<第一実施形態>
(音叉型水晶素子の構成)
第一実施形態に係る音叉型水晶素子100は、安定した機械振動を得ることができ、電子機器等の基準信号を発信するためのものである。また、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100は、図1〜図3に示したように、水晶片110および金属パターン120から構成されている。なお、以下の水晶片110の形状の説明において、特に断りがない限りは、エッチングに対する水晶の異方性の影響(系統誤差のようなもの)は無視されている。偶然誤差のようなものについても同様である。
(水晶片の構成)
水晶片110は、図1〜図3に示したように、基部111と、振動部112(112a、112b)と、保持部113と、支持部114とからなり、支持部114には切欠き部116(116a、116b)が形成されている。なお、図2では、便宜上、保持部113と他の部位(基部111および支持部114)との境界を点線BLで示している。水晶片110は、例えば、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて、互いに直交しているX軸とY軸とZ軸とからなる結晶軸を有している水晶ウエハから作製され、基部111、振動部112、保持部113および支持部114(切欠き部116)は一体的に形成されている。
基部111は、図2および図3に示したように、略直方体形状となっている。また、基部111の主面は、結晶軸であるX軸およびY軸に平行な面を、X軸を中心に−5°〜5°回転させた面と平行となっている。このとき、水晶片110を平面視して、基部111の所定の一辺は、X軸に平行となっており、基部111の所定の一辺に接続している辺は、Y´軸に平行となっている。
ここで、第一実施形態に係る音叉型水晶素子を水晶デバイスとして用いた場合、基板部130a(図6および図7参照)を向く基部111の面を基部111の下面とし、基部111の下面と反対側を向く基部111の面を基部111の上面とする。また、基部111の下面および基部111の上面を基部111の主面とし、基部111の下面および基部111の上面に接している基部111の面を基部111の側面とする。
振動部112(112a、112b)は、図2および図3に示したように基部111の側面から延出するように設けられている。このとき、振動部112は、X軸およびZ´軸に平行な基部111の側面から、Y´軸に平行な向きに延出している。振動部112は、水晶片110を平面視して、略矩形形状となっている。また、振動部112は、水晶片110を平面視して、Y´軸に平行な振動部112の辺の長さが、X軸に平行な振動部112の辺の長さより長くなっている。
また、振動部112は、その先端部、つまり、基部111と反対側の振動部112の端部に、ハンマーヘッド形状の錘部117が設けられている。錘部117(117a、117b)は、振動部112で生じる屈曲振動の周波数を調整するためのものである。具体的には、錘部117を設けることで、振動部112の先端側へ錘を設けた状態に近づけることができるため、振動部112で生じる屈曲振動の周波数を、錘部117がない場合(この場合も本願発明に含まれる)と比較して低くなるようにすることができ、振動部112で生じる屈曲振動の周波数を所望の周波数となるように調整している。また、錘部117は、第一振動部112aの先端部に設けられている第一錘部117aと、第二振動部112bの先端部に設けられている第二錘部117bと、から構成されている。
また、振動部112は、その主面に溝部118が形成されている。溝部118は、例えば、振動部112の上面および振動部112の下面に、それぞれ二つずつ形成されている。溝部118は、その開口部が、略矩形形状となっており、振動部112が延出する方向(Y´軸に平行な向き)の溝部118の辺が振動部112の延出する方向に垂直な方向(X軸に平行な向き)の溝部118の辺と比較して長くなっている。また、溝部118は、振動部112が延出する方向に垂直な方向(X軸に平行な向き)に二つ並んで位置している。また、溝部118は、第一振動部112aに形成されている第一溝部118aと、第二振動部112bに形成されている第二溝部118bとから構成されている。なお、本第一実施形態では、溝部118が振動部112の両主面に二本ずつX軸に平行な向きで並んで形成されている場合について説明しているが、溝部118は、例えば、振動部112の主面に一つずつ形成されてもよいし、または、振動部112の上面または振動部112の下面のどちらか片面のみに形成されてもよい。また、溝部118の開口部が略矩形形状となっている場合について図示しているが、例えば、Y´軸に平行な溝部118の辺にエッチング抑制用の凸部を形成してもよい。
振動部112は、図2および図3に示したように、第一振動部112aと第二振動部112bとから構成されている。第一振動部112aおよび第二振動部112bは、水晶片110の上面を平面視して、X軸に平行となるように基部111の所定の一辺に沿って二つ並んで位置している。第一振動部112aおよび第二振動部112bは、例えば、水晶片110を平面視して、第一振動部112aが基部111の所定の一辺の+X側に位置している端部から延出しており、第二振動部112bが基部111の所定の一辺の−X側に位置している端部から延出している。
第一振動部112aは、X軸およびZ´軸に平行な基部111の側面であって、+X側の端部付近から、Y´軸と平行な向きに延出している。また、第一振動部112aは、先端部に第一錘部117aが設けられており、第一錘部117aによって、第一振動部112aで生じる屈曲振動の周波数が調整されている。また、第一振動部112aは、基部111の根本から第一振動部112aの先端部にかけて第一溝部118aが、X軸と平行となるように二つ並んで第一振動部112aの両主面に形成されている。
第二振動部112bは、X軸およびZ´軸に平行な基部111の側面であって、−X側の端部付近から、Y´軸と平行な向きに延出している。また、第二振動部112bは、先端部に第二錘部117bが設けられており、第二錘部117bによって、第二振動部112bで生じる屈曲振動の周波数が調整されている。また、第二振動部112bは、基部111の根本から第二振動部112bの先端部にかけて第二溝部118bが、X軸と平行となるように二つ並んで第二振動部112bの両主面に形成されている。
ここで、第一実施形態に係る音叉型水晶素子が水晶デバイスとして用いられた場合、基板部130aの上面を向く振動部112の面を振動部112の下面とし、この振動部112の下面と反対側を向く振動部112の面を振動部112の上面とする。また、振動部112の上面および振動部112の下面を、振動部112の主面とし、振動部112の上面および振動部112の下面に接している振動部112の面を振動部112の側面とする。ただし、振動部112の先端面は除く。
保持部113は、図6および図7に示しているように、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100を水晶デバイスに用いる場合に、支持部114と合わせて振動部112および基部111を保持するためのものであり、また、基部111と支持部114とを連結するためのものである。保持部113は、図1〜図3に示したように、振動部112が延出している基部111の側面と対向する位置にある基部111の側面から延出するように設けられている。従って、保持部113は、X軸およびZ´軸に平行な基部111の二面のうち振動部112が延出していない面から延出している。
保持部113は、水晶片110を平面視して、略矩形形状となっている。このとき、保持部113は、X軸に平行な向きが長辺となっている。なお、本第一実施形態では、保持部113が矩形形状の場合で説明しているが、保持部113に切込み部、または、凹部を形成してもよい。このように、保持部113に切込み部、または、凹部を形成することで、支持部114の振動部112への影響を低減させることが可能となっている。
前述したように、保持部113は、振動部112が延出している基部111の側面と対向する位置にある基部111の側面から延出するように設けられている。別の観点では、基部111は、保持部113の側面から延出しており、水晶片110を平面視したとき、保持部113の一辺から延出しているともいえる。このとき、基部111は、水晶片110を平面視すると、保持部113の一辺の一方の端部、具体的には、保持部113のX軸に平行な辺の−X側の端部側であって、端部より内側に位置している。従って、水晶片110を平面視して、保持部113は、Y´軸およびZ´軸に平行な保持部113の面であって−X側に位置している面が、Y´軸およびZ´軸に平行な基部111の面であって−X側に位置している面と同一平面上に位置しておらず、保持部113が基部111より凸となった形状になっている。このようにすることで、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100を水晶デバイスに用いる場合、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100を基板部130a(図6および図7参照)の上面に実装したときに、振動部112が基板部130aと接触することを低減させることができる。
ここで、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100を水晶デバイスに用いる場合、基板部130a(図6および図7参照)を向く保持部113の面を保持部113の下面とし、この保持部113の下面と反対側を向く保持部113の面を保持部113の上面とする。また、保持部113の上面および保持部113の下面を保持部113の主面とし、保持部113の上面および保持部113の下面に接している面を保持部113の側面とする。
支持部114は、図6および図7に示したように、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100を水晶デバイスに用いる場合に、保持部113と合わせて振動部112および基部111を保持するためのものである。支持部114は、図1〜図3および図5に示したように、保持部113の側面から振動部112と同一方向に延出するように設けられている。支持部114は、例えば、X軸およびZ´軸に平行な保持部113の二面のうち、基部111が延出されている面からY´軸に平行な向きに延出している。このとき、支持部114は、基部111より+X側に位置している。別の観点では、水晶片110を平面視したとき、第一振動部112a、第二振動部112bおよび支持部114は、3つともY´軸に平行となるように設けられており、+X側から支持部114、第一振動部112a、第二振動部112bの順で配置されている。このような支持部114を設けることで、支持部114の下面と保持部113の下面に導電性接着剤134を設け音叉型水晶素子100を水晶デバイスに用いる場合、保持部113から支持部114と基部111とが延出されており、さらに基部111から支持部114と同一方向に振動部112が延出されているので、振動部112が基板部130a(図6および図7参照)に接触することを低減させることができる。
切欠き部116(116a、116b)は、振動部112が延出している方向に平行な支持部114の側面に設けられている。切欠き部116は、支持部114の−X側の側面に形成されている第一切欠き部116aと、支持部114の+X側の側面に形成されている第二切欠き部116bと、から構成されている。なお、既に述べたように、以下での切欠き部116の形状の説明は、特に断りがない限りは、エッチング残渣の影響を無視している。
第一切欠き部116aおよび第二切欠き部116bは、例えば、支持部114の中心線を含むY´Z´平面に平行な面に対して面対称の形状とされている。切欠き部116は、支持部114をZ´軸方向に貫通しており、その平面形状(XY´平面に平行な平面の形状)は、Z´軸方向において一定である。
切欠き部116は、例えば、平面視で概略L字のスリット状に形成されている。すなわち、切欠き部116は、図5に示すように、支持部114の側面に開口する入口116eと、入口116eから支持部114の側面内側へ支持部114に交差(例えば直交)するように延びる入口側部分116fと、入口側部分116fの先端から支持部114に沿って(例えは平行に)延びる奥側部分116gとを有している。従って、切欠き部116は、入口116eから支持部114の側面に直交する方向に切欠き部116を見て(図10(b)の矢印L2参照)、隠れる部分(奥側部分116g、図10(b)において矢印L2のシャフトよりも紙面下方側の部分)を有している。好ましくは、切欠き部116は、いずれの方向において入口116eから切欠き部116を見ても隠れる部分(図10(b)の矢印L1のシャフトよりも紙面下方側の部分)を有している。
入口側部分116fおよび奥側部分116gそれぞれは、例えば、直線状に延びている。入口側部分116fの幅および奥側部分116gの幅それぞれは、これらの長さ方向に関して、一定(図示の例)であってもよいし、変化してもよい。また、入口側部分116fの幅および奥側部分116gの幅は、互いに同一(図示の例)であってもよいし、互いに異なっていてもよい。入口側部分116fおよび奥側部分116gの長さは適宜に設定されてよいが、例えは、後者は前者よりも長い。例えば、L字の凹側の内面の長さで両者の長さを測定したときに、奥側部分116gの長さは、入口側部分116fの長さの1.5倍以上10倍以下である。
ここで、水晶片110を平面視したときの水晶片110の大きさについて説明する。基部111は、X軸に平行な向きの長さが、250〜350μmとなっており、Y´軸に平行な向きの長さが、80〜150μmとなっている。振動部112は、Y´軸に平行な向きの長さが、430〜550μmとなっており、X軸に平行な向きの長さが、20〜55μmとなっている。ここで、振動部112のY´軸に平行な長さとは、錘部117を含まない長さのことである。保持部113は、X軸に平行な向きの長さが、380〜600μmとなっており、Y´軸に平行な向きの長さが、35〜60μmとなっている。支持部114は、X軸に平行な向きの長さが、50〜120μmとなっており、Y´軸に平行な向きの長さが、745〜1010μmとなっている。切欠き部116の入口側部分116fは、Y´軸に平行な向きの長さが5〜20μmとなっており、X軸に平行な向きの長さ(L字の外側の内面において入口116eから角部までの長さ)が15〜35μmとなっている。切欠き部116の奥側部分116gは、X軸に平行な向きの長さが5〜20μmとなっており、Y´軸に平行な向きの長さ(ただし、L字の内側の内面において角部から奥までの長さ)が25〜285μmとなっている。なお、水晶片110のZ´軸に平行な長さ、つまり、水晶片110の上下方向の厚みは、50〜200μmとなっている。
なお、切欠き部116は、その幅が比較的狭いことおよび/または後述するようにアンダーカットを利用してエッチングされることから、残渣が比較的多い。例えば、切欠き部116は、その奥側かつ設計上の全長の半分程度が残渣によって凹溝状となることがある。上述した寸法の一例は、設計上のものである。
(金属パターンの構成)
金属パターン120は、水晶片110に電圧を印加するためのものであり、水晶片110に設けられている。金属パターン120は、図1〜図5に示したように、励振電極部121(121a、121b)、端子部122(122a、122b)、配線部123(123a、123b)および周波数調整部124からなる。
励振電極部121(121a、121b)は、図1および図3に示したように、振動部112(112a、112b)の上面、下面および側面に設けられており、振動部112を屈曲振動させるためのものである。励振電極部121は、例えば、クロム、チタン、ニクロム、ニッケルのいずれか一つから選択された金属層上に、金、銀、パラジウム、金を主成分とする金属、銀を主成分とする金属、パラジウムを主成分とする金属のいずれか一つから選択された金属層が積層された積層構造となっている。励振電極部121は、一対となっており、第一励振電極部121aおよび第二励振電極部121bから構成されている。
第一励振電極部121aは、図3に示したように、第一振動部112aの両主面および第二振動部112bのY´軸かつZ´軸に平行な側面に設けられている。このとき、第一振動部112aの両主面に設けられている第一励振電極部121aは、互いに対向する位置に設けられている。また、第二振動部112bにおけるY´軸およびZ´軸に平行な側面に設けられている第一励振電極部121aは、互いに対向する位置に設けられている。
第二励振電極部121bは、図3に示したように、第二振動部112bの両主面および第一振動部112aのY´軸かつZ´軸に平行な側面に設けられている。このとき、第一振動部112aのY´軸およびZ´軸に平行な側面に設けられている第二励振電極部121bは、互いに対向する位置に設けられている。また、第二振動部112bにおける両主面に設けられている第二励振電極部121bは、互いに対向する位置に設けられている。
端子部122(122a、122b)は、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100の外部から励振電極部121に電圧を印加させるためのものである。従って、端子部122は、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100を水晶デバイスに用いる場合、この端子部122が、基板部130a(図6および図7参照)の上面に設けられている接続パッド131(図6および図7参照)と導電性接着剤134(図7参照)により電気的に接着される。端子部122は、例えば、クロム、チタン、ニクロム、ニッケルのいずれか一つから選択された金属層上に、金、銀、パラジウム、金を主成分とする金属、銀を主成分とする金属、パラジウムを主成分とする金属のいずれか一つから選択された金属層が積層された積層構造となっている。端子部122は、一対となっており、第一端子部122aと第二端子部122bとから構成されている。
第一端子部122aは、図3に示したように、支持部114の下面であって、切欠き部116より先端側に設けられている。このとき、第一端子部122aは、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100の下面を平面視して、保持部113側の錘部117の端部より、保持部113側に位置している。第一端子部122aは、第一配線部123aを介して第一励振電極部121aと電気的に接続されている。
第二端子部122bは、図3に示したように、保持部113および支持部114(その少なくとも一方)の下面であって、両者が連結される側の端部に設けられている。従って、第二端子部122bは、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100の下面を平面視したとき、保持部113の+X側の端部から支持部114の保持部113側の端部にかけて位置している。第二端子部122bは、第二配線部123bを介して第二励振電極部121bと電気的に接続されている。
別の観点では、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100の下面を平面視したとき、切欠き部116は、第一端子部122aと第二端子部122bとの間の支持部114の側面に形成されているといえる。
配線部123(123a、123b)は、励振電極部121と端子部122との間、および、対向する励振電極部121間を電気的に接続させるためのものである。配線部123は、例えば、クロム、チタン、ニクロム、ニッケルのいずれか一つから選択された金属層上に、金、銀、パラジウム、金を主成分とする金属、銀を主成分とする金属、パラジウムを主成分とする金属のいずれか一つから選択された金属層が積層された積層構造となっている。配線部123は、第一配線部123aおよび第二配線部123bから構成されている。
第一配線部123aは、図1、図3および図4に示したように、第一励振電極部121aと第一端子部122aとの間、および、第一励振電極部121a間を電気的に接続されている。図3に示したように、支持部114の側面において、第一配線部123aの一部は、切欠き部116の第一端子部122a側の縁部から第一端子部122aにかけて設けられている。また、第一配線部123aの一部は、第一実施形態に係る水晶素子100の上面を平面視して、支持部114の中央部に支持部114が延出する方向と平行となるように設けられている。また、第一配線部123aの一部は、第二振動部112bのY´軸およびZ´軸に平行な側面に設けられている第一励振電極部121a間を電気的に接続させるために、第二振動部112bの下面の、第二励振電極部121bと錘部117との間に設けられている。また、第一配線部123aの一部は、基部111の両主面および保持部113の両主面に設けられている。
第二配線部123bは、図1、図3および図4に示したように、第二励振電極部121bと第二端子部122bとの間、および、第二励振電極部121b間を電気的に接続させている。第二配線部123bの一部は、図3に示したように、支持部114の側面において、切欠き部116の保持部113側の縁部から支持部114の保持部113側の端部にかけて設けられている。また、第二配線部123bの一部は、第一振動部112aのY´軸およびZ´軸に平行な側面に設けられている第二励振電極部121b間を電気的に接続させるために、第一振動部112aの下面の、第一励振電極部121aと錘部117との間に設けられている。また、第二配線部123bの一部は、基部111の両主面および保持部113の両主面に設けられている。
切欠き部116の内壁面には、第一配線部123aおよび第二配線部123bは形成されていない。従って、支持部114の側面において、第一配線部123aおよび第二配線部123bは、切欠き部116によって分離されている。
周波数調整部124は、周波数調整部124を構成する金属の量を増減させることで、振動部112で生じる屈曲振動の周波数を微調整するためのものである。周波数調整部124は、図1および図3に示したように、錘部117に設けられており、例えば、錘部117の上面であって、錘部117の先端側に設けられている。周波数調整部124は、例えば、クロム、チタン、ニクロム、ニッケルのいずれか一つから選択された金属層上に、金、銀、パラジウム、金を主成分とする金属、銀を主成分とする金属、パラジウムを主成分とする金属のいずれか一つから選択された金属層が積層された積層構造となっている。なお、周波数調整部124が積層構造になっている場合について説明しているが、周波数調整部124は、単層構造となっていてもよく、例えば、クロム、チタン、アルミニウム、金、銀、金を主成分とする金属層、銀を主成分とする金属層のいずれか一つから選択された金属層であってもよい。
(音叉型水晶素子の動作)
第一実施形態に係る音叉型水晶素子100の動作原理について説明する。第一実施形態に係る音叉型水晶素子100の端子部122(122a、122b)に電圧を印加すると、配線部123を介して、励振電極部121に電荷が蓄積される。このとき、第一励振電極部121aと第二励振電極部121bとには、反対の極性の電荷が蓄積され、+の電荷が蓄積されている励振電極部121側から−の電荷が蓄積されている励振電極部121側へ電界が生じ、逆圧電効果により、振動部112に収縮(歪み)が生じ振動部112が屈曲(変形)する。その結果、振動部112は、元の状態に戻ろうとするため、圧電効果により最初に蓄積された電荷と反対の極性の電荷が励振電極部121に蓄積される。例えば、最初に、第一励振電極部121aに+の電荷が蓄積され、第二励振電極部121bに−の電荷が蓄積された場合、逆圧電効果および圧電効果により第一励振電極部121aには−の電荷が蓄積され、第二励振電極部121bには+の電荷が蓄積されることとなる。つまり、端子部122に交番電圧を印加することで、励振電極部121に交番電圧が印加されることとなり、逆圧電効果および圧電効果により、振動部112が屈曲振動することとなる。従って、端子部122に交番電圧を印加すると、励振電極部121に異なる電荷が交互に蓄積されて振動部112が交互に屈曲することとなり、振動部112を屈曲振動させることができる。この振動部112で生じる屈曲振動の周波数は、振動部112の先端部に設けられている錘部117と錘部117に設けられている周波数調整部124により調整することが可能となっている。
(第一実施形態に係る音叉型水晶素子100の製造方法)
次に、第一実施形態に係る音叉型水晶素子100の製造方法について、図8(a)〜図10(b)を適宜に参照しつつ説明する。図8(a)〜図10(a)は、図5のVIII−VIII線に対応する断面図であり、製造工程は、図8(a)から図10(a)への順で進行する。なお、これらの図では、製造工程の進行に伴って部材の形状等が変化しても、同一の符号を用いることがある。
第一実施形態に係る音叉型水晶素子100の製造方法は、水晶ウエハ形成工程、耐食膜形成工程、第一レジスト膜形成工程、第一露光現像工程、第一耐食膜エッチング工程、第二レジスト膜形成工程、第二露光現像工程、水晶エッチング工程、第二耐食膜エッチング工程、成膜工程、第二レジスト除去工程、耐食膜除去工程、周波数調整部形成工程および周波数調整工程からなる。
水晶ウエハ形成工程は、互いに直交しているX軸とY軸とZ軸とからなる結晶軸を有した水晶部材から水晶ウエハを形成する工程である。水晶ウエハ形成工程では、ランバード人工水晶が所定のカットアングルで切断された時、上下方向の厚みが所定の厚みとなるまで研磨される。水晶ウエハ形成工程後の水晶ウエハは、対向している二面が、X軸およびY軸に平行な面を、X軸を中心に−5°〜5°回転させた面と平行となっている。
耐食膜形成工程は、水晶ウエハの両主面に耐食膜を設ける工程である。ここで、水晶ウエハの主面とは、X軸およびY軸に平行な面を、X軸を中心に−5°〜5°回転させた面と平行な面とする。耐食膜形成工程では、水晶エッチング工程でエッチングされない材質からなる金属膜が、スパッタリング技術または蒸着技術により、水晶ウエハの両主面に被着される。耐食膜は、例えば、クロムが用いられる。なお、ここで、耐食膜の一例としてクロムを挙げているが、耐食膜は、クロム、チタン、ニクロム、ニッケルのいずれか一つから選択された金属層上に、金、銀、パラジウム、金を主成分とする金属、銀を主成分とする金属、パラジウムを主成分とする金属のいずれか一つから選択された金属層が積層された積層構造とされてもよい。
第一レジスト膜形成工程は、耐食膜が形成された水晶ウエハに第一レジストを塗布する工程である。第一露光現像工程では、第一レジストが塗付された水晶ウエハを所定のパターンに露光、現像する工程である。第一露光現像工程後の水晶ウエハを平面視すると、溝部118となる部分および水晶片110の外周縁に沿って耐食膜が露出している状態となっている。第一耐食膜エッチング工程は、第一露光現像工程後の水晶ウエハであって、露出している耐食膜をエッチングする工程である。従って、第一耐食膜エッチング工程後の水晶ウエハを平面視すると、溝部118となる部分および水晶片110の外周縁に沿って水晶ウエハが露出している状態となっている。このとき、第一レジストも除去された状態となっている。
図8(a)は、第一耐食膜エッチング工程後に第一レジストを除去した状態を示している。上述した水晶片110の外周縁には、例えば、切欠き部116の縁部も含まれる。従って、耐食膜53は、切欠き部116となる領域においてエッチングされており、当該領域においては、水晶ウエハ51が露出している。
第二レジスト膜形成工程は、第一耐食膜エッチング工程後の水晶ウエハに第二レジストを塗布する工程である。第二露光現像工程は、水晶ウエハに塗付された第二レジストを所定のパターンに露光、現像する工程である。第二露光現像工程後の水晶ウエハを平面視すると、励振電極部121、端子部122および配線部123となる部分は耐食膜が露出した状態となっている。
図8(b)は、第二露光現像工程後の水晶ウエハ51を示している。第二レジスト55は、第一配線部123aが設けられる領域においてエッチングされており、当該領域においては耐食膜53が露出している。一方、第二レジスト55は、切欠き部116が形成される領域においてはエッチングされておらず、当該領域において水晶ウエハ51を覆っている。
水晶エッチング工程は、第二露光現像工程後の水晶ウエハを所定のエッチング溶液に浸漬させて、露出している水晶ウエハをエッチングする工程である。これにより、水晶ウエハは、耐食膜および第二レジストから露出していた部分がエッチングされ、水晶ウエハから複数の水晶片110の外形(側面等)が形成される。ただし、この段階では、複数の水晶片110は、枠状の捨て代によって連結されてウエハ状態を維持していてよい。エッチングによって形成された水晶片110の側面は、水晶片110の主面とは異なり、耐食膜および第二レジストに覆われずに露出した状態となっている。
図8(c)は、水晶エッチング工程後の水晶ウエハ(水晶片110)を示している。支持部114は、その側面が露出した状態となっている。切欠き部116が設けられる領域においては、第二レジスト55が位置しているものの耐食膜53が位置していない。この領域では、第二レジスト55の水晶ウエハ51に対する密着性が耐食膜53および第二レジスト55の積層構造の水晶ウエハ51に対する密着性に比較して低いこと、また、水晶エッチングのエッチング溶液が第二レジスト55を透過する特性を有していることから、水晶ウエハ51は、切欠き部116の入口116eとなる位置から切欠き部116の奥側となる位置へエッチングが進む。このようにして、切欠き部116は、支持部114の側面等の水晶片110の基本的形状の形成と同時に形成される。
第二耐食膜エッチング工程は、露出している耐食膜をエッチングし除去する工程である。第二露光現像工程の水晶ウエハを平面視すると励振電極部121、端子部122および配線部123となる部分の耐食膜が露出した状態となっているため、第二耐食膜エッチング工程後の水晶ウエハを平面視すると、励振電極部121、端子部122および配線部123となる部分の水晶が露出した状態となっている。
図9(a)は、第二耐食膜エッチング工程後の水晶ウエハ(水晶片110)を示している。耐食膜53は、第一配線部123aが設けられる領域においてエッチングされている。なお、切欠き部116は、依然として第二レジスト55に覆われている。
成膜工程は、第二耐食膜エッチング工程後の水晶ウエハに、金属膜を成膜する工程である。成膜工程では、スパッタリング技術または蒸着技術が用いられ、クロム、チタン、ニクロム、ニッケルのいずれか一つから選択された金属層上に、金、銀、パラジウム、金を主成分とする金属、銀を主成分とする金属、パラジウムを主成分とする金属のいずれか一つから選択された金属層が積層された積層構造の金属膜が、水晶ウエハの露出している部分に被着される。
図9(b)は、成膜工程後の水晶ウエハ(水晶片110)を示している。金属膜57は、基本的に水晶片110の全面に対して、直接的にまたは第二レジスト55を介して間接的に成膜される。図では、金属膜57は、金属パターン120が形成される領域である、支持部114の側面および上面の一部に直接的に成膜されており、それ以外の領域においては、第二レジスト55上に成膜されている。切欠き部116は、第二レジスト55によって覆われているから、その内壁面に金属膜57は成膜されていない。
第二レジスト除去工程は、水晶ウエハの第二レジストを除去する工程である。例えば、第二レジストにおけるオーバーハングによって金属膜57を不連続にした部分(不図示)から、溶剤によって第二レジストを溶解させる。
図9(c)は、第二レジスト除去工程後の水晶ウエハ(水晶片110)を示している。第二レジスト55を除去することによって、金属膜57のうち第二レジスト55上の部分も除去される。これにより、金属膜57がパターニングされ、配線部123等を含む金属パターン120が形成される。すなわち、図示の例では、リフトオフ法によって金属パターン120が形成される。なお、切欠き部116上においても第二レジスト55は除去される。
耐食膜除去工程は、耐食膜を除去する工程である。例えば、金属パターン120(少なくともその表面を構成する金属層)の材料に対するエッチング速度が相対的に遅く、耐食膜の材料に対するエッチング速度が相対的に速いエッチング液によってエッチングを行う。その結果、図10(a)に示すように、水晶素子100が作製される。
周波数調整部形成工程は、錘部117の上面に周波数調整部124を形成する工程である。周波数調整部形成工程では、例えば、スパッタリング技術または蒸着技術が用いられる。周波数調整工程は、周波数調整部124の質量を増減させて、所望の周波数に微調整をする工程である。周波数調整工程では、例えば、レーザー等が用いられる。
このように、周波数調整部124を、励振電極部121、端子部122および配線部123と別の工程で形成することで、周波数調整部124を形成する前に振動部112で生じる屈曲振動の周波数を測定した後に、周波数調整部124の上下方向の膜厚を決定することができる。従って、周波数調整部形成工程により、所望の周波数に対して大雑把に周波数を調整することができ、周波数調整工程により、所望の周波数になるように微調整することができる。このため、二段階に分けて所望の周波数に対して調整することとなり、周波数調整工程でのみ調整した場合と比較して、調整にかかる時間を短縮することができ、生産性を向上させることが可能となる。
図10(b)は、切欠き部116の平面図である。成膜工程(図9(b))においては、既に述べたように、切欠き部116は上下面が第二レジスト55によって覆われていることから、基本的に金属膜57は成膜されない。しかし、入口116eが支持部114の側面にて開口していることから、金属膜57となる材料が入口116eから切欠き部116内へ入り込む。このとき、例えば、切欠き部116において入口116eからの奥行きが十分に確保されていることによって、金属膜57となる材料は、切欠き部116の入口116e側の一部にのみ成膜される。従って、第一配線部123aおよび第二配線部123bは短絡せず、両者は分離される。
なお、第二レジスト55の成膜前に、耐食膜53または耐食膜53と第一レジストとの積層構造を介して水晶エッチング工程を行い、水晶片110の基本的形状および切欠き部116を形成してもよい。すなわち、アンダーカットでない通常のエッチングによって切欠き部116を形成してもよい。
また、このような場合、水晶エッチングの後、耐食膜53を除去し、第二レジスト膜形成工程、第二露光現像工程、成膜工程および第二レジスト除去工程を行って金属パターン120を形成してもよい。この場合の第二レジスト55のパターンは、先に述べた耐食膜53上に設けられる第二レジスト55のパターンと同一であってもよいし、異なっていてもよい。
先に述べたパターンと同一の場合、切欠き部116は、先に述べた方法と同様に、第一配線部123aおよび第二配線部123bの分離に寄与する。先に述べたパターンと異なる場合、例えば、第二レジスト55が、Y´軸方向における切欠き部116の入口116eを含む範囲において、支持部114と第一振動部112aとの間に架け渡され、これにより支持部114の側面において第一配線部123aおよび第二配線部123bがパターニングされて分離されてもよい。すなわち、切欠き部116は、第一配線部123aおよび第二配線部123bの分離に直接的に寄与するのではなく、短絡のおそれ低減に寄与してもよい。
(水晶デバイス)
第一実施形態に係る音叉型水晶素子100を用いた水晶デバイス151について図6および図7を用いて、説明する。水晶デバイス151は、例えば、水晶振動子である。水晶デバイス151では、音叉型水晶素子100と、この音叉型水晶素子100が実装されている基板部130aと、この基板部130aと一体となっている枠部130bと接合され音叉型水晶素子100を気密封止している蓋体140と、基板部130aに音叉型水晶素子100を実装するための導電性接着剤134と、枠部130bと蓋体140とを接合するための接合部材141と、から主に構成されている。
基板部130aは、音叉型水晶素子100を実装するためのものである。基板部130aは、例えば、平板状の矩形形状に形成されており、一方の主面に、一対の接続パッド131および枕部133が設けられており、他方の主面に、複数の外部端子132が設けられている。また、基板部130aには、一対の接続パッド131と外部端子132とを電気的に接続するための配線パターン(図示せず)が設けられている。基板部130aは、例えば、アルミナセラミックス、または、ガラス―セラミックス等のセラミック材料である絶縁層からなっている。基板部130aは、絶縁層を一層で用いたものであっても、絶縁層を複数積層させたものであってもよい。
ここで、図面に合わせて、音叉型水晶素子100を向く基板部130aの面を、基板部130aの上面とし、基板部130aの上面と反対側を向く基板部130aの面を基板部130aの下面とする。また、基板部130aの上面および基板部130aの下面を、基板部130aの主面とする。
枠部130bは、基板部130aの上面側に音叉型水晶素子100を収容する空間を形成するためのものである。また、枠部130bは、基板部130aの上面の縁部に沿って枠状に設けられており、基板部130aと一体的に形成されている。枠部130bは、例えば、アルミナセラミックス、または、ガラス―セラミックス等のセラミック材料である絶縁層からなっている。基板部130aは、絶縁層を一層で用いたものであっても、絶縁層を複数積層させたものであってもよい。
ここで、図面に合わせて、基板部130a側に接している枠部130bの面を枠部130bの下面とし、枠部130bの下面と反対側を向く枠部130bの面を枠部130bの上面とする。
接続パッド131は、音叉型水晶素子100を基板部130aに実装するためのものである。接続パッド131は、枠部130b内の基板部130aの上面に設けられており、例えば、基板部130aの上面を平面視したとき、基板部130aの長辺に沿って二つ並んで配置されている。
外部端子132は、電子機器等のマザーボード上に実装するためのものであり、マザーボードに実装する際、マザーボード上にある所定の実装パッド(図示せず)に半田等により、接続固着される。外部端子132は、例えば、四つ設けられており、基板部130aの下面の四隅に一つずつ設けられている。所定の二つの外部端子132は、基板部130aの配線パターン(図示せず)によって接続パッド131と電気的に接続されている。基板部130aの大きさは、例えば、基板部130aの上面を平面視して、長辺の寸法が、0.65〜5.0mmとなっており、短辺の寸法が、0.4〜3.2mmとなっている。
枕部133は、枠部130bの枠内の基板部130aの上面に設けられており、基板部130aの上面を平面視して、一方の接続パッド131と基板部130aの一方の短辺に沿って並んで配置されている。枕部133は、音叉型水晶素子100を基板部130aの上面に実装する際に、保持部113の支持部114とは反対側の端部、つまり、保持部113の−X側の端部が接触するように配置されている。このように枕部133を設けることで、支持部114および保持部113の下面に設けられている端子部122と接続パッド131とを接合しても、音叉型水晶素子100、具体的には、振動部112が基板部130aの上面と接触するおそれを低減することができる。
ここで、基板部130aおよび枠部130bを一体的に形成する方法について説明する。基板部130aおよび枠部130bがアルミナセラミックスからなる場合、まず、所定のセラミック材料粉末に適当な有機溶剤等を添加し混合して得た複数のセラミックグリーンシートを準備する。また、セラミックグリーンシートの表面、または、セラミックグリーンシートに打ち抜きにより設けていた貫通孔内に、従来周知のスクリーン印刷法を用いて導体パターンとなる位置に所定の導電ペーストを塗布する。基板部130aとなるセラミックグリーンシートおよび枠部130bとなるセラミックグリーンシートを積層させ、プレス加工し、高温で焼成する。焼成後、導体パターンとなる所定の部位に、ニッケルメッキ、または、金メッキを施すことにより、基板部130aおよび枠部130bが一体的に形成される。また、導電性ペーストには、例えば、タングステン、モリブデン、銅、銀またはパラジウム等の金属粉末の焼結体等から構成されている。
導電性接着剤134は、音叉型水晶素子100を基板部130aの上面に実装するためのものである。導電性接着剤134は、樹脂バインダーの中に導電フィラーとしての導電性粉末が含有されているものである。導電性粉末としては、アルミニウム、モリブデン、タングステン、白金、パラジウム、銀、チタン、ニッケルまたはニッケル鉄のいずれか、或いは、これらを組み合わせたものを含むものが用いられる。また、バインダーとしては、例えば、シリコーン系の樹脂、エポキシ系の樹脂、ポリイミド系の樹脂またはビスマレイミド系の樹脂が用いられる。
導電性接着剤134は、接続パッド131上に塗布され、接続パッド131と音叉型水晶素子100の端子部122とを電気的に接着させている。導電性接着剤134は、例えば、加熱硬化されたとき、樹脂バインダーが収縮し、導電フィラー同士がより近接する特性を有しているので、加熱硬化することで、接続パッド131と音叉型水晶素子100の端子部122とを接着しつつ、電気的に接続させることができる。このため、導電性接着剤134が加熱硬化するとき、導電性接着剤134が収縮する。従って、導電性接着剤134が加熱硬化するとき、導電性接着剤134が接着している端子部122には、それぞれから導電性接着剤134に向かう向きに応力が加わることとなる。
蓋体140は、枠部130bの上面と接合部材141により接合されて、基板部130aの上面に実装されている音叉型水晶素子100を気密封止するためのものである。蓋体140は、例えば、鉄、ニッケルまたはコバルトの少なくともいずれかを含む合金からなる。このような蓋体140は、真空状態、または、窒素ガスなどが充満している所定の雰囲気中で、蓋体140および枠部130bの上面と蓋体140の下面との間に設けられている接合部材141に熱が加えられることで、接合部材141が溶融され、蓋体140の下面と枠部130bの上面とが溶融接合される。
接合部材141は、蓋体140の下面と枠部130bの上面との間に設けられており、蓋体140と枠部130bとを接合するためのものである。接合部材141は、枠部130bの上面に相対する蓋体140の下面に設けられている。このとき、枠部130bの上面には、特に図示しないが、封止用導体パターンが設けられており、接合部材141は、蓋体140の下面の外縁に沿って環状に設けられている。接合部材141は、例えば、金錫または銀ロウによって設けられている。金錫の場合には、その厚みは、10〜40μmであり、成分比率は、例えば、金が78〜82%、錫が18〜22%である。銀ロウの場合は、その厚みは、10〜20μmであり、成分比率は、例えば、銀が72〜85%、銅が15〜28%である。
接合部材141は、例えば、ガラスの場合には、300〜400℃で溶融するガラスであり、例えば、バナジウムを含有した低融点ガラス、または、酸化鉛系ガラスから構成されている。酸化鉛系ガラスの組成は、酸化鉛、フッ化鉛、二酸化チタン、酸化ニオブ、酸化ホウ素、酸化亜鉛、酸化第二鉄、酸化銅および酸化カルシウムから構成されている。
次に、接合部材141を用いて、蓋体140と枠部130bとを接合する方法について説明する。接合部材141の原料となるガラスは、バインダーと溶剤とが加えられたペースト状であり、溶融された後、固化されることで他の部材と接着する。接合部材141は、例えば、ガラスフリットペーストをスクリーン印刷法で枠部130bの上面、または、蓋体140の下面の外周縁に環状に塗布され乾燥されることで設けられている。
以上のとおり、本実施形態では、水晶片110は、基部111と、基部111から互いに並列に延びている一対の振動部112と、基部111および一対の振動部112に対して一対の振動部112の並び方向(X軸方向)の一方側(+X側)に位置し、一対の振動部112に対して並列に延びている支持部114と、基部111に対して一対の振動部112とは反対側に位置し、基部111と支持部114とを連結している保持部113と、を有している。X軸方向および支持部114が延びる方向(Y´軸方向)に直交する方向(Z´軸方向)に見て、支持部114の側面に切欠き部116が形成されている。
従って、例えば、切欠き部116が設けられていない支持部114の1次以上の振動モードの固有振動数と、振動部112の2次以上の振動モードの固有振動数とが近づき、スプリアスが大きくなってしまうような場合において、切欠き部116を設けることによって支持部114の曲げ剛性を変えて固有振動数をずらし、スプリアスを低減することができる。また、例えば、図10(b)を参照して説明したように、切欠き部116は、支持部114の同一側面に第一配線部123aおよび第二配線部123bが設けられる場合において、これらの短絡のおそれを低減することにも寄与する。
また、本実施形態では、切欠き部116は、その入口116eから、支持部114の側面のうち入口116eの周囲の領域に直交する方向に切欠き部116を見て(図10(b)の矢印L2参照)、隠れる部分(図10(b)において矢印L2のシャフトよりも奥側の部分、奥側部分116g)を有している。
従って、例えば、図9(b)を参照して説明した成膜工程において、入口116eから金属膜57となる材料が進入しても、この隠れる部分には金属膜57が成膜されにくい。特に、切欠き部116において、矢印L2に平行な方向に対して、矢印L2の指す方向へ面するように交差(例えば直交)する内面(図10(b)では奥側部分116gの紙面右側の内面)には、金属膜57が成膜されにくい。従って、第一配線部123aおよび第二配線部123bが短絡するおそれを低減する効果が向上する。
さらに、本実施形態では、切欠き部116は、その入口116eから、いずれの方向に見ても隠れる部分(図10(b)において矢印L1のシャフトよりも奥側の部分)を有している。この場合には、第一配線部123aおよび第二配線部123bが短絡するおそれを低減する効果がさらに向上する。
また、本実施形態では、支持部114の側面のうち入口116eの周囲の領域は、支持部114が延びている方向に平行である。切欠き部116は、入口116eから、支持部114が延びている方向に交差(例えば直交)するように延びている入口側部分116fと、入口側部分116fの入口116eとは反対側から、支持部114が延びている方向に沿うように(例えば平行に)延びている奥側部分116gと、を有している。
従って、例えば、支持部114において切欠き部116よりも先端側と根元側とを接続する部分(本実施形態では一対の切欠き部116の間の部分)の幅(X軸方向)が狭くなることを抑制しつつ、切欠き部116の長さ(入口116eから最奥まで)を確保しやすい。その結果、例えば、支持部114の強度が確保されつつ、第一配線部123aおよび第二配線部123bの分離が確実になされる。
支持部114の、切欠き部116(第一切欠き部116a)が開口する側面は、支持部114の根元から先端まで一対の振動部112に平行に直線状に延び、かつ一対の振動部112の並び方向において一対の振動部112とは反対側に面する面である。
すなわち、後述する第三実施形態(図11(b))との比較から理解されるように、支持部114は、一対の振動部112とは反対側(+X側)に突出するような部分を有していない。従って、例えば、水晶片110は、X軸方向において小型化される。その結果、例えば、水晶デバイス151を小型化できる。また、例えば、水晶ウエハ51から水晶片110を多数個取りするときに、水晶片110同士の距離を短くし、水晶ウエハ51から作製される水晶片110の数を多くして、生産性を向上させることができる。
また、本実施形態に係る音叉型水晶素子100は、上記のような音叉型水晶片110と、水晶片110の表面に設けられた金属パターン120と、を有している。金属パターン120は、一対の振動部112それぞれに位置している第一励振電極部121aと、一対の振動部112それぞれに位置している第二励振電極部121bと、支持部114における基部111よりも先端側部分に位置する第一端子部122aと、支持部114における第一端子部122aよりも根元側部分および保持部113のX軸方向の支持部114側部分の少なくとも一方に位置する第二端子部122bと、第一励振電極部121aと第一端子部122aとを接続する第一配線部123aと、第二励振電極部121bと第二端子部122bとを接続する第二配線部123bと、を有している。
従って、支持部114を用いた水晶素子100の実装が可能であり、また、その支持部114に切欠き部116が設けられていることによって、上述した、支持部114の固有振動数をずらすことが容易化される効果、第一配線部123aおよび第二配線部123bを分離することが容易化される効果が奏される。
また、本実施形態では、第一配線部123aは、支持部114の側面において切欠き部116の入口116eよりも支持部114の先端側に位置する部分を有している。第二配線部123bは、支持部114の側面において切欠き部116の入口116eよりも支持部114の根元側に位置する部分を有している。
すなわち、支持部114の一側面において、切欠き部116を挟んで第一配線部123aおよび第二配線部123bが位置している。従って、切欠き部116によって第一配線部123aおよび第二配線部123bを分離することが容易化される効果が奏される。
また、本実施形態に係る水晶デバイス151は、上記のような音叉型水晶素子100と、第一端子部122aおよび第二端子部122bが電気的に接着される一対の接続パッド131が設けられている基板部130aと、基板部130aの上面の縁部に沿って基板部130aと一体的に設けられている枠部130bと、枠部130bの上面に接合される蓋体140と、を有している。
従って、支持部114を用いた基板部130aおよび蓋体140に対する平行度の高い水晶素子100の実装が可能であり、また、その支持部114に切欠き部116が設けられていることによって、上述した、支持部114の固有振動数をずらすことが容易化される効果、第一配線部123aおよび第二配線部123bを分離することが容易化される効果が奏される。
また、本実施形態に係る音叉型水晶素子100の製造方法は、エッチングによって音叉型水晶片110を形成する水晶片形成ステップ(図8(a)〜図9(a))と、音叉型水晶片110にリフトオフ法によって金属パターン120を形成する金属パターン形成ステップ(図9(b)〜図10(a))と、を有している。水晶片形成ステップで形成された水晶片110は、上述した本実施形態の水晶片110の形状を有している。金属パターン形成ステップでは、リフトオフされる第二レジスト55によって切欠き部116が上下方向から覆われた状態で金属パターン120となる金属膜57を成膜する(図9(b))。
従って、切欠き部116には、基本的に金属膜57が成膜されない。その結果、切欠き部116は、金属パターン120(第一配線部123aおよび第二配線部123b)の分離に寄与する。
<第二〜第五実施形態>
以下、第二〜第五実施形態に係る水晶片について説明する。第二〜第五実施形態に係る水晶片は、切欠き部に係る形状(切欠き部の周囲の形状を含む)が第一実施形態と異なるのみであり、その他の形状については、第一実施形態と同様でよい。錘部117および溝部118の図示は省略するが、第一実施形態と同様に、これらが設けられてよい。第二〜第五実施形態に係る水晶片を用いた水晶素子、水晶デバイスおよび水晶素子の製造方法についても、切欠き部に係る形状を除いては、第一実施形態と同様でよい。
以下の説明では、第一実施形態の構成と同様または類似する構成については、第一実施形態に用いた符号を付し、また、説明を省略することがある。また、第一実施形態の構成と類似(対応)する構成について、第一実施形態と異なる符号を付した場合においても、特に断りがない事項については、第一実施形態と同様である。
<第二実施形態>
図11(a)は、第二実施形態に係る水晶片の支持部114の一部を示す平面図である。第二実施形態は、支持部114の側面に凸部115が設けられており、この凸部115に切欠き部116が設けられている点のみが第一実施形態と相違する。
具体的には、凸部115は、支持部114の側面のうち、一対の振動部112側(−X側)の側面から突出しており、第二切欠き部116bが凸部115に設けられている。第一切欠き部116aは、第一実施形態のものと同様である。
凸部115は、例えば、概ね直方体状に形成されており、支持部114と同等の厚み(Z´軸方向)を有している。凸部115の支持部114が延びる方向(Y´軸方向)における位置および長さは、例えば、少なくとも一部が第一切欠き部116aの少なくとも一部と重複するように設定されている。図示の例では、凸部115は、Y´軸方向において第一切欠き部116aの全体と重複し、さらには、第一切欠き部116aの配置範囲よりもY´軸方向の両側に延在している。
第二切欠き部116bは、例えば、平面視において、凸部115の支持部114が延びる方向(Y´軸方向)の一方側(図示の例では先端側)に面する側面を切り欠くように形成されている。第二切欠き部116bの形状は、例えば、一定の幅で直線状に延びるスリット状である。第二切欠き部116bは、例えば、その支持部114側(+X側)の内面が、支持部114の凸部115側(−X側)の側面から凸部115が突出する側(−X側)へ離れるように設けられている。ただし、第二切欠き部116bの支持部114側の内面は、支持部114の凸部115側の側面と面一であってもよい。第二切欠き部116bの長さは、例えば、第一切欠き部116aの長さと概ね同等とされている。
ここで、寸法の一例を挙げる。例えば、第一実施形態の説明において例示した寸法(例えば支持部114の幅(X軸方向)が50〜120μm、支持部114の長さ(Y´軸方向)が745〜1010μm)の場合において、凸部115の突出量(X軸方向)は20〜40μmであり、凸部115のY´軸方向における長さは74.5〜252.5μmである。この場合において、第二切欠き部116bの幅(X軸方向)は、5〜20μmであり、第二切欠き部116bの長さ(Y´軸方向)は、22.35〜227.25μmである。
以上のとおり、本実施形態では、第一実施形態と同様に、水晶片は、基部111、一対の振動部112、支持部114および保持部113を有しており、平面視において支持部114の側面(+X側)に第一切欠き部116aが形成されていることから、第一実施形態と同様の効果が奏される。例えば、周波数調整および配線部123の分離が容易化される。
また、本実施形態では、水晶片は、凸部115を有している。凸部115は、支持部114の第一切欠き部116aによって切り欠かれた側面とは反対側(−X側)の側面から突出しており、支持部114が延びている方向(Y´軸方向)において配置範囲の少なくとも一部が第一切欠き部116aの配置範囲の少なくとも一部と重複する。
従って、例えば、第一切欠き部116aが設けられると、支持部114において第一切欠き部116aよりも先端側と根元側とを接続する部分が細くなり、支持部114の強度が低下するが、凸部115によってその強度の低下が補償される。また、例えば、第一実施形態において説明した、第一切欠き部116aによって切り欠かれる側面(凸部115が設けられる側面とは反対側の側面)が、支持部114の根元から先端まで一対の振動部112に平行に直線状に延び、かつ一対の振動部112の並び方向(X軸方向)において一対の振動部112とは反対側に面する面であるという構成と組み合わされると、後述する第三実施形態(図11(b))との比較から理解されるように、水晶片を小型化しつつ支持部114の強度を向上できる。
また、本実施形態では、平面視において凸部115に切欠き部116(本実施形態では第二切欠き部116b)が形成されている。
従って、例えば、第一実施形態と同様に、支持部114の幅方向両側に第一切欠き部116aおよび第二切欠き部116bを形成しつつ、凸部115によって支持部114の強度を向上させることができる。第二切欠き部116bの支持部114側(+X側)の内面が支持部114の凸部115側(−X側)の側面と面一であったとしても、この−X側の側面を第二切欠き部116bが切り欠く場合(第一実施形態)に比較すれば、支持部114の強度の向上が図られる。この場合においては、凸部115の突出量を小さくできるから、凸部115が振動部112に当接するおそれが低減される。一方、第二切欠き部116bの+X側の内面が支持部114の−X側の側面から離れていれば、支持部114の強度補強の効果が高くなる。
<第三実施形態>
図11(b)は、第三実施形態に係る水晶片の支持部114の一部を示す平面図である。本実施形態は、支持部114の2つの側面に関して、凸部115が設けられている側面が第二実施形態とは逆であることを除いては、第二実施形態と同様である。
すなわち、本実施形態では、支持部114の2つの側面のうち一対の振動部112とは反対側(+X側)の側面に凸部115が設けられ、一対の振動部112側(−X側)の側面は第二切欠き部116bによって切り欠かれている。凸部115には、第一切欠き部116aが設けられている。凸部115および凸部115に設けられた切欠き部116(第一切欠き部116a)の形状および大きさも、X軸方向の向きが逆であることを除いて第二実施形態と同様である。
本実施形態でも、第一および第二実施形態と同様に、水晶片は、基部111、一対の振動部112、支持部114および保持部113を有しており、平面視において支持部114の側面(−X側)に第二切欠き部116bが形成されていることから、第一および第二実施形態と同様の効果が奏される。例えば、周波数調整および配線部123の分離が容易化される。
また、本実施形態でも、第二実施形態と同様に、水晶片は、凸部115を有している。凸部115は、支持部114の第二切欠き部116bによって切り欠かれた側面とは反対側(+X側)の側面から突出しており、支持部114が延びている方向(Y´軸方向)において配置範囲の少なくとも一部が第二切欠き部116bの配置範囲の少なくとも一部と重複する。従って、第二実施形態と同様の効果が奏される。例えば、支持部114において第二切欠き部116bが設けられることによって低下した強度を補償することができる。
本実施形態では、第二実施形態とは逆に、凸部115は、支持部114の一対の振動部112とは反対側の側面に設けられている。この場合、例えば、凸部115が振動部112に当接するおそれがないから、凸部115の配置位置および大きさに関して設計の自由度が高い。
<第四実施形態>
図11(c)は、第四実施形態に係る水晶片の支持部114の一部を示す平面図である。第四実施形態は、第一切欠き部116aおよび第二切欠き部116bが面対称となっていない点のみが第一実施形態と相違する。
例えば、第一切欠き部116aおよび第二切欠き部116bは、支持部114が延びる方向(Y´軸方向)において互いの位置がずれている。具体的には、例えば、両者はY´軸方向においてその配置範囲全体が重複していない。なお、ここでいう重複していないとは、両者の配置範囲がY´軸方向において互いに離間していることをいい、一方(図示の例では第二切欠き部116b)の+Y´側の端部と他方(図示の例では第一切欠き部116a)の−Y´側の端部とが一致する場合は除外されるものとする。第一切欠き部116aおよび第二切欠き部116bの形状および大きさは、互いに異なっていてもよいし、互いに同一(図示の例)であってもよい。
このように第一切欠き部116aおよび第二切欠き部116bがY´軸方向において重複していないことによって、支持部114においては、X軸方向において両者に挟まれる部分がなくなり、一の切欠き部116によってのみ幅(X軸方向)が狭くされる。その結果、例えば、第一実地形態に比較して、支持部114の強度が向上する。なお、第一切欠き部116aおよび第二切欠き部116bが一部同士を重複させている場合であっても、一方の全部に他方の一部または全部が重複している場合に比較すれば、幅が狭くなる部分の長さ(Y´軸方向)が短くなり、支持部114の強度が向上する。
<第五実施形態>
図12は、第五実施形態に係る水晶片210を示す平面図である。第五実施形態は、支持部214が、先端側部分214bに比較して幅(X軸方向)が広い幅広部214aを根元側に有しており、当該幅広部214aに切欠き部116(第二切欠き部116b)が設けられている点が第一実施形態と基本的に相違し、その他は概ね第一実施形態と同様である。
具体的には、幅広部214aは、先端側部分214bに比較して、一対の振動部112側(−X側)へ広がることによって幅が広くなっている。従って、支持部214の一対の振動部112側とは反対側(+X側)の側面は、第一実施形態と同様に、支持部214の根元から先端まで直線状に延びている。
なお、第二および第三実施形態の凸部115は、支持部114の先端側および根元側のいずれと比較しても一対の振動部112の並び方向(X軸方向)において突出しているものである。本願においては、凸部115は、支持部114とは別の部位であるものとし、凸部115の側面に設けられた切欠き部116は、支持部114の側面に設けられた切欠き部116に含まれないものとする。一方、幅広部214aは、支持部214の先端側部分214bに対してX軸方向に突出しているものの、幅広部214aよりも根元側には、幅広部214aと比較すべき支持部214の側面はない。本願においては、幅広部214aは、支持部214の一部であるものとし、幅広部214aの側面(+Y側、−X側または+X側に面する面)に設けられた切欠き部116は、支持部214の側面に設けられた切欠き部116の一種であるものとする。
幅広部214aにおいて、先端側部分214bを支持部214の根元側へ延長したと仮定した場合の支持部214の仮想形状に対して追加された部分の形状は、例えば、概ね直方体状である。当該追加部分の幅(X軸方向)および長さ(Y´軸方向、別の観点では幅広部214aの先端の位置)は、振動部112が振動したときに振動部112が幅広部214aに当接しない限り、適宜に設定されてよい。例えば、幅広部214aの先端の位置は、基部111の振動部112側(+Y´側)の側面よりも支持部214の根元側であってもよいし、支持部214の先端側であってもよい。第二切欠き部116bをY´軸方向に長く形成可能とする観点から、幅広部214aの先端の位置を基部111よりも支持部214の先端側としたり、幅広部214aの長さを支持部214の長さの半分以上としたりしてもよい。
第二切欠き部116bは、例えば、幅広部214aの側面のうち支持部214の先端側に面する面を切り欠くように形成されている。第二切欠き部116bの形状は、例えば、一定の幅で、支持部114が延びる方向(Y´軸方向)に直線状に延びるスリット状である。第二切欠き部116bは、例えば、一対の振動部112とは反対側(+X側)の内面が、先端側部分214bの一対の振動部112側(−X側)の側面から幅広部214aが広がる側(−X側)へ離れるように設けられている。ただし、第二切欠き部116bの+X側の内面は、先端側部分214bの−X側の側面と面一であってもよい。第二切欠き部116bの長さは、例えば、第一切欠き部116aの長さと概ね同等とされている。
ここで、寸法の一例を挙げる。例えば、第一実施形態の説明において例示した寸法(例えば支持部214(ここでは先端側部分214b)の幅(X軸方向)が50〜120μm、支持部214の長さ(Y´軸方向)が745〜1010μm)の場合において、幅広部214aの先端側部分214bに対する突出量(X軸方向)は20〜60μmであり、幅広部214aのY´軸方向における長さは300〜800μmである。先端側部分214bの長さは445〜710μmである。この場合において、第二切欠き部116bの幅(X軸方向)および長さ(Y´軸方向)は、第二実施形態の説明で例示した寸法と同様でよい。
支持部214において、幅広部214aが広がる側とは反対側(+X側)の側面に設けられた第一切欠き部116aの位置、形状および大きさは、幅広部214aの有無に関わらずに、第一実施形態と同様に設定されてもよいし、幅広部214aが設けられていることを考慮して設定されてもよい。例えば、第一切欠き部116aは、一部または全部が幅広部214aに設けられている。なお、第一切欠き部116aの全部が幅広部214aに設けられているという場合、第一切欠き部116aの+Y´側の端部が先端側部分214bの−Y´側の端部に一致する態様は除外されるものとする。
以上のとおり、本実施形態でも、第一〜第四実施形態と同様に、水晶片は、基部111、一対の振動部112、支持部214および保持部113を有しており、平面視において支持部214の側面に切欠き部116が形成されていることから、第一〜第四実施形態と同様の効果が奏される。例えば、周波数調整および配線部123の分離が容易化される。
また、本実施形態では、支持部214は、平面視において、保持部113と接続されているとともに支持部214の先端側部分214bに比較して一対の振動部112の並び方向(X軸方向)における一対の振動部112側(−X側)へ広がっている幅広部214aを有している。
従って、例えば、幅広部214aが設けられていることによって水晶片210を用いた水晶素子の特性が向上する。具体的には、支持部を全体的に幅広にすると、通常は、水晶素子の特性が向上する。これは、例えば、支持部の固有振動数が高くなり、振動部112の固有振動数との差が大きくなることからと考えられる。幅広部214aは、この支持部を全体的に幅広にすることに類似した効果を奏することができる。その一方で、幅広部214aは、根元側にのみ設けられていることから、支持部全体を幅広にする場合に比較して、振動している振動部112に当接するおそれが低い。別の観点では、支持部全体を幅広にする場合においては、支持部は、一対の振動部とは反対側(+X側)へ広くされなければならないが、本実施形態では、支持部214(幅広部214a)を一対の振動部112側へ広くすることができ、水晶片210全体としての小型化が図られる。
また、本実施形態では、切欠き部116(例えば第二切欠き部116b)は、幅広部214aに形成されている。
従って、例えば、先端側部分214bの側面に第二切欠き部116bを設けた場合(この場合も本願発明に含まれる)に比較して、支持部214において第二切欠き部116bよりも先端と根元とを接続する部分が細くなることが抑制される。その結果、支持部214の強度が向上する。第二切欠き部116bの一対の振動部112とは反対側(+X側)の内面が先端側部分214bの一対の振動部112側(−X側)の側面と面一であったとしても、第二切欠き部116bが先端側部分214bの側面を切り欠く場合に比較すれば、支持部214の強度の向上が図られる。第二切欠き部116bの+X側の内面が先端側部分214bの−X側の側面から離れていれば、支持部214の強度補強の効果が大きくなる。
また、幅広部214aが広がる側(一対の振動部112側)とは反対側(+X)側の側面を切り欠く第一切欠き部116aにおいて、Y´軸方向の配置範囲の少なくとも一部が幅広部214aのY´軸方向の配置範囲の少なくとも一部に重複する場合においては、第二実施形態において凸部115の少なくとも一部が第一切欠き部116aの配置範囲の少なくとも一部に重複する場合と同様に、第一切欠き部116aによって低下した支持部214の強度を幅広部214aによって補償することができる。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
実施形態では、一対の振動部および支持部は、その延びる方向がX軸に対して直交したが、X軸に対して傾斜していてもよい。また、一対の振動部および支持部の相対位置は、X軸の正負に関して実施形態とは逆であってもよい。一対の振動部および基部の相対位置は、Y´軸の正負に関して実施形態とは逆であってもよい。水晶片の上下面(端子部が設けられる面と設けられない面)は、Z′軸の正負に関して実施形態とは逆であってもよい。
第一〜第五実施形態は適宜に組み合わされてよい。例えば、第五実施形態では、+X側の第一切欠き部116aは、第一および第二実施形態と同様に、支持部の、根元から先端まで直線状に延びる側面に設けられたが、第三実施形態と同様に、凸部115に設けられてもよい。
2つの端子部は、支持部の先端側部分、支持部の根元側部分(保持部の支持部との連結部分)および保持部の支持部とは反対側部分(実施形態において枕部133に支持された部分)の3点のうちいずれか2点に設けられればよい。例えば、実施形態において、支持部114の根元側に設けられた第二端子部122bはそのままとし、支持部114の先端側に設けられた第一端子部122aは、保持部113の基部111から−X側に突出する部分(実施形態において枕部133に支持された部分)に設け、枕部133によって支持部114の先端側部分を支持してもよい。
実施形態では、保持部113は、基部111に対して−X側に突出する部分を有したが、当該部分は省略されてもよい。また、この突出する部分と、保持部の支持部と基部とを連結する部分とは、Y´軸方向の大きさが異なっていてもよい。保持部は、基部の幅(X軸方向)全体に亘って基部につながっている必要はなく、例えば、基部の−Y´側に面する側面の一部に連結されていてもよい。
切欠き部の形状は、直線状およびL字に限定されない。例えば、一部または全部に曲線状部分を含んでいてもよいし、拡幅するような部分を含んでいてもよい。
本実施形態の説明では、切欠き部の効果として、周波数の調整容易化および配線部の分離(短絡抑制)を挙げたが、この全ての効果が奏される必要はない。例えば、切欠き部は、配線部の分離のみに寄与し、支持部の固有振動数の好適化に寄与していなくてもよい。また、上記以外の効果、例えば、導電性接着剤134に生じる応力の緩和に寄与してもよい。
なお、本実施形態からは、切欠き部を要件としない、以下の発明を抽出可能である。
基部と、
前記基部から互いに並列に延びている一対の振動部と、
前記基部および前記一対の振動部に対して前記一対の振動部の並び方向の一方側に位置し、前記一対の振動部に対して並列に延びている支持部と、
前記基部に対して前記一対の振動部とは反対側に位置し、前記基部と前記支持部とを連結している保持部と、
を有しており、
前記支持部は、平面視において、前記保持部と接続されているとともに前記支持部の先端側部分に比較して前記並び方向における前記一対の振動部側へ広がっている幅広部を有している
音叉型水晶片。
また、上記水晶片を備えた音叉型水晶素子、当該音叉型水晶素子を備えた水晶デバイス。