JP6564643B2 - 内燃機関用点火コイル - Google Patents

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本発明は、内燃機関用点火コイルに関し、特に、内燃機関用点火コイルの絶縁構造に関する。
近年、自動車等に用いられる内燃機関では、プラグホールの各々に点火コイルを配備させた直接点火方式が採用されている。かかる点火コイルは、入力電圧を昇圧させるトランス回路部と、この回路から点火プラグへ高電圧を中継する高圧タワー部とから成り、全体としてスティック状の形態を呈している。この高圧タワー部はプラグホールへ挿入され、点火コイル全体がエンジンに装着される。
例えば、特許文献1に係る技術では、二次コイル周辺を被覆する高圧部含浸体(高圧側絶縁構造)と、当該高圧部含浸体の周囲を被覆する非高圧部含浸体(外周絶縁構造)と、によってトランス回路周囲の絶縁構造体が形成されている。かかる絶縁構造体は、先ず、二次コイルを収容させた第1のケース体を形成し、其の空間へエポキシ樹脂を含浸・熱硬化させることで、高圧部含浸体が形成される。その後、この高圧部含浸体の周囲に残りのトランス回路を装着し、これを囲うように第2のケース体を形成し、其の空間へエポキシ樹脂を含浸・熱硬化させることで非高圧部含浸体が形成される。
特開2014−207289号公報
コイルアセンブリを構成する外装鉄芯は、特に内側エッジ周辺でクラックが発生すると、其の内部側に二次コイルが配置されているので、当該二次コイルの絶縁構造が直接的に破壊されることとなる。 内燃機関用の点火コイルは、このようなクラックが生じると、十分な昇圧機能を発揮できず、内燃機関の正しい動作を保証できなくなる。
また、特許文献1によれば、外装鉄芯の内側角部と二次コイルとの間が高圧ケース体によって遮られる構造とされるが、このような構造を形成するには、高圧ケース体へクラック遮蔽体を一体的に形成しなければならず、当該高圧ケース体の形状が複雑化されてしまう。
本発明は上記課題に鑑み、外装鉄芯の内側角部と二次コイルとの遮蔽構造を簡素化させ得る内燃機関用点火コイルの提供を目的とする。
上記課題を解決するため、本発明では次のような内燃機関用点火コイルの構成とする。即ち、第1の組付構造体と、当該第1の組付構造体へ載置される外周鉄心と、前記第1の組付構造体に組付けられて内部空間及び鉄心載置空間を形成する第2の組付構造体と、前記外周鉄心の周囲に充填される充填樹脂と、を備え、
前記第2の組付構造体は、前記外周鉄心の第1面に沿う形状の壁部と、前記外周鉄心の第2面に沿う形状のフランジ部と、が一体的に形成され
前記外周鉄心の外周に被覆物が設けられた鉄心被覆体は、前記フランジ部へ載置されることとする。
本発明に係る内燃機関用点火コイルによると、上記のような構成としたので、この内部ケースのみからなる簡素な構成にて、外装鉄芯の内側角部と二次コイルとの遮蔽構造が形成される。従って、高圧ケース体は、当該遮蔽構造の一体的形成が必須の条件ではなくなるので、その構造を簡素化させた設計が可能となる。併せて、鉄芯エッジ周辺のクラック抑制効果が更に顕著なものとなる。

実施の形態に係る内燃機関用点火コイルの構成を示す図。 実施の形態に係る第1のケースの構成を示す図。 実施の形態に係る第1のケースの嵌合部を示す図(其の1)。 実施の形態に係る第1のケースの嵌合部を示す図(其の2)。 実施の形態に係る第1のケースの嵌合部を示す図(外装鉄芯との関係)。
以下、本発明に係る実施の形態につき図面を参照して具体的に説明する。図1では、本実施の形態に係る内燃機関用点火コイルの構成が示されている。図1(a)に示す如く、内燃機関用点火コイル100(以下、点火コイル100と呼ぶ)は、外部ケース110と高圧側ケース120とが組付けられて、コイル部品を収容する空間が形成される。本実施の形態では、其の組付け部が外縁部に設けられ、これが外側から観察できる部位に現れる。
外部ケース110は、円筒状の側面部位111,側方部位の一端を閉ざす頂面部位112,金属ブッシュが内設されたフランジ部113,内部に端子群114aを配備させたコネクタ部114等が一体的に形成されている。外部ケース110の構造体は、PBT又はPPSといった熱可塑性樹脂が成形されたものであって、上述した形状的構成が適宜に形作られる。
図1(b)に示す如く、点火コイル100の内部には、高圧側樹脂構造が配備されている。高圧側樹脂構造のケース構造体は、図2に示す如く、内部ケース130(第1の組付け構造体)と高圧側ケース120(第2の組付け構造体)とが組付けられたものから成る。かかるケース構造体は、ケース開口部132に二次スプール103の端部が嵌着され、二次スプール103の外面とケース構造体の内面(即ち、内部ケース130の内面及び鍔部123の内面)との間に内部空間Dが略角筒状に形成される。即ち、コイル部品のうち二次コイルに関しては、「内部空間に収容されるコイル部品」に属すものである。
かかるケース構造体は、内部空間Dの開口端が紙面左側に設けられており(図1(b)参照)、此処からエポキシ樹脂(充填樹脂)が投入され熱硬化されることで、絶縁性の高圧側樹脂構造体が形成される。尚、二次スプール103は、二次コイル102が適宜に巻回されており、この二次巻線102がエポキシ樹脂によって絶縁状態を保ちつつ固化される。
図1(b)に示す如く、高圧側ケース130の周囲には、一次コイル160,鉄芯180(I字鉄芯と外装鉄芯の組合体),といったコイル部品が配置され、これらの構成全体は、二次コイルを伴ってコイルアセンブリを形成する。また、鉄芯180の一端には、コネクタ端子114a及びコイル巻線等に接続されたイグナイタ200が配備される。そして、外部ケース110は、これら部品群を内部へ収容するように、高圧側ケース120に組付けられ、其の内部の隙間がエポキシ樹脂等にて硬化され其処での絶縁構造が形成される(樹脂充填は、開口Yを介して行われる)。
高圧側ケース120は、プラグブーツに嵌着される筒状体121と、筒状体121の外周面から径方向に広がる円錐状の鍔部123と、その端部に平坦な形状を呈した部品搭載部位124,126とが一体的に形成される。このケース構造は、上述した外部ケース110と同様の機能を奏するものであれば、その材質を特段問うものでは無い。
高圧側ケース120は、図示の如く、二次コイル122の出力端へ電気的に接続された中継ターミナル141と、これに電気的に接続された高圧端子142が配備されている。また、当該高圧端子142は、その一端が筒状体121の連通孔へ臨むように配置され、中継導体(図示なし)を介して点火プラグへ電気的に接続される。
かかる構成とされた点火コイル100は、コネクタ端子114aに駆動信号が入力されると、イグナイタ200に内蔵されたパワートランジスタが駆動して、一次コイルの通電/遮断状態が燃焼タイミングに応じて制御される。そして、一次電流の遮断動作時には、鉄芯の磁束が急激に変化して、二次コイル122にて励起電圧が生成される。従って、エンジン内の点火プラグでは、プラグギャップに励起電圧が印加され、スパークを発生させることとなる。
以下、図2〜図4を参照し、高圧側のケース構造について詳述する。図2(a)に示す如く、内部ケース130は、絶縁材にて成形された略殻状体131から成る。この殻状体には、底面及びケース開口部132の対面の各々に大きな開口が形成され、これらが隣接する部位で連通した状態とされる。殻状体131には、先に説明したように、略四角のケース開口部132が形成されている。また、内部ケース130の底面では、殻状体131の縁を辿るようにフランジ133と突状壁134とが一体形成されている。突状壁134は、所定溝に対し適宜の深さまで差込むことが可能なように、その高さ寸法が設定されている。一方、フランジ133は、突状壁134が所定溝へ嵌り過ぎないように、差込方向への動作を阻止する形状(例えば、略直角方向となる形状)に加工されている。
高圧側ケース120は、先に説明したように、筒状体121,鍔部123,平坦部位124及び126が一体形成され、当該平坦部位124の中心箇所に大きな凹状体122が形成される。この凹状体122は、其の周囲に廻堀127が設けられ、二次コイルの一部が収容されると同時に、突状壁134と廻堀127とが周に沿って嵌合する。即ち、突状壁134及び廻堀127が互いに嵌合している箇所A(以下、嵌合部Aと呼ぶ)は、特許請求の範囲における嵌合部の一形態を指すものであって、嵌合部なる用語の意義をこれに限定するものではない。
図3は、上述した嵌合部のバリエーションを説明するものであって、図の上段には嵌合部をプラグホールの軸線方向に向かって観察した状態が示され、図の下段には此処に示されるA−A断面を矢線方向に向かって観察した状態が示されている。高圧側ケース120の廻溝127の近傍には、図3(a)に示す如く、内部空間Dに内部堤壁124aが設けられ、これに対向する空間(外部空間)に外部堤壁124bが設けられ、これにより、廻溝127の輪郭が形成される。また、本実施の形態では、外部堤壁124bの内側には、フランジ部133との当接面が設けられ、これにより、突状壁134の挿入深さが制限されて廻溝127に樹脂の充填スペースXが形成される。
尚、本実施の形態では、内部ケースの端部近傍に設けられたフランジ部133を当接させて充填スペースXを形成させているが、これに限らず、嵌合部Aの接触摩擦や組付治具等を用いても、同様の充填スペースXを形成することが可能である。尚、このフランジ部133は、充填スペースXを容易に形成できるよう、内部ケース130の端部近傍に設けられている。充填スペースXには、図示されない連通経路が形成されており、内部空間Dに液状のエポキシ樹脂が投入されると、其の連通経路を介して充填スペースXにもエポキシ樹脂が満たされる。その後、かかる構造体が熱硬化工程へ供されると、充填スペースXは、隙間なくエポキシ樹脂が満たされた状態で熱硬化されることとなる。
上述の如く、本実施の形態に係る点火コイル100によると、樹脂嵌合部の隙間Xにエポキシ樹脂が充填されるので、樹脂嵌合部周辺の構造が空気層を伴わない状態に均質化される。このため、嵌合部Aでは、応力集中を起こす原因が排され、此処を原因として生じるクラックの発生が抑えられる。また、上記樹脂嵌合部では、残留空気が排除されるので、此処を流れるリーク電流の発生を防止できる。
図3(b)には、上述した樹脂連通経路の一例が示されている。同図によれば、内部堤壁124aには、内部ケース130の内壁と接する部位に、適宜のスリット124cが形成されている。当該スリット124cは、一方が内部空間Dへ連絡されており、他方が嵌合部に設けられた充填スペースXへ連絡されている。従って、ケース内の内部空間Dは、スリット124cを介して充填スペースXに連通されることとなる。このように、本実施の形態では、スリット124cを有する越流壁が形成され、液状のエポキシ樹脂を嵌合部へ導引させる速度が適宜に調整される。例えば、スリット124cの向きについては、流下する勾配の設定如何によって、樹脂の流下速度を調整させ得る。また、そのスリット124cの幅・径・施工箇所についても、形状を適宜に設定することで、当該流下速度を調整できる。
このように、本実施の形態では、スリットの勾配・形状等を適宜に設定することで、流下速度を調整させ、速すぎない速度にて、液状樹脂(エポキシ樹脂)を嵌合部へ誘引させる。このため、嵌合部の充填スペースXでは、液状樹脂が徐々に供給されるので、急激な流動に伴う気泡の発生は殆ど生じない。また、当該充填スペースXでは、このような気泡を発生させない流動条件のもと流速を十分に与えることで、その液状樹脂が隙間スペース全体に行渡り、空気溜りが生じることも無くなる。また、スリット124cは、適宜のピッチにて複数配備されることで、この空気溜りを効果的に抑制させ得る。
また、図3(c)に示す如く、内部堤壁124aの頂部に堰124dを設けて、充填スペースXへの樹脂流量を制限させても良い。これによっても、充填スペースXへの流入速度が低下するので、同スペースXでの液状樹脂の流動状態を好適化させ得る。
また、図4に記載の実施例では、フランジ部133の当接面に適宜の凸部135が形成されている。かかる凸部135は、フランジ部133の当接面近傍に形成される空間に収容され得るよう、幅寸法及び高さ寸法が十分小さなものとされている。従って、高圧側ケース120と内部ケース130とが組合わさると、その嵌合部近傍では、フランジ部133の当接方向に凸部135が配置され、其の周囲に隙間が形成される。そして、此処にエポキシ樹脂等が充填されることで、嵌合部近傍の結合力が更に高められる。尚、かかる凸部135は、図2(a)に示す如く、所定ピッチにて複数個所設けると更に良い。
図4の図面上には描かれていないが、凸部135が収容された第2スペースZ(隙間部)にも、適宜の連通路が設けられることで、此処へ充填樹脂が導引される。この連通路は、例えば、充填スペースXに連通する溝であってもよいし、追ってエポキシ樹脂が充填される外部空間側に連通するものであっても良い。
尚、これまで、両ケース体の嵌合箇所について説明してきたが、本実施の形態では、これに限らず、外装鉄芯の周辺にも構造上の特徴が与えられている。図5は、両ケース体の嵌合箇所について、外部空間(内部ケースに隣接する空間であって内部空間Dと隔てられる空間)へ外装鉄芯180が配置されている。
図5(a)に示す如く、外装鉄芯180は、外部空間側へ配置されているので、ケース構造体によって内部空間Dから隔離された状態とされる。特に、本実施の形態に係る内部ケース130は、殻状体131とフランジ133とが一体構造とされているので、殻状体131とフランジ133との付根部が隙間なく一様な構造組織により形成されることとなる。
この付根部には、図示の如く、外装鉄芯180のスタック材181のコーナーが配置されている。従って、内部ケース130では、外周鉄芯の内面(第1面)に沿う形状の壁部(殻状体131)と、外周鉄芯の底面(第2面)に沿う形状のフランジ133と、が外装鉄芯180のコーナー部位を概ね囲うように機能する。従って、外装鉄芯180は、内部ケース体130である一の構造部品、即ち、クラックの成長経路を一様な樹脂構造によって、クラックの成長経路が遮られる。このように、外装鉄芯180は、事実上、クラックの成長リスクを抑え得た状態で、内部空間Dから隔離されることとなる。
このように、本実施の形態に係る点火コイル100によると、内部ケース130のフランジ付根へ外装鉄芯の内側コーナー部が配置されるので、この内部ケース130のみからなる簡素な構成にて、外装鉄芯180の内側角部と二次コイルとの遮蔽構造が形成される。従って、高圧ケース120は、当該遮蔽構造の一体的形成が必須の条件ではなくなるので、その構造を簡素化させた設計が可能となる。
尚、同図では、両ケース体の嵌合箇所に特徴が与えられているので、高圧側ケース120の部品搭載部位124が幾分複雑な形態を呈している。しかし、嵌合部に係る特徴が必須の事項でなければ、部品搭載部位124は、更に簡素な形状とさせることも可能である。その一方、同図のような構造が採用される場合、外周鉄芯180の内側下部エッジでは、両ケース体の嵌合構造を伴った頑丈な構造が与えられるので、当該エッジ周辺のクラック抑制効果が更に顕著なものとなる。
また、図5(b)に示す如く、外装鉄芯180は、スタック材181の積層体の外周を、適宜の絶縁樹脂で被覆させると良い。当該被覆材は、その周囲の絶縁材の弾性変形率より高い材質が好ましく、例えば、シリコーン系樹脂,4フッ化エチレン樹脂,又は,PBT(Polybutylene Terephthalate)等を用いると良い。本実施の形態では、このような被覆構造をフランジ部の付根箇所へ設けることで、鉄芯エッジ周辺のクラック抑制効果が更に顕著なものとなる。
100 内燃機関用点火コイル, 110 外部ケース, 120 高圧側ケース(第2の組付構造体), 124d 越流堰, 130 内部ケース(第1の組付構造体), 170 内部空間に収容されるコイル部品, A 嵌合部, D 内部空間, X 充填スペース。

Claims (1)

  1. 第1の組付構造体と、当該第1の組付構造体へ載置される外周鉄心と、前記第1の組付構造体に組付けられて内部空間及び鉄心載置空間を形成する第2の組付構造体と、前記外周鉄心の周囲に充填される充填樹脂と、を備え、
    前記第2の組付構造体は、前記外周鉄心の第1面に沿う形状の壁部と、前記外周鉄心の第2面に沿う形状のフランジ部と、が一体的に形成され、
    前記外周鉄心の外周に被覆物が設けられた鉄心被覆体は、前記フランジ部へ載置されることを特徴とする内燃機関用点火コイル。
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