図を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。まず、本発明の実施形態に係るコンクリート構造物について説明する。
図1(a)の斜視図に示すように、本実施形態のコンクリート構造物としての柱構造物10は、構造部材としての柱構造部材12と、仕口部としての仕口部材14と、を有して構成されている。
柱構造物10を分解して描いた図1(b)の斜視図に示すように、柱構造部材12は、正方形の構造断面形状を有するプレキャストコンクリート製の棒状(本例では、正四角柱状)の部材であり、平面視にてT字状に隣り合って複数(本例では、4つ)配置されている。
仕口部材14は、プレキャストコンクリート製のパネル状の部材であり、図1(a)に示すように、複数の柱構造部材12の端部が接合され、これらの複数の柱構造部材12を束ねている。
図2(b)の正面断面図、及び図3(b)の平面断面図に示すように、仕口部材14は、仕口部材14の下に複数配置された柱構造部材12(以下、「柱構造部材12A」とする)の上端部、仕口部材14の上に複数配置された柱構造部材12(以下、「柱構造部材12B」とする)の下端部、及び仕口部材14の横に平面視にて3方向へ配置されたプレキャストコンクリート製の梁部材20A、20B、22がそれぞれ接合されて、建物16の柱梁架構18を構成している。
すなわち、仕口部材14は、建物16の下階を構成する柱構造物10(以下、「柱構造物10A」とする)の上部の仕口部と、建物16の上階を構成する柱構造物10(以下、「柱構造物10B」とする)の下部の仕口部とを兼ねている。図2(a)の正面断面図、及び図3(a)の平面断面図には、仕口部材14に、柱構造部材12A、12B、及び梁部材20A、20B、22が接合される前の状態が示されている。
図2(b)及び図3(b)に示すように、仕口部材14と梁部材20A、20Bとは、接合構造24によって接合されている。図2(a)及び図3(a)に示すように、接合構造24は、鋼製の中空管26と、この中空管26の孔へ挿入される梁鉄筋34の端部とを有して構成されている。
仕口部材14の端面には、グラウトGの充填によりコッター接合面を形成するために設けられた凹部30が形成され、この凹部30の底面には、複数の挿入孔32が形成されている。
挿入孔32内には、仕口部材14に埋設された梁鉄筋34の端部が突出している。この梁鉄筋34は、端部が仕口部材14の端面から突出しないように設けられている。
梁部材20A、20Bの端面には、グラウトGの充填によりコッター接合面を形成するために設けられた凹部36が形成され、この凹部36の底面には、複数の収容孔38が形成されている。
収容孔38には、中空管26が収容されている。中空管26は、中空管26の孔へ梁鉄筋28A、28B、34をねじ込まずに挿入可能な差し込み式の継手となっており、端部が梁部材20A、20Bの端面から突出しないように収容されている。また、収容孔38内には、梁部材20A、20Bに埋設された梁鉄筋28A、28Bの端部が突出している。この梁鉄筋28A、28Bは、端部が、中空管26の孔へ挿入されるとともに梁部材20A、20Bの端面から突出しないように設けられている。なお、仕口部材14及び梁部材20A、20Bには、せん断補強筋が適宜設けられている。また、中空管26には、機械式継手、スリーブ式継手等が用いられている。
仕口部材14への梁部材20A、20Bの接合は、まず、図2(a)に示すように、梁部材20A、20Bの端面と仕口部材14の端面との間に隙間S1を有するようにして、梁部材20A、20Bの端面が仕口部材14の端面と対向するように梁部材20A、20Bを配置する。
次に、図2(b)に示すように、中空管26を収容孔38から引き出して、挿入孔32へ挿入する。このとき、梁鉄筋34の端部を中空管26の孔へ挿入する。
次に、隙間S1内、凹部30、36内、収容孔38内、挿入孔32内、及び中空管26の孔内へ、硬化材としてのグラウトGを充填し硬化させる。これにより、中空管26に梁鉄筋28A、28B、34の端部が定着されて、中空管26を介して梁鉄筋28A、28Bと梁鉄筋34とが接合され、仕口部材14に梁部材20A、20Bが接合される。なお、本例では、梁部材20A、20Bの端面と仕口部材14の端面との間に隙間S1を有するようにして梁部材20A、20Bを配置したが、梁部材20A、20Bの端面と仕口部材14の端面とを密着させるようにして、梁部材20A、20Bの端面が仕口部材14の端面と対向するように梁部材20A、20Bを配置してもよい。
図3(b)に示すように、仕口部材14と梁部材22とは、接合構造40によって接合されている。図3(a)に示すように、接合構造40は、鋼製の中空管42と、この中空管42の孔へ挿入される梁鉄筋44の端部とを有して構成されている。
仕口部材14には、端部を仕口部材14の端面から突出させて、梁鉄筋44が埋設されている。
梁部材22の端部には、中空管42が埋設されている。また、梁部材22には、端部が中空管42の孔へ挿入されるとともに梁部材22の端面から突出しないように、梁鉄筋46が設けられている。中空管42は、中空管42の孔へ梁鉄筋44、46をねじ込まずに挿入可能な差し込み式の継手となっており、端部が梁部材22の端面から突出しないように設けられている。なお、梁部材22には、せん断補強筋が適宜設けられている。
仕口部材14への梁部材22の接合は、まず、図3(b)に示すように、梁部材22の端面と仕口部材14の端面との間に隙間S2を有するように、梁部材22の端面が仕口部材14の端面と対向するように梁部材22を配置するとともに、中空管42の孔へ梁鉄筋44の端部を挿入する。
次に、隙間S2内及び中空管42の孔内へ、硬化材としてのグラウトGを充填し硬化させる。これにより、中空管42に梁鉄筋44、46が定着されて、中空管42を介して梁鉄筋44と梁鉄筋46とが接合され、仕口部材14に梁部材22が接合される。なお、本例では、梁部材22の端面と仕口部材14の端面との間に隙間S2を有するようにして梁部材22を配置したが、梁部材22の端面と仕口部材14の端面とを密着させるようにして、梁部材22の端面が仕口部材14の端面と対向するように梁部材22を配置してもよい。
図2(b)に示すように、仕口部材14と柱構造部材12A、12Bとは、接合構造48によって接合されている。図2(a)に示すように、接合構造48は、複数の貫通孔50と、柱構造部材12Aに埋設され貫通孔50へ挿入される柱鉄筋52(以下、「柱鉄筋52A」とする)の上端部と、柱構造部材12Bに埋設され貫通孔50へ挿入される柱鉄筋52(以下、「柱鉄筋52B」とする)の下端部とを有して構成されている。
仕口部材14の上下面には、グラウトGの充填によりコッター接合面を形成するために設けられた凹部54、56が形成され、この凹部54の底面から凹部56の底面へ貫通するように貫通孔50が形成されている。
柱鉄筋52Aの上端部は、柱構造部材12Aの上面から突出しており、柱鉄筋52Bの下端部は、柱構造部材12Bの下面から突出している。なお、柱構造部材12A、12Bには、せん断補強筋が適宜設けられている。
仕口部材14への柱構造部材12A、12Bの接合は、まず、図2(b)に示すように、柱構造部材12Aの上端面と仕口部材14の下面との間に隙間S3を有するように、柱構造部材12Aの上端面が仕口部材14の下面と対向するように仕口部材14を柱構造部材12A上に載置した後に、柱構造部材12Bの下端面と仕口部材14の上面との間に隙間S4を有するように、柱構造部材12Bの下端面が仕口部材14の上面と対向するように柱構造部材12Bを仕口部材14上に載置する。このとき、柱鉄筋52Aの上端部、及び柱鉄筋52Bの下端部を貫通孔50へ挿入する。
次に、隙間S3内、凹部56内、貫通孔50内、隙間S4内、及び凹部54内へ、硬化材としてのグラウトGを充填し硬化させる。これにより、貫通孔50に、柱鉄筋52Aの上端部と、柱鉄筋52Bの下端部とが定着されて、仕口部材14に柱構造部材12A、12Bが接合される。
次に、本発明の実施形態に係るコンクリート構造物の作用と効果について説明する。
本実施形態のコンクリート構造物としての柱構造物10は、図1(a)に示すように、複数の柱構造部材12の端部を仕口部材14に接合して、この複数の柱構造部材12を束ねることにより、構造設計上において必要な構造断面を備える柱構造物10を構成することができる。また、各柱構造部材12は、柱構造物10よりも構造断面が小さい軽量の部材なので、揚重能力の小さい揚重機を用いてコンクリート構造物を構築することができる。すなわち、構造設計上において必要な構造断面より小さい構造断面をもつ軽量のプレキャストコンクリート部材(柱構造部材12)を用いて柱構造物10を構築することができる。
以上、本発明の実施形態について説明した。
なお、本実施形態では、図1(a)に示すように、複数の柱構造部材12を仕口部材14により束ねることによって柱構造物10を構成した例を示したが、隣り合う柱構造部材12の間に連結手段を設けてもよい。このようすれば、複数の柱構造部材12によって構成される柱構造体の剛性を連結手段により向上させることができる。
例えば、図4の平面断面図に示すように、隣り合う柱構造部材12の間に連結手段としての接着剤58を設けて、複数の柱構造部材12が一体化された柱構造体60を構成するようにしてもよい。接着剤58としては、エポキシ樹脂、グラウト材等が挙げられる。
また、例えば、図5及び図6の部分正面図に示すように、柱構造部材12の側面に切欠き部62、64を形成し、中央部が括れた形状のコッター部材66、68を切欠き部62、64に配置するとともに接着剤70で固定して、複数の柱構造部材12が一体化された柱構造体72、74を構成するようにしてもよい。コッター部材66、68としては、鋼製、亜鉛アルミニウム合金製の部材が挙げられ、接着剤70としては、エポキシ樹脂、グラウト材等が挙げられる。
さらに、例えば、連結金物等の連結部材により隣り合う柱構造部材12同士を連結して、複数の柱構造部材12が一体化された柱構造体を構成するようにしてもよい。
また、本実施形態では、図1(a)に示すように、複数の柱構造部材12を仕口部材14により束ねることによって柱構造物10を構成した例を示したが、隣り合う柱構造部材12の間にエネルギー吸収手段を設けてもよい。このようにすれば、複数の柱構造部材12によって構成される柱構造体に曲げモーメントが発生したときに、隣り合う柱構造部材12同士の間に生じるせん断変形に伴うエネルギーを、エネルギー吸収手段により吸収することにより、柱構造体の曲げ耐力を向上させることができる。
例えば、図7の正面図、及び図8の拡大図に示すように、柱構造部材12の側面に切欠き部76を形成し、この切欠き部76にエネルギー吸収手段としてのU字状の鉛ダンパー78を設けて、柱構造体82を構成するようにしてもよい。図8に示すように、鉛ダンパー78は、切欠き部76の側壁面にボルト80によって固定されている。エネルギー吸収手段としてのダンパーは、柱構造部材12同士の間に生じるせん断変形に伴うエネルギーを吸収できるものであれば、他の材料によって形成されたものであってもよい。
さらに、本実施形態では、図1(a)に示すように、仕口部材14と、複数の柱構造部材12とを有して柱構造物10を構成した例を示したが、仕口部材14と複数の柱構造部材12の端部との間に、又は複数の柱構造部材12の中間部に、複数の柱構造部材12が接合されて束ねられる拘束部材を設けるようにしてもよい。
このようにすれば、拘束部材によって複数の柱構造部材12を束ねることにより、この部分の曲げ剛性を大きくすることができる。また、拘束部材の分だけ柱構造部材12を短くすることにより、柱構造部材12の曲げ剛性を大きくすることができる。
例えば、図9(a)の斜視図に示すように、仕口部材14と、複数の柱構造部材12と、拘束部材84とを有して、柱構造物86を構成するようにしてもよい。柱構造物86では、仕口部材14と複数の柱構造部材12の端部との間に拘束部材84が設けられている。
柱構造物を分解して描いた図9(b)の斜視図に示すように、拘束部材84は、複数の柱構造部材12の配置と略等しいT字状の平面形状と、所定高さとを有するコンクリート製のブロック状部材であり、仕口部材14と一体化されたプレキャストコンクリート部材を構成している。また、複数の柱構造部材12は、上方に配置された拘束部材84に上端部が接合され、下方に配置された拘束部材84に下端部が接合されて束ねられている。
このように、仕口部材14と複数の柱構造部材12の端部との間に拘束部材84を設けた場合には、大きな曲げモーメントが発生する部分(柱構造部材12の端部付近)の曲げ剛性を向上させることができる。
本例では、上方に配置された仕口部材14と複数の柱構造部材12の上端部との間、及び下方に配置された仕口部材14と複数の柱構造部材12の下端部との間の両方に拘束部材84を設けたが、拘束部材84は、上方に配置された仕口部材14と複数の柱構造部材12の上端部との間、及び下方に配置された仕口部材14と複数の柱構造部材12の下端部との間のどちらか一方に配置してもよい。
また、本例では、拘束部材84を仕口部材14と一体にしてプレキャストコンクリート部材を構成したが、拘束部材84と仕口部材14とを別々のプレキャストコンクリート部材とし、柱構造物86を構築するときに、拘束部材84と仕口部材14とを接合して一体にするようにしてもよい。
また、例えば、図10(a)の斜視図に示すように、仕口部材14と、複数の柱構造部材12と、拘束部材88とを有して、柱構造物90を構成するようにしてもよい。柱構造物90では、複数の柱構造部材12の中間部に拘束部材88が設けられている。
柱構造物90を分解して描いた図10(b)の斜視図に示すように、拘束部材88は、複数の柱構造部材12の配置と略等しいT字状の平面形状と、所定高さとを有するブロック状のプレキャストコンクリート部材である。また、複数の柱構造部材12は、柱構造部材12Cと柱構造部材12Dとに上下に分割されており、柱構造部材12Cの下端部と柱構造部材12Dの上端部とを拘束部材88に接合することにより束ねられている。
このように、複数の柱構造部材12の中間部に拘束部材88を設けた場合には、複数の柱構造部材12によって構成される柱構造体92に曲げモーメントが発生したときに、隣り合う柱構造部材12同士の間に生じるせん断変形を拘束部材88により抑制することにより、この柱構造体92の曲げ剛性を向上させることができる。なお、「柱構造部材12の中間部」とは、柱構造部材12の端部以外の部分を意味する。すなわち、拘束部材88は、柱構造部材12の長手方向中央部以外に設けてもよい。
また、本実施形態では、図2(b)及び図3(b)に示すように、仕口部材14と複数の柱構造部材12とを接合構造48で接合し、仕口部材14と梁部材20A、20Bとを接合構造24で接合し、仕口部材14と梁部材22とを接合構造40で接合した例を示したが、仕口部材14と、梁部材20A、20B、22、及び柱構造部材12とは、どのような接合構造で接合してもよい。また、仕口部材14と梁部材20A、20B、22とは一体化された部材であってもよい。例えば、現場にて、梁部材20A、20Bと一体化された仕口部材14に複数の柱構造部材12を接合して柱構造物を構築してもよい。さらに、梁部材20A、20B、22や仕口部材14を場所打ちコンクリートによって形成してもよい。
例えば、図11の正面断面図に示す接合構造94のように、仕口部材14と梁部材20Bとを場所打ちコンクリートによって接合してもよい。図11では、仕口部材14に設けられ、仕口部材14の端面から突出する梁鉄筋34の端部と、梁部材20Bに設けられ、梁部材20Bの端面から突出する梁鉄筋28Bの端部とを継手96により接続し、仕口部材14の端面と梁部材20Bの端面との間の接合部98にコンクリートUを場所打ちして、仕口部材14に梁部材20Bを接合している。
また、例えば、図12(a)、(b)の正面断面図に示す接合構造100によって、仕口部材14に複数の柱構造部材12A、12Bを接合してもよい。図12(a)には、仕口部材14に複数の柱構造部材12A、12B、及び梁部材20A、20Bが接合される前の状態が示され、図12(b)には、仕口部材14に複数の柱構造部材12A、12B、及び梁部材20A、20Bが接合された状態が示されている。
図12(a)に示すように、柱構造部材12Bに設けられた柱鉄筋52Bの下端部は、柱構造部材12Bの下面から突出している。また、柱構造部材12Aの上端部には、柱構造部材12Aの上面から突出しないようにして中空管102が埋設されている。中空管102は、柱鉄筋52A、52Bをねじ込まずに挿入可能な差し込み式の継手となっている。また、柱構造部材12A、12Bには、せん断補強筋が適宜設けられている。
仕口部材14への複数の柱構造部材12A、12Bの接合は、まず、図12(b)に示すように、複数の柱構造部材12Aの上端面と仕口部材14の下面との間に隙間S3を有し、複数の柱構造部材12Aの上端面が仕口部材14の下面と対向するように、複数の柱構造部材12Aを配置するとともに、複数の柱構造部材12Bの下端面と仕口部材14の上面との間に隙間S4を有し、複数の柱構造部材12Bの下端面が仕口部材14の上面と対向するように、複数の柱構造部材12Bを配置する。このとき、柱鉄筋52Bの下端部を、貫通孔50へ貫通させて中空管102の孔へ挿入する。
次に、隙間S3内、中空管102の孔内、凹部56内、貫通孔50内、隙間S4内、及び凹部54内へ、硬化材としてのグラウトGを充填し硬化させる。これにより、貫通孔50に柱鉄筋52Bの下端部が定着されるとともに、中空管102に柱鉄筋52Bの下端部が定着され、中空管102を介して柱鉄筋52Aと柱鉄筋52Bとが接合されて、仕口部材14に複数の柱構造部材12A、12Bが接合される。
さらに、本実施形態では、図13(a)の平面断面図に示すように、複数の柱構造部材12を平面視にてT字状に隣り合って配置した例を示したが、複数の柱構造部材12は、どのように配置してもよい。例えば、図13(b)〜(d)の平面断面図に示すように、複数の柱構造部材12を平面視にて、I字状、L字状、及び十字状に配置してもよい。例えば、複数の柱構造部材12を平面視にて十字状に配置して部屋の中柱を構成し、複数の柱構造部材12を平面視にてT字状に配置して部屋の側柱を構成し、複数の柱構造部材12を平面視にてL字状に配置して部屋の隅柱を構成すれば、広い部屋空間を確保することができる。
また、本実施形態では、図13(a)の平面断面図に示すように、柱構造部材12を正方形の構造断面形状を有する部材とした例を示したが、柱構造部材は、棒状部材、板状部材、又は棒状部材と板状部材を一体化した部材であってもよいし、これらの部材を適宜組み合わせて配置してもよい。例えば、図14(a)〜(e)の平面断面図に示すように、棒状部材である柱構造部材12、板状部材である柱構造部材104、106、及び棒状部材と板状部材を一体化した柱構造部材108をさまざまに組み合わせて複数配置するようにしてもよい。
さらに、図15(a)、(b)の斜視図に示すように、異なった長さの柱構造部材110、112を隣り合わせて複数配置するようにしてもよい。図15(a)には、仕口部114に複数の柱構造部材110、112が接合される前の状態が示され、図15(b)には、仕口部114に複数の柱構造部材110、112が接合された状態が示されている。
図15(a)に示すように、柱構造部材110、112は、プレキャストコンクリート製の板状部材であり、隣り合って配置したときに柱構造部材112の上下端面から柱構造部材110の上下端部が突出する長さに形成されている。
仕口部114は、正四角柱状のプレキャストコンクリート製の梁部材116と、板状のプレキャストコンクリート製の梁部材118とを有して構成され、柱構造部材110の厚さよりも僅かに大きい間隔をあけて配置された一対の梁部材118の端部を梁部材116の側面に接合することによって構成されている。間隔をあけて配置された一対の梁部材118の側面間には、柱構造部材110の端部が挿入される挿入部120が形成されている。
仕口部114への複数の柱構造部材110、112の接合は、図15(a)に示すように、仕口部114を上方から下方へ移動させて、柱構造部材110(以下、「柱構造部材110A」とする)の上端部を挿入部120へ挿入するとともに、柱構造部材112(以下、「柱構造部材112A」とする)の上面に梁部材116、118を載置し、しかる後に、柱構造部材110、112(以下、「柱構造部材110B、112B」とする)を上方から下方へ移動させて挿入部120へ柱構造部材110Bの下端部を挿入し、柱構造部材110Aの上端部と柱構造部材110Bの下端部、柱構造部材112Aの上端部と梁部材116、118の下端部、及び柱構造部材112Bの下端部と梁部材116、118の上端部をそれぞれ接合することによって行われる。
また、本実施形態で示した柱構造部材12や拘束部材84、88(図1(a)、図9(a)、図10(a)を参照のこと)を、高強度コンクリートによって形成してもよい。このようにすれば、柱構造物10、86、90の断面2次モーメントを大きくすることができるので、柱構造物10、86、90の曲げ剛性を大きくすることができる。また、例えば、柱構造部材12や拘束部材84、88を高強度繊維補強コンクリートによって形成すれば、かぶりコンクリートの損傷が抑制され、曲げひび割れ後の剛性低下を最小限にすることができる。また、圧縮降伏状態に至った圧縮領域における圧壊現象を抑制することができる。
さらに、本実施形態では、コンクリート構造物を柱構造物10とした例を示したが、本実施形態のコンクリート構造物を梁構造物として適用してもよい。例えば、図16の斜視図に示す梁構造物122のように、横方向へ隣り合って複数配置された構造部材としてのプレキャストコンクリート製の梁構造部材124と、梁構造部材124の左右端部が接合されて束ねられた仕口部としての仕口部材14とを有して構成されたコンクリート構造物としてもよい。なお、梁構造部材124は、上下方向へ隣り合って配置するようにしてもよいし、横方向と上下方向とへ隣り合って配置するようにしてもよい。
<実施例1>
実施例1では、図17(c)の斜視図に示す柱構造物126において、柱構造部材12が普通コンクリートによって形成され一体とされていないとした場合(以下、「ケース1」とする)、柱構造部材12が高強度コンクリートによって形成され一体とされていないとした場合(以下、「ケース2」とする)、柱構造部材12が普通コンクリートによって形成され一体とされているとした場合(以下、「ケース3」とする)、及びケース1で拘束部材128による剛域拡大効果を考慮した場合(以下、「ケース4」とする)の断面二次モーメントを求めることにより、柱構造物126の剛性を比較した結果について示す。
図17(c)に示す柱構造物126は、5つの柱構造部材12、拘束部材128、及び仕口部130を有して構成され、上方に配置された仕口部130と5つの柱構造部材12の上端部との間に拘束部材128が設けられている。すなわち、上方に配置された仕口部130の下面に拘束部材128が一体に設けられており、拘束部材128の下面に5つの柱構造部材12の上端部が接合され、下方に配置された仕口部130の上面に5つの柱構造部材12の下端部が接合されている。また、図17(a)、(b)の平面断面図に示すように、柱構造部材12は平面視にて十字状に配置されており、柱構造部材12の構造断面形状は、一辺の長さがaの正方形になっている。
(1)ケース1について
図17(a)の平面断面図に示す5つの柱構造部材12が、普通コンクリート(例えば、コンクリート強度が30N/mm2の普通コンクリート)によって形成され、一体化されていないとしたケース1において、柱構造物126の断面二次モーメントI1は、I1=(a4/12)×5=5a4/12となる。
(2)ケース2について
図17(a)の平面断面図に示す5つの柱構造部材12が、高強度コンクリート(例えば、コンクリート強度が150N/mm2の高強度コンクリート)によって形成され、一体化されていないとしたケース2において、この柱構造物126のヤング係数は、コンクリート強度の1/3乗に比例するので、ケース1の柱構造物126の1.7倍(コンクリート強度は、約5倍)となる。よって、ケース2において、柱構造物126の断面二次モーメントI2は、I2=(5a4/12)×1.7となる。
(3)ケース3について
図17(b)の平面断面図に示すように、接着剤58により5つの柱構造部材12が一体化されているとしたケース3において、柱構造物126の断面二次モーメントI3は、I3=(a×(3a)3/12)+((a4/12)×2)=29a4/12となる。
(4)ケース4について
図17(a)の平面断面図に示す5つの柱構造部材12が、高強度コンクリート(例えば、コンクリート強度が150N/mm2の高強度コンクリート)によって形成され一体化されていないとし、さらに、拘束部材128が、高強度コンクリート(例えば、コンクリート強度が150N/mm2の高強度コンクリート)によって形成されているとしたケース4において、拘束部材128の上端面から柱構造部材12の下端面までの長さh0を3.0m、拘束部材128の上端面から下端面までの長さh1を0.35m、拘束部材128の下端面から柱構造部材12の下端面までの長さh3を2.65mとすると、柱構造物126の曲げ剛性は、長さh3の3乗に反比例するので、柱構造物126の断面二次モーメントI4は、I4=I2×(h0/h3)3=(5a4/12)×1.7×1.45となる。
これらにより、I3>I4>I2>I1となるので、柱構造物126の剛性を大きくするには、高強度コンクリートにより形成した拘束部材128を設けたり、柱構造部材12を高強度コンクリートによって形成したりするのが好ましく、柱構造部材12を一体化するのがより好ましいことがわかる。
<実施例2>
実施例2では、図18(c)の斜視図に示す柱構造物132において、柱構造部材12が普通コンクリートによって形成され一体とされていないとした場合(以下、「ケース5」とする)、柱構造部材12が高強度コンクリートによって形成され一体とされていないとした場合(以下、「ケース6」とする)、柱構造部材12が普通コンクリートによって形成され一体とされているとした場合(以下、「ケース7」とする)、及びケース5で拘束部材134による剛域拡大効果を考慮した場合(以下、「ケース8」とする)の断面二次モーメントを求めることにより、柱構造物132の剛性を比較した結果について示す。
図18(c)に示す柱構造物132は、4つの柱構造部材12、拘束部材134、及び仕口部136を有して構成され、上方に配置された仕口部136と4つの柱構造部材12の上端部との間に拘束部材134が設けられている。すなわち、上方に配置された仕口部136の下面に拘束部材134が一体に設けられており、拘束部材134の下面に4つの柱構造部材12の上端部が接合され、下方に配置された仕口部136の上面に4つの柱構造部材12の下端部が接合されている。また、図18(a)、(b)の平面断面図に示すように、柱構造部材12は平面視にてT字状に配置されており、柱構造部材12の構造断面形状は、一辺の長さがaの正方形になっている。
(1)ケース5について
図18(a)の平面断面図に示す4つの柱構造部材12が、普通コンクリート(例えば、コンクリート強度が30N/mm2の普通コンクリート)によって形成され、一体化されていないとしたケース5において、柱構造物132のx軸回りの断面二次モーメントI5は、I5=(a4/12)×4=a4/3となる。
(2)ケース6について
図18(a)の平面断面図に示す4つの柱構造部材12が、高強度コンクリート(例えば、コンクリート強度が150N/mm2の高強度コンクリート)によって形成され、一体化されていないとしたケース6において、この柱構造物132のヤング係数は、コンクリート強度の1/3乗に比例するので、ケース5の柱構造物132の1.7倍(コンクリート強度は、約5倍)となる。よって、ケース6において、柱構造物132のx軸回りの断面二次モーメントI6は、I6=(a4/3)×1.7となる。
(3)ケース7について
図18(b)の平面断面図に示すように、接着剤58により4つの柱構造部材12が一体化されているとしたケース7において、柱構造物132のx軸回りの断面二次モーメントI7は、I7=(a×(2a)3/12)+(2a2×(a/4)2)+2×((a4/12)+a2×(a/4)2)=13a4/12となる。
(4)ケース8について
図18(a)の平面断面図に示す4つの柱構造部材12が、高強度コンクリート(例えば、コンクリート強度が150N/mm2の高強度コンクリート)によって形成され一体化されていないとし、さらに、拘束部材134が、高強度コンクリート(例えば、コンクリート強度が150N/mm2の高強度コンクリート)によって形成されているとしたケース8において、拘束部材134の上端面から柱構造部材12の下端面までの長さh0を3.0m、拘束部材134の上端面から下端面までの長さh1を0.35m、拘束部材134の下端面から柱構造部材12の下端面までの長さh3を2.65mとすると、柱構造物132の曲げ剛性は、長さh3の3乗に反比例するので、柱構造物132の断面二次モーメントI8は、I8=I6×(h0/h3)3=(a4/3)×1.7×1.45となる。
これらにより、I7>I8>I6>I5となるので、柱構造物132の剛性を大きくするには、高強度コンクリートにより形成した拘束部材134を設けたり、柱構造部材12を高強度コンクリートによって形成したりするのが好ましく、柱構造部材12を一体化するのがより好ましいことがわかる。なお、柱構造物132のy軸回りの断面二次モーメントについても、柱構造物132のx軸回りの断面二次モーメントと同様に、ケース5、6、8、7の順に柱構造物132の剛性が大きくなる。
<実施例3>
実施例3では、図19(c)の斜視図に示す柱構造物138において、柱構造部材12が普通コンクリートによって形成され一体とされていないとした場合(以下、「ケース9」とする)、柱構造部材12が高強度コンクリートによって形成され一体とされていないとした場合(以下、「ケース10」とする)、柱構造部材12が普通コンクリートによって形成され一体とされているとした場合(以下、「ケース11」とする)、及びケース9で拘束部材140による剛域拡大効果を考慮した場合(以下、「ケース12」とする)の断面二次モーメントを求めることにより、柱構造物138の剛性を比較した結果について示す。
図19(c)に示す柱構造物138は、3つの柱構造部材12、拘束部材140、及び仕口部142を有して構成され、上方に配置された仕口部142と3つの柱構造部材12の上端部との間に拘束部材140が設けられている。すなわち、上方に配置された仕口部142の下面に拘束部材140が一体に設けられており、拘束部材140の下面に3つの柱構造部材12の上端部が接合され、下方に配置された仕口部142の上面に3つの柱構造部材12の下端部が接合されている。また、図19(a)、(b)の平面断面図に示すように、柱構造部材12は平面視にてL字状に配置されており、柱構造部材12の構造断面形状は、一辺の長さがaの正方形になっている。
(1)ケース9について
図19(a)の平面断面図に示す3つの柱構造部材12が、普通コンクリート(例えば、コンクリート強度が30N/mm2の普通コンクリート)によって形成され、一体化されていないとしたケース9において、柱構造物138のx軸回りの断面二次モーメントI9は、I9=3a4/12=a4/4となる。
(2)ケース10について
図19(a)の平面断面図に示す3つの柱構造部材12が、高強度コンクリート(例えば、コンクリート強度が150N/mm2の高強度コンクリート)によって形成され、一体化されていないとしたケース10において、この柱構造物138のヤング係数は、コンクリート強度の1/3乗に比例するので、ケース9の柱構造物138の1.7倍(コンクリート強度は、約5倍)となる。よって、ケース10において、柱構造物138のx軸回りの断面二次モーメントI10は、I10=(a4/4)×1.7となる。
(3)ケース11について
図19(b)の平面断面図に示すように、接着剤58により3つの柱構造部材12が一体化されているとしたケース11において、柱構造物138のx軸回りの断面二次モーメントI11は、I11=(a×(2a)3/12)+(2a2×(a/6)2)+(a4/12)×(a2×(a/3)2)=11a4/12となる。
(4)ケース12について
図19(a)の平面断面図に示す3つの柱構造部材12が、高強度コンクリート(例えば、コンクリート強度が150N/mm2の高強度コンクリート)によって形成され一体化されていないとし、さらに、拘束部材140が、高強度コンクリート(例えば、コンクリート強度が150N/mm2の高強度コンクリート)によって形成されているとしたケース12において、拘束部材140の上端面から柱構造部材12の下端面までの長さh0を3.0m、拘束部材140の上端面から下端面までの長さh1を0.35m、拘束部材140の下端面から柱構造部材12の下端面までの長さh3を2.65mとすると、柱構造物138の曲げ剛性は、長さh3の3乗に反比例するので、柱構造物138の断面二次モーメントI12は、I12=I10×(h0/h3)3=(a4/4)×1.7×1.45となる。
これらにより、I11>I12>I10>I9となるので、柱構造物138の剛性を大きくするには、高強度コンクリートにより形成した拘束部材140を設けたり、柱構造部材12を高強度コンクリートによって形成したりするのが好ましく、柱構造部材12を一体化するのがより好ましいことがわかる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。