JP6571437B2 - 半導体装置の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、半導体基板の裏面に保護層が設けられた半導体装置の製造方法に関し、さらに詳しくは、当該半導体装置のダイシング加工方法に関する。
近年、フェイスダウン方式あるいはフリップチップ接続と呼ばれる実装法を用いた半導体装置の製造が広く行われている。このような実装法では、半導体チップの回路面を構成する表面(能動面)が配線基板に対向して配置され、半導体チップの表面に形成されたバンプと呼ばれる複数の電極を介して配線基板上に電気的・機械的に接続される。
フェイスダウン方式で実装された半導体チップの裏面(非能動面)には、半導体チップを保護する目的で、保護フィルムが接着されることが多い。このような保護フィルムとしては、接着剤層と、この接着剤層上に積層された保護層とを備え、上記保護層が耐熱性樹脂又は金属で構成された、フリップチップ型半導体裏面用フィルムが知られている(例えば特許文献1参照)。
一方、基板の内部に集光点を合わせたレーザー光を基板の裏面から入射させ、基板の切断予定ラインに沿って基板の内部に多光子吸収による改質領域を形成することで、基板を切断する技術が知られている(例えば特許文献2参照)。この技術によれば、基板の表面に溶融や切断予定ラインから外れた割れが生じることなく基板を切断することができるとして、近年注目されている。
特開2012−33626号公報 特開2002−192367号公報
しかしながら、保護フィルムが裏面に接着された半導体基板のダイシング加工に上述のレーザー照射技術を適用する場合、例えば、保護フィルムのレーザー透過性が低い、保護フィルムをチップサイズに適切に切断することができない、などの問題がある。このため、裏面に保護フィルムが設けられた半導体基板を適切にダイシング加工することが困難である。
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、裏面に保護フィルムが設けられた半導体基板を適切にダイシング加工することが可能な半導体装置の製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る半導体装置の製造方法は、半導体基板の回路面とは反対側の裏面に、接着剤層を介してガラス質材料又は透明セラミックス材料で構成された保護層を接着することを含む。
上記半導体基板に第1のレーザー光を照射することで、上記半導体基板を割断するための改質領域が上記半導体基板の内部に形成される。
上記保護層又は上記接着剤層に第2のレーザー光を照射することで、上記保護層を割断するための加工領域が上記保護層に形成される。
上記半導体装置の製造方法において、半導体基板の裏面に接着される保護層は、ガラス質材料又は透明セラミックス材料で構成されているため、保護層が樹脂材料や金属材料等で構成される場合と比較して、レーザー光の透過性を高めることができる。これにより、半導体基板の表面(回路面)側から第1のレーザー光を照射する場合は勿論、保護層を介して半導体基板の裏面側から第1のレーザー光を照射する場合においても、半導体基板の内部に改質領域を容易に形成することが可能となる。また、ガラス質材料やセラミックス材料はレーザー光による加工が比較的容易であるため、保護層を所望とする形状に適切に切断することが可能である。
したがって上記製造方法によれば、裏面に保護フィルムが設けられた半導体基板を適切にダイシング加工することが可能となる。
保護層を構成するガラス質材料としては、典型的には、板ガラス、ガラス繊維等が挙げられる。
半導体基板の内部に上記改質領域を形成するための第1のレーザー光には、典型的には、赤外線レーザーを用いることができる。第1のレーザー光のピークパワー密度は、半導体基板の内部に多光子吸収による改質領域を形成することが可能な大きさであれば、特に限定されない。
保護層に上記加工領域を形成するための第2のレーザー光には、ガラス質材料又は透明セラミックス材料を加工することができる波長のレーザー光、例えば、赤外線レーザー、紫外線レーザー等を用いることができる。第2のレーザー光は、第1のレーザー光と同一の光学系が用いられてもよいし、第1のレーザー光とは異なる光源系が用いられてもよい。
上記加工領域は、多光子吸収による改質領域であってもよいし、物理的な形状変化を伴う溝や凹部等の加工痕であってもよい。
例えば、上記加工領域を形成する工程は、上記保護層の内部に上記第2のレーザー光を集光させることで、上記保護層の内部に上記保護層の改質領域を形成してもよい。
あるいは、上記加工領域を形成する工程は、上記接着剤層に上記第2のレーザー光を集光させることで、上記保護層の前記接着剤層との境界部に上記保護層の改質領域を形成してもよい。
あるいは、上記加工領域を形成する工程は、上記保護層の表面に上記第2のレーザー光を集光させることで、上記保護層の表面に加工痕を形成してもよい。
上記半導体装置の製造方法は、さらに、上記接着剤層に第3のレーザー光を照射することで、上記接着剤層の一部又は上記保護層の表面に印字層を形成してもよい。
保護層がガラス質材料又は透明セラミックス材料で構成されることで、接着剤層表面に形成された印字層の視認性を確保することができる。
上記保護層を形成する工程は、上記保護層の上記接着剤層側とは反対側に支持シート又はダイシングシートが剥離可能に貼着された複合シートを、上記半導体基板の裏面に接着してもよい。
本発明によれば、裏面に保護フィルムが設けられた半導体基板を適切にダイシング加工することができる。
A〜Dは、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明する概略工程断面図である。 半導体基板を模式的に示す斜視図である。 上記半導体基板の裏面に貼着される複合シートの構成を示す概略側断面図である。 上記複合シートのプリカット形状を示す概略平面図である。 上記複合シートの貼り付け工程の一例を説明する模式図である。 上記複合シートの貼り付け工程の他の一例を説明する模式図である。 上記半導体装置の実装形態の一例を示す概略側断面図である。 本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明する半導体基板の概略断面図である。 本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明する半導体基板の概略断面図である。 本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の変形例を説明する半導体基板の概略断面図である。 本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の変形例を説明する半導体基板の概略断面図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
<第1の実施形態>
図1A〜Dは、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明する概略工程断面図である。なお、図においてX軸、Y軸及びZ軸は、相互に直交する3軸方向をそれぞれ示しており、X軸及びY軸は水平方向に相当する(以後の各図においても同様とする)。
本実施形態における半導体装置の製造方法は、保護層形成工程と、第1のレーザー加工工程と、第2のレーザー加工工程とを有する。
保護層形成工程は、図1Aに示すように、半導体基板Wの回路面とは反対側の裏面10Bに、接着剤層22を介してガラス質材料又は透明セラミックス材料で構成された保護層21を接着する。
第1のレーザー加工工程は、図1Bに示すように、保護層21を介して半導体基板Wに第1のレーザー光L1を照射することで、半導体基板Wを割断するための改質領域13を半導体基板Wの内部に形成する。
第2のレーザー加工工程は、図1Cに示すように、保護層21に第2のレーザー光L2を照射することで、保護層21を割断するための加工領域23を保護層21に形成する。
さらに、本実施形態における半導体装置の製造方法は、第3のレーザー加工工程を有する。第3のレーザー加工工程は、図1Dに示すように、接着剤層22に第3のレーザー光L3を照射することで、接着剤層22の一部に印字層Mを形成する。
すなわち本実施形態では、半導体基板Wと保護フィルム20Fとの積層体をチップサイズにダイシングし、図1Eに示すような保護層21を有する半導体装置100を製造する方法について説明する。
以下、各工程の詳細について説明する。
[保護層形成工程]
図2は、表面10A(回路面)に複数の機能素子11が形成された半導体基板Wを模式的に示す斜視図である。
半導体基板Wは、単結晶シリコン等で構成された基板本体10と、基板本体10の表面10Aに形成された複数の機能素子11とを有する。複数の機能素子11の間には、これら複数の機能素子11を区画し、かつ、後に分割される位置を示す仮想線である分割予定ライン12が設定されている。本実施形態では、複数の分割予定ライン12が、X軸方向及びY軸方向に沿って格子状に設定されている。なお、分割予定ライン12は、仮想線ではなく、基板本体10に実際に形成された線であってもよい。
機能素子11としては、トランジスタやメモリ等を含むIC(Integrated Circuit)あるいはLSI(Large Scale Integration)等が例示できる。各機能素子11は、外部接続端子としての複数の電極パッドあるいはバンプ等を含む。これら複数の機能素子11は、複数の分割予定ライン12によって区画され、基板本体10の表面10Aにマトリクス状に配列されている。
図1Aに示すように、所定厚みに薄化された半導体基板Wの裏面10Bには保護フィルム20Fが貼着される。半導体基板Wの厚みは特に限定されず、例えば、50μm〜400μmとされる。保護フィルム20Fは、後述するように、保護層21と、接着剤層22とを有する。
なお、半導体基板Wの表面10Aには、機能素子11を保護するための保護部材(図5C及び図6Cにおける符号60参照)が設けられてもよい。上記保護部材は、例えば、樹脂層の単層シートや、基材上に樹脂層が形成された積層シート等で構成される。上記樹脂層の材質としては、例えば、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリウレタン系、ポリウレタンアクリレート系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリビニルエーテル系等の各種の樹脂が適用可能である。
上記保護部材の基材としては、例えば、樹脂系の材料を主材とする基材フィルムが用いられる。この基材フィルムの具体例として、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、高密度ポリエチレン(HDPE)フィルム等のポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、エチレン−ノルボルネン共重合体フィルム、ノルボルネン樹脂フィルム等のポリオレフィン系フィルム;エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム等のエチレン系共重合フィルム;ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム等のポリ塩化ビニル系フィルム;ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系フィルム;ポリウレタンフィルム;ポリイミドフィルム;ポリスチレンフィルム;ポリカーボネートフィルム;フッ素樹脂フィルムなどが挙げられる。またこれらの架橋フィルム、アイオノマーフィルムのような変性フィルムも用いられる。ベース層71はこれらの1種からなるフィルムでもよいし、さらにこれらを2種類以上組み合わせた積層フィルムであってもよい。なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸およびメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語についても同様である。
保護フィルム20Fは、例えば、半導体基板Wと略同等の大きさ、形状に形成され、接着剤層22を介して半導体基板Wの裏面10Bに貼着される。接着剤層22は、その後、加熱処理あるいはエネルギー線照射処理によって硬化される。
半導体基板Wに保護フィルム20Fが貼着されることで、半導体基板Wの見掛け上の厚さが増し、その結果、半導体基板Wの見かけ上の剛性が高められるとともにハンドリング性が向上する。これにより、半導体基板Wの反りが抑制されるとともに、損傷や割れ等から効果的に保護されることになる。
図3は、保護フィルム20Fの構成を示す概略側断面図である。
保護フィルム20Fは、保護層21と、接着剤層22との積層構造を有する。
本実施形態において、保護フィルム20Fは、接着剤層22側に積層された剥離フィルム24と、保護層21側に剥離可能に貼着された支持シート30とをさらに有する複合シート40で構成される。
以下、複合シート40の詳細について説明する。
(保護層)
保護層21は、保護フィルム20Fの基材として構成される。保護層21は、ガラス質材料や透明セラミックス材料のような透光性を有する非導電性無機材料で構成され、特に本実施形態では、保護層21は、ガラス質材料で構成される。
ガラス質材料としては、典型的には、板ガラス、ガラス繊維等が挙げられる。板ガラスやガラス繊維に使用されるガラスの構造は、非晶質であってもよいし結晶質であってもよい。ガラスの種類は特に限定されず、典型的には、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス等が挙げられる。板ガラスは、例えば、ディスプレイ用の薄板ガラス、特に、ロール状に巻き取り可能なフレキシブル性を有する超薄板ガラスが好ましい。ガラス繊維としては、例えば、ガラス繊維紙(ガラスペーパ)や電池用材料(セパレータ)として構成されるガラス繊維が適用可能である。
本実施形態の保護フィルム20Fは、保護層21がガラス質材料で構成されているため、保護層21が合成樹脂で構成される場合と比較して、保護層21の弾性率を高めることができる。したがって、ウエハレベルにおける半導体基板Wの反りだけでなく、ダイシング加工により個片化されたチップサイズレベルにおける半導体装置100の反り、更には、当該半導体装置100を配線基板上にフリップチップ実装した半導体パッケージの反りも、効果的に抑制されることになる。
保護層21を構成するガラス質材料には、後述するダイシング加工時において半導体基板Wの内部に集光照射されるレーザー光(以下、第1のレーザー光ともいう)を透過させることが可能な材料が用いられる。第1のレーザー光には、典型的には、赤外線レーザー、特に、波長1064nmの近赤外線レーザーが用いられる。
さらに、保護層21を構成するガラス質材料には、後述するダイシング加工時において保護層21に集光照射されるレーザー光(以下、第2のレーザー光ともいう)によって加工されることが可能な材料が用いられる。第2のレーザー光には、典型的には、赤外線レーザー、特に、波長1064nmの近赤外線レーザーが用いられる。あるいは、当該近赤外線レーザーの第2次高調波(典型的には、波長532nmの緑色レーザー)が用いられてもよい。
本実施形態において、保護層21は、板ガラスで構成される。保護層21を板ガラスで構成することにより、保護フィルム20Fのハンドリング性が高まるとともに生産性の向上が図れるようになる。板ガラスには、いわゆる強化ガラス材料が用いられてもよいし、通常のガラス材が用いられてもよい。板ガラスには、リジッドなガラスシートが用いられてもよいし、フレキシブル性を有するガラスフィルムが用いられてもよい。板ガラスには、光透過性を有する材料が用いられるが、着色が施された半透光性の材料が用いられてもよい。
保護層21の線膨張係数は、保護層21を構成する板ガラスの成分、加工方法等によって選択あるいは調整することができる。保護層21を構成する板ガラスは、典型的には、線膨張係数が10−5から10−7/℃オーダのものから選択することができる。
保護層21の厚さは特に限定されず、例えば10μm以上300μm以下、好ましくは、50μm以上200μm以下とされる。これにより、フレキシブルな材質を使用することと合わせて、保護層21にフレキシブル性を付与することができる。保護層21がフレキシブル性を有することで、保護フィルム20Fをロール状に巻き取ることが可能となり、取扱い性、保存性、輸送性等が高められる。また、フレキシブル性を有するガラスフィルムは、ロールから巻き出されたときにカール等の変形が少ないため、ハンドリング性に優れるという利点がある。
このような板ガラスは、市販の材料が用いられてもよいし、用途に応じて最適化された材料が用いられてもよい。市販の材料としては、例えば、日本電気硝子株式会社製の無アルカリ超薄板ガラス「G−Leaf」(登録商標)等を用いることができる。
(接着剤層)
接着剤層22は、保護層21の一方の面に設けられ、保護層21を半導体基板Wの裏面10Bに接着させる。接着剤層22には、上記第1のレーザー光を透過させることが可能な材料が用いられる。接着剤層22は、典型的には、熱硬化性成分及びエネルギー線硬化性成分の少なくとも1種とバインダーポリマー成分とからなる。
熱硬化性成分としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂等、及びこれらの混合物が挙げられる。特に本実施形態では、エポキシ樹脂、フェノール樹脂ならびにこれらの混合物が好ましく用いられる。
これらの中でも、本実施形態では、ビスフェノール系グリシジル型エポキシ樹脂、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂およびフェノールノボラック型エポキシ樹脂が好ましく用いられる。これらエポキシ樹脂は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
エネルギー線硬化性成分は、紫外線、電子線等のエネルギー線の照射を受けると重合硬化する化合物からなる。この化合物は、分子内に少なくとも1つの重合性二重結合を有し、通常は、分子量が100〜30000、好ましくは300〜10000程度である。このようなエネルギー線重合型化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートあるいは1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、オリゴエステルアクリレート、さらにポリエステル型またはポリエーテル型のウレタンアクリレートオリゴマーやポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシ変性アクリレート等を用いることができる。
これらの中でも、紫外線硬化型樹脂が好ましく用いられ、具体的には、オリゴエステルアクリレート、ウレタンアクリレートオリゴマー等が特に好ましく用いられる。エネルギー線硬化性成分に光重合開始剤を混入することにより、重合硬化時間ならびに光線照射量を少なくすることができる。
バインダーポリマー成分は、適度なタックを与え、接着剤の操作性を向上するために用いられる。バインダーポリマーの重量平均分子量は、通常は5万〜200万、好ましくは10万〜150万、特に好ましくは20万〜100万の範囲にある。分子量が低過ぎると接着剤層の成形性が不十分となり、高過ぎると他の成分との相溶性が悪くなり、結果として均一なシート形成が妨げられる。
このようなバインダーポリマーとしては、たとえばアクリル系ポリマー、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系ポリマー等が用いられ、特にアクリル系ポリマーが好ましく用いられる。
アクリル系ポリマーとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸エステルモノマーおよび(メタ)アクリル酸誘導体から導かれる構成単位とからなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられる。ここで(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、好ましくはアルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、たとえば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル等が用いられる。また、(メタ)アクリル酸誘導体としては、たとえば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等を挙げることができる。
メタクリル酸グリシジル等を共重合してアクリル系ポリマーにグリシジル基を導入することにより、熱硬化型接着成分としてのエポキシ樹脂との相溶性が向上し、また硬化後のTgが高くなり耐熱性も向上する。また、ヒドロキシエチルアクリレート等を共重合してアクリル系ポリマーに水酸基を導入することにより、半導体基板Wへの密着性や粘着物性のコントロールが容易になる。
接着剤層22は、着色されていてもよい。接着剤層22の着色は、たとえば、顔料、染料等を配合することで行われる。接着剤層22を着色しておくと、外観の向上が図られるとともに、レーザー印字を施した際にその視認性、識別性を高めることができる。接着剤層22の色は特に限定されず、無彩色でもよいし、有彩色でもよい。
さらに、硬化後における保護フィルム20Fと半導体基板Wの裏面10Bとの接着性・密着性を向上させる目的で、接着剤層22にカップリング剤を添加することもできる。カップリング剤は、保護フィルム20Fの耐熱性を損なわずに、接着性、密着性を向上させることができ、さらに耐水性(耐湿熱性)も向上する。
このような接着剤層22は、市販の材料が用いられてもよいし、用途に応じて最適化された材料が用いられてもよい。市販の材料としては、例えば、リンテック株式会社製のチップ裏面保護テープ「LCテープ」シリーズが好適に用いられる。
(支持シート)
支持シート30は、保護フィルム20Fの接着剤層22側とは反対側の保護層21の表面に、粘着剤層30Aを介して貼着され、保護フィルム20Fを半導体基板Wへ貼付する際の支持シートの役割を持つ。
支持シート30を構成する材料は、上記第1のレーザー光L1を透過させることが可能であれば特に限定されず、例えば、樹脂系の材料を主材とする基材フィルムが用いられる。この基材フィルムの具体例として、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、高密度ポリエチレン(HDPE)フィルム等のポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、エチレン−ノルボルネン共重合体フィルム、ノルボルネン樹脂フィルム等のポリオレフィン系フィルム;エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム等のエチレン系共重合フィルム;ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム等のポリ塩化ビニル系フィルム;ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系フィルム;ポリウレタンフィルム;ポリイミドフィルム;ポリスチレンフィルム;ポリカーボネートフィルム;フッ素樹脂フィルムなどが挙げられる。またこれらの架橋フィルム、アイオノマーフィルムのような変性フィルムも用いられる。ベース層71はこれらの1種からなるフィルムでもよいし、さらにこれらを2種類以上組み合わせた積層フィルムであってもよい。なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸およびメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語についても同様である。
上記基材フィルムを保護フィルム20Fに接合する粘着剤層30Aとしては、非エネルギー線硬化性粘着剤から構成されてもよいし、エネルギー線硬化性粘着剤から構成されてもよい。非エネルギー線硬化性粘着剤としては、所望の粘着力および再剥離性を有するものが好ましく、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等を使用することができる。これらの中でも、保護フィルム20F(保護層21)との密着性が高く、ワークまたは加工物の脱落を効果的に抑制することのできるアクリル系粘着剤が好ましい。上記エネルギー線硬化性粘着剤としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の重合性基を有するものが挙げられる。
(剥離フィルム)
剥離フィルム24は、接着剤層22を被覆するように設けられ、保護フィルム20F(複合シート40)の使用時には、接着剤層22から剥離される。
剥離フィルム24としては、剥離性の表面を有する種々のフィルムが用いられる。このような剥離フィルム24としては、具体的には、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢ビフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、フッ素樹脂フィルム、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、およびその水添加物または変性物等からなるフィルムなどが用いられる。またこれらの架橋フィルムも用いられる。上記の基材は1種単独でもよいし、さらにこれらを2種類以上組み合わせた複合フィルムであってもよい。
剥離フィルム24としては、上記したようなフィルムの一方の表面に剥離処理を施したフィルムが好ましい。剥離処理に用いられる剥離剤としては、特に限定はないが、シリコーン系、フッ素系、アルキッド系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系等が用いられる。特にシリコーン系の剥離剤が低剥離力を実現しやすいので好ましい。剥離フィルムに用いるフィルムがポリオレフィンフィルムのようにそれ自身の表面張力が低く、粘着層に対し低剥離力を示すものであれば、剥離処理を行わなくてもよい。
(複合シートの貼り合わせ)
保護層形成工程においては、以上のように構成される複合シート40から剥離フィルム24を剥離し、図1Aに示すように接着剤層22を半導体基板Wの裏面に貼り付ける。その後、加熱処理あるいは紫外線等の照射処理を実施することで、接着剤層22を硬化させる。これにより、保護層21は、接着剤層22を介して半導体基板Wの裏面に一体的に接合される。
図4は複合シート40のプリカット形状を示す概略平面図である。複合シート40は、典型的には帯状のシートで形成されており、剥離フィルム24を除く各層には、半導体基板Wと略同等の大きさの打ち抜き溝40cが設けられている。すなわち図示の例では、保護フィルム20F及び支持シート30は、半導体基板サイズと同等又はそれ以上の大きさにそれぞれプリカットされた状態で剥離フィルム24に支持されており、基板サイズで半導体基板Wの裏面に接着されるように構成されている。
図5A〜Cは、半導体基板Wの裏面へ保護フィルム20Fを接着する工程の一例を示す模式断面図である。図示するように複合シート401は、剥離フィルム24を剥離した後、半導体基板Wの裏面(図5Cにおいて上面)に貼り合わされるとともに、接着剤層22の硬化処理が実施される。図示する複合シート401においては、半導体基板サイズよりも大きなサイズにプリカットされた接着剤層22の周縁部にリングフレームRFに接着される環状の粘着剤層25があらかじめ積層されており、半導体基板Wは、その粘着剤層25で区画される接着剤層領域の内側に接着される。その後必要に応じて、半導体基板Wの表面(図5Cにおいて下面)に積層された保護部材60が除去される。
一方、図6Aに示す複合シート402は、基板サイズと同等の大きさにプリカットされた保護フィルム20Fと、基板サイズよりも大きなサイズにプリカットされた支持シート30とを有し、剥離フィルム24は、保護フィルム20Fを被覆するように支持シート30の粘着剤層30A(図3参照)に接着される。そして、図6B,Cに示すように、複合シート402は、剥離フィルム24を剥離した後、半導体基板Wの裏面(図6において上面)に貼り合わされるとともに、接着剤層22の硬化処理が実施される。支持シート30は、その粘着剤層30Aを介してリングフレームRFに粘着支持される。その後必要に応じて、半導体基板Wの表面(図6Cにおいて下面)に積層された保護部材60が除去される。
複合シート40としては、図5Aに示した複合シート401が採用されてもよいし、図6Aに示した複合シート402が採用されてもよい。また、複合シート401,402における支持シート30は、後述するように、ダイシングシートで構成されてもよい。
[第1のレーザー加工工程]
続いて、第1のレーザー加工工程について説明する。
図1Bに示すように、保護層21と硬化後の接着剤層22とを介して半導体基板Wの内部に第1のレーザー光L1を照射することで、半導体基板Wの内部に改質領域13を形成する第1のレーザー加工工程が実施される。
第1のレーザー加工工程では、半導体基板Wと複合シート40との積層体を、所定のレーザー加工装置のチャックテーブルに載置した状態で、複合シート40側から半導体基板Wに第1のレーザー光L1が照射される。半導体基板Wは、その表面10Aを上記チャックテーブルに向けて固定される。
上記レーザー加工装置は、第1のレーザー光L1を照射する第1の照射ヘッド61を有する。第1の照射ヘッド61は、第1のレーザー光L1を半導体基板Wの内部に集光させるようにその光学集光系が設定される。
第1のレーザー光L1には、複合シート40及び半導体基板Wに対して透過性を有するレーザー光が用いられ、典型的には、赤外線レーザーが用いられる。第1のレーザー光L1のピークパワー密度は、半導体基板Wの内部に多光子吸収による改質領域13を形成することが可能な大きさであれば特に限定されず、例えば、1×108(W/cm2)以上とされる。第1のレーザー光L1は、典型的には、パルス幅が1μs以下のパルスレーザーであるが、これに限られず、連続波レーザーであってもよい。
本実施形態において、第1の照射ヘッド61は、YAGレーザー発振器やYVO4レーザー発振器等のパルスレーザー光線発振器、繰り返し周波数設定器、発振されたパルスレーザー光線を集光するための集光器等を備える。したがって本実施形態の第1のレーザー照射ユニット61は、第1のレーザー光L1として、パルスレーザー光線(本例では波長1064nmの近赤外線レーザー光)を照射する。
第1のレーザー加工工程では、第1の照射ヘッド61から、半導体基板Wに対して透過性を有する第1のレーザー光L1を分割予定ライン12(図2参照)に沿って照射し、半導体基板Wの内部に分割予定ライン12に沿って改質領域13を形成する。
なお、分割予定ライン12に沿った第1のレーザー光L1の走査は、第1の照射ヘッド61に対して上記チャックテーブルを水平方向に移動させてもよいし、上記チャックテーブルに対して第1の照射ヘッド61を水平方向に移動させてもよいし、これらの双方であってもよい。
改質領域13は、第1のレーザー光L1の集光点P1において半導体基板Wの内部に多光子吸収を発生させることで形成される。半導体基板Wの基板本体10が単結晶シリコンで構成される場合、改質領域13は、典型的には、局所的に溶融、再固化された溶融処理領域として形成され、周辺部よりも低い強度を有する。改質領域13は、各分割予定ライン12に沿って密に形成されるため、後に支持シート30から貼り替えられるダイシングシート50(図1E)のエキスパンド工程において、各分割予定ライン12を境に半導体基板Wが容易に割断されることになる。
[第2のレーザー加工工程]
続いて、図1Cに示すように、保護層21の内部に第2のレーザー光L2を集光させることで、保護層21に加工領域23を形成する第2のレーザー加工工程が実施される。
第2のレーザー加工工程では、典型的には、第1のレーザー加工工程で用いたレーザー加工装置が用いられる。第2のレーザー加工工程では、半導体基板Wと複合シート40との積層体が上記チャックテーブルに載置された状態で、複合シート40側から保護層21に第2のレーザー光L2が照射される。
上記レーザー加工装置は、第2のレーザー光L2を照射する第2の照射ヘッド62を有する。第2の照射ヘッド62は、第2のレーザー光L2を保護層21の内部に集光させるようにその光学集光系が設定される。
第2のレーザー光L2には、支持シート30及び保護層21に対して透過性を有するレーザー光が用いられ、典型的には、赤外線レーザーが用いられる。第2のレーザー光L2のピークパワー密度は、本実施形態では、保護層21の内部に多光子吸収による加工領域23を形成することが可能な大きさに設定され、例えば、1×108(W/cm2)以上とされる。第2のレーザー光L2は、典型的には、パルス幅が1μs以下のパルスレーザーであるが、これに限られず、連続波レーザーであってもよい。
本実施形態において、第2の照射ヘッド62は、YAGレーザー発振器やYVO4レーザー発振器等のパルスレーザー光線発振器、繰り返し周波数設定器、発振されたパルスレーザー光線を集光するための集光器等を備える。したがって本実施形態の第2のレーザー照射ユニット62は、第2のレーザー光L2として、パルスレーザー光線(本例では波長1064nmの近赤外線レーザー光)を照射する。
なお、第2の照射ヘッド62には、第1の照射ヘッド61が用いられてもよいし、それとは異なる照射ヘッドが用いられてもよい。
第2のレーザー加工工程では、第2の照射ヘッド62から、保護層21に対して透過性を有する第2のレーザー光L2を分割予定ライン12(図2参照)に沿って照射し、保護層21の内部に加工領域23を形成する。第2のレーザー光L2が分割予定ライン12に沿って照射されることで、加工領域23は、半導体基板Wの改質層13の形成領域の直上位置に対応するように(改質層13とZ軸方向に対向するように)保護層21の内部に形成されることになる。
なお、分割予定ライン12に沿った第2のレーザー光L2の走査は、第2の照射ヘッド62に対して上記チャックテーブルを水平方向に移動させてもよいし、上記チャックテーブルに対して第2の照射ヘッド62を水平方向に移動させてもよいし、これらの双方であってもよい。
加工領域23は、第2のレーザー光L2の集光点P2において保護層21の内部に多光子吸収を発生させることで形成される。保護層21が板ガラスで構成される場合、加工領域23は、典型的には、多光子吸収による光学的損傷により生じたクラック領域(改質領域)として形成され、周辺部よりも低い強度を有する。加工領域23は、各分割予定ライン12に沿って密に形成されるため、後に支持シート30から貼り替えられるダイシングシート50のエキスパンド工程において、各分割予定ライン12を境に保護層21が容易に割断されることになる。
なお、第1の照射ヘッド61を用いて第1のレーザー加工工程と第2のレーザー加工工程とを同時に行うことも可能である。この場合、例えば、第1のレーザー光L1の集光点をP1とP2とに交互に切り替えながら、第1のレーザー光L1が各分割予定ライン12に照射されてもよい。あるいは、所定数の分割予定ライン12毎に、集光点をP1に合わせた第1のレーザー加工処理が実施された後、集光点をP2に合わせた第2のレーザー加工処理が実施されてもよい。
また、第1のレーザー加工工程が第2のレーザー加工工程の前または同時に実施されるため、保護層21への加工領域23の形成前に、半導体基板Wの内部に改質領域13が形成されることになる。このため、加工領域23を通して改質領域13を形成する場合と比較して、目的とする改質領域13を安定に形成することが可能となる。
[第3のレーザー加工工程]
続いて、図1Dに示すように、接着剤層22に第3のレーザー光L3を照射することで、接着剤層22に印字層Mを形成する第3のレーザー加工工程が実施される。
第3のレーザー加工工程では、典型的には、第1又は第2のレーザー加工工程で用いたレーザー加工装置が用いられる。第3のレーザー加工工程では、半導体基板Wと複合シート40との積層体が上記チャックテーブルに載置された状態で、複合シート40側から接着剤層22に第3のレーザー光L3が照射される。
上記レーザー加工装置は、第3のレーザー光L3を照射する第3の照射ヘッド63を有する。第3の照射ヘッド63は、第3のレーザー光L3を接着剤層22の保護層21側の表面に集光させるようにその光学集光系が設定される。これにより、印字層Mは、接着剤層22の断面において保護層21側の表面に設けられることになる。
第3のレーザー光L3には、視覚的に識別可能に接着剤層22の表面を改質させることが可能な適宜のレーザー光が用いられ、典型的には、赤外線レーザーが用いられる。第3のレーザー光L3は、典型的には、パルスレーザーであるが、これに限られず、連続波レーザーであってもよい。なお、第3の照射ヘッド63には、第1又は第2の照射ヘッド61,62が用いられてもよいし、それらとは異なる照射ヘッドが用いられてもよい。
印字層Mは、典型的には、文字、記号、図形等を含み、半導体素子あるいは半導体装置の種類等を識別可能に表示する。印字層Mは、典型的には、接着剤層22の少なくとも一部で構成される。保護層21が板ガラス、透明セラミックス等、透光性を有する材料で構成される場合、保護層21に透光性が付与されるため、印字層Mの視認性を確保することができる。
印字層Mは、典型的には、分割予定ライン12で四方が囲まれる半導体基板W上の各チップ領域に形成される。このため、印字層Mの形成領域が、改質領域13及び加工領域23と相互に重なり合うことはない。したがって、第3のレーザー加工工程は第2のレーザー加工工程の後に実施される場合に限られず、第2のレーザー加工工程の前、あるいは、第1のレーザー加工工程の前に行うことも可能である。
第3のレーザー光L3の発振条件や印字層Mの大きさ、形態等は特に限定されない。例えば、印字装置(KEYENCE社製「VK9700」)を用いて、出力0.6W、周波数40kHz、走査速度100mm/秒の条件で、保護層21側から接着剤層22に対して波長532nmのレーザー光を照射することで、印字層Mを形成することが可能である。この場合、文字サイズ0.4mm×0.5mm、文字間隔0.3mm、文字数20の印字層パターンや、文字サイズ0.2mm×0.5mm、文字間隔0.3mm、文字数20の印字層パターン等を形成することが可能である。
なお、接着剤層22に印字層Mが形成される例に限られず、例えば、保護層21の表面(接着剤層22側とは反対側の面)に印字層が設けられてもよい。本実施形態において、保護層21は、ガラス質材料で構成されているため、レーザー加工やマイクロカッタ―を用いた表面加工が可能である。具体的には、第3のレーザー光L3として赤外線レーザーを用いて保護層21の表面に印字層が書き込まれてもよい。このようにして形成された印字層は、保護層21を正面あるいは斜め方向から視認することで、保護層21の表面に印字情報を浮き上がらせることができる。
[分割工程]
続いて、図1Eに示すように、半導体基板W及び保護フィルム20Fの積層体を、分割予定ライン12によって区画されたチップサイズの半導体装置100に分割する工程が実施される。
この際、半導体基板Wが上記レーザー加工装置のチャックテーブルから取り外され、支持シート30が半導体基板Wの裏面から剥離される。そして、代わりにダイシングシート50が、半導体基板Wの裏面に貼着される。ダイシングシート50は、支持シート30と同様に、基材フィルムと粘着剤層とを有する。当該基材フィルム及び粘着剤層は、典型的には、上述のような支持シート30の基材フィルム及び粘着剤層と同一の材料で構成される。
支持シート30からダイシングシート50に貼り替えることで、ダイシングシート50として、接着剤層22の硬化に必要な温度に対して十分な耐熱性を有しないものであっても有効に使用することが可能となる。ダイシングシートは、エキスパンド性能を有し、可とう性に優れたシートであるため、耐熱性に劣ることが多い。一方、ダイシングシートとして十分な耐熱性を有するものを使用する場合には、支持シート30に代えて当該ダイシングシートが積層された複合シートを使用することができる。
分割工程は、半導体基板Wの表裏が反転した状態で実施される。そして、ダイシングシート50は、図示しないリングフレームに支持された状態で、XY平面内でエキスパンド工程において拡張される。これにより、半導体基板W及び保護層21にそれぞれせん断力が作用し、半導体基板Wはその改質領域13を起点として割断され、保護層21はその加工領域23を起点として割断される。
以上のようにして、半導体チップCの裏面に保護フィルム20が設けられた半導体装置100が製造される(図1E参照)。
なお、接着剤層22は、半導体基板Wあるいは保護層21の割断の過程で、半導体基板Wあるいは保護層21と共に割断される。また、個片化された各半導体装置100は、ダイシングシート50に接着されているため、この分割工程でダイシングシート50から離脱することはない。
その後、各半導体装置100は、図示しないコレットを介して個々にピックアップされ、次工程(例えば、基板への実装工程)に供される。この際、ダイシングシート50の粘着剤層は、あらかじめ、保護層21界面との粘着力を低下させる処理が実施される。例えば、ダイシングシート50の粘着剤層がエネルギー線硬化性である場合は、当該粘着剤層にエネルギー線を照射することで上記粘着力を低下させる。
以上のように、本実施形態に係る半導体装置100の製造方法において、半導体基板Wの裏面10Bに接着される保護層21は、ガラス質材料で構成されているため、保護層21が金属材料等で構成される場合と比較して、レーザー光の透過性を高めることができる。これにより、半導体基板Wの内部への多光子吸収による改質層13の形成が容易となる。また、ガラス質材料はレーザー光による加工が容易であるため、保護層21に加工領域23を形成する等して所望とする形状に適切に切断することが可能である。
したがって上記製造方法によれば、裏面に保護フィルム20Fが設けられた半導体基板Wを適切にダイシング加工することが可能となる。
また、本実施形態によれば、保護層21を割断するための加工領域23の形成にレーザー加工法を採用しているため、ダイサー等を用いて保護層21を機械的に加工する場合と比較して、加工屑の発生を抑えることができるとともに、洗浄液が不要となるためドライ環境でのプロセスを実現することができる。これにより、半導体装置100の信頼性が高まるとともに、プロセスの簡素化を実現することができる。
さらに本実施形態によれば、半導体基板Wへの改質領域13の形成、保護層21への加工領域23の形成及び接着剤層22への印字層Mの形成が、それぞれレーザー加工機を用いて実施されるため、使用する照射ヘッドを順次切り替えることで、あるいは同一の照射ヘッドを共通に用いることで、効率よく作業を行うことができる。これにより、半導体装置の生産性を高めることが可能となる。
[実装工程]
図7は、半導体装置100の配線基板200への実装形態を模式的に示す概略側断面図である。なお、半導体装置100を構成する各層の厚みや大きさの比は、説明の便宜上、図1Eに示した半導体装置100とは異なる比で表されている。
半導体チップCは、その回路面(図中下面)を配線基板200に向けたフェイスダウン方式で、配線基板200の上面にマウントされる。半導体チップCは、その回路面に形成された複数のバンプ(突起電極)11aを介して配線基板200に電気的機械的に接続される。配線基板200への半導体チップCの接合には、例えば、リフロー炉を用いたリフロー半田付け法が採用される。
半導体チップCと配線基板200との間には、典型的には、アンダーフィル樹脂層51が設けられる。アンダーフィル樹脂層51は、半導体チップCの回路面及びバンプ11aを封止して外気から遮断し、さらに、半導体チップCと配線基板200との間の接合強度を高めてバンプ11aの接続信頼性を確保する目的で設けられる。
半導体チップCの裏面(図中上面)には、当該半導体チップCを保護するための保護フィルム20が貼着されている。保護フィルム20は、保護フィルム20Fをチップサイズに割断することで形成される。
保護フィルム20は、半導体チップCの反りを抑制する機能を有する。すなわち、保護層21は、ガラス質材料で構成されているため、保護層21が合成樹脂材料で構成される場合と比較して、保護層21の弾性率を高めることができる。これにより、半導体チップCは勿論、当該半導体チップCと配線基板200とを含む半導体パッケージの反りをも抑制することが可能となる。
例えば、保護層21の線膨張係数を配線基板200の線膨張係数に合わせることで、または配線基板200の線膨張係数より小さくすることで、配線基板200と保護フィルム20との間に挟まれた半導体チップCの変形を抑制することが可能となる。また、保護層21の線膨張係数を半導体チップCの線膨張係数に合わせることで、または半導体チップCの線膨張係数より小さくすることで、半導体チップCの剛性を高めて上記熱応力に起因する半導体チップCの変形を抑制することが可能となる。さらに、保護層21の線膨張係数は、配線基板200の線膨張係数と半導体チップCの線膨張係数の間の適宜の値に設定されてもよい。
<第2の実施形態>
図8は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法において、保護層21への加工領域の形成工程を模式的に示す概略断面図である。
以下、第1の実施形態と異なる構成について主に説明し、上述の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
本実施形態は、第2のレーザー加工工程が上述の第1の実施形態と異なる。すなわち本実施形態は、図8に示すように、接着剤層22に第2のレーザー光L2を集光させることで、保護層21と接着剤層22との境界部の保護層21側に、保護層21の加工領域231を形成する。
本実施形態では、加工領域231の形成位置が第1の実施形態と異なるものの、本実施形態においても加工領域231は、多光子吸収による光学的損傷により生じたクラック領域(改質領域)として形成される。このため、加工領域231は、周辺部よりも低い強度を有することになり、第1の実施形態と同様に、ダイシングシートを用いたエキスパンド工程において、保護層21が容易に割断されることになる。
さらに本実施形態によれば、第2のレーザー光L2が接着剤層22に照射されるため、この第2のレーザー加工工程において、保護層21だけでなく、接着剤層22をも、分割予定ライン12(図2参照)に沿って切断することが可能となる。これにより、後の分割工程において、半導体装置100(図1E参照)各々の分離が容易となるとともに、接着剤層22の溶断作用により、半導体装置100における接着剤層22の切断面を平滑に仕上げることが可能となる。
<第3の実施形態>
図9は、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法において、保護層21への加工領域の形成工程を模式的に示す概略断面図である。
以下、第1の実施形態と異なる構成について主に説明し、上述の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
本実施形態は、第2のレーザー加工工程が上述の第1の実施形態と異なる。すなわち本実施形態は、図9に示すように、保護層21の表面に第2のレーザー光L2を集光させることで、保護層21の表面に、保護層21の加工領域232を形成する。
本実施形態では、加工領域232は、第2のレーザー光L2の照射により保護層21の表面に形成された加工痕で構成される。この加工痕は、例えば、スクライブライン(けがき線)のように、保護層21表面の物理的な形状変化を伴う溝や凹部等で構成される。当該加工痕の断面形状は特に限定されず、図示するV字形状でもよいし、丸溝あるいは角溝状であってもよい。
本実施形態においては、加工領域232の形成位置が第1の実施形態と異なるものの、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、後の分割工程の際、加工領域232を起点として、保護層21を容易に割断することが可能となる。
本実施形態において、第2のレーザー光L2には、支持シートに対して透過性を有するとともに、ガラス質材料で構成された保護層21の表面を加工することができる適宜のレーザー光が用いられ、典型的には、波長1064nmの赤外線レーザーやその第二次高調波(波長532nmの緑色レーザー)が用いられる。第2のレーザー光L2は、典型的には、パルスレーザーであるが、これに限られず、連続波レーザーであってもよい。
また、本実施形態によれば、上記第2のレーザー光L2を用いて保護層21の表面に製品識別用の印字層を形成することも可能である。この場合、第1の実施形態において図1Dを参照して説明した第3のレーザー加工工程(印字層Mの形成工程)が不要となるという利点がある。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば以上の実施形態では、第1及び第2のレーザー加工工程をそれぞれ別工程で実施したが、これに限られず、第1及び第2のレーザー加工工程を同一工程で実施してもよい。
例えば図10に模式的に示すように、第1のレーザー光L1によって半導体基板Wの内部に形成された改質領域13の直上の保護層21に、第2のレーザー光L2で加工領域23を順次形成する。これにより、第1及び第2のレーザー光L1,L2が相互に干渉することなく、半導体基板W及び保護層21に改質領域13及び加工領域23をそれぞれ形成することが可能となる。また、同一の分割予定ライン12に対して、第1のレーザー光L1を照射した後に第2のレーザー光L2を照射することで、保護層21の加工領域23に阻害されることなく、半導体基板Wへ改質領域13を安定に形成することが可能となる。
また、以上の実施形態では、第1のレーザー加工工程において、保護層21を介して第1のレーザー光L1を半導体基板Wに照射したが、図11に模式的に示すように、半導体基板Wの表面(回路面)から第1のレーザー光L1を照射してもよい。これにより、第1の照射ヘッド61と第2の照射ヘッド62との相互干渉が回避されるため、第1のレーザー加工工程と第2のレーザー加工工程とを同時に実施することが可能となる。
保護層21を構成する材料はガラス質材料に限られず、例えば、透明セラミックス材料であってもよい。当該透明セラミックス材料としては、透光性を有するセラミックス材料であれば特に限定されず、例えば、アルミナやイットリア等が挙げられる。この場合、第2のレーザー光L2としては、赤外線レーザーのほか、UV(紫外線)レーザーやDUV(深紫外線レーザー)等が適用可能である。
また、第1及び第2のレーザー光L1,L2は、同一の分割予定ライン12上を複数回スキャン照射されてもよい。このとき、半導体基板Wの厚みによっては、第1のレーザー光L1によって異なる深さ位置に改質領域13を形成してもよい。また、第1のレーザー光L1の最後のスキャン照射時、集光位置を保護層21に設定することで、保護層21へ加工領域23を形成するようにしてもよい。
さらに以上の実施形態では、保護層形成工程において、半導体基板Wの裏面に、保護フィルム20Fと支持シート30とが一体化された複合シート40を貼着したが、保護フィルム20Fのみを半導体基板Wの裏面に貼着してもよい。この場合、例えば、第2のレーザー加工工程後あるいは第3のレーザー加工工程後に、保護フィルム20Fの上にダイシングシート50を貼着し、分割工程を実施するようにしてもよい。
10…基板本体
11…機能素子
12…分割予定ライン
13…改質領域
20,20F…保護フィルム
23,231,232…加工領域
21…保護層
22…接着剤層
30…支持シート
40,401,402…複合シート
50…ダイシングシート
100…半導体装置
C…半導体チップ
L1…第1のレーザー光
L2…第2のレーザー光
L3…第3のレーザー光
M…印字層
W…半導体基板

Claims (5)

  1. ガラス質材料又は透明セラミックス材料で構成された保護層と接着層との積層構造を有する保護フィルムと、前記保護層の前記接着剤層側とは反対側に剥離可能に貼着された支持シート又はダイシングシートとを備え、第1のレーザー光及び第2のレーザー光を透過させることが可能な複合シートを準備し、
    半導体基板の回路面とは反対側の裏面に、前記接着剤層を介して前記保護層を接着し、
    前記複合シート側から前記半導体基板に前記第1のレーザー光を照射することで、前記半導体基板を割断するための改質領域を前記半導体基板の内部に形成し、
    前記複合シート側から前記保護層又は前記接着剤層に前記第2のレーザー光を照射することで、前記保護層を割断するための加工領域を前記保護層に形成する
    半導体装置の製造方法。
  2. 請求項1に記載の半導体装置の製造方法であって、
    前記加工領域を形成する工程は、前記保護層の内部に前記第2のレーザー光を集光させることで、前記保護層の内部に前記保護層の改質領域を形成する
    半導体装置の製造方法。
  3. 請求項1に記載の半導体装置の製造方法であって、
    前記加工領域を形成する工程は、前記接着剤層に前記第2のレーザー光を集光させることで、前記保護層の前記接着剤層との境界部に前記保護層の改質領域を形成する
    半導体装置の製造方法。
  4. 請求項1に記載の半導体装置の製造方法であって、
    前記加工領域を形成する工程は、前記保護層の表面に前記第2のレーザー光を集光させることで、前記保護層の表面に加工痕を形成する
    半導体装置の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法であって、さらに、
    前記接着剤層に第3のレーザー光を照射することで、前記接着剤層の一部又は前記保護層の表面に印字層を形成する
    半導体装置の製造方法。
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