JP6572917B2 - 連続帯板の通板方法及び通板装置 - Google Patents

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Description

本発明は、通板時における鋼板の絞りの発生を防止することのできる連続帯板の通板方法及び通板装置に関する。
鋼板をはじめとする金属板の製造時には、塑性加工、熱処理、及び表面化成処理等を効率的に行うことを目的として、複数のロールを用いて連続的に金属板を通板することが行われる。連続的な通板が行われている金属板を連続帯板(又は単に「帯板」)と称する。連続通板時には、鋼板の蛇行が問題となることがある。鋼板が蛇行する原因としては、鋼板の形状及び残留応力等が板幅方向に非対称であること、並びに通板ロールの配置(ロールアライメント)等が板幅方向に非対称であること等が挙げられる。鋼板の蛇行を防止するために、クラウン形状のロールが通板ロールとして広く用いられている。これにより、鋼板は通板ロールの幅方向へ誘導される、いわゆるセンタリングを受けやすくなる。
一方で、ロールのクラウン形状が顕著であると、鋼板の板幅方向端部から中央部へ作用する圧縮応力が過大となり、鋼板の板幅中央付近が局所的に座屈する。結果として、鋼板が山状に塑性変形する、いわゆる「絞り」現象が発生する。
絞りは致命的な製品欠陥となるので、絞りの防止は操業上必要不可欠といえる。絞りを発生させずに安定操業を行うためには、通板時に鋼板に生じる圧縮応力を精度よく算出し、圧縮応力が過大とならないように各種の通板条件を調節することが望まれる。
通板時における圧縮応力等の算出を行い、鋼板における絞りの発生を予測する技術を開示した文献として、非特許文献1及び非特許文献2が挙げられる。
的場哲著、「鉄鋼製造プロセスにおける微小塑性変形とそれに起因する諸問題の研究」、名古屋大学博士論文、1994年 谷本光史、外2名、「連続走行薄帯の幅方向移動挙動解析」、日本機械学会論文集A編、69巻677号、pp.166−173、2003年1月 NASA編、"BUCKLING OF THIN-WALLED CIRCULAR CYLINDERS"、(米国)、NASA SP−8007、1968年
非特許文献1では、鋼板の絞り発生限界を見積もるために、基礎実験から求められる実験式を用いている。しかし、非特許文献1に開示された実験式は、理想的な形状のテーパーロールや、和太鼓の胴のように幅中央部の直径が大きく端部の直径が小さい、外形円弧状のロール(円弧ロールともいう。)等、比較的単純な形状のロールにしか適用できないという問題がある。さらに、ロールと鋼板との摩擦係数が板幅方向で異なる場合にも適用できないという問題がある。
非特許文献2では、FEM等の数値計算により、鋼板がロールに接触しながら移動する際の動的解析を行っている。しかし、非特許文献2に開示された方法では、鋼板の移動時における複雑な接触モデルを規定する必要があることから、計算に用いる要素数が膨大となり、計算及び解析に要する時間が膨大となる。よって、非特許文献2の方法を実操業に適用することは、現実には難しいという問題がある。実際の操業時には、非特許文献1に開示されたような単純なモデルを基にした実験式を用いることが広く行われている。
また、通板ロールのプロフィール(例えば形状)は、実際には一定ではなく、磨耗及び熱膨張等によって時々刻々と変化している。特に、焼鈍炉等の高温条件下で用いられる通板ロールは、その環境によってプロフィールが大きく変化しうる。
しかし上述のように、従来の方法では、複雑な形状のロールにおける圧縮応力を算出することさえ難しいのであって、ましてや高温条件下等でプロフィールが変わりうるロールの圧縮応力を算出することは更に困難であるという問題がある。
このように、複雑な形状のロールやプロフィールが変化しうるロールを対象とする場合、従来の方法では鋼板の圧縮応力を正確に算出できず、ひいては鋼板の絞り発生を防止できない、という問題があった。
本発明は、上記の問題点に鑑みて完成されたものであり、複雑な形状或いはプロフィールが刻々と変わりうるロールを対象とする場合であっても、鋼板に発生する圧縮応力を正確に算出することができ、鋼板の絞りを確実に防止することのできる連続帯板の通板方法及び通板装置を提供することを課題とする。
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1]通板ロールを用いて鋼板を連続的に通板する連続帯板の通板方法であって、少なくともいずれか一つの通板ロールにおいて、通板ロールと接触する鋼板表面の接触部に発生する最大圧縮応力と、鋼板の最小座屈応力とを比較し、前記最大圧縮応力が前記最小座屈応力を超えないように、ロールプロフィール、鋼板の張力、摩擦係数、および設備条件のうち少なくとも一種以上を設定して通板を行い、通板ロール上の測地線の方向を鋼板の速度方向とし、鋼板の速度方向と通板ロールの周速度方向との差異により発生する摩擦力に基づいて前記最大圧縮応力を算出する連続帯板の通板方法。
[2]ロールプロフィール測定装置を用いて、通板中におけるロールプロフィール及び鋼板の張力を測定し、該ロールプロフィール及び該張力を用いて、前記最大圧縮応力を鋼板の通板中に算出し、最大圧縮応力が最小座屈応力を超えた場合には、異常警報を発する[1]に記載の連続帯板の通板方法。
[3]通板ロールが収容される炉内の温度情報から通板中のロールプロフィールを予測し、ロールプロフィールの予測値及び鋼板の張力を用いて、前記最大圧縮応力を鋼板の通板中に算出し、最大圧縮応力が最小座屈応力を超えた場合には、異常警報を発する[1]に記載の連続帯板の通板方法。
[4]鋼板を連続的に通板する通板ロールと、演算手段と、を備えた連続帯板の通板装置であって、前記演算手段は、少なくともいずれか一つの通板ロールにおいて、通板ロールと接触する鋼板表面の接触部に発生する最大圧縮応力を算出し、前記最大圧縮応力と鋼板の最小座屈応力とを比較し、前記最大圧縮応力が前記最小座屈応力を超えないように、ロールプロフィール、鋼板の張力、摩擦係数、および設備条件のうち少なくとも一種以上を設定して通板が行われ、前記最大圧縮応力は、通板ロール上の測地線の方向を鋼板の速度方向とし、鋼板の速度方向と通板ロールの周速度方向との差異により発生する摩擦力に基づいて算出される連続帯板の通板装置。
[5]通板中におけるロールプロフィール及び鋼板の張力を測定するロールプロフィール測定装置を備え、前記ロールプロフィール及び前記張力を用いて、前記最大圧縮応力を鋼板の通板中に算出し、最大圧縮応力が最小座屈応力を超えた場合には、異常警報を発する[4]に記載の連続帯板の通板装置。
[6]通板ロールが収容される炉内の温度情報から通板中のロールプロフィールを予測し、ロールプロフィールの予測値及び鋼板の張力を用いて、前記最大圧縮応力を鋼板の通板中に算出し、最大圧縮応力が最小座屈応力を超えた場合には、異常警報を発する[4]に記載の連続帯板の通板装置。
本発明によって、複雑な形状のロール、或いはプロフィールが経時的に変化するロールを対象とする場合であっても、鋼板に発生する圧縮応力を正確に算出し、鋼板の絞りを確実に防止することができる。
図1は、円柱形状のロールの斜視図である。 図2は、円錐台形状のロールを通板方向から見た正面図である。 図3は、図2のロールの展開図である。 図4は、図3の展開図について、単位接ベクトルe1と単位接ベクトルe2とをそれぞれ横軸(v軸)、縦軸(u軸)とした平面図である。 図5は、板に作用する幅方向圧縮応力を示すグラフである。
以下、添付した図面を参照して、本発明に係る連続帯板の通板装置及び通板方法について説明する。
まず、図1を用いて、通板時の通板ロール(単に、「ロール」と称することもある。)の表面のうち、鋼板と接触する接触部における力の挙動について説明する。図1は、円柱形状のロール(円柱型ロール)を示す斜視図である。図1では、ロールの軸線方向の中央部における断面の円の中心を原点とし、絶対座標系としてx軸、y軸、及びz軸を配し、y軸をロールの軸線方向とした。
図1でロール表面に点pをとり、点pの板幅方向(y軸方向)の座標値をvとし、ロールの軸線方向と垂直な断面(x−z断面)における、円の中心に対する点pの中心角をuとする。点pの円周方向における単位接ベクトルをe1とし、点pの板幅方向における単位接ベクトルをe2とし、点pにおいてベクトルe1とベクトルe2と垂直な単位法線ベクトルをe3とする。
尚、上述したパラメータは、(円柱型ロール)に限られず、任意のプロフィールのロールについて適用可能である。例えば、図2のようなテーパーロールの一種である円錐台形状のロール(円錐台ロール)に適用することもできる。図2は、円錐台ロールを通板方向から正対してみた見た正面図である。上記の定義に従うと、図2のような正面図において、単位接ベクトルe及びeは、それぞれ周方向(回転方向)及び略水平方向(ロールの略軸線方向)を示す。単位接ベクトルeが、通板時におけるロールの周速度方向に対応する。
次に、図3において、図2の円錐台ロールを展開した展開図を示す。ロール上に巻き付いた鋼板は、ロールの入側から出側に向けてロール上の最短距離となる測地線に沿って進もうとする。図3では図面の下側がロールの入側、図面の上側がロールの出側をそれぞれ示す。図3に示す展開図上において、ロール上の最短距離となる測地線は入側から出側へ向けて直線的に進み、測地線ベクトルは図面上で上下方向を示す。ここで、測地線に沿った単位方向ベクトルをXとする。即ち、単位方向ベクトルXは、鋼板の速度方向と対応する。単位方向ベクトルXは、単位接ベクトルeの成分ξと、単位接ベクトルeの成分ξとを用いて表すことができる。
図4では、単位接ベクトルeと単位接ベクトルeとをそれぞれ横軸(v軸)、縦軸(u軸)にとった平面図を示す。図4では、図3と同様に図面の下側がロールの入側、図面の上側がロールの出側をそれぞれ示す。図4で示すように、ロールの曲面上の観測者からベクトルXを見ると、ベクトルXは入側から出側にかけて徐々にその方向が変わる。
尚、上記の考え方は、リーマン幾何学で定義される測地線の考え方を用いれば、任意のプロフィールのロールに対して一般化することが可能である。
ロール曲面上のロール速度(ロールの周速度)のベクトル場vは、以下の式(1)により求められる。


ここで、νは、ロールの周速度の大きさ(m/s)である。
一方で、鋼板はロール曲面上を測地線に沿って移動すると考えると、板速度ベクトル場vは、以下の式(2)により求められる。


ここで、νは、鋼板の通板速度の大きさ(m/s)である。ベクトルX(=ξ+ξ)は、ロール曲面における測地線方向の単位接ベクトルである。
ロールのプロフィールはほぼフラット(直線状)であることから、ξを1と近似することができる。式(2)を近似すると、以下の式(3)となる。

例えば、円弧状のクラウンロール(ラジアルクラウン型のロール)の場合、成分ξは、以下の式(4)により表される。


ここで、κはクラウン曲率(1/m)、φは巻き付き角度(rad)、uは上述の図1で定義した角度(rad)、vは上述の図1で定義したロール軸方向の位置(m)である。尚、本説明では一例としてラジアルクラウン型のロールについて説明するが、その他のロールについてもロールのプロフィールに合わせて、従来公知の方法によりξを求めることができる。
摩擦係数のベクトル場μは、以下の式(5)により定義される。


ここで、λは鋼板のロール表面におけるスリップ率(−)であり、μ(λ)は摩擦係数(−)である。
上述のλは、以下の式(6)により示される。
上述のμ(λ)は摩擦係数であり、スリップ率λに対して単調増加する関数であり、例えば、以下の式(7)により示される。

ここで、μは動摩擦係数(−)であり、λは限界スリップ率(−)である。
式(1)と式(3)とを式(5)に代入すると、以下の式(8)のように、摩擦係数ベクトル場μを表すことができる。
一方で、ロール表面の摩擦力ベクトル場fは以下の式(9)で定義される。

ここで、nはロール表面の単位面積当たりの垂直抗力(N)である。
式(8)を式(9)に代入すると、以下の式(10)が導かれる。

さらに、圧延を行わないロール上ではスリップ率が0(μ=λ=0)に近似できるので、式(10)から以下の式(11)が導かれる。
上記では、式(1)及び式(3)で示されるように、ロールの周速度方向と鋼板の速度方向とが違うという前提の下で計算モデルを組み立てた。結果として、式(11)に示されるように、鋼板の板幅方向に生じる摩擦力が明らかとなった。よって、通板時の鋼板には幅方向の端部側から中央部側へと向かう摩擦力が働き、これにより鋼板の座屈、山状の塑性変形が起こることが見出された。
上述の説明では、円錐台ロールをモデルとして計算を行った。一方で、任意のプロフィール(例えば形状)のロールに対しても同様に、鋼板の表面に発生する圧縮応力を計算できる。以下においては、任意のプロフィールのロールに対して、鋼板の表面に発生する圧縮応力(板幅方向の圧縮応力場)を計算する方法について説明する。
任意のプロフィールのロールについて、一例として鋼板がロール外周の半周分に巻き付くとした場合、測地線の方程式は、以下の式(12)で求められることが知られている。


ここで、αは、ロールのプロフィールのv方向の微分値を用いて求めることができ、微分値はプロフィールの差分で近似することができる。具体的には、以下の式(13)にて示される。

ここで、r(v)はロールの半径(m)である。
式(12)を式(10)に代入することによって、摩擦力ベクトル場を求めることができる。
次に、板幅方向の圧縮応力場は、上記の式(11)で求めた摩擦力ベクトル場fを板幅方向に積分することによって求められる。具体的には以下の式(14)の通りである。

ここで、hは板厚(m)であり、bは板幅(m)である。尚、式(14)の積分は、数値積分とする。
該式(14)により求められた積分値の最大値が、通板ロールと接触する鋼板表面の接触部において発生する圧縮応力の最大値(最大圧縮応力)に相当する。尚、通常は、長手方向の位置(u)が0rad、幅方向の位置(v)が0(m)で、圧縮応力が最大となる。
次に、垂直抗力場nについて考える。FEMの解析結果から張力分布pは、以下の式(15)で仮定することができる。

ここで、Cは未知定数である。
また、張力分布と入出張力和Nの間には、次式の関係が成り立つ。
式(15)を式(16)に代入すると、未知定数Cは、以下の式(17)で示される。

式(17)を式(15)に代入すると、張力分布pは、以下の式(18)により示される。
単位面積当たりの垂直抗力n(接触圧)は、以下の式(19)により示される。

尚、rは、ロールの半径(m)である。ロールの半径は、最大半径を採用することもできるし、最小半径を採用することもできる。
式(18)を式(19)に代入すると、以下の式(20)の通りとなる。
上記の式(20)で求めた垂直抗力nを式(14)に代入することで、式(14)において最大圧縮応力の計算が可能となる。
本発明では、上述の式(14)を用いて算出した最大圧縮応力と、鋼板の最小座屈応力とを比較することで、鋼板の絞りが発生する危険性を検知することができる。具体的には、最大圧縮応力が最小座屈応力を超えない状況下では、鋼板の絞りが発生する危険性が低いと判定して操業を続けることができる。尚、最大圧縮応力と最小座屈応力とを比較する際は、それぞれ同じ鋼板の位置(具体的には長手方向位置と板幅方向位置)における力を比較する。具体的には、長手方向の位置(u)が0(rad)、且つ幅方向の位置(v)が0(m)の位置における最大圧縮応力と最小圧縮応力とを比較することが好ましい。
一方で、最大圧縮応力が最小座屈応力を超える状況下では、鋼板の絞りが発生する危険性が高いと判定して操業を止めることが好ましい。最大圧縮応力が最小座屈応力を超えた場合には、オペレータ室等に異常警報を発する構成とすることも有効である。言い換えると、鋼板における絞りの発生を確実に防止するためには、最大圧縮応力が最小座屈応力を超えないように通板を行うことが重要である。最大圧縮応力が最小座屈応力を超えないように、最大圧縮応力の値を小さくするためには、ロールプロフィール、鋼板の張力、鋼板とロールとの摩擦係数、及び設備条件等を調節することが有効である。より具体的には、ロールプロフィールをよりフラットにすること、鋼板の張力を低下させること、摩擦係数を低下させること等が有効である。
本発明では、最大圧縮応力を計算する際に、式(3)で示される鋼板の通板方向と式(1)で示される通板ロールの周速度方向とが相異することに注目し、それぞれの方向の相異によって発生する式(11)にて示される摩擦力に基づいて、式(14)の通りに最大圧縮応力が算出される。これにより、正確に鋼板の最大圧縮応力を算出することができ、ひいては鋼板における絞りの発生を確実に防止することができる。
本発明は、加熱炉内等の高温条件下で用いられるロールに適用されることが特に好ましい。典型例として、CAL(連続焼鈍ライン)における炉内のハースロールが挙げられる。高温条件下でロールは熱膨張し、そのクラウン形状が変化するサーマルクラウンと呼ばれる挙動を示す。このような条件下では、特にロールプロフィールが複雑な挙動を示すことから、理想的な形状を対象として計算を行う従来の方法では最大圧縮応力を正確に算出することが難しく、本発明を適用することによる効果が特に大きいといえる。
具体的には、測定された炉内の温度から、クラウンの形状(サーマルクラウン)を推定することができる。推定されたサーマルクラウン(クラウンの形状をξで考慮する。)に加えて、予め既知である操業条件(板厚:h、板幅:b、張力:n、及び摩擦係数等:μ及びλ)を用いて、式(14)から最大圧縮応力を計算する。これにより、クラウンの形状が高温条件下で刻々と変わる場合であっても、正確に鋼板における最大圧縮応力を算出することができる。このように、炉内の温度をもとにサーマルクラウンを推定する方法では、鋼板の通板中にリアルタイムで、炉内条件に応じた最大圧縮応力の計算が可能となる。
また、炉内温度に基づかなくとも、ロールの形状等を検出するロールプロフィール測定装置を用いることもできる。この場合、予め対象となるロールのプロフィールを測定しておき、該ロールプロフィールと式(14)とから最大圧縮応力の計算を行うことができる。
鋼板を通板する際は、最大圧縮応力の計算を経時的に行うことが好ましい。最大圧縮応力と最小座屈応力との関係を経時的に比較することで、絞り発生のトレンド(具体的に、絞りが発生しやすくなっているか或いはしにくくなっているか等)を監視することができる。最大圧縮応力の計算は、断続的に行ってもよいし、連続的に行ってもよい。
尚、鋼板の最小座屈応力を求める方法は特に制限されず、従来公知の方法を用いることができる。最小座屈応力は、例えば、鋼板の材質、強度、板幅、板長、板厚、ロール半径、板の縦弾性係数、及び板のポアソン比等を勘案して求めることができる。以下では一例として、円柱型ロールにおける一般的な最小座屈応力の導出方法、及び非特許文献3において開示された座屈応力の求め方について説明する。
等方均質材からなる薄肉円筒殻の座屈応力σyerは、一般に以下の式(21)で示される。

ここで、Eは円筒殻の縦弾性係数、hは板厚、bは板幅、νは円筒殻のポアソン比、Rは円筒殻の半径(ロール半径)、nは半波長の波数である。
式(21)から、座屈応力を最小とする波数は、以下の式(22)で求められる。
式(22)を式(21)に代入すると、座屈応力σyerの最小値(最小座屈応力)は、以下の式(23)で求められる。
尚、上記式(23)で求められる座屈応力の最小値は、真値よりも大きくなることが多いと評価されている。
そこで、安全を見て、非特許文献3に開示された以下の実験式(24)を用いて最小座屈応力(σyk)を求めることもできる。
本発明は、通板ロールを用いて連続的に鋼板を通板する連続帯板の通板装置において適用可能である。通板装置では複数の通板ロールが設けられるが、少なくともいずれか一つ以上の通板ロールに適用していればよい。尚、通板ロールとは、鋼板に接触し或いは鋼板が巻付くことで鋼板を通板する役割を果たすロールをいう。
また、連続帯板の通板装置には、上述のように鋼板の表面に発生する最大圧縮応力を計算する演算手段を設けることができる。該演算手段は、算出した最大圧縮応力と最小座屈応力とを比較し、その結果をオペレータ室のディスプレイ等に表示する、或いは最小座屈応力が最大圧縮応力を超えた場合に警報を発するといった構成にすることもできる。なお、警報については、例えば、電気的信号を介して電気的信号や音響的信号等を活用するものであってよい。また、その信号を受けて、連続帯板の通板装置において、絞りの発生を抑制可能な様々な手段を講じることができる。
以下、実施例を用いて、本発明についてより具体的に説明する。
酸洗ラインでのルーパー設備を対象とし、以下の表1に示す操業条件において、式(14)を用いて鋼板にかかる圧縮応力を計算した。計算は、鋼板の長手方向(ロールの周方向に対応する。)及び板幅方向をそれぞれ変えながら行い、それぞれの位置における圧縮応力を求めた。結果を図5に示す。
図5では、横軸(周方向位置)の値の小さい方がロールの入側に位置し、大きい方がロールの出側に位置する。また、縦軸(幅方向位置)の値の絶対値が小さいほど、板幅方向の中央側に位置する。図5の結果より、圧縮応力はロールの入側かつ幅方向中央側で最大となる傾向にあり、実際に計算された最大圧縮応力は8.8MPaであった。
一方で、上述の式(25)を用いて計算した最小座屈応力は136MPaであった。これらの結果より、本計算条件下では、最大圧縮応力は最小座屈応力に比べて十分に小さく、鋼板の座屈及び絞りの問題はないことが確認された。
例えば、表1の条件で縦弾性係数を1.0×1.011Pa、板厚を0.5mmとした場合、最小座屈応力は8.0MPaとなり、最大圧縮応力8.8MPaより最小座屈応力が小さくなるので、絞りの発生する危険性が高いと判定されることになる。このように、最大圧縮応力が最小座屈応力よりも大きくなった場合には、絞り発生のリスクが極めて高いと判定して操業を止めることで、絞りの発生した製品が産生されることを確実に防止することができる。

Claims (6)

  1. 通板ロールを用いて鋼板を連続的に通板する連続帯板の通板方法であって、
    少なくともいずれか一つの通板ロールにおいて、通板ロールと接触する鋼板表面の接触部に発生する最大圧縮応力と、鋼板の最小座屈応力とを比較し、
    前記最大圧縮応力が前記最小座屈応力を超えないように、ロールプロフィール、鋼板の張力、摩擦係数、および設備条件のうち少なくとも一種以上を設定して通板を行い、
    通板ロール上の入側から出側に向けて最短距離を形成する測地線の方向を鋼板の速度方向とし、鋼板の速度方向と通板ロールの周速度方向との差異により発生する摩擦力に基づいて前記最大圧縮応力を算出する連続帯板の通板方法。
  2. ロールプロフィール測定装置を用いて、通板中におけるロールプロフィール及び鋼板の張力を測定し、
    該ロールプロフィール及び該張力を用いて、前記最大圧縮応力を鋼板の通板中に算出し、
    最大圧縮応力が最小座屈応力を超えた場合には、異常警報を発する請求項1に記載の連続帯板の通板方法。
  3. 通板ロールが収容される炉内の温度情報から通板中のロールプロフィールを予測し、
    ロールプロフィールの予測値及び鋼板の張力を用いて、前記最大圧縮応力を鋼板の通板中に算出し、
    最大圧縮応力が最小座屈応力を超えた場合には、異常警報を発する請求項1に記載の連続帯板の通板方法。
  4. 鋼板を連続的に通板する通板ロールと、演算手段と、を備えた連続帯板の通板装置であって、
    前記演算手段は、少なくともいずれか一つの通板ロールにおいて、通板ロールと接触する鋼板表面の接触部に発生する最大圧縮応力を算出し、前記最大圧縮応力と鋼板の最小座屈応力とを比較し、
    前記最大圧縮応力が前記最小座屈応力を超えないように、ロールプロフィール、鋼板の張力、摩擦係数、および設備条件のうち少なくとも一種以上を設定して通板が行われ、
    前記最大圧縮応力は、通板ロール上の測地線の方向を鋼板の速度方向とし、鋼板の速度方向と通板ロールの周速度方向との差異により発生する摩擦力に基づいて算出される連続帯板の通板装置。
  5. 通板中におけるロールプロフィール及び鋼板の張力を測定するロールプロフィール測定装置を備え、
    前記ロールプロフィール及び前記張力を用いて、前記最大圧縮応力を鋼板の通板中に算出し、
    最大圧縮応力が最小座屈応力を超えた場合には、異常警報を発する請求項4に記載の連続帯板の通板装置。
  6. 通板ロールが収容される炉内の温度情報から通板中のロールプロフィールを予測し、
    ロールプロフィールの予測値及び鋼板の張力を用いて、前記最大圧縮応力を鋼板の通板中に算出し、
    最大圧縮応力が最小座屈応力を超えた場合には、異常警報を発する請求項4に記載の連続帯板の通板装置。
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