JP6596873B2 - 成形体の製造方法 - Google Patents
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Description
[1]金型内に、熱可塑性樹脂(A)を含有するインサート材を配置した状態で、溶融状態の熱可塑性樹脂(B)を供給して成形する成形体の製造方法であって、前記インサート材上に接着樹脂が配置された材料(X)上に、前記材料(X)が前記熱可塑性樹脂(A)の軟化温度以上に加熱された状態で、溶融状態の熱可塑性樹脂(B)を供給した後、又は供給しながら金型を閉じ、前記インサート材を賦形しつつ成形する、成形体の製造方法。
[2]金型内に、熱可塑性樹脂(A)を含有するインサート材を配置した状態で、溶融状態の熱可塑性樹脂(B)を供給して成形する成形体の製造方法であって、前記インサート材上に接着樹脂が配置された材料(X)が前記熱可塑性樹脂(A)の軟化温度以上に加熱された状態で、金型を閉じて前記インサート材を賦形した後に、前記軟化温度以上の前記材料(X)上に、溶融状態の熱可塑性樹脂(B)を供給して成形する、成形体の製造方法。
[3]前記接着樹脂を前記インサート材上の一部に配置し、前記接着樹脂を前記インサート材上で流動させて広げつつ成形する、[1]又は[2]に記載の成形体の製造方法。
[4]前記インサート材が、強化繊維及び前記熱可塑性樹脂(A)を含有する繊維強化複合材料である、[1]〜[3]のいずれかに記載の成形体の製造方法。
[5]前記接着樹脂が、前記熱可塑性樹脂(A)及び前記熱可塑性樹脂(B)のいずれか一方又は両方と反応して結合する反応性官能基を有する、[1]〜[4]のいずれかに記載の成形体の製造方法。
[6]型締め時の金型温度が、前記熱可塑性樹脂(A)及び熱可塑性樹脂(B)の軟化温度の低い方の温度よりも5℃以上低い、[1]〜[5]のいずれかに記載の成形体の製造方法。
以下、本発明の成形体の製造方法の第1実施形態について説明する。
第1実施形態の成形体の製造方法は、金型を閉じるタイミングによって下記の方法(i)及び方法(ii)に分類される。
(i)金型内に熱可塑性樹脂(B)を供給した後に金型を閉じる方法。
(ii)金型内に熱可塑性樹脂(B)を供給しながら金型を閉じる方法。
以下、方法(i)及び方法(ii)についてそれぞれ説明する。
方法(i)では、金型内で、熱可塑性樹脂(A)を含有するインサート材上に接着樹脂が配置された材料(X)上に、溶融状態の熱可塑性樹脂(B)を供給した後に金型を閉じ、前記インサート材を賦形しつつ成形する。そして、熱可塑性樹脂(A)及び熱可塑性樹脂(B)が固化した後に金型を開き、成形体を取り出す。本発明においては、溶融状態の熱可塑性樹脂(B)の供給は、材料(X)が熱可塑性樹脂(A)の軟化温度以上に加熱された状態で行う。
なお、材料(X)が熱可塑性樹脂(A)の軟化温度以上に加熱されるとは、インサート材と接着樹脂がともに熱可塑性樹脂(A)の軟化温度以上に加熱されることを意味する。
まず、図1に示すように、下型112における凹部110内に、熱可塑性樹脂(A)を含有するインサート材10を配置し、インサート材10上に接着樹脂12を配置して材料(X)14を形成する。そして、図2に示すように、材料(X)14が熱可塑性樹脂(A)の軟化温度以上に加熱された状態で、材料(X)14上に溶融状態の熱可塑性樹脂(B)16を射出して供給する。その後、図3に示すように、金型100を閉じ、インサート材10を賦形しつつ成形する。熱可塑性樹脂(A)及び熱可塑性樹脂(B)が固化した後に金型100を開き、成形体を取り出す。
材料(X)を加熱する方法は、特に限定されず、例えば、赤外線ヒータ等が挙げられる。
なお、熱可塑性樹脂の軟化温度は、熱可塑性樹脂が結晶性樹脂の場合は熱可塑性樹脂の溶融温度(融点)、熱可塑性樹脂が非晶性樹脂の場合は熱可塑性樹脂のガラス転移温度であり、これらはJIS K7121に準拠した示差走査熱量測定(DSC)法により測定される値を意味する。
なお、方法(i)においては、接着樹脂をインサート材の上面全体に塗布してもよい。
インサート材は、熱可塑性樹脂(A)を含有する材料である。
インサート材としては、強化繊維及び熱可塑性樹脂(A)を含有する繊維強化複合材料が好ましい。繊維強化複合材料としては、強化繊維に熱可塑性樹脂(A)が含浸されたプリプレグ、該プリプレグが複数枚積層されたプリプレグ積層体等が挙げられる。
無機繊維としては、炭素繊維、黒鉛繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、タングステンカーバイド繊維、ボロン繊維、ガラス繊維等が挙げられる。有機繊維としては、アラミド繊維、高密度ポリエチレン繊維、その他一般のナイロン繊維、ポリエステル繊維等が挙げられる。金属繊維としては、ステンレス、鉄等の繊維が挙げられ、また金属を被覆した炭素繊維でもよい。これらの中では、成形体の強度等の機械物性を考慮すると、炭素繊維が好ましい。
変性ポリオレフィン樹脂としては、例えば、マレイン酸等の酸によりポリオレフィン樹脂を変性した樹脂等が挙げられる。
接着樹脂との接着性の観点から、ポリアミド樹脂、変性ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂(A)としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
インサート材には、目的の成形体の要求特性に応じて、難燃剤、耐候性改良剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、相溶化剤、導電性フィラー等の添加剤を配合してもよい。
熱可塑性樹脂(B)としては、特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂(A)で挙げたものと同じものが挙げられる。熱可塑性樹脂(B)としては、得られる成形体におけるインサート材部分と射出成形部分との境界面の接着強度がより高くなる点から、熱可塑性樹脂(A)と同じ種類の樹脂であることが好ましい。
熱可塑性樹脂(B)は、目的の成形体の要求特性に応じて、強化繊維、難燃剤、耐候性改良剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、相溶化剤、導電性フィラー等の添加剤を含有していてもよい。
熱可塑性樹脂(B)としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
接着樹脂は、インサート材及び熱可塑性樹脂(B)に対して接着力を有する樹脂であり、加熱されることでより高い接着力が発揮される公知の樹脂を採用できる。
該樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスルホン樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、スチレン系樹脂(ポリスチレン樹脂、ABS樹脂)、ゴム質重合体、ポリアルキレンオキサイド樹脂等が挙げられる。
接着樹脂が有する反応性官能基は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
接着樹脂としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
方法(ii)では、金型内で、熱可塑性樹脂(A)を含有するインサート材上に接着樹脂が配置された材料(X)上に、溶融状態の熱可塑性樹脂(B)を供給しながら金型を閉じ、前記インサート材を賦形しつつ成形する。方法(ii)は、溶融状態の熱可塑性樹脂(B)を供給した後に金型を閉じる代わりに、溶融状態の熱可塑性樹脂(B)を供給しながら金型を閉じる以外は、方法(i)と同じである。
なお、方法(ii)においては、接着樹脂をインサート材の上面全体に塗布してもよい。
以下、本発明の成形体の製造方法の第2実施形態について説明する。
本実施形態では、金型内に、熱可塑性樹脂(A)を含有するインサート材上に接着樹脂が配置された材料(X)が熱可塑性樹脂(A)の軟化温度以上に加熱された状態で、金型を閉じて前記インサート材を賦形する。その後、金型内における前記軟化温度以上の材料(X)上に、溶融状態の熱可塑性樹脂(B)を供給して成形する。そして、熱可塑性樹脂(A)及び熱可塑性樹脂(B)が固化した後に金型を開き、形成された成形体を取り出す。
まず、図4に示すように、下型212における凸部210上に、熱可塑性樹脂(A)を含有するインサート材10を配置し、インサート材10上に接着樹脂12を配置して材料(X)14を形成する。そして、図5に示すように、材料(X)14が熱可塑性樹脂(A)の軟化温度以上に加熱された状態で、金型200を閉じてインサート材10を賦形する。その後、軟化温度以上の材料(X)14上に、溶融状態の熱可塑性樹脂(B)16を射出して成形する。熱可塑性樹脂(A)及び熱可塑性樹脂(B)が固化した後に金型200を開き、形成された成形体を取り出す。
型締め時の金型温度は、熱可塑性樹脂(A)の軟化温度よりも5℃以上低いことが好ましく、15℃以上低いことがより好ましい。
なお、第2実施形態においては、接着樹脂をインサート材の上面全体に塗布してもよい。
特にインサート材に炭素繊維等の剛性の高い強化繊維が含有されている場合には、成形体が曲げられたときにインサート材部分と射出成形部分との境界面に大きなせん断応力が加わって剥離しやすい。しかし、本発明の成形体の製造方法によれば、インサート材に炭素繊維等の強化繊維が含有されている場合でも、インサート材部分と射出成形部分との境界面の接着強度が充分に高い成形体が得られる。
また、本発明の成形体の製造方法は、熱可塑性樹脂(B)の射出成形を行う前に別途インサート材を賦形しておく必要がないため、低コストである。
[製造例1:インサート材の製造]
炭素繊維(商品名「パイロフィル炭素繊維トウTR 50S」、三菱レイヨン社製)を一方向に、かつ平面状に引き揃えて目付が78g/m2である繊維シートとする。熱可塑性樹脂(A)として酸変性ポリプロピレン樹脂(商品名「モディックP958V」、三菱化学社製、軟化温度:165℃)を用いた目付が36g/m2のフィルムによって、該繊維シートを両面から挟む。これらをカレンダロールに複数回通して加熱と加圧を行い、樹脂を繊維シートに含浸させ、繊維体積含有率(Vf)が35体積%、厚み120μmのプリプレグを作製する。
次いで、得られたプリプレグ8枚を、炭素繊維の繊維軸方向が平面視で0゜/90゜/0゜/90゜/90゜/0゜/90゜/0゜となるように積層し、熱溶着により一体化して、平面視形状が40mm×200mmの矩形のプリプレグ積層体からなるインサート材を得る。
図1に例示した金型100を用いる。
図1に示すように、下型112における凹部110内に、製造例1で得たインサート材を配置する。該インサート材上の中央部分に、接着樹脂としてシアノアクリレート基を有する商品名「シアノン722」(高圧ガス工業社製)を0.3g配置して材料(X)を形成する。次いで、図2に示すように、赤外線ヒータによって前記材料(X)を210℃に加熱した状態で、上型116の樹脂流路118から接着樹脂上に、熱可塑性樹脂(B)として炭素繊維含有ポリプロピレン樹脂である商品名「パイロフィルペレットPP−C−30A」(三菱レイヨン社製、軟化温度:165℃、炭素繊維含有量:30質量%)を溶融状態で射出して供給する。次いで、図3に示すように、上型116を下型112に向かって移動させて金型100を閉じ、インサート材を賦形しつつ成形する。型締め時の金型100の温度は80℃とする。熱可塑性樹脂(B)の射出から1分後に金型100を開き、成形体を取り出す。成形体における材料(X)由来のインサート材部分と熱可塑性樹脂(B)由来の射出成形部分の界面強度は良好である。
図4に例示した金型200を用いる。
図4に示すように、下型212における凸部210上に、製造例1で得たインサート材を配置する。該インサート材上の中央部分に、接着樹脂としてシアノアクリレート基を有する商品名「シアノン722」(高圧ガス工業社製)を0.3g配置して材料(X)を形成する。次いで、図5に示すように、赤外線ヒータによって前記材料(X)を210℃に加熱した状態で、金型200を閉じてインサート材を賦形する。次いで、図6に示すように、210℃に加熱された状態の材料(X)上に、熱可塑性樹脂(B)として炭素繊維含有ポリプロピレン樹脂である商品名「パイロフィルペレットPP−C−30A」(三菱レイヨン社製、軟化温度:165℃、炭素繊維含有量:30質量%)を溶融状態で射出して成形する。型締め時の金型100の温度は80℃とする。熱可塑性樹脂(B)の射出から1分後に金型200を開き、形成された成形体を取り出す。成形体における材料(X)由来のインサート材部分と熱可塑性樹脂(B)由来の射出成形部分の界面強度は良好である。
実施例2において、インサート材を賦形した後に、25℃の状態の材料(X)上に熱可塑性樹脂(B)を溶融状態で射出して成形する以外は、実施例2と同様にして成形体を製造する。成形体における材料(X)由来のインサート材部分と熱可塑性樹脂(B)由来の射出成形部分の界面は一見接着しているが、その接着強度は実施例2と比較すると大きく劣る。
各例における成形体のインサート材部分と射出成形部分の境界面での接着強度は、以下のようにして評価する。
成形体から12.7mm幅×120mm長に試験片を切り出し、JIS K7074に準拠した曲げ試験を実施し、その試験から得られるひずみ−応力曲線の最初の応力降伏点が基材破壊であるものを「〇」、界面剥離であるものを「×」とする。
評価結果を表1に示す。
12 接着樹脂
14 材料(X)
16 熱可塑性樹脂(B)
100 金型
110 凹部
112 下型
114 凸部
116 上型
118 樹脂流路
200 金型
210 凸部
212 下型
214 凹部
216 上型
218 樹脂流路
Claims (6)
- 金型内に、熱可塑性樹脂(A)を含有するインサート材を配置した状態で、溶融状態の熱可塑性樹脂(B)を供給して成形する成形体の製造方法であって、
前記インサート材上に接着樹脂が配置された材料(X)上に、前記材料(X)が前記熱可塑性樹脂(A)の軟化温度以上に加熱された状態で、溶融状態の熱可塑性樹脂(B)を供給した後に金型を閉じ、又は供給しながら金型を閉じ、前記インサート材を賦形しつつ成形する、成形体の製造方法。 - 金型内に、熱可塑性樹脂(A)を含有するインサート材を配置した状態で、溶融状態の熱可塑性樹脂(B)を供給して成形する成形体の製造方法であって、
前記インサート材上に接着樹脂が配置された材料(X)が前記熱可塑性樹脂(A)の軟化温度以上に加熱された状態で、金型を閉じて前記インサート材を賦形した後に、前記軟化温度以上の前記材料(X)上に、溶融状態の熱可塑性樹脂(B)を供給して成形する、成形体の製造方法。 - 前記接着樹脂を前記インサート材上の一部に配置し、前記接着樹脂を前記インサート材上で流動させて広げつつ成形する、請求項1又は2に記載の成形体の製造方法。
- 前記インサート材が、強化繊維及び前記熱可塑性樹脂(A)を含有する繊維強化複合材料である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の成形体の製造方法。
- 前記接着樹脂が、前記熱可塑性樹脂(A)及び前記熱可塑性樹脂(B)のいずれか一方又は両方と反応して結合する反応性官能基を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の成形体の製造方法。
- 型締め時の金型温度が、前記熱可塑性樹脂(A)及び熱可塑性樹脂(B)の軟化温度の低い方の温度よりも5℃以上低い、請求項1〜5のいずれか一項に記載の成形体の製造方法。
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