JP6564848B2 - 膜厚測定装置および膜厚測定方法 - Google Patents
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Description
この発明は、膜厚測定装置および膜厚測定方法に関する。
従来、膜厚測定装置および膜厚測定方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
上記特許文献1では、透明膜の複数の点の反射光の情報を用いて、複数の点の膜厚を一括して推定する膜厚測定装置および膜厚測定方法が開示されている。この膜厚測定装置および膜厚測定方法では、複数の波長の単色光を含む光が測定対象である透明膜に照射される。そして、透明膜の表面からの反射光と裏面からの反射光とにより生成される干渉画像から複数の観測点が選択され、選択された観測点の干渉画像の輝度信号と、所定の干渉縞モデル(透明膜についての干渉縞モデル)とに基づいて、複数の点の膜厚が一括して推定されるように構成されている。
しかしながら、上記特許文献1に記載の膜厚測定装置および膜厚測定方法では、透明膜の複数の点の膜厚が一括して推定されるように構成されている一方、光の吸収係数が比較的大きい半透明膜についても複数の点の膜厚を一括して推定することが望まれている。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、半透明膜の複数の点の膜厚を一括して推定することが可能な膜厚測定装置および膜厚測定方法を提供することである。
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による膜厚測定装置は、測定対象である半透明膜に複数の波長の単色光を含む光を照射する光源と、光源から照射され、半透明膜の表面からの反射光と裏面からの反射光とにより生成される干渉画像を撮像する撮像部と、撮像部により撮像された干渉画像の観測点番号をi、単色光の波長の種類に対する番号をj、単色光の波長をλ(j)、半透明膜の膜屈折率をn、観測点において観測された輝度値をg(i,j)、半透明膜の表面からの反射光の強さをI1(j)、半透明膜における光の吸収がない場合の裏面からの反射光の強さをI20(j)、半透明膜の吸収係数をk(j)、半透明膜の膜厚をt(i)とした場合、以下の式(1)に基づいて、未知変数であるI1(j)、I20(j)、k(j)およびt(i)を推定する制御部とを備える。なお、本発明における「半透明膜」とは、光が透過することが可能である一方、膜を透過する光の強さが低下する(光の一部が吸収される)膜を意味し、特定の波長を吸収する着色透明膜や、顆粒等を含有して濁り(ヘイズ)が生じている膜が対象となる。
この第1の局面による膜厚測定装置では、上記の式(1)に基づいて、未知変数であるI1(j)、I20(j)、k(j)およびt(i)を推定する制御部を備えることによって、複数の観測点(i)に対するI1(j)、I20(j)、k(j)およびt(i)が一括して推定される。すなわち、透明膜の場合と異なり、半透明膜による光の吸収(e−2k(j)t(i)、e−k(j)t(i))を考慮した上記式(1)を用いることにより、半透明膜の複数の点の膜厚t(i)を一括して推定することができる。その結果、1点ごとに膜厚を推定する場合と比べて、高速に半透明膜の複数の点の膜厚t(i)を推定することができる。
上記第1の局面による膜厚測定装置において、好ましくは、制御部は、上記の式(1)に基づいて求められたI1(j)、I20(j)およびk(j)と、以下の式(2)とに基づいて、I1(j)、I20(j)およびk(j)を求める際に用いられた干渉画像の観測点以外の観測点の膜厚tを未知変数として推定するように構成されている。
このように構成すれば、上記の式(2)においては、未知変数の数が膜厚tの1つであるので、上記の式(1)(未知変数の数がI1(j)、I20(j)、k(j)およびt(i)の4つ)を用いる場合に比べて、より高速に膜厚tを推定することができる。
上記第1の局面による膜厚測定装置において、好ましくは、制御部は、未知変数に初期値を設定するとともに、未知変数を含む関数から算出される値に基づいて、目的関数を最小化する非線形計画法により、未知変数を推定するように構成されている。このように構成すれば、未知変数を含む関数が解析的に解けない場合(非線形関数の場合)でも、未知変数を推定することができる。
上記第1の局面による膜厚測定装置において、好ましくは、複数の単色光の波長の数をm、干渉画像の観測点の数をNとした場合、以下の式(3)に基づいて、未知変数であるI1(j)、I20(j)、k(j)およびt(i)を求めるための干渉画像の観測点の数Nを設定するように構成されている。
このように構成すれば、未知変数に対して最低限必要な干渉画像の観測点の数を、上記の式(3)に基づいて、容易に求めることができる。
上記第1の局面による膜厚測定装置において、好ましくは、複数の単色光は、青、緑および赤の3色の単色光を含む。このように構成すれば、3色の単色光の波長が各々異なるので、3色の単色光の干渉により生成される干渉色が膜厚によって変化する。これにより、観測点において観測された輝度値g(i,j)(または輝度値g(j))に基づいて、膜厚を推定することができる。
この発明の第2の局面による膜厚測定方法は、測定対象である半透明膜に複数の波長の単色光を含む光を照射する工程と、半透明膜の表面からの反射光と裏面からの反射光とにより生成される干渉画像を撮像する工程と、撮像された干渉画像の観測点番号をi、単色光の波長の種類に対する番号をj、単色光の波長をλ(j)、半透明膜の膜屈折率をn、観測点において観測された輝度値をg(i,j)、半透明膜の表面からの反射光の強さをI1(j)、半透明膜における光の吸収がない場合の裏面からの反射光の強さをI20(j)、半透明膜の吸収係数をk(j)、半透明膜の膜厚をt(i)とした場合、以下の式(4)に基づいて、未知変数であるI1(j)、I20(j)、k(j)およびt(i)を推定する工程とを備える。
この第2の局面による膜厚測定方法では、上記のように、上記の式(4)に基づいて、未知変数であるI1(j)、I20(j)、k(j)およびt(i)を推定する工程を備えることによって、複数の観測点(i)に対するI1(j)、I20(j)、k(j)およびt(i)が一括して推定される。すなわち、透明膜の場合と異なり、半透明膜による光の吸収(e−2k(j)t(i)、e−k(j)t(i))を考慮した上記式(4)
を用いることにより、半透明膜の複数の点の膜厚t(i)を一括して推定することができる。その結果、1点ごとに膜厚を推定する場合と比べて、高速に半透明膜の複数の点の膜厚t(i)を推定することができる。
を用いることにより、半透明膜の複数の点の膜厚t(i)を一括して推定することができる。その結果、1点ごとに膜厚を推定する場合と比べて、高速に半透明膜の複数の点の膜厚t(i)を推定することができる。
本発明によれば、上記のように、半透明膜の複数の点の膜厚を一括して推定することができる。
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
[本実施形態]
(膜厚測定装置の構成)
図1を参照して、本実施形態による膜厚測定装置100の構成について説明する。
(膜厚測定装置の構成)
図1を参照して、本実施形態による膜厚測定装置100の構成について説明する。
図1に示すように、膜厚測定装置100は、白色光源10と、3波長帯域フィルタ20と、顕微鏡30と、カラーカメラ40と、制御部50とを備えている。なお、白色光源10およびカラーカメラ40は、それぞれ、本発明の「光源」および「撮像部」の一例である。
白色光源10は、測定対象である半透明膜60に複数の波長の単色光を含む光を照射するように構成されている。本実施形態では、複数の単色光は、青(B)、緑(G)および赤(R)の3色の単色光を含む。なお、本実施形態における「半透明膜」とは、光が透過することが可能である一方、膜を透過する光の強さが低下する(光の一部が吸収される)膜を意味し、特定の波長を吸収する着色透明膜や、顆粒等を含有して濁り(ヘイズ)が生じている膜が対象となる。
3波長帯域フィルタ20は、白色光源10から照射された白色の光のうち、青(B)、緑(G)および赤(R)の3色の単色光を透過させるように構成されている。
顕微鏡30の内部には、ハーフミラー31が設けられている。そして、ハーフミラー31は、3波長帯域フィルタ20を透過した青(B)、緑(G)および赤(R)の3色の単色光を測定対象である半透明膜60に照射するように構成されている。
カラーカメラ40は、白色光源10から照射され、半透明膜60の表面からの反射光と裏面からの反射光とにより生成される干渉画像を撮像するように構成されている。また、カラーカメラ40は、たとえば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサや、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどにより構成されている。
ここで、本実施形態では、制御部50は、干渉画像の観測点番号をi、単色光の波長の種類に対する番号をj、単色光の波長をλ(j)、半透明膜60の膜屈折率をn、観測点において観測された輝度値をg(i,j)、半透明膜60の表面からの反射光の強さをI1(j)、半透明膜60における光の吸収がない場合の裏面からの反射光の強さをI20(j)、半透明膜60の吸収係数をk(j)、半透明膜60の膜厚をt(i)とした場合、後述する式(9)に基づいて、I1(j)、I20(j)、k(j)およびt(i)を推定するように構成されている。さらに、制御部50は、後述する式(9)に基づいて求められたI1(j)、I20(j)およびk(j)と、後述する式(19)とに基づいて、I1(j)、I20(j)およびk(j)を求める際に用いられた干渉画像の観測点以外の観測点の膜厚tを未知変数として推定するように構成されている。具体的には、制御部50は、未知変数に初期値を設定するとともに、未知変数を含む関数から算出される値に基づいて、目的関数を最小化する非線形計画法により、未知変数を推定するように構成されている。以下、詳細に説明する。
(推定原理)
〈半透明膜における干渉色と膜厚との関係〉
ます、半透明膜60における干渉色と膜厚との関係について説明する。
〈半透明膜における干渉色と膜厚との関係〉
ます、半透明膜60における干渉色と膜厚との関係について説明する。
半透明膜60の表面からの反射光と、裏面からの反射光とによる干渉は、多重反射を無視すれば、反射光の和は、下記の式(5)により表される。
ここで、I1およびI2は、それぞれ、表面からの反射光の強さ(光量)、および、裏面からの反射光の強さ(光量)を表す。また、λは、半透明膜60に照射される光の波長を表し、δは、表面からの反射光と裏面からの反射光との位相差を表す。
また、半透明膜60の物理的な膜厚をtとし、膜屈折率をn(λ)として、半透明膜60に対して光が垂直に入射すると仮定すると、表面からの反射光と裏面からの反射光との光路差(optical path difference;OPD)は、OPD=2n(λ)×tとなる。よって、位相差δ(λ)は、δ(λ)=2π×OPD/λ=4πn(λ)×t/λとなる。この式を、上記の式(5)に代入するとともに、屈折率の波長依存性がない(すなわち、n(λ)=n)と仮定することにより、下記の式(6)が得られる。
ここで、半透明膜60の屈折率が、半透明膜60が載置される基板61(図1参照)の屈折率よりも小さい場合(膜屈折率<基板屈折率)には、上記の式(6)において、右辺第3項の符号が正(+)になる。一方、膜屈折率>基板屈折率の場合には、位相差δが、δ(λ)=4πn(λ)t/λ+πとなるので、上記の式(6)において、右辺第3項の符号が負(−)になる。
また、半透明膜60における裏面からの反射光の強さI2は、半透明膜60の吸収係数をkとして、ランベルト・ベールの法則により、下記の式(7)のように表される。
そして、上記の式(6)および式(7)から、下記の式(8)が得られる。
ここで、白色光源10から照射され、3波長帯域フィルタ20を透過する単色光である青(B)、緑(G)および赤(R)の各々の波長を、それぞれ、λB=470nm、λG=560nm、および、λR=600nm、とする。また、I1=20、I20=80、膜屈折率n=1.4とする。また、青(B)、緑(G)および赤(R)の各々の吸収係数を、k(B)=0.0004(1/nm)、k(G)=0.0003(1/nm)、および、k(R)=0.0002(1/nm)とする。そして、反射光量と膜厚の関係を、上記の式(8)により算出することにより、図2に示すように、膜厚と輝度値(光量)との関係(図2の下段参照)、および、膜厚と干渉色との関係(図2の上段参照)が得られる。
図2の下段では、横軸は膜厚(nm)を表し、縦軸は輝度値を表している。図2の下段に示すように、波長(周期)は、青(B)、緑(G)および赤(R)の順で長くなる。また、輝度値は、膜厚が大きくなるにしたがって、小さくなる。
図2の上段は、各膜厚(nm)に対する干渉色のカラーチャーチ―トを表している。すなわち、図2の上段では、各膜厚において、図2の下段の青(B)、緑(G)および赤(R)が加算された色が示されている。なお、図2の上段では、グレーの濃淡で示されているが、実際には、カラーの濃淡の干渉色である。このように、各膜厚に対して異なる干渉色が得られる。
〈GMFT法〉
次に、未知変数I1、I20、kおよびtを推定するアルゴリズムについて説明する。このアルゴリズムを、GMFT(Global Model Fitting for Thickness)法と呼ぶ。
次に、未知変数I1、I20、kおよびtを推定するアルゴリズムについて説明する。このアルゴリズムを、GMFT(Global Model Fitting for Thickness)法と呼ぶ。
カラーカメラ40によって撮像された半透明膜60の画像(干渉色の画像)内の観測点i(i=1,2,...,N)における、単色光の波長の種類に対する番号j(j=1,2,...,m)の干渉縞のモデル輝度値g(i,j)は、上記の式(8)を変形して、下記の式(9)により表される。
ここで、半透明膜60の表面からの反射光の強さI1(j)、吸収がない場合の半透明膜60の裏面からの反射光の強さI20(j)、および、半透明膜60の吸収係数をk(j)は、観測点に依存せず、定数と仮定している。この仮定は、膜厚を推定しようとする対象の半透明膜60の構成が同一(均一)であり、白色光源10から照射される光が均一であれば、一般的に成立する。
ここで、本実施形態では、上記の干渉縞のモデル輝度値g(i,j)と、複数点において観測された輝度値とに基づいて、未知変数であるI1(j)、I20(j)、k(j)およびt(i)を推定するように構成されている。具体的には、下記の式(10)の誤差二乗和を最小にする非線形計画法(最小二乗法)により、未知変数(パラメータ)I1(j)、I20(j)、k(j)およびt(i)を推定する。
ここで、g(i,j)は、上記の式(9)のモデル輝度値を表し、gijは、観測輝度値を表す。
次に、上記の未知変数I1(j)、I20(j)、k(j)およびt(i)が求められる条件について説明する。単色光の波長の数をm個、観測点数をN個とすると、未知変数の数は、3m+N個になる。また、N個の観測点の数からmN個の輝度信号が得られる。そして、本実施形態では、下記の式(11)に基づいて、未知変数であるI1(j)、I20(j)、k(j)およびt(i)を求めるための干渉画像の観測点の数Nを設定するように構成されている。
たとえば、本実施形態では、単色光の波長の数は、青、緑および赤の3(m=3)であるので、Nは、5以上になる。すなわち、少なくとも5個の観測点のデータがあれば、未知変数を推定することが可能になる。
単色光の波長の数が3(m=3)であり、観測点の数がN個の場合、推定(計測)アルゴリズムは、図3に示すように、模式的に表される。すなわち、3N個の観測輝度値(g(1,B)、g(1,G)、g(1,R),...,g(N,B)、g(N,G)、g(N,R))から、N個の膜厚(t(1),...,t(N))と、9個のパラメータ(I1(B)、I1(G)、I1(R)、I20(B)、I20(G)、I20(R)、k(B)、k(G)、k(R))が推定される。
上記の式(9)のモデル輝度値は、周期関数である余弦関数(cos関数)を含むため、本実施形態の推定アルゴリズムにおいて最小二乗法を用いた場合、局所的極小値(ローカルミニマム)が多数存在する。したがって、適切な初期値を設定する必要がある。
次に、観測輝度値から、I1およびI20の概略値を推定する方法について説明する。
観測輝度値(観測点における輝度値)から、輝度値の中央値aと振幅bとを、それぞれ、下記の式(12)および式(13)により求める。
ここで、maxは、輝度値の最大値を表し、minは、最小値を表す。
次に、上記の式(9)において、半透明膜60の光の吸収が小さい(すなわち、e−2k(j)t(i)=1、e−k(j)t(i)=1)と仮定すると、下記の式(14)
および(15)が得られる。
および(15)が得られる。
上記の式(14)および式(15)から、下記の式(16)および式(17)が得られる。
ここで、±符号は、I1とI20との大小関係に依存する。この大小関係は、フレネルの式から導出した以下の式(18)により求めることができる。
ここで、nは、半透明膜60の屈折率を表し、nBは、半透明膜60が載置される基板61の屈折率を表す。上記の式(18)が、1以上であれば、式(16)の±符号は、正(+)になり、1未満であれば、負(−)になる。同様に、上記の式(18)が、1以上であれば、式(17)の±符号は、負(−)になり、1未満であれば、正(+)になる。よって、観測輝度値から、I1(j)およびI20(j)の概略値を推定することができる。
他の未知変数k(j)およびt(i)のうち、k(j)は、周期性がないことから初期値は「0」で問題がない。一方、t(i)は、cos関数の中にあるので、周期性がある。そこで、t(i)の初期値は、先験的な情報から精度のよい初期値が設定される。
〈輝度合致法〉
次に、1つの未知変数tを推定するアルゴリズムについて説明する。このアルゴリズムを輝度合致法と呼ぶ。輝度合致法では、GMFT法により推定された3つの未知変数I1、I20、kを用いて、残りの1つの未知変数tが推定される。
次に、1つの未知変数tを推定するアルゴリズムについて説明する。このアルゴリズムを輝度合致法と呼ぶ。輝度合致法では、GMFT法により推定された3つの未知変数I1、I20、kを用いて、残りの1つの未知変数tが推定される。
上記の式(9)を変形することにより、単色光の各波長(j)に対する輝度値と膜厚との関係は、下記の式(19)により表される。
ここで、未知数は、tのみである。
すなわち、本実施形態では、GMFT法(上記の式(9))に基づいて求められたI1(j)、I20(j)およびk(j)と、上記の式(19)とに基づいて、I1(j)、I20(j)およびk(j)を求める際に用いられた干渉画像の観測点以外の観測点の膜厚tを未知変数として推定するように構成されている。具体的には、上記の干渉縞のモデル輝度値g(j)と、観測された輝度値とに基づいて、未知変数であるtを推定するように構成されている。つまり、下記の式(20)の誤差二乗和を最小にする非線形計画法により、未知変数t(i)を推定する。
ここで、g(j)は、上記の式(19)のモデル輝度値を表し、gjは、観測輝度値を表す。
上記の式(19)のモデル輝度値g(j)は、周期関数を含んでいるため、非線形計画法を用いた場合、局所的極小値(ローカルミニマム)が多数存在する。したがって、一般的な非線形計画法の解法では、初期値近傍の局所解に収束してしまい、正しい解が得られない場合がある。そこで、本実施形態では、マルチスタート法を用いる。すなわち、予想される膜厚の範囲内で、予め設定された刻み間隔を有する複数の初期値からスタートして、非線形計画法を用いることにより、複数の解を求める。そして、求められた複数の解から、誤差二乗和が最小になるものを、大域解として採用する。
このように、上記の式(9)または式(19)を用いて、半透明膜60の膜厚t(i)が推定されるので、分光器や偏光光学系などの比較的複雑な光学系を用いる必要がない分、膜厚測定装置100の構成を簡略化することが可能になる。また、撮像した画像(干渉色)から膜厚への変換テーブル(校正データ)などを用いることなく、膜厚t(i)を推定することが可能になる。また、観測点毎(つまり、干渉画像の画素毎)に膜厚t(i)を推定することができるので、比較的水平分解能の高い膜厚測定装置100を構成することが可能になる。
(膜厚測定方法)
次に、図4を参照して、本実施形態による膜厚測定方法について説明する。
次に、図4を参照して、本実施形態による膜厚測定方法について説明する。
図4に示すように、ステップS1において、白色光源10から3波長帯域フィルタ20およびハーフミラー31を介して、測定対象である半透明膜60に複数の波長(青、緑、赤)の単色光を含む光が照射される。そして、半透明膜60の表面からの反射光と裏面からの反射光とにより生成される干渉画像がカラーカメラ40により撮像されて、観測輝度値が取得される。
次に、ステップS2において、上記の式(11)に基づいて定められる数の観測点が選択される。
次に、ステップS3において、未知変数であるI1(j)、I20(j)、k(j)およびt(i)のそれぞれの初期値が設定される。
次に、ステップS4において、GMFT法(上記の式(9))に基づいて、未知変数であるI1(j)、I20(j)、k(j)およびt(i)が推定される。これにより、複数の観測点(i)に対するI1(j)、I20(j)、k(j)およびt(i)が一括して推定される。すなわち、半透明膜60の複数の点の膜厚t(i)が一括して推定される。
次に、ステップS5において、GMFT法により推定されたI1(j)、I20(j)、k(j)を用いて、輝度合致法(上記の式(19))に基づいて、所望の観測点(GMFT法において使用された観測点以外の観測点)における未知変数であるtが推定される。なお、マルチスタート法(複数の初期値からスタートする)を用いることにより、複数の解が求められる。
最後に、ステップS6において、求められた複数の解から、誤差二乗和が最小になるもの(つまり大域解)が、膜厚として採用(推定)される。
(実験)
次に、図5〜図8を参照して、GMFT法および輝度合致法の妥当性を確認するための実験について説明する。
次に、図5〜図8を参照して、GMFT法および輝度合致法の妥当性を確認するための実験について説明する。
この実験では、図2の上段に示されるカラーチャートを実験対象の画像とした。すなわち、青(B)、緑(G)および赤(R)の各々の波長を、それぞれ、λB=470nm、λG=560nm、および、λR=600nm、とした。また、I1=20、I20=80、膜屈折率n=1.4とした。また、青(B)、緑(G)および赤(R)の各々の吸収係数を、k(B)=0.0004(1/nm)、k(G)=0.0003(1/nm)、および、k(R)=0.0002(1/nm)とした。そして、図2の上段のカラーチャートは、水平方向に200画素を有する。また、非線形計画法(具体的には、最小二乗法)として、マイクロソフト社製のExcel(登録商標)のSolver(登録商標)機能を使用した。
GMFT法についての実験では、カラーチャートの中の互いに等間隔の6点を観測点として使用した。そして、6点の観測点の輝度値を用いて、GMFT法(上記の式(9))に基づいて、未知変数であるI1(j)、I20(j)、k(j)およびt(i)を推定した。
また、輝度合致法についての実験では、GMFT法により推定された未知変数であるI1(j)、I20(j)、k(j)を用いて、輝度合致法(上記の式(19))に基づいて、カラーチャートの水平方向の200個の観測点の膜厚tを推定した。また、輝度合致法では、半透明膜60の膜厚tの範囲が1000nmであるとして、刻み間隔100nmのマルチスタート法を採用した。
〈GMFT法についての実験結果〉
図5に示すように、6個の観測点(点番号1〜6)の全てにおいて、青(B)、緑(G)および赤(R)の単色光の全てについて、観測された輝度値と、上記の式(9)により推定された輝度値とが、完全に一致した。
図5に示すように、6個の観測点(点番号1〜6)の全てにおいて、青(B)、緑(G)および赤(R)の単色光の全てについて、観測された輝度値と、上記の式(9)により推定された輝度値とが、完全に一致した。
また、図6に示すように、この実験では、未知変数I1(j)、I20(j)、k(j)およびt(i)の初期値を、各々の真値の90%としてGMFT法を適用した。その結果、未知変数I1(B、G、R)、I20(B、G、R)およびk(B、G、R)の全てにおいて、真値と一致した。また、図6および図7に示すように、膜厚t(1〜6)の全てにおいて、真値と一致した。すなわち、誤差は、0%であった。これにより、GMFT法が、未知変数I1(j)、I20(j)、k(j)およびt(i)の推定に有効であることが確認された。
〈輝度合致法についての実験結果〉
図8に示すように、水平方向に沿った200個の観測点(x座標1〜200)の全ておいて、推定された膜厚と真値とが、完全に一致した。これにより、輝度合致法が、未知変数t(i)の推定に有効であることが確認された。なお、推定された膜厚と真値とが完全に一致しているため、図8では、推定された膜厚の線と真値の線とが重なって表示されている。
図8に示すように、水平方向に沿った200個の観測点(x座標1〜200)の全ておいて、推定された膜厚と真値とが、完全に一致した。これにより、輝度合致法が、未知変数t(i)の推定に有効であることが確認された。なお、推定された膜厚と真値とが完全に一致しているため、図8では、推定された膜厚の線と真値の線とが重なって表示されている。
(本実施形態の効果)
次に、本実施形態の効果について説明する。
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態では、上記のように、上記の式(9)に基づいて、未知変数であるI1(j)、I20(j)、k(j)およびt(i)を推定する制御部50を設ける。これにより、複数の観測点(i)に対するI1(j)、I20(j)、k(j)およびt(i)が一括して推定される。すなわち、透明膜の場合と異なり、半透明膜60による光の吸収(e−2k(j)t(i)、e−k(j)t(i))を考慮した上記式(9)を用いることにより、半透明膜60の複数の点の膜厚t(i)を一括して推定することができる。その結果、1点ごとに膜厚を推定する場合と比べて、高速に半透明膜60の複数の点の膜厚t(i)を推定することができる。
また、本実施形態では、上記のように、上記の式(9)に基づいて求められたI1(j)、I20(j)およびk(j)と、上記の式(19)とに基づいて、I1(j)、I20(j)およびk(j)を求める際に用いられた干渉画像の観測点以外の観測点の膜厚tを未知変数として推定するように制御部50を構成する。これにより、上記の式(19)においては、未知変数の数が膜厚tの1つであるので、上記の式(9)(未知変数の数がI1(j)、I20(j)、k(j)およびt(i)の3m+N個)を用いる場合に比べて、より高速に膜厚tを推定することができる。
また、本実施形態では、上記のように、未知変数に初期値を設定するとともに、未知変数を含む関数から算出される値に基づいて、目的関数を最小化する非線形計画法により、未知変数を推定するように制御部50を構成する。これにより、未知変数を含む関数が解析的に解けない場合(非線形関数の場合)でも、未知変数を推定することができる。
また、本実施形態では、上記のように、複数の単色光の波長の数をm、干渉画像の観測点の数をNとした場合、上記の式(11)に基づいて、未知変数であるI1(j)、I20(j)、k(j)およびt(i)を求めるための干渉画像の観測点の数Nを設定する。これにより、未知変数に対して最低限必要な干渉画像の観測点の数を、上記の式(11)に基づいて、容易に求めることができる。
また、本実施形態では、上記のように、複数の単色光は、青、緑および赤の3色の単色光を含む。これにより、3色の単色光の波長が各々異なるので、3色の単色光の干渉により生成される干渉色が膜厚によって変化する。その結果、観測点において観測された輝度値g(i,j)(または輝度値g(j))に基づいて、膜厚を推定することができる。
[変形例]
なお、今回開示された実施形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態および実施例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
なお、今回開示された実施形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態および実施例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
たとえば、上記実施形態では、3波長帯域フィルタを介して、青、緑および赤の単色光が半透明膜に照射される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、青、緑および赤の単色光を照射する光源から、半透明膜に光を照射してもよい。
また、上記実施形態では、青、緑および赤の3つの単色光が半透明膜に照射される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、2つの単色光が半透明膜に照射されるようにしてもよい。
また、上記実施形態(実験)では、GMFT法(上記の式(9))において、6個の観測点の輝度値が用いられる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、上記の式(11)を満たせば、6個以外の数の観測点の輝度値を用いてもよい。
また、上記実施形態(実験)では、膜厚の推定にマルチスタート法(複数の初期値からスタートする)を用いる例を示したが、本発明はこれに限られない。膜厚の概略値(精度の良い初期値)が分かっている場合には、1つの初期値から膜厚を推定してもよい。
10 白色光源(光源)
40 カラーカメラ(撮像部)
50 制御部
60 半透明膜
100 膜厚測定装置
40 カラーカメラ(撮像部)
50 制御部
60 半透明膜
100 膜厚測定装置
Claims (6)
- 測定対象である半透明膜に複数の波長の単色光を含む光を照射する光源と、
前記光源から照射され、前記半透明膜の表面からの反射光と裏面からの反射光とにより生成される干渉画像を撮像する撮像部と、
前記撮像部により撮像された前記干渉画像の観測点番号をi、前記単色光の波長の種類に対する番号をj、前記単色光の波長をλ(j)、前記半透明膜の膜屈折率をn、前記観測点において観測された輝度値をg(i,j)、前記半透明膜の表面からの反射光の強さをI1(j)、前記半透明膜における光の吸収がない場合の裏面からの反射光の強さをI20(j)、前記半透明膜の吸収係数をk(j)、前記半透明膜の膜厚をt(i)とした場合、以下の式(1)に基づいて、未知変数であるI1(j)、I20(j)、k(j)およびt(i)を推定する制御部とを備える、膜厚測定装置。
- 前記制御部は、前記未知変数に初期値を設定するとともに、前記未知変数を含む関数から算出される値に基づいて、目的関数を最小化する非線形計画法により、前記未知変数を推定するように構成されている、請求項1または2に記載の膜厚測定装置。
- 前記複数の単色光は、青、緑および赤の3色の単色光を含む、請求項1に記載の膜厚測定装置。
- 測定対象である半透明膜に複数の波長の単色光を含む光を照射する工程と、
前記半透明膜の表面からの反射光と裏面からの反射光とにより生成される干渉画像を撮像する工程と、
撮像された前記干渉画像の観測点番号をi、前記単色光の波長の種類に対する番号をj、前記単色光の波長をλ(j)、前記半透明膜の膜屈折率をn、前記観測点において観測された輝度値をg(i,j)、前記半透明膜の表面からの反射光の強さをI1(j)、前記半透明膜における光の吸収がない場合の裏面からの反射光の強さをI20(j)、前記半透明膜の吸収係数をk(j)、前記半透明膜の膜厚をt(i)とした場合、以下の式(4)に基づいて、未知変数であるI1(j)、I20(j)、k(j)およびt(i)を推定する工程とを備える、膜厚測定方法。
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