JP6572822B2 - 繊維強化熱可塑性樹脂構造体の製造方法 - Google Patents

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本発明は、繊維強化熱可塑性樹脂からなる構造体の製造方法に関する。
従来から繊維を含有する熱可塑性樹脂を成形する方法、および、それに使用される成形装置に関する発明が知られている(下記特許文献1を参照)。特許文献1は、繊維を含有する熱可塑性樹脂からなる基材を用いて、板状部および当該板状部の少なくとも一方の面から突出する突出部を有する成形品を製造する方法を開示している。この方法は、プレス段階と射出補充段階とを有する(同文献の請求項1を参照)。
前記プレス段階では、前記板状部の肉厚のうちの一部に対応する分量の前記基材が加熱された被加熱基材をプレスすることによって、前記板状部の肉厚のうちの一部に該当するプレス成形部を形成する。前記射出補充段階では、前記板状部の肉厚のうちの残部および前記突出部に該当する部分について、溶融状態の熱可塑性樹脂を射出して補充することによって、射出補充成形部を形成する。
特開2014−172279号公報
前記従来の方法では、プレス成形部を形成する基材に含有された繊維と、射出補充成形部を形成する基材に含有された繊維とが、プレス成形部と射出補充成形部との界面で絡み合うことがない。そのため、プレス成形部と射出補充成形部との界面において、成形品の強度が低下するおそれがある。
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、繊維を含有する熱可塑性樹脂からなる繊維強化熱可塑性樹脂構造体の強度を向上させることができる該構造体の製造方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成すべく、本発明の繊維強化熱可塑性樹脂構造体の製造方法は、基部と該基部に接して成形された縁部とを有する繊維強化熱可塑性樹脂構造体の製造方法であって、第1の繊維強化樹脂の周囲に第2の繊維強化樹脂を配置して繊維強化樹脂体を得る繊維強化樹脂体配置工程と、前記繊維強化樹脂体をプレス成形して前記基部を成形する基部成形工程と、前記基部の周囲に第3の繊維を含有する熱可塑性樹脂を射出して前記縁部を成形する縁部成形工程と、を有し、前記繊維強化樹脂体配置工程において、前記第1の繊維強化樹脂の周縁部に前記第2の繊維強化樹脂を前記第2の繊維強化樹脂中の繊維の配向方向が不規則になるように配置し、前記縁部成形工程において、前記第2の繊維強化樹脂中の繊維と前記第3の繊維とを絡ませることを特徴とする。
本発明の製造方法によって製造される繊維強化熱可塑性樹脂構造体は、高い強度を有することから、たとえば、フロントエンドリテーナーやシートシェルなどの自動車用の構造体として用いることができる。本発明の製造方法は、主に、繊維配置工程と、基部成形工程と、縁部成形工程とを有している。
繊維強化樹脂体配置工程は、第1の繊維強化樹脂と該第1の繊維強化樹脂の周囲に第2の繊維強化樹脂を配置する工程である。第1および第2の繊維強化樹脂としては、たとえば、一対のポリプロピレンやポリアミドなどの熱可塑性樹脂からなる板状またはフィルム状のシートの間に強化用繊維を挟んだものを使用することができる。また繊維と樹脂粉末を混合して成形したもの、あるいは繊維シート表面に樹脂粉末を振り掛けて成形したもの等を用いることができる。
繊維強化樹脂体配置工程において、強化材として使用される繊維としては、たとえば、ガラス繊維、アルミナ繊維、炭素繊維、有機繊維、または、これらを2種以上混合した繊維を用いることができる。第1の繊維強化樹脂に使用される繊維(以下、第1の繊維と表記する場合がある)としては、たとえば、第2の繊維強化樹脂に使用される繊維(以下、第2の繊維と表記する場合がある)よりも長さが長い長繊維や連続繊維を用いることができ、第2の繊維としては、たとえば、第1の繊維よりも長さが短い短繊維を用いることができる。また、第1の繊維としては、たとえば、シート状の繊維織物や繊維不織布を用いることができる。
繊維強化樹脂体配置工程では、まず、第1の繊維強化樹脂の周囲に第2の繊維強化樹脂を配置する。このとき、第2の繊維は、特定の方向に揃えることなく、不規則に配置される。より具体的には、たとえば、第2の繊維として5mm程度の長さに切断された比較的短い短繊維を用い、第1の繊維強化樹脂の周縁部に第2の繊維が散らばるように第2の繊維強化樹脂を配置する。このとき、第2の繊維の少なくとも一部が第1の繊維の端部に重なるように配置することが好ましい。
基部成形工程は、繊維強化樹脂体配置工程で得られた繊維強化樹脂体をプレスして基部を成形する工程であり、いわゆるスタンピング成形によって、スタンピング基材としての基部を成形する工程である。基部成形工程におけるスタンピング成形は、第1の繊維強化樹脂および第2の繊維強化樹脂に含まれる樹脂の融点以上または流動可能温度以上の温度に加熱してプレス成形するホットフロースタンピングである。スタンピング成形は、射出成形と比較して、成形圧力が小さく、大型の構造体の成形が容易であり、長繊維の構造を破壊することなく構造体を成形でき、構造体の強度を向上させることができる利点がある。繊維強化樹脂体の樹脂の流動性によっては、金型を加熱してもよい。
縁部成形工程は、基部成形工程で成形された基部の周囲に第3の繊維を含有する熱可塑性樹脂を射出して縁部を成形する工程である。縁部成形工程では、たとえば、基部成形工程で成形された基部をプレス成形した金型に第3の繊維を含有する熱可塑性樹脂を射出して縁部を形成する。
第3の繊維としては、たとえば、第1および第2の繊維強化樹脂に使用される繊維と同様の繊維を用いることができ、第2の繊維の長さよりも短い、たとえば1mmから7mm程度の長さの短繊維を用いることができる。第3の繊維を含有する熱可塑性樹脂の射出速度は、たとえば、100mm/s以上の高速であることが好ましい。この縁部成形工程において、射出された樹脂によって基部の縁部と接触する部位を溶融させ、前工程で基部の周縁部に不規則に配置された第2の繊維と、射出された熱可塑性樹脂に含有された第3の繊維とを絡ませることができる。その後、基部の周囲に射出された第3の繊維を含有する熱可塑性樹脂を冷却させることで、基部と該基部に接して成形された縁部とを有する繊維強化熱可塑性樹脂構造体が製造される。
以上の説明から理解できるように、本発明の繊維強化熱可塑性樹脂構造体の製造方法によれば、基部と該基部に接して成形された縁部との界面において、基部を構成する熱可塑性樹脂に含有された第2繊維と、縁部を構成する熱可塑性樹脂に含有された第3繊維とが絡み合う。したがって、本発明の繊維強化熱可塑性樹脂構造体の製造方法によれば、基部と縁部の接合強度を向上させ、繊維を含有する熱可塑性樹脂からなる繊維強化熱可塑性樹脂構造体の強度を向上させることができる。
繊維強化熱可塑性樹脂構造体の一例を示す平面図。 図1のII-II線に沿う繊維強化熱可塑性樹脂構造体の拡大断面図。 本発明の実施形態に係る繊維強化熱可塑性樹脂構造体の製造方法のフロー図。 図3に示す繊維強化樹脂体配置工程を説明する断面図。 図3に示す繊維強化樹脂体配置工程を説明する断面図。 図3に示す縁部成形工程に用いられる金型の概略図。
以下、図面を参照して本発明に係る繊維強化熱可塑性樹脂構造体の製造方法の一実施形態を説明する。以下の説明では、繊維強化熱可塑性樹脂構造体を「樹脂構造体」と略称する。また、第1の繊維強化樹脂、第2の繊維強化樹脂からなる繊維強化樹脂体を製造する方法として、一対の熱可塑性樹脂シートの間に繊維を配置する方法を用いて説明するが、これは例示であって、この方法に限定されるものではない。
図1は、本実施形態の樹脂構造体の製造方法によって製造される樹脂構造体1の一例を示す平面図である。
本実施形態の樹脂構造体の製造方法によって製造される樹脂構造体1は、繊維強化熱可塑性樹脂からなる基部2と、該基部2に接して成形された繊維強化熱可塑性樹脂からなる縁部3とを有する。縁部3は、たとえば、基部2の周縁部に沿って基部2の周囲に枠状に形成されている。樹脂構造体1の縁部3には、たとえば、ボルトなどの締結部材を挿通させる貫通孔3aが形成されている。
図2は、図1に示すII-II線に沿う樹脂構造体1の拡大断面図である。
樹脂構造体1の基部2は、たとえば、比較的に長さの長い長繊維である第1の繊維11と、周縁部の近傍に不規則に配置された比較的に長さの短い短繊維である第2の繊維12を含有している。樹脂構造体1の縁部3は、基部2との接合界面Bの近傍において第2の繊維12と絡み合う比較的に長さの短い短繊維である第3の繊維13を含有している。図2に示す例では、第1の繊維11の長さが最も長く、第3の繊維13の長さが最も短い。換言すると、第1の繊維11の長さは、第2の繊維12の長さよりも長く、第2の繊維12の長さは、第3の繊維13の長さよりも長い。
樹脂構造体1の基部2および縁部3を構成する熱可塑性樹脂としては、たとえば、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリスチレン、ナイロン等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、スチレン−ブタジエン共重合体などの一般的な熱可塑性樹脂や、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトンなどのエンジニアリングプラスチックを用いることができる。第1の繊維11、第2の繊維12、および第3の繊維13としては、たとえば、ガラス繊維、アルミナ繊維、炭素繊維、有機繊維、または、これらを2種以上混合した繊維を用いることができる。
樹脂構造体1は、基部2が第1の繊維11および第2の繊維12を含有し、縁部3が第3の繊維13を含有することで、基部2と縁部3を構成する熱可塑性樹脂が繊維強化され、基部2と縁部3がそれぞれ高い強度を有する。さらに、基部2の周縁部に不規則に配置された第2の繊維12と、縁部3の第3の繊維13とが、基部2と縁部3の接合界面Bの近傍において絡み合うことで、基部2と縁部3の接合界面Bの近傍においても高い強度を有する。このような樹脂構造体1は、たとえば、フロントエンドリテーナーやシートシェルなどの自動車用の構造体として用いることができる。
図3は、本実施形態の樹脂構造体の製造方法100の各工程を示すフロー図である。
本実施形態の樹脂構造体の製造方法100は、主に、繊維強化樹脂体配置工程S1と、基部成形工程S2と、縁部成形工程S3とを有している。
図4および図5は、図3に示す繊維強化樹脂体配置工程S1を説明する断面図である。
繊維強化樹脂体配置工程S1は、第1の熱可塑性樹脂シート21と第2の熱可塑性樹脂シート22との間に第1の繊維11と第2の繊維12を配置して樹脂シート積層体30を得る工程である。繊維強化樹脂体配置工程S1において積層される第1の熱可塑性樹脂シート21および第2の熱可塑性樹脂シート22としては、前述の熱可塑性樹脂からなる板状またはフィルム状のシートを用いることができる。
繊維強化樹脂体配置工程S1では、まず、図4に示すように、第1の熱可塑性樹脂シート21の上に第1の繊維11を配置し、第1の熱可塑性樹脂シート21の周縁部に第2の繊維12を配置する。このとき、第2の繊維12は、特定の方向に揃えることなく、不規則に配置される。
より具体的には、第1の繊維11として、たとえば、縦横に連続する連続繊維または長繊維によって作られたシート状の繊維織物や繊維不織布を用い、第1の熱可塑性樹脂シート21の上に第1の繊維11を配置する。次に、第2の繊維12として、たとえば、15mm程度の長さに切断された短繊維を用い、第1の熱可塑性樹脂シート21の周縁部に第2の繊維12を散らばらせて配置する。このとき、第2の繊維12の少なくとも一部が第1の繊維11の端部に重なるように配置することが好ましい。
次に、図5に示すように、第1の繊維11と第2の繊維12が配置された第1の熱可塑性樹脂シート21の上に、第2の熱可塑性樹脂シート22を重ねて配置することで、樹脂シート積層体30を得る。なお、繊維強化樹脂体配置工程S1では、必要とされる樹脂構造体1の厚さに応じて、複数の樹脂シート積層体30を積層させてもよい。
基部成形工程S2では、繊維強化樹脂体配置工程S1で得られた樹脂シート積層体30を金型によってプレスして基部2を成形する。基部成形工程S2では、いわゆるスタンピング成形によって、スタンピング基材としての基部2を成形する。基部成形工程S2におけるスタンピング成形は、第1の熱可塑性樹脂シート21および第2の熱可塑性樹脂シート22をその融点以上または流動可能温度以上の温度に加熱してプレス成形する、ホットフロースタンピングである。
より具体的には、たとえば、第1の熱可塑性樹脂シート21および第2の熱可塑性樹脂シート22の材料である熱可塑性樹脂の融点近傍の温度(たとえば、PA6の場合には約250℃)に金型を加熱し、金型の間に樹脂シート積層体30を配置してプレスする。スタンピング成形は、射出成形と比較して、成形圧力が小さく、大型の樹脂構造体1の成形が容易であり、長繊維の構造を破壊することなく基部2を成形でき、基部2の強度を向上させることができる利点がある。
図6は、図3に示す縁部成形工程S3に用いられる成形機200の概略図である。
縁部成形工程S3では、たとえば、縦型プレス機に射出機構を備えた成形機200を使用し、基部成形工程S2で成形された基部2の周囲に第3の繊維13を含有する熱可塑性樹脂を射出して、縁部3を成形する。
より詳細には、まず、成形機200の金型201,202を、基部2の材料である熱可塑性樹脂の融点よりも低い温度(たとえば、PA6の場合には約150℃)に加熱する。そして、加熱された金型201,202の間に、基部成形工程S2で成形された基部2を配置してプレス成形する。なお、基部2は、金型201,202の間に配置される前に、たとえばIR加熱炉などにより、基部2の材料である熱可塑性樹脂の融点近傍の温度(たとえば、PA6の場合には約250℃)に加熱される。
金型201,202の型締めが完了した後、たとえば、第3の繊維13を含有する熱可塑性樹脂のペレットを成形機200のホッパー203に投入して加熱することにより可塑化させ、第3の繊維13を含有する可塑化した熱可塑性樹脂を金型201,202内の基部2の周囲に射出する。熱可塑性樹脂のペレットとしては、たとえば7mm程度の長さに切断された炭素繊維を第3の繊維13として含有するものを用いることができる。
金型201,202における射出ゲート204の位置は、図1に示すように、成形後の樹脂構造体1の基部2と縁部3の接合界面B近傍に設定することが好ましい。また、第3の繊維13を含有する熱可塑性樹脂の射出速度は、150mm/s以上の高速であることが好ましい。本実施形態の樹脂構造体の製造方法に用いられる成形機200は、第3の繊維13を含有する熱可塑性樹脂を、たとえば、200mm/sで金型201,202内に射出する。
この縁部成形工程S3により、基部成形工程S2で基部2の周縁部に不規則に配置された第2の繊維12と、射出された熱可塑性樹脂に含有された第3の繊維13とを絡ませる。その後、基部2の周囲に射出された第3の繊維13を含有する熱可塑性樹脂を冷却させることで、図1及び図2に示すように、繊維強化熱可塑性樹脂からなる基部2と、該基部2に接して成形された繊維強化熱可塑性樹脂からなる縁部3とを有する樹脂構造体1が製造される。
以上説明したように、本実施形態の樹脂構造体の製造方法100によれば、基部2と、該基部2に接して成形された縁部3との接合界面Bにおいて、基部2を構成する熱可塑性樹脂に含有された第2の繊維12と、縁部3を構成する熱可塑性樹脂に含有された第3の繊維13とが絡み合う。したがって、本実施形態の樹脂構造体の製造方法100によれば、基部2と縁部3の接合強度を向上させ、繊維強化熱可塑性樹脂からなる樹脂構造体1の強度を向上させることができる。
以上、図面を用いて本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。たとえば、前述の実施形態では、一対の樹脂シート間に繊維成形体を挟むことで繊維強化樹脂体を成形する方法を説明したが、繊維と樹脂粉末を混合したものを成形したり、繊維成形体に樹脂粉末を振り掛けて成形したりすることでも本発明の作用効果が得られる。
1…樹脂構造体(繊維強化熱可塑性樹脂構造体)、2…基部、3…縁部、11…第1の繊維、12…第2の繊維、13…第3の繊維、21…第1の熱可塑性樹脂シート、22…第2の熱可塑性樹脂シート、30…樹脂シート積層体、100…樹脂構造体の製造方法(繊維強化熱可塑性樹脂構造体の製造方法)、S1…繊維強化樹脂体配置工程、S2…基部成形工程、S3…縁部成形工程

Claims (1)

  1. 基部と該基部に接して成形された縁部とを有する繊維強化熱可塑性樹脂構造体の製造方法であって、
    第1の繊維強化樹脂の周囲に第2の繊維強化樹脂を配置して繊維強化樹脂体を得る繊維強化樹脂体配置工程と、前記繊維強化樹脂体をプレス成形して前記基部を成形する基部成形工程と、前記基部の周囲に第3の繊維を含有する熱可塑性樹脂を射出して前記縁部を成形する縁部成形工程と、を有し、
    前記繊維強化樹脂体配置工程において、前記第1の繊維強化樹脂の周縁部に前記第2の繊維強化樹脂を前記第2の繊維強化樹脂中の繊維の配向方向が不規則になるように配置し、
    前記縁部成形工程において、前記第2の繊維強化樹脂中の繊維と前記第3の繊維とを前記基部と前記縁部との接合界面の近傍において絡ませることを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂構造体の製造方法。
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