(第一実施形態)
第一実施形態に係る音叉型水晶素子100は、安定した機械振動を得ることができ、電子機器等の基準信号を発信するためのものである。また、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100は、図1〜図3に示したように、水晶片110および金属パターン120から構成されている。
水晶片110は、図1〜図3に示したように、水晶基部111と、水晶振動部112(112a、112b)と、水晶保持部113と、水晶支持部114と、切欠き部116(116a、116b)が形成されている凸部115(115a、115b)とからなる。水晶片110は、例えば、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて、互いに直交しているX軸とY軸とZ軸とからなる結晶軸を有している水晶ウエハから、水晶基部111、水晶振動部112、水晶保持部113、水晶支持部114および切欠き部116が形成されている凸部115が一体的に形成されている。
水晶基部111は、図2および図3に示したように、略直方体形状となっている。また、水晶基部111の主面は、結晶軸であるX軸およびY軸に平行な面を、X軸を中心に−5°〜5°回転させた面と平行となっている。このとき、水晶片110を平面視して、水晶基部111の所定の一辺は、X軸に平行となっており、水晶基部111の所定の一辺に接続している辺は、Y´軸に平行となっている。
ここで、第一実施形態に係る音叉型水晶素子を水晶デバイスとして用いた場合、基板部130a(図6および図7参照)を向く水晶基部111の面を水晶基部111の下面とし、水晶基部111の下面と反対側を向く水晶基部111の面を水晶基部111の上面とする。また、水晶基部111の下面および水晶基部111の上面を水晶基部111の主面とし、水晶基部111の下面および水晶基部111の上面に接している水晶基部111の面を水晶基部111の側面とする。
水晶振動部112(112a、112b)は、図2および図3に示したように水晶基部111の側面から延出するように設けられている。このとき、水晶振動部112は、X軸およびZ´軸に平行な水晶基部111の側面から、Y´軸に平行な向きに延出している。水晶振動部112は、水晶片110を平面視して、略矩形形状となっている。また、水晶振動部112は、水晶片110を平面視して、Y´軸に平行な水晶振動部112の辺の長さが、X軸に平行な水晶振動部112の辺の長さより長くなっている。
また、水晶振動部112は、その先端部、つまり、水晶基部111と反対側の水晶振動部112の端部に、ハンマーヘッド形状の錘部117が設けられている。錘部117(117a、117b)は、水晶振動部112で生じる屈曲振動の周波数を調整するためのものである。具体的には、錘部117を設けることで、水晶振動部112の先端側へ錘を設けた状態に近づけることができるため、水晶振動部112で生じる屈曲振動の周波数を、錘部117がない場合と比較して低くなるようにすることができ、水晶振動部112で生じる屈曲振動の周波数を所望の周波数となるように調整している。また、錘部117は、第一水晶振動部112aの先端部に設けられている第一錘部117aと、第二水晶振動部112bの先端部に設けられている第二錘部117bと、から構成されている。
また、水晶振動部112は、水晶振動部112の主面に溝部118が形成されている。溝部118は、例えば、水晶振動部112の上面および水晶振動部112の下面に、それぞれ二つずつ形成されている。溝部118は、その開口部が、略矩形形状となっており、水晶振動部112が延出する方向(Y´軸に平行な向き)の溝部118の辺が水晶振動部112の延出する方向に垂直な方向(X軸に平行な向き)の溝部118の辺と比較して長くなっている。また、溝部118は、水晶振動部112が延出する方向に垂直な方向(X軸に平行な向き)に二つ並んで位置している。また、溝部118は、第一水晶振動部112aに形成されている第一溝部118aと、第二水晶振動部112bに形成されている第二溝部118bとから構成されている。なお、本第一実施形態では、溝部118が水晶振動部112の両主面に二本ずつX軸に平行な向きで並んで形成されている場合について説明しているが、例えば、水晶振動部112の主面に一つずつ形成してもよいし、または、水晶振動部112の上面または水晶振動部112の下面のどちらか片面のみに形成してもよい。また、溝部118の開口部が略矩形形状となっている場合について図示しているが、例えば、Y軸に平行な溝部118の辺にエッチング抑制用の凸部を形成してもよい。
水晶振動部112は、図2および図3に示したように、第一水晶振動部112aと第二水晶振動部112bとから構成されている。第一水晶振動部112aおよび第二水晶振動部112bは、水晶片110の上面を平面視して、X軸に平行となるように水晶基部111の所定の一辺に沿って二つ並んで位置している。第一水晶振動部112aおよび第二水晶振動部112bは、例えば、水晶片110を平面視して、第一水晶振動部112aが水晶基部111の所定の一辺の+X側に位置している端部から延出しており、第二水晶振動部112bが水晶基部111の所定の一辺の−X側に位置している端部から延出している。
第一水晶振動部112aは、X軸およびZ´軸に平行な水晶基部111の側面であって、+X側の端部付近から、Y´軸と平行な向きに延出している。また、第一水晶振動部112aは、先端部に第一錘部117aが設けられており、第一錘部117aによって、第一水晶振動部112aで生じる屈曲振動の周波数が調整されている。また、第一水晶振動部112aは、水晶基部111の根本から第一水晶振動部112aの先端部にかけて第一溝部118aが、X軸と平行となるように二つ並んで第一水晶振動部112aの両主面に形成されている。
第二水晶振動部112bは、X軸およびZ´軸に平行な水晶基部111の側面であって、−X側の端部付近から、Y´軸と平行な向きに延出している。また、第二水晶振動部112bは、先端部に第二錘部117bが設けられており、第二錘部117bによって、第二水晶振動部112bで生じる屈曲振動の周波数が調整されている。また、第二水晶振動部112bは、水晶基部111の根本から第二水晶振動部112bの先端部にかけて第二溝部118bが、X軸と平行となるように二つ並んで第二水晶振動部112bの両主面に形成されている。
ここで、第一実施形態に係る音叉型水晶素子を水晶デバイスとして用いられた場合、基板部130aの上面を向く水晶振動部112の面を水晶振動部112の下面とし、この水晶振動部112の下面と反対側を向く水晶振動部112の面を水晶振動部112の上面とする。また、水晶振動部112の上面および水晶振動部112の下面を、水晶振動部112の主面とし、水晶振動部112の上面および水晶振動部112の下面に接している水晶振動部112の面を水晶振動部112の側面とする。
水晶保持部113は、図6および図7に示しているように、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100を水晶デバイスとして用いる場合に、水晶支持部114と合わせて水晶振動部112および水晶基部111を保持するためのものであり、また、水晶基部111と水晶支持部114とを連結するためのものである。水晶保持部113は、図1〜図3に示したように、水晶振動部112が延出している水晶基部111の側面と対向する位置にある水晶基部111の側面から延出するように設けられている。従って、水晶保持部113は、X軸およびZ´軸に平行な水晶基部111の二面のうち水晶振動部112が延出していない面から延出している。
水晶保持部113は、水晶片110を平面視して、略矩形形状となっている。このとき、水晶保持部113は、X軸に平行な向きが長辺となっている。なお、本第一実施形態では、水晶保持部113が矩形形状の場合で説明しているが、水晶保持部113に切込み部、または、凹部を形成してもよい。このように、水晶保持部113に切込み部、または、凹部を形成することで、水晶支持部114の水晶振動部112への影響を低減させることが可能となっている。
前述したように、水晶保持部113は、水晶振動部112が延出している水晶基部111の側面と対向する位置にある水晶基部111の側面から延出するように設けられている。別の観点では、水晶基部111は、水晶保持部113の側面から延出しており、水晶片110を平面視したとき、水晶保持部113の一辺から延出しているともいえる。このとき、水晶基部111は、水晶片110を平面視すると、水晶保持部113の一辺の一方の端部、具体的には、水晶保持部113のX軸に平行な辺の−X側の端部側であって、端部より内側に位置している。従って、水晶片110を平面視して、水晶保持部113は、Y´軸およびZ´軸に平行な水晶保持部113の面であって−X側に位置している面が、Y´軸およびZ´軸に平行な水晶基部111の面であって−X側に位置している面と同一平面上に位置しておらず、水晶保持部113が水晶基部111より凸となった形状になっている。このようにすることで、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100を水晶デバイスとして用いる場合、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100を基板部130a(図6および図7参照)の上面に、水晶振動部112が基板部130a(図6および図7参照)と接触することを低減させることができる。
ここで、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100を水晶デバイスとして用いる場合、基板部130a(図6および図7参照)を向く水晶保持部113の面を水晶保持部113の下面とし、この水晶保持部113の下面と反対側を向く水晶保持部113の面を水晶保持部113の上面とする。また、水晶保持部113の上面および水晶保持部113の下面を水晶保持部113の主面とし、水晶保持部113の上面および水晶保持部113の下面に接している面を水晶保持部113の側面とする。
水晶支持部114は、図6および図7に示したように、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100を水晶デバイスとして用いる場合に、水晶保持部113と合わせて水晶振動部112および水晶基部111を保持するためのものである。水晶支持部114は、図1〜図3および図5に示したように、水晶保持部113の側面から水晶振動部112と同一方向に延出するように設けられている。水晶支持部114は、例えば、X軸およびZ´軸に平行な水晶保持部113の二面のうち、水晶基部111が延出されている面からY´軸に平行な向きに延出している。このとき、水晶支持部114は、水晶基部111より+X側に位置している。別の観点では、水晶片110を平面視したとき、第一水晶振動部112a、第二水晶振動部112bおよび水晶支持部114は、3つともY´軸に平行となるように設けられており、+X側から水晶支持部114、第一水晶振動部112a、第二水晶振動部112bの順で配置されている。このような水晶支持部114を設けることで、水晶支持部114の下面と水晶保持部113の下面に導電性接着剤134を設け音叉型水晶素子100を水晶デバイスとして用いる場合、水晶保持部113から水晶支持部113と水晶基部111とが延出されており、さらに水晶基部111から水晶支持部114と同一方向に水晶振動部112が延出されているので、水晶振動部112が基板部130a(図6および図7参照)に接触することを低減させることができる。
凸部115(115a、115b)は、水晶振動部112が延出している方向に平行な水晶支持部114の側面に設けられている。従って、凸部115は、Y´軸およびZ´軸に平行な水晶支持部114の側面から延出している。このようにすることで、水晶片110を平面視したとき、水晶支持部114が延出している方向に垂直な方向(X軸に平行な向き)の水晶支持部114の長さが、凸部115が設けられている部分だけ長くなっており、凸部15における質量が大きくなる。従って、このようにY´軸およびZ´軸に平行な水晶支持部114の側面に凸部115を設けることで、水晶支持部114に屈曲振動が生じた場合に凸部115が錘の機能を果たすこととなり、水晶支持部114での屈曲振動を低減させることが可能となる。このため、このようにすることで、水晶支持部114で生じる屈曲振動と水晶振動部112で生じる屈曲振動とが互いに影響し、具体的には、結合し、周波数安定度の悪化や等価直列抵抗値の増大といった電気的特性の悪化を低減させることができる。また、凸部115は、第一凸部115aと第二凸部115bとから構成されている。
また、凸部115には、切欠き部116(116a、116b)が形成されている。屈曲振動の周波数は、Y´軸に平行な長さおよびX軸に平行な長さに関係しているので、水晶支持部114に設けられている凸部115に切欠き部116を形成することにより、凸部115を水晶支持部114に設けたことによる生じるスプリアスとなる振動を低減させることができる。つまり、凸部115に切欠き部116を形成することで、水晶支持部114で生じる屈曲振動を低減させつつ、凸部115を設けたことによる生じるスプリアスとなる振動をも低減させ、電気的特性が悪化することを低減させることを可能としている。また、切欠き部116は、第一凸部115aに形成されている第一切欠き部116aと、第二凸部115bに形成されている第二切欠き部116bと、から構成されている。
第一実施形態に係る音叉型水晶素子100では、Y´軸およびZ´軸に平行な水晶支持部114の面に、切欠き部116が形成されている凸部115を設けることで、水晶支持部114で生じる屈曲振動を低減させつつ、水晶支持部114で生じる屈曲振動の周波数が水晶振動部112で生じる屈曲振動より低くならないようにし、電気的特性が悪化することを低減させている。
また、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100では、水晶片110を平面視して、凸部115が略矩形形状となっており、切欠き部116が、水晶支持部114が延出されている水晶保持部113の側面に平行となっている凸部115の面に形成されている。つまり、水晶片110を平面視したとき、略直方体形状の凸部115がY´軸およびZ´軸に平行な水晶支持部114の面からX軸に平行な向きに延出しており、この凸部115のX軸およびZ´軸に平行な面に切欠き部116が形成されている。このようにすることで、切欠き部116が形成されている凸部115のY´軸に平行な長さ、および、切欠き部116が形成されている凸部115のX軸に平行な長さを容易に測定することができので、水晶支持部114で生じる屈曲振動の周波数を算出することが、略直方体形状となっていない凸部115が設けられた場合と比較して容易にすることができる。さらに、このように切欠き部116を矩形形状となっている凸部115のZ´軸およびX軸に平行な面に形成することで、切欠き部116を凸部115のY´軸およびZ´軸に平行となっている面に形成する場合と比較して、エッチング残渣が生じても、第一切欠き部116aが形成されている第一凸部115aと第二切欠き部116bが形成されている第二凸部115bとの形状をほぼ同じにすることができ、水晶支持部114で生じる屈曲振動の周波数の算出を容易にすることが可能となる。
また、別の観点では、切欠き部116が形成された凸部115は、図5に示されているように、水晶片110を平面視したとき、水晶支持部114からX軸方向に延出し、さらに、その先端部からY´軸方向に直角に延出している曲尺形状の凸形状となっているといえる。このようにすることで、水晶支持部114の側面に金属パターン120をスパッタリング技術または蒸着技術を用いて設けた場合、Y´軸方向に延出している部分が影となり、切欠き部116が形成されている凸部115の水晶保持部113側と切欠き部116が形成されている凸部115の自由端側とで、金属パターン120が短絡しないようにすることが可能となる。また、このようにすることで、切欠き部116を凸部115のY´軸およびZ´軸に平行となっている面に形成する場合と比較して、エッチング残渣が生じても、第一切欠き部116aが形成されている第一凸部115aと第二切欠き部116bが形成されている第二凸部115bとの形状をほぼ同じにすることができるので、金属パターン120の短絡をより確実に防ぐことが可能となる。
また、水晶片110を平面視したとき、水晶支持部114からX軸方向に延出し、さらに、その先端部からY´軸方向に直角に延出している曲尺形状の凸形状となっているので、X軸方向に生じる水晶支持部114の屈曲振動を、切欠き部116が形成されている凸部115で効率よく減衰させることができ、水晶支持部114で生じる屈曲振動をより低減させることが可能となる。
このとき、切欠き部116は、水晶保持部113とは反対側を向く凸部115の面に形成されている。このようにすることで、水晶保持部113側を向く凸部115の面に切欠き部116を形成した場合と比較して、凸部113と水晶支持部114との間で生じるエッチング残渣の量を多くすることができる。従って、水晶保持部114で生じる屈曲振動をより低減させることが可能となる。
また、このようにすることで、水晶片110を平面視して、切欠き部116が形成されている凸部115の水晶保持部113側の面にエッチング残渣を生じさせることができるので、水晶支持部114の水晶保持部113側に錘をつけた状態に近づけることができ、水晶支持部114で生じる屈曲振動の周波数が、水晶振動部112で生じる屈曲振動の周波数に対して低くなることを低減させることができる。これは、一般的に、音叉の場合、音叉腕の根本側に錘を付けた場合と音叉腕の自由端側に錘を付けた場合とで、音叉腕の周波数が音叉腕の自由端側に錘を付けた場合の方が高くなる現象と同じ現象である。
また、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100を切欠き部116が形成されている凸部115より水晶支持部114の先端側で実装した場合に、切欠き部116が形成されている凸部115の水晶保持部113側の面にエッチング残渣を生じさせることで、実装により加わる応力をエッチング残渣部で徐々に減衰させることができ、水晶振動部112への影響を低減させることが可能となる。
また、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100は、水晶片110を平面視して、水晶支持部114が延出する方向に平行な凸部115の長さが、水晶支持部114が延出する方向に平行な水晶支持部114の長さの10%以上かつ25%以下となっている。水晶支持部114が延出する方向に平行な凸部115の長さが、水晶支持部114が延出する方向に平行な水晶支持部114の長さの10%より小さい場合、切欠き部116が形成されている凸部115が小さくなるため、水晶支持部114で生じる屈曲振動を低減させる効果が弱くなる。水晶支持部114が延出する方向に平行な凸部115の長さが、水晶支持部114が延出する方向に平行な水晶支持部114の長さの25%より大きい場合、切欠き部116が形成されている凸部115が大きくなり、水晶支持部114で生じる屈曲振動の周波数が、水晶振動部112で生じる屈曲振動の周波数より低くなってしまう虞がある。このため、水晶片110を平面視して、水晶支持部114が延出する方向に平行な凸部115の長さを、水晶支持部114が延出する方向に平行な水晶支持部114の長さの10%以上かつ25%以下とすることで、水晶支持部114で生じる屈曲振動の振動を低減させつつ、水晶支持部114で生じる屈曲振動の周波数が水晶振動部112で生じる屈曲振動の周波数より低くなることを低減させている。この結果、第一実施形態に係る音叉型水晶素子の電気的特性が悪化することをより低減させている。
このとき、水晶片110を平面視して、水晶支持部114が延出する方向に平行な切欠き部116の長さが、水晶支持部114が延出する方向に平行な凸部115の長さの40%以上かつ90%以下となっている。水晶片110を平面視して、水晶支持部114が延出する方向に平行な切欠き部116の長さが、水晶支持部114が延出する方向に平行な凸部115の長さの40%より小さい場合、切欠き部116内に生じたエッチング残渣により、水晶支持部114の側面に金属パターン120をスパッタリング技術または蒸着技術を用いて設けた場合、Y´軸方向に延出している部分が影となり、切欠き部116が形成されている凸部115の水晶保持部113側と切欠き部116が形成されている凸部115の自由端側とで、金属パターン120が短絡してしまう虞がある。水晶片110を平面視して、水晶支持部114が延出する方向に平行な切欠き部116の長さが、水晶支持部114が延出する方向に平行な凸部115の長さの90%より大きい場合、水晶支持部114が屈曲振動した場合に、音叉型水晶素子100が破損してしまう虞がある。このため、水晶片110を平面視して、水晶支持部114が延出する方向に平行な切欠き部116の長さを、水晶支持部114が延出する方向に平行な凸部115の長さの40%以上かつ90%以下とする。このようにすることで、切欠き部116が形成されている凸部115の水晶保持部113側と切欠き部116が形成されている凸部115の自由端側とで、金属パターン120が短絡を低減させることができ、かつ、音叉型水晶素子100が破損することを低減させることができる。
また、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100は、水晶片110が水晶基部111とは反対側の水晶振動部112の端部に錘部117を備えており、水晶片110を平面視したとき、切欠き部116が形成されている凸部115が、錘部117より水晶保持部113側に位置しつつ水晶基部111より錘部117側に位置している。このように、切欠き部116が形成されている凸部115の位置を水晶基部111より錘部117側にすることで、切欠き部116が形成されている凸部115から水晶振動部112へまでの距離をより長くすることができ、切欠き部116が形成されている凸部115が水晶振動部112で生じる屈曲振動へ与える影響を低減さえることができる。また、切欠き部116が形成されている凸部115の位置を、錘部117より水晶保持部113側にするようにすることで、水晶振動部112および水晶支持部114が屈曲振動している際に、錘部117と切欠き部116が形成されている凸部115とが接触することを低減させることができる。従って、水晶片110を平面視したとき、凸部115を、錘部117より水晶保持部113側に位置しつつ水晶基部111より錘部117側に位置するようにすることで、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100の電気的特性の悪化を低減させることが可能となる。
第一切欠き部116aが形成されている第一凸部115aは、略直方体形状となっており、Y´軸およびZ´軸に平行な水晶支持部114の側面から+X軸方向に向かって凸となっている。このとき、第一切欠き部116aは、X軸およびZ´軸に平行な第一凸部115の面であって、水晶保持部113と反対側を向く第一凸部115の面に形成されている。
第二切欠き部116bが形成されている第二凸部115bは、略直方体形状となっており、Y´軸およびZ´軸に平行な水晶支持部114の側面から−X軸方向に向かって凸となっている。また、第二切欠き部116bが形成されている第二凸部115bは、水晶片110を平面視して、水晶支持部114の延出する方向、Y´軸に平行な方向に平行な水晶支持部114の中心を通過する中心線に対して、第一切欠き部116aが形成されている第一凸部115aと略線対称となるように配置されている。ここで、略線対称とは、エッチング残渣を含まないで考慮すると線対称となっている状態を示している。第二切欠き部116bは、X軸およびZ´軸に平行な面であって水晶保持部113と反対側を向く面に形成されている。
ここで、水晶片110を平面視したときの水晶片110大きさについて説明する。水晶基部111は、X軸に平行な向きの長さが、250〜350μmとなっており、Y´軸に平行な向きの長さが、80〜150μmとなっている。水晶振動部112は、Y´軸に平行な向きの長さが、430〜550μmとなっており、X軸に平行な向きの長さが、20〜55μmとなっている。ここで、水晶振動部112のY´軸に平行な長さとは、錘部117を含まない長さのことである。水晶保持部113は、X軸に平行な向きの長さが、380〜600μmとなっており、Y´軸に平行な向きの長さが、35〜60μmとなっている。水晶支持部114は、X軸に平行な向きの長さが、50〜120μmとなっており、Y´軸に平行な向きの長さが、745〜1010μmとなっている。第一凸部115aおよび第二凸部115bは、X軸に平行な向きの長さが、20〜40μmとなっている。Y´軸に平行な向きの長さが、74.5〜252.5μmとなっている。第一切欠き部116aおよび第二切欠き部116bは、X軸に平行な向きの長さが、5〜20μmとなっており、Y´軸に平行な向きの長さが、22.35〜227.25μmとなっている。なお、水晶片110のZ´軸に平行な長さ、つまり、水晶片110の上下方向の厚みは、50〜200μmとなっている。
金属パターン120は、水晶片110に電圧を印加するためのものであり、水晶片110に設けられている。金属パターン120は、図1〜図5に示したように、励振電極部121(121a、121b)、接続電極部122(122a、122b)、配線部123(123a、123b)および周波数調整用電極部124からなる。
励振電極部121(121a、121b)は、図1および図3に示したように、水晶振動部112(112a、112b)の上面、下面および側面に設けられており、水晶振動部112を屈曲振動させるためのものである。励振電極部121は、例えば、クロム、チタン、ニクロム、ニッケルのいずれか一つから選択された金属層上に、金、銀、パラジウム、金を主成分とする金属、銀を主成分とする金属、パラジウムを主成分とする金属のいずれか一つから選択された金属層が積層された積層構造となっている。励振電極部121は、一対となっており、第一励振電極部121aおよび第二励振電極部121bから構成されている。
第一励振電極部121aは、図3に示したように、第一水晶振動部112aの両主面および第二水晶振動部112bのY´軸かつZ´軸に平行な側面に設けられている。このとき、第一水晶振動部112aの両主面に設けられている第一励振電極部121aは、互いに対向する位置に設けられている。また、第二水晶振動部112bにおけるY´軸およびZ´軸に平行な側面に設けられている第一励振電極部121aは、互いに対向する位置に設けられている。
第二励振電極部121bは、図3に示したように、第二水晶振動部112bの両主面および第一水晶振動部112bのY´軸かつZ´軸に平行な側面に設けられている。このとき、第一水晶振動部112aのY´軸およびZ´軸に平行な側面に設けられている第二励振電極部121bは、互いに対向する位置に設けられている。また、第二水晶振動部112bにおける両主面に設けられている第二励振電極部121bは、互いに対向する位置に設けられている。
接続電極部122(122a、122b)は、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100の外部から励振電極部121に電圧を印加させるためのものである。従って、接続電極部122は、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100を水晶デバイスとして用いる場合、この接続電極部122が、基板部130a(図6および図7参照)の上面に設けられている接続パッド131(図6および図7参照)と導電性接着剤134(図6および図7参照)により電気的に接着される。接続電極部122は、例えば、クロム、チタン、ニクロム、ニッケルのいずれか一つから選択された金属層上に、金、銀、パラジウム、金を主成分とする金属、銀を主成分とする金属、パラジウムを主成分とする金属のいずれか一つから選択された金属層が積層された積層構造となっている。接続電極部122は、一対となっており、第一接続電極部122aと第二接続電極部122bとから構成されている。
第一接続電極部122aは、図3に示したように、水晶支持部114の下面であって、切欠き部116が形成されている凸部115より先端側に設けられている。このとき、第一接続電極部122aは、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100の下面を平面視して、水晶保持部113側の錘部117の端部より、水晶保持部113側に位置している。第一接続電極部122aは、第一配線部123aを介して第一励振電極部121aと電気的に接続されている。
第二接続電極部122bは、図3に示したように、水晶保持部113および水晶支持部114の下面であって、水晶支持部114が延出している側の端部に設けられている。従って、第二接続電極部122bは、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100の下面を平面視したとき、水晶保持部113の+X側の端部から水晶支持部114の水晶保持部113側の端部にかけて位置している。第二接続電極部122bは、第二配線部123bを介して第二励振電極部121bと電気的に接続されている。
別の観点では、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100の下面を平面視したとき、切欠き部116が形成されている凸部115は、第一接続電極部122aと第二接続電極部122bとの間の水晶支持部114の側面から延出されているといえる。このようにすることで、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100を水晶デバイスとして用いる場合、第一接続電極部122aおよび第二接続電極部122bを導電性接着剤134(図6および図7参照)が収縮する際に生じる収縮応力が水晶支持部114に加わったとしても切欠き部116が形成されている凸部115が設けられている分だけ剛性が強くなり、収縮応力により水晶支持部114が破損することを低減させることができる。
配線部123(123a、123b)は、励振電極部121と接続電極部122との間、および、対向する励振電極部121間を電気的に接続させるためのものである。配線部123は、例えば、クロム、チタン、ニクロム、ニッケルのいずれか一つから選択された金属層上に、金、銀、パラジウム、金を主成分とする金属、銀を主成分とする金属、パラジウムを主成分とする金属のいずれか一つから選択された金属層が積層された積層構造となっている。配線部123は、第一配線部123aおよび第二配線部123bから構成されている。
第一配線部123aは、図1、図3および図4に示したように、第一励振電極部121aと第一接続電極部122aとの間、および、第一励振電極部121a間を電気的に接続されている。図3に示したように、水晶支持部114の側面を平面視したとき、第一配線部123aの一部は、切欠き部116が形成されている凸部115の自由端側の端部から第一接続電極部122aにかけて水晶支持部114の側面に設けられている。従って、切欠き部116が形成されている凸部115のY´軸およびZ´軸に平行な面には、第一配線部123aの一部は設けられていない。また、第一配線部123aの一部は、第一実施形態に係る水晶素子100の上面を平面視して、水晶支持部114の中央部に水晶支持部114が延出する方向と平行となるように設けられている。また、第一配線部123aの一部は、第二水晶振動部112bのY´軸およびZ´軸に平行な側面に設けられている第一励振電極部121a間を電気的に接続させるために、第二水晶振動部112bの下面の、第二励振電極部121bと錘部117との間に設けられている。また、第一配線部123aの一部は、水晶基部111の両主面および水晶保持部113の両主面に設けられている。
第二配線部123bは、図1、図3および図4に示したように、第二励振電極部121bと第二接続電極部122bとの間、および、第二励振電極部121b間を電気的に接続させている。第二配線部123bの一部は、図3に示したように、水晶支持部114の側面を平面視したとき、切欠き部116が形成されている凸部115から水晶保持部113側の水晶支持部114の端部にかけて設けられている。従って、第二配線部123bの一部は、切欠き部116が形成されている凸部115のY´軸およびZ´軸に平行な面に設けられている。また、第二配線部123bの一部は、第一水晶振動部112aのY´軸およびZ´軸に平行な側面に設けられている第二励振電極部121b間を電気的に接続させるために、第一水晶振動部112aの下面の、第一励振電極部121aと錘部117との間に設けられている。また、第二配線部123bの一部は、水晶基部111の両主面および水晶保持部113の両主面に設けられている。
第一配線部123aおよび第二配線部123bは、切欠き部116が形成されている凸部115の切欠き部116によって、第一配線部123aと第二配線部123bとに分かれており、切欠き部116の内壁面には、第一配線部123aおよび第二配線部123bが形成されていない。このようにすることで、切欠き部116を設けたことにより、切欠き部116が形成されている凸部115で電界が生じ逆圧電効果および圧電効果により、屈曲振動が生じることを低減させている。
周波数調整用電極部124は、周波数調整用電極部124を構成する金属の量を増減させることで、水晶振動部112で生じる屈曲振動の周波数を微調整するためのものである。周波数調整用電極部124は、図1および図3に示したように、錘部117に設けられており、例えば、錘部117の上面であって、錘部117の先端側に設けられている。周波数調整用電極部124は、例えば、クロム、チタン、ニクロム、ニッケルのいずれか一つから選択された金属層上に、金、銀、パラジウム、金を主成分とする金属、銀を主成分とする金属、パラジウムを主成分とする金属のいずれか一つから選択された金属層が積層さえた積層構造となっている。なお、周波数調整用電極部124が積層構造になっている場合について説明しているが、単層構造となっていてもよく、例えば、クロム、チタン、アルミニウム、金、銀、金を主成分とする金属層、銀を主成分とする金属層のいずれか一つから選択された金属層であってもよい。
また、周波数調整用電極部124は、水晶振動部112で生じる屈曲振動の周波数を微調整するためのものであり、水晶振動部112の先端部に設けられている錘部117の上面に設けられている。
ここで、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100の動作原理について説明する。第一実施形態に係る音叉型水晶素子100の接続電極部122(122a、122b)に電圧を印加すると、配線部123を介して、励振電極部121に電荷が蓄積される。このとき、第一励振電極部121aと第二励振電極部121bとには、反対の極性の電荷が蓄積され、+の電荷が蓄積されている励振電極部121側から−の電荷が蓄積されている励振電極部121側へ電界が生じ、逆圧電効果により、水晶振動部112に収縮(歪み)が生じ水晶振動部112が屈曲(変形)する。その結果、水晶振動部112は、元の状態に戻ろうとするため、圧電効果により最初に蓄積された電荷と反対の極性の電荷が励振電極部121に蓄積される。例えば、最初に、第一励振電極部121aに+の電荷が蓄積され、第二励振電極部121bに−の電荷が蓄積された場合、逆圧電効果および圧電効果により第一励振電極部121aには−の電荷が蓄積され、第二励振電極部121bには+の電荷が蓄積されることとなる。つまり、接続電極部122に交番電圧を印加することで、励振電極部121に交番電圧が印加されることとなり、逆圧電効果および圧電効果により、水晶振動部112が屈曲振動することとなる。従って、接続電極部122に交番電圧を印加すると、励振電極部121に異なる電荷が交互に蓄積されて水晶振動部112が交互に屈曲することとなり、水晶振動部112を屈曲振動させることができる。この水晶振動部112で生じる屈曲振動の周波数は、水晶振動部112の先端部に設けられている錘部117と錘部117に設けられている周波数調整用電極部124により調整することが可能となっている。
第一実施形態に係る音叉型水晶素子100は、略直方体形状の水晶基部111と、水晶基部111の側面から延出するように設けられた水晶振動部112と、水晶基部111の側面と対向する位置にある側面から延出するように設けられた略矩形形状の水晶保持部113と、水晶保持部113の側面から水晶振動部112と同一方向(Y´軸に平行な向き)に延出するように設けられた水晶支持部114と、水晶振動部112が延出している方向に平行な水晶支持部114の側面(水晶支持部114のY´軸およびZ´軸に平行な面)に設けられている一対の凸部115と、凸部115の側面に形成されている切欠き部116と、からなる水晶片110と、水晶振動部112に設けられている一対の励振電極部121と、水晶支持部114および水晶保持部113の下面に設けられている一対の接続電極部122と、励振電極部121と接続電極部122を電気的に接続している配線部123と、からなる金属パターン120と、から構成されている。
このように、凸部115(115a、115b)は、水晶振動部112が延出している方向に平行な水晶支持部114の側面に設けることで、水晶片110を平面視したとき、水晶支持部114が延出している方向に垂直な方向(X軸に平行な向き)の水晶支持部114の長さが、凸部115が設けられている部分だけ長くすることができ、凸部115における質量を大きくすることが可能となっている。従って、水晶支持部114に屈曲振動が生じた場合に凸部115が錘の機能を果たすこととなり、水晶支持部114での屈曲振動を低減させることが可能となる。このため、水晶支持部114で生じる屈曲振動と水晶振動部112で生じる屈曲振動とが互いに影響し、具体的には、結合し、周波数安定度の悪化や等価直列抵抗値の増大といった電気的特性の悪化を低減させることができる。
また、凸部115に切欠き部116を形成することで、水晶支持部114で生じる屈曲振動の周波数が、凸部115を水晶支持部114に設けたことにより水晶振動部112で生じる屈曲振動の周波数より低くなることを低減させている。つまり、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100では、Y´軸およびZ´軸に平行な水晶支持部114の面に、切欠き部116が形成されている凸部115を設けることで、水晶支持部114で生じる屈曲振動を低減させつつ、水晶支持部114で生じる屈曲振動の周波数が水晶振動部112で生じる屈曲振動より低くならないようにし、電気的特性が悪化することを低減させている。
また、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100は、水晶片110を平面視して、凸部115が略矩形形状となっており、切欠き部116が、水晶支持部114が延出している水晶保持部113の側面に平行となっている凸部115の面に形成されている。別の観点では、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100は、水晶片110を平面視したとき、略直方体形状の凸部115がY´軸およびZ´軸に平行な水晶支持部114の面からX軸に平行な向きに延出しており、この凸部115のX軸およびZ´軸に平行な面に切欠き116が形成されているといえる。このようにすることで、切欠き部116が形成されている凸部115のY´軸に平行な長さ、および、切欠き部116が形成されている凸部115のX軸に平行な長さを容易に測定することが可能となるので、水晶支持部114で生じる屈曲振動の周波数を算出することが、略直方体形状となっていない凸部115が設けられた場合と比較して容易にすることができる。さらに、このように切欠き部116を矩形形状となっている凸部115のZ´軸およびX軸に平行な面に形成することで、切欠き部116を凸部115のY´軸およびZ´軸に平行となっている面に形成する場合と比較して、エッチング残渣が生じても、第一切欠き部116aが形成されている第一凸部115aと第二切欠き部116bが形成されている第二凸部115bとの形状をほぼ同じにすることができ、水晶支持部114で生じる屈曲振動の周波数の算出を容易にすることが可能となる。
また、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100は、切欠き部116が形成された凸部115を、水晶片110を平面視したとき、水晶支持部114からX軸方向に延出し、さらに、その先端部からY´軸方向に直角に延出している曲尺形状の凸形状となっているといえる。このようにすることで、水晶支持部114の側面に金属パターン120をスパッタリング技術または蒸着技術を用いて設けた場合、Y´軸方向に延出している部分が影となり、切欠き部116が形成されている凸部115の水晶保持部113側と切欠き部116が形成されている凸部115の自由端側とで、金属パターン120が短絡しないようにすることが可能となる。また、このようにすることで、切欠き部116を凸部115のY´軸およびZ´軸に平行となっている面に形成する場合と比較して、エッチング残渣が生じても、第一切欠き部116aが形成されている第一凸部115aと第二切欠き部116bが形成されている第二凸部115bとの形状をほぼ同じにすることができるので、金属パターン120の短絡をより確実に防ぐことが可能となる。
また、水晶片110を平面視したとき、水晶支持部114からX軸方向に延出し、さらに、その先端部からY´軸方向に直角に延出している曲尺形状の凸形状となっているので、X軸方向に生じる水晶支持部114の屈曲振動を、切欠き部116が形成されている凸部115で効率よく減衰させることができ、水晶支持部114で生じる屈曲振動をより低減させることが可能となる。
また、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100は、切欠き部116が、水晶保持部113とは反対側を向く凸部115の面に形成されている。このようにすることで、水晶保持部113側を向く凸部115の面に切欠き部116を形成した場合と比較して、凸部115と水晶支持部114との間で生じるエッチング残渣の量を多くすることができる。従って、水晶保持部114で生じる屈曲振動をより低減させることが可能となる。
また、このようにすることで、水晶片110を平面視して、切欠き部116が形成されている凸部115の水晶保持部113側の面にエッチング残渣を生じさせることができるので、水晶支持部114の水晶保持部113側に錘をつけた状態に近づけることができ、水晶支持部114で生じる屈曲振動の周波数が、水晶振動部112で生じる屈曲振動の周波数に対して低くなることを低減させることができる。
また、水晶片110を平面視して、切欠き部116が形成されている凸部115の水晶保持部113側の面にエッチング残渣を生じさせることで、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100を切欠き部116が形成されている凸部115より水晶支持部114の先端側で実装した場合に、実装により加わる応力をエッチング残渣部で徐々に減衰させることができ、水晶振動部112への影響を低減させることが可能となる。
また、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100は、水晶片110を平面視して、水晶支持部114が延出する方向に平行な凸部115の長さ(凸部115のY´軸に平行な長さ)が、水晶支持部114の延出する方向に平行な水晶支持部114の長さ(水晶支持部114のY´軸に平行な長さ)の10%以上かつ25%以下となっている。水晶支持部114が延出する方向に平行な凸部115の長さが、水晶支持部114が延出する方向に平行な水晶支持部114の長さの10%より小さい場合、切欠き部116が形成されている凸部115が小さくなるため、水晶支持部114で生じる屈曲振動を低減させる効果が弱くなる。水晶支持部114が延出する方向に平行な凸部115の長さが、水晶支持部114が延出する方向に平行な水晶支持部114の長さの25%より大きい場合、切欠き部116が形成されている凸部115が大きくなり、水晶支持部114で生じる屈曲振動の周波数が、水晶振動部112で生じる屈曲振動の周波数より低くなってしまう虞がある。このため、水晶片110を平面視して、水晶支持部114が延出する方向に平行な凸部115の長さを、水晶支持部114が延出する方向に平行な水晶支持部114の長さの10%以上かつ25%以下とすることで、水晶支持部114で生じる屈曲振動の振動を低減させつつ、水晶支持部114で生じる屈曲振動の周波数が水晶振動部112で生じる屈曲振動の周波数より低くなることを低減させている。この結果、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100の電気的特性が悪化することをより低減させている。
また、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100は、水晶片110を平面視して、水晶支持部114が延出する方向に平行な切欠き部116の長さ(切欠き部116のY´軸に平行な長さ)が、水晶支持部114が延出する方向に平行な凸部115の長さ(凸部115のY´軸に平行な長さ)の40%以上かつ90%以下となっている。水晶片110を平面視して、水晶支持部114が延出する方向に平行な切欠き部116の長さが、水晶支持部114が延出する方向に平行な凸部115の長さの40%より小さい場合、切欠き部116内に生じたエッチング残渣により、水晶支持部114の側面に金属パターン120をスパッタリング技術または蒸着技術を用いて設けた場合、Y´軸方向に延出している部分が影となり、切欠き部116が形成されている凸部115の水晶保持部113側と切欠き部116が形成されている凸部115の自由端側とで、金属パターン120が短絡してしまう虞がある。水晶片110を平面視して、水晶支持部114が延出する方向に平行な切欠き部116の長さが、水晶支持部114が延出する方向に平行な凸部115の長さの90%より大きい場合、水晶支持部114が屈曲振動した場合に、音叉型水晶素子100が破損してしまう虞がある。このため、水晶片110を平面視して、水晶支持部114が延出する方向に平行な切欠き部116の長さを、水晶支持部114が延出する方向に平行な凸部115の長さの40%以上かつ90%以下とする。このようにすることで、切欠き部116が形成されている凸部115の水晶保持部113側と切欠き部116が形成されている凸部115の自由端側とで、金属パターン120が短絡を低減させることができ、かつ、音叉型水晶素子100が破損することを低減させることができる。
また、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100は、水晶片110が水晶基部111とは反対側の水晶振動部112の端部に錘部117を備えており、水晶片110を平面視したとき、凸部115が、錘部117より水晶保持部113側に位置しつつ水晶基部111より錘部117側に位置している。このように、切欠き部116が形成されている凸部115の位置を水晶基部111より錘部117側にすることで、切欠き部116が形成されている凸部115から水晶振動部112へまでの距離をより長くすることができ、切欠き部116が形成されている凸部115が水晶振動部112で生じる屈曲振動へ与える影響を低減さえることができる。また、切欠き部116が形成されている凸部115の位置を、錘部117より水晶保持部113側にするようにすることで、水晶振動部112および水晶支持部114が屈曲振動している際に、錘部117と切欠き部116が形成されている凸部115とが接触することを低減させることができる。従って、水晶片110を平面視したとき、凸部115を、錘部117より水晶保持部113側に位置しつつ水晶基部111より錘部117側に位置するようにすることで、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100の電気的特性の悪化を低減させることが可能となる。
また、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100は、切欠き部116の内壁面では水晶が露出しており、切欠き部116の内壁面に金属パターン120が形成されていない。このようにすることで、切欠き部116が形成されている凸部115の側面に形成されている金属パターン120により、切欠き部116が形成されている凸部115で逆圧電効果および圧電効果により屈曲振動が生じることを低減させることが可能となる。従って、切欠き部116が形成されている凸部115を設けることで生じる屈曲振動を低減させることが可能となり、水晶振動部112で生じる屈曲振動へ与える影響を低減させることができ、電気的特性が悪化することを低減させることが可能となる。
また、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100は、凸部115が、一対の接続電極部122間に位置している。また、別の観点では、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100の下面を平面視したとき、切欠き部116が形成されている凸部115は、第一接続電極部122aと第二接続電極部122bとの間の水晶支持部114の側面から延出されているといえる。このようにすることで、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100を水晶デバイスとして用いる場合、第一接続電極部122aおよび第二接続電極部122bを導電性接着剤134(図4および図5)が収縮する際に生じる収縮応力が水晶支持部114に加わったとしても切欠き部116が形成されている凸部115が設けられている分だけ剛性が強くなり、収縮応力により水晶支持部114が破損することを低減させることができる。
(第一実施形態に係る音叉型水晶素子100の製造方法)
次に第一実施形態に係る音叉型水晶素子100の製造方法について説明する。第一実施形態に係る音叉型水晶素子100の製造方法は、水晶ウエハ形成工程、耐食膜形成工程、第一レジスト膜形成工程、第一露光現像工程、第一耐食膜エッチング工程、第二レジスト膜形成工程、第二露光現像工程、水晶エッチング工程、第二耐食膜エッチング工程、成膜工程、第二レジスト除去工程、耐食膜除去工程、周波数調整用電極部形成工程および周波数調整工程からなる。
水晶ウエハ形成工程は、互いに直交しているX軸とY軸とZ軸とからなる結晶軸を有した水晶部材から水晶ウエハを形成する工程である。水晶ウエハ形成工程では、ランバード人工水晶が所定のカットアングルで切断された時、上下方向の厚みが所定の厚みとなるまで研磨される。水晶ウエハ形成工程後の水晶ウエハは、対向している二面が、X軸およびY軸に平行な面を、X軸を中心に−5°〜5°回転させた面と平行となっている。
耐食膜形成工程は、水晶ウエハの両主面に耐食膜を設ける工程である。ここで、水晶ウエハの主面とは、X軸およびY軸に平行な面を、X軸を中心に−5°〜5°回転させた面と平行な面とする。耐食膜形成工程では、水晶エッチング工程でエッチングされない材質からなる金属膜が、スパッタリング技術または蒸着技術により、水晶ウエハの両主面に被着される。耐食膜は、例えば、クロムが用いられる。なお、ここで、耐食膜の一例としてクロムを挙げているが、クロム、チタン、ニクロム、ニッケルのいずれか一つから選択された金属層上に、金、銀、パラジウム、金を主成分とする金属、銀を主成分とする金属、パラジウムを主成分とする金属のいずれか一つから選択された金属層が積層さえた積層構造にしてもよい。
第一レジスト膜形成工程は、耐食膜が形成された水晶ウエハに第一レジストを塗布する工程である。第一露光現像工程では、第一レジストが塗付された水晶ウエハを所定のパターンに露光、現像する工程である。第一露光現像工程後の水晶ウエハを平面視すると、溝部118となる部分および水晶片110の外周縁に沿って耐食膜が露出している状態となっている。第一耐食膜エッチング工程は、第一露光現像工程後の水晶ウエハであって、露出している耐食膜をエッチングする工程である。従って、第一耐食膜エッチング工程後の水晶ウエハを平面視すると、溝部118となる部分および水晶片110の外周縁に沿って水晶ウエハが露出している状態となっている。このとき、第一レジストも除去された状態となっている。
第二レジスト膜形成工程は、第一耐食膜エッチング工程後の水晶ウエハに第二レジストを塗布する工程である。第二露光現像工程は、第二レジストが塗付された水晶ウエハを所定のパターンに露光、現像する工程である。第二露光現像工程後の水晶ウエハを平面視すると、励振電極部121、接続電極部122および配線部123となる部分は耐食膜が露出した状態となっている。
水晶エッチング工程は、第二露光現像工程後の水晶ウエハを所定のエッチング溶液に浸漬させて、露出している水晶ウエハをエッチングする工程である。第二耐食膜エッチング工程は、露出している耐食膜をエッチングし除去する工程である。第二露光現像工程の水晶ウエハを平面視すると励振電極部121、接続電極部122および配線部123となる部分の耐食膜が露出した状態となっているため、第二耐食膜エッチング工程後の水晶ウエハを平面視すると、励振電極部121、接続電極部122および配線部123となる部分の水晶が露出した状態となっている。また、水晶片110の側面となる部分が露出した状態となっている。
成膜工程は、第二耐食膜エッチング工程後の水晶ウエハに、金属膜を成膜する工程である。成膜工程では、スパッタリング技術または蒸着技術が用いられ、クロム、チタン、ニクロム、ニッケルのいずれか一つから選択された金属層上に、金、銀、パラジウム、金を主成分とする金属、銀を主成分とする金属、パラジウムを主成分とする金属のいずれか一つから選択された金属層が積層された積層構造の金属膜が、水晶ウエハの露出している部分に被着される。第二レジスト除去工程は、水晶ウエハの第二レジストを除去する工程である。耐食膜除去工程は、耐食膜を除去する工程である。
このようにすることで、水晶ウエハ内に、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100の一部が連結した状態で、製造している。このような製造方法を用いているため、水晶支持部114の側面から切欠き部116が形成されている凸部115を延出させることで、第一配線部123aと第二配線部123bとの短絡を低減させることが可能となる。
また、切欠き部116を、水晶支持部114が延出している水晶保持部113の側面に平行となっている凸部115の面に形成することで、第一配線部123aと第二配線部123bとの短絡をより低減させることが可能となる。
また、水晶片110を平面視して、水晶支持部114が延出する方向に平行な切欠き部116の長さを、水晶支持部114が延出する方向に平行な凸部115の長さの60%以上かつ90%以下とすることで、第一配線部123aと第二配線部123bとの短絡をより低減させることが可能となる。
また、切欠き部116の内壁面の水晶を露出させることで、第一配線部123aと第二配線部123bとの短絡を確実に防ぐことができる。
また、切欠き部116が形成されている凸部115を、一対の接続電極部122間に位置させることで、水晶支持部114の側面の全面に金属膜を被着させても、接続電極部122間の短絡を低減させることが可能となる。
周波数調整用電極部形成工程は、錘部117の上面に周波数調整用電極部124を形成する工程である。周波数調整用電極部形成工程では、例えば、スパッタリング技術または蒸着技術が用いられる。周波数調整工程は、周波数調整用電極部124の質量を増減させて、所望の周波数に微調整をする工程である。周波数調整工程では、例えば、レーザー等が用いられる。
このように、周波数調整用電極部124を、励振電極部121、接続電極部122および配線部123と別の工程で形成することで、周波数調整用電極部124を形成する前に水晶振動部112で生じる屈曲振動の周波数を測定した後に、周波数調整用電極部124の上下方向の膜厚を決定することができる。従って、周波数調整用電極部形成工程により、所望の周波数に対して大雑把に周波数を調整することができ、周波数調整工程により、所望の周波数になるように微調整することができる。このため、二段階に分けて所望の周波数に対して調整することとなり、周波数調整工程でのみ調整した場合と比較して、調整にかかる時間を短縮することができ、生産性を向上させることが可能となる。
(第二実施形態)
第二実施形態では、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100を用いた水晶デバイスについて図6および図7を用いて、説明する。第二実施形態に係る水晶デバイスでは、図4および図5に示したように、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100と、この音叉型水晶素子100を実装されている枠部130bと一体となっている基板部130aと、枠部130bと接合され音叉型水晶素子100を気密封止している蓋体140と、基板部130aに音叉型水晶素子100を実装するための導電性接着剤134と、枠部130bと蓋体140とを接合するための接合部材141と、から主に構成されている。
基板部130aは、音叉型水晶素子100を実装するためのものである。基板部130aは、図4および図5に示したように、例えば、平板状の矩形形状に形成されており、一方の主面に、一対の接続パッド131および枕部133が設けられており、他方の主面に、複数の外部端子132が設けられている。また、基板部130aには、一対の接続パッド131と外部端子132とを電気的に接続するための配線パターン(図示せず)が設けられている。基板部130aは、例えば、アルミナセラミックス、または、ガラス―セラミックス等のセラミック材料である絶縁層からなっている。基板部130aは、絶縁層を一層で用いたものであっても、絶縁層を複数積層させたものであってもよい。
ここで、図面に合わせて、音叉型水晶素子100を向く基板部130aの面を、基板部130aの上面とし、基板部130aの上面と反対側を向く基板部130aの面を基板部130aの下面とする。また、基板部130aの上面および基板部130aの下面を、意版部130bの主面とする。
枠部130bは、基板部130aの上面側に音叉型水晶素子100を収容する空間を形成するためのものである。また、枠部130bは、基板部130aの上面の縁部に沿って枠状に設けられており、基板部130aと一体的に形成されている。枠部130bは、例えば、アルミナセラミックス、または、ガラス―セラミックス等のセラミック材料である絶縁層からなっている。基板部130aは、絶縁層を一層で用いたものであっても、絶縁層を複数積層させたものであってもよい。
ここで、図面に合わせて、基板部130a側に接している枠部130bの面を枠部130bの下面とし、枠部130bの下面と反対側を向く枠部130bの面を枠部130bの上面とする。
接続パッド131は、音叉型水晶素子100を基板部130aに実装するためのものである。接続パッド131は、枠部130b内の基板部130aの上面に設けられており、例えば、基板部130aの上面を平面視したとき、基板部130aの長辺に沿って二つ並んで配置されている。
外部端子132は、電子機器等のマザーボード上に実装するためのものであり、電子機器等のマザーボードに実装する際、マザーボード上にある所定の実装パッド(図示せず)に半田等により、接続固着される。外部端子132は、例えば、四つ設けられており、基板部130aの下面の四隅に一つずつ設けられている。所定の二つの外部端子132、基板部130aの配線パターン(図示せず)によって接続パッド131と電気的に接続されている。基板部130aの大きさは、例えば、基板部130aの上面を平面視して、長辺の寸法が、0.65〜5.0mmとなっており、短辺の寸法が、0.4〜3.2mmとなっている。
枕部133は、枠部130bの枠内の基板部130aの上面に設けられており、基板部130aの上面を平面視して、一方の接続パッド131と基板部130aの一方の短辺に沿って並んで配置されている。枕部133は、音叉型水晶素子100を基板部130aの上面に実装する際に、水晶保持部113の水晶基部111側の端部、つまり、水晶保持部113の−X側の端部が接触するように配置されている。このように枕部133を設けることで、水晶支持部114および水晶保持部113の下面に設けられている接続電極部122と接続パッド131を実装しても、音叉型水晶素子100、具体的には、水晶振動部112が基板部130aの上面と接触することを低減させることができる。
ここで、基板部130aおよび枠部130bを一体的に形成する方法について説明する。基板部130aおよび枠部130bがアルミナセラミックスからなる場合、まず、所定のセラミック材料粉末に適当な有機溶剤等を添加し混合して得た副数のセラミックグリーンシートを準備する。また、セラミックグリーンシートの表面、または、セラミックグリーンシートに打ち抜き設けていた貫通孔内に、従来周知のスクリーン印刷法を用いて導体パターンとなる位置に所定の導電ペーストを塗布する。基板部130aとなるセラミックグリーンシートおよび枠部130bとなるセラミックグリーンシートを積層させ、プレス加工し、高温で焼成する。焼成後、導体パターンとなる所定の部位に、ニッケルメッキ、または、金メッキを施すことにより、基板部130aおよび枠部130bが一体的に形成される。また、導電性ペーストには、例えば、タングステン、モリブデン、銅、銀またはパラジウム等の金属粉末の焼結体等から構成されている。
導電性接着剤134は、音叉型水晶素子100を基板部130aの上面に実装するためのものである。導電性接着剤134は、シリコーン系の樹脂バインダーの中に導電フィラーとしての導電性粉末が含有されているものである。導電性粉末としては、アルミニウム、モリブデン、タングステン、白金、パラジウム、銀、チタン、ニッケルまたはニッケル鉄のいずれか、或いは、これらを組み合わせたものを含むものが用いられる。また、バインダーとしては、例えば、シリコーン系の樹脂、エポキシ系の樹脂、ポリイミド系の樹脂またはビスマレイミド系の樹脂が用いられる。
導電性接着剤134は、接続パッド131上に塗布され、接続パッド131と音叉型水晶素子100の接続電極部122とを電気的に接着させている。導電性接着剤134は、例えば、加熱硬化されたとき、樹脂バインダーが収縮し、導電フィラー同士がより近接する特性を有しているので、加熱硬化することで、接続パッド131と音叉型水晶素子100の接続電極部122とを接着しつつ、電気的に接続させることができる。このため、導電性接着材134が加熱硬化するとき、導電性接着剤134が収縮する。従って、導電性接着剤134が加熱硬化するとき、導電性接着剤134が接着している接続電極部122には、それぞれから導電性接着剤134に向かう向きに応力が加わることとなる。
蓋体140は、枠部130bの上面と接合部材141により接合されて、基板部130aの上面に実装されている音叉型水晶素子100を気密封止するためのものである蓋体140は、例えば、鉄、ニッケルまたはコバルトの少なくともいずれかを含む合金からなる。このような蓋体140は、真空状態、または、窒素ガスなどが充満している所定の雰囲気中で、蓋体140および枠部130bの上面と蓋体140の下面との間に設けられている接合部材141に熱が加えられることで、接合部材141が溶融され、蓋体140の下面と枠部130bの上面とが溶融接合される。
接合部材141は、蓋体140の下面と枠部130bの上面との間に設けられており、蓋体140と枠部130bとを接合するためのものである。接合部材141は、枠部130bの上面に相対する蓋体140の下面に設けられている。このとき、枠部130bの上面には、特に図示しないが、封止用導体パターンが設けられており、接合部材141は、蓋体140の下面の外縁に沿って環状に設けられている。接合部材141は、例えば、金錫または銀ロウによって設けられている。金錫の場合には、その厚みは、10〜40μmである。例えば、成分比率は、金が78〜82%、錫が18〜22%のものが使用されている。銀ロウの場合は、その厚みは、10〜20μmである。例えば、成分比率は、銀が72〜85%、銅が15〜28%のものが使用されている。
接合部材141は、例えば、ガラスの場合には、300〜400℃で溶融するガラスであり、例えば、バナジウムを含有した低融点ガラス、または、酸化鉛系ガラスから構成されている。酸化鉛系ガラスの組成は、酸化鉛、フッ化鉛、二酸化チタン、酸化ニオブ、酸化ホウ素、酸化亜鉛、酸化第二鉄、酸化銅および酸化カルシウムから構成されている。
次に、接合部材141を用いて、蓋体140と枠部130bとを接合する方法について説明する。接合部材141の原料となるガラスは、バインダーと溶剤とが加えられたペースト状であり、溶融された後、固化されることで他の部材と接着する。接合部材141は、例えば、ガラスフリットペーストをスクリーン印刷法で枠部130bの上面、または、蓋体140の下面の外周縁に環状に塗布され乾燥されることで設けられている。
第二実施形態に係る水晶デバイスは、音叉型水晶素子100と、一対の接続電極部122が電気的に接着される一対の搭載パッド131が設けられている基板部130aと、基板部130aの上面の縁部に沿って基板部130aと一体的に設けられている枠部130bと、枠部130bの上面に接合される蓋体140と、を備えている。
第二実施形態に係る水晶デバイスは、一対の接続電極部122によって水晶支持部114および水晶保持部113の下面に設けられている音叉型水晶素子100が実装されているので、水晶保持部113の下面に接続電極部122が設けられている場合と比較して、導電性接着剤134で接着している箇所から水晶振動部112から遠ざけることができる。これにより、音叉型水晶素子100を実装した際の、導電性接着剤134から受ける応力による水晶振動部112への影響を低減させることが可能なり、導電性接着剤134の接着による電気的特性の悪化を低減させることができる。
また、第二実施形態に係る水晶デバイスは、切欠き部116が形成されている凸部115が、一対の接続電極部122間に位置している音叉型水晶素子100を実装しているので、第一接続電極部122aおよび第二接続電極部122bを導電性接着剤134が収縮する際に生じる収縮応力が水晶支持部114に加わったとしても切欠き部116が形成されている凸部115が設けられている分だけ剛性が強くなり、収縮応力により水晶支持部114が破損することを低減させることができる。