(第一実施形態)
本発明の第一実施形態に係る水晶デバイスは、図1および図2に示したように、基板部110と、基板部110に実装されている水晶素子120と、基板部110の上面に接合されている蓋体130と、基板部110に水晶素子120を実装するための接着剤140と、基板部110と蓋体130とを接合するための接合部材150と、から主に構成されている。
基板部110は、水晶素子120を実装するためのものである。基板部110は、図1および図2に示したように、例えば、矩形形状の平板状に形成されており、一方の主面に搭載パッド111が設けられており、他方の主面に実装端子112が設けられている。また、基板部110には、特に図示しないが、搭載パッド111と実装端子112とを電気的に接続するための配線パターン(図示せず)が設けられている。基板部110は、例えば、アルミナセラミックス、または、ガラス―セラミックス等のセラミック材料である絶縁層からなっている。基板部110は、絶縁層を一層で用いたものであっても、絶縁層を複数積層させたものであってもよい。
ここで、図面に合わせて、搭載パッド111が設けられている基板部110の面を、基板部110の一方の主面、または、基板部110の上面とする。また、実装端子112が設けられている基板部110の面を、基板部110の他方の主面、または、基板部110の下面とする。
搭載パッド111は、水晶素子120を基板部110に実装するためのものである。搭載パッド111は、例えば、二つ設けられており、基板部110の上面を平面視して、一方の短辺の縁部に沿って二つ並んで設けられている。
実装端子112は、電子機器等のマザーボードに実装するためのものであり、電子機器等のマザーボードに実装する際、マザーボード上にある所定の実装パッド(図示せず)に半田等により、接続固着されている。実装端子112は、例えば、四つ設けられており、基板部110の下面の四隅に一つずつ設けられている。実装端子112のうち所定の二つは、配線パターン(図示せず)によって、基板部110の上面に設けられている二つの搭載パッド111と電気的に接続されている。
ここで、水晶素子120を平面視したときの長辺の寸法が0.8〜4.0mmであり、短辺の寸法が0.60〜2.80mmである場合を例にして、基板部110の説明をする。基板部110の上面を平面視したとき、基板部110の長辺の寸法が、0.85〜5.00mmとなっており、基板部110の短辺の寸法が0.65〜3.20mmとなっている。
ここで、基板部110の作製方法について説明する。基板部110がアルミナセラミックスからなる場合、まず、所定のセラミック材料粉末に適当な有機溶剤等を添加し混合して得た複数のセラミックグリーンシートの表面、または、セラミックグリーンシートに打ち抜き設けていた貫通孔内に、従来周知のスクリーン印刷法を用いて、導体パターンとなる位置に所定の導電ペーストを塗布する。複数の絶縁層が積層されている場合には、次に、セラミックグリーンシートを積層させプレス加工し、高温で焼成する。焼成後、導体パターンの所定の部分、具体的には、搭載パッド111、実装端子112および配線パターン(図示せず)となる部分に、ニッケルメッキまたは金メッキを施すことにより基板が作成される。また、導電ペーストは、例えば、タングステン、モリブデン、銅、銀またはパラジウム等の金属粉末の焼結体等から構成されている。
水晶素子120は、安定した機械振動を得ることができ、電子機器等の基準信号を発信するためのものである。水晶素子120は、図2に示したように、接着剤140により基板部110の上面に実装されており、接合部材150により基板部110と蓋体130とが接合されて基板部110と蓋体130とで形成される空間133内に気密封止されている。水晶素子120は、図3および図4に示したように、水晶片121、励振電極部125、引出部126および配線部127から主に構成されている。
水晶片121は、図3および図4に示したように、略直方体形状の平板部122と、平板部122の下面に設けられている一対の柱部123(123a,123b)と、から主に構成されている。また、水晶片121には、一対の貫通穴124が形成されている。
平板部122は、安定した機械振動をする圧電材料が用いられ、例えば、互いに直交しているX軸とY軸とZ軸とからなる結晶軸を有している水晶部材が用いられている。平板部122は、図3および図4に示したように、略直方体形状に形成されている。このとき、平板部122の主面は、X軸およびZ軸に平行となっている面を、X軸を中心に、X軸の負の方向を見て反時計回りに回転させた面と平行となっている。例えば、平板部122の主面は、X軸およびZ軸に平行となっている面を、X軸を中心に、X軸の負の方向を見て反時計回りに約37°回転させた面と、平行となっている。
ここで、図2に示したように、水晶素子120を基板部110に実装したとき、基板部110の上面を向く平板部122の面を平板部122の下面とし、この平板部122の下面と反対側を向く平板部122の面を平板部122の上面とする。また、この平板部122の上面および平板部122の下面を平板部122の主面とする。
平板部122の両主面には、一対の励振電極部125が平板部122を挟むようにして設けられている。ここで、一対の励振電極部125に電圧が印加されたときの平板部122の動作について説明する。一対の励振電極部125に電圧が印加されると、一対の励振電極部125には異なる電荷が蓄積されることとなり、逆圧電効果によって励振電極部125に挟まれている平板部122の一部分に歪みが生じ、変形する。その結果、平板部122は、変形前の姿に戻ろうとするため、圧電効果により励振電極部125に最初に蓄積された電荷と反対の電荷が蓄積される。つまり、励振電極部125に電圧が印加されると、圧電効果および逆圧電効果により、励振電極部125に挟まれている平板部122の一部が振動することとなる。従って、励振電極部125に交流電圧を印加すると、励振電極部125に異なる電荷が交互に蓄積され交互に変形することとなり、励振電極部125に挟まれている平板部122の一部を振動させることができる。このとき、平板部122は、例えば、所定の周波数で厚みすべり振動する。平板部122は、励振電極部125に挟まれている平板部122の一部が厚みすべり振動するが、励振電極部125が設けられていない平板部122の一部においても、励振電極部125から平板部122の外縁に向かう向きに厚みすべり振動が漏れている状態となっている。
また、平板部122の厚みすべり振動の周波数は、平板部122の上下方向の厚みによって厚みすべり振動のしやすさが異なるため、平板部122の上下方向の厚みに依存している。従って、平板部122の上下方向の厚みは、水晶素子120の所望の周波数によって決定される。
平板部122は、図3および図4に示したように、略矩形形状の平板状となっており、その大きさは、例えば、長辺の長さが0.8〜4.0mmとなっており、短辺の長さが0.6〜2.8mmとなっている。また、平板部122の上下方向の厚みは、5〜83μmとなっている。
柱部123は、水晶素子120を基板部110の上面に実装するときに、接着剤140によって基板部110に接着保持されるためのものである。また、柱部123の下面と基板部110の上面との間には接着剤140が設けられており、接着剤140により柱部123の下面と基板部110とが接着され、水晶素子120が基板部110の上面に実装されている。柱部123は、第一柱部123aと第二柱部123bとから構成されている。
第一柱部123aは、図3および図4に示すように、略直方体形状となっており、平板部122の下面の所定の一辺に沿って設けられている。また、第一柱部123aは、水晶片121の下面を平面視したとき、平板部122の所定の一辺に平行な第一柱部123aの辺が、平板部122の所定の一辺と同じ長さ、または、平板部122の所定の一辺以上長さとなっている。また、第一柱部123aの下面には、一対の引出部126(126a,126b)が並んで設けられている。第一柱部123aの下面と基板部110の上面との間には、接着剤140が設けられている。この第一柱部123aの下面と基板部110の上面との間に設けられている接着剤140には、第一柱部123aの下面と基板部110の上面とを接着しつつ、第一柱部123aの下面に設けられている引出部126と基板部110の上面に設けられている搭載パッド111とを電気的に接続するために、導電性接着剤141が用いられる。
第二柱部123bは、図3および図4に示すように、略直方体形状となっており、平板部122下面であって、第一柱部123aが設けられている平板部122の所定の一辺と対向する辺に沿って設けられている。従って、第二柱部123bは、水晶片121の下面を平面視したとき、第一柱部123aと向かいあうように平板部122の下面に設けられている。また、第二柱部123bは、水晶片121の下面を平面視したとき、平板部122の所定の一辺に平行な第二柱部123bの辺が、平板部122の所定の一辺と対向する辺と同じ長さ、または、それ以上の長さとなっている。また、第二柱部123bの下面と基板部110の上面との間には、接着剤140が設けられている。この第二柱部123bの下面と基板部110の上面との間に設けられている接着剤140は、第二柱部123bの下面と基板部110の上面とを接着するために、例えば、保持用接着剤142が用いられる。
ここで、水晶素子120の平板部122の上面を水晶素子120の上面とし、水晶素子120の第一柱部123aおよび第二柱部123bの下面を水晶素子120の下面とする。なお、第一柱部123aの下面とは、平板部122と接している第一柱部123aの面と反対側を向く第一柱部123aの面であり、基板部110に水晶素子120を実装するときに基板部110の上面を向く第一柱部123aの面である。また、第二柱部123bの下面とは、平板部122と接している第二柱部123bの面と反対側を向く第二柱部123bの面であり、基板部110に水晶素子120を実装するときに基板部110の上面を向く第二柱部123bの面である。
柱部123は、第一柱部123aと第二柱部123bとがほぼ同形状となっている。柱部123は、水晶片121の下面を平面視して、平板部122の短辺に平行な辺の長さが0.6〜2.8mmとなっており、平板部122の長辺に平行な辺の長さが0.13〜1.5mmとなっている。また、柱部123の上下方向の厚みは、30〜100μmとなっている。
水晶片121を断面視すると、図5(a)に示したように、平板部122が一対の柱部123によって梁の端部が柱によって両持ちされている両持梁と同じ形状となっているといえる。ここで、水晶デバイスの外部から応力、例えば、平板部122の主面に対して垂直方向に落下した場合の平板部122の中央部における撓みの量を計算する。水晶片121は、水晶デバイスが平板部122の主面に対し垂直な方向に落下すると、図5(b)に示したように、平板部122が変形する。このとき、平板部122に加わる力は、重力加速度gと梁に相当する部分L1(図4および図5参照)の積となる。また、平板部122の中心部における撓みσ1の量は、次のような式となる。なお、(1)式において、Wは、梁に加わる力のことであり、L1は、梁となる部分の長さであり、Eは、梁となる部分の弾性係数(水晶部材の弾性係数)でありIは、断面二次モーメントである。
σ1=(5/384)×(W×L13/E×I)・・・(1)式
ここで、従来の水晶デバイスで用いている片持梁と同じ形状となっている水晶片を用いた場合で比較する。平板部の中央部における撓みの量を計算する。なお、ここで、梁となる部分長さは、第一実施形態で用いる水晶素子120の水晶片121と同じ長さL1となるようにする。片持梁と同じ形状となっている水晶片においても、水晶デバイスの外部から応力が加わった場合、平板部が変形することとなる。このとき、平板部に加わる力は、第一実施形態で用いる水晶素子120の水晶片121と同じ力となっており、重力加速度gと梁に相当する部分の積となる。このとき、平板部の中心部における撓みの量σ2は、次のような式となる。なお、(2)式において、Wは、梁に加わる力のことであり、L1は、梁となる部分の長さであり、Eは、梁となる部分の弾性係数(水晶部材の弾性係数)であり、Iは、断面二次モーメントである。
σ2=(1/8)×(W×L13/E×I)・・・(2)式
(1)式と(2)式を比較すると、(W×L13/E×I)は、両持梁の場合の水晶片121であっても、片持梁の場合の水晶片であっても同じ数値となる。従って、両持梁の場合の水晶片121の撓みの量σ2は、片持梁の場合の水晶片の撓みの量σ2に対し、約48分の5の大きさとなる。
つまり、平板部122が一対の柱部123によって両持ちされている両持梁と同じ状態となっている水晶片121を用いることで、水晶デイバスが外部から応力を受けた場合、例えば、平板部122と垂直な向きの応力を受けた場合、従来の水晶デバイスで用いる水晶片と比較し、平板部122の中央部での変位する量を小さくすることができる。このため、このような水晶片121を用いることで、平板部122の中央部で振動する状態が変化する量を低減することができ、平板部122が変形するために生じる周波数変動や等価直列抵抗値の増加といった電気的特性の変化を低減させることが可能となる。
また、水晶片121では、水晶片121の下面を平面視したとき、第一柱部123aが沿って設けられている平板部122の所定の一辺に平行な第一の柱部123aの辺が、平板部122の所定の一辺と同じ長さ、または、それ以上の長さとなっており、第二柱部123bが沿って設けられている平板部122の一辺に平行な第二柱部123bの辺が、第二柱部123bが沿って設けられている平板部122の一辺と同じ長さ、または、その長さ以上となっている。このようにすることで、平板部122の所定の一辺に平行な向き(第一柱部123aの辺方向)での平板部122の撓み量について着目すると、平板部122の所定の一辺に平行な向き(第一柱部123aの辺方向)に曲げモーメントがかかった場合、第一柱部123aおよび第二柱部123bにより平板部122を変形させにくくするので、平板部122の中央部での撓みの量を、より減少させることが可能となる。
貫通穴124は、一対となっており、図4に示したように、柱部123の縁部に沿って形成されている。言い換えると、貫通穴124は、図4に示したように、水晶片121の下面を平面視して、第一柱部123aと第二柱部123bとの間に位置するように平板部122に形成されている。このとき、水晶片121の下面を平面視すると、図4に示したように、一対の貫通穴124の間に、励振電極部125が設けられている。従って、貫通穴124が柱部123と励振電極部125との間に形成されている。これにより、励振電極部125に挟まれている平板部122の一部分を平板の四隅で固定され平板部122の変形の影響を受けにくくする状態、つまり、振動している部分をより独立した状態に近づけることができ、柱部123による影響を低減させ、電気的に特性が変化することを低減させることが可能となる。これは、前述したように、励振電極部125に電圧を印加したとき、励振電極部125に挟まれていない平板部122の一部にも、励振電極部125から平板部122の外縁に向かう向きで振動が漏れた状態となっている。別の観点では、平板部122の外縁の状態により、励振電極部125に挟まれている平板部122の一部の振動にも影響を及ぼすこととなるといえる。本実施形態に係る水晶片121では、上下方向の厚みに着目すると、柱部123が設けられている部分の上下方向の厚みは、柱部123の上下方向の厚みの分だけ厚くなっている。このため、本実施形態では、貫通穴124を励振電極部125と柱部123との間に形成することで、励振電極部125で挟まれている平板部122の一部をより平板の四隅で固定されている状態に近付けることが可能となり、柱部123による振動への影響を低減させることができ、振動への影響により等価直列抵抗値が増加することを低減させることが可能となる。
また、貫通穴124は、水晶素子120の上面を平面視して、図3および図4に示したように、その開口部が略矩形形状となっている。このとき、特に図面では図示しないが、貫通穴124の開口部の四隅は円弧形状となっている。このように、貫通穴124の開口部の四隅を円弧形状にし、貫通穴124の開口部に丸みをもたせることで、水晶素子120の外部から応力が加わったとき、貫通穴124の開口部に向かう向きに加わる応力が貫通穴124の四隅に集中することを低減させることが可能となる。この結果、貫通穴124の開口部からクラック等の破損が生じることを低減させることができる。
ここで、貫通穴124は、水晶素子120の上面を平面視して、開口部が略矩形形状となっており、平板部122の短辺に平行な辺が0.3〜1.78mmとなっており、平板部122の長辺に平行な辺が0.01〜0.12mmとなっている。また、貫通穴124の開口部の四隅は、半径0.005〜0.12mmのR面取りされた円弧形状となっている。
ここで、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて、このような水晶片121を形成する製造方法について説明する。まず、互いに直交しているX軸とY軸とZ軸とからなる結晶軸を有した水晶ウエハを用意する。このとき、水晶ウエハの主面が、X軸およびZ軸に平行となっている面を、X軸を中心に、X軸の負の方向を見て反時計回りに回転させた面、例えば、約37°回転させた面と平行となっている。次に、水晶ウエハの両主面に金属膜をスパッタリング技術または蒸着技術を用いて形成し、この金属膜上に感光性レジストを塗布し、所定のパターンに露光、現像し、所定の部分のみ水晶ウエハが露出するようにする。具体的には、水晶ウエハの上面側を平面視すると、平板部122の外縁の縁部および一対の貫通穴124となる部分の水晶ウエハが露出しており、水晶ウエハの下面側を平面視すると、柱部123となる部分には感光性レジストが残っている状態となっている。このように所定の部分のみ露出している水晶ウエハを所定のエッチング溶液に浸漬させ、水晶ウエハをエッチングする。これにより、複数の水晶片121がその一部が接続された状態で水晶ウエハ内に形成される。
このようにフォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて水晶片121を形成する場合、特に図示しないが、柱部123の縁部では、結晶軸との位置関係によってエッチングがされる速度が異なるために、柱部123の上下方向の厚みが平板部122に向かうにつれて徐々に薄くなっている。従って、本実施形態では、貫通穴124を柱部123の縁部に沿って形成しているので、貫通穴124が柱部123の上下方向の厚みが平板部122に向かうにつれて徐々に薄くなっている部分に形成されていることとなる。従って、水晶片121の下面を平面視して、貫通穴124を柱部123の縁部に沿って形成することで、貫通穴124は、柱部123の上下方向の厚みが平板部122に向かうにつれて徐々に薄くなっている部分に形成することが可能となる。このようにすることで、貫通穴124を形成してもスペースを減少させることなく、励振電極部125の大きさが小さくなることを低減させることができる。仮に、励振電極部125が小さくなると、蓄積される電荷の量が少なくなってしまい、励振電極部125に挟まれている平板部122が振動しにくくなる。その結果、等価直列抵抗値が大きくなってしまう虞がある。従って、前述したように、貫通穴124を柱部123の縁部に形成することで、励振電極部125が小さくなることを低減させることができ、この結果、等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることが可能となる。
励振電極部125は、平板部122に電圧を印加するためのものである。励振電極部125は、一対となっており、平板部122の両主面に互いが対向するように設けられている。また、平板部122の上面に設けられている励振電極部125は、水晶素子120の上面を平面視して、一対の貫通穴124の間に位置するように設けられており、平板部122の下面に設けられている励振電極部125は、水晶素子120の下面を平面視して、第一柱部123aと第二柱部123bとの間に形成されている一対の貫通穴124の間に位置するように設けられている。このように貫通穴124の間に位置するように励振電極部125を形成することで、励振電極部125で挟まれている平板部122の一部が振動しているとき、励振電極部125に挟まれている平板部122の一部と柱部123を平板の四隅で固定している状態に近づけることにできるので、柱部123の影響を低減させることが可能となり、等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることができる。
また、励振電極部125は、例えば、水晶素子120を平面視して、円型形状または楕円形状となっている。このような構成にすることで、励振電極部125に電圧を印加すると、平面視して、励振電極部125の中心部から徐々に円形形状または楕円形状に厚みすべり振動が減衰していくので、より効率よく励振電極部125に挟まれている平板部122の一部を振動させることができる。この結果、効率よく励振電極部125に挟まれている平板部122の一部を振動させることができ、等価直列抵抗値が大きくなることをより低減させることが可能となる。
引出部126は、水晶素子120の外部から励振電極部125へ電圧を印加するためのものであり、第一柱部123の下面に二つ並んで設けられている。また、引出部126は、水晶素子120を水晶デバイスとして用いるとき、基板部110の搭載パッド111と向かい合う位置に設けられており、接着剤140、特に、導電性接着剤141によって電気的に接着されている。
配線部127は、一対となっており、励振電極部125と引出部126とを電気的に接続させるためのものである。配線部127は、一端が励振電極部125に接続されており、他端が引出部126に接続されている。このとき、配線部127の一部は、水晶片121に形成されている貫通穴124の内壁面に形成されている。このように、配線部127の一部を、貫通穴124の内壁面に設けることで、水晶片121の表面に沿って配線部を設ける場合と比較して、励振電極部125から引出部126までの長さをより短くすることが可能となる。これにより、配線部127の長さを短くした分だけ配線部127自身が持つ抵抗値を小さくすることができ、配線部127の抵抗により水晶素子120の等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることが可能となる。
励振電極部125、引出部126および配線部127は、例えば、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて、水晶片121の所定の位置に形成される。具体的には、複数の水晶片121となる部分が形成されている水晶ウエハに励振電極部125、引出部126および配線部127となる金属膜を形成し、この金属膜上に感光性レジストを塗布する。その後、この感光性レジストの所定のパターン(励振電極部125、引出部126および配線部127となる部分)が残留するように、露光現像する。最後に、露出している金属膜を剥離させ、さらに残留している感光性レジストを剥離させる。このようにして、複数の水晶片121となる部分が形成されている水晶ウエハの水晶片121となる部分の所定の位置に、励振電極部125、引出部126および配線部127が形成される。なお、ここで、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて形成している場合について説明しているが、水晶片121の所定の位置に形成することができれば、例えば、スパッタリング技術または蒸着技術を用いて形成してもよい。
接着剤140は、図2に示したように、水晶素子120を基板部110の上面に実装するためのものである。接着剤140は、第一柱部123aの下面と基板部110の上面との間、および、第二柱部123bの下面と基板部110の上面との間に設けられており、第一柱部123aの下面と基板部110の上面とを接着保持しつつ、第二柱部123bの下面と基板部110の上面とを接着させている。このように、第一柱部123aの下面と基板部110の上面との間、および、第二柱部123bの下面と基板部110の上面との間に、接着剤140を設けることで、従来の水晶デバイス、または、搭載パッド111と引出部126とを導電性接着剤141のみで実装している水晶デバイスと比較して、水晶素子120と基板部110との接着面積をより大きくすることができる。従って、水晶素子120と基板部110との接合強度をより高めることが可能となる。この結果、水晶デバイスをマザーボード等の実装基板に半田等で実装する際に、基板部110が熱膨張により変形し接着剤140に応力が加わった場合、または、水晶デバイスに外部から応力が加わり水晶素子120と基板部110との間に設けられている接着剤140に応力が加わった場合であっても、水晶素子120が基板部110の上面から外れてしまうことを低減させることができる。
また、第一柱部123aの下面と基板部110の上面との間、および、第二柱部123bの下面と基板部110の上面との間に接着剤140が設けられていることで、水晶素子120を基板部110の上面に実装した際に、水晶素子120の平板部122の主面と基板部110の主面とが平行に近い状態で実装することが可能となる。このようにすることで、水晶デバイスの外部から基板部110の主面に対し垂直な方向で応力が加わった場合、平板部122の中央部で最も平板部122が撓むようにすることができる。従って、平板部122の中央部に励振電極部125を設け平板部122の中央部で最も振動するようにした場合、最も撓む部分と最も振動する部分とを同じにすることができる。例えば、加速度センサとして水晶デバイスを用いる場合、周波数の変化量や等価直列抵抗値の変化量を基にその加速度が検出(算出)される構成となっている。このため、水晶デバイスの外部から基板部110の主面に対して垂直な方向で応力が加わった場合、平板部122の撓による影響が周波数の変化量や等価直列抵抗値の変化量に著すことができるので、より高い精度で検出することが可能となる。
導電性接着剤141は、図2に示したように、第一柱部123aの下面と基板部110の上面との間であって、第一柱部123aの下面に設けられている引出部126と基板部110の上面に設けられている搭載パッド111との間に設けられている。導電性接着剤141は、第一柱部123aの下面と基板部110の上面とを接着させつつ、第一柱部123aの下面に設けられている引出部126と基板部110の上面に設けられている搭載パッド111とを電気的に接続させている。また、導電性接着剤141は、シリコーン系樹脂バインダーの中に導電フィラーとして導電性粉末が含有されているものである。導電性粉末としては、アルミニウム、モリブデン、タングステン、白金、パラジウム、銀、チタン、ニッケルまたはニッケル鉄のいずれか、或いは、これらを組み合わせたものを含むものが用いられる。また、バインダーとしては、例えば、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂またはビスマレイミド系樹脂が用いられる。
導電性接着剤141は、基板部110の上面に設けられている一対の搭載パッド111と水晶素子120の第一柱部123aの下面に設けられている一対の引出部126との間に設けられており、搭載パッド111と引出部126とを接着させつつ、搭載パッド111と引出部126とを電気的に接続させている。導電性接着剤141は、例えば、加熱硬化されたとき、樹脂バインダーが収縮し、導電フィラー同士がより近接する特性を有している。従って、導電性接着剤141をそれぞれの搭載パッド111に塗布し、搭載パッド111と引出部126とでこの導電性接着剤141を挟んだ状態で加熱硬化することで、導電性接着剤141により基板部110の搭載パッド111と水晶素子120の引出部126とを接着しつつ、電気的に接続させることが可能となる。
保持用接着剤142は、第二柱部123bの下面と基板部110の上面との間に設けられており、第二柱部123bの下面と基板部110の上面とを接着させている。保持用接着剤142には、樹脂バインダーとして、例えば、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂またはビスマレイミド系樹脂が用いられる。
保持用接着剤142は、基板部110の上面に設けられている搭載パッド111と水晶素子120の第二柱部123bの下面、特に、引出部126とが向かいあうように、水晶素子120を基板部110の上面に載置したときに、第二柱部123bの下面と向かい合う基板部110の上面の位置に塗布され、加熱硬化される。なお、保持用接着剤142は、導電性接着剤141と同じタイミングで、基板部110の上面に塗布され、導電性接着剤141と同じタイミングで、加熱硬化される。保持用接着剤142は、例えば、加熱硬化されたと樹脂バインダーが収縮し保持用接着剤142が接しているもの同士を接着する特性を有している。従って、保持用接着剤142を基板部110の上面の所定の位置に塗布し、第二柱部123bの下面と基板部110の上面とでこの塗布された保持用接着剤142を挟んだ状態で加熱硬化することで、保持用接着剤142により基板部110の上面と第二柱部123bの下面とを接着させることが可能となる。
つまり、第一実施形態では、柱部123と基板部110とを接着しつつ電気的に接続する部分には導電性接着剤141を用いて、電気的に接続させることなく柱部123と基板部110とを接着するためだけの部分には保持用接着剤142を用いており、用途に合わせて接着剤140を使い分けているので、保持用接着剤142の代わりに導電性接着剤141を用いても、基板部110の上面に水晶素子120を実装することが可能である。柱部123と基板部110とを全て導電性接着剤141で接着させた場合には、第二柱部123bの下面と基板部110の上面との間の導電性接着剤141が電位的に浮遊した状態となり、水晶デバイスの外部に位置する金属物質と第二柱部123bの下面と基板部110の上面との間に設けられている接着剤140との間で電界が生じ、この電界により水晶デバイスから出力される周波数が変動してしまう虞がある。つまり、このように柱部123と基板部110とを接着するためだけの箇所に導電性粉末を含有していない保持用接着剤142を用いることにより、水晶デバイスから出力される周波数をより安定して出力させることができる。
蓋体130は、接合部材150により基板部110の上面と接合されて、基板部110の上面に実装されている水晶素子120を、蓋体130と基板部110とで形成される凹部133に気密封止するためのものである。蓋体130は、封止基部131と封止枠部132とから構成されている。
封止基部131は、略矩形形状の平板状となっており、その主面の大きさが水晶素子120の平板部122の主面の大きさよりも大きく、基板部110の主面の大きさより小さくなっている。また、封止基部131の下面には、封止枠部132により凹部133が形成されている。
封止枠部132は、枠部132aと鍔部132bとから構成されている。枠部132aは、蓋体130の下面に凹部133(空間)を形成するためのものであり、封止基部131の下面の外縁に沿って設けられている。凹部133(空間)内には、基板部110の上、面に実装されている水晶素子120が収容される。鍔部132bは、蓋体130と基板部110とを接合する面積を確保し接合強度を上げるためのものである。鍔部132bは、枠部132aの外周面に沿って環状でかつ、枠部132aの外周側へ延設されている。
封止基部131および封止枠部132は、例えば、鉄、ニッケル、または、コバルトの少なくともいずれかを含む合金からなり、一体的に形成されている。このような蓋体130は、真空状態にある凹部133、または、窒素ガスなどが充填された凹部133(空間)を気密封止するためのものである。具体的には、枠部132aの下面と基板部110の上面との間、および、鍔部132bの下面と基板部110の上面との間に設けられた接合部材150に熱が印加されることで、接合部材150が溶融され、封止枠部132の下面と基板部110の上面とが溶融接合される。
ここで、蓋体130の作製方法について説明する。蓋体130の作製には、例えば、従来周知のプレス加工が用いられる。まず、矩形形状の平板を準備し、蓋体130の凹部133と同じ形状となっている凹部およびこの凹部と嵌め合う形状となっている凸部を有している一対の金型で、平板を挟み加圧し平板を塑性加工する。このようにすることで、封止基部131および封止枠部132が設けられ凹部133(空間)が形成され、蓋体130が形成される。
接合部材150は、蓋体130の封止枠部132の下面と基板部110の上面との間に設けられており、蓋体130と基板部110とを接合するためのものである。接合部材150は、ガラスの場合には、300〜400℃で溶融するガラスであり、例えば、バナジウムを含有した低融点ガラス、または、酸化鉛系ガラスから構成されている。酸化鉛系ガラスの組成は、酸化銅、フッ化鉛、二酸化チタン、酸化ニオブ、酸化ビスマス、酸化ホウ素、酸化亜鉛、酸化第二鉄、酸化銅および酸化カルシウムから構成されている。
接合部材150は、例えば、絶縁性樹脂の場合には、エポキシ樹脂またはポリイミド樹脂から構成されている。基板部110と蓋体130との間に設けられている接合部材150の厚みは、例えば、30〜100μmとなっている。
接合部材150は、例えば、金錫の場合には、接合部材150の層の厚みは、10〜40μmとなっており、成分比率が、例えば、金が70〜80%、錫が20〜30%のものを使用してもよい。また、接合部材150は、例えば、銀錫の場合には、接合部材150の層の厚みは、10〜40μmとなっており、成分比率が、例えば、銀70〜80%、錫が20〜30%のものを使用してもよい。
次に、接合部材150を用いて蓋体130と基板部110とを接合する方法について説明する。接合部材150の原料となるガラスは、バインダーと溶剤とが加えられたペースト状であり、溶融された後、固化されることで他の部材と接着する。接合部材150は、例えば、ガラスフリットペーストをスクリーン印刷法で封止枠部132の下面に塗布され乾燥することで設けられる。
また、接合部材150は、例えば、絶縁性樹脂の場合には、エポキシ樹脂、または、ポリイミド樹脂から構成されている。このとき、絶縁性樹脂は、蓋体130の封止枠部132の下面に塗布される。絶縁性樹脂が塗付された蓋体130は、絶縁性樹脂を封止枠部132の下面と基板部110の上面とで挟むように載置される。その後、絶縁性樹脂を加熱硬化させて、蓋体130と基板部110とを接合している。
このように第一実施形態に係る水晶デバイスは、略直方体形状の平板部122と、平板部122の下面の所定の一辺に沿って設けられている第一柱部123aと、平板部122の下面の所定の一辺と対向する一辺に沿って設けられている第二柱部123bと、からなる水晶片121と、平板部122の上下面に設けられている励振電極部125と、第一柱部123aの下面に設けられている引出部126と、一端が励振電極部125に接続され、他端が引出部126に接続されている配線部127と、上面に搭載パッド111が設けられている基板部110と、搭載パッド111と引出部126との間に設けられている導電性接着剤140と、基板部110の上面と接合されている蓋体130と、から構成されている。従って、第一実施形態の水晶デバイスでは、平板部122が第一柱部123aおよび第二柱部123bによって両持ちされている両持梁と同じ形状となっている水晶片121を用いるといえる。従って、第一実施形態に係る水晶デバイスは、水晶デバイスの外部から応力を受けた場合、例えば、平板部122と垂直な向きの応力を受けた場合、従来の水晶デバイスで用いている片持梁と同じ形状の水晶片と比較して、平板部122の中央部で変位する量を小さくすることができる。このため、第一実施形態に係る水晶デバイスでは、外部から応力を受けた場合、励振電極部125で挟まれている平板部122が変化する量を小さくすることができるので、外部からの応力の影響により所望の周波数から周波数が変動するといった周波数特性の変化や等価直列抵抗値が大きくなるといった等価直列抵抗値の変化といような電気的特性が変化を軽減させることが可能となる。
また、第一実施形態に係る水晶デバイスは、水晶片121を平面視して、一対の貫通穴124が、第一柱部123aと第二柱部123bとの間に位置する平板部122に形成されており、一対の貫通穴124の間には励振電極部125が設けられている。従って、第一実施形態に係る水晶デバイスでは、水晶片121を平面視して、柱部123と励振電極部125との間に貫通穴124を形成しているので、スペースを小さくすることなく、励振電極部125で挟まれている平板部122の一部をより平板の四隅で固定している状態、つまり、振動している部分をより独立している状態に近付けることが可能となり、柱部123による振動への影響を低減させることが可能となる。この結果、第一実施形態では、貫通穴124を形成することで、柱部123の振動への影響を低減させることができ、周波数変動や等価直列抵抗値の増加といった電気的特性の変化をより低減させることが可能となる。
また、第一実施形態に係る水晶デバイスは、水晶片121を平面視して、貫通穴124が、柱部123の縁部に沿って形成されている。第一実施形態に係る水晶デバイスでは、水晶片121をフォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて形成した場合、結晶軸との位置関係によってエッチングされる速度が異なるために、水晶片121は、柱部123の上下方向の厚みが平板部122に向かうにつれて徐々に薄くなっている構造となっている。従って、第一実施形態では、柱部123の縁部に沿って貫通穴124を形成しているので、貫通穴124が柱部123の上下方向の厚みが平板部122に向かうにつれて徐々に薄くなっている部分に形成されていることとなり、貫通穴124を形成しても、励振電極部125の大きさが小さくなることを低減させることができる。この結果、第一実施形態では、このように貫通穴124を柱部123の縁部に形成することで、励振電極部125の大きさが小さくなり蓄積される電荷の量が少なくなり励振電極部125に挟まれている平板部122を振動させにくくなり等価直列抵抗値が大きくなることを、低減させることができる。
また、第一実施形態に係る水晶デバイスは、配線部127の一部が、貫通穴124の内壁面に設けられている。従って、第一実施形態に係る水晶デバイスは、配線部126の一部を、貫通穴124の内壁面に設けることで、水晶片121の表面に沿って配線部を設ける場合と比較して、励振電極部125から引出部126までの長さをより短くすることが可能となる。このため、第一実施形態に係る水晶デバイスは、配線部127の長さを短くした分だけ配線部127自身が持つ抵抗値を小さくすることができ、配線部127の抵抗により水晶素子120の等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることが可能となる。
また、第一実施形態に係る水晶デバイスは、保持用接着剤142が、水晶素子120の第二柱部123bの下面と基板部110の上面との間に設けられている。従って、第一実施形態に係る水晶デバイスでは、第一柱部123aの下面と基板部110の上面とが導電性接着剤141により接着されており、第二柱部123bの下面と基板部110の上面とが保持用接着剤142により接着された状態で、水晶素子120が基板部110の上面に実装されている。このため、第一実施形態に係る水晶デバイスでは、従来の水晶デバイス、または、搭載パッド111と引出部126とを導電性接着剤141のみで実装している水晶デバイスと比較して、水晶素子120と基板部110との接着面積をより大きくすることができる。この結果、第一実施形態に係る水晶デバイスでは、水晶素子120と基板部110との接合強度をより高めることが可能となり、水晶デバイスをマザーボード等の実装基板に半田等で実装する際に、基板部110が熱膨張により変形し接着剤140に応力が加わった場合、または、水晶デバイスに外部から応力が加わりその慣性力により水晶素子120と基板部110との間に設けられている接着剤140に応力が加わった場合であっても、水晶素子120が基板部110の上面から外れてしまうことを低減させることができる。
また、第一実施形態に係る水晶デバイスは、第一柱部123aの下面の両端部に導電性接着剤141が設けられており、第二柱部123bの下面の両端部に保持用接着剤142が設けられている。従って、第一実施形態に係る水晶デバイスでは、第一実施形態では、柱部123と基板部110とを接着しつつ電気的に接続する箇所には導電性接着剤141を用いて、柱部123と基板部110とを接着するためだけの箇所には保持用接着剤142を用いており、用途に合わせて接着剤140を使い分けているので、保持用接着剤142の代わりに導電性接着剤141を用いても、基板部110の上面に水晶素子120を実装することが可能である。柱部123と基板部110とを全て導電性接着剤141で接着させた場合には、第二柱部123bの下面と基板部110の上面との間の導電性接着剤141が電位的に浮遊した状態となり、水晶デバイスの外部に位置する金属物質と第二柱部123bの下面と基板部110の上面との間に設けられている接着剤140との間で電界が生じ、この電界により水晶デバイスから出力される周波数が変動してしまう虞がある。つまり、第一実施形態に係る水晶デバイスでは、第二柱部123bと基板部110とを接着するためだけの箇所に導電性粉末を含有していない保持用接着剤142を用いることにより、水晶デバイスから出力される周波数をより安定して出力させることができる。
(第一実施形態の変形例)
第一実施形態の変形例は、図6および図7に示したように、一対の引出部226のうち、一方の引出部226が第一柱部123aの下面に設けられており、他方の引出部226が第二柱部123bの下面に設けられている点で、第一実施形態と異なる。
第一実施形態の変形例に係る水晶デバイスで用いる水晶素子220は、第一実施形態に係る水晶デバイスで用いている水晶片121と、励振電極部225と、引出部226と、配線部227と、から主に構成されている。
励振電極部225は、平板部122に電圧を印加するためのものである。励振電極部225は、一対となっており、平板部122の両主面に互いが対向するように設けられている。また、平板部122の上面に設けられている励振電極部225は、水晶素子220の上面を平面視して、一対の貫通穴124の間に位置するように設けられており、平板部122の下面に設けられている励振電極部225は、水晶素子220の下面を平面視して、第一柱部123aと第二柱部123bとの間に形成されている一対の貫通穴124の間に位置するように設けられている。このように貫通穴124の間に位置するように励振電極部225を形成することで、励振電極部225に挟まれている平板部122の位置を振動させているとき、励振電極部225に挟まれている平板部122から柱部123に連続している部分を減らすことができるので、柱部123による振動阻害を低減させることが可能となり、振動阻害による等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることができる。
また、励振電極部225は、例えば、水晶素子220を平面視して、円型形状または楕円形状となっている。このよう構成にすることで、励振電極部225に電圧を印加すると、平面視して、励振電極部225の中心部から徐々に円形形状または楕円形状に厚みすべり振動が減衰していくので、より効率よく励振電極部225に挟まれている平板部122の一部を振動させることができる。この結果、効率よく励振電極部225に挟まれている平板部122の一部を振動させることができ、等価直列抵抗値が大きくなることをより低減させることが可能となる。
引出部226は、水晶素子220の外部から励振電極部225へ電圧を印加するためのものである。引出部226は、一対となっており、図5および図7に示したように、一方の引出部226が第一柱部123aの下面の一端に設けられており、他方の引出部226が第二柱部123bの下面の一端に設けられている。また、引出部226は、水晶素子220を水晶デバイスとして用いるとき、基板部の搭載パッドと向かい合う位置に設けられており、接着剤、特に、導電性接着剤によって電気的に接着されている。
配線部227は、励振電極部225と引出部226とを電気的に接続されているためのものであり、一対となっている。配線部227は、一端が励振電極部225に接続されており、他端が引出部226に接続されている。このとき、配線部227の一部は、貫通穴224の内壁面に形成されている。このように、配線部227の一部を、貫通穴124の内壁面に設けることで、水晶片121の表面に沿って配線部を設ける場合と比較して、励振電極部225から引出部226までの長さ(配線部227の長さ)をより短くすることが可能となる。これにより、配線部227の長さを短くした分だけ配線部227自身が持つ電気抵抗を小さくすることができ、配線部227の電気抵抗により水晶素子220の等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることが可能となる。
第一実施形態の変形例に係る水晶デバイスでは、このような水晶素子220、具体的には、一方の引出部226が第一柱部123aの下面に設けられ、他方の引出部226が第二柱部123bの下面に設けられている水晶素子220を基板部に実装している。従って、第一実施形態の変形例に係る水晶デバイスで用いる基板部は、基板部の上面に設けられている搭載パッドの位置が異なっている。基板部は、上面を平面視すると、略矩形形状となっており、一対の搭載パッドが基板部の対向しあう二隅に設けられている。
また、第一実施形態の変形例に係る水晶デバイスでは、一方の引出部226が第一柱部123aの下面の一端に設けられており、他方の引出部226が第二柱部123bの下面の一端に設けられている水晶素子220を用いている。従って、第一実施形態の変形例に係る水晶デバイスでは、第一柱部123aの下面の一端には導電性接着剤が設けられ、第一柱部123aの下面の他端には保持用接着剤が設けられており、第二柱部123bの下面の一端には導電性接着剤が設けられ、第二柱部123bの下面の他端に保持用接着剤が設けられ、水晶素子220が基板部に実装される。つまり、第一実施形態の変形例に係る水晶デバイスでは、導電性接着剤および保持用接着剤により第一柱部123aの下面と基板部の上面とが接着されつつ、導電性接着剤および保持用接着剤により第二柱部123bの下面と基板部の上面とが接着されている。このようにすることで、水晶素子220が小型化しても、導電性接着剤同士が接触し、電気的に短絡することを低減させることができる。
また、第一実施形態の変形例に係る水晶デバイスでは、導電性接着剤および保持用接着剤により第一柱部123aの下面と基板部の上面とが接着されつつ、導電性接着剤および保持用接着剤により第二柱部123bの下面と基板部の上面とが接着され、水晶素子220が基板部に実装されている。このため、導電性接着剤および保持用接着剤を基板部の所定の位置に塗布し加熱硬化した際に接着剤が収縮する量に着目すると、第一柱部123aの下面と基板部の上面との間に設けられている接着剤の収縮量と第二柱部123bの下面と基板部の上面との間に設けられている接着剤の収縮量とを同じくらいにすることができる。この結果、水晶素子220を基板部の上面に実装した際に、水晶素子220の平板部122の主面と基板部の主面とが平行に近い状態で実装することが可能となる。従って、平板部122の中央部に励振電極部225を設けた場合、励振電極部225に挟まれている平板部122の一部の厚みすべり振動の振動変位と外部から応力を受け平板部122が変形する変位と同じように変化させることができる。このため、外部から応力を受け平板部122が変形しても、励振電極部225で挟まれている平板部122の一部が振動しているときの周波数が変動する量を、平板部122の主面が基板部の上面に対し斜めとなっている場合と比較して、低減させることが可能となる。
(第二実施形態)
第二実施形態に係る水晶デバイスは、図8および図9に示したように、平板部322の下面に設けられている柱部323(323a,323b)の位置が第一実施形態の変形例と異なる。
第二実施形態に係る水晶デバイスで用いる水晶素子320は、水晶片321、励振電極部235、引出部326および配線部327から主に構成されている。
水晶片321は、図8および図9に示したように、略直方体形状の平板部322と、平板部322の下面に設けられている一対の柱部323(323a,323b)と、から主に構成されている。また、水晶片321には、一対の貫通穴324が形成されている。
平板部322は、安定した機械振動をする圧電材料が用いられ、例えば、直交しているX軸とY軸とZ軸とからなる結晶軸を有している水晶部材が用いられている。平板部322は、図8および図9に示したように、略直方体形状に形成されている。このとき、平板部322の主面は、X軸およびZ軸に平行となっている面を、X軸を中心に、X軸の負の方向を見て反時計回りに回転させた面と平行となっている。例えば、平板部322の主面は、X軸およびZ軸に平行となっている面を、X軸を中心に、X軸の負の方向を見て反時計回りに約37°回転させた面と、平行となっている。
平板部322の両主面には、一対の励振電極部325が平板部322を挟むようにして設けられている。ここで、一対の励振電極部325に電圧が印加されたときの平板部322の動作について説明する。一対の励振電極部325に電圧が印加されると、一対の励振電極部325には異なる電荷が蓄積されることとなり、逆圧電効果によって励振電極部325に挟まれている平板部322の一部分に歪みが生じ、変形する。その結果、平板部322は、変形前の姿に戻ろうとするため、圧電効果により励振電極部325に最初に蓄積された電荷と反対の電荷が蓄積される。つまり、励振電極部325に電圧が印加されると、圧電効果および逆圧電効果により、励振電極部325に挟まれている平板部322の一部が振動することとなる。従って、励振電極部325に交流電圧を印加すると、励振電極部325に異なる電荷が交互に蓄積され交互に変形することとなり、励振電極部325に挟まれている平板部322の一部を振動させることができる。このとき、平板部322は、例えば、所定の周波数で厚みすべり振動する。平板部322は、励振電極部325に挟まれている平板部322の一部が厚みすべり振動するが、励振電極部325が設けられていない平板部322の一部においても、励振電極部325から平板部322の外縁に向かう向きに厚みすべり振動が漏れている状態となっている。
また、平板部322の厚みすべり振動の周波数は、平板部322の上下方向の厚みによって厚みすべり振動のしやすさが異なるため、平板部322の上下方向の厚みに依存している。従って、平板部322の上下方向の厚みは、水晶素子320の所望の周波数によって決定される。
平板部322は、図8および図9に示したように、略矩形形状の平板状となっており、その大きさは、例えば、長辺の長さが0.8〜4.0mmとなっており、短辺の長さが0.6〜2.8mmとなっている。また、平板部322の上下方向の厚みは、5〜83μmとなっている。
柱部323は、水晶素子320を基板部の上面に実装するときに、接着剤によって基板部に接着保持させるためのものである。また、柱部323の下面と基板部の上面との間には接着剤が設けられており、接着剤により柱部323の下面と基板部とが接着され、水晶素子320が基板部の上面に実装されている。柱部323は、第一柱部323aと第二柱部323bとから構成されている。
第一柱部323aは、図8および図9に示すように、略直方体形状となっており、平板部322の下面の所定の一辺と平行となるように、平板部322の外周縁より内側に位置している。また、第一柱部323aの下面の一端には、一対の引出部326のうち一方の引出部326が設けられている。また、第一柱部323aの下面と基板部の上面との間には、接着剤が設けられている。
第二柱部323bは、図8および図9に示すように、略直方体形状となっており、平板部322の下面であって、第一柱部323aが設けられている平板部322の所定の一辺と対向する辺と平行となるようにもう決れている。従って、第二柱部323bは、水晶片321の下面を平面視したとき、第一柱部323aと向かいあうように平板部322の下面に設けられている。また、第二柱部323bの下面と基板部の上面との間には、接着剤が設けられている。
ここで、水晶素子320の平板部322の上面を水晶素子320の上面とし、水晶素子320の第一柱部323aおよび第二柱部323bの下面を水晶素子320の下面とする。なお、第一柱部323aの下面とは、平板部322と接している第一柱部323aの面と反対側を向く第一柱部323aの面であり、基板部に水晶素子320を実装するときに基板部の上面を向く第一柱部323aの面である。また、第二柱部323bの下面とは、平板部322と接している第二柱部323bの面と反対側を向く第二柱部323bの面であり、基板部に水晶素子320を実装するときに基板部の上面を向く第二柱部323bの面である。
柱部323は、第一柱部323aと第二柱部323bとがほぼ同形状となっている。柱部323は、水晶片321の下面を平面視して、平板部322の短辺に平行な辺の長さが0.6〜2.8mmとなっており、平板部322の長辺に平行な辺の長さが0.13〜1.5mmとなっている。また、柱部323の上下方向の厚みは、30〜100μmとなっている。
水晶片321の下面を平面視すると、第一柱部323aおよび第二柱部323bが、平板部322の外周縁より内側に平板部322の互いに平行しあう辺に沿って設けられている。従って、水晶片321を断面視すると、平板部322が一対の柱部323によって支えられており、梁の端部が柱より突出している両持梁と同じ形状となっている。このため、このような水晶片321は、第一実施形態で説明した水晶片121と同様に、水晶デバイスに用いた場合、水晶デバイスの外部から応力、例えば、平板部322の主面に対し垂直な向きの応力を受けた際に、従来の水晶デバイスで用いた水晶片と比較し、平板部322の中央部で変位する量を小さくすることができる。この結果、このような水晶片321を水晶デバイスに用いることで、外部から応力を受けた場合に、平板部322が変形することによる周波数変化や等価直列抵抗値の増加といった電気的特性の変化を軽減させることができる。
また、このような水晶片321を用いることで、水晶デバイスに用いて、この水晶デバイスの外部から応力を受けた場合、平板部322が変形し平板部322と柱部323との境界部分に応力が集中することを低減させることが可能となる。従って、このような水晶片321を用いることで、水晶デバイスの外部から応力を受け平板部322が変形した場合、平板部322と柱部323との境界部分に応力が集中し水晶片321が破損することを低減させることができる。
貫通穴324は、一対となっている。貫通穴324は、図8および図9に示したように、水晶素子320の下面を平面視して、一対の柱部323の間であって、柱部323の縁部に沿って形成されている。また、一対の貫通穴324の間には、励振電極部325が設けられている。また、貫通穴324は、その開口部が略矩形形状となっており、特に図示していないが、開口部の四隅が円弧形状となっている。また、貫通穴324の内壁面には、配線部327の一部が設けられている。
水晶片321は、例えば、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術により、形成される。ここで、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて水晶片321を形成する方法について説明する。まず、互いに直交しているX軸とY軸とZ軸とからなる結晶軸を有した水晶ウエハを用意する。このとき、水晶ウエハの主面は、X軸およびZ軸に平行となっている面を、X軸を中心に、X軸の負の方向を見て反時計回りに回転させた面、例えば、約37°回転させた面と平行となっている。次に、水晶ウエハの両主面に金属膜をスパッタリング技術または蒸着技術を用いて形成し、この金属膜上に感光性レジストを塗布し、所定のパターンに露光、現像し、所定の部分のみ水晶ウエハが露出するようにする。具体的には、水晶ウエハの上面を平面視すると、平板部322の外縁の縁部及び一対の貫通穴124となる部分の水晶ウエハが露出しており、水晶ウエハの下面を平面視すると、柱部323となる部分には感光性レジストが残っている状態となっている。このように所定の部分のみ露出している水晶ウエハを所定のエッチング溶液に浸漬させ、水晶ウエハをエッチングする。このようにすることで、水晶片321を形成する。
第二実施形態に係る水晶デバイスは、略直方体形状の平板部322と、平板部322の下面の所定の一辺に沿って設けられている第一柱部323aと、平板部322の下面の所定の一辺と対向する一辺に沿って設けられている第二柱部323b、からなる水晶片321と、平板部322の上下面に設けられている励振電極部325と、第一柱部323aまたは第二柱部323bの下面に設けられている引出部326と、一端が励振電極部325に接続され、他端が引出部326に接続されている配線部327と、上面に搭載パッドが設けられている基板部と、搭載パッドと引出部326との間に設けられている導電性接着剤と、基板部の上面と接合されている蓋体と、から構成されているので、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、第二実施形態に係る水晶デバイスでは、水晶素子320の下面を平面視して、第一柱部323aおよび第二柱部323bが、平板部322の外周縁より内側に位置している水晶片321を用いている。従って、第二実施形態に係る水晶デバイスで用いる水晶片321は、水晶片321を断面視すると、平板部322が一対の柱部323によって支えられており、梁の端部が柱より突出している両持梁と同じ形状となっている。このため、第二実施形態に係る水晶デバイスでは、水晶デバイスの外部から応力を受けた場合に、平板部322が変形し平板部322と柱部323との境界部分に力が集中することを、第一実施形態に係る水晶デバイスで用いる水晶片121と比較して、低減させることが可能となる。この結果、第二実施形態に係る水晶デバイスでは、水晶デバイスの外部から応力を受け平板部322が変形した場合に、平板部322と柱部323との境界部分に力が集中し、水晶片321が破損することを低減させることができる。