本発明のめっき製品の製造方法の第1実施形態を説明する。
本発明のめっき製品の製造方法は、被めっき体を溶融亜鉛浴に浸漬させ、被めっき体に亜鉛を付着させる第1工程と、亜鉛が付着した被めっき体を、アルミニウム合金粉末が充填された流動床浴に浸漬させることにより、被めっき体の表面に亜鉛アルミニウム合金めっきを形成する第2工程とを備える。
第1工程では、被めっき体を溶融亜鉛浴に浸漬させ、被めっき体に亜鉛を付着させる。
被めっき体は、亜鉛アルミニウム合金めっき(後述)によってめっきされる被表面処理体であって、好ましくは、鉄材が挙げられる。
鉄材としては、特に制限されず、例えば、鋼鉄の板材、例えば、鋼鉄の棒材、例えば、鋼鉄の線材、例えば、ネジやナットなどの加工品、例えば、鋳物などが挙げられる。
被めっき体を溶融亜鉛浴に浸漬させ、被めっき体に亜鉛を付着させるには、まず、被めっき体を前処理する。
前処理は、例えば、被めっき体の表面の油分を除去するための脱脂処理、被めっき体の錆を除去するための酸処理、被めっき体の表面にフラックス被膜を形成するためのフラックス処理の順に実施される。
脱脂処理では、例えば、水酸化ナトリウムを含む溶液(水溶液)を充填した浴槽に被めっき体を浸漬し、その後、被めっき体を引き上げ、これを水洗する。これにより、被めっき体の表面の油分が除去される。
酸処理では、例えば、塩酸を含む溶液(水溶液)を充填した浴槽に被めっき体を浸漬し、その後、被めっき体を引き上げ、これを水洗する。これにより、被めっき体の錆が除去される。
フラックス処理では、例えば、塩化亜鉛および塩化アンモニウムを含む溶液(水溶液)を充填した浴槽に被めっき体を浸漬する。これにより、被めっき体の表面にフラックス被膜が形成される。
次いで、前処理した被めっき体を溶融亜鉛浴に浸漬する。
溶融亜鉛浴としては、例えば、溶融した亜鉛が充填された鋼板製またはセラミック製の容器が挙げられる。
また、溶融亜鉛浴には、必要により、鉛、錫、ビスマスなどの添加剤を配合することができる。これら添加剤は、単独使用または2種以上併用できる。
溶融亜鉛浴の温度は、例えば、420℃以上、好ましくは、460℃以上、より好ましくは、480℃以上、また、例えば、510℃以下、好ましくは、500℃以下である。
これにより、被めっき体に亜鉛(溶融亜鉛)を付着させる。
第2工程では、被めっき体の表面に亜鉛アルミニウム合金めっきを形成する。
被めっき体の表面に亜鉛アルミニウム合金めっきを形成するには、亜鉛が付着した被めっき体を、アルミニウム合金粉末が充填された流動床浴に浸漬させる。
以下、この方法で用いられる流動床浴について、説明する。
流動床浴1は、上方が開口した有底円筒形状を有し、例えば、鉄またはステンレスなどの耐食性材料からなる。
また、流動床浴1は、図1に示すように、空気供給部2とメッシュ部材3と流動床部4とを、流動床浴1の下部から上部に向かって順に備えている。
空気供給部2は、流動床浴1の下部に配置され、空気が供給される部分であり、空気供給部2には、空気を供給するための空気供給管5が接続されている。
空気供給管5は、中空の配管からなり、その一端部が、空気供給部2に接続されるとともに、その他端部が、エアコンプレッサなどの公知の空気供給ポンプ(図示せず)に接続されている。これにより、空気は、空気供給部2に供給される。
また、空気供給部2には、空気を拡散させ、流動床部4に均一に空気を供給させるために、充填材6が充填されている。
充填材6としては、例えば、球状のガラスなどが挙げられる。
メッシュ部材3は、板状のメッシュ形状を有し、空気供給部2と流動床部4との間に介在されており、空気供給部2と流動床部4とを分離するように構成されている。
メッシュ部材3には、後述するアルミニウム合金粉末7の大きさよりも小さい穴が多数整列配置されている。
穴の開口径は、例えば、30μm以上であり、また、例えば、50μm未満である。
このようなメッシュ部材3により、空気供給部2に後述するアルミニウム合金粉末7が侵入するのを防止するとともに、空気供給部2に供給された空気を、空気供給部2から流動床部4に供給することができる。
流動床部4は、流動床浴1の上部に配置されており、流動床部4には、アルミニウム合金粉末7が充填されている。
アルミニウム合金粉末7は、アルミニウムと他の金属との合金である。
他の金属としては、例えば、亜鉛、マグネシウム、錫、銅、ビスマスからなる群から選択される少なくとも1種以上が挙げられ、好ましくは、亜鉛、マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種以上、より好ましくは、マグネシウムが挙げられる。
つまり、アルミニウム合金粉末7は、好ましくは、マグネシウムを含んでいる。
アルミニウム合金粉末7が、マグネシウムを含めば、この方法により得られるめっき製品の耐食性を向上させることができる。
具体的には、アルミニウム合金粉末7がマグネシウムを含む場合は、アルミニウム合金粉末7がマグネシウムを含まない場合と比べて、耐食性を2倍向上させることができる。
また、この場合では、マグネシウムを、マグネシウムとアルミニウムとの合金として用いるため、マグネシウム単体(合金化されていないマグネシウム)と比べ、取り扱い性に優れる。
さらには、マグネシウムを、マグネシウムとアルミニウムとの合金として用いるため、詳しくは後述するが、マグネシウム−アルミニウム合金粉末の融点が低くなる。そのため、例えば、マグネシウム単体を用いる場合よりも、被めっき体の表面に亜鉛アルミニウム合金めっき(後述)を形成しやすい。
このようなアルミニウム合金粉末7として、具体的には、マグネシウム−亜鉛−アルミニウム合金粉末、マグネシウム−アルミニウム合金粉末、亜鉛−アルミニウム合金粉末が挙げられる。
アルミニウム合金粉末7が、マグネシウム−亜鉛−アルミニウム合金粉末である場合には、アルミニウム合金粉末7において、マグネシウムの含有割合は、例えば、0.5質量%以上、好ましくは、1質量%以上であり、また、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下であり、また、亜鉛の含有割合は、例えば、70質量%以上、好ましくは、85質量%以上であり、また、例えば、95質量%以下であり、また、アルミニウムの含有割合は、例えば、2質量%以上、好ましくは、4質量%以上であり、また、例えば、20質量%以下であり、好ましくは、10質量%以下である。
また、アルミニウム合金粉末7が、マグネシウム−アルミニウム合金粉末である場合には、マグネシウムの含有割合は、例えば、10質量%以上であり、また、例えば、40質量%以下、好ましくは、30質量%以下であり、また、アルミニウムの含有割合は、例えば、60質量%以上、好ましくは、70質量%以上であり、また、例えば、90質量%以下である。
また、アルミニウム合金粉末7が、亜鉛−アルミニウム合金粉末である場合には、亜鉛の含有割合は、例えば、70質量%以上であり、また、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下であり、アルミニウムの含有割合は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上であり、また、例えば、30質量%以下である。
アルミニウム合金粉末7として、好ましくは、マグネシウム−アルミニウム合金粉末が挙げられる。
アルミニウム合金粉末7が、マグネシウム−アルミニウム合金粉末であれば、この方法により得られるめっき製品の耐食性を向上させることができる。また、流動床浴1の温度が低くても、亜鉛アルミニウム合金めっきを形成することができる。
アルミニウム合金粉末7は、例えば、遠心噴霧法などの公知の製法により製造することができる。
アルミニウム合金粉末7の平均粒子径は、例えば、150μm以下、好ましくは、100μm以下、また、例えば、50μm以上、好ましくは、55μm以上である。
なお、この流動床浴1には、加熱ヒータなどの公知の加熱装置(図示せず)が設けられていてもよい。
そして、この流動床浴1では、空気供給部2に空気が供給されると、その空気は、空気供給部2からメッシュ部材3を通じて、流動床部4に供給される。このとき、空気は、流動床浴1の下部から上部に渡って均一に供給される。これにより、流動床部4に充填されたアルミニウム合金粉末7は、浮遊懸濁の状態に保たれ、アルミニウム合金粉末7は、全体として、流体のように振る舞う(流動状態)。
そして、第2工程では、亜鉛が付着した被めっき体を、上記した流動床浴1に浸漬させる。
具体的には、第2工程では、亜鉛が付着した被めっき体を、流動状態のアルミニウム合金粉末が充填された流動床浴1に浸漬させる。
流動床浴1に浸漬する直前の被めっき体の温度は、例えば、420℃以上であり、また、例えば、510℃以下である。
そして、例えば、第2工程では、亜鉛が付着した被めっき体を、付着した亜鉛が凝固する前に、上記した流動床浴1に浸漬させる。
付着した亜鉛が凝固する前としては、好ましくは、第1工程の直後が挙げられる。
この場合、第1工程直後、例えば、付着した亜鉛が凝固する前の420℃以上の被めっき体をアルミニウム合金粉末7が充填された流動床浴1に浸漬する。
また、第2工程では、亜鉛が付着した被めっき体を、付着した亜鉛が凝固した直後に、上記した流動床浴1に浸漬させることもできる。
この場合、付着した亜鉛が凝固した後、例えば、420℃以上の被めっき体をアルミニウム合金粉末7が充填された流動床浴1に浸漬する。
付着した亜鉛が凝固した後であっても、流動床浴1に浸漬する直前の被めっき体の温度が、高温(例えば、420℃以上)であれば、亜鉛アルミニウム合金めっき(後述)を形成することができる。
流動床浴1の温度は、常温(例えば、10℃以上、30℃以下)でよく、また、必要により、加熱により、流動床浴1の温度を上げてもよい。
流動床浴1の温度を上げる場合には、流動床浴1の温度は、例えば、50℃以上であり、また、例えば、220℃以下である。
この場合、例えば、流動床浴1の温度を、190℃以上に上げることにより、亜鉛アルミニウム合金めっき(後述)の形成を促進させることができる。
浸漬時間(具体的には、被めっき体を、流動床浴1内で静置する時間)は、例えば、0.5秒以上、好ましくは、1秒以上であり、また、例えば、60秒以下、好ましくは、30秒以下である。
これにより、被めっき体の表面に、亜鉛アルミニウム合金めっきが形成される。
具体的には、まず、被めっき体と被めっき体に付着した亜鉛(溶融亜鉛または凝固した亜鉛)とからなる被めっき体−亜鉛めっき層が形成され、次いで、その被めっき体−亜鉛めっき層の表面で、被めっき体に付着した亜鉛(溶融亜鉛または凝固した亜鉛)からなる亜鉛めっき層が形成され、次いで、その亜鉛めっき層の表面で、被めっき体に付着した亜鉛(溶融亜鉛または凝固した亜鉛)とアルミニウム合金粉末7とが反応し、亜鉛めっき層の表面に、被めっき体に付着した亜鉛(溶融亜鉛または凝固した亜鉛)と、アルミニウム合金粉末7とからなる亜鉛−アルミニウム合金めっき層が形成される。つまり、亜鉛アルミニウム合金めっきは、被めっき体−亜鉛めっき層と、亜鉛めっき層と、亜鉛−アルミニウム合金めっき層とを含む。
さらに、アルミニウム合金粉末7の種類によっては、最表層として、アルミニウム合金からなるアルミニウム合金めっき層が形成される場合もある。このような場合には、亜鉛アルミニウム合金めっきは、さらに、アルミニウム合金めっき層を含む。
このような亜鉛アルミニウム合金めっきとして、具体的には、被めっき体が鉄材であり、アルミニウム合金粉末7が、マグネシウム−亜鉛−アルミニウム合金粉末である場合には、亜鉛アルミニウム合金めっきは、鉄−亜鉛めっき層と、亜鉛めっき層と、マグネシウム−亜鉛−アルミニウム合金めっき層とを含む。
また、被めっき体が鉄材であり、アルミニウム合金粉末7が、亜鉛−アルミニウム合金粉末である場合には、亜鉛アルミニウム合金めっきは、鉄−亜鉛めっき層と、亜鉛めっき層と、亜鉛−アルミニウム合金めっき層とを含む。
また、被めっき体が鉄材であり、アルミニウム合金粉末7が、マグネシウム−アルミニウム合金粉末である場合には、亜鉛アルミニウム合金めっきは、鉄−亜鉛めっき層と、亜鉛めっき層と、マグネシウム−亜鉛−アルミニウム合金めっき層と、最表層として任意に形成される、マグネシウム−アルミニウム合金めっき層(アルミニウム合金めっき層)とを含む。
その後、この被めっき体を、流動状態のアルミニウム合金粉末7が充填された流動床浴1から取り出し、空冷または水冷する。
これにより、亜鉛アルミニウム合金めっきでめっきされためっき製品が得られる。
このようなめっき製品において、アルミニウムの付着量は、亜鉛アルミニウム合金めっきに対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上であり、また、通常、30質量%以下である。
なお、アルミニウムの付着量の測定方法は、後述する実施例において詳述する。
また、このようなめっき製品は、建築、道路、鉄道、造船、電力通信などに用いられる部材において、幅広く用いられる。
この方法では、上記したように、流動状態のアルミニウム合金粉末7が充填された流動床浴1に被めっき体を浸漬し、この被めっき体を、流動床浴1内で所定時間、静置させ、その後、この被めっき体を流動状態のアルミニウム合金粉末7が充填された流動床浴1から取り出している。
すなわち、この方法では、第2工程において、アルミニウム合金粉末7の流動を停止させることなく、アルミニウム合金粉末7を連続して流動させている。
この方法によれば、アルミニウム合金粉末7を連続して流動させているため、流動床浴1内のアルミニウム合金粉末7を均一に分散させることができる。そして、均一に分散したアルミニウム合金粉末7と、被めっき体に付着した亜鉛(溶融亜鉛または凝固した亜鉛)とが反応するため、被めっき体の表面にアルミニウムを均一に付着させることができる。
続いて、本発明のめっき製品の製造方法の第2実施形態を説明する。
以下の第2実施形態において、第1実施形態と同じ説明となる場合には、その説明を省略する。
第1実施形態では、第2工程において、アルミニウム合金粉末7の流動を停止させることなく、アルミニウム合金粉末7を連続して流動させたが、この第2実施形態では、第2工程において、アルミニウム合金粉末7の流動を停止させることもできる。
すなわち、この第2実施形態では、第2工程は、アルミニウム合金粉末7を流動させる工程とアルミニウム合金粉末7の流動を停止させる工程とを備える。
第2実施形態の第1工程では、まず、第1実施形態の第1工程と同様に、被めっき体を溶融亜鉛浴に浸漬させ、被めっき体に亜鉛を付着させる。
次いで、第2工程では、亜鉛が付着した被めっき体を、流動状態のアルミニウム合金粉末7が充填された流動床浴1に浸漬させる。
第2実施形態において、流動床浴1における空気供給管5の流れ方向途中には、パルスコントローラー(図示せず)が設置されている。このパルスコントローラー(図示せず)のパルス制御によって、エアコンプレッサの駆動を制御することができる。
そして、亜鉛が付着した被めっき体を、流動状態のアルミニウム合金粉末が充填された流動床浴1に浸漬させるには、まず、アルミニウム合金粉末7を流動させ(アルミニウム合金粉末7を流動させる工程)、次いで、流動状態のアルミニウム合金粉末7が充填された流動床浴1に、亜鉛が付着した被めっき体を浸漬させる。そして、そのまま、亜鉛が付着した被めっき体を、例えば、0.5秒以上、好ましくは、1秒以上、また、例えば、60秒以下、好ましくは、30秒以下、より好ましくは、10秒以下の間、流動床浴1内で静置させる。静置後、アルミニウム合金粉末7の流動を停止させ(アルミニウム合金粉末7の流動を停止させる工程)、被めっき体を、例えば、0.5秒以上、好ましくは、1秒以上、また、例えば、60秒以下、好ましくは、30秒以下、より好ましくは、10秒以下の間、流動床浴1内で静置させる。これにより、被めっき体の表面に、第1実施形態と同様の亜鉛アルミニウム合金めっきが形成される。
その後、再度、アルミニウム合金粉末7を流動させ(アルミニウム合金粉末7を流動させる工程)、被めっき体を、流動床浴1から取り出し、空冷または水冷する。
これにより、亜鉛アルミニウム合金めっきでめっきされためっき製品が得られる。
この方法において、アルミニウム合金粉末7の流動を停止させることによって、流動床浴1内のアルミニウム合金粉末7が密に充填された状態にすることができる。
そして、密に充填された状態のアルミニウム合金粉末7と、被めっき体に付着した亜鉛(溶融亜鉛または凝固した亜鉛)とを反応するため、被めっき体の表面のアルミニウムの付着量を多くすることでき、その結果、耐食性を向上させることができる。
具体的には、アルミニウムの付着量は、亜鉛アルミニウム合金めっきに対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上、より好ましくは、10質量%以上であり、また、通常、30質量%以下である。
一方、この方法では、アルミニウム合金粉末7を流動させる工程において、流動床浴1内のアルミニウム合金粉末7を均一に分散させている。
被めっき体に付着した亜鉛は、この流動床浴1内に均一に分散したアルミニウム合金粉末7とも反応するため、被めっき体の表面にアルミニウムを均一に付着させることができる場合もある。
つまり、この方法によれば、被めっき体の表面のアルミニウムの付着量を多くすることでき、かつ、被めっき体の表面にアルミニウムを均一に付着させることができる場合もある。
なお、上記した説明では、アルミニウム合金粉末7を流動させる工程を2回実施し、アルミニウム合金粉末7の流動を停止させる工程を1回実施しているが、必要により、アルミニウム合金粉末7を流動させる工程と、アルミニウム合金粉末7の流動を停止させる工程とは、繰り返して実施することができる。
例えば、アルミニウム合金粉末7を流動させる工程を3回実施し、アルミニウム合金粉末7の流動を停止させる工程を2回実施する場合について、以下説明する。
このような場合、まず、アルミニウム合金粉末7を流動させ(アルミニウム合金粉末7を流動させる工程)、次いで、流動状態のアルミニウム合金粉末7が充填された流動床浴1に、亜鉛が付着した被めっき体を浸漬させ、流動床浴1内で被めっき体を、上記した時間で静置させる。次いで、アルミニウム合金粉末7の流動を停止させた後(アルミニウム合金粉末7の流動を停止させる工程)、流動床浴1内で被めっき体を上記した時間で静置させる。次いで、再度、アルミニウム合金粉末7を流動させ(アルミニウム合金粉末7を流動させる工程)、同様に、流動床浴1内で被めっき体を、静置させる。次いで、再度、アルミニウム合金粉末7の流動を停止させ(アルミニウム合金粉末7の流動を停止させる工程)、同様に、流動床浴1内で被めっき体を静置させる。最後に、アルミニウム合金粉末7を流動させ(アルミニウム合金粉末7を流動させる工程)、被めっき体を、流動床浴1から取り出す。
アルミニウム合金粉末7を流動させる工程を実施する回数、および、アルミニウム合金粉末7の流動を停止させる工程を実施する回数は、適宜選択される。
アルミニウムの付着量および工程の簡便性の観点から、好ましくは、アルミニウム合金粉末7を流動させる工程を2回実施し、アルミニウム合金粉末7の流動を停止させる工程を1回実施する。
上記の第1実施形態および第2実施形態のめっき製品の製造方法によれば、亜鉛が付着した被めっき体を、アルミニウム合金粉末が充填された流動床浴に浸漬させることにより、被めっき体の表面に亜鉛アルミニウム合金めっきを形成している。つまり、この方法では、流動床浴を用いて、被めっき体の表面に、乾式で、亜鉛アルミニウム合金めっきを形成させる。
そのため、この方法により得られるめっき製品は、外観に優れる。
一方、特許文献1のめっき方法は、溶融亜鉛浴に浸漬した後の鉄材を、油に浸漬させるため、鉄材の表面に油膜が形成されることにより、外観が不良になる。
また、このめっき製品の製造方法によれば、亜鉛が付着した被めっき体を、アルミニウム合金粉末に浸漬させている。つまり、この方法では、合金の粉末を用いている。
合金の粉末を用いることで、合金の融点を下げることができる。
詳しくは、例えば、アルミニウム合金粉末が、マグネシウム−亜鉛−アルミニウム合金粉末(マグネシウム(融点650℃)、亜鉛(融点419.58℃)、アルミニウム(融点660℃))である場合、このアルミニウム合金粉末の融点を約360℃まで下げることができ、例えば、アルミニウム合金粉末が、マグネシウム−アルミニウム合金粉末である場合には、このアルミニウム合金粉末の融点を約420℃まで下げることができ、例えば、アルミニウム合金粉末が亜鉛−アルミニウム合金粉末である場合には、このアルミニウム合金粉末の融点を400℃まで下げることができる。
合金の融点を低くできるため、例えば、アルミニウム単体(合金化されていないアルミニウム)を用いる場合よりも、被めっき体の表面に亜鉛アルミニウム合金めっきを形成しやすく、さらには、流動床浴の温度が低くても(具体的には、常温(10℃以上、30℃以下))、被めっき体の温度が高温(例えば、420℃以上)であれば、亜鉛アルミニウム合金めっきを形成することができる。
この場合、流動床浴1の運転コストを低減させることができる。
また、アルミニウム単体を用いた場合には、アルミニウム単体の表面に酸化被膜が形成される場合があり、この酸化被膜が、被めっき体に付着した亜鉛(溶融亜鉛または凝固した亜鉛)とアルミニウムとの反応を阻害する場合がある。
一方、この方法では、アルミニウム合金粉末を用いるため、上記した酸化被膜が形成されにくく、被めっき体に付着した亜鉛(溶融亜鉛または凝固した亜鉛)とアルミニウム合金粉末とを確実に反応させることができる。その結果、亜鉛−アルミニウム合金めっき層を確実に形成することができる。
なお、第1実施形態および第2実施形態では、第2工程において、第1工程の直後の被めっき体を流動床浴に浸漬したが、特に制限されず、例えば、第1工程の後、被めっき体をそのまま放置し、被めっき体に付着した亜鉛を凝固させ、その後、被めっき体を加熱し、再度、亜鉛が溶融された状態にし、その状態で第2工程を実施することもできる。
また、第1実施形態および第2実施形態では、流動床浴1は上方が開口した有底円筒形状を有しているが、流動床浴1の形状は特に限定されず、流動床浴1は、例えば、上方が開口した有底角柱形状(例えば、有底四角柱形状)を有することもできる。
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。また、以下の記載において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
1.めっき製品の製造
実施例1
被めっき体として、鉄材(70mm×150mm、厚み3.2mm)を準備した。そして、この鉄材を、水酸化ナトリウム水溶液が充填された浴槽に浸漬した後、鉄材を引き上げ、これを水洗した(脱脂処理)。次いで、塩酸水溶液が充填された浴槽に浸漬した後、鉄材を引き上げ、これを水洗した(酸処理)。次いで、塩化亜鉛および塩化アンモニウムを含む水溶液が充填された浴槽に浸漬した後、鉄材を引き上げた(フラックス処理)。
続いて、この鉄材を溶融した亜鉛が充填された溶融亜鉛浴に浸漬した。溶融亜鉛浴の温度は、495℃であった。
これにより、鉄材に亜鉛を付着させた(第1工程)。
その後、亜鉛が付着した鉄材を溶融亜鉛浴から引き上げ、付着した亜鉛が凝固する前に、鉄材を、流動状態のアルミニウム合金粉末が充填された流動床浴に浸漬した。流動床浴に浸漬する前の亜鉛が付着した鉄材の温度は、440℃〜480℃以上であった。
なお、流動床浴には、アルミニウム合金粉末として、アルミニウム8質量%、亜鉛90質量%、マグネシウム2質量%を含むアルミニウム合金粉末(平均粒子径75μm)を充填した。
また、流動床浴の温度は、100℃であり、浸漬時間は、5秒であった。
これにより、被めっき体の表面に亜鉛アルミニウム合金めっきを形成した(第2工程)。
なお、第2工程では、アルミニウム合金粉末の流動を停止することなく、アルミニウム合金粉末7を連続して流動させるように、エアコンプレッサを制御した。
その後、流動床浴から被めっき体を取り出し、空冷し、めっき製品を得た。
実施例2
アルミニウム合金粉末として、アルミニウム80質量%、マグネシウム20質量%を含むアルミニウム合金粉末を充填し、流動床浴の温度を、13℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、めっき製品を製造した。
実施例3
アルミニウム合金粉末として、アルミニウム22.3質量%、亜鉛77.7質量%を含むアルミニウム合金粉末を充填し、流動床浴の温度を、80℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、めっき製品を製造した。
実施例4
流動床浴の温度を、200℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、めっき製品を製造した。
実施例5
被めっき体として、鉄材(70mm×150mm、厚み3.2mm)を準備した。そして、この鉄材を、水酸化ナトリウム水溶液が充填された浴槽に浸漬した後、鉄材を引き上げ、これを水洗した(脱脂処理)。次いで、塩酸水溶液が充填された浴槽に浸漬した後、鉄材を引き上げ、これを水洗した(酸処理)。次いで、塩化亜鉛および塩化アンモニウムを含む水溶液が充填された浴槽に浸漬した後、鉄材を引き上げた(フラックス処理)。
続いて、この鉄材を溶融した亜鉛が充填された溶融亜鉛浴に浸漬した。溶融亜鉛浴の温度は、495℃であった。
これにより、鉄材に亜鉛を付着させた(第1工程)。
その後、亜鉛が付着した鉄材を溶融亜鉛浴から引き上げ、付着した亜鉛が凝固する前に、鉄材を、流動状態のアルミニウム合金粉末が充填された流動床浴に浸漬した。
なお、流動床浴に浸漬する前の亜鉛が付着した鉄材の温度は、440℃〜480℃以上であった。
また、流動床浴には、アルミニウム合金粉末として、アルミニウム8質量%、亜鉛90質量%、マグネシウム2質量%を含むアルミニウム合金粉末(平均粒子径75μm)を充填した。
また、流動床浴の温度は、100℃であった。
浸漬後、流動状態のアルミニウム合金粉末が充填された流動床浴内で、鉄材を5秒間、静置した。
次いで、パルス制御によって、エアコンプレッサを停止させることにより、アルミニウム合金粉末の流動を停止させ、その後、流動床浴内で、鉄材を5秒間、静置した。
これにより、被めっき体の表面に亜鉛アルミニウム合金めっきを形成した(第2工程)
最後に、パルス制御によって、エアコンプレッサを駆動させることにより、アルミニウム合金粉末を流動させた後、流動床浴から被めっき体を取り出し、空冷し、めっき製品を製造した。
実施例6
実施例5と同じ条件で、めっき製品を製造した。
比較例1
亜鉛でめっきした鉄材を、溶融亜鉛浴から引き上げ、付着した亜鉛が凝固する前に、この鉄材を、動粘度30mm2/sのシリコーンオイルにアルミニウム粉末を混合した油槽に攪拌しながら浸漬した以外は、実施例1と同様にして、めっき製品を製造した。
2.評価
(外観)
各実施例および各比較例のめっき製品の外観を、目視観察により、評価した。
実施例1〜実施例5について、めっき製品の表面には、汚れは観測されなかった。
一方、比較例1について、めっき製品の表面には油膜が形成されていた。
外観に関して次の基準で優劣を評価した。その結果を表1に示す
○:めっき製品の表面に、汚れが観察されなかった。
×:めっき製品の表面に、汚れが観察された。
(均一性)
各実施例および各比較例のめっき製品について、蛍光X線分析装置を用いて、アルミニウムの割合(アルミニウムの付着量)を測定した。
なお、測定は、めっき製品の表面および裏面において、めっき製品の長手方向上側中央部、長手方向下側中央部について実施した(すなわち、測定箇所は、表面上側中央部、表面下側中央部、裏面上側中央部、裏面下側中央部である。)。
その結果を、各測定箇所に基づいて算出した標準偏差とともに、表1に示す。
3.考察
被めっき体に、流動床浴を用いて亜鉛アルミニウム合金めっきを形成した実施例1〜実施例6は、外観が良好であったことがわかる。
一方、被めっき体を油槽に浸漬させることによって、亜鉛アルミニウム合金めっきを形成した比較例1は、外観が不良であったことがわかる。
また、アルミニウム合金粉末を連続して流動させた実施例1〜実施例4標準偏差は、油槽を用いた比較例1の標準偏差よりも小さいことがわかる。
このことから、アルミニウム合金粉末を連続して流動させると、被めっき体に、アルミニウムを均一に分布させることができたことがわかる。
また、第2工程において、アルミニウム合金粉末を流動させる工程とアルミニウム合金粉末の流動を停止させる工程とを実施した実施例5および実施例6のアルミニウムの付着量は、油槽を用いた比較例1よりも多いことがわかる。
このことから、第2工程において、アルミニウム合金粉末を流動させる工程とアルミニウム合金粉末の流動を停止させる工程とを実施すると、被めっき体に対するアルミニウムの付着量を多くすることができることがわかる。