に同梱して、ユーザーに注意を喚起することも可能である。ところが、そのようなチラシは新品の設置時にだけユーザーに見られることがほとんどであり、その後、忘れられてしまえば、問題の解決に至らない。
まず、待機中に温度検出センサー54の検出結果を取得する。この取得は、例えば一定周期(0.1秒間隔など)ごとに繰り返し実行される。
温度検出センサー54の検出結果を取得する度に、その検出結果に基づき定着ローラー51の温度を求め、求めた温度が目標温度よりも低い所定の閾値Tb(サーミスター54aの周辺の雰囲気温度が低下しても定着ローラー51の過昇温にまでは至らないと想定されると当該雰囲気温度の許容範囲の下限値)をさらに下回ったか否かを判断する。
以下、温度検出センサー54による検出温度が外気8によりどのように変化し、その変化により定着ローラー51の表面温度がどのように変動するのかについて具体的に説明し、続いて待機中に警告制御を実行すべき理由および警告制御の内容について説明する。
図5は、外気8が画像形成装置10に当たっていない状態で画像形成装置10の電源スイッチ(不図示)のオン(商用電源の投入)からウォームアップが開始され、ウォームアップの終了後に待機中に遷移する場合における定着ローラー51の表面温度についての目標温度と検出温度と補正後温度のグラフを示す図である。
待機中は、駆動モーター9が回転停止状態で用紙Sの搬送が行われず、定着ローラー51の表面温度が目標温度(同図の例では185℃)に維持されるように定着ヒーター53を制御しながら、画像形成動作の開始指示を待っている状態である。
この温度差を補正するための補正式が予め決められており、温度検出センサー54の検出結果にその補正を施した後の温度が補正後温度のグラフになる。
同図の目標温度と検出温度と補正後温度のグラフは、図5の待機中における各グラフと略等しい。ローラー温度は、接触式のセンサーを別途用いて、定着ローラー51の表面温度を直接測定した結果を示している。図6(a)に示す補正後温度のグラフとローラー温度のグラフが略一致しており、補正後温度が定着ローラー51の表面温度に略等しいことが判る。
図6(b)は、図6(a)に示す検出温度と補正後温度のそれぞれにおける単位時間(1秒)当たりの温度変化量のグラフを示す図である。
すなわち、0.1秒単位で検出温度をサンプリングしつつ、1秒単位で、現在から過去に1秒間遡った時点Txまでの間における平均温度(10回分の検出温度を平均した値)をTp、過去の時点Txからさらに過去に1秒間遡った時点Tyまでの間における平均温度(10回分の検出温度を平均した値)をTqとしたとき、(Tp−Tq)で表される。
図6(a)と(b)を比較すると、検出温度と補正後温度のそれぞれについて、図6(a)に示すグラフの温度変化が大きくなる時間に図6(b)に示すグラフのピークが表れていることが判り、単位時間当たりの温度変化量は、検出温度よりも補正後温度の方が大きくなっていることが判る。
排出口風速は、排出口48に当たっている外気8の風速を示しており、排出口風速が0の場合、外気8が排出口48に当たっていない通常時を示している。定着ローラー表面温度とサーミスター検出温度の各値は、異なる風速のそれぞれごとに、待機中のある同時点での検出結果を示す。
排出口風速(m/秒)が0.90の場合、定着ローラー表面温度が通常時より上がり、サーミスター検出温度が通常時より下がっていることが判る。サーミスター検出温度が通常時より下がっているのは、上記のように定着部5に流入した外気8がサーミスター54aの周辺にも流入して、その流入した外気8がサーミスター54aを冷却したことにより、サーミスター54a自体の温度が下がったことに起因する。
定着ローラー51が過昇温になると、定着ローラー51や加圧ローラー52の熱劣化が進み易くなり、過昇温が長時間続くと、例えば定着ローラー51や加圧ローラー52に含まれる弾性層(具体的にはゴムなど)が溶融し始めることが生じ得る。
同図に示すように、風が当たり始めた直後に検出温度および補正後温度が急激に下がり、これに伴ってローラー温度が急激に上昇していることが判る。
(5)待機中に警告制御を実行すべき理由について
図9(a)は、待機中、印字中(画像形成動作中)、WU(ウォームアップ)中のそれぞれにおける検出温度と補正後温度を測定したときの実験結果の例を示す図である。待機中の目標温度が185℃の例を示し、印字中の目標温度が190℃の例を示し、ウォームアップ中の目標温度が180℃の例を示している。検出温度と補正後温度のそれぞれは、最小値から最大値までの変動幅を示し、温度差βは、補正後温度と目標温度との差の最小値から最大値までの変動幅を示している。
図9(a)に示すように待機中において画像形成装置10の排出口48に風が当たっていない場合と風速が1.99(m/秒)の風が当たっている場合のそれぞれの温度差βの変動幅を比べると、風なしの場合よりも風ありの場合の方がかなり大きくなっている。特に、温度差βの最小値が大きく下がっており、この下がり方が顕著であることから、外気8の影響を受けていることの判断を行い易い。
また、図9(a)に示すように待機中は、風なしの場合に検出温度と補正後温度(ローラー温度と略等しい)の最小値同士の差と最大値同士の差がそれぞれ20℃以内の範囲内であり、温度挙動が安定している。
このため印字中では検出温度と補正後温度のそれぞれが変動し易くなるが、待機中には用紙Sが搬送されないことから、印字中のように用紙Sに熱が奪われることによる温度変動が生じない。
一方、印字中に定着ヒーター53の消灯後、定着ニップ59を通過中の用紙Sに熱を奪われると、定着ローラー51の温度が目標温度よりも大きく下がること(アンダーシュート)が生じ易くなり、その温度差がかなり大きくなる。
上記のことから本実施の形態では、外気8による待機中の定着ローラー51の温度変化に着目し、警告制御を具体的に次のような制御内容とした。
この結果から、待機中に定着ローラー51の温度が上がっても寿命に影響を及ぼすことがないと想定される温度域の上限、例えば200℃など(<サーモスタット55の動作温度Ts)を求め、待機中に外気8の影響を受けた場合にサーミスター検出温度が目標温度からどれだけ低下したときに定着ローラー51の温度がその上限に達するかを求める。
この処理は、待機中に、温度検出センサー54の検出結果により得られた定着ローラー51の表面温度が目標温度(185℃など)まで昇温するように定着ヒーター53による加熱を行う定着温調制御において、待機中に機内に流入した外気8による温度検出センサー54の冷却の程度を示す指標値(=目標温度から検出温度を差し引いた値)が所定値を超えたことを判断すると、警告を出力する処理に等しい。この所定値は、目標温度(185℃など)と、目標温度よりも低い所定の閾値(160℃)との差(25℃など)とすることができる。
ジョブ開始は、例えば定着ローラー51の回転開始時とすることができ、ジョブ終了は、例えば定着ローラー51の回転停止時とすることができる。なお、ジョブを終了してもジョブ終了直後のローラー温度がオーバーシュートにより上がって温度変動幅が大きくなる場合があり、このオーバーシュートが収まるのに要する所定時間(例えば、3〜5秒)を待機中から除くとしても良い。具体的には、ジョブ終了からこの所定時間の経過までの間(以下、「印字直後時間」という。)が待機中から除かれる。
図11は、待機中の警告制御の内容を示すフローチャートである。この警告制御は、定着制御部65により実行される。ここでは、画像形成装置10全体を制御する不図示のメインルーチンが別途あり、警告制御は、そのメインルーチンにおいて所定間隔(例えば0.1秒)でコールされる度に繰り返し実行される。
否定的な判断であれば(ステップS3で「No」)、警告を出力すべき所定の条件を満たしていないとしてステップS4に進む。
そして、補正後温度Tc<目標温度Tdの関係が満たされているか否かを判断する(ステップS5)。肯定的な判断であれば(ステップS5で「Yes」)、定着ヒーター53を消灯から点灯に切り換えて(ステップS6)、リターンする。一方、否定的な判断であれば(ステップS5で「No」)、定着ヒーター53を点灯から消灯に切り換えて(ステップS7)、リターンする。定着制御部65は、ステップS5〜S7を実行する場合に定着ローラー51の温度が目標温度まで昇温するように定着ヒーター53を制御する温調制御手段の機能を有するといえる。
ステップS3で肯定的な判断であれば(ステップS3で「Yes」)、警告を出力すべき所定の条件を満たしたとして、設置環境を変更すべき旨の警告を出力し(ステップS8)、定着ヒーター53への電力供給を遮断した後(ステップS9)、リターンする。
図8(a)の例では風が当たり始めてからローラー温度が急上昇するが、上記のステップS3、S8、S9の実行により、検出温度Ta<閾値Tbの関係になってから1秒後に定着ヒーター53が強制的に消灯されるので、ローラー温度の上昇を200℃付近以下に抑えることができる。
警告表示7bの内容は、例えば画像形成装置10の設置場所の変更を促すもの、画像形成装置10の向きの変更を促すもの、排出口48に吹き付けられる風の風量または風速の変更を促すもの、および排出口48に吹き付けられる風の向きの変更を促すもののうち少なくとも一つとすることができる。
所定の操作とは、警告解除のための解除キー(不図示)のユーザーによる入力操作、画像形成装置10の電源スイッチのユーザーによるオフ/オンの切換操作、画像形成装置10の外装カバー(不図示)のユーザーによる開閉操作などがある。
そこで、警告表示7bの表示以降に、ユーザーによりジョブ指示などの通常の操作とは別の所定の操作が行われたことを判断した場合に、画像形成装置10の設置環境の変更がユーザーにより実施されたとみなして、警告解除を行う構成になっている。
図13は、警告が出力された後に実行される警告後制御の内容を示すフローチャートであり、上記の警告制御と同様にコールの度に定着制御部65により実行される。
ステップS12では、ユーザーによる所定の操作が行われたか否かを判断する。所定の操作には、上記の解除キーの入力操作や電源スイッチのオフ/オンの切換操作などが含まれるが、いずれか一つだけを所定の操作としても良いし、複数のうちのいずれが実行されれば所定の操作があったと判断するとしても良い。
なお、警告解除後、ウォームアップを経て待機中に戻っても、仮にユーザーにより実際に画像形成装置10の設置環境が変更されていなければ、警告発生前と同様に外気8の影響を受ける状況にあることに変わりがない。このような場合、上記の警告制御により再度の警告の出力が繰り返されることになる。
また、警告を出力することに伴って定着ヒーター53への電力供給が遮断されるので、外気8の影響により定着ローラーの昇温が継続してサーモスタット55が動作してしまうことを防止できる。
また、定着温調制御に影響を及ぼす外気(風)8が定着部5に吹き込んでいることを判断するには、定着部5にできるだけ近い場所にこれを検出する検出器を配置することが望ましい。この点で、定着ローラー51の温度を検出する非接触の温度検出センサー54は、その風に対する感度があるので、本実施の形態では、別の検出器を設けなくても、元々配置されている温度検出センサー54を用いて警告制御を行うことができる。
なお、装置構成によっては、警告出力後、定着ローラーの温度がある程度は上昇するが、外気8の流入程度ではサーモスタット55の動作温度に達しないような場合もあり得る。このような画像形成装置の場合には、警告を出力してもそのまま定着ヒーター53への電力供給の制御を継続して(電力供給の遮断を禁止して)、ジョブの実行を可能とする構成をとることもできる。警告を見たユーザーが画像形成装置の設置環境を変更したことを判断すれば、警告出力が解除される。
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例が考えられる。
(7−1)上記実施の形態では、図11に示す警告制御のステップS3においてサーミスター検出温度Taと閾値Tbとの大小関係に基づき警告を出力すべき所定の条件を満たしたか否かの判断を行うとしたが、これに限られない。
図6(b)に示すように待機中に風が排出口48に当たっていない通常時では、検出温度変化量の変動が大変小さいが、一方で図8(b)に示すように待機中に風が当たり始めた直後に、検出温度の急激な低下により検出温度変化量がマイナス側に大きく振れ、これに対応して図8(a)に示すようにローラー温度が急上昇する。
従って、待機中の検出温度Taと閾値Tbとの大小関係と同様に、待機中の検出温度変化量Q(マイナス値)が所定の負の閾値Qa、例えば図8(b)では−3を下回った場合、すなわちQ<Qaの関係になった場合に、警告を出力すべき条件を満たしたと判断することにより、検出温度Taを用いる構成と同様の警告制御を実行できる。
また、図8(b)に示す検出温度の温度変化量のグラフを見ると風が当たり始めた直後に温度変化量がマイナス側に大きく振れた後、反動するようにプラス側に大きく振れており、以降、マイナス側とプラス側に交互に変動していることが判る。
具体的には、温度変化量のプラス側のピーク値Qが所定の正の閾値Qb、図8(b)の例では5℃を上回った場合、すなわちQ>Qbの場合に、警告を出力すべき条件を満たしたと判断することもできる。
具体的に、図11のステップS2、S3の検出温度Taを補正後温度Tcに代え、さらにステップS3の閾値Tbを、補正後温度を用いる場合に適した閾値Te、例えば(目標温度Tc−15℃)に代えることができる。目標温度Tcが185℃の場合、閾値Teは170℃(図6(a)の補正後異常判定ラインに相当)になる。補正後温度も実測値と同様に温度検出センサー54の検出温度に含まれる。
具体的に、図8(b)に示すように待機中の補正後温度変化量U(マイナス値)が所定の負の閾値Ua、例えば図8(b)では−5を下回った場合、すなわちU<Uaの関係になった場合に、警告を出力すべき条件を満たしたと判断することにより、補正後温度Tdを用いる構成と同様の警告制御を実行することができる。
従って、警告を出力すべき条件を満たしたことの判断に検出温度または補正後温度を用いる場合には、最初に急激な温度低下があったときに、その低下した温度が検出異常判定ラインまたは補正後異常判定ラインを下回った状態がどれだけの時間継続したかに基づき風が当たり始めたか否かを判断できる。
画像形成装置10の排出口48に吹き付けられる外気8の風速(m/秒)を直接、測定可能な風速計を別途、備える構成をとることもできる。
予め、警告を出力するまでもない風速の範囲の上限値を所定値Tfとして実験などで決めておき、図11のステップS3において、待機中に風速計201で計測された風速値が所定値Tfを超えたことを判断すると、警告を出力すべき条件を満たしたとしてステップS8に進む構成をとることができる。風速計201としては、例えば白金を内蔵した風速素子などを備えるものを用いることができる。
なお、風速の計測に代えて、例えば風量(単位時間当たりに移動される空気量:m3/時間)や風圧(Pa)を測定する測定器などを計測手段として用い、その計測結果と所定値との大小関係から警告を出力するか否かの判断を行う構成とすることもできる。
(7−3)上記実施の形態では、警告を出力してから警告解除までの警告発生中(以下、「警告中」と略する。)に、定着ローラー51の過昇温を防止するために、定着ヒーター53への電力供給を遮断してジョブ実行を禁止するとしたが、これに限られない。
図15は、シャッター331を設けた構成例を示す図である。なお、同図は、排出ローラー対33を構成する各ローラーの軸方向に沿ってシャッター331を見たときの図であるので、シャッター331の形状が棒状に見えるが、実際にはシャッター331はローラーの軸方向に沿って長尺状なので板状部材になる。
図16に示すように、温度検出センサー54の検出温度Taを取得し(ステップS21)、検出温度Ta<閾値Tbの状態が1秒以上継続していないことを判断すると(ステップS22で「No」)、補正後温度Tcを取得し(ステップS23)、補正後温度Tcと目標温度Tdの大小関係に基づき、定着ヒーター53を点灯または消灯させて(ステップS24〜S26)、ステップS29に進む。
待機中が終了ではない、すなわち待機中が継続されることを判断すると(ステップS33で「No」)、現在が警告中であるか否かを判断する(ステップS37)。
ステップS22において、検出温度Ta<閾値Tbの状態が1秒以上継続したことを判断すると(ステップS22で「Yes」)、設置環境を変更すべき旨の警告を行う(ステップS27)。これにより現在が警告中になる。
警告中にシャッター331が排出口48を塞ぐことにより、外気8が排出口48から機内に入ることが阻止されるので、外気8に起因する定着ローラー51の過昇温のおそれがなくなる。このため本変形例では、定着ヒーター53への電力供給を遮断せず、ステップS23〜S26の処理で定着ヒーター53の点灯と消灯の切換制御が継続される。
所定の操作が行われていないことを判断すると(ステップS30で「No」)、ステップS33に進む。ステップS33で待機中の継続が判断され(ステップS33で「No」)、現在が警告中であることを判断すると(ステップS37で「Yes」)、ステップS23に戻る。これによりステップS23以降の処理が実行される。警告中にステップS30により所定の操作が行われたことが判断されるまでの間、ステップS23〜S26、S29、S33、S37までの一連の処理が繰り返し実行される。
そして、駆動部333を制御して、シャッター331を遮蔽位置から退避位置に移動させて(ステップS32)、ステップS33に進む。
待機中に再度、警告中に遷移すると(ステップS22で「Yes」、S27)、シャッター331が退避位置から遮蔽位置に移動される(ステップS28)。そして、待機中に警告解除されると(ステップS30で「Yes」、S31)、シャッター331が遮蔽位置から退避位置に戻される(ステップS32)。
一方、警告中に待機中の終了を判断すると(ステップS34で「Yes」)、警告を解除し(ステップS35)、シャッター331を遮蔽位置から退避位置に戻した後(ステップS36)、当該警告制御を終了する。
風が画像形成装置10に当たっていることにより室内に行き渡ることが妨げられていれば、風が妨げられない場合よりも室内の冷暖房が行われ難くなりエアコンの無駄な電力消費にも繋がる。
なお、上記では警告中におけるシャッター331の遮蔽位置から退避位置への移動(ステップS32)の条件を、警告中にユーザーによる所定の操作が行われたとき(ステップS30)としたが、これに限られない。例えば、所定の操作に関係なく、警告が出力されてから所定時間(例えば、5分)経過時にシャッター331を遮蔽位置から退避位置に戻す構成をとることもできる。
なお、上記の所定時間は、排出口48に風が吹き付けたことにより警告を出力すべき条件を満たした場合に(ステップS22で「Yes」)、定着ローラー51の温度がある程度上がっていても(図8(a))に、その温度が目標温度まで下がって安定するまでに要すると想定される時間が予め実験などにより設定される。
例えば、ユーザーが手動でシャッター331の位置を退避位置と遮蔽位置とに交互に切り換え可能な構成をとることもできる。この構成の場合、警告表示7bに、ユーザーに対してシャッターの位置を退避位置から遮蔽位置に切り換えてほしい旨のメッセージを追加表示させることで、ユーザーにその旨を知らせることができる。
さらに、シャッター331を設ける構成に代えて、例えば排出口48を塞ぐための閉塞部材をユーザーが筐体10aに着脱可能なように構成して、この閉塞部材の装着をユーザーに促す表示や通知などをユーザーに対する警告とすることもできる。
すなわち、図17に示すように定着ニップ59から排出口48までの間の用紙搬送路45の途中であり、排出ローラー対33の用紙搬送方向上流側かつ近傍の位置350から分岐する分岐路(通風路)351を設ける。この分岐路351の一方端は分岐位置350であり、他方端は装置筐体10aの横側面10bに設けられた排出口354に繋がっている。そして、分岐位置350に支点353を中心に上下に揺動する切換爪352を設ける。
用紙搬送路45を、分岐位置350を挟んで用紙搬送方向上流側の第1部分経路451と用紙搬送方向下流側の第2部分経路452とに分けたとき、切換爪352の第1姿勢は、第1部分経路451と第2部分経路452との連通により第1部分経路451と第2部分経路452とで用紙搬送路45が形成される第1状態のときの姿勢であり、第2姿勢は、第2部分経路452と分岐路351とが繋がり、第1部分経路451が塞がれる第2状態のときの姿勢である。
一方、待機中に警告が出力されるとその警告解除までの間、切換爪352が第2姿勢(破線)に遷移する。これにより、排出口48から機内に入り込んだ外気8を第2部分経路452から分岐位置350を介して分岐路351に導き、分岐路351を通過させて排出口354から機外に排出させることができる。
(7−5)上記実施の形態では、画像形成装置10の設置環境を変更する旨の警告メッセージを含む警告表示を操作部7に表示させるとしたが、警告の出力は、メッセージ表示に限られない。
図18(a)と(b)は、接触式の温度検出センサーを用いた構成において、待機中に風が排出口48に当たることにより余計な電力消費が生じることを説明するための図であり、実験により得られた結果の一例を示している。
ところが、風の風速が強くなるに伴って、図8(a)の例と同様に、図18(a)の例もローラー温度と補正後温度との乖離が大きくなり、定着ローラー51の温度がある程度上昇しつつ、図18(b)に示すように単位時間当たりにヒーターリモート信号がHレベルになる回数が多くなって、定着ヒーター53への供給電力(消費電力)も多くなっていることが判る。待機中に定着温調制御を行っている間に、排出口48に吹き付ける風の風速が強くなるに伴って、ローラー温度が上がることは、それだけ定着ローラー51の熱劣化が進むことになり、無駄な電力が消費されていることになる。
(7−7)上記実施の形態では、定着部材として定着ローラー51と、加圧部材として加圧ローラー52を用いる構成例を説明したが、定着部材と加圧部材はローラーに限られず、例えば一方がベルトで他方がローラーの組み合わせや両方がベルトの組み合わせなどとすることもできる。また、温度検出センサー54にサーミスターを用いる構成例を説明したが、これに限られず、他の種類の温度検出素子でも良い。
6 全体制御部
7 操作部
8 外気(風)
43 用紙搬送路
48、354 排出口
10 画像形成装置
51 定着ローラー
53 定着ヒーター
54 温度検出センサー
65 定着制御部
201 風速計
331 シャッター
351 分岐路
352 切換爪
451 第1経路部分
452 第2経路部分
Claims (13)
- 搬送中のシートに形成された画像を、ヒーターにより加熱された定着部材を用いて熱定着させた後、排出口から排出する画像形成装置であって、
前記定着部材の温度を検出する検出手段と、
画像形成の実行待機中に、前記定着部材の温度が前記実行待機中の目標温度に維持されるように、前記検出手段の検出結果に基づいて前記ヒーターへの供給電力を制御する温調制御手段と、
前記制御中に前記排出口から当該画像形成装置内に流入した外気による前記検出手段の冷却の程度を示す指標値が所定値を超えたことを判断すると、当該画像形成装置の設置環境を前記外気による前記検出手段の冷却が抑制されるようになる環境に変更すべき旨の警告を出力する警告手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。 - 前記検出手段は、前記定着部材とは非接触のセンサーであり、
前記指標値は、
前記目標温度から前記センサーの検出温度を差し引いた値であり、
前記所定値は、
前記目標温度と当該目標温度よりも低い所定の閾値との差であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。 - 前記検出手段は、前記定着部材とは非接触のセンサーであり、
前記指標値は、
前記センサーの検出温度の単位時間当たりにおける温度変化の絶対値であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。 - 前記センサーは、サーミスタであることを特徴とする請求項2または3に記載の画像形成装置。
- 前記流入した外気の風速、風量または風圧を計測する計測手段を備え、
前記指標値は、
前記計測手段の計測値であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。 - 前記警告手段は、
前記判断を行うと、さらに前記ヒーターへの電力供給を遮断して画像形成の実行を禁止し、当該禁止後、ユーザーによる所定の解除操作の実行を判断すると、前記警告出力を中止し、画像形成の実行禁止の解除および前記ヒーターへの電力供給の再開を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像形成装置。 - 前記外気は、
前記定着部材から前記排出口までの間のシート搬送路を、当該画像形成装置の外から前記排出口を通ってシート搬送方向とは逆方向に前記定着部材に向かって流れる風であり、
前記警告手段は、
前記画像形成の実行待機中に前記風が前記搬送路を通って前記定着部材に向かうのを阻止する阻止手段を備え、
前記判断を行うと、さらに前記阻止手段に前記阻止を実行させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像形成装置。 - 前記阻止手段は、
前記シート搬送路の途中の分岐位置から分岐しており、前記排出口とは別の排出口と繋がる通風路と、
前記分岐位置を挟んで前記シート搬送路をシート搬送方向上流側の第1部分経路とシート搬送方向下流側の第2部分経路とに分けたとき、前記第1部分経路と前記第2部分経路とが繋がり当該シート搬送路を形成する第1状態と、前記第2部分経路と前記通風路とが繋がり、前記第1部分経路が塞がれる第2状態とを切り換える切換手段と、を備え、
前記警告手段は、
前記判断を行うと、前記阻止の実行として、前記切換手段に前記第1状態から前記第2状態に切り換えさせることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。 - 前記阻止手段は、
前記排出口を遮蔽する遮蔽手段を備え、
前記警告手段は、
前記判断を行うと、前記阻止の実行として、前記遮蔽手段に前記排出口を遮蔽させることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。 - 前記警告手段は、
前記判断を行っても、前記温調制御手段に前記制御を継続させることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の画像形成装置。 - 前記警告手段は、
前記警告の出力として、前記警告を表示部に表示する、または、ネットワークを介して接続されている外部の端末装置に前記警告を送信することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の画像形成装置。 - 前記警告は、
当該画像形成装置の設置場所の変更を促すもの、当該画像形成装置の向きの変更を促すもの、および前記排出口を塞ぐための閉塞部材の装着を促すもののうち、少なくとも一つであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の画像形成装置。 - 前記外気は、
前記定着部材から前記排出口までの間のシート搬送路を、当該画像形成装置の外から前記排出口を通ってシート搬送方向とは逆方向に前記定着部材に向かって流れる風であり、
前記警告は、
前記排出口に吹き付けられる風の風量もしくは風速の変更を促すもの、または前記排出口に吹き付けられる風の向きの変更を促すものであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の画像形成装置。
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